特許第6948382号(P6948382)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6948382全固体二次電池及びその製造方法、並びに全固体二次電池用固体電解質シート及び全固体二次電池用正極活物質シート
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6948382
(24)【登録日】2021年9月22日
(45)【発行日】2021年10月13日
(54)【発明の名称】全固体二次電池及びその製造方法、並びに全固体二次電池用固体電解質シート及び全固体二次電池用正極活物質シート
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/058 20100101AFI20210930BHJP
   H01M 10/0562 20100101ALI20210930BHJP
   H01M 4/13 20100101ALI20210930BHJP
【FI】
   H01M10/058
   H01M10/0562
   H01M4/13
【請求項の数】16
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2019-505893(P2019-505893)
(86)(22)【出願日】2018年3月5日
(86)【国際出願番号】JP2018008327
(87)【国際公開番号】WO2018168550
(87)【国際公開日】20180920
【審査請求日】2019年6月4日
(31)【優先権主張番号】特願2017-47772(P2017-47772)
(32)【優先日】2017年3月13日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002631
【氏名又は名称】特許業務法人イイダアンドパートナーズ
(74)【代理人】
【識別番号】100076439
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 敏三
(74)【代理人】
【識別番号】100161469
【弁理士】
【氏名又は名称】赤羽 修一
(72)【発明者】
【氏名】今井 真二
【審査官】 森 透
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2014/0011069(US,A1)
【文献】 特開2015−230812(JP,A)
【文献】 特開2017−010627(JP,A)
【文献】 特開2003−249265(JP,A)
【文献】 特開2005−005163(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/058
H01M 10/0562
H01M 4/13
H01M 50/572
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電池要素部材を有する全固体二次電池であって、
前記電池要素部材は、少なくとも負極集電体、固体電解質層、正極活物質層及び正極集電体を有し、
前記電池要素部材の端部に、少なくとも前記電池要素部材の端部を被覆していて、25℃におけるヤング率が1GPa以上である無機絶縁被覆体が配されていて、
前記無機絶縁被覆体は、無機絶縁粒子と、100℃において固体であり、200℃以下の温度領域において溶融する絶縁性無機材料の溶融凝固体からなり、
前記無機絶縁被覆体は、有機バインダーを含む、
全固体二次電池。
【請求項2】
電池要素部材を有する全固体二次電池であって、
前記電池要素部材は、少なくとも負極集電体、固体電解質層、正極活物質層及び正極集電体を有し、
前記電池要素部材の端部に、少なくとも前記電池要素部材の端部を被覆していて、25℃におけるヤング率が1GPa以上である無機絶縁被覆体が配されていて、
前記無機絶縁被覆体は、無機絶縁粒子と、100℃において固体であり、200℃以下の温度領域において溶融する絶縁性無機材料の溶融凝固体からなり、
前記無機絶縁被覆体中の前記無機絶縁粒子の含有量が50〜90質量%であ
前記無機絶縁被覆体を構成する無機絶縁粒子が下記(a)又は(b)又は(c)である、全固体二次電池
(a)酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化ケイ素、ゼオライト、立方晶窒化ホウ素、六方晶窒化ホウ素、及び酸化セリウムから選ばれる無機絶縁粒子;
(b)250℃では溶融しない無機絶縁粒子;
(c)溶融凝固体ではない無機絶縁粒子
【請求項3】
前記電池要素部材が内部に挿入されている電池外装体を有する、請求項1又は2に記載の全固体二次電池。
【請求項4】
前記無機絶縁粒子は、体積平均粒子径が1μm以下の酸化アルミニウムである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の全固体二次電池。
【請求項5】
前記絶縁性無機材料は、硫黄及び/又は改質硫黄を含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載の全固体二次電池。
【請求項6】
前記無機絶縁被覆体が、充放電時に負極端部から成長する金属リチウムの成長を阻止する、請求項1〜5のいずれか1項に記載の全固体二次電池。
【請求項7】
電池外装体内に、少なくとも負極集電体と、固体電解質層と、正極活物質層と、正極集電体とを含む電池要素部材を配する工程と、
前記電池外装体内の空間に、無機絶縁粒子と、100℃において固体であり200℃以下の温度領域において溶融する絶縁性無機材料と、有機バインダーを前記電池要素部材の端部に配する工程と、
200℃以下の温度領域において前記電池外装体を加熱して、前記絶縁性無機材料を溶融凝固させて、前記電池要素部材の端部を被覆する工程と、を含む請求項1に記載の全固体二次電池の製造方法。
【請求項8】
電池外装体内に、少なくとも負極集電体と、固体電解質層と、正極活物質層と、正極集電体とを含む電池要素部材を配する工程と、
前記電池外装体内の空間に、無機絶縁粒子と、100℃において固体であり200℃以下の温度領域において溶融する絶縁性無機材料を前記電池要素部材の端部に配する工程と、
200℃以下の温度領域において前記電池外装体を加熱して、前記絶縁性無機材料を溶融凝固させて、前記電池要素部材の端部を被覆する工程と、を含
前記無機絶縁粒子が下記(a)又は(b)又は(c’)であり:
(a)酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化ケイ素、ゼオライト、立方晶窒化ホウ素、六方晶窒化ホウ素、及び酸化セリウムから選ばれる無機絶縁粒子;
(b)250℃では溶融しない無機絶縁粒子;
(c’)前記の電池要素部材の端部を被覆する工程において溶融しない無機絶縁粒子;
前記の電池要素部材の端部を被覆する工程により形成される無機絶縁被覆体中の前記無機絶縁粒子の含有量を50〜90質量%とする、
請求項2に記載の全固体二次電池の製造方法。
【請求項9】
請求項1に記載の全固体二次電池に用いられる固体電解質シートであって、
固体電解質層と、前記固体電解質層の端部を被覆した無機絶縁被覆体とを有し、
前記無機絶縁被覆体は、無機絶縁粒子と、100℃において固体であり、200℃以下の温度領域において溶融する絶縁性無機材料の溶融凝固体と、有機バインダーからなり、25℃におけるヤング率が1GPa以上である、全固体二次電池用固体電解質シート。
【請求項10】
請求項2に記載の全固体二次電池に用いられる固体電解質シートであって、
固体電解質層と、前記固体電解質層の端部を被覆した無機絶縁被覆体とを有し、
前記無機絶縁被覆体は、無機絶縁粒子と、100℃において固体であり、200℃以下の温度領域において溶融する絶縁性無機材料の溶融凝固体からなり、25℃におけるヤング率が1GPa以上であり、
前記無機絶縁被覆体中の前記無機絶縁粒子の含有量が50〜90質量%であ
前記無機絶縁被覆体を構成する無機絶縁粒子が下記(a)又は(b)又は(c)である、全固体二次電池用固体電解質シート
(a)酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化ケイ素、ゼオライト、立方晶窒化ホウ素、六方晶窒化ホウ素、及び酸化セリウムから選ばれる無機絶縁粒子;
(b)250℃では溶融しない無機絶縁粒子;
(c)溶融凝固体ではない無機絶縁粒子
【請求項11】
前記絶縁性無機材料は、硫黄及び/又は改質硫黄を含む、請求項9又は10記載の全固体二次電池用固体電解質シート。
【請求項12】
前記無機絶縁粒子は、酸化アルミニウムである、請求項9〜11のいずれか1項に記載の全固体二次電池用固体電解質シート。
【請求項13】
請求項1に記載の全固体二次電池に用いられる正極活物質シートであって、
正極活物質層と、前記正極活物質層の両端部を被覆する無機絶縁被覆体を有し、
前記無機絶縁被覆体は、無機絶縁粒子と、100℃において固体であり、200℃以下の温度領域において溶融する絶縁性無機材料の溶融凝固体と、有機バインダーからなり、25℃におけるヤング率が1GPa以上である、全固体二次電池用正極活物質シート。
【請求項14】
請求項2に記載の全固体二次電池に用いられる正極活物質シートであって、
正極活物質層と、前記正極活物質層の両端部を被覆する無機絶縁被覆体を有し、
前記無機絶縁被覆体は、無機絶縁粒子と、100℃において固体であり、200℃以下の温度領域において溶融する絶縁性無機材料の溶融凝固体からなり、25℃におけるヤング率が1GPa以上であり、
