(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0041】
本発明は、多様な変換を加え、さまざまな実施例を有することができるので、特定実施例を図面に例示し、詳細な説明に詳細に説明する。しかし、これは、本発明を特定の実施形態に対して限定しようとするものではなく、本発明の思想及び技術範囲に含まれる、あらゆる変換、均等物または代替物を含むものと理解しなければならない。本発明を説明するに当って、関連した公知技術についての具体的な説明が、本発明の要旨を不明にする恐れがあると判断される場合、その詳細な説明を省略する。
【0042】
本明細書において、あらゆる化合物または有機基は、特別な言及がない限り、置換または非置換のものであり得る。ここで、「置換された」とは、化合物または有機基に含まれた少なくとも1つの水素がハロゲン原子、炭素数1〜10のアルキル基、ハロゲン化アルキル基、炭素数3〜30のシクロアルキル基、炭素数6〜30のアリール基、ヒドロキシ基、炭素数1〜10のアルコキシ基、カルボン酸基、アルデヒド基、エポキシ基、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、スルホン酸基、及びこれらの誘導体からなる群から選択される置換基に置き換えられたことを意味する。
【0043】
フレキシブルディスプレイの工程で最も重要なことは、高温工程が可能なガラス基板を代替する有機素材の基板材料である。有機素材の基板材料としては、代表的に有機素材中に耐熱性に優れたポリイミドが広く使われている。
【0044】
しかし、ガラス基板からポリイミド基板に置き換えられながら、パネル(panel)工程後、素子特性が変わる傾向があり、これは、有機素材と無機素材との水分透過性及び電気的特性の差から発生する。
【0045】
このような現象を改善するために、基板製作時に、多層で製作するか、有機層と有機層との間に無機層を形成させて製作する。すなわち、キャリア(carrier)基板上にポリイミドをコーティング及び硬化した後、無機層を蒸着させ、その上に再びポリイミドをコーティング及び硬化する方式である。
【0046】
しかし、無機層とポリイミド層のような異種層間の接着力は、一般的に低い傾向を示し、前記二重硬化方式による基板製造方式は、有機層と無機層との間の接着力の低下によって、工程上、浮き上がり現象が発生する。
【0047】
したがって、後続工程を進行するためには、必須的に異種層間の接着力を改善しなければならない。このような、異種層間の接着力の改善のために、従来、異種層間に架橋役割ができる添加剤を導入する方法を使用した。しかし、反応性添加剤を導入する場合、ポリアミド酸との副反応が発生し、これにより、溶液の粘度が変化になって、ポリアミド酸溶液の貯蔵安定性が落ちる現象が発生する。
【0048】
このような従来の問題を解決するために、本発明は、下記化学式1または化学式2で表されるシロキサン化合物を提供する。
【0051】
前記化学式1及び化学式2において、Q
2、Q
3及びQ
4は、それぞれ独立して水素原子、炭素数1〜5のアルキル基、及び炭素数1〜5のアルコキシ基から選択されるものであり、R
1、R
2、R
11及びR
12は、それぞれ独立して単一結合または炭素数1〜20の有機基であり、例えば、単一結合または炭素数1〜20のアルキレン基であり、望ましくは、単一結合または炭素数1〜10のアルキレン基、より望ましくは、単一結合または炭素数1〜5のアルキレン基であり、R
3からR
10は、それぞれ独立して炭素数1〜3の脂肪族基または炭素数6〜12の芳香族基であり、望ましくは、前記R
3からR
10のうち何れか1つ以上が、炭素数6〜12の芳香族基であり得る。
【0052】
m1及びm2は、0以上の整数であり、望ましくは、1以上の整数であり得る。
【0053】
一実施例によれば、前記化学式1または化学式2のシロキサン化合物の分子量は、10000以下であり、望ましくは、8000以下、より望ましくは、6000以下であり、例えば、1000〜10000であり得る。
【0054】
本発明による前記化学式1または化学式2のような構造のシロキサン化合物は、ポリイミド前駆体であるポリアミド酸との反応性がなくて、常温貯蔵安定性が向上したポリイミド前駆体組成物を提供することができる。
【0055】
本発明によるシロキサン化合物は、下記化学式aの化合物と下記化学式b−1及び化学式b−2の化合物とを反応させて製造可能である。
【0058】
[化学式b−2]
【化13】
前記化学式b−1及び化学式b−2の化合物は、同一であり、例えば、下記化学式bの化合物であり得る。
【0060】
前記化学式a、化学式b−1、化学式b−2及び化学式bにおいて、X
1及びX
2は、それぞれ独立してアンハイドライド基、アミン基、カルボキシル基、及びエステル基から選択されるものであり、R
1及びR
2は、それぞれ独立して単一結合または炭素数1〜20の有機基であり、例えば、単一結合または炭素数1〜20のアルキレン基であり、望ましくは、単一結合または炭素数1〜10の有機基、より望ましくは、単一結合または炭素数1〜5の有機基であり、R
3からR
10は、それぞれ独立して炭素数1〜3の脂肪族基または炭素数6〜12の芳香族基であり、例えば、前記R
3からR
10のうち何れか1つは、炭素数6〜12の芳香族基であり、m1及びm2は、それぞれ独立して0以上の整数であり、望ましくは、1以上の整数であり、Q
1は、アミン基、イソシアネート基、及びアンハイドライド基のうちから選択されるものであり、望ましくは、アミン基及びアンハイドライド基のうちから選択されるものである。
【0061】
Q
2、Q
3及びQ
4は、それぞれ独立して水素原子、炭素数1〜5のアルキル基、及び炭素数1〜5のアルコキシ基から選択されるものである。
【0062】
一実施例によれば、化学式1の化合物は、下記化学式1−1で表される化合物であり、化学式2の化合物は、化学式2−1で表される化合物であり得る。
【0065】
本発明は、前記シロキサン化合物を含むポリイミド前駆体組成物を提供する。
【0066】
