(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1は、本発明の異物検出装置が適用された塗布、現像装置1の概略図である。この塗布、現像装置1は、被処理体である基板例えばウエハWに夫々薬液を供給して処理を行うレジスト塗布モジュール1A、1B、反射防止膜形成モジュール1C、1D、保護膜形成モジュール1E、1Fを備えている。これらのモジュール1A〜1F(レジスト塗布モジュール1A、1B、反射防止膜形成モジュール1C、1D、保護膜形成モジュール1E、1F)は、ウエハWに薬液を供給して処理を行う薬液供給モジュールである。塗布、現像装置1は、これらモジュール1A〜1FにてウエハWに各種の薬液を供給し、反射防止膜の形成、レジスト膜の形成、露光時にレジスト膜を保護するための保護膜の形成を順に行った後、例えば液浸露光されたウエハWを現像する。
【0013】
上記のモジュール1A〜1Fは薬液の供給路を備えており、塗布、現像装置1はこの供給路を流通する薬液中の異物を検出できるように構成されている。上記の供給路を流通した薬液は、ウエハWに供給される。従って、ウエハWへの薬液の供給と異物の検出とが互いに並行して行われる。異物とは、例えばパーティクル、気泡、及び薬液を構成する正常なポリマーよりも粒径が大きい異常なポリマーなどである。異物の検出とは具体的には、例えば所定の期間中に薬液の流路の所定の検出領域を流れる異物の総数と各異物の大きさとについての検出である。塗布、現像装置1には光供給部2が設けられており、光供給部2は、光源21から出力される例えば波長532nmのレーザー光をファイバー23により、モジュール1A〜1Fに設けられる異物検出ユニット4に導光する。
【0014】
モジュール1A〜1Fは略同様に構成されており、ここでは
図1に示したレジスト塗布モジュール1Aの概略構成について説明する。レジスト塗布モジュール1Aは、例えば11本のノズル11A〜11Kを備えており、そのうちの10本のノズル11A〜11JはウエハWに薬液としてレジストを吐出し、塗布膜であるレジスト膜を形成する。ノズル11KはウエハWにシンナーを吐出する。シンナーは、レジストが供給される前のウエハWに供給され、レジストの濡れ性を高めるプリウエット用の薬液であり、レジストの溶剤である。
【0015】
ノズル11A〜11Jには薬液の供給路をなす薬液供給管12A〜12Jの下流端が接続され、薬液供給管12A〜12Jの上流端は、バルブV1を介して、レジストの供給源13A〜13Jに夫々接続されている。各レジストの供給源13A〜13Jは、例えばレジストが貯留されたボトルと、ボトルから供給されたレジストをノズル11A〜11Jに圧送するポンプと、を備えている。供給源13A〜13Jの各ボトルに貯留されるレジストの種類は互いに異なり、ウエハWには10種類のレジストから選択された1種類のレジストが供給される。
【0016】
ノズル11Kには薬液供給管12Kの下流端が接続され、薬液供給管12Kの上流端はバルブV1を介して、供給源13Kに接続されている。供給源13Kはレジストの代わりに上記のシンナーが貯留されることを除いて、供給源13A〜13Jと同様に構成されている。即ち、ウエハWを処理するにあたり、薬液供給管12A〜12Kを薬液が流れるタイミングは互いに異なる。薬液供給管12A〜12Kは可撓性を有する材質、例えば樹脂により構成され、後述するノズル11A〜11Kの移動を妨げないように構成されている。薬液供給管12A〜12Kにおけるノズル11A〜11KとバルブV1との間にはキュベット15A〜15Kが介設されている。キュベット15A〜15Kは、異物の測定用の流路部として構成され、その内部を通過する異物について検出される。キュベット15A〜15Kについては後に詳述する。
【0017】
図2ではレジスト塗布モジュール1Aについて、より詳しい構成の一例を示している。図中31、31はスピンチャックであり、各々ウエハWの裏面中央部を水平に吸着保持すると共に、保持したウエハWを鉛直軸回りに回転させる。図中32、32はカップであり、スピンチャック31、31に保持されたウエハWの下方及び側方を囲み、薬液の飛散を抑える。図中33は鉛直軸回りに回転する回転ステージであり、回転ステージ33上には、水平方向に移動自在で垂直な支柱34と、ノズル11A〜11Kのホルダ35とが設けられている。36は支柱34に沿って昇降自在な昇降部であり、37は昇降部36を支柱34の移動方向とは直交する水平方向に移動自在なアームである。アーム37の先端には、ノズル11A〜11Kの着脱機構38が設けられている。回転ステージ33、支柱34、昇降部36及びアーム37の協働動作により、各スピンチャック31上とホルダ35との間でノズル11A〜11Kが移動する。
【0018】
上記の回転ステージ33及びカップ32の側方に、移動するアーム37や支柱34に干渉しないように異物検出ユニット4が設けられている。この異物検出ユニット4と、上記の光供給部2と、後述の制御部6と、によって本発明の異物検出装置が構成されている。
図3は、この異物検出ユニット4の平面図を示している。異物検出ユニット4は、レーザー光照射部51と、受光部52と、流路アレイ16と、を備え、例えば前方散乱光を利用した光散乱方式のパーティクルカウンタとして構成されている。つまり、異物によって生じた散乱光を受光素子で受光したときに、当該受光素子から出力される信号の変化に基づいて異物の検出が行われる。
【0019】
上記のファイバー23の下流端は、コリメータ42を介してレーザー光照射部51に接続されている。例えば塗布、現像装置1の稼働中、光供給部2からは常時ファイバー23に光が供給され、後述するシャッタ41の光路の開閉によって、流路アレイ16へ光が供給された状態と、流路アレイ16への光の供給が停止した状態とが切り替えられる。ファイバー23は、後述するレーザー光照射部51の移動を妨げないように可撓性を有している。
【0020】
流路アレイ16について、
