(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明について詳述する。
なお、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。また、本発明における図は発明の理解を容易にするための模式図であり、各層の厚みの関係又は位置関係等は必ずしも実際のものとは一致しない。
【0013】
[被めっき層形成用組成物]
本発明の被めっき層形成用組成物は、
オキシムエステル系重合開始剤及びアシルホスフィンオキシド系重合開始剤の少なくとも一方と、主鎖に二重結合を含み、且つ、めっき触媒又はその前駆体と相互作用する官能基(以下、「相互作用性基」ともいう。)を含むポリマー(以下、「相互作用性ポリマー」ともいう。)と、多官能のラジカル重合性モノマーと、を含む。
上記構成により、本発明の被めっき層形成用組成物から形成される被めっき層は、めっき処理によりその上に金属層が形成可能で、且つ、延伸性に優れる。
これは、詳細には明らかではないが、本発明者は以下のように推測している。
オキシムエステル系重合開始剤及びアシルホスフィンオキシド系重合開始剤は、比較的疎水的な重合開始剤である。一方で、相互作用性ポリマー中の相互作用性基は比較的親水的であることから、被めっき層形成用組成物中において、上記重合開始剤は、相互作用性ポリマーの相互作用性基の付近を避けて比較的疎水的な二重結合の付近に偏在すると推測される。
上記要因により、上記被めっき層形成用組成物は、重合の際に、相互作用性ポリマーと多官能のラジカル重合性モノマーとの重合反応が生起され易く、更に、相互作用性基同士の相互作用に起因した相互作用性ポリマーの凝集も抑制されているため、ガラス転移温度の上昇が生じにくい。この結果として、本発明の被めっき層形成用組成物から形成される被めっき層は、ガラス転移温度が比較的低く(非剛直であり)、延伸性に優れていると考えられる。
【0014】
〔重合開始剤〕
被めっき層形成用組成物は、オキシムエステル系重合開始剤及びアシルホスフィンオキシド系重合開始剤の少なくとも一方の重合開始剤を含む。露光時の感度により優れる点で、オキシムエステル系重合開始剤が好ましい。以下において、オキシムエステル系重合開始剤及びアシルホスフィンオキシド系重合開始剤について説明する。
【0015】
<オキシムエステル系重合開始剤>
オキシムエステル系重合開始剤とは、分子内にオキシムエステル構造を有する化合物を意図する。オキシムエステル系重合開始剤としては特に制限されず、公知のオキシムエステル系重合開始剤を使用できる。
オキシムエステル系重合開始剤の具体例としては、特開2001−233842号公報記載の化合物、特開2000−80068号公報記載の化合物、又は、特開2006−342166号公報記載の化合物を使用できる。
また、オキシムエステル系重合開始剤としては、例えば、1,2−オクタンジオン−1−[4−(フェニルチオ)フェニル]−2−(O−ベンゾイルオキシム)、1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]エタノン1−(O−アセチルオキシム)、3−ベンゾイロキシイミノブタン−2−オン、3−アセトキシイミノブタン−2−オン、3−プロピオニルオキシイミノブタン−2−オン、2−アセトキシイミノペンタン−3−オン、2−アセトキシイミノ−1−フェニルプロパン−1−オン、2−ベンゾイロキシイミノ−1−フェニルプロパン−1−オン、3−(4−トルエンスルホニルオキシ)イミノブタン−2−オン、及び、2−エトキシカルボニルオキシイミノ−1−フェニルプロパン−1−オン等も使用できる。
オキシムエステル系重合開始剤の市販品としては、IRGACURE−OXE01(BASF社製)、IRGACURE−OXE02(BASF社製)、IRGACURE−OXE03(BASF社製)、IRGACURE−OXE04(BASF社製)、TR−PBG−304(常州強力電子新材料有限公司製)、アデカアークルズNCI−831、アデカアークルズNCI−930(ADEKA社製)、及びN−1919(カルバゾール・オキシムエステル骨格含有光開始剤(ADEKA社製)等が挙げられる。なかでも、IRGACURE−OXE01(BASF社製)、又はIRGACURE−OXE02(BASF社製)が好ましい。
以下に、IRGACURE−OXE01(BASF社製)、及びIRGACURE−OXE02(BASF社製)の具体的な構造をこの順に示す。
【0018】
<アシルホスフィンオキシド系重合開始剤>
アシルホスフィンオキシド系重合開始剤とは、分子内にアシルホスフィンオキシド構造を有する化合物を意図し、ビスアシルアシルホスフィンオキシド化合物も包含する。アシルホスフィンオキシド系重合開始剤としては特に制限されず、公知のアシルホスフィンオキシド系重合開始剤を使用できる。
アシルホスフィンオキシド系化合物としては、特公昭63−40799号公報、特公平5−29234号公報、特開平10−95788号公報、特開平10−29997号公報記載、及び特許4225898号に記載の化合物等を挙げられる。
アシルホスフィンオキシド系重合開始剤の市販品としては、Omnirad 819(IGM Resins B.V.製;ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド)、及び、Omnirad TPO H(IGM Resins B.V.製;2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−ホスフィンオキシド)が挙げられる。
【0019】
重合開始剤としては、なかでも、被めっき層の延伸性がより優れる点で、ClogPが5.00以上の重合開始剤が好ましく、ClogPが6.00以上の重合開始剤がより好ましい。なお、その上限値は特に制限されず、例えば、12.00以下であり、9.00以下が好ましい。
上記重合開始剤のClogPは、PerkinElmer社のChemBio Draw Ultra ver.13.0のChemPropertyを使用して算出した計算値を表す。なお、ClogPの値が大きい程、疎水性が高いことを表す。
【0020】
重合開始剤は、1種のみを用いてもよいし、2種類以上を組み合わせてもよい。
