特許第6952016号(P6952016)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6952016
(24)【登録日】2021年9月29日
(45)【発行日】2021年10月20日
(54)【発明の名称】吸収性物品
(51)【国際特許分類】
   A61F 13/533 20060101AFI20211011BHJP
   A61F 13/53 20060101ALI20211011BHJP
   A61F 13/539 20060101ALI20211011BHJP
   A61F 13/42 20060101ALI20211011BHJP
【FI】
   A61F13/533 100
   A61F13/53 100
   A61F13/539
   A61F13/42 B
【請求項の数】9
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2018-125569(P2018-125569)
(22)【出願日】2018年6月29日
(65)【公開番号】特開2020-747(P2020-747A)
(43)【公開日】2020年1月9日
【審査請求日】2020年1月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000115108
【氏名又は名称】ユニ・チャーム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003247
【氏名又は名称】小澤特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】渡部 芳久
(72)【発明者】
【氏名】中島 広嗣
【審査官】 津田 健嗣
(56)【参考文献】
【文献】 特開2017−217078(JP,A)
【文献】 特開2018−089127(JP,A)
【文献】 国際公開第2017/002492(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2016/0346136(US,A1)
【文献】 特開2017−217112(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 13/15 − 13/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸収体と、
前記吸収体を圧搾した圧搾部と、を有し、
前記吸収体は、吸収コアと、前記吸収コアを包むコアラップと、を有し、
前記圧搾部は、前記吸収体に格子状に形成されており、
前記圧搾部の領域において、前記吸収コアの非肌面側の前記コアラップの少なくとも一部は、前記吸収コアと接合されており、
前記圧搾部の領域において、前記吸収コアの肌面側の前記コアラップの少なくとも一部は、前記吸収コアと接合されていなく、
前記吸収コアの非肌面側の前記コアラップと前記吸収コアの肌面側の前記コアラップは、同じシートによって構成されており、
前記吸収コアの肌面側の前記コアラップの伸度は、前記吸収コアの非肌面側の前記コアラップの伸度よりも小さい、吸収性物品。
【請求項2】
吸収体と、
前記吸収体を圧搾した圧搾部と、を有し、
前記吸収体は、吸収コアと、前記吸収コアを包むコアラップと、を有し、
前記圧搾部は、前記吸収体に格子状に形成されており、
前記圧搾部の領域において、前記吸収コアの非肌面側の前記コアラップの少なくとも一部は、前記吸収コアと接合されており、
前記圧搾部の領域において、前記吸収コアの肌面側の前記コアラップの少なくとも一部は、前記吸収コアと接合されていなく、
前記吸収コアの非肌面側の前記コアラップと前記吸収コアの肌面側の前記コアラップは、同じシートによって構成されており、
前記吸収コアと前記コアラップとの間に接着剤が設けられており、
前記吸収コアの肌面側の前記接着剤の秤量は、前記吸収コアの非肌面側の前記接着剤の秤量よりも小さい、吸収性物品。
【請求項3】
吸収体と、
前記吸収体を圧搾した圧搾部と、を有し、
前記吸収体は、吸収コアと、前記吸収コアを包むコアラップと、を有し、
前記圧搾部は、前記吸収体に格子状に形成されており、
前記圧搾部の領域において、前記吸収コアの非肌面側の前記コアラップの少なくとも一部は、前記吸収コアと接合されており、
前記圧搾部の領域において、前記吸収コアの肌面側の前記コアラップの少なくとも一部は、前記吸収コアと接合されていなく、
