(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1において、農産容器の一例である包装袋10は、農産物、例えば青果物を包装する袋状の包装容器であり、農産物は包装袋10の内部の収容空間に収容された状態で保存、及び/または流通される。農産物は、本実施形態では一例として青果物としている。なお、包装袋10は、農産物を包装する場合に限られず、農業での生産をする場合にも用いることができる。例えば生育させる苗を覆う(苗にかぶせる)状態で包装袋10は使用することができる。
【0019】
包装袋10は、シート状のフィルムである矩形の2枚のシートの各3辺同士を互いに接合した状態に形成されている。2枚のシートの接合されている部分、すなわち接合部には、符号10aを付す。接合していない1辺で形成された
図1における上部の開口10bは、被収容物である青果物の入り口であり、青果物の保管及び/または流通の間は、例えば粘着テープなどで封じられる。これにより収容空間が密閉され、密閉系包装とされる。
【0020】
包装袋10は、密閉系包装と開封系包装とのいずれの場合にも使用することができるが、密閉系包装により包装する場合の方が、ウイルス、バクテリア、真菌(カビを含む)及び/またはごみ等による汚染が抑えられるから好ましい。
【0021】
本例ではヒートシールにより2枚のシートを接合しているが、接合手法はヒートシールに限定されず、例えば粘着テープでの貼り合わせなどでもよい。また、包装袋10は2枚のシートの接合によって形成されているが、包装袋はこの態様に限られない。例えば、矩形の1枚のシートの例えば中央で折り、2辺を接合することにより、接合部と折り曲げ部とを有する包装袋としてもよい。
【0022】
包装袋10は使用前に既に袋状に形成してある農産容器であるが、包装するとき、すなわち使用開始時に袋状にされる農産容器であってもよい。このような例としては、例えば少なくとも一部がフィルムで構成され、筒状に形成された農産容器が挙げられ、中空部に被収容物を挿入した後、筒の端部の開口を接合し、袋状にされる。
【0023】
接合した一方のシート(以下、第1シートと称する)はセルロースアシレートフィルム(以下、CAフィルムと称する)11と多孔フィルム12とで構成され、他方のシート(以下、第2シートと称する)はCAフィルム11で構成されている。
図1においては、紙面手前側を第1シート、奥側を第2シートとして描いてある。このように、包装袋10は、CAフィルム11と、多孔フィルム12とを備え、全体がフィルムで形成されている。なお、この例では、接合部10aはCAフィルム12で構成されている。第1シートと第2シートとの両方を、CAフィルム11と多孔フィルム12とで構成してもよい。
【0024】
第1シートにおいて多孔フィルム12は、CAフィルム11に囲まれた概ね中央に配されている。ただし、多孔フィルム12の位置は、この例に限られず、接合部10aにより近い端部、開口10bにより近い位置など、いずれの位置でもよい。多孔フィルム12は、
図1における水平方向を長辺とした長方形である。しかし、多孔フィルム12の形状はこの例に限定されず。例えば、正方形、三角形、五角形などの他の多角形、真円形または楕円形などの円形、不定形、あるいは、例えば一方向に延びたスリット形状などでもよい。なお、本例では、CAフィルム11に多孔フィルム12の外周が重なった状態に、これらをヒートシールにより接合している。しかし、重なりの領域はわずかであるので、
図1においては図示を略してある。
【0025】
CAフィルム11と多孔フィルム12とのそれぞれについて、以下説明する。CAフィルム11はセルロースアシレートで形成されている。セルロースアシレートは、セルロースのヒドロキシ基がカルボン酸でエステル化されたものであるから、アシル基を有する。CAフィルム11はセルロースアシレートを含んで(含有して)おり、包装袋10に含まれるセルロースアシレートのアシル基置換度は、2.00以上2.97以下の範囲内である。
【0026】
青果物が収容された場合には青果物からは水分が放出され、この水分によって包装袋10の内側の空間である収容空間は湿度が上昇する。この湿度の上昇によって、CAフィルム11の平衡含水率が上昇する。この平衡含水率の上昇により、CAフィルム11は水分を吸収する。CAフィルム11の水分の吸収により包装袋10内の湿度は低下し、これによってCAフィルム11は平衡含水率が下がり水分を放出する。CAフィルム11は、アシル基置換度が上記範囲内であるセルロースアシレートを含有するため、適度な吸放湿性を有する平衡含水率をもつ。これにより、青果物を密閉した状態で包装しても、包装袋10は、青果物の渇きが抑制される程度の適度に高い湿度に収容空間を維持した状態で、包装袋10の内側表面である内面に結露が発生することを抑える。さらに、外部空間(外界)の温度及び/または湿度が変化しても、包装袋10の内部の湿度の変化を外界の変化に比べて小さく抑えられる。しかも、結露発生の抑制効果は、冷蔵保存中にも得られ、かつ、例えば14日間といった長期間続く。その結果、カビ等の発生及び増殖も抑えられるし、また、青果物は長期間、新鮮な状態で保存される。また、上記のように適度に高い湿度に維持された環境下にあることと結露の抑制とにより、青果物の変色も抑えられる。包装袋10を育苗用途に用いた場合も同様に、このCAフィルム11により結露が抑えられ、その結果、苗が良好に生育する。さらに、CAフィルム11は高湿度環境下でも強度が維持されるから、包装袋10が高湿度下におかれた場合でも青果物は守られ、育苗の場合にも同様に苗を長期に生育させることができる。
【0027】
アシル基置換度が小さいほど、CAフィルム11は吸収する水分量が上がるので、この吸水により包装袋10は変形しやすい。このため、CAフィルムを構成するセルロースアシレートのアシル基置換度は2.00以上とする。また、アシル基置換度は理論上は3.00が上限となるが、アシル基置換度が2.97を超えるセルロースアシレートは合成が難しい。このため、包装袋10を構成するセルロースアシレートのアシル基置換度は2.97以下とする。
【0028】
CAフィルム11に含まれるセルロースアシレートのアシル基置換度は、2.40以上2.95以下の範囲内がより好ましく、2.70以上2.95以下の範囲内がさらに好ましい。なお、アシル基置換度は、周知の通り、セルロースのヒドロキシ基がカルボン酸によりエステル化されている割合、つまりアシル基の置換度である。
【0029】
セルロースアシレートのアシル基は、特に限定されず、炭素数が1であるアセチル基であってもよいし、炭素数が2以上のものであってもよい。炭素数が2以上であるアシル基としては、脂肪族基でもアリール基でもよく、例えばセルロースのアルキルカルボニルエステル、アルケニルカルボニルエステルあるいは芳香族カルボニルエステル、芳香族アルキルカルボニルエステルなどがあり、これらは、それぞれさらに置換された基を有していてもよい。プロピオニル基、ブタノイル基、ペンタノイル基、ヘキサノイル基、オクタノイル基、デカノイル基、ドデカノイル基、トリデカノイル基、テトラデカノイル基、ヘキサデカノイル基、オクタデカノイル基、iso−ブタノイル基、t−ブタノイル基、シクロヘキサンカルボニル基、オレオイル基、ベンゾイル基、ナフチルカルボニル基、シンナモイル基などを挙げることが出来る。セルロースアシレートとしては、市販のものを使用することもできる。具体的には、セルロースアセテートプロピオネートであるCAP−482−20(イーストマンケミカルジャパン(株)社製)、セルロースアセテートブチレートであるCAB−381−20(イーストマンケミカルジャパン(株)社製)、などが挙げられる。
