【実施例】
【0027】
図1から
図3は本発明に係るスピンナー洗浄装置10を示すものであり、
図1はその全体構成斜視図、
図2はその側面図、
図3は
図2のA−A線矢視方向から見た平面図である。なお、スピンナー洗浄装置10は、研削等を終えた半導体ウエハWを洗浄し、かつ、乾燥を行う機能を有する。
【0028】
図1から
図3に示すスピンナー洗浄装置10は、装置本体11に回転可能に支持された回転本体部12と、回転本体部12と一体に回転するチャックテーブル13と、回転本体部12と一体に回転するプーリ14と、プーリ14の下側で回転本体部12と同軸状に配設されたロータリジョイント15と、洗浄流体供給手段23と、乾燥用エアー供給手段24と、飛散防止用のカバー25を備える。また、チャックテーブル13とロータリジョイント15との間には、回転本体部12とロータリジョイント15の内部を貫通して、各々が独立をしている5本の吸着ポート18A、18B、18C、18D、18Eが設けられている。なお、
図1、
図3、
図4において、符号31は、チャックテーブル13を回転本体部12に固定するネジ31である。
【0029】
装置本体11は、水平を維持して上下方向に移動可能である。回転本体部12は、装置本体11に図示しないベアリングを介して回転可能に支持されている。
【0030】
プーリ14は、回転本体部12の下端側で、その回転本体部12に固定されている。プーリ14は、装置本体部11の下面に固定されているモータ16の出力軸に、この出力軸と一体回転可能に取り付けられている図示しないプーリと伝達ベルト17を介して、モータ16と動力連結されている。そして、プーリ14は、モータ16が回転駆動されると、伝達ベルト17を介してモータ16の回転を受け、回転本体部12と一体に回転するようになっている。
【0031】
ロータリジョイント15は、回転本体部12と一体に回転する図示しない内部ケースと、この内部ケースの外周面を覆い、かつ、内部ケースと同心状で、また内部ケースに対し回転不能に固定された外部ケース15aを備えている。また、外部ケース15aの外周面には、
図2に示すように各吸着ポート18A〜18Eの吸気口18a〜18eが上下方向に並んで設けられている。なお、各吸気口18a〜18eは、それぞれポート制御手段21を介して負圧生成源(真空源)22に連結されている。
【0032】
そして、ロータリジョイント15は、回転している内部ケース側の吸着ポート18A〜18Eと固定された外部ケース15a側の吸気口18a〜18e側との連通を図っており、その内部構造は既に公知(例えば、特許文献2参照)である。したがって、図示の実施例の場合、それぞれ吸気口18aと吸着ポート18A、吸気口18bと吸着ポート18B、吸気口18cと吸着ポート18C、吸気口18dと吸着ポート18D、吸気口18eと吸着ポート18Eは常に連通されていて、例え外部ケース15aに対して内部ケースが回転していたとしても外部ケース15a側の吸気口18a〜18eから吸着ポート18A〜18E内のエアーを抜くことができるようになっている。
【0033】
図4はチャックテーブル13だけの操作を、半導体ウエハWが乗せられていない状態で模式的に示している。そのチャックテーブル13は、円盤状に形成されたテーブル本体部19と、テーブル本体部19の上面側に設けられた5個の吸着保持部20とを備える。
【0034】
テーブル本体部19は、回転本体部12の上端に固定されて、回転本体部12の回転と一体に水平面内で回転可能に配設されている。
【0035】
吸着保持部20は、セラミック製の多孔質材で円盤状に形成されており、テーブル本体部19の図示しない凹部内に埋設された状態で5個(符号20a、20b、20c、20d、20eで示す5個の面状をした吸着保持部)設けられている。5個の面状をした吸着保持部20(20a〜20e)は、図示の実施例の場合、テーブル本体部19の回転中心と同心円上に所定の位相角(本実施例の場合では72度)をもって等間隔で配置されている。なお、各吸着保持部20の直径は、半導体ウエハWの直径と略同じ大きさを有する。また、5個の吸着保持部20には、前記独立している5本の吸着ポート18A〜18Eの一端がそれぞれ1対1の関係で接続されている。つまり、吸着ポート18Aの一端が吸着保持部20aに接続され、吸着ポート18Bの一端が吸着保持部20bに、吸着ポート18Cの一端が吸着保持部20cに、吸着ポート18Dの一端が吸着保持部20dに、吸着ポート18Eの一端が吸着保持部20eに、それぞれ独立して接続されている。
