(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前面側から背面側に向かって、光学薄膜を有する支持体および広帯域選択反射フィルムをこの順で備える光反射透過型部材を用いて、前面側にいる観察者が鏡像と表示像とを同一エリアにおいて視認できるように表示する方法であって、
前記光学薄膜は、前記支持体の前記広帯域選択反射フィルムに対向する面に形成されており、
前記広帯域選択反射フィルムは、右回り円偏光および左回り円偏光のうち一方を選択的に透過させ、他方を選択的に反射し、且つコレステリック規則性を有するフィルムであり、
前記表示像を作る表示光が前記背面側から前記前面側に向かって表示装置より出射し、
前記表示光が前記背面側より前記広帯域選択反射フィルムに入射し、ここで、前記広帯域選択反射フィルムに入射する前記表示光は、当該広帯域選択反射フィルムが選択的に透過する円偏光の旋回方向と同じ旋回方向の円偏光であり、
前記広帯域選択反射フィルムを透過した前記表示光の一部が前記光学薄膜を透過することで前記前面側に取り出され、
前記表示光の他の一部が前記光学薄膜で反射することで、その旋光方向が反転した反射光となり、さらに前記広帯域選択反射フィルムで反射し、
前記反射光が再度、前記光学薄膜を透過することで前記前面側に取り出され、
以降同様の反射と透過を繰り返すことで前記表示光が前記前面側に取り出され、
前記光学薄膜と前記広帯域選択反射フィルムとが直に接している、
方法。
前記表示装置は、液晶層が一対の基板に挟持され、前記一対の基板の外側主面の其々に配置された一対の偏光板が配置されている液晶表示パネルと、前記液晶表示パネルに光を出射する光源装置とを備える、液晶表示装置であり、
前記一対の偏光板は、前記支持体に近接している第一偏光板と、他方の第二偏光板からなり、
前記光学フィルムは前記広帯域選択反射フィルムの背面側に設置された1/4波長板であり、
前記表示光は、まず前記第一偏光板により直線偏光となって前記液晶表示装置より出射し、
前記1/4波長板は、前記直線偏光を前記円偏光とする、
請求項3に記載の方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
鏡面表示ディスプレイは、反射機能と透過機能をハーフミラーにより実現したものであるが、通常の入射光におけるハーフミラーの反射率と透過率の合計は100%を超えられない。このため、従来の鏡面装置においては、金属薄膜層や誘電体薄膜を用いて鏡面性を確保しつつ、表示光の輝度を高める工夫が必要となる。液晶表示装置の場合、バックライト光の照度を高めることにより表示光の視認性を高めることができる。しかしながら、照度を高めると必然的にバックライト光からの発熱が多くなり、表示装置の過熱を防ぐ放熱機構を設ける等の工夫が必要となる。
また、高解像度の表示装置を用いることで鏡面表示ディスプレイの表示品位を高めることができるが、高解像度の透過型表示装置は、その微細な画素を駆動するための薄膜トランジスタなど表示面に対する占有率が高くなることから、表示パネルの透過率が低くなりやすい。そのため、鏡面ディスプレイに用いるために表示光の輝度を高めることは更に困難になる。
【0006】
本発明は、上記背景に鑑みてなされたものであり、ミラー特性と表示特性を同一領域で実現し、且つ反射率と透過率の合計を従来よりも高められる光反射透過型部材、および鏡面表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、下記の態様を有する。
1.光学薄膜を有する支持体、広帯域選択反射フィルムおよび表示装置をこの順で備える鏡面表示装置であって、
前記光学薄膜は、前記支持体の前記広帯域選択反射フィルムに向かい合う面に形成されており、前記広帯域選択反射フィルムは、右回り円偏光および左回り円偏光のうち一方を選択的に透過させ、他方を選択的に反射し、且つコレステリック規則性を有するフィルムであることを特徴とする鏡面表示装置。
2.前記広帯域選択反射フィルムに入射する前記表示装置の表示光は、当該広帯域選択反射フィルムが選択的に透過する円偏光の旋回方向と同じ旋回方向の円偏光である上記1に記載の鏡面表示装置。
3.前記支持体および広帯域選択反射フィルムが、前記表示装置よりも面積が大きく、
前記広帯域選択反射フィルムの前記表示装置に対向しない領域に遮光層を有する上記1または2に記載の鏡面表示装置。
4.前記広帯域選択反射フィルムと前記表示装置とは空気層を介して対向し、
