特許第6950812号(P6950812)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6950812
(24)【登録日】2021年9月28日
(45)【発行日】2021年10月13日
(54)【発明の名称】粘着剤組成物、粘着剤、及び粘着シート
(51)【国際特許分類】
   C09J 155/00 20060101AFI20210930BHJP
   C09J 133/00 20060101ALI20210930BHJP
   C09J 7/24 20180101ALI20210930BHJP
【FI】
   C09J155/00
   C09J133/00
   C09J7/24
【請求項の数】11
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2020-507119(P2020-507119)
(86)(22)【出願日】2020年1月20日
(86)【国際出願番号】JP2020001660
(87)【国際公開番号】WO2020158475
(87)【国際公開日】20200806
【審査請求日】2020年2月7日
(31)【優先権主張番号】特願2019-16057(P2019-16057)
(32)【優先日】2019年1月31日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100152146
【弁理士】
【氏名又は名称】伏見 俊介
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(72)【発明者】
【氏名】藤田 果奈美
(72)【発明者】
【氏名】中村 淳一
(72)【発明者】
【氏名】品田 弘子
【審査官】 中村 英司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−139924(JP,A)
【文献】 国際公開第2017/099113(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2004/0010088(US,A1)
【文献】 特開2019−081837(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 265/00
C09J 133/00
C09J 155/00
C09J 7/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(メタ)アクリル系共重合体を含む粘着剤組成物であって、
前記(メタ)アクリル系共重合体が、マクロモノマー由来の構成単位aと、下記式(b)で表される単量体由来の構成単位bとを含み、
前記マクロモノマーが下記式X1で表される構成単位X1を2以上含み、
前記(メタ)アクリル系共重合体の総質量に対して、前記構成単位bの含有量が0.01〜25質量%であり、
前記(メタ)アクリル系共重合体のガラス転移温度(Tg)が0℃以下である、粘着剤組成物
【化1】
(式中、R、Rはそれぞれ独立にアルキル基、カルボキシ基、又はハロゲン原子を示し、nは0〜5の整数、mは0〜4の整数を示し、Xは、(メタ)アクリロイルオキシ基、又は(メタ)アクリロイルオキシアルキレンオキシ基を示す。)
【化2】
(式中、Rは水素原子、メチル基又はCHOHを示し、RはOR、ハロゲン原子、COR、COOR、CN、CONR、NHCOR又はRを示し、R〜Rはそれぞれ独立に、水素原子、非置換の若しくは置換基を有するアルキル基、非置換の若しくは置換基を有する脂環式基、非置換の若しくは置換基を有するアリール基、非置換の若しくは置換基を有するヘテロアリール基、非置換の若しくは置換基を有する非芳香族の複素環式基、非置換の若しくは置換基を有するアラルキル基、非置換の若しくは置換基を有するアルカリール基、非置換の若しくは置換基を有するオルガノシリル基、非置換の若しくは置換基を有する(ポリ)オルガノシロキサン基を示し、Rは非置換の若しくは置換基を有するアリール基、非置換の若しくは置換基を有するヘテロアリール基、又は非置換の若しくは置換基を有する非芳香族の複素環式基を示す。)
【請求項2】
前記マクロモノマーの重量平均分子量が500〜10万である、請求項に記載の粘着剤組成物
【請求項3】
前記マクロモノマーが構成単位bを含む、請求項1又は2に記載の粘着剤組成物
【請求項4】
前記(メタ)アクリル系共重合体の総質量に対して、前記構成単位aの含有量が0.1〜40質量%である、請求項1〜のいずれか一項に記載の粘着剤組成物
【請求項5】
前記(メタ)アクリル系共重合体が脂環式構造を有する(メタ)アクリレート由来の構成単位を含む、請求項1〜のいずれか一項に記載の粘着剤組成物
【請求項6】
前記脂環式構造を有する(メタ)アクリレートがイソボルニル(メタ)アクリレートである、請求項に記載の粘着剤組成物
【請求項7】
前記(メタ)アクリル系共重合体の総質量に対して、前記脂環式構造を有する(メタ)アクリレート由来の構成単位の含有量が0.1〜20質量%である、請求項又はに記載の粘着剤組成物
【請求項8】
前記(メタ)アクリル系共重合体がカルボキシ基含有(メタ)アクリレート由来の構成単位を含む、請求項1〜のいずれか一項に記載の粘着剤組成物
【請求項9】
前記(メタ)アクリル系共重合体の総質量に対して、前記カルボキシ基含有(メタ)アクリレート由来の構成単位の含有量が0.1〜20質量%である、請求項に記載の粘着剤組成物
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか一項に記載の粘着剤組成物に紫外線を照射した粘着剤。
【請求項11】
請求項10に記載の粘着剤を含む粘着層を有する粘着シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は(メタ)アクリル系共重合体、(メタ)アクリル系共重体を含む粘着剤組成物、粘着剤組成物を硬化させた粘着剤、及び粘着剤を含む粘着シートに関する。
本願は、2019年1月31日に日本に出願された特願2019−016057号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
