特許第6952103号(P6952103)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6952103固体レーザシステム、及び波長変換システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6952103
(24)【登録日】2021年9月29日
(45)【発行日】2021年10月20日
(54)【発明の名称】固体レーザシステム、及び波長変換システム
(51)【国際特許分類】
   G02F 1/37 20060101AFI20211011BHJP
【FI】
   G02F1/37
【請求項の数】11
【全頁数】32
(21)【出願番号】特願2019-502375(P2019-502375)
(86)(22)【出願日】2017年3月2日
(86)【国際出願番号】JP2017008220
(87)【国際公開番号】WO2018158899
(87)【国際公開日】20180907
【審査請求日】2020年2月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】300073919
【氏名又は名称】ギガフォトン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105212
【弁理士】
【氏名又は名称】保坂 延寿
(72)【発明者】
【氏名】小野瀬 貴士
【審査官】 林 祥恵
(56)【参考文献】
【文献】 特開平07−170009(JP,A)
【文献】 特開2009−058782(JP,A)
【文献】 特開2004−006434(JP,A)
【文献】 特開2009−145791(JP,A)
【文献】 国際公開第2016/143071(WO,A1)
【文献】 国際公開第01/020651(WO,A1)
【文献】 国際公開第2015/122374(WO,A2)
【文献】 米国特許出願公開第2003/0012233(US,A1)
【文献】 米国特許第06219363(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/35−1/39
H01S 3/10
H04B 10/548
JSTPlus/JST7580(JDreamIII)
IEEE Xplore
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の波長の第1のパルスレーザ光を出力する第1の固体レーザ装置と、
第2の波長の第2のパルスレーザ光を出力する第2の固体レーザ装置と、
前記第1のパルスレーザ光と前記第2のパルスレーザ光とが進む第1の光路上に配置され、前記第1のパルスレーザ光と前記第2のパルスレーザ光とを、第1の和周波発生過程により第3の波長の第3のパルスレーザ光へと波長変換して出力する第1の非線形結晶と、
前記第2のパルスレーザ光と前記第3のパルスレーザ光とが進む第2の光路上に配置され、前記第2のパルスレーザ光と前記第3のパルスレーザ光とを、第2の和周波発生過程により第4の波長の第4のパルスレーザ光へと波長変換して出力する第2の非線形結晶と
前記第2の固体レーザ装置と前記第2の非線形結晶との間における前記第2のパルスレーザ光の光路と前記第3のパルスレーザ光の光路とが交差する位置に配置され、前記第2のパルスレーザ光を前記第2の非線形結晶に向けて透過させ、前記第3のパルスレーザ光を前記第2の非線形結晶に向けて反射させる第1のダイクロイックミラーと、
前記第2のパルスレーザ光のうち前記第2の和周波発生過程で使われずに前記第2の非線形結晶を通過した残余光の光路上に配置され、前記第2のパルスレーザ光の前記残余光を反射させる第2のダイクロイックミラーと、
前記第2のダイクロイックミラーで反射された後の前記第2のパルスレーザ光の前記残余光の光路上に配置され、前記第2のパルスレーザ光の前記残余光を反射させる反射ミラーと、
前記反射ミラーで反射された後の前記第2のパルスレーザ光の前記残余光の光路と前記第1のパルスレーザ光の光路とが交差する位置に配置され、前記第1のパルスレーザ光を前記第1の非線形結晶に向けて反射させ、前記第2のパルスレーザ光の前記残余光を前記第1の非線形結晶に向けて透過させる第3のダイクロイックミラーと
を備え、
前記第2のパルスレーザ光を、前記第1の非線形結晶に入射させる前の第1のタイミングで前記第2の非線形結晶に入射させ、前記第2のパルスレーザ光の前記残余光を前記第1のタイミングよりも遅い第2のタイミングで前記第1の非線形結晶に入射させる
固体レーザシステム。
【請求項2】
請求項1に記載の固体レーザシステムであって、
前記第1のパルスレーザ光が前記第1の非線形結晶に入射するタイミングと、前記第1のタイミングとが略同じである。
【請求項3】
請求項1に記載の固体レーザシステムであって、
前記第1のパルスレーザ光が前記第1の非線形結晶に入射するタイミングと、前記第2のタイミングとが略同じである。
【請求項4】
請求項1に記載の固体レーザシステムであって、
前記第1のパルスレーザ光が前記第1の非線形結晶に入射するタイミングは、前記第1のタイミングと前記第2のタイミングとの間のタイミングである。
【請求項5】
請求項4に記載の固体レーザシステムであって、
前記第1のパルスレーザ光が前記第1の非線形結晶に入射するタイミングは、前記第1のタイミングと前記第2のタイミングとの間の中間のタイミングである。
【請求項6】
請求項1に記載の固体レーザシステムであって、
前記第2の波長は、1100nm以上、2000nm以下である。
【請求項7】
請求項6に記載の固体レーザシステムであって、
前記第2の固体レーザ装置は、Erファイバ増幅器を含む。
【請求項8】
請求項6に記載の固体レーザシステムであって、
前記第1の波長は、220nm以上、400nm以下である。
【請求項9】
請求項8に記載の固体レーザシステムであって、
前記第4の波長は、150nm以上、300nm以下である。
【請求項10】
請求項1に記載の固体レーザシステムであって、
前記第2のパルスレーザ光の前記残余光の光路上における前記第1の非線形結晶と前記第2の非線形結晶との間に配置された1/2波長板、
をさらに備える。
【請求項11】
請求項10に記載の固体レーザシステムであって、
前記第1の固体レーザ装置は、第1の偏光方向に偏光した前記第1のパルスレーザ光を出力し、
前記第2の固体レーザ装置は、前記第1の偏光方向に直交する第2の偏光方向に偏光した前記第2のパルスレーザ光を出力し、
前記第1の非線形結晶の光学軸と前記第2の非線形結晶の光学軸とが互いに直交するように配置されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、固体レーザシステム、及び波長変換システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体露光装置(以下、「露光装置」という)においては、半導体集積回路の微細化および高集積化につれて、解像力の向上が要請されている。このため、露光用光源から放出される光の短波長化が進められている。一般的に、露光用光源には、従来の水銀ランプに代わってガスレーザ装置が用いられる。例えば、露光用のガスレーザ装置としては、波長248nmの紫外線のレーザ光を出力するKrFエキシマレーザ装置、ならびに波長193nmの紫外線のレーザ光を出力するArFエキシマレーザ装置が用いられる。
【0003】
次世代の露光技術としては、露光装置側の露光用レンズとウエハとの間が液体で満たされる液浸露光が実用化されている。この液浸露光では、露光用レンズとウエハとの間の屈折率が変化するため、露光用光源の見かけの波長が短波長化する。ArFエキシマレーザ装置を露光用光源として液侵露光が行われた場合、ウエハには水中における波長134nmの紫外光が照射される。この技術をArF液浸露光(又はArF液浸リソグラフィー)という。
【0004】
KrFエキシマレーザ装置およびArFエキシマレーザ装置の自然発振幅は、約350〜400pmと広い。そのため、KrF及びArFレーザ光のような紫外線を透過する材料で投影レンズを構成すると、色収差が発生してしまう場合がある。その結果、解像力が低下し得る。そこで、ガスレーザ装置から出力されるレーザ光のスペクトル線幅を、色収差が無視できる程度となるまで狭帯域化する必要がある。そのため、ガスレーザ装置のレーザ共振器内には、スペクトル線幅を狭帯域化するために、狭帯域化素子(エタロン、グレーティング等)を有する狭帯域化モジュール(Line Narrow Module:LNM)が設けられる場合がある。以下では、スペクトル線幅が狭帯域化されるレーザ装置を狭帯域化レーザ装置という。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2016/143071号
【特許文献2】国際公開第2001/020651号
【特許文献3】特開2009−145791号公報
【特許文献4】特開平7−170009号公報
【概要】
【0006】
本開示の固体レーザシステムは、第1の波長の第1のパルスレーザ光を出力する第1の固体レーザ装置と、第2の波長の第2のパルスレーザ光を出力する第2の固体レーザ装置と、第1のパルスレーザ光と第2のパルスレーザ光とが進む第1の光路上に配置され、第1のパルスレーザ光と第2のパルスレーザ光とを、第1の和周波発生過程により第3の波長の第3のパルスレーザ光へと波長変換して出力する第1の非線形結晶と、第2のパルスレーザ光と第3のパルスレーザ光とが進む第2の光路上に配置され、第2のパルスレーザ光と第3のパルスレーザ光とを、第2の和周波発生過程により第4の波長の第4のパルスレーザ光へと波長変換して出力する第2の非線形結晶と、第2の固体レーザ装置と第2の非線形結晶との間における第2のパルスレーザ光の光路と第3のパルスレーザ光の光路とが交差する位置に配置され、第2のパルスレーザ光を第2の非線形結晶に向けて透過させ、第3のパルスレーザ光を第2の非線形結晶に向けて反射させる第1のダイクロイックミラーと、第2のパルスレーザ光のうち第2の和周波発生過程で使われずに第2の非線形結晶を通過した残余光の光路上に配置され、第2のパルスレーザ光の残余光を反射させる第2のダイクロイックミラーと、第2のダイクロイックミラーで反射された後の第2のパルスレーザ光の残余光の光路上に配置され、第2のパルスレーザ光の残余光を反射させる反射ミラーと、反射ミラーで反射された後の第2のパルスレーザ光の残余光の光路と第1のパルスレーザ光の光路とが交差する位置に配置され、第1のパルスレーザ光を第1の非線形結晶に向けて反射させ、第2のパルスレーザ光の残余光を第1の非線形結晶に向けて透過させる第3のダイクロイックミラーとを備え、第2のパルスレーザ光を、第1の非線形結晶に入射させる前の第1のタイミングで第2の非線形結晶に入射させ、第2のパルスレーザ光残余光を第1のタイミングよりも遅い第2のタイミングで第1の非線形結晶に入射させる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