本発明は、ポリイミド前駆体であるポリアミド酸と反応しないシロキサン化合物が添加されたポリイミド前駆体組成物を提供することにより、常温での貯蔵安定性が向上したポリイミド前駆体組成物を提供することができる。例えば、前記ポリイミド前駆体組成物は、常温で5日間放置する場合、粘度変化が10%以下であり得る。すなわち、ポリアミド酸と前記シロキサン化合物との間の副反応が発生しないので、組成物の粘度変化がほとんど起こらず、これにより、溶液の貯蔵安定性が向上する。
【0067】
また、本発明によるシロキサン化合物をポリイミドフィルムの接着増進剤として使用することにより、ポリイミドフィルムと無機素材基板との接着力を向上させ、これよりパネル工程の後工程で無機素材基板とポリイミドフィルムとの接着力の減少による浮き上がり現象を低下させることができる。また、本発明によるシロキサン化合物は、ポリイミドフィルムの厚さ方向位相差を減少させて、光学等方性を示し、無機素材基板に対する残留応力を減少させることができる。
【0068】
一実施例によれば、前記シロキサン化合物は、前記ポリイミド樹脂組成物に組成物総重量を基準に0.5〜15重量%に添加され、望ましくは、1〜10重量%、より望ましくは、1〜5重量%に添加される。前記シロキサン化合物を0.5重量%未満に添加する場合、接着力が向上効果が表われず、15重量%よりも超過して添加する場合には、ヘイズ(Haze)が増加する。
【0069】
一実施例によれば、前記ポリイミド前駆体組成物から製造されたポリイミドフィルムは、無機素材基板との残留応力が35MPa以下であり、ガラスストレスを示すReal Bow値が35μm以下であって、コーティング−硬化後、基板が反る現象が減少して、平らなポリイミドフィルムを提供することができる。
【0070】
一実施例によれば、前記ポリイミドフィルムの厚さ方向位相差が、420nm以下であり得る。
【0071】
前記ポリイミド前駆体は、1つ以上のテトラカルボン酸二無水物及びジアミンを反応させて製造されたポリアミド酸を含むものである。
【0072】
本発明によるポリアミド酸の製造に使われるテトラカルボン酸二無水物は、分子内芳香族、脂環族、または脂肪族から選択される4価の有機基、またはこれらの組合わせ基であって、脂肪族、脂環族または芳香族が単一結合や架橋構造を通じて互いに連結された4価の有機基、望ましくは、単環式または多環式芳香族、単環式または多環式脂環族、またはこれらのうち、2つ以上の組合わせから選択される4価の有機基を分子構造内に含むテトラカルボン酸二無水物から選択される1つ以上であり得る。
【0073】
例えば、前記テトラカルボン酸二無水物は、下記化学式4aから化学式4gからなる群から選択される4価の有機基を含みうる。
【0081】
前記化学式4aから化学式4gにおいて、R
31からR
42は、それぞれ独立して炭素数1〜10のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基など)または炭素数1〜10のフルオロアルキル基(例えば、フルオロメチル基、パーフルオロエチル基、トリフルオロメチル基など)であり、a
1は、0〜2の整数、b
1は、0〜4の整数、c
1は、0〜8の整数、d
1及びe
1は、それぞれ独立して0〜3の整数、f
1及びg
1は、それぞれ独立して0〜4の整数、h
1及びj
1は、それぞれ独立して0〜3の整数、i
1は、0〜4の整数、k
1及びl
1は、それぞれ独立して0〜4の整数であり、A
1、A
2及びA
3は、それぞれ独立して単一結合、−O−、−CR
46R
47−、−C(=O)−、−C(=O)O−、−C(=O)NH−、−S−、−SO
2−、フェニレン基、及びこれらの組合わせからなる群から選択されるものであり、この際、前記R
46及びR
47は、それぞれ独立して水素原子、炭素数1〜10のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基など)及び炭素数1〜10のフルオロアルキル基(例えば、フルオロメチル基、フルオロエチル基、トリフルオロメチル基など)からなる群から選択されるものである。
【0082】
または、前記テトラカルボン酸二無水物は、下記化学式5aから化学式5sから選択される4価の有機基を含むものである。
【0084】
また、化学式5aから化学式5sの4価の有機基は、4価の有機基内に存在する1以上の水素原子が炭素数1〜10のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基など)または炭素数1〜10のフルオロアルキル基(例えば、フルオロメチル基、パーフルオロエチル基、トリフルオロメチル基など)、ヒドロキシル基、スルホン酸基、及びカルボン酸基からなる群から選択される置換基に置換されても良い。
【0085】
本発明によるポリアミド酸の製造に使われるジアミンは、分子内芳香族、脂環族、または脂肪族の2価の有機基や、またはこれらの組合わせ基であって、脂肪族、脂環族または芳香族が架橋構造を通じて互いに連結された2価の有機基、望ましくは、単環式または多環式芳香族、単環式または多環式脂環族、またはこれらの組合わせから選択される構造を含む2価の有機基を分子構造内に含むジアミンから選択される1つ以上であり得る。
【0086】
例えば、本発明によるジアミンは、下記化学式6aから化学式6dからなる群から選択される2価の有機基を含むものである。
【0089】
前記化学式6bにおいて、L
1は、単一結合、−O−、−CO−、−S−、−SO
2−、−C(CH
3)
2−、−C(CF
3)
2−、−CONH−、−COO−、−(CH
2)n
1−、−O(CH
2)n
2O−、−OCH
2−C(CH
3)
2−CH
2O−または−COO(CH
2)n
3OCO−であり、前記n
1、n
2及びn
3は、それぞれ独立して1〜10の整数である。
【0091】
前記化学式6cにおいて、L
2及びL
3は、互いに同じか異なり、それぞれ単一結合、−O−、−CO−、−S−、−SO
2−、−C(CH
3)
2−、−C(CF
3)
2−、−CONH−、−COO−、−(CH
