(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6951435
(24)【登録日】2021年9月28日
(45)【発行日】2021年10月20日
(54)【発明の名称】骨拡張装置
(51)【国際特許分類】
A61B 17/16 20060101AFI20211011BHJP
【FI】
A61B17/16
【請求項の数】13
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2019-521437(P2019-521437)
(86)(22)【出願日】2017年10月31日
(65)【公表番号】特表2019-536520(P2019-536520A)
(43)【公表日】2019年12月19日
(86)【国際出願番号】US2017059277
(87)【国際公開番号】WO2018085266
(87)【国際公開日】20180511
【審査請求日】2020年10月30日
(31)【優先権主張番号】62/416,318
(32)【優先日】2016年11月2日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】502032219
【氏名又は名称】スミス アンド ネフュー インコーポレイテッド
(73)【特許権者】
【識別番号】515002539
【氏名又は名称】史野 根生
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】史野 根生
(72)【発明者】
【氏名】永瀬 城
(72)【発明者】
【氏名】ジェニファー・ング
【審査官】
菊地 康彦
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2015/123181(WO,A1)
【文献】
特表2015−519997(JP,A)
【文献】
特表2015−536736(JP,A)
【文献】
特表2016−511071(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2013/0030527(US,A1)
【文献】
特開2005−027854(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2002/0032447(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
骨拡張装置であって、
近位端と、遠位端と、それらの間に延在する内側挿管部とを有する細長い管状部材であって、前記管状部材の前記遠位端が骨の円形トンネルを形成するよう適合される、細長い管状部材と、
近位端と遠位端とを有する可撓性部材であって、拡張要素が前記可撓性部材の前記遠位端に配置され、前記可撓性部材が、前記拡張要素が前記管状部材の前記遠位端から延在するように、前記管状部材の前記挿管部に摺動可能に受容されるようサイズ決めされる、可撓性部材と、を備え、
前記前記拡張要素は、遠位の略長方形の断面の長方形セクションを含み、
前記拡張要素によって画定される形状およびサイズに骨トンネルの遠位端を拡張させるために、前記管状部材の前記近位端に引張力を印加することによって、前記拡張要素が前記骨トンネルの前記遠位端に引かれるよう適合される、骨拡張装置。
【請求項2】
前記引張力がスラップハンマーアセンブリによって生成される、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記スラップハンマーアセンブリは、往復動作するよう構成された部材を備える、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記管状部材の表面が、挿入深さを表示するためのレーザーマーキングを備える、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記管状部材の外径が約5mmである、請求項1に記載の装置。
【請求項6】
