特許第6948103号(P6948103)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6948103
(24)【登録日】2021年9月22日
(45)【発行日】2021年10月13日
(54)【発明の名称】フレイル改善用組み合わせ物
(51)【国際特許分類】
   A23L 33/10 20160101AFI20210930BHJP
   A23L 33/19 20160101ALI20210930BHJP
   A23L 33/155 20160101ALI20210930BHJP
   A23L 33/16 20160101ALI20210930BHJP
   A23L 2/52 20060101ALI20210930BHJP
   A61K 35/20 20060101ALI20210930BHJP
   A61K 33/20 20060101ALI20210930BHJP
   A61K 31/59 20060101ALI20210930BHJP
   A61P 21/00 20060101ALI20210930BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20210930BHJP
【FI】
   A23L33/10
   A23L33/19
   A23L33/155
   A23L33/16
   A23L2/00 F
   A61K35/20
   A61K33/20
   A61K31/59
   A61P21/00
   A61P25/00
【請求項の数】16
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2016-81453(P2016-81453)
(22)【出願日】2016年4月14日
(65)【公開番号】特開2017-189144(P2017-189144A)
(43)【公開日】2017年10月19日
【審査請求日】2019年3月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006138
【氏名又は名称】株式会社明治
(73)【特許権者】
【識別番号】509111744
【氏名又は名称】地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター
(74)【代理人】
【識別番号】100091982
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100082991
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 泰和
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【弁理士】
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100126099
【弁理士】
【氏名又は名称】反町 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100188651
【弁理士】
【氏名又は名称】遠藤 広介
(72)【発明者】
【氏名】角 公一郎
(72)【発明者】
【氏名】芦田 欣也
(72)【発明者】
【氏名】高橋 毅
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 裕之
(72)【発明者】
【氏名】新開 省二
(72)【発明者】
【氏名】清野 諭
【審査官】 野村 英雄
(56)【参考文献】
【文献】 特表2013−515718(JP,A)
【文献】 特表2012−533627(JP,A)
【文献】 若林秀隆,「理学療法とリハビリテーション栄養管理」,理学療法学,2013年,Vol.40, No.5,pp.392-398
【文献】 川上浩、外三名,「高齢者における牛乳摂取と身体活動に関する研究」,MILK SCIENCE,2014年,Vol.63, No.3,pp.145-153
【文献】 「リソースRペムパルアクティブR」,静脈経腸栄養年鑑2013 製剤・食品・器具一覧,Vol.8,2013年12月16日,p.71
【文献】 アクティブシニア「食と栄養」研究会,「ロコモ・サルコペニア対策−ロコモ・サルコペニアとは−」,[online], Internet,Internet Archive Wayback Machine,2016年03月23日,https://web.archive.org/web/20160323165142/http://activesenior-f-and-n.com/locomo/,[検索日:平成29年5月22日]
【文献】 アクティブシニア「食と栄養」研究会,「ロコモ・サルコペニア対策−筋肉と栄養成分−」,[online], Internet,Internet Archive Wayback Machine,2016年03月23日,https://web.archive.org/web/20160323161402/http://activesenior-f-and-n.com/locomo/muscle.html,[検索日:平成29年5月22日]
【文献】 中村丁次,「栄養摂取と老化予防」,医学のあゆみ,2015年05月30日,Vol.253, No.9,pp.911-915,ISSN 0039-2359, 特に914頁17-23行
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23C 1/00−23/00
A23L 2/00−35/00
A23J 1/00− 7/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
全乳たんぱく質、亜鉛およびビタミンDを含む、フレイル改善用組み合わせ物であって、前記組み合わせ物325mLに対する、全乳たんぱく質の含有量が9〜12gであり、亜鉛の含有量が6〜10mgであり、ビタミンDの含有量が3〜8μgである、組み合わせ物。
【請求項2】
ビタミンB12および葉酸をさらに含む、請求項1に記載の組み合わせ物であって、該組み合わせ物200〜400mLに対する、ビタミンB12の含有量が0.1〜100μgであり、葉酸の含有量が50〜1000μgである、組み合わせ物。
【請求項3】
前記組み合わせ物325mLに対する、ビタミンB12の含有量が5〜20μgであり、葉酸の含有量が100〜300μgである、請求項に記載の組み合わせ物。
【請求項4】
1日の経口摂取量が200〜400mLである、請求項1〜のいずれか一項に記載の組み合わせ物。
【請求項5】
高齢者のための、請求項1〜のいずれか一項に記載の組み合わせ物。
【請求項6】
運動を行っているヒトのための、請求項1〜のいずれか一項に記載の組み合わせ物。
【請求項7】
前記運動が筋力トレーニングである、請求項に記載の組み合わせ物。
【請求項8】
前記筋力トレーニングが低〜中強度の筋力トレーニングである、請求項に記載の組み合わせ物。
【請求項9】
前記組み合わせ物の形態が液状である、請求項1〜のいずれか一項に記載の組み合わせ物。
【請求項10】
組成物である、請求項1〜のいずれか一項に記載の組み合わせ物。
【請求項11】
前記組成物が飲食品である、請求項10に記載の組み合わせ物。
【請求項12】
前記飲食品が飲料である、請求項11に記載の組み合わせ物。
【請求項13】
タンパク質合成刺激に対する感受性の低下を改善するための、請求項1〜12のいずれか一項に記載の組み合わせ物。
【請求項14】
骨格筋量減少を改善するための、請求項1〜13のいずれか一項に記載の組み合わせ物。
【請求項15】
精神的健康度を向上するための、請求項1〜14のいずれか一項に記載の組み合わせ物。
【請求項16】
前記組み合わせ物が一体的にまたは別体として構成されている、請求項1に記載の組み合わせ物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なフレイル改善用組み合わせ物に関する。
【背景技術】
【0002】
世界的に社会の高齢化は大きな問題となっており、健康長寿を達成することが喫緊の課題となっている。高齢者の健康長寿が妨げられる要因の1つとして、年齢の増加と共にフレイルの比重が大きくなることが示唆されている(非特許文献1)。フレイルとは、日本老年医学会が提唱している、健常な状態と要介護状態(日常生活でサポートが必要な状態)の中間の状態のことである。「フレイル」はFrailtyの日本語訳であって、これまで、「虚弱」、「老衰」、「衰弱」、「脆弱」等の日本語訳も用いられてきた。フレイルの中心的なリスクファクターとして加齢による骨格筋量の減少(サルコペニア)が挙げられる(非特許文献2)。また、上述のサルコペニアのような身体的な側面に加え、精神的な健康度も活動量や栄養摂取量などフレイルを連鎖的に悪化させるフレイルサイクルに影響を及ぼすことが知られている(非特許文献2)。
【0003】
サルコペニアを予防する取り組みとしては運動療法と栄養的介入が中心的な役割を果たすと考えられている。骨格筋量は骨格筋におけるタンパク質合成と分解のバランスによって規定される。タンパク質合成の亢進には食事によるたんぱく質の摂取が主な役割を担っている。たんぱく質の摂食により、血中のアミノ酸濃度が増加し、骨格筋の合成が刺激される。この効果はとくにロイシンに顕著に認められる。高齢者においては、骨格筋のタンパク質分解は若齢者と同等であるが、食事(またはロイシン)によるタンパク質合成刺激に対する感受性が低下していること(anabolic resistance)が示唆されており(非特許文献3)、正味の骨格筋代謝が負となる。これがサルコペニアの一因であると考えられている(非特許文献4)。