前記遮光層は、前記広帯域選択反射フィルムの前記表示装置と対向しない領域と空気層を介して対向する上記3に記載の鏡面表示装置。
5.前記広帯域選択反射フィルムと前記表示装置とは、第2の透明貼合材を介して接合され、前記遮光層は、前記広帯域選択反射フィルムの前記表示装置と対向しない領域に空気層を介さず有する上記3に記載の鏡面表示装置。
6.前記広帯域選択反射フィルムと前記遮光層とに挟持された位相差フィルムを備える上記4又は5に記載の鏡面表示装置。
7.前記広帯域選択反射フィルムと前記支持体は、第1の透明貼合材を介して接合されており、前記第1の透明貼合材の厚みが、前記表示装置の表示画素ピッチよりも小さい上記1〜6のいずれか1項に記載の鏡面表示装置。
8.前記第1の透明貼合材および第2の透明貼合材は、前記支持体の屈折率に対して0.8〜1.3倍であり、かつ25℃におけるせん断弾性率が10
3〜10
7Paである上記5〜7のいずれか1項に記載の鏡面表示装置。
9.前記支持体が、可視光帯域において少なくとも20%以上の透過性を有する透明基材である上記1〜8のいずれか1項に記載の鏡面表示装置。
10.前記支持体が無機ガラスである上記1〜9のいずれか1項に記載の鏡面表示装置。
11.前記表示装置は、液晶表示装置であり、
前記液晶表示装置は、液晶層が一対の基板に挟持され、前記一対の基板の外側主面の其々に配置された一対の偏光板が配置されている液晶表示パネルと、前記液晶表示パネルに光を出射する光源装置とを備える上記1〜10のいずれか1項に記載の鏡面表示装置。
12.前記光学薄膜が、誘電体多層膜を含み、波長550nmにおける光の反射率が60%以上である上記1〜11のいずれか1項に記載の鏡面表示装置。
13.前記広帯域選択反射フィルムの反射波長幅が150nm以上である上記1〜12のいずれか1項に記載の鏡面表示装置。
14.光学薄膜を有する支持体および広帯域選択反射フィルムをこの順で備える光反射透過型部材であって、
前記光学薄膜は、前記支持体の前記広帯域選択反射フィルムに対向する面に形成されており、前記広帯域選択反射フィルムは、右回り円偏光および左回り円偏光のうち一方を選択的に透過させ、他方を選択的に反射し、且つコレステリック規則性を有するフィルムであることを特徴とする光反射透過型部材。
15.上記14に記載の光反射透過型部材を用いた窓材。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ミラー特性と表示特性を同一領域で実現し、且つ反射率と透過率の合計を従来よりも高められる鏡面表示装置および光反射透過型部材を提供できるという優れた効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を適用した実施形態の一例について説明する。尚、以降の図における各部材のサイズや比率は、説明の便宜上のものであり、これに限定されるものではない。
また、説明を明確にするため、以下の記載および図面は、適宜、模式化又は簡略化されている。
【0011】
[第1実施形態]
図1は、第1実施形態に係る鏡面表示装置の一例の模式的上面図であり、
図2は
図1のII−II切断部断面図である。
【0012】
鏡面表示装置101は、光学薄膜5を有する支持体1と、支持体1に取り付けられた表示装置2と、支持体1および表示装置2に挟持された広帯域選択反射フィルム3を具備する。
図2に示すように、支持体1と広帯域選択反射フィルム3は空気層を介在せずに接合されている。広帯域選択反射フィルム3と表示装置2とは空気層を介して対向している。以下、支持体1および広帯域選択反射フィルム3の各面における表示装置2側の面を背面、支持体1の表示装置2とは反対側の面を前面として説明する。
【0013】
鏡面表示装置101は、表示装置2のディスプレイエリアにおいてディスプレイ機能の他にミラー機能を兼ね備える。支持体1の前面側にいる観察者は、鏡像と表示装置2の表示像を視認できる。つまり、表示装置2の非稼働時には鏡としての外観を呈し、表示装置2の稼働時には表示像が観察者に視認されるようになっている。
【0014】
支持体1は、少なくとも表示光が通過する領域が透明な基材からなる。基材は、平面であっても曲面であってもよい。ここで「透明」とは、可視光帯域において少なくとも20%以上、好ましくは70%以上、より好ましくは80%以上の透過率を示すものをいい、無色透明の他、有色透明も含む。支持体1の好適な例として、無機ガラスや、アクリル、ポリカーボネートなどのプラスチック材料が例示できる。貼り合せガラスでもよい。また、表示光を透過する領域をガラスとし、他の領域を別の部材により構成した複合材からなる支持体を用いてもよい。すなわち、支持体1は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の部材および形状とすることができる。
