特許第6953065号(P6953065)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6953065六方晶系酸化モリブデンナノロッドの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6953065
(24)【登録日】2021年10月1日
(45)【発行日】2021年10月27日
(54)【発明の名称】六方晶系酸化モリブデンナノロッドの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C01G 39/02 20060101AFI20211018BHJP
   H01G 11/24 20130101ALI20211018BHJP
   H01G 11/46 20130101ALI20211018BHJP
   H01G 11/86 20130101ALI20211018BHJP
【FI】
   C01G39/02
   H01G11/24
   H01G11/46
   H01G11/86
【請求項の数】12
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2020-517478(P2020-517478)
(86)(22)【出願日】2018年11月23日
(65)【公表番号】特表2020-535099(P2020-535099A)
(43)【公表日】2020年12月3日
(86)【国際出願番号】KR2018014548
(87)【国際公開番号】WO2019103536
(87)【国際公開日】20190531
【審査請求日】2020年3月26日
(31)【優先権主張番号】10-2017-0158922
(32)【優先日】2017年11月24日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】ドンジュン・イ
(72)【発明者】
【氏名】ソクヒョン・ユン
(72)【発明者】
【氏名】ビョングク・リュ
【審査官】 神野 将志
(56)【参考文献】
【文献】 S.R.Dhage et al.,Low temperature fabrication of hexagon shaped h-MoO3 nanorods and its phase transformation,Materials Chemistry and Physics,NL,ELSEVIER,2009年04月15日,Vol.114,pp.511-514
【文献】 Jianbin Zhou et al.,Synthesis of hexagonal MoO3 nanorods and a study of their electrochemical performance as anode materials for lithium-ion batteries,Journal of Materials Chemistry A,英国,The Royal Society of Chemistry,2015年04月14日,Vol.3,pp.7463-7468
【文献】 A.Chithambararaj et al.,Hydrothermally Synthesized h-MoO3 and alpha-MoO3 Nanocrystals: New Findings on Crystal-structure-dependent Charge Transport,Crystal growth and design,米国,American Chemical Society,2016年02月03日,Vol.16,pp.1984-1995
【文献】 Lei Zheng et al.,Novel Metastable Hexagonal MoO3 Nanobelts: Synthesis Photochromic and Electrochromic Properties,Chemistry of Metals,米国,American Chemical Society,2009年11月11日,Vol21,pp5681-5690
【文献】 Bin Hui et al.,Low-temperature synthesis of herarchical flower-like hexagonal molybdenum trioxide films on wood surfaces and their light-driven molecular responses,Journal of Material Science,米国,Springer,2016年08月19日,Vol.51 ,pp.10926-10932
【文献】 V.V.Atuchin et al.,Morphorogy and Structure of Hexagonal MoO3 Nanorods,Inorganic Materials,英国,PLEIADES,2008年05月30日,Vol.44,pp.622-627
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01G 39/02
H01G 11/24
H01G 11/46
H01G 11/86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モリブデン酸化物前駆体物質と水溶性セルロースとを含む混合水溶液を製造する段階(段階1);および
前記混合水溶液を、50〜100℃に昇温した後に無機酸を添加して反応させる段階(段階2)を含む、六方晶系酸化モリブデン(h−MoO)ナノロッド(nano rod)の製造方法。
【請求項2】