【0004】
また、骨格筋に十分な強度の筋力トレーニングを負荷すると骨格筋のタンパク質合成と分解は共に亢進する。その際に十分な栄養があると、タンパク質合成が更に高まり、骨格筋代謝のバランスは正となる。そのため、筋力トレーニングを長期間にわたって継続すると骨格筋量は増大する。高齢者においても若齢者と同様に筋力トレーニングの有用性が認められており、高強度の筋力トレーニング(例えば80%最大挙上重量を8〜12回/セット×2〜3セット/週)は高齢者の骨格筋量減少を防止できることが示唆されている。一方、自体重やラバーバンドを用いた低〜中強度の筋力トレーニングの効果は明確ではない(非特許文献5)。しかしながら、高齢者にとって高強度の筋力トレーニングを継続することは、身体的、精神的、環境的に難しいのが現状といえる。
【0005】
さらに、筋力トレーニングと組み合わせて、たんぱく質を摂取すると、若齢者のみならず高齢者においても効果的に骨格筋量を増加しうることが示されている(非特許文献6)。しかしながら、上述のように、高齢者ではanabolic resistanceが認められることから、若齢者と同様の利益を得るためには、若齢者以上のたんぱく質を摂取せねばならず、現実的ではない。そこで、特にタンパク質合成刺激作用の強いロイシン含量を高めたアミノ酸組成物を補給することで筋力トレーニングの効果を高めるとの研究が進められている(非特許文献7)。しかしながら、ロイシンなどのアミノ酸はたんぱく質と比較して高価であり、また、風味に劣ることから、高齢者が継続して摂取し続けるのは容易ではない。
【0006】
また、筋力トレーニングの効果を増強するために、たんぱく質源として比較的安価であり風味に優れた乳たんぱく質を利用することも知られているが、これまでの筋力トレーニングと乳たんぱく質補給を組み合わせた介入試験では、1日あたりの乳たんぱく質補給量が15gでは筋肉量の増加にたんぱく質の補給は寄与せず(非特許文献8)、効果があったとされるのは30gという高レベルで設定されたものである(非特許文献9)。
【0007】
一方で、近年、種々の健康増進機能を有する、たんぱく質やアミノ酸を含有する経口製品が報告されている。例えば、特許文献1には、運動健康法と栄養介入を含む機能状態の喪失を減弱する方法として、筋肉量の喪失予防を助ける栄養介入としてホエーたんぱく質またはビタミンDなどを用いることが記載されている。
【0008】
また、特許文献2には、L−ロイシンを総必須アミノ酸中のモル組成比で35〜57%含有する高齢者の骨格筋減少を防止または改善するための経口用アミノ酸組成物が記載されている。
【0009】
また、特許文献3には、L−ロイシンを総必須アミノ酸中のモル組成比で35〜66%含有する高齢者の骨格筋減少を防止または改善するための経口用アミノ酸組成物が記載されている。
【0010】
また、特許文献4には、アスパラギン酸亜鉛またはアスパラギン酸マグネシウムを有効成分とする筋萎縮抑制剤が記載されている。
【0011】
また、特許文献5には、インスリン抵抗性を患う対象の処置の為の医薬の製造における、たんぱく性物質を含む組成物を使用する方法であって、該たんぱく性物質がエネルギー値の少なくとも24%を与え、かつ、たんぱく性物質に基づき少なくとも12重量%以上のロイシンを与えることが記載されている。
【0012】
また、特許文献6には、小麦たんぱく質の加水分解物を含有する、筋肉増加用組成物が記載されている。
【0013】
また、特許文献7には、ミネラル成分(リンを除く)を含有する飲料水で、重量配合比で、ナトリウム8.3、カリウム33.0、マグネシウム3.1、カルシウム3.8、鉄0.3、亜鉛0.09である組成が記載されている。
【0014】
また、非特許文献10には、中高年の男性を対照群、栄養摂取群、運動群、運動+栄養摂取群の4群に分けて栄養介入としてビタミンDを強化した脱脂乳を摂取させたところ、運動群と運動+栄養群では大きな差異は認められず、ビタミンD強化脱脂乳に運動による骨格筋量、強度、機能改善効果を更に増強する効果はなかったことが記載されている。
【0015】
また、非特許文献11には、虚弱な高齢者に対したんぱく質を摂取させることにより、骨格筋合成に関与するIGF−1が増加し、更に亜鉛を摂取することでたんぱく質のみと比較して早期にIGF−1が高まることが示唆されている。ここで、運動介入はしていない。
【0016】
また、非特許文献12には、2グループの筋量低下が認められる要介護高齢者を対象として、片方には運動のみ、もう片方には運動に加えて週3回、高機能流動食「ペンパルアクティブ」を3ヵ月摂取させたところ、運動のみでは骨格筋量が変化しなかったのに対し、ペンパルアクティブを摂取させると5.4%筋量が増加したことが記載されている。ペンパルアクティブは、1回分125mL(200kcal)あたり、たんぱく質10g(BCAA含量は2.5g)、ビタミンD 12.5μg、亜鉛28mg等を含むことが記載されている。ここで、対象は要介護高齢者である。
【0017】
また、非特許文献13には、65歳以上の高齢者を対象として運動、栄養指導、温泉入浴からなる複合介入プログラムの効果を非介入群と比較検討したところ、介入により身体機能やWHO−5スコアが改善傾向であるが、筋量は改善していないことが記載されている。
【0018】
以上のように、乳たんぱく質、亜鉛、およびビタミンDを組み合わせて摂取すると、フレイルを効果的に改善させうる技術的手段は報告されていない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0019】
【非特許文献1】神崎恒一 老年症候群とは 臨床栄養 2011; 119(7): 750-754
【非特許文献2】葛谷雅文 フレイルティとは 臨床栄養 2011; 119(7): 755-759
【非特許文献3】Dominique Darvet et al. Muscle wasting and resistance of muscle anabolism: the “anabolic threshold concept” for adapted nutritional strategies during sarcopenia The Scientific World Journal 2012; Article ID 269531, 6pages
【非特許文献4】藤田 聡 サルコペニア予防における運動と栄養摂取の役割、基礎老化研究 2011; 35(3): 23-27
【非特許文献5】宮地 元彦ら サルコペニアに対する治療の可能性:運動介入効果に関するシステマティックレビュー 日老医誌 2011; 48: 51-54
【非特許文献6】Naomi M Cermak et al. Protein supplementation augments the adaptative response of skeletal muscle to resistance-type exercise training: a meta-analysis. Am J Clin Nutr 2012; 96: 1454-64
【非特許文献7】Hun Kyung Kim et al, Effect of exercise and amino acid supplementation on body composition and physical function in community-dwelling elderly Japanese sarcopenic women: a randomized controlled trial. JAGS 2012; 60: 16-23
【非特許文献8】Marika Leenders et al. Protein supplementation during resistance-type exercise training in the elderly. Med Sci Sports Exerc 2013; 45(3); 542-552
【非特許文献9】Michael Tieland et al. Protein supplementation increases muscle mass gain during prolonged resistance-type exercise training in frail elderly people: a randomized, double-blind, placebo-controlled trial J Am Med Dir Assoc. 2012; 13; 713-719
【非特許文献10】Sonja Kukuljan et al. Effect of resistance exercise and fortified milk on skeletal muscle size, and functional performance in middle-aged and older men: an 18-mo randomized controlled trial . J Appl Physiol 2009; 107: 1864-1873.
