特許第6953060号(P6953060)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6953060化合物、これを含むコーティング組成物、これを用いた有機発光素子およびその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6953060
(24)【登録日】2021年10月1日
(45)【発行日】2021年10月27日
(54)【発明の名称】化合物、これを含むコーティング組成物、これを用いた有機発光素子およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07F 7/10 20060101AFI20211018BHJP
   H01L 51/50 20060101ALI20211018BHJP
   H05B 33/10 20060101ALI20211018BHJP
   C09K 11/06 20060101ALI20211018BHJP
【FI】
   C07F7/10 RCSP
   H05B33/14 B
   H05B33/10
   C09K11/06 660
【請求項の数】14
【全頁数】59
(21)【出願番号】特願2020-545210(P2020-545210)
(86)(22)【出願日】2019年8月23日
(65)【公表番号】特表2021-503502(P2021-503502A)
(43)【公表日】2021年2月12日
(86)【国際出願番号】KR2019010744
(87)【国際公開番号】WO2020040585
(87)【国際公開日】20200227
【審査請求日】2020年5月20日
(31)【優先権主張番号】10-2018-0099181
(32)【優先日】2018年8月24日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】ヨン・クァン・キム
(72)【発明者】
【氏名】ジェスン・ペ
(72)【発明者】
【氏名】ジェチョル・イ
(72)【発明者】
【氏名】ヨンウク・キム
(72)【発明者】
【氏名】ジヨン・シン
(72)【発明者】
【氏名】ボムシン・チョ
【審査官】 水島 英一郎
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2010/122810(WO,A1)
【文献】 国際公開第2014/088047(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07F
C07D
CAplus(STN)
REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
記化学式1−1で表される化合物:
【化1】
前記化学式1−1において、
L1〜L4は、互いに同一または異なり、それぞれ独立して、直接結合;または置換もしくは非置換のアリーレン基であり、
Ar1〜Ar6は、互いに同一または異なり、それぞれ独立して、置換もしくは非置換のアリール基であり、
R1〜R10は、互いに同一または異なり、それぞれ独立して、水素;または置換もしくは非置換のアルキル基であり、
r9およびr10は、それぞれ1〜7の整数であり、
前記r9が2以上の場合、前記2以上のR9は、互いに同一または異なり、
前記r10が2以上の場合、前記2以上のR10は、互いに同一または異なり、
R11〜R14は、互いに同一または異なり、それぞれ独立して、水素;ハロゲン基;シアノ基;ヒドロキシ基;カルボキシ基;ハロアルキル基;またはハロアルコキシ基であり、
r11〜r14は、それぞれ1〜4の整数であり、
前記r11が2以上の場合、前記2以上のR11は、互いに同一または異なり、
前記r12が2以上の場合、前記2以上のR12は、互いに同一または異なり、
前記r13が2以上の場合、前記2以上のR13は、互いに同一または異なり、
前記r14が2以上の場合、前記2以上のR14は、互いに同一または異なる。
【請求項2】
前記L1〜L4は、互いに同一または異なり、それぞれ独立して、直接結合;または炭素数6〜10の単環もしくは多環のアリーレン基である、請求項に記載の化合物。
【請求項3】
前記Ar1〜Ar6は、互いに同一または異なり、それぞれ独立して、炭素数1〜10の直鎖もしくは分枝鎖のアルキル基で置換もしくは非置換の炭素数6〜10の単環もしくは多環のアリール基である、請求項1又は2に記載の化合物。
【請求項4】
前記R1およびR5は、互いに同一または異なり、それぞれ独立して、炭素数1〜10の直鎖もしくは分枝鎖のアルキル基である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項5】
記の化合物の中から選択されるものである、請求項1に記載の化合物:
【化2】
【化3】
【化4】
【化5】
【化6】
【化7】
【化8】
【化9】
【化10】
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の化合物を含むコーティング組成物。
【請求項7】
下記化学式Hで表される化合物を含む、請求項に記載のコーティング組成物:
【化11】
前記化学式Hにおいて、
L21およびL22は、互いに同一または異なり、それぞれ独立して、直接結合;置換もしくは非置換のアリーレン基;または置換もしくは非置換のヘテロアリーレン基であり、
R31〜R38は、互いに同一または異なり、それぞれ独立して、水素;重水素;置換もしくは非置換のアルキル基;置換もしくは非置換のシクロアルキル基;置換もしくは非置換のシリル基;置換もしくは非置換のホスフィンオキシド基;置換もしくは非置換のアリール基;または置換もしくは非置換のヘテロアリール基であり、
Ar101およびAr102は、互いに同一または異なり、それぞれ独立して、置換もしくは非置換のアリール基;または置換もしくは非置換のヘテロアリール基である。
【請求項8】
第1電極と、
前記第1電極に対向して備えられた第2電極と、
前記第1電極と前記第2電極との間に備えられた1層以上の有機物層とを含み、
前記有機物層のうちの1層以上は、請求項6又は7に記載のコーティング組成物の硬化物を含むものである有機発光素子。
【請求項9】
前記コーティング組成物の硬化物は、前記コーティング組成物を熱処理または光処理によって硬化された状態である、請求項に記載の有機発光素子。
【請求項10】
前記コーティング組成物の硬化物を含む有機物層は、発光層を含み、前記発光層は、前記コーティング組成物の硬化物を含むものである、請求項に記載の有機発光素子。
【請求項11】
前記コーティング組成物の硬化物を含む有機物層は、発光層を含み、前記発光層は、前記化学式1で表される化合物を発光層のドーパントとして含むものである、請求項に記載の有機発光素子。
【請求項12】
基板を用意するステップと、
前記基板上に第1電極を形成するステップと、
前記第1電極上に1層以上の有機物層を形成するステップと、
前記有機物層上に第2電極を形成するステップとを含み、
前記有機物層を形成するステップは、請求項に記載のコーティング組成物を用いて1層以上の有機物層を形成するステップを含む有機発光素子の製造方法。
【請求項13】
前記コーティング組成物を用いて1層以上の有機物層を形成するステップは、インクジェットコーティング方法またはスピンコーティング方法を利用するものである、請求項12に記載の有機発光素子の製造方法。
【請求項14】
前記コーティング組成物を用いて1層以上の有機物層を形成するステップは、前記第1電極上に前記コーティング組成物をコーティングするステップと、
前記コーティングされたコーティング組成物を乾燥して硬化するステップとを含むものである、請求項12に記載の有機発光素子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、化合物、前記化合物を含むコーティング組成物、前記コーティング組成物を用いて形成された有機発光素子およびその製造方法に関する。
【0002】
本出願は、2018年8月24日付で韓国特許庁に提出された韓国特許出願第10−2018−0099181号の出願日の利益を主張し、その内容のすべては本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0003】
有機発光現象は、特定の有機分子の内部プロセスによって電流が可視光に変換される例の一つである。有機発光現象の原理は次の通りである。アノードとカソードとの間に有機物層を位置させた時、2つの電極の間に電流をかけると、カソードとアノードからそれぞれ電子と正孔が有機物層に注入される。有機物層に注入された電子と正孔は再結合してエキシトン(exciton)を形成し、このエキシトンが再び基底状態に落ちながら光を発する。このような原理を利用する有機発光素子は、一般的に、カソードおよびアノードと、その間に位置した有機物層、例えば、正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層、電子注入層を含む有機物層とから構成される。
【0004】
従来は、有機発光素子を製造するために蒸着工程を主に用いてきた。しかし、蒸着工程で有機発光素子を製造する時、材料の損失が多く発生するという問題点があり、これを解決するために、材料の損失が少なくて生産効率を増大させることができる溶液工程により素子を製造する技術が開発されており、溶液工程時に使用可能な物質の開発が求められている。