本開示のいくつかの実施形態を、単なる例として、添付の図面を参照して以下に説明する。
図1図1は、比較例に係る固体レーザシステムを含む露光装置用レーザ装置の一構成例を概略的に示す。
図2図2は、図1に示した露光装置用レーザ装置における増幅器の一構成例を概略的に示す。
図3図3は、比較例に係る固体レーザシステムにおける波長変換システムのより詳細な構成例を概略的に示す。
図4図4は、比較例に係る固体レーザシステムにおける各種トリガ信号、及び各種バルスレーザ光に関するタイミングチャートの一例を概略的に示す。
図5図5は、比較例に係る固体レーザシステムにおける波長変換システムの一変形例を概略的に示す。
図6図6は、実施形態1に係る固体レーザシステムの一構成例を概略的に示す。
図7図7は、実施形態1に係る固体レーザシステムにおける各種トリガ信号、及び各種バルスレーザ光に関するタイミングチャートの一例を概略的に示す。
図8図8は、実施形態2に係る固体レーザシステムの一構成例を概略的に示す。
図9図9は、実施形態2に係る固体レーザシステムにおける各種トリガ信号、及び各種バルスレーザ光に関するタイミングチャートの一例を概略的に示す。
図10図10は、実施形態3に係る固体レーザシステムの一構成例を概略的に示す。
図11図11は、実施形態4に係る固体レーザシステムにおける各種トリガ信号、及び各種バルスレーザ光に関するタイミングチャートの一例を概略的に示す。
図12図12は、波長変換システムの波長変換効率の一例を概略的に示す。
図13図13は、実施形態5に係る固体レーザシステムの一構成例を概略的に示す。
図14図14は、実施形態6に係る固体レーザシステムの一構成例を概略的に示す。
図15図15は、第1又は第2の半導体レーザと第1又は第2の半導体光増幅器との一構成例を概略的に示す。
【実施形態】
【0009】
<内容>
<1.比較例>(固体レーザシステムを含む露光装置用レーザ装置)(図1図5
1.1 露光装置用レーザ装置
1.1.1 構成
1.1.2 動作
1.2 波長変換システムの詳細
1.2.1 構成
1.2.2 動作
1.2.3 変形例
1.3 課題
1.4 実施形態の概要
<2.実施形態1>(固体レーザシステムの第1の例)(図6図7
2.1 構成
2.2 動作
2.3 作用・効果
<3.実施形態2>(固体レーザシステムの第2の例)(図8図9
3.1 構成
3.2 動作、作用・効果
<4.実施形態3>(リング状の光路を有する波長変換システム)(図10
4.1 構成
4.2 動作
4.3 作用・効果
<5.実施形態4>(波長変換効率の最適化手法)(図11図12
5.1 構成・動作
5.2 作用・効果
<6.実施形態5>(偏光方向を考慮した固体レーザシステムの第1の例)(図13
6.1 構成
6.2 動作、作用・効果
<7.実施形態6>(偏光方向を考慮した固体レーザシステムの第2の例)(図14
7.1 構成
7.2 動作、作用・効果
<8.実施形態7>(半導体レーザと半導体光増幅器との構成例)(図15
8.1 構成
8.2 動作
<9.その他>
【0010】
以下、本開示の実施形態について、図面を参照しながら詳しく説明する。
以下に説明される実施形態は、本開示のいくつかの例を示すものであって、本開示の内容を限定するものではない。また、各実施形態で説明される構成及び動作の全てが本開示の構成及び動作として必須であるとは限らない。
なお、同一の構成要素には同一の参照符号を付して、重複する説明を省略する。
【0011】
<1.比較例>(固体レーザシステムを含む露光装置用レーザ装置)
[1.1 露光装置用レーザ装置]
まず、本開示の実施形態に対する比較例の固体レーザシステムを含む露光装置用レーザ装置について説明する。
【0012】
露光装置用レーザ装置として、MO(マスタオシレータ)とPO(パワーオシレータ)とを含む構成がある。そのような露光装置用レーザ装置では、MOとPOとに、エキシマレーザガスをレーザ媒質とするレーザが使用され得る。しかしながら、省エネルギの観点から、MOを非線形結晶と固体レーザとを組み合わせた紫外光のパルスレーザ光を出力する固体レーザシステムとする露光装置用レーザ装置の開発が進みつつある。以下では、そのような固体レーザシステムを含む露光装置用レーザ装置の構成例を説明する。
【0013】
[1.1.1 構成]
図1は、比較例に係る固体レーザシステム1を含む露光装置用レーザ装置の一構成例を概略的に示している。図2は、図1に示した露光装置用レーザ装置における増幅器2の一構成例を概略的に示している。
【0014】
露光装置用レーザ装置は、露光装置制御部5を含む露光装置4に対してパルスレーザ光を出力するレーザ装置である。露光装置用レーザ装置は、固体レーザシステム1と、ArFレーザ増幅器等の増幅器2と、レーザ制御部3と、同期制御部7と、高反射ミラー91,92とを含む。
【0015】
固体レーザシステム1は、第1の固体レーザ装置11と、第2の固体レーザ装置12と、同期回路部13と、固体レーザ制御部14と、波長変換システム15と、高反射ミラー16と、ダイクロイックミラー17とを含む。高反射ミラー16とダイクロイックミラー17は、波長変換システム15内に設けられていてもよい。
【0016】
第1の固体レーザ装置11は、第1の波長の第1のパルスレーザ光71Aを出力するように構成されている。第1の波長は波長約257.5nmであってもよい。第1の固体レーザ装置11は、第1の半導体レーザ20と、第1の半導体光増幅器(SOA:Semiconductor Optical Amplifier)23と、Ybファイバ増幅器システム24と、Yb:YAG結晶増幅器25と、LBO結晶(LiB35)21と、CLBO結晶(CsLiB610)22とを含む。
【0017】
第1の半導体レーザ20は、波長約1030nmでCW(Continuous Wave)発振もしくはパルス発振するレーザであってもよい。第1の半導体レーザ20は、例えば、分布帰還型(DFB:Distributed Feedback)の半導体レーザである。
【0018】
第1の半導体光増幅器23は、半導体に図示しない電流制御器によってパルス電流を流すことによって、CWもしくはパルスのシード光を所定のパルス幅のパルスレーザ光に変換する半導体素子である。ここで、例えば、所定のパルス幅は約5ns以上20ns以下であってもよい。
【0019】
Ybファイバ増幅器システム24は、Ybがドープされた多段の光ファイバ増幅器と、CW発振により励起光を出射し、その励起光を各光ファイバ増幅器に供給する図示しないCW励起半導体レーザとを含む。
【0020】
第2の固体レーザ装置12は、第2の波長の第2のパルスレーザ光71Bを出力するように構成されている。第2の波長は波長約1554nmであってもよい。第2の固体レーザ装置12は、第2の半導体レーザ40と、第2の半導体光増幅器(SOA)41と、Erファイバ増幅器システム42とを含む。
【0021】
第2の半導体レーザ40は、シングル縦モードであって、波長約1554nmでCW発振もしくはパルス発振するレーザであってもよい。第2の半導体レーザ40は、例えば、分布帰還型(DFB)の半導体レーザである。
【0022】
第2の半導体光増幅器41は、半導体に図示しない電流制御器によってパルス電流を流すことによって、CWもしくはパルスのシード光を所定のパルス幅のパルスレーザ光に変換する半導体素子である。ここで、例えば、所定のパルス幅は約5ns以上20ns以下であってもよい。
【0023】
Erファイバ増幅器システム42は、Er及びYbが共にドープされた多段の光ファイバ増幅器と、CW発振により励起光を出射し、その励起光を各光ファイバ増幅器に供給する図示しないCW励起半導体レーザとを含む。
【0024】
波長変換システム15は、第1のCLBO結晶18と、第2のCLBO結晶19と、ダイクロイックミラー81と、ダイクロイックミラー82と、高反射ミラー83とを含む。
【0025】
高反射ミラー16は、第2の固体レーザ装置12から出力された第2のパルスレーザ光71Bを高反射し、ダイクロイックミラー17に入射させるように配置されている。
【0026】
第1のCLBO結晶18と、ダイクロイックミラー81と、第2のCLBO結晶19と、ダイクロイックミラー82は、この順序で第2のパルスレーザ光71Bの光路上に配置されている。
【0027】
ダイクロイックミラー17には、波長約257.5nmの第1のパルスレーザ光71Aを高透過し、波長約1554nmの第2のパルスレーザ光71Bを高反射する膜がコートされている。ダイクロイックミラー17は、第1のパルスレーザ光71Aと第2のパルスレーザ光71Bとを、互いの光路軸を略一致させた状態で波長変換システム15に入射させるように配置されている。
【0028】
第1のCLBO結晶18は、波長約257.5nmの第1のパルスレーザ光71Aと波長約1554nmの第2のパルスレーザ光71Bとが進む第1の光路上に配置されている。第1のCLBO結晶18は、第1のパルスレーザ光71Aと第2のパルスレーザ光71Bとを、和周波発生(SFG:Sum Freaquency Generation)過程により第3の波長の第3のパルスレーザ光へと波長変換して出力する第1の非線形結晶である。第3の波長は、波長約220.9nmであってもよい。
【0029】
第2のCLBO結晶19は、波長約1554nmの第2のパルスレーザ光71Bと波長約220.9nmの第3のパルスレーザ光とが進む第2の光路上に配置されている。第2のCLBO結晶19は、第2のパルスレーザ光71Bと第3のパルスレーザ光とを、和周波発生過程により第4の波長の第4のパルスレーザ光71Cへと波長変換して出力する第2の非線形結晶である。第4の波長は、波長約193.4nmであってもよい。
【0030】
ダイクロイックミラー81には、波長約257.5nmの第1のパルスレーザ光71Aを高反射し、波長約1554nmの第2のパルスレーザ光71Bと波長約220.9nmの第3のパルスレーザ光とを高透過する膜がコートされている。ダイクロイックミラー81に入射する波長約220.9nmのパルスレーザ光は、第1のCLBO結晶18から出力された第3のパルスレーザ光であり、波長約257.5nmの第1のパルスレーザ光71Aと波長約1554nmの第2のパルスレーザ光71Bとの和周波となるパルスレーザ光である。
【0031】
ダイクロイックミラー82は、第2のCLBO結晶19を透過した波長約1554nmと波長約220.9nmとの2つのパルスレーザ光を高透過し、第2のCLBO結晶19で波長変換された波長約193.4nmの第4のパルスレーザ光71Cが高反射されるように配置されている。
【0032】
高反射ミラー83は、波長約193.4nmの第4のパルスレーザ光71Cが波長変換システム15から出力されるように配置されている。