前記吸収コアの非肌面側の前記コアラップと前記吸収コアの肌面側の前記コアラップは、同じシートによって構成されており、
前記圧搾部は、前記吸収体の肌面側と非肌面側に形成されており、
前記圧搾部の領域において、前記吸収コアの肌面側の前記コアラップと前記吸収コアとが接合されていない非接合領域の少なくとも一部は、前記吸収コアの非肌面側の前記コアラップと前記吸収コアとが接合された接合領域に対向して設けられている、吸収性物品。
【請求項4】
前記圧搾部は、前記吸収体の肌面側と非肌面側に形成されており、
前記吸収体の肌面側に形成された前記圧搾部の深さは、前記吸収体の非肌面側に形成さ
れた前記圧搾部の深さよりも大きい、請求項1から3のいずれか1項に記載の吸収性物品。
【請求項5】
前記吸収体の、格子状の前記圧搾部により囲まれたセルにおいて、前記セルの最大長に対する前記吸収コアの最大厚みの比は、0.09以上である、請求項1から4のいずれか1項に記載の吸収性物品。
【請求項6】
前記吸収体の、格子状の前記圧搾部により囲まれたセルにおいて、前記セルの最大長に対する前記吸収コアの最大厚みの比は、0.16以下である、請求項1から5のいずれか1項に記載の吸収性物品。
【請求項7】
前記吸収コアの肌面側の前記コアラップと前記吸収コアとの非接合領域は、前記吸収コアの非肌面側の前記コアラップと前記吸収コアとの非接合領域よりも大きい、請求項1から6のいずれか1項に記載の吸収性物品。
【請求項8】
前記圧搾部は、前記吸収体の肌面側と非肌面側に形成されており、
前記吸収体の非肌面側に位置する裏面シートを有し、
非肌面側の前記圧搾部の領域において、前記吸収コアの非肌面側の前記裏面シートの少なくとも一部は、前記コアラップと接合されている、請求項1からのいずれか1項に記載の吸収性物品。
【請求項9】
前記圧搾部は、前記吸収体の肌面側と非肌面側に形成されており、
前記吸収体の非肌面側に、尿の付着の有無を判別するインジケータを有し、
前記インジケータの少なくとも一部は、非肌面側の前記圧搾部に密着して設けられている、請求項1からのいずれか1項に記載の吸収性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧搾部を有する吸収体を含む吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
使い捨ておむつのような吸収性物品は、尿のような液体を吸収する吸収体を有する。特許文献1に記載された吸収性物品では、吸収体に格子状の圧搾溝が形成されている。吸収体に圧搾溝を形成することで,その曲げ剛性が高まり、吸収体の保型性が維持されるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018−47189号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
吸収体の剛性は、圧搾部(エンボス)によって高まる。したがって、吸収体に格子状の圧搾部を形成すると、吸収体の保型性が維持されやすい。しかしながら、その一方で、吸収体の剛性が高くなり、肌触りが低下することがある。
【0005】
したがって、圧搾部により吸収体の型崩れを抑制しつつも、肌触りを改善することができる吸収性物品が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一態様に係る吸収性物品は、吸収体と、前記吸収体を圧搾した圧搾部と、を有する。前記吸収体は、吸収コアと、前記吸収コアを包むコアラップと、を有する。前記圧搾部は、前記吸収体に格子状に形成されている。前記圧搾部の領域において、前記吸収コアの非肌面側の前記コアラップの少なくとも一部は、前記吸収コアと接合されている。前記圧搾部の領域において、前記吸収コアの肌面側の前記コアラップの少なくとも一部は、前記吸収コアと接合されていない。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】第1実施形態に係る肌面側から見た吸収性物品の平面図である。
図2】第1実施形態に係る非肌面側から見た吸収性物品の平面図である。
図3】第1実施形態に係る吸収体の平面図である。
図4図1の4A−4A線に沿った吸収性物品の模式的断面図である。
図5】第2実施形態に係る吸収体の圧搾部のパターンを示す図である。
図6】第3実施形態に係る吸収体の圧搾部のパターンを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