被めっき層形成用組成物における重合開始剤の含有量(複数種含む場合はその合計含有量)は特に制限されないが、被めっき層形成用組成物中の相互作用性ポリマーと多官能のラジカル重合性モノマーの合計量に対して、0.1〜20質量%が好ましく、0.5〜10質量%がより好ましい。
【0021】
〔主鎖に二重結合を含み、且つ、めっき触媒又はその前駆体と相互作用する官能基を含むポリマー(相互作用性ポリマー)〕
被めっき層形成用組成物は、主鎖に二重結合を含み、且つ、めっき触媒又はその前駆体と相互作用する官能基(相互作用性基)を含むポリマー(相互作用性ポリマー)を含む。
【0022】
相互作用性ポリマーが主鎖に二重結合を含む形態としては特に制限されず、例えば、共役ジエン化合物由来の繰り返し単位を含む形態が挙げられる。
【0023】
共役ジエン化合物としては、一つの単結合で隔てられた、二つの炭素−炭素二重結合を有する分子構造を有する化合物であれば特に制限されない。
共役ジエン化合物としては、例えば、イソプレン、1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、2,4−ヘキサジエン、1,3−ヘキサジエン、1,3−ヘプタジエン、2,4−ヘプタジエン、1,3−オクタジエン、2,4−オクタジエン、3,5−オクタジエン、1,3−ノナジエン、2,4−ノナジエン、3,5−ノナジエン、1,3−デカジエン、2,4−デカジエン、3,5−デカジエン、2,3−ジメチル−ブタジエン、2−メチル−1,3−ペンタジエン、3−メチル−1,3−ペンタジエン、4−メチル−1,3−ペンタジエン、2−フェニル−1,3−ブタジエン、2−フェニル−1,3−ペンタジエン、3−フェニル−1,3−ペンタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ペンタジエン、4−メチル−1,3−ペンタジエン、2−ヘキシル−1,3−ブタジエン、3−メチル−1,3−ヘキサジエン、2−ベンジル−1,3−ブタジエン、及び2−p−トリル−1,3−ブタジエン等が挙げられる。
【0024】
なかでも、相互作用性ポリマーの合成が容易で、被めっき層の特性がより優れる点で、共役ジエン化合物由来の繰り返し単位は、式(X1)で表されるブタジエン骨格を有する化合物由来の繰り返し単位であることが好ましい。
【0026】
式(X1)中、R
aは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、又は炭化水素基を表す。炭化水素基としては、脂肪族炭化水素基(例えば、アルキル基、及びアルケニル基等が挙げられ、炭素数1〜12が好ましい。)、及び芳香族炭化水素基(例えば、フェニル基、及びナフチル基等が挙げられる。)が挙げられる。複数あるR
aは同一であっても異なっていてもよい。
【0027】
式(X1)で表されるブタジエン骨格を有する化合物(ブタジエン構造を有する単量体)としては、例えば、1,3−ブタジエン、イソプレン、2−エチル−1,3−ブタジエン、2−n−プロピル−1,3−ブタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1−フェニル−1,3−ブタジエン、1−α−ナフチル−1,3−ブタジエン、1−β−ナフチル−1,3−ブタジエン、2−クロル−1,3−ブタジエン、1−ブロム−1,3−ブタジエン、1−クロルブタジエン、2−フルオロ−1,3−ブタジエン、2,3−ジクロル−1,3−ブタジエン、1,1,2−トリクロル−1,3−ブタジエン、及び2−シアノ−1,3−ブタジエン等が挙げられる。
【0028】
相互作用性ポリマー中における共役ジエン化合物由来の繰り返し単位の含有量は特に制限されないが、被めっき層の延伸性及びめっき析出性のバランスの点で、全繰り返し単位に対して、1〜90モル%が好ましく、10〜90モル%がより好ましい。
【0029】
相互作用性基とは、被めっき層に付与されるめっき触媒又はその前駆体と相互作用できる官能基を意図し、例えば、めっき触媒又はその前駆体と静電相互作用を形成可能な官能基、並びに、めっき触媒又はその前駆体と配位形成可能な含窒素官能基、含硫黄官能基、及び含酸素官能基が挙げられる。
相互作用性基としては、例えば、アミノ基、アミド基、イミド基、ウレア基、3級のアミノ基、アンモニウム基、アミジノ基、トリアジン基、トリアゾール基、ベンゾトリアゾール基、イミダゾール基、ベンズイミダゾール基、キノリン基、ピリジン基、ピリミジン基、ピラジン基、キナゾリン基、キノキサリン基、プリン基、トリアジン基、ピペリジン基、ピペラジン基、ピロリジン基、ピラゾール基、アニリン基、アルキルアミン構造を含む基、イソシアヌル構造を含む基、ニトロ基、ニトロソ基、アゾ基、ジアゾ基、アジド基、シアノ基、及びシアネート基等の含窒素官能基;エーテル基、水酸基、フェノール性水酸基、カルボン酸基、カーボネート基、カルボニル基、エステル基、N−オキシド構造を含む基、S−オキシド構造を含む基、及びN−ヒドロキシ構造を含む基等の含酸素官能基;チオフェン基、チオール基、チオウレア基、チオシアヌール酸基、ベンズチアゾール基、メルカプトトリアジン基、チオエーテル基、チオキシ基、スルホキシド基、スルホン基、サルファイト基、スルホキシイミン構造を含む基、スルホキシニウム塩構造を含む基、スルホン酸基、及びスルホン酸エステル構造を含む基等の含硫黄官能基;ホスフェート基、ホスフォロアミド基、ホスフィン基、及びリン酸エステル構造を含む基等の含リン官能基;塩素原子、及び臭素原子等のハロゲン原子を含む基等が挙げられ、塩構造をとりうる官能基においてはそれらの塩も使用できる。
なかでも、極性が高く、めっき触媒又はその前駆体等への吸着能が高いことから、カルボン酸基、スルホン酸基、リン酸基、及びボロン酸基等のイオン性極性基、又はシアノ基が好ましく、カルボン酸基、又はシアノ基がより好ましく、めっき析出性により優れる点で、カルボン酸基が更に好ましい。
相互作用性ポリマーは、相互作用性基を2種以上有していてもよい。
【0030】
相互作用性ポリマー中には、相互作用性基を有する繰り返し単位が含まれることが好ましい。
相互作用性基を有する繰り返し単位の一好適態様としては、式(Y1)で表される繰り返し単位が挙げられる。
【0032】
式(Y1)中、R
bは、水素原子又はアルキル基(例えば、メチル基、及びエチル基等)を表す。
L
aは、単結合又は2価の連結基を表す。