2)n
1−、−O(CH
2)n
2O−、−OCH
2−C(CH
3)
2−CH
2O−または−COO(CH
2)n
3OCO−であり、前記n
1、n
2及びn
3は、それぞれ独立して1〜10の整数である。
【0093】
前記化学式6dにおいて、L
4、L
5及びL
6は、互いに同じか異なり、それぞれ単一結合、−O−、−CO−、−S−、−SO
2−、−C(CH
3)
2−、−C(CF
3)
2−、−CONH−、−COO−、−(CH
2)n
1−、−O(CH
2)n
2O−、−OCH
2−C(CH
3)
2−CH
2O−または−COO(CH
2)n
3OCO−であり、前記n
1、n
2及びn
3は、それぞれ独立して1〜10の整数である。
【0094】
または、前記ジアミンは、下記化学式7aから化学式7rからなる群から選択される2価の有機基を含みうる。
【0096】
前記化学式7q及び化学式7rにおいて、Aは、単一結合、−O−、−CO−、−S−、−SO
2−、−C(CH
3)
2−、−C(CF
3)
2−、−CONH−、−COO−、−(CH
2)n
1−、−O(CH
2)n
2O−、−OCH
2−C(CH
3)
2−CH
2O−または−COO(CH
2)n
3OCO−であり、v及びzは、それぞれ独立して0または1である。
【0097】
また、化学式7aから化学式7rの4価の有機基内に存在する1以上の水素原子は、−F、−Cl、−Br及び−Iからなる群から選択されるハロゲン原子、ヒドロキシル基(−OH)、チオール基(−SH)、ニトロ基(−NO
2)、シアノ基、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜4のハロゲノアルコキシ、炭素数1〜10のハロゲノアルキル、炭素数6〜20のアリール基から選択される置換基に置換される。
【0098】
一実施例によれば、前記ジアミンは、下記化学式8の2価の有機基を分子構造内に含むジアミンを必ず1つ以上含みうる。
【0100】
前記化学式8において、R
a及びR
bは、それぞれ独立して水素原子、−F、−Cl、−Br及び−Iからなる群から選択されるハロゲン原子、ヒドロキシル基(−OH)、チオール基(−SH)、ニトロ基(−NO
2)、シアノ基、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜4のハロゲノアルコキシ、炭素数1〜10のハロゲノアルキル、炭素数6〜20のアリール基から選択される置換体であり、望ましくは、ハロゲン原子、ハロゲノアルキル、アルキル基、アリール基及びシアノ基から選択される置換基であり得る。例えば、前記ハロゲン原子は、フルオロ(−F)であり、ハロゲノアルキル基は、フルオロ原子を含む炭素数1〜10のフルオロアルキル基であって、フルオロメチル基、パーフルオロエチル基、トリフルオロメチル基などから選択されるものであり、前記アルキル基は、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基から選択されるものであり、前記アリール基は、フェニル基、ナフタレニル基から選択されるものであり、より望ましくは、フルオロ原子及びフルオロアルキル基などのフルオロ原子を含む置換基であり得る。
【0101】
Qは、単一結合、−O−、−CR'R''−、−C(=O)−、−C(=O)O−、−C(=O)NH−、−S−、−SO
2−、フェニレン基、及びこれらの組合わせからなる群から選択されるものであり、この際、前記R'及びR''は、それぞれ独立して水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、及び炭素数1〜10のフルオロアルキル基からなる群から選択されるものである。
【0102】
この際、本発明の「フルオロ系置換基」とは、「フルオロ原子置換基」だけではなく、「フルオロ原子を含有する置換基」をいずれも意味するものである。
【0103】
一実施例によれば、前記テトラカルボン酸二無水物は、下記化学式9の構造を含むテトラカルボン酸二無水物を含み、前記化学式9のテトラカルボン酸二無水物を全体テトラカルボン酸二無水物中に10mol%以上、望ましくは、30mol%以上含みうる。
【0105】
本発明の一実施例によれば、テトラカルボン酸二無水物とジアミンは、1:1.1〜1.1:1mol比で反応し、反応性の向上及び工程性の向上のために、テトラカルボン酸二無水物の総含量が、ジアミンに比べて、過量で反応するか、または、ジアミンの含量が、テトラカルボン酸二無水物の総含量に比べて、過量で反応することが望ましい。
【0106】
本発明の一実施例によれば、テトラカルボン酸二無水物の総含量とジアミンの含量のmol比は、1:0.98〜0.98:1、望ましくは、1:0.99〜0.99:1に反応することが望ましい。
【0107】
ポリアミド酸の重合反応時に使用可能な有機溶媒としては、γ−ブチロラクトン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノンなどのケトン類;トルエン、キシレン、テトラメチルベンゼンなどの芳香族炭化水素類;エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテルなどのグリコールエーテル類(セロソルブ);酢酸エチル、酢酸ブチル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エタノール、プロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、カルビトール、ジメチルアセトアミド(DMAc)、N,N−デ−ジエチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジエチルホルムアミド(DEF)、N−メチルピロリドン(NMP)、N−エチルピロリドン(NEP)、N,N−ジメチルメトキシアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ピリジン、ジメチルスルホン、ヘキサメチルホスホルアミド、テトラメチルウレア、N−メチルカプロラクタム、テトラヒドロフラン、m−ジオキサン、P−ジオキサン、1,2−ジメトキシエタン、ビス(2−メトキシエチル)エーテル、1,2−ビス(2−メトキシエトキシ)エタン、ビス[2−(2−メトキシエトキシ)]エーテル、エクアミド(Equamide)M100、エクアミドB100などであり、これらのうち、1種単独または2種以上の混合物が使われる。