(1)実施形態の概要
本明細書及び添付図面の記載により、少なくとも以下の事項が明らかとなる。
【0009】
一態様に係る吸収性物品は、吸収体と、前記吸収体を圧搾した圧搾部と、を有し、前記吸収体は、吸収コアと、前記吸収コアを包むコアラップと、を有し、前記圧搾部は、前記吸収体に格子状に形成されており、前記圧搾部の領域において、前記吸収コアの非肌面側の前記コアラップの少なくとも一部は、前記吸収コアと接合されており、前記圧搾部の領域において、前記吸収コアの肌面側の前記コアラップの少なくとも一部は、前記吸収コアと接合されていない。
【0010】
吸収体に格子状の圧搾部が形成されているため、吸収体の曲げ剛性が高まり、吸収体の保型性が維持されやすい。特に、圧搾部の領域において、吸収コアの非肌面側のコアラップの少なくとも一部は、吸収コアと接合されている。このような格子状の圧搾部により、吸収体の保型性が維持されやすくなり、吸収体の型崩れが抑制される。
【0011】
一方、圧搾部の領域において、吸収コアの肌面側のコアラップの少なくとも一部は、吸収コアと接合されていない。したがって、肌面側のコアラップが圧搾部から浮き上がり肌面側の圧搾部による凸凹を感じにくくなるため、肌触りを改善することができる。
【0012】
好ましい一態様によれば、前記圧搾部は、前記吸収体の肌面側と非肌面側に形成されており、前記吸収体の肌面側に形成された前記圧搾部の深さは、前記吸収体の非肌面側に形成された前記圧搾部の深さよりも大きい。
【0013】
吸収体に圧搾部を形成する際に、肌面側のコアラップは深く伸ばされるため、より元の状態に戻る力が働きやすい。これにより、肌面側のコアラップは吸収コアに対して非接合になりやすい。そのため、肌面側のコアラップが表面シート側に戻りやすいため、肌面側のコアラップが圧搾部から浮き上がり肌面側の圧搾部による凸凹を感じにくくなり、肌触りをより改善することができる。
【0014】
一方、非肌面側のコアラップは、吸収体に圧搾部を形成する際に、あまり伸ばされないため、吸収コアに接合された状態を維持し易い。
【0015】
好ましい一態様によれば、前記吸収コアの肌面側の前記コアラップの伸度は、前記吸収コアの非肌面側のコアラップの伸度よりも小さい。
【0016】
肌面側のコアラップの伸度が吸収コアの非肌面側のコアラップの伸度よりも小さいため、肌面側のコアラップは一端伸ばしても元の状態に戻りやすい。すなわち、吸収体に圧搾部を形成する際に、吸収コアとコアラップを厚み方向に押し付けた後に、肌面側のコアラップは元の状態に戻りやすい。これにより、肌面側のコアラップが吸収コアに対して非接合になりやすく、肌面側のコアラップが吸収コアの圧搾部から浮き上がりやすくなる。したがって、肌面側の圧搾部による凸凹をより感じにくくなるため、肌触りをより改善することができる。
【0017】
一方で、非肌面側のコアラップは、比較的伸度が高いため、吸収体に圧搾部を形成する際に吸収コアとともに変形し、吸収コアに接合された状態を維持し易い。
【0018】
好ましい一態様によれば、前記吸収コアと前記コアラップとの間に接着剤が設けられており、前記吸収コアの肌面側の前記接着剤の秤量は、前記吸収コアの非肌面側の前記接着剤の秤量よりも小さい。
【0019】
肌面側のコアラップに付着し得る接着剤の秤量が小さいため、肌面側のコアラップが吸収コアに対して非接合になりやすく、また肌面側において吸収体がかたくなりにくい。したがって、吸収体の肌触りをより改善することができる。
【0020】
一方、非肌面側のコアラップと吸収コアは、大きい秤量の接着剤でしっかりと接合されるため、吸収体の保型性が維持されやすい。
【0021】
好ましい一態様によれば、前記吸収体の、格子状の前記圧搾部により囲まれたセルにおいて、前記セルの最大長に対する前記吸収コアの最大厚みの比は、0.09以上である。
【0022】
セルの最大長に対する吸収コアの最大厚みの比が大きければ大きいほど、セルのサイズに対する吸収コアの膨らみが大きいことを意味する。当該比が0.09以上であることによって、格子状の圧搾部がしっかりと形成され、吸収体の保型性が維持されやすくなる。
【0023】
好ましい一態様によれば、前記吸収体の、格子状の前記圧搾部により囲まれたセルにおいて、前記セルの最大長に対する前記吸収コアの最大厚みの比は、0.16以下である。
【0024】
当該比が0.16以下であることによって、セルの吸収コアが膨らみすぎることがないため、非肌面側のコアラップが吸収コアから外れることを抑制することができる。これにより、非肌面側のコアラップは吸収コアにしっかりと接合されるので、吸収体の型崩れを抑制する効果が高まる。
