(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
〔潤滑油組成物〕
以下、本発明の実施形態(以下、「本実施形態」と称することもある)について説明する。
本実施形態の潤滑油組成物は、基油(A)、及び下記一般式(1)で表される水酸基含有アミン化合物(B)を含有する潤滑油組成物である。以下、各成分について説明する。
【0013】
【化2】
(一般式(1)中、R
1は炭素数12〜30の脂肪族炭化水素基であり、R
2及びR
3はそれぞれ独立に炭素数1〜5の脂肪族炭化水素基である。)
【0014】
(基油(A))
本実施形態の潤滑油組成物に用いられる基油(A)としては、鉱油であってもよく、合成油であってもよい。
鉱油としては、パラフィン基系、ナフテン基系、中間基系の原油を常圧蒸留して得られる常圧残油;該常圧残油を減圧蒸留して得られた留出油;該留出油を、溶剤脱れき、溶剤抽出、水素化分解、溶剤脱ろう、接触脱ろう、水素化精製等のうちの1つ以上の処理を行って精製した鉱油、例えば、軽質ニュートラル油、中質ニュートラル油、重質ニュートラル油、ブライトストック、またフィッシャー・トロプシュ法等により製造されるワックス(GTLワックス)を異性化することで得られる鉱油等が挙げられる。
【0015】
また、鉱油としては、API(米国石油協会)の基油カテゴリーにおいて、グループ1、2、3のいずれに分類されるものでもよいが、ブレーキ鳴き防止性能を得て、またスラッジ生成を抑制し、優れた変速機の焼付き及び摩耗の防止性能、粘度特性、酸化劣化等に対する安定性を得る観点から、グループ2、3に分類されるものが好ましい。
【0016】
合成油としては、例えば、ポリブテン、エチレン−α−オレフィン共重合体、α−オレフィン単独重合体又は共重合体等のポリα−オレフィン;ポリオールエステル、二塩基酸エステル、リン酸エステル等の各種エステル;ポリフェニルエーテル等の各種エーテル;ポリグリコール;アルキルベンゼン;アルキルナフタレンなどが挙げられる。
【0017】
基油(A)の粘度については特に制限はないが、ブレーキ鳴き防止性能、また変速機の焼付き及び摩耗の防止性能、粘度特性、酸化劣化等に対する安定性の観点から、100℃における動粘度が、2〜25mm
2/sの範囲であることが好ましく、3〜20mm
2/sの範囲であることがより好ましく、4〜15mm
2/sの範囲であることが更に好ましい。
また、基油(A)の粘度指数は、ブレーキ鳴き防止性能、また変速機の焼付き及び摩耗の防止性能、粘度特性、酸化劣化等に対する安定性の観点から、80以上が好ましく、90以上がより好ましく、100以上が更に好ましい。ここで、動粘度、及び粘度指数は、JIS K 2283:2000に準拠し、ガラス製毛管式粘度計を用いて測定した値である。
【0018】
基油(A)としては、鉱油を一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよく、合成油を一種用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。また、鉱油一種以上と合成油一種以上とを組み合わせて混合油として用いてもよい。
また、基油(A)の潤滑油組成物全量基準の含有量は、通常50質量%以上であり、好ましくは60〜97質量%、より好ましくは70〜95質量%であり、更に好ましくは80〜95質量%である。
【0019】
(水酸基含有アミン化合物(B))
本実施形態の潤滑油組成物は、下記一般式(1)で表される水酸基含有アミン化合物(B)を含有する。水酸基含有アミン化合物(B)を含まないと、優れたブレーキ鳴き防止性能は得られない。
【0021】
一般式(1)中、R
1は炭素数12〜30の脂肪族炭化水素基であり、R
2及びR
3はそれぞれ独立に炭素数1〜5の脂肪族炭化水素基である。
R
