【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、少なくとも一部が中和した酸性基を有する水溶性エチレン系不飽和単量体の第1架橋重合体を含むベース樹脂粉末;および
前記ベース樹脂粉末上に形成されており、前記第1架橋重合体が表面架橋剤を媒介にさらに架橋された第2架橋重合体を含む表面架橋層を含む高吸水性樹脂であって、
前記表面架橋剤は、複数種の環状アルキレンカーボネートの混合物を含み、前記混合物は、水素結合成分(hydrogen bonding component)によるハンセン溶解度パラメーター(Hansen solubility parameter)が13
MPa1/2以上であ
り、
前記混合物は、前記水素結合成分によるハンセン溶解度パラメーターが10〜13MPa1/2の第1環状アルキレンカーボネートと、前記水素結合成分によるハンセン溶解度パラメーターが16〜20MPa1/2の第2環状アルキレンカーボネートとを含み、
前記混合物の水素結合成分によるハンセン溶解度パラメーターは、前記混合物に含まれた各環状アルキレンカーボネートのパラメーター値の重量平均値で算出される、高吸水性樹脂を提供する。
【0010】
本発明はまた、内部架橋剤の存在下に少なくとも一部が中和した酸性基を有する水溶性エチレン系不飽和単量体を架橋重合して第1架橋重合体を含む含水ゲル重合体を形成する段階と、
前記含水ゲル重合体を乾燥、粉砕および分級してベース樹脂粉末を形成する段階と、
表面架橋剤の存在下に前記ベース樹脂粉末を熱処理して表面架橋する段階とを含み、
前記表面架橋剤は、複数種の環状アルキレンカーボネートの混合物を含み、前記混合物は、水素結合成分(hydrogen bonding component)によるハンセン溶解度パラメーター(Hansen solubility parameter)が13
MPa1/2以上であ
り、
前記混合物は、前記水素結合成分によるハンセン溶解度パラメーターが10〜13MPa1/2の第1環状アルキレンカーボネートと、前記水素結合成分によるハンセン溶解度パラメーターが16〜20MPa1/2の第2環状アルキレンカーボネートとを含み、
前記混合物の水素結合成分によるハンセン溶解度パラメーターは、前記混合物に含まれた各環状アルキレンカーボネートのパラメーター値の重量平均値で算出される、高吸水性樹脂の製造方法を提供する。
【0011】
以下、発明の具体的な実施例による高吸水性樹脂およびその製造方法などについてより詳細に説明する。ただし、これは、発明の一つの例示として提示されるものであり、発明の権利範囲はこれによって限定されるものではなく、発明の権利範囲内で実施例に対する多様な変形が可能であることは当業者に自明である。
【0012】
さらに、本明細書全体において、特に言及しない限り「含む」または「含有」とは、ある構成要素(または構成成分)を特に制限なしに含むことをいい、他の構成要素(または構成成分)の付加を除くものと解釈してはならない。
【0013】
発明の一実施例によれば、少なくとも一部が中和した酸性基を有する水溶性エチレン系不飽和単量体の第1架橋重合体を含むベース樹脂粉末;および
前記ベース樹脂粉末上に形成されており、前記第1架橋重合体が表面架橋剤を媒介にさらに架橋された第2架橋重合体を含む表面架橋層を含む高吸水性樹脂であって、
前記表面架橋剤は、複数種の環状アルキレンカーボネートの混合物を含み、前記混合物は、水素結合成分によるハンセン溶解度パラメーターが13
MPa1/2以上である高吸水性樹脂が提供される。
【0014】
本発明者らが実験を重ねた結果、特定の表面架橋剤混合物、すなわち、複数種の環状アルキレンカーボネートを含む混合物であって、水素結合成分によるハンセン溶解度パラメーターが13
MPa1/2以上である混合物を使用して表面架橋を行うことによって、優れた高吸水性樹脂の基本的な吸収性能を維持しながらも、高吸水性樹脂自体が衛生材に吸収された小便などを迅速でかつ広く拡散させて衛生材のウェット(rewet)特性および漏水抑制特性などを向上させることが確認された。
【0015】
これは、複数種の環状アルキレンカーボネートが次のような原理で互いに上昇作用を起こすからであると推定される。前記混合物の水素結合成分によるハンセン溶解度パラメーターが13