前記可撓性部材の前記近位端が、引張装置に取り付けるためのフックを備える、請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記拡張要素が、近位円錐状セクションと、管状中間セクションとをさらに備え、前記長方形セクションの断面が前記管状中間セクションの断面よりも大きい、請求項1に記載の装置。
【請求項8】
前記拡張要素が、前記拡張要素の一部分に沿って軸方向に離間した、複数の隆起を備える、請求項1に記載の装置。
【請求項9】
前記可撓性部材の長さが、前記管状部材の長さよりも大きいように選択される、請求項1に記載の装置。
【請求項10】
前記可撓性部材の長さが約8インチである、請求項1に記載の装置。
【請求項11】
前記管状部材の長さが約6.75インチである、請求項1に記載の装置。
【請求項12】
前記拡張要素の前記長方形セクションの断面の最大高さが約9.65mmである、請求項1に記載の装置。
【請求項13】
前記拡張要素の前記長方形セクションの断面の最大幅が約5.08mmである、請求項1に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は一般に、骨トンネルに関し、より具体的には、骨内にトンネルを作成するための骨拡張装置に関する。
【背景技術】
【0002】
骨トンネル拡張器は、骨内をドリル加工してトンネルを準備するのに使用され、そのトンネルは、前十字靱帯(ACL)の修復、または骨に移植片を固定することを含むその他の外科手技等において、移植片を受容するよう適合される。拡張器を使用するとき、骨トンネルがドリル加工された後、拡張器がトンネルの端に挿入され、トンネル内へ駆動されて、特定の手技のために選択される移植片を受容するように構成される形状にトンネルの端を拡張させる。ドリル加工された穴の拡張および再成形に加えて、拡張プロセスはまた、海綿骨を圧縮して、移植片が一体化され得る、より高密度な構造を提供する。
【0003】
骨トンネル拡張器では、拡張要素は通常、剛性シャフトの前端上に形成され、ハンマーのように、シャフトの後端に繰り返し衝撃を与えることによって、徐々にトンネル端に駆動される。あるいは、スラップハンマーが開発され、外科手術中に使用される様々なツールに衝突する力を印加するよう、整形外科手技で広く使用されている。スラップハンマーは通常、ガイドロッドおよび摺動錘から成る。ガイドロッドの一端は、表面または拡張器といった物体に貼り付けられる。摺動錘は上向きに投げられ得、摺動錘がガイドロッドの端にある停止部を打つときに押す力(jerking force)を発生させる。摺動錘は、拡張要素をトンネル端内に押し込むのではなく、引っ張るために繰り返し「投げ」られてもよい。
【0004】
ACLの再建中は、トンネルの作成は従来、大腿骨および脛骨へドリル加工し、円形トンネルを作成することによって実行される。大腿骨に関しては特に、トンネルは、大腿部の外側皮質から膝の関節内へドリル加工される(「外側から内側への(outside−in)手技」)か、または、大腿骨ACLのフットプリントにおける膝の関節の内側から(「内側から外側への(inside−out)手技」)移植片が嵌合するソケットを作成する特定の深さまでドリル加工される。しかし、長方形の骨移植片の場合、円形トンネルは骨の成長を促進させるのに最良の嵌合をもたらさない。同じことが、脛骨内にドリル加工される円形トンネルにも当てはまる。
【発明の概要】
【0005】
本開示は、長方形の拡張器を使用することによって、大腿骨に長方形のトンネルを作成するための方法および装置に関する。拡張器は、スラップハンマーを内側から外側へのアプローチで使用して、大腿骨ACLのフットプリントにおいて膝の関節から始まり、骨移植片の長さに応じた深さまで、長方形のトンネルを作成する。同様の方法を、脛骨トンネルの作成に使用することができる。
【0006】
本開示の方法および装置のさらなる実施例は、好適な任意の組み合わせで、以下のうちの一つ以上を含み得る。
【0007】
本開示の骨拡張器装置の実施例には、近位端と、遠位端と、それらの間に延在する内側挿管部とを有する、細長い管状部材が含まれる。管状部材の遠位端は、骨内で円形トンネルを形成するよう適合される。装置はまた、近位端と遠位端とを有する、可撓性部材を含む。拡張要素は、可撓性部材の遠位端に配置される。可撓性部材は、拡張要素が管状部材の遠位端から延在するように、管状部材の挿管部と共に摺動可能に受容されるようサイズ決めされる。拡張要素は、管状部材の近位端に引張力を印加して、拡張要素によって画定される形状およびサイズまで骨トンネルの端を拡張することによって、骨トンネルの端内に引かれるよう適合される。