【非特許文献11】A. Rodondi et al. Zinc increases the effect of essential amino acids-whey protein supplements in frail elderly. The Journal of Nutrition, Health & Aging 2009; 13(6): 491-497
【非特許文献12】M Yamada et al. Nutritional supplementation during resistance training improved skeletal muscle mass in community-dwelling frail older adults. The Journal of Frailty & Aging 2012; 1(2): 64-70
【非特許文献13】桜井ら 温泉施設を用いた複合的介入プログラムの有効性に関する研究〜無作為化比較試験による検討〜 日老医誌 2011; 48: 352-360
【特許文献】
【0020】
【特許文献1】特表2012−533627号公報
【特許文献2】特開2012−131819号公報
【特許文献3】特表2008−534599号公報
【特許文献4】特表2012−180347号公報
【特許文献5】特開2013−139470号公報
【特許文献6】特開2012−062309号公報
【特許文献7】特開2011−225475号公報
【発明の概要】
【0021】
本発明は、乳たんぱく質を含んでなる、フレイルを効果的に改善させる新規なフレイル改善用組み合わせ物を提供することを目的とする。
【0022】
本発明者らは、乳たんぱく質、亜鉛、およびビタミンDを組み合わせて摂取すると、フレイルを効果的に改善することを見出した。
【0023】
本発明によれば、以下の発明が提供される。
(1)乳たんぱく質、亜鉛およびビタミンDを含む、フレイル改善用組み合わせ物。
(2)ビタミンB12および葉酸をさらに含む、(1)に記載の組み合わせ物。
(3)乳たんぱく質が全乳たんぱく質である、(1)または(2)に記載の組み合わせ物。
(4)乳たんぱく質の含有量が1〜15gである、(1)〜(3)のいずれか一つに記載の組み合わせ物。
(5)亜鉛の含有量が1〜40mgである、(1)〜(4)のいずれか一つに記載の組み合わせ物。
(6)ビタミンDの含有量が1〜100μgである、(1)〜(5)のいずれか一つに記載の組み合わせ物。
(7)ビタミンB12の含有量が0.1〜100μgである、(2)〜(6)のいずれか一つに記載の組み合わせ物。
(8)葉酸の含有量が50〜1000μgである、(2)〜(7)のいずれか一つに記載の組み合わせ物。
(9)高齢者のための、(1)〜(8)のいずれか一つに記載の組み合わせ物。
(10)運動を行っているヒトのための、(1)〜(9)のいずれか一つに記載の組み合わせ物。
(11)組成物である、(1)〜(10)のいずれか一つに記載の組み合わせ物。
(12)前記組成物が飲食品である、(11)に記載の組み合わせ物。
(13)前記飲食品が飲料である、(12)に記載の組み合わせ物。
(14)乳たんぱく質、亜鉛およびビタミンDを含む、骨格筋量減少改善用組み合わせ物。
(15)乳たんぱく質、亜鉛およびビタミンDを含む、精神的健康度向上用組み合わせ物。
【0024】
また、本発明によれば、以下の発明が提供される。
(16)乳たんぱく質、亜鉛およびビタミンDを含む、組み合わせ物の有効量を対象に摂取させる工程を含む、フレイルを改善するための方法。
(17)前記の組み合わせ物が、ビタミンB12および葉酸をさらに含む、(16)に記載の方法。
(18)前記乳たんぱく質が全乳たんぱく質である、(16)または(17)に記載の方法。
(19)前記の組み合わせ物中の乳たんぱく質の含有量が1〜15gである、(16)〜(18)のいずれか一つに記載の方法。
(20)前記の組み合わせ物中の亜鉛の含有量が1〜40mgである、(16)〜(19)のいずれか一つに記載の方法。
(21)前記の組み合わせ物中のビタミンDの含有量が1〜100μgである、(16)〜(20)のいずれか一つに記載の方法。
(22)前記の組み合わせ物中のビタミンB12の含有量が0.1〜100μgである、(17)〜(21)のいずれか一つに記載の方法。
(23)前記の組み合わせ物中の葉酸の含有量が50〜1000μgである、(17)〜(22)のいずれか一つに記載の方法。
(24)高齢者のための、(16)〜(23)のいずれか一つに記載の方法。
(25)運動を行っているヒトのための、(16)〜(24)のいずれか一つに記載の方法。
(26)乳たんぱく質、亜鉛およびビタミンDを含む、組み合わせ物の有効量を対象に摂取させる工程を含む、骨格筋量の減少を改善するための方法。
(27)乳たんぱく質、亜鉛およびビタミンDを含む、組み合わせ物の有効量を対象に摂取させる工程を含む、精神的健康度を向上させるための方法。
(28)乳たんぱく質、亜鉛およびビタミンDを含む、組み合わせ物の有効量を対象に摂取させる工程を含む、フレイルのリスクを低下させるための方法。
(29)乳たんぱく質、亜鉛およびビタミンDを含む、組み合わせ物の有効量を対象に摂取させる工程を含む、骨格筋量の減少のリスクを低下させるための方法。
【0025】
また、本発明によれば、以下の発明が提供される。
(30)フレイル改善用組み合わせ物の製造における、乳たんぱく質、亜鉛およびビタミンDの使用。
(31)前記の組み合わせ物が、ビタミンB12および葉酸をさらに含む、(30)に記載の使用。
(32)前記乳たんぱく質が全乳たんぱく質である、(30)または(31)に記載の使用。
(33)前記の組み合わせ物中の乳たんぱく質の含有量が1〜15gである、(30)〜(32)のいずれか一つに記載の使用。
(34)前記の組み合わせ物中の亜鉛の含有量が1〜40mgである、(30)〜(33)のいずれか一つに記載の使用。
(35)前記の組み合わせ物中のビタミンDの含有量が1〜100μgである、(30)〜(34)のいずれか一つに記載の使用。
(36)前記の組み合わせ物中のビタミンB12の含有量が0.1〜100μgである、(31)〜(35)のいずれか一つに記載の使用。
(37)前記の組み合わせ物中の葉酸の含有量が50〜1000μgである、(31)〜(36)のいずれか一つに記載の使用。
(38)高齢者のための、(30)〜(37)のいずれか一つに記載の使用。
(39)運動を行っているヒトのための、(30)〜(38)のいずれか一つに記載の使用。
(40)骨格筋量減少改善用組み合わせ物の製造における、乳たんぱく質、亜鉛およびビタミンDの使用。
(41)精神的健康度向上用組み合わせ物の製造における、乳たんぱく質、亜鉛およびビタミンDの使用。
(42)フレイルのリスクの低下用組み合わせ物の製造における、乳たんぱく質、亜鉛およびビタミンDの使用。
(43)骨格筋量の減少のリスクの低下用組み合わせ物の製造における、乳たんぱく質、亜鉛およびビタミンDの使用。
【0026】
また、本発明によれば、以下の発明が提供される。
(44)フレイル改善に有効な組み合わせ物の製造に使用するための、乳たんぱく質、亜鉛およびビタミンD。
(45)前記の組み合わせ物が、ビタミンB12および葉酸をさらに含む、(44)に記載の乳たんぱく質、亜鉛およびビタミンD。
(46)前記乳たんぱく質が全乳たんぱく質である、(44)または(45)に記載の乳たんぱく質、亜鉛およびビタミンD。
(47)前記の組み合わせ物中の乳たんぱく質の含有量が1〜15gである、(44)〜(46)のいずれか一つに記載の乳たんぱく質、亜鉛およびビタミンD。
(48)前記の組み合わせ物中の亜鉛の含有量が1〜40mgである、(44)〜(47)のいずれか一つに記載の乳たんぱく質、亜鉛およびビタミンD。
(49)前記の組み合わせ物中のビタミンDの含有量が1〜100μgである、(44)〜(48)のいずれか一つに記載の乳たんぱく質、亜鉛およびビタミンD。
(50)前記の組み合わせ物中のビタミンB12の含有量が0.1〜100μgである、(45)〜(49)のいずれか一つに記載の乳たんぱく質、亜鉛およびビタミンD。
(51)前記の組み合わせ物中の葉酸の含有量が50〜1000μgである、(45)〜(50)のいずれか一つに記載の乳たんぱく質、亜鉛およびビタミンD。
(52)高齢者のための、(44)〜(51)のいずれか一つに記載の乳たんぱく質、亜鉛およびビタミンD。
(53)運動を行っているヒトのための、(44)〜(52)のいずれか一つに記載の乳たんぱく質、亜鉛およびビタミンD。