【0030】
セルロースアシレートのアシル基は1種類だけでもよいし、2種類以上であってもよいが、少なくとも1種がアセチル基であることが好ましい。アセチル基を有するセルロースアシレートであることにより、水分をより吸収しやすいため、結露の抑制効果等がより向上する。最も好ましくはアシル基がすべてアセチル基であるセルロースアシレートであること、すなわち、セルロースアシレートがセルロースアセテートであることが最も好ましい。
【0031】
アシル基置換度は、慣用の方法で求めることができる。例えば、アセチル化度(アセチル基置換度)は、ASTM International(米国試験材料協会,旧称はAmerican Society for Testing and Materials)の規格であるASTM:D−817−91(セルロースアセテート等の試験方法)におけるアセチル化度の測定および計算に従って求められる。また、高速液体クロマトグラフィーによるアシル化度(アシル基置換度)分布測定によっても測定できる。この方法の一例としてセルロースアセテートのアセチル化度測定は、試料をメチレンクロライド(ジクロロメタンとも呼ばれる)に溶解し、カラムNova−Pak(登録商標) phenyl(WatersCorporation製)を用い、溶離液であるメタノールと水との混合液(メタノール:水の質量比が8:1)からジクロロメタンとメタノールとの混合液(ジクロロメタン:メタノールの質量比が9:1)へのリニアグラジエントによりアセチル化度分布を測定し、アセチル化度の異なる標準サンプルによる検量線との比較で求める。これらの測定方法は特開2003−201301号公報に記載の方法を参照して求めることができる。セルロースアシレートのアセチル化度の測定は、CAフィルム11が添加剤を含んで(含有して)いる場合には、高速液体クロマトグラフィーによる測定が好ましい。
【0032】
本実施形態ではCAフィルム11を周知の溶液製膜方法によりつくっており、上記範囲のアシル基置換度を有するセルロースアシレートは、CAフィルム11をつくるために可塑剤が添加されることが好ましい。セルロースアシレートの可塑剤としては公知の種々のものを用いることができ、可塑剤を用いても結露は抑制され、加えて、青果物の変色も抑えられる。例えば、トリフェニルアセテート(TPP)とビフェニルジフェニルフォスフェート(BDP)とを、上記範囲のアシル基置換度を有するセルロースアシレートとともに含むCAフィルム11を形成し、これによりつくった包装袋10内に青果物を入れて密閉し、5℃に保持した状態で14日間冷蔵保存しても、包装袋の内壁は結露がごくわずかにしか確認されず、抑制されたことが確認されている。また、この保存において、青果物はほとんど変色せず、新鮮な状態が維持されたことも確認されている。このように、結露の抑制の観点では可塑剤は種々のものが用いられる。そして、保存対象が青果物であることに鑑みて、安全性が確認されているものであれば可塑剤は種々の公知のものを用いてよい。
【0033】
CAフィルム11は、アシル基置換度が上記範囲内であるセルロースアシレートに加えて、糖のエステル誘導体と、エステルオリゴマーと、アクリルポリマーとの少なくともいずれかひとつを含んで(含有して)いてもよい。糖のエステル誘導体と、エステルオリゴマーとは、アシル基置換度が上記範囲内であるセルロースアシレートの可塑剤として機能する。
【0034】
糖のエステル誘導体は、単糖のエステル誘導体と多糖のエステル誘導体とのいずれでもよく、CAフィルム11はこれら両者を含んでもよい。上記の安全性の観点も考慮し、糖としては、グルコース、ガラクトース、マンノース、フルクトース、キシロース、アラビノース等の単糖類、ラクトース、スクロース、ニストース、1F−フラクトシルニストース、スタキオース、マルチトール、ラクチトール、ラクチュロース、セロビオース、マルトース、セロトリオース、マルトトリオース、ラフィノースあるいはケストース、ゲンチオビオース、ゲンチオトリオース、ゲンチオテトラオース、キシロトリオース、ガラクトシルスクロースなどの多糖類が挙げられる。好ましくはグルコース、フルクトース、スクロース、ケストース、ニストース、1F−フラクトシルニストース、スタキオースなどが好ましく、更に好ましくは、スクロース、グルコースである。また、多糖類としてオリゴ糖を用いることもでき、オリゴ糖としては、澱粉、ショ糖等にアミラーゼ等の酵素を作用させて製造されるものであり、オリゴ糖としては、例えば、マルトオリゴ糖、イソマルトオリゴ糖、フラクトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、キシロオリゴ糖が挙げられる。
【0035】
上記単糖、多糖類構造中のOH基のすべてもしくは一部をエステル化するのに用いられるモノカルボン酸としては、特に制限はなく、公知の脂肪族モノカルボン酸、脂環族モノカルボン酸、芳香族モノカルボン酸等を用いることができる。用いられるカルボン酸は1種類でもよいし、2種以上の混合であってもよい。
【0036】
好ましい脂肪族モノカルボン酸としては、酢酸、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、2−エチル−ヘキサンカルボン酸、ウンデシル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、ヘプタデシル酸、ステアリン酸、ノナデカン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、ヘプタコサン酸、モンタン酸、メリシン酸、ラクセル酸等の飽和脂肪酸、ウンデシレン酸、オレイン酸、ソルビン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸、オクテン酸等の不飽和脂肪酸、シクロペンタンカルボン酸、シクロヘキサンカルボン酸、シクロオクタンカルボン酸、等の脂環族モノカルボン酸等を挙げることができる。
【0037】
好ましい芳香族モノカルボン酸の例としては、安息香酸、トルイル酸等の安息香酸のベンゼン環にアルキル基、アルコキシ基を導入した芳香族モノカルボン酸、ケイ皮酸、ベンジル酸、ビフェニルカルボン酸、ナフタリンカルボン酸、テトラリンカルボン酸等のベンゼン環を2個以上有する芳香族モノカルボン酸、又はそれらの誘導体を挙げることができ、特に安息香酸、ナフチル酸が好ましい。
【0038】
エステルオリゴマーは、ジカルボン酸とジオールとのエステル結合が含まれる繰り返し単位をもち繰り返し単位が数個〜100個程度の比較的分子量が低い化合物であり、脂肪族エステルオリゴマーであることが好ましい。セルロースアシレートの可塑剤としての作用が、芳香族エステルオリゴマーよりも確実だからである。
【0039】
エステルオリゴマーは、分子量が500以上10000以下の範囲内であることが好ましい。分子量が500以上であることにより、500未満であることに比べて、CAフィルム11の可撓性(フレキシブル性)及び/またはヒートシール性が向上し、分子量が10000以下であることにより、10000よりも大きい場合に比べてセルロースアシレートとの相溶性が確実だからである。エステルオリゴマーの分子量は、700以上5000以下の範囲内であることがより好ましく、900以上3000以下の範囲内であることがさらに好ましい。
【0040】
