(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態のスラリ、及び、当該スラリを用いた研磨方法について詳細に説明する。
【0023】
<定義>
本明細書において、「〜」を用いて示された数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。本明細書に段階的に記載されている数値範囲において、ある段階の数値範囲の上限値又は下限値は、他の段階の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、上限値及び下限値は、任意に組み合わせることができる。本明細書に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。本明細書に例示する材料は、特に断らない限り、一種を単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。本明細書において、組成物中の各成分の含有量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数の物質の合計量を意味する。本明細書中、「材料Aの研磨速度」とは、材料Aからなる物質が研磨により除去される速度を意味する。「工程」との語は、独立した工程だけではなく、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の所期の作用が達成されれば、本用語に含まれる。
【0024】
<スラリ>
本実施形態のスラリは、砥粒と、液状媒体と、下記式(1)で表される化合物の塩と、を含有する。本実施形態のスラリは、研磨液(例えばCMP用の研磨液(以下、「CMP研磨液」という。))として用いることができる。具体的には、本実施形態のスラリ(研磨液)は、絶縁材料を含む被研磨体の研磨に好適に用いることができ、特に、酸化珪素(二酸化珪素(SiO
2)、炭素含有酸化珪素(SiOC)等)を含む被研磨体の研磨に好適に用いることができる。なお、本明細書において、「研磨液」(polishing liquid、abrasive)とは、研磨時に被研磨面に触れる組成物として定義される。「研磨液」という語句自体は、研磨液に含有される成分を何ら限定しない。以下、必須成分及び任意成分について説明する。
【化3】
[式(1)中、Rは、水酸基又は1価の有機基を示す。]
【0025】
(砥粒)
砥粒は、セリウム酸化物を含有する第1の粒子と、4価金属元素の水酸化物を含有する第2の粒子と、を含む。スラリにおいて、第1の粒子及び第2の粒子の少なくとも一部は、第1の粒子と、当該第1の粒子に接触した第2の粒子とを含む複合粒子(例えば、第1の粒子及び第2の粒子からなる複合粒子)として存在している。なお、本明細書において「砥粒」(abrasive grain)とは、スラリに含まれる粒子又はその集合を意味し、「研磨粒子」(abrasive particle)ともいわれる。砥粒は、一般的には固体粒子である。砥粒を用いた研磨では、砥粒が有する機械的作用、及び、砥粒(主に砥粒の表面)の化学的作用によって、除去対象物が除去(remove)されると考えられるが、砥粒による研磨機構はこれに限定されない。
【0026】
本実施形態のスラリによれば、絶縁材料の研磨速度を向上させることができる傾向がある。これは、少なくとも、上記のような砥粒を用いることに起因していると推察される。すなわち、第1の粒子(セリウム酸化物を含有する粒子)は、絶縁材料に対する物理的作用(メカニカル性、機械的作用)が強い。一方、第2の粒子(4価金属元素の水酸化物を含有する粒子)は、化学的作用(ケミカル性)に基づく絶縁材料との反応性が高い。例えば、水酸基が作用して第2の粒子と絶縁材料との高い反応性が得られる。また、絶縁材料(例えば酸化珪素)と静電的に引き合う力が強い場合には、第2の粒子と絶縁材料との高い反応性が得られやすい。このように、物理的作用が強い第1の粒子と、化学的作用が強い第2の粒子と、を併用することにより得られる相乗効果によって絶縁材料の研磨速度が向上すると推測される。
【0027】
セリウム酸化物としては、CeOx(x=1.5〜2.0)等が挙げられ、具体的には、CeO
2(セリア)、Ce
2O
3等が挙げられる。
【0028】
4価金属元素の水酸化物とは、4価の金属(M
4+)と、少なくとも1つの水酸化物イオン(OH
−)とを含む化合物である。4価金属元素の水酸化物は、水酸化物イオン以外の陰イオン(例えば、硝酸イオンNO
3−及び硫酸イオンSO
42−)を含んでいてもよい。例えば、4価金属元素の水酸化物は、4価金属元素に結合した陰イオン(例えば、硝酸イオンNO
3−及び硫酸イオンSO
42−)を含んでいてもよい。
【0029】
4価金属元素の水酸化物を含む砥粒は、シリカ、セリア等からなる砥粒と比較して、絶縁材料(例えば酸化珪素)との反応性が高く、絶縁材料の研磨速度の向上に寄与する。
【0030】
4価金属元素の水酸化物は、絶縁材料の研磨速度をより向上させる観点から、好ましくは、希土類金属元素の水酸化物及びジルコニウムの水酸化物からなる群より選択される少なくとも一種を含む。4価金属元素の水酸化物は、絶縁材料の研磨速度を更に向上させる観点から、より好ましくは、希土類金属元素の水酸化物である。4価をとり得る希土類金属元素としては、セリウム、プラセオジム、テルビウム等のランタノイドなどが挙げられ、中でも、絶縁材料の研磨速度に更に優れる観点から、ランタノイドが好ましく、セリウムがより好ましい。希土類金属元素の水酸化物とジルコニウムの水酸化物とを併用してもよく、希土類金属元素の水酸化物から二種以上を選択して使用することもできる。
【0031】
砥粒は、一種を単独で又は二種以上を組み合わせて使用することができる。本実施形態のスラリは、第1の粒子及び第2の粒子を含む複合粒子以外の他の粒子を含有していてもよい。このような他の粒子としては、例えば、第2の粒子に接触していない第1の粒子(第1の粒子に接触していない第2の粒子)、及び、セリウム酸化物及び4価金属元素の水酸化物を含まない粒子(例えば、シリカ、アルミナ、ジルコニア、イットリア等からなる粒子)が挙げられる。
【0032】
スラリ中の第1の粒子の粒径は、絶縁材料の研磨速度が更に向上する観点から、好ましくは15nm以上であり、より好ましくは25nm以上であり、更に好ましくは35nm以上であり、特に好ましくは40nm以上である。第1の粒子の粒径は、砥粒の分散性が向上する観点、及び、被研磨面に傷がつくことが更に抑制される観点から、好ましくは1000nm以下であり、より好ましくは800nm以下であり、更に好ましくは600nm以下であり、特に好ましくは500nm以下である。これらの観点から、第1の粒子の粒径は、好ましくは15〜1000nmであり、より好ましくは25〜800nmであり、更に好ましくは35〜600nmであり、特に好ましくは40〜500nmである。第1の粒子の平均粒径(平均二次粒径)が上述の範囲であることが好ましい。
【0033】
スラリ中の第2の粒子の粒径は、絶縁材料の研磨速度が更に向上する観点から、好ましくは1nm以上であり、より好ましくは2nm以上であり、更に好ましくは3nm以上である。第2の粒子の粒径は、砥粒の分散性が向上する観点、及び、被研磨面に傷がつくことが更に抑制される観点から、好ましくは25nm以下であり、より好ましくは20nm以下であり、更に好ましくは15nm以下である。これらの観点から、第2の粒子の粒径は、好ましくは1〜25nmであり、より好ましくは2〜20nmであり、更に好ましくは3〜15nmである。第2の粒子の平均粒径(平均二次粒径)が上述の範囲であることが好ましい。
【0034】
第2の粒子の粒径(例えば平均粒径)は、絶縁材料の研磨速度をより向上させる観点から、第1の粒子の粒径(例えば平均粒径)より小さいことが好ましい。一般的に、粒径が小さい粒子では、粒径が大きい粒子に比べて単位質量当たりの表面積が大きいことから反応活性が高い。一方、粒径が小さい粒子の機械的作用(機械的研磨力)は、粒径が大きい粒子に比べて小さい。そのため、第2の粒子の粒径が第1の粒子の粒径より小さい場合、第2の粒子の絶縁材料に対する反応活性がより高まり化学的作用がより強くなる一方で、第1の粒子の機械的研磨作用がより強くなると推察される。その結果、第1の粒子と第2の粒子とを併用することによる相乗効果をより高めることができるため、絶縁材料の研磨速度をより向上させることができると推察される。
【0035】
スラリ中の砥粒(複合粒子を含む砥粒全体)の平均粒径(平均二次粒径)は、絶縁材料の研磨速度が更に向上する観点から、好ましくは20nm以上であり、より好ましくは30nm以上であり、更に好ましくは40nm以上であり、特に好ましくは50nm以上であり、極めて好ましくは100nm以上であり、非常に好ましくは120nm以上であり、より一層好ましくは150nm以上であり、殊更に好ましくは200nm以上であり、最も好ましくは300nm以上である。砥粒の平均粒径は、砥粒の分散性が向上する観点、及び、被研磨面に傷がつくことが更に抑制される観点から、好ましくは1000nm以下であり、より好ましくは800nm以下であり、更に好ましくは600nm以下であり、特に好ましくは500nm以下であり、極めて好ましくは400nm以下である。これらの観点から、砥粒の平均粒径は、好ましくは20〜1000nmであり、より好ましくは30〜800nmであり、更に好ましくは40〜600nmであり、特に好ましくは50〜500nmであり、極めて好ましくは100〜400nmであり、非常に好ましくは120〜400nmであり、より一層好ましくは150〜400nmであり、殊更に好ましくは200〜400nmであり、最も好ましくは300〜400nmである。
【0036】
平均粒径(平均二次粒径)は、光回折散乱式粒度分布計(例えば、ベックマン・コールター株式会社製、商品名:N5、又は、マイクロトラック・ベル株式会社製、商品名:マイクロトラックMT3300EXII)を用いて測定される。