【0005】
溶液工程用有機発光素子で使用される物質は次の性質を有しなければならない。
【0006】
第一に、保存可能な均質な溶液を形成できなければならない。商用化された蒸着工程用物質の場合、結晶性が良くて溶液に溶けにくかったり、溶液を形成しても結晶が形成されやすいため、保存期間に応じて溶液の濃度勾配が変化したり、不良素子を形成する可能性が大きい。
【0007】
第二に、溶液工程に使用される物質は、薄膜の形成時、穴やかたまり現象が発生せずに均一な厚さの薄膜を形成できるようにコーティング性に優れていなければならず、有機発光素子の製造時、電流効率に優れ、優れた寿命特性が求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】韓国公開特許公報第10−2004−0028954号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、化合物、前記化合物を含むコーティング組成物、前記コーティング組成物を用いて形成された有機発光素子およびその製造方法を提供しようとする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一実施態様は、下記化学式1で表される化合物を提供する。
【0011】
【化1】
【0012】
前記化学式1において、
L1〜L4は、互いに同一または異なり、それぞれ独立して、直接結合;または置換もしくは非置換のアリーレン基であり、
L5およびL6は、互いに同一または異なり、それぞれ独立して、置換もしくは非置換のアリーレン基であり、
Ar1〜Ar6は、互いに同一または異なり、それぞれ独立して、置換もしくは非置換のアリール基であり、
R1〜R10は、互いに同一または異なり、それぞれ独立して、水素;または置換もしくは非置換のアルキル基であり、
r9およびr10は、それぞれ1〜7の整数であり、
前記r9が2以上の場合、前記2以上のR9は、互いに同一または異なり、
前記r10が2以上の場合、前記2以上のR10は、互いに同一または異なる。
【0013】
本発明の一実施態様は、前記化合物を含むコーティング組成物を提供する。
【0014】
本発明の一実施態様は、第1電極と、前記第1電極に対向して備えられた第2電極と、前記第1電極と前記第2電極との間に備えられた1層以上の有機物層とを含む有機発光素子であって、前記有機物層のうちの1層以上は、前記コーティング組成物の硬化物を含む有機発光素子を提供する。
【0015】
また、本発明の一実施態様は、基板を用意するステップと、前記基板上に第1電極を形成するステップと、前記第1電極上に1層以上の有機物層を形成するステップと、前記有機物層上に第2電極を形成するステップとを含み、前記有機物層を形成するステップは、前記コーティング組成物を用いて1層以上の有機物層を形成するステップを含むものである有機発光素子の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0016】
本発明の一実施態様に係る化合物は、溶液工程が可能で、素子の大面積化が可能であり、有機発光素子の有機物層の材料として使用可能である。
【0017】
また、本発明の一実施態様に係る化合物は、有機発光素子の有機物層の材料として使用可能であり、有機発光素子の駆動電圧を低くすることができる。
【0018】
さらに、本発明の一実施態様に係る化合物は、有機発光素子の有機物層の材料として使用可能であり、光効率を向上させることができる。
【0019】
また、本発明の一実施態様に係る化合物は、有機発光素子の有機物層の材料として使用可能であり、化合物の熱的安定性によって素子の寿命特性を向上させることができる。
【0020】
なお、本発明の一実施態様に係る化合物は、有機発光素子の有機物層の材料として使用可能であり、溶解度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の一実施態様に係る有機発光素子の例を示すものである。
図2】本発明の一実施態様に係る化合物BD−5のLC−MSデータを示す図である。
図3】本発明の一実施態様に係る化合物BD−10のLC−MSデータを示す図である。
図4】本発明の一実施態様に係る化合物BD−24のLC−MSデータを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明についてさらに詳細に説明する。
【0023】
本発明は、下記化学式1で表される化合物を提供する。
【0024】
従来、ピレン(Pyrene)は有機発光素子に使用される場合、高輝度発光体として優れた効果があるが、溶解度が低下するという欠点がある。本発明の化学式1で表される化合物は、ピレン(Pyrene)のコア構造にジベンゾフラン基を含むことにより、色座標のy値を効果的に低下させることができる。
【0025】
また、本発明の化学式1で表される化合物は、ピレン(Pyrene)のコア構造にシリル基を含むことにより、ピレン(Pyrene)コア構造の発光特性に影響を及ぼすことなく、π−π結合を効果的に抑制して分子間のかたまり現象を緩和して溶解度を増加させることができる。したがって、本発明の化学式1で表される化合物は、ピレン(Pyrene)誘導体の溶解度を十分に確保することができかつ、置換体の色座標を変化させないという利点がある。
【0026】
また、化学式1の化合物は、2つのアミン基を含むことにより、アミン基を含まないか、1つのアミン基を含む構造に比べて、輻射遷移確率(Oscillator strength)が増加して素子の発光効率が高い。
【0027】
本明細書において、「溶解度(solubility)」は、溶質が特定の溶媒に対して溶ける性質を意味するもので、一定の温度で溶媒100gに溶解可能な溶質のg数で記される。
【0028】
本明細書において、ある部材が他の部材の「上に」位置しているとする時、これは、ある部材が他の部材に接している場合のみならず、2つの部材の間にさらに他の部材が存在する場合も含む。
【0029】
本明細書において、ある部分がある構成要素を「含む」とする時、これは、特に反対の記載がない限り、他の構成要素を除くのではなく、他の構成要素をさらに包含できることを意味する。
【0030】
本明細書において、置換基の例示は以下に説明するが、これに限定されるものではない。
【0031】
本明細書において、
【化2】
は、連結される部位を意味する。
【0032】
前記「置換」という用語は、化合物の炭素原子に結合した水素原子が他の置換基に変わることを意味し、置換される位置は、水素原子の置換される位置すなわち、置換基が置換可能な位置であれば限定せず、2以上置換される場合、2以上の置換基は、互いに同一でも異なっていてもよい。
【0033】
本明細書において、「置換もしくは非置換の」という用語は、重水素;ハロゲン基;シアノ基;ヒドロキシ基(−OH);カルボキシ基(−COOH);アルキル基;アルコキシ基;ハロアルキル基;ハロアルコキシ;シリル基;アリール基;およびN、O、S、Se、およびSi原子のうちの1個以上を含むヘテロ環基からなる群より選択された1または2以上の置換基で置換されているか、前記例示された置換基のうちの2以上の置換基が連結された置換基で置換されるか、もしくはいずれの置換基も有しないことを意味する。
【0034】
本明細書において、ハロゲン基の例としては、フッ素、塩素、臭素、またはヨウ素がある。
【0035】
本明細書において、アルキル基は、直鎖もしくは分枝鎖であってもよく、炭素数は特に限定されないが、炭素数1〜50のものが好ましく、炭素数1〜30のものがさらに好ましい。具体例としては、メチル、エチル、プロピル、n−プロピル、イソプロピル、ブチル、n−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、sec−ブチル、1−メチル−ブチル、1−エチル−ブチル、ペンチル、n−ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、tert−ペンチル、ヘキシル、n−ヘキシル、1−メチルペンチル、2−メチルペンチル、4−メチル−2−ペンチル、3,3−ジメチルブチル、2−エチルブチル、ヘプチル、n−ヘプチル、1−メチルヘキシル、シクロペンチルメチル、シクロヘキシルメチル、オクチル、n−オクチル、tert−オクチル、1−メチルヘプチル、2−エチルヘキシル、2−プロピルペンチル、n−ノニル、2,2−ジメチルヘプチル、1−エチル−プロピル、1,1−ジメチル−プロピル、イソヘキシル、4−メチルヘキシル、5−メチルヘキシルなどがあるが、これらに限定されるものではない。
【0036】
本明細書において、アルコキシ基は、直鎖、分枝鎖もしくは環鎖であってもよい。アルコキシ基の炭素数は特に限定されないが、炭素数1〜30のものが好ましい。具体的には、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、イソプロポキシ、n−ブトキシ、イソブトキシ、tert−ブトキシ、sec−ブトキシ、n−ペンチルオキシ、ネオペンチルオキシ、イソペンチルオキシ、n−ヘキシルオキシ、3,3−ジメチルブチルオキシ、2−エチルブチルオキシ、n−オクチルオキシ、n−ノニルオキシ、n−デシルオキシ、ベンジルオキシ、p−メチルベンジルオキシなどになってもよいが、これらに限定されるものではない。
