特許第6943911号(P6943911)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6943911
(24)【登録日】2021年9月13日
(45)【発行日】2021年10月6日
(54)【発明の名称】気化器の洗浄方法および気化装置
(51)【国際特許分類】
   C03B 8/04 20060101AFI20210927BHJP
【FI】
   C03B8/04 Q
【請求項の数】9
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2019-41840(P2019-41840)
(22)【出願日】2019年3月7日
(65)【公開番号】特開2020-142965(P2020-142965A)
(43)【公開日】2020年9月10日
【審査請求日】2020年8月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大谷 浩輝
(72)【発明者】
【氏名】川▲崎▼ 光広
(72)【発明者】
【氏名】浅井 稔之
【審査官】 永田 史泰
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−256242(JP,A)
【文献】 特開2005−60118(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03B8/04
C03B19/14
C03B37/018
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
常温常圧では液体状の原料を気化器にて気化し、該気化した原料を供給管路にて反応部に供給する気化器の洗浄方法であって、
前記原料を液体状に維持しながら、前記気化器に流し、前記気化器を洗浄する洗浄工程を含むことを特徴とする気化器の洗浄方法。
【請求項2】
前記原料をキャリアガスと混合して混合流体を生成する混合工程をさらに含み、
前記洗浄工程において、前記混合流体の前記原料を液体状に維持しながら、前記混合流体を前記気化器に流し、前記気化器を洗浄する
ことを特徴とする請求項1に記載の気化器の洗浄方法。
【請求項3】
前記洗浄工程において洗浄に使用した前記液体状の原料の少なくとも一部を再度前記気化器に送出し、前記気化器を洗浄することを特徴とする請求項1または2に記載の気化器の洗浄方法。
【請求項4】
前記洗浄工程において、前記原料を液体状に維持しながら、前記供給管路に流し、前記供給管路を洗浄することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載の気化器の洗浄方法。
【請求項5】
前記洗浄工程において、前記液体状の原料を前記気化器から、前記気化器の鉛直下方側に位置する前記供給管路に流すことを特徴とする請求項4に記載の気化器の洗浄方法。
【請求項6】
前記液体状の原料をポンプにて前記気化器に圧送することを特徴とする請求項1に記載の気化器の洗浄方法。
【請求項7】
常温常圧では液体状の原料を貯留する貯留器と、
前記液体状の原料とキャリアガスとを混合する混合装置と、
前記混合装置から供給された前記液体状の原料を気化する気化器と、
前記気化器にて気化された前記原料と前記キャリアガスとの混合流体を外部に供給する供給管路と、
前記気化器から前記貯留器に液体状の前記原料を還流する還流構造と、
を備えることを特徴とする気化装置。
【請求項8】
前記還流構造は前記気化器に対して鉛直下方側に位置することを特徴とする請求項7に記載の気化装置。
【請求項9】
液体状の前記原料を前記貯留器から前記混合装置を経由させずに前記気化器に圧送するポンプをさらに備えることを特徴とする請求項7または8に記載の気化装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体原料を気化する気化器の洗浄方法および気化装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、液体原料を気化し、当該気化した原料を化学反応させる製造工程が知られている。たとえば、光ファイバの製造工程では、ケイ素の液体原料としてのシロキサン系材料を気化し、当該気化した原料を、反応部にて、バーナで火炎加水分解反応させてガラス微粒子を生成する工程がある。
【0003】