1の炭素数12〜30の脂肪族炭化水素基としては、例えば、炭素数12〜30の直鎖状、又は分岐状のアルキル基、アルケニル基が好ましく挙げられ、炭素数12〜24の直鎖状、又は分岐状のアルキル基、アルケニル基がより好ましく挙げられ、炭素数16〜20の直鎖状、又は分岐状のアルキル基、アルケニル基が好ましく挙げられる。R
1が上記炭素数の脂肪族炭化水素基であると、優れたブレーキ鳴き防止性能、基油に対する優れた溶解性、また優れた変速機の焼付き及び摩耗の防止性能、粘度特性、酸化劣化等に対する安定性が得られる。
【0022】
例えば、炭素数12〜30の直鎖状、又は分岐状のアルキル基としては、n−ドデシル基、イソドデシル基、sec−ドデシル基、tert−ドデシル基、及びネオドデシル基等の各種ドデシル基(以下、直鎖状、分岐状、及びこれらの異性体までを含めた所定炭素数を有する官能基のことを「各種官能基」と略記することがある。)、各種トリデシル基、各種テトラデシル基、各種ペンタデシル基、各種ヘキサデシル基、各種ヘプタデシル基、各種オクタデシル基、各種ノナデシル基、各種イコシル基、各種ヘンイコシル基、各種ドコシル基、各種トリコシル基、各種テトラコシル基、各種ペンタコシル基、各種ヘキサコシル基、各種ヘプタコシル基、各種オクタコシル基、各種ノナコシル基、及び各種トリアコンチル基が挙げられる。
また、炭素数12〜30の直鎖状、又は分岐状のアルケニル基としては、各種ドデセニル基、各種トリデセニル基、各種テトラデセニル基、各種ペンタデセニル基、各種ヘキサデセニル基、各種ヘプタデセニル基、各種オクタデセニル基、各種ノナデセニル基、各種イコセニル基、各種ヘンイコセニル基、各種ドコセニル基、各種トリコセニル基、各種テトラコセニル基、各種ペンタコセニル基、各種ヘキサコセニル基、各種ヘプタコセニル基、各種オクタコセニル基、各種ノナコセニル基、及び各種トリアコンチニル基が挙げられる。
なかでも、ブレーキの鳴き防止性能を考慮すると、各種ヘキサデシル基、各種ヘプタデシル基、各種オクタデシル基の炭素数16〜18のアルキル基、各種ヘキサデセニル基、各種ヘプタデセニル基、各種オクタデセニル基の炭素数16〜18のアルケニル基が好ましく、各種ヘキサデセニル基、各種ヘプタデセニル基、各種オクタデセニル基の炭素数16〜18のアルケニル基がより好ましく、各種オクタデセニル基が更に好ましく、特にn−オクタデセニル基が好ましい。
【0023】
R
2及びR
3の炭素数1〜5の脂肪族炭化水素基としては、例えば、炭素数1〜5の直鎖状、又は分岐状のアルキレン基、炭素数2〜5の直鎖状、又は分岐状のアルケニレン基が好ましく挙げられ、炭素数1〜3の直鎖状、又は分岐状のアルキレン基、炭素数2〜3の直鎖状、又は分岐状のアルケニレン基がより好ましく挙げられ、炭素数1〜2の直鎖状のアルキレン基、炭素数2の直鎖状のアルケニレン基が更に好ましく挙げられる。R
2及びR
3が上記炭素数の脂肪族炭化水素基であると、優れたブレーキ鳴き防止性能、基油に対する優れた溶解性、また優れた変速機の焼付き及び摩耗の防止性能、粘度特性、酸化劣化等に対する安定性が得られる。
【0024】
炭素数1〜5の直鎖状、又は分岐状のアルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、各種プロピレン基、各種ブチレン基、各種ペンチレン基が挙げられる。また、炭素数2〜5の直鎖状、又は分岐状のアルケニレン基としては、ビニレン基、各種プロペニレン基、各種ブテニレン基、各種ペンテニレン基が挙げられる。
なかでも、ブレーキの鳴き防止性能を考慮すると、アルキレン基が好ましく、特に炭素数2のアルキレン基、すなわちエチレン基が好ましい。
R
2及びR
3は同じでも異なっていてもよく、ブレーキの鳴き防止性能の観点から、同じであることが好ましい。
【0025】
一般式(1)で表される水酸基含有アミン化合物(B)の特に好ましい具体的な化合物としては、ステアリルジエタノールアミン(一般式(1)中、R
1がオクタデシル基であり、R
2及びR
3がエチレン基である。)、オレイルジエタノールアミン(一般式(1)中、R