基材上に塗工可能であり、紫外線の照射により硬化する粘着剤組成物として、炭素数1〜4のアルキル基を有するアクリル酸アルキルエステルと、アクリル酸等の不飽和カルボン酸と、(メタ)アクリロイルオキシ基を有するベンゾフェノン誘導体とを重合した共重合体を含む組成物が知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】日本国特開2006−299017号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の組成物は溶融粘度が高いため、塗工時に高温とする必要があった。また、特許文献1に記載の組成物を用いて形成した粘着層は、基材に貼り合せた後、再剥離した際の糊残りの生じにくさ(耐基材汚染性)が充分ではなかった。
【0005】
本発明は、低温塗工性に優れ、低いUV照射量でも保持力及び耐基材汚染性に優れた粘着層を形成できる(メタ)アクリル系共重合体、粘着剤組成物、及び粘着剤組成物を用いた粘着シートを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は以下の態様を有する。
[1]マクロモノマー由来の構成単位aと、下記式(b)で表される単量体由来の構成単位bとを含む(メタ)アクリル系共重合体であって、
前記(メタ)アクリル系共重合体の総質量に対して、前記構成単位bの含有量が0.01〜25質量%である、(メタ)アクリル系共重合体。
【0007】
【化1】
【0008】
(式中、R、Rはそれぞれ独立にアルキル基、カルボキシ基、又はハロゲン原子を示し、nは0〜5の整数、mは0〜4の整数を示し、Xは、(メタ)アクリロイルオキシ基、又は(メタ)アクリロイルオキシアルキレンオキシ基を示す。)
[2]前記マクロモノマーが下記式X1で表される構成単位X1を2以上含む、[1]に記載の(メタ)アクリル系共重合体。
【0009】
【化2】
【0010】
(式中、Rは水素原子、メチル基又はCHOHを示し、RはOR、ハロゲン原子、COR、COOR、CN、CONR、NHCOR又はRを示し、R〜Rはそれぞれ独立に、水素原子、非置換の若しくは置換基を有するアルキル基、非置換の若しくは置換基を有する脂環式基、非置換の若しくは置換基を有するアリール基、非置換の若しくは置換基を有するヘテロアリール基、非置換の若しくは置換基を有する非芳香族の複素環式基、非置換の若しくは置換基を有するアラルキル基、非置換の若しくは置換基を有するアルカリール基、非置換の若しくは置換基を有するオルガノシリル基、非置換の若しくは置換基を有する(ポリ)オルガノシロキサン基を示し、Rは非置換の若しくは置換基を有するアリール基、非置換の若しくは置換基を有するヘテロアリール基、又は非置換の若しくは置換基を有する非芳香族の複素環式基を示す。)
[3]前記マクロモノマーの重量平均分子量が500〜10万である、[1]又は[2]に記載の(メタ)アクリル系共重合体。
[4]前記マクロモノマーが構成単位bを含む、[1]〜[3]のいずれかに記載の(メタ)アクリル系共重合体。
[5]前記(メタ)アクリル系共重合体の総質量に対して、前記構成単位aの含有量が0.1〜40質量%である、[1]〜[4]のいずれかに記載の(メタ)アクリル系共重合体。
[6]前記(メタ)アクリル系共重合体が脂環式構造を有する(メタ)アクリレート由来の構成単位を含む、[1]〜[5]のいずれかに記載の(メタ)アクリル系共重合体。
[7]前記脂環式構造を有する(メタ)アクリレートがイソボルニル(メタ)アクリレートである、[6]に記載の(メタ)アクリル系共重合体。
[8]前記(メタ)アクリル系共重合体の総質量に対して、前記脂環式構造を有する(メタ)アクリレート由来の構成単位の含有量が0.1〜20質量%である、[6]又は[7]に記載の(メタ)アクリル系共重合体。
[9]前記(メタ)アクリル系共重合体がカルボキシ基含有(メタ)アクリレート由来の構成単位を含む、[1]〜[8]のいずれかに記載の(メタ)アクリル系共重合体。
[10]前記(メタ)アクリル系共重合体の総質量に対して、前記カルボキシ基含有(メタ)アクリレート由来の構成単位の含有量が0.1〜20質量%である、[9]に記載の(メタ)アクリル系共重合体。
[11][1]〜[10]のいずれかに記載の(メタ)アクリル系共重合体を含む粘着剤組成物。
[12][11]に記載の粘着剤組成物に紫外線を照射した粘着剤。
[13][12]に記載の粘着剤を含む粘着層を有する粘着シート。
【発明の効果】
【0011】
本発明の(メタ)アクリル系共重合体は、耐基材汚染性に優れた粘着層を形成できる。
本発明の粘着剤組成物は、耐基材汚染性に優れた粘着層を形成できる。
本発明の粘着シートは、耐基材汚染性に優れる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下の用語の定義は、本明細書及び請求の範囲にわたって適用される。
「(メタ)アクリレート」は、アクリレート及びメタクリレートの総称である。
「(メタ)アクリル酸」は、アクリル酸及びメタクリル酸の総称である。
「(メタ)アクリル系共重合体」は、構成単位の少なくとも一部が(メタ)アクリル系単量体由来の構成単位である共重合体を意味する。(メタ)アクリル系共重合体は、(メタ)アクリル系単量体以外の単量体(たとえばスチレン等)由来の構成単位をさらに含んでいてもよい。
「(メタ)アクリル系単量体」は、(メタ)アクリロイル基を有する単量体を意味する。
「(メタ)アクリロイル」は、アクリロイル及びメタクリロイルの総称である。
数値範囲を示す「〜」は、その前後に記載された数値を下限値及び上限値として含むことを意味する。
マクロモノマー及び(メタ)アクリル系共重合体の数平均分子量及び重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン基準の分子量である。
【0013】
(メタ)アクリル系共重合体のガラス転移温度は、Foxの計算式により求められる計算値である。
例えば、(メタ)アクリル系共重合体が、マクロモノマー由来の構成単位pと、単量体q由来の構成単位qと、任意の単量体r由来の構成単位rからなる場合、マクロモノマーの製造に用いた単量体と、単量体qと、単量体rの各々のホモポリマーのガラス転移温度及び質量分率から、下記Foxの計算式によって算出されるTgを(メタ)アクリル系共重合体のガラス転移温度(単位:℃)とする。
1/(273+Tg)=Σ(Wi/(273+Tgi))
(式中、Wiは単量体iの質量分率、Tgiは単量体iのホモポリマーのガラス転移温度(℃)を示す。)
なお、単量体iのホモポリマーのガラス転移温度は、ポリマーハンドブック〔Polymer HandBook,J.Brandrup,Interscience,1989〕に記載されている値を用いることができる。
【0014】
本発明の(メタ)アクリル系共重合体は、マクロモノマー由来の構成単位aと前記式(b)で表される単量体由来の構成単位bを含む。