【0108】
例えば、前記重合反応に使われる有機溶媒としては、25℃での分配係数(LogP値)が正数であり、沸点が300℃以下であるものであり、より具体的に、分配係数LogP値は、0.01〜3、または0.01〜2、または0.1〜2であり得る。
【0109】
前記分配係数は、ACD/Labs社のACD/Percepta platformのACD/LogP moduleを使用して計算され、ACD/LogP moduleは、分子の2D構造を用いてQSPR(Quantitative Structure−Property Relationship)方法論の基盤のアルゴリズムを利用する。
【0110】
前記分配係数(LogP)正数である溶媒が、アミド系溶媒であり、前記アミド系溶媒は、ジメチルプロパンアミド(dimethylpropanamide、DMPA)、ジエチルプロパンアミド(diethylpropanamide、DEPA)、N,N−ジエチルアセトアミド(N,N−diethylacetamide、DEAc)、N,N−ジエチルホルムアミド(N,N−diethylformamide、DEF)、N−エチルピロリドン(N−ethylpyrrolidone、NEP)から選択される1つ以上であり得る。
【0111】
分配係数が正数である有機溶媒は、フレキシブル(flexible)なポリイミド反復構造と異なるポリイミド構造の極性差による相分離が引き起こす白濁現象を減少させることができる。従来、相分離を解決するために、2種の有機溶媒を使用したが、分配係数正数である有機溶媒を1つのみ使用することだけでも、白濁現象を減少させて、より透明なポリイミドフィルムを製造することができる。
【0112】
前記問題を解決するために、極性溶媒と非極性溶媒とを混合して使用する方法もあるが、極性溶媒の場合、揮発性が高い傾向がある。したがって、製造工程上であらかじめ揮発されるなどの問題が発生し、このために、工程の再現性が低下するなどの問題が発生するだけではなく、相分離問題を完全に改善することができず、製造されたポリイミドフィルムのヘイズが高くなって、透明度が低下する。より具体的には、溶媒の分子が両親媒性を有する構造を含む溶媒を使用することにより、極性溶媒を使用することによる工程上の問題を解決するだけではなく、両親媒性を有する分子構造によって、1種類の溶媒のみを使用しても、ポリイミドを均一に分布させて、相分離による問題を解決し、これにより、ヘイズ特性が著しく改善されたポリイミドを提供することができる。
【0113】
溶媒の分配係数(LogP)値が正数であるということは、溶媒の極性が疎水性であることを意味するが、本発明者の研究によれば、分配係数値が正数である特定の溶媒を使用してポリイミド前駆体組成物を製造すれば、溶液のディウェッティング(dewetting)特性が改善されることが分かった。また、本発明は、前記のようにLogPが正数を有する溶媒を使用することにより、レベリング剤のような素材の表面張力及び塗膜の平滑性を調節する添加剤を使用せずとも、溶液のディウェッティング現象を制御し、これは、添加剤などの付加的な添加剤を使用しないので、最終生成物に低分子物質が含有されるなどの品質及び工程上の問題を除去するだけではなく、より効率的に均一な特性を有するポリイミドフィルムを形成しうる効果がある。
【0114】
例えば、ポリイミド前駆体組成物をガラス基板にコーティングする工程において、硬化時または加湿条件でコーティング液の放置時に、コーティング層の収縮による溶液のディウェッティング現象が発生する。このようなコーティング溶液のディウェッティング現象は、フィルムの厚さの偏差をもたらして、これによるフィルムの耐屈曲性の不足によってフィルムが切れるか、カッティング時に、エッジが割れる現象が表われて、工程上の作業性が悪く、収率が低下するという問題が発生する。
【0115】
また、基板上に塗布されたポリイミド前駆体組成物に極性を有する微細異物が流入される場合、LogPが負数である極性の溶媒を含むポリイミド前駆体組成物では、前記異物が有する極性によって異物の位置を基準に散発的なコーティングの亀裂または厚さの変化が起こりうるが、LogPが正数である疎水性の溶媒を使用する場合には、極性を有する微細異物が流入される場合にも、コーティングの亀裂による厚さの変化などの発生が減少または抑制される。
【0116】
具体的に、LogPが正数である溶媒を含むポリイミド前駆体組成物は、下記式1と定義されるディウェッティング率(dewetting ratio)が0〜0.1%以下であり得る。
【0117】
[式1]
ディウェッティング率(%)=[(A−B)/A]X100
【0118】
前記式1において、A:基板(100mmX100mm)上にポリイミド前駆体組成物が完全にコーティングされた状態での面積であり、B:ポリイミド前駆体組成物またはPIフィルムがコーティングされた基板の縁部先端からディウェッティング現象が発生した後の面積である。
【0119】
このようなポリイミド前駆体組成物及びフィルムのディウェッティング現象は、ポリイミド前駆体組成物溶液をコーティングした後、30分以内に発生し、特に、縁部から巻き込まれ始めることにより、縁部の厚さが厚くなってしまう恐れがある。
【0120】
本発明によるポリイミド前駆体組成物を基板にコーティングした後、10分以上、例えば、10分以上、例えば、40分以上の時間湿度条件で放置した後の前記コーティングされた樹脂組成物溶液のディウェッティング率が0.1%以下であり、例えば、20〜30℃の温度で、40%以上の湿度条件、より具体的には、40〜80%の範囲の湿度条件、すなわち、40%、50%、60%、70%、80%のそれぞれの湿度条件で、例えば、50%の湿度条件で10〜50分間放置された以後にも、0.1%以下の非常に小さなディウェッティング率を示し、望ましくは、0.05%、より望ましくは、ほぼ0%に近いディウェッティング率を示すことができる。
