特許第6947186号(P6947186)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6947186
(24)【登録日】2021年9月21日
(45)【発行日】2021年10月13日
(54)【発明の名称】熱伝導性シリコーン組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 83/04 20060101AFI20210930BHJP
   C08K 3/28 20060101ALI20210930BHJP
   C08K 3/22 20060101ALI20210930BHJP
   C09K 5/14 20060101ALI20210930BHJP
【FI】
   C08L83/04
   C08K3/28
   C08K3/22
   C09K5/14 E
【請求項の数】10
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2018-546243(P2018-546243)
(86)(22)【出願日】2017年10月5日
(86)【国際出願番号】JP2017036305
(87)【国際公開番号】WO2018074247
(87)【国際公開日】20180426
【審査請求日】2018年9月14日
(31)【優先権主張番号】特願2016-204276(P2016-204276)
(32)【優先日】2016年10月18日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002240
【氏名又は名称】特許業務法人英明国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石原 靖久
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 晃洋
【審査官】 前田 孝泰
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−179771(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/145961(WO,A1)
【文献】 国際公開第2016/190189(WO,A1)
【文献】 特許第6246986(JP,B1)
【文献】 特開2017−210518(JP,A)
【文献】 国際公開第2017/126608(WO,A1)
【文献】 特開2001−028414(JP,A)
【文献】 特開2000−086213(JP,A)
【文献】 特開2002−299533(JP,A)
【文献】 特開2011−249682(JP,A)
【文献】 特開2015−090897(JP,A)
【文献】 特開2015−201573(JP,A)
【文献】 国際公開第2018/074247(WO,A1)
【文献】 国際公開第2018/016566(WO,A1)
【文献】 特開2005−228955(JP,A)
【文献】 特開2004−296787(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 83/00− 83/16
C08K 3/00− 13/08
C09K 5/00− 5/20
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)オルガノポリシロキサンをベースポリマーとし、(B)熱伝導性充填材を含む熱伝導性シリコーン組成物であって、(B)熱伝導性充填材が熱伝導性シリコーン組成物中60〜85体積%であり、熱伝導性充填材中40〜60体積%が平均粒径50μm以上の窒化アルミニウムであり、
(A)オルガノポリシロキサン:100質量部、
(B−I)平均粒径50μm以上70μm未満の窒化アルミニウム:1,100〜1,400質量部、
(B−II)平均粒径70〜90μmの窒化アルミニウム:900〜1,200質量部、
(B−III)平均粒径5〜15μmの酸化アルミニウム:650〜800質量部、及び
(B−IV)平均粒径0.5μm以上5μm未満の酸化アルミニウム又は平均粒径0.5μm以上5μm未満の水酸化アルミニウム:1,200〜1,700質量部
を含む、熱伝導性シリコーン組成物。
【請求項2】
窒化アルミニウムが非焼結の破砕状窒化アルミニウムである請求項1記載の熱伝導性シリコーン組成物。
【請求項3】
熱伝導性充填材としての窒化アルミニウムの総量1に対して、平均粒径50μm以上70μm未満の窒化アルミニウムの体積比が0.5〜0.6であり、平均粒径70〜90μmの窒化アルミニウムの体積比が0.4〜0.5である請求項1又は2記載の熱伝導性シリコーン組成物。
【請求項4】
熱伝導性充填材中25〜45体積%が、平均粒径5μm以下の熱伝導性充填材である請求項1〜3のいずれか1項記載の熱伝導性シリコーン組成物。
【請求項5】
(B−I)成分が、平均粒径50μm以上70μm未満の非焼結の破砕状窒化アルミニウムであり、(B−II)成分が、平均粒径70〜90μmの非焼結の破砕状窒化アルミニウムであり、(B−III)成分が、平均粒径5〜15μmの球状酸化アルミニウムであり、(B−IV)成分が、平均粒径0.5μm以上5μm未満の破砕状酸化アルミニウム又は平均粒径0.5μm以上5μm未満の水酸化アルミニウムである1〜4のいずれか1項記載の熱伝導性シリコーン組成物。
【請求項6】
さらに、(C):下記(C−1)及び(C−2)から選ばれる1種以上:(A)成分100質量部に対して10〜160質量部を含む請求項1〜5のいずれか1項記載の熱伝導性シリコーン組成物。
(C−1)下記一般式(1)で表されるアルコキシシラン化合物
1a2bSi(OR34-a-b (1)
(式中、R1は独立に炭素原子数6〜15のアルキル基であり、R2は独立に非置換又は置換の炭素原子数1〜8の1価炭化水素基であり、R3は独立に炭素原子数1〜6のアルキル基であり、aは1〜3の整数、bは0〜2の整数であり、但しa+bは1〜3の整数である。)
(C−2)下記一般式(2)で表される分子鎖片末端がトリアルコキシ基で封鎖されたジメチルポリシロキサン
【化1】
(式中、R4は独立に炭素原子数1〜6のアルキル基であり、cは5〜100の整数である。)
【請求項7】
熱伝導率が8W/mK以上である請求項1〜6のいずれか1項記載の熱伝導性シリコーン組成物の硬化物。
【請求項8】
硬度がアスカーC硬度で50以下である請求項7記載の熱伝導性シリコーン組成物の硬化物。
【請求項9】
1mm厚の絶縁破壊電圧が6kV以上である請求項7又は8記載の熱伝導性シリコーン組成物の硬化物。
【請求項10】
(A)オルガノポリシロキサン:100質量部、
(B−I)平均粒径50μm以上70μm未満の窒化アルミニウム:1,100〜1,400質量部、
(B−II)平均粒径70〜90μmの窒化アルミニウム:900〜1,200質量部、
(B−III)平均粒径5〜15μmの酸化アルミニウム:650〜800質量部、及び
(B−IV)平均粒径0.5μm以上5μm未満の酸化アルミニウム又は平均粒径0.5μm以上5μm未満の水酸化アルミニウム:1,200〜1,700質量部
を混合する工程を含む、請求項1記載の熱伝導性シリコーン組成物を製造する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、広くは、熱伝導による電子部品の冷却のために、発熱性電子部品の熱境界面とヒートシンク又は回路基板等の発熱散部材との界面に介在し得る熱伝達材料に関する。
【背景技術】
【0002】