本発明の(メタ)アクリル系共重合体は、マクロモノマーと前記式(b)で表される単量体とを含む(メタ)アクリル系単量体の混合物の共重合により製造することができ、本発明の(メタ)アクリル系共重合体は、マクロモノマーを共重合することによりグラフト共重合体となり、相分離構造が発現し、保持力と耐基材汚染性が良好となる。さらに、紫外線の照射によってラジカルを発生する紫外線反応性基を有する構成単位bにより架橋構造を形成し、保持力が向上する。
【0015】
[マクロモノマー(マクロモノマー由来の構成単位a)]
本発明におけるマクロモノマーは、ラジカル重合性基(a1)とラジカル重合性基を有する単量体(a2)由来の構成単位を2以上有する化合物である。
ラジカル重合性基(a1)としては、エチレン性不飽和結合を有する基が好ましい。エチレン性不飽和結合を有する基としては、例えば、CH=C(COOR)−CH−、(メタ)アクリロイル基、2−(ヒドロキシメチル)アクリロイル基、ビニル基等が挙げられる。
【0016】
ここで、Rは水素原子、非置換の若しくは置換基を有するアルキル基、非置換の若しくは置換基を有する脂環式基、非置換の若しくは置換基を有するアリール基、又は非置換の若しくは置換基を有する複素環基を示す。
Rにおけるアルキル基としては、例えば、炭素数1〜20の分岐又は直鎖アルキル基が挙げられる。炭素数1〜20の分岐又は直鎖アルキル基の具体例としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基、i−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、及びイコシル基が挙げられる。
【0017】
Rにおける脂環式基としては、単環式のものでも多環式のものでもよく、例えば、炭素数3〜20の脂環式基が挙げられる。脂環式基としては、シクロアルキル基等の飽和脂環式基が好ましく、具体例としては、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、ビシクロ[2.2.1]ヘプチル基、シクロオクチル基、及びアダマンチル基が挙げられる。
【0018】
Rにおけるアリール基としては、例えば、炭素数6〜18のアリール基が挙げられる。炭素数6〜18のアリール基の具体例としては、例えば、フェニル基及びナフチル基が挙げられる。
【0019】
Rにおける複素環式基としては、例えば、炭素数5〜18の複素環式基が挙げられる。炭素数5〜18の複素環式基の具体例としては、例えば、γ−ブチロラクトン基及びε−カプロラクトン基等の酸素原子含有複素環式基;ピリジル基、カルバゾリル基、ピロリジニル基、ピロリドン基、モルホリノ基等の窒素原子含有複素環式基が挙げられる。
【0020】
アルキル基、脂環式基、アリール基、複素環基はそれぞれ置換基を有していてもよい。置換基としては、例えば、アルキル基(ただしRが置換基を有するアルキル基である場合を除く)、アリール基、−COOR51、シアノ基、−OR52、−NR5354、−CONR5556、ハロゲン原子、アリル基、エポキシ基、シロキシ基、及び親水性又はイオン性を示す基からなる群から選択される少なくとも1種が挙げられる。
ここで、R51〜R56はそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、脂環式基、又はアリール基を示す。これらの基はそれぞれ、前記と同様の基が挙げられる。
置換基としてのアルキル基、アリール基はそれぞれ、Rにおけるアルキル基、アリール基と同様の基が挙げられる。
【0021】
置換基における−COOR51のR51としては、水素原子又はアルキル基が好ましい。すなわち、−COOR51は、カルボキシ基又はアルコキシカルボニル基が好ましい。アルコキシカルボニル基としては、例えば、メトキシカルボニル基が挙げられる。
【0022】
置換基における−OR52のR52としては、水素原子又は非置換のアルキル基が好ましい。すなわち、−OR52は、ヒドロキシ基又はアルコキシ基が好ましい。アルコキシ基としては、例えば、炭素数1〜12のアルコキシ基が挙げられ、具体例としては、例えば、メトキシ基が挙げられる。
【0023】
置換基における−NR5354としては、例えば、アミノ基、モノメチルアミノ基、ジメチルアミノ基が挙げられる。
【0024】
置換基における−CONR5556としては、例えば、カルバモイル基(−CONH),N−メチルカルバモイル基(−CONHCH)、N,N−ジメチルカルバモイル基(ジメチルアミド基:−CON(CH)が挙げられる。
【0025】
置換基におけるハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、及びヨウ素原子が挙げられる。
【0026】
置換基における親水性又はイオン性を示す基としては、例えば、カルボキシ基のアルカリ塩、スルホキシ基のアルカリ塩;ポリエチレンオキシド基、ポリプロピレンオキシド基等のポリ(アルキレンオキシド)基;及び四級アンモニウム塩基等のカチオン性置換基が挙げられる。
【0027】
Rとしては、アルキル基又は飽和脂環式基が好ましく、アルキル基、又は非置換の若しくは置換基としてアルキル基を有する飽和脂環式基がより好ましい。
上記の中でも、入手のし易さから、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、イソボルニル基、及びアダマンチル基が好ましく、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、イソボルニル基、及びアダマンチル基がより好ましい。
【0028】
ラジカル重合性基を有する単量体(a2)としては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸イソアミル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸イソステアリル、(メタ)アクリル酸ヘキサデシル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸3,5,5−トリメチルシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニルオキシエチル、テルペンアクリレートやその誘導体、水添ロジンアクリレートやその誘導体、(メタ)アクリル酸ドコシル等の炭化水素基含有(メタ)アクリル酸エステル;