たとえば、引用文献1では、液体状のシロキサン系材料を原料として、キャリアガスと共に気化器に導入し、原料の気化を実施している。また、引用文献2では、液体状のシロキサン系材料を、側面を加熱した膨張槽の当該側面に向けて導入して気化し、気化したシロキサン系材料を原料として利用し、気化しなかったシロキサン系材料を膨張槽の下層に溜めて、貯留部に流すことが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017−36172号公報
【特許文献2】特表2014−517801号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の方法では、気化器の出口以降の経路が所定の温度に維持できないとシロキサン系材料の液化が起こる。その結果、液化したシロキサン系材料の重合が繰り返されて重合物が生成し、気化器内に堆積する場合がある。このような堆積が進行すると、気化器内での圧力損失増加により所望の原料流量が確保できなくなる場合がある。さらには、一旦重合物が気化器内に発生すると、その除去には作業時間を要するので、気化器や気化器を備える気化装置のランニングコストが高くなるという問題がある。なお、このような重合物の堆積は供給管路でも発生し得る。
【0006】
これに対して、特許文献2の方法では、重合物を除外して気化した原料のみを送ることが容易にできるが、気化器が大がかりになる割には液体原料を効率的に気化できないため、材料コストが高くなるという問題がある。
【0007】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、原料の重合物が発生しても簡易に除去できる気化器の洗浄方法および気化装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の一態様に係る気化器の洗浄方法は、常温常圧では液体状の原料を気化器にて気化し、該気化した原料を供給管路にて反応部に供給する気化器の洗浄方法であって、前記原料を液体状に維持しながら、前記気化器に流し、前記気化器を洗浄する洗浄工程を含むことを特徴とする。
【0009】
本発明の一態様に係る気化器の洗浄方法は、前記原料をキャリアガスと混合して混合流体を生成する混合工程をさらに含み、前記洗浄工程において、前記混合流体の前記原料を液体状に維持しながら、前記混合流体を前記気化器に流し、前記気化器を洗浄することを特徴とする。
【0010】
本発明の一態様に係る気化器の洗浄方法は、前記洗浄工程において洗浄に使用した前記液体状の原料の少なくとも一部を再度前記気化器に送出し、前記気化器を洗浄することを特徴とする。
【0011】
本発明の一態様に係る気化器の洗浄方法は、前記洗浄工程において、前記原料を液体状に維持しながら、前記供給管路に流し、前記供給管路を洗浄することを特徴とする。
【0012】
本発明の一態様に係る気化器の洗浄方法は、前記洗浄工程において、前記液体状の原料を前記気化器から、前記気化器の鉛直下方側に位置する前記供給管路に流すことを特徴とする。
【0013】
本発明の一態様に係る気化器の洗浄方法は、前記液体状の原料をポンプにて前記気化器に圧送することを特徴とする。
【0014】
本発明の一態様に係る気化装置は、常温常圧では液体状の原料を貯留する貯留器と、前記液体状の原料とキャリアガスとを混合する混合装置と、前記混合装置から供給された前記液体状の原料を気化する気化器と、前記気化器にて気化された前記原料と前記キャリアガスとの混合流体を外部に供給する供給管路と、前記気化器から前記貯留器に液体状の前記原料を還流する還流構造と、を備えることを特徴とする。
【0015】
本発明の一態様に係る気化装置は、前記還流構造は前記気化器に対して鉛直下方側に位置することを特徴とする。
【0016】
本発明の一態様に係る気化装置は、液体状の前記原料を前記貯留器から前記混合装置を経由させずに前記気化器に圧送するポンプをさらに備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、原料の重合物が発生しても簡易に除去できるので、気化器や気化装置のランニングコストを低減できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は、実施形態1に係る気化装置の洗浄方法の説明図である。
図2図2は、実施形態2に係る気化装置の洗浄方法の説明図である。
図3図3は、実施形態3に係る気化装置の洗浄方法の説明図である。
