(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。同一の要素には同一符号を付する。重複する説明は省略する。図面の寸法比率は、説明のものと必ずしも一致していない。
【0017】
図1に示す有機エレクトロルミネッセンス(有機EL)デバイス1は、有機ELディスプレイパネルであり、複数の画素2を有する。各画素2は、有機EL素子部であり、基板11上にバンクが形成されたバンク付き基板10上でバンクにより画定された区画に形成されている。すなわち、有機ELデバイス1は、複数の有機EL素子部が一体的に連結された構成を有する。本実施形態において、「画素」とは、光を発する最小単位(或いは最小領域)を意味しており、画素2の発光により画素2は色情報を有する。
図1では、画素2を破線で模式的に示している。
【0018】
図2は、
図1におけるII−II線に沿ったバンク付き基板10の断面の一部拡大図に対応した図面である。
図2に示すように本実施形態に係る有機ELデバイスは、基板11と、基板11上に設けられたバンク13と、バンク13により画定された区画に設けられた複数の陽極12と、陽極12上に設けられた有機EL構造部20と、陰極(第2の電極)30とを備える。有機EL構造部20は、発光層を含む機能層21と、機能層21上に直接設けられた電子注入性を持つ化合物層22と、電子注入性を持つ化合物層22上に設けられた、少なくとも1種の還元性金属を含む合金、又は少なくとも1種の還元性金属を含む金属混合物の層である金属層23とを備える。有機ELデバイス1は、トップエミッション型のデバイスでもよいし、ボトムエミッション型のデバイスでもよい。以下では断らない限り、ボトムエミッション型、すなわち、バンク付き基板10側から光を取出す場合について説明する。
【0019】
基板11は、可視光(波長400nm〜800nmの光)に対して透光性を有する板状の透明部材であってよい。基板11は、陽極12及びバンク13を支持する支持体である。基板11の厚さの例は、30μm以上1100μm以下である。基板11は、例えばガラス基板及びシリコン基板などのリジッド基板であっても、プラスチック基板及び高分子フィルムなどの可撓性基板であってもよい。可撓性基板を用いることで、有機ELデバイス1が可撓性を有し得る。
【0020】
基板11には各画素2を駆動するための回路が予め形成されていてもよい。基板11には、例えばTFT(Thin Film Transistor)やキャパシタなどがあらかじめ形成されていてもよい。
【0021】
複数の陽極12は、基板11の表面上において各画素2に対応する領域上に設けられている。陽極12の平面視形状(基板11の板厚方向から見た形状)の例は、矩形及び正方形といった四角形及び他の多角形が挙げられる。陽極12の平面視形状は、円形又は楕円形でもよい。
【0022】
陽極12は、金属酸化物、金属硫化物及び金属などからなる薄膜を用いることができ、具体的には酸化インジウム、酸化亜鉛、酸化スズ、インジウム錫酸化物(Indium Tin Oxide:略称ITO)、インジウム亜鉛酸化物(Indium Zinc Oxide:略称IZO)、金、白金、銀、及び銅などからなる薄膜が用いられる。本実施形態で主に説明するように、有機ELデバイス1がバンク付き基板10側から光を出射する場合、光透過性を示す陽極12が用いられる。
【0023】
陽極12の厚さは、光の透過性、電気伝導度などを考慮して適宜決定することができる。陽極12の厚さは、例えば10nm〜10μmであり、好ましくは20nm〜1μmであり、さらに好ましくは50nm〜500nmである。
【0024】
一実施形態において、陽極12と基板11との間には、絶縁層等で構成される層が設けられていてもよい。絶縁層等の層も基板11の一部とみなすこともできる。
【0025】
図2に示すように、バンク13は、各陽極12の周囲に設けられる。バンク13は、隣接する陽極12の間に渡っても設けられている。バンク13の一部は、陽極12の周縁部に被さっていてもよい。バンク13は、画素2又は画素領域2aを区画する隔壁である。すなわち、バンク13は、基板11の表面11a上において予め設定されている画素領域2aを区画する開口を有するようなパターンで基板11上に設けられている。本実施形態では、
図1に示したように、複数の画素2が二次元配列で配置されているため、格子状のバンク13が基板11に設けられている。
【0026】
バンク13の材料の例は樹脂である。バンク13は、例えば、撥液剤を含む感光性樹脂組成物の硬化物である。撥液剤の例としては、フッ素樹脂を含有する撥液剤が挙げられる。バンク13で画定される区画上には、後述するように、塗布法によって発光層を含む機能層が形成される。よって、バンク13は、通常、バンク13で画定される区画上に塗布法を利用して機能層を形成する際に、その機能層を好適に形成可能な特性(例えば濡れ性)を有するように形成されている。
【0027】
バンク13の形状及びその配置は、画素2数及び解像度などの有機ELデバイス1の仕様や製造の容易さなどに応じて適宜設定される。例えば、