【0036】
そして、各吸着保持部20a〜20eは、吸着保持部20a〜20eに半導体ウエハWを各々載せた状態で、真空源である負圧生成源22により、ポート制御手段21を介して吸着ポート18A〜18E内のエアーを抜くと、各吸着保持部20a〜20e上に負圧が作られ、半導体ウエハWをそれぞれ吸着保持部20a〜20e上に吸着保持しておくことができる。反対に、リリース時、吸着ポート18A〜18E内にエアーが吹き込まれると、その半導体ウエハWの吸着保持を各々解くことができるようになっている。
【0037】
ポート制御手段21は、負圧生成源22から吸着ポート18A〜18E内のエアーを抜いて、吸着ポート18A〜18E内に生成される負圧、すなわち吸着ポート18A〜18E内に供給される負圧のオン/オフ、並びに、負圧の大きさ調整ができる機能と、リリース時にエアーを吹き込む大きさ調整ができる機能を有している。この負圧及びエアーの大きさ調整は、各吸着ポート18A〜18Eの個体差に応じて調整されて半導体ウエハWに必要以上のストレスを与えないようにするためである。また、このようにすることによって、半導体ウエハWの割れや欠損が防止できる。
【0038】
洗浄流体供給手段23及び乾燥用エアー供給手段24は、チャックテーブル13の外側で、かつチャックテーブル13に隣接して、それぞれ一端側が回転本体部12に取り付けられた支軸30を介して、水平面内で回転可能に配設されている。また、洗浄流体供給手段23は、吸着保持部20a〜20e上に各々吸着保持されている半導体ウエハWに洗浄流体を噴射する、下側(半導体ウエハW側)に向けた噴出口を有するノズル23aを備え、乾燥用エアー供給手段24は、吸着保持部20a〜20e上に各々吸着保持されている半導体ウエハW上に乾燥用のエアーを噴射する、下側(半導体ウエハW側)に向けた噴出口を有するノズル24aを有する。
【0039】
これら洗浄流体供給手段23及び乾燥用エアー供給手段24は、それぞれ一端側、すなわち支軸30を支点として、チャックテーブル13の外側からチャックテーブル13の中心を通って扇状に往復旋回可能になっている。したがって、洗浄流体供給手段23が往復旋回するとき、この洗浄流体供給手段23のノズル23aから半導体ウエハWに向けて洗浄流体を噴射させると、吸着保持部20a〜20e上に吸着保持されている半導体ウエハW上に洗浄流体が当たり半導体ウエハWの上面を洗浄することができる。また、洗浄後、乾燥用エアー供給手段24のノズル24aから半導体ウエハWに向けて乾燥用のエアーを噴射しながら往復旋回させると、吸着保持部20a〜20e上に吸着保持されている半導体ウエハWの上に残っている洗浄流体を、そのエアーで吹き飛ばして半導体ウエハWを乾燥させることができる。
【0040】
飛散防止用のカバー25は、側部カバー25aと上部カバー25bから構成されている。側部カバー25aは、チャックテーブル13の外周側部を覆って配設された、上面が開口している筒状のカバーであり、下端側が装置本体11に固定されている。なお、洗浄流体供給手段23及び乾燥用エアー供給手段24も、この側部カバー25a内に配置されており、共に側部カバー25a内で往復旋回できるようになっている。また、側部カバー25aの高さ、すなわち側部カバー25aの上端はチャックテーブル13の上面(吸着保持部20が設けられている面)よりも若干低く(下側)、半導体ウエハWを吸着保持部20上に搬送・搬出をする作業の妨げにならないように設定されている。
【0041】
上部カバー25bは、上面が閉じられ、側部カバー25aと対向する下面が開口されたキャップ状のカバーである。また、上部カバー25bの内径は側部カバー25aの外径よりも若干大きく形成されて、側部カバー25aの略真上に上下動可能に配設されている。そして、上部カバー25bは、スピンナー洗浄装置10が半導体ウエハWの洗浄及び乾燥を行うとき下降して、側部カバー25aの上端を上部カバー25bの下面開口から上部カバー25b内に侵入させて、側部カバー25aの上面開口を閉じるようになっている。
【0042】
したがって、上部カバー25bが側部カバー25aの上面開口を閉じた状態では、飛散防止用のカバー25の内部が略密閉された空間のようになり、この密閉空間内にチャックテーブル13と洗浄流体供給手段23と乾燥用エアー供給手段24が配置され、この密閉空間内で洗浄及び乾燥を行うことにより、洗浄流体等が周囲に飛散するのを防止できるようになっている。
【0043】