【0025】
好ましい一態様によれば、前記吸収コアの肌面側の前記コアラップと前記吸収コアとの非接合領域は、前記吸収コアの非肌面側の前記コアラップと前記吸収コアとの非接合領域よりも大きい。
【0026】
吸収コアの非肌面側のコアラップと吸収コアとの非接合領域が小さい、すなわち接合領域が大きいため、非肌面側のコアラップと吸収コアはしっかりと接合される。したがって、吸収体の保型性が維持されやすい。
【0027】
一方、吸収コアの肌面側のコアラップと吸収コアとの非接合領域が大きいため、コアラップ及びその肌面側の表面シートが、圧搾部から浮き上がり肌面側の圧搾部による凸凹を感じにくくなるため、肌触りをより改善することができる。
【0028】
好ましい一態様によれば、前記圧搾部は、前記吸収体の肌面側と非肌面側に形成されており、前記圧搾部の領域において、前記吸収コアの肌面側の前記コアラップと前記吸収コアとが接合されていない非接合領域の少なくとも一部は、前記吸収コアの非肌面側の前記コアラップと前記吸収コアとが接合された接合領域に対向して設けられている。
【0029】
これにより、吸収体の非肌面側でしっかりと圧搾部が形成されるとともに、吸収体の肌面側でコアラップと吸収コアとが接合されていない非接合領域が形成されるため、表面シートが、圧搾部から浮き上がり肌面側の圧搾部による凸凹を感じにくくなるため、肌触りを改善することができる。
【0030】
好ましい一態様によれば、前記圧搾部は、前記吸収体の肌面側と非肌面側に形成されており、前記吸収体の非肌面側に位置する裏面シートを有し、非肌面側の前記圧搾部の領域において、前記吸収コアの非肌面側の前記裏面シートの少なくとも一部は、前記コアラップと接合されている。
【0031】
吸収体の非肌面側において、裏面シートが圧搾部の領域において、コアラップと接合しているため、非肌面側で格子状の圧搾部がしっかりと形成される。これにより、吸収体の保型性がより維持されやすくなり、吸収体の型崩れがより抑制される。
【0032】
好ましい一態様によれば、前記圧搾部は、前記吸収体の肌面側と非肌面側に形成されており、前記吸収体の非肌面側に、尿の付着の有無を判別するインジケータを有し、前記インジケータの少なくとも一部は、非肌面側の前記圧搾部に密着して設けられている。
【0033】
インジケータは、例えば尿の付着によって変色することで、使用者に尿の付着の有無を知らせることができる。ここでインジケータの少なくとも一部が、非肌面側の前記圧搾部に密着して設けられているため、インジケータは吸収体に吸収された尿に反応しやすい。これにより、使用者は、吸収体への尿の吸収を容易に判別できるようになる。
【0034】
(2)第1実施形態
以下、図面を参照して、実施形態について説明する。以下の図面において、同一又は類似の部分には、同一又は類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、各寸法の比率等は現実のものとは異なることがあることに留意すべきである。
【0035】
図1は、第1実施形態に係る肌面側から見た吸収性物品の平面図である。図2は、第1実施形態に係る非肌面側から見た吸収性物品の平面図である。図3は、第1実施形態に係る吸収体の平面図である。図4は、図1の4A−4A線に沿った吸収性物品の模式的断面図である。
【0036】
吸収性物品10は、使い捨ておむつや生理用ナプキンのような物品であってよい。以下では、吸収性物品10を例に挙げて詳細に説明する。
【0037】
吸収性物品10は、前側域S1と、股下域S2と、後側域S3と、を有する。前側域S1は、着用者の前胴周り部(腹部分)と接する部分である。また、後側域S3は、着用者の後胴周り部(背部分)と接する部分である。股下域S2は、前側域S1と前側域S3との間に位置する。
【0038】
本実施形態では、前側域S1から後側域S3に向かう方向を前後方向Lと呼ぶ。また、前後方向Lと直交する方向を幅方向Wと呼ぶ。
【0039】
吸収性物品10は、表面シート50、吸収体40、及び裏面シート60,62を有していてよい。表面シート50は、1枚又は複数枚のシートによって構成されていてよい。表面シート50は、例えば不織布のような透液性のシートによって構成されていてよい。
【0040】