【0037】
スラリ中の砥粒のD99粒径は、絶縁材料の研磨速度が更に向上する観点から、好ましくは150nm以上であり、より好ましくは200nm以上であり、更に好ましくは250nm以上である。スラリ中の砥粒のD99粒径は、砥粒の分散性が向上する観点、及び、被研磨面に傷がつくことが更に抑制される観点から、好ましくは2000nm以下であり、より好ましくは1500nm以下であり、更に好ましくは1200nm以下である。これらの観点から、スラリ中の砥粒のD99粒径は、好ましくは150〜2000nmであり、より好ましくは200〜1500nmであり、更に好ましくは250〜1200nmである。D99粒径は、光回折散乱式粒度分布計(マイクロトラック・ベル株式会社製、商品名:マイクロトラックMT3300EXII)を用いて測定される。
【0038】
スラリ中における第1の粒子は、第1の粒子と第2の粒子とを適切に作用させ、絶縁材料の研磨速度をより向上させる観点から、好ましくは負のゼータ電位を有する。スラリ中における第1の粒子のゼータ電位は、絶縁材料の研磨速度を更に向上させる観点から、好ましくは−20mV以下であり、より好ましくは−25mV以下であり、更に好ましくは−30mV以下であり、特に好ましくは−35mV以下である。第1の粒子のゼータ電位の下限は特に限定されない。第1の粒子のゼータ電位は、例えば−200mV以上であってよい。すなわち、第1の粒子のゼータ電位は、−200〜−20mV、−200〜−25mV、−200〜−30mV又は−200〜−35mVであってよい。
【0039】
スラリ中における第2の粒子は、第2の粒子と第1の粒子とを適切に作用させ、絶縁材料の研磨速度をより向上させる観点から、好ましくは正のゼータ電位を有する。スラリ中における第2の粒子のゼータ電位は、絶縁材料の研磨速度を更に向上させる観点から、好ましくは+10mV以上であり、より好ましくは+15mV以上であり、更に好ましくは+20mV以上であり、特に好ましくは+25mV以上である。第2の粒子のゼータ電位の上限は特に限定されない。第2の粒子のゼータ電位は、例えば+200mV以下であってよい。すなわち、第2の粒子のゼータ電位は、+10〜+200mV、+15〜+200mV、+20〜+200mV又は+25〜+200mVであってよい。
【0040】
スラリ中における砥粒(複合粒子を含む砥粒)のゼータ電位(砥粒全体のゼータ電位)は、絶縁材料の研磨速度をより向上させる観点から、好ましくは+10mV以上であり、より好ましくは+20mV以上であり、更に好ましくは+25mV以上であり、特に好ましくは+30mV以上であり、極めて好ましくは+40mV以上であり、非常に好ましくは+50mV以上である。砥粒のゼータ電位の上限は特に限定されない。砥粒のゼータ電位は、例えば+200mV以下であってよい。すなわち、砥粒のゼータ電位は、+10〜+200mV、+20〜+200mV、+25〜+200mV、+30〜+200mV、+40〜+200mV又は+50〜+200mVであってよい。
【0041】
ゼータ電位とは、粒子の表面電位を表す。ゼータ電位は、例えば、動的光散乱式ゼータ電位測定装置(例えば、ベックマン・コールター株式会社製、商品名:DelsaNano C)を用いて測定することができる。粒子のゼータ電位は、添加剤を用いて調整できる。例えば、セリウム酸化物を含有する粒子にモノカルボン酸(例えば酢酸)を接触させることにより、正のゼータ電位を有する粒子を得ることができる。また、セリウム酸化物を含有する粒子に、カルボキシル基を有する材料(ポリアクリル酸等)を接触させることにより、負のゼータ電位を有する粒子を得ることができる。
【0042】
第1の粒子及び第2の粒子を含む複合粒子は、ホモジナイザー、ナノマイザー、ボールミル、ビーズミル、超音波処理機等を用いて第1の粒子と第2の粒子とを接触させること、互いに相反する電荷を有する第1の粒子と第2の粒子とを接触させること、粒子の含有量が少ない状態で第1の粒子と第2の粒子とを接触させることなどにより得ることができる。
【0043】
砥粒におけるセリウム酸化物(例えばセリア)の含有量は、絶縁材料の研磨速度をより向上させる観点から、砥粒全体(スラリに含まれる砥粒全体。以下同様)を基準として、好ましくは50質量%以上であり、より好ましくは60質量%以上であり、更に好ましくは70質量%以上であり、特に好ましくは80質量%以上である。砥粒におけるセリウム酸化物(例えばセリア)の含有量は、絶縁材料の研磨速度が更に向上する観点から、砥粒全体を基準として、好ましくは95質量%以下であり、より好ましくは92質量%以下であり、更に好ましくは90質量%以下であり、特に好ましくは88質量%以下であり、極めて好ましくは85質量%以下である。これらの観点から、砥粒におけるセリウム酸化物の含有量は、砥粒全体を基準として、好ましくは50〜95質量%であり、より好ましくは60〜92質量%であり、更に好ましくは70〜90質量%であり、特に好ましくは80〜88質量%であり、極めて好ましくは80〜85質量%である。
【0044】
第1の粒子におけるセリウム酸化物(例えばセリア)の含有量は、絶縁材料の研磨速度をより向上させる観点から、第1の粒子の全体(スラリに含まれる第1の粒子の全体。以下同様)を基準として、好ましくは50質量%以上であり、より好ましくは70質量%以上であり、更に好ましくは90質量%以上であり、特に好ましくは95質量%以上である。第1の粒子は、実質的にセリウム酸化物(例えばセリア)からなる態様(実質的に第1の粒子の100質量%がセリウム酸化物である態様)であってもよい。すなわち、第1の粒子におけるセリウム酸化物の含有量は、第1の粒子の全体を基準として、100質量%以下であってよい。
【0045】
第1の粒子の含有量は、絶縁材料の研磨速度をより向上させる観点から、スラリの全質量を基準として、好ましくは0.01質量%以上であり、より好ましくは0.05質量%以上であり、更に好ましくは0.1質量%以上であり、特に好ましくは0.3質量%以上であり、極めて好ましくは0.4質量%以上であり、非常に好ましくは0.5質量%以上である。第1の粒子の含有量は、スラリの保管安定性をより高くする観点から、スラリの全質量を基準として、好ましくは10質量%以下であり、より好ましくは5質量%以下であり、更に好ましくは1質量%以下である。これらの観点から、第1の粒子の含有量は、スラリの全質量を基準として、好ましくは0.01〜10質量%であり、より好ましくは0.05〜5質量%であり、更に好ましくは0.1〜1質量%であり、特に好ましくは0.3〜1質量%であり、極めて好ましくは0.4〜1質量%であり、非常に好ましくは0.5〜1質量%である。
【0046】
砥粒における4価金属元素の水酸化物の含有量は、絶縁材料の研磨速度をより更に向上させる観点から、砥粒全体(スラリに含まれる砥粒全体)を基準として、好ましくは5質量%以上であり、より好ましくは8質量%以上であり、更に好ましくは10質量%以上であり、特に好ましくは12質量%以上であり、極めて好ましくは15質量%以上である。砥粒における4価金属元素の水酸化物の含有量は、スラリの調製が容易であると共に絶縁材料の研磨速度が更に向上する観点から、砥粒全体を基準として、好ましくは50質量%以下であり、より好ましくは40質量%以下であり、更に好ましくは30質量%以下であり、特に好ましくは20質量%以下である。これらの観点から、砥粒における4価金属元素の水酸化物の含有量は、砥粒全体を基準として、好ましくは5〜50質量%であり、より好ましくは8〜40質量%であり、更に好ましくは10〜30質量%であり、特に好ましくは12〜20質量%であり、極めて好ましくは15〜20質量%である。
【0047】
第2の粒子における4価金属元素の水酸化物の含有量は、絶縁材料の研磨速度が更に向上する観点から、第2の粒子の全体(スラリに含まれる第2の粒子の全体。以下同様)を基準として、好ましくは50質量%以上であり、より好ましくは70質量%以上であり、更に好ましくは90質量%以上であり、特に好ましくは95質量%以上である。第2の粒子は、実質的に4価金属元素の水酸化物からなる態様(実質的に第2の粒子の100質量%が4価金属元素の水酸化物である態様)であってもよい。すなわち、第2の粒子における4価金属元素の水酸化物の含有量は、第2の粒子の全体を基準として、100質量%以下であってよい。
【0048】
スラリにおける4価金属元素の水酸化物の含有量は、砥粒と被研磨面との化学的な相互作用を向上させ、絶縁材料の研磨速度をより向上させる観点から、スラリの全質量を基準として、好ましくは0.005質量%以上であり、より好ましくは0.01質量%以上であり、更に好ましくは0.03質量%以上であり、特に好ましくは0.05質量%以上であり、極めて好ましくは0.1質量%以上である。スラリにおける4価金属元素の水酸化物の含有量は、砥粒の凝集を避けることが容易になると共に、砥粒と被研磨面との化学的な相互作用が良好となり、砥粒の特性を有効に活用できる観点から、スラリの全質量を基準として、好ましくは5質量%以下であり、より好ましくは4質量%以下であり、更に好ましくは3質量%以下であり、特に好ましくは2質量%以下であり、極めて好ましくは1質量%以下であり、非常に好ましくは0.5質量%以下である。これらの観点から、4価金属元素の水酸化物の含有量は、スラリの全質量を基準として、好ましくは0.005〜5質量%であり、より好ましくは0.01〜4質量%であり、更に好ましくは0.03〜3質量%であり、特に好ましくは0.05〜2質量%であり、極めて好ましくは0.1〜1質量%であり、非常に好ましくは0.1〜0.5質量%である。
【0049】