2価の連結基の種類は特に制限されないが、例えば、2価の炭化水素基(2価の飽和炭化水素基であっても、2価の芳香族炭化水素基であってもよい。2価の飽和炭化水素基は、直鎖状、分岐鎖状、及び環状のいずれであってもよく、炭素数1〜20が好ましく、例えば、アルキレン基が挙げられる。また、2価の芳香族炭化水素基は、炭素数5〜20が好ましく、例えば、フェニレン基が挙げられる。それ以外にも、アルケニレン基、アルキニレン基であってもよい。)、2価の複素環基、−O−、−S−、−SO
2−、−NR
10−、−CO−(−C(=O)−)、−COO−(−C(=O)O−)、−NR
10−CO−、−CO−NR
10−、−SO
3−、−SO
2NR
10−、及びこれらを2種以上組み合わせた基が挙げられる。ここで、R
10は、水素原子又はアルキル基(好ましくは炭素数1〜10)を表す。
なお、上記2価の連結基中の水素原子は、ハロゲン原子等他の置換基で置換されていてもよい。
【0033】
Xは、相互作用性基を表す。相互作用性基の定義は、上述の通りである。
【0034】
相互作用性基を有する繰り返し単位の他の好適態様としては、不飽和カルボン酸又はその誘導体由来の繰り返し単位が挙げられる。
不飽和カルボン酸とは、カルボン酸基(−COOH基)を有する不飽和化合物である。不飽和カルボン酸の誘導体とは、例えば、不飽和カルボン酸の無水物、不飽和カルボン酸の塩、及び不飽和カルボン酸のモノエステル等が挙げられる。
不飽和カルボン酸としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、及びシトラコン酸等が挙げられる。
【0035】
相互作用性ポリマー中における相互作用性基を有する繰り返し単位の含有量は特に制限されないが、被めっき層の延伸性及びめっき析出性のバランスの点で、全繰り返し単位に対して、1〜90モル%が好ましく、10〜90モル%がより好ましい。
【0036】
相互作用性ポリマーの重量平均分子量は特に制限されないが、取扱い性がより優れる点で、1,000〜700,000が好ましく、2,000〜200,000がより好ましい。
【0037】
相互作用性ポリマーの好適態様としては、少ないエネルギー付与量(例えば、露光量)にて被めっき層が形成しやすい点で、共役ジエン化合物由来の繰り返し単位、及び不飽和カルボン酸又はその誘導体由来の繰り返し単位を有するポリマーXが挙げられる。
共役ジエン化合物由来の繰り返し単位の説明は、上述の通りである。
また、不飽和カルボン酸又はその誘導体由来の繰り返し単位の説明は、上述の通りである。
【0038】
ポリマーX中における共役ジエン化合物由来の繰り返し単位の含有量は、全繰り返し単位に対して、25〜75モル%であることが好ましい。
ポリマーX中における不飽和カルボン酸又はその誘導体由来の繰り返し単位の含有量は、全繰り返し単位に対して、25〜75モル%であることが好ましい。
【0039】
相互作用性ポリマーは、1種のみを用いてもよいし、2種類以上を組み合わせてもよい。
被めっき層形成用組成物における相互作用性ポリマーの含有量(複数種含む場合はその合計含有量)は特に制限されず、全固形分に対して、10〜90質量%の場合が多いが、後述する被めっき層前駆体層のタック性がより抑制される点で、全固形分に対して、15〜85質量%が好ましく、被めっき層の延伸性とめっき析出性とのバランスがより優れる点で、25〜80質量%がより好ましく、35〜80質量%が更に好ましい。
なお、本明細書において、固形分とは、被めっき層を構成する成分を意図し、溶媒は含まれない。なお、被めっき層を構成する成分であれば、その性状が液体状であっても、固形分に含まれる。
【0040】
後述する多官能のラジカル重合性モノマーの質量に対する、相互作用性ポリマーの質量の比(相互作用性ポリマーの質量/多官能のラジカル重合性モノマーの質量)は特に制限されず、0.1〜10の場合が多いが、被めっき層前駆体層のタック性がより抑制される点で、0.25超が好ましく、0.25超8未満がより好ましく、被めっき層の延伸性とめっき析出性とのバランスがより優れる点で、0.3〜4が更に好ましい。
【0041】
〔多官能のラジカル重合性モノマー〕
被めっき層形成用組成物は、多官能のラジカル重合性モノマーを含む。
多官能のラジカル重合性モノマーとは、ラジカル重合性基を2つ以上有する化合物を意図する。
多官能のラジカル重合性モノマー中のラジカル重合性基の数は特に制限されないが、2〜10つが好ましく、2〜5つがより好ましく、2つが更に好ましい。
【0042】
ラジカル重合性基としては特に制限されず、例えば、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、アクリルアミド基、メタクリルアミド基、ビニル基、及びスチリル基等が挙げられ、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、アクリルアミド基、又はメタクリルアミド基が好ましく、アルカリ現像性により優れる点で、アクリルアミド基、又はメタクリルアミド基がより好ましい。
ここで、アクリロイルオキシ基は下記式(A)で表される基であり、メタクリロイルオキシ基は下記式(B)で表される基であり、アクリルアミド基は下記式(C)で表される基であり、メタクリルアミド基は下記式(D)で表される基である。
式(A)〜式(D)中、*は、結合位置を表す。
式(C)及び式(D)中、Rは、水素原子又は置換基を表す。置換基の種類は特に制限されず、公知の置換基(例えば、ヘテロ原子を含んでいてもよい脂肪族炭化水素基(例えばアルキル基)、及び芳香族炭化水素基(例えばアリール基等)等が挙げられる。)が挙げられる。Rとしては、水素原子が好ましい。
【0044】
多官能のラジカル重合性モノマーは、ポリオキシアルキレン基を有することが好ましい。
ポリオキシアルキレン基とは、オキシアルキレン基を繰り返し単位として有する基である。ポリオキシアルキレン基としては、式(E)で表される基が好ましい。
式(E) −(A−O)
m−
Aは、アルキレン基を表す。アルキレン基中の炭素数は特に制限されないが、1〜4が好ましく、2〜3がより好ましい。例えば、Aが炭素数1のアルキレン基の場合、−(A−O)−はオキシメチレン基(−CH
2O−)を、Aが炭素数2のアルキレン基の場合、−(A−O)−はオキシエチレン基(−CH
2CH
2O−)を、Aが炭素数3のアルキレン基の場合、−(A−O)−はオキシプロピレン基(−CH
2CH(CH