(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル、グリセロール(メタ)アクリレート等の水酸基含有(メタ)アクリル酸エステル;
(メタ)アクリル酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸、2−(メタ)アクリロイルオキシプロピルヘキサヒドロフタル酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルフタル酸、2−(メタ)アクリロイルオキシプロピルフタル酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルマレイン酸、2−(メタ)アクリロイルオキシプロピルマレイン酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルコハク酸、2−(メタ)アクリロイルオキシプロピルコハク酸、クロトン酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチル、マレイン酸モノオクチル、イタコン酸モノメチル、イタコン酸モノエチル、イタコン酸モノブチル、イタコン酸モノオクチル、フマル酸モノメチル、フマル酸モノエチル、フマル酸モノブチル、フマル酸モノオクチル、シトラコン酸モノエチル等のカルボキシル基含有ビニル系単量体;
無水マレイン酸、無水イタコン酸等の酸無水物基含有ビニル系単量体;
ジメチルマレート、ジブチルマレート、ジメチルフマレート、ジブチルフマレート、ジブチルイタコネート、ジパーフルオロシクロヘキシルフマレート等の不飽和ジカルボン酸ジエステル単量体;
(メタ)アクリル酸グリシジル、α−エチルアクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸3,4−エポキシブチル等のエポキシ基含有ビニル系単量体;
ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のアミノ基含有(メタ)アクリル酸エステル系のビニル系単量体;
(メタ)アクリルアミド、N−t−ブチル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、ヒドロキシエチルアクリルアミド、N−メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、ダイアセトンアクリルアミド、マレイン酸アミド、マレイミド等のアミド基を含有するビニル系単量体;
スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、(メタ)アクリロニトリル、塩化ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニル系単量体;
ジビニルベンゼン、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10−デカンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、トリアリルシアヌレート、マレイン酸ジアリル、ポリプロピレングリコールジアリルエーテル、N,N’−メチレンビス(メタ)アクリルアミド等の多官能性のビニル系単量体;
アクリロイルモルホリン、(メタ)アクリル酸ポリエチレングリコール、(メタ)アクリル酸ポリプロピレングリコール、(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシエチル、(メタ)アクリル酸n−ブトキシエチル、(メタ)アクリル酸イソブトキシエチル、(メタ)アクリル酸t−ブトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシエトキシエチル、(メタ)アクリル酸フェノキシエチル、(メタ)アクリル酸ノニルフェノキシエチル、(メタ)アクリル酸3−メトキシブチル、(メタ)アクリル酸アセトキシエチル、「プラクセル(登録商標。以下同様。)FM」(ダイセル化学(株)製カプロラクトン付加モノマー、商品名)、「ブレンマー(登録商標。以下同様。)PME−100」(日油(株)製メトキシポリエチレングリコールメタクリレート(エチレングリコールの連鎖が2であるもの)、商品名)、「ブレンマーPME−200」(日油(株)製メトキシポリエチレングリコールメタクリレート(エチレングリコールの連鎖が4であるもの)、商品名)、「ブレンマーPME−400」(日油(株)製メトキシポリエチレングリコールメタクリレート(エチレングリコールの連鎖が9であるもの)、商品名)、「ブレンマー50POEP−800B」(日油(株)製オクトキシポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコール−メタクリレート(エチレングリコールの連鎖が8であり、プロピレングリコールの連鎖が6であるもの)、商品名)及び「ブレンマー20ANEP−600」(日油(株)製ノニルフェノキシ(エチレングリコール−ポリプロピレングリコール)モノアクリレート、商品名)、「ブレンマーAME−100」(日油(株)製、商品名)、「ブレンマーAME−200」(日油(株)製、商品名)及び「ブレンマー50AOEP−800B」(日油(株)製、商品名);
トリメチルシリル(メタ)アクリレート、トリエチルシリル(メタ)アクリレート、トリ−n−プロピルシリル(メタ)アクリレート、トリ−n−ブチルシリル(メタ)アクリレート、トリ−n−アミルシリル(メタ)アクリレート、トリ−n−ヘキシルシリル(メタ)アクリレート、トリ−n−オクチルシリル(メタ)アクリレート、トリ−n−ドデシルシリル(メタ)アクリレート、トリフェニルシリル(メタ)アクリレート、トリ−p−メチルフェニルシリル(メタ)アクリレート、トリベンジルシリル(メタ)アクリレート、トリイソプロピルシリル(メタ)アクリレート、トリイソブチルシリル(メタ)アクリレート、トリ(s−ブチル)シリル(メタ)アクリレート、トリ(2−メチルイソプロピル)シリル(メタ)アクリレート、トリ(t−ブチル)シリル(メタ)アクリレート、エチルジメチルシリル(メタ)アクリレート、n−ブチルジメチルシリル(メタ)アクリレート、ジイソプロピル(n−ブチル)シリル(メタ)アクリレート、n−オクチルジ(n−ブチル)シリル(メタ)アクリレート、ジイソプロピルステアリルシリル(メタ)アクリレート、ジシクロヘキシルフェニルシリル(メタ)アクリレート、t−ブチルジフェニルシリル(メタ)アクリレート、ラウリルジフェニルシリル(メタ)アクリレート、トリイソプロピルシリルメチルマレート、トリイソプロピルシリルアミルマレート、トリ(n−ブチル)シリル(n−ブチル)マレート、(t−ブチルジフェニルシリル)(メチル)マレート、(t−ブチルジフェニルシリル)(n−ブチル)マレート、(トリイソプロピルシリル)(メチル)フマレート、(トリイソプロピルシリル)(アミル)フマレート、(トリ(n−ブチルシリル))(n−ブチル)フマレート、(t−ブチルジフェニルシリル)(メチル)フマレート、(t−ブチルジフェニルシリル)(n−ブチル)フマレート、サイラプレーンFM−0711(JNC(株)製、商品名)、サイラプレーン(登録商標。