1がオクタデセニル基であり、R
2及びR
3がエチレン基である。)等が挙げられる。
【0026】
水酸基含有アミン化合物(B)中の窒素原子の組成物全量基準の含有量は、10〜300質量ppmが好ましく、20〜250質量ppmがより好ましく、20〜200質量ppmが更に好ましい。この含有量が上記範囲内であると、優れたブレーキ鳴き防止性能、また優れた変速機の焼付き及び摩耗の防止性能、粘度特性、酸化劣化等に対する安定性が得られる。
【0027】
(アミン化合物(C))
本実施形態の潤滑油組成物は、下記一般式(2)で表されるアミン化合物(C)を含有することが好ましい。潤滑油組成物は、アミン化合物(C)を含有することで、より優れたブレーキ鳴き防止性能が得られる。
【0029】
一般式(2)中、R
4は炭素数12〜30の脂肪族炭化水素基であり、R
5及びR
6はそれぞれ独立に炭素数1〜5の脂肪族炭化水素基である。
R
4の炭素数12〜30の脂肪族炭化水素基としては、例えば、上記R
1の炭素数12〜30の脂肪族炭化水素基として例示したものが好ましく挙げられる。R
4の炭素数としては、12〜30が好ましく、12〜24がより好ましく、16〜20が更に好ましいことも、上記のR
1と同じである。R
4が上記炭素数の脂肪族炭化水素基であると、優れたブレーキ鳴き防止性能、基油に対する優れた溶解性、また優れた変速機の焼付き及び摩耗の防止性能、粘度特性、酸化劣化等に対する安定性が得られる。
なかでも、ブレーキの鳴き防止性能を考慮すると、R
4としては、各種ヘキサデシル基、各種ヘプタデシル基、各種オクタデシル基の炭素数16〜18のアルキル基、各種ヘキサデセニル基、各種ヘプタデセニル基、各種オクタデセニル基の炭素数16〜18のアルケニル基が好ましく、各種ヘキサデシル基、各種ヘプタデシル基、各種オクタデシル基の炭素数16〜18のアルキル基がより好ましく、各種オクタデシル基が更に好ましく、特にn−オクタデシル基が好ましい。
【0030】
R
5及びR
6の炭素数1〜5の脂肪族炭化水素基としては、例えば、炭素数1〜5の直鎖状、又は分岐状のアルキル基、炭素数2〜5の直鎖状、又は分岐状のアルケニル基が好ましく挙げられ、炭素数1〜3の直鎖状、又は分岐状のアルキル基、炭素数2〜3の直鎖状、又は分岐状のアルケニル基がより好ましく挙げられ、炭素数1〜2の直鎖状のアルキル基、炭素数2の直鎖状のアルケニル基が更に好ましく挙げられる。R
2及びR
3が上記炭素数の脂肪族炭化水素基であると、優れたブレーキ鳴き防止性能、基油に対する優れた溶解性、また優れた変速機の焼付き及び摩耗の防止性能、粘度特性、酸化劣化等に対する安定性が得られる。
【0031】
炭素数1〜5の直鎖状、又は分岐状のアルキル基としては、メチル基、エチル基、各種プロピル基、各種ブチル基、各種ペンチル基が挙げられる。また、炭素数2〜5の直鎖状、又は分岐状のアルケニル基としては、ビニル基、各種プロペニル基、各種ブテニル基、各種ペンテニル基が挙げられる。
特に、ブレーキの鳴き防止性能を考慮すると、アルキル基が好ましく、特に炭素数1のアルキル基、すなわちメチル基が好ましい。また、R
5及びR
6は同じでも異なっていてもよく、ブレーキの鳴き防止性能の観点から、同じであることが好ましい。
【0032】
一般式(2)で表されるアミン化合物(C)の特に好ましい具体的な化合物としては、ジメチルステアリルアミン(一般式(2)中、R
4がオクタデシル基であり、R
5及びR
6がメチル基である。)、ジメチルオレイルアミン(一般式(2)中、R
4がオクタデセニル基であり、R
5及びR
6がメチル基である。)等が挙げられる。
【0033】
アミン化合物(C)中の窒素原子の組成物全量基準の含有量は、5〜150質量ppmが好ましく、10〜120質量ppmがより好ましく、20〜100質量ppmが更に好ましい。この含有量が上記範囲内であると、優れたブレーキ鳴き防止性能、また優れた変速機の焼付き及び摩耗の防止性能、粘度特性、酸化劣化等に対する安定性が得られる。