エステルオリゴマーの上記分子量は、分子量分布を持つため、GPC(Gel Permeation Chromatography、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ)による重量平均分子量及び/または数平均分子量、末端官能基量測定及び/または浸透圧測定による数平均分子量測定法、粘度測定による粘度平均分子量などで求めることができる。本実施形態では、末端官能基としてエステルの水酸基もしくは酸基を測定することによる数平均分子量測定法により求めている。
【0041】
エステルオリゴマーは、ジカルボン酸としては炭素数が2以上10以下の範囲内であるジカルボン酸、ジオールとしては、炭素数が2以上10以下の範囲内であるジオールであることがより好ましい。特にジカルボン酸、ジオールともに脂肪族化合物であることが好ましい。これは、脂肪族ジカルボン酸と脂肪族ジオールとを用いることにより、CAフィルム11に柔軟性を付与することができ、含水率がより好ましくなるからである。なお、本実施形態では、含水率は、測定対象物を25℃、相対湿度80%または55%で24時間調湿した後に、500mgをサンプリングし、サンプリングしたサンプルを平沼産業製のカール フィッシャー水分計 AQ−2200で求めている。ジカルボン酸として芳香族カルボン酸として、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸など、脂肪族カルボン酸としては、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、マレイン酸、フマル酸等が挙げられる。脂肪族ジオールとしては、エタンジオール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール(ネオペンチルグリコール)、1,4−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等が挙げられる。エステルオリゴマーの末端水酸基及び/または酸基をモノカルボン酸またはモノアルコールなどにより封止することも好ましい。これらのうち、アジピン酸とエチレングリコールとのエステルを繰り返し単位とするオリゴマー、コハク酸とエチレングリコールとのエステルを繰り返し単位とするオリゴマー、テレフタル酸とエチレングリコールとのエステル及びフタル酸とエチレングリコールとのエステルとを繰り返し単位とするオリゴマーなどが好ましい。
【0042】
単糖のエステル誘導体の質量をM1とし、多糖のエステル誘導体の質量をM2とし、エステルオリゴマーの質量をM3とし、M1+M2+M3で求める質量の和(以下、質量和と称する)をMPとする。CAフィルム11は、単糖のエステル誘導体と多糖のエステル誘導体とエステルオリゴマーとの少なくともいずれかひとつを含む場合には、セルロースアシレートの質量を100とするときに、質量和MPが5以上30以下の範囲内であることが好ましい。質量和MPが5以上であることにより、5未満である場合に比べて、CAフィルム11の可撓性が良い、及び/または、CAフィルム11がつくりやすい。質量和MPが30以下であることにより、30よりも大きい場合に比べて、CAフィルム11の含水率がより好ましくなる。
【0043】
CAフィルム11は、添加剤として、可塑剤の他に、紫外線吸収剤、CAフィルム11同士の貼り付きを防止するいわゆるマット剤としての微粒子等なども、上記の安全性が確認されているものならば含んで(含有して)いて構わない。添加剤の種類と量とを調節することによりCAフィルム11の含水率を調整することができ、その結果、包装袋10内は、青果物が収容されている間における湿度が調整されるから、結露に加えて、青果物の渇きも抑えられる。
【0044】
アクリルポリマー(アクリル樹脂)は、CAフィルム11の含水率及び/または可撓性の調整剤として機能する。アクリルポリマーとしては、例えば、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、及びこれらのアクリル酸またはメタクリル酸との共重合体などが好ましい。CAフィルム11がアクリルポリマーを含む場合には、アクリルポリマーの質量は、セルロースアシレートの質量を100とするときに、10以上300以下の範囲内であることが好ましい。
【0045】
なお、糖のエステルとエステルオリゴマーとアクリルポリマーとに関し、これらの各安全性は、下記の文献にそれぞれ記載されている。すなわち、糖のエステルに関しては、有機合成化学協会誌Vol.21(1963)No.1、P-19-27と、第一工業製薬(株)カタログ、特開2011−237764号公報等である。第一工業製薬(株)カタログには糖の脂肪酸エステルと安息香酸エステルとについて記載されている。エステルオリゴマーに関しては、塩化ビニルへの添加剤として塩化ビニルへの移行が抑えられることを含めて、塩ビ工業・環境協会のホームページと、可塑剤工業会資料などに記載され、セルローストリアセテートとのブレンドを含めて、特開2009−173740号公報に記載されている。アクリルポリマーに関しては、特開2003−12859号公報、特開2011−154360号公報に記載されている。なお、安全性は、上記物質それ自体のみならず、上記物質の分解物の安全性も含む。
【0046】
CAフィルム11の厚みは、15μm以上300μm以下の範囲内が好ましい。厚みを調節することによりCAフィルム11の含水率を調整することができ、その結果、青果物を収容している間における包装袋10内の湿度が調整されるから、結露が抑制され、さらには青果物の渇きも抑制される。また、育苗用途に用いた場合も同様に結露が抑制される。また、厚みを大きくすることで、より大きなサイズの包装袋の態様でも、使用に耐えられる。CAフィルム11の厚みは、20μm以上200μm以下の範囲内がより好ましく、30μm以上120μm以下の範囲内がさらに好ましい。
【0047】
青果物は水分放出及び/または呼吸作用といった生理作用を維持している。そのため、青果物は、包装袋10を使用した場合における結露の抑制が顕著にみられ、さらには被収容物の渇きの抑制効果も顕著にみられやすい。このような青果物として、ブロッコリ、ナバナなどの花菜類、ホウレンソウ、コマツナなどの葉菜類、ニンニク、アスパラガスなどの茎菜類、ピーマン、ナス、トマト、キュウリ、イチゴ、エダマメなどの果菜類、バナナ、ブドウ、リンゴ、ナシ、ミカンなどの果実類、ナガイモ、ゴボウなどの根菜類、シイタケ、シメジのようなキノコ類、および菊、ユリのような切り花等が挙げられる。これらのうち、水分の放出が特に多い、冷蔵での長期の貯蔵及び流通の間の結露が目立つなどの理由から、花菜類、葉菜類、果菜類、キノコ類、切り花等で包装袋10を特に好ましく用いることができる。なお、上記の青果物の分類は、日本標準商品分類に基づいている。
【0048】
CAフィルム11によって、包装袋10は、青果物の常温保存では結露さらには変色が抑制され、冷蔵時においても結露さらには変色を防止し、長期に青果物を保管することができる。結露が抑制されるからカビ等も抑制される。常温保存は10℃より高く30℃以下の範囲、冷蔵保存は0℃以上10℃以下の範囲での保存をいう。
【0049】
青果物の鮮度保持には冷蔵保存することが好ましい。CAフィルム11の平衡含水率によりCAフィルム11は収容空間の湿度変化に応じて吸放湿するため、結露を防止し、さらには、青果物の渇きを抑える湿度に維持する。
【0050】
多孔フィルム12は、