図4の斜視図を参照して説明する。薬液の流路部をなす流路アレイ16は石英製であり、角形の横長のブロックとして構成され、上下方向に各々形成された11個の貫通口を備えている。各貫通口は流路アレイ16の長さ方向に沿って配列されており、各貫通口と当該貫通口の周囲の壁部とが上記のキュベット15A〜15Kとして構成されている。従って、キュベット15A〜15Kは起立したチューブをなし、このキュベット15A〜15Kを構成する各貫通口を上方から下方へ向けて薬液が流れる。キュベット15A〜15Kの各貫通口を流路17A〜17Kとする。流路17A〜17Kは互いに同様に構成されており、既述のように薬液供給管12A〜12Kに各々介設される。
【0021】
図3に戻って説明を続ける。上記のレーザー光照射部51及び受光部52は、流路アレイ16を前後から挟んで互いに対向するように設けられる。図中43は、レーザー光照射部51と受光部52とを流路アレイ16の下方側から支持するステージであり、図示しない駆動機構によって左右方向に移動自在に構成されている。このようにステージ43が移動することによって、レーザー光照射部51はファイバー23から導光された光を流路17A〜17Kのうちの選択された一つの流路17に照射することができ、受光部52はそのように流路17に照射され、当該流路17を透過した光を受光する。つまり、薬液の流れ方向に対して交差するように流路17に光路が形成される。
【0022】
図5はレーザー光照射部51及び受光部52の概略構成図である。説明の便宜上、レーザー光照射部51から受光部52へ向かう方向を後方とする。レーザー光照射部51は光学系を備え、この光学系には例えば集光レンズ53が含まれる。また、
図5では図示を省略しているが、
図3に示すようにレーザー光照射部51には、上記のシャッタ41が設けられている。
【0023】
上記のコリメータ42は、後方側に向けて水平方向にレーザー光を照射する。シャッタ41は、コリメータ42と集光レンズ53との間の光路を遮蔽する遮蔽位置(
図3中に鎖線で表示している)と、当該光路から退避する開放位置(
図3中に実線で表示している)との間で移動し、当該光路を開閉する。集光レンズ53は、シリンドリカルレンズや例えばパウエルレンズまたはレーザーラインジェネレーターレンズと呼ばれるレンズを含み、コリメータ42から照射されたレーザー光を流路17Aに集光させると共に、光路の横断面について薬液の流れ方向の長さよりも当該流れ方向に直交する方向の長さが長くなるように、レーザー光を扁平化させる。集光レンズ53よりも前方側では、光路の横断面(前後方向に向かって見た断面)は例えば略真円の円形であり、集光レンズ53によってキュベット15内における光路の横断面は、例えば左右方向に沿った長径を有する楕円形とされる。
【0024】
流路17Aに形成される光路において、エネルギー密度が比較的高い集光領域が異物の検出領域50となり、当該検出領域50に進入した異物に対して検出が行われる。上記のように流路17Aに光路が形成されているので、この検出領域50は左右に横長であり、平面で見たときに流路17Aの面積に対する検出領域50の面積の割合は比較的大きい。このような検出領域50を形成することで、流路17A内を流れる異物の総数のうち、検出される異物の数の割合が高くなるようにしている。
【0025】
続いて、受光部52について説明する。この受光部52は、前方側から後方側に向かって順に配列された、光学系54と、マスク61と、光検出部40とを備えている。光学系54は、前方側、後方側に夫々配置された対物レンズ56、集光レンズ57を備えており、キュベット15Aを透過した光は対物レンズ56により平行光となり、集光レンズ57によって光検出部40に集光される。
【0026】
続いて光検出部40について、
図6の正面図を参照して説明する。なお、
図6は、マスク61の前方位置から後方に向けて見た光検出部40を示している。光検出部40は、例えば各々フォトダイオードからなる64個の受光素子によって構成されており、各受光素子は互いに同様に構成されている。受光素子は、例えば2×32の行列をなすように互いに間隔をおいて配置されている。上側に配置された受光素子を受光素子45A、下側に配置された受光素子を受光素子45Bとする。図中L4で示す受光素子45A、45Bの左右の幅は、この例では53μmである。この光検出部40に照射される光路の横断面についても、長辺が左右方向に沿った扁平な楕円であり、当該光路の上半分に受光素子45Aが、当該光路の下半分に受光素子45Bが各々位置するように、これらの各受光素子45A、45Bが配置されている。左右方向の同じ位置における受光素子45A、受光素子45Bは1つの組をなしている。これらの受光素子45A、45Bについて、後方側に向かって見て左側から順に1チャンネル、2チャンネル、3チャンネル・・・32チャンネル(ch)として、チャンネル(ch)番号を付して示す場合が有る。
【0027】
異物検出ユニット4は、受光素子45A、45Bの各チャンネルに対応して各々設けられる計32個の回路部46を備えている。
図7を参照してこの回路部46について説明すると、回路部46は、受光素子45A及び受光素子45Bの後段に夫々設けられるトランスインピーダンスアンプ(TIA)47A、47Bと、TIA47A、47Bの後段に設けられる差分回路48と、を備えている。受光素子45A及び受光素子45Bは受光する光の強度に応じた電流をTIA47A、47Bに供給し、TIA47A、47Bは各々供給された電流に対応する電圧信号を差分回路48に出力する。差分回路48は、TIA47Aからの電圧信号とTIA47Bからの電圧信号との差分の電圧信号を後述の制御部6に出力する。制御部6は、上記の差分回路48から出力される信号に基づいて異物の検出を行う。このように受光素子45A、45Bからの各出力の差分に対応する信号に基づいて異物の検出を行うのは、受光素子45A、45Bで共通に検出されるノイズを除去するためである。上記の回路部46についても、接続される受光素子45A、45Bのチャンネル番号と同じチャンネル番号を付して示す場合が有る。
【0028】