(54)骨格筋量減少の改善に有効な組み合わせ物の製造に使用するための、乳たんぱく質、亜鉛およびビタミンD。
(55)精神的健康度の向上に有効な組み合わせ物の製造に使用するための、乳たんぱく質、亜鉛およびビタミンD。
(56)フレイルのリスクの低下に有効な組み合わせ物の製造に使用するための、乳たんぱく質、亜鉛およびビタミンD。
(57)骨格筋量の減少のリスクの低下に有効な組み合わせ物の製造に使用するための、乳たんぱく質、亜鉛およびビタミンD。
【0027】
また、本発明によれば、以下の発明が提供される。
(58)上記組み合わせ物が一体的にまたは別体として構成されている、(1)に記載の組み合わせ物。
【0028】
本発明によれば、本発明の組み合わせ物を対象に摂取させることにより、顕著に対象のフレイルを改善することができる。また、本発明の組み合わせ物を対象に摂取させることにより、対象の骨格筋量減少を有利に改善することができる。本発明によれば、本発明の組み合わせ物を対象に摂取させることにより、タンパク質合成刺激に対する感受性の低下を改善することができる。また、本発明の組み合わせ物は、精神的健康度を有利に向上することができる。また、本発明の組み合わせ物は、たんぱく質源として比較的安価であり風味に優れた乳たんぱく質を利用していることから、毎日の食事に無理なく組み込むことのできる用量および/または風味を提供することができる点で有利である。さらに、本発明の組み合わせ物は、継続することが容易な低〜中強度の筋力トレーニング等の運動を実践する高齢者が摂取することで、骨格筋減少を改善する点で有利である。さらに、本発明の組み合わせ物は、継続することが容易な低〜中強度の筋力トレーニング等の運動を実践する高齢者が摂取することで、精神的健康度を向上させる点で有利である。さらに、本発明の組み合わせ物は、継続することが容易な低〜中強度の筋力トレーニング等の運動を実践する高齢者が摂取することで、身体的側面、精神的側面の両面からフレイルサイクルを抑制することでフレイルを改善する点で有利である。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】運動群および運動+栄養群における、運動・栄養介入試験の開始前および終了後の血漿ロイシン濃度変化を示すグラフである。
図2】運動群および運動+栄養群における、運動・栄養介入試験の開始前および終了後の除脂肪体重を示すグラフである。
図3】運動群および運動+栄養群における、運動・栄養介入試験の開始前の骨格筋指数に対する終了後の骨格筋指数の比率を示すグラフである。
図4】運動群および運動+栄養群における、運動・栄養介入試験の開始前および終了後のWHO−5精神的健康状態表のスコアを示すグラフである。
図5】運動群および運動+栄養群における、運動・栄養介入試験の開始前の血清25−(OH)ビタミンD濃度に対する終了後の血清25−(OH)ビタミンD濃度の比率を示すグラフである。
図6】運動群および運動+栄養群における、運動・栄養介入試験の開始前の血清ビタミンB12濃度に対する終了後の血清ビタミンB12濃度の比率を示すグラフである。
図7】運動群および運動+栄養群における、運動・栄養介入試験の開始前の血清葉酸濃度に対する終了後の血清葉酸濃度の比率を示すグラフである。
図8】運動群および運動+栄養群における、運動・栄養介入試験の開始前および終了後の血清亜鉛濃度変化を示すグラフである。
【発明の具体的説明】
【0030】
本発明のフレイル改善用組み合わせ物は、乳たんぱく質、亜鉛、およびビタミンDを含有することを一つの特徴としている。本発明のフレイル改善用組み合わせ物は、さらに、ビタミンB12および葉酸を含有してもよい。
【0031】
本発明の組み合わせ物に配合される乳たんぱく質は、本発明の効果を妨げない限り、特に限定されず、全乳たんぱく質、乳清たんぱく質、カゼイン、乳脂肪球皮膜たんぱく質などが挙げられ、好ましくは、全乳たんぱく質である。上記乳たんぱく質におけるロイシンの含量は、本発明の効果を妨げない限り特に限定されないが、10質量%未満が好ましい。また、本発明の組み合わせ物に配合される乳たんぱく質の形態は、本発明の効果を妨げない限り、特に限定されず、乳原料のままであってもよく、乳原料から精製された乳たんぱく質の形態であってもよい。かかる乳原料の具体的な形態としては、牛乳、脱脂乳、バター、無塩バター、バターオイル、クリーム、クリームパウダー、バターミルク、脱脂粉乳、全脂粉乳、れん乳、濃縮乳、脱脂濃縮乳、濃縮ホエイ、ホエイ粉、ミルクプロテインコンセントレート、ホエイたんぱく濃縮物、乳糖、またはそれらの組み合わせなどが挙げられる。乳原料または乳原料から精製された乳たんぱく質は、単独で配合してもよく、2種以上を組み合わせて配合してもよい。本発明では、例えば、食品原料や食品添加剤として市販されて流通している乳原料を、乳たんぱく質として用いることができる。
【0032】
本発明の組み合わせ物における乳たんぱく質の含有量は、本発明の効果を妨げない限り、特に限定されないが、乳たんぱく質そのものの含有量として、風味のよい乳たんぱく質含有組み合わせ物を安価に提供するという観点から、好ましくは1〜15gであり、より好ましくは5〜13gであり、さらに好ましくは、9〜12gである。本発明の組み合わせ物における乳たんぱく質の含有量は、例えば、「食品衛生検査指針 理化学編」(厚生省生活衛生局監修)に記載のケルダール法で測定することができる。
【0033】
本発明の組み合わせ物に配合される亜鉛の形態は、本発明の効果を妨げない限り、特に限定されず、塩の形態で組み合わせ物中に含有させてもよい。かかる亜鉛の具体的な形態としては、塩化亜鉛、硫酸亜鉛、グルコン酸亜鉛、酵母亜鉛などが挙げられるが、好ましくは、グルコン酸亜鉛、酵母亜鉛であり、より好ましくは、グルコン酸亜鉛である。本発明では、例えば、食品添加剤として市販されて流通している亜鉛や、亜鉛を含む製剤などを用いることができる。
【0034】
本発明の組み合わせ物における亜鉛の含有量は、本発明の効果を妨げない限り、特に限定されないが、亜鉛そのものの含有量として、好ましくは1〜40mgであり、より好ましくは4〜20mgであり、さらに好ましくは6〜10mgである。本発明の組み合わせ物における亜鉛の含有量は、例えば、「食品衛生検査指針 理化学編」(厚生省生活衛生局監修)に記載の原子吸光光度法で測定することができる。
【0035】
本発明の組み合わせ物に配合されるビタミンDの形態は、本発明の効果を妨げない限り、特に限定されない。かかるビタミンDの具体的な形態としては、エルゴカルシフェロール(VD2)、コレカルシフェロール(VD3)、カルシジオール、カルシトリオール、ドキセルカルシフェロール、カルシポトリエンなどが挙げられるが、好ましくは、VD2、VD3、より好ましくは、VD3である。本発明では、例えば、食品添加剤として市販されて流通しているビタミンDや、ビタミンDを含む製剤などを用いることができる。
【0036】
本発明の組み合わせ物におけるビタミンDの含有量は、本発明の効果を妨げない限り、特に限定されないが、ビタミンDそのものの含有量として、好ましくは1〜100μgであり、より好ましくは2〜20μgであり、さらに好ましくは3〜8μgである。本発明の組み合わせ物におけるビタミンDの含有量は、例えば、HPLC法により、竹林 純他 ビタミン 2011;85(12):645-650に記載の手順に従って測定することができる。
【0037】
本発明の組み合わせ物に配合される葉酸の形態は、本発明の効果を妨げない限り、特に限定されない。かかる葉酸の具体的な形態としては、葉酸、5-メチルテトラヒドロ葉酸、5-メチルテトラヒドロ葉酸メチル葉酸塩などが挙げられるが、好ましくは、葉酸である。本発明では、例えば、食品添加剤として市販されて流通している葉酸や、葉酸を含む製剤などを用いることができる。
【0038】
本発明の組み合わせ物における葉酸の含有量は、本発明の効果を妨げない限り、特に限定されないが、葉酸そのものの含有量として、好ましくは50〜1000μgであり、より好ましくは70〜500μgであり、さらに好ましくは100〜300μgである。本発明の組み合わせ物における葉酸の含有量は、例えば、「五訂増補日本食品標準成分表分析マニュアル」(国立印刷局発行)に記載の微生物定量法で測定することができる。
【0039】
本発明の組み合わせ物に配合されるビタミンB12の形態は、本発明の効果を妨げない限り、特に限定されない。かかるビタミンB12の具体的な形態としては、メチルコバラミン、ヒドロキソコバラミン、アデノシルコバラミン、塩酸ヒドロキソコバラミン、酢酸ヒドロキソコバラミン、シアノコバラミンなどが挙げられるが、好ましくは、シアノコバラミンである。本発明では、例えば、食品添加剤として市販されて流通しているビタミンB12や、ビタミンB12を含む製剤などを用いることができる。