【0015】
支持体1は、光学薄膜5を有することで、ハーフミラーの機能が実現する。ここで、ハーフミラーとは、光の一部をそのまま透過させ、残りの光を鏡面によって反射させるものである。ハーフミラーの反射率と透過率が等しい場合の他、反射率よりも透過率の方が大きい場合またはその逆の場合も含む。透過率と反射率は、ニーズにより変動し得るが、鏡面を実現するためには、反射率が透過率よりも高いことが好ましい。
【0016】
光学薄膜5は、鏡面表示装置において、通常の鏡面に近接した反射像を得るために、波長550nmにおける光の反射率が60%以上であることが好ましく、65%以上がより好ましく、70%以上がさらに好ましい。
光学薄膜5としては、例えば、入射する光を完全には反射せず部分的に透過するアルミニウム薄膜などの金属薄膜、金属酸化膜、又は誘電体多層膜が好ましい。中でも、反射率と透過率の比率が調整し易い点で、光学薄膜5は、誘電体多層膜であることが好ましい。
光学薄膜5は、公知の方法で形成できる。支持体1に直接形成してもよく、樹脂フィルムなどの透明基材面に光学薄膜5を形成したものを支持体に貼合して形成してもよい。
光学薄膜5が、金属薄膜である場合、該金属薄膜を保護するために、有機薄膜等の透明保護膜を金属薄膜の上層に形成してもよい。金属薄膜の厚みは、所望の透過率によって適宜設計すればよい。鏡面表示装置101に、タッチパネルを設置する場合には、光学薄膜5に設けられた金属薄膜をセンサ電極またはセンサ電極の一部として利用してもよい。
【0017】
表示装置2は、表示光を支持体1の前面に出射するデバイスであれば限定されないが、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、プラズマディスプレイ等のフラットパネルディスプレイが好適である。表示装置2は、デバイスの出射光に偏光成分が含まれるものが好ましい。表示装置2は、例えば記憶装置(不図示)に記憶されている画像や、ネットワークを介して接続するコンピュータやサーバー等から送信される画像を表示する。支持体1に対し、表示装置2が複数形成されていてもよい。表示領域は、
図1に示すような矩形形状の他、任意の形状を採用できる。
【0018】
広帯域選択反射フィルム3は、特定の波長帯域において右回り円偏光および左回り円偏光のうち一方を選択的に透過させ、他方を選択的に反射し、且つコレステリック規則性を有するフィルムであり、単層または複層フィルムからなる。なお、本明細書において広帯域とは、可視光帯域の少なくとも150nm以上の帯域において、右回り円偏光および左回り円偏光のうち一方を選択的に透過させ、他方を選択的に反射する機能を有するフィルムをいうものとする。反射光の色付きを抑えるなど、選択反射フィルムの反射特性を向上させる観点からは、可視光(400〜750nm)全域を選択反射帯域とすることが好ましい。なお、本明細書においていう広帯域選択反射フィルムの帯域の範囲は、その反射分光スペクトルにおける反射半値幅に相当する波長帯域を示すものとする。
【0019】
コレステリック規則性とは、一方向に揃って配向した分子が層を形成し、隣り合う分子層ごとに配向方向が僅かずつずれ、分子層が螺旋構造をなしている状態のことをいう。コレステリック規則性を固定するためには、通常、コレステリック液晶相を固定することにより得られる。コレステリック液晶組成物の膜を硬化した高分子フィルムが好適である。
【0020】
コレステリック規則性は、通常、棒状のネマチック液晶やスメクチック液晶に対して不斉中心等を持つカイラルドーパントなどの旋光性物質を添加することによって得られる。
また、螺旋軸を有する円盤状液晶は、円盤状液晶に対してカイラルドーパントを添加することによって得られる。カイラルドーパントによって、液晶分子に捩じれが生じ、旋光性が付与される。螺旋を誘起するカイラルドーパントの濃度を調整することによって、若しくは液晶性化合物やカイラルドーパントの種類を変えることによってカイラル構造の螺旋ピッチを変えることができる。螺旋ピッチを変えることによって特定の波長の光を反射させることが可能となる。コレステリック規則性を構成する構造は、フィルム主面に対してほぼ法線方向のヘリカル軸を有することが好ましい。広帯域選択反射フィルムのみを用いる場合は、前記ヘリカル軸がフィルム主面に対して法線方向に完全に揃っていることが好ましい。ハーフミラーと広帯域選択反射フィルムとを積層して用いる場合は、前記ヘリカル軸が平均的にフィルム主面に対して法線方向となるようにしてもよい。