前記モリブデン酸化物前駆体物質は、モリブデン酸アンモニウム、モリブデン酸ナトリウム、およびMoO−アンモニア溶液からなる群より選択される1種以上である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記水溶性セルロースは、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、およびヒドロキシプロピルセルロースからなる群より選択される1種以上である、請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記モリブデン酸化物前駆体物質と水溶性セルロースの重量比は、1:0.05〜1:5である、請求項1から3のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項5】
前記無機酸は、塩酸、硝酸、硫酸、および臭素酸からなる群より選択される1種以上である、請求項1から4のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項6】
前記モリブデン酸化物前駆体物質と無機酸のモル比は、1:0.5〜1:2である、請求項1から5のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項7】
前記段階1において、前記混合水溶液に炭素ナノ繊維、炭素ナノチューブ、酸化グラフェンからなる群より選択される1種以上の炭素系導電材料を追加的に添加する、請求項1から6のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項8】
前記段階2において、無機酸を添加した後、反応液のpHが2以下である、請求項1から7のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項9】
前記段階2の反応時間は、2時間〜55時間である、請求項1から8のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項10】
前記段階2の反応圧力は、0.5〜1.5気圧である、請求項1から9のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項11】
前記六方晶系酸化モリブデン(h−MoO)ナノロッド(nano rod)は、直径が30nm〜500nmであり、長さが0.8μm〜10μmである、請求項1から10のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項12】
前記六方晶系酸化モリブデン(h−MoO)ナノロッド(nano rod)は、長さに対する直径の縦横比が1:2〜1:100である、請求項1から11のいずれか一項に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願との相互参照
本出願は、2017年11月24日付の韓国特許出願第10−2017−0158922号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示されたすべての内容は本明細書の一部として含まれる。
本発明は、六方晶系酸化モリブデンナノロッドの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
エネルギー貯蔵装置の一つであるスーパーキャパシタは、小型から大型に至るまでその応用分野が多様に拡大しており、電力密度が高く、充放電速度が速く、充放電サイクル寿命が長いという特徴がある。スーパーキャパシタの中でも、シュードキャパシタ(Pseudo capacitor)は、金属酸化物が電極材料として用いられ、最近は、そのうち、酸化モリブデン(MoO)が有する広い作動電圧領域によって多くの研究が進められている。
【0003】
特に、酸化モリブデン(MoO)は様々な結晶構造が存在するが、斜方晶系(orthorhombic)結晶構造のα−MoOと六方晶系(hexagonal)結晶構造のh−MoOが代表的である。エネルギー貯蔵物質としての面から、α−MoOが1.5個のリチウムイオンの貯蔵が可能であるのに対し、h−MoOには1.6個のリチウムイオンの貯蔵が可能でより高い容量を有することが知られている。また、h−MoOは、結晶構造の3つの方面ともにリチウムイオンの挿入が可能であるが、α−MoOは平面方向にのみ可能で、h−MoOが出力特性においてより優れた利点があると予想される。
【0004】
しかし、六方晶系酸化モリブデンの場合、準安定(metastable)結晶構造で、一般的な焼結法では合成が難しい問題がある。これにより、六方晶系酸化モリブデンは、大部分高温高圧の水熱合成法により合成するが、この合成法は大量生産に適合しない不都合があり、安定性、工程費用などの問題で実際の商業化において制約がある。
【0005】
したがって、シュードキャパシタ電極材料として有用な六方晶系酸化モリブデン(h−MoO)を実際に応用するにあたり、安価で大量生産が可能となるように、高温高圧の水熱反応ではない、低温沈殿反応などにより容易に製造できる工程に対する研究が要求され続けている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、六方晶系酸化モリブデンナノロッドの製造方法を提供する。
また、本発明は、前記製造方法で製造された六方晶系酸化モリブデンナノロッドを提供する。
さらに、本発明は、前記六方晶系酸化モリブデンナノロッドを含むシュードキャパシタの負極を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明は、モリブデン酸化物前駆体物質と水溶性セルロースとを含む混合水溶液を製造する段階(段階1);および前記混合水溶液を、50〜100℃に昇温した後に無機酸を添加して反応させる段階(段階2)を含む、六方晶系酸化モリブデン(h−MoO)ナノロッド(nano rod)の製造方法を提供する。
