(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
両面スパッタ堆積用に構成された少なくとも1つの電極アセンブリ(120)を備えるスパッタ堆積源(100、200、300、400、500、600、700)であって、前記少なくとも1つの電極アセンブリ(120)は、
堆積されるターゲット材料を提供するためのカソード(125)であって、第1の堆積面(10)上に第1のプラズマ(131)を生成し、また、前記第1の堆積面(10)とは反対の第2の堆積面(11)上に第2のプラズマ(141)を生成するように構成されたカソード(125)と、
前記第1のプラズマ(131)に影響を及ぼすように前記第1の堆積面(10)上に配置された少なくとも1つの第1のアノード(132)、並びに、前記第2のプラズマ(141)に影響を及ぼすように前記第2の堆積面(11)上に配置された少なくとも1つの第2のアノード(142)を有するアノードアセンブリ(130)と、
第1のアノード電位(P1)に前記少なくとも1つの第1のアノード(132)を接続し、また、第2のアノード電位(P2)に前記少なくとも1つの第2のアノード(142)を接続するための電力装置(310)と、
を備える、スパッタ堆積源。
前記アノードアセンブリ(130)は、前記第1のプラズマ(131)に影響を及ぼすように前記第1の堆積面(10)上に配置された2つの第1のアノード(231、232)と、前記第2のプラズマ(141)に影響を及ぼすように前記第2の堆積面(11)上に配置された2つの第2のアノード(241、242)とを備える、請求項1の記載のスパッタ堆積源。
1つ、2つ又はそれ以上の壁セグメント(161、162)を有する分離壁(160)は、前記第1の堆積面(10)と前記第2の堆積面(11)との間に配置される、請求項2に記載のスパッタ堆積源。
2つ以上の電極アセンブリ(701、702)のアレイを備え、前記2つ以上の電極アセンブリ(701、702)の各電極アセンブリは、前記第1の堆積面(10)上に第1のプラズマを生成し、前記第2の堆積面(11)上に第2のプラズマを生成するように構成されたカソードと、前記第1の堆積面(10)上に配置された少なくとも1つの第1のアノード、及び前記第2の堆積面(11)上に配置された少なくとも1つの第2のアノードを備えるアノードアセンブリとを備える、請求項1から9のいずれか一項に記載のスパッタ堆積源(700)。
【発明を実施するための形態】
【0015】
[0025] 本開示の様々な実施形態について、これより詳細に参照する。これらの実施形態の一又は複数の実施例は、図面に示されている。各実施例は説明用として提示されており、限定を意味するものではない。例えば、一実施形態の一部として図示または説明される特徴は、他の任意の実施形態で使用して、または他の任意の実施形態と併せて使用して、さらに別の実施形態を生み出すことが可能である。本開示は、このような修正及び変形を含むことが意図されている。
【0016】
[0026] 図面についての以下の説明の中で、同じ参照番号は同じ又は類似の構成要素を指す。概して、個々の実施形態に関して相違点のみが説明される。別段の指定がない限り、一実施形態の一部分又は一態様の説明は、別の実施形態における対応する部分又は態様にも同様に当てはまる。
【0017】
[0027] 本書で説明される、基板を材料で被覆する処理は、通常、薄膜の応用を指す。「被覆」という用語と「堆積」という用語は、本書において同義に用いられる。本書に記載の実施形態において用いられる被覆処理は、スパッタリングである。
【0018】
[0028] 本書で用いられる「基板」という用語は、特に、ガラスプレートなどの非フレキシブル基板を包含するものとする。本開示がこれらに限定されることはなく、「基板」という用語はウェブやホイルなどのフレキシブル基板も包含しうる。
【0019】
[0029] スパッタリングは、ディスプレイの生産に用いることができる。例えば、スパッタリングは、電極又はバスの生成などのメタライゼーションのために使用されうる。スパッタリングは、薄膜トランジスタ(TFT)の生成、並びにITO(酸化インジウムスズ)層の生成に使用されうる。スパッタリングはまた、薄膜太陽電池の生産においても使用することができる。薄膜太陽電池は、バックコンタクト、吸収層、及び透明導電酸化膜層(TCO)を含む。バックコンタクト及びTCO層は、スパッタリングにより製造されるが、吸収層は通常、化学気相堆積プロセスで製造される。
【0020】
[0030] 本書に記載の実施形態の幾つかは、例えば、リチウム電池製造又はエレクトロクロミックウィンドウ向けに、大面積基板を被覆するために、利用されうる。一実施例として、大面積基板上に複数の薄膜バッテリが形成されうる。幾つかの実施形態によれば、基板は、0.5m
2以上の基板表面、例えば、約0.67m
2の基板(0.73m×0.92m)に対応するGEN4.5、約1.4m
2の基板(1.1m×1.3m)に対応するGEN5、約4.29m
2の基板(1.95m×2.2m)に対応するGEN7.5、約5.3m
2の基板(2.16m×2.46m)に対応するGEN8、又は約9.0m
2の基板(2.88m×3.13m)に対応するGEN10などの大面積基板であってもよい。GEN11及びGEN12などのさらに大きな世代、及び/又はそれに相当する基板面積を同様に実装することができる。
【0021】
[0031]
図1は、本書に記載の実施形態による、スパッタ堆積源100の概略断面図を示す。スパッタ堆積源100は、両面スパッタリング用に構成された少なくとも1つの電極アセンブリ120を含む。電極アセンブリ120は、例えば、第1の基板保持領域153内で、電極アセンブリの第1の堆積面10上に配置された第1の基板151を被覆するように、また、例えば、第2の基板保持領域154内で、第1の堆積面10とは反対の電極アセンブリの第2の堆積面11上に配置された第2の基板152を被覆するように、構成されうる。
【0022】
[0032] 電極アセンブリ120は、基板上に堆積されるターゲット材料を含むスパッタターゲットを含みうるカソード125を含む。電極アセンブリ120は更に、少なくとも1つの第1のアノード132及び少なくとも1つの第2のアノード142を有するアノードアセンブリ130を含む。少なくとも1つの第1のアノード132は第1の堆積面10上に配置されてよく、少なくとも1つの第2のアノード142は第2の堆積面11上に配置されてよい。少なくとも1つの第1のアノード132は、第1の堆積面10上に生成された第1のプラズマ131に影響を及ぼすように構成されてよく、少なくとも1つの第2のアノード142は、第2の堆積面11上に生成された第2のプラズマ141に影響を及ぼすように構成されてよい。
【0023】