前記無機絶縁被覆体中の前記無機絶縁粒子の含有量が50〜90質量%であ
前記無機絶縁被覆体を構成する無機絶縁粒子が下記(a)又は(b)又は(c)である、全固体二次電池用正極活物質シート
(a)酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化ケイ素、ゼオライト、立方晶窒化ホウ素、六方晶窒化ホウ素、及び酸化セリウムから選ばれる無機絶縁粒子;
(b)250℃では溶融しない無機絶縁粒子;
(c)溶融凝固体ではない無機絶縁粒子
【請求項15】
前記絶縁性無機材料は、硫黄及び/又は改質硫黄を含む、請求項13又は14に記載の全固体二次電池用正極活物質シート。
【請求項16】
前記無機絶縁粒子は、酸化アルミニウムである、請求項13〜15のいずれか1項に記載の全固体二次電池用正極活物質シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、全固体二次電池及びその製造方法に関する。また本発明は、全固体二次電池用固体電解質シート及び全固体二次電池用正極活物質シートに関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン二次電池は、負極と、正極と、負極と正極との間に挟まれた電解質とを有し、両極間にリチウムイオンを往復移動させることにより充電と放電を可能とした蓄電池である。リチウムイオン二次電池には従来から、電解質として有機電解液が用いられてきた。しかし有機電解液は液漏れを生じやすく、また、過充電、過放電により電池内部で短絡が生じ発火するおそれもあり、信頼性と安全性のさらなる向上が求められている。
このような状況下、有機電解液に代えて、不燃性の無機固体電解質を用いた全固体二次電池の開発が進められている。全固体二次電池は負極、電解質及び正極のすべてが固体からなり、有機電解液を用いた電池の課題とされる安全性ないし信頼性を大きく改善することができ、また長寿命化も可能になるとされる。
【0003】
リチウムイオン二次電池は、充電時には正極から負極へと電子が移動し、同時に正極を構成するリチウム酸化物等からリチウムイオンが放出され、このリチウムイオンは電解質を通って負極へと到達して負極に溜め込まれる。こうして負極に溜め込まれたリチウムイオンの一部は電子を取り込み金属リチウムとして析出する現象が生じる。この金属リチウムの析出物が充放電の繰り返しによりデンドライト状に成長してしまうと、やがて正極へと達し、内部短絡が生じて二次電池として機能しなくなってしまう。デンドライトは非常に細く、電解質として固体を用いる全固体二次電池においても、固体電解質層に生じた亀裂ないしピンホール等を通って成長しうる。したがって、全固体二次電池においてもデンドライトの成長を阻止することは、電池を長寿命化する上で重要である。
デンドライトによる内部短絡の問題に対処すべく特許文献1には、固体電解質層中に単体硫黄を過剰に添加し、デンドライトの成長を単体硫黄により阻止する技術が記載されている。特許文献1記載の技術では、固体電解質粉末に単体硫黄を均一に分散させた混合物を用いて固体電解質層を形成しているため、この固体電解質層は単体硫黄粉末と固体電解質粉末との混合物からなる形態である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2011/010552号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1記載の技術は、デンドライトの負極から正極に向けた成長を阻止することを目的としている。しかし本発明者が検討を重ねた結果、全固体二次電池は充放電を繰り返すことにより、活物質の膨張収縮が繰り返され、デンドライトが電池要素端部から徐々にはみ出ることによって電池容量が低下する場合があることがわかってきた。そして、はみ出たデンドライトが、正極や電池外装体と短絡する懸念もあることがわかってきた。
また本発明者は、全固体電池が圧壊加重を受けて電池外装体が変形し、電池外装体にクラック等が生じた際に、負極層や正極層の端部から内部へと徐々に水分が混入しうることにも着目するに至った。固体電解質として硫化物系電解質を用いた場合には、水分と電解質とが反応し、毒性を有する硫化水素が発生する懸念がある。
【0006】
本発明は、金属リチウム等のデンドライトが電極端部から徐々にはみ出ることを阻止して、電池容量の低下を抑え、また、デンドライトと正極ないし電池外装体との接触による短絡を防ぐことができる全固体二次電池及びその製造方法を提供することを課題とする。また本発明は、全固体電池に圧壊加重が加わるなどして電池外装体にクラック等が生じた場合でも、水分の侵入を効果的に防いで硫化水素(HS)の発生を抑えることができる全固体二次電池及びその製造方法を提供することを課題とする。また本発明は、上記全固体二次電池を得ることを可能とする全固体二次電池用固体電解質シート及び全固体二次電池用正極活物質シートを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は上記課題に鑑み鋭意検討を重ねた結果、充放電の繰り返しにより負極から析出して成長してくるデンドライトが電池端部からはみ出してくる現象を、少なくとも電池端部を特定の無機絶縁被覆体で被覆することにより効果的に阻止することができる。その結果、電池容量の低下を抑えることができ、また内部短絡を十分に抑制できることを見出した。また、この電池端部の被覆によって、電池外装体にクラック等が生じた場合にも、電解質への水分の侵入を阻止することができるとの着想に至った。硫化水素の発生を抑えることができることを見出した。本発明はこれらの知見に基づき更に検討を重ね、完成されるに至ったものである。
【0008】
すなわち、上記の課題は以下の手段により解決された。
〔1〕
電池要素部材を有する全固体二次電池であって、
上記電池要素部材は、少なくとも負極集電体、固体電解質層、正極活物質層及び正極集電体を有し、
上記電池要素部材の端部に、少なくとも上記電池要素部材の端部を被覆していて、25℃におけるヤング率が1GPa以上である無機絶縁被覆体が配されていて、
上記無機絶縁被覆体は、無機絶縁粒子と、100℃において固体であり、200℃以下の温度領域において溶融する絶縁性無機材料の溶融凝固体からなり、
上記無機絶縁被覆体は、有機バインダーを含む、
全固体二次電池。
〔2〕
電池要素部材を有する全固体二次電池であって、
上記電池要素部材は、少なくとも負極集電体、固体電解質層、正極活物質層及び正極集電体を有し、
上記電池要素部材の端部に、少なくとも上記電池要素部材の端部を被覆していて、25℃におけるヤング率が1GPa以上である無機絶縁被覆体が配されていて、
上記無機絶縁被覆体は、無機絶縁粒子と、100℃において固体であり、200℃以下の温度領域において溶融する絶縁性無機材料の溶融凝固体からなり、
上記無機絶縁被覆体中の上記無機絶縁粒子の含有量が50〜90質量%であ
前記無機絶縁被覆体を構成する無機絶縁粒子が下記(a)又は(b)又は(c)である、全固体二次電池
(a)酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化ケイ素、ゼオライト、立方晶窒化ホウ素、六方晶窒化ホウ素、及び酸化セリウムから選ばれる無機絶縁粒子;
(b)250℃では溶融しない無機絶縁粒子;
(c)溶融凝固体ではない無機絶縁粒子
〔3〕
上記電池要素部材が内部に挿入されている電池外装体を有する、〔1〕又は〔2〕に記載の全固体二次電池。
〔4〕
上記無機絶縁粒子は、体積平均粒子径が1μm以下の酸化アルミニウムである、〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載の全固体二次電池。
〔5〕
上記絶縁性無機材料は、硫黄及び/又は改質硫黄を含む、〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載の全固体二次電池。
〔6〕
上記無機絶縁被覆体が、充放電時に負極端部から成長する金属リチウムの成長を阻止する、〔1〕〜〔5〕のいずれかに記載の全固体二次電池。
〔7〕
電池外装体内に、少なくとも負極集電体と、固体電解質層と、正極活物質層と、正極集電体とを含む電池要素部材を配する工程と、
上記電池外装体内の空間に、無機絶縁粒子と、100℃において固体であり200℃以下の温度領域において溶融する絶縁性無機材料と、有機バインダーを上記電池要素部材の端部に配する工程と、
200℃以下の温度領域において上記電池外装体を加熱して、上記絶縁性無機材料を溶融凝固させて、上記電池要素部材の端部を被覆する工程とを含む、〔1〕に記載の全固体二次電池の製造方法。
〔8〕
電池外装体内に、少なくとも負極集電体と、固体電解質層と、正極活物質層と、正極集電体とを含む電池要素部材を配する工程と、
上記電池外装体内の空間に、無機絶縁粒子と、100℃において固体であり200℃以下の温度領域において溶融する絶縁性無機材料を上記電池要素部材の端部に配する工程と、
200℃以下の温度領域において上記電池外装体を加熱して、上記絶縁性無機材料を溶融凝固させて、上記電池要素部材の端部を被覆する工程と、を含
前記無機絶縁粒子が下記(a)又は(b)又は(c’)であり:
(a)酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化ケイ素、ゼオライト、立方晶窒化ホウ素、六方晶窒化ホウ素、及び酸化セリウムから選ばれる無機絶縁粒子;