【0033】
高反射ミラー91と高反射ミラー92は、波長約193.4nmの第4のパルスレーザ光71Cが、増幅器2に入射するように配置されている。
【0034】
増幅器2は、図2に示したように、増幅器制御部30と、充電器31と、トリガ補正器32と、スイッチ33を含むパルスパワーモジュール(PPM)34と、チャンバ35と、部分反射ミラー36と、出力結合ミラー37とを含む。
【0035】
チャンバ35にはウインドウ39a,39bが設けられている。チャンバ35の中には例えばArガスとF2ガスとNeガスとを含むレーザガスが入っている。チャンバ35の中には1対の放電電極38が配置されている。1対の放電電極38は、PPM34の出力端子に接続されている。
【0036】
増幅器2において、部分反射ミラー36と出力結合ミラー37とで光共振器が構成されている。部分反射ミラー36は例えば、波長約193.4nmの光を透過するCaF2結晶からなる基板に、反射率が70%以上90%以下の部分反射膜がコートされた構成となっている。出力結合ミラー37は例えば、波長約193.4nmの光を透過するCaF2結晶からなる基板に反射率が10%以上20%以下の部分反射膜がコートされた構成となっている。
【0037】
なお、図2では、増幅器2の光共振器がファブリペロー共振器である構成例を示したが、この例に限定されることなく、増幅器2がリング共振器であってもよい。
【0038】
固体レーザ制御部14は、第1の半導体レーザ20と、第2の半導体レーザ40と、図示しないCW励起半導体レーザとに、図示しない信号ラインで接続されている。
【0039】
同期制御部7には、レーザ制御部3を介して、固体レーザシステム1におけるパルスレーザ光の生成タイミングを指示する発振トリガ信号Tr0が露光装置4の露光装置制御部5から供給される。
【0040】
同期制御部7は、発振トリガ信号Tr0に基づいてトリガ信号Tr1を生成し、トリガ信号Tr1を同期回路部13に出力するように構成されている。また、同期制御部7は、発振トリガ信号Tr0に基づいてトリガ信号Tr2を生成し、トリガ信号Tr2を増幅器制御部30を介してトリガ補正器32に出力するように構成されている。
【0041】
固体レーザ制御部14は、後述する第1及び第2の遅延時間Td1,Td2を示す遅延データTr10を同期回路部13に出力するように構成されている。
【0042】
同期回路部13は、固体レーザ制御部14からの遅延データTr10と同期制御部7からのトリガ信号Tr1とに基づいて、第1の半導体光増幅器23に対する第1のトリガ信号Tr11と、第2の半導体光増幅器41に対する第2のトリガ信号Tr12とを生成して出力するように構成されている。
【0043】
[1.1.2 動作]
レーザ制御部3は、固体レーザ制御部14を介して、第1の半導体レーザ20と、第2の半導体レーザ40と、図示しない励起用半導体レーザとをCW発振させる。
【0044】
同期制御部7は、レーザ制御部3を介して、露光装置4の露光装置制御部5から発振トリガ信号Tr0を受信すると、固体レーザシステム1から出力された波長約193.4nmの第4のパルスレーザ光71Cが増幅器2の光共振器内に注入されるのに同期して1対の放電電極38が放電するように、トリガ信号Tr1とトリガ信号Tr2との遅延時間を制御する。
【0045】
第1の固体レーザ装置11では、第1の半導体レーザ20から波長約1030nmのCW発振光もしくはパルス発振光が出力される。このCW発振光もしくはパルス発振光は、第1の半導体光増幅器23によって所定のパルス幅に変換及び増幅されて、パルス状のシード光として、Ybファイバ増幅器システム24に入射する。このパルス状のシード光は、Ybファイバ増幅器システム24とYb:YAG結晶増幅器25とによって増幅される。この増幅されたパルスレーザ光は、LBO結晶21とCLBO結晶22とによって、波長約257.5nmの第4高調波光が生成される。これにより、第1の固体レーザ装置11から波長約257.5nmの第1のパルスレーザ光71Aが出力される。
【0046】
一方、第2の固体レーザ装置12では、第2の半導体レーザ40から波長約1554nmのCW発振光もしくはパルス発振光が出力される。このCW発振光もしくはパルス発振光は、第2の半導体光増幅器41によって所定のパルス幅に変換及び増幅されて、Erファイバ増幅器システム42に入射する。この増幅されたパルスレーザ光は、Erファイバ増幅器システム42によってさらに増幅され、第2の固体レーザ装置12から波長約1554nmの第2のパルスレーザ光71Bとして出力される。
【0047】
第1の固体レーザ装置11から出力された波長約257.5nmの第1のパルスレーザ光71Aと第2の固体レーザ装置12から出力された波長約1554nmの第2のパルスレーザ光71Bは、高反射ミラー16及びダイクロイックミラー17を介して、波長変換システム15に入射する。
【0048】
ここで、固体レーザ制御部14から同期回路部13に、遅延データTr10が送信される。遅延データTr10は、第1のパルスレーザ光71Aと第2のパルスレーザ光71Bとが第1のCLBO結晶18に略同じタイミングで入射するように設定された第1及び第2の遅延時間Td1,Td2を示す遅延データを含む。
【0049】
同期回路部13は、トリガ信号Tr1に基づいて、第1のトリガ信号Tr11を所定のタイミングで第1の半導体光増幅器23に送信する。また、同期回路部13は、トリガ信号Tr1に基づいて、第2のトリガ信号Tr12を所定のタイミングで第2の半導体光増幅器41に送信する。その結果、第1のパルスレーザ光71Aと第2のパルスレーザ光71Bとが第1のCLBO結晶18に略同じタイミングで入射し、第1のCLBO結晶18上で第1のパルスレーザ光71Aと第2のパルスレーザ光71Bとのビームが重なる。その結果、第1のCLBO結晶18では波長約257.5nmと波長約1554nmとの和周波である波長約220.9nmの第3のパルスレーザ光が生成される。
【0050】
ダイクロイックミラー81では、波長約257.5nmの第1のパルスレーザ光71Aが高反射され、波長約1554nmと波長約220.9nmとの両パルスレーザ光が高透過する。これにより、波長約1554nmと波長約220.9nmとの両パルスレーザ光が第2のCLBO結晶19に入射する。
【0051】
第2のCLBO結晶19では、波長約220.9nmと波長約1554nmとの和周波である波長約193.4nmの第4のパルスレーザ光71Cを生成する。
【0052】
ダイクロイックミラー82によって、波長約220.9nmの第3のパルスレーザ光と波長約1554nmの第2のパルスレーザ光71Bとが高透過され、波長約193.4nmの第4のパルスレーザ光71Cは高反射される。
【0053】
高反射ミラー83を介して、波長約193.4nmの第4のパルスレーザ光71Cが波長変換システム15から出力される。
【0054】
第4のパルスレーザ光71Cは、高反射ミラー91を高反射し、高反射ミラー92を介して、シード光として出力結合ミラー37と部分反射ミラー36を含む増幅器2の光共振器中に注入される。この注入に同期して、増幅器2のチャンバ35内では1対の放電電極38による放電で反転分布を生成する。ここで、トリガ補正器32は、波長約193.4nmの固体レーザシステム1からの第4のパルスレーザ光71Cが増幅器2で効率よく増幅されるようにPPM34のスイッチ33のタイミングを調整する。その結果、増幅器2の光共振器によって増幅発振して、出力結合ミラー37から増幅されたパルスレーザ光が出力される。増幅されたパルスレーザ光は、露光装置4に入射する。
【0055】
[1.2 波長変換システムの詳細]
[1.2.1 構成]
図3は、比較例に係る固体レーザシステム1における波長変換システム15のより詳細な構成例を概略的に示している。
【0056】
波長変換システム15は、集光レンズ61,62,63と、高反射ミラー16,83,86,87と、ダイクロイックミラー17,81,82,84,85と、第1のCLBO結晶18と、第2のCLBO結晶19とを含む構成であってもよい。
【0057】
集光レンズ61は、第2の固体レーザ装置12とダイクロイックミラー17との間の波長約1554nmの第2のパルスレーザ光71Bの光路上に配置されている。集光レンズ61は、ダイクロイックミラー17を介して、第2のパルスレーザ光71Bが第1のCLBO結晶18に対して、第1の固体レーザ装置11から出力された波長約257.5nmの第1のパルスレーザ光71Aのビームと重なり合って集光するように配置されている。
【0058】
集光レンズ62は、ダイクロイックミラー84とダイクロイックミラー85との間の波長約1554nmの第2のパルスレーザ光71Bの光路上に配置されている。集光レンズ62は、ダイクロイックミラー85を介して、第2のパルスレーザ光71Bが波長約220.9nmの第3のパルスレーザ光のビームと重なり合って集光するように配置されている。
【0059】
集光レンズ63は、第1の固体レーザ装置11とダイクロイックミラー17との間の波長約257.5nmの第1のパルスレーザ光71Aの光路上に配置されている。集光レンズ63は、ダイクロイックミラー17を介して、第1のパルスレーザ光71Aが第1のCLBO結晶18に対して、第2の固体レーザ装置12から出力された波長約1554nmの第2のパルスレーザ光71Bのビームと重なり合って集光するように配置されている。集光レンズ63は、波長約257.5nmの第1のパルスレーザ光71Aのビームの広がりが小さい場合には、構成から省略してもよい。
【0060】
高反射ミラー86は、ダイクロイックミラー84から反射された波長約220.9nmの第3のパルスレーザ光の光路上に配置されている。高反射ミラー86は、ダイクロイックミラー85を介して、波長約220.9nmの第3のパルスレーザ光が第2のCLBO結晶19に入射するように配置されている。高反射ミラー86には、波長約220.9nmの光を高反射する膜がコートされている。
【0061】
高反射ミラー87は、ダイクロイックミラー84を透過した波長約1554nmの第2のパルスレーザ光71Bの光路上に配置されている。高反射ミラー87は、ダイクロイックミラー85を介して、第2のパルスレーザ光71Bが第2のCLBO結晶19に入射するように配置されている。高反射ミラー87には、波長約1554nmの光を高反射する膜がコートされている。
【0062】
ダイクロイックミラー84は、ダイクロイックミラー81を透過した波長約220.9nmの第3のパルスレーザ光と波長約1554nmの第2のパルスレーザ光71Bとの光路上に配置されている。ダイクロイックミラー84には、波長約220.9nmの光を高反射し、波長約1554nmの光を高透過する膜がコートされている。
【0063】
