特許第6950104号(P6950104)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6950104
(24)【登録日】2021年9月27日
(45)【発行日】2021年10月13日
(54)【発明の名称】車両用ホイールおよび共鳴音低減体
(51)【国際特許分類】
   B60B 21/02 20060101AFI20210930BHJP
   B60B 21/12 20060101ALI20210930BHJP
【FI】
   B60B21/02 J
   B60B21/12 Z
【請求項の数】15
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2020-568565(P2020-568565)
(86)(22)【出願日】2020年5月25日
(86)【国際出願番号】JP2020020486
【審査請求日】2020年12月9日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000241485
【氏名又は名称】豊田通商株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】516293451
【氏名又は名称】豊通オートモーティブクリエーション 株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】古森 祐穂
(72)【発明者】
【氏名】舘野 典
(72)【発明者】
【氏名】小山 剛史
【審査官】 宮地 将斗
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−226991(JP,A)
【文献】 特開2004−306760(JP,A)
【文献】 特開2012−16973(JP,A)
【文献】 特開2015−145181(JP,A)
【文献】 韓国公開特許第10−2004−0022483(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60B 21/00
B60B 21/02
B60B 21/12
G10K 11/16
G10K 11/172
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リムと、
前記リムの外周面に係合することによって同外周面に固定される共鳴音低減体と、を備え、前記共鳴音低減体は、
前記リムの外周面に沿って延びる長尺状の共鳴空間を内蔵する本体部と、
前記本体部に形成されて前記共鳴空間の延設方向の両端の少なくとも一方を同共鳴空間の外部に連通させる開口部と、を有し、
前記共鳴空間および前記開口部が共鳴管を構成しており
前記共鳴空間は、少なくとも一箇所で折り返される態様で、前記リムの外周面に沿って同リムの周方向に延びている車両用ホイール。
【請求項2】
前記開口部は、前記共鳴空間の延設方向の両端の各々に設けられ、それにより、前記共鳴空間の延設方向の両端の各々が対応する前記開口部を通して前記共鳴空間の外部に連通しており、
前記共鳴管は、両端開管型の共鳴管である
請求項1に記載の車両用ホイール。
【請求項3】
前記本体部は、前記車両用ホイールの中心軸線方向において第1端部と第2端部とを有し、
前記共鳴音低減体は、前記本体部の前記第1端部から前記車両用ホイールの径方向における外側に突出するとともに前記車両用ホイールの周方向に延びる係合片を備え、
前記リムの外周面は前記径方向に延びる壁部分を有し、
前記壁部分は前記中心軸線方向に凹んだ係合溝を有し、
前記係合片は前記係合溝に嵌まっている
請求項1または2に記載の車両用ホイール。
【請求項4】
前記リムはウェル部を有し、
前記係合溝は、前記ウェル部の側壁に設けられている
請求項3に記載の車両用ホイール。
【請求項5】
前記係合片は、前記本体部に結合している基端部を有し、
前記係合片は、弾性材料によって形成されており、弾性変形を通じ
て前記基端部を中心に前記中心軸線方向に傾動可能なように構成されている
請求項3または4に記載の車両用ホイール。
【請求項6】
前記共鳴音低減体は、前記本体部の前記第2端部から前記中心軸線方向に突出する係合凸部を備え、
前記壁部分は第1壁部分であり、前記係合溝は第1係合溝であり、
前記リムの外周面は前記径方向に延びる第2壁部分を有し、
前記第2壁部分は、前記中心軸線方向に凹む第2係合溝を有し、
前記係合凸部は前記第2係合溝に嵌まっており、
前記係合片は、前記係合凸部よりも前記径方向の外側に位置して前記第1壁部分に係合する先端を有している請求項3〜5のいずれか一項に記載の車両用ホイール。
【請求項7】
前記共鳴音低減体は、その全体が弾性材料によって構成されており、
前記共鳴音低減体は前記リムの外周面に対向する対向面を有し、同対向面は、前記車両用ホイールの径方向における内側に凸となる態様で突出する突出部を有しており、
前記突出部の突端が前記リムの外周面に押し付けられた状態で、前記本体部における前記車両用ホイールの中心軸線方向の両端部が前記リムの外周面に係合されている請求項1〜6のいずれか一項に記載の車両用ホイール。
【請求項8】
前記開口部の開口面積は前記共鳴空間の断面積と同一である
請求項1〜のいずれか一項に記載の車両用ホイール。
【請求項9】
車両用ホイールのリムの外周面に係合することによって同外周面に固定されるように構成された共鳴音低減体であって、
円弧状に延設される本体部と、
前記本体部の内部に延設された長尺状の共鳴空間と、前記本体部に設けられて前記共鳴空間の延設方向の両端の少なくとも一方を同共鳴空間の外部に連通させる開口部と、を有して共鳴管の少なくとも一部を構成する共鳴空間部と、
前記リムに係合することによって前記本体部を前記リムに固定するように構成された係合部とを備え
前記共鳴空間は、少なくとも一箇所で折り返される態様で前記本体部の延設方向に延びている共鳴音低減体。
【請求項10】
前記開口部は、前記共鳴空間の延設方向の両端の各々に設けられ、それにより、前記共鳴空間の延設方向の両端の各々が対応する前記開口部を通して前記共鳴空間の外部に連通しており、
