(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
請求項1又は請求項2に記載の切削装置を用いて、デバイスが形成されたデバイス領域と該デバイス領域を囲む外周余剰領域とを該表面側に備え、該外周部が面取りされた該ウェーハを加工するウェーハの加工方法であって、
該ウェーハの裏面側を該チャックテーブルで保持する保持ステップと、
該チャックテーブルを回転させた状態で該チャックテーブルに保持された該ウェーハの該外周部を含む領域に該レーザービームを照射し、該領域で反射する該レーザービームの該反射光から、該ウェーハの位置及び該ウェーハの該表面の高さを算出する第1算出ステップと、
該第1算出ステップで算出された該ウェーハの位置及び該ウェーハの該表面の高さに基づき、該切削ブレードを該外周部の該表面側から切り込ませ、該外周部に所定の幅及び高さの該段差部を形成する段差部形成ステップと、を備えることを特徴とするウェーハの加工方法。
該段差部形成ステップの後に、該チャックテーブルに保持された該ウェーハの該外周部を含む領域に該レーザービームを照射し、該領域で反射する該レーザービームの該反射光から該段差部の幅、高さ、高低差、及び該段差部の角部の高さを算出する第2算出ステップと、
該第2算出ステップで算出された該段差部の幅、高さ、高低差、及び該段差部の角部の高さと、該段差部の幅、高さ、高低差、及び該段差部の角部の高さの閾値とを比較して、該切削ブレードの先端の消耗量及び形状の変化が許容範囲内か否かを判定する判定ステップと、を更に備えることを特徴とする請求項3に記載のウェーハの加工方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
エッジトリミングでは、例えば、チャックテーブルによって保持されたウェーハの面取り部に表面側から切削ブレードを切り込ませ上で、このチャックテーブルを回転させる。したがって、面取り部を適切に切削、除去するためには、チャックテーブルに対するウェーハの位置や、ウェーハに対する切削ブレードの位置に関する情報を取得し、これらの位置関係を正しく調整する必要があった。
【0007】
また、エッジトリミングの精度や、切削ブレードの状態等を確認するために、面取り部を切削、除去して形成される段差(段差部)の幅や高さに関する情報を取得したいこともある。しかしながら、従来の切削装置では、これらの情報を取得するために複数のセンサを搭載していたので、構造が複雑になり、価格を低く抑えるのも難しかった。
【0008】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、各種の情報を取得できる簡単な構造の切削装置、及びこの切削装置を用いるウェーハの加工方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様によれば、外周部が面取りされたウェーハを保持面で保持する回転可能なチャックテーブルと、スピンドルに装着された切削ブレードで該チャックテーブルに保持された該ウェーハの該外周部を該表面側から切削し、該外周部に沿う環状の段差部を該ウェーハの該表面側に形成する切削ユニットと、該チャックテーブルに保持された該ウェーハの該外周部を含む領域に該ウェーハの径方向に長い帯状のレーザービームを照射し、該領域で反射する該レーザービームの反射光を検出するラインセンサユニットと、該ウェーハを切削して該段差部を形成する前に、該チャックテーブルを回転させた状態で該ラインセンサユニットにより検出される該レーザービームの該反射光から該ウェーハの位置及び該ウェーハの該表面の高さを算出し、該ウェーハを切削して該段差部を形成した後に、該ラインセンサユニットにより検出される該レーザービームの該反射光から該段差部の幅
、高さ
、高低差、及び該段差部の角部の高さを算出する情報算出部と、を備える切削装置が提供される。
【0010】
本発明の一態様において、該情報算出部で算出される該段差部の幅
、高さ
、高低差、及び該段差部の角部の高さと、該段差部の幅
、高さ
、高低差、及び該段差部の角部の高さの閾値とを比較して、該切削ブレードの先端の消耗量及び形状の変化が許容範囲内か否かを判定する閾値比較部を更に備えることが好ましい。
【0011】