3)O−、−CH(CH
3)CH
2O−又は−CH
2CH
2CH
2O−)を示す。なお、アルキレン基は、直鎖状でも、分岐鎖状でもよい。
【0045】
mは、オキシアルキレン基の繰り返し数を表し、2以上の整数を表す。繰り返し数は特に制限されないが、なかでも、2〜10が好ましく、2〜6がより好ましい。
なお、複数のオキシアルキレン基中のアルキレン基の炭素数は、同一であっても異なっていてもよい。例えば、式(E)においては、−(A−O)−で表される繰り返し単位が複数含まれており、各繰り返し単位中のアルキレン基中の炭素数は、同一であっても異なっていてもよい。例えば、−(A−O)
m−において、オキシメチレン基とオキシプロピレン基とが含まれていてもよい。
また、複数種のオキシアルキレン基が含まれる場合、それらの結合順は特に制限されず、ランダム型でもブロック型でもよい。
【0046】
なかでも、被めっき層の延伸性がより優れる点で、多官能のラジカル重合性モノマーとしては、二官能のアクリルアミド化合物又は二官能のメタクリルアミド化合物が好ましく、式(1)で表される化合物がより好ましい。
【0048】
式(1)中、R
1及びR
2は、それぞれ独立に、水素原子又はメチル基を表す。
A及びmの定義は、上述した式(E)中のA及びmの定義と同じである。
【0049】
R
3及びR
4は、水素原子又は置換基を表す。
R
3及びR
4で表される置換基の種類としては、上述した式(C)及び式(D)中のRで表される置換基と同義であり、好適態様も同じである。
R
3及びR
4としては、なかでも、水素原子が好ましい。
【0050】
L
1及びL
2は、それぞれ独立に、単結合又は2価の連結基を表す。
L
1及びL
2で表される2価の連結基の種類としては、上述した式(Y1)中のL
aで表される2価の連結基と同義であり、好適態様も同じである。
【0051】
上記多官能のラジカル重合性モノマーは、各種市販品を利用できるし、公技番号2013−502654号記載の方法により合成できる。なお、上記式(1)で表される化合物の市販品としては、例えば、FAM−201(富士フイルム株式会社製)等が挙げられる。
【0052】
多官能のラジカル重合性モノマーは、1種のみを用いてもよいし、2種類以上を組み合わせてもよい。
被めっき層形成用組成物における多官能のラジカル重合性モノマーの含有量(複数種含む場合はその合計含有量)は特に制限されず、全固形分に対して、10〜90質量%の場合が多いが、後述する被めっき層前駆体層のタック性がより抑制される点で、全固形分に対して、15〜85質量が好ましく、被めっき層の延伸性とめっき析出性とのバランスがより優れる点で、15〜75質量%がより好ましく、15〜65質量%が更に好ましい。
【0053】
〔任意成分〕
被めっき層形成用組成物は、上述した重合開始剤、相互作用性ポリマー、及び多官能のラジカル重合性モノマー以外の他の成分を含んでいてもよい。以下、任意成分について詳述する。
【0054】
<界面活性剤>
被めっき層形成用組成物は、界面活性剤を含んでいてもよい。
界面活性剤の種類は特に制限されず、例えば、フッ素系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、及びシリコーン系界面活性剤等が挙げられる。なかでも、被めっき層前駆体層のタック性がより抑制される点で、フッ素系界面活性剤又はシリコーン系界面活性剤が好ましく、フッ素系界面活性剤がより好ましい。
界面活性剤は、1種のみを用いてもよいし、2種類以上を組み合わせてもよい。
【0055】
フッ素系界面活性剤としては、例えば、W−AHE、W−AHI(以上、富士フイルム(株)製)、メガファックF171、同F172、同F173、同F176、同F177、同F141、同F142、同F143、同F144、同R30、同F437、同F475、同F479、同F482、同F554、同F569、同F780、同F781F(以上、DIC(株)製)、フロラードFC430、同FC431、同FC171(以上、住友スリーエム(株)製)、サーフロンS−382、同SC−101、同SC−103、同SC−104、同SC−105、同SC1068、同SC−381、同SC−383、同S393、同KH−40(以上、旭硝子(株)製)、PF636、PF656、PF6320、PF6520、PF7002(OMNOVA社製)等が挙げられる。
【0056】
被めっき層形成用組成物における界面活性剤の含有量(複数種含む場合はその合計含有量)は特に制限されないが、被めっき層形成用組成物全量100質量%に対して、0.005〜0.5質量%が好ましく、0.01〜0.2質量%がより好ましく、0.01〜0.1質量%が更に好ましい。
【0057】
<溶媒>
被めっき層形成用組成物は、溶媒を含んでいてもよい。
溶媒の種類は特に制限されず、水及び有機溶媒が挙げられる。有機溶媒としては、公知の有機溶媒(例えば、アルコール系溶媒、エステル系溶媒、ケトン系溶媒、ハロゲン系溶媒、及び炭化水素系溶媒等)が挙げられる。
【0058】
被めっき層形成用組成物は、必要に応じて、他の成分(例えば、増感剤、硬化剤、重合禁止剤、酸化防止剤、帯電防止剤、フィラー、難燃剤、滑剤、可塑剤、又はめっき触媒若しくはその前駆体)を含んでいてもよい。
【0059】
被めっき層形成用組成物の製造方法は特に制限されず、公知の方法が挙げられる。例えば、上述した各成分を一括して混合する方法、又は、各成分を段階的に混合する方法等が挙げられる。
【0060】
〔被めっき層及びその製造方法〕
上述した被めっき層形成用組成物を用いて、被めっき層を形成できる。なお、被めっき層とは、後述するめっき処理が施される層であり、めっき処理によりその表面上に金属層が形成される。
被めっき層の製造方法としては、以下の工程を有する方法が好ましい。
工程1:基板と被めっき層形成用組成物とを接触させて、基板上に被めっき層前駆体層を形成する工程
工程2:被めっき層前駆体層に硬化処理を施し、被めっき層を形成する工程
以下、上記工程1及び2について詳述する。
【0061】
工程1は、基板と被めっき層形成用組成物とを接触させて、基板上に被めっき層前駆体層を形成する工程である。
なお、被めっき層前駆体層とは、硬化処理が施される前の未硬化の状態の層である。
使用される基板の種類は特に制限されず、公知の基板(例えば、樹脂基板、ガラス基板、及びセラミック基板等)が挙げられる。なかでも、延伸性に優れる点で、樹脂基板が好ましい。