パーソナルコンピューター、デジタルビデオディスク、携帯電話等の電子機器に使用されるCPU、ドライバICやメモリー等のLSIチップは、高性能化・高速化・小型化・高集積化に伴い、それ自身が大量の熱を発生するようになり、その熱によるチップの温度上昇はチップの動作不良、破壊を引き起こす。そのため、動作中のチップの温度上昇を抑制するための多くの熱放散方法及びそれに使用する熱放散部材が提案されている。
【0003】
従来、電子機器等においては、動作中のチップの温度上昇を抑えるために、アルミニウムや銅等熱伝導率の高い金属板を用いたヒートシンクが使用されている。このヒートシンクは、そのチップが発生する熱を伝導し、その熱を外気との温度差によって表面から放出する。チップから発生する熱をヒートシンクに効率良く伝えるために、ヒートシンクをチップに密着させる必要があるが、各チップの高さの違いや組み付け加工による公差があるため、柔軟性を有するシートや、グリースをチップとヒートシンクとの間に介装させ、このシート又はグリースを介してチップからヒートシンクへの熱伝導を実現している。
【0004】
シートはグリースに比べ、取り扱い性に優れており、熱伝導性シリコーンゴム等で形成された熱伝導性シート(熱伝導性シリコーンゴムシート)は様々な分野に用いられている。熱伝導性シートは、特に発熱素子とヒートシンクや筐体等の冷却部位の間にある程度空間がある場合によく用いられる。また発熱素子とヒートシンクや筐体との間は電気的に絶縁状態を確保しなければならない場合が多く、熱伝導性シートにも絶縁性が求められることが多い。つまり、熱伝導性充填材としてアルミニウムや銅、銀等の金属粒子を用いることができず、多くは水酸化アルミニウム、酸化アルミニウム等の絶縁性熱伝導性充填材が用いられる。
【0005】
しかしながら、水酸化アルミニウムや酸化アルミニウムは、それ自体の熱伝導率が低いために、これらを熱伝導性充填材として用いた熱伝導性シリコーン組成物の熱伝導率が低くなってしまう。一方、近年発熱素子の発熱量は増加の一途をたどり、熱伝導性シートに求められる熱伝導率も上がっており、水酸化アルミニウムや酸化アルミニウムを熱伝導性充填材として用いては対応ができなくなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3256587号公報
【特許文献2】特許第3957596号公報
【特許文献3】特開平6−164174号公報
【特許文献4】特許第4357064号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、さらなる高熱伝導化のために近年、窒化ホウ素や窒化アルミニウムに注目が集まっている。窒化ホウ素は熱伝導率が非常に高いが、粒子が偏平形をしており、かつ厚み方向と長さ方向で熱伝導率が異なるため、シリコーンポリマーに充填し組成物とした時に、熱伝導性に異方性が生じてしまう。一方、窒化アルミニウムは、粒子は偏平形をしていないために組成物とした場合にでも熱伝導性に異方性は生じにくい。また、窒化ホウ素に比べてシリコーンポリマーへの充填が容易であることが知られている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討した結果、熱伝導性充填材が60〜85体積%を占め、熱伝導性充填材の内40〜60体積%を平均粒径が50μm以上である窒化アルミニウムを用いることで、高熱伝導性を有する硬化物となる熱伝導性シリコーン組成物が得られることを知見し、本発明をなすに至ったものである。
【0009】
従って、本発明は下記発明を提供する。
[1].(A)オルガノポリシロキサンをベースポリマーとし、(B)熱伝導性充填材を含む熱伝導性シリコーン組成物であって、(B)熱伝導性充填材が熱伝導性シリコーン組成物中60〜85体積%であり、熱伝導性充填材中40〜60体積%が平均粒径50μm以上の窒化アルミニウムである熱伝導性シリコーン組成物。
[2].窒化アルミニウムが非焼結の破砕状窒化アルミニウムである[1]記載の熱伝導性シリコーン組成物。
[3].熱伝導性充填材としての窒化アルミニウムの総量1に対して、平均粒径50μm以上70μm未満の窒化アルミニウムの体積比が0.5〜0.6であり、平均粒径70〜90μmの窒化アルミニウムの体積比が0.4〜0.5である[1]又は[2]記載の熱伝導性シリコーン組成物。
[4].熱伝導性充填材中25〜45体積%が平均粒径5μm以下の熱伝導性充填材である[1]〜[3]のいずれかに記載の熱伝導性シリコーン組成物。
[5].平均粒径5μm以下の熱伝導性充填材が、非球状酸化アルミニウムである[4]記載の熱伝導性シリコーン組成物。
[6].(A)オルガノポリシロキサン:100質量部、
(B−I)平均粒径50μm以上70μm未満の窒化アルミニウム:1,100〜1,400質量部、
(B−II)平均粒径70〜90μmの窒化アルミニウム:900〜1,200質量部、
(B−III)平均粒径5〜15μmの酸化アルミニウム:650〜800質量部、及び
(B−IV)平均粒径0.5μm以上5μm未満の酸化アルミニウム又は平均粒径0.5μm以上5μm未満の水酸化アルミニウム:1,300〜1,700質量部
を含む[1]記載の熱伝導性シリコーン組成物。
[7].(B−I)成分が、平均粒径50μm以上70μm未満の非焼結の破砕状窒化アルミニウムであり、(B−II)成分が、平均粒径70〜90μmの非焼結の破砕状窒化アルミニウム又は平均粒径70〜90μmの焼結の球状窒化アルミニウムであり、(B−III)成分が、平均粒径5〜15μmの球状酸化アルミニウムであり、(B−IV)成分が、平均粒径0.5μm以上5μm未満の破砕状酸化アルミニウム又は平均粒径0.5μm以上5μm未満の水酸化アルミニウムである[6]記載の熱伝導性シリコーン組成物。
[8].さらに、(C):下記(C−1)及び(C−2)から選ばれる1種以上:(A)成分100質量部に対して10〜160質量部を含む[1]〜[7]のいずれかに記載の熱伝導性シリコーン組成物。
(C−1)下記一般式(1)で表されるアルコキシシラン化合物
1a2bSi(OR34-a-b (1)
(式中、R1は独立に炭素原子数6〜15のアルキル基であり、R2は独立に非置換又は置換の炭素原子数1〜8の1価炭化水素基であり、R3は独立に炭素原子数1〜6のアルキル基であり、aは1〜3の整数、bは0〜2の整数であり、但しa+bは1〜3の整数である。)
(C−2)成分下記一般式(2)で表される分子鎖片末端がトリアルコキシ基で封鎖されたジメチルポリシロキサン
【化1】
(式中、R4は独立に炭素原子数1〜6のアルキル基であり、cは5〜100の整数である。)
[9].熱伝導率が8W/mK以上である[1]〜[8]のいずれかに記載の熱伝導性シリコーン組成物の硬化物。
[10].硬度がアスカーC硬度で50以下である[9]記載の熱伝導性シリコーン組成物の硬化物。
[11].1mm厚の絶縁破壊電圧が6kV以上である[9]又は[10]記載の熱伝導性シリコーン組成物の硬化物。
[12].(A)オルガノポリシロキサン:100質量部、
(B−I)平均粒径50μm以上70μm未満の窒化アルミニウム:1,100〜1,400質量部、
(B−II)平均粒径70〜90μmの窒化アルミニウム:900〜1,200質量部、
(B−III)平均粒径5〜15μmの酸化アルミニウム:650〜800質量部、及び
(B−IV)平均粒径0.5μm以上5μm未満の酸化アルミニウム又は平均粒径0.5μm以上5μm未満の水酸化アルミニウム:1,300〜1,700質量部