[0033] 「第1の堆積面」は、本開示で使用されているように、例えば、前後方向Xにあるスパッタ堆積源の前方で、被覆される基板を配置するための第1の基板保持領域153を含みうる、電極アセンブリ120の第1の面上の第1の空間領域として理解されうる。例えば、第1の基板保持領域153に配置された基板は、カソード125の前面から第1の堆積面10に向かって放出される原子又は分子によって被覆されうる。第1のプラズマ131は、第1の基板保持領域153に面したカソードの前面に隣接した第1の堆積面10上に生成されうる。
【0024】
[0034] 同様に、「第2の堆積面」は、本開示で使用されているように、例えば、前後方向Xにあるスパッタ堆積源の後面上で、被覆される基板を配置するための第2の基板保持領域154を含みうる、電極アセンブリ10の第2の面上の第2の空間領域として理解されうる。例えば、第2の基板保持領域154に配置された基板は、カソードの後面から第2の堆積面11に向かって放出される原子又は分子によって被覆されうる。第2のプラズマ141は、第2の基板保持領域154に面したカソード125の後面に隣接した第2の堆積面11上に生成されうる。
【0025】
[0035] したがって、幾つかの実施形態では、第1の基板を被覆するための第1の被覆領域は、例えば、カソードの前面に隣接して、第1の堆積面上に提供され、また、第2の被覆領域は、例えば、カソードの後面に隣接して、第2の堆積面11上に提供されうる。一又は複数の被覆層は、第1の基板保持領域153内の第1の堆積面10上に配置された第1の基板151の上に堆積され、一又は複数の被覆層は、第2の基板保持領域154内の第2の堆積面11上に配置された第2の基板152の上に堆積されうる。
【0026】
[0036] 幾つかの実装では、中心平面Cは第1の堆積面10と第2の堆積面11との間に延在しうる。中心平面Cは、第1の堆積面10と第2の堆積面11を分割しうる。言い換えるならば、中心平面Cの前方の第1の空間領域は第1の堆積面10に対応し、中心平面Cの後方の第2の空間領域は第2の堆積面11に対応しうる。幾つかの実装では、中心平面Cはカソード125の中心を通って、前後方向Xに延在しうる。幾つかの実施形態では、電極アセンブリ120は中心平面Cに対して対称になりうる。電極アセンブリの対称な設定は、第1のプラズマ131及び第2のプラズマ141の対応形状につながりうる。
【0027】
[0037] 中心平面Cはカソード125を通って、例えば、カソード125の回転軸Aを通って延在しうる。幾つかの実施形態ではまた、アノードアセンブリ130は、中心平面Cに対して対称に構成されうる。その場合、少なくとも1つの第1のアノード132は、中心平面Cの第1の面、すなわち、第1の堆積面10の上に配置され、少なくとも1つの第2のアノード142は、第2の面、すなわち、中心平面Cの他方の面、すなわち、第2の堆積面11の上に配置されうる。「第1の面上に配置されている」とは、本書で使用されているように、第1のアノードの幾何学的中心が中心平面Cの第1の面上に位置していることを意味しうる。幾つかの実施形態では、第1のアノード全体は中心平面Cの第1の面上に位置している。同様に、「第2の面上に配置されている」とは、本書で使用されているように、第2のアノードの幾何学的中心が中心平面Cの第1の面上に位置していることを意味しうる。幾つかの実施形態では、第2のアノードは全体的に中心平面Cの第2の面上に位置している。
【0028】
[0038] 幾つかの実施形態によれば、第1の電場はカソード125と少なくとも1つの第1のアノード132との間に印加され、第2の電場はカソード125と少なくとも1つの第2のアノード142との間に印加されうる。第1の電場を調整することで、第1のプラズマ131は影響される(例えば、成形され、強くなる又は弱くなる)ことがあり、第2の電場を調整することで、第2のプラズマ141は影響される(例えば、成形され、強くなる又は弱くなる)ことがありうる。少なくとも1つの第1のアノード132は、第1の堆積面10上に部分的に又は全体的に提供されるため、第1のプラズマ131は少なくとも1つの第1のアノード132によって選択的に影響されうる。少なくとも1つの第2のアノード142は、第2の堆積面11上に部分的に又は全体的に提供されるため、第2のプラズマ141は少なくとも1つの第2のアノード142によって選択的に影響されうる。したがって、第1の堆積面上及び第2の堆積面上でのプラズマ制御の改良は、本書に記載の実施形態に従って可能である。
【0029】
[0039] 幾つかの実施形態では、第1の基板151及び第2の基板152は、スパッタ堆積源100により同時に被覆されうる。言い換えるならば、スパッタ堆積源の電極アセンブリ120は、2つの異なる基板上で、両面スパッタ堆積を同時に行うように構成されうる。この場合、第1の堆積面上の第1のプラズマ131及び第2の堆積面上の第2のプラズマ141は、2つの向かい合う方向、例えば、第1の基板151に向かう前方、及び第2の基板152に向かう後方への堆積が可能になるように、同時に生成されうる。
【0030】
[0040] 幾つかの実施形態では、第1の基板151及び第2の基板152は順次被覆されうる。この場合、第1の基板151及び第2の基板152は異なる基板になることもあれば、同じ基板になることもありうる。例えば、第1の基板151の第1の主要面は、カソード125の前面からのスパッタリングによって第1の堆積面10上に被覆可能で、第1の基板151は第2の堆積面11まで移送され、その後、第1の基板151は第2の基板152と称されて、カソードの後面からのスパッタリングによって第2の堆積面11上で再び被覆可能になりうる。その場合、基板の第1の主要面が再び被覆されうるか、及び/又は、基板の第2の主要面が第2の堆積面11上で被覆されうる。したがって、幾つかの実施形態では、同一の基板が異なる堆積面上で2回被覆されうる。
【0031】
[0041] 更なる可能性として、第1の基板151は第1の堆積面上で被覆され、その後、第2の基板152、すなわち、第1の基板とは異なる基板は、カソードの後面からのスパッタリングによって第2の堆積面上で被覆されうる。
【0032】
[0042] 両面スパッタリング用に構成されている電極アセンブリ120を提供することによって、一又は複数の基板の同時被覆又は順次被覆にカソードの両面が使用されうるため、処理速度を高めることができる。
【0033】
[0043] 本書に記載の他の実施形態と組み合わせることができる幾つかの実施形態では、第1の基板ホルダは、第1の基板151が第1のプラズマ131に面するように保持するため、第1の基板保持領域153内の第1の堆積面10上に提供され、第2の基板ホルダは、第2の基板が第2のプラズマ141に面するように保持するため、第2の基板保持領域154内の第2の堆積面上に提供されうる。カソード125は、第1の基板ホルダと第2の基板ホルダとの間のほぼ中心に配置されうる。基板ホルダは、各被覆領域との間で基板を出し入れするように構成された移動式基板ホルダになりうる。
