【実施例1】
【0017】
未使用状態の容器100は、
図1(b)の様に積み重ねられた状態で装置に搭載し、上から1個ずつ容器搬送機構により指定位置へ搬送して使用される。積み重ねて設置される容器は、図示はしないが、倒れないように上方が開放された箱に入れて設置したり、装置上にガイドなどを設けて支えても良い。また、使用後の容器100は、容器搬送機構により廃棄位置へ搬送される。廃棄位置でも供給位置と同様に積み重ねて廃棄される。使用後の容器は試料等が付着していることが想定され、直接接触すると感染等の恐れがあるため、例えば廃棄位置に廃棄箱を設置してその中に廃棄することで、最終的には廃棄箱ごと廃棄することで直接接触のリスクを低減できる。
【0018】
通常、分析装置では、容器搬送でアクセスする箇所は高さが一意である。その場合、装置の組立誤差等の機差があるため、あらかじめ調整作業が必要な場合はあるが、各位置での容器搬送機構の移動量は一意に決めることができる。しかし、
図1(b)のように、容器が積み重ねられている場合、容器がいくつ積み重ねられているか分からない場合があり、自動で処理するためには、高さを検出するための構成が必須になる。
【0019】
ここで、容器100を搬送するための、容器搬送機構300を説明する。
図2(a)(b)に容器搬送機構300の外観を、
図3(a)(b)に容器を把持した状態の容器搬送機構300の外観を示し、
図4〜14にて動作の詳細を説明する。
【0020】
まず、容器搬送機構300の構成および主要部材の機能を説明する。
【0021】
容器搬送機構300は、把持部材301、把持部材開閉用アクチュエータ302、把持部材用ばね303、把持検出センサ304、把持検出センサ遮光部材305、把持部ベース306、高さ検出用部材307a、307b、ストッパ308a、308b、高さ検出部材用ばね309a、309b、高さ検出/障害検出センサ310a、310b、高さ検出/障害検出センサ遮光部材311a、311bを備える。
【0022】
容器100は、
図1(a)に示すように、高さ検出部材306が接触可能な容器上面102、および把持部材301で挟み込み、下方を引掛けることが可能な切り欠きa 103を有している。また、容器100は上面と下面とが嵌合して
図1(b)に示すように積み重ね可能である。一例として容器100を載せているが、高さ検出部材306が接触可能な容器上面を有し、把持部材301で挟み込むことができ、下方を引掛けられるような形状で、積み重ね可能であれば、この形状に限られない。
【0023】
図4(a)(b)に容器搬送機構300の把持部材301が閉じた状態の図を、
図5(a)(b)に容器搬送機構300の把持部材301が開いた状態の図を示す。把持部材301は、把持部材開閉用アクチュエータ302の動作により、水平方向に開閉可能な構造で、把持部材開閉用ばね303により、常に閉じる方向への力が働いており、把持部材301を開いた際には把持部材301が開きすぎないように抑制し、容器100を把持する際には、容器100の側面を内側へ押さえつける力が働く。把持部材301が開いている際には、把持検出センサ304が、把持検出センサ遮光部材305により遮光された状態で、閉じている際には、把持検出センサ304から、把持検出センサ遮光部材305が外れる。容器100を把持する際には、把持部材開閉用アクチュエータ302は閉じている状態であるが、把持検出センサ304から、把持検出センサ遮光部材305が外れないような構成としている。つまり、(1)把持部材開閉用アクチュエータ302が閉で把持検出センサ304が遮光していない場合:把持部材301が何も把持しておらず完全に閉じている状態、(2)把持部材開閉用アクチュエータ302が開で把持検出センサ304が遮光している場合:把持部材301が何も把持せずに開いた状態、(3)把持部材開閉用アクチュエータ302が閉で把持検出センサ304が遮光している場合:容器100を把持した状態、 の3通りを区別できる。また、把持部材301の先端付近には突起312を設けており、容器100を正常に把持した際には、突起312は切り欠きa 103に入り込み、容器100を下側から支えて容器が落下するのを防止することができることに加え、把持した容器100が水平方向へずれることを抑制できる。
【0024】
高さ検出用部材307a、307bとストッパ308a、308bと高さ検出/障害検出センサ遮光部材311a、311bはそれぞれ結合しており、上下に可動となっているが、常に高さ検出部材用ばね309a、309bにより下方向へ押し付ける力が働いており、高さ検出用部材307a、307bに何も接触していない場合は、ストッパ308a、308bが把持部ベース306の上面に接触する位置まで下がっている。また、高さ検出用部材307a、307bが何かに接触した場合には、高さ検出用部材307a、307bは高さ検出部材用ばね309a、309bに逆らって上方向へ動き、高さ検出/障害検出センサ遮光部材311aが、高さ検出/障害検出センサ310aを遮光する。もしくは高さ検出/障害検出センサ遮光部材311bが、高さ検出/障害検出センサ310bを遮光する。さらに、把持部材301と把持部ベース306は一体で上下に可動となっており、把持部材301が何かに接触した場合は、