【0037】
本明細書において、ハロアルキル基は、アルキル基の水素の代わりにハロゲン基が置換されたものを意味し、前記アルキル基においてHがハロゲン基であることを除けば、前記アルキル基の例示が適用可能である。例えば、−CF、−CHF、−CHFなどがあるが、これらのみに限定されるものではない。
【0038】
本明細書において、ハロアルコキシ基は、アルコキシ基の水素の代わりにハロゲン基が置換されたものを意味し、前記アルコキシ基においてHがハロゲン基であることを除けば、前記アルコキシ基の例示が適用可能である。例えば、−OCF、−OCHF、−OCHFなどがあるが、これらのみに限定されるものではない。
【0039】
本明細書において、シリル基は、Siを含み、前記Si原子がラジカルとして直接連結される置換基であり、−SiR201202203で表され、R201〜R203は、互いに同一または異なり、それぞれ独立して、水素;重水素;ハロゲン基;アルキル基;アルケニル基;アルコキシ基;シクロアルキル基;アリール基;およびヘテロ環基のうちの少なくとも1つからなる置換基であってもよい。シリル基の具体例としては、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、t−ブチルジメチルシリル基、ビニルジメチルシリル基、プロピルジメチルシリル基、トリフェニルシリル基、ジフェニルシリル基、フェニルシリル基などがあるが、これらに限定されるものではない。
【0040】
本明細書において、アリール基は、単環式アリール基または多環式アリール基であってもよい。
【0041】
本明細書において、前記アリール基が単環式アリール基の場合、炭素数は特に限定されないが、炭素数6〜50のものが好ましく、炭素数6〜30のものがさらに好ましい。具体的には、単環式アリール基としては、フェニル基、ビフェニル基、ターフェニル基、クアテルフェニル基などがあるが、これらに限定されるものではない。
【0042】
本明細書において、前記アリール基が多環式アリール基の場合、炭素数は特に限定されないが、炭素数10〜50のものが好ましく、炭素数10〜30のものがさらに好ましい。具体的には、多環式アリール基としては、ナフチル基、アントラセニル基、フェナントリル基、ピレニル基、ペリレニル基、クリセニル基、フルオレニル基などがあるが、これらに限定されるものではない。
【0043】
本明細書において、前記フルオレニル基は置換されていてもよいし、隣接した置換基が互いに結合して環を形成してもよい。
【0044】
前記フルオレニル基が置換される場合、
【化3】
などになってもよいが、これらに限定されるものではない。
【0045】
本明細書において、「隣接した」基は、当該置換基が置換された原子と直接連結された原子に置換された置換基、当該置換基と立体構造的に最も近く位置した置換基、または当該置換基が置換された原子に置換された他の置換基を意味することができる。例えば、ベンゼン環におけるオルト(ortho)位に置換された2つの置換基、および脂肪族環における同一炭素に置換された2つの置換基は、互いに「隣接した」基と解釈される。
【0046】
本明細書において、ヘテロ環基は、異種原子として、N、O、S、Si、およびSeのうちの1個以上を含むものであって、炭素数は特に限定されないが、炭素数2〜60のものが好ましく、炭素数2〜30のものがさらに好ましい。ヘテロ環基の例としては、チオフェン基、フラン基、ピロール基、イミダゾール基、チアゾール基、オキサゾール基、オキサジアゾール基、トリアゾール基、ピリジル基、ビピリジル基、ピリミジル基、トリアジン基、アクリジン基、ピリダジン基、ピラジン基、キノリニル基、キナゾリン基、キノキサリニル基、フタラジニル基、ピリドピリミジン基、ピリドピラジン基、ピラジノピラジン基、イソキノリン基、インドール基、カルバゾール基、ベンズオキサゾール基、ベンズイミダゾール基、ベンゾチアゾール基、ベンゾカルバゾール基、ベンゾチオフェン基、ジベンゾチオフェン基、ベンゾフラン基、フェナントリジン基(phenanthridine)、フェナントロリン基(phenanthroline)、プテリジン基(pteridine)、チアゾリル基、イソオキサゾリル基、オキサジアゾリル基、チアジアゾリル基、およびジベンゾフラン基などがあるが、これらに限定されるものではない。
【0047】
本明細書において、ヘテロアリール基は、芳香族であることを除けば、前記ヘテロ環基の例示の中から選択されるが、これらのみに限定されるものではない。
【0048】
本明細書において、アリーレン基は、アリール基に結合位置が2つあるもの、すなわち2価の基を意味する。これらは、それぞれ2価の基であることを除けば、前述したアリール基の説明が適用可能である。
【0049】
本発明の一実施態様によれば、前記化学式1において、L5およびL6は、互いに同一または異なり、それぞれ独立して、置換もしくは非置換の炭素数6〜20のアリーレン基である。
【0050】
本発明の一実施態様によれば、前記化学式1において、L5およびL6は、互いに同一または異なり、それぞれ独立して、置換もしくは非置換のビフェニレン基である。
【0051】
本発明の一実施態様によれば、前記化学式1は、下記化学式1−1で表される。
【0052】
【化4】
【0053】
前記化学式1−1において、
L1〜L4、Ar1〜Ar6、R1〜R10、r9およびr10の定義は、前記化学式1で定義したものと同じであり、
R11〜R14は、互いに同一または異なり、それぞれ独立して、水素;ハロゲン基;シアノ基;ヒドロキシ基;カルボキシ基;ハロアルキル基;またはハロアルコキシ基であり、
r11〜r14は、それぞれ1〜4の整数であり、
前記r11が2以上の場合、前記2以上のR11は、互いに同一または異なり、
前記r12が2以上の場合、前記2以上のR12は、互いに同一または異なり、
前記r13が2以上の場合、前記2以上のR13は、互いに同一または異なり、
前記r14が2以上の場合、前記2以上のR14は、互いに同一または異なる。
【0054】
本発明の一実施態様によれば、前記化学式1は、下記化学式1−2〜1−10のうちのいずれか1つで表される。
【0055】
【化5】
【0056】
【化6】
【0057】
【化7】
【0058】
【化8】
【0059】
【化9】
【0060】
前記化学式1−2〜1−10において、
L1〜L4、Ar1〜Ar6、R1〜R10、r9およびr10の定義は、前記化学式1で定義したものと同じであり、
R11〜R14は、互いに同一または異なり、それぞれ独立して、水素;ハロゲン基;シアノ基;ヒドロキシ基;カルボキシ基;ハロアルキル基;またはハロアルコキシ基であり、
r11〜r14は、それぞれ1〜4の整数であり、
前記r11が2以上の場合、前記2以上のR11は、互いに同一または異なり、
前記r12が2以上の場合、前記2以上のR12は、互いに同一または異なり、
前記r13が2以上の場合、前記2以上のR13は、互いに同一または異なり、
前記r14が2以上の場合、前記2以上のR14は、互いに同一または異なる。
【0061】
本発明の一実施態様によれば、前記化学式1−2は、下記化学式1−2−1で表される。
【0062】
【化10】
【0063】
前記化学式1−2−1において、
L1〜L4、Ar1〜Ar6、R1〜R14およびr9〜r14の定義は、前記化学式1−2で定義したものと同じである。
【0064】
本発明の一実施態様によれば、前記化学式1−3は、下記化学式1−3−1で表される。
【0065】
【化11】
【0066】
前記化学式1−3−1において、
L1〜L4、Ar1〜Ar6、R1〜R14およびr9〜r14の定義は、前記化学式1−3で定義したものと同じである。
【0067】
本発明の一実施態様によれば、前記化学式1−4は、下記化学式1−4−1で表される。
【0068】
【化12】
【0069】
前記化学式1−4−1において、
L1〜L4、Ar1〜Ar6、R1〜R14およびr9〜r14の定義は、前記化学式1−4で定義したものと同じである。
【0070】
本発明の一実施態様によれば、前記化学式1において、ジベンゾフラン(
【化13】
)は、3番または4番炭素を介してL3またはL4に連結される。
【0071】
本明細書の一実施態様によれば、前記化学式1−1において、ジベンゾフラン(
【化14】
)は、3番または4番炭素を介してL3またはL4に連結される。
【0072】
本明細書の一実施態様によれば、前記化学式1−2〜1−10において、ジベンゾフラン(
【化15】
)は、3番または4番炭素を介してL3またはL4に連結される。
【0073】
本発明の一実施態様によれば、前記化学式1において、L1〜L4は、互いに同一または異なり、それぞれ独立して、直接結合;または置換もしくは非置換の炭素数6〜30の単環もしくは多環のアリーレン基である。
【0074】
本発明の一実施態様によれば、前記化学式1において、L1〜L4は、互いに同一または異なり、それぞれ独立して、直接結合;または炭素数6〜30の単環もしくは多環のアリーレン基である。
【0075】
本発明の一実施態様によれば、前記化学式1において、L1〜L4は、互いに同一または異なり、それぞれ独立して、直接結合;または炭素数6〜10の単環もしくは多環のアリーレン基である。