第2の粒子の含有量は、絶縁材料の研磨速度をより向上させる観点から、第1の粒子及び第2の粒子の合計量を基準として、好ましくは5質量%以上であり、より好ましくは8質量%以上であり、更に好ましくは10質量%以上であり、特に好ましくは12質量%以上であり、極めて好ましくは15質量%以上である。第2の粒子の含有量は、スラリの調製が容易であると共に絶縁材料の研磨速度が更に向上する観点から、第1の粒子及び第2の粒子の合計量を基準として、好ましくは50質量%以下であり、より好ましくは40質量%以下であり、更に好ましくは30質量%以下であり、特に好ましくは20質量%以下である。これらの観点から、第2の粒子の含有量は、第1の粒子及び第2の粒子の合計量を基準として、好ましくは5〜50質量%であり、より好ましくは8〜40質量%であり、更に好ましくは10〜30質量%であり、特に好ましくは12〜20質量%であり、極めて好ましくは15〜20質量%であってよい。
【0050】
第2の粒子の含有量は、砥粒と被研磨面との化学的な相互作用を向上させ、絶縁材料の研磨速度をより向上させる観点から、スラリの全質量を基準として、好ましくは0.005質量%以上であり、より好ましくは0.01質量%以上であり、更に好ましくは0.03質量%以上であり、特に好ましくは0.05質量%以上であり、極めて好ましくは0.1質量%以上である。第2の粒子の含有量は、砥粒の凝集を避けることが容易になると共に、砥粒と被研磨面との化学的な相互作用が良好となり、砥粒の特性を有効に活用できる観点から、スラリの全質量を基準として、好ましくは5質量%以下であり、より好ましくは4質量%以下であり、更に好ましくは3質量%以下であり、特に好ましくは2質量%以下であり、極めて好ましくは1質量%以下であり、非常に好ましくは0.5質量%以下である。これらの観点から、第2の粒子の含有量は、スラリの全質量を基準として、好ましくは0.005〜5質量%であり、より好ましくは0.01〜4質量%であり、更に好ましくは0.03〜3質量%であり、特に好ましくは0.05〜2質量%であり、極めて好ましくは0.1〜1質量%であり、非常に好ましくは0.1〜0.5質量%である。
【0051】
砥粒の含有量は、絶縁材料の研磨速度が更に向上する観点から、スラリの全質量を基準として、好ましくは0.01質量%以上であり、より好ましくは0.03質量%以上であり、更に好ましくは0.05質量%以上であり、特に好ましくは0.07質量%以上であり、極めて好ましくは0.1質量%以上であり、非常に好ましくは0.15質量%以上であり、より一層好ましくは0.3質量%以上であり、殊更に好ましくは0.5質量%以上である。砥粒の含有量は、スラリの保管安定性をより高くする観点から、スラリの全質量を基準として、好ましくは10質量%以下であり、より好ましくは8質量%以下であり、更に好ましくは6質量%以下である。これらの観点から、砥粒の含有量は、スラリの全質量を基準として、好ましくは0.01〜10質量%であり、より好ましくは0.03〜8質量%であり、更に好ましくは0.05〜6質量%であり、特に好ましくは0.07〜6質量%であり、極めて好ましくは0.1〜6質量%であり、非常に好ましくは0.15〜6質量%であり、より一層好ましくは0.3〜6質量%であり、殊更に好ましくは0.5〜6質量%である。
【0052】
また、砥粒の含有量を更に少なくすることにより、コスト及び研磨傷を更に低減できる点で好ましい。一般的に、砥粒の含有量が少なくなると、絶縁材料等の研磨速度も低下する傾向がある。一方、4価金属元素の水酸化物を含有する粒子を含む砥粒は、少量でも所定の研磨速度を得ることができるため、研磨速度と、砥粒の含有量を少なくすることによる利点とのバランスをとりつつ、砥粒の含有量を更に低減することができる。このような観点から、砥粒の含有量は、スラリの全質量を基準として、5質量%以下、4質量%以下、3質量%以下、2質量%以下又は1質量%以下であってよい。すなわち、砥粒の含有量は、スラリの全質量を基準として、例えば、0.01〜5質量%、0.03〜4質量%、0.05〜3質量%、0.07〜2質量%、0.1〜1質量%、0.15〜1質量%、0.3〜1質量%又は0.5〜1質量%であってよい。
【0053】
[吸光度]
第2の粒子は、4価金属元素の水酸化物を含有し、且つ、下記条件(a)及び(b)の少なくとも一方の条件を満たすことが好ましい。なお、第2の粒子の含有量を所定量に調整した「水分散液」とは、所定量の第2の粒子と水とを含む液を意味する。
(a)第2の粒子が、当該第2の粒子の含有量を1.0質量%に調整した水分散液において波長400nmの光に対して吸光度1.00以上を与える。
(b)第2の粒子が、当該第2の粒子の含有量を0.0065質量%に調整した水分散液において波長290nmの光に対して吸光度1.000以上を与える。
【0054】
上記条件(a)に関して、第2の粒子の含有量を1.0質量%に調整した水分散液において波長400nmの光に対する吸光度1.00以上を与える粒子を用いることにより、研磨速度を更に向上させることができる。この理由は必ずしも明らかではないが、本発明者は次のように考えている。すなわち、4価金属元素の水酸化物の製造条件等に応じて、4価の金属(M
4+)、1〜3個の水酸化物イオン(OH
−)及び1〜3個の陰イオン(X
c−)からなるM(OH)
aX
b(式中、a+b×c=4である)を含む粒子が生成するものと考えられる(なお、このような粒子も「4価金属元素の水酸化物を含む粒子」である)。M(OH)
aX
bでは、電子吸引性の陰イオン(X
c−)が作用して水酸化物イオンの反応性が向上しており、M(OH)
aX
bの存在量が増加するに伴い研磨速度が向上するものと考えられる。そして、M(OH)
aX
bを含む粒子が波長400nmの光を吸光するため、M(OH)
aX
bの存在量が増加して波長400nmの光に対する吸光度が高くなるに伴い、研磨速度が向上するものと考えられる。
【0055】
4価金属元素の水酸化物を含む粒子は、M(OH)
aX
bだけでなく、M(OH)
4、MO
2等も含み得ると考えられる。陰イオン(X
c−)としては、例えば、NO
3−及びSO
42−が挙げられる。
【0056】
なお、4価金属元素の水酸化物を含む粒子がM(OH)
aX
bを含むことは、粒子を純水でよく洗浄した後に、FT−IR ATR法(Fourier transform Infra Red Spectrometer Attenuated Total Reflection法、フーリエ変換赤外分光光度計全反射測定法)で、陰イオン(X
c−)に該当するピークを検出する方法により確認できる。XPS法(X−ray Photoelectron Spectroscopy、X線光電子分光法)により、陰イオン(X
c−)の存在を確認することもできる。
【0057】
ここで、M(OH)
aX
b(例えばM(OH)
3X)の波長400nmの吸収ピークは、後述する波長290nmの吸収ピークよりもはるかに小さいことが確認されている。これに対し、本発明者は、粒子の含有量が比較的多く、吸光度が大きく検出されやすい含有量1.0質量%の水分散液を用いて吸光度の大きさを検討した結果、当該水分散液において波長400nmの光に対する吸光度1.00以上を与える粒子を用いる場合に、研磨速度の向上効果に優れることを見出した。
【0058】
波長400nmの光に対する吸光度は、更に優れた研磨速度で絶縁材料を研磨しやすくなる観点から、好ましくは1.50以上であり、より好ましくは1.55以上であり、更に好ましくは1.60以上である。
【0059】
上記条件(b)に関して、第2の粒子の含有量を0.0065質量%に調整した水分散液において波長290nmの光に対する吸光度1.000以上を与える第2の粒子を用いることにより、研磨速度を更に向上させることができる。この理由は必ずしも明らかではないが、本発明者は次のように考えている。すなわち、4価金属元素の水酸化物の製造条件等に応じて生成するM(OH)
aX
b(例えばM(OH)
3X)を含む粒子は、計算上、波長290nm付近に吸収のピークを有し、例えばCe
4+(OH
−)
3NO
3−からなる粒子は波長290nmに吸収のピークを有する。そのため、M(OH)
aX
bの存在量が増加して波長290nmの光に対する吸光度が高くなるに伴い、研磨速度が向上するものと考えられる。
【0060】
ここで、波長290nm付近の光に対する吸光度は、測定限界を超えるほど大きく検出される傾向がある。これに対し、本発明者は、粒子の含有量が比較的少なく、吸光度が小さく検出されやすい含有量0.0065質量%の水分散液を用いて吸光度の大きさを検討した結果、当該水分散液において波長290nmの光に対する吸光度1.000以上を与える粒子を用いる場合に、研磨速度の向上効果に優れることを見出した。
【0061】
波長290nmの光に対する吸光度は、更に優れた研磨速度で絶縁材料を研磨する観点から、より好ましくは1.050以上であり、更に好ましくは1.100以上であり、特に好ましくは1.130以上であり、極めて好ましくは1.150以上である。波長290nmの光に対する吸光度の上限は、特に制限はないが、好ましくは10.00以下である。すなわち、波長290nmの光に対する吸光度は、好ましくは1.000〜10.00であり、より好ましくは1.050〜10.00であり、更に好ましくは1.100〜10.00であり、特に好ましくは1.130〜10.00であり、極めて好ましくは1.150〜10.00である。
【0062】
波長400nmの光に対する吸光度1.00以上を与える第2の粒子が、第2の粒子の含有量を0.0065質量%に調整した水分散液において波長290nmの光に対して吸光度1.000以上を与える場合には、更に優れた研磨速度で絶縁材料を研磨することができる。
【0063】
また、4価金属元素の水酸化物(例えばM(OH)
aX