【0008】
装置のさらなる実施例において、引張力はスラップハンマーアセンブリによって生成され、これは往復運動のために構成される。管状部材は、骨内に円形トンネルを形成するためのねじ山を有する。管状部材の直径は約5mmである。可撓性部材の近位端は、引張装置に取り付けるためのフックを含む。拡張要素は、近位円錐状セクションと、管状中間セクションと、遠位の、実質的に長方形セクションとを有する。実質的に長方形セクションの断面は、管状中間セクションの断面よりも大きい。
【0009】
さらなる実施例において、拡張要素は、拡張要素の一部分に沿って軸方向に離間した、複数の隆起を含む。可撓性部材の長さは、管状部材の長さよりも大きくなるように選択される。実施例において、可撓性部材の長さは約8インチであり、管状部材の長さは約6.75インチである。骨トンネルの拡張端の形状は実質的に長方形である。拡張要素の最大高さは約9.65mmであり、拡張要素の最大幅は約5.08mmである。
【0010】
本開示の骨トンネルを拡張する方法の実施例には、1)管状部材の近位端が骨の表面から延在し、且つ、管状部材の遠位端が関節空間においてトンネルの端に配置されるように、管状部材の遠位端を使用して、骨の表面から関節空間内に円形トンネルをドリル加工することと、2)拡張部材が関節空間内へ延在するように、拡張要素を有する可撓性部材を管状部材の挿管部を通って通過させることであって、拡張要素が実質的に長方形の断面を有する、通過させることと、3)スラップハンマーアセンブリを管状部材の近位端に取り付けることと、4)スラップハンマーアセンブリを使用して引張力を生成することであって、引張力によって拡張要素を関節空間においてトンネルの端に進入させ、関節空間から骨内の所定の深さまで長方形の、拡張トンネルを形成させる、生み出すことと、を含む。
【0011】
さらなる実施例において、本方法は、骨の表面から関節空間内へガイドワイヤをドリル加工することを含む。管状部材の挿管部を通して可撓性部材を通過させることは、可撓性部材のフックされた端を引張要素に取り付けることを含み、引張要素は可撓性部材を挿管部内に引っ張る。実施例では、円形トンネルの直径は約5mmである。長方形の拡張トンネルの高さは約9.65mmであり、長方形の拡張トンネルの幅は約5.08mmである。骨はヒトの大腿骨であってもよい。
【0012】
これらおよびその他の特徴および利点は、以下の詳細な説明および関連する図面のレビューから明らかであろう。前述の一般的説明および以下の詳細な説明はともに、説明するためのものであり、特許請求の範囲の態様は限定されないことが理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0013】
本開示は、以下の図に関連して、詳細な説明を参照してより完全に理解されるであろう。
【
図1A】
図1Aは、本開示の例示的な骨拡張装置の、部分的に組み立てられた斜視図である。
【
図1C】
図1Cは、
図1Aのドリルアダプタおよびスラップハンマーアセンブリの嵌合領域の詳細図である。
【
図1D】
図1Dは、
図1Aのドリルアダプタおよびスラップハンマーアセンブリの嵌合領域の詳細図である。
【
図2B】
図2Bは、
図2Aのワイヤシャフトのフックおよび拡張要素のそれぞれの詳細図である。
【
図2C】
図2Bおよび2Cは、
図2Aのワイヤシャフトのフックおよび拡張要素のそれぞれの詳細図である。
【
図4A】
図4Aは、
図3Aの骨拡張装置を使用した骨トンネルのドリル加工および拡張方法を図示する。
【
図4B】
図4Bは、
図3Aの骨拡張装置を使用した骨トンネルのドリル加工および拡張方法を図示する。
【
図4C】
図4Cは、
図3Aの骨拡張装置を使用した骨トンネルのドリル加工および拡張方法を図示する。
【
図4D】
図4Dは、