を混合する工程を含む、[1]又は[6]記載の熱伝導性シリコーン組成物を製造する方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明の熱伝導性シリコーン組成物によれば、高熱伝導性を有する硬化物となる熱伝導性シリコーン組成物を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明について詳細に説明する。本発明は、オルガノポリシロキサンをベースポリマーとし、熱伝導性充填材を含む熱伝導性シリコーン組成物であって、熱伝導性充填材が熱伝導性シリコーン組成物中60〜85体積%であり、熱伝導性充填材中40〜60体積%が平均粒径50μm以上の窒化アルミニウムである熱伝導性シリコーン組成物である。
【0012】
[(A)オルガノポリシロキサン]
本発明に用いられるベースポリマーのオルガノポリシロキサンは、その種類は特に限定されないが、通常は、主鎖部分が基本的にジオルガノシロキサン単位の繰り返しからなるものが一般的であり、これは分子構造の一部に分枝状の構造を含んだものであってもよく、また環状体であってもよい。硬化物の機械的強度等、物性の点から、直鎖状のジオルガノポリシロキサンであることが好ましい。なお、オルガノポリシロキサンの末端は、トリオルガノシリル基で封鎖されていても、ジオルガノヒドロキシシリル基で封鎖されていてもよい。このオルガノポリシロキサンは、1種単独でも動粘度が異なる2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0013】
また、オルガノポリシロキサン中のケイ素原子に結合する有機基としては、酸素原子を介在してもよい非置換又は置換の1価炭化水素基が例示でき、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基等のアルキル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基等のシクロアルキル基、ビニル基、アリル基、プロペニル基、イソプロペニル基、ブテニル基、ヘキセニル基、シクロヘキセニル基等のアルケニル基、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基、ビフェニリル基等のアリール基、ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基、メチルベンジル基等のアラルキル基、ならびにこれらの基に炭素原子が結合している水素原子の一部又は全部が、フッ素、塩素、臭素等のハロゲン原子、シアノ基等で置換された基、例えば、クロロメチル基、2−ブロモエチル基、3−クロロプロピル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基、クロロフェニル基、フルオロフェニル基、シアノエチル基、3,3,4,4,5,5,6,6,6−ノナフルオロヘキシル基等、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基等のアルコキシ基等が挙げられ、代表的なものは炭素原子数が1〜10、特に代表的なものは炭素原子数が1〜6のものであり、好ましくは、メチル基、エチル基、プロピル基、クロロメチル基、ブロモエチル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基、シアノエチル基等の炭素原子数1〜3の非置換又は置換のアルキル基、ビニル基、アリル基等の低級アルケニル基、及びフェニル基、クロロフェニル基、フルオロフェニル基等の非置換又は置換のフェニル基である。また、ケイ素原子に結合した有機基は全てが同一であっても、異なっていてもよい。
【0014】
オルガノポリシロキサンの25℃における動粘度は、10〜30,000mm2/sが好ましく、50〜1,000mm2/sがより好ましい。動粘度が高いオルガノポリシロキサンを用いると、得られる組成物の流動性が悪くなり、熱伝導性充填材の充填が難しくなるおそれがある。なお、本発明において、動粘度は、オストワルド粘度計により測定することができる(以下、同じ)。
【0015】
(A)成分の配合量は、熱伝導性シリコーン組成物中3〜30体積%が好ましく、5〜20体積%がより好ましい。
【0016】
[(B)熱伝導性充填材]
熱伝導性充填材は、非磁性の銅やアルミニウム等の金属、酸化アルミニウム、シリカ、マグネシア、ベンガラ、ベリリア、チタニア、ジルコニア等の金属酸化物、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、窒化硼素等の金属窒化物、水酸化マグネシウム等の金属水酸化物、人工ダイヤモンド、炭化珪素等一般に熱伝導充填材とされる物質を用いることができる。また粒径は0.1〜200μmを用いることができ、規定する要件を満たす範囲で1種又は2種以上複合して用いてもよい。なお熱伝導性充填材の粒径は、レーザー回折・散乱式の粒子径分布測定装置、例えばマイクロトラックMT3300EX(日機装)を用いて測定され、平均粒径は体積基準の値(粒体の体積分布を測定した際、この平均粒径を境に2つに分けた時、大きい側と小さい側が等量になる径を指す。以下、同様)である。
【0017】
[窒化アルミニウム]
本発明においては、熱伝導性充填材中40〜60体積%、好適には45〜55体積%が平均粒径50μm以上の窒化アルミニウムである。窒化アルミニウムの平均粒径は、50μm以上であり、50μm以上200μm以下が好ましく、より好ましくは60μm以上200μm以下である。平均粒径50μm以下の窒化アルミニウムを多量に用いると、充填が困難になってしまう。さらに前述の通り、充填する量が同じであれば、粒径が大きい方が得られる組成物の熱伝導率は高くなるので、出来るだけ平均粒径の大きい粒子を用いる。しかしながら、平均粒径が200μmを超えると組成物へ添加した際の流動性が損なわれてしまうおそれがある。上記平均粒径であれば、破砕状であっても、球状であってもよく、破砕状のものが好ましい。なお、破砕状、球状のものは公知のものを使用することができる。
【0018】
窒化アルミニウムは大別すると、焼結体と非焼結体がある。焼結体は球状粒子であるので、オルガノポリシロキサンへの充填性は、破砕状である非焼結体と比べると良い。一方、焼結させるときに、イットリア等の希土類元素酸化物を焼結助剤として数%添加するため、窒化アルミニウムの相と焼結助剤の相が混在することになり、熱伝導性においては、非焼結体に劣る。さらに焼結工程を行うため非常に高価になる。そのため、熱伝導性充填材として用いるには、非焼結体の窒化アルミニウムが好ましい。
【0019】
熱伝導性充填材としての窒化アルミニウムの総量1に対して、平均粒径50μm以上70μm未満の窒化アルミニウムの体積比は0.5〜0.6が好ましく、0.52〜0.6がより好ましい。また、平均粒径70〜90μmの窒化アルミニウムの体積比が0.4〜0.5が好ましく、0.42〜0.48がより好ましい。
【0020】
[酸化アルミニウム]
酸化アルミニウム(アルミナ)は球状でも、非球状でもよい。非球状酸化アルミニウムには破砕状、丸み状等が挙げられ、球状酸化アルミニウムに比べて安価であるので、得られる組成物に価格競争力を付与できる点から、非球状酸化アルミニウムがより好ましい。
【0021】
なお、熱伝導性充填材中25〜45体積%、好ましくは30〜45体積%が、平均粒径5μm以下の熱伝導性充填材であることが好ましい。特に、平均粒径5μm以下の熱伝導性充填材が酸化アルミニウムであることが好ましく、非球状酸化アルミニウムがより好ましい。
【0022】
(B)成分の配合量は、熱伝導性シリコーン組成物中60〜85体積%であり、75〜85体積%が好ましい。配合量が少なすぎると、十分な熱伝導性が得られず、多すぎると 配合自体が困難になる。例えば、(A)成分100質量部に対して1,000〜8,000質量部、3,000〜6,000質量部の範囲で適宜選定される。
【0023】
より具体的な(A)成分と(B)成分との組み合わせとしては、下記が挙げられる。
(A)オルガノポリシロキサン:100質量部、