【0076】
本発明の一実施態様によれば、前記化学式1において、L1〜L4は、互いに同一または異なり、それぞれ独立して、直接結合;またはフェニレン基である。
【0077】
本発明の一実施態様によれば、前記化学式1において、L1およびL2は、互いに同一または異なり、それぞれ独立して、直接結合;または置換もしくは非置換の炭素数6〜30の単環もしくは多環のアリーレン基である。
【0078】
本発明の一実施態様によれば、前記化学式1において、L1およびL2は、互いに同一または異なり、それぞれ独立して、直接結合;または炭素数6〜30の単環もしくは多環のアリーレン基である。
【0079】
本発明の一実施態様によれば、前記化学式1において、L1およびL2は、互いに同一または異なり、それぞれ独立して、直接結合;または炭素数6〜10の単環もしくは多環のアリーレン基である。
【0080】
本発明の一実施態様によれば、前記化学式1において、L1およびL2は、互いに同一または異なり、それぞれ独立して、直接結合;またはフェニレン基である。
【0081】
本発明の一実施態様によれば、前記化学式1において、L1およびL2は、直接結合である。
【0082】
本発明の一実施態様によれば、前記化学式1において、L1およびL2は、フェニレン基である。
【0083】
本発明の一実施態様によれば、前記化学式1において、L3およびL4は、直接結合である。
【0084】
本発明の一実施態様によれば、前記化学式1において、Ar1〜Ar6は、互いに同一または異なり、それぞれ独立して、置換もしくは非置換の炭素数6〜30の単環もしくは多環のアリール基である。
【0085】
本発明の一実施態様によれば、前記化学式1において、Ar1〜Ar6は、互いに同一または異なり、それぞれ独立して、炭素数1〜30の直鎖もしくは分枝鎖のアルキル基で置換もしくは非置換の炭素数6〜30の単環もしくは多環のアリール基である。
【0086】
本発明の一実施態様によれば、前記化学式1において、Ar1〜Ar6は、互いに同一または異なり、それぞれ独立して、炭素数1〜10の直鎖もしくは分枝鎖のアルキル基で炭素数6〜10の単環もしくは多環のアリール基である。
【0087】
本発明の一実施態様によれば、前記化学式1において、Ar1〜Ar6は、互いに同一または異なり、それぞれ独立して、メチル基で置換もしくは非置換のフェニル基である。
【0088】
本発明の一実施態様によれば、前記化学式1において、Ar1〜Ar6は、フェニル基である。
【0089】
本発明の一実施態様によれば、前記化学式1において、Ar1〜Ar6は、メチル基で置換されたフェニル基である。
【0090】
本発明の一実施態様によれば、前記化学式1において、R1およびR5は、互いに同一または異なり、それぞれ独立して、置換もしくは非置換の炭素数1〜30の直鎖もしくは分枝鎖のアルキル基である。
【0091】
本発明の一実施態様によれば、前記化学式1において、R1およびR5は、互いに同一または異なり、それぞれ独立して、炭素数1〜30の直鎖もしくは分枝鎖のアルキル基である。
【0092】
本発明の一実施態様によれば、前記化学式1において、R1およびR5は、互いに同一または異なり、それぞれ独立して、炭素数1〜10の直鎖もしくは分枝鎖のアルキル基である。
【0093】
本発明の一実施態様によれば、前記化学式1において、R1およびR5は、互いに同一または異なり、それぞれ独立して、炭素数3〜10の分枝鎖のアルキル基である。
【0094】
本発明の一実施態様によれば、前記化学式1において、R1およびR5は、i−プロピル基である。
【0095】
本発明の一実施態様によれば、前記化学式1において、R2〜R4およびR6〜R10は、水素である。
【0096】
本発明の一実施態様によれば、前記化学式1において、L5およびL6は、互いに同一または異なり、それぞれ独立して、ハロゲン基、シアノ基、ヒドロキシ基、カルボキシ基、ハロアルキル基、またはハロアルコキシ基で置換もしくは非置換のビフェニレン基である。
【0097】
本発明の一実施態様によれば、前記化学式1において、L5およびL6は、互いに同一または異なり、それぞれ独立して、フッ素、シアノ基、ヒドロキシ基、カルボキシ基、−CF、または−OCFで置換もしくは非置換のビフェニレン基である。
【0098】
本発明の一実施態様によれば、前記化学式1において、L5およびL6は、互いに同一または異なり、それぞれ独立して、ハロゲン基、またはシアノ基で置換もしくは非置換のビフェニレン基である。
【0099】
本発明の一実施態様によれば、前記化学式1において、L5およびL6は、互いに同一または異なり、それぞれ独立して、フッ素またはシアノ基で置換もしくは非置換のビフェニレン基である。
【0100】
本発明の一実施態様によれば、前記R2〜R4およびR6〜R14は、水素である。
【0101】
本発明の一実施態様によれば、前記化学式1−1において、R11は、水素である。
【0102】
本発明の一実施態様によれば、前記化学式1−1において、R11は、ハロゲン基;シアノ基;ヒドロキシ基;カルボキシ基;ハロアルキル基;またはハロアルコキシ基である。
【0103】
本発明の一実施態様によれば、前記化学式1−1において、R11は、フッ素;シアノ基;ヒドロキシ基;カルボキシ基;−CF;または−OCFである。
【0104】
本発明の一実施態様によれば、前記化学式1−1において、R11は、水素;ハロゲン基;またはシアノ基である。
【0105】
本発明の一実施態様によれば、前記化学式1−1において、R11は、水素;フッ素;またはシアノ基である。
【0106】
本発明の一実施態様によれば、前記化学式1−1において、R13は、水素である。
【0107】
本発明の一実施態様によれば、前記化学式1−1において、R13は、ハロゲン基;シアノ基;ヒドロキシ基;カルボキシ基;ハロアルキル基;またはハロアルコキシ基である。
【0108】
本発明の一実施態様によれば、前記化学式1−1において、R13は、フッ素;シアノ基;ヒドロキシ基;カルボキシ基;−CF;または−OCFである。
【0109】
本発明の一実施態様によれば、前記化学式1−1において、R13は、水素;ハロゲン基;またはシアノ基である。
【0110】
本発明の一実施態様によれば、前記化学式1−1において、R13は、水素;フッ素;またはシアノ基である。
【0111】
本発明の一実施態様によれば、前記r11は、4であり、前記R11は、水素である。
【0112】
本発明の一実施態様によれば、前記r11は、1であり、前記R11は、ハロゲン基;シアノ基;ヒドロキシ基;カルボキシ基;ハロアルキル基;またはハロアルコキシ基である。
【0113】
本発明の一実施態様によれば、前記r11は、1であり、前記R11は、フッ素;シアノ基;ヒドロキシ基;カルボキシ基;−CF;または−OCFである。
【0114】
本発明の一実施態様によれば、前記r11は、1であり、前記R11は、ハロゲン基;またはシアノ基である。
【0115】
本発明の一実施態様によれば、前記r11は、1であり、前記R11は、フッ素;またはシアノ基である。
【0116】
本発明の一実施態様によれば、前記r13は、4であり、前記R13は、水素である。
【0117】
本発明の一実施態様によれば、前記r13は、1であり、前記R13は、ハロゲン基;シアノ基;ヒドロキシ基;カルボキシ基;ハロアルキル基;またはハロアルコキシ基である。
【0118】
本発明の一実施態様によれば、前記r13は、1であり、前記R13は、フッ素;シアノ基;ヒドロキシ基;カルボキシ基;−CF;または−OCFである。
【0119】
本発明の一実施態様によれば、前記r13は、1であり、前記R13は、ハロゲン基;またはシアノ基である。
【0120】
本発明の一実施態様によれば、前記r13は、1であり、前記R13は、フッ素;またはシアノ基である。
【0121】
本発明の一実施態様によれば、前記化学式1−1において、R12およびR14は、水素である。
【0122】
本発明の一実施態様によれば、前記化学式1において、
【化16】
は、互いに同一である。
【0123】
本発明の一実施態様によれば、前記化学式1において、
【化17】
は、互いに同一である。
【0124】
本発明の一実施態様によれば、前記化学式1−1において、
【化18】
は、互いに同一である。
【0125】
本発明の一実施態様によれば、前記化学式1の化合物は、下記の化合物の中から選択される。
【0126】
【化19】
【0127】
【化20】
【0128】
【化21】
【0129】
【化22】
【0130】
【化23】
【0131】
【化24】
【0132】
【化25】
【0133】
【化26】
【0134】
【化27】
【0135】
本発明は、前記化合物を含むコーティング組成物を提供する。
【0136】
本発明の一実施態様によれば、前記コーティング組成物は、溶媒をさらに含んでもよい。
【0137】
本発明の一実施態様において、前記コーティング組成物は、液状であってもよい。前記「液状」は、常温および常圧で液体状態であることを意味する。
【0138】