ダイクロイックミラー85は、集光レンズ62を透過した波長約1554nmの第2のパルスレーザ光71Bとの光路上に配置されている。ダイクロイックミラー85には、波長約220.9nmの光を高透過し、波長約1554nmの光を高反射する膜がコートされている。
【0064】
[1.2.2 動作]
図4は、比較例に係る固体レーザシステム1における各種トリガ信号、及び各種バルスレーザ光に関するタイミングチャートの一例を概略的に示している。図4において、(A)は同期回路部13に対するトリガ信号Tr1のタイミングを示す。(B)は第1の半導体光増幅器23に対する第1のトリガ信号Tr11のタイミングを示す。(C)は第2の半導体光増幅器41に対する第2のトリガ信号Tr12のタイミングを示す。(D),(E)は第1のCLBO結晶18への入射光の入射タイミングを示す。特に(D)は波長約257.5nmの第1のパルスレーザ光71Aの第1のCLBO結晶18への入射タイミングを示す。(E)は波長約1554nmの第2のパルスレーザ光71Bの第1のCLBO結晶18への入射タイミングを示す。(F),(G)は第2のCLBO結晶19への入射光の入射タイミングを示す。特に(F)は波長約220.9nmの第3のパルスレーザ光の第2のCLBO結晶19への入射タイミングを示す。(G)は波長約1554nmの第2のパルスレーザ光71Bの第2のCLBO結晶19への入射タイミングを示す。(H)は第2のCLBO結晶19からの出射光の1つである波長約193.4nmの第4のパルスレーザ光71Cの第2のCLBO結晶19からの出射タイミングを示す。図4において、(A)〜(H)の横軸は時間を示す。(A)〜(C)の縦軸はトリガ信号のオン/オフ状態を示す。(D)〜(H)の縦軸は光強度を示す。(D)〜(H)における各パルスレーザ光のタイミングは、各パルスレーザ光の光強度がピークとなるタイミングを基準にして示している。
【0065】
トリガ信号Tr1が同期回路部13に入射すると、図4の(A),(B)に示したように、トリガ信号Tr1に対して固体レーザ制御部14が設定した第1の遅延時間Td1で第1のトリガ信号Tr11が出力される。また、図4の(A),(C)に示したように、トリガ信号Tr1に対して固体レーザ制御部14が設定した第2の遅延時間Td2で第2のトリガ信号Tr12が出力される。
【0066】
図4の(D),(E)に示したように、波長約257.5nmの第1のパルスレーザ光71Aと波長約1554nmの第2のパルスレーザ光71Bとが同じタイミングで第1のCLBO結晶18に入射し、両パルスレーザ光のビームは第1のCLBO結晶18上で重なり合う。
【0067】
第1のCLBO結晶18において、波長約257.5nmの第1のパルスレーザ光71Aと波長約1554nmの第2のパルスレーザ光71Bとが和周波発生過程によって波長約220.9nmの第3のパルスレーザ光に波長変換される。
【0068】
ダイクロイックミラー82によって、波長約257.5nmの第1のパルスレーザ光71Aは高反射され、波長約220.9nmの第3のパルスレーザ光と波長約1554nmの第2のパルスレーザ光71Bとが高透過する。
【0069】
次に、ダイクロイックミラー84によって、波長約220.9nmの第3のパルスレーザ光は高反射され、波長約1554nmの第2のパルスレーザ光71Bは高透過する。
【0070】
波長約220.9nmの第3のパルスレーザ光は、高反射ミラー86とダイクロイックミラー85とを介して、第2のCLBO結晶19へ入射する。
【0071】
一方、波長約1554nmの第2のパルスレーザ光71Bは、高反射ミラー87と、集光レンズ62と、ダイクロイックミラー85とを介して、第2のCLBO結晶19へ入射する。
【0072】
図4の(F),(G)に示したように、波長約220.9nmの第3のパルスレーザ光と波長約1554nmの第2のパルスレーザ光71Bとが同じタイミングで第2のCLBO結晶19に入射し、両パルスレーザ光のビームは第2のCLBO結晶19上で重なり合う。
【0073】
図4の(H)に示したように、第2のCLBO結晶19において、波長約220.9nmの第3のパルスレーザ光と波長約1554nmの第2のパルスレーザ光71Bとが、和周波発生過程によって波長約193.4nmの第4のパルスレーザ光71Cに波長変換される。
【0074】
[1.2.3 変形例]
図5は、比較例に係る固体レーザシステム1における波長変換システム15の一変形例を概略的に示している。
【0075】
波長変換システム15は、各パルスレーザ光の偏光方向を考慮して図5に示した波長変換システム150のように構成されてもよい。
【0076】
波長変換システム150は、図3の波長変換システム15に対して、1/2波長板88をさらに含んでいる。1/2波長板88は、例えばダイクロイックミラー84とダイクロイックミラー87との間における波長約1554nmの第2のパルスレーザ光71Bの光路上に配置されている。
【0077】
波長変換システム150では、第1の固体レーザ装置11と第2の固体レーザ装置12は、同一の偏光方向のパルスレーザ光を出射する。
【0078】
波長変換システム150では、第1のCLBO結晶18と第2のCLBO結晶19とを、互いの光学軸が直交するように配置する。
【0079】
例えば、第1のパルスレーザ光71Aの偏光方向と第2のパルスレーザ光71Bの偏光方向とを紙面に対して垂直な方向として、第1のCLBO結晶18に入射させる。
【0080】
第1のCLBO結晶18からは、波長約220.9nmの第3のパルスレーザ光が紙面と平行な偏光で出力される。
【0081】
第1のCLBO結晶18で波長変換に寄与しなかった第2のパルスレーザ光71Bは、ダイクロイックミラー81及びダイクロイックミラー84を透過し、1/2波長板88によって、偏光方向が90°回転して、紙面に対して平行な偏光方向となる。
【0082】
第2のCLBO結晶19には、紙面に対して平行な偏光方向の第2のパルスレーザ光71Bと紙面に対して平行な偏光方向の第3のパルスレーザ光とが入射する。第2のCLBO結晶19からは、和周波発生過程により紙面に対して垂直な波長約193.4nmの第4のパルスレーザ光71Cが出力される。
【0083】
[1.3 課題]
波長約257.5nmの第1のパルスレーザ光71Aを出力する第1の固体レーザ装置11は、Ybファイバ増幅器システム24と、固体増幅器であるYb:YAG結晶増幅器25と、波長約1030nmのパルスレーザ光を第4高調波光に変換するLBO結晶21とCLBO結晶22とを含んでいる。
【0084】
ところで、露光装置用レーザ装置では、レーザ光のスペクトル線幅を、色収差が無視できる程度となるまで狭帯域化する必要がある。このような狭帯域化されたスペクトル線幅を実現するためには、固体レーザシステム1の第1の固体レーザ装置11と第2の固体レーザ装置12とから出力されるそれぞれのパルスレーザ光のスペクトル線幅を狭くする必要がある。しかし、スペクトル線幅の狭いパルスレーザ光は、光ファイバ増幅器で増幅すると、誘導ブリルアン散乱(SBS:Stimulated Brillouin Scattering)が発生して、増幅が抑制されることがある。Ybファイバ増幅器システム24では、誘導ブリルアン散乱を抑制するため、パルスエネルギを高くすることが難しい。しかし、第1の固体レーザ装置11では、誘導ブリルアン散乱が発生しない固体増幅器によって、さらに、基本波である波長約1030nmの波長のパルスレーザ光のパルスエネルギを高くすることができる。その結果、第4高調波光に変換された波長約257.5nmの第1のパルスレーザ光71Aの出力も高くすることができる。
【0085】
しかし、波長約1554nmの波長域では、適当な固体増幅器が存在しないので、第2の固体レーザ装置12では、Erファイバ増幅器システム42で誘導ブリルアン散乱を抑制しつつ、波長約1554nmの第2のパルスレーザ光71Bを増幅する必要がある。このため、第2の固体レーザ装置12では、波長約1554nmの第2のパルスレーザ光71Bのパルスエネルギを高くすることが困難である。
【0086】
そのため、波長約193.4nmの第4のパルスレーザ光71Cのパルスエネルギを高くしようとすると、波長約1030nmの第4高調波である波長約257.5nmの第1のパルスレーザ光71Aのパルスエネルギを増やすことになる。
【0087】
しかし、波長約257.5nmの第1のパルスレーザ光71Aのパルスエネルギを増加させると、波長変換システム15の第1のCLBO結晶18での和周波発生過程において波長約1554nmの第2のパルスレーザ光71Bのパルスエネルギの消費量が増加する。その結果、第1のCLBO結晶18で消費されなかった波長約1554nmの第2のパルスレーザ光71Bのパルスエネルギが減少する。そのため、第2のCLBO結晶19に入射する第2のパルスレーザ光71Bの光強度が減少する。第2のCLBO結晶19では、その減少した波長約1554nmの第2のパルスレーザ光71Bを用いて波長約193.4nmの第4のパルスレーザ光71Cを生成することになる。
【0088】
このため、第1の固体レーザ装置11から出力される波長約257.5nmの第1のパルスレーザ光71Aのパルスエネルギを増加させたとしても、波長変換システム15における波長変換効率を十分に改善することが困難であった。
【0089】
[1.4 実施形態の概要]
上記の事情に鑑み、以下の各実施形態では、第2のパルスレーザ光71Bを、第1のCLBO結晶18に入射させる前の第1のタイミングで第2のCLBO結晶19に入射させる。そして、第2のパルスレーザ光71Bのうち和周波発生過程で使われずに、すなわち波長変換で消費されずに第2のCLBO結晶19を通過した残余光を、第1のタイミングよりも遅い第2のタイミングで第1のCLBO結晶18に入射させる。このように、第2のパルスレーザ光71Bを最初に第2のCLBO結晶19に入射させた後、次に、波長変換で消費されずに第2のCLBO結晶19を通過した第2のパルスレーザ光71Bの残余光を第1のCLBO結晶18に入射させる。これにより、第2のCLBO結晶19に入射する第2のパルスレーザ光71Bの光強度の減少を抑制した状態で第4のパルスレーザ光71Cを生成する。
【0090】
なお、以下の各実施形態では、上記比較例と同様に、第1の波長の第1のパルスレーザ光71Aが波長約257.5nmである場合を例に説明するが、これに限らず、第1の波長を、220nm以上400nm以下の範囲内の他の値としてもよい。また、第2の波長の第2のパルスレーザ光71Bが波長約1554nmである場合を例に説明するが、これに限らず、第2の波長は、1100nm以上2000nm以下の範囲内の他の値としてもよい。また、第4の波長の第4のパルスレーザ光71Cが波長約193.4nmである場合を例に説明するが、これに限らず、第4の波長は、150nm以上300nm以下の範囲内の他の値としてもよい。
【0091】
<2.実施形態1>(固体レーザシステムの第1の例)