以下同様。)FM−0721(JNC(株)製、商品名)、サイラプレーンFM−0725(JNC(株)製、商品名)、サイラプレーンTM−0701(JNC(株)製、商品名)、サイラプレーンTM−0701T(JNC(株)製、商品名)、X−22−174ASX(信越化学工業(株)製、商品名)、X−22−174BX(信越化学工業(株)製、商品名)、KF−2012(信越化学工業(株)製、商品名)、X−22−2426(信越化学工業(株)製、商品名)、X−22−2404(信越化学工業(株)製、商品名)等の、シランカップリング剤含有モノマー以外のオルガノシリル基含有単量体;
塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン、クロロトリフルオロエチレン等のハロゲン化オレフィン;
2,2,2−トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3,3−ペンタフルオロフェニル(メタ)アクリレート、2−(パーフルオロブチル)エチル(メタ)アクリレート、3−(パーフルオロブチル)−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−(パーフルオロヘキシル)エチル(メタ)アクリレート、3−パーフルオロヘキシル−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−(パーフルオロ−3−メチルブチル)−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2,2,3,3−テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、1H,1H,5H−オクタフルオロペンチル(メタ)アクリレート、1H,1H,2H,2H−トリデカフルオロオクチル(メタ)アクリレート、1H−1−(トリフルオロメチル)トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、1H,1H,3H−ヘキサフルオロブチル(メタ)アクリレート、1,2,2,2−テトラフルオロ−1−(トリフルオロメチル)エチル(メタ)アクリレート等のフッ素含有単量体(ただしハロゲン化オレフィンを除く);
1−ブトキシエチル(メタ)アクリレート、1−(2−エチルへキシルオキシ)エチル(メタ)アクリレート、1−(シクロへキシルオキシ)エチルメタクリレート)、2−テトラヒドロピラニル(メタ)アクリレート等のアセタール構造を持つ単量体;
前記式(b)で表される、(メタ)アクリロイルオキシ基、又は(メタ)アクリロイルオキシアルキレンオキシ基を有するベンゾフェノン誘導体である単量体;が挙げられる。
【0029】
これらの単量体は1種を単独で用いてもよく、2種以上の単量体を併用してもよい。
【0030】
ラジカル重合性基を有する単量体(a2)は下記式(X1)の構造を有することが好ましい。
【0031】
【化3】
【0032】
(式中、Rは水素原子、メチル基、又はCHOHを示し、RはOR、ハロゲン原子、COR、COOR、CN、CONR、NHCOR、又はRを示し、R〜Rはそれぞれ独立に、水素原子、非置換の若しくは置換基を有するアルキル基、非置換の若しくは置換基を有する脂環式基、非置換の若しくは置換基を有するアリール基、非置換の若しくは置換基を有するヘテロアリール基、非置換の若しくは置換基を有する非芳香族の複素環式基、非置換の若しくは置換基を有するアラルキル基、非置換の若しくは置換基を有するアルカリール基、非置換の若しくは置換基を有するオルガノシリル基、又は非置換の若しくは置換基を有する(ポリ)オルガノシロキサン基を示し、Rは非置換の若しくは置換基を有するアリール基、非置換の若しくは置換基を有するヘテロアリール基、又は非置換の若しくは置換基を有する非芳香族の複素環式基を示す。)
【0033】
〜Rにおけるアルキル基、脂環式基、アリール基、ヘテロアリール基、非芳香族の複素環式基、アラルキル基、アルカリール基、オルガノシリル基、又は(ポリ)オルガノシロキサン基はそれぞれ置換基を有していてもよい。置換基としては、例えば、アルキル基(ただしR〜Rが置換基を有するアルキル基である場合を除く)、アリール基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、シアノ基、ヒドロキシル基、アミノ基、アミド基、ハロゲン原子、アリル基、エポキシ基、アルコキシ基、シロキシ基、並びに親水性又はイオン性を示す基からなる群から選択される少なくとも1種が挙げられる。
【0034】
ラジカル重合性基を有する単量体(a2)由来の構成単位として、(メタ)アクリル系単量体由来の構成単位が含まれていることが好ましい。マクロモノマーの全構成単位に対して、(メタ)アクリル系単量体由来の構成単位の含有量は50質量%以上が好ましく、70質量%以上がより好ましく、80質量%以上がさらに好ましい。
【0035】
マクロモノマーとしては、下記式(X2)で表されるマクロモノマーが特に好ましい。
【0036】
【化4】
【0037】
(式中、Rは前記と同義であり、Zは末端基であり、R21は水素原子又はメチル基を示し、R22は非置換の若しくは置換基を有するアルキル基、非置換の若しくは置換基を有する脂環式基、非置換の若しくは置換基を有するアリール基、非置換の若しくは置換基を有するヘテロアリール基、非置換の若しくは置換基を有するアラルキル基、非置換の若しくは置換基を有するアルカリール基、非置換の若しくは置換基を有するオルガノシリル基、又は非置換の若しくは置換基を有する(ポリ)オルガノシロキサン基を示し、これらの基における置換基はそれぞれ、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、非芳香族の複素環式基、アラルキル基、アルカリール基、カルボン酸基、カルボン酸エステル基、エポキシ基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、1級アミノ基、2級アミノ基、3級アミノ基、イソシアナト基、スルホン酸基、及びハロゲン原子からなる群から選ばれる少なくとも1種であり、nは2以上の自然数を示す。)