図2に示すように、複数の孔15a,15b,・・・,15g,15h,・・・が形成されている。なお、以降の説明において、孔15a,15b,・・・,15g,15h,・・・を区別しない場合には、単に孔15と称する。形成されている複数の孔15の平均孔径は、0.0050μm以上5.0μm以下の範囲内である。平均孔径は、0.0010μm以上4.5μm以下であることがより好ましく、0.0020μm以上2.0μm以下であることがさらに好ましい。平均孔径は、POROUS MATERIALS社(米国)製のパームポロメーターによる平均孔径、日本工業規格JIS K3802 1029に示される公称孔径(一例として粒子径の均一な標準ラテックスを用いた95%粒子除去が可能な孔径)等により求めることができる。本例では、これらのうち、パームポロメーターによる平均孔径で求めている。なお、多孔フィルム12として市販品を用いる場合には、カタログ値でもよい。
【0051】
複数の孔15a〜15dは、多孔フィルム12の厚み方向に貫通した状態に形成されており、厚み方向において連通している。上記範囲内の平均孔径をもつ孔15が厚み方向に貫通した状態に形成されていることにより、二酸化炭素及び酸素がこれらの孔15を通過し、ガス交換がなされる。そのため、包装袋10の内部では、例えば二酸化炭素の過度な高濃度化が抑えられるなどにより、青果物の呼吸が制御されたり、変色が抑えられる。育苗用途に用いた場合も同様に、苗の呼吸に作用するガスが多孔フィルム12を介してガス交換されるから、苗が良好に生育する。上記範囲内の平均孔径をもつ孔15が厚み方向に貫通した状態に形成されている多孔フィルムは、例えば相分離法によりつくることができる。多孔フィルムは、ポリエチレンまたはポリプロピレン等の不織布を熱融着する方法、フィルム材料を化学処理またはエッチング等により連通孔を形成する方法によってもつくることができる。これらの形成方法のうち、相分離法は多孔フィルムの厚み方向の孔15の体積割合を高くすることができる。相分離法は、さらに、厚み方向の孔15の体積割合を高くしても多孔フィルムの強度が維持でき、そのため、多孔フィルムに対し圧力などがかかった場合に孔15がつぶれにくく、その結果、二酸化炭素及び酸素の孔15を通したガス交換効率が高くなるので、青果物の保管及び育苗の効果を安定に維持することができる。
【0052】
図2においては、孔15eと孔15fとは多孔フィルム12の概ねフィルム面に沿った方向で連通しているが、これら2個の孔15e,15fを含めた5個の孔15a,15b,15e,15f,15gに着目した場合には、厚み方向で貫通している。このように、複数の孔15は、連通していることにより包装袋10の外側の一方のフィルム面(以下、第1多孔面と称する)12Aと内側の他方のフィルム面(以下、第2多孔面と称する)12Bとの一方から他方に向かって貫通していればよく、孔15同士のすべての連通方向が厚み方向でなくてもよい。また、形成されている複数の孔15の中には、他の孔15と連通しない状態、すなわちひとつの空隙として区画された状態に存在している孔があってもよい。
【0053】
厚み方向に貫通した状態に形成された複数の孔15の平均孔径が0.0050μm以上であるから、0.0050μm未満の場合と比べて、包装袋10内の各ガスの濃度の過度な変化が確実に抑えられる。また、平均孔径が5.0μm以下であるから、5.0μmより大きい場合に比べて、各ガスの濃度が青果物の保存または育苗する苗の呼吸に適した範囲にされる。また、平均孔径が0.0050μm以上5.0μm以下の範囲内であることにより、ウイルス(大きさは概ね0.03μm以上0.1μm以下の範囲)、バクテリア(大きさは概ね0.2μm以上5μm以下の範囲)、及び/または、真菌(カビを含む)(大きさは概ね5μm以上12μmの範囲)などの入り込みが抑えられる。例えば、平均孔径が1.2μmである場合には真菌の入り込みが抑えられ、0.20μmである場合にはバクテリアの入り込みが抑えられ、0.030μmである場合にはウイルスの入り込みが抑えられる。その結果、収容されている青果物が鮮度よく保存され、育苗用途に用いた場合には苗の病害を防ぐことができる。さらに上記範囲の平均孔径をもつ複数の孔15が厚み方向に連通した状態に形成されているから、上記のように各ガスの濃度の制御性を確保しながらも、ウイルス、バクテリア、及び/または真菌の入り込みがより確実に抑えられる。
【0054】
多孔フィルム12の素材は農産物が放出する水分により孔15が塞がらない程度の疎水性であれば特に限定されない。例えば、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリビニリデンフルオライド、ポリテトラフルオロエチレン、セルロースアシレート等であり、本例ではポリスルホンとしている。
【0055】
多孔フィルム12としては、市場に流通している流通品を用いてもよい。例えば、富士フイルム(株)製ミクロフィルタ アストロポア(登録商標) PSS03のカートリッジに組み込まれている平均孔径0.030μmのフィルタ、PSEカートリッジに組み込まれている平均孔径0.20μmのフィルタ、PSEカートリッジに組み込まれている平均孔径1.2μmのフィルタ(以上のフィルタの素材はポリスルホン)、FLカートリッジに組み込まれている平均孔径0.45μmのフィルタ(素材はポリテトラフルオロエチレン)、PPEカートリッジUXLに組み込まれている平均孔径4.5μmのフィルタ(ポリプロピレンで構成されている不織布)、メルク(株)製VITIPORE(登録商標)IIカートリッジに組み込まれている平均孔径0.65μmのフィルタ(素材はポリビニリデンフルオライド)、ポール(株)製スーポア(登録商標)カートリッジに組み込まれている平均孔径0.20μmのフィルタ(素材はポリエーテルスルホン)などを用いることができる。
【0056】
包装袋10は、CAフィルム11の面積割合SR11が少なくとも10.0%であることが、結露をより確実に抑えるので好ましい。面積割合SR11は、10.0%以上99.9%以下の範囲内であることがより好ましく、15.0%以上99.5%以下の範囲内であることがさらに好ましく、25.0%以上99.2%以下の範囲内であることが特に好ましい。
【0057】
包装袋10は、多孔フィルム12の面積割合SR12が0.1%以上20.0%以下の範囲内であることが、収容空間の各ガス濃度の制御の観点で好ましい。面積割合SR12は、0.3%以上15.0%以下の範囲内であることがさらに好ましく、0.5%以上10.0%以下の範囲内であることが特に好ましい。
【0058】
面積割合SR11と面積割合SR12とは、それぞれ以下の方法で求める。包装袋10のうち、青果物を収容する内部の収容空間と、外部空間とを隔てる隔壁の全表面積をSAとし、
図3に示すように、隔壁のうちCAフィルム11の面積をS11とし、多孔フィルム12の面積をS12とする。接合部10a(
図1参照)は収容空間と外部空間とを隔てる隔壁としては機能しないから、接合部10aの面積は、面積S11と面積S12とのいずれにも算入しない。そのため、
図3においては二点破線で示す接合部10aの領域には、符号S11及び符号S12の面積を示すハッチングは描いていない。なお、本例では、前述のようにCAフィルム11と多孔フィルム12の外周部とが重なった重なり領域がある。このように両者の重なり領域がある場合には、重なり領域を除いて、すなわち無視し、面積S11及び面積S12とする。すなわち、CAフィルム11のみの部分の面積をS11とし、多孔フィルム12のみの部分をS12とする。なお、
図3では