【0040】
本発明の組み合わせ物におけるビタミンB12の含有量は、本発明の効果を妨げない限り、特に限定されないが、ビタミンB12そのものの含有量として、好ましくは0.1〜100μgであり、より好ましくは1〜50μgであり、さらに好ましくは5〜20μgである。本発明の組み合わせ物におけるビタミンB12の含有量は、例えば、微生物学的定量法により、(食品表示基準について(平成27年3月30日消食表第139号,消費者庁次長通知 別添 栄養表示関係http://www.caa.go.jp/foods/pdf/151224_tuchi4-betu2.pdf p121-123)に記載の手順に従って測定することができる。
【0041】
また、本発明の組み合わせ物において、亜鉛およびビタミンDの合計と、亜鉛との質量比は、好ましくは1:0.95〜1:1であり、より好ましくは1:0.97〜1:0.9999であり、さらに好ましくは1:0.999〜1:0.9995である。
【0042】
また、本発明の組み合わせ物において、亜鉛およびビタミンDの合計と、ビタミンDとの質量比は、好ましくは1:0.00003〜1:0.5であり、より好ましくは1:0.0001〜1:0.01であり、さらに好ましくは1:0.0005〜1:0.001である。
【0043】
また、本発明の組み合わせ物において、亜鉛およびビタミンDの合計と、乳たんぱく質との質量比は、好ましくは1:200〜1:8000であり、より好ましくは1:300〜1:5000であり、さらに好ましくは1:500〜1:2000である。
【0044】
また、本発明の組み合わせ物において、亜鉛、ビタミンD、ビタミンB12、および葉酸の合計と、亜鉛との質量比は、好ましくは1:0.5〜1:1であり、より好ましくは1:0.6〜1:1であり、さらに好ましくは1:0.97〜1:1である。
【0045】
また、本発明の組み合わせ物において、亜鉛、ビタミンD、ビタミンB12、および葉酸の合計と、ビタミンDとの質量比は、好ましくは1:0.00003〜1:0.05であり、より好ましくは1:0.0001〜1:0.01であり、さらに好ましくは1:0.0005〜1:0.001である。
【0046】
また、本発明の組み合わせ物において、亜鉛、ビタミンD、ビタミンB12、および葉酸の合計と、ビタミンB12との質量比は、好ましくは1:0.00001〜1:0.05であり、より好ましくは1:0.00001〜1:0.01であり、さらに好ましくは1:0.001〜1:0.005である。
【0047】
また、本発明の組み合わせ物において、亜鉛、ビタミンD、ビタミンB12、および葉酸の合計と、葉酸との質量比は、好ましくは1:0.001〜1:0.4であり、より好ましくは1:0.005〜1:0.1であり、さらに好ましくは1:0.01〜1:0.03である。
【0048】
また、本発明の組み合わせ物において、亜鉛、ビタミンD、ビタミンB12、および葉酸の合計と、乳たんぱく質との質量比は、好ましくは1:200〜1:7000であり、より好ましくは1:500〜1:5000であり、さらに好ましくは1:1000〜1:2000である。
【0049】
また、本発明の組み合わせ物は、上記成分と共に、他のビタミン、例えば、ビタミンA、ビタミンE、ビタミンB1、ビタミンB2、ナイアシン、ビタミンB6、パントテン酸、ビタミンCなど、および/または他のミネラル、例えば、ナトリウム、カルシウム、鉄、銅、セレンなどをさらに含んでもよい。例えば、本発明の組み合わせ物は、ビタミンA、ビタミンE、ビタミンB1、ビタミンB2、ナイアシン、ビタミンB6、パントテン酸、ビタミンC、ナトリウム、カルシウム、鉄、銅およびセレンからなる群から選択される少なくとも1つ、例えばその全て、をさらに含んでもよい。例えば、本発明の組み合わせ物は、ビタミンAを150〜1800μgRE、好ましくは300〜900μgRE含んでもよく、ビタミンEを7.5〜90mg、好ましくは15〜45mg含んでもよく、ビタミンB1を0.8〜9.0mg、好ましくは1.5〜4.5mg含んでもよく、ビタミンB2を1.0〜12.0mg、好ましくは2.0〜6.0mg含んでもよく、ナイアシンを8〜96mgNE、好ましくは16〜48mgNE含んでもよく、ビタミンB6を2〜30mg、好ましくは3〜12mg含んでもよく、パントテン酸を3〜36mg、好ましくは6〜18mg含んでもよく、ビタミンCを100〜800mg、好ましくは200〜500mg含んでもよい。本発明の組み合わせ物はまた、例えば、ナトリウムを40〜640mg、好ましくは80〜320mg含んでもよく、カルシウムを75〜1400mg、好ましくは150〜700mg含んでもよく、鉄を1.5〜30mg、好ましくは3.5〜15mg含んでもよく、銅を0.1〜1.6mg、好ましくは0.2〜0.8mg含んでもよく、セレンを6〜72μg、好ましくは12〜36μg含んでもよい。
【0050】
また、本発明の組み合わせ物は、脂質、炭水化物、乳たんぱく質以外のたんぱく質、灰分などをさらに含んでもよい。例えば、本発明の組み合わせ物は、脂質、炭水化物および乳たんぱく質以外のたんぱく質、灰分からなる群から選択される少なくとも1つ、例えばその全て、をさらに含んでもよい。例えば、本発明の組み合わせ物は、脂質を1〜16g、好ましくは2〜8g含んでもよく、炭水化物を5〜80g、好ましくは10〜40g含んでもよく、乳たんぱく質以外のたんぱく質を0.18〜10.0g、好ましくは0.35〜5.0g含んでもよく、および灰分を0.15〜1.8g、好ましくは0.3〜0.9g含んでもよい。
【0051】
また、本発明の組み合わせ物は、上記成分と共に、所望により経口上許容可能な添加剤を配合した組み合わせ物として提供することができる。経口上許容可能な添加剤として、水などの水性媒体、溶剤、溶解補助剤、滑沢剤、乳化剤、等張化剤、安定化剤、保存剤、防腐剤、界面活性剤、調整剤、キレート剤、pH調整剤、緩衝剤、賦形剤、増粘剤、着色剤、芳香剤または香料などが挙げられる。
【0052】
本発明の組み合わせ物は、上記の各成分を混合、溶解、分散、懸濁するなどの公知の手法により、調製することができる。また、本発明の組み合わせ物の調製においては、本発明の効果を妨げない限り、上記の各成分の混合物、溶解物、分散物、懸濁物などに、均質化処理や殺菌処理を施してもよい。
【0053】
また、本発明の組み合わせ物は、本発明の効果を妨げない限り、特に制限されず、1つの組成物または剤の形態であってもよく、複数の組成物または剤の組み合わせから構成されていてもよい。また、上記組み合わせ物は一体的にまたは別体として構成されていてもよい。上記複数または別体としての組成物の組み合わせとしては、例えば、乳たんぱく質を含んでなる組成物と、亜鉛およびビタミンDを含んでなる組成物との組み合わせ、または、乳たんぱく質を含んでなる組成物と、亜鉛、ビタミンD、ビタミンB12および葉酸を含んでなる組成物との組み合わせが挙げられる。
【0054】
また、本発明の組み合わせ物の形態は、本発明の効果を妨げない限り、特に制限されず、固形状、半固形状または液状であってもよいが、固形状または液状であることが好ましく、摂取の簡便性、風味の観点から液状であることがより好ましい。本発明の組み合わせ物が複数の組成物または剤の組み合わせである場合には、各組成物または各剤の形態が同じであっても異なっても構わない。
【0055】
本願発明の組み合わせ物の容量は、本発明の効果を妨げない限り、特に限定されず、例えば、50〜5000mLとしてもよく、好ましくは100〜1000mLであり、より好ましくは100〜500mLであり、さらに好ましくは200〜400mLである。また、本願発明の組み合わせ物の重量は、本発明の効果を妨げない限り、特に限定されず、例えば、50〜5000gとしてもよく、好ましくは100〜1000gであり、より好ましくは100〜500gであり、さらに好ましくは200〜400gである。上記容量または重量は、本発明の組み合わせ物が複数の組成物または剤の組み合わせである場合には、その組み合わせの合計を示す。
【0056】
また、本発明の組み合わせ物は、1日の経口摂取量の単位として提供することが好ましい。本発明の組み合わせ物における、乳たんぱく質、亜鉛およびビタミンDの1日の経口摂取量、または、乳たんぱく質、亜鉛、ビタミンD、ビタミンB12および葉酸の1日の経口摂取量は、上述した組み合わせ物中の含有量と同様とすることができる。