MPa1/2以上になるためには、従来から表面架橋剤として広く使われたエチレンカーボネートまたはプロピレンカーボネートなどの第1環状アルキレンカーボネートとともに、前記水素結合成分によるハンセン溶解度パラメーターが15
MPa1/2以上、あるいは16
MPa1/2以上で非常に高くなるグリセロールカーボネートなど第2環状アルキレンカーボネートが使用され得る。
【0016】
先に、前記エチレンカーボネートまたはプロピレンカーボネートなどの第1環状アルキレンカーボネートは、優れた表面架橋特性を有すると知られており、これを使用して優れた高吸水性樹脂の基本的な性能(例えば、高い加圧下吸収能または通液性など)を発現させ得る。また、前記水素結合成分によるハンセン溶解度パラメーターが高い第2環状アルキレンカーボネートは、高吸水性樹脂粒子の表面に親水性を付与し得、これによって衛生材に吸収された小便などが高吸水性樹脂粒子の表面に沿って迅速でかつ広く拡散するようにし得る。その結果、一実施例の高吸水性樹脂は、優れた基本的な吸収性能や通液性などを現すだけでなく、衛生材に吸収された小便などを広く拡散させて衛生材のウェット(rewet)特性および漏水抑制特性などを向上させ得る。
【0017】
以下、一実施例の高吸水性樹脂についてより具体的に説明する。
【0018】
本明細書において「高吸水性樹脂」とは、少なくとも一部が中和した酸性基を有する水溶性エチレン系不飽和単量体の第1架橋重合体を含むベース樹脂粉末;および前記ベース樹脂粉末上に形成されており、前記第1架橋重合体が表面架橋剤を媒介にさらに架橋された第2架橋重合体を含む表面架橋層を含む高吸水性樹脂を意味する。
【0019】
前記水溶性エチレン系不飽和単量体は、高吸水性樹脂の製造に通常使用される任意の単量体であり得る。非制限的な例として、前記水溶性エチレン系不飽和単量体は、下記化学式1で表される化合物であり得る:
[化学式1]
R
1−COOM
1
前記化学式1において、
R
1は、不飽和結合を含む炭素数2〜5のアルキルグループであり、
M
1は、水素原子、1価または2価金属、アンモニウム基または有機アミン塩である。
【0020】
好ましくは、前記単量体は、アクリル酸、メタクリル酸、およびこれら酸の1価金属塩、2価金属塩、アンモニウム塩および有機塩からなる群より選ばれる1種以上であり得る。このように水溶性エチレン系不飽和単量体としてアクリル酸またはその塩を使用する場合、吸水性が向上した高吸水性樹脂を得ることができるので有利である。この他にも前記単量体としては、無水マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イタコン酸、2−アクリロイルエタンスルホン酸、2−メタクリロイルエタンスルホン酸、2−(メタ)アクリロイルプロパンスルホン酸、または2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸の陰イオン性単量体とその塩;(メタ)アクリルアミド、N−置換(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレートまたはポリエチレングリコール(メタ)アクリレートの非イオン系親水性含有単量体;および(N,N)−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートまたは(N,N)−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドのアミノ基含有不飽和単量体とその4級化物;からなる群より選ばれる1種以上を使用し得る。
【0021】
ここで、前記水溶性エチレン系不飽和単量体は、酸性基を有し、前記酸性基の少なくとも一部が中和したものであり得る。好ましくは前記単量体を水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウムなどのようなアルカリ物質で部分的に中和させたものを使用し得る。
【0022】
この時、前記単量体の中和度は、40〜95モル%、または40〜80モル%、または45〜75モル%であり得る。前記中和度の範囲は、最終物性に応じて変わり得るが、中和度が過度に高いと中和した単量体が析出されて重合が円滑に行われにくく、逆に中和度が過度に低いと高分子の吸水性が大きく落ちるだけでなく、取り扱いが困難な弾性ゴムのような性質を現し得る。