(B−I)平均粒径50μm以上70μm未満の窒化アルミニウム:1,100〜1,400質量部、
(B−II)平均粒径70〜90μmの窒化アルミニウム:900〜1,200質量部、
(B−III)平均粒径5〜15μmの酸化アルミニウム:650〜800質量部、及び
(B−IV)平均粒径0.5μm以上5μm未満の酸化アルミニウム又は平均粒径0.5μm以上5μm未満の水酸化アルミニウム:1,300〜1,700質量部
を含む熱伝導性シリコーン組成物。
【0024】
中でも、下記(A)成分と(B)成分との組み合わせが好ましい。
(A)オルガノポリシロキサン:100質量部、
(B−I)平均粒径50μm以上70μm未満の非焼結の破砕状窒化アルミニウム:1,100〜1,400質量部、
(B−II)平均粒径70〜90μmの非焼結の破砕状窒化アルミニウム又は平均粒径70〜90μmの焼結の球状窒化アルミニウム:900〜1,200質量部、
(B−III)平均粒径5〜15μmの球状酸化アルミニウム:650〜800質量部、及び
(B−IV)平均粒径0.5μm以上5μm未満の破砕状酸化アルミニウム又は平均粒径0.5μm以上5μm未満の水酸化アルミニウム:1,300〜1,700質量部
を含む熱伝導性シリコーン組成物。
【0025】
(B−II)成分としては、平均粒径70〜90μmの非焼結の破砕状窒化アルミニウムが好ましく、(B−IV)成分としては、平均粒径0.5μm以上5μm未満の破砕状酸化アルミニウムが好ましい。この場合(B−IV)成分の配合量は、1,500〜1,700質量部がより好ましい。また、(A)成分は、後述する(A−I)又は(A−II)成分が好ましい。
【0026】
[(C)成分]
本発明の熱伝導性シリコーン組成物には、組成物調製時に熱伝導性充填材を疎水化処理し、(A)成分であるオルガノポリシロキサンとの濡れ性向上させ、(B)熱伝導性充填材を(A)成分からなるマトリックス中に均一に分散させることを目的として、(C)表面処理剤を配合することができる。(C)成分としては、下記(C−1)及び(C−2)成分が好ましく、これらから選ばれる1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0027】
(C−1)下記一般式(1)で表されるアルコキシシラン化合物
1a2bSi(OR34-a-b (1)
(式中、R1は独立に炭素原子数6〜15のアルキル基であり、R2は独立に非置換又は置換の炭素原子数1〜8の1価炭化水素基であり、R3は独立に炭素原子数1〜6のアルキル基であり、aは1〜3の整数、bは0〜2の整数であり、但しa+bは1〜3の整数である。)
【0028】
上記一般式(1)において、R1で表されるアルキル基としては、例えば、ヘキシル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基、テトラデシル基等が挙げられる。このR1で表されるアルキル基の炭素原子数が6〜15の範囲を満たすと(C)成分の濡れ性が十分向上し、取り扱い性がよく、得られる組成物の低温特性が良好なものとなる。
【0029】
2で表される非置換又は置換の炭素原子数1〜8の1価炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基等のアルキル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基等のシクロアルキル基、フェニル基、トリル基等のアリール基、ベンジル基、フェニルエチル基等のアラルキル基、ならびにこれらの基に炭素原子が結合している水素原子の一部又は全部が、フッ素、塩素、臭素等のハロゲン原子、シアノ基等で置換された基、例えば、クロロメチル基、2−ブロモエチル基、3−クロロプロピル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基、クロロフェニル基、フルオロフェニル基、シアノエチル基、3,3,4,4,5,5,6,6,6−ノナフルオロヘキシル基等が挙げられ、1種単独で又は2種以上を適宜選択して用いることができる。中でも、炭素原子数1〜6のものが好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基、クロロメチル基、ブロモエチル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基、シアノエチル基等の炭素原子数1〜3の非置換又は置換のアルキル基及びフェニル基、クロロフェニル基、フルオロフェニル基等の非置換又は置換のフェニル基が好ましい。
【0030】
上記(C−1)成分の好適な具体例としては、下記のものを挙げることができる。
613Si(OCH33
1021Si(OCH33
1225Si(OCH33
1225Si(OC253
1021Si(CH3)(OCH32
1021Si(C65)(OCH32
1021Si(CH3)(OC252
1021Si(CH=CH2)(OCH32
1021Si(CH2CH2CF3)(OCH32
【0031】
(C−2)下記一般式(2)で表される分子鎖片末端がトリアルコキシ基で封鎖されたジメチルポリシロキサン
【化2】
(式中、R4は独立に炭素原子数1〜6のアルキル基であり、cは5〜100の整数である。)
【0032】
上記一般式(2)において、R4で表されるアルキル基は上記一般式(1)中のR2で表されるアルキル基の中で、炭素原子数1〜6のものが挙げられる。
【0033】
上記(C−2)成分の好適な具体例としては、下記のものを挙げることができる。
【化3】
【0034】
(C−1)成分と(C−2)成分のいずれか一方でも両者を組み合わせてもよい。この場合、(C)成分としては(A)成分100質量部に対して10〜160質量部が好ましく、50〜160質量部がより好ましい。
【0035】
上記のように、本発明に用いられるベースポリマーである(A)オルガノポリシロキサンの種類は特に限定されないが、硬化性熱伝導性シリコーン組成物とする際には、以下の3形態が挙げられ、ベースポリマーであるオルガノポリシロキサン(A)として、それぞれ後述する(A−I)〜(A−III)成分のオルガノポリシロキサンを用い、上述した熱伝導性充填材(B)を配合したものとすることができる。以下、それぞれの組成物について具体的に説明する。
[1]付加反応硬化型熱伝導性シリコーン組成物
[2]有機過酸化物硬化型熱伝導性シリコーン組成物
[3]縮合反応硬化型熱伝導性シリコーン組成物
【0036】
[1]付加反応硬化型熱伝導性シリコーン組成物
組成物がヒドロシリル化反応により硬化する付加反応硬化型熱伝導性シリコーン組成物である場合には、上記ベースポリマーであるオルガノポリシロキサン(A)として下記に示す(A−I)成分を用い、上記熱伝導性充填材(B)を配合し、更に下記に示す成分を含有するものであることが好ましい。以下に好ましい配合量も併記する。
(A−I)分子中に少なくとも2個のアルケニル基を有するオルガノポリシロキサン
(B)熱伝導性充填材:上記に記載した通り
(D)ケイ素原子に直接結合した水素原子を少なくとも2個有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン
(E)白金族金属系硬化触媒
(F)付加反応制御剤
さらに、(C):上記(C−1)及び(C−2)から選ばれる1種以上:(A)成分100質量部に対して10〜160質量部を配合してもよい。
【0037】
(A−I)分子中に少なくとも2個のアルケニル基を有するオルガノポリシロキサン
通常は主鎖部分が基本的にジオルガノシロキサン単位の繰り返しからなるのが一般的であるが、これは分子構造の一部に分枝状の構造を含んだものであってもよく、また環状体であってもよいが、硬化物の機械的強度等、物性の点から直鎖状のジオルガノポリシロキサンが好ましい。
