(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記マイクロ波を遮蔽可能な材料は、アルミニウム、ステンレス、鉄、およびメッキ鋼板からなる群から選択される一種または二種以上の材料である、請求項1から5のいずれかに記載の電子レンジ用調理治具。
前記遮蔽部の外面に積層される、ポリプロピレン、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、ポリイミド、フェノール樹脂、メラミン樹脂、シリコーン樹脂からなる群から選択される一種または二種以上の材料からなるスパーク防止層をさらに備える、請求項1から6のいずれかに記載の電子レンジ用調理治具。
【発明を実施するための形態】
【0016】
実施形態の電子レンジ用調理治具を、
図1〜
図5を参照して説明する。なお、
図1〜
図5は電子レンジ用調理治具の一実施態様を示したものにすぎず、本発明が
図1〜
図5に示される形状や大きさに限定されるものではない。また、食材を収容する容器の形状や大きさによって電子レンジ用調理治具の大きさ及び各構成のサイズは適宜変更することができる。
【0017】
(第一の実施形態)
第一の実施形態の電子レンジ用調理治具を
図1(a)に示す。
電子レンジ用調理治具1は、天面10と側面20とを備えた略ボックス形状を有し、天面10と側面20に囲まれる収納空間に、食材60が収容された容器50の少なくとも一部を収容可能に構成されている。
その天面10には、容器50のうち収容される食材60の四隅62に相当する領域を上面から被覆する遮蔽部12と、容器50のうち収容される前記食材60の中心部64に相当する領域の上面を開口により露出する透過部14とを備える。遮蔽部12は、マイクロ波を遮蔽可能な材料により形成されている。
側面20は、その全体がマイクロ波を遮蔽可能な材料により形成された遮蔽部22となっている。
電子レンジ用調理治具1の寸法は、上記の構成を備えていれば収納する容器50の寸法に従って適宜設計すればよい。
【0018】
天面10の遮蔽部12と透過部14の形状は特に限定されないが、
図1(a)に示される様に天面10の中心部が透過部14として六角形状の切り欠き部14aにより切り欠かれ、天面10の四隅を残した開口構造を採ってもよい。また切り欠き部14aにより切り欠かれてなる透過部14は、
図1(c)に示すような円形や楕円形、
図1(d)(e)に示すような多角形、その他の不定形の形状であってもよい。
また、透過部14は目視によって容器天面の中心部又は容器50に収容された食材60の上面の中心部が視認可能となっていることが好ましく、開口構造でなくとも、透明な樹脂やガラスなどマイクロ波を透過可能な材料により構成されていてもよい。
特に、繰り返し電子レンジによる加熱調理に耐えられるためには、透過部14は開口構造であることが好ましい。
【0019】
なお、ここでいう容器のうち収容される食材の四隅に相当する領域を上面から被覆する状態とは、電子レンジ用調理治具1の天面10の遮蔽部12と、容器50の天面とが、接近又は直接接触して被覆していることに限定されず、容器50の天面に対する垂直方向からの平面視において、容器50のうち収容される食材60の四隅に相当する領域が死角となっていればよい。
すなわち、電子レンジ用調理治具1の天面10の内面と容器50の天面とは、接触又は接近していても、離れていてもいずれでもよく、その距離は30mm以下であることが好ましい。電子レンジ用調理治具1の天面10の内側と容器50の天面とが30mmを超えて離れると、使用する電子レンジによっては、電子レンジ用調理治具1の天面10の内側と容器50の天面との隙間から多量のマイクロ波が入り込み、食材60の四隅の過加熱を低減できないおそれがある。
【0020】
また、食材60の四隅に相当する領域とは、食材60の四隅の最外端部が含まれる領域をいい、好ましくは食材60の四隅の最外端部から食材60の中心部に向かって5mm程度の幅を有する範囲が含まれる領域である。
また食材60の四隅とは、容器50の天面に対する垂直方向からの平面視において、容器50に収容される食材60を正方形、長方形または略長方形のいずれかの形状とみなした場合の4つの頂点近傍をいう。
また、容器50における食材60の収容部を天面側から垂直方向に平面視した場合において、容器50に食材が充填されているとみなして、容器の収容部の形状が正方形、長方形または略長方形のいずれかの形状とみなした場合の4つの頂点近傍とも言い換えることができる。容器50の収容部が天面から底面に向かって狭まるようにテーパー状に構成されている場合には、容器50の収容部の底面の四隅をもって、収容される食材60の四隅とみなしてもよい。