本発明の一実施態様において、前記溶媒は、例えば、クロロホルム、塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン、1,1,2−トリクロロエタン、クロロベンゼン、o−ジクロロベンゼンなどの塩素系溶媒;テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル系溶媒;トルエン、キシレン、トリメチルベンゼン、メシチレンなどの芳香族炭化水素系溶媒;シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、n−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、n−ノナン、n−デカンなどの脂肪族炭化水素系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン系溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチル、エチルセロソルブアセテートなどのエステル系溶媒;エチレングリコール、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジメトキシエタン、プロピレングリコール、ジエトキシメタン、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、グリセリン、1,2−ヘキサンジオールなどの多価アルコールおよびその誘導体;メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、シクロヘキサノールなどのアルコール系溶媒;ジメチルスルホキシドなどのスルホキシド系溶媒;N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミドなどのアミド系溶媒;メチルベンゾエート、ブチルベンゾエート、3−フェノキシベンゾエートなどのベンゾエート系溶媒;およびテトラリンなどの溶媒が例示されるが、本明細書の一実施態様に係る化合物を溶解または分散させることが可能な溶媒であれば使用可能であり、これに限定されない。
【0139】
本発明の一実施態様において、前記溶媒は、芳香族炭化水素系溶媒である。好ましくは、トルエンであるが、これに限定されるものではない。
【0140】
もう一つの実施態様において、前記溶媒は、1種単独で使用するか、または2種以上の溶媒を混合して使用することができる。
【0141】
もう一つの実施態様において、前記溶媒の沸点は、好ましくは40℃〜250℃、さらに好ましくは60℃〜230℃であるが、これに限定されない。
【0142】
もう一つの実施態様において、前記単独あるいは混合溶媒の粘度は、好ましくは1cP〜10cP、さらに好ましくは3cP〜8cPであるが、これに限定されない。
【0143】
もう一つの実施態様において、前記コーティング組成物の濃度は、好ましくは0.1wt/v%〜20wt/v%、さらに好ましくは0.5wt/v%〜5wt/v%であるが、これに限定されない。前記コーティング組成物の濃度が前記範囲を満足する場合、有機発光素子の有機物層の形成が容易である。
【0144】
本発明はまた、前記コーティング組成物を用いて形成された有機発光素子を提供する。
【0145】
本発明の一実施態様において、第1電極と、第2電極と、前記第1電極と前記第2電極との間に備えられる1層以上の有機物層とを含み、前記有機物層のうちの1層以上は、前記コーティング組成物の硬化物を含む。
【0146】
本発明の一実施態様において、前記コーティング組成物の硬化物は、前記コーティング組成物を熱処理または光処理によって硬化された状態である。
【0147】
本発明の一実施態様において、前記第1電極は、カソードであり、前記第2電極は、アノードである。
【0148】
もう一つの実施態様において、前記第1電極は、アノードであり、前記第2電極は、カソードである。
【0149】
本発明の一実施態様において、前記コーティング組成物の硬化物を含む有機物層は、正孔輸送層、正孔注入層、または正孔輸送および正孔注入を同時に行う層である。
【0150】
本発明の一実施態様において、前記コーティング組成物の硬化物を含む有機物層は、発光層である。
【0151】
もう一つの実施態様において、前記コーティング組成物の硬化物を含む有機物層は、発光層であり、前記発光層は、前記コーティング組成物の硬化物を発光層のドーパントとして含む。
【0152】
もう一つの実施態様において、前記コーティング組成物の硬化物を含む有機物層は、発光層であり、前記発光層は、前記化学式1で表される化合物を発光層の青色ドーパントとして含むことができ、前記ドーパントの最大発光波長は、420nm〜520nmの範囲内であってもよい。
【0153】
もう一つの実施態様によれば、前記コーティング組成物の硬化物を含む有機物層は、発光層であり、前記発光層は、前記化学式1で表される化合物を発光層のドーパントとして含み、ホスト材料をさらに含んでもよい。この時、ホストとドーパントの質量比(ホスト:ドーパント)は、80:20〜99:1である。具体的には、90:10〜99:1であってもよいし、より具体的には90:10〜95:5であってもよい。前記含有量を満足する場合、素子の効率および寿命が向上できる。
【0154】
本発明の一実施態様において、前記コーティング組成物は、前記化学式1で表される化合物および下記化学式Hで表される化合物を含む。具体的には、前記コーティング組成物は、前記化学式1で表される化合物をドーパントとして含み、下記化学式Hで表される化合物をホストとして含む。
【0155】
【化28】
【0156】
前記化学式Hにおいて、
L21およびL22は、互いに同一または異なり、それぞれ独立して、直接結合;置換もしくは非置換のアリーレン基;または置換もしくは非置換のヘテロアリーレン基であり、
R31〜R38は、互いに同一または異なり、それぞれ独立して、水素;重水素;置換もしくは非置換のアルキル基;置換もしくは非置換のシクロアルキル基;置換もしくは非置換のシリル基;置換もしくは非置換のホスフィンオキシド基;置換もしくは非置換のアリール基;または置換もしくは非置換のヘテロアリール基であり、
Ar101およびAr102は、互いに同一または異なり、それぞれ独立して、置換もしくは非置換のアリール基;または置換もしくは非置換のヘテロアリール基である。
【0157】
本発明の一実施態様において、L21およびL22は、互いに同一または異なり、それぞれ独立して、直接結合;置換もしくは非置換の炭素数6〜30のアリーレン基;または置換もしくは非置換であり、N、O、またはSを含む炭素数2〜30のヘテロアリーレン基である。
【0158】
本発明の一実施態様において、L21およびL22は、互いに同一または異なり、それぞれ独立して、直接結合;置換もしくは非置換のフェニレン基;置換もしくは非置換のナフチレン基;または置換もしくは非置換のチオフェニレン基である。
【0159】
本発明の一実施態様において、Ar101およびAr102は、互いに同一または異なり、それぞれ独立して、置換もしくは非置換の炭素数6〜50のアリール基;または置換もしくは非置換の炭素数2〜50のヘテロアリール基である。
【0160】
本発明の一実施態様において、Ar101およびAr102は、互いに同一または異なり、それぞれ独立して、置換もしくは非置換の単環〜4環のアリール基;または置換もしくは非置換の単環〜4環のヘテロアリール基である。
【0161】
本発明の一実施態様において、Ar101およびAr102は、互いに同一または異なり、それぞれ独立して、置換もしくは非置換のフェニル基;置換もしくは非置換のビフェニル基;置換もしくは非置換のターフェニル基;置換もしくは非置換のナフチル基;置換もしくは非置換のアントラセン基;置換もしくは非置換のフェナントリル基;置換もしくは非置換のフェナレン基;置換もしくは非置換のフルオレニル基;置換もしくは非置換のベンゾフルオレニル基;置換もしくは非置換のフラン基;置換もしくは非置換のチオフェン基;置換もしくは非置換のジベンゾフラン基;置換もしくは非置換のナフトベンゾフラン基;置換もしくは非置換のジベンゾチオフェン基;または置換もしくは非置換のナフトベンゾチオフェン基である。
【0162】
本発明の一実施態様において、R31〜R38は、水素である。
【0163】
本発明の一実施態様において、前記化学式Hは、下記の化合物の中から選択されたいずれか1つである。
【0164】
【化29】
【0165】
前記ホスト物質は、前記化学式Hで表される化合物に限定されず、当技術分野で知られているものを使用することができ、例えば、縮合芳香族環誘導体またはヘテロ環含有化合物などがある。具体的には、縮合芳香族環誘導体としては、アントラセン誘導体、ピレン誘導体、ナフタレン誘導体、ペンタセン誘導体、フェナントレン化合物、フルオランテン化合物などがあり、ヘテロ環含有化合物としては、カルバゾール誘導体、ジベンゾフラン誘導体、ラダー型フラン化合物、ピリミジン誘導体などがあるが、これらに限定されない。
【0166】
本発明の一実施態様において、前記有機発光素子は、正孔注入層、正孔輸送層、電子輸送層、電子注入層、電子ブロック層、および正孔ブロック層からなる群より選択される1層または2層以上をさらに含んでもよい。
【0167】
もう一つの実施態様において、有機発光素子は、基板上に、アノード、1層以上の有機物層、およびカソードが順次に積層された構造(normal type)の有機発光素子であってもよい。