(b)250℃では溶融しない無機絶縁粒子;
(c’)前記の電池要素部材の端部を被覆する工程において溶融しない無機絶縁粒子;
前記の電池要素部材の端部を被覆する工程により形成される無機絶縁被覆体中の前記無機絶縁粒子の含有量を50〜90質量%とする、
〔2〕に記載の全固体二次電池の製造方法。
〔9〕
〔1〕に記載の全固体二次電池に用いる固体電解質シートであって、
固体電解質層と、この固体電解質層の端部を被覆した無機絶縁被覆体とを有し、
上記無機絶縁被覆体は、無機絶縁粒子と、100℃において固体であり、200℃以下の温度領域において溶融する絶縁性無機材料の溶融凝固体と、有機バインダーからなり、25℃におけるヤング率が1GPa以上である、全固体二次電池用固体電解質シート。
〔10〕
〔2〕に記載の全固体二次電池に用いられる固体電解質シートであって、
固体電解質層と、上記固体電解質層の端部を被覆した無機絶縁被覆体とを有し、
上記無機絶縁被覆体は、無機絶縁粒子と、100℃において固体であり、200℃以下の温度領域において溶融する絶縁性無機材料の溶融凝固体とからなり、25℃におけるヤング率が1GPa以上であり、
上記無機絶縁被覆体中の上記無機絶縁粒子の含有量が50〜90質量%であ
前記無機絶縁被覆体を構成する無機絶縁粒子が下記(a)又は(b)又は(c)である、全固体二次電池用固体電解質シート
(a)酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化ケイ素、ゼオライト、立方晶窒化ホウ素、六方晶窒化ホウ素、及び酸化セリウムから選ばれる無機絶縁粒子;
(b)250℃では溶融しない無機絶縁粒子;
(c)溶融凝固体ではない無機絶縁粒子
〔11〕
上記絶縁性無機材料は、硫黄及び/又は改質硫黄を含む、〔9〕又は〔10〕に記載の全固体二次電池用固体電解質シート。
〔12〕
上記無機絶縁粒子は、酸化アルミニウムである、〔9〕〜〔11〕のいずれかに記載の全固体二次電池用固体電解質シート。
〔13〕
〔1〕に記載の全固体二次電池に用いられる正極活物質シートであって、
正極活物質層と、この正極活物質層の両端部を被覆する無機絶縁被覆体を有し、
上記無機絶縁被覆体は、無機絶縁粒子と、100℃において固体であり、200℃以下の温度領域において溶融する絶縁性無機材料の溶融凝固体と、有機バインダーからなり、25℃におけるヤング率が1GPa以上である、全固体二次電池用正極活物質シート。
〔14〕
〔2〕に記載の全固体二次電池に用いられる正極活物質シートであって、
正極活物質層と、上記正極活物質層の両端部を被覆する無機絶縁被覆体を有し、
上記無機絶縁被覆体は、無機絶縁粒子と、100℃において固体であり、200℃以下の温度領域において溶融する絶縁性無機材料の溶融凝固体からなり、25℃におけるヤング率が1GPa以上であり、
上記無機絶縁被覆体中の上記無機絶縁粒子の含有量が50〜90質量%であ
前記無機絶縁被覆体を構成する無機絶縁粒子が下記(a)又は(b)又は(c)である、全固体二次電池用正極活物質シート
(a)酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化ケイ素、ゼオライト、立方晶窒化ホウ素、六方晶窒化ホウ素、及び酸化セリウムから選ばれる無機絶縁粒子;
(b)250℃では溶融しない無機絶縁粒子;
(c)溶融凝固体ではない無機絶縁粒子
〔15〕
上記絶縁性無機材料は、硫黄及び/又は改質硫黄を含む、〔13〕又は〔14〕に記載の全固体二次電池用正極活物質シート。
〔16〕
上記無機絶縁粒子は、酸化アルミニウムである、〔13〕〜〔15〕のいずれかに記載の全固体二次電池用正極活物質シート。
【0009】
本発明において、「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の全固体二次電池は、充放電時における電池要素部材端部からのデンドライトのはみだしを効果的に阻止して電池容量の低下を抑えることができ、また、デンドライトと正極ないし電池外装体との接触による短絡を防ぐことができる。更に全固体二次電池に圧壊加重が加わり、電池にクラック等が生じた場合であっても、硫化水素(HS)の発生を抑えることができる。
また本発明の全固体二次電池の製造方法によれば、充電時に電池要素部材端部からのデンドライトのはみだしを効果的に阻止して電池容量の低下を抑え、また、デンドライトと正極ないし電池外装体との短絡を防ぐ全固体二次電池を得ることができる。更に全固体二次電池に圧壊加重が加わり、電池にクラック等が生じた場合でも、硫化水素(HS)の発生を抑えた全固体二次電池を得ることができる。
更に、本発明の全固体二次電池用固体電解質シート及び全固体二次電池用正極活物質シートは、本発明の全固体二次電池の部材(層)として好適に用いることができる。
【0011】
本発明の上記及び他の特徴及び利点は、下記の記載及び添付の図面からより明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】一般的な全固体二次電池の基本構成を模式化して示す縦断面図である。
図2】本発明の好ましい実施形態に係る円筒型全固体二次電池を模式化して示す縦断面図及び図2中のA部拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の全固体二次電池は、電池要素部材端部が無機絶縁被覆体によって被覆されており、この無機絶縁被覆体によって電池要素部材端部からはみ出そうとするデンドライトの成長を効果的に阻止することができる。本発明において「絶縁」とは、電子絶縁性を有すること、すなわち電子を通過させない性質をいう。また本発明において、「絶縁」、「絶縁性」もしくは「電子絶縁性」という場合、電気伝導率が、測定温度25℃において10−9S(ジーメンス)/cm以下の材料であることが好ましい。
以下、本発明の好ましい一実施形態について図1〜2を参照して説明する。
【0014】
[全固体二次電池]
図1に一般的な全固体二次電池の基本構成を示す。図1に示すように、本実施形態の全固体二次電池10は、負極側からみて、負極集電体1、負極活物質層2、固体電解質層3、正極活物質層4及び正極集電体5を、この順に積層した構造を有する。各層において隣接する層同士は直に接触している。
上記構造によって、充電時には、負極側に電子(e)が供給され、同時に正極活物質を構成するアルカリ金属又はアルカリ土類金属がイオン化する。イオン化したイオンは、固体電解質層3を通過(伝導)して移動し、負極に蓄積される。例えば、リチウムイオン二次電池においては負極にリチウムイオン(Li)が蓄積される。
放電時には、負極に蓄積された上記のアルカリ金属イオン又はアルカリ土類金属イオンが正極側に戻され、作動部位6に電子を供給する。図示例では、作動部位6に電球を採用しており、放電によりこれが点灯するようにされている。
【0015】
また、本発明の全固体二次電池は、負極活物質層2を有さずに、固体電解質層3と負極集電体1とが直に接する形態とすることも好ましい。この形態の全固体二次電池では、充電時に負極に蓄積したアルカリ金属イオン又はアルカリ土類金属イオンの一部が電子と結合し、金属として負極集電体表面に析出する現象を利用する。すなわち、この形態の全固体二次電池は、負極表面に析出した金属を負極活物質層として機能させる。例えば金属リチウムは、負極活物質として汎用されている黒鉛に比べて10倍以上の理論容量を有するとされている。したがって、負極に金属リチウムを析出させてこの析出した金属リチウムに固体電解質層を押しつけた形態とすることにより、集電体表面に金属リチウムの層を形成することができ、高容量、高エネルギー密度の二次電池を実現することが可能になるとされる。
また、負極活物質層を取り除いた形態の全固体二次電池は、電池の厚さが薄くなるために、電池をロール状に巻いた形態とする場合には、固体電解質層の亀裂等の発生をより抑えることが可能になる利点もある。また、巻き数を増やすことができるため、電池容量を増加させることができる。
なお、本発明において負極活物質層を有しない形態の全固体二次電池とは、あくまで電池製造における層形成工程において負極活物質層を形成しないことを意味する。そして、上記の通り、充電により固体電解質層と負極集電体との間に負極活物質層が形成されるものである。
【0016】
図2に示すように、円筒型の全固体二次電池30は、図1に示した層構成を円筒型の形態で実現したものである。円筒型の全固体二次電池30は、図1に示した層構成を基本単位とする発電要素が軸22の周りに積層状に配されているもので、この積層体によって電池要素部材21が構成されている。すなわち、電池要素部材21は、少なくとも負極集電体21d、固体電解質層21a、正極活物質層21c及び正極集電体21bを有する。なお、図2に示す形態は、負極集電体21d、負極活物質層21e、固体電解質層21a、正極活物質層21c及び正極集電体21bがこの順に積層された発電要素が複層化されたものである。この円筒型の全固体二次電池30において、接する2つの発電要素は集電体1つを共有する形態となる。すなわち、1つの集電体の両面に負極活物質層が設けられ、また1つの集電体の両面に正極活物質層が設けられた形態となる。
更に、円筒型の全固体二次電池30は、必要により電池外装体となる電池カバー23を備えていてもよい。
電池カバー23内には、上記電池要素部材21の端部を少なくとも被覆する、25℃におけるヤング率が1GPa以上である無機絶縁被覆体24が配されている。