【0034】
[0044] カソードは、平面カソードとして、或いは円筒形カソードなどの湾曲したカソードとして提供されうる。更に、カソードは静止カソードとして、又は回転式カソードとして構成されうる。
【0035】
[0045]
図1に示した実施形態では、カソード125は回転軸Aの周りに回転可能な回転式カソードである。特に、カソード125は、堆積される材料を提供するためのスパッタターゲットを含んでよく、スパッタターゲットは回転軸Aの周りに回転可能になりうる。スパッタターゲットは、スパッタリングによってスパッタターゲットから放出され、基板上に堆積されうる金属材料及び/又は非金属材料を含みうる。幾つかの実施形態では、カソード125は、基本的に円筒の形状を有する円筒形カソードになりうる。
本書に記載の他の実施形態と組み合わせることができる幾つかの実施形態では、カソード(125)は、回転式カソード、具体的には回転式円筒形カソード、より具体的には内部に配置された2つの磁石アセンブリを有する回転式カソードになりうる。静止した平面カソードと比較して、回転式カソードは、スパッタターゲット材料がスパッタリング中にスパッタターゲットの全周にわたって高い信頼度で利用でき、スパッタターゲットの横方向には、スパッタターゲット面上でスパッタリングの発生が少なくなりうるスパッタターゲットのエッジ部分がないという利点を提供しうる。したがって、回転式カソードを利用することにより、材料費が削減されうる。代替的な実装では、カソードは両面スパッタリング用に構成された平面カソードになりうる。平面カソードには、1つ又は2つ以上の回転可能な磁石アセンブリが提供されうる。
【0036】
[0046] 本書に記載の実施形態によれば、回転式カソードの前面は第1の堆積面10に向けられてよく、また、回転式カソードの後面は第2の堆積面11に向けられてよい。カソードは堆積中に回転しうるため、第1の時点でカソードの前面になりうるカソードの部分は、第2の時点では、例えば、カソードが180°だけ回転した後には、カソードの後面になりうる。両面スパッタリングと回転式カソードの組み合わせは、回転式カソードの全周にわたってスパッタターゲット材料の利用効率を高めることにつながりうる。
【0037】
[0047] スパッタターゲットは、アルミニウム、シリコン、タンタル、モリブデン、ニオビウム、チタニウム、インジウム、ガリウム、亜鉛、TiN、銀及び銅を含む群から選択される少なくとも1つの材料から作られるか、これらの材料を含みうる。具体的には、ターゲット材料は、インジウム、ガリウム、及び亜鉛を含む群から選択されうる。スパッタターゲットは、上述の材料の一部又はこれらの混合物を含みうる。例えば、スパッタターゲットはITOターゲットになりうる。
【0038】
[0048] 本書に記載の他の実施形態と組み合わせることができる幾つかの実施形態では、カソード125には、少なくとも1つのマグネトロン又は磁石アセンブリが提供されうる。スパッタリングは、マグネトロンスパッタリングとして実行されうる。幾つかの実施形態では、磁石アセンブリはターゲットのスパッタターゲット内部に配置され、カソードの回転軸の周りに枢動可能である。
【0039】
[0049] マグネトロンスパッタリングは、堆積速度がかなり速いという点で特に有利である。磁場内に自由電子を閉じ込めるため、スパッタターゲットのターゲット材料の背後に磁石アセンブリ又はマグネトロンを配置することにより、これらの電子は磁場内で運動することを強いられ、脱出することができない。このことは、ガス分子をイオン化する確率を、通常数桁高める。このことは、次に、堆積速度を著しく増大させる。例えば、基本的に円筒形状の回転式スパッタターゲットの場合には、磁石アセンブリは回転式スパッタターゲットの内部に配置されうる。
【0040】
[0050] 「磁石アセンブリ」という用語は、本書で用いられているように、磁場を発生させることができるユニットを意味しうる。通常、磁石アセンブリは、永久磁石からなる。この永久磁石は、生成された磁場内に(例えば、スパッタターゲット上方の領域内に)荷電粒子が閉じ込められるように配置されうる。幾つかの実施形態では、磁石アセンブリは磁石ヨークを含む。
【0041】
[0051] 基板は被覆中に、電極アセンブリ120を通って連続的に移動可能(「動的被覆」)であるか、或いは、基板は被覆中に一定の位置に留まりうる(「静的被覆」)。本開示に記載のスパッタ堆積源は、静的被覆処理及び動的被覆処理の両方に関係しうる。
【0042】
[0052] 本書に記載の他の実施形態と組み合わせることができる幾つかの実施形態では、カソード125は、2つの磁石アセンブリを備えうる。特に、2つの磁石アセンブリは回転式カソードの内部に配置されうる。第1の磁石アセンブリ171は、第1の堆積面10上の第1のプラズマ131に影響を及ぼすように構成され、第2の磁石アセンブリ172は、第2の堆積面11上の第2のプラズマ141に影響を及ぼすように構成されうる。例えば、第1の磁石アセンブリ171は、第1の堆積面10に向かって回転軸Aから延在する第1の半径方向の周囲に、第1のプラズマ131が閉じ込められるように配向され、また、第2の磁石アセンブリ172は、第2の堆積面11に向かって回転軸Aから延在する第2の半径方向の周囲に、第2のプラズマ141が閉じ込められるように配向されうる。
【0043】
[0053] 幾つかの実装では、第1の磁石アセンブリ171及び/又は第2の磁石アセンブリ172は移動可能で、例えば、回転軸Aの周りに枢動可能である。第1の磁石アセンブリの運動は、第1の堆積面10上の第1のプラズマ131の対応する運動を引き起こし、また、第2の磁石アセンブリの運動は、第2の堆積面11上の第2のプラズマ141の対応する運動を引き起こしうる。幾つかの実施形態では、第1の磁石アセンブリが第2の磁石アセンブリに対応して移動可能であるように、第1の磁石アセンブリは第2の磁石アセンブリに固定されうる。例えば、第1の磁石アセンブリと第2の磁石アセンブリは共に、回転軸Aの周りを時計回りに又は反時計周りに回転可能になりうる。したがって、第1のプラズマ131と第2のプラズマ141は、第2の磁石アセンブリを伴う第1の磁石アセンブリの移動に応答して移動可能である。
【0044】
[0054] 本書に記載の他の実施形態と組み合わせることができる幾つかの実施形態では、第1の磁石アセンブリ171は、第2の磁石アセンブリ172とは独立に移動可能になりうる。この場合、第1のプラズマ131と第2のプラズマ141は、各堆積面上で独立に移動可能になりうる。第1の堆積面上の第1のスパッタ方向は、第2の堆積面上の第2の堆積方向とは独立に制御されうる。
【0045】