【0021】
コレステリック規則性を有する螺旋構造は、その螺旋軸と平行な方向より、その螺旋構造に入射する光の螺旋の旋回方向と同一方向の円偏光を反射し(選択反射という)、非同一方向の円偏光を透過する性質が知られている。この時、その反射する円偏光の中心波長λは、以下の式(1)に示すように、その螺旋構造のピッチp(μm)と螺旋軸に直交する平面での液晶の平均屈折率n[av]との積で示される。
λ=p×n[av] (式(1))
その反射の帯域幅Wは、以下の式(2)に示すように、液晶の複屈折異方性Δnとpの積で示される。
W=p×Δn (式(2))
【0022】
広帯域化する方法としては、螺旋ピッチの異なる、すなわち、選択反射帯域の異なるフィルムを複数枚積層して、積層体全体として広帯域化する方法がある。この場合、通常、螺旋ピッチの大きさの順に積層する。また、別の方法として、単層において螺旋ピッチの大きさを連続的に変化させる方法がある。単層において螺旋ピッチの大きさを連続的に変化させる方法としては、光線照射条件および加温による配向処理の少なくとも一方の条件を変更して複数回に亘って硬化処理する方法や、硬化性液晶組成物を塗工する工程と前記処理を複数回に分けて行う方法が例示できる。これらの方法は、組み合わせて用いてもよい。
【0023】
硬化性液晶組成物は、例えば、重合性官能基を有するネマチック若しくはスメクチックの液晶性化合物と、重合性官能基を有するカイラルドーパントとを含有する液晶組成物である。また、円盤状液晶とカイラルドーパントとを含有する液晶組成物でもよい。カイラルドーパントは、必ずしも重合性基を有していなくてもよく、また、重合性基を有するカイラルドーパントと、重合性基を有しないカイラルドーパントとを併用してもよい。また、重合性官能基を有しない液晶性化合物が一部に含まれていてもよい。また、液晶性化合物は、低分子化合物のみならず、ポリマーであってもよい。
【0024】
液晶組成物には、通常、重合開始剤が含まれている。また、必要に応じて、コレステリック液晶相の形成に影響を与えない範囲において、重合開始剤、重合禁止剤、紫外光吸収剤、酸化防止剤、光安定剤、水平配向剤、ムラ防止剤、ハジキ防止剤等を含有していてもよい。また、膜強度を高めるために、可塑剤等を添加することも可能である。
【0025】
光安定剤としては、ヒンダードアミン類、ニッケルビス(オクチルフェニル)サルファイド、ニッケルコンプレクス−3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルリン酸モノエチラート、ニッケルジブチルジチオカーバメート等のニッケル錯体が挙げられる。これらは2種以上を併用してもよい。液晶組成物中の光安定剤の含有量は、液晶化合物の合量100質量部に対して、0.01〜1質量部であることが好ましく、0.1〜0.3質量部が特に好ましい。
【0026】
光重合開始剤としては、アセトフェノン類、ベンゾフェノン類、ベンゾイン類、ベンジル類、ミヒラーケトン類、ベンゾインアルキルエーテル類、ベンジルジメチルケタール類、フォスフィンオキサイド類、チオキサントン類等が挙げられる。また熱重合開始剤としてアゾビス系、過酸化物系等の重合開始剤が挙げられる。これらは2種以上を併用してもよい。液晶組成物中の光、又は熱重合開始剤の含有量は液晶組成物の全体量に対して、0.01〜5質量%が好ましく、0.03%〜2質量%が特に好ましい。
【0027】
重合性官能基を有する液晶性化合物は、カイラルドーパントの添加によって螺旋軸を有する液晶相を示し、螺旋軸を有する液晶相を固定化でき、かつ、可視光帯域を選択反射可能なものを用いることが好ましい。
【0028】