本発明の別の一態様によれば、上述した切削装置を用いて、デバイスが形成されたデバイス領域と該デバイス領域を囲む外周余剰領域とを該表面側に備え、該外周部が面取りされた該ウェーハを加工するウェーハの加工方法であって、該ウェーハの裏面側を該チャックテーブルで保持する保持ステップと、該チャックテーブルを回転させた状態で該チャックテーブルに保持された該ウェーハの該外周部を含む領域に該レーザービームを照射し、該領域で反射する該レーザービームの該反射光から、該ウェーハの位置及び該ウェーハの該表面の高さを算出する第1算出ステップと、該第1算出ステップで算出された該ウェーハの位置及び該ウェーハの該表面の高さに基づき、該切削ブレードを該外周部の該表面側から切り込ませ、該外周部に所定の幅及び
高さの該段差部を形成する段差部形成ステップと、を備えるウェーハの加工方法が提供される。
【0012】
本発明の別の一態様において、該段差部形成ステップの後に、該チャックテーブルに保持された該ウェーハの該外周部を含む領域に該レーザービームを照射し、該領域で反射する該レーザービームの該反射光から該段差部の幅
、高さ
、高低差、及び該段差部の角部の高さを算出する第2算出ステップと、該第2算出ステップで算出された該段差部の幅
、高さ
、高低差、及び該段差部の角部の高さと、該段差部の幅
、高さ
、高低差、及び該段差部の角部の高さの閾値とを比較して、該切削ブレードの先端の消耗量及び形状の変化が許容範囲内か否かを判定する判定ステップと、を更に備えることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明の一態様に係る切削装置は、チャックテーブルに保持されたウェーハの外周部を含む領域にウェーハの径方向に長い帯状のレーザービームを照射し、この領域で反射するレーザービームの反射光を検出するラインセンサユニットと、ラインセンサユニットにより検出されるレーザービームの反射光から、ウェーハの位置及びウェーハの表面の高さを算出し、段差部の幅及び高さを算出する情報算出部と、を備えるので、ウェーハの位置及びウェーハの表面の高さと、段差部の幅及び高さとを算出するために、複数のセンサを搭載する必要がない。このように、本発明によれば、各種の情報を取得できる簡単な構造の切削装置が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0015】
添付図面を参照して、本発明の一態様に係る実施形態について説明する。
図1は、本実施形態に係る切削装置2の構成例を模式的に示す斜視図である。
図1に示すように、切削装置2は、各構造を支持する基台4を備えている。基台4の上面には、平面視でX軸方向(前後方向、加工送り方向)に長い矩形の開口4aが形成されており、この開口4a内には、加工の対象となるウェーハ11を搬送する第1搬送ユニット6が配置されている。
【0016】
ウェーハ11は、例えば、シリコン等の半導体材料で円盤状に形成されており、その表面11a側は、中央側のデバイス領域と、デバイス領域を囲む外周余剰領域とに分けられる。デバイス領域は、格子状に配列された分割予定ライン(ストリート)で更に複数の領域に区画されており、各領域には、IC(Integrated Circuit)等のデバイス13が形成されている。また、このウェーハ11の外周部11c(
図2(A)等参照)は、面取りされている。
【0017】
なお、本実施形態では、シリコン等の半導体材料でなる円盤状のウェーハ11を用いるが、ウェーハの材質、形状、構造、大きさ等に制限はない。例えば、他の半導体、セラミックス、樹脂、金属等の材料でなるウェーハを用いることもできる。また、デバイスの種類、数量、形状、構造、大きさ、配置等にも制限はない。
【0018】
Y軸方向(左右方向、割り出し送り方向)で開口4aの一方側の領域には、被加工物11を収容するカセット8a,8bが載せられる。開口4aに対してカセット8a,8bが載せられる領域の反対側の領域には、センタリングテーブル10が配置されている。センタリングテーブル10は、例えば、カセット8a,8bから第1搬送ユニット6で搬送されたウェーハ11の中心の位置を調整する。
【0019】
センタリングテーブル10の更に側方(開口4aの反対側)の領域には、平面視でX軸方向に長い矩形の開口4bが形成されている。この開口4b内には、X軸移動テーブル12、X軸移動テーブル12をX軸方向に移動させるX軸移動機構(不図示)、及びX軸移動機構を覆う防塵防滴カバー14が設けられている。
【0020】