b)は、波長450nm以上(特に波長450〜600nm)の光を吸光しない傾向がある。したがって、不純物を含むことにより研磨に対して悪影響が生じることを抑制して更に優れた研磨速度で絶縁材料を研磨する観点から好ましい第2の粒子は、当該第2の粒子の含有量を0.0065質量%(65ppm)に調整した水分散液において波長450〜600nmの光に対して吸光度0.010以下を与えるものである。すなわち、第2の粒子の含有量を0.0065質量%に調整した水分散液において波長450〜600nmの範囲における全ての光に対する吸光度は、好ましくは0.010を超えない。波長450〜600nmの光に対する吸光度は、より好ましくは0.010未満である。波長450〜600nmの光に対する吸光度の下限は、好ましくは0である。
【0064】
水分散液における吸光度は、例えば、株式会社日立製作所製の分光光度計(装置名:U3310)を用いて測定できる。具体的には例えば、第2の粒子の含有量を1.0質量%又は0.0065質量%に調整した水分散液を測定サンプルとして調製する。この測定サンプルを1cm角のセルに約4mL入れ、装置内にセルを設置する。次に、波長200〜600nmの範囲で吸光度測定を行い、得られたチャートから吸光度を判断する。
【0065】
[光透過率]
本実施形態のスラリに含まれる第2の粒子は、好ましくは、当該第2の粒子の含有量を1.0質量%に調整した水分散液において波長500nmの光に対して光透過率50%/cm以上を与えるものである。これにより、添加剤の添加に起因する研磨速度の低下を更に抑制することができるため、研磨速度を維持しつつ他の特性を得ることが容易になる。この観点から、上記光透過率は、より好ましくは60%/cm以上であり、更に好ましくは70%/cm以上であり、特に好ましくは80%/cm以上であり、極めて好ましくは90%/cm以上であり、非常に好ましくは92%/cm以上である。光透過率の上限は100%/cmである。
【0066】
このように粒子の光透過率を調整することで研磨速度の低下を抑制することが可能な理由は詳しくはわかっていないが、本発明者は以下のように考えている。4価金属元素(セリウム等)の水酸化物を含む粒子では、機械的作用よりも化学的作用の方が支配的になると考えられる。そのため、粒子の大きさよりも粒子の数の方が、より研磨速度に寄与すると考えられる。
【0067】
粒子の含有量が1.0質量%である水分散液において光透過率が低い場合、その水分散液に存在する粒子は、粒径の大きい粒子(以下「粗大粒子」という。)が相対的に多く存在すると考えられる。このような粒子を含むスラリに添加剤(例えばポリビニルアルコール(PVA))を添加すると、粗大粒子を核として他の粒子が凝集する。その結果として、単位面積当たりの被研磨面に作用する粒子数(有効粒子数)が減少し、被研磨面に接する粒子の比表面積が減少するため、研磨速度の低下が引き起こされると考えられる。
【0068】
一方、粒子の含有量が1.0質量%である水分散液において光透過率が高い場合、その水分散液に存在する粒子は、「粗大粒子」が少ない状態であると考えられる。このように粗大粒子の存在量が少ない場合は、スラリに添加剤(例えばポリビニルアルコール)を添加しても、凝集の核になるような粗大粒子が少ないため、粒子同士の凝集が抑えられるか、又は、凝集粒子の大きさが従来のスラリで生じる凝集粒子と比べて小さくなる。その結果として、単位面積当たりの被研磨面に作用する粒子数(有効粒子数)が維持され、被研磨面に接する粒子の比表面積が維持されるため、研磨速度の低下が生じ難くなると考えられる。
【0069】
本発明者の検討では、一般的な粒径測定装置において測定される粒径が同じスラリであっても、目視で透明である(光透過率の高い)もの、及び、目視で濁っている(光透過率の低い)ものがありえることがわかっている。このことから、上記のような作用を起こしうる粗大粒子は、一般的な粒径測定装置で検知できないほどのごくわずかの量でも、研磨速度の低下に寄与すると考えられる。
【0070】
また、粗大粒子を減らすためにろ過を複数回繰り返しても、添加剤により研磨速度が低下する現象はさほど改善せず、吸光度に起因する研磨速度の上記向上効果が充分に発揮されない場合があることがわかっている。そこで、本発明者は、粒子の製造方法を工夫する等して、水分散液において光透過率の高い粒子を使用することによって上記問題を解決できることを見出した。
【0071】
上記光透過率は、波長500nmの光に対する透過率である。上記光透過率は、分光光度計で測定することができる。具体的には例えば、株式会社日立製作所製の分光光度計U3310(装置名)で測定することができる。
【0072】
より具体的な測定方法としては、第2の粒子の含有量を1.0質量%に調整した水分散液を測定サンプルとして調製する。この測定サンプルを1cm角のセルに約4mL入れ、装置内にセルをセットした後に測定を行う。
【0073】
スラリに含まれる第2の粒子が水分散液において与える吸光度及び光透過率は、第2の粒子以外の固体成分、及び、水以外の液体成分を除去した後、所定の含有量の水分散液を調製し、当該水分散液を用いて測定することができる。スラリに含まれる成分によっても異なるが、固体成分及び液体成分の除去には、例えば、数千G以下の重力加速度をかけられる遠心(分離)機を用いた遠心分離、数万G以上の重力加速度をかけられる超遠心(分離)機を用いた超遠心分離等の遠心分離法;分配クロマトグラフィー、吸着クロマトグラフィー、ゲル浸透クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー等のクロマトグラフィー法;自然ろ過、減圧ろ過、加圧ろ過、限外ろ過等のろ過法;減圧蒸留、常圧蒸留等の蒸留法を用いることができ、これらを適宜組み合わせてもよい。
【0074】
例えば、重量平均分子量が数万以上(例えば5万以上)の化合物を含む場合、第2の粒子の分離方法としては、クロマトグラフィー法、ろ過法等が挙げられ、中でも、ゲル浸透クロマトグラフィー及び限外ろ過からなる群より選択される少なくとも一種が好ましい。ろ過法を用いる場合、スラリに含まれる粒子は、適切な条件の設定により、フィルタを通過させることができる。重量平均分子量が数万以下(例えば5万未満)の化合物を含む場合、第2の粒子の分離方法としては、クロマトグラフィー法、ろ過法、蒸留法等が挙げられ、ゲル浸透クロマトグラフィー、限外ろ過及び減圧蒸留からなる群より選択される少なくとも一種が好ましい。複数種類の粒子が含まれる場合、第2の粒子の分離方法としては、ろ過法、遠心分離法等が挙げられ、ろ過の場合はろ液に、遠心分離の場合は液相に、4価金属元素の水酸化物を含む粒子がより多く含まれる。なお、本明細書における重量平均分子量は、標準ポリスチレンの検量線を用いたゲルパーミエーションクロマトグラフィー法(GPC)により下記の条件で測定される。
【0075】
使用機器:日立L−6000型[株式会社日立製作所製]
カラム:ゲルパックGL−R420+ゲルパックGL−R430+ゲルパックGL−R440[日立化成株式会社製 商品名、計3本]
溶離液:テトラヒドロフラン
測定温度:40℃
流量:1.75mL/分
検出器:L−3300RI[株式会社日立製作所製]
【0076】
第2の粒子以外の固体成分を分離する方法としては、例えば、下記遠心分離条件によって分離することができる。
遠心分離機:Optima MAX−TL(ベックマン・コールター株式会社製)
遠心加速度:40000G
処理時間:5分
処理温度:25℃
【0077】
クロマトグラフィー法で第2の粒子を分離する方法として、例えば、下記条件によって、第2の粒子を分取する方法、他成分を分取する方法、これらの方法の組み合わせ等が挙げられる。
試料溶液:スラリ100μL
検出器:株式会社日立製作所製、UV−VISディテクター、商品名「L−4200」
波長:400nm
インテグレータ:株式会社日立製作所製、GPCインテグレータ、商品名「D−2500」
ポンプ:株式会社日立製作所製、商品名「L−7100」
カラム:日立化成株式会社製、水系HPLC用充填カラム、商品名「GL−W550S」
溶離液:脱イオン水
測定温度:23℃
流速:1mL/分(圧力は40〜50kg/cm
2程度)
測定時間:60分
【0078】
スラリに含まれる成分によっては、上記条件でも第2の粒子を分取できない可能性があるが、その場合、試料溶液量、カラム種類、溶離液種類、測定温度、流速等を最適化することで分離することができる。また、スラリのpHを調整することで、スラリに含まれる成分の留出時間を調整し、第2の粒子と分離できる可能性がある。スラリに不溶成分がある場合、必要に応じ、ろ過、遠心分離等で不溶成分を除去することが好ましい。
【0079】
[第2の粒子の作製方法]
4価金属元素の水酸化物は、4価金属元素の塩(金属塩)と、アルカリ源(塩基)とを反応させることにより作製できる。4価金属元素の水酸化物は、好ましくは、4価金属元素の塩とアルカリ液(例えばアルカリ水溶液)とを混合することにより作製される。これにより、粒径が極めて細かい粒子を得ることができ、研磨傷の低減効果に更に優れたスラリを得ることができる。このような手法は、例えば、特許文献6及び7に開示されている。4価金属元素の水酸化物は、4価金属元素の塩の金属塩溶液(例えば金属塩水溶液)とアルカリ液とを混合することにより得ることができる。4価金属元素の塩としては、従来公知のものを特に制限なく使用でき、M(NO
3)
4、M(SO
4)
2、M(NH
4)
2(NO
3)
6、M(NH
4)
4(SO
4)
4(Mは希土類金属元素を示す。)、Zr(SO
4)
2・4H
2O等が挙げられる。Mとしては、化学的に活性なセリウム(Ce)が好ましい。
【0080】
(式(1)で表される化合物の塩)