【0168】
もう一つの実施態様において、有機発光素子は、基板上に、カソード、1層以上の有機物層、およびアノードが順次に積層された逆方向構造(inverted type)の有機発光素子であってもよい。
【0169】
本発明の有機発光素子の有機物層は、単層構造からなってもよいが、2層以上の有機物層が積層された多層構造からなってもよい。例えば、本発明の有機発光素子は、有機物層として、正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層、電子注入層などを含む構造を有することができる。しかし、有機発光素子の構造はこれに限定されず、より少数の有機層を含むことができる。
【0170】
例えば、本発明の一実施態様に係る有機発光素子の構造は、図1に例示されている。
【0171】
図1には、基板101上に、第1電極201、正孔注入層301、正孔輸送層401、発光層501、電子輸送層601、および第2電極701が順次に積層された有機発光素子の構造が例示されている。
【0172】
本発明の一実施態様において、図1の発光層501は、前記化学式1で表される化合物を含むコーティング組成物を用いて形成される。
【0173】
図1は、有機発光素子を例示したものであり、これに限定されない。
【0174】
前記有機発光素子が複数の有機物層を含む場合、前記有機物層は、同一の物質または異なる物質で形成される。
【0175】
本発明の有機発光素子は、有機物層のうちの1層以上が前記化学式1で表される化合物を含むコーティング組成物を用いて形成することを除けば、当技術分野で知られている材料および方法で製造できる。
【0176】
例えば、本発明の有機発光素子は、基板上にアノード、有機物層、およびカソードを順次積層させることにより製造することができる。この時、スパッタリング法(sputtering)や電子ビーム蒸発法(e−beam evaporation)のようなPVD(Physical Vapor Deposition)方法を利用して、基板上に金属または導電性を有する金属酸化物、またはこれらの合金を蒸着させてアノードを形成する。その上に正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子注入層、および電子輸送層を含む有機物層を蒸着または溶液工程により形成した後、その上にカソードとして使用可能な物質を蒸着させることにより製造できる。このような方法以外にも、基板上に、カソード物質から、有機物層物質およびアノード物質を順に蒸着させて有機発光素子を製造することができる。
【0177】
前記アノード物質としては、通常、有機物層への正孔注入が円滑となるように仕事関数の大きい物質が好ましい。本発明において、使用可能なアノード物質の具体例としては、バナジウム、クロム、銅、亜鉛、金のような金属、またはこれらの合金;亜鉛酸化物、インジウム酸化物、インジウムスズ酸化物(ITO)、インジウム亜鉛酸化物(IZO)のような金属酸化物;ZnO:AlまたはSnO:Sbのような金属と酸化物との組み合わせ;およびポリ(3−メチルチオフェン)、ポリ[3,4−(エチレン−1,2−ジオキシ)チオフェン](PEDOT)、ポリピロール、ポリアニリンのような導電性高分子などがあるが、これらのみに限定されるものではない。
【0178】
前記カソード物質としては、通常、有機物層への電子注入が容易となるように仕事関数の小さい物質であることが好ましい。カソード物質の具体例としては、バリウム、マグネシウム、カルシウム、ナトリウム、カリウム、チタン、インジウム、イットリウム、リチウム、ガドリニウム、アルミニウム、銀、スズおよび鉛のような金属、またはこれらの合金;およびLiF/AlまたはLiO/Alのような多層構造の物質などがあるが、これらのみに限定されるものではない。
【0179】
前記正孔注入層は、電極から正孔を注入する層で、正孔注入物質としては、正孔を輸送する能力を有し、アノードからの正孔注入効果、発光層または発光材料に対して優れた正孔注入効果を有する物質が好ましい。また、発光層で生成された励起子の電子注入層または電子注入材料への移動を防止し、薄膜形成能力の優れた化合物が好ましい。また、正孔注入物質のHOMO(highest occupied molecular orbital)がアノード物質の仕事関数と周辺有機物層のHOMOとの間であることが好ましい。正孔注入物質の具体例としては、金属ポルフィリン(porphyrin)、オリゴチオフェン、アリールアミン系の有機物;ヘキサニトリルヘキサアザトリフェニレン系の有機物;キナクリドン(quinacridone)系の有機物;ペリレン(perylene)系の有機物;およびアントラキノンおよびポリアニリンとポリチオフェン系の導電性高分子などがあるが、これらのみに限定されるものではない。
【0180】
前記正孔輸送層は、正孔注入層から正孔を受け取って発光層まで正孔を輸送する層で、正孔輸送物質としては、アノードや正孔注入層から正孔輸送を受けて発光層に移し得る物質で、正孔に対する移動性の大きい物質が好適である。具体例としては、アリールアミン系の有機物、導電性高分子、および共役部分と非共役部分が共にあるブロック共重合体などがあるが、これらのみに限定されるものではない。
【0181】
前記発光物質は、正孔輸送層と電子輸送層から正孔と電子の輸送をそれぞれ受けて結合させることにより可視光線領域の光を発し得る物質であって、本発明の有機発光素子が前記化学式1で表される化合物を含む発光層以外の追加の発光層を含む場合、蛍光や燐光に対する量子効率の良い物質が好ましい。具体例としては、8−ヒドロキシ−キノリンアルミニウム錯体(Alq);カルバゾール系化合物;二量体化スチリル(dimerized styryl)化合物;BAlq;10−ヒドロキシベンゾキノリン−金属化合物;ベンズオキサゾール、ベンズチアゾール、およびベンズイミダゾール系の化合物;ポリ(p−フェニレンビニレン)(PPV)系の高分子;スピロ(spiro)化合物;ポリフルオレン、ルブレンなどがあるが、これらのみに限定されるものではない。
【0182】
前記発光層は、ホスト材料およびドーパント材料を含むことができる。前記ホスト材料としては、縮合芳香族環誘導体またはヘテロ環含有化合物などがある。具体的には、縮合芳香族環誘導体としては、アントラセン誘導体、ピレン誘導体、ナフタレン誘導体、ペンタセン誘導体、フェナントレン化合物、フルオランテン化合物などがあり、ヘテロ環含有化合物としては、カルバゾール誘導体、ジベンゾフラン誘導体、ラダー型フラン化合物、ピリミジン誘導体などがあるが、これらに限定されない。
【0183】
前記ドーパント材料としては、芳香族アミン誘導体、スチリルアミン化合物、ホウ素錯体、フルオランテン化合物、ピレン誘導体、金属錯体などがある。具体的には、芳香族アミン誘導体は、置換もしくは非置換のアリールアミン基を有する縮合芳香族環誘導体であって、アリールアミン基を有するピレン、アントラセン、クリセン、ペリフランテンなどがある。また、スチリルアミン化合物は、置換もしくは非置換のアリールアミンに少なくとも1つのアリールビニル基が置換されている化合物であって、前記置換もしくは非置換のアリールアミンは、アリール基、シリル基、アルキル基、シクロアルキル基、およびアリールアミン基からなる群より1または2以上選択される置換基が置換もしくは非置換のアリールアミン基を意味する。具体的には、スチリルアミン、スチリルジアミン、スチリルトリアミン、スチリルテトラアミンなどがあるが、これらに限定されない。さらに、金属錯体としては、イリジウム錯体、白金錯体などがあるが、これらに限定されない。
【0184】
前記電子注入層は、電極から電子を注入する層で、電子注入物質としては、電子を輸送する能力を有し、カソードからの電子注入効果、発光層または発光材料に対して優れた電子注入効果を有するものが好ましい。また、発光層で生成された励起子の正孔注入層への移動を防止し、薄膜形成能力の優れた化合物が好ましい。具体例としては、フルオレノン、アントラキノジメタン、ジフェノキノン、チオピランジオキシド、オキサゾール、オキサジアゾール、トリアゾール、イミダゾール、ベンゾイミダゾール、ペリレンテトラカルボン酸、フレオレニリデンメタン、アントロンおよびそれらの誘導体、金属錯体化合物および含窒素5員環誘導体などがあるが、これらに限定されない。
【0185】
前記電子輸送層は、電子注入層から電子を受け取って発光層まで電子を輸送する層で、電子輸送物質としては、カソードから電子注入をきちんと受けて発光層に移し得る物質であって、電子に対する移動性の大きい物質が好適である。具体例としては、8−ヒドロキシキノリンのAl錯体;Alqを含む錯体;有機ラジカル化合物;およびヒドロキシフラボン−金属錯体などがあるが、これらのみに限定されるものではない。また、電子輸送層は、従来技術により使用されているような、任意の所望するカソード物質と共に使用可能である。特に、適切なカソード物質は、低い仕事関数を有し、アルミニウム層またはシルバー層が後に続く通常の物質である。具体例としては、セシウム、バリウム、カルシウム、イッテルビウム、およびサマリウムがあり、それぞれの場合、アルミニウム層またはシルバー層が後に続く。
【0186】
