(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照して説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の構成については、同一の符号を付することにより重複した説明を省く。
【0012】
〔縦型熱処理装置〕
本発明の実施形態に係る縦型熱処理装置について説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る縦型熱処理装置の一例を示す断面図である。
図2は、
図1における一点鎖線A−Aにおいて切断した断面図である。
【0013】
図1に示されるように、縦型熱処理装置1は、処理容器34と、蓋部36と、基板保持具38と、ガス供給手段40と、排気手段41と、加熱手段42とを有する。
【0014】
処理容器34は、基板である半導体ウエハ(以下「ウエハW」という。)を収容する。処理容器34は、下端が開放された有天井の円筒形状の内管44と、下端が開放されて内管44の外側を覆う有天井の円筒形状の外管46とが同軸状に配置された二重管構造である。内管44及び外管46は、石英、炭化珪素(SiC)等の耐熱性材料により形成されている。
【0015】
内管44の天井部44Aは、例えば平坦に形成されている。内管44の一側には、その長手方向(上下方向)に沿ってガスノズル76,78,80を収容するノズル収容部48が形成されている。本発明の実施形態では、
図2に示されるように、内管44の側壁部44Bの一部を外側へ向けて突出させて凸部50を形成し、凸部50内をノズル収容部48として形成している。ノズル収容部48に対向させて内管44の反対側の側壁部44Bには、その長手方向(上下方向)に沿って幅L1の矩形状のスリット52が形成されている。スリット52の幅L1は10mm〜400mmの範囲内の大きさに設定されている。
【0016】
スリット52は、内管44の内部のガスを排気できるように形成されたガス排気口である。スリット52の長さは、基板保持具38の長さと同じであるか、又は基板保持具38の長さよりも長く上下方向へそれぞれ延びるよう形成されている。即ち、スリット52の上端は基板保持具38の上端に対応する位置以上の高さに延びて位置され、スリット52の下端は基板保持具38の下端に対応する位置以下の高さに延びて位置されている。具体的には、
図1に示されるように、基板保持具38の上端とスリット52の上端との間の高さ方向の距離L2は0mm〜5mm程度の範囲内である。また、基板保持具38の下端とスリット52の下端との間の高さ方向の距離L3は0mm〜350mm程度の範囲内である。基板保持具38は、処理容器34内に収容可能であり、複数(例えば150枚)のウエハWを上下方向に所定間隔を有して略水平に保持する。
【0017】
処理容器34の下端は、例えばステンレス鋼により形成される円筒形状のマニホールド54によって支持されている。マニホールド54の上端には、フランジ部56が形成されている。フランジ部56上に外管46の下端が設置されることで、外管46が支持されている。フランジ部56と外管46の下端との間には、Oリング等のシール部材58が設けられている。シール部材58により、外管46内が気密状態に維持される。
【0018】
マニホールド54の上部の内壁には、円環状の支持部60が設けられている。支持部60上に内管44の下端が設置させることで、内管44が支持されている。マニホールド54の下端の開口には、蓋部36がOリング等のシール部材62を介して気密に取り付けられている。蓋部36により、処理容器34の下端の開口、即ち、マニホールド54の開口が気密に塞がれている。蓋部36は、例えばステンレス鋼により形成されている。
【0019】
蓋部36の中央部には、磁性流体シール部64を介して回転軸66が貫通させて設けられている。回転軸66の下部は、ボートエレベータ等の昇降手段68のアーム68Aに回転自在に支持されている。