図4図4は、実施形態4に係る気化装置の洗浄方法の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、図面の記載において、同一又は対応する要素には適宜同一の符号を付している。また、図面において、流体を搬送する管路は適宜図示を省略している。
【0020】
(実施形態1)
図1は、実施形態1に係る気化装置の洗浄方法の説明図である。図1(a)に示す製造装置100は、光ファイバの製造に用いられる多孔質母材の製造装置であって、気化装置10と、反応部20とを備えている。
【0021】
気化装置10は、混合装置1と、気化器2と、供給管路3と、マスフローコントローラ(MFC)4、5とを備えている。
【0022】
MFC4、5は、流体の質量流量を制御するための制御装置である。MFC4、5は、質量流量を測定する質量流量計と、質量流量計の測定結果に基づいて開度が自動的に調節される電磁弁とを備えている。
【0023】
MFC4は、供給源から供給された液体原料である原料流体F1の質量流量を制御して混合装置1に供給する。原料流体F1は、たとえばシロキサン系材料であるオクタメチルシクロテトラシロキサン(OMCTS)である。OMCTSは常圧で融点が18℃、沸点が176℃であり、常温常圧では液体状である。シロキサン系材料はOMCTSに限定されず、たとえばデカメチルシクロペンタシロキサン(DMCPS)でもよい。
【0024】
MFC5は、供給源から供給されたキャリアガスであるキャリアガスF2の質量流量を制御して混合装置1に供給する。キャリアガスF2はたとえば窒素ガス(Nガス)である。
【0025】
混合装置1は、たとえば混合チャンバであり、チャンバ内で原料流体F1とキャリアガスF2とを混合して、混合流体F3として気化器2に供給する。
【0026】
気化器2は、混合流体F3を搬送する内部管路と、内部管路を加熱するヒータとを内蔵している。気化器2は、混合流体F3を搬送する内部管路を加熱して混合流体F3に含まれる液体状の原料を気化する。気化器2は、液体状の原料を気化するために内部管路内を原料の沸点以上、たとえばOMCTSであれば180℃程度に保持できるように構成されている。気化器2は、原料が気化された混合流体F4を供給管路3に送出する。
【0027】
供給管路3は、混合流体F4を、気化装置10の外部に配置された反応部20に搬送する。供給管路3は、混合流体F4に含まれる原料が液化しないように、ヒータで加熱されていることが好ましい。
【0028】
反応部20は、反応容器と、反応容器内に設けられたバーナとを備えている。また、反応部20は、OMCTS以外の原料や、アルゴン等の希釈ガスや、燃焼を支援する燃焼ガスや、製造するスートに添加するドーパント等も供給される。反応部20では、OMCTSなどの原料をバーナで火炎加水分解反応させてガラス微粒子を生成し、生成されたガラス微粒子をターゲットロッドに堆積させてスートを製造する。なお、スートの製造に使用されなかった原料やガラス微粒子は、吸引ポンプによってガス浄化装置に送られ、ガス浄化装置は原料やガラス微粒子を除去する。
【0029】
ここで、気化器2の内部や供給管路3の内部には、OMCTSの重合物Pがゲル状となって堆積する場合がある。そこで、これらの重合物Pを除去するために、図1(b)に示すような実施形態1に係る洗浄方法を実行する。
【0030】
まず、混合装置1は、原料流体F1とキャリアガスF2とを混合して混合流体F3を生成する混合工程を行い、混合流体F3を気化器2に供給する。
【0031】
気化器2は、混合流体F3を保温して混合流体F3に含まれる原料流体F1を液体状に維持しながら、内部管路にて混合流体F3を流す。これにより洗浄工程が実行される。気化器2は、原料流体F1を液体状に維持するために管路内を原料の沸点より低く融点より高い温度、たとえばOMCTSであれば35℃程度に保持できるように構成されている。その結果、液体状の原料流体F1によって、気化器2に堆積した重合物Pが好適かつ簡易に除去される。気化器2は、洗浄に使用された混合流体F3を供給管路3に送出する。
【0032】
供給管路3は、混合流体F3を保温して混合流体F3に含まれる原料流体F1を液体状に維持しながら混合流体F3を流す。これによりさらに洗浄工程が実行される。供給管路3は、原料流体F1を液体状に維持するために管路内を原料の沸点より低く融点より高い温度、たとえばOMCTSであれば35℃程度に保持できるように構成されている。洗浄に使用された混合流体F3は反応部20を経由して排出され、原料流体F1が容器状の貯留器30に貯留される。
【0033】