また、食材60の中心部に相当する領域とは、容器50に充填される食材60の上面全面のうち、天面10の遮蔽部12による遮蔽領域を除く領域と言い換えることもできる。
【0021】
また、電子レンジ調理治具1の天面10の遮蔽部12の大きさは特に限定されないが、容器50の食材60の四隅62に相当する領域を上面から被覆し、且つ当該四隅62の合計被覆面積が、食材60の上面全体の面積の9〜50%、より好ましくは14〜28%被覆する様に構成され、残部は食材60の中心部64に相当する領域として食材の上面を露出する様に構成されているのが好ましい。
このようにすると、容器50が樹脂フィルムをラミネートした紙製容器である場合にも、食材60の四隅の過加熱に伴なう容器50のデラミネーションを防ぐことができる。紙製容器がデラミネーションを起こすと、そこから紙に食材60の油分が染み込み、容器50が持ちにくくなったり電子レンジ庫内を汚したりするおそれがあるため、天面10の遮蔽部12の食材上面の被覆率が上記範囲であることで、こうした問題を抑制することができる。
【0022】
なお、電子レンジ用調理治具1の天面10と側面20の各遮蔽部12、22を構成する材料は、マイクロ波を遮蔽可能な材料であればよく、種類は特に限定されないが、例えばアルミニウム、ステンレス、鉄、およびめっき鋼板からなる群から選択される一種または二種以上の材料を用いることができる。なお、こうした材料は耐久性の点で金属板が好ましいが、軽量化のために金属箔や金属蒸着フィルムを用いることもできる。
【0023】
また、一般に電子レンジ庫内の内壁は金属で構築されており、電子レンジ用調理治具1を構成する金属等のマイクロ波遮蔽材料と直接接触もしくはマイクロ波共振波長距離の間隙で電子レンジ用調理治具1が電子レンジ庫内に配置された場合、スパークが生じる恐れがある。
スパークを抑制するために、電子レンジ用調理治具1の遮蔽部12、22の表面(外面)にスパーク防止層を備えることが望ましい。
こうしたスパーク防止層としては、ポリプロピレン、ポリウレタン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリイミド、フェノール樹脂、メラミン樹脂、シリコーンからなる群から選択される一種または二種以上を用いることができる。また、スパーク防止層を備えることで、電子レンジ調理後も電子レンジ用調理治具や容器が熱くなりすぎず、取り扱いが容易となる。
また、スパーク防止層の厚みは限定されず、電子レンジ用調理治具1の天面10、側面20、後述する底面30の各遮蔽部12、22、32のうちの複数の面にスパーク防止層を有する場合にはそのいずれもが同じ厚さであっても、異なる厚さであってもよい。
好ましくは、電子レンジ用調理治具1の側面10と天面20のスパーク防止層の厚さが1〜6mm、底面30のスパーク防止層の厚さが3〜10mmの範囲であることが好ましい。さらに、スパーク防止層は電子レンジ用調理治具1の周縁において、1〜5mmの巾で突出させて積層されていると好ましい。すなわち、電子レンジ用調理治具1を構成する金属等のマイクロ波遮蔽材料の断面が露出しない様にスパーク防止層を設けることで、よりスパークの発生を抑えることができる。
【0024】
また、電子レンジ用調理治具1はマイクロ波の遮蔽性能を備える材料だけで構成されていてもよいが、収容される食材60の四隅62に相当する領域を上面から被覆する遮蔽部12と、容器のうち収容される前記食材60の中心部64に相当する領域の上面を露出する透過部14とを備えてさえいれば、その材料の一部にマイクロ波を透過又は吸収する材料を更に含んでいてもよい。
また、上述の様に電子レンジ用調理治具1は、収容される食材60の四隅62に相当する領域を上面から被覆する遮蔽部12と、容器のうち収容される前記食材60の中心部64に相当する領域の上面を露出する透過部14とを備えてさえいれば、天面10や後述する底面30に洗浄の際に水切りや意匠性を目的として貫通孔を備えていてもよい。側面20に透過部を設けることも可能である。
本態様の場合には、電子レンジ用調理治具1は天面10と複数の側面20とを備えており、底面が存在せずに、容器50の上部から電子レンジ用調理治具1を被せる様にして構成されている。
【0025】
図1(b)に示される様に、電子レンジ用調理治具1に容器50が収容されることで、容器50に収容される食材60の四隅62の上面が遮蔽部12で覆われ、食材60の中心部64が透過部14により露出した状態となる。
上記の電子レンジ用調理治具1に食材60が収容された容器50を収容して電子レンジによる加熱調理を行うことにより、容器50に収容される食材60の四隅62の上面ではマイクロ波が遮蔽されることで食材の過加熱が抑制され、食材60の中心部64の上面では食材に向けてマイクロ波が照射される。