受光素子45A、45Bと上記のキュベットの検出領域50との関係について、
図8の模式図を用いてさらに詳しく説明する。図中の二点鎖線の矢印は、キュベット15Aの流路17Aに向けて光照射したときにおけるレーザー光照射部51から受光素子45A群に至る光路を示したものである。なお、この
図8では説明の便宜上、マスク61を省略している。流路17Aの光路において前方側に向かって見て、集光領域である検出領域50の上半分を長さ方向に32個に分割した分割検出領域の各々を、右端から順番に1chの分割検出領域〜32chの分割検出領域と呼ぶものとする。図中L21で示す1つの分割検出領域の左右の幅は、例えば0.85μmであり、各分割検出領域には符号59を付している。
【0029】
光学系54は、1chの分割検出領域59と1chの受光素子45Aとが1対1に対応し、2chの分割検出領域59と2chの受光素子45Aとが1対1に対応し、3chの分割検出領域59と3chの受光素子45Aとが1対1に対応し、同様に順番に同じチャンネルの分割検出領域59と受光素子45Aとが1対1に対応するように構成されている。即ち、1chの受光素子45Aには1chの分割検出領域59で異物と反応して生じた反応光(反応によって摂動を受けた光)のほぼ全部が照射され、2chの受光素子45Aには2chの分割検出領域59で異物と反応して生じた反応光(反応によって摂動を受けた光)のほぼ全部が照射される。このように受光が行われるように、各チャンネルの分割検出領域59を透過したレーザー光の例えば85%以上が対応するチャンネルの受光素子45Aに受光される。
図8では、実線の矢印、点線の矢印で互いに異なるチャンネルの分割検出領域59から互いに異なるチャンネルの受光素子45Aに照射される反応光の光路を示している。
【0030】
このように光照射が行われることで、検出領域50に進入した異物に対応する信号が、いずれか一つのチャンネルの受光素子45Aから発生する。例えばこの反応光が対応するチャンネルの受光素子45Aだけに照射されずに他のチャンネルの受光素子45Aに跨って入光されると、受光素子45Aに流れる電流レベルが低くなり、検出精度が低くなる。つまり、上記のように分割検出領域59と受光素子45Aとが対応するように構成することで、異物の検出精度を高くしている。
【0031】
同様に、集光領域である検出領域50の下半分を長さ方向に32個に分割した分割検出領域59の各々を、1chの分割検出領域59〜32chの分割検出領域59と呼ぶものとすると、1つのチャンネルの分割検出領域59は、1つのチャンネルの受光素子45Bに対応する。つまり1つのチャンネルの分割検出領域59の反応光が1つのチャンネルの受光素子45Bに照射されるように光学系54が構成されている。
【0032】
また、上記のように複数のチャンネルの受光素子45A、45Bを持つように構成するのは、1つの受光素子45(45A、45B)が受けるレーザー光のエネルギーを抑えることで、レーザー光のフォトンの揺らぎに起因するショットノイズを低減させ、SN比(S/N)を向上させるためであり、1つの受光素子45に対応する検出領域を流れる正常なポリマーの数を抑えることで、当該ポリマーに起因するノイズを抑え、SN比を向上させるためでもある。なお、キュベット15Aに検出領域50が形成される場合の光路を例示したが、他のキュベット15B〜15Kに検出領域50が形成される場合も、同様に光路が形成されて、異物の検出が行われる。
【0033】
ここでマスク61について、さらに詳しく説明する。マスク61は
図6に示すように、例えば32個の上下に細長の開口部62を備えており、これらの開口部62は左右に沿って配列され、各チャンネルの受光素子45A、45Bの前方に位置する。開口部62の左右の開口幅L5は、上記の受光素子45A、45Bの幅L4よりも小さい。従って、上記の分割検出領域59から受光素子45A、45Bに照射される光のうちの一部は遮光され、他の一部のみが受光素子45A、45Bにより受光される。受光素子45A、45Bのうち開口部62に重なる領域が、後述の集光スポット63に面し、当該受光素子45A、45Bから信号を出力させる受光領域をなす。
【0034】
図9では、検出領域50の上半分における3chの分割検出領域59から3chの受光素子45Aに向かう光路を点線で模式的に示している。この
図9及び
図6では、マスク61が設けられないとした場合における3chの分割検出領域59から3chの受光素子45Aに照射されて形成されるレーザー光の集光スポット63を示している。上記のように一つの分割検出領域59の光のほぼ全てが、当該分割検出領域59に対応する受光素子45Aに照射されるため、集光スポット63の左右の幅L6は受光素子45A、45Bの幅L4と同じ、例えば53μmである。つまり、上記のマスク61の開口部62の幅L5は、この集光スポット63の幅L6よりも小さい。従って、光路の形成方向である前後方向に見たときに、集光スポット63の面積よりも受光素子45A及び45Bの受光領域の面積は小さい。
【0035】
なお、3chの受光素子45A以外の受光素子45A、45Bについても対応する分割検出領域59から、同様に光照射されて形成される集光スポット63に面する。つまり、集光レンズ57からは各チャンネルの受光素子45A、45Bに跨がるように集光スポットが形成されるように光照射され、
図6、
図9に示す集光スポット63とは、そのように各受光素子45A、45Bに跨がる集光スポット中の一つの分割検出領域59に対応する領域を示している。つまり、この例では異物検出領域を各々構成する64個の分割検出領域59から、64個の受光素子45に各々光が照射されて集光スポット63が形成され、各集光スポット63の幅が各受光素子45の幅よりも小さい。
【0036】
上記のマスク61を設ける理由について説明する。流路17A〜17Jを流れるレジストには、レジスト膜を形成するための正常なポリマーが含まれており、このポリマーが上記の分割検出領域59を通過することで受光素子45A,45Bに当該ポリマーによる散乱光が照射されて、当該受光素子45A、45Bから出力される信号にバックグラウンドノイズが発生する。1つの受光素子45Aまたは45Bに対応する分割検出領域59が大きいほど、この正常なポリマーによる影響を受けるので、そのノイズ信号の振幅が大きくなる。