本実施形態のスラリは、上記式(1)で表される化合物の塩を含有する。本実施形態では、砥粒として第1の粒子と第2の粒子とを含むスラリが、式(1)で表される化合物の塩を更に含むため、砥粒の凝集による粒径の増大が起こり難く、研磨特性の低下を抑制することができる。すなわち、スラリが式(1)で表される化合物の塩を含むことにより、スラリの保管安定性が向上し、長期保管後における研磨特性(例えば絶縁材料の研磨速度)が向上する。そのため、本実施形態のスラリによれば、安定して研磨を行うことができる。かかる効果は、第1の粒子のゼータ電位が負であり、第2の粒子のゼータ電位が正である場合に顕著である。また、従来、砥粒の凝集を抑制するためにカルボキシル基を有する材料を用いる場合があるが、このような従来の研磨液では充分な絶縁材料の研磨速度が得られない傾向がある。一方、本実施形態では、式(1)で表される化合物の塩を用いるため、従来の研磨液と比較して、充分な研磨速度が得られやすい。
【0081】
式(1)で表される化合物の塩を用いることなく、式(1)で表される化合物(例えばリン酸)を用いた場合には、スラリの保管安定性が向上する効果が得られない。この理由の一例は、下記のとおりであると推察される。式(1)で表される化合物の塩を用いた場合には、式(1)で表される化合物の塩における水酸基が解離した状態で当該塩が砥粒に吸着することにより、解離した水酸基に起因して砥粒の表面が帯電(負に帯電)するため、砥粒同士の電気的な反発によって砥粒の凝集が抑制される。一方、式(1)で表される化合物(例えばリン酸)を用いた場合には、式(1)で表される化合物における水酸基が解離した状態で当該化合物が砥粒に吸着し難いことから、砥粒の表面が帯電し難いため、砥粒の凝集が抑制し得ない。
【0082】
式(1)で表される化合物の塩が有する1価の有機基としては、アルキル基、アリール基、ビニル基等が挙げられる。これらの有機基が有する水素原子の少なくとも一つは、他の官能基(置換基)によって置換されていてもよい。官能基(置換基)としては、水酸基、リン酸基、リン酸塩基、亜リン酸基、亜リン酸塩基等が挙げられる。リン酸塩基又は亜リン酸塩基の塩としては、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩(水酸基の水素原子がアルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウムイオン等で置換された基)などが挙げられる。例えば、1価の有機基は、水素原子の少なくとも一つがリン酸塩基又は亜リン酸塩基で置換されたアルキル基であってよい。1価の有機基の中でも、スラリの保管安定性をより向上させる観点から、アルキル基が好ましい。アルキル基は、飽和又は不飽和のいずれであってもよく、直鎖状、分枝状又は環状のいずれであってもよい。アルキル基の炭素数は、例えば1〜4であってよい。
【0083】
式(1)で表される化合物の塩は、例えば、下記式(2)又は下記式(3)で表される。式(1)で表される化合物の塩は、スラリの保管安定性をより向上させる観点から、下記式(2)で表される化合物(塩)、及び、下記式(3)で表される化合物(塩)からなる群より選ばれる少なくとも一種を含むことができる。
【化4】
[式(2)中、Rは、水酸基又は1価の有機基を示し、X
+は対イオンを示す。]
【化5】
[式(3)中、Rは、水酸基又は1価の有機基を示し、X
+は対イオンを示す。]
【0084】
対イオンとしては、アルカリ金属カチオン、アルカリ土類金属カチオン、アンモニウムイオン等が挙げられる。これらの中でも、スラリの安定性をより向上させる観点、及び、被研磨面の金属汚染を防止する観点から、アンモニウムイオンが好ましい。すなわち、式(1)で表される化合物の塩は、アンモニウム塩を含むことが好ましい。アンモニウムイオンの水素原子は、アルキル基等によって置換されていてもよい。
【0085】
式(1)で表される化合物の塩は、スラリの保管安定性をより向上させる観点から、前記Rが水酸基又はアルキル基である化合物の塩を含むことが好ましく、前記Rが水酸基である化合物の塩を含むことがより好ましい。式(2)で表される化合物の塩、及び、式(3)で表される化合物の塩からなる群より選ばれる少なくとも一種は、スラリの保管安定性をより向上させる観点から、前記Rが水酸基又はアルキル基である化合物の塩を含むことが好ましく、前記Rが水酸基である化合物の塩を含むことがより好ましい。
【0086】
式(1)で表される化合物の塩は、モノホスホン酸の塩及びポリホスホン酸の塩からなる群より選ばれる少なくとも一種を含むことができる。式(1)で表される化合物の塩としては、一種を単独で用いてよく、複数種を組あわせて用いてもよい。
【0087】
モノホスホン酸の具体例としては、リン酸、ビニルホスホン酸、エチルホスホン酸、メチルホスホン酸等が挙げられる。リン酸の塩としては、リン酸水素二アンモニウム、リン酸二水素アンモニウム等が挙げられる。
【0088】
ポリホスホン酸の塩は、スラリの保管安定性をより向上させる観点から、ジホスホン酸の塩を含むことが好ましい。式(1)で表される化合物の塩は、スラリの保管安定性をより向上させる観点から、下記式(1a)で表される化合物の塩を含むことが好ましい。
【0089】
【化6】
[式(1a)中、R
1は、2価の有機基を示す。]
【0090】
式(1a)で表される化合物の塩が有する2価の有機基としては、アルキレン基等が挙げられる。有機基が有する水素原子の少なくとも一つは、他の官能基(置換基)によって置換されていてもよい。官能基(置換基)としては、水酸基、リン酸基、リン酸塩基、亜リン酸基、亜リン酸塩基等が挙げられる。リン酸塩基又は亜リン酸塩基の塩としては、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩(水酸基の水素原子がアルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウムイオン等で置換された基)などが挙げられる。例えば、2価の有機基は、水素原子の少なくとも一つが水酸基で置換されたアルキレン基であってよい。
【0091】
式(1a)で表される化合物の塩における水酸基の少なくとも一つの水素原子が対イオンによって置換されてよい。対イオンとしては、例えば、X
+として例示した上述の対イオンを用いることが可能であり、スラリの保管安定性をより向上させる観点から、アンモニウムイオンが好ましい。
【0092】
式(1a)で表される化合物の塩は、スラリの保管安定性をより向上させる観点から、ヒドロキシアルカンビスホスホン酸塩を含むことが好ましい。ヒドロキシアルカンビスホスホン酸塩は、スラリの保管安定性をより向上させる観点から、アンモニウム塩を含むことが好ましい。ヒドロキシアルカンビスホスホン酸塩は、スラリの保管安定性をより向上させる観点から、ヒドロキシエタンビスホスホン酸塩を含むことが好ましい。これらの観点から、ヒドロキシアルカンビスホスホン酸塩は、1−ヒドロキシエタン−1,1−ビス(ホスホン酸)アンモニウムを含むことが好ましい。
【0093】
式(1)で表される化合物の塩としては、スラリの保管安定性及び研磨速度をより向上させる観点から、リン酸水素二アンモニウム、リン酸二水素アンモニウム及びヒドロキシアルカンビスホスホン酸塩からなる群より選ばれる少なくとも一種が好ましく用いられ、リン酸水素二アンモニウム及びリン酸二水素アンモニウムからなる群より選ばれる少なくとも一種がより好ましく用いられる。
【0094】
式(1)で表される化合物の塩の含有量は、スラリの保管安定性をより向上させる観点から、スラリの全質量を基準として、好ましくは0.001質量%以上であり、より好ましくは0.003質量%以上であり、更に好ましくは0.005質量%以上である。式(1)で表される化合物の塩の含有量は、スラリの保管安定性をより向上させる観点、及び、研磨速度(例えば絶縁材料の研磨速度)の低下をより抑制する観点から、スラリの全質量を基準として、好ましくは0.1質量%以下であり、より好ましくは0.05質量%以下であり、更に好ましくは0.03質量%以下である。これらの観点から、式(1)で表される化合物の塩の含有量は、スラリの全質量を基準として、好ましくは0.001〜0.1質量%であり、より好ましくは0.003〜0.05質量%であり、更に好ましくは0.005〜0.03質量%である。
【0095】
式(1)で表される化合物の塩の含有量は、研磨速度(例えば絶縁材料の研磨速度)の低下をより抑制する観点から、スラリの全質量を基準として、好ましくは0.007質量%以上であり、より好ましくは0.01質量%以上である。式(1)で表される化合物の塩の含有量は、研磨速度(例えば絶縁材料の研磨速度)の低下をより抑制する観点から、スラリの全質量を基準として、好ましくは0.025質量%以下であり、より好ましくは0.02質量%以下であり、更に好ましくは0.015質量%以下である。
【0096】
スラリ中の砥粒100質量部に対する式(1)で表される化合物の塩の含有量は、スラリの保管安定性をより向上させる観点から、好ましくは0.05質量部以上であり、より好ましくは0.25質量部以上であり、更に好ましくは0.5質量部以上であり、特に好ましくは0.7質量部以上である。スラリ中の砥粒100質量部に対する式(1)で表される化合物の塩の含有量は、スラリの保管安定性をより向上させる観点、及び、研磨速度(例えば絶縁材料の研磨速度)の低下をより抑制する観点から、好ましくは5.0質量部以下であり、より好ましくは3.5質量部以下であり、更に好ましくは3.0質量部以下であり、特に好ましくは2.0質量部以下である。これらの観点から、スラリ中の砥粒100質量部に対する式(1)で表される化合物の塩の含有量は、好ましくは0.05〜5.0質量部であり、より好ましくは0.25〜3.0質量部であり、更に好ましくは0.5〜2.0質量部である。スラリ中の砥粒100質量部に対する式(1)で表される化合物の塩の含有量は、研磨速度(例えば絶縁材料の研磨速度)の低下をより抑制する観点から、スラリの全質量を基準として、好ましくは0.8質量部であり、より好ましくは1.0質量部以上であり、更に好ましくは1.5質量部であり、特に好ましくは1.6質量部である。
【0097】
(任意成分)