以下、各段階ごとに本発明を詳しく説明する。
【0008】
モリブデン酸化物前駆体物質と水溶性セルロースとを含む混合水溶液の製造段階(段階1)
本発明は、モリブデン酸化物前駆体物質を含む水溶液でモリブデン酸化物前駆体物質を低温沈殿させて、ナノロッド(nano rod)形状の六方晶系酸化モリブデン(h−MoO)を合成することを特徴とする。
【0009】
前記段階1は、後続の段階でモリブデン酸化物前駆体物質が無機酸を用いた沈殿反応により生成されるモリブデン酸化物が六方晶系(hexagonal)結晶構造のナノロッド(nano rod)形状を有するように、構造形成製剤(structuring agent)としてカルボキシメチルセルロース(CMC、carboxymethyl cellulose)などの水溶性セルロースを含む混合水溶液を製造する段階である。
【0010】
まず、前記段階1で使用するモリブデン酸化物前駆体物質は、後続の低温沈殿反応で六方晶系(hexagonal)結晶構造のナノロッド(nano rod)形状が形成されるようにする面から、水溶液で安定した特徴を有する物質を使用することができる。好ましくは、前記モリブデン酸化物前駆体物質は、モリブデン酸アンモニウム(ammonium molybdate)、モリブデン酸ナトリウム(sodium molybdate)などのモリブデン酸塩や、バルクMoOをアンモニア水に溶解した溶液状態のMoO−アンモニア(MoO−ammonia)溶液のうちの1種以上が挙げられる。
【0011】
前記段階1の混合水溶液におけるモリブデン酸化物前駆体物質の濃度は、Mo金属を基準として、約20mM〜2400mM、あるいは約50mM〜2200mM、あるいは約100mM〜2000mMであってもよい。前記モリブデン酸化物前駆体物質の濃度が約20mM未満の場合には、MoOの溶解による収率が低下し、MoOが全く生成されない問題が発生することがある。また、前記モリブデン酸化物前駆体物質の濃度が約2400mM超過の場合には、段階1の混合水溶液でモリブデン酸化物前駆体が溶解せず、六方晶系(hexagonal)結晶構造のナノロッド(nano rod)と混ざり合う問題が発生することがある。
【0012】
前記段階1で使用する水溶性セルロースは、セルロース(cellulose)官能基とモリブデン酸化物前駆体との間の相互作用により、モリブデン酸化物が後続の低温沈殿反応で六方晶系(hexagonal)結晶構造のナノロッド(nano rod)形状を有するようにする。好ましくは、前記水溶性セルロースは、水に一定量以上溶解し、セルロース(cellulose)官能基を有する特徴があるものを使用することができる。特に、カルボキシメチルセルロースを用いずに沈殿反応を行う場合に生成されるモリブデン酸化物は、マイクロ(micro)サイズの粒子が生成されたり、ナノサイズの粒子が生成されるとしてもプレート形状や非晶質形状が得られ、本発明のような薄くて長いナノロッド(nano rod)形状が得られない問題がある。
【0013】
特に、前記段階1の混合水溶液において、水溶性セルロースは、後続の段階でモリブデン酸化物が六方晶系(hexagonal)結晶構造のナノロッド(nano rod)形状を有するようにする構造形成製剤(structuring agent)として使用される。このような水溶性セルロースを用いて、高温高圧の水熱合成法を適用しなくても常圧の低温沈殿反応でもナノロッド(nano rod)形状の六方晶系酸化モリブデン(h−MoO)を容易に製造することができる。このような水溶性セルロースとしては、カルボキシメチルセルロース(CMC、carboxymethyl cellulose)、ヒドロキシエチルセルロース(hydroxyethyl cellulose)、ヒドロキシプロピルセルロース(hydroxypropyl cellulose)などの1種以上が挙げられる。
【0014】
本発明では、前記段階1で水溶性セルロースを用いてモリブデン酸化物前駆体物質を含む水溶液を製造することにより、既に知られたイオン交換法による陽イオン交換工程などを追加的に行わなくても、陽イオンの種類による変化なしに同一の効果を得ることができて、全体工程段階を簡素化するという利点がある。
【0015】
前記段階1の混合水溶液において、水溶性セルロースの濃度は、水溶液に投入する水の体積を基準として、約5g/L〜100g/L、あるいは約6g/L〜90g/L、約6.5g/L〜80g/Lであってもよい。前記カルボキシメチルセルロース(CMC、carboxymethyl cellulose)の濃度が約5g/L未満の場合には、MoOナノロッド(nanorod)が形成されず、マイクロ(mirco)粒子が形成される問題が発生することがある。さらに、前記水溶性セルロースの濃度が約100g/Lを超える場合には、MoO沈殿自体が生成されない問題が発生することがある。
【0016】
また、前記段階1の混合水溶液において、前記モリブデン酸化物前駆体物質と水溶性セルロースの重量比は、1:0.05〜1:5、あるいは1:0.1〜1:4、あるいは1:0.15〜1:3が好ましい。前記重量比が1:0.05未満の場合には、後続の段階で沈殿反応により生成されるモリブデン酸化物の形状が均一に調節されないことがあり、前記重量比が1:5超過の場合には、モリブデン酸化物の沈殿が生じないことがある。
【0017】
一方、前記段階1において、前記混合水溶液に炭素ナノ繊維(carbon nano fiber)、炭素ナノチューブ(carbon nano tube)、酸化グラフェン(graphene oxide)などの炭素系導電材料1種以上を追加的に添加して、六方晶系酸化モリブデン(h−MoO)ナノロッド(nano rod)を含む複合体を製造することができる。特に、このように得られた六方晶系酸化モリブデン(h−MoO)ナノロッド(nano rod)と炭素ナノ繊維(carbon nano fiber)、炭素ナノチューブ(carbon nano tube)、酸化グラフェン(graphene oxide)などの炭素系導電材料の複合体は、シュードキャパシタ用電極材料への適用時、優れたエネルギー貯蔵能力と共に導電度を向上させて高い出力特性を示すことができる。