前記共鳴管は、両端開管型の共鳴管である
請求項に記載の共鳴音低減体。
【請求項11】
前記本体部は、同本体部が形成する円弧の中心軸線方向において第1端部と第2端部とを有し、
前記係合部は、前記本体部の前記第1端部から前記円弧の径方向における外側に突出するとともに前記本体部の延設方向に延びる係合片を含む請求項または10に記載の共鳴音低減体。
【請求項12】
前記係合片は、前記本体部に結合している基端部を有し、
前記係合片は、弾性材料によって形成されており、且つ、弾性変形を通じて前記基端部を中心に前記中心軸線方向に傾動可能なように構成されている請求項11に記載の共鳴音低減体。
【請求項13】
前記係合部は、前記本体部の前記第2端部から前記中心軸線方向に突出する係合凸部をさらに含み、
前記係合片は、前記係合凸部よりも前記径方向の外側に位置して前記リムに係合するように構成された先端を有している請求項11または12に記載の共鳴音低減体。
【請求項14】
前記共鳴音低減体は、その全体が弾性材料によって構成されており、
前記共鳴音低減体は前記円弧の径方向における内側に内周面を有し、同内周面は、前記径方向における内側に凸となる態様で突出する突出部を有しており、
前記本体部における前記円弧の中心軸線方向の両端部の各々に前記係合部が設けられている請求項13のいずれか一項に記載の共鳴音低減体。
【請求項15】
前記開口部の開口面積は前記共鳴空間の断面積と同一である
請求項14のいずれか一項に記載の共鳴音低減体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両用ホイールおよび同車両用ホイールに設けられる共鳴音低減体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車用のホイール組立体は、ホイールと同ホイールに嵌められるタイヤとを有している(例えば特許文献1)。ホイール組立体の内部には、タイヤの内面とホイールのリムの外周面とによって空気室が区画形成されている。そして、車両の走行に際して、この空気室においてタイヤ空洞共鳴音が発生することが知られている。このタイヤ空洞共鳴音は、タイヤが走行路面との接触を通じて加振されて上記空気室内の空気が共鳴振動することによって生じる音であり、ロードノイズ発生の一因になっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−193042号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、車両の商品性の向上のために、車内騒音の低減に対する要求が高くなっており、車内騒音の一種であるロードノイズの低減に対する要求も高くなっている。
【0005】
本開示の目的は、ロードノイズを低減できる車両用ホイールおよび共鳴音低減体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係る車両用ホイールは、リムと、前記リムの外周面に係合することによって同外周面に固定される共鳴音低減体と、を備える。前記共鳴音低減体は、前記リムの外周面に沿って延びる長尺状の共鳴空間を内蔵する本体部と、前記本体部に形成されて前記共鳴空間の延設方向の両端の少なくとも一方を同共鳴空間の外部に連通させる開口部と、を有する。前記共鳴空間および前記開口部が共鳴管を構成している。
【0007】
ホイール組立体の内部には、リムの外周面と車両用ホイールに取り付けられるタイヤの内周面とによって環状のタイヤ空気室が区画形成される。そして、このタイヤ空気室の内部において、同タイヤ空気室内のガス(例えば空気)の気柱共鳴に起因するタイヤ空洞共鳴音が発生する。
【0008】
上記構成によれば、リムの外周面に共鳴音低減体を係合によって固定することにより、タイヤ空気室の内部に共鳴管を配置することができる。そして、この共鳴管内において共鳴周波数(共鳴管の管長に対応する周波数)での共鳴現象を発生させることができる。そのため、共鳴管内で生じる共鳴周波数の音波(いわゆる定在波)と、タイヤ空気室内において生じるタイヤ空洞共鳴音とを干渉させて、両者を少なくとも部分的に相殺することにより、同タイヤ空洞共鳴音の発生を抑えることができる。上記構成によれば、このようにしてタイヤ空洞共鳴音、ひいてはロードノイズを低減することができる。
【0009】
上記車両用ホイールにおいて、前記開口部は、前記共鳴空間の延設方向の両端の各々に設けられてもよい。前記共鳴管は、両端開管型の共鳴管であってもよい。
【0010】
上記構成によれば、一対の開口部により、共鳴空間の延設方向の両端を同共鳴空間の外部、詳しくはタイヤ空気室の内部に連通することができる。そのため、共鳴空間の一端のみがタイヤ空気室に連通されているものと比較して、共鳴空間の内部を空気や水分が流動しやすい構造にすることができる。これにより、共鳴空間の内部に水分が進入した場合において、内部で流動する空気とともに水分が共鳴空間の外部に排出され易くすることができるため、共鳴空間の内部に水分が溜まることによる騒音低減効果の低下を抑えることができる。
【0011】
上記車両用ホイールにおいて、前記本体部は、前記車両用ホイールの中心軸線方向において第1端部と第2端部とを有してもよい。前記共鳴音低減体は、前記本体部の前記第1端部から前記車両用ホイールの径方向における外側に突出するとともに前記車両用ホイールの周方向に延びる係合片を備えてもよい。前記リムの外周面は前記径方向に延びる壁部分を有し、前記壁部分は前記中心軸線方向に凹んだ係合溝を有し、前記係合片は前記係合溝に嵌まっていてもよい。
【0012】
上記構成によれば、係合用のアーム部材として機能する係合片の延設方向が車両用ホイールの径方向であるため、該延設方向が車両用ホイールの中心軸線方向であるものと比較して、共鳴音低減体の中心軸線方向における長さを短くすることができる。そのため、所定幅のリムに、長尺状の共鳴空間を内蔵する共鳴音低減体を、高い自由度で配置することができる。
【0013】