次に、本開示の実施形態1に係る固体レーザシステムについて説明する。なお、以下では上記比較例に係る固体レーザシステム1の構成要素と略同じ部分については、同一符号を付し、適宜説明を省略する。
【0092】
[2.1 構成]
図6は、実施形態1に係る固体レーザシステム1Aの一構成例を概略的に示している。
【0093】
固体レーザシステム1Aは、上記比較例に係る固体レーザシステム1における波長変換システム15に代えて波長変換システム15Aを備えている。
【0094】
固体レーザシステム1Aは、第1のパルスレーザ光71Aが第1のCLBO結晶18に入射するタイミングと、第2のパルスレーザ光71Bが第2のCLBO結晶19に入射する第1のタイミングとが略同じとなるように構成されている。
【0095】
波長変換システム15Aは、第1のCLBO結晶18及び第2のCLBO結晶19と、集光レンズ210,211,212と、高反射ミラー410,411,412,413,414と、ダイクロイックミラー310,311,312,313,314と、コリメータレンズ510とを含む。
【0096】
集光レンズ210は、コリメータレンズ510とダイクロイックミラー313との間の波長約1554nmの第2のパルスレーザ光71Bの光路上に配置されている。図6の例では、集光レンズ210は、コリメータレンズ510と高反射ミラー412との間の光路上に配置されている。
【0097】
集光レンズ211は、第2の固体レーザ装置12とダイクロイックミラー310との間の波長約1554nmの第2のパルスレーザ光71Bの光路上に配置されている。
【0098】
集光レンズ212は、第1の固体レーザ装置11とダイクロイックミラー313との間の波長約257.5nmの第1のパルスレーザ光71Aの光路上に配置されている。図6の例では、集光レンズ212は、高反射ミラー410とダイクロイックミラー313との間の光路上に配置されている。なお、波長約257.5nmの第1のパルスレーザ光71Aのビームの広がりが小さい場合には、集光レンズ212を構成から省略してもよい。
【0099】
コリメータレンズ510は、ダイクロイックミラー312と集光レンズ210との間の波長約1554nmの第2のパルスレーザ光71Bの光路上に配置されている。コリメータレンズ510は、第2のCLBO結晶19から出力された波長約1554nmの第2のパルスレーザ光71Bがコリメートされるように配置されている。
【0100】
ダイクロイックミラー310は、集光レンズ211と第2のCLBO結晶19との間の波長約1554nmの第2のパルスレーザ光71Bの光路上であって、かつ、ダイクロイックミラー313を高反射した波長約220.9nmの第3のパルスレーザ光の光路上に配置されている。ダイクロイックミラー310には、波長約220.9nmの光を高反射し、波長約1554nmの光を高透過する膜がコートされている。ダイクロイックミラー310は、第2のCLBO結晶19における波長約1554nmの第2のパルスレーザ光71Bの集光ビームと波長約220.7nmのパルスレーザ光のビームとが重なり合うように配置されている。
【0101】
ダイクロイックミラー311は、第2のCLBO結晶19から出力された波長約193.4nm、波長約220.9nm及び波長約1554nmの各パルスレーザ光の光路上であって、反射光が高反射ミラー414に入射するように配置されている。ダイクロイックミラー311には、波長約193.4nmの光を高反射し、波長約220.9nm及び波長約1554nmの光を高透過する膜がコートされている。
【0102】
ダイクロイックミラー312は、ダイクロイックミラー311を透過した波長約220.9nm及び波長約1554nmの各パルスレーザ光の光路上であって、反射光が高反射ミラー411に入射するように配置されている。ダイクロイックミラー312には、波長約220.9nmの光を高透過し、波長約1554nmの光を高反射する膜がコートされている。
【0103】
ダイクロイックミラー313は、高反射ミラー411と第1のCLBO結晶18との間の波長約1554nmの第2のパルスレーザ光71Bの光路上に配置されている。ダイクロイックミラー313は、高反射ミラー412及び高反射ミラー413で反射された波長約1554nmの第2のパルスレーザ光71Bが入射するように配置されている。ダイクロイックミラー313には、波長約220.9nmの光を高透過し、波長約1554nmの光を高反射する膜がコートされている。ダイクロイックミラー313は、第1のCLBO結晶18における波長約1554nmの第2のパルスレーザ光71Bの集光ビームと波長約257.5nmの第1のパルスレーザ光71Aの集光ビームとが重なり合うように配置されている。
【0104】
ダイクロイックミラー314は、第1のCLBO結晶18から出力された波長約257.5nmの第1のパルスレーザ光71Aと波長約220.9nmの第3のパルスレーザ光と波長約1554nmの第2のパルスレーザ光71Bとの光路上であって、反射光がダイクロイックミラー310に入射するように配置されている。ダイクロイックミラー314には、波長約220.7nmの光を高反射し、波長約257.5nm及び波長約1554nmの光を高透過する膜がコートされている。
【0105】
高反射ミラー411,412,413は、ダイクロイックミラー312によって反射された波長約1554nmの第2のパルスレーザ光71Bの光路上に配置されている。高反射ミラー411,412,413は、波長約1554nmの第2のパルスレーザ光71Bがダイクロイックミラー313を介して第1のCLBO結晶18に入射するように配置されている。高反射ミラー411,412,143には、波長約1554nmの光を高反射する膜がコートされている。
【0106】
その他の構成は、上記比較例に係る固体レーザシステム1と略同様であってもよい。
【0107】
[2.2 動作]
固体レーザシステム1Aでは、まず、第2のCLBO結晶19に先に波長約1554nmの第2のパルスレーザ光71Bを入射させる。次に、第2のCLBO結晶19において波長変換で消費されなかった波長約1554nmの第2のパルスレーザ光71Bを、第1のCLBO結晶18に入射させる。次に、第1のCLBO結晶18において波長変換された波長約220.9nmの第3のパルスレーザ光を第2のCLBO結晶19に入射させ、先に入射された波長約1554nmの第2のパルスレーザ光71Bとの和周波により波長約193.4nmの第4のパルスレーザ光71Cを出力する。
【0108】
波長約257.5nmの第1のパルスレーザ光71Aが第1のCLBO結晶18に入射するタイミングと波長約1554nmの第2のパルスレーザ光71Bが第2のCLBO結晶19に入射するタイミングとが一致するように同期回路部13に、第1及び第2の遅延時間Td1,Td2を示す遅延データTr10が設定される。
【0109】
ここで、第2のCLBO結晶19から第1のCLBO結晶18に至るまでの、波長約1554nmの第2のパルスレーザ光71Bの光路長をL1とする。また、第1のCLBO結晶18から第2のCLBO結晶19に至るまでの波長約220.9nmの第3のパルスレーザ光の光路長をL2とする。
【0110】
第2のCLBO結晶19から第1のCLBO結晶18を経由して第2のCLBO結晶19に至るまでの光路長Lは、以下の式で表される。
L=L1+L2
【0111】
光路長Lを進む光の時間Topは、以下の式で表される。
Top=L/c=T1+T2=L1/c+L2/c
【0112】
ここで、cは光速 T1及びT2はそれぞれ光路L1及び光路L2を光が進む時間である。例えば、光路長Lは0.9m以下が好ましい。光路長Lが0.9mの場合は、Top=3nsとなる。Tdは、第2のCLBO結晶19に入射する波長約1554nmの第2のパルスレーザ光71Bの入射タイミングと第1のCLBO結晶18に入射する波長約257.5nmの第1のパルスレーザ光71Aの入射タイミングとのタイミング差とする。
【0113】
第1の遅延時間Td1及び第2の遅延時間Td2は、第1のCLBO結晶18に入射する波長約257.5nmの第1のパルスレーザ光71Aの入射タイミングと第2のCLBO結晶19に入射する波長約1554nmの第2のパルスレーザ光71Bの入射タイミングとが略一致するように設定される。この場合はTd=0秒となる。
【0114】
図7は、実施形態1に係る固体レーザシステム1Aにおける各種トリガ信号、及び各種バルスレーザ光に関するタイミングチャートの一例を概略的に示している。図7の(A)〜(H)のタイミングが示す意味は、図4の(A)〜(H)と同様である。
【0115】
図7は、波長約257.5nmの第1のパルスレーザ光71Aが第1のCLBO結晶18に入射する入射タイミングと波長約1554nmの第2のパルスレーザ光71Bが第2のCLBO結晶19に入射する入射タイミングとを略一致させた場合、すなわちTd=0の場合のタイミングチャートである。
【0116】
トリガ信号Tr1が同期回路部13に入射すると、図7の(A),(B)に示したように、トリガ信号Tr1に対して固体レーザ制御部14が設定した第1の遅延時間Td1で第1のトリガ信号Tr11が出力される。また、図7の(A),(C)に示したように、トリガ信号Tr1に対して固体レーザ制御部14が設定した第2の遅延時間Td2で第2のトリガ信号Tr12が出力される。
【0117】
図7の(D),(G)に示したように、第1のCLBO結晶18に入射する波長約257.5nmの第1のパルスレーザ光71Aの入射タイミングと第2のCLBO結晶19に入射する波長約1554nmの第2のパルスレーザ光71Bの入射タイミングとが略一致する。
【0118】
図7の(D),(E)に示したように、第1のCLBO結晶18において、波長約1554nmの第2のパルスレーザ光71Bは波長約257.5nmの第1のパルスレーザ光71Aに比べてT1=L1/cだけ遅れて入射する。第1のCLBO結晶18では、第1のCLBO結晶18において、波長約257.5nmの第1のパルスレーザ光71Aと波長約1554nmの第2のパルスレーザ光71Bとが和周波発生過程によって波長約220.9nmの第3のパルスレーザ光に波長変換される。
【0119】
図7の(F),(G)に示したように、第2のCLBO結晶19において、波長約220.9nmの第3のパルスレーザ光は波長約1554nmの第2のパルスレーザ光71Bに比べてTop=L/cだけ遅れて入射する。
【0120】
図7の(H)に示したように、第2のCLBO結晶19において、波長約220.9nmの第3のパルスレーザ光と波長約1554nmの第2のパルスレーザ光71Bとが、和周波発生過程によって波長約193.4nmの第4のパルスレーザ光71Cに波長変換される。
【0121】
例えば、第1の固体レーザ装置11から出力されるパルスレーザ光と第2の固体レーザ装置12から出力されるパルスレーザ光とのそれぞれのパルス幅をDとする。固体レーザシステム1Aでは、パルス幅Dに対して、第2のCLBO結晶19における第3のパルスレーザ光の第2のパルスレーザ光71Bに対する遅れTopの割合Er=Top/D分だけ、波長変換効率が低下し得る。