【0121】
前記のようなディウェッティング率は、硬化以後にも保持されるものであり、例えば、ポリイミド前駆体組成物を基板にコーティングした後、10分以上、例えば、20〜30℃の温度で、40%以上の湿度条件、より具体的には、40〜80%の範囲の湿度条件、すなわち、40%、50%、60%、70%、80%のそれぞれの湿度条件で、例えば、50%の湿度条件で10〜50分間放置した後、硬化されたポリイミドフィルムのディウェッティング率が0.1%以下であり得る。すなわち、熱処理による硬化工程でも、ディウェッティングがほとんど起こらないか、全く起こらず、具体的には、0.05%、より望ましくは、ほぼ0%に近いディウェッティング率を示すことができる。
【0122】
本発明によるポリイミド前駆体組成物は、このようなディウェッティング現象を解決することにより、より均一な特性を有するポリイミドフィルムを収得することができて、製造工程の収率をより向上させうる。
【0123】
テトラカルボン酸二無水物をジアミンと反応させる方法は、溶液重合など通常のポリイミド前駆体重合の製造方法によって実施し、具体的には、ジアミンを有機溶媒中に溶解させた後、結果として収得された混合溶液にテトラカルボン酸二無水物を添加して重合反応させることで製造可能である。
【0124】
前記重合反応は、不活性ガスまたは窒素気流下に実施され、無水条件で実行可能である。
【0125】
また、前記重合反応時に、反応温度は、−20〜80℃、望ましくは、0〜80℃で実施される。反応温度が過度に高い場合、反応性が高くなって、分子量が大きくなり、前駆体組成物の粘度が上昇することにより、工程上に不利であり得る。
【0126】
前記製造方法によって製造されたポリイミド前駆体組成物は、フィルム形成工程時の塗布性などの工程性を考慮して、前記組成物が適切な粘度を有させる量で固形分を含むことが望ましい。一実施例によれば、全体ポリイミド前駆体の含量が8〜25重量%になるように含量を調節し、望ましくは、10〜25重量%、より望ましくは、10〜20重量%以下に調節することができる。
【0127】
または、前記ポリイミド前駆体組成物が、3,000cP以上、あるいは4,000cP以上の粘度を有するように調節するものであり、前記ポリイミド前駆体組成物の粘度は、10,000cP以下、望ましくは、9,000cP以下、より望ましくは、8,000cP以下の粘度を有するように調節することが望ましい。ポリイミド前駆体組成物の粘度が、10,000cPを超過する場合、ポリイミドフィルム加工時に、脱泡の効率性が低下するので、工程上の効率だけではなく、製造されたフィルムは、気泡の発生によって表面粗度が不良であって、電気的、光学的、機械的特性が低下する。
【0128】
また、本発明によるポリイミドの分子量は、10,000〜200,000g/mol、あるいは20,000〜100,000g/mol、あるいは30,000〜100,000g/molの重量平均分子量を有するものである。また、本発明によるポリイミドの分子量分布(Mw/Mn)は、1.1〜2.5であることが望ましい。ポリイミドの重量平均分子量または分子量分布が、前記範囲を外れる場合、フィルムの形成が難しいか、または透過度、耐熱性及び機械的特性などポリイミド系フィルムの特性が低下する恐れがある。
【0129】
引き続き、前記重合反応の結果として収得されたポリイミド前駆体をイミド化させることにより、透明ポリイミドフィルムを製造することができる。この際、前記イミド化工程は、具体的に化学イミド化または熱イミド化の方法がある。
【0130】
例えば、前記重合されたポリイミド前駆体組成物に脱水剤及びイミド化触媒を添加した後、50〜100℃の温度で加熱して、化学的反応によってイミド化させるか、または前記溶液を還流させながら、アルコールを除去してイミド化させる方法でポリイミドが得られる。
【0131】
化学イミド化の方法において、イミド化触媒として、ピリジン、トリエチルアミン、ピコリンまたはキノリンなどが使われ、その他にも、置換または非置換の窒素含有複素環化合物、窒素含有複素環化合物のN−オキシド化合物、置換または非置換のアミノ酸化合物、ヒドロキシル基を有する芳香族炭化水素化合物または芳香族複素環状化合物があり、特に、1,2−ジメチルイミダゾール、N−メチルイミダゾール、N−ベンジル−2−メチルイミダゾール、2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、5−メチルベンズイミダゾールなどの低級アルキルイミダゾール、N−ベンジル−2−メチルイミダゾールなどのイミダゾール誘導体、イソキノリン、3,5−ジメチルピリジン、3,4−ジメチルピリジン、2,5−ジメチルピリジン、2,4−ジメチルピリジン、4−n−プロピルピリジンなどの置換ピリジン、p−トルエンスルホン酸などが使われることもある。
【0132】
前記脱水剤としては、無水酢酸などの酸無水物が使われる。
【0133】
または、前記ポリイミド前駆体組成物を基板上に塗布した後、熱処理する方法でイミド化することができる。
【0134】
前記ポリイミド前駆体組成物は、有機溶媒中に溶解された溶液の形態であり、このような形態を有する場合、例えば、ポリイミド前駆体を有機溶媒中で合成した場合、溶液は、得られる反応溶液のそれ自体でも良く、また、この反応溶液を他の溶媒に希釈したものでも良い。また、ポリイミド前駆体を固形粉末として得た場合には、それを有機溶媒に溶解させて溶液にしたものでも良い。
【0135】
本発明は、前記ポリイミド前駆体溶液に前記化学式1または化学式2で表される1つ以上のシロキサン化合物を含むポリイミド前駆体組成物を提供する。
【0136】
一実施例によれば、前記シロキサン化合物は、ポリイミド前駆体組成物総重量を基準に0.5〜15重量%に添加され、望ましくは、1〜10重量%に添加され、より望ましくは、1〜5重量%に添加される。前記シロキサン化合物を0.5重量%未満に添加する場合、接着力が向上せず、15重量%よりも超過して添加する場合には、ヘイズが発生する。