これにより、食材60の四隅62では、マイクロ波が集中しないためにレンジ焼けが生じにくくなる一方、加熱不足により生焼けが生じ易い食材60の中心部64では、マイクロ波が遮蔽されることなく照射されて充分に加熱される。これと共に、中心部64から伝わる熱と透過部14から四隅62に入り込むマイクロ波によって、食材60の四隅62も程よく加熱される。
この様にして、電子レンジ用調理治具1を用いることで、容器50を特別な構造にせずとも、食材60の加熱ムラを抑制することができる。
【0026】
また上記第一の実施形態の変形例として、電子レンジ用調理治具1に底面30を備える構成が挙げられる。具体的には
図2(a)に示す様に、電子レンジ用調理治具1には、容器50のうち収容される食材60の四隅62に相当する領域を、下面から被覆する遮蔽部32を有する底面30をさらに備えている。
本変形例の場合には、電子レンジ用調理治具1は天面10と複数の側面20と底面30を備えており、側面20の一部に、容器50を挿入して収容可能にする挿入口24が備えられている。
【0027】
本変形例においては、
図2(a)に示すように、当該底面30は切り欠き部34aにより切り欠かれることで前記天面10と略同一の構造の開口(透過部34)を備えた構成が図示されているが、底面30の形状は特に限定されず、当該底面30は開口を有さずに遮蔽部32のみから構成されていてもよい。
また、
図2(b)の様に中心部分に矩形の開口(透過部34)を備えた構造や、円形、楕円形、不定形の開口を備えてもよい。好ましくは、底面30は中心部分に矩形の開口を備えた構造を採ることが好ましい。
また、底面30の中心部分に開口を備える場合には、当該開口の大きさは特に限定されないが、好ましくは、底面30の遮蔽部32が、容器50の食材60の下面全体に相当する領域を40〜95%、好ましくは44〜57%被覆し、それ以外は露出する様に開口が形成されていると、樹脂フィルムをラミネートした紙製の食品容器50においてもデラミネーションを防ぎつつ、食材60の局所的な過加熱を防ぐことができる。
【0028】
底面30には容器50の食材60の四隅62の下面を被覆する一方で、食材60の中心部64の下部が露出する開口を備えていると、生焼けを生じ易い食材60の中心部64が十分に加熱されるため好ましい。
また、底面30の材料は特に限定されず、上述の天面や側面と同一の材料を好適に用いることができる。さらに、底面30の外側の表面、すなわち電子レンジ庫内の床に対向する面(外面)には、上述のスパーク防止層を更に備えることが安全上の面で好ましい。
【0029】
また底面30は、その高さが6.2mm以上9mm以下であることが好ましい。ここでいう底面の高さとは、電子レンジ用調理治具1を底面30を下側にして水平な台に置いたときの、台に接地される接地面(外面)から容器50が載置される載置面(内面)までの距離をいう。
電子レンジ庫内の床から高さ6.1mmまでの範囲には、マイクロ波が集中するマイクロスポットとも呼ばれる領域が存在するが、底面30の高さが6.2mm以上9mm以下であることによって、この領域に容器50に収容された食材60が入り込むのが避けられる。このため、食材60の一部が過加熱状態になることを防ぐことができると共に、底面30に開口を備える場合には開口を通して電子レンジ庫内の床に反射したマイクロ波が効率よく食材60の下側に照射されるため、適度に食材60の中心部を加熱することができる。
底面の高さが9mmを超えると、電子レンジ用調理治具1が大きくなり、電子レンジ庫内に設置しにくくなるおそれや、食材の上面が電子レンジ庫内の天井面に近づき、電子レンジ庫内の天井面にマイクロ波の照射口を備えた電子レンジを使用すると食材の上面で焦げが発生しやすくなるおそれがある。
【0030】
こうした底面30の高さを6.2mm以上9mm以下とする構造としては、
図2(c)に示す様に、底面30自身の厚さh1を6.2mm以上9mm以下にしてもよいが、
図2(d)に示す様に、底面30に下方に延びる複数の脚部36を設けて底面30を底上げすることで、底面30の高さh2を6.2mm以上9mm以下としてもよい。
このように底面30の高さを所定範囲に規定することによって、電子レンジ庫内の床で反射したマイクロ波が食材60の四隅62の下面に照射されることが抑制されるため、食材60の四隅62の過加熱を一層抑制することができる。
【0031】
上記第一の実施形態の変形例の更なる変形例として、天面10を備える上蓋2と底面30を備える本体3とが上下に分離自在に構成された構造が挙げられる。
例えば
図3に示す様に、電子レンジ用調理治具1は、天面10と外側面20aを備える上蓋2と、底面30と内側面20bを備える本体3とからなる、いわゆる弁当箱状の構造を採ってもよい。図示の場合、底面30を下向きにした本体3に容器50を収容し、その上から天面10を上向きにした上蓋2を、外側面20aが外側に内側面20bが内側に重なり合うようにして被せることで、内外側面により側面20が形成される構成となっている。