【0122】
ここで、第1の固体レーザ装置11から出力される第1のパルスレーザ光71Aと第2の固体レーザ装置12から出力される第2のパルスレーザ光71Bとのそれぞれのパルス幅Dが約6nsであり、Top=3nsの場合を仮定する。この場合、Er=3/6*100=50%であり、第2のパルスレーザ光71Bと第3のパルスレーザ光とのタイミングのずれによる波長変換効率の低下は抑制される。Erの値は、好ましくは、Er=50%以下がよい。
【0123】
その他の動作は、上記比較例に係る固体レーザシステム1と略同様であってもよい。
【0124】
[2.3 作用・効果]
実施形態1の固体レーザシステム1Aによれば、第2のCLBO結晶19に先に波長約1554nmの第2のパルスレーザ光71Bを入射させ、次に、第2のCLBO結晶19での波長変換で消費されなかった第2のパルスレーザ光71Bの残余光を第1のCLBO結晶18に入射させることによって、第2のパルスレーザ光71Bの利用効率を大きく改善することができる。
【0125】
また、第1及び第2のパルスレーザ光71A,71Bの各パルス幅Dに対して、第2のCLBO結晶19における第3のパルスレーザ光の第2のパルスレーザ光71Bに対する遅れTopの割合Er=Top/Dを小さくし得る。これによって、第2のCLBO結晶19における第2のパルスレーザ光71Bと第3のパルスレーザ光との入射タイミングの差による波長変換効率の低下を抑制できる。
【0126】
以上のことから、波長変換システム15Aの波長変換効率を改善することができる。
【0127】
<3.実施形態2>(固体レーザシステムの第2の例)
次に、本開示の実施形態2に係る固体レーザシステムについて説明する。なお、以下では上記比較例、又は実施形態1に係る固体レーザシステムの構成要素と略同じ部分については、同一符号を付し、適宜説明を省略する。
【0128】
[3.1 構成]
図8は、実施形態2に係る固体レーザシステム1Bの一構成例を概略的に示している。
【0129】
固体レーザシステム1Bは、上記比較例に係る固体レーザシステム1における波長変換システム15に代えて波長変換システム15Bを備えている。
【0130】
固体レーザシステム1Bは、第1のパルスレーザ光71Aが第1のCLBO結晶18に入射するタイミングと、第2のCLBO結晶19を通過した第2のパルスレーザ光71Bの残余光が第1のCLBO結晶18に入射する第2のタイミングとが略同じとなるように構成されている。
【0131】
固体レーザシステム1Bの構成は、第1の固体レーザ装置11からの第1のパルスレーザ光71Aの出射タイミングと、第2の固体レーザ装置12からの第2のパルスレーザ光71Bの出射タイミングとに関する構成以外は、実施形態1に係る固体レーザシステム1Aと略同様であってもよい。
【0132】
[3.2 動作、作用・効果]
固体レーザシステム1Bでは、第1及び第2の遅延時間Td1,Td2は、第1のCLBO結晶18への第1のパルスレーザ光71Aの入射タイミングと第1のCLBO結晶18への第2のパルスレーザ光71Bの入射タイミングとが略一致するようにあらかじめ設定される。
【0133】
図9は、実施形態2に係る固体レーザシステム1Bにおける各種トリガ信号、及び各種バルスレーザ光に関するタイミングチャートの一例を概略的に示している。図9の(A)〜(H)のタイミングが示す意味は、図4の(A)〜(H)と同様である。
【0134】
図9は、波長約257.5nmの第1のパルスレーザ光71Aが第1のCLBO結晶18に入射する入射タイミングと波長約1554nmの第2のパルスレーザ光71Bが第1のCLBO結晶18に入射する入射タイミングとを略一致させた場合、すなわちTd=T1の場合のタイミングチャートである。
【0135】
トリガ信号Tr1が同期回路部13に入射すると、図9の(A),(B)に示したように、トリガ信号Tr1に対して固体レーザ制御部14が設定した第1の遅延時間Td1で第1のトリガ信号Tr11が出力される。また、図9の(A),(C)に示したように、トリガ信号Tr1に対して固体レーザ制御部14が設定した第2の遅延時間Td2で第2のトリガ信号Tr12が出力される。
【0136】
図9の(D),(E)に示したように、第1のCLBO結晶18に対して、波長約257.5nmの第1のパルスレーザ光71Aと波長約1554nmの第2のパルスレーザ光71Bとが、入射タイミングが略一致するようにして入射する。
【0137】
図9の(F)に示したように、第1のCLBO結晶18において、波長約1554nmの第2のパルスレーザ光71Bと波長約257.5nmの第1のパルスレーザ光71Aとのビームが重なり合い、和周波発生過程によって波長約220.9nmの第3のパルスレーザ光に波長変換される。
【0138】
図9の(F),(G)に示したように、第2のCLBO結晶19において、波長約220.9nmの第3のパルスレーザ光は波長約1554nmの第2のパルスレーザ光71Bに比べてTop=L/cだけ遅れて入射する。
【0139】
図9の(H)に示したように、第2のCLBO結晶19において、波長約220.9nmの第3のパルスレーザ光と波長約1554nmの第2のパルスレーザ光71Bとが、和周波発生過程によって波長約193.4nmの第4のパルスレーザ光71Cに波長変換される。
【0140】
例えば、第1の固体レーザ装置11から出力されるパルスレーザ光と第2の固体レーザ装置12から出力されるパルスレーザ光とのそれぞれのパルス幅をDとする。固体レーザシステム1Bでは、パルス幅Dに対して、第2のCLBO結晶19における第3のパルスレーザ光の第2のパルスレーザ光71Bに対する遅れTopの割合Er=Top/D分だけ、波長変換効率が低下し得る。
【0141】
ここで、第1の固体レーザ装置11から出力される第1のパルスレーザ光71Aと第2の固体レーザ装置12から出力される第2のパルスレーザ光71Bとのそれぞれのパルス幅Dが約6nsであり、Top=3nsの場合を仮定する。この場合、Er=3/6*100=50%であり、第2のパルスレーザ光71Bと第3のパルスレーザ光とのタイミングのずれによる波長変換効率の低下は抑制される。Erの値は、好ましくは、Er=50%以下がよい。
【0142】
その他の動作、及び作用・効果は、実施形態1に係る固体レーザシステム1Aと略同様となり得る。
【0143】
<4.実施形態3>(リング状の光路を有する波長変換システム)
次に、本開示の実施形態3に係る固体レーザシステムについて説明する。なお、以下では上記比較例、又は実施形態1若しくは2に係る固体レーザシステムの構成要素と略同じ部分については、同一符号を付し、適宜説明を省略する。
【0144】
[4.1 構成]
図10は、実施形態3に係る固体レーザシステム1Cの一構成例を概略的に示している。
【0145】
固体レーザシステム1Cは、上記比較例に係る固体レーザシステム1における波長変換システム15に代えて波長変換システム15Cを備えている。
【0146】
波長変換システム15Cは、第2の固体レーザ装置12と第2のCLBO結晶19との間における第2のパルスレーザ光71Bの光路と第3のパルスレーザ光の光路とが交差する位置に配置された第1のダイクロイックミラーを含んでいる。第1のダイクロイックミラーは、第2のパルスレーザ光71Bを第2のCLBO結晶19に向けて透過させ、第3のパルスレーザ光を第2のCLBO結晶19に向けて反射させる。この第1のダイクロイックミラーは、後述するダイクロイックミラー321であってもよい。
【0147】
また、波長変換システム15Cは、第2のパルスレーザ光71Bの残余光の光路上に配置され、第2のパルスレーザ光71Bの残余光を反射させる第2のダイクロイックミラーを含んでいる。この第2のダイクロイックミラーは、後述するダイクロイックミラー323であってもよい。
【0148】
また、波長変換システム15Cは、第2のダイクロイックミラーで反射された後の第2のパルスレーザ光71Bの残余光の光路上に配置され、第2のパルスレーザ光71Bの残余光を反射させる反射ミラーを含んでいる。この反射ミラーは、後述する高反射ミラー420であってもよい。
【0149】
また、波長変換システム15Cは、上記反射ミラーで反射された後の第2のパルスレーザ光71Bの残余光の光路と第1のパルスレーザ光71Aの光路とが交差する位置に配置され、第1のパルスレーザ光71Aを第1のCLBO結晶18に向けて反射させ、第2のパルスレーザ光71Bの残余光を第1のCLBO結晶18に向けて透過させる第3のダイクロイックミラーを含んでいる。この第3のダイクロイックミラーは、後述するダイクロイックミラー320であってもよい。
【0150】
波長変換システム15Cは、集光レンズ220,221,222と、高反射ミラー420,421,422と、ダイクロイックミラー320,321,322,323と、第1のCLBO結晶18と、第2のCLBO結晶19と、コリメータレンズ520とを含む。
【0151】
波長変換システム15Cでは、ダイクロイックミラー320,321,322,323と、高反射ミラー420,421とによってリング状の光路が形成されている。
【0152】
第1のCLBO結晶18は、ダイクロイックミラー320とダイクロイックミラー321との間の光路上に配置されている。
【0153】
第2のCLBO結晶19は、ダイクロイックミラー321とダイクロイックミラー322との間の光路上に配置されている。
【0154】
コリメータレンズ520は、ダイクロイックミラー323と高反射ミラー421との間の光路上であって、第2のCLBO結晶19で消費されなかった波長約1554nmの第2のパルスレーザ光71Bをコリメートするように配置されている。
【0155】
集光レンズ220は、高反射ミラー421と高反射ミラー420との間の光路上であって、コリメータレンズ520によってコリメートされた波長約1554nmの第2のパルスレーザ光71Bを第1のCLBO結晶18に対して集光するように配置されている。
【0156】
ダイクロイックミラー321には、波長約1554nm及び257.5nmの光を高透過し、波長約220.9nmの光を高反射する膜がコートされている。
【0157】
ダイクロイックミラー322は、第2のCLBO結晶19とダイクロイックミラー323との間の光路上に配置されている。ダイクロイックミラー322には、波長約1554nm及び波長約220.9nmの光を高透過し、波長約193.4nmの光を高反射する膜がコートされている。
【0158】
ダイクロイックミラー323は、波長約1554nmの第2のパルスレーザ光71B、及び波長約220.9nmの第3のパルスレーザ光の光路上に配置されている。ダイクロイックミラー323には、波長約220.9nmの光を高透過し、波長約1554nmの光を高反射する膜がコートされている。