【0038】
ケイ素原子に結合したアルケニル基としては、例えば、ビニル基、アリル基、プロペニル基、イソプロペニル基、ブテニル基、ヘキセニル基、シクロヘキセニル基等の通常、炭素原子数2〜8程度のものが挙げられ、中でもビニル基、アリル基等の低級アルケニル基が好ましく、ビニル基が特に好ましい。ケイ素原子に結合したアルケニル基は、(A−I)成分のオルガノポリシロキサンの分子中において、分子鎖末端及び分子鎖非末端(即ち、分子鎖側鎖)のいずれかに存在しても、あるいはこれらの両方に存在してもよいが、少なくとも分子鎖両末端に存在することが好ましい。
【0039】
また、アルケニル基以外のケイ素原子に結合する有機基としては、酸素原子を介在してもよい非置換又は置換の1価炭化水素基であり、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基等のアルキル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基等のシクロアルキル基、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基、ビフェニリル基等のアリール基、ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基、メチルベンジル基等のアラルキル基、ならびにこれらの基に炭素原子が結合している水素原子の一部又は全部が、フッ素、塩素、臭素等のハロゲン原子、シアノ基等で置換された基、例えば、クロロメチル基、2−ブロモエチル基、3−クロロプロピル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基、クロロフェニル基、フルオロフェニル基、シアノエチル基、3,3,4,4,5,5,6,6,6−ノナフルオロヘキシル基等、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基等のアルコキシ基等が挙げられ、代表的なものは炭素原子数が1〜10、特に代表的なものは炭素原子数が1〜6のものであり、好ましくは、メチル基、エチル基、プロピル基、クロロメチル基、ブロモエチル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基、シアノエチル基等の炭素原子数1〜3の非置換又は置換のアルキル基、フェニル基、クロロフェニル基、フルオロフェニル基等の非置換又は置換のフェニル基、及びメトキシ基等のアルコキシ基である。また、ケイ素原子に結合したアルケニル基以外の官能基は全てが同一であることに限定するものではない。
【0040】
[(B)熱伝導性充填材]
付加反応硬化型熱伝導性シリコーン組成物に用いる(B)成分は、上述した熱伝導性充填材(B)である。(B)成分の配合量は上記で規定された範囲内で適宜選定される。例えば、(A−I)成分100質量部に対して1,000〜8,000質量部、3,000〜6,000質量部の範囲で適宜選定される。
【0041】
[(D)オルガノハイドロジェンポリシロキサン]
(D)成分は、ケイ素原子に直接結合した水素原子を少なくとも2個有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンであり、1分子中に平均で2個以上、好ましくは2〜100個のケイ素原子に直接結合する水素原子(Si−H基)を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンが好ましく、(A−I)成分の架橋剤として作用する成分である。即ち、(D)成分中のSi−H基と(A−I)成分中のアルケニル基との後述する(E)成分の白金族金属系硬化触媒により促進されるヒドロシリル化反応により付加して、架橋構造を有する3次元網目構造を与える。また、Si−H基の数が2個未満の場合、硬化しないおそれがある。
【0042】
(D)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンは、下記一般式(3)で表されるものが好ましい。
【化4】
(式中、R5は独立に脂肪族不飽和結合を含有しない非置換又は置換の1価炭化水素基あるいは水素原子であり、但し、少なくとも2個は水素原子である。dは1以上の整数、好ましくは1〜100の整数、より好ましくは2〜50の整数である。)
【0043】
上記式(3)中、R5の水素原子以外の脂肪族不飽和結合を含有しない非置換又は置換の1価炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基等のアルキル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基等のシクロアルキル基、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基、ビフェニリル基等のアリール基、ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基、メチルベンジル基等のアラルキル基、ならびにこれらの基に炭素原子が結合している水素原子の一部又は全部が、フッ素、塩素、臭素等のハロゲン原子、シアノ基等で置換された基、例えば、クロロメチル基、2−ブロモエチル基、3−クロロプロピル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基、クロロフェニル基、フルオロフェニル基、シアノエチル基、3,3,4,4,5,5,6,6,6−ノナフルオロヘキシル基等が挙げられ、代表的なものは炭素原子数が1〜10、特に代表的なものは炭素原子数が1〜6のものであり、好ましくは、メチル基、エチル基、プロピル基、クロロメチル基、ブロモエチル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基、シアノエチル基等の炭素原子数1〜3の非置換又は置換のアルキル基、及びフェニル基、クロロフェニル基、フルオロフェニル基等の非置換又は置換のフェニル基である。また、R5は水素原子以外の全てが同一であることを限定するものではない。
【0044】
5は、少なくとも2個、好ましくは2〜100個、より好ましくは2〜50個は水素原子であり、該水素原子は分子鎖末端及び分子鎖非末端(即ち、分子鎖側鎖)のいずれかに存在しても、あるいはこれらの両方に存在してもよい。
【0045】
これら(D)成分の添加量は、(D)成分由来のSi−H基が(A−I)成分由来のアルケニル基1モルに対して0.1〜8モルとなる量が好ましく、より好ましくは0.5〜5モルとなる量、さらに好ましくは1〜4モルとなる量である。(D)成分由来のSi−H基量が(A−I)成分由来のアルケニル基1モルに対して0.1モル未満であると硬化しない、又は硬化物の強度が不十分で成型物としての形状を保持できず取扱いづらくなる。また8モルを超えると硬化物の柔軟性がなくなり、熱抵抗が著しく上昇してしまうおそれがある。
【0046】
[(E)白金族金属系硬化触媒]