裏面シート60,62は、1枚又は複数枚のシートによって構成されていてよい。本実施形態では、裏面シートは、吸収体40の非肌面側に位置する防漏シート62と、防漏シート62の非肌面側に位置する非肌面シート60と、を有していてよい。防漏シート62は、例えば不透液性のフィルムによって構成されていてよい。非肌面シート60は、例えば不織布によって構成されていてよい。
【0041】
吸収性物品10は、幅方向Wにおける吸収体40の両外側縁から幅方向Wの外側に延びるサイドシート70を有していてもよい。サイドシート70は、吸収体40と重なる位置では、吸収体40よりも肌面側に設けられていてよい。
【0042】
本実施形態では、吸収性物品10は、一対のファスニングテープ90を備えている。ファスニングテープ90は、後側域S3に設けられている。ファスニングテープ90は、前側域S1と後側域S0とを止着する。前側域S1と後側域S3とが互いに止着されることにより、ファスニングテープ90は、吸収性物品10を着用者の身体に保持する。
【0043】
上記実施形態の代わりに、吸収性物品10は、一対のファスニングテープ90を備えていなくてもよい。この場合、例えば吸収性物品は、パンツ型の形状を有していてよい。また、吸収性物品は、下着に貼り付けられて使用されるタイプのものであってもよい。
【0044】
吸収体40は、表面シート50と防漏シート62との間に設けられている。吸収体40は、吸収コア40aと、吸収コア40aを包むコアラップ40bと、を有していてよい。
【0045】
吸収コア40aは、少なくとも股下域S2に設けられており、好ましくは股下域S2から前側域S1及び後側域S3のうち少なくともいずれか一方に向かって延びている。吸収コア40aは、粉砕パルプや高吸収ポリマーなどの材料を用いて構成することができる。
【0046】
コアラップ40bは、透液性のシートによって構成されている。コアラップ40bは、例えばティッシュや不織布により構成されていてよい。吸収コア40aの肌面側のコアラップ40bと、吸収コア40aの非肌面側のコアラップ40bとは、互いに異なるシートによって構成されていてもよく、同じシートによって構成されていてもよい。
【0047】
吸収コア40aの肌面側のコアラップ40bは、接着剤30aによって吸収コア40aに接着されていてよい。また、吸収コア40aの非肌面側のコアラップ40bは、接着剤30bによって吸収コア40aに接着されていてよい。
【0048】
吸収性物品10は、尿の付着の有無を判別するインジケータ68を有していてよい。インジケータ68は、吸収体40の非肌面側に設けられていてよい。例えば、インジケータ68は、防漏シート62の肌面側に設けられている。本実施形態では、インジケータ68は、少なくとも股下域S3において、前後方向Lに沿って延びている。インジケータ68は、例えば、尿の付着によって色が変化する部材によって構成されていてよい。インジケータ68は、尿の付着によって変色することで、使用者に尿の付着の有無を知らせることができる。
【0049】
インジケータ68の少なくとも一部は、後述する非肌面側圧搾部80bに密着して設けられていることが好ましい。より好ましくは、インジケータ68は、接着剤によって、非肌面側圧搾部80bのところでコアラップ40bに接着されている。インジケータ68の少なくとも一部が、後述する非肌面側圧搾部80bに密着して設けられているため、インジケータ68は吸収体40に吸収された尿に反応しやすい。これにより、使用者は、吸収体への尿の吸収を容易に判別できるようになる。
【0050】
吸収性物品10は、吸収体40を圧搾した圧搾部80を有する。圧搾部80は、吸収コア40aとコアラップ40bとに形成されている。圧搾部80は、吸収体40の肌面側に形成された肌面側圧搾部80aと、吸収体40の非肌面側に形成された肌面側圧搾部80bと、を含んでいてよい。肌面側圧搾部80aは、吸収体40の肌面側から非肌面側に向かって厚み方向に凹んだ部分である。非肌面側圧搾部80bは、吸収体40の非肌面側から肌面側に向かって厚み方向に凹んだ部分である。ここで、肌面側圧搾部80aは、吸収体40の厚み方向Tにおいて肌面側圧搾部80bと重なる位置に設けられている。
【0051】
圧搾部80は、吸収体40に格子状に形成されている。すなわち、吸収体40は、圧搾部80によって1つ又は複数のセル46に区画されていてよい。格子の形状については、特に限定されない。例えば、圧搾部80は、各々のセル46を、略菱形、略長方形、略正四角形、略三角形などの多角形にするよう形成されていてよい。この代わりに、圧搾部80は、1つの略正方形又は略長方形のセル46を形成するよう設けられていてもよい。