上記車両用ホイールにおいて、前記リムはウェル部を有し、前記係合溝は、前記ウェル部の側壁に設けられていてもよい。
【0014】
上記構成では、車両用ホイールは、リムにおける中心軸線方向の中央領域に、径方向内側に凹んだ形状のウェル部を有する。上記構成によれば、こうした車両用ホイールのウェル部を利用して、上記係合溝を設けることができる。
【0015】
上記車両用ホイールにおいて、前記係合片は、前記本体部に結合している基端部を有し、前記係合片は、弾性材料によって形成されており、弾性変形を通じて前記基端部を中心に前記中心軸線方向に傾動可能なように構成されていてもよい。
【0016】
上記構成によれば、リムの外周面に対して共鳴音低減体を位置合わせした上で、共鳴音低減体をリムに押し付けることにより、共鳴音低減体の係合片を中心軸線方向に弾性変形させつつリムの係合溝に嵌めることができる。こうした簡素な作業を通じて、共鳴音低減体を車両用ホイールに取り付けることができる。
【0017】
上記車両用ホイールにおいて、前記共鳴音低減体は、前記本体部の前記第2端部から前記中心軸線方向に突出する係合凸部を備えてもよい。前記壁部分は第1壁部分であり、前記係合溝は第1係合溝であってもよい。前記リムの外周面は前記径方向に延びる第2壁部分を有し、前記第2壁部分は、前記中心軸線方向に凹む第2係合溝を有し、前記係合凸部は前記第2係合溝に嵌まっていてもよい。
【0018】
上記構成によれば、共鳴音低減体の係合凸部を車両用ホイールの第2係合溝に引っ掛けることにより、リムの外周面に対する共鳴音低減体の位置合わせを行うことができる。そして、その状態で、共鳴音低減体をリムに押し付けることにより、共鳴音低減体を車両用ホイールに取り付けることができる。
【0019】
上記車両用ホイールにおいて、前記共鳴音低減体は、その全体が弾性材料によって構成されていてもよい。前記共鳴音低減体は前記リムの外周面に対向する対向面を有し、同対向面は、前記車両用ホイールの径方向における内側に凸となる態様で突出する突出部を有していてもよい。前記突出部の突端が前記リムの外周面に押し付けられた状態で、前記本体部における前記車両用ホイールの中心軸線方向の両端部が前記リムの外周面に係合されてもよい。
【0020】
上記構成によれば、共鳴音低減体の弾性力を利用して、同共鳴音低減体を車両用ホイールのリムにしっかり取り付けることができる。
【0021】
上記車両用ホイールにおいて、前記共鳴空間は、少なくとも一箇所で折り返される態様で、前記リムの外周面に沿って同リムの周方向に延びていてもよい。
【0022】
共鳴空間の延設長が長くなるほど、低い周波数の騒音を低減することが可能になる。ただし、単に共鳴空間の延設長を長くすると、共鳴音低減体の周方向の長さが長くなるため、その製造のための装置が大きくなってしまう。上記構成によれば、共鳴空間の延設長を長くすることと、共鳴音低減体の周方向の長さを短くすることとの両立を図ることができる。
【0023】
本開示の一態様に係る共鳴音低減体は、車両用ホイールのリムの外周面に係合することによって同外周面に固定されるように構成されている。前記共鳴音低減体は、円弧状に延設される本体部を備える。前記共鳴音低減体はまた、前記本体部の内部に延設された長尺状の共鳴空間と、前記本体部に設けられて前記共鳴空間の延設方向の両端の少なくとも一方を同共鳴空間の外部に連通させる開口部と、を有する共鳴空間部を備え、同共鳴空間部は共鳴管の少なくとも一部を構成する。前記共鳴音低減体はさらに、前記リムに係合することによって前記本体部を前記リムに固定するように構成された係合部を備える。
【0024】
ホイール組立体の内部には、リムの外周面と車両用ホイールに取り付けられるタイヤの内周面とによって環状のタイヤ空気室が区画形成される。そして、このタイヤ空気室の内部において、同タイヤ空気室内のガス(例えば空気)の気柱共鳴に起因するタイヤ空洞共鳴音が発生する。
【0025】
上記構成によれば、リムの外周面に共鳴音低減体を係合によって固定することにより、タイヤ空気室の内部に共鳴管を配置することができる。そして、この共鳴管内において共鳴周波数(共鳴管の管長に対応する周波数)での共鳴現象を発生させることができる。そのため、共鳴管内で生じる共鳴周波数の音波(いわゆる定在波)と、タイヤ空気室内において生じるタイヤ空間共鳴音とを干渉させて、両者を少なくとも部分的に相殺することにより、同タイヤ空間共鳴音の発生を抑えることができる。上記構成によれば、このようにしてタイヤ空洞共鳴音、ひいてはロードノイズを低減することができる。
【0026】
上記共鳴音低減体において、前記開口部は、前記共鳴空間の延設方向の両端の各々に設けられてもよい。前記共鳴管は、両端開管型の共鳴管であってもよい。
【0027】
上記構成によれば、一対の開口部により、共鳴空間の延設方向の両端を同共鳴空間の外部に連通することができる。そのため、共鳴空間の一端のみが同共鳴空間の外部に連通されているものと比較して、共鳴空間の内部を空気や水分が流動しやすい構造にすることができる。これにより、共鳴空間の内部に水分が進入した場合において、内部で流動する空気とともに水分が共鳴空間の外部に排出され易くすることができるため、共鳴空間の内部に水分が溜まることによる騒音低減効果の低下を抑えることができる。
【0028】
上記共鳴音低減体において、前記本体部は、同本体部が形成する円弧の中心軸線方向において第1端部と第2端部とを有してもよい。前記係合部は、前記本体部の前記第1端部から前記円弧の径方向における外側に突出するとともに前記本体部の延設方向に延びる係合片を含んでもよい。
【0029】
上記構成によれば、係合片の突出方向が径方向であるため、係合片の突出方向が中心軸線方向であるものと比較して、共鳴音低減体の中心軸線方向における長さを短くすることができる。これにより、限られた幅のリムに、長尺状の共鳴空間を内蔵する共鳴音低減体を、高い自由度で配置することができる。
【0030】
上記共鳴音低減体において、前記係合片は、前記本体部に結合している基端部を有し、前記係合片は、弾性材料によって形成されており、且つ、弾性変形を通じて前記基端部を中心に前記中心軸線方向に傾動可能なように構成されていてもよい。