更に、電池要素部材21の正極集電体21bは電気的に接続する正極タブ25を介して電池正極に接続され、電池要素部材21の負極集電体21dは電気的に接続する負極タブ27を介して電池負極28に接続されている。
図2に示した積層構造を成すことにより、高電池容量とすることが可能になる。
【0017】
本発明の全固体二次電池において、正極活物質層、固体電解質層、負極活物質層の厚さは特に限定されない。一般的な電池の寸法を考慮すると、上記各層の厚さは10〜1000μmが好ましく、20μm以上500μm未満がより好ましい。
【0018】
本発明において、正極活物質層と負極活物質層とを合わせて電極層と称することがある。正極活物質層には正極活物質が含有され、負極活物質層には負極活物質が含有される。正極活物質及び負極活物質のいずれかを示すのに、あるいは両方を合わせて示すのに、単に活物質又は電極活物質と称することがある。固体電解質層は通常は正極活物質及び/又は負極活物質を含まない。固体電解質層を構成する無機固体電解質、もしくは固体電解質層を構成する無機固体電解質と活物質との組み合わせを無機固体電解質材料という。
【0019】
(無機絶縁被覆体)
上記無機絶縁被覆体は、無機絶縁粒子と、絶縁性無機材料とを有している。絶縁性無機材料としては、電子絶縁性を有し、100℃において固体(すなわち融点が100℃越え)である一方、200℃以下の温度領域において熱溶融する物性をもつ無機材料である。「200℃以下の温度領域において熱溶融する」とは、1気圧下において、200℃以下の温度領域で熱溶融することを意味する。
この絶縁性無機材料を用いることにより、絶縁性無機材料が溶融する温度まで容易に加熱することができる。この加熱により、溶融した絶縁性無機材料が電池要素部材の端部を被覆するように広がる。それとともに、溶融した絶縁性無機材料を毛細管現象によって電池要素部材内の隙間へと移動させることもできる。その後冷却して絶縁性無機材料を固化させることにより、電池要素部材端部の形状に沿って事実上隙間なく、電子絶縁性材料を被覆した状態を作り出すことができる。
すなわち、本発明の全固体二次電池において、無機絶縁被覆体は、100℃において固体状態でかつ200℃以下の温度領域で熱溶融する絶縁性無機材料の熱溶融凝固物を用いて形成されたものである。
【0020】
本発明において、無機絶縁被覆体は、デンドライトの成長を阻止するために、固体状態においてデンドライトよりも硬い材料からなることが好ましい。そのため、本発明において無機絶縁被覆体のヤング率は1GPa以上であり、4〜400GPaであることが好ましい。
上記無機絶縁被覆体を構成する上記の絶縁性無機材料として、硫黄及び/又は改質硫黄、ヨウ素、ヨウ素と硫黄の混合物などが挙げられ、硫黄及び/又は改質硫黄を好適に用いることができる。絶縁性無機材料として用いうる硫黄は単体硫黄そのものを意味する。
また、改質硫黄は、硫黄と改質剤とを混練して得られるものである。例えば、純硫黄と改質添加剤であるオレフィン系ポリマーとを混練し、硫黄の一部を硫黄ポリマーに改質した改質硫黄を得ることができる。なお、改質硫黄は有機ポリマーを含み得るものであるが、本発明において「改質硫黄」は無機材料に含まれるものとする。 無機絶縁被覆体に硫黄ないし改質硫黄が存在することによって、無機絶縁被覆体に対して成長してきたデンドライト(アルカリ金属ないしアルカリ土類金属)をより効果的に阻止することができる。
【0021】
また、デンドライトと硫黄とが接触すると、デンドライトと硫黄とが反応する。例えば金属リチウムのデンドライトと硫黄とが接触すると、2Li+S→LiSの反応が生じ、無機絶縁被覆体においてデンドライトの成長が止まる。この反応によって、無機絶縁被覆体中には反応生成物も共存した状態となる。この反応生成物はデンドライト金属よりも硬い電子絶縁性の化合物であるため、デンドライトの成長を阻止することができる。すなわち、上記無機絶縁被覆体は、上記の反応により生じたアルカリ金属を含む化合物及び/又はアルカリ土類金属を含む化合物を含有する形態であることも好ましい。このような形態をとることにより、無機絶縁被覆体の体積が広がり、無機絶縁被覆体中の粒子間、あるいは無機絶縁被覆体と電池要素部材とのわずかな隙間も塞ぐ効果が期待できる。したがって、無機絶縁被覆体によって、電池要素部材の端部を確実に被覆することができる。
無機絶縁被覆体中、上記絶縁性無機材料の含有量は5〜50質量%が好ましく、10〜50質量%がより好ましく、10〜20質量%が更に好ましい。
【0022】
上記無機絶縁被覆体は、有機バインダーを含有してもよい。有機バインダーを含有することにより、粒子同士の結着性等を高めることができ、よりまとまりのある層構成とすることができるため好ましい。
【0023】
(有機バインダー)
上記有機バインダーとしては有機ポリマーが挙げられる。例えば、以下に述べる樹脂からなる有機バインダーが好ましく使用される。
【0024】
含フッ素樹脂としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリビニレンジフルオリド(PVdF)、ポリビニレンジフルオリドとヘキサフルオロプロピレンとの共重合体(PVdF−HFP)が挙げられる。
炭化水素系熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、スチレンブタジエンゴム(SBR)、水素添加スチレンブタジエンゴム(HSBR)、ブチレンゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、ポリブタジエン、ポリイソプレンが挙げられる。
アクリル樹脂としては、各種の(メタ)アクリルモノマー類、(メタ)アクリルアミドモノマー類、及びこれら樹脂を構成するモノマーの共重合体(好ましくは、アクリル酸とアクリル酸メチルとの共重合体)が挙げられる。
また、そのほかのビニル系モノマーとの共重合体(コポリマー)も好適に用いられる。例えば、(メタ)アクリル酸メチルとスチレンとの共重合体、(メタ)アクリル酸メチルとアクリロニトリルとの共重合体、(メタ)アクリル酸ブチルとアクリロニトリルとスチレンとの共重合体が挙げられる。本願明細書において、コポリマーは、統計コポリマー及び周期コポリマーのいずれでもよく、ブロックコポリマーが好ましい。
その他の樹脂としては例えばポリウレタン樹脂、ポリウレア樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリカーボネート樹脂、セルロース誘導体樹脂等が挙げられる。
これらは1種を単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0025】
上記有機バインダーは、強い結着性を示す、集電体からの剥離抑制及び、固体界面の結着によるサイクル寿命の向上のため、上述の樹脂が選択される。すなわち、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリウレア樹脂、ポリイミド樹脂、含フッ素樹脂及び炭化水素系熱可塑性樹脂からなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0026】
上記有機バインダーは、粒子表面への濡れ性や吸着性を高めるため、極性基を有することが好ましい。極性基とは、ヘテロ原子を含む1価の基、例えば、酸素原子、窒素原子及び硫黄原子のいずれかと水素原子が結合した構造を含む1価の基が好ましく、具体例としては、カルボキシ基、ヒドロキシ基、アミノ基、リン酸基及びスルホ基が挙げられる。
【0027】
上記有機バインダーの平均粒子径は、通常10nm〜30μmが好ましく、10〜1000nmのナノ粒子がより好ましい。
【0028】
上記有機バインダーの重量平均分子量(Mw)は10,000以上が好ましく、20,000以上がより好ましく、30,000以上が更に好ましい。上限としては、1,000,000以下が好ましく、200,000以下がより好ましく、100,000以下が更に好ましい。
上記無機絶縁被覆体が有機バインダーを含む場合、無機絶縁被覆体中の有機バインダーの含有量として、0.5〜6質量%が好ましく、1〜3質量%がより好ましい。
【0029】
本発明において、無機絶縁被覆体は上記絶縁性無機材料の他に、上記絶縁性無機材料とは異なる無機絶縁粒子を含むことが好ましい。この無機絶縁粒子もデンドライトの成長を阻止する作用を有する。この無機絶縁粒子として、例えば、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化ケイ素、ゼオライト、立方晶窒化ホウ素、六方晶窒化ホウ素、酸化セリウム等を挙げることができる。この無機絶縁粒子は通常は微粒子であり、その体積平均粒子径は1μm以下が好ましく、700nm以下がより好ましい。これらの材料を無機絶縁被覆体内に存在させることにより、熱溶融物が毛細管現象によって無機絶縁被覆体の隙間に染み込みやすくなり、より隙間が少ないデンドライト耐性の高い状態とすることができる。
無機絶縁被覆体中、無機絶縁粒子の含有量は50〜90質量%とすることが好ましく、70〜85質量%とすることがより好ましい。
【0030】
(固体電解質層)
本発明の固体電解質層は、無機固体電解質材料を含む。固体電解質層を構成する無機固体電解質材料は、無機固体電解質であるか、あるいは無機固体電解質と活物質との混合物であり、通常は無機固体電解質からなる。無機固体電解質の好ましい形態について以下に説明する。なお、活物質については後述する。
【0031】