【0052】
圧搾部80は、少なくとも股下域S2に設けられていてよく、好ましくは吸収体の全領域において格子状に形成されている。ここで、各セル46は、別のセル46から完全に分離していなくてもよい。例えば、図3に示すように、前後方向Lに隣接するセル46どうしが、狭い非圧搾部を介して互いに繋がっていてもよい。図3に示す態様の代わりに、幅方向Wに隣接するセル46どうしが、狭い非圧搾部を介して互いに繋がっていてもよい。このように、圧搾部80は、実質的に格子状に形成されていればよく、セル46同士を完全に分離していなくてもよい。
【0053】
本実施形態では、前後方向Lに沿って延びる複数の圧搾部80が、幅方向Wに並んでいる。それぞれの圧搾部80は、波状に湾曲しながら前後方向Lに沿って延びている。互いに隣接する圧搾部80の波の位相は、180°ずれている。これにより、互いに隣接する圧搾部80どうしの間に、複数のセル46が形成される。
【0054】
圧搾部80の領域において、吸収コア40aの非肌面側のコアラップ40bの少なくとも一部は、吸収コア40aと接合されており、圧搾部80の領域において、吸収コア40aの肌面側のコアラップ40bの少なくとも一部は、前記吸収コア40aと接合されていない。好ましくは、圧搾部80の領域において、吸収コア40aの肌面側のコアラップ40bと吸収コア40aとが接合されていない非接合領域の少なくとも一部は、吸収コア40aの非肌面側のコアラップ40bと吸収コア40aとが接合された接合領域に対向して設けられている。
【0055】
吸収体40に格子状の圧搾部80が形成されているため、吸収体40の曲げ剛性が高まり、吸収体40の保型性が維持されやすい。特に、圧搾部80の領域において、吸収コア40aの非肌面側のコアラップ40bの少なくとも一部は、吸収コア40aと接合されている。このような格子状の圧搾部80により、吸収体40の保型性が維持されやすくなり、吸収体40の型崩れが抑制される。一方で、圧搾部80の領域において、吸収コア40aの肌面側のコアラップ40bの少なくとも一部は、吸収コア40aと接合されていない。したがって、コアラップ40b及びその肌面側の表面シート50が、圧搾部80から浮き上がり肌面側の圧搾部80による凸凹を感じにくくなるため、肌触りを改善することができる。
【0056】
吸収コア40aの肌面側のコアラップ40bと吸収コア40aとの非接合領域は、吸収コア40aの非肌面側のコアラップ40bと吸収コア40aとの非接合領域よりも大きいことが好ましい。吸収コア40aの非肌面側のコアラップ40bと吸収コア40aとの非接合領域が小さい、すなわち接合領域が大きいため、非肌面側のコアラップ40bと吸収コア40aはしっかりと接合される。したがって、吸収体の保型性が維持されやすい。一方で、吸収コア40aの肌面側のコアラップ40bと吸収コア40aとの非接合領域が大きいため、コアラップ40b及びその肌面側の表面シート50が、圧搾部80から浮き上がりやすくなり肌面側の圧搾部80による凸凹を感じにくくなるため、肌触りをより改善することができる。
【0057】
肌面側圧搾部80aの深さは、非肌面側圧搾部80bの深さよりも大きいことが好ましい。吸収体40に圧搾部80を形成する際に、肌面側のコアラップ40bは深く伸ばされるため、より元の状態に戻る力が働きやすい。これにより、肌面側のコアラップ40bは吸収コア40aに対して非接合になりやすい。そのため、肌面側のコアラップ40bが表面シート50側に戻りやすいため、圧搾部80からより浮き上がりやすくなり肌面側の圧搾部80による凸凹を感じにくくなる。一方、非肌面側のコアラップ40bは、吸収体40に圧搾部80を形成する際に、あまり伸ばされないため、吸収コア40aに接合された状態を維持し易い。
【0058】
吸収コア40aの肌面側のコアラップ40bの伸度は、吸収コア40aの非肌面側のコアラップ40bの伸度よりも小さいことがより好ましい。肌面側のコアラップ40bの伸度が吸収コア40aの非肌面側のコアラップ40bの伸度よりも小さいため、肌面側のコアラップ40bは一端伸ばしても元の状態に戻りやすい。すなわち、吸収体40に圧搾部80を形成する際に、吸収コア40bとコアラップ40bを厚み方向に押し付けた後に、肌面側のコアラップ40bは元の状態に戻りやすい。これにより、肌面側のコアラップ40bが吸収コア40aに対して非接合になりやすい。さらに、肌面側のコアラップ40bが表面シート50側に戻りやすいため、圧搾部80からより浮き上がりやすくなり肌面側の圧搾部80による凸凹を感じにくくなる。一方で、非肌面側のコアラップ40bは、比較的伸度が高いため、吸収体40に圧搾部80を形成する際に吸収コア40aとともに変形し、吸収コア40aに接合された状態を維持し易い。