【0032】
(第二の実施形態)
電子レンジ用調理治具の第二の実施形態を
図4(a)に示す。電子レンジ用調理治具1は、一対の中空ボックス状の調理治具半体4,5に二分割されている。
同寸同形の各調理治具半体4、5は、食材60が収容された容器50の対向する側面に対して両側から夫々挿入を受け入れ可能な挿入口24を備えている。
調理治具半体4,5は、天面10と側面20とを備え、前記挿入口24は天面10と側面20により区画される収納空間に通じている。前記各天面10には、容器50のうち収容される前記食材60の四隅62に相当する領域のうち、隣接する二隅をそれぞれ上面から被覆する遮蔽部12と、前記容器50のうち収容される前記食材60の中心部64に相当する領域の上面を露出する透過部14とを備える。
すなわち、本実施態様における電子レンジ用調理治具1は、容器50の側面から一対の調理治具半体4、5を取り付けることで、容器50のうち収容される食材60の四隅62のうち隣接する二隅をそれぞれの調理治具半体4、5が被覆し、合計で四隅のすべてに相当する領域を被覆することになる。
【0033】
以下、第一の実施形態と異なる点について詳述する。
図4(a)に示すように、本態様の電子レンジ用調理治具1では、各調理治具半体4、5において透過部14たる開口が挿入口24と連通しており、この透過部14は、調理治具半体4、5に対する容器50の挿入方向に向けて幅が狭くなる様にV字形状に切り欠かれることで形成されている。本態様においては各調理治具半体4、5は、天面10と側面20とを備え、底面を有さない構造となっている。
調理治具半体4、5における、天面10の遮蔽部12と透過部14の形状は特に限定されないが、
図4(c)に示される様にU字型等の湾曲形の切り欠き部14aや、
図4(d)に示されるようにV字状の両端に平面部を有する切り欠き部14a、
図4(e)に示されるように先端が平面となったV字状の切り欠き部14a、その他の不定形の形状の切り欠き部により切り欠かれることで透過部14が形成されていてもよい。
【0034】
調理治具半体4,5は、各天面10に遮蔽部12と透過部14とを備えていればよく、同一の形状であっても異なった形状であってもよい。好ましくは、より加熱ムラを低減するために線対称、点対称、および同一形状の少なくともいずれかであることが好ましい。
さらに調理治具半体4,5の形状は、容器50を挿入可能となっていれば特に限定されず、例えば直方体、立方体、円筒体、半円筒体、その他の不定形の立体の箱状構造を採用することができる。
調理治具半体4,5の側面20には、容器50を挿入するための挿入口24が備えられていればよく、更に加熱調理後の冷却や洗浄、軽量化を目的として複数の貫通孔を備えていてもよい。ただし、調理治具半体4,5の側面20のうち挿入口24と対向する面は、容器50を挿入した際に容器50の端部と当接することで容器50が調理治具半体4,5を貫通してしまわない程度の側面を有していることが好ましい。
容器50が調理治具半体4,5を貫通可能となっていると、電子レンジの庫内に設置した際に不用意に調理治具半体4,5から容器50の端部が露出してしまい、その露出した容器に収容された食材の隅が過加熱されてしまう可能性があるためである。
【0035】
図4(b)に示される様に、電子レンジ用調理治具1に容器50が収容されることで、容器50に収容される食材60の四隅62の上面が遮蔽部12で覆われ、食材60の中心部64が露出した状態となる。
上記の電子レンジ用調理治具1に食材60が収容された容器50を収容して電子レンジによる加熱調理を行うことにより、容器50に収容される食材60の四隅62の上面ではマイクロ波を遮蔽されることで過加熱が抑制され、一方で食材60の中心部64の上面ではマイクロ波が照射される。これにより、食材60の四隅62ではマイクロ波が集中しないためにレンジ焼けが生じにくくなる一方、加熱不足により生焼けが生じ易い食材60の中心部64が遮蔽されることなく加熱されると共に中心部64から伝わる熱と透過部14から四隅62に入り込むマイクロ波によって食材60の四隅62が程よく加熱される。
この様にして、電子レンジ用調理治具1を用いることで、容器50を特別な構造にせずとも、食材60の加熱ムラを抑制することができる。
電子レンジ用調理治具1の構造が本態様であることによって、容器50の側面に挿入および取り外しが容易とすることができる。また、電子レンジ用調理治具1の構造が本態様であることによって、容器50が扁平な直方体の場合に、短尺側の側面と長尺側の側面のいずれかの適合するほうの側面を選択することで取り付けることが可能である。
【0036】