【0018】
この時、前記モリブデン酸化物前駆体物質と炭素系導電材料の重量比は、1:0.01〜1:0.5、あるいは1:0.01〜1:0.4、あるいは1:0.015〜1:0.3が好ましい。前記重量比が1:0.01未満の場合には、炭素系導電材料による導電性向上効果がわずかであり、前記重量比が1:0.5超過の場合には、活性MoOの比率が減少して比静電容量が低くなる。
【0019】
前記段階1の混合水溶液を製造する段階は、具体的には、約20〜25℃の常温で約0.5〜1.5気圧、好ましくは約1気圧程度の常圧条件下で行うことができる。
【0020】
前記段階1の混合水溶液に無機酸を添加して反応させる段階(段階2)
前記段階2は、前記段階1の混合水溶液を、約50〜100℃に昇温した後に無機酸を添加して反応させることによって、最終的に六方晶系酸化モリブデン(h−MoO)ナノロッド(nano rod)を製造する段階である。
【0021】
前記無機酸は、pHを約2以下または0.1〜2、好ましくは約1以下または約0.2〜1に十分に低下させる強酸成分であれば良く、この分野に使用可能と知られた成分であれば特別な制約なく適用可能である。例えば、塩酸、硝酸、硫酸、臭素酸などの酸成分のうちの1種以上を使用することができる。特に、工程の便宜およびコスト節減の面からは、塩酸、硝酸を使用することがより好ましい。
【0022】
前記無機酸の使用量は特に限らないが、前記段階1で使用したモリブデン酸化物前駆体物質と無機酸のモル比が1:0.5〜1:2、あるいは1:0.6〜1:1.8、あるいは1:0.7〜1:1.6となるように使用することが好ましい。前記モル比が1:0.6未満の場合には、前記無機酸の使用による効果がわずかで沈殿が発生せず、前記モル比が1:2超過の場合には、反応効果が実質的により増加しないことがある。
【0023】
また、前記段階2の反応は、無機酸を添加した後、反応液のpHを約2以下または約0.1〜2、好ましくは約1以下または約0.2〜1に調節して行うことが好ましい。
【0024】
一方、前記段階2は、前記段階1の混合水溶液を、反応温度の約50℃以上に昇温させた後に、無機酸を添加して行うことができる。前記無機酸を約50℃未満の温度で投入する場合には、モリブデン−セルロース複合体の形成によって粒子の均一性に問題がある。
【0025】
前記段階2の反応は、約50℃〜約100℃、好ましくは約55℃〜約90℃、より好ましくは約65℃〜約85℃の高温で行うことができる。前記反応温度が約50℃未満の場合には、無機酸を添加しても前記段階2の反応が十分に進行せず、モリブデン酸化物のナノロッド(nanorod)ではない、マイクロ粒子が生成される。また、混合水溶液に含まれている水の沸点によって、前記反応温度が100℃を超える場合には、別途の水熱反応器、コンデンサなどの追加の工程設備が必要になる全体工程効率および費用の増加が生じる。
【0026】
前記段階2の反応時間は、約2時間〜55時間、または好ましくは約3〜50時間、より好ましくは約6〜48時間であってもよい。前記反応時間が約2時間未満の場合には、無機酸との反応が十分になされず、六方晶系酸化モリブデン(h−MoO)ナノロッド(nano rod)が生成されないことがある。また、前記段階2の反応時間が約55時間を超える場合には、実質的に反応がさらに進行しないことがある。
【0027】
さらに、前記段階2の沈殿反応は、約0.5気圧〜約1.5気圧、好ましくは約1気圧程度の常圧範囲で行うことができる。前記反応圧力が約0.5気圧未満の場合には、水蒸発による濃度変化および追加の設備が必要になる。さらに、前記反応圧力が約1.5気圧を超える場合には、別途の水熱反応器、コンデンサなどの追加の工程設備が必要になる。
【0028】
一方、前記段階1の混合水溶液に炭素ナノ繊維(carbon nano fiber)、炭素ナノチューブ(carbon nano tube)、酸化グラフェン(graphene oxide)などの炭素系導電材料を1種以上追加的に添加した場合に、具体的には、超音波分散機などにより炭素系導電材料を十分に分散させた後、無機酸を添加して沈殿反応を行う段階2を行うことが好ましい。炭素系導電材料が十分に分散しない場合、炭素系導電材料の凝集によって導電度向上効果を十分に得にくい。
【0029】
また、前記段階2を行った後に、生成された六方晶系酸化モリブデン(h−MoO)ナノロッド(nano rod)と炭素ナノ繊維(carbon nano fiber)、炭素ナノチューブ(carbon nano tube)、酸化グラフェン(graphene oxide)などの炭素系導電材料の複合体に対して、水素を含むガスの雰囲気下で熱処理する段階を追加的に含んでもよい。このような熱処理工程により、h−MoOの部分的還元とCNFなどの炭素系導電材料の表面改質による追加的な導電度向上とそれによるエネルギー貯蔵能力の改善効果を得ることができる。
【0030】
前記熱処理段階は、具体的には、4vol%のH/Arガスを投入する条件下、約200℃〜350℃、あるいは約220℃〜約340℃の温度で行うことができる。前記熱処理工程が約200℃未満で行われる場合には、前記熱処理段階による粒子の結晶化効果などを十分に得にくいことがある。また、前記熱処理工程条件が約350℃を超える場合には、ナノロッドの凝集と斜方晶系(orthorhombic)形態のモリブデン酸化物(MoO)への転換が行われ、結果的に、斜方晶系(orthorhombic)形態のモリブデン酸化物(MoO)マイクロ粒子(micro particle)が形成されることがある。