[0055] 本書に記載の他の実施形態と組み合わせることができる幾つかの実施形態では、少なくとも1つの第1のアノード132は、カソード125の回転軸Aの方向に延在する第1のアノードロッドとして構成され、また、少なくとも1つの第2のアノード142は、カソード125の回転軸Aの方向に延在する第2のアノードロッドとして構成されうる。第1のアノードロッドと第2のアノードロッドは、丸い断面形状、楕円形断面形状、(
図1に示したような)円形断面形状、(
図2に示したような)矩形断面形状、或いは多角形断面形状を有しうる。幾つかの実施形態では、少なくとも1つの第1のアノード及び少なくとも1つの第2のアノードの断面形状は、カソード125の断面積よりも小さくなりうる。例えば、カソード125の直径は、少なくとも1つの第1のアノード及び/又は少なくとも1つの第2のアノードの直径よりも大きくなりうる。例えば、カソードの直径は、3cm以上20cm以下、具体的には、5cm〜12cmになりうる。幾つかの実装では、カソードの直径は20cmを超えうる。第1のアノード及び/又は第2のアノードの直径は、0.5cm以上5cm以下、具体的には2cm〜4cm、例えば、3.5cmになりうる。円以外の形状も可能である。
【0046】
[0056] 幾つかの実施形態では、少なくとも1つの第1のアノード形状は少なくとも1つの第2のアノードの形状に対応しうる。更に、少なくとも1つの第1のアノードとカソードとの間の距離は、少なくとも1つの第2のアノードとカソードとの間の距離に対応しうる。特に、アノードアセンブリの配置は、中心平面Cに対して対称になりうる。少なくとも1つの第1のアノード及び少なくとも1つの第2のアノードは、それぞれのアノード電位に設定される導電性の外表面を含みうる。幾つかの実装では、各アノードを冷却するため、冷却チャネルが、少なくとも1つの第1のアノード及び/又は少なくとも1つの第2のアノードの内部に提供されうる。
【0047】
[0057]
図2は、本書に記載の実施形態による、スパッタ堆積源200の概略断面図を示す。スパッタ堆積源200は、両面スパッタ堆積用に構成された少なくとも1つの電極アセンブリ120を含む。スパッタ堆積源200の特徴の多くは、
図1に示したスパッタ堆積源100のそれぞれの特徴に対応し、上記の説明を参照することが可能なため、ここでは繰り返さない。
【0048】
[0058] スパッタ堆積源200は、堆積されるターゲット材料を提供するための回転式カソードを含み、第1の堆積面10上に配置される第1の基板151及び第2の堆積面11上に配置される第2の基板152は、カソードの反対側からのスパッタリングによって、特にカソードの前面及び後面からのスパッタリングによって被覆されうる。
【0049】
[0059]
図2に示した実施形態では、アノードアセンブリ130は、第1の堆積面10上に配置された2つの第1のアノード(以下、左の第1のアノード231及び右の第1のアノード232と称する)、及び、第2の堆積面11上に配置された2つの第2のアノード(以下、左の第2のアノード241及び右の第2のアノード242と称する)を備える。幾つかの実施形態では、左の第1のアノード231は第1の面上(例えば、カソードの左側)に配置され、右の第1のアノード232は第2の面上(例えば、第1の面の反対側)に、具体的にはカソードの右側に配置されうる。カソード125は、左の第1のアノード231と右の第1のアノード232との間の中心に設けられる。同様に、幾つかの実施形態では、左の第2のアノード241は第1の面上(例えば、カソードの左側)に配置され、右の第2のアノード242は第2の面上(例えば、第1の面の反対側)に、具体的にはカソードの右側に配置される。カソード125は、左の第2のアノード241と右の第2のアノード242との間に配置されうる。
【0050】
[0060] 例えば、カソードは2つの第1のアノードの間の中心に配置されうる。更に、カソードは2つの第2のアノードの間の中心に配置されうる。本書で参照されているように、左右の方向は、電極アセンブリの前後方向Xに垂直な方向になりうる。第1の堆積面上に2つの第1のアノードを、また、第2の堆積面上に2つの第2のアノードを設けることによって、第1のプラズマ131は、カソード前面にある第1の堆積面の2つの第1のアノードの間に生成可能で、また、第2のプラズマ141は、カソードの後面に隣接した第2の堆積面の2つの第2のアノードの間に生成可能である。隣接電極アセンブリによって生成されたプラズマからの前記プラズマが改善され、個別のプラズマ制御がもたらされうる。
【0051】
[0061] 幾つかの実装では、2つの第1のアノードと2つの第2のアノードは、中心平面Cに対して対称に配置されうる。特に、堆積源200の電極アセンブリは、カソード125の回転軸Aを通って交差しうる中心平面Cに対して対称になりうる。
【0052】
[0062] 本書に記載の他の実施形態と組み合わせることができる幾つかの実施形態では、第1の堆積面が中心平面Cの前面で延在し、第2の堆積面が中心平面Cの後面で延在するように、分離壁160は中心平面C内に配置されうる。例えば、分離壁160は、第1のプラズマ131と第2のプラズマ141との間の分離が改善されうるように構成されうる。特に、カソード125と少なくとも1つの第1のアノード132との間に印加される第1の電場は、分離壁160によって、カソード125と少なくとも1つの第2のアノード142との間に印加される第2の電場から効果的に分離されうる。幾つかの実施形態では、分離壁は、接地されうる金属などの導電性材料から作られうる。他の実施形態では、分離壁は、誘電体材料などの絶縁体から作られうる。
【0053】
[0063] 分離壁160は、少なくとも1つの第1のアノード132と少なくとも1つの第2のアノード142との間に配置されうる。分離壁160は、2つ以上の壁セグメントを含みうる。幾つかの実装では、カソード125は、分離壁の第1の壁セグメント161と第2の壁セグメント162との間に配置されうる。各壁セグメントは、第1の堆積面に設けられた第1のアノードと第2の堆積面に設けられた第2のアノードとの間に配置されうる。
実施形態によれば、1つ、2つ又はそれ以上の壁セグメントを有する分離壁160は、少なくとも1つの第1のアノード132と少なくとも1つの第2のアノード142との間に配置されうる。
【0054】
[0064] 例えば、
図2の実施形態では、分離壁160は、左の第1のアノード231と左の第2のアノード241との間の回転式カソードの左側に設けられた第1の壁セグメント161を含む。分離壁160の第2の壁セグメント162は、右の第1のアノード232と右の第2のアノード242との間の回転式カソードの右側に設けられうる。
【0055】