【0057】
したがって、本発明の好ましい態様によれば、本発明の組み合わせ物は、1日の経口摂取量の単位からなり、乳たんぱく質1〜15g、亜鉛1〜40mg、およびビタミンD 1〜100μgを含んでなるか、または、乳たんぱく質1〜15g、亜鉛1〜40mg、ビタミンD 1〜100μg、ビタミンB12 0.1〜100μg、および葉酸50〜1000μgを含んでなる。また、上記の乳たんぱく質、亜鉛、およびビタミンD、または、乳たんぱく質、亜鉛、ビタミンD、ビタミンB12、および葉酸の含有量は、好ましくは、本発明の組み合わせ物100〜1000mL当たりの含有量であり、より好ましくは、本発明の組み合わせ物100〜500mL当たりの含有量であり、さらに好ましくは、本発明の組み合わせ物200〜400mL当たりの含有量である。
【0058】
また、本発明の組み合わせ物は、包装形態で提供することが好ましい。包装形態としては、特に限定されず、パックや容器などが挙げられる。この場合、使用される容器は、例えば、ポリエチレンテレフタレートを主成分とする成形容器や金属缶、瓶などの通常の形態で提供することができる。ここで、本発明の組み合わせ物が液状の場合、容器詰とすることにより、例えば、希釈せずに飲用できる。また、包装の表面には、成分の表示、用量や用法の表示などを付していてもよいし、フレイルを改善させる、骨格筋量の減少を改善させるなどの具体的な機能の表示などを付していてもよい。かかる包装形態の好適な例としては、サプリメント、医薬製剤、食品、飲料などが挙げられる。ここで、表示は、本発明の組み合わせ物自体に付したものであってもよいし、本発明の組み合わせ物を含有する容器、包装材または添付文書に付したものであってもよい。また、表示は、本発明の組み合わせ物の関連する情報として、チラシ、パンフレット、ポップ、カタログ、ポスター、書籍、DVDなどの記憶媒体、電子掲示板やインターネットなどでの広告などで、本発明の組み合わせ物が効果的であることを表示・広告するものであってもよい。
【0059】
本発明の組み合わせ物は、フレイル(虚弱、老衰、衰弱、または脆弱とも言われる)を有利に改善させることができる。したがって、本発明の組み合わせ物の好ましい一つの態様によれば、フレイル(虚弱、老衰、衰弱、または脆弱)改善用またはフレイルもしくは要介護状態となるリスクの低減のための組み合わせ物として提供される。また、本発明の組み合わせ物は、骨格筋量減少を有利に改善させることができることから、サルコペニア改善用または骨格筋量減少もしくはサルコペニアのリスクの低減のための組み合わせ物としても提供される。また、本発明の組み合わせ物の好ましい別の一つの態様によれば、本発明の組み合わせ物は、精神的健康度向上用または精神的健康の改善用組み合わせ物として提供される。また、フレイルの具体的な精神的側面(精神的症状)として、意欲低下、うつ状態、せん妄、認知症、睡眠障害、不安障害、閉じこもり、疲労感等が挙げられる。ここで、上記精神的健康度向上用または精神的健康の改善用組み合わせ物は、精神的健康度を向上、または、心理状態を改善できることから、フレイルの精神的症状改善用またはフレイルの精神的症状となるリスクの低減のための組み合わせ物としても提供される。
【0060】
また、本発明の別の態様によれば、フレイルの改善方法であって、乳たんぱく質、亜鉛、およびビタミンDの有効量、または、乳たんぱく質、亜鉛、ビタミンD、ビタミンB12、および葉酸の有効量を対象に服用(好ましくは、摂取)させることを含んでなる方法が提供され、それを必要とする対象に摂取させることを含んでなる方法が提供される。また、本発明の方法の好ましい別の一つの態様によれば、骨格筋量の減少の改善方法として提供される。また、本発明の方法の好ましい別の一つの態様によれば、精神的健康度の向上方法として提供される。ここで、「改善」とは、対象における状態もしくは症状の好転、または、状態もしくは症状の進行の逆転、防止もしくは遅延の意味を含むだけでなく、想定される悪化に対して事前に備え、状態または症状の発生を未然に防ぐ「予防」の意味も含む。また、「有効量」とは、1日の経口摂取量の単位における、乳たんぱく質、亜鉛、およびビタミンDの含有量、または、乳たんぱく質、亜鉛、ビタミンD、ビタミンB12、および葉酸の含有量などと同様に設定することができる。そして、本発明の方法では、一つの態様によれば、ヒトに対する医療行為を除くものである。例えば、上述の、フレイルの改善方法、骨格筋量の減少の改善方法、または、精神的健康度の向上方法等は、対象が健常者またはフレイル状態のヒトである場合、医療行為を除く非治療的方法とされる。なお、フレイル状態であるかを判定する1つの方法は、Friedらのフレイルティの定義((1)体重減少、(2)主観的疲労感、(3)日常生活活動量の減少、(4)身体能力(歩行速度)の減弱、(5)筋力(握力)の低下のうち3項目以上にあてはまること)による(Linda P. Fried et al., Frailty in Older Adults: Evidence for a Phenotype. J Gerontol A Biol Sci Med Sci 2001; 56: M146-56参照)。これは主に身体機能的なフレイルを判定する基準であるが、他に身体的フレイルだけでなく抑うつなどの心理的フレイルや社会的フレイルの要素を取り入れたEdmonton Scale(Roifson DB et al. Age Ageing 2006; 35: 526-9)、Groningen indicator(Schuurmans H et al. J Gerontol A Biol Sci 2004; 59: M926-926)、SOF index(Ensrud KE et al. Arch Intern Med 2008; 168: 382-9)による評価もある。
また、本邦では新開らが15の質問のみでなる「介護予防チェックリスト」を作成しており、15点中、3〜4点以上でFriedらの定義での虚弱者(フレイル状態のヒト)をある程度選抜できることを報告している(新開ら 日本公衛誌 2013; 60(5): 262-274)。
フレイル状態であるかは、新開らの方法で判定できる。
本発明のフレイルの改善方法、骨格筋量の減少の改善方法、精神的健康度の向上方法等は、本発明の組み合わせ物について、本明細書に記載された内容に従って実施することができる。
【0061】
本発明の摂取の方法は、本発明の効果を妨げない限り、特に限定されないが、好ましくは、経管摂取(経鼻摂取、胃ろうなど)、経口摂取であり、より好ましくは、経口摂取である。本発明の組み合わせ物としては、医薬品、医薬部外品、サプリメント、化粧料、または、特定保健用食品、栄養機能食品もしくは機能性表示食品を含む食品または飲料等の飲食品、栄養バー、ゼリー状食品、粉末飲料での提供が挙げられ、摂取の簡便性、風味の観点から飲料が好ましい。
【0062】
また、本発明の方法では、本発明の組み合わせ物の構成成分である、乳たんぱく質、亜鉛およびビタミンDの組み合わせ、または、乳たんぱく質、亜鉛、ビタミンD、ビタミンB12および葉酸の組み合わせを同時に対象に摂取させてもよく、別々に対象に摂取させてもよい。
【0063】
本発明の組み合わせ物の摂取の用法は、本発明の効果を妨げない限り、対象の種類、年齢、性別、フレイルの程度、骨格筋量減少の程度、または、精神的健康度の程度に応じて、当業者が適宜設定することができる。また、本発明の組み合わせ物の1日の摂取量は、1回で対象に摂取させてもよく、複数回で対象に摂取させてもよい。したがって、本発明の組み合わせ物としての1日の摂取回数は、1日に1〜5回であり、好ましくは、1日に1〜3回であり、より好ましくは、1日に1回である。さらに、本発明の組み合わせ物の摂取のタイミングは、本発明の効果を妨げない限り、特に限定されないが、運動前後に摂取する必要はなく、普段の食事と併せて摂取することができる。また、本発明の組み合わせ物が複数の組成物の組み合わせである場合には該複数の組成物を同時に対象に摂取させてもよく、別々に対象に摂取させてもよい。
【0064】
本発明の対象は、好ましくは、ヒトであり、より好ましくは、健常な状態、または、フレイル状態のヒトである。
【0065】
また、本発明の対象の年齢は、本発明の効果を妨げない限り、特に限定されないが、高齢者(例えば、65歳以上のヒト)の骨格筋量減少および/もしくはフレイルの改善、ならびに/または、精神的健康度の向上において特に有利に利用することができることから、好ましくは、高齢者である。