X軸移動機構は、X軸方向に平行な一対のX軸ガイドレール(不図示)を備えており、X軸ガイドレールには、X軸移動テーブル12がスライド可能に取り付けられている。X軸移動テーブル12の下面側には、ナット部(不図示)が設けられており、このナット部には、X軸ガイドレールに平行なX軸ボールネジ(不図示)が螺合されている。
【0021】
X軸ボールネジの一端部には、X軸パルスモータ(不図示)が連結されている。X軸パルスモータでX軸ボールネジを回転させることで、X軸移動テーブル12は、X軸ガイドレールに沿ってX軸方向に移動する。
【0022】
X軸移動テーブル12の上方には、ウェーハ11を保持するためのチャックテーブル16が設けられている。チャックテーブル16は、モータ等の回転駆動源(不図示)に連結されており、Z軸方向(鉛直方向)に概ね平行な回転軸の周りに回転する。また、チャックテーブル16は、上述のX軸移動機構によって前方側の搬入搬出領域と後方側の加工領域との間を移動する。
【0023】
チャックテーブル16の上面の一部(外周部)は、ウェーハ11を吸引、保持する保持面16a(
図2(A)等参照)になっている。この保持面16aは、チャックテーブル16の内部に形成された吸引路16b(
図2(A)等参照)や、バルブ18(
図2(A)等参照)等を介して、吸引源20(
図2(A)等参照)に接続されている。
【0024】
基台4の上面には、開口4bをY軸方向に跨ぐ門型の第1支持構造22が配置されている。第1支持構造22の前面には、Y軸方向に概ね平行な第1レール24が設けられており、この第1レール24には、第1昇降ユニット26を介して第2搬送ユニット28が取り付けられている。
【0025】
第2搬送ユニット28は、第1レール24に沿ってY軸方向に移動し、また、第1昇降ユニット26によってZ軸方向に移動する。この第2搬送ユニット28により、例えば、センタリングテーブル10又はチャックテーブル16からウェーハ11を受け取り、センタリングテーブル10又はチャックテーブル16にウェーハ11を受け渡すことができる。
【0026】
すなわち、センタリングテーブル10上のウェーハ11を第2搬送ユニット28で保持し、チャックテーブル16に搬入できる。また、この第2搬送ユニット28によってチャックテーブル16からウェーハ11を搬出したり、ウェーハ11をセンタリングテーブル10に受け渡したりすることもできる。
【0027】
第1レール24の上方には、Y軸方向に概ね平行な第2レール30が設けられており、この第2レール30には、第2昇降ユニット32を介して第3搬送ユニット34が取り付けられている。第3搬送ユニット34は、第2レール30に沿ってY軸方向に移動し、また、第2昇降ユニット32によってZ軸方向に移動する。
【0028】
第1支持構造22の後方には、搬入搬出領域と加工領域とを仕切るシャッター36を介して、門型の第2支持構造38が配置されている。第2支持構造38の前面には、それぞれ移動ユニット40を介して、2組の切削ユニット42が設けられている。切削ユニット42は、移動ユニット40によってY軸方向及びZ軸方向に移動する。
【0029】
各切削ユニット42は、Y軸方向に概ね平行な回転軸となるスピンドル(不図示)を備えている。スピンドルの一端側には、環状の切削ブレードが装着されている。スピンドルの他端側には、それぞれモータ等の回転駆動源(不図示)が連結されており、切削ブレードは、この回転駆動源から伝達される力によって回転する。
【0030】
切削ユニット42に隣接する位置には、チャックテーブル16に保持されたウェーハ11等を撮像するための撮像ユニット44が設けられている。この撮像ユニット44は、例えば、被加工物11の分割予定ラインの向きを調整するアライメント等の際に用いられ、移動ユニット40によって切削ユニット42とともにY軸方向及びZ軸方向に移動する。
【0031】
開口4bに対してセンタリングテーブル10と反対側の位置には、平面視で円形の開口4cが形成されている。開口4c内には、加工後のウェーハ11を洗浄するための洗浄ユニット46が配置されている。切削ユニット42によって加工されたウェーハ11は、第3搬送ユニット34で洗浄ユニット46に搬送される。洗浄ユニット46で洗浄されたウェーハ11は、第2搬送ユニット28でセンタリングテーブル10に載せられた後に、第1搬送ユニット6でカセット8a,8bに収容される。
【0032】
また、この切削装置2の搬入搬出領域には、帯状(直線状)のレーザービーム48a(