【0159】
高反射ミラー420は、高反射ミラー421とダイクロイックミラー320との間の光路上であって、高反射ミラー421で反射された波長約1554nmの第2のパルスレーザ光71Bをダイクロイックミラー320に向けて反射するように配置されている。
【0160】
ダイクロイックミラー320は、第1の固体レーザ装置11から出力された波長約257.5nmの第1のパルスレーザ光71Aを高反射する。また、ダイクロイックミラー320は、高反射ミラー420で反射された波長約1554nmの第2のパルスレーザ光71Bを高透過し、波長約257.5nmの第1のパルスレーザ光71Aと波長約1554nmの第2のパルスレーザ光71Bとのビームが第1のCLBO結晶18において重なるように配置されている。ダイクロイックミラー320には、波長約257.5nmの光を高反射し、波長約1554nmの光を高透過する膜がコートされている。
【0161】
高反射ミラー422は、波長約193.4nmの第4のパルスレーザ光71Cを外部に出力するように配置されている。高反射ミラー422には、波長約193.4nmの光を高反射する膜がコートされている。
【0162】
集光レンズ222は、第1の固体レーザ装置11とダイクロイックミラー320との間の光路上に配置されている。集光レンズ222は、第1の固体レーザ装置11から出力された波長約257.5nmの第1のパルスレーザ光71Aが、ダイクロイックミラー320を介して第1のCLBO結晶18において波長約1554nmの第2のパルスレーザ光71Bの集光ビームと重なって集光するように配置されている。
【0163】
集光レンズ221は、波長約1554nmの第2のパルスレーザ光71Bが、ダイクロイックミラー321を介して、第2のCLBO結晶19で波長約220.9nmの第3のパルスレーザ光の光ビームと重なって集光するように配置されている。
【0164】
波長変換システム15Cにおける第2のCLBO結晶19から第1のCLBO結晶18を経由して第2のCLBO結晶19に至るまでの光路の光路長Lは、ダイクロイックミラー320,321,322,323と高反射ミラー420,421とによるリング状の光路の光路長となる。
【0165】
同期回路部13のトリガ信号Tr1に対する第1及び第2のトリガ信号Tr11,Tr12のそれぞれの第1及び第2の遅延時間Td1,Td2の設定は、上記実施形態1又は上記実施形態2と略同様であってもよい。
【0166】
すなわち、図7に示した実施形態1のタイミングと略同様に、第1のCLBO結晶18に入射する波長約257.5nmの第1のパルスレーザ光71Aの入射タイミングと第2のCLBO結晶19に入射する波長約1554nmの第2のパルスレーザ光71Bの入射タイミングとが略一致するように第1及び第2の遅延時間Td1,Td2を設定してもよい。
【0167】
または、図9に示した実施形態2のタイミングと略同様に、第1のCLBO結晶18に入射する波長約257.5nmの第1のパルスレーザ光71Aの入射タイミングと波長約1554nmの第2のパルスレーザ光71Bの入射タイミングとが略一致するように第1及び第2の遅延時間Td1,Td2を設定してもよい。
【0168】
その他の構成は、上記比較例、又は実施形態1若しくは実施形態2に係る固体レーザシステムと略同様であってもよい。
【0169】
[4.2 動作]
第1の固体レーザ装置11から出力された波長約257.5nmの第1のパルスレーザ光71Aは、集光レンズ222によって、ダイクロイックミラー320を介して第1のCLBO結晶18に集光される。
【0170】
一方、第2のCLBO結晶19で波長変換に利用されなかった波長約1554nmの第2のパルスレーザ光71Bは、高反射ミラー420とダイクロイックミラー320とを介して、第1のCLBO結晶18に集光された波長約257.5nmの第1のパルスレーザ光71Aのビームと重なるように、集光レンズ220によって集光される。その結果、和周波発生過程によって、両パルスレーザ光の一部が波長約220.9nmの第3のパルスレーザ光に変換される。
【0171】
第2の固体レーザ装置12から出力された波長約1554nmの第2のパルスレーザ光71Bは、集光レンズ221によって、ダイクロイックミラー321を介して、第2のCLBO結晶19に集光される。
【0172】
一方、波長約220.9nmの第3のパルスレーザ光は、ダイクロイックミラー321を介して、第2のCLBO結晶19に入射し、波長約1554nmの第2のパルスレーザ光71Bと重なりあう。その結果、和周波発生過程によって、両パルスレーザ光の一部が波長約193.4nmの第4のパルスレーザ光71Cに変換される。
【0173】
第2のCLBO結晶19からは、波長約193.4nmの第4のパルスレーザ光71Cと、波長変換に利用されなかった波長約220.9nmの第3のパルスレーザ光と、波長変換に利用されなかった波長約1554nmの第2のパルスレーザ光71Bとが出力される。
【0174】
ダイクロイックミラー322によって、波長約193.4nmの第4のパルスレーザ光71Cは、高反射ミラー422を介して、出力される。
【0175】
ダイクロイックミラー322を透過した波長約220.9nmの第3のパルスレーザ光は、ダイクロイックミラー323を高透過する。ダイクロイックミラー322を透過した波長約1554nmの第2のパルスレーザ光71Bは、ダイクロイックミラー323で高反射される。
【0176】
ダイクロイックミラー323で高反射された波長約1554nmの第2のパルスレーザ光71Bは、コリメータレンズ520によってコリメートされる。
【0177】
波長約1554nmの第2のパルスレーザ光71Bは、高反射ミラー421を介して集光レンズ220によって、高反射ミラー20及びダイクロイックミラー320を介して第1のCLBO結晶18に対して波長約257.5nmの第1のパルスレーザ光71Aのビームと重なって集光する。
【0178】
その他の動作は、上記比較例、又は実施形態1若しくは実施形態2に係る固体レーザシステムと略同様であってもよい。
【0179】
[4.3 作用・効果]
実施形態3の固体レーザシステム1Cによれば、ダイクロイックミラー320,321,322,323と、高反射ミラー420,421とによって形成されたリング状の光路上に第1のCLBO結晶18と第2のCLBO結晶19とが配置される。これにより、図6の光路の構成に比べて、第2のCLBO結晶19から第1のCLBO結晶18を経由して第2のCLBO結晶19に至るまでの光路長Lを短くすることができる。その結果、第2のCLBO結晶19における波長約1554nmの第2のパルスレーザ光71Bに対する波長約220.9nmの第3のパルスレーザ光の遅れTopをより小さくすることができる。その結果、固体レーザシステム1Cによれば、図6の固体レーザシステム1Aに比べて、波長変換効率が改善される。
【0180】
その他の作用・効果は、上記比較例、又は実施形態1若しくは2に係る固体レーザシステムと略同様であってもよい。
【0181】
(その他)
波長変換システム15Cにおいて、高反射ミラー421を構成から省き、ダイクロイックミラー320,321,322,323と、高反射ミラー420とによって略三角形状の光路を形成してもよい。これにより、光路長Lをさらに短くすることができる。
【0182】
<5.実施形態4>(波長変換効率の最適化手法)
次に、本開示の実施形態4に係る固体レーザシステムについて説明する。なお、以下では上記比較例、又は実施形態1ないし3に係る固体レーザシステムの構成要素と略同じ部分については、同一符号を付し、適宜説明を省略する。
【0183】
[5.1 構成・動作]
図11は、実施形態4に係る固体レーザシステムにおける各種トリガ信号、及び各種バルスレーザ光に関するタイミングチャートの一例を概略的に示している。図11の(A)〜(H)のタイミングが示す意味は、図4の(A)〜(H)と同様である。
【0184】
実施形態4に係る固体レーザシステムの構成は、第1の固体レーザ装置11からの第1のパルスレーザ光71Aの出射タイミングと、第2の固体レーザ装置12からの第2のパルスレーザ光71Bの出射タイミングとに関する構成以外は、実施形態1に係る固体レーザシステム1Aと略同様であってもよい。
【0185】
実施形態4に係る固体レーザシステムでは、実施形態1に係る固体レーザシステム1Aと略同様に、第2のパルスレーザ光71Bを、第1のCLBO結晶18に入射させる前の第1のタイミングで第2のCLBO結晶19に入射させる。そして、第2のパルスレーザ光71Bのうち和周波発生過程で使われずに、すなわち波長変換で消費されずに第2のCLBO結晶19を通過した残余光を、第1のタイミングよりも遅い第2のタイミングで第1のCLBO結晶18に入射させる。
【0186】
ここで、実施形態4に係る固体レーザシステムでは、第1のパルスレーザ光71Aが第1のCLBO結晶18に入射するタイミングは、第1のタイミングと第2のタイミングとの間のタイミングである。すなわち、実施形態4に係る固体レーザシステムでは、第1のパルスレーザ光71Aが第1のCLBO結晶18に入射するタイミングを、第2のパルスレーザ光71Bが第2のCLBO結晶19を通過した後、第1のCLBO結晶18に到達する前のタイミングに設定する。第1のパルスレーザ光71Aが第1のCLBO結晶18に入射するタイミングは、第1のタイミングと第2のタイミングとの間の中間のタイミングであることが好ましい。
【0187】
ここで、第2のCLBO結晶19に入射する波長約1554nmの第2のパルスレーザ光71Bの入射タイミングと第1のCLBO結晶18に入射する波長約257.5nmの第1のパルスレーザ光71Aの入射タイミングとの差をTdとする。波長約1554nmの第2のパルスレーザ光71Bが第2のCLBO結晶19から第1のCLBO結晶18に至るまでの光路長を進む時間をT1とする。
【0188】
図12は、実施形態4に係る固体レーザシステムにおける波長変換システムの波長変換効率の一例を概略的に示している。図12において、横軸はTd、縦軸は波長変換システムの波長変換効率Effを示す。
【0189】
図12に示したように、Tdと波長変換効率Effとの関係から、Tdの範囲は、0≦Td≦T1であることが好ましい。より好ましいTdの値は、Td=T1/2である。
【0190】
実際には、波長約1554nmの第2のパルスレーザ光71Bと波長約257.5nmの第1のパルスレーザ光71Aのパルス波形によって、最大の変換効率となるTdはT1/2から多少ずれることがある。
【0191】
最大の変換効率とするために、第1の固体レーザ装置11に対する第1のトリガ信号Tr11と第2の固体レーザ装置12に対する第2のトリガ信号Tr12との入力タイミングの差を変えて、最大の変換効率となる第1のトリガ信号Tr11と第2のトリガ信号Tr12とのタイミングを差を求めて、同期回路部13にそれぞれの第1及び第2の遅延時間Td1,Td2を設定してもよい。