【0038】
式(X2)中、Zにおける末端基は、公知のラジカル重合で得られるポリマーの末端基と同様に、水素原子、ラジカル重合開始剤に由来する基が挙げられる。
22における各基は、COORのRで挙げた基と同様である。
nは2以上の自然数である。nは、マクロモノマーの数平均分子量(Mn)が500以上10万以下となる範囲内である。数平均分子量の好ましい範囲は後述する。n個のR21はすべて同じでも、一部が異なっていてもよい。n個のR22はすべて同じでも、一部が異なっていてもよい。
【0039】
マクロモノマーの重量平均分子量は500〜10万が好ましく、600〜5万がより好ましく、1000〜2万がさらに好ましい。マクロモノマーの重量平均分子量が前記範囲内であると、粘着力と取り扱い性(他の成分との相溶性、塗工性、ホットメルト加工性等)のバランスが良好となりやすい。
【0040】
また、保持力と耐基材汚染性が良好となることから、(メタ)アクリル系共重合体の総質量に対して、マクロモノマー由来の構成単位aの含有量は0.1〜40質量%であることが好ましく、0.5〜30質量%がさらに好ましい。
【0041】
なお、本発明の(メタ)アクリル系共重合体は、構成単位aとして、1種のみのマクロモノマー由来の構造単位を含んでいてもよく、2種以上の単量体cマクロモノマー由来の構成単位を含んでいてもよい。
【0042】
マクロモノマーは、公知の方法により製造したものを用いてもよく、市販のものを用いてもよい。
マクロモノマーの製造方法としては、例えば、コバルト連鎖移動剤を用いて製造する方法、α−メチルスチレンダイマー等のα置換不飽和化合物を連鎖移動剤として用いる方法、開始剤を用いる方法、重合体にラジカル重合性基を化学的に結合させる方法、熱分解による方法等が挙げられる。
【0043】
[式(b)で表される単量体(式(b)で表される単量体由来の構成単位b)]
構成単位bは、下記式(b)で表される単量体(以下、「単量体b」とも言う。)由来の構成単位である。
【0044】
【化5】
【0045】
(式中、R、Rはそれぞれ独立にアルキル基、カルボキシ基、又はハロゲン原子を示し、nは0〜5の整数、mは0〜4の整数を示し、Xは、(メタ)アクリロイルオキシ基、又は(メタ)アクリロイルオキシアルキレンオキシ基を示す。)
【0046】
単量体bは、(メタ)アクリロイルオキシ基、又は(メタ)アクリロイルオキシアルキレンオキシ基を有するベンゾフェノン誘導体である。
【0047】
、Rとしてのアルキル基は、例えばメチル基、エチル基、プロピル基が挙げられる。
、Rとしてのハロゲン原子は、例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
Xの結合位置は2位、4位、又は6位が好ましく、4位がより好ましい。
【0048】
単量体bとしては、例えば、4−アクリロイルオキシベンゾフェノン、4−メタクリロイルオキシベンゾフェノン、4−[2−(アクリロイルオキシ)エトキシ]ベンゾフェノン、4−[2−(メタクリロイルオキシ)エトキシ]ベンゾフェノンが挙げられ、4−メタクリロイルオキシベンゾフェノンが特に好ましい。
本発明の(メタ)アクリル系共重合体は、構成単位bとして、1種のみの単量体b由来の構成単位を含んでいてもよく、2種以上の単量体b由来の構成単位を含んでいてもよい。
【0049】
(メタ)アクリル系共重合体の総質量に対して、構成単位bの含有量は0.01〜25質量%であり、0.02〜10質量%が好ましい。構成単位bの含有量が前記下限値以上であると、(メタ)アクリル系共重合体を用いて形成した粘着層において、十分な耐基材汚染性と保持力が得られる。構成単位bの含有量が前記上限値以下であると、塗工性が良好となり、充分な粘着力と保持力のバランスが得られる。
なお、構成単位bが、マクロモノマーのラジカル重合性基を有する単量体(a2)由来の構成単位としてマクロモノマーにも含まれている場合は、マクロモノマーに含まれている構成単位bも、(メタ)アクリル系共重合体に含まれる構成単位bの含有量に含む。
【0050】
[その他の単量体c(その他の単量体c由来の構成単位)]
本発明の(メタ)アクリル系共重合体は、マクロモノマー由来の構成単位aと、前記式(b)で表される単量体由来の構成単位b以外の構成単位を含んでいてもよい。
構成単位aと構成単位b以外の構成単位の由来となる単量体(以下、「単量体c」とも言う。)としては、マクロモノマー及び式(b)で表される単量体と共重合可能なものであれば特に限定されず、エチレン性不飽和結合等のラジカル重合性基を有する種々の単量体を用いることができる。例えば、マクロモノマーを得るためのラジカル重合性基を有する単量体(a2)と同様のもの(ただし、マクロモノマー、式(b)で表される単量体は除く。)を用いることができる。
なお、本発明の(メタ)アクリル系共重合体は、構成単位cとして、1種のみの単量体c由来の構造単位を含んでいてもよく、2種以上の単量体c由来の構成単位を含んでいてもよい。
【0051】
重合体の溶融粘度が下がり、塗工性が向上することから、本発明の(メタ)アクリル系共重合体は、構成単位cとして、脂環式構造を有する(メタ)アクリレート由来の構成単位を含むことが好ましい。脂環式構造を有する(メタ)アクリレート由来の構成単位は、マクロモノマーのラジカル重合性基を有する単量体(a2)由来の構成単位として含まれていることが好ましい。
脂環式構造を有する(メタ)アクリレートとしては、イソボロニル(メタ)アクリレートが特に好ましい。
【0052】
(メタ)アクリル系共重合体の総質量に対して、脂環式構造を有する(メタ)アクリレート由来の構成単位の含有量は0.1〜20質量%であることが好ましい。
【0053】
粘着力が向上することから、本発明の(メタ)アクリル系共重合体は、構成単位cとして、カルボキシ基含有(メタ)アクリル系モノマー由来の構成単位を含むことが好ましい。
【0054】
(メタ)アクリル系共重合体の総質量に対して、カルボキシ基含有(メタ)アクリル系モノマー由来の構成単位の含有量は0.1〜20質量%であることが好ましい。
【0055】
[(メタ)アクリル系共重合体]