図3Aの骨拡張装置を使用した骨トンネルのドリル加工および拡張方法を図示する。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下の説明では、異なる実施例で示されているかどうかにかかわらず、同一の構成要素には同一の参照番号が与えられている。明瞭かつ簡潔な方法で実施例を説明するために、図面は必ずしも縮尺ではない場合があり、ある特定の特徴が何らかの概略的形態で示され得る。一実施例に関して記述および/または図示された特徴は、一つ以上の他の実施例、および/または、他の実施例の特徴と組み合わせて、または、その代わりに、同一の方法または類似の方法で使用されてもよい。
【0015】
本明細書および請求項において使用される場合、本発明を説明および定義する目的のために、「約」および「実質的に」という用語は、任意の定量的比較、値、測定、またはその他の表現に起因しうる不確実性の固有の程度を表すのに使用される。「約」および「実質的に」という用語はまた、本明細書において、問題における主題の基本的機能の変化をもたらすことなく、定量的表現が指定された参照から変化し得る程度を表すのに使用される。「備える」、「含む」、および/またはそれぞれの複数形は非限定であり、列挙された部品を含み、列挙されていないさらなる部品を含み得る。「および/または」は非限定であり、一つ以上の列挙された部品および列挙された部品の組み合わせを含む。
【0016】
図1Aは、部分的に組み立てられた斜視図での例示的な骨拡張装置10を図示する。骨拡張装置10は、近位端(P)から遠位端(D)へ延在するように示されている。拡張装置10の構成要素部分は、軽量で、強力且つ剛性のある生体適合性材料から作製され得る。例えば、構成要素は、金属、金属合金、高分子複合体またはその他の公知の好適な材料を備えてもよい。いくつかの実施例では、様々な構成要素または拡張装置10全体は、保管および/または洗浄のために分解または取り外され得る。例示的な実施例では骨穴を長方形の断面に再成形することを説明しているが、本開示はまた、骨トンネルを他の幾何学的構成に拡張するためにも使用され得ることが理解されるべきである。
【0017】
図1Aでは、拡張装置10は、可撓性ワイヤシャフト14を通して受容するための内側挿管部11を有する細長の、円筒形のドリルアダプタ12を含む。ドリルアダプタの直径は、約5mmであってもよい。拡張要素16は、
図2Cにより詳しく示されるが、ワイヤシャフト14の最遠位端に配置される。ワイヤシャフト14および拡張要素16は、一体化した、単一ユニットとして形成されてもよく、外科手術用ステンレス鋼または好適なその他の金属、または、拡張および平滑化機能を実施するのに十分剛性のあるポリマーといった、一質の材料から成ってもよい。あるいは、ワイヤシャフト14および拡張要素16は、完全な装置を形成するよう、互いに取り付けられた構成要素から成ってもよい。ワイヤシャフト14の長さは、ドリルアダプタ12の挿管部11を完全に通って延在するよう選択される。例えば、ワイヤシャフトの長さは約8.0インチであってよく、ドリルアダプタの長さは約6.75インチであってもよい。ドリルアダプタ12の近位端は、下記にさらに説明するように、外科用スラップハンマーアセンブリ20と軸方向に結合するよう適合される。
【0018】
さらに
図1Aを参照すると、スラップハンマーアセンブリ20は一般に、スラップハンマーアダプタ18と、打撃部材22と、摺動錘24とを備える。スラップハンマーアダプタ18はまた、ドリルアダプタ12と嵌合して受容するための開口部27を有する。スラップハンマーアダプタ18の直径は、約0.4インチであってもよい。打撃部材22は、円形断面を有し得、スラップハンマーアダプタ18の最近位端に、またはその近くに配置される。打撃部材20は、スラップハンマーアダプタ18の近位端に固定して取り付けられ得る。しかしながら、打撃部材24によって送達される力を制御するため、打撃部材20はスラップハンマーアダプタ18に沿って軸方向に摺動し、スラップハンマーアダプタ18に沿った選択点において所定位置にロックされるよう構成され得ることが、本開示によって考えられる。様々なスラップハンマーアセンブリ20は、多くの様々な直径で構成され、幅広い範囲の衝撃力を送達し得る。いくつかの実施例では、スラップハンマーアセンブリ20は、実質的に大きな衝撃力を送達するよう寸法決めされ得、その他の実施例では、スラップハンマーアセンブリ20は、より小さな衝撃力を送達するよう寸法決めされ得る。