図2(A)等参照)を照射してその反射光を検出するラインセンサユニット48が設けられている。具体的には、このラインセンサユニット48は、チャックテーブル16が搬入搬出領域に位置付けられた状態で、その外周部の上方に配置される。
【0033】
これにより、チャックテーブル16に保持されたウェーハ11の外周部11cを含む領域に向けて、ラインセンサユニット48からレーザービーム48aを照射し、その領域で反射されるレーザービーム48aの反射光を検出できる。なお、このラインセンサユニット48は、ウェーハ11の径方向に長いレーザービーム48aを照射できる向きに配置されており、径方向に沿う複数の位置で反射する反射光を一度に検出できる。
【0034】
ラインセンサユニット48には、処理ユニット50が接続されている。処理ユニット50は、例えば、ラインセンサユニット48で得られるデータ(反射光の検出結果)から、位置や高さ、大きさ等の情報を算出する情報算出部50aと、情報算出部50aで算出された情報を閾値と比較する閾値比較部50bと、を含んでいる。情報算出部50a及び閾値比較部50bが備える機能の詳細については後述する。
【0035】
次に、上述した切削装置2を用いて行われるウェーハの加工方法の例を説明する。本実施形態に係るウェーハの加工方法では、まず、切削装置2のチャックテーブル16でウェーハ11の裏面11b側を保持する保持ステップを行う。具体的には、例えば、センタリングテーブル10で中心の位置が調整されたウェーハ11を、第2搬送ユニット28でチャックテーブル16に搬入する。
【0036】
より詳細には、ウェーハ11の表面11a側が上方に露出するように、ウェーハ11の裏面11b側をチャックテーブル16の保持面16aに密着させる。そして、バルブ18を開いて、吸引源20の負圧をウェーハ11の裏面11b側に作用させる。これによりウェーハ11の裏面11b側をチャックテーブル16によって保持できる。
【0037】
保持ステップの後には、チャックテーブル16に対するウェーハ11の位置、及び外周部11cの表面11a側の高さを算出する第1算出ステップを行う。
図2(A)は、ウェーハ11にラインセンサ48からレーザービーム48aが照射される様子を模式的に示す断面図であり、
図2(B)は、ウェーハ11にラインセンサ48からレーザービーム48aが照射される様子を模式的に示す平面図である。なお、
図2(A)では、一部の構成要素を機能ブロック等で示している。
【0038】
図2(A)及び
図2(B)に示すように、第1算出ステップでは、まず、チャックテーブル16を任意の向きに回転させる。この状態で、ウェーハ11の外周部11cを含む領域に向けてラインセンサユニット48からウェーハ11の径方向に長い帯状のレーザービーム48aを照射する。そして、ウェーハ11の表面11a側で反射するレーザービーム48aの反射光をラインセンサユニット48で検出する。
【0039】
図3(A)は、ウェーハ11のレーザービーム48aが照射される領域を拡大した断面図であり、
図3(B)は、ラインセンサユニット48で得られる反射光の検出結果を模式的に示すグラフである。なお、
図3(B)のグラフでは、横軸がウェーハ11の径方向の位置(r)を、縦軸が高さ(Z)を表している。例えば、
図3(A)に示す領域に照射されたレーザービーム48aの反射光をラインセンサユニット48によって検出すると、
図3(B)に示すようなグラフが得られる。
【0040】
このグラフ中で、Eは、ウェーハ11の外周縁の位置に相当し、Hは、チャックテーブル16の保持面16aからウェーハ11の表面11aまでの高さ(すなわち、ウェーハ11の厚み)に相当する。処理ユニット50の情報算出部50aは、このグラフ中のH及びEから、それぞれ、ウェーハ11の外周縁の位置及びウェーハ11の表面11aの高さを算出する。
【0041】
本実施形態では、チャックテーブル16を回転させながら、レーザービーム48aの反射光をラインセンサユニット48で検出するので、外周部11cの複数の領域に対応して、それぞれ、
図3(B)に示すようなグラフが得られる。つまり、情報算出部50aは、ウェーハ11の複数の領域で外周縁の位置及び表面11aの高さを算出できる。これにより、ウェーハ11の輪郭の位置が明らかになる。
【0042】
更に、情報算出部50aは、ウェーハ11の複数の領域から得られる外周縁の位置の情報(輪郭の位置の情報)に基づいて、ウェーハ11の中心の位置を算出しても良い。このようにウェーハ11の位置及びウェーハ11の表面11aの高さが算出されると、第1算出ステップは終了する。