【0031】
上記構成によれば、共鳴音低減体の係合片を中心軸線方向に弾性変形させつつリムに嵌めるといった簡単な作業を通じて、共鳴音低減体を車両用ホイールのリムに係止することができる。
【0032】
上記共鳴音低減体において、前記係合部は、前記本体部の前記第2端部から前記中心軸線方向に突出する係合凸部を含んでもよい。
【0033】
上記構成によれば、共鳴音低減体の係合凸部を車両用ホイールのリムの外周面に引っ掛けた状態で、同共鳴音低減体をリムの外周面に押し付けることにより、共鳴音低減体を車両用ホイールに取り付けることができる。
【0034】
上記共鳴音低減体において、前記共鳴音低減体は、その全体が弾性材料によって構成されていてもよい。前記共鳴音低減体は、前記円弧の径方向における内側に内周面を有し、同内周面は、前記径方向における内側に凸となる態様で突出する突出部を有していてもよい。前記本体部における前記円弧の中心軸線方向の両端部の各々に前記係合部が設けられていてもよい。
【0035】
上記構成によれば、突出部の突端がリムに押し付けられた状態で、係合部によって共鳴音低減体をリムに係合させることにより、共鳴音低減体の弾性力を利用して、同共鳴音低減体を車両用ホイールのリムにしっかり固定することができる。
【0036】
上記共鳴音低減体において、前記共鳴空間は、少なくとも一箇所で折り返される態様で前記本体部の延設方向に延びていてもよい。
【0037】
共鳴空間の延設長が長くなるほど、低い周波数の騒音を低減することが可能になる。ただし、単に共鳴空間の延設長を長くすると、共鳴音低減体の長さが長くなるため、その製造のための装置が大きくなってしまう。上記構成によれば、共鳴空間の延設長を長くすることと、共鳴音低減体の長さを短くすることとの両立を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図1】一実施形態の車両ホイールおよびレゾネータの斜視図。
図2図1のレゾネータの斜視図。
図3図1のレゾネータの平面図。
図4図1のレゾネータの正面図。
図5図3の5−5線に沿った断面を示す端面図。
図6図1のレゾネータが取り付けられた状態のホイールの断面を示す端面図。
図7図1のレゾネータの配置態様を示す略図。
図8】タイヤが取り付けられた状態の図1のホイールの正面図。
図9図8の9−9線に沿った断面を示す端面図。
図10】(a)〜(d)はレゾネータをホイールに取り付ける作業の手順を示す略図。
図11】変形例のレゾネータが取り付けられた状態のホイールの断面を示す端面図。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下、車両用ホイールおよび共鳴音低減体の一実施形態について説明する。
【0040】
図8に示すように、ホイール組立体は、ホイール20と、ホイール20に取り付けられるタイヤ28と、を備えている。図1に示すように、ホイール20は、円筒状のリム21を有している。リム21には、その外周を覆うようにタイヤ28(図8参照)が嵌められる。
【0041】
ホイール20は、略円板状のセンターディスク22を有している。センターディスク22は、円筒状のリム21の軸方向両端の開口のうちの一方を塞ぐ態様で、同リム21に一体に設けられている。センターディスク22は、ホイール20の車両への取り付けに用いるボルト穴23を有している。
【0042】
ホイール20は、車内騒音(ロードノイズ)を低減するための共鳴音低減体である複数(本実施形態では、2つ)のレゾネータ30を有している。レゾネータ30は、ホイール20のリム21の外周面に取り付けられている。レゾネータ30は、円弧状をなすようにリム21の外周面に沿って延びている。レゾネータ30は、リム21の周方向において等間隔で並んでいる。
【0043】
以下、レゾネータ30の具体構造について詳しく説明する。
【0044】
図2図5に示すように、レゾネータ30は、円弧状に延びる本体部31を有している。図3および図5に示すように、本体部31の内部には、長尺状の共鳴空間Sが区画形成されている。共鳴空間Sは、基本的にはリム21の外周面に沿って周方向に延びている。共鳴空間Sは、詳しくは、蛇行するように二箇所において折り返されている。共鳴空間Sは、長手方向における各部の断面積が同一になる態様で延設されている。なお、共鳴空間Sの断面積は、例えば、25〜1200平方ミリメートルの範囲で設定される。
【0045】
図2図5に示すように、本体部31は、ホイール20のリム21(図1参照)の外周面に沿って円弧状に延びる底壁32と、同底壁32から径方向外側に突出する突条部33とを有している。突条部33はU字状の断面を有する。また突条部33は、底壁32の外面上に、蛇行するように二箇所において折り返されている。図5に示すように、本実施形態では、突条部33の内面と底壁32の外面とによって区画される空間が上記共鳴空間Sになっている。
【0046】
図2図5に示すように、本体部31は、長尺状の共鳴空間Sの両端にあたる位置に、それぞれ共鳴空間Sの内外を連通する開口部34を有する。この一対の開口部34を通して、共鳴空間Sの延設方向の両端が同共鳴空間Sの外部に連通している。本実施形態では、開口部34の開口面積と共鳴空間Sの断面積とが同一になっている。また、この開口部34は、共鳴空間Sを周方向に向けて開口するように形成されている。
【0047】
図3および図5に示すように、本実施形態では、レゾネータ30の本体部31の内部に、共鳴空間Sおよび一対の開口部34を含む両端開管型の共鳴管が設けられている。なお本実施形態では、共鳴空間Sおよび一対の開口部34が共鳴空間部に相当する。
【0048】
図5に示すように、本体部31における上記リム21の外周面に対向する部分、すなわち底壁32は、同リム21の径方向内側に凸となる態様で、同リム21の中心軸線方向において湾曲して延びている。本実施形態では、本体部31の底壁32の内周面の全体、すなわちリム21の外周面に対向する対向面の全体が、径方向内側(図5の下方側)に凸となる態様で突出する突出部37を形成している。