無機固体電解質とは、無機の固体電解質のことであり、固体電解質とは、その内部においてイオンを移動させることができる固体状の電解質のことである。主たるイオン伝導性材料として有機物を含むものではないことから、有機固体電解質(ポリエチレンオキシド(PEO)などに代表される高分子電解質、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(LiTFSI)などに代表される有機電解質塩)とは明確に区別される。また、無機固体電解質は定常状態では固体であるため、通常カチオン及びアニオンに解離又は遊離していない。この点においては、電解液やポリマー中においてカチオン及びアニオンが解離又は遊離している無機電解質塩(LiPF、LiBF、LiFSI、LiClなど)とも明確に区別される。無機固体電解質は周期律表第1族又は第2族に属する金属のイオンの伝導性を有するものであれば特に限定されず電子伝導性を有さないものが一般的である。
【0032】
本発明において、無機固体電解質は、周期律表第1族又は第2族に属する金属のイオン伝導性を有する。上記無機固体電解質は、この種の製品に適用される固体電解質材料を適宜選定して用いることができる。無機固体電解質として、一般的には(i)硫化物系無機固体電解質及び/又は(ii)酸化物系無機固体電解質が用いられる。
【0033】
(i)硫化物系無機固体電解質
硫化物系無機固体電解質は、硫黄原子(S)を含有し、周期律表第1族又は第2族に属する金属のイオン伝導性を有し、かつ、電子絶縁性を有するものが好ましい。硫化物系無機固体電解質は、元素として少なくともLi、S及びPを含有し、リチウムイオン伝導性を有しているものが好ましいが、目的又は場合に応じて、Li、S及びP以外の他の元素を含んでもよい。
例えば下記式(I)で示される組成を満たすリチウムイオン伝導性無機固体電解質が挙げられる。

a1b1c1d1e1 式(I)

式中、LはLi、Na及びKから選択される元素を示し、Liが好ましい。Mは、B、Zn、Sn、Si、Cu、Ga、Sb、Al及びGeから選択される元素を示す。Aは、I、Br、Cl及びFから選択される元素を示す。a1〜e1は各元素の組成比を示し、a1:b1:c1:d1:e1は1〜12:0〜5:1:2〜12:0〜10を満たす。a1は更に、1〜9が好ましく、1.5〜7.5がより好ましい。b1は0〜3が好ましい。d1は更に、2.5〜10が好ましく、3.0〜8.5がより好ましい。e1は更に、0〜5が好ましく、0〜3がより好ましい。
【0034】
各元素の組成比は、下記のように、硫化物系無機固体電解質を製造する際の原料化合物の配合量を調整することにより制御できる。
【0035】
硫化物系無機固体電解質は、非結晶(ガラス)であっても結晶化(ガラスセラミックス化)していてもよく、一部のみが結晶化していてもよい。例えば、Li、P及びSを含有するLi−P−S系ガラス、又はLi、P及びSを含有するLi−P−S系ガラスセラミックスを用いることができる。
硫化物系無機固体電解質は、例えば硫化リチウム(LiS)、硫化リン(例えば五硫化二燐(P))、単体燐、単体硫黄、硫化ナトリウム、硫化水素、ハロゲン化リチウム(例えばLiI、LiBr、LiCl)及び上記Mによって表される元素の硫化物(例えばSiS、SnS、GeS)の中の少なくとも2つ以上の原料の反応により製造することができる。
【0036】
Li−P−S系ガラス及びLi−P−S系ガラスセラミックスにおける、LiSとPとの比率は、LiS:Pのモル比で、好ましくは60:40〜90:10、より好ましくは68:32〜78:22である。LiSとPとの比率をこの範囲にすることにより、リチウムイオン伝導度を高いものとすることができる。具体的には、リチウムイオン伝導度を好ましくは1×10−4S/cm以上、より好ましくは1×10−3S/cm以上とすることができる。上限は特にないが、1×10−1S/cm以下であることが実際的である。
【0037】
具体的な硫化物系無機固体電解質の例として、原料の組み合わせ例を下記に示す。例えば、LiS−P、LiS−P−LiCl、LiS−P−HS、LiS−P−HS−LiCl、LiS−LiI−P、LiS−LiI−LiO−P、LiS−LiBr−Pが挙げられる。またLiS−LiO−P、LiS−LiPO−P、LiS−P−P、LiS−P−SiS、LiS−P−SiS−LiCl、LiS−P−SnS、LiS−P−Alが挙げられる。更にLiS−GeS、LiS−GeS−ZnS、LiS−Ga、LiS−GeS−Ga、LiS−GeS−P、LiS−GeS−Sb、LiS−GeS−Alが挙げられる。また更に、LiS−SiS、LiS−Al、LiS−SiS−Al、LiS−SiS−P−LiI、LiS−SiS−LiI、LiS−SiS−LiSiO、LiS−SiS−LiPO、Li10GeP12、などが挙げられる。ただし、各原料の混合比は問わない。このような原料組成物を用いて硫化物系無機固体電解質材料を合成する方法としては、例えば非晶質化法を挙げることができる。非晶質化法としては、例えば、メカニカルミリング法、溶液法及び溶融急冷法のいずれかを挙げることができる。これらの方法は、常温での処理が可能であり、製造工程の簡略化を図ることができるからである。
【0038】
(ii)酸化物系無機固体電解質
酸化物系無機固体電解質は、酸素原子(O)を含有し、かつ、周期律表第1族又は第2族に属する金属のイオン伝導性を有し、かつ、電子絶縁性を有する化合物が好ましい。
【0039】
具体的な化合物例としては、例えば、LixaLayaTiO〔xa=0.3〜0.7、ya=0.3〜0.7〕(LLT)が挙げられる。また、LixbLaybZrzbbbmbnb(MbbはAl,Mg,Ca,Sr,V,Nb,Ta,Ti,Ge,In,Sn等から選択された少なくとも1種以上の元素であり、xbは5≦xb≦10、ybは1≦yb≦4、zbは1≦zb≦4、mbは0≦mb≦2、及びnbは5≦nb≦20を満たす。)が挙げられる。また、Lixcyccczcnc(MccはC,S,Al,Si,Ga,Ge,In,Sn等から選択された少なくとも1種以上の元素であり、xcは0≦xc≦5、ycは0≦yc≦1、zcは0≦zc≦1、及びncは0≦nc≦6を満たし、かつxc+yc+zc+nc≠0である。)が挙げられる。更に、Lixd(Al,Ga)yd(Ti,Ge)zdSiadmdnd(1≦xd≦3、0≦yd≦1、0≦zd≦2、0≦ad≦1、1≦md≦7、及び3≦nd≦13)、Li(3−2xe)eexeeeO(xeは0以上0.1以下の数を表し、Meeは2価の金属原子を表し、Deeはハロゲン原子又は2種以上のハロゲン原子の組み合わせを表す。)が挙げられる。更にまた、LixfSiyfzf(1≦xf≦5、0<yf≦3、1≦zf≦10)、Lixgygzg(1≦xg≦3、0<yg≦2、1≦zg≦10)、LiBO−LiSO、LiO−B−P、LiO−SiO、LiBaLaTa12、LiPO(4−3/2w)(wはw<1)、LISICON(Lithium super ionic conductor)型結晶構造を有するLi3.5Zn0.25GeO、ペロブスカイト型結晶構造を有するLa0.55Li0.35TiO、NASICON(Natrium super ionic conductor)型結晶構造を有するLiTi12、Li1+xh+yh(Al,Ga)xh(Ti,Ge)2−xhSiyh3−yh12(ただし、0≦xh≦1、0≦yh≦1)、ガーネット型結晶構造を有するLiLaZr12(LLZ)等が挙げられる。またLi、P及びOを含むリン化合物も望ましい。例えばリン酸リチウム(LiPO)、リン酸リチウムの酸素の一部を窒素によって置換したLiPON、LiPOD(Dは、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zr、Nb、Mo、Ru、Ag、Ta、W、Pt、Au等から選ばれた少なくとも1種)等が挙げられる。また、LiAON(Aは、Si、B、Ge、Al、C、Ga等から選ばれた少なくとも1種)等も好ましく用いることができる。
【0040】
無機固体電解質の粒子径(体積平均粒子径)は特に限定されないが、0.01μm以上であることが好ましく、0.1μm以上であることがより好ましい。上限としては、100μm以下であることが好ましく、50μm以下であることがより好ましい。なお、無機固体電解質粒子の平均粒子径の測定は、以下の手順で行う。無機固体電解質粒子を、水(水に不安定な物質の場合はヘプタン)を用いて20mlサンプル瓶中で1質量%の分散液を希釈調整する。希釈後の分散試料は、1kHzの超音波を10分間照射し、その直後に試験に使用する。この分散液試料を用い、レーザ回折/散乱式粒度分布測定装置LA−920(HORIBA社製)を用いて、温度25℃で測定用石英セルを使用してデータ取り込みを50回行い、体積平均粒子径を得る。その他の詳細な条件等は必要によりJISZ8828:2013「粒子径解析−動的光散乱法」の記載を参照する。1水準につき5つの試料を作製しその平均値を採用する。
【0041】
(正極活物質層)
上記正極活物質層4は、上述した無機固体電解質と、正極活物質とを含有する。
正極活物質の好ましい形態について説明する。
【0042】
−正極活物質−
上記正極活物質は、可逆的にリチウムイオンを挿入及び放出できるものが好ましい。その材料は、上記特性を有するものであれば、特に制限はなく、遷移金属酸化物や、有機物、硫黄などのLiと複合化できる元素や硫黄と金属の複合物などでもよい。