【0020】
回転軸66の上端には回転プレート70が設けられており、回転プレート70上に石英製の保温台72を介してウエハWを保持する基板保持具38が載置される。従って、昇降手段68を昇降させることによって蓋部36と基板保持具38とは一体として上下動し、基板保持具38を処理容器34内に対して挿脱できる。
【0021】
ガス供給手段40は、マニホールド54に設けられており、内管44内へ原料ガス、反応ガス、パージガス等の各種のガスを導入する。ガス供給手段40は、複数(例えば3本)の石英製のガスノズル76,78,80を有する。各ガスノズル76,78,80は、内管44の内部にその長手方向に沿って設けられると共に、その基端(下端)がL字状に屈曲されてマニホールド54を貫通するようにして支持されている。ガスノズル76,78,80は、
図2に示されるように、内管44のノズル収容部48内に周方向に沿って一列で設置されている。
【0022】
ガスノズル76は、処理容器34内に原料ガスを供給する。ガスノズル76には、その長手方向に沿って所定間隔で複数の第1のガス孔であるガス孔76Aが形成されている。ガス孔76Aは、内管44の内部に形成されており、水平方向に向けて内管44の内部に原料ガスを吐出する。所定間隔は、例えば基板保持具38に支持されるウエハWの間隔と同じ間隔に設定される。また、高さ方向の位置は、ガス孔76Aが上下方向に隣り合うウエハW間の中間に位置するように設定されており、原料ガスをウエハW間に効率的に供給できる。また、ガスノズル76は、先端(上端)が天井部44Aにおいて内管44の内部から外部に貫通している。ガスノズル76の先端には、
図1に示されるように、第2のガス孔であるガス孔76Bが形成されている。ガス孔76Bは、内管44の外部に形成されており、内管44の外部に原料ガスを吐出する。原料ガスとしては、例えばシリコン含有ガス、金属含有ガスを用いることができる。シリコン含有ガスとしては、例えばジクロロシラン(DCS:SiH
2Cl
2)、ヘキサクロロジシラン(HCD:Si
2Cl
6)、テトラクロロシラン(SiCl
4)、トリクロロシラン(SiHCl
3)が挙げられる。金属含有ガスとしては、例えば四塩化チタン(TiCl
4)、トリメチルアルミニウム(TMA)、テトラキス(ジメチルアミノ)ハフニウムHf[N(CH
3)
2]
4(TDMAH)、テトラキス(N−エチルメチルアミノ)ジルコニウム(TEMAZ)、トリ(ジメチルアミノ)シクロペンタジエニルジルコニウム(C
5H
5)Zr[N(CH
3)
2]
3が挙げられる。なお、ガスノズル76の詳細については後述する。
【0023】
ガスノズル78は、処理容器34内に原料ガスと反応する反応ガスを供給する。ガスノズル78には、その長手方向に沿って所定間隔で複数のガス孔78Aが形成されている。ガス孔78Aは、内管44の内部に形成されており、水平方向に向けて内管44の内部に反応ガスを吐出する。所定間隔は、例えば基板保持具38に支持されるウエハWの間隔と同じ間隔に設定される。また、高さ方向の位置は、ガス孔78Aが上下方向に隣り合うウエハW間の中間に位置するように設定されており、反応ガスをウエハW間に効率的に供給できる。反応ガスとしては、例えば窒化ガス、酸化ガスを用いることができる。窒化ガスとしては、例えばアンモニア(NH
3)、有機アミンガス、ジアゼン(N
2H
2)、ヒドラジン(N
2H
4)、ヒドラジン化合物(例えばモノメチルヒドラジン(MMH))が挙げられる。酸化ガスとしては、例えばオゾン(O
3)、酸素(O
2)、水蒸気(H
2O)、水素+酸素(H
2+O
2)、水素+オゾン(H
2+O
3)、一酸化窒素(NO)、亜酸化窒素(N
2O)、二酸化窒素(NO
2)、一酸化炭素(CO)、二酸化炭素(CO
2)が挙げられる。
【0024】