図6(a)(b)に示すように、把持部材301と把持部ベース306は一体で上方へ動き、ストッパ308a、308bも押し上げるため、高さ検出/障害検出センサ遮光部材311a、311bも一緒に上方に動き、高さ検出/障害検出センサ310aを遮光する。
【0025】
容器搬送機構300が、容器100を把持して指定位置へ設置するまでの流れを説明する。
【0026】
図示は省略するが、容器搬送機構300は水平方向および鉛直方向へ移動可能な構成であり、容器100の供給箇所、分析処理を行う箇所、容器100の廃棄箇所などへ自在に移動可能となっている。
【0027】
まず、容器100を1個搬送する場合を説明する。容器100の設置高さが未知の場合、高さ検出を行う必要がある。容器100の設置高さが未知の可能性がある場所は、容器が積み重ねられている場所である。容器搬送機構300は、容器100が積み重ねられている位置の上方まで水平移動し、把持部材開閉用アクチュエータ302の動作により把持部材301を開いた状態で、
図7(a)(b)に示すように、積み重ねて設置されている容器100へ向かって下降する。容器上面102に、高さ検出用部材307a、307bが接触後、さらに下降すると、高さ検出用部材307a、307bが容器上面102に押されて、高さ検出/障害検出センサ遮光部材311aが、高さ検出/障害検出センサ310aを遮光することで、容器100まで下降したことを確認できる。これにより、容器100の設置高さを検出することができる。その状態で下降停止し、
図8(a)(b)に示すように、把持部材301を把持部材開閉用アクチュエータ302の動作により閉じることで、容器100を挟む。この時、把持検出センサ304が遮光されたままの状態であれば、容器100を把持したと一旦判断できる。ここでもし把持検出センサ304が遮光していない状態に変わった場合、容器100を把持していないと判断でき、容器100自体に異常があるか、間違った位置で下降して、高さ検出用部材307a、307bもしくは把持部材301が障害物に接触していることが想定されるため処理を停止する。
【0028】
容器100を把持したことを一旦判断した後、容器搬送機構300を上昇させると、
図9(a)(b)に示すように、高さ検出部材用ばね309a、309bの力によって、高さ検出用部材307a、307bが容器100を下方向へ押し、高さ検出/障害検出センサ遮光部材311aは、高さ検出/障害検出センサ310aから外れる。ここで、一度センサから外すのは、以降の搬送で、容器100を設置する場所での高さ検知もしくは動作異常時の障害検知に備えるためである。上昇させた後、把持検出センサ304が遮光したままであれば、ここで最終的に容器100を正しく把持していると判断できる。もし把持検出センサ304が遮光していない状態へ変わった場合は、容器100を落としたか、下降していた際に把持部材301が障害物に接触していて閉じられなかったことなどが想定されるため処理を停止する。
【0029】
正しく容器100を把持できたことが確認できれば、その際の下降量を記憶しておくことで、以降の処理ではその下降量に基づいて動作させることが可能となる。設置高さが未知の場合は、どこで容器100に接触するか分からないため、接触時の衝撃を低減するために、下降時には長い距離を低速度で動作させるなどが必要であるが、容器100を把持するための下降すべき量が定められていれば、容器100へ接触する直前まで高速で下降し、接触するときのみ低速度とすることで、動作時間を短縮することも可能となる。
【0030】
容器100を把持するための下降すべき量が定められ、下降量が正常範囲で高さ検出され、かつ容器100の把持検出がされることで、より確実に容器100を搬送できることが保証される。以降は容器100の消費数に応じて下降量の正常範囲を変動させていけばよい。
【0031】
なお、前記最初の高さ検出は、分析処理を開始する前に実施するのが望ましい。あらかじめ設置されている容器100の数量を把握することで、容器100が必要数量あるかどうか判断でき、足りなければ追加で設置してから、分析処理を開始すればよい。また、供給箇所が空の状態で高さ検出を行うと、容器100が無いため、高さ検出用部材307a、307bは接触せずに、把持部材301が供給箇所の底面に接触して、高さ検出/障害検出センサ遮光部材311aが、高さ検出/障害検出センサ310aを遮光するが、この場合は、容器搬送機構300の下降量から判断して、供給箇所は空と判断できる。
【0032】
把持した容器100を把持後、分析処理を行う箇所に設置する場合は、設置個所の高さは固定であると想定できる。