図2において、バンク13によって確定される区画に望む側面は、基板11の表面に対して実質的に直交している。しかしながら、上記側面は、表面に対して鋭角をなすように傾斜していてもよいし、鈍角をなすように傾斜していてもよい。側面と、基板11の表面とが鋭角である場合、バンク13の形状は順テーパ型として知られており、側面と、基板11の表面とが鈍角である場合、バンク13の形状は逆テーパ型として知られている。バンク13の厚さ(高さ)の例は0.3μm〜5μm程度である。
【0028】
上記バンク付き基板10は、例えば、基板11に予め画素となる領域として設定される複数の領域上に陽極12を形成した後に、バンク13を形成することで製造され得る。
【0029】
陽極12は、蒸着法又は塗布法で形成され得る。蒸着法の例としては、真空蒸着法、イオンビーム蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等が挙げられるが、スパッタリング法で形成する場合には、陽極12の材料からなる層を基板11上に形成した後、その層を複数の陽極12のパターンにパターニングすればよい。塗布法で陽極12を形成する際には、陽極12の材料を含む塗布液を、複数の陽極12に対応したパターンで基板11上に塗布して塗布膜を形成した後に、塗布膜を乾燥させることで形成され得る。或いは、陽極12の材料を含む塗布膜を基板11に形成し乾燥させた後、複数の陽極12のパターンにパターニングしてもよい。
【0030】
陽極12の形成において塗布法を利用する場合、塗布法の例としては、インクジェット印刷法が挙げられるが、その他、公知の塗布法、例えば、スリットコート法、マイクログラビアコート法、グラビアコート法、バーコート法、ロールコート法、ワイヤーバーコート法、スプレーコート法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、及びノズルプリント法などを用いてもよい。陽極12の材料を含む塗布液の溶媒は、陽極12の材料を溶解できる溶媒であればよい。
【0031】
バンク13は、例えば、塗布法を利用して形成される。具体的には、バンク13の材料を含む塗布液を、陽極12が形成された基板11に塗布して塗布膜を形成し、乾燥させた後、その塗布膜を所定のパターンにパターニングすることで形成され得る。塗布法の例としてはスピンコート法、スリットコート法などを挙げることができる。バンク13を含む塗布液の溶媒は、バンク13の材料を溶解できる溶媒であればよい。
【0032】
図2に示すように、複数の有機EL構造部20は、バンク付き基板10において、バンク13と陽極12とで形成される凹部内に設けられている。機能層21は、発光層以外に正孔注入層、及び正孔輸送層を有していてもよい。正孔注入層、及び正孔輸送層を有する場合、これらは、陽極側からこの順に積層される。
【0033】
正孔注入層は、陽極12から発光層への正孔注入効率を改善する機能を有する層である。正孔注入層の材料は公知の正孔注入材料が用いられ得る。正孔注入材料の例としては、酸化バナジウム、酸化モリブデン、酸化ルテニウム、及び、酸化アルミニウムなどの酸化物、フェニルアミン化合物、スターバースト型アミン化合物、フタロシアニン化合物、アモルファスカーボン、ポリアニリン、及び、ポリエチレンジオキシチオフェン(PEDOT)などのポリチオフェン誘導体を挙げることができる。
【0034】
正孔注入層の厚さは、用いる材料によって最適値が異なり、求められる特性及び層の形成し易さなどを勘案して適宜決定される。正孔注入層の厚さは、例えば1nm〜1μmであり、好ましくは2nm〜500nmであり、さらに好ましくは5nm〜200nmである。
【0035】
正孔注入層は、必要に応じて、画素2の種類毎、すなわち、赤色画素、緑色画素及び青色画素毎に異なる材料又は厚さで設けられる。正孔注入層の形成工程の簡易さの観点から、同じ材料、同じ厚さで全ての正孔注入層を形成してもよい。
【0036】
正孔輸送層は、陽極12、正孔注入層又は陽極12により近い正孔輸送層から発光層への正孔注入を改善する機能を有する層である。正孔輸送層の材料には、公知の正孔輸送材料が用いられ得る。正孔輸送層の材料の例は、正孔輸送材料としては、ポリビニルカルバゾール若しくはその誘導体、ポリシラン若しくはその誘導体、側鎖若しくは主鎖に芳香族アミンを有するポリシロキサン若しくはその誘導体、ピラゾリン若しくはその誘導体、アリールアミン若しくはその誘導体、スチルベン若しくはその誘導体、トリフェニルジアミン若しくはその誘導体、ポリアニリン若しくはその誘導体、ポリチオフェン若しくはその誘導体、ポリアリールアミン若しくはその誘導体、ポリピロール若しくはその誘導体、ポリ(p−フェニレンビニレン)若しくはその誘導体、又はポリ(2,5−チエニレンビニレン)若しくはその誘導体などを挙げることができる。また、特開2012−144722号公報に開示されている正孔輸送材料も挙げることができる。
【0037】
正孔輸送層の厚さは、用いる材料によって最適値が異なり、駆動電圧と発光効率が適度な値となるように適宜設定される。正孔輸送層の厚さは、例えば1nm〜1μmであり、好ましくは2nm〜500nmであり、さらに好ましくは5nm〜200nmである。
【0038】
正孔輸送層は、必要に応じて、画素2の種類毎、すなわち、赤色画素、緑色画素及び青色画素毎に異なる材料又は厚さで設けられる。正孔輸送層の形成工程の簡易さの観点から、同じ材料、同じ厚さで全ての正孔注入層を形成してもよい。