次に、このように構成されたスピンナー洗浄装置10の作用を説明する。まず、上部カバー25bが上昇位置に配置されて、側部カバー25aの上面開口を開く。また、側部カバー25aの上面開口が開いている状態において、研削を終えた半導体ウエハWが図示しない搬送装置により、スピンナー洗浄装置10に送られて来て、チャックテーブル13の吸着保持部20a〜20e上に各々配置される。なお、
図1及び
図3は、吸着保持部20a〜20e上に、それぞれ研削を終えた半導体ウエハWが配置されている状態を示している。なお、ここでの全ての半導体ウエハWは、図示しているように、それぞれオリフラ26がチャックテーブル13の外周側に配置するようにしてセットされる。
【0044】
次いで、負圧生成源22が駆動され、ポート制御手段21を介して吸着ポート18A〜18E内の空気を吸引し、この空気の吸引で吸着保持部20a〜20e上に負圧を発生させて、この吸着保持部20a〜20e上に半導体ウエハWを各々吸着保持する。この場合、ポート制御手段21では、各吸着ポート18A〜18Eの個体差に応じて負圧の大きさ調整を行う。
【0045】
続いて、上部カバー25bを下降させて、飛散防止用のカバー25を閉じる。飛散防止用のカバー25が閉じられたら、モータ16を駆動し、回転本体部12と共にチャックテーブル13を水平面内で回転させる。また、この回転と同時に、洗浄流体供給手段23のノズル23aから洗浄流体をチャックテーブル13上の半導体ウエハWに向けて噴射しながら、洗浄流体供給手段23をチャックテーブル13の外側からチャックテーブル13の中心を通って扇状に往復旋回移動させる。
図3中の符号27は、その洗浄流体供給手段23の旋回移動軌跡を示す。この洗浄流体の吹き付けとチャックテーブル13の回転遠心力とにより、各半導体ウエハW上に付着していたコンタミ等が取り除かれて洗浄が終了する。
【0046】
洗浄が終了したら、チャックテーブル13が回転している状態下において、洗浄流体供給手段23に代わって、乾燥用エアー供給手段24のノズル24aから乾燥用のエアーをチャックテーブル13上に向けて噴射しながら、乾燥用エアー供給手段24をチャックテーブル13の外側からチャックテーブル13の中心を通って扇状に往復旋回移動させる。
図3中の符号28は、その乾燥用エアー供給手段24の旋回移動軌跡を示す。この乾燥用エアーの吹き付けとチャックテーブル13の回転遠心力とにより、半導体ウエハW上に残留している洗浄流体等の吹き払いと乾燥が行われる。
【0047】
なお、この乾燥処理では、図示の実施例の場合、各半導体ウエハWはそれぞれオリフラ26がチャックテーブル13の外周側に配置され、チャックテーブル13の回転時に生じる遠心力とオリフラ26が直角に向き合わないようにしているので、オリフラ26と吸着保持部20a〜20eとの段差の部分にある洗浄流体もチャックテーブル13の外周側へ向かって流れることになる。
【0048】
すなわち、オリフラ26が中心を向いて複数の半導体ウエハWがチャックテーブル13上に配置されている場合、つまりオリフラ26がチャックテーブル13の遠心力に対し直角に向き合って配置されている場合では、チャックテーブル13が回転して、洗浄流体が外周側に寄せられるとき、オリフラ26と吸着保持部20a〜20eとの段差の部分にある洗浄流体は、オリフラ26の側面と直角に真っ向から当たって流れの行き場を失い、その段差の部分に残留し易く、切れが悪くなる。しかし、オリフラ26が中心を向かずに外周側を向いて配置されていると、段差の部分が遠心力の方向に対して傾きを持って、そのチャックテーブル13の外周側を向いて配置されているので、オリフラ26の側面に当たった洗浄流体は、オリフラ26の側面に沿ってチャックテーブル13の外周側へ向かって流されることになる。これにより、オリフラ26と吸着保持部20a〜20eとの段差の部分にある洗浄流体も含めて、チャックテーブル13上の洗浄流体を良好に切ることができる。
【0049】
乾燥用エアー供給手段24による乾燥処理が終了したら、モータ16の駆動が停止されてチャックテーブル13の回転も停止する。次いで、負圧真空源22による吸着ポート18A〜18Eに対するエアーの吸引が解かれるとともに、ポート制御手段21側から吸着ポート18A〜18E内にエアーが吹き込まれ、その半導体ウエハWの吸着保持が解かれる。つまり、半導体ウエハWのリリースが行われる。
【0050】
次いで、上部カバー25bを上昇位置に移動させて、飛散防止用のカバー25を開く。そして、洗浄と乾燥を終えた各半導体ウエハWを、図示しない搬送装置により吸着保持して次の工程へと移送する。これにより、一連の洗浄と乾燥の処理が完了する。