【0023】
一実施例の高吸水性樹脂において、前記「第1架橋重合体」とは、上述した水溶性エチレン系不飽和単量体が内部架橋剤の存在下に架橋重合されたものを意味し、前記「ベース樹脂粉末」とは、このような第1架橋重合体を含む物質を意味する。また、前記「第2架橋重合体」とは、前記第1架橋重合体が表面架橋剤を媒介にさらに架橋された物質を意味し、これを含む表面架橋層が前記ベース樹脂粉末上に形成されている。
【0024】
前記一実施例の高吸水性樹脂において、前記ベース樹脂粉末に含まれた第1架橋重合体は、炭素数8〜12のビス(メタ)アクリルアミド、炭素数2〜10のポリオールのポリ(メタ)アクリレートおよび炭素数2〜10のポリオールのポリ(メタ)アリルエーテルからなる群より選ばれる1種以上の内部架橋剤の存在下に前記単量体が架橋重合された高分子であり得る。前記内部架橋剤のより具体的な例は、特に制限されないが、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレートまたはペンタエリストールテトラアクリレートなどが挙げられ、その他にも高吸水性樹脂の製造に使用可能であると知らされている多様な内部架橋剤を特に制限なしに使用し得る。
【0025】
また、前記一実施例の高吸水性樹脂において、前記表面架橋層に含まれた第2架橋重合体は、上述した第1架橋重合体が特定の表面架橋剤を媒介にさらに架橋重合された高分子であり得る。特に、一実施例の高吸水性樹脂では、複数種の環状アルキレンカーボネートの混合物を含む表面架橋剤を使用して、前記第2架橋重合体および表面架橋層を形成する。
【0026】
この時、前記混合物状態の表面架橋剤は、水素結合成分(hydrogen bonding component)によるハンセン溶解度パラメーター(Hansen solubility parameter)が13
MPa1/2以上、あるいは14〜18
MPa1/2、あるいは14.5〜16.0
MPa1/2の特性を現し得る。
【0027】
前記混合物およびこれに含まれる環状アルキレンカーボネートのハンセン溶解度パラメーターは、「C.M. Hansen,「Hansen Solubility Parameters; A User’s Handbook」、CRC Press,2nd ed.(2012)」に記載された方法により確認および算出し得る。より具体的には、上記文献によれば、ある成分のハンセン溶解度パラメーターは、分散力(dispersion force)、極性力(polar force)および水素結合成分(hydrogen bonding component)によるものにそれぞれ区分されるが、一実施例の高吸水性樹脂は、これら三つのハンセン溶解度パラメーターのうち水素結合成分によるハンセン溶解度パラメーターにより、表面架橋剤を定義した。
【0028】
すなわち、上記文献に記載された方法により各環状アルキレンカーボネートの水素結合成分によるハンセン溶解度パラメーターをそれぞれ算出および確認した後、混合物内に含まれた含有量(重量%)に基づいて各環状アルキレンカーボネートのパラメーター値の重量平均値で前記混合物状態の表面架橋剤の水素結合成分によるハンセン溶解度パラメーター値を決め得る。
【0029】
このようなパラメーター値は、前記混合物状態の表面架橋剤が有する親水性範囲を定義できるが、本発明者らの実験結果によれば、前記混合物状態の表面架橋剤が13以上の水素結合成分によるハンセン溶解度パラメーターを有することにより、一実施例の高吸水性樹脂が優れた吸収性能および通液性を有しながらも、高吸水性樹脂粒子の表面(例えば、表面架橋層の表面)に適切な親水性が付与され、衛生材に吸収された小便などが高吸水性樹脂粒子の表面に沿って迅速でかつ広く拡散され得る。その結果、おむつなど衛生材のウェット(rewet)特性および漏水抑制特性などが大きく向上できる。
【0030】
一方、前記複数種の環状アルキレンカーボネートの混合物を含む表面架橋剤が13
MPa1/2以上の水素結合成分によるハンセン溶解度パラメーターを有するようにするために、前記表面架橋剤は、前記水素結合成分によるハンセン溶解度パラメーターが10〜13
MPa1/2の第1環状アルキレンカーボネートと、前記水素結合成分によるハンセン溶解度パラメーターが16〜20