【0049】
本体部31、言い換えれば底壁32は、中心軸線方向において第1端部(図5の左端)と第2端部(図5の右端)とを有している。底壁32の第1端部には、係合片35が設けられている。板状の係合片35は、底壁32の端部から径方向外側(図5の上方側)に突出するとともに周方向に延びている。係合片35は、詳しくは、先端に向かうに連れて本体部31から離れるように、リム21の中心軸線と直交する面に対して若干傾いた角度で径方向外側(図5の上方側)に突出している。図1および図6に示すように、リム21はその中心軸線方向における中間領域に、径方向内側に凹んだ部分であるウェル部24を有している。ウェル部24は、周壁と、周壁の軸方向両端から径方向外側に延びる2つの側壁と、を有している。係合片35はそのウェル部24の側壁に沿って延びている。また、係合片35は、弾性変形を通じて、その基端部(具体的には、本体部31に結合している端部)を中心に、中心軸線方向において傾動可能になっている。
【0050】
図2図5に示すように、底壁32の第2端部、すなわち上記係合片35が位置する端部とは反対側の端部(図5の右端)には、係合凸部36が設けられている。係合凸部36は、底壁32の第2端部から中心軸線方向に突出するとともに周方向に延びる突条である。図5に示すように、本実施形態では、係合凸部36が中空構造になっており、係合凸部36の内部空間が共鳴空間Sの一部を構成している。
【0051】
レゾネータ30は、弾性を有する合成樹脂材料(本実施形態では、ポリプロピレン)によって形成される。レゾネータ30は、金型装置を用いたブロー成形加工によって形成される。金型装置における型抜き方向は、レゾネータ30の延伸方向の中央位置において径方向外側に向かう方向(図4中および図5中に矢印D1で示す方向)である。レゾネータ30の外面の各部には、この型抜き方向D1に対して、抜き勾配が設定されている。
【0052】
図1および図6に示すように、リム21の外周面には係合溝25が設けられている。係合溝25は、リム21の外周面のうち径方向に延びる壁部分、詳しくは上記ウェル部24の一方の側壁に形成されている。係合溝25は、ウェル部24の側壁が中心軸線方向に凹んだような断面形状を有し、周方向の全周にわたって延びている。本実施形態では、レゾネータ30がホイール20に取り付けられると、同レゾネータ30の係合片35がホイール20の係合溝25に嵌まった状態になる。ウェル部24の側壁は、係合溝25の径方向外側端部において、係合片35の先端に係合する係合突条を有している。なお本実施形態では、係合溝25が第1係合溝に相当し、ウェル部24の側壁における係合溝25が設けられる部分が第1壁部分に相当する。
【0053】
また、リム21の外周面には、係合壁26が設けられている。この係合壁26は、ウェル部24の周壁から径方向外側に突出しており、周方向の全周にわたり延設されている。
【0054】
係合壁26は径方向に延びる壁部分であり、係合壁26の両側面のうち上記係合溝25に対向する側面に係合溝27が設けられている。係合溝27は、係合壁26の側面が中心軸線方向に凹んだような断面形状を有し、周方向の全周にわたって延びている。本実施形態では、レゾネータ30がホイール20に取り付けられると、レゾネータ30の係合凸部36がホイール20の係合溝27に嵌まった状態になる。係合壁26は、その径方向外側端部において、係合凸部36に係合する係合片を有している。なお本実施形態では、係合溝27が第2係合溝に相当し、係合壁26の側面が第2壁部分に相当する。
【0055】
レゾネータ30をホイール20に取り付ける際には、同レゾネータ30はホイール20のウェル部24の側壁の係合溝25と係合壁26の側面の係合溝27との間に嵌められる。詳しくは、レゾネータ30がホイール20に取り付けられた状態(図6に示す状態)では、レゾネータ30の係合片35がホイール20の係合溝25に嵌まった状態になるとともに、レゾネータ30の係合凸部36がホイール20の係合溝27に嵌まった状態になる。このように本実施形態のホイール20では、レゾネータ30の本体部31における中心軸線方向の両端部がリム21の外周面に係合しかつ固定される。
【0056】
係合片35および係合凸部36がホイール20の係合溝25および係合溝27に嵌まった状態のレゾネータ30が、弾性変形していない自由状態にあると仮定する。この状態で、中心軸線に沿ったリム21の断面形状とレゾネータ30の断面形状とを重ねた場合に、リム21とレゾネータ30の底壁32とが若干(例えば、20μm)重なるように、ホイール20およびレゾネータ30が構成されている。
【0057】
そのため、レゾネータ30の係合片35および係合凸部36がホイール20の係合溝25および係合溝27に嵌まると、レゾネータ30の径方向移動が規制されるとともに、同レゾネータ30の底壁32(詳しくは、突出部37の突端)がホイール20のリム21の外周面に押し付けられる。このように本実施形態では、レゾネータ30の弾性力を利用して、同レゾネータ30がホイール20のリム21にしっかり取り付けられる。
【0058】
図1および図7に示すように、リム21には、レゾネータ30が等間隔で複数(本実施形態では2つ)設けられている。各レゾネータ30は、周方向における両端の開口部34の開口位置が周方向において90度ずれた位置になる形状になっている。したがって本実施形態では、2つのレゾネータ30の4つの開口部34が周方向において90度間隔で並ぶように、それらレゾネータ30がリム21に設けられている。
【0059】
また、本実施形態のホイール20では、レゾネータ30の共鳴空間Sの延設長が、以下のように定められている。レゾネータ30の共鳴空間Sの中心を通る中心線LC1(図3および図9)の長さを「LA」とし、リム21の外周面とホイール20に取り付けられるタイヤ28の内周面とによって区画形成される環状のタイヤ空気室29の中心を通る中心線LC2(図8および図9)の長さを「LB」とする。この場合に、関係式「LA/LB=0.50」を満たすように、共鳴空間Sの延設長が定められている。なお本実施形態では、上記中心線LC1は共鳴空間Sの各部の断面(詳しくは、リム21の中心軸線を含む平面における断面)の幾何学的な重心を繋いだ線であり、上記中心線LC2はタイヤ空気室29の各部の断面(詳しくは、リム21の中心軸線を含む平面における断面)の幾何学的な重心を繋いだ線である。共鳴空間Sの延設長は、実質的に中心線LC1の長さLAに等しい。