ガスノズル80は、処理容器34内にパージガスを供給する。ガスノズル80には、その長手方向に沿って所定間隔で複数のガス孔80Aが形成されている。ガス孔80Aは、内管44の内部に形成されており、水平方向に向けて内管44の内部にパージガスを吐出する。所定間隔は、例えば基板保持具38に支持されるウエハWの間隔と同じ間隔に設定される。また、高さ方向の位置は、ガス孔80Aが上下方向に隣り合うウエハW間の中間に位置するように設定されており、パージガスをウエハW間に効率的に供給できる。パージガスとしては、例えば窒素(N
2)ガス、アルゴン(Ar)ガスを用いることができる。
【0025】
また、マニホールド54の上部の側壁であって、支持部60の上方には、排気口82が形成されている。排気口82は、内管44と外管46との間の空間部84と連通する。空間部84を介してスリット52から排出される内管44の内部のガス及びガスノズル76のガス孔76Bから空間部84に吐出されるガスは、排気口82を介して処理容器34の外部に排気される。排気口82には、処理容器34内のガスを排気する排気手段41が設けられている。排気手段41は、排気口82に接続された排気通路86を有しており、排気通路86には圧力調整弁88及び真空ポンプ90が順次介設されて、処理容器34内を真空排気する。
【0026】
外管46の外周側には、外管46を覆うように円筒形状の加熱手段42が設けられている。加熱手段42は、処理容器34内に収容されたウエハWを加熱する。
【0027】
このように構成された縦型熱処理装置1の各部の動作は、例えばコンピュータ等の制御手段110により制御される。また、縦型熱処理装置1の各部の動作を行うコンピュータのプログラムは、記憶媒体112に記憶されている。記憶媒体112は、例えばフレキシブルディスク、コンパクトディスク、ハードディスク、フラッシュメモリ、DVD等であってよい。
【0028】
〔ガスノズル〕
次に、前述した縦型熱処理装置1に用いられるガスノズル76,78,80の構成について、ガスノズル76を例に挙げて説明する。但し、ガスノズル78及びガスノズル80についてもガスノズル76と同様の構成としてもよい。例えば、反応ガスを供給するガスノズル78について原料ガスを供給するガスノズル76と同様の構成を採用することで、成膜処理の際、内管44の外面や外管46の内面には、内管44の内面に成膜される膜と同一組成の膜が成膜される。そのため、処理容器34内のドライクリーニング時に内管44の外面や外管46の内面に膜残りが発生することを防止できる。また、内管44の外面や外管46の内面に成膜される膜と内管44の内面に成膜される膜との間の応力(ストレス)の差が小さくなるので、膜剥がれが生じることを抑制できる。
【0029】
(第1構成例)
図3は、
図1の縦型熱処理装置1のガスノズル76の第1構成例を示す斜視図である。
図4は、
図1における一点鎖線B−Bにおいて切断した断面図である。なお、
図3においては、ガスノズル78及びガスノズル80の図示を省略している。
【0030】
図3に示されるように、第1構成例のガスノズル76は、内管44の内周面に沿って上下に延びて設けられ、先端が内管44の天井部44Aにおいて内管44の内部から外部に貫通する。ガスノズル76には、複数のガス孔76Aと、複数のガス孔76Bとが形成されている。
【0031】
各ガス孔76Aは、内管44の内部に形成されており、水平方向に向けて内管44の内部に原料ガスを吐出する。各ガス孔76Aは、ガスノズル76の管壁におけるスリット52と対向する位置に形成されている。
【0032】
各ガス孔76Bは、内管44の外部に形成されており、内管44の外部の空間部84に原料ガスを吐出する。各ガス孔76Bは、例えば
図4に示されるように、ガスノズル76の管壁における排気口82側の位置に形成されている。各ガス孔76Bの開口面積は、例えば各ガス孔76Aの開口面積よりも大きくなるように形成されている。
【0033】
なお、