(E)成分の白金族金属系硬化触媒は、(A−I)成分由来のアルケニル基と、(D)成分由来のSi−H基の付加反応を促進するための付加反応触媒であり、ヒドロシリル化反応に用いられる触媒として周知の触媒が挙げられる。その具体例としては、例えば、白金(白金黒を含む)、ロジウム、パラジウム等の白金族金属単体、H2PtCl4・nH2O、H2PtCl6・nH2O、NaHPtCl6・nH2O、KaHPtCl6・nH2O、Na2PtCl6・nH2O、K2PtCl4・nH2O、PtCl4・nH2O、PtCl2、Na2HPtCl4・nH2O(但し、式中、nは0〜6の整数であり、好ましくは0又は6である)等の塩化白金、塩化白金酸及び塩化白金酸塩、アルコール変性塩化白金酸(米国特許第3,220,972号明細書参照)、塩化白金酸とオレフィンとのコンプレックス(米国特許第3,159,601号明細書、同第3,159,662号明細書、同第3,775,452号明細書参照)、白金黒、パラジウム等の白金族金属を酸化アルミニウム、シリカ、カーボン等の担体に担持させたもの、ロジウム−オレフィンコンプレックス、クロロトリス(トリフェニルフォスフィン)ロジウム(ウィルキンソン触媒)、塩化白金、塩化白金酸又は塩化白金酸塩とビニル基含有シロキサン、特にビニル基含有環状シロキサンとのコンプレックス等が挙げられる。
【0047】
(D)成分の使用量は、所謂触媒量でよく、通常、(A−I)成分に対する白金族金属元素質量換算で0.1〜2,000ppm程度がよい。
【0048】
[(F)付加反応制御剤]
付加反応硬化型熱伝導性シリコーン組成物には、必要に応じて(F)付加反応制御剤を用いることができる。付加反応制御剤は、通常の付加反応硬化型シリコーン組成物に用いられる公知の付加反応制御剤を全て用いることができる。例えば、エチニルメチリデンカルビノール、1−エチニル−1−ヘキサノール、3−ブチン−1−オール等のアセチレン化合物や各種窒素化合物、有機リン化合物、オキシム化合物、有機クロロ化合物等が挙げられる。付加反応制御剤の使用量としては、(A−I)成分100質量部に対して0.01〜1質量部が好ましい。
【0049】
[2]有機過酸化物硬化型熱伝導性シリコーン組成物
また、本組成物が有機過酸化物によるフリーラジカル反応により硬化する有機過酸化物硬化型熱伝導性シリコーン組成物である場合には、上記ベースポリマーであるオルガノポリシロキサン(A)として下記に示す(A−II)を用い、上記熱伝導性充填材(B)を配合し、更に下記に示す成分を含有するものであることが好ましい。
(A−II)1分子中に少なくとも2個のケイ素原子に結合したアルケニル基を有するオルガノポリシロキサン
(B)熱伝導性充填材:上記に記載した通り
(G)有機過酸化物
さらに、(C):上記(C−1)及び(C−2)から選ばれる1種以上:(A)成分100質量部に対して10〜160質量部を配合してもよい。
【0050】
[(A−II)オルガノポリシロキサン]
(A−II)1分子中に少なくとも2個のケイ素原子に結合したアルケニル基を有するオルガノポリシロキサンであれば特に限定されないが、前記(A−I)成分の1分子中に少なくとも2個のアルケニル基を有するオルガノポリシロキサンと同様のものを用いることが好ましい。
【0051】
[(B)熱伝導性充填材]
有機過酸化物硬化型熱伝導性シリコーン組成物に用いる(B)成分は、上述した熱伝導性充填材(B)である。(B)成分の配合量は上記で規定された範囲内で適宜選定される。例えば、(A−II)成分100質量部に対して1,000〜8,000質量部、3,000〜6,000質量部の範囲で適宜選定される。
【0052】
[(G)有機過酸化物]
(G)成分である有機過酸化物は、特定の条件下で分解して遊離ラジカルを生じる有機過酸化物であり、1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
具体的には、1,1−ジ(tert−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、2,2−ジ(4,4−ジ−(tert−ブチルパーオキシ)シクロヘキシル)プロパン等のパーオキシケタール、p−メンタンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド等のハイドロパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、tert−ブチルクミルパーオキサイド等のジアルキルパーオキサイド、ジベンゾイルパーオキサイド、ジスクシン酸パーオキサイド等のジアシルパーオキサイド、tert−ブチルパーオキシアセテート、tert−ブチルパーオキシベンゾエート等のパーオキシエステル、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート等のパーオキシジカーボネートが好適に用いられる。特には、分解温度が比較的高いパーオキシケタール、ハイドロパーオキサイド、ジアルキルパーオキサイド、パーオキシエステルの使用が、取扱い性や保存安定性の観点から好ましい。また、これらの有機過酸化物は、任意の有機溶剤や炭化水素、流動パラフィンや不活性固体等で希釈されたものを用いてもよい。
【0053】
(G)成分の配合量は、(A−II)成分100質量部に対して0.01〜10質量部が好ましく、0.1〜5質量部であることがより好ましい。
【0054】
[3]縮合反応硬化型熱伝導性シリコーン組成物
また、本組成物が縮合反応により硬化する縮合反応硬化型熱伝導性シリコーン組成物である場合には、上記ベースポリマーであるオルガノポリシロキサン(A)成分として下記に示す(A−III)成分を用い、上記熱伝導性充填材(B)を配合し、更に下記に示す成分を含有するものであることが好ましい。
(A−III)下記一般式(4)
【化5】
(式中、R6は互いに同一又は異種の非置換又はハロゲン原子置換もしくはシアノ基置換の炭素原子数1〜5のアルキル基又は炭素原子数6〜8のアリール基である。eは1以上の整数である。)
で示され、両末端が水酸基で封鎖されたオルガノポリシロキサン、
(B)上記熱伝導性充填材、
(H)下記一般式(5)
7f−SiX(4-f) (5)
(式中、R7は非置換又はハロゲン原子置換もしくはシアノ基置換の、炭素原子数1〜3のアルキル基、ビニル基又はフェニル基であり、Xは加水分解性基であり、fは0又は1である。)
で示されるシラン化合物、その(部分)加水分解物及び(部分)加水分解縮合物から選ばれる1種以上、
(I)縮合反応用硬化触媒として、アルキル錫エステル化合物、チタン酸エステル、チタンキレート化合物、有機亜鉛化合物、有機鉄化合物、有機コバルト化合物、有機マンガン化合物、有機アルミニウム化合物、ヘキシルアミン、リン酸ドデシルアミン、第4級アンモニウム塩、アルカリ金属の低級脂肪酸塩、ジアルキルヒドロキシルアミン、ならびにグアニジル基を含有するシラン及びシロキサンから選ばれる縮合触媒
さらに、(C):上記(C−1)及び(C−2)から選ばれる1種以上:(A)成分100質量部に対して10〜160質量部を配合してもよい。
【0055】
[(A−III)両末端水酸基封鎖オルガノポリシロキサン]
(A−III)成分は、本発明のシリコーン組成物を縮合硬化物とする際の、ベースポリマーとして使用され、下記一般式(4)で示され、25℃における動粘度が10〜100,000mm2/sである両末端が水酸基で封鎖されたオルガノポリシロキサンである。
【化6】
(式中、R6は互いに同一又は異種の非置換又はハロゲン原子置換もしくはシアノ基置換の炭素原子数1〜5のアルキル基又は炭素原子数6〜8のアリール基である。eは1以上の整数である。)
【0056】
上記式(4)中、R6として、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基等の炭素原子数1〜7のアルキル基、フェニル基、トリル基等の炭素原子数6〜8のアリール基、これらアルキル基又はアリール基の水素原子の一部又は全部が塩素原子、フッ素原子、臭素原子等のハロゲン原子、シアノ基で置換されたクロロメチル基、3−クロロプロピル基、トリフルオロメチル基、シアノエチル基等のハロゲン原子置換アルキル基又はアリール基、シアノ基置換アルキル基又はアリール基が挙げられる。これらは1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。eは1以上の整数であり、100〜1,000が好ましい。