【0062】
基板の厚みは特に制限されないが、取り扱い性及び薄型化のバランスの点から、0.05〜2mmが好ましく、0.1〜1mmがより好ましい。
また、基板は、光を適切に透過することが好ましい。具体的には、基板の全光線透過率は、85〜100%であることが好ましい。
【0063】
また、基板は複層構造であってもよく、例えば、その一つの層として機能性フィルムを含んでいてもよい。なお、基板自体が機能性フィルムであってもよい。特に限定はされないが、機能性フィルムの例として、偏光板、位相差フィルム、カバープラスチック、ハードコートフィルム、バリアフィルム、粘着フィルム、電磁波遮蔽フィルム、発熱フィルム、アンテナフィルム、及びタッチパネル以外のデバイス用配線フィルム等が挙げられる。
【0064】
なお、必要に応じて、基板上には、被めっき層と基板との密着性を向上させるためのプライマー層が配置されていてもよい。プライマー層を形成する造膜成分としては特に制限されないが、ウレタン系樹脂が好ましい。
【0065】
基板と被めっき層形成用組成物とを接触させる方法は特に制限されず、例えば、被めっき層形成用組成物を基板上に塗布する方法、及び、被めっき層形成用組成物中に基板を浸漬する方法が挙げられる。
なお、基板と被めっき層形成用組成物とを接触させた後、必要に応じて、被めっき層前駆体層から溶媒を除去するために、乾燥処理を実施してもよい。
【0066】
上記方法により、被めっき層形成用組成物から形成される被めっき層前駆体層が基板上に配置される。つまり、基板と、基板上に配置された被めっき層前駆体層とを有する、被めっき層前駆体層付き基板が得られる。
【0067】
被めっき層前駆体層の平均厚みは特に制限されないが、めっき触媒又はその前駆体をより十分な量で担持しやすい点で、50nm以上が好ましく、100nm以上がより好ましい。一方、その上限値は、パターニング性がより優れる点及び活性が過剰なことに起因するめっき異常がより抑制できる点で、2μm以下が好ましく、1.5μm以下がより好ましい。
上記平均厚みは、被めっき層前駆体層の垂直断面を電子顕微鏡(例えば、走査型電子顕微鏡)にて観察して、任意の10点の厚みを測定して、それらを算術平均した平均値である。
【0068】
工程2は、被めっき層前駆体層に硬化処理を施し、被めっき層を形成する工程である。
硬化処理の方法は特に制限されず、加熱処理及び露光処理(光照射処理)が挙げられる。なかでも、処理が短時間で終わる点で、露光処理が好ましい。硬化処理により、被めっき層前駆体層中の化合物に含まれる重合性基が活性化され、化合物間の架橋が生じ、層の硬化が進行する。
なお、上記硬化処理(特に、露光処理)を実施する際には、所望のパターン状被めっき層が得られるように、パターン状に硬化処理を施してもよい。例えば、所定の形状の開口部を有するマスクを用いて露光処理を行うことが好ましい。なお、パターン状に硬化処理を施した被めっき層前駆体層に対して、現像処理を施すことにより、パターン状被めっき層が形成される。
現像処理の方法は特に制限されず、使用される材料の種類に応じて、最適な現像処理が実施される。現像液としては、例えば、有機溶媒、純水、及びアルカリ水溶液が挙げられる。
【0069】
上記方法により、被めっき層形成用組成物を硬化して得られる被めっき層が基板上に配置される。つまり、基板と、基板上に配置された被めっき層とを有する、被めっき層付き基板が得られる。
【0070】
被めっき層の平均厚みは特に制限されないが、めっき触媒又はその前駆体をより十分な量で担持しやすい点で、50nm以上が好ましく、100nm以上がより好ましい。一方、その上限値は、パターニング性がより優れる点及び活性が過剰なことに起因するめっき異常がより抑制できる点で、2μm以下が好ましく、1.5μm以下がより好ましい。
上記平均厚みは、被めっき層前駆体層の垂直断面を電子顕微鏡(例えば、走査型電子顕微鏡)にて観察して、任意の10点の厚みを測定して、それらを算術平均した平均値である。
【0071】
被めっき層は、パターン状に形成されてもよい。例えば、被めっき層は、メッシュ状に形成されていてよい。
図1においては、基板10上に、メッシュ状の被めっき層12が配置されている。
被めっき層12のメッシュを構成する細線部の線幅Wの大きさは特に制限されないが、被めっき層上に形成される金属層の導電特性及び視認しづらさのバランスの点で、30μm以下が好ましく、15μm以下がより好ましく、10μm以下が更に好ましく、5μm以下が特に好ましく、0.5μm以上が好ましく、1.0μm以上がより好ましい。
【0072】
図1においては、開口部14は略菱形の形状を有しているが、この形状に制限されず、他の多角形状(例えば、三角形、四角形、六角形、ランダムな多角形)としてもよい。また、一辺の形状を直線状のほか、湾曲形状にしてもよいし、円弧状にしてもよい。円弧状とする場合は、例えば、対向する2辺については、外方に凸の円弧状とし、他の対向する2辺については、内方に凸の円弧状としてもよい。また、各辺の形状を、外方に凸の円弧と内方に凸の円弧が連続した波線形状としてもよい。もちろん、各辺の形状を、サイン曲線にしてもよい。
【0073】
開口部14の一辺の長さLは特に制限されないが、1500μm以下が好ましく、1300μm以下がより好ましく、1000μm以下が更に好ましく、5μm以上が好ましく、30μm以上がより好ましく、80μm以上が更に好ましい。開口部の一辺の長さが上記範囲である場合には、後述する導電性フィルムの透明性がより優れる。
【0074】
なお、上述した被めっき層付き基板を変形させて、3次元形状を有する被めっき層付き基板としてもよい。つまり、上述した被めっき層付き基板を変形させることにより、3次元形状を有する基板と、この基板上に配置された被めっき層(又は、パターン状の被めっき層)とを有する被めっき層付き基板(3次元形状を有する被めっき層付き基板)が得られる。
上述したように、上記被めっき層形成用組成物を硬化させて得られる被めっき層は、延伸性に優れ、基板の変形に追従して、その形状を変えることができる。
被めっき層付き基板の変形方法は特に制限されず、例えば、真空成形、ブロー成形、フリーブロー成形、圧空成形、真空−圧空成形、及び熱プレス成形等の公知の方法が挙げられる。
例えば、