前記金属錯体化合物としては、8−ヒドロキシキノリナトリチウム、ビス(8−ヒドロキシキノリナト)亜鉛、ビス(8−ヒドロキシキノリナト)銅、ビス(8−ヒドロキシキノリナト)マンガン、トリス(8−ヒドロキシキノリナト)アルミニウム、トリス(2−メチル−8−ヒドロキシキノリナト)アルミニウム、トリス(8−ヒドロキシキノリナト)ガリウム、ビス(10−ヒドロキシベンゾ[h]キノリナト)ベリリウム、ビス(10−ヒドロキシベンゾ[h]キノリナト)亜鉛、ビス(2−メチル−8−キノリナト)クロロガリウム、ビス(2−メチル−8−キノリナト)(o−クレゾラート)ガリウム、ビス(2−メチル−8−キノリナト)(1−ナフトラート)アルミニウム、ビス(2−メチル−8−キノリナト)(2−ナフトラート)ガリウムなどがあるが、これらに限定されない。
【0187】
前記正孔ブロック層は、正孔のカソード到達を阻止する層で、一般的に、正孔注入層と同一の条件で形成される。具体例としては、オキサジアゾール誘導体やトリアゾール誘導体、フェナントロリン誘導体、BCP、アルミニウム錯体(aluminum complex)などがあるが、これらに限定されない。
【0188】
本発明に係る有機発光素子は、使用される材料によって、前面発光型、後面発光型、または両面発光型であってもよい。
【0189】
本発明の一実施態様において、前記化合物は、有機発光素子以外にも、有機太陽電池または有機トランジスタに含まれる。
【0190】
本発明はまた、前記コーティング組成物を用いて形成された有機発光素子の製造方法を提供する。
【0191】
具体的には、本発明の一実施態様において、基板を用意するステップと、前記基板上に第1電極を形成するステップと、前記第1電極上に1層以上の有機物層を形成するステップと、前記有機物層上に第2電極を形成するステップとを含み、前記有機物層を形成するステップは、前記コーティング組成物を用いて1層以上の有機物層を形成するステップを含む。
【0192】
本発明の一実施態様において、前記コーティング組成物を用いて1層以上の有機物層を形成するステップは、スピンコーティング方法を利用する。
【0193】
他の実施態様において、前記コーティング組成物を用いて1層以上の有機物層を形成するステップは、印刷法を利用する。
【0194】
本発明の例示の態様において、前記印刷法の例には、例えば、インクジェットプリンティング、ノズルプリンティング、オフセットプリンティング、転写プリンティング、またはスクリーンプリンティングなどがあるが、これらに限定されるものではない。
【0195】
本発明の一実施態様に係るコーティング組成物は、構造的な特性から溶液工程が好適で印刷法によって形成可能なため、素子の製造時に時間および費用的に経済的な効果がある。
【0196】
本発明の一実施態様において、前記コーティング組成物を用いて1層以上の有機物層を形成するステップは、前記第1電極上に前記コーティング組成物をコーティングするステップと、前記コーティングされたコーティング組成物を乾燥して硬化するステップとを含む。
【0197】
本発明の一実施態様において、前記コーティング組成物を用いて1層以上の有機物層を形成するステップは、インクジェットコーティング方法またはスピンコーティング方法を利用することである。
【0198】
本発明の一実施態様によれば、前記有機物層は、発光層である。前記コーティング組成物は、発光層のドーパントとして含まれる。
【0199】
本発明の一実施態様において、前記乾燥して硬化するステップは、熱処理によって行われ、熱処理して乾燥するステップにおける熱処理温度は、60℃〜180℃であり、一実施態様によれば、80℃〜180℃であってもよいし、もう一つの実施態様において、120℃〜180℃であってもよい。
【0200】
もう一つの実施態様において、前記熱処理して乾燥して硬化するステップにおける熱処理時間は、1分〜1時間であり、一実施態様によれば、1分〜30分であってもよいし、もう一つの実施態様において、10分〜30分であってもよい。前記熱処理時間の範囲を満足する場合、溶媒を完璧に除去することができる。
【0201】
前記コーティング組成物を用いて1層以上の有機物層を形成するステップにおいて、前記熱処理して乾燥して硬化するステップを含む場合、前記コーティング組成物を用いて形成された有機物層の表面上に他の層を積層する時、溶媒によって溶解したり、形態学的に影響を受けたり、分解されるのを防止することができる。
【実施例】
【0202】
以下、本発明を具体的に説明するために実施例を挙げて詳細に説明する。しかし、本発明に係る実施例は種々の異なる形態に変形可能であり、本発明の範囲が以下に述べる実施例に限定されると解釈されない。本発明の実施例は、当業界における平均的な知識を有する者に本明細書をより完全に説明するために提供されるものである。
【0203】
合成例
合成例1.化合物BD−5の合成
(1)中間体1−Bの合成
【化30】
【0204】
中間体1−A(5g、12.04mmol)、2−アミノフェニルボロン酸(2−aminophenyl boronic acid)(2g、14.44mmol)、Pd(PPh(700mg、0.602mmol)、KCO(7.3g、36.11mmol)を250mLの丸底フラスコに入れた。窒素条件でテトラヒドロフラン(THF:Tetrahydrofuran)200ml、HO 50mlを入れて、80℃まで温度を上げて8時間撹拌した。温度を下げてジクロロメタン(DCM:Dichloromethane)と水を用いて物質を抽出した後、MgSOと酸性白土を入れて撹拌した。シリカゲルに通過させた後、溶媒を除去した。再結晶(methyl chloride/Methanol)により中間体1−Bを分離した。
【0205】
(2)中間体1−Cの合成
【化31】
【0206】
中間体1−B(2.4g、5.612mmol)、4−ブロモジベンゾフラン(4−bromodibenzofuran)(1.16g、4.68mmol)、およびナトリウムtert-ブトキシド(NaOt−Bu)(674mg、7.02mmol)を250mlの丸底フラスコに入れた。窒素条件でトルエン100mlを入れて、100℃まで温度を上げた。Pd(P(t−Bu))(71.75mg、0.14mmol)を丸底フラスコに入れて光を遮断した後、2時間撹拌した。温度を下げてジクロロメタン(DCM:Dichloromethane)と水を用いて物質を抽出した後、MgSOと酸性白土を入れて撹拌した。シリカゲルに通過させた後、溶媒を除去した。カラムクロマトグラフィー(methyl chloride/Hexane)により中間体1−Cを分離した。
【0207】
(3)化合物BD−5の合成
【化32】
【0208】
中間体1−C(2.4g、4.04mmol)、1,6−ジブロモ−3,8−ジイソプロピルピレン(1,6−dibromo−3,8−diisopropylpyrene)(780mg、1.75mmol)、およびナトリウムtert-ブトキシド(NaOt−Bu)(506.6mg、5.27mmol)を250mlの丸底フラスコに入れた。窒素条件でToluene100mlを入れて、100℃まで温度を上げた。Pd(P(tBu))(53.9mg、0.105mmol)を丸底フラスコに入れて、光を遮断した後、2時間撹拌した。温度を下げてジクロロメタン(DCM:Dichloromethane)と水を用いて物質を抽出した後、MgSOと酸性白土を入れて撹拌した。シリカゲルに通過させた後、溶媒を除去した。カラムクロマトグラフィー(methyl chloride/Hexane)により化合物BD−5を分離した。
MS(LC−MS):1469.58m/z[M
図2は、前記化合物BD−5のLC−MSデータを示す図である。
【0209】
合成例2.化合物BD−10の合成
(1)中間体2−Bの合成
【化33】
【0210】
中間体2−A(2.5g、6.08mmol)、2−アミノフェニルボロン酸(2−aminophenyl boronic acid)(1g、7.3mmol)、Pd(PPh(351mg、0.304mmol)、KCO(2.515g、18.24mmol)を250mLの丸底フラスコに入れた。窒素条件でテトラヒドロフラン(THF:Tetrahydrofuran)100ml、HO 25mlを入れて、80℃まで温度を上げて8時間撹拌した。温度を下げてジクロロメタン(DCM:Dichloromethane)と水を用いて物質を抽出した後、MgSOと酸性白土を入れて撹拌した。シリカゲルに通過させた後、溶媒を除去した。再結晶(methyl chloride/Methanol)により中間体2−Bを分離した。
【0211】
(2)中間体2−Cの合成
【化34】
【0212】
中間体2−B(2.1g、3.5mmol)、4−ブロモジベンゾフラン(4−bromodibenzofuran)(1.4g、2.9mmol)、およびナトリウムtert-ブトキシド(NaOt−Bu)(421mg、4.38mmol)を250mlの丸底フラスコに入れた。窒素条件でToluene100mlを入れて、100℃まで温度を上げた。Pd(P(tBu))(44.8mg、0.1mmol)を丸底フラスコに入れて、光を遮断した後、2時間撹拌した。温度を下げてジクロロメタン(DCM:Dichloromethane)と水を用いて物質を抽出した後、MgSOと酸性白土を入れて撹拌した。シリカゲルに通過させた後、溶媒を除去した。カラムクロマトグラフィー(methyl chloride/Hexane)により中間体2−Cを分離した。