[0065] 幾つかの実施形態では、3つ以上の壁セグメントは、第1の堆積面を第2の堆積面から分離するように設けられうる。幾つかの実施形態では、分離壁160とカソード125との間の最小距離は1cm以下、具体的には5mm以下、より具体的には1mm以下になりうる。
【0056】
[0066]
図2に概略的に示されているように、第1の堆積面10上に生成される第1のプラズマ131は、主として左の第1のアノード231によって影響されうる左のプラズマクラウド、並びに、主として右の第1のアノード232によって影響されうる右のプラズマクラウドを含みうる。第2の堆積面11上に生成される第2のプラズマ141は、主として左の第2のアノード241によって影響されうる左のプラズマクラウド、並びに、主として右の第2のアノード242によって影響されうる右のプラズマクラウドを含みうる。幾つかの実施形態では、プラズマクラウドの強度は、各プラズマクラウドに関連するアノードのアノード電位を調整することによって、個別に影響されうる。空間的に分解されたプラズマ制御は可能である。幾つかの実装では、2つの第1のアノードは第1のプラズマ131に影響を及ぼすように構成され、2つの第2のアノードは第2のプラズマ141に影響を及ぼすように構成されうる。
【0057】
[0067]
図3は、本書に記載の実施形態による、スパッタ堆積源300の概略断面図を示す。スパッタ堆積源300の特徴の多くは、
図2に示したスパッタ堆積源200のそれぞれの特徴に対応し、上記の説明を参照することが可能なため、ここでは繰り返さない。
【0058】
[0068]
図2の実施形態と同様に、スパッタ堆積源300の電極アセンブリは、カソード125と、第1の堆積面10上に配置された少なくとも1つの第1のアノード132(例えば、第1のアノードのペア)を有するアノードアセンブリ130と、第2の堆積面11上に配置された少なくとも1つの第2のアノード142(例えば、第2のアノードのペア)を含む。オプションにより、少なくとも1つの第1のアノード132は、左の第1のアノード231及び右の第1のアノード232として提供され、少なくとも1つの第2のアノード142は、上述のように、左の第2のアノード241及び右の第2のアノード242を含みうる。
【0059】
[0069] 本書に記載の他の実施形態と組み合わせることができる幾つかの実施形態では、電力装置310が提供されうる。電力装置310は、電力アセンブリに電力供給するように構成されうる。幾つかの実施形態では、電力装置310は、カソード125をカソード電位P(例えば、負電位)に接続するように、少なくとも1つの第1のアノード132を第1のアノード電位P1(例えば、第1の正電位)に接続するように、また、少なくとも1つの第2のアノード142を第2のアノード電位P2(例えば、第2の正電位)に接続するように、構成されうる。幾つかの実施形態では、第1のアノード電位P1は第2のアノード電位P2に対応しうる。幾つかの実施形態では、第1のアノード電位P1は第2のアノード電位P2とは異なりうる。特に、第1のアノード電位P1及び第2のアノード電位P2のうちの少なくとも1つは調整可能になりうる。第1のアノード電位P1及び第2のアノード電位P2のうちの少なくとも1つを調整することにより、第1のプラズマ131及び第2のプラズマ141のうちの少なくとも1つは影響される(例えば、成形され、強くなる又は弱くなる)ことがありうる。例えば、第1のアノード電位P1を調整することにより、第1のプラズマ131の強度は第2のプラズマ141に対応するように調整されうる。
【0060】
[0070] 例えば、電力装置310は、カソードにカソード電位P(例えば、負電圧などのカソード電圧)を印加するため、カソード125に接続された第1の出力端子と、少なくとも1つの第1のアノード132に第1のアノード電位P1(例えば、正電圧又は接地電位などの第1のアノード電圧)を印加するため、少なくとも1つの第1のアノード132に接続された第2の出力端子と、少なくとも1つの第2のアノード142に第2のアノード電位P2(例えば、正電圧又は接地電位などの第2のアノード電圧)を印加するため、少なくとも1つの第2のアノード142に接続された第3の出力端子とを有する電源を含みうる。電源の出力端子によって供給される電圧は、必要に応じて調整可能になりうる。
【0061】
[0071] したがって幾つかの実施形態では、第1の電場はカソードと少なくとも1つの第1のアノードとの間に印加可能で、第2の電場はカソードと少なくとも1つの第2のアノードとの間に印加可能である。第1の電場は、特に、第1のアノード電位P1及び第2のアノード電位P2のうちの少なくとも1つを調整することによって、第2の電場とは独立に調整されうる。
実施形態によれば、第1の電場及び第2の電場のうちの少なくとも1つは、第1のプラズマと第2のプラズマとで等しい輝度又は明度を維持するように、調整されうる。
【0062】
[0072]
図3に示した実施形態では、2つの第1のアノードは第1のアノード電位P1に接続され、2つの第2のアノードは第2のアノード電位P2に接続される。他の実施形態では、2つ以上の第1のアノードはそれぞれ異なるアノード電位に接続されてよく、及び/又は、2つ以上の第2のアノードはそれぞれ異なるアノード電位に接続されてよい。例えば、
図8に示した実施形態では、左の第1のアノード231は左の第1のアノード電位P1/1に接続され、右の第1のアノード232は右の第1のアノード電位P1/2に接続され、左の第2のアノード241は左の第2のアノード電位P2/1に接続され、及び/又は、右の第2のアノード242は右の第2のアノード電位P2/2に接続される。この場合、第1のプラズマの左のプラズマクラウドは、第1のプラズマの第2のプラズマクラウドとは独立に影響され、第2のプラズマの左のプラズマクラウドは、第2のプラズマの第2のプラズマクラウドとは独立に影響されうる。局所プラズマ制御は可能になる。堆積層の均一性は、必要に応じて局所的に調整可能である。
【0063】
[0073] 追加的に又は代替的に、幾つかの実施形態では、少なくとも1つのアノード(例えば、少なくとも1つの第1のアノード132又は少なくとも1つの第2のアノード142)は、各アノードの延在方向に(例えば、描画平面に垂直に)互いに隣り合って配置される2つ以上のアノードセグメント(図には示していない)を含みうる。少なくとも1つのアノードの2つ以上のアノードセグメントは個別に電力供給されうる。例えば、各アノードセグメントはそれぞれ調整可能なアノードセグメント電位に接続されてよく、及び/又は、各アノードセグメントは、各アノードセグメントに流れる電流が個別に調整されうるように、可変抵抗器又は電位差計を介して各アノードセグメント電位に接続されうる。したがって、描画平面に垂直な方向での(例えば、回転軸Aの方向など、カソードの長さ方向での)空間的に分解されたプラズマ制御は、可能になる。
【0064】