【0037】
分割検出領域59を異物が通過し、異物の検出信号が出力されても、このノイズ信号の振幅より小さい振幅を持つ信号の検出は困難である。つまり、ノイズの信号により異物の測定可能な最小の粒径(最小可測粒径)が決まることになる。そこで、上記のマスク61を設けて受光素子45A、45Bの左右の幅を集光スポット63の左右の幅より小さくし、受光素子45A、45Bにおいて光を受光することで信号を出力可能な受光領域の面積を抑え、検出されるポリマーの数を抑える。それによって、受光素子45A、45Bから出力されるノイズ信号のレベルを抑えてSN比を向上させ、比較的小さな異物も検出可能とし、異物の検出精度を高める。
【0038】
ところで、上記のノイズ信号の振幅は、薬液に含まれているポリマーのサイズやポリマーと溶媒との屈折率差に影響されるため、上記のマスク61の開口幅L5の適切な値は、薬液の種類によって異なる。ここでは代表して、流路17Aを流通するレジストに対応する開口幅L5を設定するものとして、
図10のグラフを参照しながらその設定方法を説明する。グラフの横軸は開口幅L5(単位:μm)を示しており、従って受光領域の幅を示している。グラフの縦軸は受光素子45Aまたは45Bから出力される電圧信号の振幅である。
【0039】
グラフの曲線A1はレジスト中の検出対象の異物のうち、最も小さい粒径を持つものについて、開口幅L5と振幅との対応関係を示したものであり、受光素子より出力される信号の特性を表す曲線に相当する。この曲線A1について、グラフに示すように開口幅L5が大きくなるにつれて振幅は次第に大きくなるが、次第に振幅の上昇は抑えられ、やがて頭打ちになる。また、開口幅L5と受光素子45Aまたは45Bから出力されるノイズの振幅との対応関係は、グラフ中に直線A2として示すように一次関数として表され、開口幅L5が大きくなるにつれて当該ノイズの振幅が大きくなる。直線A2は、受光素子より出力されるノイズの信号の特性を表す直線に相当する。このように異物の検出信号の特性とノイズの特性とは互いに異なることが、発明者の実験により明らかになっている。なお、これらの曲線A1、直線A2は例えば実験により取得したデータに基づき、例えば最小二乗法などにより算出する。
【0040】
ノイズの振幅よりも異物の検出信号の振幅が小さいと当該検出信号とノイズとの区別が困難であるため、信号強度(振幅)について曲線A1>直線A2となる範囲内に開口幅L5の値を設定する。つまり、グラフで示すB1〜B2の範囲内が開口幅L5の候補となる。ところで、上記のように開口幅L5は小さい方が流路17Aのポリマーを検出する量が少なく、ノイズを抑えることができる。しかし、グラフに示すように開口幅L5が小さくなるほど曲線A1の傾きは急峻であり、曲線A1の傾きが直線A2の傾きよりも大きくなると、ノイズよりも検出信号が早く低下するので、SN比を向上させることが難しい。そこで、上記のB1〜B2の範囲内で、曲線A1の接線の傾きと直線A2の傾きとが互いに揃うように開口幅L5を設定することが好ましい。
【0041】
上記の傾きが互いに揃うとは、直線A2の傾きをY1/X1とすると、曲線A1の接線の傾きが0.95×(Y1/X1)〜1.05×(Y1/X1)の範囲に含まれることを言う。つまり曲線A1において、設定した開口幅L5に対応する点の接線を引いたときにその傾きが上記の範囲に含まれていれば、そのように設定した開口幅L5は好ましい値である。図中には直線A2に傾きが揃う接線の一例として、直線A2の傾きにその傾きが一致する曲線A1の接線をA3として示しており、この接線A3に対応する開口幅L5をB3として示している。なお、上記のように薬液の種類によって、適切な開口幅L5は異なるが、流路17A〜17Jを流通するレジストについては、適切な開口幅L5が一致しており、この実施形態では、これらの流路17A〜17Jでマスク61が共用されるものとする。
【0042】
続いて、塗布、現像装置1に設けられる異物の検出部である制御部6(
図1を参照)について説明する。制御部6は例えばコンピュータからなり、不図示のプログラム格納部を有している。このプログラム格納部には、各モジュールでのウエハWの処理、及び上記のように受光素子の各チャンネルから出力される信号に基づいた異物の検出、後述する搬送機構による塗布、現像装置1内でのウエハWの搬送などの各動作が行われるように命令(ステップ群)が組まれたプログラムが格納されている。当該プログラムによって、制御部6から塗布、現像装置1の各部に制御信号が出力されることで、上記の各動作が行われる。このプログラムは、例えばハードディスク、コンパクトディスク、マグネットオプティカルディスクまたはメモリーカードなどの記憶媒体に収納された状態でプログラム格納部に格納される。
【0043】
図1に示したレジスト塗布モジュール1A以外のモジュールについても説明しておくと、レジスト塗布モジュール1Bは、モジュール1Aと同様に構成されている。反射防止膜形成モジュール1C、1D及び保護膜形成モジュール1E、1Fは、例えばレジスト及びシンナーの代わりに反射防止膜形成用の薬液、保護膜形成用の薬液を供給することを除いて、モジュール1A、1Bと同様に構成されている。反射防止膜形成用の薬液はレジストと同様にポリマーを含有している。例えばモジュール1C〜1F(反射防止膜形成モジュール1C、1D及び保護膜形成モジュール1E、1F)においても、モジュール1A、1Bと同様に薬液がウエハWに供給される。
【0044】
続いて