【0137】
本発明は、前記ポリイミド前駆体組成物を基板上に塗布する段階;前記塗布されたポリイミド前駆体組成物を熱処理する段階;を含むポリイミドフィルムの製造方法を提供する。
【0138】
この際、前記基板としては、ガラス、金属基板またはプラスチック基板などが特に制限なしに使われ、そのうちでも、ポリイミド前駆体に対するイミド化及び硬化工程のうち、熱及び化学的安定性に優れ、別途の離型剤処理なしでも、硬化後、形成されたポリイミド系フィルムに対して損傷なしに容易に分離されるガラス基板が望ましい。
【0139】
塗布工程は、通常の塗布方法によって実施され、具体的には、スピンコーティング法、バーコーティング法、ロールコーティング法、エアナイフ法、グラビア法、リバースロール法、キスロール法、ドクターブレード法、スプレー法、浸漬法またはブラシ法などが用いられうる。そのうちでも、連続工程が可能であり、ポリイミドのイミド化率を増加させることができるキャスティング法によって実施されることがより望ましい。
【0140】
また、前記ポリイミド前駆体組成物は、最終的に製造されるポリイミドフィルムがディスプレイ基板用として適した厚さを有させる厚さの範囲で基板上に塗布されうる。具体的には、10〜30μmの厚さにする量で塗布されうる。
【0141】
前記ポリイミド前駆体組成物塗布後、硬化工程に先立って、ポリイミド前駆体組成物内に存在する溶媒を除去するための乾燥工程が選択的にさらに実施される。
【0142】
前記乾燥工程は、通常の方法によって実施され、具体的に、140℃以下、あるいは80〜140℃の温度で実施される。乾燥工程の実施温度が80℃未満であれば、乾燥工程が長くなり、140℃を超過する場合、イミド化が急激に進行して、均一な厚さのポリイミドフィルムの形成が難しい。
【0143】
引き続き、前記ポリイミド前駆体組成物を基板に塗布し、IRオーブン、熱風オーブンやホットプレート上で熱処理され、この際、前記熱処理温度は、300〜500℃、望ましくは、320〜480℃の温度範囲であり、前記温度範囲内で多段階加熱処理で進行することもできる。前記熱処理工程は、20〜70分間進行し、望ましくは、20〜60分間進行しうる。
【0144】
以後、基板上に形成されたポリイミドフィルムを通常の方法によって基板から剥離することにより、ポリイミドフィルムが製造可能である。
【0145】
本発明のポリイミド前駆体組成物に含有される有機溶媒としては、前記重合反応時に使われる有機溶媒と同一なものが使われる。
【0146】
また、効果に損傷されない範囲であれば、シランカップリング剤、架橋性化合物、イミド化を効率的に進行させる目的としてイミド化促進剤などを添加しても良い。
【0147】
本発明は、前記ポリイミド前駆体組成物から製造されたポリイミドフィルムを含むディスプレイ基板を提供する。
【0148】
一実施例によれば、前記ポリイミドフィルムは、ヘイズが2以下、望ましくは、1以下、または0.9以下のヘイズ値を有し、例えば、0.2以下の非常に低いヘイズ値を有して、無色透明なポリイミドフィルムを提供することができる。この際、前記ポリイミドフィルムの厚さは、8〜15μmであり、望ましくは、10〜12μmであり得る。
【0149】
また、5〜30μmのフィルムの厚さの範囲で380〜760nmの波長の光に対する透過度が80%以上であり、黄色度(YI)が約15以下、望ましくは、約10以下、より望ましくは、約8以下の値を有する無色透明ポリイミドフィルムであり、例えば、7以下のYI値を有しうる。前記のように、優れた光透過度及び低い黄色度を有することにより、無色透明なポリイミドフィルムを提供することができる。
【0150】
また、前記ポリイミドフィルムは、厚さ方向の位相差値(R
th)が約1000nm以下、または0〜700nm、望ましくは、0〜600nm、より望ましくは、0〜500nmであり、例えば、420nm以下のR
thを有することにより、光の歪曲が少なくて、視感性に優れたディスプレイを提供することができる。
【0151】
一実施例によれば、前記ディスプレイ基板に含まれたポリイミドフィルムは、無機素材基板上に形成されたものである。
【0152】
また、一実施例によれば、前記ディスプレイ基板は、無機素材を含む無機基板;前記無機基板上に形成され、前記ポリイミドフィルムを含む第1ポリイミド層;前記第1ポリイミドフィルム上に形成され、無機素材を含む無機層;及び前記無機層上に形成され、前記ポリイミドフィルムを含む第2ポリイミド層;を備える有機−無機複合層を含み、前記ポリイミドフィルムの間に形成された無機層から有機素材と無機素材との水分透過性及び電気的特性の差による素子特性の低下問題を解決することができる。
【0153】
また、本発明によるポリイミドフィルムは、前記シロキサン化合物を含むポリイミド前駆体組成物で製造されることにより、前記無機素材を含む無機基板及び無機層とポリイミドフィルムとの接着力を著しく上昇させるだけではなく、ポリイミドフィルムの残留応力を減少させることにより、パネル工程時に、浮き上がり現象による不良を解決することができる。
【0154】
本発明によるポリイミドフィルムは、回路基板用保護フィルム、回路基板のベースフィルム、回路基板の絶縁層、半導体の層間絶縁膜、ソルダーレジスト、軟性回路基板、またはフレキシブルディスプレイ基板に使われ、特に、高温工程を必要とするOxide TFT、そして、LTPS(low temperature polysilicon)工程を使用するOLEDデバイスに適するが、これに限定されるものではない。
【0155】
以下、当業者が容易に実施できるように、本発明の実施例について詳しく説明する。しかし、本発明は、さまざまな異なる形態として具現可能であり、ここで説明する実施例に限定されるものではない。
【0157】