[0074] 幾つかの実施形態では、(例えば、第1のプラズマ131及び第2のプラズマ141の個別の制御による)前後方向での、(例えば、一又は複数のアノードのアノードセグメントの個別の制御による)回転軸Aの方向での、及び/又は、(例えば、
図8に示したような左のプラズマクラウドと右のプラズマクラウドの個別の制御による、及び/又は、
図7に図解したような電極アセンブリのアレイの電極アセンブリの個別の制御による)中心平面Cの方向での個別のプラズマ制御が可能になりうる。優れた層均一性を有する層が、一又は複数の基板上に堆積可能である。
【0065】
[0075]
図4は、本書に記載の実施形態による、スパッタ堆積源400の概略断面図を示す。
図4のスパッタ堆積源400の特徴の多くは、
図3に示したスパッタ堆積源300のそれぞれの特徴に対応し、上記の説明を参照することが可能なため、ここでは繰り返さない。
【0066】
[0076] 幾つかの実施形態では、カソード125、少なくとも1つの第1のアノード132、並びに少なくとも1つの第2のアノード142に電力供給するための電力装置310が提供されうる。電力装置310は、カソード125及び少なくとも1つの第1のアノード132に接続可能な第1の電源311、及び、カソード125及び少なくとも1つの第2のアノード142に接続可能な第2の電源312を含みうる。第1の電源311は、カソード125と少なくとも1つの第1のアノードとの間に印加される第1の電場を調整するために使用され、第2の電源312は、カソードと少なくとも1つの第2のアノードとの間に印加される第2の電場を調整するために使用されうる。
【0067】
[0077]
図4に概略的に示したように、第1の電源311の第1の出力端子及び第2の電源312の第1の出力端子は、カソード125に接続可能であってよく、第1の電源311の第1の出力端子及び第2の電源312の第1の出力端子は共に、カソード電位Pを供給するように構成されうる。
【0068】
[0078] 幾つかの実施形態では、第1の電源311の第2の出力端子は、少なくとも1つの第1のアノードに接続され、第1のアノード電位P1を供給するように構成されてよく、また、第2の電源312の第2の出力端子は少なくとも1つの第2のアノードに接続され、第2のアノード電位P2を供給するように構成されてよい。第1のアノード電位P1及び/又は第2のアノード電位P2は、スパッタリング中に第1のプラズマ131及び/又は第2のプラズマ141に影響を及ぼすように、必要に応じて調整されうる。例えば、第1のアノード電位P1及び第2のアノード電位P2は、第1の堆積面10上の第1のプラズマ131と第2の堆積面11上の第2のプラズマ141が基本的に等しく保たれるように調整されうる。
【0069】
[0079]
図5は、本書に記載の実施形態による、スパッタ堆積源500の概略断面図を示す。
図4のスパッタ堆積源500の特徴の多くは、
図4に示したスパッタ堆積源400のそれぞれの特徴に対応し、上記の説明を参照することが可能なため、ここでは繰り返さない。
【0070】
[0080] 本書に記載の他の実施形態と組み合わせることができる幾つかの実施形態では、カソード125、少なくとも1つの第1のアノード132、並びに少なくとも1つの第2のアノード142に電力供給するための電力装置310が提供されうる。電力装置310は、少なくとも1つの第1のアノード132を第1のアノード電位P1に接続するための第1の電気接続313と、少なくとも1つの第2のアノード142を第2のアノード電位P2に接続するための第2の電気接続314とを含みうる。第1のアノード電位P1は、幾つかの実施形態で、第2のアノード電位P2に対応しうる。
【0071】
[0081] 幾つかの実装では、第1の電気接続313の第1の電気抵抗及び第2の電気接続314の第2の電気抵抗のうちの少なくとも1つを調整するため、少なくとも1つの可変抵抗器又は電位差計315が提供されうる。
【0072】
[0082] 例えば、第1の電気接続313には、第1の電気抵抗を調整するための第1の可変抵抗器が提供され、第2の電気接続314には、第2の電気抵抗を調整するための第2の可変抵抗器が提供されうる。したがって、少なくとも1つの第1のアノードに向かって流れる第1のアノード電流及び少なくとも1つの第2のアノードに向かって流れる第2のアノード電流のうちの少なくとも1つは、必要に応じて、第1の電気接続313及び/又は第2の電気接続314の抵抗を変えることによって調整されうる。第1のプラズマ131は、第2のプラズマ141とは独立に影響されうる。
【0073】
[0083] 他の実施形態では、例えば、
図5に示した実施形態では、少なくとも1つの第1のアノード132と少なくとも1つの第2のアノード142との間に、1つの可変抵抗器又は電位差計315が接続されうる。可変抵抗器又は電位差計315の第3の端子(例えば、制御端子)は、第1のアノード電位P1及び第2のアノード電位P2を供給する電源の出力端子に接続されうる。電源の出力端子から少なくとも1つの第1のアノード132に向かって流れる第1のアノード電流と、電源の出力端子から少なくとも1つの第2のアノード142に向かって流れる第2のアノード電流との比率は、可変抵抗器又は電位差計315の第3の端子を介して調整可能である。したがって、第1のプラズマ131と第2のプラズマ141の強度比率は必要に応じて調整可能である。例えば、可変抵抗器又は電位差計315は、第1のプラズマと第2のプラズマを制御して、スパッタリング中に基本的に等しく保つために使用することができる。
【0074】
[0084] 本書に記載の他の実施形態と組み合わせることができる幾つかの実施形態では、スパッタ堆積源は、堆積特性を検出するための検出器320と、検出した堆積特性に基づいて、電力装置310を制御するための制御デバイス330を含みうる。
【0075】
[0085] 例えば、
図5に例示的に示したように、検出器320は、少なくとも1つの第1のアノード132と少なくとも1つの第2のアノード142との間の差動電流I
DIFFを測定するように構成されうる。制御デバイス330は、検出した差動電流に基づいて、可変抵抗器又は電位差計315を制御するように構成されうる。例えば、少なくとも1つの第1のアノード132と少なくとも1つの第2のアノード142との間の小さな又は消滅する差動電流I
DIFFは有利になりうる。幾つかの実施形態では、差動電流が所定の電流閾値を超える場合には、可変抵抗器又は電位差計315は調整されうる。したがって、改善されたプラズマ制御が提供される。
【0076】
[0086] 代替的に、例えば、
図3又は