図11のタイミングチャートを参照しながら、上記のレジスト塗布モジュール1Aにおいて行われるウエハWの処理及び異物の検出について説明する。このタイミングチャートでは、13A〜13Kのうちの一の供給源13におけるポンプの圧力が整定されるタイミング、11A〜11Kのうちの一の供給源13に対応する一のノズル11がアーム37により移動するタイミング、12A〜12Kのうちの一の供給源13に対応する薬液供給管12のバルブV1が開閉するタイミング、レーザー光照射部51からレーザー光が照射される状態と当該レーザー光の照射が停止した状態とが切り替えられるタイミング、制御部6により光検出部40の各チャンネルからの信号が取得されるタイミングを夫々示している。上記のレーザー光が照射される状態と照射が停止した状態とが切り替えられるタイミングは、異物検出ユニット4のシャッタ41が開閉するタイミングとも言える。
【0045】
実際には、ウエハWにはシンナー、レジストの順で塗布が行われるが、説明の便宜上、レジストが塗布されるときの動作から説明する。先ず、ウエハWがスピンチャック31上に搬送されて保持された状態で、例えばノズル11AがウエハW上に搬送されると共に、供給源13Aのポンプがレジストの吸引を行い、それによって所定の圧力となるように整定が開始される(時刻t1)。例えばこのノズルの移動及びポンプの動作に並行して、レーザー光照射部51及び受光部52がキュベット15Aを挟む位置に移動する。このとき異物検出ユニット4のシャッタ41は閉じられている。
【0046】
ノズル11AがウエハW上で静止し(時刻t2)、ウエハWが所定の回転数で回転した状態となる。続いて薬液供給管12AのバルブV1が開かれ、ポンプからレジストがノズル11Aへ向けて所定の流量で圧送されると共にシャッタ41が開かれ、レーザー光照射部51からレーザー光が照射され、キュベット15Aを透過する。即ち、キュベット15Aの流路17Aに、
図8、
図9で説明したように検出領域50が形成され、受光部45A、45Bへ光照射される(時刻t3)。
図9で説明したように、マスク61により検出領域50を構成する分割検出領域59における光の一部は遮光され、各受光素子45A、45Bから回路部46へ出力される信号中に含まれる、レジスト中の正常なポリマーに起因するノイズは小さいものとなる。
【0047】
そして、圧送されたレジストはキュベット15Aを通過し、ノズル11AからウエハWの中心部へ吐出される。バルブV1の開度が上昇して、所定の開度になると開度の上昇が停止する(時刻t4)。然る後、制御部6による各チャンネルの回路部46からの出力信号の取得が開始される(時刻t5)。異物が流路17Aを流れ、検出領域50を上方から下方に流れると、異物が流れた分割検出領域59に対応するチャンネルの受光素子45Aまたは受光素子45Bから、この異物に対応する信号が出力され、回路部46からの出力信号のレベルが変化する。その後、制御部6による各チャンネルの受光素子45からの出力信号の取得が停止し(時刻t6)、続いてシャッタ41が閉じられてレーザー光照射部51からの光照射が停止すると共に薬液供給管12AのバルブV1が閉じられ(時刻t7)、ウエハWへのレジストの吐出が停止する。吐出されたレジストは、遠心力によりウエハWの周縁部に展伸されて、レジスト膜が形成される。
【0048】
上記の時刻t5〜t6間において、各チャンネルの回路部46から取得された出力信号に基づいて、受光素子45のチャンネル毎の異物の計数が行われる。さらにこの出力信号に基づいて、異物の粒径が測定され、分級が行われる。つまり、粒径について設定された複数の範囲毎に、異物の数がカウントされる。そして、チャンネル毎に検出された異物の数は合計され、検出領域50全体で検出された異物の数(異物の総数とする)が算出される。然る後、異物の総数がしきい値以上であるか否かの判定と、所定の粒径より大きい異物の数がしきい値以上であるか否かの判定とが行われる。
【0049】
そして、上記の異物の総数がしきい値以上であると判定された場合または所定の粒径より大きい異物の数がしきい値以上であると判定された場合、アラームが出力されると共に、モジュール1Aの動作が停止し、ウエハWの処理が中止される。このアラームは、具体的には例えば制御部6を構成するモニターへの所定の表示や、制御部6を構成するスピーカーからの所定の音声の出力である。また、このアラームの出力には、例えば15A〜15Kのうち異常が検出されたキュベット15をユーザーに報知するための表示や音声の出力が含まれる。異物の総数がしきい値以上ではないと判定され、且つ所定の粒径より大きい異物の数がしきい値以上では無いと判定された場合、アラームの出力は行われず、モジュール1Aの動作の停止も行われない。なお、上記の各演算及び各判定は、計数部をなす制御部6により行われる。
【0050】
シンナーをウエハWに吐出する際には、ノズル11Aの代わりにノズル11KがウエハW上に搬送されること、供給源13Aのポンプの代わりに供給源13Kのポンプが動作すること、薬液供給管12AのバルブV1の代わりに薬液供給管12KのバルブV1が開閉すること、及びキュベット15Aに光照射される代わりにキュベット15Kに光照射されることを除いて、
図11のタイミングチャートに従って各部が動作する。その動作によって、ウエハWのシンナーへの供給に並行して、当該シンナー中の異物の検出が行われる。なお、シンナーにはポリマーが含まれていないが、後述の評価試験で示すように、レジスト中の異物を検出する場合と同様に、マスク61の開口幅L5を適切に設定することでノイズを低下させて異物の検出精度を向上させることができることが確認されている。ウエハWに供給されたシンナーはレジストと同様にウエハWの回転により、ウエハWの表面全体に供給される。上記の流路17Aを介して供給されたレジストは、そのようにシンナーが供給されたウエハWに対して供給される。
【0051】
ウエハWへのシンナーの供給後、当該ウエハWに供給源13A以外の供給源に含まれるレジストが供給される場合には、使用されるレジストを吐出するノズルがウエハW上に搬送されること、使用されるレジストに対応する供給源のポンプが動作すること、使用されるレジストに対応する供給管のバルブV1が開閉すること、及び使用されるレジストに対応するキュベットに光が照射されることを除いて、供給源13AのレジストがウエハWに供給される場合と同様の動作が行われる。