【0059】
ここで、コアラップ40bの伸度は、以下の方法により測定することができる。まず、吸収性物品10からコアラップ40を切り取って、測定用試料とする。測定用試料は、長さ150mm×幅25mmの短冊状の試験片であってよい。この測定用試料を、最大荷重容量が50Nであるロードセルを備えた引張試験機(島津製作所(株)製、オートグラフ、型式AGS−1kNG)を使用して、3つの測定用試料について、100mmのチャック間距離、100mm/分の引張速度の条件で引張伸度を測定する。3つの測定用試料の引張伸度の平均値を引張伸度とする。
【0060】
吸収コア40aの肌面側の接着剤の秤量30aは、吸収コア40aの非肌面側の接着剤の秤量よりも小さいことが好ましい。肌面側のコアラップ40bに付着し得る接着剤の秤量が小さいため、肌面側のコアラップ40bが吸収コア40aに対して非接合になりやすく、また肌面側において吸収体40が硬くなりにくい。したがって、吸収体40の肌触りをより改善することができる。一方で、非肌面側のコアラップ40bと吸収コア40aは、大きい秤量の接着剤30bでしっかりと接合されるため、吸収体40の保型性が維持されやすい。なお、接着剤の坪量は、吸収コア40a又はコアラップ40bの所定面積に塗布される接着剤の塗布量(質量)を、当該所定面積で除算することによって算出される。例えば、接着剤の坪量は、吸収コア40a又はコアラップ40b全体に塗布された接着剤の全重量を、当該吸収コア40a又はコアラップ40bの面積で割った値によって規定してもよい。
【0061】
非肌面側圧搾部80bの領域において、吸収コア40bの非肌面側の裏面シート60,62の少なくとも一部は、コアラップ40bと接合されていることが好ましい。吸収体40の非肌面側において、裏面シート60,62が圧搾部80の領域において、コアラップ40bと接合しているため、非肌面側で格子状の圧搾部80がしっかりと形成される。これにより、吸収体40の保型性がより維持されやすくなり、吸収体40の型崩れがより抑制される。
【0062】
より好ましくは、非肌面側圧搾部80bの領域において、防漏シート62の少なくとも一部がコアラップ40bと接合されている。防漏シート62は、不透液性のフィルムのように不織布よりも剛性の高いシートによって構成されていてよい。この場合、吸収体40の非肌面側において、非肌面側圧搾部80bの形状がしっかり保持される。これにより、吸収体40の保型性がより維持されやすくなる。
【0063】
表面シート50は、少なくとも圧搾部80の領域において、コアラップ40bに接合されていなくてよい。この場合、表面シート50が吸収コア40aから浮きやすくなるため、肌面側の圧搾部80による凸凹を感じにくくなるため、肌触りをより改善することができる。
【0064】
吸収体40の、格子状の圧搾部80により囲まれたセル46において、セル46の最大長に対する吸収コア40aの最大厚みの比は、0.09以上であることが好ましい。セル46の最大長に対する吸収コア40aの最大厚みの比が大きければ大きいほど、セル46のサイズに対する吸収コア40aの膨らみが大きいことを意味する。当該比が0.09以上であることによって、格子状の圧搾部80がしっかりと形成され、吸収体40の保型性が維持されやすくなる。なお、吸収コア40aの厚みは、例えば吸収体を液体窒素で固めた状態で吸収体を裁断機で切断し、吸収体の切断された断面を電子顕微鏡で観測することによって測定することができる。
【0065】
吸収体40の、格子状の圧搾部80により囲まれたセルにおいて、セル46の最大長に対する吸収コア40aの最大厚みの比は、0.16以下であることが好ましい。セル46の幅方向Wの最大長に対する吸収コア40aの最大厚みの比が、好ましくは0.16以下、より好ましくは0.15以下である。当該比が0.16以下であることによって、セル46の吸収コア40aが膨らみすぎることがないため、非肌面側のコアラップ40bが吸収コア40aから外れることを抑制することができる。これにより、非肌面側のコアラップ40bは吸収コア40aにしっかりと接合されるので、吸収体40の型崩れを抑制する効果が高まる。
【0066】