MPa1/2の第2環状アルキレンカーボネートを共に含み得る。
【0031】
この中で、前記第1環状アルキレンカーボネートは、高吸水性樹脂の基本的な吸収性能および/または通液性などを担保し得、その具体的な例としてはエチレンカーボネートまたはプロピレンカーボネートなどが挙げられる。また、前記第2環状アルキレンカーボネートは、高吸水性樹脂粒子の表面に親水性を付与して衛生材のウェット(rewet)特性および漏水抑制特性などを向上させるための成分であり、その具体的な例としてはグリセロールカーボネートなどが挙げられる。
【0032】
このような第1および第2環状アルキレンカーボネートは、0.9:1〜1:2の重量比で表面架橋剤に含まれ得、これにより、一実施例の高吸水性樹脂がより優れた吸収性能および/または通液性を現わしながらも、衛生材のウェット(rewet)特性および漏水抑制特性などをさらに向上させることができる。
【0033】
一方、上述した一実施例の高吸水性樹脂は、150〜850μmの粒径を有し得る。より具体的には、前記ベース樹脂粉末およびこれを含む高吸水性樹脂の少なくとも95重量%以上が150〜850μmの粒径を有し、150μm未満の粒径を有する微粉が3重量%未満であり得る。
【0034】
また、前記一実施例の高吸水性樹脂は、基本的な無加圧下の吸収性能および通液性に優れ、これはCRCおよびGBPなどの物性によって定義される。
【0035】
具体的には、一実施例の高吸水性樹脂は、生理食塩水(0.9重量%塩化ナトリウム水溶液)に対する30分間の遠心分離保持容量(CRC)が27〜37g/g、あるいは28〜32g/gであり得る。このような遠心分離保持容量(CRC)の範囲は、一実施例の高吸水性樹脂が示す優れた無加圧下の吸収性能を定義し得る。
【0036】
前記生理食塩水に対する遠心分離保持容量(CRC)は、高吸水性樹脂を30分にかけて生理食塩水に吸収させた後、次のような計算式1によって算出され得る:
[計算式1]
CRC(g/g)={[W
2(g)−W
1(g)−W
0(g)]/W
0(g)}
前記計算式1において、
W
0(g)は、高吸水性樹脂の初期重量(g)であり、
W
1(g)は、高吸水性樹脂を入れてない不織布封筒を常温で生理食塩水に30分間含浸した後、遠心分離機を用いて250Gで3分間脱水した後に測定した重量であり、
W
2(g)は、高吸水性樹脂を入れた不織布封筒を常温で生理食塩水に30分間含浸した後、遠心分離機を用いて250Gで3分間脱水した後に測定した重量である。
【0037】
また、一実施例の高吸水性樹脂は、生理食塩水に対するゲルベッド透過率(GBP)が23darcy以上、あるいは23〜35darcy、あるいは26〜32darcyであり得、これは一実施例の高吸水性樹脂が有する優れた通液性を定義し得る。
【0038】
前記生理食塩水に対するゲルベッド透過率(GBP)は、韓国特許出願第10−2014−7018005号に記載された以下の方法によりダルシー(Darcy)またはcm
2の単位で測定し得る。1darcyは、1cm当たり1気圧の圧力勾配下で1cPの粘性度を有する液体が1cm
2を介して1秒当たり1mmを流動することを意味する。ゲルベッド透過率は、面積と同じ単位を有し、1darcyは、0.98692×10
-12m
2または0.98692×10
-8cm
2と同じである。より具体的には、本明細書でGBPは、0psiの自由膨潤状態と呼ばれる状態下で膨潤されたゲル層(またはベッド)に対する浸透度(または透過率)(Gel Bed Permeability(GBP) Under 0psi Swell Pressure Test)を意味し、前記GBPは、上記韓国特許出願第10−2014−7018005号の図面に示す装置を用いて測定する。
【0039】
一方、一実施例の高吸水性樹脂は、その表面に適切な親水性が付与され、衛生材に吸収された小便などが高吸水性樹脂粒子の表面に沿って、迅速かつ広く拡散され得、その結果、おむつなど衛生材のウェット(rewet)特性および漏水抑制特性などが大きく向上できる。このような小便などの拡散特性は、後述する実施例のSpreading特性によって確認でき、このようなSpreading特性は、高吸水性樹脂1gを200mmの長さで一定の厚さおよび幅を有するように均一に広げた後、染料が混ざった0.9重量%の生理食塩水2gを前記高吸水性樹脂を広げたところの真ん中に注入して吸収させた時、前記生理食塩水が高吸水性樹脂内で拡散される最大の長さ(mm)で測定および算出し得る。一実施例の高吸水性樹脂は、前記Spreading特性が140〜200mm、あるいは145〜180mmであり得、これにより、衛生材のウェット特性などを大きく向上させることができる。