また、調理治具半体4,5は、その幅を変更可能に構成されていてもよい。例えば、
図4(f)に示す様に、調理治具半体4,5の側面20や後述する底面30に、幅を変動可能な伸縮部26を備えていてもよい。こうした伸縮部26としては、ゴムや樹脂等のベルトや公知のラチェット機構やレール等を用いることができる。
また本態様の変形例として、電子レンジ用調理治具1を構成する調理治具半体4,5に底面30を備える構成が挙げられる。具体的には
図5(a)に示す様に、電子レンジ用調理治具1には、容器50のうち収容される食材60の四隅62に相当する領域を下面から被覆する底面30をさらに備えている。本変形例の場合には、電子レンジ用調理治具1は天面10と複数の側面20と底面30を備えており、側面20の一部に、容器50を挿入して収容可能にする挿入口24が備えられている。
本態様において
図5(a)では、当該底面30には、開口(透過部34)を構成する前記天面10と略同一の構造のV字形状の切り欠き部34aが図示されているが、底面30の切り欠き部の形状は特に限定されず、U字等の湾曲形の切り欠き部34a、V字状の両端に平面部を有する切り欠き部34a、先端が平面となったV字状の切り欠き部34a、その他の不定形の切り欠きを備えてもよく、
図5(b)の様に切り欠き部34aを備えずに遮蔽部32のみからなる底面30を備えてもよい。
好ましくは、底面30は切り欠き部34aを有しないものとして、容器50の両端に一対の中空ボックス体を取り付けると、当該2つの調理治具半体4、5の底面同士が離間されることで、容器底面の中心部分に矩形の開口が自動的に形成される構造を採ることが好ましい。
【0037】
なお、調理治具半体4、5の具体的な大きさは容器50の大きさに依存するため限定されないが、例えば、外径144mm(幅)×192mm(奥行)、高さ41.5mmの皿状の容器に対して、1つあたりの調理治具半体4,5の大きさが幅144mm〜160mm、奥行き60〜80mm、内寸高さ42mm〜50mmの範囲であることが好ましい。
また、調理治具半体4、5は、その天面10には、V字型の切り欠き部14aが奥行き方向に50〜60mmの深さで設けられ、その底面30には、切り欠き部34aが設けられず、奥行きが40〜60mmの範囲であることが好ましい。
こうした構成により、各調理治具半体4、5に容器50を挿入した場合、容器50の底面は片側の端部において奥行きが55mm以上85mm以下の範囲でマイクロ波の遮蔽性能を備える材料によって覆われることになる。容器50の両端部からそれぞれ調理治具半体4,5を挿入することで、合わせて被覆することにより、容器50の底面は奥行きが110mm以上170mm以下の範囲で被覆される。調理治具半体4,5の底面30の奥行きが上記範囲内であることによって、容器50へのマイクロ波の照射が最適となり、食材60の加熱ムラを抑制することができる。
【0038】
また、調理治具半体4、5の底面30の大きさは特に限定されないが、好ましくは、食材60が収容された容器50の対向する側面に対して両側から夫々挿入された状態において、その遮蔽部32で容器50の食材60の下面に相当する領域を30〜40%被覆し、それ以外は露出する様に底面30が構成されていることが好ましい。
底面30が、容器50の食材60の四隅62の下面を被覆する一方で、食材60の中心部64の下部が露出する様に構成されていると、生焼けを生じ易い食材60の中心部64が十分に加熱されるため好ましい。
なお、本態様において、電子レンジ用調理治具の材料や当該材料表面に備えるスパーク防止層、天面10の遮蔽領域12と透過領域14の形状および大きさ、底面30の高さ、底面30の開口の形状および大きさ、側面20の貫通孔、天面における容器の食材の上面に相当する領域の被覆率、底面における容器の食材の下面に相当する領域の被覆率は、第一の実施形態に記載された構成を適宜採用することができる。
【0039】
(容器)
次いで、本発明の電子レンジ用調理治具1を用いた加熱調理に好適に使用される容器50について詳述する。
【0040】
容器50は、マイクロ波によって加熱する食材60が収容可能に構成されている。容器50の形状や大きさは特に限定されるものではないが、例えば略扁平状の形状を備えているものを用いることができる。
例えば一般的にスーパーやコンビニエンスストアの弁当等に使用されている容器50の大きさとしては、幅50mm以上90mm以下、奥行き120mm以上250mm以下、高さ40mm以上90mm以下の略直方体形状が挙げられる。特に、天面が長手方向の幅が192mm、短手方向の幅が144mmで、幅5〜15mmのフランジを有し、高さが30mm〜50mmで天面から底面に向かってテーパー面となって、底面の長手方向の幅が140mm、短手方向の幅が105mmの容器が広く流通している。