重合性官能基を有する液晶性化合物と、カイラルドーパントとを少なくとも含む液晶組成物を支持体1上に塗布する。非重合性の液晶性化合物や、非液晶性の重合性化合物が液晶組成物中に含有されていてもよい。カイラルドーパントの量は、液晶化合物に対して1〜30モル%であることが好ましい。液晶組成物に溶媒が添加されている場合には、塗膜の乾燥を行う。溶媒を除去し、温度を所定の条件下にすることによって、コレステリック液晶相が発現する。この状態において、重合を行う。重合は、前述したように外部エネルギーを印加することによって行う。重合温度は、コレステリック液晶相を安定して発現させる点からは、コレステリック液晶相−等方相の相転移温度(Tc)よりも−10℃以下の範囲が好ましい。重合は、ラジカル重合が好ましい。重縮合等で水等の揮発物が重合中に発生する反応や、液晶特性に悪影響を与える副生成物を発生する反応は好ましくない。円盤状液晶性分子の重合については、例えば、日本特開平8−27284号公報等に記載の方法で行うことができる。
【0029】
光照射に用いる光源は特に制限されない。例えば、タングステンランプ、ハロゲンランプ、キセノンランプ、キセノンフラッシュランプ、水銀ランプ等を用いることができる。
【0030】
液晶組成物は、重合性官能基を有する液晶性化合物と重合性官能基を有するカイラルドーパントとを合わせて75質量%以上含むことが好ましく、さらに、90質量%以上を含むことが好ましい。液晶組成物は、重合性液晶化合物を75質量%以上、特に85質量%以上含むことが好ましい。上記工程を経て、広帯域選択反射フィルム3が製造される。
【0031】
なお、広帯域選択反射フィルム3は、上記液晶組成物の例や、上記製造方法に限定されるものではない。例えば、国際公開第2010/143683号、日本特開2010−61119号公報、日本特開2011−203426号公報に記載の液晶性化合物や、製造方法を用いてもよい。
【0032】
支持体1と広帯域選択反射フィルム3は、前述した様に空気層を介在せずに接合されている。接合は、光学的に接合できる手段であれば特に限定されないが、第1の透明貼合材を介して接合されていることが好ましい。他の態様としては、広帯域選択反射フィルム3が、支持体1に直接塗工して、支持体1と広帯域選択反射フィルム3とを接合してもよい。また、支持体1に配向膜を塗工した後にラビング処理を施し、その配向膜上に硬化性液晶組成物を塗工して、支持体1と広帯域選択反射フィルム3を接合することもできる。
【0033】
第1の透明貼合材は、液状又はペースト状の状態で接合する間隙に充填する方法、あるいは接着剤層を積層して貼り合せる方法で形成できる。第1の透明貼合材は、例えば、アクリル系、ウレタン系、シリコーン系等の樹脂を用いた熱可塑性樹脂組成物または硬化性樹脂組成物がある。硬化性樹脂組成物を用いる場合には、一の接合面に硬化性樹脂組成物を塗工し、他の接合面を貼り合せた後に硬化処理を行う。光硬化性樹脂組成物の場合には活性光線を、熱硬化性樹脂組成物の場合には熱を加える。感圧性接着剤層を用いる場合には、一の接合面に感圧性接着剤層を塗工または積層後、他の接合面を貼り合せて圧力を加えることにより接合する。透明貼合材には、視野角を広くするために、拡散成分が入っていてもよい。
【0034】
前記第1の透明貼合材の屈折率は、表示光の視認性をより高める観点からは、表示光が出射される領域の支持体1の屈折率に対して0.8〜1.3倍であることが好ましく、0.93〜1.12倍がより好ましい。また、第1の透明貼合材の25℃におけるせん断弾性率は、10
3〜10
7Paであることが好ましく、10
4〜10
6Paがより好ましい。特に、上記せん断弾性率が10
4〜10
6Paである場合には、貼り合せ時に生じ得る空隙を比較的容易に消失させることができるため好ましい。
【0035】
第1の透明貼合材の厚みは、外力による衝撃を十分に低減して表示装置2を保護する観点からは0.03mm以上が好ましい。また、表示装置2の視認性の低下を抑制する観点からは、透明貼合材の厚さは2mm以下が好ましく、より好ましくは、0.1〜0.8mmである。
【0036】
第1の透明貼合材の厚みは、表示装置2の表示画素ピッチよりも小さくすることが好ましい。表示装置2からの表示光で光学薄膜5を透過する光と、光学薄膜5で反射して偏光回転し、広帯域選択反射フィルム3で全反射した後に光学薄膜5を通して観察者側に出射される光とに光路差が大きい場合、表示装置2からの表示像を正面ではなく斜方から観察したときに多重像となるおそれがある。このため、光学薄膜5と広帯域選択反射フィルム3との接合距離を短くして、光路差を小さくする方が好適である。すなわち、光学薄膜5と広帯域選択反射フィルム3を貼り合せる第1の透明貼合材を薄くする方法が好適である。前記多重像を効果的に抑制するためには、表示装置2の表示画素のピッチよりも第1の透明貼合材の厚みを小さくすることが好ましい。前記第1の透明貼合材の厚みを表示装置2の表示画素のピッチの好ましくは1/2以下、1/16〜1/4にすることが更に好ましい。