中でも、正極活物質としては、遷移金属酸化物を用いることが好ましく、遷移金属元素M(Co、Ni、Fe、Mn、Cu及びVから選択される1種以上の元素)を有する遷移金属酸化物がより好ましい。また、この遷移金属酸化物に元素M(リチウム以外の金属周期律表の第1(Ia)族の元素、第2(IIa)族の元素、Al、Ga、In、Ge、Sn、Pb、Sb、Bi、Si、P又はBなどの元素)を混合してもよい。混合量としては、遷移金属元素Mの量(100mol%)に対して0〜30mol%が好ましい。Li/Maのモル比が0.3〜2.2になるように混合して合成されたものが、より好ましい。
遷移金属酸化物の具体例としては、(MA)層状岩塩型構造を有する遷移金属酸化物、(MB)スピネル型構造を有する遷移金属酸化物、(MC)リチウム含有遷移金属リン酸化合物、(MD)リチウム含有遷移金属ハロゲン化リン酸化合物及び(ME)リチウム含有遷移金属ケイ酸化合物等が挙げられる。
【0043】
(MA)層状岩塩型構造を有する遷移金属酸化物の具体例として、LiCoO(コバルト酸リチウム[LCO])、LiNi(ニッケル酸リチウム)、LiNi0.85Co0.10Al0.05(ニッケルコバルトアルミニウム酸リチウム[NCA])、LiNi1/3Co1/3Mn1/3(ニッケルマンガンコバルト酸リチウム[NMC])及びLiNi0.5Mn0.5(マンガンニッケル酸リチウム)が挙げられる。
(MB)スピネル型構造を有する遷移金属酸化物の具体例として、LiMn(LMO)、LiCoMnO4、LiFeMn、LiCuMn、LiCrMn及びLiNiMnが挙げられる。
(MC)リチウム含有遷移金属リン酸化合物としては、例えば、LiFePO及びLiFe(PO等のオリビン型リン酸鉄塩、LiFeP等のピロリン酸鉄類、LiCoPO等のリン酸コバルト類ならびにLi(PO(リン酸バナジウムリチウム)等の単斜晶ナシコン型リン酸バナジウム塩が挙げられる。
(MD)リチウム含有遷移金属ハロゲン化リン酸化合物としては、例えば、LiFePOF等のフッ化リン酸鉄塩、LiMnPOF等のフッ化リン酸マンガン塩及びLiCoPOF等のフッ化リン酸コバルト類が挙げられる。
(ME)リチウム含有遷移金属ケイ酸化合物としては、例えば、LiFeSiO、LiMnSiO及びLiCoSiO等が挙げられる。
本発明では、(MA)層状岩塩型構造を有する遷移金属酸化物が好ましく、LCO、LMO、NCA又はNMCがより好ましい。
【0044】
正極活物質の形状は特に制限されないが粒子状が好ましい。正極活物質の体積平均粒子径(球換算平均粒子径)は特に限定されない。例えば、0.1〜50μmとすることができる。正極活物質を所定の粒子径にするには、通常の粉砕機や分級機を用いればよい。焼成法によって得られた正極活物質は、水、酸性水溶液、アルカリ性水溶液、有機溶剤にて洗浄した後使用してもよい。正極活物質粒子の体積平均粒子径(球換算平均粒子径)は、レーザ回折/散乱式粒度分布測定装置LA−920(商品名、HORIBA社製)を用いて測定することができる。
【0045】
上記正極活物質は、1種を単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
正極活物質層を形成する場合、正極活物質層の単位面積(cm)当たりの正極活物質の質量(mg)(目付量)は特に限定されるものではない。設計された電池容量に応じて、適宜に決めることができる。
【0046】
正極活物質の、正極活物質層中における含有量は、特に限定されず、10〜95質量%が好ましく、30〜90質量%がより好ましく、50〜85質量が更に好ましく、55〜80質量%が特に好ましい。
【0047】
(負極活物質層)
上記負極活物質層2は、上述した無機固体電解質と、負極活物質とを含有する。なお、上述した通り、本発明の全固体二次電池は負極活物質層を予め形成しない形態とすることも好ましい。
負極活物質の好ましい形態について説明する。
【0048】
−負極活物質−
上記負極活物質は、可逆的にリチウムイオンを貯蔵及び放出できるものが好ましい。その材料は、上記特性を有するものであれば、特に制限はない。その材料には、炭素質材料、酸化錫等の金属酸化物、酸化ケイ素、金属複合酸化物、リチウム単体及びリチウムアルミニウム合金等のリチウム合金、並びに、Sn、Si、Al及びIn等のリチウムと合金形成可能な金属等が挙げられる。中でも、炭素質材料又はリチウム複合酸化物が信頼性の点から好ましく用いられる。また、金属複合酸化物としては、リチウムを吸蔵及び放出可能であることが好ましい。その材料は、特には制限されないが、構成成分としてチタン及び/又はリチウムを含有していることが、高電流密度充放電特性の観点で好ましい。
【0049】
負極活物質として用いられる炭素質材料とは、実質的に炭素からなる材料である。例えば、石油ピッチ、アセチレンブラック(AB)等のカーボンブラック、黒鉛(天然黒鉛、気相成長黒鉛等の人造黒鉛等)、及びPAN(ポリアクリロニトリル)系の樹脂やフルフリルアルコール樹脂等の各種の合成樹脂を焼成した炭素質材料を挙げることができる。更に、PAN系炭素繊維、セルロース系炭素繊維、ピッチ系炭素繊維、気相成長炭素繊維、脱水PVA(ポリビニルアルコール)系炭素繊維、リグニン炭素繊維、ガラス状炭素繊維及び活性炭素繊維等の各種炭素繊維類を挙げることができる。また、メソフェーズ微小球体、グラファイトウィスカーならびに平板状の黒鉛等を挙げることもできる。
【0050】
負極活物質として適用される金属酸化物及び金属複合酸化物としては、特に非晶質酸化物が好ましく、更に金属元素と周期律表第16族の元素との反応生成物であるカルコゲナイトも好ましく用いられる。ここでいう非晶質とは、CuKα線を用いたX線回折法において、回折角2θが20°〜40°の領域に頂点を有するブロードな散乱帯を有するものを意味し、結晶性の回折線を有してもよい。
【0051】
上記非晶質酸化物及びカルコゲナイドからなる化合物群の中でも、半金属元素の非晶質酸化物、及びカルコゲナイドがより好ましい。特に、周期律表第13(IIIA)族〜15(VA)族の元素、Al、Ga、Si、Sn、Ge、Pb、Sb及びBiから選択される1種単独もしくはそれらの2種以上の組み合わせからなる酸化物、ならびにカルコゲナイドが好ましい。好ましい非晶質酸化物及びカルコゲナイドの具体例としては、Ga、SiO、GeO、SnO、SnO、PbO、PbO、Pb、Pb、Pb、Sb、Sb、SbBi、SbSi、Bi、SnSiO、GeS、SnS、SnS、PbS、PbS、Sb、Sb及びSnSiSが挙げられる。また、これらは、酸化リチウムとの複合酸化物、例えば、LiSnOであってもよい。
【0052】
負極活物質はチタン原子を含有することも好ましい。より具体的にはLiTi12(チタン酸リチウム[LTO])がリチウムイオンの吸蔵放出時の体積変動が小さいことから急速充放電特性に優れ、電極の劣化が抑制されリチウムイオン二次電池の寿命向上が可能となる点で好ましい。
【0053】
本発明においては、Si系の負極を適用することもまた好ましい。一般的にSi負極は、炭素負極(黒鉛、アセチレンブラックなど)に比べて、より多くのLiイオンを吸蔵できる。すなわち、単位質量あたりのLiイオンの吸蔵量が増加する。そのため、電池容量を大きくすることができる。その結果、バッテリー駆動時間を長くすることができるという利点がある。
【0054】
負極活物質の形状は特に制限されないが粒子状が好ましい。負極活物質の粒子径(体積平均粒子径)は、0.1〜60μmが好ましい。所定の粒子径にするには、通常の粉砕機や分級機が用いられる。例えば、乳鉢、ボールミル、サンドミル、振動ボールミル、衛星ボールミル、遊星ボールミル及び旋回気流型ジェットミルや篩などが好適に用いられる。粉砕時には水、もしくはメタノール等の有機溶媒を共存させた湿式粉砕も必要に応じて行うことができる。所望の粒子径とするためには分級を行うことが好ましい。分級方法としては特に限定はなく、篩、風力分級機などを必要に応じて用いることができる。分級は乾式及び湿式ともに用いることができる。負極活物質粒子の体積平均粒子径は、前述の正極活物質の体積平均粒子径の測定方法と同様の方法により測定することができる。
【0055】
上記負極活物質は、1種を単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
負極活物質層を形成する場合、負極活物質層の単位面積(cm)当たりの負極活物質の質量(mg)(目付量)は特に限定されるものではない。設計された電池容量に応じて、適宜に決めることができる。
【0056】
負極活物質の、固体電解質組成物中における含有量は、特に限定されず、固形分100質量%において、10〜80質量%であることが好ましく、20〜80質量%がより好ましい。
【0057】
正極活物質又は負極活物質を含む電極表面は硫黄又はリンで表面処理されていてもよい。また、正極活物質又は負極活物質の粒子表面は、上記表面被覆の前後において活性光線又は活性気体(プラズマ等)により表面処理が施されていても良い。
【0058】
本発明の全固体二次電池において、固体電解質層、正極活物質層及び負極活物質層には、リチウム塩、導電助剤、バインダー(上記無機絶縁被覆体に含まれ得る有機バインダーが好ましい)、分散剤等が含まれていることも好ましい。
【0059】
〔集電体(金属箔)〕
正極集電体5及び負極集電体1は、電子伝導体が好ましい。
本発明において、正極集電体及び負極集電体のいずれか、又は、両方を合わせて、単に、集電体と称することがある。
正極集電体を形成する材料としては、アルミニウム、アルミニウム合金、ステンレス鋼、ニッケル及びチタンなどの他に、アルミニウム又はステンレス鋼の表面にカーボン、ニッケル、チタンあるいは銀を処理させたもの(薄膜を形成したもの)が好ましい。その中でも、アルミニウム及びアルミニウム合金がより好ましい。