【0034】
水酸基含有アミン化合物(B)との関係で、水酸基含有アミン化合物(B)中の窒素原子とアミン化合物(C)中の窒素原子との合計量に対する、水酸基含有アミン化合物(B)中の窒素原子の割合は、0.5以上が好ましく、0.55以上がより好ましく、0.6以上が更に好ましい。また、上限としては、1.5以下が好ましく、1.3以下がより好ましく、1.2以下が更に好ましい。水酸基含有アミン化合物(B)中の窒素原子の割合が上記範囲内であると、特に優れたブレーキ鳴き防止性能が得られる。
【0035】
(その他添加剤)
本実施形態の潤滑油組成物においては、本発明の目的に反しない範囲で、基油(A)、水酸基含有アミン化合物(B)、好ましく用いられるアミン化合物(C)以外のその他の添加剤、例えば、粘度指数向上剤、流動点降下剤、消泡剤、摩擦調整剤、耐摩耗剤、極圧剤、油性剤、酸化防止剤、分散剤、金属系清浄剤、金属不活性化剤、防錆剤等のその他添加剤を、適宜選択して配合することができる。これらの添加剤は、単独で、又は複数種を組み合わせて用いることができる。本実施形態の潤滑油組成物は、上記基油(A)、水酸基含有アミン化合物(B)からなってもよいし、基油(A)、水酸基含有アミン化合物(B)及びアミン化合物(C)からなってもよいし、また、基油(A)、水酸基含有アミン化合物(B)、アミン化合物(C)及びその他の添加剤からなるものであってもよい。
これらのその他添加剤の合計含有量は、本発明の目的に反しない範囲であれば特に制限はないが、その他添加剤を添加する効果を考慮すると、組成物全量基準で、0.1〜20質量%が好ましく、1〜15質量%がより好ましく、3〜10質量%が更に好ましい。
【0036】
(粘度指数向上剤)
本実施形態の潤滑油組成物は、上記の基油(A)の粘度指数を向上させるため、粘度指数向上剤を含有してもよい。粘度指数向上剤としては、例えば、非分散型ポリメタクリレート、分散型ポリメタクリレート、オレフィン系共重合体(例えば、エチレン−プロピレン共重合体等)、分散型オレフィン系共重合体、スチレン系共重合体(例えば、スチレン−ジエン共重合体、スチレン−イソプレン共重合体等)等の重合体が挙げられる。
【0037】
これらの粘度指数向上剤の質量平均分子量(Mw)としては、その種類に応じて適宜設定されるが、粘度特性の観点から、通常500〜1,000,000、好ましくは5,000〜800,000、より好ましくは10,000〜600,000である。
非分散型及び分散型ポリメタクリレートの場合は、5,000〜1,000,000が好ましく、10,000〜800,000がより好ましく、20,000〜600,000が更に好ましい。また、オレフィン系共重合体の場合は、800〜300,000が好ましく、10,000〜200,000がより好ましい。
【0038】
ここで、質量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定し、ポリスチレンを用いて作成した検量線から求めることができる。例えば、上記各ポリマーの質量平均分子量は、以下のGPC法により、ポリスチレン換算値として算出することができる。
<GPC測定装置>
・カラム:TOSO GMHHR−H(S)HT
・検出器:液体クロマトグラム用RI検出器 WATERS 150C
<測定条件等>
・溶媒:1,2,4−トリクロロベンゼン
・測定温度:145℃
・流速:1.0ミリリットル/分
・試料濃度:2.2mg/ミリリットル
・注入量:160マイクロリットル
・検量線:Universal Calibration
・解析プログラム:HT−GPC(Ver,1.0)
【0039】
粘度指数向上剤の含有量は、粘度特性の観点から、組成物全量基準で、0.5〜15質量%が好ましく、1〜10質量%がより好ましく、1.5〜5質量%が更に好ましい。
【0040】
(流動点降下剤)
流動点降下剤としては、例えば、エチレン−酢酸ビニル共重合体、塩素化パラフィンとナフタレンとの縮合物、塩素化パラフィンとフェノールとの縮合物、ポリメタクリレート、ポリアルキルスチレン等が挙げられる。