以下の表1は、圧搾部80によって区画されたセル46の大きさと、非肌面圧搾部80bのところでのコアラップ40bと吸収コア40aの接合性の測定結果を示している。表1に記載の実施例1〜5は、圧搾部80によって形成されるセル46のサイズ及び厚みが異なっている。実施例1〜5において、セル46の幅方向の最大長W1と、セル46の最大厚みT1が、表1に示されている。
【0067】
また、非肌面圧搾部80bのところで、非肌面側のコアラップ40bと吸収コア40aの接合性を電子顕微鏡で確認した。非肌面側のコアラップ40bと吸収コア40aとが接合されている場合、接合性の評価は「○」によって示されている。一方、非肌面側のコアラップ40bと吸収コア40aとの接合性が低下している場合、すなわち非接合領域が観測された場合、接合性の評価は「×」によって示されている。
【0068】
【表1】
【0069】
上記表1で示されているとおり、セル46の幅方向Wにおける最大長W1に対する吸収コアの最大厚みT1の比が小さくなるほど、非肌面側のコアラップ40bと吸収コア40aとがしっかりと接合されていることがわかる。具体的には、セル46の幅方向Wにおける最大長W1に対する吸収コアの最大厚みT1の比は、好ましくは0.16以下、より好ましくは0.15以下、さらに好ましくは0.14以下であってよい。
【0070】
さらに、表1は、各実施例において格子状の圧搾部80の視認性について評価した結果も示されている。視認性は、複数のユーザによる官能評価によって測定された。表1の「○」は、複数のユーザのうち全員が肌面側からみて表面シート50を介して吸収体40の圧搾ラインELを認識できた場合であり、視認性が高いと判断された結果を示す。表1の「×」は、複数のユーザのうちの一部が肌面側からみて表面シート50を介して吸収体40の圧搾ラインELを認識できなかった場合であり、視認性が低いと判断された結果を示す。表1から、セル46の幅方向の最大長W1に対する吸収コア40aの最大厚みT1の比は、好ましくは0.09以上であり、より好ましくは0.10以上である。
【0071】
(3)第2実施形態
次に、第2実施形態に係る吸収性物品について説明する。以下において第1実施形態と同様な構成については、その説明を省略することがある。第2実施形態では、吸収体40に形成された圧搾部80のパターンが第1実施形態と異なっている。
【0072】
図5は、第2実施形態に係る吸収体の圧搾部のパターンを示す図である。複数の圧搾部80のうちのいくつかの圧搾部は、格子を形成するように複数の圧搾ラインのうちの他の圧搾部に対して傾斜している。本実施形態では、各々の圧搾部80は、間欠部86によって断続的に形成されている。このように、圧搾部80は、破線を描くように間欠的に延びていてもよい。
【0073】
この代わりに、圧搾部80は、一方向に連続的に延びていてもよい。この場合、圧搾部80は、吸収体を略正方形の多数の区画にわけるように形成される。
【0074】
(4)第3実施形態
次に、第3実施形態に係る吸収性物品について説明する。以下において第1実施形態と同様な構成については、その説明を省略することがある。第3実施形態では、吸収体40に形成された圧搾部80のパターンが第1実施形態と異なっている。
【0075】
図6は、第3実施形態に係る吸収体の圧搾部のパターンを示す図である。複数の圧搾部80のうちのいくつかの圧搾部は、格子を形成するように複数の圧搾部80のうちの他の圧搾部に対して傾斜している。各々の圧搾部80は、波状に湾曲しつつ一方向に延びている。
【0076】
上記第1実施形態から第3実施形態で説明したように、圧搾部80のパターンについては、種々変更可能であることに留意されたい。
【0077】
上述したように、実施形態を通じて本発明の内容を開示したが、この開示の一部をなす論述及び図面は、本発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替の実施形態、実施例及び運用技術が明らかとなる。したがって、本発明の技術的範囲は、上述の説明から妥当な特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められるものである。
【産業上の利用可能性】
【0078】
上記態様によれば、圧搾部により吸収体の型崩れを抑制しつつも、肌触りを改善することができる吸収性物品を提供することができる。
【符号の説明】
【0079】
10 吸収性物品
40 吸収体
40a 吸収コア
40b コアラップ
50 表面シート
60 防漏シート
62 非肌面シート
80 圧搾部
80a 肌面側圧搾部
80b 非肌面側圧搾部
図1
図2
図3
図4
図5
図6