【0057】
[(B)熱伝導性充填材]
縮合反応硬化型熱伝導性シリコーン組成物に用いる(B)成分は、上述した熱伝導性充填材(B)である。(B)成分の配合量は上記で規定された範囲内で適宜選定される。例えば、(A−III)成分100質量部に対して1,000〜8,000質量部、3,000〜6,000質量部の範囲で適宜選定される。
【0058】
[(H)成分]
(H)下記一般式(5)
7f−SiX(4-f) (5)
(式中、R7は非置換又はハロゲン原子置換もしくはシアノ基置換の、炭素原子数1〜3のアルキル基、ビニル基又はフェニル基であり、Xは加水分解性基であり、fは0又は1である。)
で示されるシラン化合物、その(部分)加水分解物及び(部分)加水分解縮合物から選ばれる1種以上、
(H)成分は、本組成物を縮合反応にて硬化する際に架橋剤として作用する。
【0059】
上記式(5)中、R7は非置換又はハロゲン原子置換もしくはシアノ基置換の、炭素原子数1〜3のメチル基、エチル基、プロピル基等のアルキル基、ビニル基又はフェニル基である。
【0060】
Xは加水分解性基であり、アルコキシ基、アルコキシアルコキシ基、アルケニルオキシ基、ケトオキシム基、アシロキシ基、アミノ基、アミド基、アミノキシ基等が例示される。アルコキシ基、アルコキシアルコキシ基としては、ハロゲン原子置換のものであってもよく、例えば、メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、β−クロロエトキシ基、2,2,2−トリフルオロエトキシ基、δ−クロロブトキシ基、メトキシエトキシ基等が挙げられる。アルケニルオキシ基としては、例えば、イソプロペノキシ基等が挙げられる。ケトオキシム基としては、例えば、ジメチルケトオキシム基、メチルエチルケトオキシム基、ジエチルケトオキシム基等が挙げられる。アシロキシ基としては、例えば、アセトキシ基、プロピオニルオキシ基等が挙げられる。アミノ基としては、例えば、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、n−ブチルアミノ基、シクロヘキシルアミノ基等が挙げられる。アミド基としては、例えば、N−メチルアセトアミド基、N−エチルアセトアミド基、N−ブチルアセトアミド基、N−シクロヘキシルアセトアミド基等が挙げられる。アミノキシ基としては、例えば、N,N−ジメチルアミノキシ基、N,N−ジエチルアミノキシ基等が挙げられる。Xとしては、特にアルケニルオキシ基が好ましい。bは0又は1である。
【0061】
これらシラン化合物、その(部分)加水分解物あるいは(部分)加水分解縮合物の具体例としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、3,3,3−トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、β−シアノエチルトリメトキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラブトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、テトラ(β−クロロエトキシ)シラン、テトラ(2,2,2−トリフルオロエトキシ)シラン、プロピルトリス(δ−クロロブトキシ)シラン、メチルトリス(メトキシエトキシ)シラン等のアルコキシシラン類、エチルポリシリケート、ジメチルテトラメトキシジシロキサン等のアルコキシシロキサン類、メチルトリス(メチルエチルケトオキシム)シラン、ビニルトリス(メチルエチルケトオキシム)シラン、フェニルトリス(メチルエチルケトオキシム)シラン、メチルトリス(ジエチルケトオキシム)シラン、テトラ(メチルエチルケトオキシム)シラン等のケトオキシムシラン類、メチルトリス(シクロヘキシルアミノ)シラン、ビニルトリス(n−ブチルアミノ)シラン等のアミノシラン類、メチルトリス(N−メチルアセトアミド)シラン、メチルトリス(N−ブチルアセトアミド)シラン、メチルトリス(N−シクロヘキシルアセトアミド)シラン等のアミドシラン類、メチルトリス(N,N−ジエチルアミノキシ)シラン等のアミノキシシラン類、メチルトリ(イソプロペノキシ)シラン、ビニルトリ(イソプロペノキシ)シラン、フェニルトリ(イソプロペノキシ)シラン等のアルケニルオキシシラン類、メチルトリアセトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン等のアシロキシシラン類等、これらシラン類の(部分)加水分解物及び(部分)加水分解縮合物が挙げられる。
【0062】
(H)成分の配合量は、(A−III)成分100質量部に対して1〜40質量部が好ましく、2〜30質量部がより好ましい。
【0063】
[(I)縮合反応用硬化触媒]
(I)成分は、アルキル錫エステル化合物、チタン酸エステル、チタンキレート化合物、有機亜鉛化合物、有機鉄化合物、有機コバルト化合物、有機マンガン化合物、有機アルミニウム化合物、ヘキシルアミン、リン酸ドデシルアミン、第4級アンモニウム塩、アルカリ金属の低級脂肪酸塩、ジアルキルヒドロキシルアミン、ならびにグアニジル基を含有するシラン及びシロキサンから選ばれる縮合反応用硬化触媒であり、本発明のシリコーン組成物を硬化させるための縮合触媒である。これらは、1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
【0064】
具体的には、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジオクトエート等のアルキル錫エステル化合物;テトライソプロポキシチタン、テトラn−ブトキシチタン、テトラキス(2−エチルヘキソキシ)チタン、ジプロポキシビス(アセチルアセトナ)チタン、チタニウムイソプロポキシオクチレングリコール等のチタン酸エステル;ジイソプロポキシビス(エチルアセトアセテート)チタン、ジイソプロポキシビス(メチルアセトアセテート)チタン、ジイソプロポキシビス(アセチルアセトネート)チタン、ジブトキシビス(エチルアセトアセトネート)チタン、ジメトキシビス(エチルアセトアセトネート)チタン等のチタンキレート化合物;ナフテン酸亜鉛、ステアリン酸亜鉛、亜鉛−2−エチルオクトエート、鉄−2−エチルヘキソエート、コバルト−2−エチルヘキソエート、マンガン−2−エチルヘキソエート、ナフテン酸コバルト、アルコキシアルミニウム化合物等の有機金属(亜鉛、鉄、コバルト、マンガン、アルミニウム)化合物;3−アミノプロピルトリエトキシシラン;ヘキシルアミン;リン酸ドデシルアミン;ベンジルトリエチルアンモニウムアセテート等の第4級アンモニウム塩;酢酸カリウム、酢酸ナトリウム、蓚酸リチウム等のアルカリ金属の低級脂肪酸塩;ジメチルヒドロキシルアミン、ジエチルヒドロキシルアミン等のジアルキルヒドロキシルアミン;テトラメチルグアニジルプロピルトリメトキシシラン、テトラメチルグアニジルプロピルメチルジメトキシシラン、テトラメチルグアニジルプロピルトリス(トリメチルシロキシ)シラン等のグアニジル基を含有するシラン又はシロキサン等が例示される。中でも、テトラメチルグアニジルプロピルトリメトキシシラン、テトラメチルグアニジルプロピルメチルジメトキシシラン、テトラメチルグアニジルプロピルトリス(トリメチルシロキシ)シラン等のグアニジル基を含有するシラン又はシロキサン等が好適に用いられる。
【0065】
(I)成分の配合量は、(A−III)成分100質量部に対して0.01〜20質量部が好ましく、0.1〜5質量部がより好ましい。
【0066】
[製造方法]