【0039】
発光層は、正孔輸送層上に設けられていてよい。発光層は、所定の波長の光を発光する機能を有する層である。発光層は、通常、主として蛍光及び/又はりん光を発光する有機物、又は該有機物とこれを補助するドーパント等の発光材料から形成される。ドーパントは、例えば発光効率の向上、又は発光波長を変化させるために加えられる。発光層に含まれる有機物は、低分子化合物でも高分子化合物でもよい。発光層を構成する発光材料としては、下記の色素系材料、金属錯体系材料、高分子系材料等の主として蛍光及び/又はりん光を発光する有機物の材料と、ドーパントの材料を挙げることができる。
【0040】
色素系材料としては、例えばシクロペンダミン若しくはその誘導体、テトラフェニルブタジエン若しくはその誘導体、トリフェニルアミン若しくはその誘導体、オキサジアゾール若しくはその誘導体、ピラゾロキノリン若しくはその誘導体、ジスチリルベンゼン若しくはその誘導体、ジスチリルアリーレン若しくはその誘導体、ピロール若しくはその誘導体、チオフェン環化合物、ピリジン環化合物、ペリノン若しくはその誘導体、ペリレン若しくはその誘導体、オリゴチオフェン若しくはその誘導体、オキサジアゾールダイマー若しくはその誘導体、ピラゾリンダイマー若しくはその誘導体、キナクリドン若しくはその誘導体、クマリン若しくはその誘導体などを挙げることができる。
【0041】
金属錯体系材料としては、例えばTb、Eu、Dyなどの希土類金属、又はAl、Zn、Be、Pt、Irなどを中心金属に有し、オキサジアゾール、チアジアゾール、フェニルピリジン、フェニルベンゾイミダゾール、キノリン構造などを配位子に有する金属錯体を挙げることができる。金属錯体としては、例えばイリジウム錯体、白金錯体などの三重項励起状態からの発光を有する金属錯体、アルミニウムキノリノール錯体、ベンゾキノリノールベリリウム錯体、ベンゾオキサゾリル亜鉛錯体、ベンゾチアゾール亜鉛錯体、アゾメチル亜鉛錯体、ポルフィリン亜鉛錯体、フェナントロリンユーロピウム錯体などを挙げることができる。
【0042】
高分子系材料としては、例えばポリパラフェニレンビニレン若しくはその誘導体、ポリチオフェン若しくはその誘導体、ポリパラフェニレン若しくはその誘導体、ポリシラン若しくはその誘導体、ポリアセチレン若しくはその誘導体、ポリフルオレン若しくはその誘導体、ポリビニルカルバゾール若しくはその誘導体、上記色素系材料、金属錯体系材料を高分子化した材料などを挙げることができる。
【0043】
上記発光材料のうち、赤色に発光する材料(以下、「赤色発光材料」と称す)としては、クマリン若しくはその誘導体、チオフェン環化合物、及びそれらの重合体、ポリパラフェニレンビニレン若しくはその誘導体、ポリチオフェン若しくはその誘導体、ポリフルオレン若しくはその誘導体などを挙げることができる。中でも高分子材料のポリパラフェニレンビニレン若しくはその誘導体、ポリチオフェン若しくはその誘導体、ポリフルオレン若しくはその誘導体が好ましい。赤色発光材料としては、特開2011−105701号公報に開示されている材料も挙げられる。
【0044】
緑色に発光する材料(以下、「緑色発光材料」と称す)としては、キナクリドン若しくはその誘導体、クマリン若しくはその誘導体、及びそれらの重合体、ポリパラフェニレンビニレン若しくはその誘導体、ポリフルオレン若しくはその誘導体などを挙げることができる。中でも高分子材料のポリパラフェニレンビニレン若しくはその誘導体、ポリフルオレン若しくはその誘導体が好ましい。緑色発光材料としては、特開2012−036388号公報に開示されている材料も挙げられる。
【0045】
青色に発光する材料(以下、「青色発光材料」と称す)としては、ジスチリルアリーレン若しくはその誘導体、オキサジアゾール若しくはその誘導体、及びそれらの重合体、ポリビニルカルバゾール若しくはその誘導体、ポリパラフェニレン若しくはその誘導体、ポリフルオレン若しくはその誘導体などを挙げることができる。中でも高分子材料のポリビニルカルバゾール若しくはその誘導体、ポリパラフェニレン若しくはその誘導体、及びポリフルオレン若しくはその誘導体が好ましい。青色発光材料としては、特開2012−144722号公報に開示されている材料も挙げられる。
【0046】
ドーパントの材料としては、例えばペリレン若しくはその誘導体、クマリン若しくはその誘導体、ルブレン若しくはその誘導体、キナクリドン若しくはその誘導体、スクアリウム若しくはその誘導体、ポルフィリン若しくはその誘導体、スチリル色素、テトラセン若しくはその誘導体、ピラゾロン若しくはその誘導体、デカシクレン若しくはその誘導体、フェノキサゾン若しくはその誘導体などを挙げることができる。
【0047】