実施形態1に係る洗浄方法によれば、液体状の原料流体F1とキャリアガスであるキャリアガスF2との混合流体F3を気化器2と供給管路3とに流すことによって、重合物Pが発生しても簡易に除去できるので、気化器2や気化装置10のランニングコストを低減できる。
【0034】
(実施形態2)
図2は、実施形態2に係る気化装置の洗浄方法の説明図である。図2に示す製造装置100Aは、図1に示す製造装置100の構成において、気化装置10を気化装置10Aに置き換えた構成を有する。
【0035】
気化装置10Aは、気化装置10の構成において、気化器2、供給管路3を、それぞれ気化器2A、供給管路3Aに置き換えた構成を有する。気化器2Aは、鉛直下方側にて供給管路3Aと接続するように構成されている点で気化器2とは異なる。供給管路3Aは、気化器2Aの鉛直下方側に位置して反応部20と接続するように構成されている点で供給管路3とは異なる。
【0036】
実施形態2に係る洗浄方法の実施においては、実施形態1と同様に、混合装置1が、原料流体F1とキャリアガスF2とを混合して混合流体F3を生成する混合工程を行い、混合流体F3を気化器2に供給する。
【0037】
気化器2は、混合流体F3を保温して混合流体F3に含まれる原料流体F1を液体状に維持しながら、内部管路にて混合流体F3を流す。これにより、実施形態1と同様に気化器2A内に堆積した重合物が好適かつ簡易に除去される。また、気化器2Aは、鉛直下方側にて供給管路3Aと接続するように構成されているため、混合流体F3よりも密度が高い重合物が重力によって排出されやすくなっている。気化器2Aは、洗浄に使用された混合流体F3を供給管路3Aに送出する。
【0038】
供給管路3Aは、混合流体F3を保温して混合流体F3に含まれる原料流体F1を液体状に維持しながら混合流体F3を流す。これにより、実施形態1と同様に供給管路3A内に堆積した重合物が好適かつ簡易に除去される。また、供給管路3Aは、気化器2Aから鉛直下方側に延伸しているため、重合物が重力によって排出されやすくなっている。その後、実施形態1と同様に、洗浄に使用された混合流体F3は反応部20を経由して排出され、原料流体F1が容器状の貯留器30に貯留される。
【0039】
実施形態2に係る洗浄方法によれば、特に重力を利用して重合物の排出を促進しているので、重合物が発生しても簡易に除去でき、気化器2Aや気化装置10Aのランニングコストを低減できる。
【0040】
(実施形態3)
図3は、実施形態3に係る気化装置の洗浄方法の説明図である。図3に示す製造装置100Bは、図2に示す製造装置100Aの構成において、気化装置10Aを気化装置10Bに置き換えた構成を有する。
【0041】
気化装置10Bは、気化装置10Aの構成に三方弁6aとポンプ6bとを追加した構成を有する。
【0042】
三方弁6aは、混合装置1と気化器2Aとの間に設けられている。三方弁6aは、反応部20を用いた製造工程を実施する際には、混合装置1が送出した原料流体F1とキャリアガスとの混合流体を気化器2Aに流すように機能する。
【0043】
ポンプ6bは、貯留器30に貯留された液体状の原料流体F1を汲み上げて三方弁6aに圧送するように構成されている。
【0044】
実施形態3に係る洗浄方法を実施する際には、三方弁6aは、圧送された原料流体F1を気化器2Aに流し、気化器2Aと供給管路3Aとを洗浄する。このとき、原料流体F1は加圧されているので流速が高い。その結果、気化器2Aと供給管路3Aとを効率よく洗浄できる。その後、実施形態1と同様に、洗浄に使用された原料流体F1は反応部20を経由して排出され、貯留器30に貯留される。洗浄に使用された原料流体F1の少なくとも一部は再度ポンプ6bで汲み上げられて気化器2Aおよび供給管路3Aの洗浄に用いられてもよい。
【0045】
実施形態3に係る洗浄方法によれば、特に重力を利用して重合物の排出を促進しているので、重合物が発生しても簡易に除去でき、気化器2Aや気化装置10Bのランニングコストを低減できる。また、原料流体F1をポンプ6bによって圧送することによって、洗浄効率が高くなる。
【0046】
さらに、本実施形態3では三方弁6aを用いているので、製造工程と洗浄工程とで管路を組み換える必要がない。ただし、三方弁6aを用いずに、洗浄工程を行う際には混合装置1から気化器2Aへの管路を外し、ポンプ6bから管路を直接気化器2Aに接続し、原料流体F1を流してもよい。この場合、さらに気化器2Aから供給管路3Aを外して、気化器2Aのみに原料流体F1を流し、洗浄を行ってもよい。
【0047】
(実施形態4)