【0040】
一方、上述した一実施例の諸般物性を満たす高吸水性樹脂は、架橋重合によって含水ゲル重合体を得た後、これを乾燥、粉砕および分級してベース樹脂粉末を形成し、特定表面架橋剤の存在下に表面架橋工程を含む製造方法によって製造できる。
【0041】
したがって、発明の他の実施例によれば、上述した高吸水性樹脂の製造方法が提供される。このような製造方法は、内部架橋剤の存在下に少なくとも一部が中和した酸性基を有する水溶性エチレン系不飽和単量体を架橋重合して第1架橋重合体を含む含水ゲル重合体を形成する段階と、前記含水ゲル重合体を乾燥、粉砕および分級してベース樹脂粉末を形成する段階と、表面架橋剤の存在下に前記ベース樹脂粉末を熱処理して表面架橋する段階とを含み得、前記表面架橋剤は、複数種の環状アルキレンカーボネートの混合物を含み、前記混合物は、水素結合成分によるハンセン溶解度パラメーターが13
MPa1/2以上であるものであり得る。
【0042】
以下、各段階別に前記製造方法について詳細に説明する。
【0043】
先に、他の実施例の製造方法は、架橋重合によって含水ゲル重合体を形成する段階を含む。具体的には、内部架橋剤の存在下に水溶性エチレン系不飽和単量体および重合開始剤を含む単量体組成物を熱重合または光重合して含水ゲル重合体を形成する段階である。
【0044】
前記単量体組成物に含まれる水溶性エチレン系不飽和単量体は、前述したとおりである。
【0045】
また、前記単量体組成物には高吸水性樹脂の製造に一般的に使用される重合開始剤が含まれ得る。非制限的な例として、前記重合開始剤としては重合方法によって熱重合開始剤または光重合開始剤などが使用され得る。ただし、光重合方法によっても、紫外線照射などによって一定量の熱が発生し、また、発熱反応である重合反応の進行によってある程度の熱が発生するので、熱重合開始剤がさらに含まれ得る。
【0046】
ここで、前記光重合開始剤としては、例えば、ベンゾインエーテル(benzoin ether)、ジアルキルアセトフェノン(dialkyl acetophenone)、ヒドロキシルアルキルケトン(hydroxyl alkylketone)、フェニルグリオキシレート(phenyl glyoxylate)、ベンジルジメチルケタール(Benzyl Dimethyl Ketal)、アシルホスフィン(acyl phosphine)およびα−アミノケトン(a−aminoketone)からなる群より選ばれる一つ以上の化合物が使用され得る。そのうちアシルホスフィンの具体的な例として、商用のlucirin TPO、すなわち、2,4,6−トリメチル−ベンゾイル−トリメチルホスフィンオキシド(2,4,6−trimethyl−benzoyl−trimethyl phosphine oxide)が使用され得る。より多様な光重合開始剤については、Reinhold Schwalmの著書である「UV Coatings:Basics,Recent Developments and New Application(Elsevier 2007年)」の115頁に開示されており、これを参照してもよい。
【0047】
そして、前記熱重合開始剤としては、過硫酸塩系開始剤、アゾ系開始剤、過酸化水素、およびアスコルビン酸からなる群より選ばれた一つ以上の化合物が使用され得る。具体的には、過硫酸塩系開始剤としては、過硫酸ナトリウム(Sodium persulfate;Na
2S
2O
8)、過硫酸カリウム(Potassium persulfate;K
2S
2O
8)、過硫酸アンモニウム(Ammonium persulfate;(NH4)
2S
2O