窒素気流が流れる攪拌機内にDEAc(Diethylaceteamide)1000gを満たした後、反応器の温度を25℃に保持した状態で片末端アミン変性APTEOS(3−Aminopropyl)triethoxysilane)0.121molを同じ温度で添加して溶解させた。前記APTEOSが添加された溶液にX−22−168−P5−B(Shin−Etsu Silicone)0.06molを同じ温度で添加し、24時間撹拌して、化学式1の構造を有するシロキサン化合物1を製造した。
【0159】
前記シロキサン化合物1の
1H−NMR及びCOSY NMR分析結果を
図1及び
図2にそれぞれ示した。
1H−NMR及びCOSY NMR分析結果から反応式1のアミド酸(amic acid)合成反応が進行して、シロキサン化合物1が合成されたことが分かる。
【0161】
−使用機器
Bruker 700MHz NMR
【0162】
−実験過程
Acetone−d
6溶媒をインサートチューブ(insert tube)に入れた後、NMR tubeに試料を満たしてNMRを測定した。
【0163】
−parameter
1H−NMR
pulse program:zg30、d1:3.0sec、ns:64、temperature:298K
【0165】
pulse program:cosygpppqf、d1:2.0sec、ns:8、temperature:298K
【0167】
窒素気流が流れる攪拌機内にDEAc 1000gを満たした後、反応器の温度を25℃に保持した状態で片末端アンハイドライド変性X−12−967C(Shin−Etsu Silicone)0.302molを同じ温度で添加して溶解させた。前記X−12−967Cが添加された溶液にX−22−9409(Shin−Etsu Silicone)0.151molを同じ温度で添加し、24時間撹拌して、化学式2の構造を有するシロキサン化合物2を製造した。
【0170】
実施例2でX22−9049をX22−1660B(MW 4200、Shin−Etsu Silicone)に変更したことを除いては、反応式2と同様に反応させて、シロキサン化合物3を製造した。
【0172】
実施例2でX22−9049をX22−9668(MW 5640)に変更したことを除いては、反応式2と同様に反応させて、シロキサン化合物4を製造した。
【0173】
前記シロキサン化合物2からシロキサン化合物4の
1H−NMR及びCOSY NMR分析結果を
図3から
図8にそれぞれ示した。
1H−NMR及びCOSY NMR分析結果から反応式2のアミド酸合成反応が進行して、化学式2の構造を有するシロキサン化合物が合成されたことが分かる。
【0175】
PMDA:Pyromellitic Dianhydride
【0176】
6FDA:4,4'−(Hexafluoroisopropylidene)diphthalic anhydride
【0177】
TFMB:2,2'−bis(trifluoromethyl)benzidine
【0178】
DDS:4,4'−Diaminodiphenyl sulfone
【0179】
BPDA:3,3',4,4'−Biphenyltetracarboxylic dianhydride
【0180】
<製造例1:PMDA−6FDA−TFMB−DDS(8:2:7:3)>
【0181】
窒素気流が流れる攪拌機内にDEAc 800gを満たした後、反応器の温度を25℃に保持した状態でTFMB 0.178mol及びDDS 0.076molを同じ温度で添加して溶解させた。前記TFMB及びDDSが添加された溶液にPMDA 0.229mol及び6FDA 0.025molを同じ温度で添加して、48時間撹拌して、ポリアミド酸溶液を得た。
【0182】
<製造例2:PMDA−DDS(1:1)>
【0183】
窒素気流が流れる攪拌機内にDEAc 498gを満たした後、反応器の温度を25℃に保持した状態でDDS 0.458molを同じ温度で添加して溶解させた。前記DDSが添加された溶液にPMDA 0.458molを同じ温度で添加し、48時間撹拌して、ポリイミド前駆体を合成した。重合後、粘度が3,000〜4,000cPになるようにDEAcを添加して、ポリアミド酸溶液を得た。
【0184】
<製造例3:BPDA−DDS(1:1)>
【0185】
窒素気流が流れる攪拌機内にDEAc 430gを満たした後、反応器の温度を25℃に保持した状態でDDS 0.339molを同じ温度で添加して溶解させた。前記DDSが添加された溶液にBPDA 0.339molを同じ温度で添加し、48時間撹拌して、ポリイミド前駆体を合成した。重合後、粘度が3,000〜4,000cPになるようにDEAcを添加して、ポリアミド酸溶液を得た。
【0186】
<製造例4:6FDA−DDS(1:1)>
【0187】
窒素気流が流れる攪拌機内にDEAc 363gを満たした後、反応器の温度を25℃に保持した状態でDDS 0.225molを同じ温度で添加して溶解させた。前記DDSが添加された溶液に6FDA 0.339molを同じ温度で添加し、48時間撹拌して、ポリイミド前駆体を合成した。重合後、粘度が3,000〜4,000cPになるようにDEAcを添加して、ポリアミド酸溶液を得た。
【0188】
<製造例5:6FDA−TFMB(1:1)>
【0189】
窒素気流が流れる攪拌機内にDEAc 715gを満たした後、反応器の温度を25℃に保持した状態でDDS 0.339molを同じ温度で添加して溶解させた。前記DDSが添加された溶液にBPDA 0.339molを同じ温度で添加し、48時間撹拌して、ポリイミド前駆体を合成した。重合後、粘度が3,000〜4,000cPになるようにDEAcを添加して、ポリアミド酸溶液を得た。
【0190】
<実施例5〜実施例12及び比較例1〜比較例4>
【0191】
製造例1〜製造例5から製造されたポリアミド酸溶液に前記実施例1〜実施例4から製造されたシロキサン化合物を添加して、ポリイミド前駆体組成物を製造した。
【0194】
実施例5〜実施例12のポリイミド前駆体組成物に対して物性評価を実施した。まず、ポリイミド前駆体組成物をそれぞれガラス基板上にスピンコーティングした。前記ポリイミド前駆体組成物が塗布されたガラス基板をオーブンに入れ、5℃/minの速度で加熱し、80℃で30分、400℃で30分を保持して、硬化工程を進行して、ポリイミドフィルムを製造した。