機能層21上には、機能層21と直接接触するように電子注入性を持つ化合物層22が設けられている。電子注入性を持つ化合物層22は、電子注入性を持つ化合物を含む層であり、陰極30からの電子注入効率を改善する機能を有する。電子注入性を持つ化合物は、発光層の種類に応じて最適な化合物が適宜選択される。電子注入性を持つ化合物の例としては、アルカリ金属若しくはアルカリ土類金属の酸化物、ハロゲン化物、炭酸塩、又はこれらの化合物の混合物などを挙げることができる。アルカリ金属の酸化物、ハロゲン化物、及び炭酸塩の例としては、酸化リチウム、フッ化リチウム、酸化ナトリウム、フッ化ナトリウム、酸化カリウム、フッ化カリウム、酸化ルビジウム、フッ化ルビジウム、酸化セシウム、フッ化セシウム、炭酸リチウムなどを挙げることができる。また、アルカリ土類金属の酸化物、ハロゲン化物、炭酸塩の例としては、酸化マグネシウム、フッ化マグネシウム、酸化カルシウム、フッ化カルシウム、酸化バリウム、フッ化バリウム、酸化ストロンチウム、フッ化ストロンチウム、炭酸マグネシウムなどを挙げることができる。このとき、電子注入性を持つ化合物層22は、バンクと接している。
【0048】
電子注入性を持つ化合物層22を構成する材料は、有機ELデバイスの寿命をさらに長くできる観点から、Liを除く周期表第1族金属元素のフッ化物を含むと好ましく、NaFを含むとより好ましい。また、電子注入性を持つ化合物層22は、有機ELデバイスの寿命をさらに長くできる観点から、10nm以下の厚さを有すると好ましく、2〜6nmの厚さを有するとより好ましい。
【0049】
電子注入性を持つ化合物層22上には、還元性金属を含む合金又は還元性金属を含む金属混合物(金属混合物は合金を含まない)の層である金属層23が設けられている。ここで、還元性金属を含む合金又は還元性金属を含む金属混合物とは、2種以上の金属のみを含むものである。還元性金属を含む合金又は還元性金属を含む金属混合物としては、還元性金属及び還元性金属以外の金属を、それぞれ1種以上含んでいても、還元性金属のみを2種以上含んでいてもよい。還元性金属は、電子注入性を持つ化合物層22を還元できる金属である。還元性金属としては、Li、Na、K、Rb、Mg、Ca、Sr、Ba、Al等が挙げられ、中でもMg、Ca又はBaが好ましく、Baがより好ましい。上記合金又は金属混合物に含まれる還元性金属以外の金属としては、導電性を持つものであれば特に限定されるものではないが、例えばAg等が挙げられる。金属層23における還元性金属の含有量は、金属層23に含まれる金属100at%に対して、1at%以上100at%以下であることが好ましい。還元性金属の含有量を上記の範囲にすることで、有機ELデバイスの寿命を長くすることができる。また、還元性金属として、Mg、Ca及びBaからなる群より選ばれる少なくとも1種の金属を含む場合、金属層23に含まれる金属100at%に対して、該金属の含有量は、0.5at%以上40at%以下であることが好ましい。該金属の含有量を上記の範囲にすることで、有機ELデバイスの寿命を長くすることができる。ここで、金属層に含まれる各金属の含有量は、素ガラス上に金属層を作製して得られた試験片を王水へ溶解させ、誘導結合プラズマ発光分析法を用いることにより測定することができる。なお、金属層23は、電子注入性を持つ化合物層22上に直接設けられていることが好ましい。ところで、電子注入性を持つ化合物層上に1種の還元性金属のみからなる層を形成した場合、還元性金属が水、酸素等により劣化しやすい。一方、本実施形態において金属層23は、還元性金属を含む合金又は還元性金属を含む金属混合物の層であるため、2種以上の還元性金属を含有するか、還元性金属以外の金属を含有する。この場合、1種の還元性金属の少なくとも一部が他の金属(該1種の還元性金属以外の還元性金属、または還元性金属以外の金属)に被覆されやすく、該1種の還元性金属が過剰に表面に露出して水、酸素等により劣化することが抑制されやすい。
【0050】
金属層23の厚さは、有機ELデバイスの寿命をさらに長くできる観点から、10nm以下であると好ましく、1〜6nmであるとより好ましい。
【0051】
金属層23上には、陰極30が設けられている。陰極30の材料としては、仕事関数が小さく、金属層23への電子注入が容易で、電気伝導度の高い材料が好ましい。また、本実施形態で説明しているように、有機ELデバイス1が陽極12側から光を取出す場合には、発光層から放射される光を陰極30で陽極12側に反射するために、陰極30の材料としては可視光反射率の高い材料が好ましい。陰極30には、遷移金属及び周期表の13族金属などを用いることができる。また、陰極30としては導電性金属酸化物及び導電性有機物などからなる透明導電性陰極を用いることができる。
【0052】
陰極30の厚さは、電気伝導度、耐久性を考慮して適宜設定される。陰極30の厚さは、例えば10nm〜10μmであり、好ましくは20nm〜1μmであり、さらに好ましくは50nm〜500nmである。
【0053】
本実施形態では、陰極30は複数の画素2が設けられる表示領域の全面に形成される。すなわち、陰極30は、発光層上だけでなく、バンク13上にも形成され、複数の画素2に共通の陽極12として設けられる。
【0054】
図1及び
図2では図示を省略しているが、有機ELデバイス1の陰極30上には、通常、封止基板が設けられる。その他、有機ELデバイス1は、例えば、有機ELパネルディスプレイパネルで備える公知の構成を備え得る。
【0055】
上記構成の有機ELデバイス1において各画素2内の構造、すなわち、陽極12、有機EL構造部20及び陰極30における画素領域の部分が有機EL素子部を構成している。したがって、有機ELデバイス1は、バンク13で仕切られた複数の有機EL素子部が、基板11及び陽極12を共通として一体的に連結された構成を有する。