図1と同様にCAフィルム11と多孔フィルム12との重なり領域を描いていない。また、全表面積SA,面積S11,面積S12は、包装袋10の内側(収容空間側)での表面積、すなわち内表面の面積である。面積割合SR11(単位は%)は、(S11/SA)×100で求める。面積割合SR12(単位は%)は、(S12/SA)×100で求める。なお、この例での包装袋10の隔壁はCAフィルム11と多孔フィルム12とだけで構成されているから、全表面積SAは面積S11と面積S12との和(S11+S12)である。
【0059】
包装袋は、CAフィルム11及び多孔フィルム12に加えて、他のフィルムを備えていてもよい。
図4に示す包装袋30は、包装袋10と同様に全体がフィルムで構成されており、CAフィルム11と多孔フィルム12とポリプロピレンフィルム(以下、PPフィルムと称する)31とを備える。PPフィルム31は、CAフィルム11と多孔フィルム12とのいずれとも異なるフィルムの一例であり、ポリプロピレンで形成されている。PPフィルム31には、多孔フィルム12のような孔15は形成していない。第1シートはCAフィルム11と多孔フィルム12とPPフィルム31とで構成され、第2シートはPPフィルム31で構成されている。
図4においては、
図1と同様に、紙面手前側を第1シート、奥側を第2シートとして描いてある。第1シートと第2シートの少なくともいずれか一方が、PPフィルム31と異なるフィルムをさらに備えていてもよい。第2シートは、CAフィルム11と多孔フィルム12との少なくともいずれか一方を備えていてもよい。なお、
図4においては、
図1と同じ部材には
図1と同じ符号を付し、説明を略す。
【0060】
第1シートにおいてCAフィルム11は、
図3の上側領域を構成し、多孔フィルム12及びPPフィルム31は下側領域を構成しているが、CAフィルム11と、多孔フィルム12及びPPフィルム31とのそれぞれが構成する領域及び互いの位置関係はこの例に限られない。多孔フィルム12は、PPフィルム31に囲まれた状態に配されているが、多孔フィルム12とPPフィルム31との位置関係はこれに限定されず、例えばPPフィルム31と多孔フィルム12とが
図3における左右、上下、あるいは斜めのいずれかの方向において領域を分かつ状態に配されていてもよい。また、多孔フィルム12はPPフィルム31に囲まれた状態に配されているが、この態様に限られない。例えば、
図4における上側のCAフィルム11に囲まれた状態で配されてもよい。また、この例では、多孔フィルム12は2枚配されているが、3枚以上であってもよいし、包装袋10のように1枚であってもよい。このように多孔フィルム12の枚数は特に限定されない。
【0061】
PPフィルム31は、農産物が放出する水分により変形がおきない程度の疎水性の素材で形成されているフィルムとして使用しており、そのような疎水性をもつ素材で形成されていれば他のフィルムでもよい。例えば、ポリエチレンで形成されたポリエチレンフィルム、ポリエチレンテレフタレートなどで形成されたポリエチレンテレフタレートフィルムなどを用いることができる。
【0062】
第1シートにおけるCAフィルム11とPPフィルム31、及び、多孔フィルム12とPPフィルム31とは、互いに重なりをもって接合されているが、重なり領域の幅はごくわずかであるので
図4においては図示を略してある。CAフィルム11とPPフィルム31との接合、及び、多孔フィルム12とPPフィルム31の接合は、例えばヒートシールによって行うことができる。
【0063】
包装袋30において、CAフィルム11の面積割合、及び多孔フィルム12の面積割合の好ましい範囲は、包装袋10の場合と同様である。ここで、
図5に示すように、収容空間と外部空間とを隔てる隔壁のうち、PPフィルム31の面積をS31とする。なお、面積S31は
図5においてクロスハッチングで示しており、面積S31も全表面積SA、面積S11、及び面積S12と同様に、収容空間側の表面積である。この例における全表面積SAはS11+S12+S31であり、これを、面積割合SR11及び面積割合SR12のそれぞれの前述の算出式に用いる。このように、CAフィルム11と多孔フィルム12と異なる他のフィルムを用いた場合には、そのフィルムの面積を全表面積SAに算入するとよい。包装袋30も包装袋10と同様に、農産物を包装する場合に限られず、農業での生産の場合にも用いることができる。
【0064】
農産容器は、袋状に限定されず、例えば箱状でもよい。また、農産容器は、フィルム以外の部材を備えていてもよい。
図6に示す農産容器の一例である包装箱50は、包装袋10,30と同様に農産物を収容する。本例では農産物として青果物を収容しているが、
図6においては青果物の図示は略してある。なお、
図6において
図1と同じ部材には
図1と同じ符号を付し、説明を略す。
【0065】
包装箱50は、
図6に示すように上部開放の箱状に形成された収容部材51と、天面に配されたCAフィルム11と、収容部材51に設けられた多孔フィルム12と備える。なお、
図6においてはCAフィルム11の厚みを、収容部材51の厚みに対して誇張して大きく描いてある。収容部材51は、底面部としての底板52と、底板52に対して起立した姿勢で設けられた側面部としての4枚の側板53a〜53dとを有する。なお、側板53a〜53dを区別しない場合には、以下、側板53と称する。収容部材51は、ポリプロピレンで形成しているが、収容部材51の素材は農産物が放出する水分により変形がおきない程度の疎水性であれば特に限定されない。ポリプロピレン以外の素材としては、例えば、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリスチレンなどを用いることができる。
【0066】
底板52の形状は長方形としているが、長方形に限られない。底板52は、長方形以外の例えば正方形などの他の矩形であってもよいし、円形(真円形または楕円形)であってもよく、形状は特に限定されない。側板53a〜53dのうち向かい合った姿勢で配された側板53aと側板53cとのそれぞれには開口56が複数形成されており、多孔フィルム12はこれら複数の開口56を覆う状態に、側板53aと側板53cとに設けられている。これにより、開口56においては多孔フィルム12が、青果物を収容する収容空間と外部空間とを隔てる隔壁として機能する。このように、包装箱50は、収容空間と外部空間とを隔てる隔壁の一部がフィルムとされており、包装袋10,30のように隔壁のすべてがフィルムで形成されていなくてもよい。すなわち、包装容器の少なくとも一部がフィルムで形成されていればよい。
【0067】
開口56は、側板53aと側板53cとにそれぞれ形成してあるが、いずれか一方でもよい。ただし、包装箱50の収容空間のガス交換をより効果的にする観点では、互いに対向している側板53aと側板53cとの両方に形成することがより好ましい。なお、開口56は、側板53aと側板53cとに形成する代わりに、側板53bと側板53dとに形成してもよいし、すべての側板53a〜53dのうち少なくとも3枚の側板53に形成してもよい。
【0068】
開口56の位置は、
図6の上下方向における上寄りにしているが、これに限定されず、
図6の上下方向での下寄りあるいは中央にしてもよい。また、この例では奥行き方向に並んだ態様で複数の開口56を形成しているが、上下方向に複数並んだ態様で形成してもよいし、不規則な配置であってもよい。
【0069】
この例では、多孔フィルム12は、側板53aと側板53cとの各外部空間側の表面(外表面)に設けられているが、収容空間側の表面に設けてもよい。開口56は径が例えば8mmなどの円形としているが、形状は多角形、不定形、スリット状など特に限定されず、多孔フィルム12の前述の各作用を損なわないように、多孔フィルム12の孔15よりも大きければよい。側板53aと側板53cとのそれぞれにおける開口56の個数は、