【0031】
六方晶系酸化モリブデン(h−MoO)ナノロッド(nano rod)
また、本発明は、上述した製造方法で製造される六方晶系酸化モリブデン(h−MoO)ナノロッド(nano rod)を提供する。
【0032】
本発明の酸化モリブデンは、六方晶系(hexagonal)結晶構造のh−MoOを有することを特徴とする。ここで、六方晶系は、六方晶系結晶系の結晶構造を称する。特に、既存の斜方晶系(orthorhombic)結晶構造のα−MoOが1.5個のリチウムイオンの貯蔵が可能であるのに対し、h−MoOには1.6個のリチウムイオンの貯蔵が可能でより高い容量を有することができる。
【0033】
また、前記六方晶系酸化モリブデン(h−MoO)は、ナノロッド(nano rod)形状を有するもので、既存のプレート(plate)形態の板状形や非結晶形態や顆粒形態のナノ粒子ではない、薄くて長い棒状を有することを特徴とする。このようなナノロッド(nano rod)形状を有する場合に、広い表面積と容易な電子伝達を特徴とし、高い比静電容量を期待することができる。
【0034】
特に、前記六方晶系酸化モリブデン(h−MoO)ナノロッド(nano rod)は、直径が約30nm〜約500nmであり、長さが約0.8μm〜約10μmであってもよい。具体的には、前記六方晶系酸化モリブデン(h−MoO)ナノロッド(nano rod)の直径は、約40nm〜約400nm、あるいは約50nm〜約300nmであってもよく、長さは、約0.9μm〜約8μm、あるいは約1μm〜約4.5μmであってもよい。
【0035】
また、本発明により製造された六方晶系酸化モリブデン(h−MoO)は、ナノロッド(nano rod)形状を有することを特徴とし、長さに対する直径の縦横比が約1:2〜約1:100、または約1:5〜約1:50、または約1:10〜約1:40であってもよい。
【0036】
前記六方晶系酸化モリブデン(h−MoO)ナノロッド(nano rod)は、表面積が広いため、炭素系導電材料、例えば、炭素ナノ繊維(carbon nano fiber)、カーボンブラック、炭素ナノチューブのような材料とうまく混合できる。これにより、前記六方晶系酸化モリブデン(h−MoO)ナノロッド(nano rod)と炭素系導電材料との複合体形態で提供可能である。
【0037】
シュードキャパシタ用負極
また、本発明は、上述のような六方晶系酸化モリブデン(h−MoO)ナノロッド(nano rod)を含むシュードキャパシタ用負極を提供する。
特に、前記シュードキャパシタ用負極は、前記六方晶系酸化モリブデン(h−MoO)ナノロッド(nano rod)を炭素系導電材料との複合体形態で含むことができる。
【0038】
ここで、前記六方晶系酸化モリブデン(h−MoO)ナノロッド(nano rod)の具体的な結晶構造と形状などと製造方法、および炭素系導電材料の種類などは上述した通りであり、詳細な説明は省略する。
【0039】
また、前記シュードキャパシタ用負極は、前記六方晶系酸化モリブデン(h−MoO)ナノロッド(nano rod)のほか、バインダーおよび導電材を追加的に含むことができる。一例として、前記シュードキャパシタ用負極は、カーボンブラック、アセチレンブラック、活性炭素、炭素ナノチューブ、およびバルカンカーボン(Vulcan carbon)からなる群より選択された1種以上の導電材を追加的に含んでもよい。このうち、価格および利便性の面から、カーボンブラック、アセチレンブラックなどを使用することが好ましい。さらに、前記シュードキャパシタ用負極は、ポリビニリデンフルオライド(PDVF、poly−vinylidene fluoride)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE、polytetrafluoroethylene)、ナフィオン(Nafion)、およびカルボキシメチルセルロース(CMC、carboxymethyl cellulose)からなる群より選択された1種以上のバインダーを追加的に含んでもよい。このうち、電解質における構造安定性の面から、PVDF、PTFEなどを使用することが好ましい。
【発明の効果】
【0040】
上述のように、本発明による製造方法は、水溶性セルロースを用いて、高温高圧の水熱合成法を適用しなくても常圧の低温沈殿反応でもナノロッド(nano rod)形状の六方晶系酸化モリブデン(h−MoO)を容易に製造するもので、これにより製造された六方晶系酸化モリブデン(h−MoO)ナノロッド(nano rod)は、炭素ナノ繊維(carbon nano fiber)などの炭素系導電材料と適切な混合が可能で、シュードキャパシタの負極材料に有用に使用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0041】
図1】本発明の実施例1により製造された六方晶系酸化モリブデン(h−MoO)ナノロッドのSEMイメージを示すものである。
図2】本発明の実施例2により製造された六方晶系酸化モリブデン(h−MoO)ナノロッドのSEMイメージを示すものである。
図3】本発明の実施例3により製造された六方晶系酸化モリブデン(h−MoO)ナノロッドのSEMイメージを示すものである。
図4】本発明の実施例4により製造された六方晶系酸化モリブデンナノロッドのカーボンファイバー(h−MoO nano rod−CNF)複合体のXRD測定グラフを示すものである。
図5】本発明の実施例5により熱処理した六方晶系酸化モリブデンナノロッドのカーボンファイバー(h−MoO nano rod−CNF)複合体のXRD測定グラフを示すものである。