【0056】
次に、有機ELデバイス1の製造方法について説明する。ここでは、バンク付き基板10を準備した後の有機ELデバイス1の製造方法について説明する。有機ELデバイス1の製造方法は、バンク付き基板10のバンクにより画定された区画に、発光層を含む機能層21、電子注入性を持つ化合物層22、金属層23及び陰極30をこの順に形成する工程を備える。以下では、機能層21として、正孔注入層、正孔輸送層、発光層を順に備えた有機ELデバイス1の製造方法について説明する。
【0057】
具体的には、正孔注入層を形成する場合、バンクと陽極に囲まれた凹部の陽極12上に、正孔注入材料を含む塗布液を滴下して塗布膜を形成した後、塗布膜を乾燥させることによって、正孔注入層を形成する。
【0058】
塗布法としては、例えば、インクジェット印刷法が挙げられる。ただし、上記凹部内に層を形成可能な塗布法であれば他の公知の塗布法、例えば、マイクログラビアコート法、グラビアコート法、バーコート法、ロールコート法、ワイヤーバーコート法、スプレーコート法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、及びノズルプリント法を用いてもよく、好ましくは、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、及びノズルプリント法を用いてもよい。
【0059】
塗布液に用いられる溶媒としては、正孔注入材料を溶解できれば限定されないが、例えば、クロロホルム、塩化メチレン、ジクロロエタン等の塩化物溶媒、テトラヒドロフラン等のエーテル溶媒、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素溶媒、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル、エチルセルソルブアセテート等のエステル溶媒、シクロヘキシルベンゼン、デシルベンゼン、ドデシルベンゼン、ジエチルベンゼン、ペンチルベンゼン、ジペンチルベンゼン、テトラリン、クメン、シメン、デカリン、ジエチルベンゼン、トリメチルベンゼン、トリメチルベンゼン、テトラメチルベンゼン、ブチルベンゼン、4-メチルアニソール等少なくとも一つ以上の置換基を持ったベンゼン環を有する溶媒、等が挙げられる。また正孔注入材料を良好に溶解させるために、極性溶媒を含むことがある。極性溶媒としては、一般的なものが用いられ、特に限定されるものではないが、例えば、アルコール類、ケトン類、グリコールエステル類、グリコールエーテル類、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン及びジメチルスルホキシド、N−シクロヘキシル−2−ピロリジノン等が挙げられる。
【0060】
塗布膜の乾燥方法は、塗布膜を乾燥できれば限定されないが、真空乾燥及び加熱乾燥などが挙げられる。
【0061】
次に、正孔輸送層を形成する場合、正孔輸送材料を含む塗布液を上記凹部内の正孔注入層上に滴下して塗布膜を形成した後、塗布膜を乾燥させることによって、正孔輸送層を形成する。溶媒及び乾燥方法の例は、正孔注入層の場合と同様であり得る。
【0062】
次に、正孔輸送層上に発光層を形成する。発光層は、塗布法によって形成する。具体的には、発光層となるべき発光材料を含む塗布液を上記凹部内に滴下して塗布膜を形成した後、塗布膜を乾燥させることによって、発光層を形成する。
【0063】
塗布法としては、インクジェット印刷法が例示されるが、正孔注入層の場合に例示したその他の公知の塗布法も利用し得る。塗布液に用いられる溶媒は、発光材料を溶解できれば限定されず、正孔注入層の形成の際に例示した溶媒と同様であり得る。塗布膜の乾燥方法は、正孔注入層の場合と同様に、塗布膜を乾燥できれば限定されないが、真空乾燥及び加熱乾燥などが挙げられる。
【0064】
次に、発光層上に電子注入性を持つ化合物層22を形成する。電子注入性を持つ化合物層22の形成方法としては、インクジェット印刷法、蒸着法が例示されるが、正孔注入層の場合に例示したその他の公知の塗布法も利用し得る。蒸着法としては、真空蒸着法、イオンビーム蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法が挙げられる。インクジェット印刷法の場合、電子注入性を持つ化合物層22となるべき電子注入材料を含む塗布液を上記凹部内に滴下して塗布膜を形成した後、塗布膜を乾燥させることによって、電子注入性を持つ化合物層22を形成する。塗布液に用いられる溶媒は、電子注入材料を溶解できれば限定されず、正孔注入層の形成の際に例示した溶媒と同様であり得る。塗布膜の乾燥方法は、正孔注入層の場合と同様に、塗布膜を乾燥できれば限定されないが、真空乾燥及び加熱乾燥などが挙げられる。
【0065】