【0052】
上記の
図11のチャートで説明した異物の検出では、キュベット15Aの液流が安定した状態での異物の検出を行うことで測定精度を高めるために、上記のようにバルブV1を開閉するタイミングと、制御部6が出力信号の取得を開始及び終了するタイミングとが互いにずれている。例えば上記の時刻t4〜t5間は10ミリ秒〜1000ミリ秒であり、時刻t6〜t7間は10ミリ秒〜100ミリ秒である。代表してモジュール1Aの動作について説明したが、他のモジュール1B〜1Fについてもモジュール1Aと同様に、ウエハWへの薬液の供給及び異物の検出が行われる。
【0053】
この塗布、現像装置1によれば、ウエハWに供給されるレジストの流路の一部であってレジスト中の異物の測定領域を構成するキュベット15A〜15Kと、レーザー光照射部51から照射されて当該キュベット15A〜15Kを透過する光を受光する受光素子45A、45Bと、キュベット15A〜15Kに形成される検出領域50の各分割検出領域59に対応する集光スポット63の幅よりも受光素子45A、45Bの光を検出可能な領域の幅を小さくするためのマスク61が設けられている。従って、受光素子45A、45Bからの出力信号に含まれるノイズのレベルが抑えられ、結果として当該出力信号のSN比を大きくすることができる。従って、塗布、現像装置1に設けられる制御部6は、レジスト中の異物について精度の高い検出を行うことができる。ところで集光スポット63の幅と受光素子45A、45Bの幅との適切な対応関係は薬液に応じて決まる。つまりマスク61を設けない場合、薬液毎に適切な集光レンズ57及び受光素子45A、45Bの幅が異なるので、上記のように適切な対応関係とするためにこれらの幅を調整することになるが、本実施形態のようにマスク61を設ける場合、マスク61の開口幅(スリットの幅)を装置で使用する薬液に応じて調整という簡易な調整を行うことで上記の適切な対応関係とすることができる。従って、集光レンズ57及び受光素子45A、45Bの大型化を防いで装置構成を簡素にすることができ、装置の製造コストを低くすることができるという利点が有る。
【0054】
また、このように異物の検出を行うことで、ウエハWに供給するレジストの清浄度が監視される。そしてレジストの清浄度が所定の基準より低下したときには、上記のようにモジュールの動作が停止され、それによって当該モジュールで後続のウエハWの処理が中止される。従って、当該後続のウエハWに清浄度が低いレジストが供給されることを防ぐことができるので、歩留りが低下することを防ぐことができる。さらに、薬液供給管12A〜12Kのうち、異物が検出された供給管12が特定されるため、塗布、現像装置1のユーザーはモジュールの動作停止後のメンテナンスや修理を速やかに行うことができる。従って、モジュールの動作が停止している時間が長くなることを抑えることができ、その結果として、塗布、現像装置1における半導体製品の生産性の低下を抑えることができる。
【0055】
さらに、上記のように検出領域50を通流する異物の総数がしきい値以上であると判定された場合、及び/または、所定の粒径より大きい粒径を有する異物の数がしきい値以上であると判定された場合の対処としては、アラームの出力及びモジュールの動作停止に限られない。例えば、レジストの供給源13A〜13Jのうち、そのように判定がなされたキュベット15に対応する供給源13から、レジストを供給管12の洗浄液としてノズル11に供給し、薬液供給管12に含まれる異物をノズル11から除去するようにする。即ち、自動で薬液供給管12が洗浄されるようにする。この動作後、後続のウエハWに対して処理が再開されるようにしてもよい。
【0056】
続いて、塗布、現像装置1の具体的な構成例について、
図12、
図13を参照しながら説明する。
図12、13は夫々当該塗布、現像装置1の平面図、概略縦断側面図である。この塗布、現像装置1は、キャリアブロックD1と、処理ブロックD2と、インターフェイスブロックD3と、を直線状に接続して構成されている。インターフェイスブロックD3に露光装置D4が接続されている。キャリアブロックD1は、キャリアCを塗布、現像装置1内に対して搬入出し、キャリアCの載置台71と、開閉部72と、開閉部72を介してキャリアCからウエハWを搬送するための搬送機構73とを備えている。
【0057】
処理ブロックD2は、ウエハWに液処理を行う第1〜第6の単位ブロックE1〜E6が下から順に積層されて構成されている。各単位ブロックE1〜E6は互いに区画されると共に、搬送機構F1〜F6を夫々備え、各単位ブロックE(第1〜第6の単位ブロックE1〜E6)において互いに並行してウエハWの搬送及び処理が行われる。ここでは単位ブロックのうち代表して第3の単位ブロックE3を、
図12を参照しながら説明する。キャリアブロックD1からインターフェイスブロックD3へ向かって搬送領域74が延びるように形成されており、当該搬送領域74には、上記の搬送機構F3が設けられている。また、キャリアブロックD1からインターフェイスブロックD3へ向かって見て、搬送領域74の左側には棚ユニットUが配置されている。棚ユニットUは、加熱モジュールを備えている。また、キャリアブロックD1からインターフェイスブロックD3へ向かって見て搬送領域74の右側には、上記のレジスト塗布モジュール1A、保護膜形成モジュール1Eが、搬送領域74に沿って設けられている。
【0058】
第4の単位ブロックE4は第3の単位ブロックE3と同様に構成されており、レジスト塗布モジュール1B及び保護膜形成モジュール1Fが設けられている。単位ブロックE1、E2には、レジスト塗布モジュール1A、1B及び保護膜形成モジュール1E、1Fの代わりに反射防止膜形成モジュール1C、1Dが夫々設けられることを除き、単位ブロックE3、E4と同様に構成される。単位ブロックE5、E6は、ウエハWに現像液を供給してレジスト膜を現像する現像モジュールを備える。現像モジュールは薬液としてウエハWに現像液を供給することを除いてモジュール1A〜1Fと同様に構成されている。
【0059】