図2に示すように、被めっき層付き基板の一部を半球状に変形させて、半球状の形状を有する被めっき層付き基板20としてもよい。なお、
図2においては、被めっき層は図示しない。
なお、上記では3次元形状を付与する態様について述べたが、一軸延伸又は二軸延伸のような延伸処理を被めっき層付き基板に施して、その形状を変形させてもよい。
【0075】
なお、上記では被めっき層付き基板を変形する態様について述べたが、この態様には制限されず、上述した被めっき層前駆体層付き基板を変形させた後、上述した工程2を実施して、3次元形状を有する被めっき層付き基板を得てもよい。
また、上記では被めっき層前駆体層に対してパターン状に硬化処理を施してパターン状の被めっき層を形成する態様について述べたが、この態様には制限されず、基板上にパターン状に被めっき層前駆体層を配置して、このパターン状の被めっき層前駆体層に硬化処理を施すことにより、パターン状の被めっき層を形成することもできる。なお、パターン状に被めっき層前駆体層を配置する方法としては、例えば、スクリーン印刷法又はインクジェット法にて被めっき層形成用組成物を基板上の所定の位置に付与する方法が挙げられる。
【0076】
〔導電性フィルム及びその製造方法〕
上述した被めっき層付き基板中の被めっき層に対して、めっき処理を施して、被めっき層上に金属層を形成することができる。特に、被めっき層が基板上にパターン状に配置される場合は、そのパターンに沿った金属層(パターン状金属層)が形成される。
金属層を形成する方法は特に制限されないが、例えば、被めっき層にめっき触媒又はその前駆体を付与する工程3、及びめっき触媒又はその前駆体が付与された被めっき層に対してめっき処理を施す工程4を実施することが好ましい。
以下、工程3及び工程4の手順について詳述する。
【0077】
工程3は、被めっき層にめっき触媒又はその前駆体を付与する工程である。被めっき層には上記相互作用性基が含まれているため、相互作用性基がその機能に応じて、付与されためっき触媒又はその前駆体を付着(吸着)する。
めっき触媒又はその前駆体は、めっき処理の触媒又は電極として機能する。そのため、使用されるめっき触媒又はその前駆体の種類は、めっき処理の種類により適宜決定される。
【0078】
めっき触媒又はその前駆体は、無電解めっき触媒又はその前駆体が好ましい。
無電解めっき触媒は、無電解めっき時の活性核となるものであれば特に制限されず、例えば、自己触媒還元反応の触媒能を有する金属(Niよりイオン化傾向の低い無電解めっきできる金属として知られるもの)が挙げられる。具体的には、Pd、Ag、Cu、Pt、Au、及びCo等が挙げられる。
この無電解めっき触媒としては、金属コロイドを用いてもよい。
無電解めっき触媒前駆体は、化学反応により無電解めっき触媒となるものであれば特に制限されず、例えば、上記無電解めっき触媒として挙げた金属のイオンが挙げられる。
【0079】
めっき触媒又はその前駆体を被めっき層に付与する方法としては、例えば、めっき触媒又はその前駆体を溶媒に分散又は溶解させた溶液を調製し、その溶液を被めっき層上に塗布する方法、又は、その溶液中に被めっき層付き基板を浸漬する方法が挙げられる。
上記溶媒としては、例えば、水又は有機溶媒が挙げられる。
【0080】
工程4は、めっき触媒又はその前駆体が付与された被めっき層に対してめっき処理を施す工程である。
めっき処理の方法は特に制限されず、例えば、無電解めっき処理、又は電解めっき処理(電気めっき処理)が挙げられる。本工程では、無電解めっき処理を単独で実施してもよいし、無電解めっき処理を実施した後に更に電解めっき処理を実施してもよい。
以下、無電解めっき処理、及び電解めっき処理の手順について詳述する。
【0081】
無電解めっき処理とは、めっきとして析出させたい金属イオンを溶かした溶液を用いて、化学反応によって金属を析出させる処理である。
無電解めっき処理の手順としては、例えば、無電解めっき触媒が付与された被めっき層付き基板を、水洗して余分な無電解めっき触媒を除去した後、無電解めっき浴に浸漬することが好ましい。使用される無電解めっき浴としては、公知の無電解めっき浴を使用できる。
なお、一般的な無電解めっき浴には、溶媒(例えば、水)の他に、めっき用の金属イオン、還元剤、及び金属イオンの安定性を向上させる添加剤(安定剤)が主に含まれる。
【0082】
被めっき層に付与されためっき触媒又はその前駆体が電極としての機能を有する場合、その触媒又はその前駆体が付与された被めっき層に対して、電解めっき処理を施すことができる。
なお、上述したように、上記無電解めっき処理の後に、必要に応じて、電解めっき処理を行うことができる。このような形態では、形成される金属層の厚みを適宜調整可能である。
【0083】
なお、上記では工程3を実施する形態について述べたが、めっき触媒又はその前駆体が被めっき層に含まれる場合、工程3を実施しなくてもよい。
【0084】
上記処理を実施することにより、被めっき層上に金属層が形成される。つまり、被めっき層付き基板と、被めっき層付き基板中の被めっき層上に配置された金属層とを含む、導電性フィルムが得られる。
なお、形成したいパターン状金属層の形状に合わせて、パターン状被めっき層を基板上に配置することにより、所望の形状のパターン状金属層を有する導電性フィルムを得ることができる。例えば、メッシュ状の金属層を得たい場合は、メッシュ状の被めっき層を形成すればよい。
また、3次元形状を有する被めっき層付き基板を用いて、上記工程3及び上記工程4を実施した場合、3次元形状を有する導電性フィルムが得られる。
【0085】
上記手順によって得られた導電性フィルム(特に、3次元形状を有する導電性フィルム)は、各種用途に適用できる。例えば、タッチパネルセンサー、半導体チップ、FPC(Flexible printed circuits)、COF(Chip on Film)、TAB(Tape Automated Bonding)、アンテナ、多層配線基板、及びマザーボード等の種々の用途に適用できる。なかでも、タッチパネルセンサー(特に、静電容量式タッチパネルセンサー)に用いることが好ましい。上記導電性フィルムをタッチパネルセンサーに適用する場合、パターン状金属層がタッチパネルセンサー中の検出電極又は引き出し配線として機能する。このようなタッチパネルセンサーは、タッチパネルに好適に適用できる。