【0037】
表示光を出射する領域以外の鏡面領域において、広帯域選択反射フィルム3の表示装置2と対向しない領域に遮光層を有することが好ましい。鏡面領域は、鏡面としての視認性を高めるために、遮光層の色調は暗色が好ましい。表示装置2が表示光を出射していない場合に、表示装置2の位置が前面から視認されにくくするためには、表示装置2が表示していない、すなわち表示装置2の黒表示の際の色調に類似していることが好ましい。
表示装置2が広帯域選択反射フィルム3と空気層を介して接合されている場合、表示装置2と広帯域選択反射フィルム3との位置関係と同様にして、前記遮光層は空気層を介して広帯域選択反射フィルム3に対向して有することが好ましい。これにより、表示光を出射する領域とそれ以外の領域との境界が前面から視認されにくく、一体感のある鏡像を得ることができる。
【0038】
第1実施形態の鏡面表示装置101においては、図示しない保持部材を有することが好ましい。保持部材は、支持体1と表示装置2とを固定して保持するために用いられる。これを有することで、支持体1、広帯域選択反射フィルム3および表示装置2との位置がずれることを防止できる。なお、第1実施形態の鏡面表示装置101においては、支持体1と広帯域選択反射フィルム3とは、第1の透明貼合材を介して貼合されているので、位置がずれるおそれはない。
前記保持部材は、表示装置2の表示面以外の領域で、例えば、側面で支持体1と表示装置2とを保持することが好ましい。さらに、保持部材は、遮光特性を備えることが好ましい。遮光特性を備えることで、表示装置2の表示光や、広帯域選択反射フィルム3等の表面での反射等の鏡面表示装置101の内部で反射する光が外部に漏れることおよび、正面以外から外光が入射することを防止できる。
【0039】
第1実施形態の鏡面表示装置101によれば、右回り円偏光および左回り円偏光のうち一方を選択的に透過させ、他方を選択的に反射し、且つコレステリック規則性を有する広帯域選択反射フィルムを用いることにより、前面から支持体1を透過する入射光の内、広帯域選択反射膜3が反射する円偏光成分を前面方向に取り出すことができる。そのため、支持体1の透過率が高い場合には、前面から視認した際の鏡面の明るさが改善される。この時、広帯域選択反射フィルム3の反射帯域が大きいと、反射光の色付きが抑えられ好ましい。
【0040】
一方、表示装置2からの表示光が偏光成分を含み、かつ広帯域選択反射フィルム3を透過する円偏光となるような偏光板や位相差板を備えることで、表示光のほとんどは広帯域選択反射フィルム3を透過することができる。広帯域選択反射フィルム3を透過した表示光は支持体1を透過して前面に取り出されると共に、支持体1の背面で反射する表示光は、広帯域選択反射フィルム3を形成するコレステリック規則性のヘリカル軸を基準とすると、その旋光方向が反転するため、前記反射光は広帯域選択反射フィルム3で反射する。この反射光は再度、支持体を透過して前面に取り出すことができ、以降同様の反射と透過を繰り返すことで表示光を効果的に前面に取り出すことができ、前面からの視認される表示輝度を高めることができ好ましい。
【0041】
前記広帯域選択反射フィルム3を透過した表示光の支持体1の背面での反射による旋光方向反転と、それに基づく広帯域選択反射フィルム3での繰り返し再反射の効果は、本発明による積層構成に固有である。また、本発明の構成による前面からの入射光の反射率改善は、広帯域選択反射フィルム3による片側の円偏光成分に限定されるが、表示光に関しては、表示光が広帯域選択反射フィルム3を透過するように偏光板や位相差板を備えることで効果的に表示光を取り出すことができるため、支持体1に有する光学薄膜5の反射率は60%以上が好ましく、65%以上が更に好ましい。表示光に関しては、繰り返しの反射による界面での損失や部材内での光吸収などで、15〜25%程度の表示光透過率の改善が得られる。
【0042】
光学薄膜5を有する支持体1が、550nmにおける入射光の反射率が68%、透過率が20%である場合、鏡面表示装置全体101としては、反射率69%、偏光透過率39%が得られ、表示光が偏光である場合には、実質的に反射率と透過率との合計が108%となり、100%を超えることができる。
また、光学薄膜5を有する支持体1、550nmにおける入射光の反射率が33%、透過率が62%である場合、鏡面表示装置101としては、反射率が48%、偏光透過率84%が得られ、表示光が偏光である場合には、同様に反射率と透過率との合計が132%となり、100%を超えることができるが、50%未満の反射率はその鏡像が暗く、その応用に制限がある。