図6】本発明の実施例4により製造された六方晶系酸化モリブデンナノロッドのカーボンファイバー(h−MoO nano rod−CNF)複合体のSEMイメージおよび実施例5によりこれを熱処理した後のSEMイメージを示すものである(a:実施例4、b:実施例5)。
図7】本発明の比較例1により製造された六方晶系酸化モリブデン(h−MoO)のXRD測定グラフを示すものである。
図8】本発明の比較例1により製造された六方晶系酸化モリブデン(h−MoO)不定形粒子のSEMイメージを示すものである。
図9】本発明の比較例2〜5により製造された六方晶系酸化モリブデン(h−MoO)粒子のSEMイメージを示すものである(a:比較例2、b:比較例3、c:比較例4、d:比較例5)。
図10】本発明の比較例6により製造された酸化モリブデン(MoO)粒子のSEMイメージを示すものである。
図11】本発明の比較例7により製造された六方晶系酸化モリブデン(h−MoO)粒子のSEMイメージを示すものである。
図12】本発明の実施例1により製造された六方晶系酸化モリブデン(h−MoO)ナノロッドを活物質として用いて、実験例1の電極システムでサイクリックボルタンメトリ(Cyclic voltammetry)で測定したグラフである(x軸:Ag/AgCl基準電極対比の電圧、y軸:電流量、比静電容量:38.75F/g、5サイクル目)。
図13】本発明の実施例4により製造された六方晶系酸化モリブデンナノロッドのカーボンファイバー(h−MoO nano rod−CNF)複合体を活物質として用いて、実験例1の電極システムでサイクリックボルタンメトリ(Cyclic voltammetry)で測定したグラフである(x軸:Ag/AgCl基準電極対比の電圧、y軸:電流量、比静電容量:168.10F/g、5サイクル目)。
図14】本発明の実施例5により熱処理した六方晶系酸化モリブデンナノロッドのカーボンファイバー(h−MoO nano rod−CNF)複合体を活物質として用いて、実験例1の電極システムでサイクリックボルタンメトリ(Cyclic voltammetry)で測定したグラフである(x軸:Ag/AgCl基準電極対比の電圧、y軸:電流量、比静電容量:217.12F/g、5サイクル目)。
図15】本発明の実施例4により製造された六方晶系酸化モリブデンナノロッドのカーボンファイバー(h−MoO nano rod−CNF)複合体を活物質として用いて、実験例1の電極システムで測定した電流量(current)vs静電容量グラフである。
図16】本発明の実施例5により熱処理した六方晶系酸化モリブデンナノロッドのカーボンファイバー(h−MoO nano rod−CNF)複合体を活物質として用いて、実験例1の電極システムで測定した電流量(current)vs静電容量グラフである。
図17】本発明の比較例1により製造された六方晶系酸化モリブデン(h−MoO)を活物質として用いて、実験例1の電極システムでサイクリックボルタンメトリ(Cyclic voltammetry)で測定したグラフである(x軸:Ag/AgCl基準電極対比の電圧、y軸:電流量、比静電容量:約〜30F/g、5サイクル目)。
【発明を実施するための形態】
【0042】
以下、本発明の理解のために好ましい実施例を提示する。しかし、下記の実施例は本発明をより容易に理解するために提供されるものに過ぎず、これによって本発明の内容が限定されるものではない。
【0043】
<h−MoOナノロッドの製造>
実施例1
(段階1)
反応容器に3.7gのモリブデン酸アンモニウム(ammonium molybdate、(NHMoO)、および1gのカルボキシメチルセルロース(CMC、carboxymethyl cellulose)を入れて、水100mLを入れて、常温で約60分間撹拌/超音波処理を利用して溶解させて、混合水溶液を製造した。この時、モリブデン酸化物前駆体物質の濃度は約210mMであり、カルボキシメチルセルロースの濃度は約10g/Lであった。
【0044】
(段階2)
前記段階1の混合水溶液を、常圧条件下で約85℃に昇温させた後、6MのHClを2.5g添加してpHを1に調整して、約9時間反応を進行させた。この時、モリブデン酸化物前駆体物質とHClのモル比は1:0.7である。反応を終了した後、反応液を約10000rpm、約5分の条件で遠心分離工程を行って、得られた沈殿物をエタノール(ethanol)で数回洗浄して、酸化モリブデン(MoO)2.4gを得た(収率80%)。
【0045】
このように生成された酸化モリブデン(MoO)に対するXRD測定結果、19.2°、25.8°、29.2°の値により、六方晶系(hexagonal)の結晶構造を有するh−MoOであることを確認した。また、このように生成された酸化モリブデン(MoO)を走査顕微鏡(SEM、Scanning Electron Microscope)イメージで観察した結果を図1に示し、図1に示されるように、直径約150nmおよび長さ約2.5μmのナノロッド(nano rod)形態を有するものであることを確認した。
【0046】
実施例2
段階2の反応を、常圧および65℃の条件下で約24時間行ったことを除けば、実施例1と同様の方法で酸化モリブデン(MoO)2.2gを得た(収率73%)。
【0047】
このように生成された酸化モリブデン(MoO)に対するXRD測定結果、19.2°、25.8°、29.2°の値により、六方晶系(hexagonal)の結晶構造を有するh−MoOであることを確認した。また、このように生成された酸化モリブデン(MoO)を走査顕微鏡(SEM、Scanning Electron Microscope)イメージで観察した結果を図2に示し、図2に示されるように、直径約150nmおよび長さ約2.5μmのナノロッド(nano rod)形態を有するものであることを確認した。
【0048】
実施例3