図3の例では、ガス孔76Bが複数の場合を例に挙げて説明したが、ガス孔76Bの数は1個以上であればよく、特に限定されるものではない。
【0034】
(第2構成例)
図5は、
図1の縦型熱処理装置1のガスノズル76の第2構成例を示す斜視図である。なお、
図5においては、ガスノズル78及びガスノズル80の図示を省略している。
【0035】
図5に示されるように、第2構成例のガスノズル76は、内管44の内周面に沿って上下に延びて設けられ、先端が内管44の天井部44Aにおいて内管44の内部から外部に貫通する。ガスノズル76には、複数のガス孔76Aと、複数のガス孔76Bと、1つのガス孔76Cとが形成されている。
【0036】
各ガス孔76Aは、内管44の内部に形成されており、水平方向に向けて内管44の内部に原料ガスを吐出する。各ガス孔76Aは、ガスノズル76の管壁におけるスリット52と対向する位置に形成されている。
【0037】
各ガス孔76Bは、内管44の外部に形成されており、内管44の外部の空間部84に原料ガスを吐出する。各ガス孔76Bは、ガスノズル76の管壁の周方向に沿って所定間隔を有して形成されている。各ガス孔76Bの開口面積は、例えば各ガス孔76Aの開口面積よりも大きくなるように形成されている。
【0038】
ガス孔76Cは、ガスノズル76の上端面に形成され、内管44の外部の空間部84に原料ガスを吐出する。ガス孔76Cの開口面積は、例えば各ガス孔76Aの開口面積よりも大きくなるように形成されている。
【0039】
なお、
図5の例では、ガス孔76Bが複数の場合を例に挙げて説明したが、ガス孔76Bの数は1個以上であればよく、特に限定されるものではない。また、
図5の例では、ガス孔76Cが1個の場合を例に挙げて説明したが、ガス孔76Cの数は2個以上であってもよい。
【0040】
(第3構成例)
図6は、
図1の縦型熱処理装置1のガスノズル76の第3構成例を示す斜視図である。なお、
図6においては、ガスノズル78及びガスノズル80の図示を省略している。
【0041】
図6に示されるように、第3構成例のガスノズル76は、内管44の内周面に沿って上下に延びて設けられ、先端がL字状に屈曲し、内管44の側壁部44Bにおいて内管44の内部から外部に貫通する。ガスノズル76には、複数のガス孔76Aと、複数のガス孔76Bとが形成されている。
【0042】
各ガス孔76Aは、内管44の内部に形成されており、水平方向に向けて内管44の内部に原料ガスを吐出する。各ガス孔76Aは、ガスノズル76の管壁におけるスリット52と対向する位置に形成されている。
【0043】
各ガス孔76Bは、内管44の外部に形成されており、内管44の外部の空間部84に原料ガスを吐出する。各ガス孔76Bは、ガスノズル76の管壁における排気口82側の位置に形成されている。各ガス孔76Bの開口面積は、例えば各ガス孔76Aの開口面積よりも大きくなるように形成されている。
【0044】
なお、
図6の例では、ガス孔76Bが複数の場合を例に挙げて説明したが、ガス孔76Bの数は1個以上であればよく、特に限定されるものではない。
【0045】
(第4構成例)
図7は、
図1の縦型熱処理装置1のガスノズル76の第4構成例を示す斜視図である。なお、
図7においては、ガスノズル78及びガスノズル80の図示を省略している。
【0046】
図7に示されるように、第4構成例のガスノズル76は、内管44の内周面に沿って上下に延びて設けられ、先端が内管44の天井部44Aにおいて内管44の内部から外部に貫通する。ガスノズル76には、複数のガス孔76Aと、複数のガス孔76Bとが形成されている。
【0047】
各ガス孔76Aは、内管44の内部に形成されており、水平方向に向けて内管44の内部に原料ガスを吐出する。各ガス孔76Aは、ガスノズル76の管壁におけるスリット52と対向する位置に形成されている。
【0048】