【0041】
(消泡剤)
消泡剤としては、例えば、シリコーン油、フルオロシリコーン油、及びフルオロアルキルエーテル等が挙げられる。
【0042】
(摩擦調整剤)
摩擦調整剤としては、例えば、炭素数6〜30のアルキル基またはアルケニル基、特に炭素数6〜30の直鎖アルキル基または直鎖アルケニル基を分子中に少なくとも1個有する、脂肪酸アミン、脂肪酸エステル、脂肪酸アミド、脂肪酸、脂肪族アルコール、及び脂肪酸エーテル等の無灰摩擦調整剤;モリブデンジチオカーバメート(MoDTC)、モリブデンジチオホスフェート(MoDTP)、及びモリブデン酸のアミン塩等のモリブデン系摩擦調整剤等が挙げられる。
【0043】
無灰摩擦調整剤を用いる場合、その組成物全量基準の含有量は、0.01〜3質量%が好ましく、0.1〜2質量%がより好ましい。また、モリブデン系摩擦調整剤を用いる場合、その組成物全量基準の含有量は、モリブデン原子換算で、60〜1,000質量ppmが好ましく、80〜1,000質量ppmがより好ましい。含有量が上記範囲内であると、優れた省燃費性、耐摩耗特性が得られ、清浄性の低下を抑えることができる。
【0044】
(耐摩耗剤)
耐摩耗剤としては、例えば、ジアルキルジチオリン酸亜鉛(ZnDTP)、リン酸亜鉛、ジチオカルバミン酸亜鉛、ジチオカルバミン酸モリブデン、ジチオリン酸モリブデン、ジスルフィド類、硫化オレフィン類、硫化油脂類、硫化エステル類、チオカーボネート類、チオカーバメート類、ポリサルファイド類等の硫黄含有化合物;亜リン酸エステル類、リン酸エステル類、ホスホン酸エステル類、及びこれらのアミン塩又は金属塩等のリン含有化合物;チオ亜リン酸エステル類、チオリン酸エステル類、チオホスホン酸エステル類、及びこれらのアミン塩又は金属塩等の硫黄及びリン含有耐摩耗剤が挙げられる。
【0045】
(極圧剤)
極圧剤としては、例えば、スルフィド類、スルフォキシド類、スルフォン類、チオホスフィネート類等の硫黄系極圧剤、塩素化炭化水素等のハロゲン系極圧剤、有機金属系極圧剤等が挙げられる。
【0046】
(油性剤)
油性剤としては、例えば、ステアリン酸、オレイン酸等の脂肪族モノカルボン酸;ダイマー酸、水添ダイマー等の重合脂肪酸;リシノレイン酸、ヒドロキシステアリン酸等のヒドロキシ脂肪酸;ラウリルアルコール、オレイルアルコール等の脂肪族モノアルコール;ステアリルアミン、オレイルアミン等の脂肪酸モノアミン;ラウリン酸アミド、オレイン酸アミド等の脂肪酸アミドなどが挙げられる。
【0047】
(酸化防止剤)
酸化防止剤としては、例えば、例えば、ジフェニルアミン系酸化防止剤、ナフチルアミン系酸化防止剤等のアミン系酸化防止剤;モノフェノール系酸化防止剤、ジフェノール系酸化防止剤、ヒンダードフェノール系酸化防止剤等のフェノール系酸化防止剤;三酸化モリブデン及び/又はモリブデン酸とアミン化合物とを反応させてなるモリブデンアミン錯体等モリブデン系酸化防止剤;フェノチアジン、ジオクタデシルサルファイド、ジラウリル−3,3'−チオジプロピオネート、2−メルカプトベンゾイミダゾール等の硫黄系酸化防止剤;トリフェニルホスファイト、ジイソプロピルモノフェニルホスファイト、モノブチルジフェニルホスファイト等のリン系酸化防止剤等が挙げられる。
【0048】
(分散剤)
分散剤としては、例えば、ホウ素非含有コハク酸イミド類、ホウ素含有コハク酸イミド類、ベンジルアミン類、ホウ素含有ベンジルアミン類、コハク酸エステル類、脂肪酸あるいはコハク酸で代表される一価又は二価カルボン酸アミド類等の無灰系分散剤が挙げられる。
【0049】
(金属系清浄剤)
金属系清浄剤としては、例えば、カルシウムなどのアルカリ土類金属の中性金属スルホネート、中性金属フェネート、中性金属サリチレート、中性金属ホスホネート、塩基性金属スルホネート、塩基性金属フェネート、塩基性金属サリチレート、塩基性ホスホネート、過塩基性金属スルホネート、過塩基性金属フェネート、過塩基性金属サリチレート、過塩基性ホスホネートなどが挙げられる。