【0192】
その他の構成、及び動作は、上記比較例、又は実施形態1ないし3に係る固体レーザシステムと略同様であってもよい。
【0193】
[5.2 作用・効果]
実施形態4の固体レーザシステムによれば、波長変換システムの波長変換効率をより改善することができる。
【0194】
その他の作用・効果は、上記比較例、又は実施形態1ないし3に係る固体レーザシステムと略同様であってもよい。
【0195】
<6.実施形態5>(偏光方向を考慮した固体レーザシステムの第1の例)
次に、本開示の実施形態5に係る固体レーザシステムについて説明する。なお、以下では上記比較例、又は実施形態1ないし4に係る固体レーザシステムの構成要素と略同じ部分については、同一符号を付し、適宜説明を省略する。
【0196】
[6.1 構成]
図13は、実施形態5に係る固体レーザシステム1Dの一構成例を概略的に示している。
【0197】
固体レーザシステム1Dは、上記比較例に係る固体レーザシステム1における波長変換システム15に代えて波長変換システム15Dを備えている。
【0198】
波長変換システム15Dは、図6の波長変換システム15Aに対して各パルスレーザ光の偏光方向を考慮した構成とされている。
【0199】
波長変換システム15Dは、図6の波長変換システム15Aに対して、1/2波長板610をさらに含んでいる。1/2波長板610は、第2のパルスレーザ光71Bの残余光の光路上における第1のCLBO結晶18と第2のCLBO結晶19との間に配置されている。図13の例では、1/2波長板610は、コリメータレンズ510と集光レンズ210との間における第2のパルスレーザ光71Bの残余光の光路上に配置されている。
【0200】
固体レーザシステム1Dでは、第1の固体レーザ装置11は、第1の偏光方向に偏光した第1のパルスレーザ光71Aを出力する。第2の固体レーザ装置12は、第1の偏光方向に直交する第2の偏光方向に偏光した第2のパルスレーザ光71Bを出力する。
【0201】
波長変換システム15Dでは、第1のCLBO結晶18の光学軸と第2のCLBO結晶19の光学軸とが互いに直交するように配置されている。
【0202】
[6.2 動作、作用・効果]
固体レーザシステム1Dでは、第1のパルスレーザ光71Aと第2のパルスレーザ光71Bとを互いの偏光方向が直交するように波長変換システム15Dに入射させる。
【0203】
例えば、第1のパルスレーザ光71Aは、紙面に対して垂直な方向の偏光で第1のCLBO結晶18に入射する。一方、第2のパルスレーザ光71Bは、偏光方向が紙面に対して平行な偏光で、第2のCLBO結晶19に入射する。第2のCLBO結晶19で波長変換に寄与しなかった第2のパルスレーザ光71Bは、ダイクロイックミラー311,312と高反射ミラー411とを介してコリメータレンズ510によって平行光に変換される。この第2のパルスレーザ光71Bは、1/2波長板610によって、偏光方向が90°回転して、紙面に対して垂直な偏光方向となる。
【0204】
この第2のパルスレーザ光71Bと第1のパルスレーザ光71Aは共に、紙面に対して垂直な方向の偏光で第1のCLBO結晶18に入射し、和周波により紙面に対して平行な第3のパルスレーザ光に変換される。
【0205】
第3のパルスレーザ光と第2のパルスレーザ光71Bとが共に、紙面に対して平行な偏光で、第2のCLBO結晶19に入射し、和周波により、紙面に対して垂直な波長約193.4nmの第4のパルスレーザ光71Cが出力される。
【0206】
その他の構成、動作及び作用・効果は、上記比較例、又は実施形態1ないし4に係る固体レーザシステムと略同様であってもよい。
【0207】
<7.実施形態6>(偏光方向を考慮した固体レーザシステムの第2の例)
次に、本開示の実施形態6に係る固体レーザシステムについて説明する。なお、以下では上記比較例、又は実施形態1ないし5に係る固体レーザシステムの構成要素と略同じ部分については、同一符号を付し、適宜説明を省略する。
【0208】
[7.1 構成]
図14は、実施形態6に係る固体レーザシステム1Eの一構成例を概略的に示している。
【0209】
固体レーザシステム1Eは、上記比較例に係る固体レーザシステム1における波長変換システム15に代えて波長変換システム15Eを備えている。
【0210】
波長変換システム15Eは、図10の波長変換システム15Cに対して各パルスレーザ光の偏光方向を考慮した構成とされている。
【0211】
波長変換システム15Eは、図10の波長変換システム15Cに対して、1/2波長板610をさらに含んでいる。1/2波長板610は、第2のパルスレーザ光71Bの残余光の光路上における第1のCLBO結晶18と第2のCLBO結晶19との間に配置されている。図14の例では、1/2波長板610は、コリメータレンズ520と集光レンズ220との間における第2のパルスレーザ光71Bの残余光の光路上に配置されている。
【0212】
固体レーザシステム1Eでは、第1の固体レーザ装置11は、第1の偏光方向に偏光した第1のパルスレーザ光71Aを出力する。第2の固体レーザ装置12は、第1の偏光方向に直交する第2の偏光方向に偏光した第2のパルスレーザ光71Bを出力する。
【0213】
波長変換システム15Eでは、第1のCLBO結晶18の光学軸と第2のCLBO結晶19の光学軸とが互いに直交するように配置されている。
【0214】
[7.2 動作、作用・効果]
固体レーザシステム1Eでは、第1のパルスレーザ光71Aと第2のパルスレーザ光71Bとを互いの偏光方向が直交するように波長変換システム15Eに入射させる。
【0215】
例えば、第1のパルスレーザ光71Aは、紙面に対して垂直な方向の偏光で第1のCLBO結晶18に入射する。一方、第2のパルスレーザ光71Bは、偏光方向が紙面に対して平行な偏光で、第2のCLBO結晶19に入射する。第2のCLBO結晶19で波長変換に寄与しなかった第2のパルスレーザ光71Bは、ダイクロイックミラー322及びダイクロイックミラー323を介してコリメータレンズ520によって平行光に変換される。この第2のパルスレーザ光71Bは、1/2波長板610によって、偏光方向が90°回転して、紙面に対して垂直な偏光方向となる。
【0216】
この第2のパルスレーザ光71Bと第1のパルスレーザ光71Aは共に、紙面に対して垂直な方向の偏光で第1のCLBO結晶18に入射し、和周波により紙面に対して平行な第3のパルスレーザ光に変換される。
【0217】
第3のパルスレーザ光と第2のパルスレーザ光71Bとが共に、紙面に対して平行な偏光で、第2のCLBO結晶19に入射し、和周波により、紙面に対して垂直な波長約193.4nmの第4のパルスレーザ光71Cが出力される。
【0218】
その他の構成、動作及び作用・効果は、上記比較例、又は実施形態1ないし5に係る固体レーザシステムと略同様であってもよい。
【0219】
<8.実施形態7>(半導体レーザと半導体光増幅器との構成例)
次に、本開示の実施形態6に係る固体レーザシステムについて説明する。なお、以下では上記比較例、又は実施形態1ないし5に係る固体レーザシステムの構成要素と略同じ部分については、同一符号を付し、適宜説明を省略する。
【0220】
[8.1 構成]
図15は、第1の半導体レーザ20と第1の半導体光増幅器23との一構成例を概略的に示している。なお、以下では、第1の半導体レーザ20と第1の半導体光増幅器23との構成例を説明するが、第2の半導体レーザ40と第2の半導体光増幅器41とについても、略同様の構成であってもよい。
【0221】
第1の半導体レーザ20は、半導体レーザ制御部130と、半導体素子131と、温度センサ132と、ペルチェ素子133と、温度制御器134と、電流制御器135とを含む。半導体素子131は、活性層136と、グレーティング137とを含む。例えば、第1の半導体レーザ20は、CW発振であって、シングル縦モードで発振する分布帰還型レーザであってもよい。
【0222】
第1の半導体光増幅器23は、半導体素子141と、電流制御器143と、パルス波形生成器140とを含む。半導体素子141は、活性層142を含む。
【0223】
その他の構成は、上記比較例、又は実施形態1ないし6に係る固体レーザシステムと略同様であってもよい。
【0224】
[8.2 動作]
半導体レーザ制御部130は、半導体素子131が所望の発振波長、ここでは波長約1030nmに対応する温度Tλとなるような温度設定値を温度制御器134に送信する。
【0225】
温度制御器134は、温度センサ132の温度がTλとなるように、ペルチェ素子133に流れる電流を制御する。
【0226】
半導体レーザ制御部130は、所定の電流設定値を電流制御器135に送信する。
【0227】
半導体素子131には、一定の電流が流れ、波長λのCWレーザ光が出力される。CWレーザ光は、第1の半導体光増幅器23の半導体素子141の活性層142に入射する。
【0228】
パルス波形生成器140は、同期回路部13が受信した第1のトリガ信号Tr11に同期して、増幅されるパルス波形に応じたパルス波形の電流制御信号140iを電流制御器143に出力する。半導体素子141には、電流制御信号140iのパルス波形に応じた電流が流れる。その結果、第1の半導体レーザ20のシード光がパルス増幅され、半導体素子141の出力側から増幅されたパルスレーザ光が出力される。
【0229】
その他の動作は、上記比較例、又は実施形態1ないし6に係る固体レーザシステムと略同様であってもよい。
【0230】
(その他)
半導体光増幅器の代わりに、偏光子とEOポッケルスセルとを組合せた光シャッタを用いてもよい。
【0231】
第1の半導体光増幅器23を構成から省略して、第1の半導体レーザ20の電流制御器135に、パルス状の電流信号を送信して、パルスを生成してもよい。また、第1の半導体レーザ20と第1の半導体光増幅器23とを同期させて、半導体素子131,141にパルス状の電流信号を送信して、パルスを生成してもよい。
【0232】
<9.その他>
上記の説明は、制限ではなく単なる例示を意図している。従って、添付の特許請求の範囲を逸脱することなく本開示の実施形態に変更を加えることができることは、当業者には明らかであろう。
【0233】
本明細書及び添付の特許請求の範囲全体で使用される用語は、「限定的でない」用語と解釈されるべきである。例えば、「含む」又は「含まれる」という用語は、「含まれるものとして記載されたものに限定されない」と解釈されるべきである。「有する」という用語は、「有するものとして記載されたものに限定されない」と解釈されるべきである。また、本明細書、及び添付の特許請求の範囲に記載される不定冠詞「1つの」は、「少なくとも1つ」又は「1又はそれ以上」を意味すると解釈されるべきである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15