図4に示した実施形態では、少なくとも1つの第1のアノード132と少なくとも1つの第2のアノード142との間で測定された差動電流に基づいて、第1のアノード電位P1及び第2のアノード電位P2のうちの少なくとも1つを調整するため、制御デバイス(図示せず)が提供されうる。例えば、第1のプラズマ131は、第2のプラズマ141のサイズ及び/又は強度に対応するように制御されうる。
【0077】
[0087] 幾つかの実施形態では、検出器320は、堆積特性を測定するように構成されうる。堆積特性は、第1のプラズマ及び第2のプラズマのうちの少なくとも1つの光学特性(例えば、プラズマ強度、強度、輝度又は明度)、第1のプラズマ及び/又は第2のプラズマの形状又は位置、第1のアノードと第2のアノードとの間の差動電流、カソードと少なくとも1つの第1のアノードとの間を流れる第1の電流及びカソードと少なくとも1つの第2のアノードとの間を流れる第2の電流のうちの少なくとも1つ、カソードと少なくとも1つの第1のアノードとの間の第1の電場強度及びカソードと少なくとも1つの第2のアノードとの間の第2の電場強度のうちの少なくとも1つ、第1の堆積面上の第1の基板に被覆された少なくとも1つの層の特性、第2の堆積面上の第2の基板に被覆された少なくとも1つの層の特性(例えば、層の均一性、層の厚さ、シート抵抗、又はシート抵抗の均一性)のうちの一又は複数を含む。
【0078】
[0088]
図6は、本書に記載の実施形態による、スパッタ堆積源600の概略断面図を示す。
図6のスパッタ堆積源600の特徴の多くは、
図5に示したスパッタ堆積源500のそれぞれの特徴に対応し、上記の説明を参照することが可能なため、ここでは繰り返さない。
【0079】
[0089]
図6に例示的に示した実施形態では、第1の電気接続313の第1の電気抵抗及び第2の電気接続314の第2の電気抵抗のうちの少なくとも1つを調整するため、可変抵抗器又は電位差計315が提供される。可変抵抗器又は電位差計315は、制御デバイス330によって制御することができる。
【0080】
[0090] 制御デバイス330は、検出器320によって検出された堆積特性に基づいて、可変抵抗器又は電位差計315を制御しうる。検出器320は、第1のプラズマ131及び/又は第2のプラズマ141の光学特性を検出するように構成された光学検出器であってよい。例えば、検出器320は、第1のプラズマ131及び/又は第2のプラズマ141の輝度、プラズマ強度、又は明度を測定するように構成されうる。制御デバイス330は、第1のプラズマの測定された特性が第2のプラズマの測定された特性に対応するように、可変抵抗器又は電位差計315を制御しうる。幾つかの実施形態では、閉ループ制御が提供されうる。例えば、第1のプラズマの第1の輝度が第2のプラズマの第2の輝度を超える場合には、少なくとも1つの第2のアノード142に向かう電流は、可変抵抗器又は電位差計315を介して第2の電気接続314の第2の電気抵抗を低減することによって、増やすことができる。同様に、第1のプラズマの第1の輝度が、第2のプラズマの第2の輝度を下回るように測定される場合には、少なくとも1つの第1のアノード132に向かう電流は、可変抵抗器又は電位差計315を介して第1の電気接続313の第1の電気抵抗を低減することによって、増やすことができる。両面スパッタ堆積用の改善されたプラズマ制御が提供される。
【0081】
[0091]
図7は、本書に記載の実施形態による、スパッタ堆積源700の概略断面図を示す。
図7のスパッタ堆積源700の特徴の多くは、
図4に示したスパッタ堆積源400のそれぞれの特徴に対応し、上記の説明を参照することが可能なため、ここでは繰り返さない。
【0082】
[0092] スパッタ堆積源700は、互いに隣り合うように配置された2つ以上の電極アセンブリのアレイ(例えば、電極アセンブリの線形配置又は線形アレイ)を含む。2つ以上の電極アセンブリのアレイを含むスパッタ堆積源700により、堆積速度を高め、大面積基板をより迅速に被覆することができる。
【0083】
[0093] スパッタ堆積源700の電極アセンブリの少なくとも1つは、本書に記載の実施形態による電極アセンブリとして、すなわち、両面スパッタリング用に構成された電極アセンブリとして構成されうる。幾つかの実施形態では、2つ以上の隣接する電極アセンブリは、本書に記載の実施形態による電極アセンブリとして構成されてよく、可能な特徴の組み合わせの各々についてはここでは繰り返さない。
【0084】
[0094] 例えば、
図7に例示的に示したように、スパッタ堆積源700は、第2の電極アセンブリ702の隣に配置された第1の電極アセンブリ701を含みうる。第1の電極アセンブリ701及び第2の電極アセンブリ702の各々は、両面スパッタ堆積用に構成されてよく、第1の堆積面10上の第1のプラズマ及び第2の堆積面11上の第2のプラズマを生成するように構成された回転式カソードなどのカソードと、第1の堆積面上に配置された少なくとも1つの第1のアノード及び第2の堆積面上に配置された少なくとも1つの第2のアノードを有するアノードアセンブリとを含みうる。
【0085】
[0095] その場合、第1の電極アセンブリ701及び第2の電極アセンブリ702の各々の、或いは更なる電極アセンブリのカソード及びアノードアセンブリは、
図1から
図6のいずれかを参照して上述されている特徴の一部又はすべてを有しうることを理解されたい。例えば、第1の電極アセンブリ701の少なくとも1つの第1のアノード及び第1の電極アセンブリ701の少なくとも1つの第2のアノードはそれぞれ、アノードのペアから構成されてよく、第1の電極アセンブリ701のカソードの向かい合う面上に、例えば、左右方向に配置されうる。同様に、第2の電極アセンブリ702の少なくとも1つの第1のアノード及び第2の電極アセンブリ702の少なくとも1つの第2のアノードはそれぞれ、アノードのペアから構成されてよく、第2の電極アセンブリ702のカソードの向かい合う面上に、例えば、左右方向に配置されうる。
【0086】
[0096] したがって、幾つかの実施形態では、2つのアノードは第1の堆積面上の隣接するカソード間に配置されてよく、また、2つのアノードは第2の堆積面上の隣接するカソード間に配置されてよい。第1の堆積面上の隣接する電極アセンブリによって生成される第1のプラズマは、互いにより良く分離可能、及び/又は個別に制御可能で、また、第2の堆積面上の隣接する電極アセンブリによって生成される第2のプラズマは、互いにより良く分離可能、及び/又は個別に制御可能である。これは、2つのアノードが、第1の電極アセンブリ701の第1のプラズマと第2の電極アセンブリ702の第1のプラズマとの間に配置され、1つのアノードが第1の電極アセンブリ701の第1のプラズマに影響を及ぼすように構成され、もう1つのアノードが第2の電極アセンブリ702の第1のプラズマに影響を及ぼすように構成されうるからである。2つの隣接する電極アセンブリによって生成されるそれぞれの第2のプラズマに同じことが提供されうる。