8)等が例に挙げられる。また、アゾ(Azo)系開始剤としては、2,2−アゾビス−(2−アミジノプロパン)二塩酸塩(2,2−azobis(2−amidinopropane) dihydrochloride)、2,2−アゾビス−(N、N−ジメチレン)イソブチルアミジンジヒドロクロリド(2,2−azobis−(N、N−dimethylene)isobutyramidine dihydrochloride)、2−(カルバモイルアゾ)イソブチロニトリル(2−(carbamoylazo)isobutylonitril)、2,2−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]ジヒドロクロリド(2,2−azobis[2−(2−imidazolin−2−yl)propane] dihydrochloride)、4,4−アゾビス−(4−シアノ吉草酸)(4,4−azobis−(4−cyanovaleric acid))等が例に挙げられる。より多様な熱重合開始剤については、Odianの著書である「Principle of Polymerization(Wiley、1981年)」の203頁に開示されており、これを参照してもよい。
【0048】
このような重合開始剤は、前記単量体組成物に対して約0.001〜1重量%の濃度で添加され得る。すなわち、前記重合開始剤の濃度が過度に低い場合、重合速度が遅くなり得、最終製品に残存モノマーが多量抽出され得るため好ましくない。逆に、前記重合開始剤の濃度が過度に高い場合、ネットワークをなす高分子チェーンが短くなり、水可溶成分の含有量が高まり、加圧吸収能が低くなるなど樹脂の物性が低下し得るため好ましくない。
【0049】
一方、前記単量体組成物には前記水溶性エチレン系不飽和単量体の重合による樹脂の物性を向上させるための架橋剤(「内部架橋剤」)が含まれる。前記架橋剤は、含水ゲル重合体を内部架橋させるためのものであり、後述する「面架橋剤」とは別に使用され得る。
【0050】
特に、前記他の実施例の製造方法では、すでに上述した内部架橋剤、例えば、炭素数8〜12のビス(メタ)アクリルアミド、炭素数2〜10のポリオールのポリ(メタ)アクリレートまたは炭素数2〜10のポリオールのポリ(メタ)アリルエーテルなどを使用し得、これにより内部架橋結合が適切に付与された含水ゲル重合体を得ることができる。ただし、内部架橋剤の種類についてはすでに上述したので、これに関するさらなる説明は省略する。
【0051】
また、このような内部架橋剤は、前記内部架橋剤および単量体などを含む単量体組成物の100重量部に対して0.4重量部〜2重量部、あるいは0.4〜1.8重量部の含有量であり得る。これにより、含水ゲル重合体およびベース樹脂粉末の内部架橋度が調整され、高吸水性樹脂の吸収性能および通液性などが最適化され得る。ただし、前記内部架橋剤の含有量が過度に大きくなると、高吸水性樹脂の基本的な吸収性能が低下し得る。
【0052】
この他にも、前記単量体組成物には必要に応じて増粘剤、可塑剤、保存安定剤、酸化防止剤などの添加剤がさらに含まれ得る。
【0053】
また、このような単量体組成物は、前述した単量体、重合開始剤、内部架橋剤などの原料物質が溶媒に溶解した溶液の形態で準備され得る。
【0054】
この時、使用可能な溶媒としては、前述した原料物質を溶解させるものであれば、その構成の限定なしに使用され得る。例えば、前記溶媒としては水、エタノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,4−ブタンジオール、プロピレングリコール、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、メチルエチルケトン、アセトン、メチルアミルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルエテール、トルエン、キシレン、ブチロラクトン、カルビトール、メチルセロソルブアセテート、N,N−ジメチルアセトアミド、またはこれらの混合物などが使用され得る。
【0055】
そして、前記単量体組成物の重合による含水ゲル重合体の形成は、通常の重合方法で行われ得、その工程は、特に限定されない。非制限的な例として、前記重合方法は、重合エネルギー源の種類によって大きく熱重合と光重合に分けられるが、前記熱重合を行う場合にはニーダー(kneader)のような攪拌軸を有する反応器で行われ得、光重合を行う場合には移動可能なコンベヤーベルトが備えられた反応器で行われ得る。
【0056】