段階2の反応を、常圧および50℃の条件下で約48時間行ったことを除けば、実施例1と同様の方法で酸化モリブデン(MoO)2.3gを得た(収率73%)。
【0049】
このように生成された酸化モリブデン(MoO)に対するXRD測定結果、19.2°、25.8°、29.2°の値により、六方晶系(hexagonal)の結晶構造を有するh−MoOであることを確認した。また、このように生成された酸化モリブデン(MoO)を走査顕微鏡(SEM、Scanning Electron Microscope)イメージで観察した結果を図3に示し、図3に示されるように、直径約50nmおよび長さ約1μmのナノロッド(nano rod)がバンドルをなす形態を有するものであることを確認した。
【0050】
<h−MoOナノロッド−CNF複合体の製造>
実施例4
(段階1)
反応容器に3.7gのモリブデン酸アンモニウム(ammonium molybdate、(NHMoO)、1gのカルボキシメチルセルロース(CMC、carboxymethyl cellulose)、および100mgのカーボンナノファイバー(CNF、carbon nanofiber)を入れて、水100mLを入れて、常温で約60分間撹拌/超音波処理を利用して溶解させて、混合水溶液を製造した。この時、モリブデン酸化物前駆体物質の濃度は約210mMであり、カルボキシメチルセルロースの濃度は約10g/Lであった。
【0051】
(段階2)
前記段階1の混合水溶液を、常圧の条件下で約85℃に昇温させた後、約2.5gの6M HClを添加してpHを1に調整して、約9時間反応を進行させた。反応を終了した後、反応液を約10000rpm、5分間の条件で遠心分離工程を行って、得られた沈殿物をエタノール(ethanol)で数回洗浄して、酸化モリブデン(MoO)とカーボンファイバー(CNF)との複合体2.5gを得た(収率80%)。
【0052】
このように生成された酸化モリブデン(MoO)とカーボンファイバー(CNF)との複合体に対するXRD測定結果を図4に示し、図4に示されるように、19.2°、25.8°、29.2°の値により、六方晶系(hexagonal)の結晶構造を有するh−MoOが生成されたことを確認した。また、このように生成された酸化モリブデン(MoO)を走査顕微鏡(SEM、Scanning Electron Microscope)イメージで観察した結果を図6(a)に示し、図6(a)に示されるように、合成されたh−MoO−CNF複合体は糸状のCNFとより太いナノロッド(nano rod)とが混合されており、前記ナノロッド(nano rod)は直径約250nmおよび長さ約2.5μmのナノロッド(nano rod)形態を有するものであることを確認した。これにより、前記複合体が、六方晶系酸化モリブデン(h−MoO)ナノロッドを含むカーボンファイバー複合体(h−MoO nano rod−CNF複合体)であることを確認した。
【0053】
実施例5
実施例4で得られた六方晶系酸化モリブデンナノロッドのカーボンファイバー(h−MoO nano rod−CNF)複合体を、4%のHを含むアルゴン混合ガスの存在下、約300℃で約3時間熱処理した。
【0054】
このように生成された酸化モリブデン(MoO)とカーボンファイバー(CNF)との複合体に対するXRD測定結果を図5に示し、図5に示されるように、19.2°、25.8°、29.2°の値により、六方晶系(hexagonal)の結晶構造を有するh−MoOが生成されたことを確認した。また、このように生成された酸化モリブデン(MoO)を走査顕微鏡(SEM、Scanning Electron Microscope)イメージで観察した結果を図6(b)に示し、図6(b)に示されるように、合成されたh−MoO−CNF複合体は糸状のCNFとより太いナノロッド(nano rod)とが混合されており、前記ナノロッド(nano rod)は直径約250nmおよび長さ約2.5μmのナノロッド(nano rod)形態を有するものであることを確認した。これにより、前記複合体が、六方晶系酸化モリブデン(h−MoO)ナノロッドを含むカーボンファイバー複合体(h−MoO nano rod−CNF複合体)であることを確認した。
【0055】
<h−MoOナノロッドの比較実験>
比較例1
段階1において、カルボキシメチルセルロース(CMC、carboxymethyl cellulose)を添加せずに混合水溶液を製造したことを除けば、実施例1と同様の方法で酸化モリブデン2.1gを生成させた(収率70%)。
【0056】
このように生成された酸化モリブデン(MoO)に対するXRD測定結果を図7に示し、図7に示されるように、19.2°、25.8°、29.2°の値により、六方晶系(hexagonal)の結晶構造を有するh−MoOであることを確認した。また、このように生成された酸化モリブデン(MoO)を走査顕微鏡(SEM、Scanning Electron Microscope)イメージで観察した結果を図8に示し、図8に示されるように、数平均粒子サイズが約10μmのマイクロ(micro)サイズの不定形粒子が生成されたことを確認した。
【0057】
比較例2〜5
段階1において、カルボキシメチルセルロース(CMC、carboxymethyl cellulose)の代わりに、それぞれ1gのPVP(poly(vinyl pyrrolidone))、1gのPAA(poly(acrylic acid))、1gのPVA(poly(vinyl alcohol))、1gのPSS(poly(styrene sulfonate))を添加して混合水溶液を製造したことを除けば、実施例1と同様の方法で酸化モリブデン2.3gを生成させた(収率76%)。
【0058】