負極集電体を形成する材料としては、アルミニウム、銅、銅合金、ステンレス鋼、ニッケル及びチタンなどの他に、アルミニウム、銅、銅合金又はステンレス鋼の表面にカーボン、ニッケル、チタンあるいは銀を処理させたものが好ましい。その中でも、アルミニウム、銅、銅合金及びステンレス鋼がより好ましい。
【0060】
集電体の形状は、通常フィルムシート状のものが使用されるが、ネット、パンチされたもの、ラス体、多孔質体、発泡体、繊維群の成形体なども用いることができる。
集電体の厚さは、特に限定されないが、1〜500μmが好ましい。また、集電体表面は、表面処理により凹凸を付けることも好ましい。
【0061】
本発明において、負極集電体、負極活物質層、固体電解質層、正極活物質層及び正極集電体の各層の間又はその外側には、機能性の層や部材等を適宜介在ないし配設してもよい。また、各層は単層で構成されていても、複層で構成されていてもよい。
【0062】
<全固体二次電池の製造方法>
本発明の全固体二次電池の製造方法の一例を以下に示すが、本発明の全固体二次電池の製造方法はこれらの形態に限定されるものではない。
(電池要素部材の端部全体を無機絶縁被覆体で被覆する態様)
基材(例えば、集電体となる金属箔)上に、正極活物質層を構成する成分を含む組成物(正極用組成物)を塗布して正極活物質層を形成し、全固体二次電池用正極シートを作製する。次いで、正極活物質層の上に、少なくとも上記無機固体電解質材料を含有する組成物を塗布して固体電解質層を形成する。
その後、固体電解質層の上に、負極活物質層、負極集電体(金属箔)を重ねることにより、正極活物質層と負極活物質層の間に固体電解質層が挟まれた構造の全固体二次電池を得る。ついで、これらの電池要素部材を電池外装体となる筐体に詰める。
次いで、筺体内の、上記電池要素部材の端部に、上述した絶縁性無機材料と無機絶縁粒子の混合物を配する。次いで絶縁性無機材料が熱溶融する温度(好ましくは200℃以下)まで加熱し、絶縁性無機材料の溶融物を、上記混合物を構成する粒子間に行き渡らせて、上記電池要素部材の端部に無機絶縁被覆体を形成する。
【0063】
また、各層の形成方法を逆にして、負極集電体上に、負極活物質層、固体電解質層及び正極活物質層を形成し、正極集電体を重ねて、全固体二次電池を製造することもできる。また、基材/負極活物質層からなる2層構造の積層体と、基材/正極活物質層/固体電解質層からなる3層構造の積層体とを調製し、これらを重ねあわせて本発明の全固体二次電池を得ることもできる。また基材/正極活物質層からなる2層構造の積層体と、基材/負極活物質層/固体電解質層からなる3層構造の積層体とを調製し、これらを重ねあわせて電池要素部材を得ることもできる。
【0064】
また、以下のように無機絶縁被覆体を、(a)固体電荷脂質層の端部のみ、(b)正極活物質層の端部と固体電荷脂質層の端部のみ、もしくは(c)正極集電体の端部と正極活物質層の端部と固体電荷脂質層の端部のみに設けた形態とすることもできる。これらの形態も本発明の全固体二次電池の形態として好ましい。
(電池要素部材の端部の一部を無機絶縁被覆体で被覆する態様)
基材(例えば、集電体となる金属箔)上に、正極活物質層を構成する成分を含む組成物(正極用組成物)を塗布して正極活物質層を形成し、全固体二次電池用正極シートを作製する。次いで、正極活物質層の上に、少なくとも上記無機固体電解質材料を含有する組成物を塗布して固体電解質層を形成する。更に、固体電解質層の両端に上述した絶縁性無機材料と無機絶縁粒子の混合物を配する。上記混合物は、基材端部及び/又は正極活物質層の端部にまで形成してもよい。次いで絶縁性無機材料が熱溶融する温度(好ましくは200℃以下)まで加熱し、絶縁性無機材料の溶融物を無機固体電解質材料の端部に行き渡らせ、また上記混合物を構成する粒子間に行き渡らせる。そして、固体電解質層端部、もしくは正極活物質層端部と固体電解質層端部、もしくは正極集電体端部と正極活物質層端部と固体電質層端部に無機絶縁被覆体を形成する。
その後、固体電解質層の上に、負極用材料として、負極活物質層を形成する成分を含有する組成物を塗布して、負極活物質層を形成する。負極活物質層の上に、負極集電体(金属箔)を重ねることにより、正極活物質層と負極活物質層の間に固体電解質層が挟まれた構造の全固体二次電池を得ることができる。必要によりこれを電池外装体となる筐体に封入して所望の全固体二次電池とすることができる。
【0065】
更に、後述する、端部に無機絶縁被覆体を有する固体電解質シート、及び/又は端部に無機絶縁被覆体を有する正極活物質シートを予め用意しておき、これらのシートを用いて電池要素部材を作製し、本発明の全固体二次電池とすることもできる。
【0066】
上記絶縁性無機材料を溶融させるための加熱は、上記の例では、上記混合物を目的の端部に配した直後に行っている。また本発明はこの実施形態に限定されない。すなわち、上記混合物を用いて目的の端部に配した後であれば、全固体二次電池の製造工程のどの段階で加熱してもよい。また、上記混合物を目的の端部に配する工程を上記絶縁性無機材料の溶融温度以上の温度で行うこともでき、この場合は絶縁性無機材料を溶融させるための加熱工程を別途設ける必要がない場合もある。
【0067】
(各層の形成方法)
本発明の全固体二次電池の製造において、固体電解質層及び活物質層の形成方法は特に限定されず、適宜に選択できる。例えば、塗布(好ましくは湿式塗布)、スプレー塗布、スピンコート塗布、ディップコート、スリット塗布、ストライプ塗布及びバーコート塗布が挙げられる。
このとき、塗布した後に乾燥処理を施してもよいし、重層塗布した後に乾燥処理をしてもよい。乾燥温度は特に限定されない。下限は30℃以上が好ましく、60℃以上がより好ましく、80℃以上が更に好ましい。上限は、300℃以下が好ましく、250℃以下がより好ましく、200℃以下が更に好ましい。このような温度範囲で加熱することで、(C)分散媒を除去し、固体状態にすることができる。また、温度を高くしすぎず、全固体二次電池の各部材を損傷せずに済むため好ましい。これにより、全固体二次電池において、優れた総合性能を示し、かつ良好な結着性を得ることができる。
【0068】
作製した全固体二次電池は、加圧することが好ましい。加圧方法としては油圧シリンダープレス機等が挙げられる。加圧力としては、特に限定されず、一般的には50〜1500MPaの範囲であることが好ましい。
また、塗布した固体電解質組成物は、加圧と同時に加熱してもよい。加熱温度としては、特に限定されず、一般的には30〜300℃の範囲である。無機固体電解質のガラス転移温度よりも高い温度でプレスすることもできる。
加圧は塗布溶媒又は分散媒をあらかじめ乾燥させた状態で行ってもよいし、溶媒又は分散媒が残存している状態で行ってもよい。
【0069】
加圧中の雰囲気としては、特に限定されず、大気下、乾燥空気下(露点−20℃以下)及び不活性ガス中(例えばアルゴンガス中、ヘリウムガス中、窒素ガス中)などいずれでもよい。
プレス時間は短時間(例えば数時間以内)で高い圧力をかけてもよいし、長時間(1日以上)かけて中程度の圧力をかけてもよい。全固体二次電池用シート以外、例えば全固体二次電池の場合には、中程度の圧力をかけ続けるために、全固体二次電池の拘束具(ネジ締め圧等)を用いることもできる。
プレス圧はシート面等の被圧部に対して均一であっても異なる圧であってもよい。
プレス圧は被圧部の面積や膜厚に応じて変化させることができる。また同一部位を段階的に異なる圧力で変えることもできる。
プレス面は平滑であっても粗面化されていてもよい。
【0070】
また、電池をシート状に形成し、この電池シートを軸の外周にロール状に巻いた状態とした円筒型とし、この円筒型電池の最外層から軸方向に圧力をかける形態とすることもできる。
【0071】
(初期化)
上記のようにして製造した全固体二次電池は、製造後又は使用前に初期化を行うことが好ましい。初期化の方法は特に限定されず、例えば、プレス圧を高めた状態で初充放電を行い、その後、全固体二次電池の一般使用圧力になるまで圧力を開放することにより行うことができる。
【0072】
<全固体二次電池の用途>
本発明の全固体二次電池は種々の用途に適用することができる。適用態様には特に限定はないが、例えば、電子機器に搭載される。電子機器としては、ノートパソコン、ペン入力パソコン、モバイルパソコン、電子ブックプレーヤー、携帯電話、コードレスフォン子機、ページャー、ハンディーターミナル、携帯ファックス、携帯コピー、携帯プリンターなどが挙げられる。また、ヘッドフォンステレオ、ビデオムービー、液晶テレビ、ポータブルCDプレーヤー、ミニディスクプレーヤー、携帯テープレコーダー、ラジオ等の音響、映像機器に搭載される。更に搭載機器として、ハンディークリーナー、電気シェーバー、トランシーバー、電子手帳、卓上電子計算機、メモリーカード、バックアップ電源などが挙げられる。その他民生用として、自動車、電動車両、モーター、照明器具、玩具、ゲーム機器、ロードコンディショナー、時計、ストロボ、カメラ、医療機器(ペースメーカー、補聴器、肩もみ機など)などが挙げられる。更に、各種軍需用、宇宙用として用いることができる。また、太陽電池と組み合わせることもできる。
【0073】
なかでも、高容量かつ高レート放電特性が要求されるアプリケーションに適用することが好ましい。例えば、今後大容量化が予想される蓄電設備等においては高い安全性が必須となり更に電池性能の両立が要求される。また、電気自動車などは高容量の二次電池を搭載し、家庭で日々充電が行われる用途が想定される。本発明によれば、このような使用形態に好適に対応してその優れた効果を発揮することができる。