【0019】
図1Bは、ドリルアダプタ12の側面図を示す。ドリルアダプタ12は、初期の、円形トンネルをドリル加工するため、および、拡張要素16に接続するための、遠位拡張端28を含む。ドリルアダプタ12の表面はさらに、挿入深さを表示するためのレーザーマーキング(図示なし)を含み得る。ドリルアダプタ12はまた、スラップハンマーアダプタ18に接続するために適合される、近位のスラップハンマー端26を備える。例えば、
図1Cに示すように、ドリルアダプタ12のスラップハンマー端26は、スラップハンマーアダプタ18の遠位端において開口部27と締まり嵌めを形成する、直径25が減少した範囲を備え得る。あるいは、
図1Dに示すように、ドリルアダプタ12のスラップハンマー端26は、スラップハンマーアダプタ18の開口部27の、対応するねじ山31と嵌合するねじ山29を備え得る。
【0020】
図1Eは、打撃部材22と、摺動錘24と、スラップハンマーアダプタ18とを含むスラップハンマーアセンブリ20の側面図を示す。打撃部材22の直径は、スラップハンマーアダプタ18の直径よりも大きくなるよう選択される。摺動錘24は、略円筒形の形状を有し、下記にさらに説明されるように、スラップハンマーアダプタ18の上を軸方向に摺動するよう適合される。摺動錘24の直径は、打撃部材22の直径よりも大きくなるよう選択される。摺動錘24のサイズ、形状、および表面のテクスチャはすべて、ユーザーが手で簡単に把持できるよう構成され得る。
【0021】
ワイヤシャフト14は、
図2A〜Cでより詳細に示されている。
図2Aでは、ワイヤシャフト14は、拡張要素16の反対の最近位端にフック30を含む。フック30(
図2B)は、下記にさらに説明する通り、ワイヤシャフト14を所定位置に引くための、縫合回収器(suture retriever)(図示なし)といった引張装置に接続するよう構成される。フック30の最大寸法は、ドリルアダプタ12(
図1A)の挿管部11の直径よりも小さくなるよう選択され、それにより、フック30は引張装置によって引かれるときにドリルアダプタ12の挿管部11を通過し得る。
【0022】
図2Cに示す、拡張要素16の実施例には、円錐形セクション32と、ドリルアダプタ12内の螺合係合用に構成されるねじ山のある円筒形の中間セクション34とが含まれる。中間セクション34は、接続が容易にできるように、等距離の平坦な縁部(図示なし)といった、その他の特徴をさらに備え得る。例証的実例では、長方形セクション36は、断面が略長方形である。しかしながら、長方形セクション36は、断面がわずかに楕円形と見なされ得るよう、アール形状の角を有することが本開示によって考えられる。移行領域38は、拡張要素16の長方形セクション36の近位端に形成されて、拡張要素16の断面寸法を円形形状からより大きな、長方形の形状へと徐々に拡張する。
【0023】
図2Cをさらに参照すると、拡張要素16は、拡張要素16をワイヤシャフト14に固定するため、縫合経路のための第一貫通穴40(#2の前縫合(leading suture)等)と、セットスクリューまたは好適な要素(図示なし)を受容するための第二貫通穴42とをさらに含む。拡張要素16の長方形セクション36は、その外部表面を囲む多数の軸方向に離間した隆起44を画定するようにさらに形成され、隆起44は拡張要素16の長手方向軸に対して横断する方向に、概して延在する。隆起44は、拡張要素16が拡張した側壁を画定するようまずは前進し、次に側壁表面を平滑化するように後退するにつれて、骨トンネルの側壁を拡張および切断して、骨移植片をより密接に適応させる。
【0024】
実施例において、拡張要素16の長方形セクション36の最大高さ(H)は、約9.65mmであってよい。拡張要素16の長方形セクション36の底面図は、
図2Dに示されている。
図2Dでは、長方形セクション36の幅(W)は、約5.08mmであってもよい。長方形セクション36の高さ(H)および幅(W)は、拡張要素16によって形成される長方形の骨トンネルの高さおよび幅に一致する。