【0213】
(3)化合物BD−10の合成
【化35】
【0214】
中間体2−C(2g、4.38mmol)、1,6−ジブロモ−3,8−ジイソプロピルピレン(1,6−dibromo−3,8−diisopropylpyrene)(782mg、1.75mmol)、およびナトリウムtert-ブトキシド(NaOt−Bu)(506.6mg、5.27mmol)を250mlの丸底フラスコに入れた。窒素条件でトルエン(Toluene)100mlを入れて、100℃まで温度を上げた。Pd(P(tBu))(53.75mg、0.105mmol)を丸底フラスコに入れて、光を遮断した後、2時間撹拌した。温度を下げてジクロロメタン(DCM:Dichloromethane)と水を用いて物質を抽出した後、MgSOと酸性白土を入れて撹拌した。シリカゲルに通過させた後、溶媒を除去した。カラムクロマトグラフィー(methyl chloride/Hexane)により化合物BD−10を分離した。
MS(LC−MS):1469.58m/z[M
図3は、前記化合物BD−10のLC−MSデータを示す図である。
【0215】
合成例3.化合物BD−24の合成
(1)中間体3−Bの合成
【化36】
【0216】
中間体3−A(2.8g、7.35mmol)、1−ブロモ−4−フルオロ−2−ヨードベンゼン(1−bromo−4−fluoro−2−iodobenzene)(1.82g、7.3mmol)、Pd(PPh(424mg、0.37mmol)、KCO(2.47g、22.05mmol)を250mLの丸底フラスコに入れた。窒素条件下でテトラヒドロフラン(THF:Tetrahydrofuran)100ml、HO 25mlを入れて、80℃まで温度を上げて8時間撹拌した。温度を下げてジクロロメタン(DCM:Dichloromethane)と水を用いて物質を抽出した後、MgSOと酸性白土を入れて撹拌した。シリカゲルに通過させた後、溶媒を除去した。再結晶(methyl chloride/Methanol)により中間体3−Bを分離した。
【0217】
(2)中間体3−Cの合成
【化37】
【0218】
中間体3−B(2.28g、4.49mmol)、4−アミノジベンゾフラン(4−aminodibenzofuran)(985mg、5.39mmol)、およびナトリウムtert-ブトキシド(NaOt−Bu)(646mg、6.73mmol)を250mlの丸底フラスコに入れた。窒素条件でトルエン(Toluene)100mlを入れて、100℃まで温度を上げた。Pd(P(tBu))(68.8mg、0.134mmol)を丸底フラスコに入れて、光を遮断した後、2時間撹拌した。温度を下げてジクロロメタン(DCM:Dichloromethane)と水を用いて物質を抽出した後、MgSOと酸性白土を入れて撹拌した。シリカゲルに通過させた後、溶媒を除去した。カラムクロマトグラフィー(methyl chloride/Hexane)により中間体3−Cを分離した。
【0219】
(3)化合物BD−24の合成
【化38】
【0220】
中間体3−C(2g、3.27mmol)、1,6−ジブロモ−3,8−ジイソプロピルピレン(1,6−dibromo−3,8−diisopropylpyrene)(660mg、1.5mmol)、およびナトリウムtert-ブトキシド(NaOt−Bu)(428mg、4.46mmol)を250mlの丸底フラスコに入れた。窒素条件でトルエン(Toluene)100mlを入れて、100℃まで温度を上げた。Pd(P(tBu))(152mg、0.3mmol)を丸底フラスコに入れて、光を遮断した後、2時間撹拌した。温度を下げてジクロロメタン(DCM:Dichloromethane)と水を用いて物質を抽出した後、MgSOと酸性白土を入れて撹拌した。シリカゲルに通過させた後、溶媒を除去した。カラムクロマトグラフィー(methyl chloride/Hexane)により化合物BD−24を分離した。
MS(LC−MS):1505.97m/z[M
図4は、前記化合物BD−24のLC−MSデータを示す図である。
【0221】
有機発光素子の作製
<実施例1>
【化39】
【0222】
ITO(indium tin oxide)が1,500Åの厚さに薄膜蒸着されたガラス基板を、洗剤を溶かした蒸留水に入れて、超音波洗浄した。ITOを30分間洗浄した。この後、蒸留水で2回繰り返し超音波洗浄を10分間進行させた。蒸留水洗浄が終わった後、イソプロピルアルコールおよびアセトンの溶剤で超音波洗浄をそれぞれ30分ずつし乾燥させた後、前記基板をグローブボックスに輸送させた。このように用意されたITO透明電極上に、前記化合物Aおよびp−ドーパント(p−dopant)として化合物IBを8:2の重量比でシクロヘキサノンに混合したコーティング組成物をスピンコーティングして300Åの厚さの正孔注入層を形成し、窒素雰囲気下、ホットプレートで220℃および30分の条件でコーティング組成物を硬化させた。前記正孔注入層上に、前記化合物Aを有機溶媒(トルエン:Toluene)に1%の重量比で溶かした組成物をスピンコーティングして400Åの厚さの正孔輸送層を形成した。この後、窒素雰囲気下、ホットプレートで230℃および30分の条件でコーティング組成物を硬化させた。前記正孔輸送層上に、前記化合物Bと化合物BD−5(6%濃度)を有機溶媒(トルエン:Toluene)に0.6%の重量比で溶かした組成物をスピンコーティングして200Åの厚さの発光層を形成し、窒素雰囲気下、ホットプレートで120℃および10分の条件でコーティング組成物を硬化させた。
【0223】
この後、真空蒸着機に移して、前記化合物G(電子輸送層、200Å)、LiF(カソード、12Å)、およびAl(カソード、2000Å)を順次蒸着して有機発光素子を作製した。前記の過程で、有機物の蒸着速度は0.4〜0.7Å/secを維持し、カソードのLiFは0.3Å/sec、アルミニウムは2Å/secの蒸着速度を維持し、蒸着時の真空度は2×10−7〜5×10−8torrを維持した。
【0224】
<実施例2>
前記実施例1において前記化合物BD−5の代わりに前記化合物BD−10を用いたことを除き、実施例1と同様の方法で有機発光素子を製造した。
【0225】
<実施例3>
前記実施例1において前記化合物BD−5の代わりに前記化合物BD−24を用いたことを除き、実施例1と同様の方法で有機発光素子を製造した。
【0226】
<比較例1>
前記実施例1において前記化合物BD−5の代わりに前記化合物Cを用いたことを除き、実施例1と同様の方法で有機発光素子を製造した。
【0227】
<比較例2>
前記実施例1において前記化合物BD−5の代わりに前記化合物Dを用いたことを除き、実施例1と同様の方法で有機発光素子を製造した。
【0228】
<比較例3>
前記実施例1において前記化合物BD−5の代わりに前記化合物Eを用いたことを除き、実施例1と同様の方法で有機発光素子を製造した。
【0229】
<比較例4>
前記実施例1において前記化合物BD−5の代わりに前記化合物Fを用いたことを除き、実施例1と同様の方法で有機発光素子を製造した。
【0230】
素子評価
前記実施例1〜実施例3、および比較例1〜比較例4により作製された有機発光素子を、10mA/cmの電流密度で駆動電圧と効率を測定した結果を、下記表1に示した。
溶解度の測定方法は次の通りである。まず、化合物を溶媒に溶かした後、1日間放置しておく。この後、レーザを溶液に通過させてチンダル効果により沈殿物が生じたかを把握し、溶解度を測定した。
【0231】
【表1】
【0232】
前記表1から明らかなように、本発明の化学式1で表される化合物を含むコーティング組成物を用いた実施例1〜実施例3の有機発光素子は、前記化学式1のAr1〜Ar6がアルキル基である比較例1および比較例2に比べて、低電圧および高効率の特性を示し、有機発光素子に適用可能であることを確認することができた。具体的には、前記化学式1のAr1〜Ar6が置換もしくは非置換のアリール基である化合物を含むコーティング組成物を発光層のドーパントとして用いた実施例1〜3の場合、前記化学式1のAr1〜Ar6がアルキル基である化合物を含むコーティング組成物を発光層のドーパントとして用いた前記比較例1および比較例2に比べて、溶解性が向上し、発光波長がディープブルー(深青色)に近くなることが考えられる。また、このような向上した溶解性によって、溶液工程で作製して素子の性能を評価した時、駆動電圧が低くなり、電力効率が上昇したことが分かる。
【0233】
モノアミンの形態である化合物Eと化合物Fをドーパントとして用いた比較例3および4の場合、実施例1〜3に比べて、駆動電圧が高く、電力効率が低い。電気光学的特性をみた時、ドーパントとしての使用に適切でなく、これによってホストからドーパントへエネルギーの伝達がうまく行われないことが分かる。
【0234】
以上、本発明の好ましい実施例について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、特許請求の範囲と発明の詳細な説明の範囲内で多様に変形して実施することが可能であり、これも発明の範疇に属する。
【符号の説明】
【0235】
101:基板
201:第1電極
301:正孔注入層
401:正孔輸送層
501:発光層
601:電子輸送層
701:第2電極
図1
図2
図3
図4