【0043】
第1実施形態の鏡面表示装置101において、広帯域選択反射フィルム3を用いない従来の形態では、支持体1に有する光学薄膜5(誘電体多層膜)の光学設計により、反射率と透過率の比率(反射率:透過率)を95:0〜0:95とすることができる。しかし、この場合、反射率と透過率の合計は100%を超えることはできない。
【0044】
従来の形態では、高輝度のバックライトを用いて表示光の輝度を高めており、使用時間や発生する熱量に応じた放熱機構を設置する必要があった。本発明に係る光反射透過型部材によれば、バックライト等による高輝度化によらずに表示光の視認性を高めることができるので、表示装置2の発熱を抑制できる。このため、放熱機構の設けなくても視認性を確保できるというメリットがある。なお、本発明において放熱機構を設けることを排除するものではなく、ニーズに応じて適宜放熱機構を設けてもよい。
【0045】
更に、高輝度化が困難な、高解像度の表示装置3を用いることもでき、表示像の品位を改善でき好ましい。特に、鏡像(反射光)と表示像(表示光)とを対比させて視認する使用方法においては、鏡像の境界のない高い解像度に対して、表示像の解像度を高めることが必要となり、高解像度の表示装置3を用いることが好ましい。
【0046】
第1実施形態に係る光反射透過型部材によれば、広帯域選択反射フィルムを用いることにより、反射率と透過率の合計を従来よりも高めることが可能であり、用途やニーズに応じて設計の自由度を高められるというメリットを有する。
【0047】
第1実施形態に係る鏡面表示装置101は、例えば、店舗内の鏡台、試着室の鏡面に鏡面表示装置として用いられる。また、店舗の間仕切り、柱の鏡面付き建材等にも好適である。利用方法は限定されないが、例えば、店舗の間仕切り、柱等において、店内の広告表示や案内表示、セール情報などを表示することができる。また、意匠性のある表示を行うために用いてもよい。
また、鏡面表示装置101に、人が近付いたことを知らせるセンサと、商品タグ情報を読み取る読み取り機能とを鏡面表示装置101内に設け、近づいた人に対して、その商品情報を鏡面に表示するようにしてもよい。
【0048】
また、鏡面表示装置101の表示装置2の表示面上の少なくとも一部にタッチパネルを設けてもよい。タッチパネルは、通常、タッチパネルセンサ、タッチパネルセンサに対する接触位置を検出する制御回路、配線およびFPC(フレキシブルプリント基板)を有する。タッチパネルにより、表示装置に対する入力手段を光反射透過型部材に設けることができる。タッチパネルセンサのうち表示装置2の表示領域に対面する支持体1の領域が、接触または接近位置を検出するエリアとなる。タッチパネルを設ける場合には、支持体1と広帯域選択反射フィルム3の間にタッチパネルセンサを設ける構成が好ましい。赤外線などによる非接触のモーションセンサーをタッチセンサーとして用いることもできる。
【0049】
また、衣料品店において、顧客が色やデザインの異なる様々な商品を試着した姿を仮想的に表示装置2に表示し、顧客に様々な商品を試着した姿を確認できるようにすることができる。また、衣料品店の試着室において、カメラにより試着している顧客の後姿を撮影して表示装置2に表示することにより、鏡面表示装置101において様々な角度での姿を顧客に確認してもらうことができる。また、店舗内に配置された鏡に商品情報や広告等を表示することができる。上記例の他、壁材、窓材、天井部材等の建材をはじめとする各種部材に利用できる。
【0050】
[第2実施形態]
次に、第1実施形態とは異なる鏡面表示装置の一例について説明する。以下、同一の要素部材は同一の符号を付し、適宜その説明を省略する。第2実施形態に係る鏡面表示装置は、以下の点を除く基本的な構成および作用は、第1実施形態と同様である。すなわち、第2実施形態においては、広帯域選択反射フィルム3に入射する際の表示光が、広帯域選択反射フィルム3が選択的に透過する円偏光の旋回方向と同じ旋回方向の円偏光である点において第1実施形態と相違する。表示装置2は、第1実施形態と同様に種々の選択が可能であるが、ここでは液晶表示装置に適用した例について説明する。
【0051】