図10(a)(b)に示すように、容器100を把持した容器搬送機構300を指定位置で下降させ、設置個所で容器100が容器接地面400に接触した後、さらに下降すると、高さ検出用部材307a、307bが容器上面102に押されて、高さ検出/障害検出センサ遮光部材311aが、高さ検出/障害検出センサ310aを遮光する。
【0033】
この時、高さは固定であるから、容器搬送機構300の下降量が正常範囲かを判断し、正常であれば、把持部材301を把持部材開閉用アクチュエータ302の動作により開いて把持を解除した後、容器搬送機構300を上昇させ、把持部材301を把持部材開閉用アクチュエータ302の動作により閉じる。この時、把持検出センサ304が遮光したままの場合、容器100を把持したままの状態と想定されるため処理を停止する。把持検出センサ304が外れていれば、容器100を正常に設置できたと判断できる。
【0034】
容器搬送機構300の下降量が正常範囲から外れている場合は、間違った位置で下降して、障害物に接触していることが想定されるため処理を停止する。
【0035】
高さが固定のとき、設置する際には、正常に動作していれば必要量下降するのみで高さ検出は必要ないが、正常量下降できたとしても、水平方向移動位置がなんらかの不具合で間違っていた場合、その位置で容器100の把持を解除してしまうと、容器100の落下などの不具合を起こすリスクが考えられる。そのため、高さ検出も利用することで、容器100がより確実に設置できていることを保証できるようになる。
【0036】
処理を終了した容器100を廃棄位置まで搬送するには、逆の手順で行えばよく、処理箇所で使用後の容器100を把持して持ち上げ、廃棄位置上方まで水平移動後、下降して容器100の把持を解除して積み重ねていけばよい。ここで、廃棄位置に容器100がいくつ積み重なっているか分からない場合があるため、未使用の容器100を供給する箇所と同様に、最初に高さ検出をしなければならない。方法は未使用の容器100の場合とほぼ同じであるが、廃棄箇所が満杯だった場合や途中まで廃棄された容器100が積み重ねられ、分析処理したい容器100の数量を廃棄できる余裕がない場合に、廃棄余裕分を認識せずにそのまま分析を始めてしまうと、容器100を廃棄できなくなり、分析途中で装置を停止させなければならないことが想定され、検体や試薬が無駄になるリスクがある。そのため、分析処理を開始する前に高さ検出を行い、廃棄余裕が無い場合は、あらかじめ廃棄箇所を空にするなど処置した後に、分析を開始するのがよい。また、廃棄場所が空の状態で高さ検出を行うと、容器100が無いため、高さ検出用部材307a、307bは接触せずに、把持部材301が廃棄箇所の底面に接触して、高さ検出/障害検出センサ遮光部材311aが、高さ検出/障害検出センサ310aを遮光するが、この場合は、容器搬送機構300の下降量から判断して、廃棄箇所は空と判断できる。
【0037】
次に容器100を2個積み重ねて搬送する場合を説明する。容器100を1個搬送する場合は、高さ検出もしくは障害検出に、高さ検出/障害検出センサ310aを利用するが、容器100を2個積み重ねて搬送する場合、高さ検出もしくは障害検出に、高さ検出/障害検出センサ310bを利用する。
図11(a)(b)に示すように、容器搬送機構300を下降させていくと、高さ検出用部材307a、307bが容器上面102に接触後、高さ検出用部材307a、307bは高さ検出部材用ばね309a、309bに逆らって上方向へ動き、高さ検出/障害検出センサ遮光部材311aが、高さ検出/障害検出センサ310aを遮光するが、さらに高さ検出/障害検出センサ遮光部材311bが、高さ検出/障害検出センサ310bを遮光するまで容器搬送機構300の下降を続ける。その後の処理の流れは、容器100を1個搬送する場合と同様で、
図12(a)(b)、
図13(a)(b)、
図14(a)(b)に示す通りとなり、廃棄時も逆の手順で行えばよい。ただし、分析処理する箇所で容器100を2個積み重ねた状態で処理を進めることは通常はあり得ず、分析処理する箇所へ容器100を2個積み重ねたものを搬送する必要性はほぼないと考えられる。しかし、例えば未使用の容器100の分析処理する箇所への搬送は1個ずつ行い、使用後の容器100を分析処理する位置からずらした位置で2個積み重ねた後に、その2個を同時に廃棄位置へ搬送することは想定される。
【0038】
前述の説明では、容器100を1個の場合と2個積み重ねた場合の扱いとしているが、これは高さの異なる容器を扱うことが可能であることと同義である。装置で扱う容器の高さに合わせて、高さ検出/障害検出センサ310a、310bの位置関係を変える、把持部材301の長さを変えるなどの必要はあるが、高さが低い方の容器は高さ検出/障害検出センサ310aを利用し、高さが高い方の容器は、高さ検出/障害検出センサ310bを利用することで、同様の処理が可能である。