図4は、実施形態4に係る気化装置の洗浄方法の説明図である。図4に示す製造装置100Cは、図3に示す製造装置100Bの構成において、気化装置10Bを気化装置10Cに置き換えた構成を有する。
【0048】
気化装置10Cは、気化装置10Bの構成において、三方弁6aを削除し、供給管路3を供給管路3Cに置き換え、還流構造7、開閉弁8a、8b、8cを追加した構成を有する。
【0049】
開閉弁8aは、混合装置1と気化器2Aとの間に設けられている。開閉弁8aは、反応部20を用いた製造工程を実施する際には、開状態とされ、混合装置1が送出した原料流体F1とキャリアガスF2との混合流体F3を気化器2Aに流すように機能する。
【0050】
ポンプ6bは、貯留器30に貯留された液体状の原料流体F1を汲み上げて、開閉弁8aと気化器2Aとの間の合流点Cを経由して気化器2Aに圧送するように構成されている。開閉弁8bは貯留器30とポンプ6bとの間に設けられている。開閉弁8cはポンプ6bと合流点Cとの間に設けられている。
【0051】
還流構造7は、還流管路7a、7b、7cと、還流管路7a、7b、7cに接続された三方弁7dとを備えている。還流管路7bは供給管路3Cの途中に接続されている。
【0052】
反応部20を用いた製造工程を実施する際には、開閉弁8aは開状態とされ、開閉弁8b、8cは閉状態とされる。そして、混合装置1が送出した混合流体F3が気化器2Aに流される。気化器2A、供給管路3Cは、混合流体F3に含まれる原料流体F1を気体状に維持しながら混合流体F3を反応部20に流す。
【0053】
一方、実施形態4に係る洗浄方法を実施する際には、開閉弁8aは閉状態とされ、開閉弁8b、8cは開状態とされる。ポンプ6bは、貯留器30に貯留された原料流体F1を汲み上げて、開閉弁8b、8c、合流点Cを経由させて気化器2Aに圧送する。気化器2A、供給管路3Cは、圧送された原料流体F1を流す。これにより気化器2Aと供給管路3Cとが効率的に洗浄される。
【0054】
その後、洗浄に使用された原料流体F1は反応部20を経由して排出され、還流管路7a、三方弁7d、還流管路7cを経由して貯留器30に貯留される。洗浄に使用された原料流体F1の少なくとも一部は再度ポンプ6bで汲み上げられて気化器2Aおよび供給管路3Cの洗浄に用いられる。
【0055】
また、三方弁7dを切り換えて、原料流体F1が供給管路3Cの途中から還流管路7b、三方弁7d、還流管路7cを経由して貯留器30に流してもよい。洗浄に使用された原料流体F1の少なくとも一部は再度ポンプ6bで汲み上げられて気化器2Aおよび供給管路3Cの洗浄に用いられる。
【0056】
実施形態4に係る洗浄方法によれば、特に重力を利用して重合物の排出を促進しているので、重合物が発生しても簡易に除去でき、気化器2Aや気化装置10Cのランニングコストを低減できる。また、原料流体F1をポンプ6bによって圧送することによって、洗浄効率が高くなる。
【0057】
さらに、本実施形態4では製造工程と洗浄工程とで管路を組み換える必要がない。さらには、還流構造7によって気化器2Aから貯留器30に原料流体F1を還流しているので、原料流体F1を効率的に回収することができる。
【0058】
ここで、実施例1として実施形態1の構成の製造装置を構成し、原料流体をOMCTSとして、OMCTSを35℃に維持して気化器に供給し、数時間洗浄を実施したところ、反応部からはゲル状になった重合物が排出された。
【0059】
また、実施例2として実施形態2の構成の製造装置を構成し、原料流体をOMCTSとして、OMCTSを35℃に維持して気化器に供給し、数時間洗浄を実施したところ、反応部からはゲル状になった重合物が排出された。
【0060】
なお、上記実施形態により本発明が限定されるものではない。上述した各構成要素を適宜組み合わせて構成したものも本発明に含まれる。また、さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。よって、本発明のより広範な態様は、上記の実施形態に限定されるものではなく、様々な変更が可能である。
【符号の説明】
【0061】
1 混合装置
2、2A 気化器
3、3A、3C 供給管路
4、5 MFC
6a、7d 三方弁
6b ポンプ
7 還流構造
7a、7b、7c 還流管路
8a、8b、8c 開閉弁
10、10A、10B、10C 気化装置
20 反応部
30 貯留器
100、100A、100B、100C 製造装置
C 合流点
F1 原料流体
F2 キャリアガス
F3、F4 混合流体
P 重合物
図1
図2
図3
図4