図3に示すように、鏡面表示装置102は、液晶表示装置20と広帯域選択反射フィルム3との間に、光学フィルムを備える。鏡面表示装置102は、広帯域選択反射フィルム3の背面、すなわち、広帯域選択反射フィルム3の主面のうちの表示装置2と対向する面に、1/4波長分の位相差を与える1/4波長板4が設置されている。1/4波長板4は、表示光を円偏光にできればよく、公知のフィルムを好適に適用できる。
【0052】
表示装置2は、液晶表示パネル20、バックライトユニット21を備える。液晶表示パネル20は、一対の基板23,24間に液晶層22が挟持され、一対の基板の外側主面に一対の偏光板25、26が配設され、一対の偏光板の設置方位により黒表示を可能にしている。支持体1に近接している偏光板を第一偏光板25とし、他方を第二偏光板26とする。前述のよう、液晶表示装置20は1/4波長板4と空気層を介して接合されていてもよく、透明貼合材を介して接合されていてもよい。
【0053】
表示装置2から出射する表示光は、第一偏光板25により直線偏光となる。この直線偏光は、1/4波長板4により左回り円偏光または右回り円偏光となる。この円偏光の旋回方向が、広帯域選択反射フィルム3を透過する円偏光の旋回方向と同じ旋回方向の円偏光となるような1/4波長板4を選定する。これにより、表示装置2から出射した表示光の広帯域選択反射フィルム3での反射ロスを無くすことができる。その結果、表示装置2の視認性が向上する。
【0054】
鏡面表示装置102によれば、ハーフミラーのような入射光を反射および透過する薄膜が形成された支持体と、広帯域選択反射フィルム3を積層し、且つ表示光の広帯域選択反射フィルム3への入射光を当該広帯域選択反射フィルムが透過する円偏光の旋回方向と同じ旋回方向の円偏光となるように光学フィルムを設置することにより、ミラー特性を有しながら、表示光の視認特性を向上させることができる。
表示光を出射する領域以外の鏡面領域において、広帯域選択反射フィルム3の表示装置2と対向しない領域に遮光層を有する場合、光学フィルムは、遮光層の前面にも有することが好ましい。
【0055】
[第3実施形態]
第3実施形態に係る鏡面表示装置の一例を
図4に示す。
図4に示すように、鏡面表示装置103は、広帯域選択反射フィルム3と表示装置2とが第2の透明貼合材を介して接合されている点以外は、第1実施形態と同様である。
第2の透明貼合材は、前記した第1の透明貼合材と同様の材を使用できる。第2透明貼合材は、25℃におけるせん断弾性率を10
3Pa以上とすることにより、第2の透明貼合材の形状を維持しやすくなる。従って、適用された第2の透明貼合材の厚さを厚くしても、第2の透明貼合材全体で厚さが均一に保たれ、表示装置2と第2の透明貼合材との界面に空隙が発生し難くなる。第2の透明貼合材の25℃におけるせん断弾性率を10
4Pa以上にすることで変形をさらに抑制できる。さらに、第2の透明貼合材の25℃におけるせん断弾性率を10
7Pa以下にすることにより、表示装置2と支持体1(貼合面は広帯域選択反射フィルム3)との貼合密着力を高め、表示装置2が支持体1から剥離するのを防止できる。第2の透明貼合材の25℃におけるせん断弾性率を10
6Pa以下にすることにより、表示装置2と支持体1(貼合面は広帯域選択反射フィルム3)との貼合時の気泡の発生を抑えやすい。
【0056】
表示装置2が広帯域選択反射フィルム3と第2の透貼合材を介して接合されている場合は、遮光層は、広帯域選択反射フィルム3に直接印刷するなどにより、空気層を介することなく接合されることが好ましい。これにより、第1実施形態の場合と同様に表示光を出射する領域とそれ以外の領域との境界が前面から視認されにくくなり、一体感のある鏡像を得ることができる。
【0057】
なお、上記実施形態1〜3は本発明の鏡面表示装置の一例であって、は、本発明を逸脱しない範囲で種々の変形が可能である。
【0058】
図5は、本発明の実施形態に係る光反射透過型部材の一例の模式的断面図である。
光反射透過型部材201は、光学薄膜5を有する支持体1と、広帯域選択反射フィルム3を具備する。
図5に示すように、支持体1と広帯域選択反射フィルム3は空気層を介在せずに、第1の透明貼合部材を介して接合されている。かかる光反射透過型部材における、支持体1、広帯域選択反射フィルム3、光学薄膜5、および第1の透明貼合材などは、上記した鏡面表示装置について種々説明したものを使用することができる。
【0059】
なお、2016年1月20日に出願された日本特許出願2016−009265号の明細書、特許請求の範囲、図面、及び要約書の全内容をここに引用し、本発明の明細書の開示として、取り入れるものである。