【0195】
前記方法で製造されたそれぞれのポリイミドフィルムのヘイズ、黄色度(YI)、厚さ方向位相差(R
th)、ガラス転移温度(Tg)、ガラスストレス(Real Bow)、残留応力(Residual stress)、ピール(Peel)強度を測定した。
【0197】
Haze Meter HM−150を使用して、ASTM D1003による方法でヘイズを測定した。
【0199】
黄色度(YI)は、Color Eye 7000Aで測定した。
【0201】
厚さ方向位相差(R
th)は、Axoscanを用いて測定した。フィルムを一定のサイズに切って、厚さを測定した後、Axoscanで位相差を測定して、位相差値を補償するために、C−plate方向に補正しながら測定した厚さを入力した。
【0203】
前記フィルムを5x20mmのサイズに準備した後、アクセサリーを用いて試料をローディングする。実際に測定されるフィルムの長さは、16mmに同様にした。フィルムを引っ張る力を0.02Nに設定し、100〜400℃の温度範囲で5℃/minの昇温速度で1次昇温工程を進行した後、400〜100℃の温度範囲で4℃/minの冷却速度で冷却(cooling)した後、再び100〜450℃の温度範囲で5℃/minの昇温速度で2次昇温工程を進行して、熱膨張変化態様をTMA(TA社のQ400)で測定した。
【0204】
この際、2次昇温工程で昇温区間で見られる変曲点をTgとした。
【0206】
残留応力測定器(TENCOR社のFLX2320)を使用して、あらかじめウェーハ(wafer)の[反り量]を測定しておいた、厚さ525μmの6inシリコンウェーハ上に、樹脂組成物をスピンコータによって塗布し(光洋リンドバーグ社製造)、オーブンを使用して、窒素雰囲気下250℃30min、400℃60min時間の加熱硬化処理を実施し、硬化後、膜厚さ10μmの樹脂膜が付着されたシリコンウェーハを製造した。この際、ウェーハの反り量を残留応力測定器で測定したReal Bow値で示し、シリコンウェーハと樹脂膜との間に発生した残留応力を測定した。
【0208】
実施例から製造されたポリイミド前駆体溶液をa−Siを蒸着したガラス基板上に硬化後、最終フィルムの厚さが10μmになるようにスピンコーティングした。ポリイミド前駆体溶液が塗布されたガラス基板をオーブンに入れ、4℃/minの速度で加熱し、250℃で30分、410℃で60分を保持して硬化工程を進行した。フィルム幅25.4mm、測定長さ10mmのサンプルに対して、ピール強度測定計(TA−XT Plus、Texture Analyser)で180℃で10mm/secで剥離時の強度を測定した。
【0211】
実施例5及び比較例1のポリイミド前駆体組成物を使用して製造したフィルムに対する測定結果を下記表2に示した。
【0213】
表において、N.D.は、測定が不可能であったことを意味する。
【0215】
実施例6及び比較例1のポリイミド前駆体組成物を使用して製造したフィルムに対する測定結果を下記表3に示した。
【0218】
実施例7及び比較例1のポリイミド前駆体組成物を使用して製造したフィルムに対する測定結果を下記表4に示した。
【0221】
実施例8及び比較例1のポリイミド前駆体組成物を使用して製造したフィルムに対する測定結果を下記表5に示した。
【0224】
実施例9及び比較例2のポリイミド前駆体組成物を使用して製造したフィルムに対する測定結果を下記表6に示した。
【0227】
実施例10及び比較例3のポリイミド前駆体組成物を使用して製造したフィルムに対する測定結果を下記表7に示した。
【0230】
実施例11及び比較例4のポリイミド前駆体組成物を使用して製造したフィルムに対する測定結果を下記表8に示した。
【0233】
実施例12及び比較例5のポリイミド前駆体組成物を使用して製造したフィルムに対する測定結果を下記表9に示した。
【0235】
前記表2から表9までの結果から分かるように、製造例から製造されたポリアミド酸溶液に実施例1〜実施例4のシロキサン化合物を添加して製造されたポリイミドフィルムは、黄色度、ヘイズ値及び厚さ方向位相差値だけではなく、残留応力及びReal Bow値も、低くなることを確認することができる。一方、ピール強度は、比較例のフィルムに比べて、遥かに改善することも確認することができる。これは、シロキサン化合物の添加によってポリイミドフィルムの接着力が改善されたことを示す。
【0236】
一方、
図9は、シロキサン化合物1の含量によるポリイミド前駆体組成物(実施例7)のヘイズ変化を示す写真であり、
図10は、a−Si基板上にポリイミド前駆体組成物をコーティングした後のヘイズ現象を示す写真である。
図9及び
図10からシロキサン化合物を含むポリイミド前駆体組成物は、ワニス状態では5wt%以上からヘイズが発生することを肉眼で観察することができる。また、
図9でシロキサン化合物が15wt%以上に添加される場合、ヘイズが急激に増加することを観察することができる。このように、溶液ヘイズは、微かに観察されるが、フィルムは、ヘイズが表われなかった。フィルムのヘイズは、表10に示した。
【0238】
前記表10の結果から、実施例7から製造されたポリイミドフィルムは、ヘイズ特性も改善されることが分かる。したがって、本発明は、ポリアミド酸と反応しない新規な構造を有するシロキサン化合物をポリイミド前駆体組成物に添加することにより、貯蔵安定性が向上したポリイミド前駆体組成物を提供することができる。また、これより光学等方性の特性向上及び基板との残留応力の低減特性を有しながら、無機素材基板との接着力が向上した多機能性ポリイミドフィルムを提供することができる。
【0239】
以上、本発明の内容の特定の部分を詳しく記述したところ、当業者において、このような具体的な記述は、単に望ましい実施態様であり、これにより、本発明の範囲が制限されるものではないという点は明白である。したがって、本発明の実質的な範囲は、下記の特許請求の範囲とそれらの等価物とによって定義される。