各ガス孔76Bは、内管44の外部に形成されており、内管44の外部の空間部84に原料ガスを吐出する。各ガス孔76Bは、ガスノズル76の管壁における排気口82側の位置に形成されている。各ガス孔76Bの開口面積は、例えば各ガス孔76Aの開口面積よりも大きくなるように形成されている。
【0049】
また、
図7に示されるように、ガスノズル76の先端は、内管44を加工して形成された保護部44Cに覆われている。保護部44Cのガス孔76Bに対応する領域には、開口44Dが形成されており、ガス孔76Bから吐出されるガスは保護部44Cの開口44Dから内管44の外部の空間部84に供給される。
【0050】
なお、
図7の例では、ガス孔76Bが複数の場合を例に挙げて説明したが、ガス孔76Bの数は1個以上であればよく、特に限定されるものではない。
【0051】
以上、第1構成例から第4構成例のガスノズル76について説明したが、ガスノズル76の形態はこれに限定されない。
【0052】
例えば、ガス孔76Bはガスノズル76の管壁における排気口82側とは異なる位置に形成されていてもよい。但し、ガス孔76Bは、内管44の外部の排気口82側の位置に形成されていることが好ましい。ガス孔76Bが内管44の外部の排気口82側の位置に形成されていることにより、ガス孔76Bから吐出されるHCDガスは、排気口82に向かう流れを形成する。その結果、ガス孔76Aから内管44の内部に吐出されてスリット52を介して排気口82に到達するHCDガスが排気口82に向かう流れに乗って排気口82に排出されるので、HCDガスが内管44の外部から内部へ逆流することを抑制できる。
【0053】
また、例えば、各ガス孔76Bの開口面積は、各ガス孔76Aの開口面積よりも小さくなるように形成されていてもよく、各ガス孔76Aの開口面積と同一であってもよい。但し、ノズル単位長さあたりのガス孔76Bの開口面積は、ノズル単位長さあたりのガス孔76Aの開口面積よりも大きくなるように形成されていることが好ましい。例えば、各ガス孔76Bの開口面積が各ガス孔76Aの開口面積よりも小さい場合や各ガス孔76Bの開口面積が各ガス孔76Aの開口面積と同一である場合、ノズル単位長さあたりのガス孔76Bの数がノズル単位長さあたりのガス孔76Aの数よりも大きくなるようにすればよい。なお、ノズル単位長さとしては、例えばガスノズル76のうちの内管44の外部に突出する部分の長さとすることができる。ガスノズル76のうちの内管44の外部に突出する部分の長さは、ガスノズル76が外管46に接触しない長さであればよく、例えば20mm〜50mmとすることができる。このように、ノズル単位長さあたりのガス孔76Bの開口面積が、ノズル単位長さあたりのガス孔76Aの開口面積よりも大きくなるように形成されていることにより、ガスノズル76内のガス圧力を効率的に低下させることができる。そのため、ガスノズル76内でHCDガスの滞留が生じにくい。その結果、処理容器34内の高温雰囲気にHCDガスが曝される時間が短くなるので、ガスノズル76内でのHCDガスの熱分解が抑制され、ガスノズル76の内壁への分解物の付着量が少なくなる。
【0054】
〔成膜方法〕
次に、本発明の実施形態に係る縦型熱処理装置1を用いた成膜方法について、原子層堆積(ALD:Atomic Layer Deposition)法によりウエハW上にシリコン窒化膜を形成する場合を例に挙げて説明する。なお、以下の説明において、縦型熱処理装置1の各部の動作は、制御手段110により制御される。
【0055】
図8は、シリコン窒化膜の形成方法の一例を示すタイムチャートである。
図8に示されるように、シリコン窒化膜の形成方法は、吸着ステップ、パージステップ、窒化ステップ及びパージステップをこの順番で複数サイクル繰り返して実行することで、ウエハW上に所望の膜厚のシリコン窒化膜を形成するものである。吸着ステップは、ウエハW上に原料ガスを吸着させるステップである。パージステップは、処理容器34内をパージするステップである。窒化ステップは、ウエハW上に吸着した原料ガスを窒化させるステップである。