次に、電子注入性を持つ化合物層22上に金属層23を形成する。金属層23の形成方法としては、蒸着法又は塗布法で形成され得る。蒸着法としては、真空蒸着法、イオンビーム蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等が挙げられる。なお還元性金属層の合金、又は還元性金属層の金属混合物については、2種以上の金属を含む原料を用いて形成してもよいし、1種の金属を含む原料を複数用意し、複数の原料を用いて形成してもよい。複数の原料を用いて金属層を形成する場合、複数の原料を真空蒸着法により共蒸着することにより金属層を形成することもできる。この際に、例えば、原料として、Mg、Ca又はBaと、Mg、Ca又はBa以外の金属とを用いる場合、Mg、Ca又はBa以外の金属の蒸着速度に対するMg、Ca又はBaの蒸着速度の比は、0.04〜1.0であると好ましく、0.04〜0.5であるとより好ましく、0.05〜0.5であることがさらに好ましい。
【0066】
次に、金属層上に陰極を形成する。陰極30の形成方法としては、蒸着法又は塗布法で形成され得る。蒸着法で形成される場合には、真空蒸着法、イオンビーム蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等が挙げられる。
【0067】
以上のようにして得られた有機ELデバイス1は、封止部材で封止されてもよい。その際、封止部材は、有機ELデバイスを覆うように配置される。封止部材の材料は、特に限定されるものではないが、例えば、ガラス、若しくは、アルミニウム、銅、及び鉄から選択される金属、又は、これらの金属のうち少なくとも1つを含む合金を用いることができる。
【0068】
本実施形態の有機ELデバイスは、有機ELディスプレイ、有機EL照明等の表示素子に好適に用いることができる。
【0069】
以上、本発明の種々の実施形態を説明したが、例示した種々の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0070】
例えば、有機ELデバイスの構成は、
図1及び
図2に例示した構成に限定されない。
【0071】
有機ELデバイスは、電子注入性を持つ化合物層22と陰極30との間に少なくとも1種の還元性金属を含む合金、又は少なくとも1種の還元性金属を含む金属混合物の層である金属層23を有していればよい。有機EL素子の取り得る層構成の例を示す。なお、以下の説明では、第1及び第2実施形態の構成も含む場合もある。
a)陽極/正孔注入層/発光層/電子注入性を持つ化合物層/金属層/陰極
b)陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子注入性を持つ化合物層/金属層/陰極
c)陽極/発光層/電子注入性を持つ化合物層/金属層/陰極
【0072】
また、a)及びb)において、正孔注入層、及び/又は正孔輸送層が電子の輸送を堰き止める機能を有する場合には、これらの層が電子ブロック層と称される場合もある。電子ブロック層が電子の輸送を堰き止める機能を有することは、例えば電子電流のみを流す有機EL素子を作製し、測定された電流値の減少で電子の輸送を堰き止める効果を確認することができる。なお、正孔注入層、及び/又は正孔輸送層とは別に、電子ブロック層を陽極と発光層との間に設けてもよい。
【0073】
更に、有機EL素子は単層の発光層を有していても2層以上の発光層を有していてもよい。上記a)〜c)の層構成のうちのいずれか1つにおいて、陽極と陰極との間に配置された積層体を「構造単位A」とすると、2層の発光層を有する有機EL素子の構成として、下記d)に示す層構成を挙げることができる。なお、2個ある(構造単位A)の層構成は互いに同じであっても、異なっていてもよい。
d)陽極/(構造単位A)/電荷発生層/(構造単位A)/陰極
【0074】
ここで電荷発生層とは、電界を印加することにより、正孔と電子とを発生する層である。電荷発生層としては、例えば酸化バナジウム、インジウムスズ酸化物(Indium Tin Oxide:略称ITO)、酸化モリブデンなどからなる薄膜を挙げることができる。
【0075】
「(構造単位A)/電荷発生層」を「構造単位B」とすると、3層以上の発光層を有する有機EL素子の構成として、以下のe)に示す層構成を挙げることができる。
e)陽極/(構造単位B)x/(構造単位A)/陰極
記号「x」は、2以上の整数を表し、「(構造単位B)x」は、(構造単位B)がx段積層された積層体を表す。また、複数ある(構造単位B)の層構成は同じでも、異なっていてもよい。
【0076】
電荷発生層を設けずに、複数の発光層を直接的に積層させて有機EL素子を構成してもよい。
【0077】
これまでの説明では、陽極を基板側に配置した例を説明したが、陰極を基板側に配置してもよい。この場合、例えばa)〜e)の各有機EL素子を基板上に作製する場合、陰極(各構成a)〜e)の右側)から順に各層を基板上に積層すればよい。
【実施例】
【0078】
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではない。
【0079】
[実施例1]
実施例1として
図1に示したように、基板上に、陽極、正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子注入性を持つ化合物層、還元性金属を含む合金又は還元性金属を含む金属混合物(金属混合物は合金を含まない)の層である金属層及び陰極が順に積層された有機EL素子を製造した。実施例1の有機EL素子を有機EL素子A1と称す。以下、有機EL素子A1の製造方法を具体的に説明する。
【0080】
<基板及び陽極>