一例として、攪拌軸が備えられたニーダーのような反応器に前記単量体組成物を投入し、ここに熱風を供給したり反応器を加熱して熱重合することによって、含水ゲル重合体を得ることができる。この時、反応器に備えられた攪拌軸の形態に応じて反応器排出口に排出される含水ゲル重合体は、数ミリメートル〜数センチメートルの粒子で得られる。具体的には、得られる含水ゲル重合体は、注入される単量体組成物の濃度および注入速度などに応じて多様な形態で得られるが、通常(重量平均)粒径が2〜50mmの含水ゲル重合体が得られる。
【0057】
そして、他の一例として、移動可能なコンベヤーベルトが備えられた反応器で前記単量体組成物に対する光重合を行う場合にはシート形態の含水ゲル重合体が得られる。この時、前記シートの厚さは、注入される単量体組成物の濃度および注入速度によって変わるが、シート全体が均等に重合されるようにしながらも生産速度などを確保するために、通常0.5〜10cmの厚さに調整することが好ましい。
【0058】
このような方法で得られた含水ゲル重合体の通常の含水率は、40〜80重量%であり得る。一方、本明細書全体において「含水率」は、全体含水ゲル重合体の重量に対して占める水分の含有量であり、含水ゲル重合体の重量から乾燥状態の重合体の重量を引いた値を意味する。具体的には、赤外線加熱によって重合体の温度を上げて乾燥する過程で重合体のうち水分蒸発による重量減少分を測定して計算した値で定義する。この時、乾燥条件は、常温で180℃まで温度を上昇させた後180℃で維持する方式であり、総乾燥時間は、温度上昇段階5分を含んで20分に設定して含水率を測定する。
【0059】
次に、得られた含水ゲル重合体を乾燥する段階を行う。必要に応じて前記乾燥段階の効率を上げるために乾燥前に前記含水ゲル重合体を組粉砕する段階をさらに経てもよい。
【0060】
この時、用いられる粉砕機の構成は限定されないが、具体的には、竪型粉砕機(Vertical pulverizer)、ターボカッター(Turbo cutter)、ターボグラインダー(Turbo grinder)、ロータリーカッターミル(Rotary cutter mill)、カッターミル(Cutter mill)、ディスクミル(Disc mill)、シュレッドクラッシャー(Shred crusher)、クラッシャー(Crusher)、チョッパー(chopper)およびディスクカッター(Disc cutter)からなる粉砕機器群より選ばれるいずれか一つを含み得るが、上述した例に限定されない。
【0061】
この時、組粉砕段階は、含水ゲル重合体の粒径が2〜10mmになるように粉砕し得る。粒径2mm未満に粉砕することは、含水ゲル重合体の高い含水率のため技術的に容易でなく、また、粉砕された粒子間の相互凝集現象が現れることもある。一方、粒径10mm超に粉砕する場合、後に行われる乾燥段階の効率増大の効果が微々たる。
【0062】
上記の通り、組粉砕するかあるいは組粉砕段階を経ていない重合直後の含水ゲル重合体に対して乾燥を行う。この時、前記乾燥段階の乾燥温度は、150〜250℃であり得る。乾燥温度が150℃未満である場合、乾燥時間が過度に長くなって最終的に形成される高吸水性樹脂の物性が低下する恐れがあり、乾燥温度が250℃を超える場合、過度に重合体表面のみ乾燥され、後に行われる粉砕工程で微粉が発生し得、最終的に形成される高吸水性樹脂の物性が低下する恐れがある。したがって、前記乾燥温度は150〜200℃が好ましく、さらに好ましくは170〜195℃の温度であり得る。
【0063】
一方、乾燥時間は工程効率などを考慮し、20〜90分間行われるが、これに限定されない。
【0064】
前記乾燥段階の乾燥方法も含水ゲル重合体の乾燥工程で通常用いられる方法であれば、その構成の限定なしに選択して用いてもよい。具体的には、熱風供給、赤外線照射、極超短波照射、または紫外線照射などの方法で乾燥段階を行い得る。このような乾燥段階を行った後の重合体の含水率は、約0.1〜約10重量%であり得る。
【0065】
次に、このような乾燥段階を経て得られた乾燥された重合体を粉砕する段階を行う。
【0066】
粉砕段階後に得られる重合体粉末は、粒径が150〜850μmであり得る。このような粒径に粉砕するために用いられる粉砕機は、具体的には、ピンミル(pin mill)、ハンマーミル(hammer mill)、スクリューミル(screw mill)、ロールミル(roll mill)、ディスクミル(disc mill)またはジョグミル(jog mill)等を用いるが、上述した例に限定されるものではない。