【0056】
最初に、加熱手段42により処理容器34内を所定温度に維持する。続いて、ウエハWを保持した基板保持具38を蓋部36上に載置し、昇降手段68により蓋部36を上昇させてウエハW(基板保持具38)を処理容器34内に搬入する。
【0057】
続いて、ウエハWに原料ガスであるHCDガスを吸着させる吸着ステップを実行する。具体的には、加熱手段42により処理容器34内を所定温度に設定する。ガスノズル80から処理容器34内に所定流量のN
2ガスを供給しつつ、処理容器34内のガスを排出することで処理容器34を所定圧力に設定する。処理容器34内の温度及び圧力が安定した後、ガス孔76AからHCDガスを内管44の内部に吐出させ、ガス孔76BからHCDガスを内管44の外部に吐出させる。内管44の内部に吐出されたHCDガスは、内管44の内部で加熱されて熱分解し、熱分解により生じたシリコン(Si)がウエハW上に吸着する。内管44の外部に供給されたHCDガスは、内管44と外管46との間の空間部84を通って排気口82から排出される。所定時間の経過後、ガスノズル76(ガス孔76A,76B)からのHCDガスの供給を停止させる。
【0058】
このとき、ガスノズル76には、内管44の内部にHCDガスを吐出するガス孔76Aとは別に配置されて、内管44の外部にHCDガスを吐出するガス孔76Bが設けられている。ガスノズル76にガス孔76Bが形成されていることにより、ガス孔76Bが形成されていない場合よりもガスノズル76内のガス圧力が低下するので、ガスノズル76内でHCDガスの滞留が生じにくい。その結果、処理容器34内の高温雰囲気にHCDガスが曝される時間が短くなるので、ガスノズル76内でのHCDガスの熱分解が抑制され、ガスノズル76の内壁への分解物の付着量が少なくなる。
【0059】
また、ガス孔76Bから吐出されるHCDガスは内管44の内部に供給されないので、内管44の内部のガスの流れの偏りを低減できる。その結果、面間均一性が向上する。
【0060】
また、ガス孔76Bは、内管44の外部の排気口82側の位置に形成されているので、ガス孔76Bから吐出されるHCDガスは、排気口82に向かう流れを形成する。その結果、ガス孔76Aから内管44の内部に吐出されてスリット52を介して排気口82に到達するHCDガスが排気口82に向かう流れに乗って排気口82に排出されるので、HCDガスが内管44の外部から内部へ逆流することを抑制できる。
【0061】
続いて、内管44内をパージするパージステップを実行する。具体的には、ガスノズル80から内管44内に所定流量のN
2ガスを供給しつつ、内管44内のガスを排出し、内管44内のHCDガスをN
2ガスに置換する。所定時間の経過後、ガスノズル80からのN
2ガスの供給を停止する。
【0062】
このとき、吸着ステップにおいてガス孔76Bから吐出されるHCDガスは、内管44内に吐出されることなく、排気口82と直結する内管44と外管46との間の空間部84に吐出されて直ちに排気口82から排出される。そのため、パージステップでは内管44の内部に吐出されるHCDガスのみをパージすればよいので、内管44内をパージするのに要する時間を短縮できる。
【0063】
続いて、吸着ステップでウエハWに吸着したSiを窒化する窒化ステップを実行する。窒化ステップでは、加熱手段42により処理容器34内を所定温度に設定する。また、ガスノズル78のガス孔78Aから内管44内に所定流量の窒化ガスであるNH
3ガスを供給しつつ、処理容器34内のガスを排出し、処理容器34を所定圧力に設定する。内管44の内部に供給されたNH
3ガスは、吸着ステップでウエハW上に吸着したSiと反応し、Siが窒化される。所定時間の経過後、ガスノズル78からのNH
3ガスの供給を停止する。
【0064】