本実施形態のスラリは、研磨特性を調整する等の目的で、任意の添加剤(式(1)で表される化合物の塩を除く)を更に含有していてもよい。任意の添加剤としては、カルボキシル基を有する材料(ポリオキシアルキレン化合物又は水溶性高分子に該当する化合物を除く)、ポリオキシアルキレン化合物、水溶性高分子、酸化剤(例えば過酸化水素)等が挙げられる。添加剤のそれぞれは、一種を単独で又は二種以上を組み合わせて使用することができる。
【0098】
任意の添加剤(水溶性高分子等)は、スラリにおける砥粒の分散安定性を高めることができ、絶縁材料(例えば酸化珪素)を更に高速に研磨できる効果がある。また、絶縁材料(例えば酸化珪素)を高速に研磨できることにより、段差解消性が向上し、高い平坦性を得ることもできる。これは、凸部の研磨速度が凹部と比較して大幅に向上するためであると考える。
【0099】
カルボキシル基を有する材料としては、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸等のモノカルボン酸;乳酸、リンゴ酸、クエン酸等のヒドロキシ酸;マロン酸、コハク酸、フマル酸、マレイン酸等のジカルボン酸;ポリアクリル酸、ポリマレイン酸等のポリカルボン酸;アルギニン、ヒスチジン、リシン等のアミノ酸などが挙げられる。
【0100】
カルボキシル基を有する材料の重量平均分子量は、絶縁材料の高い研磨速度を発現させやすい観点から、100000以下が好ましく、80000以下がより好ましく、60000以下が更に好ましく、50000以下が特に好ましく、10000以下が極めて好ましい。カルボキシル基を有する材料の重量平均分子量は、適切な分散性を維持できる観点から、1000以上が好ましく、1500以上がより好ましく、2000以上が更に好ましく、5000以上が特に好ましい。
【0101】
カルボキシル基を有する材料の含有量は、スラリの全質量を基準として、0.01〜10質量%であることが好ましい。これにより、砥粒同士の凝集を抑制しつつ、絶縁材料を高い研磨速度で研磨しやすい。
【0102】
ポリオキシアルキレン化合物としては、ポリアルキレングリコール、ポリオキシアルキレン誘導体等が挙げられる。
【0103】
ポリアルキレングリコールとしては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール等が挙げられる。ポリアルキレングリコールとしては、ポリエチレングリコール及びポリプロピレングリコールからなる群より選択される少なくとも一種が好ましく、ポリエチレングリコールがより好ましい。
【0104】
ポリオキシアルキレン誘導体は、例えば、ポリアルキレングリコールに官能基若しくは置換基を導入した化合物、又は、有機化合物にポリアルキレンオキシドを付加した化合物である。上記官能基又は置換基としては、例えば、アルキルエーテル基、アルキルフェニルエーテル基、フェニルエーテル基、スチレン化フェニルエーテル基、グリセリルエーテル基、アルキルアミン基、脂肪酸エステル基、及び、グリコールエステル基が挙げられる。ポリオキシアルキレン誘導体としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンビスフェノールエーテル(例えば、日本乳化剤株式会社製、BAグリコールシリーズ)、ポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテル(例えば、花王株式会社製、エマルゲンシリーズ)、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル(例えば、第一工業製薬株式会社製、ノイゲンEAシリーズ)、ポリオキシアルキレンポリグリセリルエーテル(例えば、阪本薬品工業株式会社製、SC−Eシリーズ及びSC−Pシリーズ)、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル(例えば、第一工業製薬株式会社製、ソルゲンTWシリーズ)、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル(例えば、花王株式会社製、エマノーンシリーズ)、ポリオキシエチレンアルキルアミン(例えば、第一工業製薬株式会社製、アミラヂンD)、並びに、ポリアルキレンオキシドを付加したその他の化合物(例えば、日信化学工業株式会社製、サーフィノール465、及び、日本乳化剤株式会社製、TMPシリーズ)が挙げられる。
【0105】
ポリオキシアルキレン化合物の重量平均分子量は、特に制限はないが、適切な作業性及び起泡性が得られやすい観点から、好ましくは100000以下であり、より好ましくは50000以下であり、更に好ましくは20000以下であり、特に好ましくは10000以下であり、極めて好ましくは5000以下である。ポリオキシアルキレン化合物の重量平均分子量は、平坦性が更に向上する観点から、好ましくは200以上であり、より好ましくは400以上であり、更に好ましくは500以上である。
【0106】
ポリオキシアルキレン化合物の含有量は、平坦性が更に向上する観点から、スラリの全質量を基準として、0.01質量%以上が好ましく、0.02質量%以上がより好ましく、0.1質量%以上が更に好ましく、0.2質量%以上が特に好ましい。ポリオキシアルキレン化合物の含有量は、適度な研磨速度を得やすい観点から、スラリの全質量を基準として、5質量%以下が好ましく、2質量%以下がより好ましく、1質量%以下が更に好ましい。
【0107】
水溶性高分子は、砥粒の分散安定性、平坦性、面内均一性、窒化珪素に対する酸化珪素の研磨選択性(酸化珪素の研磨速度/窒化珪素の研磨速度)、ポリシリコンに対する酸化珪素の研磨選択性(酸化珪素の研磨速度/ポリシリコンの研磨速度)等の研磨特性を調整する効果がある。ここで、「水溶性高分子」とは、水100gに対して0.1g以上溶解する高分子として定義する。なお、上記ポリオキシアルキレン化合物に該当する高分子は「水溶性高分子」に含まれないものとする。
【0108】
水溶性高分子としては、特に制限はなく、ポリアクリルアミド、ポリジメチルアクリルアミド等のアクリル系ポリマ;カルボキシメチルセルロース、寒天、カードラン、デキストリン、シクロデキストリン、プルラン等の多糖類;ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクロレイン等のビニル系ポリマ;ポリグリセリン、ポリグリセリン誘導体等のグリセリン系ポリマ;ポリエチレングリコールなどが挙げられる。水溶性高分子は、一種を単独で又は二種以上を組み合わせて使用することができる。
【0109】
水溶性高分子を使用する場合、水溶性高分子の含有量は、砥粒の沈降を抑制しつつ水溶性高分子の添加効果が得られる観点から、スラリの全質量を基準として、0.001質量%以上が好ましく、0.01質量%以上がより好ましく、0.1質量%以上が更に好ましく、0.3質量%以上が特に好ましく、0.5質量%以上が極めて好ましい。水溶性高分子の含有量は、砥粒の沈降を抑制しつつ水溶性高分子の添加効果が得られる観点から、スラリの全質量を基準として、10質量%以下が好ましく、8質量%以下がより好ましく、6質量%以下が更に好ましく、5質量%以下が特に好ましく、3質量%以下が極めて好ましく、1質量%以下が非常に好ましい。水溶性高分子として複数の化合物を用いる場合、各化合物の含有量の合計が上記範囲を満たしていることが好ましい。
【0110】
酸化剤を使用する場合、酸化剤の含有量は、砥粒の沈降を抑制しつつ添加剤の添加効果が得られる観点から、スラリの全質量を基準として0.0001〜10質量%が好ましい。
【0111】
(液状媒体)
本実施形態のスラリにおける液状媒体としては、特に制限はないが、脱イオン水、超純水等の水が好ましい。液状媒体の含有量は、他の構成成分の含有量を除いたスラリの残部でよく、特に限定されない。
【0112】
(スラリの特性)
本実施形態のスラリのpHは、絶縁材料の研磨速度が更に向上する観点から、好ましくは2.0以上であり、より好ましくは2.5以上であり、更に好ましくは2.8以上であり、特に好ましくは3.0以上であり、極めて好ましくは3.2以上であり、非常に好ましくは3.5以上である。スラリのpHは、スラリの保管安定性が更に向上する観点から、好ましくは7.0以下であり、より好ましくは6.5以下であり、更に好ましくは6.0以下であり、特に好ましくは5.0以下であり、極めて好ましくは4.0以下である。これらの観点から、pHは、好ましくは2.0〜7.0であり、より好ましくは2.5〜6.5であり、更に好ましくは2.8〜6.0であり、特に好ましくは3.0〜5.0であり、極めて好ましくは3.2〜4.0であり、非常に好ましくは3.5〜4.0である。スラリのpHは、液温25℃におけるpHと定義する。
【0113】
スラリのpHは、無機酸、有機酸等の酸成分;アンモニア、水酸化ナトリウム、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)、イミダゾール、アルカノールアミン等のアルカリ成分などによって調整できる。また、pHを安定化させるため、緩衝剤を添加してもよい。また、緩衝液(緩衝剤を含む液)として緩衝剤を添加してもよい。このような緩衝液としては、酢酸塩緩衝液、フタル酸塩緩衝液等が挙げられる。
【0114】
本実施形態のスラリのpHは、pHメータ(例えば、東亜ディーケーケー株式会社製の型番PHL−40)で測定することができる。具体的には、例えば、フタル酸塩pH緩衝液(pH:4.01)及び中性リン酸塩pH緩衝液(pH:6.86)を標準緩衝液として用いてpHメータを2点校正した後、pHメータの電極をスラリに入れて、2分以上経過して安定した後の値を測定する。標準緩衝液及びスラリの液温は、共に25℃とする。
【0115】