【0051】
以上の説明は、チャックテーブル13上の5つの吸着保持部20a〜20eの全てに半導体ウエハWを配置し、洗浄と乾燥作業を行った場合について説明した。しかし、生産計画等によっては、5つの吸着保持部20a〜20eの全てに半導体ウエハWを配置せずに、例えば吸着保持部20a、20c、20dの3つに半導体ウエハWを載置させて洗浄と乾燥の処理を行う場合がある。この場合は、ポート制御手段21により、吸気口18b、18eを閉じるとともに、吸気口18a、18c、18dの3つの吸気口を開けて処理する。このようにすると、吸着保持部20b、20eは負圧生成源22から切り離され、吸着保持部20a、20c、20dだけが負圧生成源22に接続されて処理することができる。すなわち、チャックテーブル13の各吸着保持部20a〜20eに対して負圧を付与する吸着ポート18A〜18Eは、各々独立しているので、全ての吸着保持部20a〜20eに半導体ウエハWを配置させて洗浄及び乾燥等の処理を行わなくても、必要とする吸着保持部20a〜20eにだけ半導体ウエハWを配置させての吸着/リリースが可能になる。
【0052】
なお、上記実施例では、チャックテーブル13上に5つの吸着保持部20a〜20eを設けた場合について説明したが、その数は5つに限定されるものではなく、2つ以上、複数個であってよい。
【0053】
また、上記実施例の場合では、最良の実施例として、吸気ポート18A〜18Eが各々独立している場合について説明したが、吸気ポート18A〜18Eが各々独立してない、例えば
図5及び
図6に示すような構造をしたスピンナー洗浄装置100であってもよい。
【0054】
図5及び
図6に示すスピンナー洗浄装置100は、回転するチャックテーブル101の上に、図示しない半導体ウエハを個々に吸着保持する面状をした複数(図示例では5つ)の吸着保持部102を設けるとともに、そのチャックテーブル101に隣接してチャックテーブル101の外側に洗浄流体供給手段103と乾燥用エアー供給手段104を配置した構成にしたものである。
【0055】
5個の面状をした吸着保持部102は、図示の本例の場合、チャックテーブル101の回転中心と同心円上に所定の位相角(本実施例の場合では72度)をもって等間隔で配置されている。
【0056】
このスピンナー洗浄装置100では、チャックテーブル101の吸着保持部102と図示しない負圧生成源(真空源)との間を接続している吸着ポート105は一つで、その一つの吸着ポート105から5本の分岐吸着ポート105aに分岐させ、この5本に分岐された各分岐吸着ポート105aをそれぞれ対応する吸着保持部102に接続させた構造になっている。
【0057】
そして、各吸着保持部102上にそれぞれ半導体ウエハを配置し、その後、負圧発生源で吸気ポート105内の空気を吸引して各吸着保持部102に負圧を発生させると、各吸着保持部102上に配置した半導体ウエハがそれぞれ各吸着保持部102に吸着(吸着保持)される。また、半導体ウエハを吸着保持した状態で、チャックテーブル101を回転させるとともに、半導体ウエハに向けて洗浄流体を噴射しながら、洗浄流体供給手段103をチャックテーブル101の外側からチャックテーブル101の中心を通って扇状に往復旋回させると、半導体ウエハを洗浄することができる。
【0058】
さらに、洗浄後、チャックテーブル101が回転している状態で、半導体ウエハWに向けて乾燥用のエアーを噴射しながら乾燥用エアー供給手段104を、チャックテーブル101の外側からチャックテーブル101の中心を通って扇状に往復旋回させると、半導体ウエハ上に残っている洗浄流体をエアーで吹き飛ばして半導体ウエハを乾燥させることができる。また、洗浄及び乾燥処理を終えたら、負圧発生源による各吸着保持部102上の負圧を無くすと、各吸着保持部102の半導体ウエハに対する吸着が解かれて、半導体ウエハをリリースすることができる。
【0059】
したがって、
図5及び
図6に示すスピンナー洗浄装置100でも、1つの回転するチャックテーブル101上に設けられた複数の吸着保持部102にそれぞれ半導体ウエハを配置し、かつ、吸着保持させ、これら吸着保持された複数の半導体ウエハの洗浄処理を同時に行うことができる。これにより、作業性の向上が図れる。
【0060】
なお、本発明は、本発明の精神を逸脱しない限り種々の改変を為すことができ、そして、本発明が該改変されたものに及ぶことは当然である。