【0060】
以下、レゾネータ30をホイール20に取り付ける作業について説明する。
【0061】
この作業では先ず、図10(a)および図10(b)に示すように、レゾネータ30の係合凸部36の先端部分が、ホイール20のリム21の係合溝27に挿入されて引っ掛けられる。これにより、リム21の外周面に対するレゾネータ30の位置合わせを行うことができる。
【0062】
その後、図10(b)中に黒塗りの矢印で示すように、係合凸部36と係合溝27との係合部分を中心に、レゾネータ30をホイール20に対して傾動させて、リム21に近づける。
【0063】
こうしたレゾネータ30の傾動の過程においては、図10(c)に示すように、同レゾネータ30の係合片35の外面がホイール20のウェル部24の側壁(詳細には、係合溝25の径方向外側端部に位置する係合突条)に突き当たって押圧されるようになる。このとき、レゾネータ30の係合片35は、ウェル部24の側壁を避けるように弾性変形して、中心軸線方向(図中の右側)に傾動するようになる。
【0064】
その後、図10(d)に示すように、レゾネータ30の底壁32の外面がリム21の外周面、詳しくはウェル部24の周壁に当接した状態になる。そして、係合片35の先端がウェル部24の係合溝25に対向する位置に移動すると、係合片35が弾性変形した状態から復元することによって中心軸線方向(図中の左側)に傾動して、係合溝25に嵌まる。
【0065】
本実施形態では、このようにして、底壁32がウェル部24の周壁に押し付けられた状態で、係合凸部36が係合溝27に係合されるとともに係合片35が係合溝25に嵌められて、レゾネータ30がウェル部24に取り付けられる。
【0066】
本実施形態では、レゾネータ30の係合片35が、自身の弾性変形を通じて、本体部31に結合している端部を中心に中心軸線方向に傾動可能になっている。そのため、リム21の外周面に対してレゾネータ30を位置合わせした上で、同レゾネータ30をリム21に押し付けることにより、レゾネータ30の係合片35を中心軸線方向に弾性変形させつつリム21の係合溝25に嵌めることができる。本実施形態によれば、こうした簡素な作業を通じて、レゾネータ30をホイール20に取り付けることができる。
【0067】
以下、本実施形態のホイール20およびレゾネータ30による作用について説明する。
【0068】
図9に示すように、ホイール組立体の内部には、リム21の外周面とタイヤ28の内周面とによって環状のタイヤ空気室29が区画形成される。そして、このタイヤ空気室29において、同タイヤ空気室29内のガス(例えば空気)の気柱共鳴に起因するタイヤ空洞共鳴音が発生する。
【0069】
本実施形態では、タイヤ空洞共鳴音を低減するために、リム21の外周面にレゾネータ30が取り付けられている。これにより、レゾネータ30の内部に形成された共鳴空間Sおよび一対の開口部34を含む両端開管型の共鳴管が、タイヤ空気室29の内部に配置されている。
【0070】
本実施形態によれば、車両の走行に際して、レゾネータ30における上記共鳴管の内部において、同共鳴管の長さに対応する共鳴周波数での共鳴現象を発生させることができる。そして、この共鳴管内で生じる共鳴周波数の振動(音波)とタイヤ空気室29内で生じるタイヤ空洞共鳴音とを干渉させて両者を少なくとも部分的に相殺することにより、同タイヤ空洞共鳴音の発生を抑えることができる。本実施形態によれば、このようにしてタイヤ空洞共鳴音、ひいてはロードノイズを低減することができる。
【0071】
ここで、タイヤ空洞共鳴音を低減する場合には、同タイヤ空洞共鳴音の周波数と、レゾネータ30の上記共鳴管内で発生する共鳴振動の周波数とが近い値になるほど、タイヤ共鳴音を低減する効果が大きくなる。そして、レゾネータ30の共鳴管内で発生する共鳴振動(詳しくは、一次共鳴振動)の波長F1は、同共鳴管の長さL1の略二倍になる(F1/L1≒2)。一方、タイヤ空気室29内で発生するタイヤ空洞共鳴音(詳しくは、一次共鳴振動)の波長F2は、タイヤ空気室29の周方向の長さL2と略等しくなる(F2/L2≒1)。
【0072】
この点をふまえて、本実施形態では、レゾネータ30の共鳴空間Sの中心線LC1の長さLA(≒レゾネータ30の共鳴管の長さL1)とタイヤ空気室29の中心線LC2の長さLB(≒タイヤ空気室29の周方向における長さL2)との関係が関係式「LA/LB=0.50」を満たすように、共鳴空間Sの延設長が定められている。言い換えれば、レゾネータ30の共鳴管の長さL1が、タイヤ空気室29の周方向における長さL2の略半分になっている。これにより、レゾネータ30の共鳴管内で発生する共鳴振動の波長F1とタイヤ空洞共鳴音の波長F2とを略同一にすることができ、ひいては共鳴振動の周波数とタイヤ空洞共鳴音の周波数とを略同一にすることができる。したがって、タイヤ空洞共鳴音を低減する効果を大きくすることができる。
【0073】
前述したように、タイヤ空洞共鳴音の波長F2は、タイヤ空気室29の周方向の長さL2と略等しい。そのため、タイヤ空洞共鳴音における音圧が高い部分と低い部分との間隔は、上記波長F2の1/4に相当する間隔、言い換えれば周方向における90度間隔になる。本実施形態では、2つのレゾネータ30の4つの開口部34が周方向において90度間隔で並ぶように配置されている。こうした構造を採用することにより、タイヤ空洞共鳴音を低減する効果を大きくすることができる。
【0074】