また、容器50は、食材60を収容し且つ天面52と底面54が存在すればよく、箱状に全面が密閉された構造であってもよいが、皿状に構成されて食材を収容し天面側は蓋や包装シートによって密閉された構造であってもよい。容器の形状は上記範囲内であれば、角が角状になっていてもR状になっていても、端部が不定形に湾曲されていてもよいし、天面や底面に凹凸形状が備えられていてもよい。また、容器は略直方体形状である場合であっても、幾何学的な直方体形状に限定されない。すなわち、容器は6面体でなくてもよく、例えば容器の側面が5面以上の複雑な形状であってもよい。容器の形状は適宜意匠性を有する様に設計した構造を採用することができる。
【0041】
容器50はマイクロ波による加熱によって容易に溶解や変形しない材料により構成されることが好ましい。特に容器50の材質は限定されないが、公知の電子レンジ調理用の容器に採用される材料を用いることができる。こうした材料としては、例えば樹脂や紙、もしくは樹脂でラミネートされた紙を用いることができる。容器50に用いられる樹脂としては、例えばポリエステル、ポリプロピレン、ポリブチレンテレフタレート、ポリメチルペンテンからなる群から選択される一種または二種以上の樹脂を用いることができる。
また、容器の材料の厚さも限定されないが、例えば150μm以上500μm以下であると、収容される食材へのマイクロ波の照射を不用に妨げず、且つ容器としての保形性を備えることができる。
また、容器50はその表面が平滑であってもよいが、強度をもたせるためにエンボス加工されていても、角近傍にシワを有していても、容器の周端近傍に強度を持たせるために、側面56から水平に張り出すフランジ部58が形成されていてもよい。フランジ部58の外縁には、縁巻が付属していてもよい。
また、容器50には内部の収納空間を複数の小部屋に区画する仕切りが備えられていてもよい。
【0042】
さらに容器内に収容される食材60の配置は特に限定されるものではないが、容器50の底面一面に食材60が収容され得る構造であることが好ましい。
また食材60を収容する容器50には樹脂製容器や樹脂フィルムをラミネートした紙製容器が広く用いられているが、冷凍食材等を収容した容器には、熱変形しにくく加熱調理直後でも持ち易い紙製容器が好まれている。
しかしながら、食材60の四隅にマイクロ波が集中して食材60が過加熱となると、容器50の内面のうち、食材60の四隅と接触または近接している部分も加熱されて紙から樹脂フィルムが剥がれる、デラミネーションという現象が起こることがある。
デラミネーションを起こした容器自体はなんら人体等に害が及ぶものではないが、デラミネーションを起こした部分では紙が露出することがあり、食材中の油分が染み込むことがある。これにより、電子レンジ庫内やテーブルが汚れることもある。
本実施形態の電子レンジ用調理治具1を用いて電子レンジによる加熱調理を行うことで食材の四隅の過加熱が防がれるため、紙製容器のデラミネーションも抑制することができる。
また、容器50に充填される食材60の形状及びその充填状態は限定されず、容器50に満遍なく充填されていてもよいが、50〜90%の高さに充填されていることが一般的である。また、食材60の上面はフラットであっても凸凹であってもよく、例えばパスタの上に具材が乗って凸凹となっていてもよい。
【0043】
(本発明の電子レンジ用調理治具を用いた加熱調理方法)
次いで、上述の電子レンジ用調理治具を用いた好適な加熱調理方法について詳述する。
実施形態の加熱調理方法は、食材が収納された容器を準備する工程と、容器に収納された食材の四隅に相当する領域を上面からマイクロ波を遮蔽可能な遮蔽材で被覆する工程と、容器に収納された食材の中央部に相当する領域を露出する工程と、容器を電子レンジの庫内に設置する工程と、電子レンジを稼働させて、容器に収納された食材を加熱する工程と、を含む。
以下、各工程について説明するが、準備工程および加熱工程については、それ自体に特段の方法的特徴を有するものではないため、詳細は省略する。
【0044】
<被覆および露出工程>
被覆および露出工程(収納工程)は、容器50に収容された食材60の四隅の上面と下面が遮蔽部により被覆されるように、その一方で、食材60の中心部は露出されるように、電子レンジ用調理治具1内に収納する工程である。これにより、食材の中心部にマイクロ波がよく照射され、食材の四隅にはマイクロ波が照射されにくくなる。
かかる工程は、食材60の上面を電子レンジ用調理治具1によって30〜40%被覆して、残部は食材60が露出する様に収納することが好ましい。
特に、容器50の対向する側面を、一対の調理治具半体4,5からなる電子レンジ用調理治具1により収納して、食材60の四隅を上面および下面から被覆する工程であってもよい。すなわち、上述の第二の実施形態で詳述した一対の中空ボックス体を、容器の両側から取り付ける方法を好適に用いることができる。