このように生成された酸化モリブデン(MoO)に対するXRD測定結果、19.2°、25.8°、29.2°の値により、六方晶系(hexagonal)の結晶構造を有するh−MoOであることを確認した。また、このように生成された酸化モリブデン(MoO)を走査顕微鏡(SEM、Scanning Electron Microscope)イメージで観察した結果を図9に示した。図9に示されるように、比較例2の場合(a:PVP)に、直径約600nmおよび長さ約5μmのナノロッド(nano rod)形態を有するものであり、比較例3の場合(b:PAA)に、直径約1μmの不定形ナノ粒子(nano particle)を有することを確認し、比較例4の場合(c:PVA)に、直径約1μmおよび長さ約20μmのマイクロロッド(micro rod)形態を有することを確認し、比較例5の場合(d:PSS)に、直径約800nmおよび長さ約10μmのナノロッド(nano rod)形態を有することを確認した。
【0059】
比較例6
段階2の反応を、常圧および常温(約25℃)の条件下で約24時間行ったことを除けば、実施例1と同様の方法でモリブデン−CMC複合体を得た。
このように生成された酸化モリブデン(MoO)を走査顕微鏡(SEM、Scanning Electron Microscope)イメージで観察した結果を図10に示し、図10に示されるように、直径約10μm以上のマイクロ粒子(micro particle)形態を有するものであることを確認した。
【0060】
比較例7
無機酸を混合水溶液を昇温させる前に常温で添加した後に、常圧の条件下で約85℃に昇温させて、約9時間反応させたことを除けば、実施例1と同様の方法で酸化モリブデン(MoO)2.1gを得た(収率70%)。
【0061】
このように生成された酸化モリブデン(MoO)に対するXRD測定結果、19.2°、25.8°、29.2°の値により、六方晶系(hexagonal)の結晶構造を有するh−MoOであることを確認した。また、このように生成された酸化モリブデン(MoO)を走査顕微鏡(SEM、Scanning Electron Microscope)イメージで観察した結果を図11に示し、図11に示されるように、直径約150nmおよび長さ約2.5μmのナノロッド(nano rod)形態を有するが、実施例1のナノロッドと比較した時、均一性が顕著に低下することを確認した。
【0062】
実験例
実施例1〜5および比較例1で製造した酸化モリブデンを負極活物質として用いて、シュードキャパシタ用電極を製造した後に、これに対する電池性能評価を行った。
【0063】
シュードキャパシタの製造
電気化学性能測定のために、活物質:導電材(acetylene black):バインダー(PVDF)を70:20:10の質量比でNMPに分散後、約1mg/cmのローディング量(全体固形分基準)でガラス状カーボン(glassy carbon)電極上に塗布後、乾燥して、シュードキャパシタ電極を製造した(活物質:導電材:バインダー=70:20:10、全体固形分物質基準)。
【0064】
電池性能評価
Ag/AgClを、基準電極として0V〜−1.1Vの電圧領域でサイクリックボルタンメトリ(cyclic voltammetry)でシュードキャパシタの比静電容量を測定し、定電流を測定した。
【0065】
特に、1MのLiSO水溶液で三電極測定法により電気化学的性能を評価した時、5サイクル目における最大容量を測定した(活物質:導電材:バインダー=70:20:10、全体電極物質基準)。
【0066】
実施例1〜5および比較例1で製造した酸化モリブデンを負極活物質として含むシュードキャパシタ用電極に対する比静電容量の測定結果は下記表1に示す通りである。
【0067】
【表1】
【0068】
また、本発明の実施例1、実施例4〜5、および比較例1により製造された六方晶系酸化モリブデンナノロッド、これを含む複合体、および不定形酸化モリブデンをそれぞれ負極活物質として用いた、実験例1の電極システムでサイクリックボルタンメトリ(Cyclic voltammetry)で測定したグラフをそれぞれ図12〜14、および図17に示し、具体的な比静電容量の測定値は前記表1に示す通りである。
【0069】
前記表1に示すように、本発明により水溶性セルロースを用いて、高温高圧の水熱合成法を適用しなくても常圧の低温沈殿反応で容易に製造された実施例1〜3のナノロッド(nano rod)形状を有する六方晶系酸化モリブデン(h−MoO)が広い表面積と容易な電子伝達を特徴とし、水溶性セルロースを用いずに製造した比較例1の不定形形状を有する酸化モリブデン(MoO)が5サイクル目基準の比静電容量約30F/gを示すのに対し、38.75F/g〜82.9F/gとより高い比静電容量を示すことが分かる。
【0070】
特に、本発明により製造された六方晶系酸化モリブデン(h−MoO)ナノロッドを含む実施例4および5のカーボンファイバー複合体(h−MoO nano rod−CNF複合体)の場合に、前記六方晶系酸化モリブデン(h−MoO)ナノロッド(nano rod)が表面積が広いため、炭素系導電材料とうまく混合されることによって、比静電容量が168.10F/g〜217.12F/gと顕著に増加したことが分かる。
【0071】
また、前記実施例4および5のカーボンファイバー複合体(h−MoO nano rod−CNF複合体)をそれぞれ負極活物質として用いた、実験例1の電極システムで測定した電流量(current)vs静電容量グラフを図15および16に示した。図15および図16に示されるように、混合ガスの条件で熱処理することによって、MoOの部分的な還元を誘導することができ、これにより、MoOの電気伝導度を向上させて比静電容量および出力特性を増加させる優れた効果があることが分かる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17