本発明の(メタ)アクリル系共重合体の重量平均分子量は5000〜200万が好ましく、1万〜100万がより好ましく、3万〜35万がさらに好ましい。(メタ)アクリル系共重合体の重量平均分子量が前記下限値以上であると、粘着層の耐久性に優れる。(メタ)アクリル系共重合体の重量平均分子量が前記上限値以下であると、取り扱い性(他の成分との相溶性、塗工性、ホットメルト加工性等)に優れる。
【0056】
本発明の(メタ)アクリル系共重合体のガラス転移温度(Tg)は、粘着性の点から0℃以下が好ましく、−5℃以下がより好ましい。
【0057】
本発明の(メタ)アクリル系共重合体は、公知の重合開始剤を用いて、公知の方法で製造することができる。重合方法としては、例えば、溶液重合法、懸濁重合法、塊状重合法、乳化重合法等の公知の重合方法が適用でき、その中でも溶液重合法が好ましい。
重合開始剤はラジカル重合開始剤が好ましい。
溶液重合における溶媒としては、例えば、アセトン、トルエン、キシレン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトン、酢酸n−ブチル、酢酸エチル、酢酸n−プロピル、酢酸i−プロピル、エチル3−エトキシプロピオネート、イソプロピルアルコール等の有機溶剤が挙げられる。
【0058】
[粘着剤組成物/粘着剤]
本発明の粘着剤組成物は、本発明の(メタ)アクリル系共重合体を含む。
本発明の粘着剤組成物は、粘着剤組成物において公知の成分をさらに含有してもよい。粘着剤組成物において公知の成分としては、例えば、溶剤、充填剤、架橋剤、粘着付与樹脂、酸化防止剤、光安定化剤、金属不活性化剤、老化防止剤、吸湿剤、防錆剤、加水分解防止剤、反応触媒が挙げられる。
酸化防止剤としては、例えば、フェノール系、リン系、ヒドロキシルアミン系、イオウ系の酸化防止剤が挙げられる。酸化防止剤の配合する場合の配合量は、(メタ)アクリル系共重合体の100質量部に対して0.1〜5質量部が好ましい。
【0059】
本発明の粘着剤組成物は、溶剤を含む液状の粘着剤組成物の態様でもよく、溶剤を含まないホットメルト型の粘着剤組成物の態様でもよい。
本発明の粘着剤組成物は、活性エネルギー線硬化型であり、必要に応じて硬化させ粘着剤として用いることができる。活性エネルギー線としては、汎用性の点から、紫外線が好ましい。紫外線の光源としては、例えばキセノンランプ、高圧水銀灯、メタルハライドランプ等が挙げられる。
【0060】
本発明の粘着剤組成物は、本発明の(メタ)アクリル系共重合体を含むことから、耐基材汚染性に優れた粘着層を形成できる。また粘着層の透明性に優れる。
【0061】
本発明の粘着剤は、本発明の粘着剤組成物に紫外線を照射してなる。
【0062】
[粘着シート]
本発明の粘着シートは、本発明の粘着剤組成物を用いて形成した粘着層を有する。一態様としては、本発明の粘着シートは、本発明の粘着剤組成物に紫外線を照射してなる本発明の粘着剤を含む粘着層を有する。
本発明の粘着シートは、本発明の粘着剤組成物をシート状に成形した粘着層のみからなる態様でもよく、本発明の粘着剤組成物をシート状に成形した粘着層の片面又は両面に剥離性基材が積層した積層体の態様でもよい。
【0063】
粘着層は本発明の粘着剤組成物からなるものであってもよく、本発明の粘着剤組成物の硬化物からなるものであってもよい。粘着シートの取り扱い性の点では、本発明の粘着剤組成物を紫外線により硬化させた本発明の粘着剤からなることが好ましい。
【0064】
本発明の粘着剤組成物又は本発明の粘着剤組成物の硬化物からなる粘着層は透明両面粘着層として使用できる。
粘着層の厚さは、用途に応じて適宜設定できる。例えば10〜500μmが好ましく、20〜100μmがより好ましい。
【0065】
本発明の粘着シートを用いて貼り合せる部材は特に限定されない。例えば、車両用、建築用等の窓貼りフィルムの貼り合せ、ラベル表示におけるラベルの貼り合せ、液晶パネル等のディスプレイ表示における各種パネルの貼り合せ、ガラス等の透明板材の貼り合せに用いることができる。
【実施例】
【0066】
以下に実施例を用いて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。以下において、「部」は「質量部」である。
【0067】
各例において、以下の測定方法を用いた。
<測定方法>
(マクロモノマーの分子量)
ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)装置(東ソー株式会社製、HLC−8320)を用いて測定した。マクロモノマーの0.2質量%テトラヒドロフラン(THF)溶液を調製し、東ソー社製カラム(TSKgel SuperHZM−M×HZM−M×HZ2000、TSKguardcolumn SuperHZ−L)が装着された上記装置に上記溶液10μLを注入し、流量:0.35mL/分、溶離液:THF(安定剤:ブチルヒドロキシトルエン(BHT))、カラム温度:40℃の条件で測定した。数平均分子量(Mn)及び重量平均分子量(Mw)は、ポリスチレン換算にて算出した。
【0068】
(共重合体の重量平均分子量)
共重合体の重量平均分子量(Mw)は、GPC装置(東ソー株式会社製、HLC−8120)を用いて測定した。共重合体の0.3質量%THF溶液を調製し、東ソー社製カラム(TSKgel SuperHM−H×4、TSKguardcolumn SuperH−H)が装着された上記装置に上記溶液20μLを注入し、流量:0.6mL/分、溶離液:THF(安定剤BHT)、カラム温度:40℃の条件で測定した。重量平均分子量(Mw)は、ポリスチレン換算にて算出した。
【0069】
<評価方法>
(試験片の作製)
各例の共重合体溶液を所望の膜厚になるように酢酸エチルで希釈して固形分を調整し、常温(23℃)で液状の粘着剤組成物とした。
膜厚38μmのPETフィルム(以下、「PET」とも言う。)上に、粘着剤組成物をアプリケーターで塗工し、90℃で1時間乾燥して粘着層を形成した。
350mWの高圧水銀ランプを使用して、粘着層を形成したPETフィルムに、空気中で紫外線を照射し、粘着層を硬化させた。照射エネルギーは106mJ/cm(積算光量計UV−350(オーク(株)製)による実測値)とした。その上面に、剥離処理をしたポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(以下、「剥離PET」とも言う。)を重ねて、剥離PET−粘着層−PETの構成の積層体を得た。粘着層の厚さは50μmとした。硬化後の積層体を25mm幅、長さ250mmの短冊状に裁断し、試験片とした。
【0070】
(粘着力の評価方法)