【0045】
<設置工程>
設置工程は、上述の一対の調理治具半体4,5同士が対向する方向が、電子レンジの手前側から奥側の方向とほぼ一致するように設置する工程であることが好ましい。すなわち、電子レンジの扉を開けて、容器の両端に取り付けた調理治具半体4,5の一方が奥側で他方が扉側(手前側)に向くようにして容器を電子レンジ庫内に設置することで、加熱工程における食材の加熱ムラを抑制することができる。
特に高出力の電子レンジは、庫内の奥側の天面にマグネトロンで発生したマイクロ波を電子レンジの庫内に照射する照射口が設けられていることが多いが、この照射口から直下に照射されたマイクロ波が食材に直接照射されない方が、食材の局所的な加熱を防ぐことができるからである。
同様の理由で、電子レンジ庫内のマイクロ波が照射される照射口の近傍に上述の一対の調理治具半体4,5のうちの一つを向けて電子レンジ庫内に設置する工程であってもよい。具体的には、電子レンジにおいて、照射口が電子レンジ庫内の天面の一部または壁面の一部に設けられているが、この照射口の直下に照射されたマイクロ波が食材に直接照射されないように、一対の調理治具半体4、5の一方を照射口に対向して配置することになる。
また、設置工程は、容器の底面の食材の載置面(内面)と電子レンジ庫内の床との距離が6.2mm以上9mm以下となる様に容器を電子レンジ庫内に設置する工程であることが好ましい。これにより、加熱工程において、食材が電子レンジ庫内のホットスポットに位置することが避けられ、食材の局所的な過加熱を防ぐことができる。
【実施例】
【0046】
本発明の電子レンジ用調理治具のうち、上述の第二の実施形態における電子レンジ用調理治具を用いた加熱調理の実施例および比較例を以下に示し、本発明の内容を一層明確なものとする。
【0047】
(実施例1)
実施例の電子レンジ調理治具として、幅150mm、奥行き60mm、高さ45mmの調理治具半体を2個作成した。
かかる調理治具半体の材料は1000mm×2000mm、厚さ1.0mmのA5052アルミニウム板であり、これを折り曲げて中空ボックス形状に成形した。このとき、調理治具半体は側面のうち、幅が150mmである一面が存在しない、五面の箱形状とした。側面のうち、存在しない一面は、挿入口を形成している。ここで、調理治具半体の底面の奥行き方向の長さは60mmとした。
次いで、調理治具半体の天面に、透過部(開口)を作製するためにV字状の切り欠き部を形成した。切り欠き部は、挿入口と連通し、且つ幅が挿入口全面(幅150mm)にわたるものとして、奥行き方向に向かって60mmの深さで三角形状にレーザー加工機により切り除いて形成した。
次いで、厚さ6mm発泡ポリプロピレンシートを調理治具半体の全面に耐熱両面テープによって貼りつけてスパーク防止層を形成し、実施例1の電子レンジ用調理治具を得た。
ここで、調理治具半体の底面の内面(食品容器の設置面)の高さは7mmであった。
【0048】
(実施例2)
調理治具半体の天面の切り欠き部を、奥行き方向に向かって50mmの深さで三角形状に電動ノコギリにより切り除いた以外は、実施例1と同様にして実施例2の電子レンジ用調理治具を作成した。
【0049】
(実施例3)
調理治具半体の天面の切り欠き部を、奥行き方向に向かって40mmの深さで三角形状に電動ノコギリにより切り除いた以外は実施例1と同様にして実施例3の電子レンジ用調理治具を作成した。
【0050】
(実施例4)
調理治具半体の底面に積層したスパーク防止層の厚みを8mmとして底面高さを9mmとした以外は、実施例1と同様にして実施例4の電子レンジ用調理治具を作成した。
【0051】
(実施例5)
調理治具半体の天面の切り欠き部を、奥行き方向に向かって50mmの深さで三角形状に電動ノコギリにより切り除き、底面の奥行き方向の長さを50mmとした以外は、実施例1と同様にして実施例5の電子レンジ用調理治具を作成した。
【0052】
(実施例6)
調理治具半体の底面にはスパーク防止層を積層せずに、底面の高さを1mmとした以外は、実施例1と同様にして実施例6の電子レンジ用調理治具を作成した。
【0053】
(実施例7)
調理治具半体の底面に積層するスパーク防止層の厚みを2mmとして、底面の高さを3mmとした以外は、実施例1と同様にして実施例7の電子レンジ用調理治具を作成した。
【0054】
(実施例8)
調理治具半体の底面に積層するスパーク防止層の厚みを4mmとして、底面の高さを5mmとした以外は、実施例1と同様にして実施例8の電子レンジ用調理治具を作成した。
【0055】
(実施例9)
調理治具半体の底面の奥行き方向の長さを70mmとした以外は、実施例1と同様にして実施例9の電子レンジ用調理治具を作成した。
【0056】
(実施例10)