本実施形態では、レゾネータ30の本体部31に設けられた一対の開口部34により、共鳴空間Sの延設方向の両端が同共鳴空間Sの外部、詳しくはタイヤ空気室29の内部に連通されている。これにより、共鳴空間の一端のみがタイヤ空気室29に連通されているものと比較して、レゾネータ30は共鳴空間Sの内部を空気や水分が流動しやすい構造になっている。そのため、共鳴空間Sの内部に水分が進入した場合において、内部で流動する空気とともに水分が共鳴空間Sの外部に排出され易くなっている。したがって、共鳴空間Sの内部に水分が溜まることによる騒音低減効果の低下を抑えることができる。
【0075】
レゾネータ30内における共鳴管(具体的には、共鳴空間S)の延設長が長くなるほど、波長の長い低周波数の騒音を低減することが可能になる。ただし、単に共鳴空間Sの延設長を長くすると、レゾネータ30の周方向の長さが長くなるため、同レゾネータ30を製造する装置の大型化を招いてしまう。
【0076】
本実施形態では、共鳴空間Sが、蛇行するように二箇所において折り返されている。これにより、レゾネータ30の周方向の長さが長くなることを抑えつつ、共鳴空間Sの延設長を長くすることができる。したがって、共鳴空間Sの延設長が長いレゾネータ30を用いて低周波のタイヤ空洞共鳴音(ロードノイズ)を抑えることができるようになる。しかも、そうしたレゾネータ30を製造する装置の大型化を抑えることもできる。
【0077】
本実施形態のホイール20は、リム21の中心軸線方向における中央領域に、径方向内側に凹んだ部分であるウェル部24が配置されている。このウェル部24の両側壁は径方向に延びている。本実施形態では、そうしたウェル部24の両側壁の一方に、径方向に延びる係合片35が係合する係合溝25が形成されている。そのため、専用の壁部を新たに設けることなく、ウェル部24の側壁を利用して、リム21の外周面に上記係合溝25を設けることができる。これにより、ホイール20の構造の複雑化を抑えることができる。
【0078】
レゾネータ30の係合片35は、ホイール20へのレゾネータ30の取り付けに際して、弾性変形して傾動するアーム部材として機能する。本実施形態では、そうした係合片35が、本体部31における中心軸線方向の端部から径方向外側に突出するとともに周方向に延びている。これにより、係合用のアーム部材が中心軸線方向に延びているものと比較して、レゾネータ30の中心軸線方向における長さを短くすることができる。そのため、所定幅のリム21に、長尺状の共鳴空間Sを内蔵するレゾネータ30を、高い自由度で配置することができる。これにより、レゾネータ30を、騒音低減に適した箇所に適切に配置することができる。
【0079】
以上説明したように、本実施形態によれば、以下に記載する効果が得られる。
【0080】
(1)ホイール20のリム21の外周面にレゾネータ30が係合によって固定されている。そのため、タイヤ空洞共鳴音、ひいてはロードノイズを低減することができる。
【0081】
(2)共鳴空間Sおよび一対の開口部34を含む両端開管型の共鳴管が、タイヤ空気室29の内部に配置されている。そのため、共鳴空間Sの内部に水分が溜まることによる騒音低減効果の低下を抑えることができる。
【0082】
(3)レゾネータ30の本体部31の底壁32の中心軸線方向における端部には、径方向外側に突出するとともに周方向に延びる板状の係合片35が設けられている。ホイール20のウェル部24の側壁には、中心軸線方向に凹む形状の係合溝25が設けられている。そして、レゾネータ30の係合片35がホイール20の係合溝25に嵌まっている。これにより、所定幅のリム21に、長尺状の共鳴空間Sを内蔵するレゾネータ30を、高い自由度で配置することができる。
【0083】
(4)専用の壁部を新たに設けることなく、ホイール20のウェル部24を利用して、リム21の外周面に上記係合溝25を設けることができる。これにより、ホイール20の構造の複雑化を抑えることができる。
【0084】
(5)レゾネータ30の係合片35は、自身の弾性変形を通じて、本体部31に結合している端部を中心に中心軸線方向に傾動可能になっている。これにより、リム21の外周面に対してレゾネータ30を位置合わせした上で、同レゾネータ30をリム21に押し付けるといった簡素な作業を通じて、レゾネータ30をホイール20に取り付けることができる。
【0085】
(6)レゾネータ30の本体部31の底壁32の中心軸線方向における端部には、中心軸線方向に突出するとともに周方向に延びる係合凸部36が設けられている。リム21の外周面から突出する係合壁26の側面には、中心軸線方向に凹んだ断面形状を有して周方向の全周にわたって延びる係合溝27が設けられている。そして、レゾネータ30の係合凸部36がホイール20の係合溝27に嵌まっている。こうした構成によれば、レゾネータ30の係合凸部36の先端部分をホイール20の係合溝27に引っ掛けることにより、リム21の外周面に対するレゾネータ30の位置合わせを行うことができる。
【0086】
(7)レゾネータ30の係合片35および係合凸部36がホイール20の係合溝25および係合溝27に嵌まると、レゾネータ30の径方向移動が規制された状態になるとともに、同レゾネータ30の底壁32がリム21の外周面に押し付けられた状態になる。これにより、レゾネータ30の弾性力を利用して、同レゾネータ30がリム21にしっかり取り付けられる。
【0087】
(8)共鳴空間Sは、蛇行するように二箇所において折り返され、リム21の外周面に沿って周方向に延びている。そのため、共鳴空間Sの延設長が長いレゾネータ30を用いて低周波のタイヤ空間共鳴音を抑えることができるようになる。しかも、そうしたレゾネータ30を製造する装置の大型化を抑えることもできる。
【0088】
なお、上記実施形態は、以下のように変更して実施することができる。上記実施形態および以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0089】
・レゾネータ30の形成材料としては、同レゾネータ30を弾性変形させることの可能な弾性材料であれば、ポリプロピレン以外の合成樹脂材料や、ゴム材料、金属材料など、任意の材料を採用することができる。
【0090】
・レゾネータ30の係合凸部36を中実構造にしてもよい。
【0091】