試験片の剥離PETを剥がして粘着層を露出させ、貼り合せ面が25mm×70mmになるように30mm×110mmのステンレス(SUS)板に3kgのハンドローラーを用いて貼り合せ、剥離角度180°、引張速度300mm/minで、SUS板に対する剥離強度(N/25mm)を測定し、粘着力とした。
【0071】
(高温での保持力の評価方法)
試験片の一端において、剥離PETを剥がして粘着層を露出させ、30mm×110mmのSUS板に3kgのハンドローラーを用いて、貼り合せ面が25×25mmとなるように水平に貼り合せた。温度80℃、湿度35%又は湿度85%の恒温恒湿層試験機内にて15分放置した。その直後に、貼り合せ面に対して剪断方向に力がかかるようにSUS板を設置し、試験片の他端を下にして1.0kgの荷重をかけ、保持時間を測定し、高温での保持力とした。
【0072】
(耐基材汚染性の評価方法)
試験片の剥離PETを剥がして粘着層を露出させ、貼り合せ面が25mm×70mmになるように30mm×110mmのSUS板に3kgのハンドローラーを用いて貼り合せた。その後、試験片を粘着力の評価方法と同様の条件で剥がし、SUS面を目視で観察し、以下の基準に従って耐基材汚染性を判定した。
A:糊残りが無い。
B:糊残り面積が30%未満。
C:糊残り面積が30%以上。
【0073】
製造例1[分散剤1の製造]
撹拌機、冷却管、温度計、及び窒素ガス導入管を備えた重合装置中に、脱イオン水を900部、メタクリル酸2−スルホエチルナトリウムを60部、メタクリル酸カリウムを10部、及びメタクリル酸メチル(MMA)を12部入れて撹拌し、重合装置内を窒素置換しながら50℃に昇温した。さらに、重合開始剤として2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩を0.08部添加し、60℃に昇温した。昇温後、滴下ポンプを使用して、MMAを0.24部/分の速度で75分間連続的に滴下した。混合物を60℃で6時間保持した後、室温に冷却して、固形分10質量%の分散剤1を得た。
【0074】
製造例2[連鎖移動剤1の製造]
撹拌装置を備えた合成装置中に、窒素雰囲気下で、酢酸コバルト(II)四水和物を1.00g、ジフェニルグリオキシムを1.93g、あらかじめ窒素バブリングにより脱酸素したジエチルエーテルを80mL入れ、室温で30分間撹拌した。さらに、三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体の10mLを加え、6時間撹拌した。混合物をろ過し、固体をジエチルエーテルで洗浄し、15時間真空乾燥して、赤褐色固体である連鎖移動剤1を2.12g得た。
【0075】
製造例3[マクロモノマーa−1の製造]
撹拌機、冷却管、温度計、及び窒素ガス導入管を備えた重合装置中に、脱イオン水を135部、硫酸ナトリウムを0.1部、及び分散剤1(固形分10質量%)を0.25部入れて撹拌し、均一な水溶液とした。さらに、MMAを100部、連鎖移動剤1を0.0022部、及び重合開始剤としてパーオクタ(登録商標)O(1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエート、日本油脂株式会社製)を0.4部加え、水性懸濁液とした。
さらに、重合装置内を窒素置換し、80℃に昇温して3.5時間攪拌し、さらに重合率を上げるため、90℃に昇温して1時間保持した。その後、混合物を40℃に冷却して、マクロモノマーを含む水性懸濁液を得た。得られた水性懸濁液をフィルタで濾過し、フィルタ上に残った残留物を脱イオン水で洗浄し、脱水し、40℃で16時間乾燥して、マクロモノマーa−1を得た。
このマクロモノマーa−1の分子量を表1に示す。
【0076】
製造例4〜9[マクロモノマーa−2〜a−7の製造]
表1に記載の通りに配合を変更した以外は、製造例3と同様にしてマクロモノマーa−2〜a−7を製造した。表1に示す配合の単位は質量部である。表中のb1は4−メタクリロイルオキシベンゾフェノンである。
【0077】
【表1】
【0078】
なお、表中の記号は以下の意味を示す。
MMA:メタクリル酸メチル
IBXMA:メタクリル酸イソボルニル
IBMA:メタクリル酸イソブチル
【0079】
実施例1[(メタ)アクリル系共重合体A−1の製造]
撹拌装置、温度計、冷却管、及び窒素ガス導入口を備えた四つ口フラスコに、酢酸エチルを40部、IPAを7.7部入れ、窒素ガス通気下で外温を85℃に昇温した。外温が85℃に達し、内温が安定した後、20部の酢酸エチル、5部のマクロモノマーa−1、94.7部のBA、0.30部のb1、0.13部のナイパー(登録商標)BMT−K40(日油製、商品名)からなる混合物を4時間かけて滴下した。滴下終了後1時間保持した後、0.5部のパーオクタO及び10部の酢酸エチルからなる混合物を30分間かけて添加した。その後、2時間保持した後、酸化防止剤(BASF社製、商品名「イルガノックス(登録商標)1010」)を0.5部投入し、固形分((モノマー+溶剤仕込量)中のモノマー仕込量の割合、以下同様)が53質量%になるように酢酸エチルを添加した後、室温まで冷却して(メタ)アクリル系共重合体A−1を含む共重合体溶液A−1を得た。
(メタ)アクリル系共重合体の総質量に対する構成単位bの含有量、並びに得られた共重合体の重量平均分子量及びガラス転移温度(計算値)を表2に示す。
【0080】
実施例2〜18、比較例1〜3
表2〜5に記載の通りに組成を変更した以外は、実施例1と同様にして(メタ)アクリル系共重合体を含む共重合体溶液を得た。
表2〜5に示す配合の単位は質量部である。
【0081】
各実施例および各比較例で得られた共重合体溶液を用い、上記の方法で試験片を作製し、粘着力、保持力、耐基材汚染性を評価した。
結果を表2〜5に示す。
【0082】
【表2】
【0083】
【表3】
【0084】
【表4】
【0085】
【表5】
【0086】
なお、表中の記号は以下の意味を示す。
IPA:イソプロピルアルコール
MMA:メタクリル酸メチル
n−BA:n−ブチルアクリレート
EHA:2−エチルヘキシルアクリレート
AA:アクリル酸
b1:4−メタクリロイルオキシベンゾフェノン
b2:4−[2−(メタクリロイルオキシ)エトキシ]ベンゾフェノン
【0087】
比較例1では、構成単位bの含有量が高すぎるため、溶融粘度が高く塗工性が不良で試験片の作成ができなかった。
比較例2では、マクロモノマーを使用していないため、粘着力、耐基材汚染性、保持力が不十分となった。
比較例3では、構成単位bを含有しないため、粘着力、耐基材汚染性、保持力が不十分となった。