【0067】
そして、このような粉砕段階以後の最終的に製品化される高吸水性樹脂粉末の物性を管理するために、粉砕後に得られる重合体粉末を粒径に応じて分級する別途の過程を経てもよい。好ましくは粒径が150〜850μmの重合体を分級し、このような粒径を有する重合体粉末に対してのみ表面架橋反応段階を経て製品化し得る。このような過程により得られたベース樹脂粉末の粒径分布についてはすでに上述したので、これに関するこれ以上の具体的な説明は省略する。
【0068】
一方、上述した分級工程まで経てベース樹脂粉末を製造した後には、表面架橋剤の存在下に前記ベース樹脂粉末を熱処理しながら表面架橋して高吸水性樹脂粒子を形成し得る。前記表面架橋は、表面架橋剤の存在下に前記ベース樹脂粉末の表面に架橋反応を誘導するものであり、このような表面架橋により前記ベース樹脂粉末の表面には表面架橋層が形成され得る。
【0069】
より具体的には、上述した他の実施例の製造方法では、複数種の環状アルキレンカーボネートの混合物を含み、13
MPa1/2以上の水素結合成分によるハンセン溶解度パラメーターを有する表面架橋剤を使用するが、このような表面架橋剤の種類についてはすでに十分に説明したので、さらなる説明は省略する。
【0070】
前記表面架橋剤を使用した表面架橋工程において、前記表面架橋剤の含有量は、架橋剤の具体的な種類や反応条件などに応じて適切に調整でき、好ましくは前記ベース樹脂粉末100重量部に対して0.001〜5重量部に調整し得る。前記表面架橋剤の含有量が過度に低くいと、表面改質が正しく行われず、最終的な樹脂の物性が低下し得る。逆に過量の表面架橋剤が使用されれば、過度な表面架橋反応により樹脂の基本的な吸収能がかえって低下し得るので、好ましくない。
【0071】
一方、前記表面架橋剤は、これを含む表面架橋液状態でベース樹脂粉末に添加されるが、このような表面架橋液の添加方法の構成に対する限定は特にない。例えば、表面架橋液と、ベース樹脂粉末を反応槽に入れて混合するか、ベース樹脂粉末に表面架橋液を噴射する方法、連続して運転するミキサーにベース樹脂粉末と表面架橋液を連続して供給して混合する方法などを用い得る。
【0072】
そして、前記表面架橋液は、媒質として水および/または親水性有機溶媒をさらに含み得る。これにより、表面架橋剤などがベース樹脂粉末上にまんべんなく分散される利点がある。この時、水および親水性有機溶媒の含有量は、表面架橋剤の均一な溶解/分散を誘導し、ベース樹脂粉末の塊現象を防止すると同時に表面架橋剤の表面浸透の深さを最適化することを目的としてベース樹脂粉末100重量部に対する添加比率を調整して適用し得る。
【0073】
前記表面架橋液が添加されたベース樹脂粉末に対して140℃〜200℃、あるいは170℃〜195℃の反応最高温度で5分〜60分、または10分〜50分、または20分〜45分間表面架橋反応を行い得る。より具体的には、前記表面架橋段階は20℃〜130℃、あるいは40℃〜120℃の初期温度で10分以上、あるいは10分〜30分にかけて前記反応最高温度に昇温し、前記最高温度を5分〜60分間維持して熱処理することにより行われ得る。
【0074】
このような表面架橋工程条件(特に、昇温条件および反応最高温度での反応条件)を満たすことによって、より優れた通液性などの物性を適切に満たす高吸水性樹脂が製造され得る。
【0075】
表面架橋反応のための昇温手段は、特に限定されない。熱媒体を供給するか、熱源を直接供給して加熱してよい。この時、使用可能な熱媒体の種類としては、スチーム、熱風、熱い油のような昇温した流体などを使用し得るが、これに限定されるものではなく、また供給される熱媒体の温度は、熱媒体の手段、昇温速度および昇温目標温度を考慮して適切に選択し得る。一方、直接供給される熱源としては電気による加熱、ガスによる加熱方法が挙げられるが、上述した例に限定されるものではない。
【0076】
上述した製造方法により収得された高吸水性樹脂は、優れた保持容量などの吸収性能および通液性などが維持されながらも、衛生材に吸収された小便などを広く拡散させ得るので、衛生材のウェット特性などを大きく向上させることができる。