有機EL素子A1の基板としてガラス基板を準備した。ガラス基板上に、陽極としてITO薄膜を所定のパターンで形成した。ITO薄膜はスパッタリング法によって形成し、その膜厚は、45nmであった。
【0081】
このような基板上に、感光性樹脂を用いて、フォトリソグラフィー法によって、格子状のバンクを形成した。バンクは、厚さが1.0μmであり、開口部は順テーパ形状(隔壁側面と基板との成す角が鋭角)とした。開口の形状は、略楕円形状であり、
図1に示すとおり第1の軸方向Xの幅は、50μmであり、第2の軸方向Yの幅は、200μmとした。
【0082】
<正孔注入層>
正孔注入材料を、インクジェット印刷法によって、ITO薄膜上のバンクで区画された画素内に塗布することにより、65nmの厚みの塗膜を形成した。以下では、実施例1で使用した正孔注入材料を正孔注入材料α1と称す。ドライポンプを接続した真空乾燥室内において、10℃に調整された温調ステージに基板を載置し、約10Paになるまで減圧することにより塗布液を乾燥した。さらに、ステージの温度を230℃に調整するとともに、大気圧下にて、15分間焼成を行い、正孔注入層を形成した。
【0083】
<正孔輸送層>
正孔輸送材料α2を溶解させた塗布液を、インクジェット法により正孔注入層上に塗布し、ドライポンプを接続した真空乾燥室内において、10℃に調整された温調ステージに基板を載置し、約5Paになるまで減圧することにより塗布液を乾燥し、膜厚20nmの塗膜を得た。この塗膜を設けたガラス基板を窒素雰囲気(不活性雰囲気)下において、ホットプレートを利用して、190℃で60分間加熱することで溶媒を蒸発させた後、室温まで自然冷却し、正孔輸送層を得た。
【0084】
<発光層>
高分子系材料(主として蛍光及び/又はりん光を発光する有機物の材料)α3を溶解させた塗布液を、インクジェット印刷法により正孔輸送層上に塗布し、ドライポンプを接続した真空乾燥室内において、10℃に調整された温調ステージに基板を載置し、約20Paになるまで減圧することにより塗布液を乾燥し膜厚65nmの塗膜を得た。この塗膜を設けたガラス基板を窒素雰囲気(不活性雰囲気)下において、ホットプレートを利用して、180℃で10分間加熱することで溶媒を蒸発させた後、室温まで自然冷却し、発光層を得た。
【0085】
<電子注入性を持つ化合物層>
発光層が形成されたガラス基板を蒸着チャンバーに移し、発光層上に電子注入性を持つ化合物層を形成した。具体的には、蒸着チャンバー内の真空度が1.0×10
−5Pa以下になるまで排気し、真空蒸着法によって発光層上に膜厚3nmのフッ化ナトリウム(NaF)層を形成した。
【0086】
<金属層>
電子注入性を持つ化合物層を形成した後、同じ蒸着チャンバー内で電子注入性を持つ化合物層上に、金属層を形成した。具体的には、電子注入性を持つ化合物層上に、BaとAlを真空蒸着法によって共蒸着し、膜厚が1.7nmであり、BaとAlが混合された金属層を形成した。BaとAlの蒸着速度は、Baが0.3Å/s、Alが0.7Å/sとした。
【0087】
<陰極>
金属層を形成した後、同じ蒸着チャンバー内で陰極を形成した。具体的には、還元性金属層上に、真空蒸着法によりAlを蒸着し、膜厚が100nmの陰極を形成した。
【0088】
<封止部材>
陰極を形成した後、窒素雰囲気(不活性雰囲気)下において、得られた有機EL素子A1をガラスで封止した。
【0089】
[実施例2]
実施例2の有機EL素子を有機EL素子A2と称す。金属層を以下の方法で形成した以外は、実施例1と同様にして有機EL素子A2を製造した。
【0090】
<金属層>
電子注入性を持つ化合物層を形成した後、同じ蒸着チャンバー内で電子注入性を持つ化合物層上に、金属層を形成した。具体的には、電子注入性を持つ化合物層上に、BaとAlを真空蒸着法によって共蒸着し、膜厚が1.7nmであり、BaとAlが混合された金属層を形成した。BaとAlの蒸着速度は、Baが0.1Å/s、Alが0.9Å/sとした。
【0091】
[実施例3]
実施例3の有機EL素子を有機EL素子A3と称す。金属層を以下の方法で形成した以外は、実施例1と同様にして有機EL素子A2を製造した。
【0092】
<金属層>
電子注入性を持つ化合物層を形成した後、同じ蒸着チャンバー内で電子注入性を持つ化合物層上に、金属層を形成した。具体的には、電子注入性を持つ化合物層上に、BaとAlを真空蒸着法によって共蒸着し、膜厚が1.7nmであり、BaとAlが混合された金属層を形成した。BaとAlの蒸着速度は、Baが0.04Å/s、Alが0.96Å/sとした。
【0093】
[実施例4]
実施例4の有機EL素子を有機EL素子A4と称す。以下の方法で電子注入性を持つ化合物層を形成した以外は、実施例1と同様にして有機EL素子A4を製造した。
【0094】
<電子注入性を持つ化合物層>
発光層が形成されたガラス基板を蒸着チャンバーに移し、発光層上に電子注入性を持つ化合物層を形成した。具体的には、蒸着チャンバー内の真空度が1.0×10
−5Pa以下になるまで排気し、真空蒸着法によって発光層上に膜厚4nmのフッ化ナトリウム(NaF)層を形成した。
【0095】
[実施例5]
実施例5の有機EL素子を有機EL素子A5と称す。金属層を以下の方法で形成した以外は、実施例1と同様にして有機EL素子A5を製造した。
【0096】