【0025】
骨拡張装置10’の代替例が、
図3Aおよび3Bに示されている。
図3Aおよび3Bに示される骨拡張装置10’は、骨拡張装置10’が、摺動錘24の運動を往復運動させるために、ドリルアダプタ18の最遠位端に、またはその近くに配置される停止要素46を含むこと以外は、
図1Aおよび1Eの骨拡張装置10と実質的に同一である。この実施例では、ドリルアダプタ12のスラップハンマー端26が、停止要素46に接続するように適合される。
【0026】
拡張装置10’を使用する方法が
図4A〜Dに示されている。上述のように、拡張装置10’は、長方形の骨移植片を受容するよう、より良く適合される、円形断面から長方形の断面までの骨穴またはトンネルの断面形状を概して拡大および変更する役目をする。実施例では、骨移植片は、置換用ACLなどの軟組織に取り付けられ得る。しかしながら、本開示の拡張装置10’は、他の整形外科用途で使用可能であり得る。
【0027】
図4Aでは、外科医はまず、例えば2.4mmのガイドワイヤを使用して、外側皮質53から始まり、関節空間54に進む、骨52(例えば、大腿部)を通る小さな案内穴50をドリル加工する。
図4Bに示すように、外科医は次に、ドリルアダプタ12を使用して、同一の開始点から、より大きな、同軸の、丸穴56をオーバードリル加工する。
図4Bでは、丸穴56は、案内穴50の全長を延在する。
【0028】
図4Cに示すように、ドリルアダプタ12がまだ丸穴56内の所定位置にあり、丸穴56から延在する場合、引張装置58は、スラップハンマー端26から拡張端28までドリルアダプタ12内に供給される。引張装置58は、拡張端28を通して関節空間54内にさらに延在される。拡張要素16が拡張端28から関節空間54内に延在し、ワイヤシャフト14のフック30がスラップハンマー端26から延在するまで、引張装置58が関節空間54の内側からワイヤシャフト14のフック30の周りにループされ、ワイヤシャフト14がアダプタ12の内側に引かれる。この時点では、フック30およびワイヤシャフト14の一部分はまた、患者の身体から延在する。
【0029】
図4Dでは、拡張要素16はドリルアダプタ12に接続されている。接続されると、次いで、移行領域38が丸穴56の入口に達するまで、拡張要素16は骨52に向かって進む。スラップハンマーアダプタ18は、ドリルアダプタ12に取り付けられる。打撃部材22に対して摺動錘24を繰り返し打つか、またはハンマー打ちする(hammering)ことによって、拡張要素16の移行領域38は、徐々に丸穴56内への方向(D)に引かれる。繰り返しハンマー打ちすることによって、移行部分38は、丸穴56を長方形の形状に変える役目をする。すなわち、ハンマー打ちプロセスの間は、拡張要素16のそれぞれの引っ張りによって、拡張要素16が丸穴56内へと徐々に押されるにつれ、骨材料は拡張要素16の長方形セクション36の形状に徐々に変形する。拡張は、長方形の骨穴60が適切な長さに達するまで起こる。結果として得られる長方形の骨穴60は、有利なことに、骨の成長と、移植片の天然骨への組み込みを促進させる、丸穴に比べてより良い嵌合をもたらす、長方形の骨移植片(図示なし)を受容することができる。
【0030】
大腿骨長方形の拡張が完了すると、スラップハンマーアダプタ18はドリルアダプタ12から接続解除され得る。拡張要素16は、ドリルアダプタ12から接続解除された後に取り外される。その後、ドリルアダプタ12は丸穴56から取り外され得る。骨移植片は、脛骨トンネル(図示せず)を通り長方形骨穴60内に通過させることができ、その後、大腿骨上での移植片の固定が完了され得る。
【0031】
本開示はその好ましい実施例の参照により特に示され、記述されてきたが、当業者は、添付の請求項により定義される本出願の趣旨および範囲から逸脱することなく、その中に形態や詳細において様々な変更を行うことができることを理解するであろう。こうした変形は、本出願の範囲によって網羅されることが意図される。このように、本出願の実施例の前述の説明は、制限することを意図していない。むしろ、本開示に対する任意の制約が以下の請求項に記載されている。