本実施形態のスラリは、長期間保管した場合にも粒子の凝集が起こり難い。例えば、本実施形態のスラリを、60℃で5日間保管した際のD99粒径の増加率({[保管後のD99粒径/保管前のD99粒径]−1}×100)は、例えば、10%以下、5%以下又は3%以下である。D99粒径は、保管安定性の良し悪しをより顕著に現わす指標であり、D99粒径が10%を超えて増加すると、粗大粒子の増大による研磨傷の発生、及び、研磨速度の低下が懸念される。D99粒径の増加率は、例えば、スラリを60℃の恒温槽で5日間静置し、スラリを放置する前後のスラリ中のD99粒径を測定することで求められる。
【0116】
本実施形態のスラリは、例えば、第1の粒子を含むスラリ(例えば水分散液)と、第2の粒子を含むスラリ(例えば水分散液)と、を混合することによって調製してよい。この際、第1の粒子を含むスラリ、及び、第2の粒子を含むスラリの少なくとも一方は、式(1)で表される化合物の塩を含む。
【0117】
本実施形態のスラリを研磨液(例えばCMP研磨液)として用いる場合、研磨液の構成成分を一液式研磨液として保存してもよく、砥粒、液状媒体、及び、式(1)で表される化合物の塩を含むスラリ(第1の液)と、添加剤及び液状媒体を含む添加液(第2の液)とを混合して目的の研磨液となるように研磨液の構成成分をスラリと添加液とに分けた複数液式(例えば二液式)の研磨液セットとして保存してもよい。添加液は、例えば酸化剤を含んでいてもよい。研磨液の構成成分は、三液以上に分けた研磨液セットとして保存してもよい。
【0118】
研磨液セットにおいては、研磨直前又は研磨時に、スラリ(第1の液)及び添加液(第2の液)が混合されて研磨液が作製される。また、一液式研磨液は、液状媒体の含有量を減じた研磨液用貯蔵液として保存されると共に、研磨時に液状媒体で希釈して用いられてもよい。複数液式の研磨液セットは、液状媒体の含有量を減じたスラリ用貯蔵液及び添加液用貯蔵液として保存されると共に、研磨時に液状媒体で希釈して用いられてもよい。
【0119】
一液式研磨液の場合、研磨定盤上への研磨液の供給方法としては、研磨液を直接送液して供給する方法;研磨液用貯蔵液及び液状媒体を別々の配管で送液し、これらを合流及び混合させて供給する方法;あらかじめ研磨液用貯蔵液及び液状媒体を混合しておき供給する方法等を用いることができる。
【0120】
スラリと添加液とに分けた複数液式の研磨液セットとして保存する場合、これらの液の配合を任意に変えることにより研磨速度を調整することができる。研磨液セットを用いる場合、研磨定盤上への研磨液の供給方法としては、下記に示す方法がある。例えば、スラリと添加液とを別々の配管で送液し、これらの配管を合流及び混合させて供給する方法;スラリ用貯蔵液、添加液用貯蔵液及び液状媒体を別々の配管で送液し、これらを合流及び混合させて供給する方法;あらかじめスラリ及び添加液を混合しておき供給する方法;あらかじめスラリ用貯蔵液、添加液用貯蔵液及び液状媒体を混合しておき供給する方法等を用いることができる。また、上記研磨液セットにおけるスラリと添加液とをそれぞれ研磨定盤上へ供給する方法を用いることもできる。この場合、研磨定盤上においてスラリ及び添加液が混合されて得られる研磨液を用いて被研磨面が研磨される。
【0121】
<研磨方法>
本実施形態の研磨方法(基体の研磨方法等)は、上記スラリを用いて被研磨体(例えば基体)を研磨する研磨工程を備えている。研磨工程におけるスラリは、上記研磨液セットにおけるスラリと添加液とを混合して得られる研磨液であってもよい。研磨工程では、被研磨体の被研磨面を研磨することができる。被研磨面は、絶縁材料を含んでよく、酸化珪素を含んでよい。
【0122】
図1は、一実施形態の研磨方法に用いられる基体を示す模式断面図である。基体1は、基板2と、絶縁部3とを備える。基板2の一方面には凹部が形成されており、絶縁部3は、凹部を埋めるように基板2の一方面上に設けられている。基体1において、絶縁部3の基板2とは反対側の面は露出しており、当該露出面が被研磨面となる。
【0123】
基板2としては、例えば、半導体素子製造に用いられる基板(例えば、STIパターン、ゲートパターン、配線パターン等が形成された半導体基板)が挙げられる。絶縁部3は、例えば、STI絶縁材料、プリメタル絶縁材料、層間絶縁材料等の絶縁材料からなる。絶縁材料としては、酸化珪素、リン−シリケートガラス、ボロン−リン−シリケートガラス、シリコンオキシフロリド、フッ化アモルファスカーボン等が挙げられる。絶縁部3は、単一の材料で構成されていてもよく、複数の材料で構成されていてもよい。絶縁部3は、膜状であってよく、例えば酸化珪素膜であってよい。
【0124】
このような基板2上に形成された絶縁部3を上記スラリで研磨し、余分な部分を除去することによって、絶縁部3の表面の凹凸を解消し、絶縁部3の表面全体にわたって平滑な面を得ることができる。本実施形態のスラリは、好ましくは、酸化珪素を含む絶縁部の表面(例えば、酸化珪素で形成される領域を少なくとも一部に有する面)を研磨するために使用される。
【0125】
本実施形態のスラリにより研磨される絶縁部の作製方法としては、低圧CVD法、準常圧CVD法、プラズマCVD法等のCVD法;回転する基板に液体原料を塗布する回転塗布法などが挙げられる。
【0126】
研磨工程では、研磨装置として、被研磨面を有する基体を保持可能なホルダーと、研磨パッドを貼り付け可能な研磨定盤とを有する一般的な研磨装置を使用できる。具体的には、例えば、基体1の表面(絶縁部3の露出面)を研磨定盤の研磨パッド(研磨布)に押圧した状態で、上記スラリを絶縁部3と研磨パッドとの間に供給し、基体1と研磨定盤とを相対的に動かして絶縁部3の被研磨面を研磨する。研磨工程では、例えば、絶縁部3の一部を研磨により除去する。
【0127】
研磨装置のホルダー及び研磨定盤のそれぞれには、回転数が変更可能なモータ等が取り付けてある。研磨装置としては、例えば、株式会社荏原製作所製の研磨装置:F−REX300、又は、APPLIED MATERIALS社製の研磨装置:Reflexionを使用できる。
【0128】
研磨パッドとしては、一般的な不織布、発泡体、非発泡体等が使用できる。研磨パッドの材質としては、ポリウレタン、アクリル樹脂、ポリエステル、アクリル−エステル共重合体、ポリテトラフルオロエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリ4−メチルペンテン、セルロース、セルロースエステル、ポリアミド(例えば、ナイロン(商標名)及びアラミド)、ポリイミド、ポリイミドアミド、ポリシロキサン共重合体、オキシラン化合物、フェノール樹脂、ポリスチレン、ポリカーボネート、エポキシ樹脂等の樹脂が使用できる。研磨パッドの材質としては、特に、研磨速度及び平坦性に更に優れる観点から、発泡ポリウレタン及び非発泡ポリウレタンからなる群より選択される少なくとも一種が好ましい。研磨パッドには、スラリがたまるような溝加工が施されていることが好ましい。
【0129】
研磨条件に制限はないが、研磨定盤の回転速度は、基体が飛び出さないように、好ましくは200min
−1(min
−1=rpm)以下であり、基体にかける研磨圧力(加工荷重)は、研磨傷が発生することを充分に抑制する観点から、好ましくは100kPa以下である。また、研磨工程では、研磨している間、ポンプ等で連続的にスラリを研磨パッドに供給することが好ましい。この供給量に制限はないが、研磨パッドの表面が常にスラリで覆われていることが好ましい。
【0130】
研磨終了後の基体は、流水中でよく洗浄して、基体に付着した粒子を除去することが好ましい。洗浄には、純水以外に希フッ酸又はアンモニア水を併用してもよく、洗浄効率を高めるためにブラシを併用してもよい。また、洗浄後は、スピンドライヤ等を用いて、基体に付着した水滴を払い落としてから基体を乾燥させることが好ましい。
【0131】
以上説明したように、本実施形態のスラリ及び研磨方法は、半導体素子の製造技術である基体表面の平坦化工程に用いることができ、特に、STI絶縁材料、プリメタル絶縁材料又は層間絶縁材料からなる絶縁部の平坦化工程に好適に用いることができる。換言すれば、本実施形態のスラリによれば、STIの形成、並びに、プリメタル絶縁膜及び層間絶縁膜の高速研磨が可能である。
【0132】
また、本実施形態のスラリ及び研磨方法は、Hf系、Ti系、Ta系酸化物等の高誘電率材料;シリコン、アモルファスシリコン、SiC、SiGe、Ge、GaN、GaP、GaAs、有機半導体等の半導体材料;GeSbTe等の相変化材料;ITO等の無機導電材料;ポリイミド系、ポリベンゾオキサゾール系、アクリル系、エポキシ系、フェノール系等のポリマ樹脂材料などにも適用できる。
【0133】
また、本実施形態のスラリ及び研磨方法は、膜状の研磨対象だけでなく、ガラス、シリコン、SiC、SiGe、Ge、GaN、GaP、GaAs、サファイヤ、プラスチック等から構成される各種基板にも適用できる。
【0134】
また、本実施形態のスラリ及び研磨方法は、半導体素子の製造だけでなく、TFT、有機EL等の画像表示装置;フォトマスク、レンズ、プリズム、光ファイバー、単結晶シンチレータ等の光学部品;光スイッチング素子、光導波路等の光学素子;固体レーザ、青色レーザLED等の発光素子;磁気ディスク、磁気ヘッド等の磁気記憶装置などの製造に用いることができる。
【実施例】
【0135】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0136】
<実施例1>
(セリウム酸化物スラリの準備)
[セリウム酸化物スラリの調製]
セリウム酸化物を含む粒子(第1の粒子。以下、「セリウム酸化物粒子」という)と、和光純薬工業株式会社製のリン酸二水素アンモニウムの水溶液とを混合して、セリウム酸化物粒子を5.0質量%(固形分含量)含有するセリウム酸化物スラリ(pH:5.0)を調製した。リン酸二水素アンモニウムの配合量は、後述するCMP研磨液におけるリン酸二水素アンモニウムの含有量が表1の含有量となるように調整した。