処理ブロックD2におけるキャリアブロックD1側には、各単位ブロックE1〜E6に跨って上下に伸びるタワーT1と、タワーT1に対してウエハWの受け渡しを行うための昇降自在な搬送機構75とが設けられている。タワーT1は互いに積層された複数のモジュールにより構成されており、単位ブロックE1〜E6の各高さに設けられるモジュールは、当該単位ブロックE1〜E6の各搬送機構F1〜F6との間でウエハWを受け渡すことができる。これらのモジュールとしては、各単位ブロックの高さ位置に設けられた受け渡しモジュールTRS、ウエハWの温度調整を行う温調モジュールCPL、複数枚のウエハWを一時的に保管するバッファモジュール、及びウエハWの表面を疎水化する疎水化処理モジュールなどが含まれている。説明を簡素化するために、前記疎水化処理モジュール、温調モジュール、前記バッファモジュールについての図示は省略している。
【0060】
インターフェイスブロックD3は、単位ブロックE1〜E6に跨って上下に伸びるタワーT2、T3、T4を備えており、タワーT2とタワーT3に対してウエハWの受け渡しを行うための昇降自在な受け渡し機構である搬送機構76と、タワーT2とタワーT4に対してウエハWの受け渡しを行うための昇降自在な受け渡し機構である搬送機構77と、タワーT2と露光装置D4の間でウエハWの受け渡しを行うための搬送機構78が設けられている。
【0061】
タワーT2は、受け渡しモジュールTRS、露光処理前の複数枚のウエハWを格納して滞留させるバッファモジュール、露光処理後の複数枚のウエハWを格納するバッファモジュール、及びウエハWの温度調整を行う温調モジュールなどが互いに積層されて構成されているが、ここでは、バッファモジュール及び温調モジュールの図示は省略する。
【0062】
処理ブロックD2の上方に既述の光供給部2が設けられ、光供給部2から単位ブロックE1〜E4のモジュール1A〜1Fに接続されるように、ファイバー23が下方へ向けて引き回されている。また、処理ブロックD2の上方には上記の制御部6を構成し、既述の各チャンネルの回路部46からの出力信号に基づいたチャンネル毎の異物の数の算出、異物の総数の算出及び各異物の粒径の算出を行う演算部60が設けられており、図示しない配線により演算部60とモジュール1A〜1Fとが接続されている。
【0063】
この塗布、現像装置1におけるウエハWの搬送経路について説明する。ウエハWは、キャリアCから搬送機構73により、処理ブロックD2におけるタワーT1の受け渡しモジュールTRS0に搬送される。この受け渡しモジュールTRS0からウエハWは、単位ブロックE1、E2に振り分けられて搬送される。例えばウエハWを単位ブロックE1に受け渡す場合には、タワーT1の受け渡しモジュールTRSのうち、単位ブロックE1に対応する受け渡しモジュールTRS1(搬送機構F1によりウエハWの受け渡しが可能な受け渡しモジュール)に対して、前記TRS0からウエハWが受け渡される。またウエハWを単位ブロックE2に受け渡す場合には、タワーT1の受け渡しモジュールTRSのうち、単位ブロックE2に対応する受け渡しモジュールTRS2に対して、前記TRS0からウエハWが受け渡される。これらのウエハWの受け渡しは、搬送機構75により行われる。
【0064】
このように振り分けられたウエハWは、TRS1(TRS2)→反射防止膜形成モジュール1C(1D)→加熱モジュール→TRS1(TRS2)の順に搬送され、続いて搬送機構75により単位ブロックE3に対応する受け渡しモジュールTRS3と、単位ブロックE4に対応する受け渡しモジュールTRS4とに振り分けられる。
【0065】
このようにTRS3(TRS4)に振り分けられたウエハWは、TRS3(TRS4)→レジスト塗布モジュール1A(1B)→加熱モジュール→保護膜形成モジュール1E(1F)→加熱モジュール→タワーT2の受け渡しモジュールTRSの順で搬送される。然る後、このウエハWは、搬送機構76、78により、タワーT3を介して露光装置D4へ搬入される。露光後のウエハWは、搬送機構78、77によりタワーT2、T4間を搬送されて、単位ブロックE5、E6に対応するタワーT2の受け渡しモジュールTRS15、TRS16に夫々搬送される。然る後、加熱モジュール→現像モジュール→加熱モジュール→受け渡しモジュールTRS5(TRS6)に搬送された後、搬送機構73を介してキャリアCに戻される。
【0066】
ところで、
図14に示すように上記の集光スポット63の幅L6よりも、受光素子45A、45Bの幅L4が小さくなるように構成してもよい。なお、この
図14に示す集光スポット63は、受光素子45の前面及び当該前面と同一平面上に形成されるスポットである。つまり、マスク61が設けられなくても集光スポット63の幅L6よりも受光素子45A、45Bにおける光を検出可能な受光領域の幅を小さくし、正常なポリマーや溶媒による散乱光が受光素子45A、45Bに照射されることを抑制することができる。
【0067】
なお、1つの集光スポット63に対応する受光素子45Aの数は1つであることに限られず、複数の微小な受光素子45Aを1つの集光スポット63に対応するように配置し、各受光素子45Aの出力信号を足し合わせて検出を行ってもよい。同様に受光素子45Bについても1つの集光スポット63に対して複数設けてもよい。また、既述の例では受光素子45が複数設けられ、各受光素子45に集光されるように構成されているが、受光素子45が1つのみ設けられ、当該受光素子45が面するように既述の集光スポット63が1つ形成され、当該集光スポット63の幅よりも当該受光素子45の受光領域の幅が小さくなるように構成されていてもよい。
【0068】
ところで、