【0050】
(金属不活性化剤)
金属不活性化剤としては、ベンゾトリアゾール系、トリルトリアゾール系、チアジアゾール系、及びイミダゾール系化合物等が挙げられる。
【0051】
(防錆剤)
防錆剤としては、例えば、石油スルホネート、アルキルベンゼンスルホネート、ジノニルナフタレンスルホネート、アルケニルコハク酸エステル、多価アルコールエステル等が挙げられる。
【0052】
(潤滑油組成物の各種物性)
本実施形態の潤滑油組成物は、上記の水酸基含有アミン化合物(B)、アミン化合物(C)以外に、例えばアミン系酸化防止剤、アミド系油性剤のように窒素原子を有する添加剤を含むことがあるが、これらの各成分に含まれる全窒素原子の組成物全量基準の含有量は、80〜800質量ppmが好ましく、80〜500質量ppmがより好ましく、80〜300質量ppmが更に好ましい。全窒素原子の含有量が上記範囲内であると、優れたブレーキ鳴き防止性能、また優れた変速機の焼付き及び摩耗の防止性能、粘度特性、酸化劣化等に対する安定性が得られる。
【0053】
本実施形態の潤滑油組成物は、JASO M348:2002(自動変速機摩擦特性試験方法)により、SAE No.2摩擦試験装置を用いた動摩擦試験の1サイクル後、及び5000サイクル後の各々で測定される動摩擦係数(μ
0)と動摩擦係数(μ
d)との比(μ
0/μ
d、以後、摩擦係数比と称する。)が、1以下であることが好ましい。動摩擦試験(1サイクル後、5000サイクル後)による摩擦係数比が1以下となることで、ブレーキ鳴き防止性能が初期から長期にわたって発現する。ここで、動摩擦試験は、実施例に記載の方法によるものである。
【0054】
本実施形態の潤滑油組成物の40℃における動粘度は、20〜80mm
2/sが好ましく、30〜70mm
2/sがより好ましく、40〜70mm
2/sが更に好ましい。本実施形態の潤滑油組成物の100℃における動粘度は、7〜12mm
2/sが好ましく、8〜11mm
2/sがより好ましく、8.5〜10.5mm
2/sが更に好ましい。
また、本実施形態の潤滑油組成物の粘度指数は、130以上が好ましく、135以上がより好ましく、140以上が更に好ましい。
ここで、動粘度、及び粘度指数の測定方法は、上記の基油と同じである。
【0055】
〔潤滑方法〕
本実施形態の潤滑方法は、上記の本実施形態の潤滑油組成物を用いた潤滑方法である。本実施形態の潤滑方法で用いられる潤滑油組成物は、特に、優れたブレーキ鳴き防止性能を有しており、また、一般の産業機械に用いられる潤滑油組成物に求められる性能、例えば、変速機の焼付き及び摩耗の防止性能、粘度特性、及び酸化劣化等に対する安定性も有している。
よって、本実施形態の潤滑方法は、優れたブレーキ鳴き防止性能とともに、変速機の焼付き及び摩耗の防止性能、粘度特性、及び酸化劣化等に対する安定性も発現するため、変速機(ギヤ)、油圧作動部等を備える、農業機械、建設機械、運搬機械等の一般的な産業機械において、優れた効果を発揮する。とりわけ、変速機(ギヤ)、油圧作動部、及び湿式ブレーキを備える産業機械、例えば、トラクター、田植え機、バインダー、コンバイン等の農業機械、油圧ショベルカー、クレーン車、ブルドーザ等の建設機械、ダンプ、フォークリフト、ショベルローダー、不整地運搬車等の運搬機械を共通潤滑する場合、ブレーキ鳴き防止性能が有効に機能し得る。
【実施例】
【0056】
次に、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれらの例によって何ら限定されるものではない。
【0057】
実施例1、2、及び比較例1
第1表に示す配合量(質量%)で潤滑油組成物を調製した。得られた潤滑油組成物について、以下の方法により各種試験を行い、その物性を評価した。評価結果を表1に示す。なお本実施例で用いた第1表に示される各成分の詳細は以下のとおりである。