また、導電性フィルムは、発熱体として用いることもできる。例えば、パターン状金属層に電流を流すことにより、パターン状金属層の温度が上昇して、パターン状金属層が熱電線として機能する。
【0086】
3次元形状を有する導電性フィルムの3次元形状部分は成形前と比べて配線パターンが変形され、基板は薄くなっている。その結果、両面にパターン状金属層を有し、かつ、3次元形状を有する導電性フィルムをタッチパネルセンサーとして用いた場合、配線パターンであるパターン状金属層の面積が拡大した部分のΔCm値が小さくなり、基板が薄くなったところはΔCm値が大きくなる。
そのため、本発明では、上記のような問題に対して、各アドレスごとにΔCmの範囲を個別設定することにより対応できる。
また、上記対応方法以外にも、例えば、成形時のパターン状金属層の変形の程度を考慮して、成形後のΔCm値が面内で概ね一定になるよう、成形前の状態でのパターン状金属層の配置位置を調整する方法も挙げられる。
さらに、3次元形状を有する導電性フィルム中のパターン状金属層上に重ねるカバーフィルムの厚みを変えることで、面内においてΔCm値を概ね一定にすることもできる。
なお、これらの方法を組み合わせも用いることもできる。
【0087】
3次元形状を有する導電性フィルムの自己支持性を高めるために、インサート成形を利用してもよい。例えば、3次元形状を有する導電性フィルムを金型に配置して樹脂を金型内に充填し、導電性フィルム上に樹脂層を積層してもよい。また、めっき処理を施す前の被めっき層付き基板に3次元形状を付与した後、3次元形状を有する被めっき層付き基板を金型に配置して樹脂を金型内に充填し、得られた積層体に対してめっき処理を施して、自己支持性に優れる導電性フィルムを作製してもよい。
【0088】
また、3次元形状を有する導電性フィルムを加飾する場合、例えば、加飾フィルムを成形しながら、3次元形状を有する導電性フィルムに貼り合わせてもよい。具体的には、TOM(Three dimension Overlay Method)成形を用いることができる。
また、3次元形状を有する導電性フィルムに直接塗装を施して、加飾してもよい。
また、被めっき層前駆体層を形成する前の基板の表面及び/又は裏面上に、加飾層を配置してよい。また、基板の一方の面上に被めっき層前駆体層が配置される場合、基板の他方の面上に加飾層を形成してもよいし、加飾フィルムを貼り合わせてもよい。
さらに、加飾フィルムを用いたインモールド成形又はインサート成形により、3次元形状を有する導電性フィルムに加飾を施してもよい。
【実施例】
【0089】
以下に実施例に基づいて本発明を更に詳細に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、及び処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更できる。したがって、本発明の範囲は以下に示す実施例により限定的に解釈されるべきものではない。
【0090】
[実施例1]
〔プライマー層形成用組成物の調製〕
以下の成分を混合し、プライマー層形成用組成物を得た。
Z913−3(アイカ工業社製) 33質量%
IPA(イソプロパノール) 67質量%
〔被めっき層形成用組成物Aの調製〕
以下の成分を混合し、被めっき層形成用組成物Aを得た。
イソプロパノール 38質量部
ポリブタジエンマレイン酸(ブタジエン−マレイン酸交互共重合体、ブタジエン由来の繰り返し単位:マレイン酸由来の繰り返し単位=1:1(モル比)、Polysciences社製)
4質量部
FAM−201(富士フイルム株式会社製、2官能アクリルアミド化合物に該当)
1質量部
IRGACURE−OXE02(BASF社製、オキシムエステル系重合開始剤に該当、ClogP:6.55) 0.05質量部
【0091】
〔被めっき層前駆体層付き基板の作製〕
基板(帝人製PC(ポリカーボネート)フィルム、パンライトPC、厚み:250μm)の一方の面にプライマー層形成用組成物をバー塗布し、80℃で3分乾燥させた。その後、形成されたプライマー層形成用組成物層に対して、1000mJの照射量でUV(紫外線)照射し、プライマー層(膜厚0.8μm)を形成した。
次に、上記プライマー層上に、被めっき層形成用組成物Aを膜厚0.2μmになるようにバー塗布して120℃で1分間乾燥し、被めっき層前駆体層付き基板を得た。次いで、直ちに、被めっき層前駆体層の表面に12μm厚みのポリプロピレンフィルム(保護膜)を貼り付けた。
【0092】
〔パターン状の被めっき層付き基板の作製〕
次に、保護膜を付与した被めっき層前駆体層付き基板に対して、細線部の幅が4μmで、開口部の一片の長さが150μmであるメッシュ状の開口部パターンを有するマスク越しに、高圧水銀灯にて30mJ/cm
2でUV照射した。
UV照射後、被めっき層前駆体層付き基板から保護膜を剥離した。次に、保護膜を剥離した後の被めっき層前駆体層付き基板に対して、炭酸ナトリウム水溶液(1質量%)にて、露光された被めっき層前駆体層をシャワー洗浄してアルカリ現像処理を施し、パターン状の被めっき層付き基板を得た。被めっき層の厚みは、0.2μmであった。なお、ここで得られたパターン状の被めっき層付き基板(つまり、半球状に成形する前のもの)を後述する延伸性評価にて使用した。
【0093】
次に、180℃に調温したオーブンにて、半球状の凹部を有する金型を1時間以上加熱した。金型が180℃に昇温してから、金型をオーブンから取り出し、耐熱テープを用いて、凹部の開口を覆うようにパターン状被めっき層付き基板を金型に貼り付けた。金型を素早くオーブンに戻して、金型を30秒間放置したのち、半球状の凹部の底部にある空気穴から5秒間にわたって真空吸引し、半球状の形状を有する被めっき層付き基板を得た(
図2参照)。
【0094】
〔導電性フィルムの作製〕
次に、Pd触媒付与液オムニシールド1573アクチベータ(ローム・アンド・ハース電子材料株式会社)を3.6体積%になるよう純水で希釈し、0.1NのHClにてpHを4.0に調整した水溶液に、半球状の被めっき層付き基板を45℃にて5分間浸漬し、その後、純水にて2回洗浄した。次に、上記半球状の被めっき層付き基板を、還元剤サーキューポジットPBオキサイドコンバータ60C(ローム・アンド・ハース電子材料株式会社製)の0.8体積%水溶液に30℃にて5分間浸漬し、その後、純水にて2回洗浄した。その後、上記半球状の被めっき層付き基板を、サーキューポジット4500(ローム・アンド・ハース電子材料株式会社製)のM剤12体積%、A剤6体積%、及びB剤10体積%を混合した無電解めっき液を建浴し45℃にて15分浸漬し、純水にて洗浄してパターン状金属層を形成し、半球状の曲面を有する導電性フィルムを得た。