続いて、内管44内をパージするパージステップを実行する。具体的には、ガスノズル80から内管44内に所定流量のN
2ガスを供給しつつ、内管44内のガスを排出し、内管44内のNH
3ガスをN
2ガスに置換する。所定時間の経過後、ガスノズル80からのN
2ガスの供給を停止する。
【0065】
以上により、吸着ステップ、パージステップ、窒化ステップ及びパージステップからなるALD法の1サイクルが終了する。続いて、再び、吸着ステップから始まるALD法の1サイクルを開始する。そして、このサイクルを所定サイクル(例えば100サイクル)繰り返すことで、ウエハW上に所望の膜厚のシリコン窒化膜が形成される。
【0066】
ウエハW上に所望の膜厚のシリコン窒化膜が形成されると、加熱手段42により処理容器34内を所定温度に維持しつつ、ガスノズル80から処理容器34内に所定流量のN
2ガスを供給して処理容器34内をN
2ガスでサイクルパージして常圧へと戻す。続いて、昇降手段68により蓋部36を下降させることにより、ウエハW(基板保持具38)を処理容器34内から搬出する。
【0067】
以上に説明したように、本発明の実施形態では、ガスノズル76に、内管44の内部にHCDガスを吐出するガス孔76Aとは別に配置されて、内管44の外部にHCDガスを吐出するガス孔76Bが設けられている。ガスノズル76にガス孔76Bが形成されていることにより、ガス孔76Bが形成されていない場合よりもガスノズル76内のガス圧力が低下するので、ガスノズル76内でHCDガスの滞留が生じにくい。その結果、処理容器34内の高温雰囲気にHCDガスが曝される時間が短くなるので、ガスノズル76内でのHCDガスの熱分解が抑制され、ガスノズル76の内壁への分解物の付着量が少なくなる。
【0068】
また、ガス孔76Bから吐出されるHCDガスは内管44の内部に供給されないので、内管44の内部のガスの流れの偏りを低減できる。その結果、面間均一性が向上する。
【0069】
また、吸着ステップにおいてガス孔76Bから吐出されるHCDガスは、内管44内に吐出されることなく、排気口82と直結する内管44と外管46との間の空間部84に吐出されて直ちに排気口82から排出される。そのため、パージステップでは内管44の内部に吐出されるHCDガスのみをパージすればよいので、内管44内をパージするのに要する時間を短縮できる。
【0070】
また、ガス孔76Bは、内管44の外部の排気口82側の位置に形成されているので、ガス孔76Bから吐出されるHCDガスは、排気口82に向かう流れを形成する。その結果、ガス孔76Aから内管44の内部に吐出されてスリット52を介して排気口82に到達するHCDガスが排気口82に向かう流れに乗って排気口82に排出されるので、HCDガスが内管44の外部から内部へ逆流することを抑制できる。
【0071】
〔実施例〕
次に、本発明の実施形態に係る縦型熱処理装置1を用いて原料ガスを供給する場合の効果について説明する。
【0072】
最初に、実施例で用いたガスノズル76について説明する。
図9は、実施例のガスノズルを説明する図である。
【0073】
ガスノズルAは、
図9(a)に示されるように、先端が天井部44Aにおいて内管44の内部から外部に貫通しており、内管44の内部に原料ガスを吐出するガス孔76Aと、内管44の外部に原料ガスを吐出するガス孔76Bとが形成されているノズルである。
【0074】
ガスノズルBは、
図9(b)に示されるように、先端が天井部44Aを貫通することなく、内管44の内部に原料ガスを吐出するガス孔76Aが形成されているが、内管44の外部に原料ガスを吐出するガス孔76Bは形成されていないノズルである。
【0075】
ガスノズルCは、
図9(c)に示されるように、内管44の内部に原料ガスを吐出するガス孔76A、ガス孔76D及びガス孔76Eが形成されているが、内管44の外部に原料ガスを吐出するガス孔76Bは形成されていないノズルである。
【0076】