図6においては4個として描いているが、特に限定されず、1〜3個でもよいし5個以上でもよい。
【0070】
CAフィルム11は、包装箱50の天面部として収容部材51の上部に設けられているが、CAフィルム11は収容部材51の一部を置き換えた状態で例えば側面部として設けてもよい。例えば、CAフィルム11を、開口56を覆う状態に側板53に設けてもよく、その場合には、多孔フィルム12を天面部の一部として設けてもよい。このように、CAフィルム11と多孔12とは、収容空間と外部空間とを隔てる隔壁として機能するならば包装箱50のいずれの位置でもよい。したがって、天面部のCAフィルム11の一部を多孔フィルム12に置き換えてもよい。
【0071】
包装箱50において、CAフィルム11の面積割合、及び多孔フィルム12の面積割合の好ましい範囲は、包装袋10の場合と同様である。ここで、
図7に示すように、収容空間と外部空間とを隔てる隔壁のうち、収容部材51の面積をS51とする。なお、面積S51は
図7においてクロスハッチングで示しており、面積S51も全表面積SA、面積S11、面積S12、及び面積S31と同様に、収容空間側の表面積である。この例における全表面積SAはS11+S12+S51であり、これを、面積割合SR11及び面積割合SR12のそれぞれの前述の算出式に用いる。このように、CAフィルム11と多孔フィルム12と異なる他のフィルム及び/または部材を用いた場合には、そのフィルム及び/または部材の面積を全表面積SAに算入するとよい。なお、全表面積SA,面積S11,面積S12は、この例においても収容空間側での表面積、すなわち内表面の面積であるから、
図7は内表面側を展開した図としている。
【0072】
包装箱50は、包装袋10及び包装袋30と同様に、農産物を包装する場合に限られず、農業での生産する場合にも用いることができる。例えば苗を生育させる育苗箱に用いることができ、その場合には、生育後の苗が収容できるように、苗の生育後の大きさを考慮した大きさにすることが好ましい。
図8に示す育苗装置69は、農産容器としての育苗箱70と、光源ユニット71とを備える。
【0073】
育苗箱70は、包装箱50よりも大きく形成しており、開口56の位置及び数、多孔フィルム12の大きさが、包装箱50と異なるが、その他の構成は包装箱50と同様である。包装箱50と同じ構成及びその作用については説明を略す。なお、
図8においては、紙面手前側の側板53d(
図6参照)については図示を略してある。被収容物は、苗床74と生育対象の苗75とであり、苗75はプラグ苗よりも小さい苗であり、より具体的には高さが1cm以上8cm以下、及び/または葉数が2枚以上5枚以下である。苗75は種苗の一例であり、したがって苗75の代わりに種(図示無し)であってもよく、種の場合には、育苗装置69は発芽と苗の生育(育苗)とを行う。
【0074】
本例の苗75は、小松菜の苗であるが、苗は小松菜に限られず、小松菜以外の葉菜類の苗、または果菜類の苗でもよい。果菜類としての例は、ナス、ピーマン、パプリカ、キュウリ、エダマメ、トウモロコシ、トマト、イチゴ等が挙げられる。葉菜類のその他の苗としては、例えば、キャベツ、レタス、ブロッコリ、セロリ、ホウレンソウ、シソなどの苗が挙げられる。
【0075】
苗75の数は、この例では複数としているが、複数に限定されず、1個であってもよい。また、複数の苗75のそれぞれは、互いに別の苗床74に植えられているが、ひとつの苗床74に植えられている苗75の数は特に限定されない。苗床74は、水平方向において正方配列しており、列数(
図8における左右方向での数)は、この例では5列であるが、この例に限定されず、1列以上4列以下の範囲内でもよいし、あるいは6列以上であってもよい。図中、列方向には矢線Xを付し、水平方向において列方向Xと直交する行方向には矢線Yを付し、上下方向には矢線Zを付す。苗床74の行数(行方向Yでの数)は、本実施態様では例えば1行、2行、または10行としている。なお、苗床74の行数はこの例に限定されず、3行以上9行以下の範囲内、または11行以上であってもよい。
【0076】
複数の苗床74の水平方向における配置態様は正方配列に限定されず、正方配列以外の規則的な配置態様でもよいし、不規則(ランダム)配置でもよい。また、この例では、複数の苗床74を互いにわずかな隙間をもって離れた状態に配しているが、苗床74同士は接した状態で配してもよい。
【0077】
この例では、さらに容器76を被収容物として収容している。容器76は、上部が開放されており、水77及び苗床74が入れられる。これにより、苗床74の少なくとも下部が水77に浸漬した状態にされる。この浸漬により、苗75に水が供給される。苗床74は、公知の材料であればよく、例えば、土、スポンジ、または繊維状物などである。本実施形態では、ロックウールを苗床74として用いており、具体的にはロックウール社(Rockwool B.V.オランダ)製のGrodan(登録商標)ロックウールキューブである。なお、育苗装置69は水耕栽培により苗75を育てる装置であるが、苗生産装置による栽培方式は水耕栽培に限定されない。他の栽培方式としては、例えば、土耕栽培、養液栽培、または高設栽培が挙げられ、苗床74は栽培方式に応じたものに変えればよい。
【0078】
光源ユニット71は、苗床74及び/または苗75に光を照射するためのものである。種を発芽させる場合の発芽前においては、光源ユニット71は苗床74に光を照射するためのものである。光源ユニット71は、光を射出する複数の光源81と、支持板82と、コントローラ83とを備え、光源81及び支持板82は育苗箱70の上方に配されている。支持板82は、複数の光源81を支持する支持部材の一例であり、この例では、育苗箱70と対向する対向面である下面に各光源81が設けられている。コントローラ83は、複数の光源81の各々から射出する光の量を調節する第1の機能と、複数の光源81の各々のオンオフ制御を行う第2の機能とをもつ。第1の機能により、苗75または苗床74に対する光の照射量が調節される。第2の機能により、苗75の種類及び/または生育の程度などに応じて、光の照射のタイミング及び照射時間が調節される。このように、光源81は、コントローラ83によって制御された光を苗75または苗床74に照射する。これにより苗75が生育し、種の場合には発芽する。光源81の育苗箱70からの距離は、本例では概ね100mmとしているが、この例に限定されない。
【0079】
育苗箱70は、温湿度調節機86を有する。温湿度調節機86は、育苗箱70の内部の温度及び湿度を調節することにより、苗75の生育環境を調節する。育苗箱70の内部の温度は、特に限定されないが、好ましくは10.0℃以上40.0℃以下の範囲内である。本例では20.0℃に設定し、これにより17.5℃以上22.5℃以下の範囲で変動していることが確認されている。育苗箱70の内部の湿度は、特に限定されないが、好ましくは50.0%以上80.0%以下の範囲内の相対湿度である。本例では、40.5%以上91.0%以下の範囲内におさめている。
【0080】
育苗箱70の天面に配されているCAフィルム11はセルロースアシレートで形成されているから透明である。そのため、育苗箱70の上方に配した光源81からの光は苗75及び/または苗床74に効果的に照射され、苗の生育をより促す。このように、光源81とCAフィルム11とが互いに対向する位置関係に両者を配することが好ましい。
【0081】