図15に示す受光部52には、既述のマスク61が前後方向に重なるように設けられている。受光部にはこれらのマスク61を左右方向に各々移動させる移動機構64が設けられている。各移動機構64により、マスク61が移動することで各マスク61の開口部62の重なる領域の幅が変化する。この2つのマスク61は、1つのマスク65を形成しており、各マスク61が移動することで当該マスク65の開口幅L5が変更可能である。このような構成によって、流路17A〜17Kのうち、異物の検出を行う流路を流れる薬液に対応した開口幅L5となるように受光部52における各マスク61の位置が調整される。このように、マスク65においては、異物の検出対象となる薬液に応じて、開口幅L5の大きさが変更される。従って、各流路における薬液中の異物の検出を、より精度高く行うことができる
【0069】
なお、前方散乱光を利用した光散乱光方式のパーティクルカウンタに本発明が適用された例を説明したが、本発明はレーザー光が異物に照射されて生じる回折光(回折縞)を光検出部40が受光し、この回折縞の受光による出力信号の変化に基づいて、異物が検出されるパーティクルカウンタにも適用することができるし、IPSA法と呼ばれる手法により検出を行うパーティクルカウンタにも適用することができる。つまり、本発明の適用は、特定の測定原理を持つパーティクルカウンタに限定されるものではない。
【0070】
ところで、異物を検出する対象となる薬液は、上記のレジスト及びシンナーに限られない。例えば、保護膜形成モジュール1E、1F、現像モジュールに本発明を適用し、保護膜形成用の薬液中の異物や現像液中の異物の検出を行ってもよい。その他に、例えばウエハWに絶縁膜を形成するための薬液供給装置や、ウエハWを洗浄するための薬液である洗浄液を供給する洗浄装置、複数のウエハWを互いに貼り合わせるための接着剤を薬液としてウエハWに供給する装置などの各薬液供給装置に本発明を適用することができる。
【0071】
また、本発明は、薬液供給装置に適用されることに限られない。例えば流路アレイ16に、薬液が通流するキュベット15とは別の気体通流用のキュベット15を設ける。そして、塗布、現像装置1における搬送領域74などのウエハWが搬送される領域の雰囲気を吸引ポンプなどにより、当該気体通流用のキュベット15に供給できるようにする。ウエハWが搬送される領域には、レジスト塗布モジュール1AなどのウエハWが処理される領域も含まれる。そして、薬液中の異物を検出する場合と同様に、気体通流用のキュベットを気体が通流中に、当該キュベットに光路を形成して異物の検出を行う。従って、本発明はウエハWに供給される液体に含まれる異物を検出することができるだけでなく、周辺環境に含まれる異物を検出することができる。つまり、流体に含まれる異物を検出することができる。なお、本発明は既述した各実施形態に限られず、各実施形態は互いに組み合わせたり、適宜変更することができる。
【0072】
[評価試験]
本発明に関連して行われた評価試験について説明する。
・評価試験1
評価試験1として、上記のマスク61が設けられた異物検出ユニット4において、レーザー光照射部51から流路17(17A〜17K)を介してレーザー光を受光部52に照射し、受光素子45A、45Bから出力されるノイズレベルを測定した。このノイズレベルは電圧波形におけるピーク間の差である。また、レーザー光の照射中における流路17の薬液の流通状態を、試験毎に変更した。
【0073】
評価試験1のうち、レーザー光の照射中、流路17に純水を貯留させたまま液流を形成しなかったものを評価試験1−1とする。流路17に純水を5mL/分で流通させたものを評価試験1−2とする。流路17にシンナーを5mL/分で流通させたものを評価試験1−3とする。流路17に反射防止膜形成用の薬液を5mL/分で流通させたものを評価試験1−4とする。また、これらの各評価試験1−1〜1−4については、開口幅L5が異なるマスク61を用いて複数回行っており、当該開口幅L5は5μm、15μmあるいは53μmである。
【0074】
図16のグラフは評価試験1の結果を示しており、グラフの横軸はマスク61の開口幅(単位:μm)を示し、グラフの縦軸はノイズレベル(単位:mVpp)を示している。グラフより、流路17に薬液が流通している評価試験1−2〜1−4において、開口幅が小さいほどノイズレベルが小さく、ノイズレベルと開口幅との間には、概ね線形関係が有ることが分かる。従って、
図10で説明した直線A2を取得することができることが分かる。また、開口幅を適切に設定することで、ノイズレベルを低下させてSN比を高くすることができることが考えられる。
【0075】
・評価試験2
異物検出ユニット4において、レーザー光照射部51から流路17を介してレーザー光を受光部52に照射し、受光素子45A、45Bから出力される信号についてSN比を検出した。この受光部52においても、評価試験1で用いた受光部52と同様、マスク61が設けられている。また、流路17へのレーザー光の照射中において、流路17を流通させる薬液を試験毎に変更した。評価試験2−1としては流路17に純水を、評価試験2−2としては流路17にシンナーを、評価試験2−3としては、流路17に反射防止膜形成用の薬液を、評価試験2−4としては、流路17にレジストを夫々流通させた。ただし、これらの評価試験2−1〜2−4で流路17を流通させる各薬液には、粒径が46nmであるPSL(ポリスチレンラテックス)からなる粒子を異物として混入させた。これらの評価試験2−1〜2−4については、開口幅L5が5μm、25μm、53μmであるマスク61を各々用いて、測定を行った。この評価試験における集光スポット63の幅L6は、発明の実施形態と同じ53μmである。
【0076】
図17のグラフは評価試験2の結果を示しており、グラフの横軸はマスク61の開口幅L5(単位:μm)を示し、グラフの縦軸はSN比(無単位)を示している。グラフに示されるように、評価試験2−1〜2−4について、開口幅が53μmの場合よりも、開口幅が25μm、5μmである場合の方がSN比が大きく、開口幅が25μmであるときにはSN比が特に大きい。開口幅が5μmあるいは53μmである場合には、最小可測粒径は60nm台であるが、開口幅が25μmである場合には、最小可測粒径は40nm台である。このように開口幅L5を、集光スポット63の幅L6よりも小さく設定することでSN比が高くなったことから、本発明の効果が示された。