【0066】
さらに、本発明の対象は、本発明の効果を妨げない限り、特に限定されないが、運動を行っているヒトのフレイルの改善および/もしくは骨格筋量減少、ならびに/または、精神的健康度の向上において特に有利に利用することができることから、好ましくは、運動を行っているヒトであり、さらに好ましくは、運動を行っている高齢者(例えば、65歳以上のヒト)である。ここで、上記運動は継続が容易な運動が好ましく、例えば、ウォーキング(特に速歩)、ジョギング、ランニング、水泳、筋力トレーニングなどが挙げられ、より好ましくは、筋力トレーニングである。
上記筋力トレーニングは、本発明の効果を妨げない限り、特に限定されないが、継続性の観点から、低〜中強度の筋力トレーニングが好ましい。ここで、低〜中強度の筋力トレーニングとは、例えば、最大挙上重量の40〜70%(低強度〜中強度)の強度でのトレーニング、および/または、10段階omnibus resistance exercise scale(OMNI-RES)質問紙(0非常に楽〜2楽〜4やや楽〜6ややきつい〜8きつい〜10非常にきつい(限界))で対象が「ややきつい」と感じる(5〜7)程度のトレーニングである。上記筋力トレーニングとしては、例えば、自体重、ラバーバンド等を用いたトレーニングが挙げられる。具体的なトレーニング内容としては、上肢を対象として、arm curls(二頭筋カール)、 shoulder lateral and front raises(ショルダー・ラテラル・アンド・フロント・ライズ)、 pull downs(プルダウン)、 およびラバーバンドを用いたrowing(ローイング)が挙げられる。下肢を対象として、立位でのstandard and split squat(スタンダード・アンド・スプリット・スクワット)、 lunges(ランジ)、 およびtoe and heel raises(トゥ・アンド・ヒール・ライズ)、座位でのadductions(アダクション)、 knee extensions(膝の進展)が挙げられる。体幹を対象として、座位でのknee lift(ニー・リフト)、crunches(腹筋運動)、 hip lifts(ヒップリフト)、およびfront elbow bridge(フロント・エルボー・ブリッジ)が挙げられる。各運動は20回×2セット実施し、個別に「ややきつい」と感じる強度になるようラバーバンドなどで負荷を上げることが好ましい。
【0067】
また、本発明の別の態様によれば、フレイル改善用組み合わせ物の製造における、乳たんぱく質、亜鉛、およびビタミンDの組み合わせ、または、乳たんぱく質、亜鉛、ビタミンD、ビタミンB12、および葉酸の組み合わせの使用が提供される。また、本発明の使用の好ましい一つの態様によれば、骨格筋量減少改善用組み合わせ物の製造における、乳たんぱく質、亜鉛、およびビタミンDの組み合わせ、または、乳たんぱく質、亜鉛、ビタミンD、ビタミンB12、および葉酸の組み合わせの使用として提供される。また、本発明の使用の好ましい別の一つの態様によれば、精神的健康度向上用組み合わせ物の製造における、乳たんぱく質、亜鉛、およびビタミンDの組み合わせ、または、乳たんぱく質、亜鉛、ビタミンD、ビタミンB12、および葉酸の組み合わせの使用として提供される。
【0068】
また、本発明の別の態様によれば、フレイル改善用組み合わせ物としての、乳たんぱく質、亜鉛、およびビタミンDの組み合わせ、または、乳たんぱく質、亜鉛、ビタミンD、ビタミンB12、および葉酸の組み合わせの使用が提供される。また、本発明の使用の好ましい一つの態様によれば、骨格筋量減少改善用組み合わせ物としての、乳たんぱく質、亜鉛、およびビタミンDの組み合わせ、または、乳たんぱく質、亜鉛、ビタミンD、ビタミンB12、および葉酸の組み合わせの使用として提供される。また、本発明の使用の好ましい別の一つの態様によれば、精神的健康度向上用組み合わせ物としての、乳たんぱく質、亜鉛、およびビタミンDの組み合わせ、または、乳たんぱく質、亜鉛、ビタミンD、ビタミンB12、および葉酸の組み合わせの使用として提供される。
【0069】
また、本発明の別の態様によれば、フレイルの改善のための、乳たんぱく質、亜鉛、およびビタミンDの組み合わせ、または、乳たんぱく質、亜鉛、ビタミンD、ビタミンB12、および葉酸の組み合わせの使用が提供される。また、本発明の使用の好ましい一つの態様によれば、骨格筋量減少の改善のための、乳たんぱく質、亜鉛、およびビタミンDの組み合わせ、または、乳たんぱく質、亜鉛、ビタミンD、ビタミンB12、および葉酸の組み合わせの使用が提供される。また、本発明の使用の好ましい別の一つの態様によれば、精神的健康度の向上のための、乳たんぱく質、亜鉛、およびビタミンDの組み合わせ、または、乳たんぱく質、亜鉛、ビタミンD、ビタミンB12、および葉酸の組み合わせの使用が提供される。
【0070】
また、本発明の別の態様によれば、乳たんぱく質、亜鉛、およびビタミンDの組み合わせ、または、乳たんぱく質、亜鉛、ビタミンD、ビタミンB12、および葉酸の組み合わせを組み合わせ物中に配合することを特徴とする、フレイル改善用組み合わせ物の製造方法が提供される。また、本発明の製造方法の好ましい一つの態様によれば、乳たんぱく質、亜鉛、およびビタミンDの組み合わせ、または、乳たんぱく質、亜鉛、ビタミンD、ビタミンB12、および葉酸の組み合わせを組み合わせ物中に配合することを特徴とする、骨格筋量減少改善用組み合わせ物の製造方法として提供される。また、本発明の製造方法の好ましい別の一つの態様によれば、乳たんぱく質、亜鉛、およびビタミンDの組み合わせ、または、乳たんぱく質、亜鉛、ビタミンD、ビタミンB12、および葉酸の組み合わせを組み合わせ物中に配合することを特徴とする、精神的健康度向上用組み合わせ物の製造方法として提供される。
【0071】
また、本発明の別の態様によれば、フレイル改善のための、乳たんぱく質、亜鉛、およびビタミンDの組み合わせ、または、乳たんぱく質、亜鉛、ビタミンD、ビタミンB12、および葉酸の組み合わせを(有効成分として)含む組み合わせ物が提供される。また、本発明の好ましい一つの態様によれば、骨格筋量の減少の改善のための、乳たんぱく質、亜鉛、およびビタミンDの組み合わせ、または、乳たんぱく質、亜鉛、ビタミンD、ビタミンB12、および葉酸の組み合わせを(有効成分として)含む組み合わせ物として提供される。また、本発明の好ましい別の一つの態様によれば、精神的健康度を向上させるための、乳たんぱく質、亜鉛、およびビタミンDの組み合わせ、または、乳たんぱく質、亜鉛、ビタミンD、ビタミンB12、および葉酸の組み合わせを(有効成分として)含む組み合わせ物として提供される。
【0072】
上記の使用、製造方法、組み合わせ物(組成物)の態様はいずれも、本発明の組成物や方法に関する記載に準じて実施することができる。
【実施例】
【0073】
以下、実施例により、本発明をより具体的に説明するが、本発明の技術範囲は、これらの例示に限定されるものではない。なお、特に記載しない限り、本発明で用いられる全部のパーセンテージや比率は質量による。また、特に記載しない限り、本明細書に記載の単位や測定方法はJIS規格による。
【0074】
例1:試験サンプル1の製造
原料水に、乳原料(脱脂濃縮乳((株)明治製)、クリーム((株)明治製)、ミルクプロテインコンセントレート(フォンテラ社製))、香料、酸化防止剤(ビタミンE)を配合して十分に混合してから均質化した。この得られた溶液を殺菌してから冷却して、液状の試験サンプル1(乳ベース)を調製した。試験サンプル1の組成を表1に示した。
【0075】
【表1】
【0076】
例2:試験サンプル2の製造
原料水に、鉄(クエン酸第一鉄ナトリウム(サンフェロール):エーザイフード・ケミカル(株)製)、亜鉛(グルコン酸亜鉛(ヘルシャスZn):扶桑化学工業(株)製)、葉酸(DSM Nutoritional Products社製)、ビタミンB12(シアノコバラミン:DSM Nutoritional Products社)、ビタミンD(コレカルシフェロール:DSM Nutoritional Products社)、みかん、オレンジ果汁、人参汁、甘味料、香料、pH 調整剤などを配合して十分に混合してから均質化した。この得られた溶液を殺菌してから冷却して、液状の試験サンプル2を調製した。試験サンプル2の組成を表2に示した。
【表2】
【0077】
試験例1:健常高齢者を対象とした運動・栄養介入試験