【0087】
[0097] 本書に記載の他の実施形態と組み合わせることができる幾つかの実施形態では、電力装置710は、2つ以上の電極アセンブリに個別に電源供給するように設けられうる。
本書に記載の実施形態によれば、電力装置は、2つ以上の電極アセンブリ(701、702)の少なくとも1つの第1のアノード及び少なくとも1つの第2のアノードに、それぞれの堆積特性に基づいて個別に電力供給するように構成されうる。例えば、電力装置710は、第1の電極アセンブリの第1のプラズマを第2の電極アセンブリ702の第1のプラズマとは独立に制御し、また、第1の電極アセンブリ701の第2のプラズマを第2の電極アセンブリ702の第2のプラズマとは独立に制御するように構成されうる。
【0088】
[0098] 特に、幾つかの実施形態では、第1の電極アセンブリ701の第1のアノードアセンブリ及び第2の電極アセンブリ702の第1のアノードアセンブリは個別に電力供給され、特に、検出器によってそれぞれ測定される堆積特性に基づいて電力供給されうる。同様に、第1の電極アセンブリ701の第2のアノードアセンブリ及び第2の電極アセンブリ702の第2のアノードアセンブリは個別に電力供給され、特に、検出器によってそれぞれ測定される堆積特性に基づいて電力供給されうる。隣接する電極アセンブリによって生成されるプラズマは、改善された被覆結果を実現するため、特に、基板全体にわたって、及び/又は基板から基板まで、一様な被覆を実現するため、個別に制御可能である。
【0089】
[0099]
図8は、本書に記載の実施形態による堆積装置800の概略断面図を示す。
図8のスパッタ堆積源800の特徴の多くは、
図4に示したスパッタ堆積源400のそれぞれの特徴に対応し、上記の説明を参照することが可能なため、ここでは繰り返さない。
【0090】
[00100] 堆積装置800は、堆積チャンバ801(例えば、真空チャンバ)、及び本書に記載の実施形態のいずれかのスパッタ堆積源を備え、スパッタ堆積源は堆積チャンバ内に配置されている。堆積チャンバは、10mbar以下、具体的には1mbar以下の圧力まで排気されうる。
【0091】
[00101] 第1の基板保持領域153(例えば、第1の基板ホルダを含む)は被覆される第1の基板151を保持するため、スパッタ堆積源の第1の堆積面10の上に設けられてよく、第2の基板保持領域154(例えば、第2の基板ホルダを含む)は被覆される第2の基板152を保持するため、第1の堆積面10とは反対の第2の堆積面11の上に設けられてよい。第1及び第2の基板保持領域に基板を出し入れするための移送システムが提供されうる。例えば、基板ホルダは移動可能になりうる。
【0092】
[00102]
図8に示した実施形態では、第1の堆積面10上に配置されるアノードアセンブリの2つの第1のアノード(例えば、左の第1のアノード231及び右の第1のアノード232)は、個別に電力供給可能で、第2の堆積面11上に配置されるアノードアセンブリの2つの第2のアノード(例えば、左の第2のアノード241及び右の第2のアノード242)は、個別に電力供給可能である。
【0093】
[00103]
図9は、本書に記載の実施形態によるスパッタ堆積源の操作方法を示すフロー図である。本方法は、ボックス910で、カソード125の第1の堆積面10上に第1のプラズマを生成すること、及び、第1の堆積面10とは反対のカソードの第2の堆積面11上に第2のプラズマを生成することを含む。幾つかの実施形態では、第1のプラズマ及び第2のプラズマは基本的に同時に点火されてよく、及び/又は同時に燃焼しうる。ボックス920では、第1のプラズマは、第1の堆積面10上に配置された少なくとも1つの第1のアノード(例えば、第1のアノードのペア)に影響され、及び/又は、第2のプラズマは、第2の堆積面11上に配置された少なくとも1つの第2のアノード(例えば、第2のアノードのペア)に影響されうる。オプションのボックス930では、第1の基板151は、第1のプラズマ131に面するように第1の堆積面10の上に配置されてよく、第2の基板152はオプションにより、第2のプラズマ141に面するように第2の堆積面11の上に配置されてよい。第1の基板151は、カソード125の前面からのスパッタ堆積によって被覆され、第2の基板152(第1の堆積面から第2の堆積面に移動された第1の基板151に対応しうる)は、カソード125の後面からのスパッタ堆積によって被覆されうる。
【0094】
[00104] ボックス910から930までの時間順は変更可能である。例えば、基板は、プラズマ生成の前に各堆積面に配置されうる。第1のプラズマは、カソードと少なくとも1つの第1のアノードとの間に第1の電場を印加することによって生成され、第2のプラズマは、カソードと少なくとも1つの第2のアノードとの間に第2の電場を印加することによって制裁されうる。
【0095】
[00105] 幾つかの実施形態では、第1のプラズマ131に影響を及ぼすことは、カソードと少なくとも1つの第1のアノードとの間の第1の電場を調整することを含み、第2のプラズマ141に影響を及ぼすことは、カソードと少なくとも1つの第2のアノードとの間の第2の電場を調整することを含みうる。第1の電場及び/又は第2の電場は、第1のプラズマと第2のプラズマの間で等しい輝度、等しい強度、等しい明度などを維持するように調整されうる。
【0096】
[00106] 幾つかの実施形態では、ボックス920において影響を及ぼすことは、堆積特性を検出すること、並びに、検出した堆積特性に基づいて、第1のアノード電位P1、第2のアノード電位P2のうちの少なくとも1つ、少なくとも1つの第1のアノード132を第1のアノード電位P1に接続する第1の電気接続313の第1の電気抵抗、及び、少なくとも1つの第2のアノード142を第2のアノード電位P2に接続する第2の電気接続314の第2の電気抵抗を制御することを含みうる。
【0097】
[00107] 本書に記載の方法及び堆積装置は、基板上に材料を堆積するために使用可能である。より具体的には、本書で開示した方法は、堆積層の高い均一性を可能にし、その結果、フラットパパネルディスプレイ(例えば、TFT)などのディスプレイ製造に利用できる。開示した方法はまた、太陽電池の製造、特に薄膜太陽電池の製造に使用しうる。均一性が改善されると、更なる効果として、材料消費全体の低減が可能で、高価な材料を使用する場合には特に有用である。例えば、提案した方法は、フラットパネルディスプレイ又は薄膜太陽電池の製造で、酸化インジウムスズ(ITO)層の堆積に使用することができる。
【0098】
[00108] 以上の記述は、本開示の実施形態を対象としているが、本開示の基本的な範囲から逸脱することなく、本開示の他の実施形態及びさらなる実施形態が考案されてよく、本開示の範囲は、下記の特許請求の範囲によって決定される。