<金属層>
電子注入性を持つ化合物層を形成した後、同じ蒸着チャンバー内で電子注入性を持つ化合物層上に、金属層を形成した。具体的には、電子注入性を持つ化合物層上に、BaとAgを真空蒸着法によって共蒸着し、膜厚が1.7nmであり、BaとAgが混合された金属層を形成した。BaとAgの蒸着速度は、Baが0.29Å/s、Agが0.71Å/sとした。
【0097】
[実施例6]
実施例6の有機EL素子を有機EL素子A6と称す。金属層を以下の方法で形成した以外は、実施例1と同様にして有機EL素子A6を製造した。
【0098】
<金属層>
電子注入性を持つ化合物層を形成した後、同じ蒸着チャンバー内で電子注入性を持つ化合物層上に、金属層を形成した。具体的には、電子注入性を持つ化合物層上に、MgとAlを真空蒸着法によって共蒸着し、膜厚が3.9nmであり、MgとAlが混合された金属層を形成した。MgとAlの蒸着速度は、Mgが0.13Å/s、Alが0.87Å/sとした。
【0099】
[実施例7]
実施例7の有機EL素子を有機EL素子A7と称す。陰極を以下の方法で形成した以外は、実施例1と同様にして有機EL素子A7を製造した。
【0100】
<陰極>
金属層を形成した後、同じ蒸着チャンバー内で陰極を形成した。具体的には、金属層上に、真空蒸着法によりAgを蒸着し、膜厚が100nmの陰極を形成した。
【0101】
[実施例8]
実施例8の有機EL素子を有機EL素子A8と称す。金属層を以下の方法で形成した以外は、実施例1と同様にして有機EL素子A8を製造した。
【0102】
<金属層>
電子注入性を持つ化合物層を形成した後、同じ蒸着チャンバー内で電子注入性を持つ化合物層上に、金属層を形成した。具体的には、電子注入性を持つ化合物層上に、MgとAlとAgを真空蒸着法によって共蒸着し、膜厚が3.9nmであり、MgとAlとAgが混合された金属層を形成した。MgとAlとAgの蒸着速度は、Mgが0.13Å/s、Alが0.44Å/s、Agが0.43Å/sとした。
【0103】
[実施例9]
実施例9の有機EL素子を有機EL素子A9と称す。金属層を以下の方法で形成した以外は、実施例1と同様にして有機EL素子A9を製造した。
【0104】
<金属層>
電子注入性を持つ化合物層を形成した後、同じ蒸着チャンバー内で電子注入性を持つ化合物層上に、金属層を形成した。具体的には、電子注入性を持つ化合物層上に、MgとAgを真空蒸着法によって共蒸着し、膜厚が3.9nmであり、MgとAgが混合された金属層を形成した。MgとAgの蒸着速度は、Mgが0.13Å/s、Agが0.87Å/sとした。
【0105】
[比較例1]
比較例1の有機EL素子を有機EL素子B1と称す。金属層を形成しなかったこと以外は、実施例1と同様にして有機EL素子B1を製造した。
【0106】
[比較例2]
比較例2の有機EL素子を有機EL素子B2と称す。金属層を以下の方法で形成した以外は、実施例1と同様にして有機EL素子B2を製造した。
【0107】
<金属層>
電子注入性を持つ化合物層を形成した後、同じ蒸着チャンバー内で電子注入性を持つ化合物層上に、金属層を形成した。具体的には、電子注入性を持つ化合物層上に、Baを真空蒸着法によって蒸着し、膜厚が1nmである金属層を形成した。Baの蒸着速度は、0.3Å/sとした。
【0108】
[比較例3]
比較例3の有機EL素子を有機EL素子B3と称す。金属層を以下の方法で形成した以外は、実施例1と同様にして有機EL素子B3を製造した。
【0109】
<金属層>
電子注入性を持つ化合物層を形成した後、同じ蒸着チャンバー内で電子注入性を持つ化合物層上に、金属層を形成した。具体的には、電子注入性を持つ化合物層上に、Baを真空蒸着法によって蒸着し、膜厚が2nmである金属層を形成した。Baの蒸着速度は、0.3Å/sとした。
【0110】
[比較例4]
比較例4の有機EL素子を有機EL素子B4と称す。金属層を以下の方法で形成した以外は、実施例1と同様にして有機EL素子B4を製造した。
【0111】
<金属層>
電子注入性を持つ化合物層を形成した後、同じ蒸着チャンバー内で電子注入性を持つ化合物層上に、金属層を形成した。具体的には、電子注入性を持つ化合物層上に、Mgを真空蒸着法によって蒸着し、膜厚が1nmである金属層を形成した。Mgの蒸着速度は、0.3Å/sとした。
【0112】
[比較例5]
比較例5の有機EL素子を有機EL素子B5と称す。金属層を以下の方法で形成した以外は、実施例1と同様にして有機EL素子B5を製造した。
【0113】
<金属層>
電子注入性を持つ化合物層を形成した後、同じ蒸着チャンバー内で電子注入性を持つ化合物層上に、金属層を形成した。具体的には、電子注入性を持つ化合物層上に、Mgを真空蒸着法によって蒸着し、膜厚が3nmである金属層を形成した。Mgの蒸着速度は、0.3Å/sとした。
【0114】
<素子寿命>
実施例1〜8及び比較例1〜5のようにして製造した、それぞれの有機EL素子を駆動して、素子寿命を測定した。得られた結果を表1に示す。
なお、素子寿命は、駆動開始時の輝度を100としたときに、駆動開始から輝度が95に低下するまでの時間で表されるLT95という指標で評価した。素子寿命の測定は、有機EL素子A1を初期輝度8000cd/cm
2で駆動しておこなった。
【0115】
【表1】