健常な高齢者(65歳〜80歳)の男女78名を運動群(40名、内男性7名)および運動+栄養群(38名、内男性5名)の2群に分けた。両群に対し、週2回の運動教室および日々の運動習慣励行からなる試験を実施した。この運動教室で実施した筋力トレーニングは、ラバーバンドや自重を利用し、上記高齢者自身がOMNI-RES質問紙で「ややきつい」と感じる程度に適宜強度を漸増して実施した。具体的なトレーニング内容としては、上肢を対象として、arm curls(二頭筋カール)、 shoulder lateral and front raises(ショルダー・ラテラル・アンド・フロント・ライズ)、 pull downs(プルダウン)、 およびラバーバンドを用いたrowing(ローイング)を実施した。下肢を対象として、standard and split squat(スタンダード・アンド・スプリット・スクワット)、 lunges(ランジ)、およびtoe and heel raises(トゥ・アンド・ヒール・ライズ)を立位で実施し、adductions(アダクション)、 knee extensions(膝の進展)を座位で実施した。体幹を対象として、座位でのknee lift(ニー・リフト)、crunches(腹筋運動)、 hip lifts(ヒップリフト)、およびfront elbow bridge(フロント・エルボー・ブリッジ)を実施した。各運動は20回×2セット実施し、個別に「ややきつい」と感じる強度になるようラバーバンドなどで負荷を上げた。また、上記筋力トレーニングは健常な高齢者においては比較的容易に継続が可能であることが確認された。試験後に、全体の80%以上の高齢者がこれからも運動を続けていく自信があると回答した。
運動+栄養群の高齢者のみに対して、例1で製造した試験サンプル1および例2で製造した試験サンプル2を1日に1本ずつなるべく朝、昼の食事と併せて経口摂取させた。
上記試験は3ヶ月続けられた。
【0078】
上記試験の開始前と終了後に血漿中のロイシン濃度を測定し、試験の開始前と終了後で比較した。具体的には、上記試験の開始前と終了後に、一晩絶食した後に高齢者の血液を採取し、血漿を得た。得られた血漿中のロイシン濃度をShimboらの方法(Biomedical Chromatography 2010; 24(7):683-691)に準じてHPLC/ESI-MS法にて測定した。
【0079】
上記試験の開始前および上記試験の終了後の血漿ロイシン濃度を図1に示した。なお、図1では、上記試験の開始前の血漿ロイシン濃度を100%としている。データは平均値±標準誤差を示す(運動+栄養群:102.5±2.6%、運動群:94.5±2.0%)。
その結果、運動群において、上記試験終了後の血漿ロイシン濃度は上記試験開始前の血漿ロイシン濃度に比べ有意に低下していた。一方、運動+栄養群において、上記試験開始前と終了後との間の血漿ロイシン濃度は維持されていた。なお、上記試験開始前と終了後の間の統計学的有意差は対応のあるt検定で解析した。
【0080】
上記試験の開始前と終了後において、骨格筋量の指標として除脂肪体重(Lean Body Mass)を二重エネルギーエックス線吸収法で測定し、試験の開始前と終了後で比較した。
上記試験の開始前および上記試験の終了後の除脂肪体重を図2に示した。なお、図2では、上記試験の開始前の除脂肪体重を100%としている。データは平均値±標準誤差を示す(運動+栄養群:100.5±0.3%、運動群:98.9±0.3%)。
その結果、試験終了後の運動群における除脂肪体重は、試験開始前の除脂肪体重に比べ有意に低下していた。一方、運動+栄養群において、上記試験開始前と終了後との間の除脂肪体重は維持されていた。なお、上記試験開始前と終了後の間の統計学的有意差は対応のあるt検定で解析した。
【0081】
上記試験の開始前と終了後における骨格筋指数(SMI:Skeletal Muscle Index)を算出し、試験の開始前と終了後で比較した。このSMIは、一般的に用いられている、四肢除脂肪重量/(身長)で算出した。また、四肢除脂肪重量は二重エネルギーエックス線吸収法で測定した。
上記試験の開始前のSMIを100%とした場合の試験終了後のSMIの比率を図3に示した。データは平均値±標準誤差を示す(運動+栄養群:101.2±0.6%、運動群:98.8±0.4%)。図3によれば、運動+栄養群が運動群と比較して有意に高かった。なお、運動+栄養群と運動群との間の統計学的有意差はWelchの検定で解析した。
【0082】
さらに、上記試験の開始前と終了後の高齢者の精神的健康度を、世界保健機関が推奨する精神的健康度の指標であるWHO−5精神的健康状態表を用いて評価した。
その結果、運動群ではWHO−5のスコアが変化しなかったのに対して、運動+栄養群では有意にスコアの上昇が認められた(図4)。図4のデータはスコアの平均値を示す。ここで、スコアの上昇は心理的状況の好転を示す。なお、上記試験開始前と終了後の間の統計学的有意差は対応のあるt検定で解析した。
【0083】
上記試験の開始前と終了後に定法で得た血清を用いて、血清25−ヒドロキシビタミンD(25−(OH)ビタミンD)濃度を放射性免疫測定法(2抗体法)で測定し、試験の開始前と終了後で比較した。なお、25−(OH)ビタミンDはビタミンDの代謝物の一つであり、ビタミンD栄養状態の指標である。
上記試験の開始前および上記試験の終了後の血清25−(OH)ビタミンD濃度を図5に示した。なお、図5では、上記試験の開始前の血清25−(OH)ビタミンD濃度を100%としている。
データは平均値±標準誤差を示す(運動+栄養群:159.0±7.9%、運動群:131.7±7.0%)。図5によれば、運動+栄養群が運動群と比較して有意に高かった。なお、運動+栄養群と運動群との間の統計学的有意差はStudentのt検定で解析した。
【0084】
上記試験の開始前と終了後に定法で得た血清を用いて、血清ビタミンB12濃度を化学発光酵素免疫測定法で測定し、試験の開始前と終了後で比較した。
上記試験の開始前および上記試験の終了後の血清ビタミンB12濃度を図6に示した。なお、図6では、上記試験の開始前の血清ビタミンB12濃度を100%としている。
データは平均値±標準誤差を示す(運動+栄養群:123.5±5.4%、運動群:99.6±2.9%)。図6によれば、運動+栄養群が運動群と比較して有意に高かった。なお、運動+栄養群と運動群との間の統計学的有意差はWelchの検定で解析した。
【0085】
上記試験の開始前と終了後に定法で得た血清を用いて、血清葉酸濃度を化学発光酵素免疫測定法で測定し、試験の開始前と終了後で比較した。
上記試験の開始前および上記試験の終了後の血清葉酸濃度を図7に示した。なお、図7では、上記試験の開始前の血清葉酸濃度を100%としている。
データは平均値±標準誤差を示す(運動+栄養群:247.3±17.5%、運動群:114.4±4.5%)。図7によれば、運動+栄養群が運動群と比較して有意に高かった。なお、運動+栄養群と運動群との間の統計学的有意差はWelchの検定で解析した。
【0086】
上記試験の開始前と終了後に、定法で得た血清を用いて、血清亜鉛濃度を原子吸光分析法で測定し、試験の開始前と終了後で比較した。
上記試験の開始前および上記試験の終了後の血清亜鉛濃度を図8に示した。なお、図8では、上記試験の開始前の血清亜鉛濃度を100%としている。
データは平均値±標準誤差を示す(運動+栄養群:97.3±1.7%、運動群:95.5 ±1.8%)。図8によれば、運動+栄養群では変化が有意でないが、運動のみ群では有意に亜鉛濃度が減少している。なお、上記試験開始前と終了後の間の統計学的有意差は対応のあるt検定で解析した。
【0087】
上述の様に、試験例1において、運動+栄養群では、血中の25−(OH)−ビタミンD、ビタミンB12、および葉酸濃度が、運動群に比べ、有意に増加することが確認された。また、運動+栄養群では、血中の亜鉛濃度の減少が抑制されることが確認された。
【0088】
血漿ロイシン濃度、除脂肪体重、骨格筋指数の結果から、本発明の試験サンプル1および試験サンプル2は自身が継続可能なレベルの筋力トレーニングとともに生活に取り入れることで、サルコペニアを改善できることが示唆された。また、WHO−5のスコアの結果も考慮すると、本発明の試験サンプル1および試験サンプル2はサルコペニア改善と心理状態の改善を同時に成し遂げており、フレイルの改善法として有効であることが示された。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8