【0074】
[全固体二次電池用固体電解質シート]
本発明の全固体二次電池用固体電解質シート(以下、単に「本発明の電解質シート」ともいう。)は、本発明の全固体二次電池の固体電解質層を提供する部材として好適に用いることができる。すなわち、本発明の電解質シートは、固体電解質層と、この固体電解質層の両端部を被覆した無機絶縁被覆体とを有するものである。この無機絶縁被覆体は、ヤング率が1GPa以上である。このような無機絶縁被覆体には、前述したものがある。
【0075】
[全固体二次電池用正極活物質シート]
本発明の全固体二次電池用正極活物質シート(以下、単に「本発明の正極活物質シート」ともいう。)は、本発明の全固体二次電池の正極活物質層を提供する部材として好適に用いることができる。すなわち、本発明の正極活物質シートは、正極活物質層の両端部を被覆した無機絶縁被覆体を有するものである。この無機絶縁被覆体は、ヤング率が1GPa以上を有するものである。このような無機絶縁被覆体には、前述したものがある。
【0076】
上記固体電解質シートは、例えば次のように作製することができる。
基材(例えば、負極集電体となる金属箔)上に、上記無機固体電解質材料を含有する組成物を塗布して固体電解質層を形成し、全固体二次電池用固体電解質シートを作製する。次いで、固体電解質層の両端に上述した絶縁性無機材料と無機絶縁粒子の混合物を塗布により配する。上記混合物は、基材端部にまで形成してもよい。次いで絶縁性無機材料が熱溶融する温度(好ましくは200℃以下)まで加熱し、絶縁性無機材料の溶融物を無機固体電解質材料の端部に行き渡らせ、また上記混合物を構成する粒子間に行き渡らせて、固体電解質層端部に無機絶縁被覆体を形成する。
また、上記正極活物質シートは、例えば次のように作製することができる。
基材(例えば、集電体となる金属箔)上に、正極活物質層を構成する成分を含む組成物(正極用組成物)を塗布して正極活物質層を形成し、全固体二次電池用正極活物質シートを作製する。次いで、正極活物質層の両端に上述した絶縁性無機材料と無機絶縁粒子の混合物を塗布により配する。上記混合物は、基材端部にまで形成してもよい。次いで絶縁性無機材料が熱溶融する温度(好ましくは200℃以下)まで加熱し、絶縁性無機材料の溶融物を正極活物質層の端部に行き渡らせ、また上記混合物を構成する粒子間に行き渡らせて、正極活物質層端部に無機絶縁被覆体を形成する。
絶縁性無機材料の混合物の塗布は、例えば、硫黄と酸化アルミニウム(アルミナ)の粒子の混合物をトルエンで分散させた分散液を使って行うことができる。
【実施例】
【0077】
本発明を実施例に基づき更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではない。
【0078】
[参考例1] 無機固体電解質の合成
アルゴン雰囲気下(露点−70℃)のグローブボックス内で、硫化リチウム(LiS、Aldrich社製、純度>99.98%)2.42g、五硫化二リン(P、Aldrich社製、純度>99%)3.90gをそれぞれ秤量し、メノウ製乳鉢に投入した。LiS及びPはモル比でLiS:P=75:25である。メノウ製乳鉢上において、メノウ製乳棒を用いて、5分間混合した。
ジルコニア製45mL容器(フリッチュ社製)に、直径5mmのジルコニアビーズを66個投入し、上記混合物全量を投入し、アルゴン雰囲気下で容器を完全に密閉した。フリッチュ社製遊星ボールミルP−7に容器をセットし、25℃で、回転数510rpmで20時間メカニカルミリングを行うことで黄色粉体の硫化物系無機固体電解質(Li/P/Sガラス、以下「LPS」ともいう。)6.2gを得た。
得られたLPSの体積平均粒子径を、レーザ回折/散乱式粒度分布測定装置LA−920(商品名、HORIBA社製)を用いて測定した結果、8μmであった。
【0079】
[参考例2] 硫黄と無機絶縁粒子との混合物の調製
大気下で、硫黄(S、Aldrich社製、純度>99.98%)1.2g、酸化アルミニウムナノ粒子(Al、純度>99%、粒子サイズ500nm、EMジャパン社製)1.2gをそれぞれ秤量した。それらをメノウ製乳鉢に投入し、メノウ製乳棒を用いて10分間混合した。
【0080】
[製造例] 全固体二次電池の製造
ジルコニア製45mL容器(フリッチュ社製)に、直径5mmのジルコニアビーズを180個投入し、上記で合成したLPS2.0gと、スチレンブタジエンゴム(商品コード182907、アルドリッチ社製)0.1gと、分散媒としてオクタン22gとを投入した。その後に、この容器をフリッチュ社製遊星ボールミルP−7にセットし、温度25℃で、回転数300rpmで2時間攪拌した。その後、正極活物質LiNi0.85Co0.10Al0.05(ニッケルコバルトアルミニウム酸リチウム)7.9gを容器に投入し、再びこの容器を遊星ボールミルP−7にセットし、温度25℃、回転数100rpmで15分間混合を続けた。このようにして、正極用組成物を得た。
次に常法により、集電体となる厚み20μmのアルミ箔上に、上記で得られた正極活物質を構成する成分を含む組成物(正極用組成物)をバインダー2質量%とともにベーカー式アプリケーターにより塗布し、80℃2時間加熱して、正極用組成物を乾燥させた。その後、ヒートプレス機を用いて、所定の密度になるように乾燥させた正極層用組成物を加熱(120℃)しながら加圧(600MPa、1分)した。このようにして、膜厚110μmの正極活物質を有する全固体二次電池用正極シートを作製した。
【0081】
次いで、上記参考例1によって調整した無機固体電解質を、常温にてトルエン中でバインダー2質量%とともに分散し固形分20質量%の塗布液を得た。この塗布液を、常温にて正極上にバーコート塗布し、120℃に加熱して乾燥し、幅50mm、膜厚100μmの固体電解質層を得た。
次いで、負極集電体となる、幅50mm、ステンレス(SUS)箔を固体電解質層の上に重ね、全固体二次電池用積層体シートを形成した。
この積層体シートの正極集電体の外周に、市販の絶縁性セパレータ(幅50mm)を重ね、ステンレス製の円筒軸芯の外周に、集電体が短絡しないよう巻き、直径26mm、厚み0.1mm、長さ65mmのステンレス製の円筒電池ケース内に詰めた。円筒軸心は、直径18mm、厚み0.1mm、長さ65mmの円筒にスリット(長さ9mm、幅0.1mm、スリット間の間隔1mm)を入れ、内部からの圧力で破壊できるようにしたものである。
その後、円筒電池ケースの外側に、ステンレス製、肉厚5mmの補強円筒カバーをはめた。
【0082】
そして、上記円筒軸芯の中に活性炭を詰め、プレス機で活性炭を円筒軸の両側から24Paの圧力にて圧縮し、円筒軸芯のスリット幅を広げて、円筒軸芯の直径を増加させた。その直径の増加によって、外装ケースと円筒軸芯の間にある積層体に所定の拘束圧をかけた。
負極集電体は電池外装ケースと導通させ、正極集電体は軸芯と導通させ、電流を外部に取り出せるようにした。
円筒軸芯と外装ケースの間にある電池要素部材の両端部に、参考例2で得た混合物を配し、プレス機を用いて24Paの圧力にて圧縮し、押しつけた。
絶縁被覆体で被覆された状態の積層体を、ホットプレート上で150℃30分間加熱し、充填材である硫黄を熱溶融させた。
その後、自然冷却して、ケースを封止し、無機絶縁被覆体を有する全固体二次電池を得た。自然冷却後の無機絶縁被覆体は、25℃におけるヤング率が50GPaであった。
また、比較用に、無機絶縁体被覆体を配す工程を行わない以外は同じ工程で得た、無機絶縁被覆体を有さない全固体二次電池を得た。
【0083】
[試験例1]充放電試験
(試験方法)
上記によって作製した各全固体二次電池を用いて、下記条件により充放電を行い、初回充電容量に対する初回放電容量の割合(放電効率(%)=100×[初回放電容量/初回充電容量])を算出した。
充放電条件は、測定環境の温度30℃、電流密度0.09mA/cm(0.05Cに相当)、4.2V、一定電流条件における充放電とした。
【0084】
[試験例2]充放電サイクル特性試験
(試験方法)
上記製造例と同様にして作製した全固体二次電池(無機絶縁被覆体を有するものと、有しないものを1つずつ作製)を用いて、下記条件により充放電サイクル特性試験を行った。そして、充放電サイクルにおける初回放電容量に対する、2サイクルめの放電容量の割合(放電容量維持率(%)=100×[2サイクルめの放電容量/初回放電容量])を算出した。
充放電条件は、測定環境の温度30℃、電流密度0.09mA/cm(0.05Cに相当)、4.2V、一定電流条件における充放電とした。
結果を下表に示す。
【0085】
【表1】
【0086】
上記表に示されるように、電池要素部材の端部に無機絶縁被覆体を有することにより、放電効率が高められ、また放電容量維持率も高められることがわかった。
【0087】
本願は、2017年3月13日に日本国で特許出願された特願2017−047772に基づく優先権を主張するものであり、これはここに参照してその内容を本明細書の記載の一部として取り込む。
【符号の説明】
【0088】
10 全固体二次電池
1 負極集電体
2 負極活物質層
3 固体電解質層
4 正極活物質層
5 正極集電体
6 作動部位
21a 固体電解質層
21b 正極集電体
21c 正極活物質層
21d 負極集電体
21e 負極活物質層
22 軸
23 電池カバー
24 無機絶縁被覆体
25 正極タブ
26 電極正極
27 負極タブ
28 電池負極
図1
図2