【0095】
[実施例2]
重合開始剤の種類をIRGACURE−OXE02からIRGACURE−OXE01(BASF社製、オキシムエステル系重合開始剤に該当、ClogP:8.50)に変更し、露光量を50mJ/cm
2とした以外は実施例1と同様の方法により、実施例2の導電性フィルムを作製した。
【0096】
[実施例3]
重合開始剤の種類をIRGACURE−OXE02からOmnirad 819(IGM Resins B.V.製、アシルホスフィンオキシド系重合開始剤に該当、ClogP:6.69)に変更し、露光量を100mJ/cm
2とした以外は実施例1と同様の方法により、実施例3の導電性フィルムを作製した。
【0097】
[実施例4]
多官能のラジカル重合性モノマーの種類をFAM−201からライトアクリレート9EG−A(共栄社化学社製、2官能アクリレート化合物に該当)に変更し露光量を100mJ/cm
2とした以外は実施例1と同様の方法により、実施例4の導電性フィルムを作製した。
【0098】
[比較例1]
多官能のラジカル重合性モノマーを使用せず、また露光量を1500mJ/cm
2とした以外は実施例1と同様の方法により、比較例1の導電性フィルムを作製した。
【0099】
[比較例2]
相互作用性ポリマーをポリアクリル酸(和光純薬製、重量平均分子量約25000)に変更し、露光量を450mJ/cm
2とした以外は実施例1と同様の方法により、比較例2の導電性フィルムを作製した。
【0100】
[比較例3]
特開2012−97296号公報の実施例欄に記載の[実施例8]を参照して、下記組成の被めっき層形成用組成物Bを調製した。
〔被めっき層形成用組成物B〕
純水 4.628g
NaHCO
3 0.31g
下記構造のポリマー(特開2012−97296号公報の実施例8の特定ポリマーBに該当) 1.742g
1−メトキシ−2−プロパノール 18.51g
IRGACURE−OXE02 0.174g
【0101】
【化7】
【0102】
被めっき層形成用組成物Aを被めっき層形成用組成物Bに変更し露光量を1000mJ/cm
2とした以外は実施例1と同様の方法により、比較例3の導電性フィルムを作製した。
【0103】
[比較例4]
重合開始剤の種類をIRGACURE−OXE02からOmnirad−379(IGM Resins B.V.製、アルキルフェノン系光重合開始剤に該当、ClogP:4.31)に変更し露光量を1000mJ/cm
2とした以外は実施例1と同様の方法により、比較例4の導電性フィルムを作製した。
【0104】
[各種評価]
上記実施例及び比較例にて得られた被めっき層前駆体層付き基板、パターン状被めっき層付き基板、及び導電性フィルムを用いて、以下の各種評価を実施した。結果は、後述する表1にまとめて示す。
【0105】
〔延伸性〕
テンシロン万能材料試験機(島津製作所社製)を用いて、上記実施例及び比較例にて得られたパターン状被めっき層付き基板を延伸した。具体的には、160℃の加熱環境下にて、細線部の幅が4μmで、開口部の一片の長さが150μmであるメッシュ状の被めっき層を有するパターン状被めっき層付き基板を、メッシュの細線で形成される四角形の隣接する二辺のうち一方に平行になるように250%の倍率で延伸し、パターン状被めっき層付き基板の1cm×1cmの範囲を観察して、その範囲内での被めっき層の断線の有無を確認した。
【0106】
〔パターニング性(パターン崩れの有無)〕
上記実施例及び比較例にて得られた保護膜を付与した被めっき層前駆体層付き基板に対して、細線部の幅が4μmで、開口部の一片の長さが150μmであるメッシュ状の開口部パターンを有するマスク越しに、高圧水銀灯にて100mJ/cm
2の露光量でUV照射した。
UV照射後、被めっき層前駆体層付き基板から保護膜を剥離した。次に、保護膜を剥離した後の被めっき層前駆体層付き基板に対して、炭酸ナトリウム水溶液(1質量%)にて、露光された被めっき層前駆体層をシャワー洗浄してアルカリ現像処理を施し、パターン状の被めっき層付き基板を得た。
得られたパターン状の被めっき層付き基板の1cm×1cmの範囲を観察して、その範囲内でのパターン崩れの有無を確認した。
【0107】
〔アルカリ現像適性〕
上記実施例及び比較例にて得られた導電性フィルムの未露光部を観察して、未露光部におけるめっき銅析出の有無を確認した。
「A」:めっき銅析出が生じなかった
「B」:めっき銅析出が生じた
【0108】
〔水現像適性〕
上記実施例及び比較例にて得られた導電性フィルムの製造方法において、〔パターン状の被めっき層付き基板の作製〕で実施するアルカリ現像処理を下記水現像処理に変更する以外は同様の方法により各導電性フィルムを製造した。
次いで、上記水現像処理を経て得られたパターン状の被めっき層付き基板の未露光部を観察して、未露光部におけるめっき銅析出の有無を確認した。
「A」:めっき銅析出が生じなかった
「B」:めっき銅析出が生じた
(水現像処理)
保護膜を剥離した後の被めっき層前駆体層付き基板に対して、室温の水にて、露光された被めっき層前駆体層をシャワー洗浄して水現像処理を施した。
【0109】
以下に、表1を示す。
表1中、比較例欄の「水現像適性」欄及び「アルカリ現像適性」欄の「−」は、計測不能であるか(比較例1)、又は評価を行っていない(比較例2〜4)ことを意図している。
なお、重合開始剤のClogPは、PerkinElmer社のChemBio Draw Ultra ver.13.0のChemPropertyを使用して算出した計算値である。
なお、実施例1〜4で形成された被めっき層は、いずれもめっき処理によりその上に金属層が形成可能であることが確認された。
【0110】
【表1】
【0111】
表1に示すように、所定の成分を含む被めっき層形成用組成物を用いることにより、所望の効果が得られた。
また、実施例1と実施例4の対比から、多官能のラジカル重合性モノマーが、二官能のアクリルアミド化合物又は二官能のメタクリルアミド化合物である場合、各種の現像適性に優れることが確認された。
また、表1に示すように、比較例の被めっき層形成用組成物では、所望の効果が得られなかった。