・基油1:150N(ニュートラル)水素化精製鉱油、100℃動粘度:5.3mm
2/s、粘度指数:116、APIグループ2
・基油2:500N(ニュートラル)水素化精製鉱油、100℃動粘度:10.5mm
2/s、粘度指数:96、APIグループ2
・水酸基含有アミン化合物(B):オレイルジエタノールアミン(一般式(1)中、R
1がn−オクタデセニル基であり、R
2及びR
3がエチレン基である。)、窒素原子含有量:4.0質量%
・アミン化合物(C):ジメチルステアリルアミン(一般式(2)中、R
4がn−オクタデシル基であり、R
5及びR
6がメチル基である。)、窒素原子含有量:4.7質量%
・粘度指数向上剤:ポリメタクリレート、質量平均分子量:550,000
・その他添加剤:流動点降下剤、消泡剤、極圧剤、油性剤(オレイン酸アミド)、酸化防止剤等
【0058】
潤滑油組成物の性状の測定は以下の方法で行った。
(1)動粘度
JIS K 2283:2000に準拠し、40℃、100℃における動粘度を測定した。
(2)粘度指数(VI)
JIS K 2283:2000に準拠して測定した。
(3)窒素原子の含有量
JIS K2609:1998に準拠して測定した。
(4)動摩擦試験による動摩擦係数(μ
0)、動摩擦係数(μ
d)、及び摩擦係数比(μ
0/μ
d)の算出
各実施例及び比較例の潤滑油組成物について、下記の動摩擦試験を行い、動摩擦係数(μ
0)、動摩擦係数(μ
d)、及び摩擦係数比(μ
0/μ
d)を算出した。
(動摩擦試験;JASO M348:2002(自動変速機摩擦特性試験方法)により、SAE No.2試験装置を用いた摩擦試験)
SAE No.2試験装置を用いて、以下の条件で動摩擦試験を行い、動摩擦係数(μ
d)算出用の回転数(1200rpm)、及び動摩擦係数(μ
0)算出用の回転数(80rpm)における各々摩擦トルク(T
d、T
0)を測定し、下記の数式(1)により、これらの摩擦トルクにおける動摩擦係数(μ
d、μ
0)を算出し、摩擦係数比(μ
0/μ
d)を算出した。
【0059】
【数1】
【0060】
μ:動摩擦係数
T:摩擦トルク(Nm)
n:フリクションディスク枚数(3枚)
re:平均摩擦有効半径(20mm)
P:押し付け荷重(1962kPa)
A:摩擦面積(3142mm
2)
【0061】
(試験条件)
・摩擦材の組み付け方:スチールプレート/焼結材/スチールプレート
・慣性円板の慣性モーメント:0.207kg・m
2
・試験回転数:3000±50rpm
・回転立ち上がり時間:8±2秒
・油温:95±5℃
・油量:700ml
・フリクションプレート面圧:1962kPa
・試験サイクル:30秒/サイクル
・押し付け荷重の立ち上がり時間:0.1〜0.15秒
・押し付け荷重の保持時間:5秒
・試験回数:1サイクル、又は5000サイクル
・ラッピング温度:60℃
・ラッピング回数:100サイクル
・動摩擦係数(μ
d)算出用の回転数:1200rpm
・動摩擦係数(μ
0)算出用の回転数:80rpm
【0062】
【表1】
【0063】
註)表1中の*1〜3は以下の通りである。
*1,水酸基含有アミン化合物(B)中の窒素原子の組成物全量基準の含有量である。
*2,アミン化合物(C)中の窒素原子の組成物全量基準の含有量である。
*3,水酸基含有アミン化合物(B)中の窒素原子とアミン化合物(C)中の窒素原子との合計量に対する、該水酸基含有アミン化合物(B)中の窒素原子の割合である。
【0064】
実施例1及び2の結果から、基油(A)及び水酸基含有アミン化合物(B)を含む本実施形態に係る潤滑油組成物は、摩擦試験(1サイクル後、及び5000サイクル後)ともに摩擦係数比は1以下となっており、初期から長期にわたって優れたブレーキ鳴き防止性能が発現することが確認された。一方、水酸基含有アミン化合物(B)を含まない比較例1の潤滑油組成物は、初期にはブレーキ鳴き防止性能を発現するものの、長期にわたって発現するものではないことが確認された。