・共鳴空間Sの延設方向における各部の断面積は、若干異なる大きさにしてもよい。すなわち、共鳴空間Sは、その延設方向において、一定の断面積を有していてもよいし、変化する断面積を有していてもよい。
【0092】
・レゾネータ30の共鳴空間Sの延設長は、共鳴空間Sの中心線LC1の長さLAとタイヤ空気室29の中心線LC2の長さLBとの関係が前記関係式「LA/LB=0.50」を満たすように定めることに限らず、任意に変更することができる。なお、タイヤ空間共鳴音を適正に低減するためには、関係式「0.45≦(LA/LB)≦0.55」を満たすように、共鳴空間Sの延設長を定めることが好ましい。こうした構成によれば、レゾネータ30の内部における前記共鳴管の延設長を、タイヤ空気室29の周方向における長さの半分に近い長さにすることができる。これにより、レゾネータ30の共鳴管内で発生する共鳴振動の周波数とタイヤ空洞共鳴音の周波数とを近い値にすることができるため、タイヤ空洞共鳴音を適正に低減することができる。
【0093】
・共鳴空間Sを、1箇所で折り返される態様で延設したり、3箇所以上で折り返される態様で延設したりしてもよい。また、共鳴空間Sを折り返されない態様で延設することも可能である。
【0094】
・レゾネータ30の底壁32の外面形状は、例えば径方向外側に凸となる態様で中心軸線方向において湾曲する湾曲面にしたり、ウェル部24の周壁と平行に延びる形状にしたりする等、任意に変更可能である。レゾネータの底壁の内周面に、部分的に突出する形状の突出部を設けるようにしてもよい。すなわち、レゾネータの底壁の内周面の全体が突出部を形成していてもよいし、同内周面の一部のみが突出部を形成していてもよい。この突出部としては、例えば周方向に延びる1つ又は複数の突出部を採用したり、半球状で突出する1つ又は複数の突出部を採用したりすることができる。こうした構成によれば、突出部の突端がリム21の外周面に押し付けられた状態で、レゾネータをリム21に嵌めることにより、レゾネータの弾性力を利用して、同レゾネータをリム21にしっかり固定することができる。
【0095】
・レゾネータ30をホイール20に係合させる係合部(係合片35、係合凸部36、係合溝25、係合溝27)の形状は、任意に変更可能である。例えば、レゾネータ30の本体部31の中心軸線方向における両端に、径方向外側に突出する係合片35を設けるようにしてもよい。また、レゾネータ30の本体部31の中心軸線方向における両端に、中心軸線方向に突出する係合片(具体的にはリム21の外周面に沿って延びる係合片)を設けることも可能である。さらには、レゾネータ30の係合部の形状に合わせて、ホイール20に前記係合溝27や前記係合溝25を設けてもよい。また、リム21の外周面に2つの突出壁を設けるとともに、それら突出壁に、係合溝27および係合溝25をそれぞれ設けるようにしてもよい。その他、ウェル部24の一対の側壁に係合溝27および係合溝25をそれぞれ設けることも可能である。
【0096】
・レゾネータ30を、互いに分割された径方向内側部分(底壁32を有する部分)と、径方向外側部分(突条部33を有する部分)とを接合することによって構成してもよい。同構成によれば、内部に共鳴空間Sを有する中空構造のレゾネータを、2つの分割体を接合することによって形成することができる。
【0097】
図11に示すレゾネータ40を採用してもよい。このレゾネータ40は底壁32(図6参照)を有しておらず、突条部33が径方向内側に向かって、つまりリム21に向かって開口している。図11に示す例では、突条部33の内面とリム21の外周面とによって共鳴空間Sを区画形成することができる。同構成においては、突条部33の内部空間と一対の開口部34(図2参照)とが共鳴空間部を構成する。
【0098】
上記構成においては、レゾネータ40におけるリム21の外周面に接する部分に、同部分をシールする弾性材料(例えば軟質の合成ゴム材料)製のシール部材41を設けてもよい。同構成によれば、シール部材41によってレゾネータ40とリム21の外周面との間をシールすることができるため、レゾネータ40とリム21の外周面との隙間から空気(音波)が不要に漏れることが抑えられる。
【0099】
・ホイール20に、レゾネータを1つのみ設けるようにしたり、3つ以上設けるようにしたりしてもよい。また、複数のレゾネータを、リム21の周方向において等間隔で並ぶように配置することに限らず、周方向に異なる間隔を置いて並ぶように配置してもよい。
【0100】
・レゾネータ30を、一対の開口部34の位置が周方向において90度ずれた形状にすることに限らず、任意の角度だけずれた形状にすることができる。なお、タイヤ空間共鳴音を適正に低減するためには、一対の開口部34の位置の周方向における角度間隔が「80度〜100度」の範囲で定められることが好ましい。
【0101】
・共鳴空間の延設方向の一端のみが開口された構造のレゾネータを採用することができる。同構成によれば、共鳴空間および一つの開口部を含む一端開管型の共鳴管を、タイヤ空気室の内部に配置することができる。そして、この共鳴管によってタイヤ空洞共鳴音、ひいてはロードノイズを低減することができる。
【符号の説明】
【0102】
20…ホイール
21…リム
22…センターディスク
23…ボルト穴
24…ウェル部
25…係合溝
26…係合壁
27…係合溝
28…タイヤ
29…タイヤ空気室
30,40…レゾネータ
31…本体部
32…底壁
33…突条部
34…開口部
35…係合片
36…係合凸部
37…突出部
【要約】
レゾネータ(30)は、ホイール(20)のリム(21)の外周面に係合することによって、同外周面に固定されている。レゾネータ(30)は、リム(21)の外周面に沿って延びる長尺状の共鳴空間(S)を内蔵する本体部(31)と、本体部(31)に形成されて共鳴空間(S)の延設方向の両端の少なくとも一方を同共鳴空間(S)の外部に連通させる開口部(34)とを有している。共鳴空間(S)と開口部(34)とが共鳴管を構成している。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11