本発明の熱伝導性シリコーン組成物には、更に、内添離型剤、着色材、酸化防止剤等のその他の成分を本発明の目的を損なわない範囲で配合することができる。本発明の熱伝導性シリコーン組成物は、上記各成分の所定量を混合することにより調製できる。
【0067】
より具体的には、
(A)オルガノポリシロキサン:100質量部、
(B−I)平均粒径50μm以上70μm未満の窒化アルミニウム:1,100〜1,400質量部、
(B−II)平均粒径70〜90μmの窒化アルミニウム:900〜1,200質量部、
(B−III)平均粒径5〜15μmの酸化アルミニウム:650〜800質量部、及び
(B−IV)平均粒径0.5μm以上5μm未満の酸化アルミニウム又は平均粒径0.5μm以上5μm未満の水酸化アルミニウム:1,300〜1,700質量部
を混合する工程を含む熱伝導性シリコーン組成物の製造方法が挙げられる。
【0068】
さらに、(A)オルガノポリシロキサン:100質量部と、(B−I)平均粒径50μm以上70μm未満の非焼結の破砕状窒化アルミニウム:1,100〜1,400質量部と、(B−II)平均粒径70〜90μmの非焼結の破砕状窒化アルミニウム又は平均粒径70〜90μmの焼結の球状窒化アルミニウム:900〜1,200質量部と、(B−III)平均粒径5〜15μmの球状酸化アルミニウム:650〜800質量部と、(B−IV)平均粒径0.5μm以上5μm未満の破砕状酸化アルミニウム又は平均粒径0.5μm以上5μm未満の水酸化アルミニウム:1,300〜1,700質量部とを混合する工程を含む熱伝導性シリコーン組成物の製造方法が挙げられる。
【0069】
(B−II)成分としては、平均粒径70〜90μmの非焼結の破砕状窒化アルミニウムが好ましく、(B−IV)成分としては、平均粒径0.5μm以上5μm未満の破砕状酸化アルミニウムが好ましい。この場合(B−IV)成分の配合量は、1,500〜1,700質量部がより好ましい。
【0070】
また、上述した硬化性シリコーン組成物とした場合、その硬化条件としては、付加反応硬化型熱伝導性シリコーン組成物の場合、100〜140℃、特に110〜130℃で5〜30分間、特に10〜20分間とすることができる。また、縮合反応硬化型熱伝導性シリコーン組成物の場合、40℃以下、特に0〜40℃にて0.5〜30日間、特に1〜15日間とすることができる。更に、有機過酸化物硬化型熱伝導性シリコーン組成物の場合、110〜190℃、特に120〜170℃で5〜30分間、特に10〜20分間とすることができる。
【0071】
[硬化物]
熱伝導性シリコーン組成物の硬化物は以下の性質を有することが好ましい。
【0072】
[1]熱伝導率
熱伝導性シリコーン組成物の硬化物の熱伝導率は、8W/mK以上が好ましく、より好ましくは9W/mK以上である。8W/mKよりも熱伝導率が低い場合は、平均粒径が50μm未満の窒化アルミニウム用いた場合でも達成できる。上限は特に限定されず、高くてもよいが、例えば、15W/mK以下とすることもできる。なお、熱伝導率はTPA−501(京都電子製)を用いて測定する。
【0073】
[2]硬度
熱伝導性シリコーン組成物の硬化物の硬度は、アスカーC硬度で50以下が好ましく、より好ましくは40以下5以上である。アスカーC硬度で50を超えると、実装する際に発熱部品に応力が掛かってしまうし、発熱部品や冷却部品の微細な凸凹に追従せず、接触熱抵抗の悪化を招くおそれがある。
【0074】
[絶縁破壊電圧]
熱伝導性シリコーン組成物の硬化物の1mm厚の絶縁破壊電圧は6kV以上が好ましい。6kV以上とすることで、より絶縁性を得ることができる。上限は特に限定されないが、25kV以下とすることもできる。
【実施例】
【0075】
以下、実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
【0076】
下記実施例及び比較例に用いられている(A)〜(F)成分を下記に示す。
(A)成分:下記式で表されるオルガノポリシロキサン(比重:1.0)
【化7】
(A−1)粘度:100mm2/s
(A−2)粘度:500mm2/s
(式中、Viはビニル基であり、gは上記粘度になる値である。)
【0077】
(B)成分:熱伝導性充填材
(B−1)平均粒径:60μm:非焼結の破砕状窒化アルミニウム(比重:3.26):(B−I)
(B−2)平均粒径:80μm:非焼結の破砕状窒化アルミニウム(比重:3.26):(B−II)
(B−3)平均粒径:10μm:球状酸化アルミニウム(比重:3.98):(B−III)
(B−4)平均粒径:1μm:破砕状酸化アルミニウム(比重:3.98):(B−IV)
(B−5)平均粒径:80μm:焼結の球状窒化アルミニウム(比重:3.26):(B−II)
(B−6)平均粒径:40μm:非焼結の球状窒化アルミニウム(比重:3.26)
(B−7)平均粒径:80μm:球状酸化アルミニウム(比重:3.98)
(B−8)平均粒径:1μm:水酸化アルミニウム(比重:2.42):(B−IV)
【0078】
(C)成分:下記式で表される片末端がトリメトキシシリル基で封鎖されたジメチルポリシロキサン(比重:1.0)
【化8】
【0079】
(D)成分:下記式で示される平均重合度が下記の通りであるメチルハイドロジェンポリシロキサン(比重:1.0)
【化9】
(平均重合度:h=27、i=3)
【0080】
(E)成分:白金族金属系硬化触媒(比重:1.0)
5質量%塩化白金酸2−エチルヘキサノール溶液
【0081】
(F)成分:付加反応制御剤(比重:1.0)
エチニルメチリデンカルビノール。
【0082】
(G)成分:過酸化物系硬化剤
オルトメチルベンゾイルパーオキサイド(C−23N(信越化学工業製))(比重:1.0)
【0083】
[実施例1〜6、比較例1〜4]
上記成分を用い、下記に示す方法で組成物を調製し、該組成物を用いて熱伝導性成型物を得た。これらを用いて下記に示す方法により評価した。結果を表1,2に示す。
【0084】
[シリコーン組成物の調製]
(A)〜(C)成分を所定の量を加え、プラネタリーミキサーで60分間混練した。そこにさらに(D)〜(G)成分を添加しさらに30分間混練し、熱伝導性シリコーン組成物を得た。
【0085】
[成形方法]
得られた組成物を金型に流し込みプレス成形機を用い120℃、10分間で成形した。
【0086】
[評価方法]
熱伝導率:
得られた組成物を6mm厚のシート状に硬化させ、そのシートを2枚用いて、熱伝導率計(TPA−501、京都電子工業株式会社製の商品名)を用いて、該シートの熱伝導率を測定した。
硬度:
得られた組成物を6mm厚のシート状に硬化させ、そのシートを2枚重ねてアスカーC硬度計で測定した。
絶縁破壊電圧:
得られた組成物を1mm厚のシートに硬化させ、JIS K 6249に基づき、絶縁破壊電圧を測定した。
【0087】
【表1】
【0088】
【表2】
【0089】
比較例1のように熱伝導性充填材中の窒化アルミニウムの割合が48体積%であったとしても、組成物中の熱伝導性充填材の割合が57.8体積%であると、硬化物の熱伝導率が十分得られない。また、比較例2のように熱伝導性充填材中の窒化アルミニウムの割合が38体積%であると、熱伝導性充填材の占める体積%を82.9%としても、窒化アルミニウムを用いた場合に比べて熱伝導率が小さくなってしまう。比較例4のように用いる平均粒径が40μmの窒化アルミニウムを用いると、熱伝導性シリコーン組成物の調製自体が困難になった。一方、実施例のように用いる窒化アルミニウムの平均粒径を50μm以上とし、熱伝導性充填材の占める体積%、熱伝導性充填材の内の窒化アルミニウムが占める体積%を適切にすると、十分な絶縁性を有しつつも、高い熱伝導率を有する熱伝導性シリコーン組成物の硬化物を与える。