調理治具半体の底面の奥行き方向の長さを80mmとした以外は、実施例1と同様にして実施例10の電子レンジ用調理治具を作成した。
【0057】
(実施例11)
調理治具半体の底面の奥行き方向の長さを90mmとした以外は、実施例1と同様にして実施例11の電子レンジ用調理治具を作成した。
【0058】
(実施例12)
調理治具半体の底面に積層するスパーク防止層の厚みを10mmとして、底面の高さを11mmとしたとした以外は、実施例1と同様にして実施例12の電子レンジ用調理治具を作成した。
【0059】
(実施例13)
調理治具半体の底面に積層するスパーク防止層の厚みを13mmとして、底面の高さを14mmとしたとした以外は、実施例1と同様にして実施例13の電子レンジ用調理治具を作成した。
【0060】
(実施例14)
調理治具半体の天面の切り欠き部を、奥行き方向に向かって30mmの深さで三角形状に電動ノコギリにより切り除いた以外は、実施例1と同様にして実施例14の電子レンジ用調理治具を作成した。
【0061】
(実施例15)
調理治具半体の底面のアルミニウム板を無しとした以外は、実施例1と同様にして実施例15の電子レンジ調理治具を作成した。
【0062】
次いで、幅144mm、奥行き192mm、高さ41.5mmの皿状の食品容器(紙基材にポリエステル系フィルムを積層したラミネート容器、東洋アルミエコープロダクツ社製)を用意し、ここに冷凍パスタ(日本製粉株式会社製、オーマイプレミアム 彩々野菜 舞茸となすの香味醤油 260g)を収容し、ポリエステルとナイロンの積層フィルムにて容器天面をトップシールした。
この食品容器の奥行き方向の両方の端部に、上述の実施例1〜15の電子レンジ調理治具を構成する調理治具半体をそれぞれ挿入した。
このとき、食品容器の天面(皿の開口部)と、調理治具半体の天面とを共に上側となる様にし、この状態で電子レンジ(Panasonic社製NE−1901)の庫内に入れ、1900Wで120秒間加熱した。
【0063】
加熱が完了した後に、すぐに電子レンジ庫内から調理治具半体で被覆された食品容器を取り出し、調理治具半体および食品容器にトップシールされたフィルムを取り外して、食材の中心部の温度T1と、食材の四隅の温度(平均値)T2とを温度計により測定し、温度差T1−T2を算出した。また、食品容器の全体を目視にて、ポリエステル系フィルムと紙とがデラミネーションを起こしているか否かを確認した。
【0064】
(比較例)
電子レンジ用調理治具を使用せず、皿状の食品容器に冷凍パスタを収容してポリエステルとナイロンの積層フィルムにて容器天面をトップシールした以外は、実施例1〜15と同様にして電子レンジによる評価を行った。
【0065】
実施例1〜15および比較例につき、結果を表1に示す。
表1中、均一加熱性の項目の○は、食材の中心部が四隅よりも高温でありかつその温度差の絶対値が20度以内であることを、△は、食材の中心部よりも四隅が高温であるか、または中心部と四隅の温度差の絶対値が20度を超えていることを、×は、食材の中心部と四隅の温度差の絶対値が40度を超えていることを、それぞれ示す。
また、表1中、デラミネーションの項目の○は、目視で確認可能なデラミネーションが発生していないことを、×は、目視で確認可能なデラミネーションが発生していることを、それぞれ示す。
さらに、表1中、総評の項目の○は、均一加熱性の項目とデラミネーションの項目のいずれもが○であることを、△は、均一加熱性の項目とデラミネーションの項目のいずれか一方のみが○であることを、×は、均一加熱性の項目とデラミネーションの項目のいずれも○ではないことを、それぞれ示す。
【0066】
【表1】
【0067】
表1に示す様に、実施例の電子レンジ用調理治具を用いることで、食材の加熱ムラや食品容器のデラミネーションを防ぐことが確認された。一方で比較例は、食材の中心温度が38度と若干の生焼け状態となっており、隅では90度となっており、温度差が大きかった。混ぜることである程度熱が均一になったものの、隅にあったパスタは一部レンジ焼けが生じており、パスタ同士がくっついてコゲており、固くなって混ぜにくい状態となっていた。さらに、容器の四隅のうち二隅で容器がデラミネーションを起こしており、表面の樹脂フィルムの浮きが目視で確認された。
一方で、実施例では容器のデラミネーションが見られるものもあったが、その程度は比較例よりも低かった。また、食材のコゲは目視では確認されなかった。
【0068】
今回開示された実施形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考慮されるべきである。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての修正と変形を含むものであることが意図される。