【0137】
[平均粒径の測定]
マイクロトラック・ベル株式会社製の商品名:マイクロトラックMT3300EXII内にセリウム酸化物スラリを適量投入し、セリウム酸化物粒子の平均粒径(平均二次粒径)の測定を行った。表示された平均粒径値を平均粒径(平均二次粒径)として得た。セリウム酸化物スラリにおける平均粒径は350nmであった。
【0138】
[ゼータ電位の測定]
ベックマン・コールター株式会社製の商品名:DelsaNano C内に適量のセリウム酸化物スラリを投入し、25℃において測定を2回行った。表示されたゼータ電位の平均値をゼータ電位として得た。セリウム酸化物スラリ中におけるセリウム酸化物粒子のゼータ電位は−55mVであった。
【0139】
(セリウム水酸化物スラリの準備)
[セリウム水酸化物の合成]
350gのCe(NH
4)
2(NO
3)
650質量%水溶液(日本化学産業株式会社製、商品名:CAN50液)を7825gの純水と混合して溶液を得た。次いで、この溶液を撹拌しながら、750gのイミダゾール水溶液(10質量%水溶液、1.47mol/L)を5mL/分の混合速度で滴下して、セリウム水酸化物を含む沈殿物を得た。セリウム水酸化物の合成は、温度25℃、撹拌速度400min
−1で行った。撹拌は、羽根部全長5cmの3枚羽根ピッチパドルを用いて行った。
【0140】
[セリウム酸化物スラリの調製]
得られた沈殿物(セリウム水酸化物を含む沈殿物)を遠心分離(4000min
−1、5分間)した後に、デカンテーションで液相を除去することによって固液分離を施した。固液分離により得られた粒子10gと、水990gと、を混合した後、超音波洗浄機を用いて粒子を水に分散させて、セリウム水酸化物を含む粒子(第2の粒子。以下、「セリウム水酸化物粒子」という)を含有するセリウム水酸化物スラリ(粒子の含有量:1.0質量%)を調製した。
【0141】
[平均粒径の測定]
ベックマン・コールター株式会社製、商品名:N5を用いてセリウム水酸化物スラリにおけるセリウム水酸化物粒子の平均粒径(平均二次粒径)を測定したところ、25nmであった。測定法は下記のとおりである。まず、1.0質量%のセリウム水酸化物粒子を含む測定サンプル(セリウム水酸化物スラリ、水分散液)を1cm角のセルに約1mL入れ、N5内にセルを設置した。N5ソフトの測定サンプル情報の屈折率を1.333、粘度を0.887mPa・sに設定し、25℃において測定を行い、Unimodal Size Meanとして表示される値を読み取った。
【0142】
[ゼータ電位の測定]
ベックマン・コールター株式会社製の商品名:DelsaNano C内に適量のセリウム水酸化物スラリを投入し、25℃において測定を2回行った。表示されたゼータ電位の平均値をゼータ電位として得た。セリウム水酸化物スラリ中におけるセリウム水酸化物粒子のゼータ電位は+50mVであった。
【0143】
[セリウム水酸化物粒子の構造分析]
セリウム水酸化物スラリを適量採取し、真空乾燥してセリウム水酸化物粒子を単離した後に、純水で充分に洗浄して試料を得た。得られた試料について、FT−IR ATR法による測定を行ったところ、水酸化物イオン(OH
−)に基づくピークの他に、硝酸イオン(NO
3−)に基づくピークが観測された。また、同試料について、窒素に対するXPS(N−XPS)測定を行ったところ、NH
4+に基づくピークは観測されず、硝酸イオンに基づくピークが観測された。これらの結果より、セリウム水酸化物粒子は、セリウム元素に結合した硝酸イオンを有する粒子を少なくとも一部含有することが確認された。また、セリウム元素に結合した水酸化物イオンを有する粒子がセリウム水酸化物粒子の少なくとも一部に含有されることから、セリウム水酸化物粒子がセリウム水酸化物を含有することが確認された。これらの結果より、セリウムの水酸化物が、セリウム元素に結合した水酸化物イオンを含むことが確認された。
【0144】
[吸光度及び光透過率の測定]
セリウム水酸化物スラリを適量採取し、粒子の含有量が0.0065質量%(65ppm)となるように水で希釈して測定サンプル(水分散液)を得た。この測定サンプルを1cm角のセルに約4mL入れ、株式会社日立製作所製の分光光度計(装置名:U3310)内にセルを設置した。波長200〜600nmの範囲で吸光度測定を行い、波長290nmの光に対する吸光度と、波長450〜600nmの光に対する吸光度とを測定した。波長290nmの光に対する吸光度は1.192であり、波長450〜600nmの光に対する吸光度は0.010未満であった。
【0145】
セリウム水酸化物スラリ(粒子の含有量:1.0質量%)を1cm角のセルに約4mL入れ、株式会社日立製作所製の分光光度計(装置名:U3310)内にセルを設置した。波長200〜600nmの範囲で吸光度測定を行い、波長400nmの光に対する吸光度と、波長500nmの光に対する光透過率とを測定した。波長400nmの光に対する吸光度は2.25であり、波長500nmの光に対する光透過率は92%/cmであった。
【0146】
(CMP研磨液の調製)
2枚羽根の撹拌羽根を用いて300rpmの回転数で撹拌しながら、上記セリウム酸化物スラリ100gと、上記セリウム水酸化物スラリ100gと、阪本薬品工業株式会社製のPGL#750(商品名、ポリグリセリン(水溶性高分子)、重量平均分子量:750)5.5gと、イオン交換水794.5gとを30分間混合してCMP研磨液(セリウム酸化物粒子の含有量:0.5質量%、セリウム水酸化物粒子の含有量:0.1質量%、PGL#750の含有量:0.5質量%、リン酸二水素アンモニウム:0.005質量%、いずれも研磨液の全質量基準)を調製した。株式会社エスエヌディ製の超音波洗浄機(装置名:US−105)を用いて超音波を照射しながら撹拌しつつ各成分を混合することによりCMP研磨液を調製した。研磨液のpHは4.0であった。なお、pHは、東亜ディーケーケー株式会社製の型番PHL−40を用いて測定した。株式会社日立ハイテクノロジーズ製、走査型電子顕微鏡S−4800により、セリウム酸化物粒子(第1の粒子)とセリウム水酸化物粒子(第2の粒子)とが接触して複合粒子を形成していることを確認した。
【0147】
<実施例2及び3>
リン酸二水素アンモニウムの含有量が表1に示す値となるように各成分の配合量を変更したこと以外は、実施例1と同様にしてCMP研磨液を調製した。
【0148】
<実施例4及び5、並びに、比較例1〜5>
リン酸二水素アンモニウムに代えて、リン酸水素二アンモニウム(和光純薬工業株式会社製)、1−ヒドロキシエタン−1,1−ビス(ホスホン酸)アンモニウム(和光純薬工業株式会社製の1−ヒドロキシエタン−1,1−ビス(ホスホン酸)に和光純薬工業株式会社製の25%アンモニア水を加えて調製)、リン酸(和光純薬工業株式会社製)、1−ヒドロキシエタン−1,1−ビス(ホスホン酸)(和光純薬工業株式会社製、商品名:60% 1−ヒドロキシエタン−1,1−ビス(ホスホン酸)溶液)、ポリアクリル酸(和光純薬工業株式会社製、商品名:ポリアクリル酸5000(重量平均分子量:5000))、酢酸(和光純薬工業株式会社製)又は硝酸(和光純薬工業株式会社製)を用いたこと(表1又は表2参照)、及び、研磨液中の各成分の含有量が表1又は表2に示す値となるように各成分の配合量を調整したこと以外は、実施例1と同様にしてCMP研磨液を調製した。
【0149】
<砥粒の平均粒径>
マイクロトラック・ベル株式会社製の商品名:マイクロトラックMT3300EXII内にCMP研磨液を適量投入し、砥粒の平均粒径の測定を行った。表示された平均粒径値を平均粒径(平均二次粒径)として得た。実施例1〜5及び比較例1〜5の平均粒径は350nmであった。
【0150】
<CMP評価>
上記CMP研磨液を用いて下記研磨条件で被研磨基板を研磨した。各CMP研磨液は、研磨液の全質量基準で、0.5質量%のセリウム酸化物粒子(第1の粒子)と、0.1質量%のセリウム水酸化物粒子(第2の粒子)と、0.5質量%のPGL#750と、表1又は表2に示す添加剤とを含有する研磨液(残部はイオン交換水)であった。各CMP研磨液のpHは4.0であった。
【0151】
[CMP研磨条件]
研磨装置:Reflexion LK(APPLIED MATERIALS社製)
CMP研磨液の流量:250mL/分
被研磨基板:パターンが形成されていないブランケットウエハとして、プラズマCVD法で形成された厚さ2μmの酸化珪素(SiO
2、p−TEOS)膜をシリコン基板上に有する被研磨基板を用いた。
研磨パッド:独立気泡を有する発泡ポリウレタン樹脂(ローム・アンド・ハース・ジャパン株式会社製、型番IC1010)
研磨圧力:21kPa(3.0psi)
被研磨基板及び研磨定盤の回転数:被研磨基板/研磨定盤=93/87rpm
研磨時間:0.5分(30秒)
ウエハの洗浄:CMP処理後、超音波を印加しながら水で洗浄し、さらに、スピンドライヤで乾燥させた。
【0152】
上記条件で研磨及び洗浄した酸化珪素膜の研磨速度(RR:Removal Rate)を下記式より求めた。なお、研磨前後における酸化珪素膜の膜厚差は、光干渉式膜厚測定装置(フィルメトリクス社製、商品名:F80)を用いて求めた。測定結果を表1及び表2に示す。
研磨速度(RR)=(研磨前後での酸化珪素膜の膜厚差[nm])/(研磨時間:0.5[分])
【0153】
<保管安定性評価>
D99粒径の増加率を算出し、保管安定性を評価した。具体的には、マイクロトラック・ベル株式会社製の商品名:マイクロトラックMT3300EXIIを用いて、調製直後の研磨液、及び、調製後60℃の恒温槽で5日間静置した研磨液のD99粒径を測定し、下記式に従ってD99粒径増加率を求めた。測定結果を表1及び表2に示す。
D99粒径増加率(%)=[(60℃の恒温槽で5日間保管した研磨液のD99粒径)/(調製直後の研磨液のD99粒径)−1]×100
【0154】
【表1】
【0155】
【表2】