育苗箱70は、生育後における苗75の高さを考慮し、生育後の苗75を収容できる高さにしている。開口56は、側板53a及び側板53cの上下方向Zにおける中央に形成している。育苗箱70の側面を成す側板53に多孔フィルム12は設けられているから、多孔フィルム12は苗床74に対しても起立した姿勢で設けられていることになる。これにより、育苗箱70の収容空間において苗床74上の空間は、多孔フィルム12によりガス交換がより確実に行われ、その結果、苗75の呼吸がより確実に制御される。
【0082】
以下、本発明の実施例と、本発明に対する比較例とを挙げる。
【実施例】
【0083】
[実施例1]〜[実施例9]
収容部材51にCAフィルム11を貼り付けることにより包装箱50をつくり、実施例1〜実施例9とした。面積S11と底板52の収容空間側の面積とは8cm×17.5cm(=140cm
2)であり、包装箱50の収容空間の高さは5.5cmであった。側板53a及び側板53cには、径が8mmの開口56をパンチングにより形成し、開口56を覆う状態に多孔フィルム12を側板53a及び側板53cに貼り付けた。なお、面積S12は、形成する開口56の個数で調節した。
【0084】
なお、CAフィルム11は、溶液製膜方法により、1.5mの幅、及び40μmの厚みに製造し、2000mの長さを巻取機17により巻き取った。ドープの処方は下記の通りである。下記の固形分とは、CAフィルム11を構成する固体成分である。
固形分の第1成分 100質量部
固形分の第2成分 15質量部
固形分の第3成分 1.3質量部
ジクロロメタン(溶媒の第1成分) 635質量部
メタノール(溶媒の第2成分) 125質量部
【0085】
固形分の第1成分は、セルロースアシレートであり、このセルロースアシレートは、すべてのアシル基がアセチル基であり、粘度平均重合度が320であり、アシル基置換度は2.86であった。
【0086】
固形分の第2成分は、可塑剤であり、用いた可塑剤は、アジピン酸とエチレングリコールとのエステルを繰り返し単位とするオリゴマー(末端官能基定量法による分子量は1000)であった。固形分の第3成分は、シリカの微粒子であり、日本アエロジル(株)製のR972であった。
【0087】
溶液製膜方法に用いるドープは、以下の方法でつくった。まず、固形分の第1成分と、第2成分と、ジクロロメタンとメタノールとの混合物である溶媒とをそれぞれ密閉容器に投入し、密閉容器内で40℃に温度を保持した状態で攪拌することにより、固形分の第1成分と第2成分とを溶媒に溶解した。固形分の第3成分をジクロロメタンとメタノールとの混合物に分散し、得られた分散液を、固形分の第1成分と第2成分とが溶解している溶液が入っている上記密閉容器に入れ、分散した。このようにして得られたドープは、静置した後に、30℃に温度を維持した状態でろ紙によりろ過し、その後、脱泡処理をしてから、溶液製膜装置での流延に供した。ろ過に用いたろ紙は、アドバンテック東洋(株)製の生産用ろ紙No.63であった。
【0088】
流延ダイから30℃のドープを、長手方向に移動する長尺のベルトに流延し、流延膜を形成した。形成直後の流延膜に、送風機により100℃の空気を当て、乾燥した流延膜を剥取ローラによりベルトから剥ぎ取った。剥取位置におけるベルトの温度は10℃であった。流延膜は形成してから120秒後に剥ぎ取った。剥取位置における流延膜の溶媒含有率は100質量%であった。剥ぎ取りは、150N/mの張力で行った。この張力は、流延膜の幅1m当たりの力である。形成されたCAフィルム11を、ローラ乾燥機に案内し、複数のローラにより長手方向に張力を付与した状態で搬送しながら、乾燥した。長手方向に付与した張力は100N/mであった。この張力は、CAフィルム11の幅1m当たりの力である。ローラ乾燥機は、上流側の第1ゾーンと下流側の第2ゾーンとを有し、第1ゾーンは80℃、第2ゾーンは120℃に設定した。CAフィルム11を第1ゾーンで5分間搬送し、第2ゾーンで10分間搬送した。巻取機により巻き取られたCAフィルム11の溶媒含有率は0.3質量%であった。得られたCAフィルムの透湿度(40℃、相対湿度90%)は、870g/m
2・dayであった。透湿度は、日本工業規格JIS Z−0208に基づいて評価した。
【0089】
全表面積SA、収容空間の体積V、用いたCAフィルム11及び多孔フィルム12などの諸条件は、表1に示す。表1及び後述の表2,表3の「多孔フィルム」の「種類」欄は、以下を意味する。なお、A〜Cの各多孔フィルム12は、いずれもポリスルホンから形成されており、相分離法を用いて作製されている。
A;富士フイルム(株)製ミクロフィルタ アストロポア(登録商標) PSS03のカートリッジに組み込まれている平均孔径0.030μmのフィルタ
B;富士フイルム(株)製ミクロフィルタ アストロポア(登録商標) PSEカートリッジの孔径2μm品に組み込まれている平均孔径0.20μmのフィルタ
C;富士フイルム(株)製ミクロフィルタ アストロポア(登録商標) PSEカートリッジの孔径1.2μm品に組み込まれている平均孔径1.2μmのフィルタ
D;メルク(株)製VITIPORE(登録商標)IIカートリッジに組み込まれている平均孔径0.65μmのフィルタ
E;富士フイルム(株)製アストロポア(登録商標)PPEカートリッジUXLに組み込まれている平均孔径4.5μmのフィルタ(ポリプロピレン不織布)、
F:ポール(株)製スーポア(登録商標)カートリッジに組み込まれている平均孔径0.20μmのフィルタ(ポリエーテルスルホン)
【0090】
【表1】
【0091】
得られた包装箱50を、ベビーリーフの密閉系包装に供し、結露と、ガスの濃度としての二酸化炭素濃度と、細菌とを評価した。20gのベビーリーフを入れた状態で密閉した包装箱50を、室温(21℃以上24℃以下の範囲)にて5日間静置した。各評価の方法及び基準は以下の通りである。各評価結果は表1に示す。
【0092】
1.結露
上記5日間の静置後、包装箱50内の結露の程度を目視で観察した。評価の基準は以下の通りである。A,Bは合格、Cは不合格である。各評価結果は表1の「結露」欄に示す。
A:結露が認められない。
B:結露は認められるものの、薄く曇っている程度である。
C:水滴が認められる。
【0093】
2.ガスの濃度
包装箱50の内部の側板53dに、(株)T&D社製の二酸化炭素、温度、湿度データロガーおんどとり(登録商標)TR−76Uiを設け、二酸化炭素濃度を測定した。二酸化炭素の濃度は空気全体に対する体積割合である。二酸化炭素の濃度は、一定となった時点の値を表1に示している。
【0094】
3.細菌
上記5日間の静置後、(株)食品微生物センターにおいて細菌検査として一般生菌の検査を実施した。評価の基準は以下の通りである。A,Bは合格、Cは不合格である。各評価結果は表1の「細菌」欄に示す。
A:一般生菌として1000未満であった。
B:一般生菌として1000以上10000未満であった。
C:一般生菌10000以上であった。
【0095】
[比較例1]〜[比較例3]
実施例2の多孔フィルム12を用いずに、側板53a及び側板53cの開口56をポリプロピレン製の板により塞いだ状態でベビーリーフを保管し、比較例1とした。実施例2のCAフィルム11の代わりにポリエチレンテレフタレート製のフィルムを用い、かつ、多孔フィルム12を用いずに開口56をポリプロピレン製の板により塞いだ状態で、ベビーリーフを保管し、比較例2とした。比較例2の上記ポリエチレンテレフタレート製のフィルムは、全面積において、直径300μmの穿孔を、面積1cm