(実施例1)
実施例1では、ガスノズルB,Cを用いてウエハW上にシリコン窒化膜を形成したときの基板保持具38に保持されたウエハWの位置(以下「ウエハ処理位置」という。)とウエハWに形成されたシリコン窒化膜の膜厚との関係を評価した。
図10は、ウエハ処理位置とウエハに形成された膜の膜厚との関係を示す図である。
図10中、横軸はウエハ処理位置を示し、左側の縦軸(第1軸)はウエハWの面内における平均膜厚を示し、右側の縦軸(第2軸)はウエハWの面内における膜厚均一性を示す。なお、
図10の第2軸では、中央値がウエハWの面内における膜厚均一性が最も良好(膜厚の面内分布が0%)であることを示し、中央値から大きく又は小さくなるほどウエハWの面内における膜厚均一性が悪化することを示す。より具体的には、中央値から大きくなるほどウエハWの中央部の膜厚が周縁部の膜厚よりも厚い凸型の分布であることを示し、中央値から小さくなるほどウエハWの中央部の膜厚が周縁部の膜厚よりも薄い凹型の分布であることを示す。
【0077】
図10に示されるように、ガスノズルBを用いた場合、ウエハ処理位置によらずにウエハWに形成されたシリコン窒化膜の面内平均膜厚及び面内均一性が略同一であることが分かる。一方、ガスノズルCを用いた場合、上部側のウエハ処理位置においてウエハW上に形成されたシリコン窒化膜の面内平均膜厚が大きくなり、膜厚の面内分布が凹型の分布となって面内均一性が悪化している。
【0078】
従って、内管44の内部においてガス孔の開口面積を変更すると、原料ガスの流れに偏りが生じると考えられる。
【0079】
(実施例2)
実施例2では、ガスノズルA,B,Cを用いてウエハW上に厚さが3μmのシリコン窒化膜を形成したときのガスノズルA,B,Cの内壁に付着した分解物(生成物)の厚さをシミュレーションにより算出した。
図11は、ガスノズルの内壁に付着する分解物のシミュレーション結果を示す図である。
【0080】
図11に示されるように、ガスノズルA,B,Cを用いてウエハW上に厚さが3μmのシリコン窒化膜を形成したときのガスノズルA,B,Cの内壁に付着した分解物の厚さの最大値は、それぞれ6.3μm,72μm,9.3μmであった。即ち、ガスノズルAを用いることで、ガスノズルB,Cを用いるよりもガスノズルの内壁への分解物の付着量を低減できる。
【0081】
(実施例3)
実施例3では、ガスノズルA,B,Cを用いて処理容器34内に原料ガスであるHCDガスを供給したときの各ガス孔でのガス流速をシミュレーションにより算出した。
図12は、ガス孔の位置とガス流速との関係のシミュレーション結果を示す図である。
図12中、横軸はガス孔の位置を示し、縦軸はガス流速(sccm)を示す。なお、シミュレーションの条件は以下の通りである。
【0082】
<シミュレーション条件>
温度:630℃
HCDガスの流速:300sccm
内管44内の圧力:133Pa
【0083】
図12に示されるように、ガスノズルBを用いた場合、内管44の内部においてガス流速が大きく変化する領域は認められない。一方、ガスノズルCを用いた場合、内管44の内部の上部側においてガス流速が非常に大きい領域が認められる。また、ガスノズルAを用いた場合、内管44の外部においてガス流速が非常に大きい領域が認められるが、内管44の内部においてはガス流速が大きく変化する領域は認められない。
【0084】
従って、ガスノズルAを用いることで、内管44の内部におけるガスの流れの偏りを低減できる。
【0085】
以上、本発明を実施するための形態について説明したが、上記内容は、発明の内容を限定するものではなく、本発明の範囲内で種々の変形及び改良が可能である。
【0086】
上記の実施形態では、基板が半導体ウエハである場合を例に挙げて説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、基板はガラス基板、LCD基板等であってもよい。