2あたり20個程度で形成したフィルムであり、厚みは100μmであった。実施例2のCAフィルム11の代わりに、ポリエチレンテレフタレート製のフィルムを用い、比較例3とした。比較例3のポリエチレンテレフタレート製のフィルムには上記の穿孔は形成しておらず、厚みは100μmであった。これら比較例のその他の条件は実施例2と同じである。なお、用いたポリエチレンテレフタレート製のフィルムの厚みは、表1の「CAフィルム」の「厚み」欄に記載している。
【0096】
得られた包装箱を、実施例1〜実施例9と同様に、ベビーリーフの密閉系包装に供し、結露と、ガスの濃度としての二酸化炭素濃度と、細菌とを、評価した。評価結果は表1に示す。
【0097】
[実施例10]〜[実施例21]
包装箱50をつくり、実施例10〜実施例18とした。包装袋10をつくり、実施例19とした。包装袋30をつくり、実施例20〜実施例21とした。表2の「農産容器」欄には、包装箱50の場合には「箱」と記載し、包装袋10と包装袋30との各場合には「袋」と記載する。
【0098】
CAフィルム11は、実施例1〜実施例9と同様の方法でつくった。用いたセルロースアシレートは、すべてのアシル基がアセチル基であり、アシル基置換度は表2に示す。また、つくったCAフィルム11の厚みなどの諸条件、及び多孔フィルムの諸条件も表2に示す。なお、表2のCAフィルムの透湿度(単位はg/m
2・day)は、40℃、相対湿度90%での値である。
【0099】
得られた包装箱50,包装袋10、及び包装袋30を、それぞれブロッコリの密閉系包装に供し、結露と、ガスの濃度としての二酸化炭素濃度とを、実施例1〜実施例6と同様の方法及び基準で評価した。また、ブロッコリの渇きとしての重量減少と、ブロッコリの変色と、農産容器の変形及びしわとについても評価した。いずれの評価も200gのブロッコリを密閉系包装にした。ブロッコリを入れた状態で密閉した農産容器を、5℃に設定した冷蔵庫内に14日間静置した。この14日間、冷蔵庫内は温度が5℃以上7℃以下の範囲で推移し、相対湿度が23%RH以上74%RH以下の範囲で推移した。各評価の方法及び基準は以下の通りである。各評価結果は表1に示す。
【0100】
4.ブロッコリの重量減少
上記冷蔵下で静置した後のブロッコリの質量を測定した。その測定値をMB(単位はg)とする。農産容器に包装される前のブロッコリの質量(200g)を基準にし、減少した質量の割合を{(200−MB)/200}×100の算出式により百分率で求めた。求めた結果は、表2の「重量減少」欄に示す。
【0101】
5.ブロッコリの変色
冷蔵静置後のブロッコリの花蕾と茎の切り口とを目視で観察することにより変色の程度を評価した。評価の基準は以下の通りである。A,Bは合格、Cは不合格である。各評価結果は表1の「変色」欄に示す。
A:包装開始時と色が変わっていない。
B:少し変色は認められるものの、花蕾はわずかに黄色い程度、かつ、茎の切り口の変色もごくわずかな程度である。
C:花蕾が黄色く、茎の切り口が茶色である。
【0102】
6.農産容器の変形及びしわ
上記14日間の冷蔵静置後、冷蔵庫から農産容器を取り出し、農産容器における変形と変形が進行することにより見えるしわとを以下の基準で評価した。変形については箱50については天面に配置したCAフィルム11のたるみ及び全体的な変形、袋10、30についてはCAフィルム11自体及びその接合部10aの変形を評価した。しわは箱50、袋10、30においてCAフィルム11が青果物と接触している部分でおきる変形を評価した。5,4,3は合格、2,1は不合格である。各評価結果は表1の「変形及びしわ」欄に示す。
5:農産容器に変形がまったく認められない。
4:農産容器の一部に変形及び/またはしわがわずかに認められる程度である。
3:農産容器の一部に変形としわとが認められるものの、実用上問題無い。
2:農産容器の全体に変形としわとが認められる。
1:農産容器の全体に変形としわとの両方が強く認められる。
【0103】
【表2】
【0104】
[比較例4]〜[比較例9]
多孔フィルム12を用いずに、側板53a及び側板53cの開口56を開放した状態の包装箱をつくり、その他の条件は実施例18と同様な条件とし、比較例4とした。実施例10のCAフィルム11を、アシル基置換度が1.00であるセルロースアシレートから形成したCAフィルムに置き換え、比較例5とした。実施例10のCAフィルム11をフタムラ化学(株)製の普通セロハンPL#500に置き換え、比較例6とした。農産容器として、住友ベークライト(株)製のP−プラス(登録商標)(ジッパー付き、サイズはM,295mm×220mm,厚み40μm)を用いた場合を比較例7とした。東洋紡(株)製のF&G(登録商標)防曇フィルム11号(サイズ200mm×300mm、厚み25μm)を用いた場合を比較例8とした。比較例8においてはブロッコリを入れた袋の1辺を接着テープで密封した状態で、冷蔵庫に静置した。農産容器を用いずに、ブロッコリを包装しない状態(非包装状態)で冷蔵保存し、比較例9とした。その他の条件は実施例10〜実施例21と同様である。なお、比較例4〜比較例8で用いた上記素材の厚みは、表2のCAフィルムの「厚み」欄に示す。
【0105】
実施例10〜実施例21と同様に、14日間の冷蔵保存後に、結露と、二酸化炭素濃度と、ブロッコリの重量減少と、ブロッコリの変色と、農産容器の変形及びしわとについて評価した。なお、比較例9では農産容器を用いてなかったから、結露と、農産容器の変形及びしわとについては評価しなかった。評価結果は表2に示す。
【0106】
[実施例22]〜[実施例30]
育苗装置69により、小松菜の苗を育てた。育苗箱70の収容空間側のサイズは、20cm×20cm×20cmとした。育苗箱70のその他の諸条件、及び、育てた苗の本数は表3に示す。なお、生育後の小松菜の1本あたりの質量は概ね10gであり、1本あたりの葉の面積は30cm
2であった。なお、表3のCAフィルムの透湿度(単位はg/m
2・day)は、40℃、相対湿度90%での値である。
【0107】
結露と、ガスの濃度としての二酸化炭素濃度とを評価した。評価方法及び基準は実施例1〜実施例9と同様であるが、二酸化炭素濃度は、包装箱70の内部の側板53bに(株)T&D社製二酸化炭素、温度、湿度データロガーおんどとり(登録商標)TR−76Uiを設け、これにより測定した。二酸化炭素濃度は空気全体に対する体積割合である。二酸化炭素濃度は、光源81によって光を照射している間と、光照射をオフ(OFF)にしている間とのそれぞれにおいて求め、結果は表3の「光照射有」欄と「光照射無」欄とに記載する。また、苗の生育についても評価した。苗の生育の評価方法及び基準は以下の通りである。
【0108】
7.苗の生育
苗床74として、水耕栽培用スポンジ・ウレタン培地を用い、これに水を含ませた。小松菜の種を置き苗床74に置き、室温(21℃以上24℃以下の範囲)にて4日間栽培し、その後苗床74とともに育苗箱70に入れ、2日後の苗75について生育評価を行った。育苗箱75に入れる前との苗75の大きさの比較、葉の大きさ及び葉の状態について以下に評価した。A,Bは合格、Cは不合格である。
A;苗は育苗箱に入れる前と同等の大きさ。葉は広く、しおれはなかった。
B;苗は育苗箱に入れる前と同等の大きさ。葉は広く、少ししおれがあった。
C;苗は育苗箱に入れる前より小さい。葉は小さく、しおれがあった。
【0109】
【表3】
【0110】
[比較例10]
多孔フィルム12を用いずに、側板53a及び側板53cの開口56をポリプロピレン製の板で塞いだ状態の包装箱をつくり、その他の条件は実施例22と同様な条件とし、比較例10とした。
【0111】
実施例22〜実施例30と同様に、結露と、二酸化濃度と、苗の生育とを評価した。評価結果は表3に示す。