【0043】
第1算出ステップの後には、ウェーハ11の外周部11cを部分的に切削、除去して、環状の段差部を形成する段差部形成ステップを行う。具体的には、まず、ウェーハ11を保持した状態のチャックテーブル16と切削ユニット42とを相対的に移動させて、段差部を形成したい位置に切削ブレードを合わせる。ここで、切削ブレードの位置(切削ブレードを切り込ませる位置)は、第1算出ステップで算出されたウェーハ11の位置に基づき、外周部11cに所定の幅の環状の段差部を形成できるように決定される。
【0044】
次に、切削ブレードの下端をウェーハ11の表面11aより低い位置まで下降させる。併せて、チャックテーブル16を回転させる。ここで、切削ブレードの高さ(切削ブレードを切り込ませる深さ)は、第1算出ステップで算出されたウェーハ11の表面11aの高さに基づき、外周部11cに所定の深さの環状の段差部を形成できるように決定される。
【0045】
例えば、第1算出ステップで算出されたウェーハ11の表面11aの高さが周方向で異なる場合には、このウェーハ11の表面11aの高さを考慮し、チャックテーブル16の回転に合わせて切削ブレードの高さ(切削ブレードを切り込ませる深さ)を変化させると良い。
【0046】
また、第1算出ステップで算出されたウェーハ11の輪郭の位置がチャックテーブル16の基準の範囲からずれている場合(ウェーハ11の中心がチャックテーブル16の回転軸に重ならないとみなされる場合)には、チャックテーブル16の回転に合わせて、切削ユニット42をY軸方向に移動させると良い。
【0047】
これにより、ウェーハ11の表面11a側からウェーハ11の外周部11cに切削ブレードを切り込ませて、この外周部11cを表面11a側から部分的に切削、除去し、所定の幅及び深さを有する環状の段差部11d(
図4(A)等参照)を形成できる。段差部11dが形成されると、段差部形成ステップは終了する。
【0048】
段差部形成ステップの後には、段差部11dの幅及び高さ(例えば、段差部11dの底から表面11aまでの高さ)を算出する第2算出ステップを行う。
図4(A)は、ウェーハ11にラインセンサ48からレーザービーム48aが照射される様子を模式的に示す断面図であり、
図4(B)は、ウェーハ11にラインセンサ48からレーザービーム48aが照射される様子を模式的に示す平面図である。なお、
図4(A)では、一部の構成要素を機能ブロック等で示している。
【0049】
図4(A)及び
図4(B)に示すように、第2算出ステップでは、まず、チャックテーブル16を任意の向きに回転させる。この状態で、ウェーハ11の外周部11cを含む領域(段差部11dを含む領域)に向けてラインセンサユニット48からウェーハ11の径方向に長い帯状のレーザービーム48aを照射する。そして、ウェーハ11の表面11a側で反射するレーザービーム48aの反射光をラインセンサユニット48で検出する。
【0050】
図5(A)は、ウェーハ11のレーザービーム48aが照射される領域を拡大した断面図であり、
図5(B)は、
図5(A)に示す領域で反射する反射光の検出結果を模式的に示すグラフである。なお、
図5(B)のグラフでは、横軸がウェーハ11の径方向の位置(r)を、縦軸が高さ(Z)を表している。例えば、
図5(A)に示す領域に照射されたレーザービーム48aの反射光をラインセンサユニット48によって検出すると、
図5(B)に示すようなグラフが得られる。
【0051】
このグラフ中で、wは、段差部11dの幅に相当し、hは、段差部11dの高さ(段差部11dの底から表面11aまでの高さ)に相当する。処理ユニット50の情報算出部50aは、このグラフ中のw及びhから、それぞれ、段差部11dの幅及び高さを算出する。
【0052】
図6(A)は、ウェーハ11のレーザービーム48aが照射される別の領域を拡大した断面図であり、
図6(B)は、
図6(A)に示す領域で反射する反射光の検出結果を模式的に示すグラフである。
図6(A)に示す領域に照射されたレーザービーム48aの反射光をラインセンサユニット48によって検出すると、
図6(B)に示すようなグラフが得られる。
【0053】
このグラフ中で、Δ1は、段差部11dの底から、突起11eの頂上までの高さに相当する。このように、段差部11dの底に凹凸が存在する場合、処理ユニット50の情報算出部50aは、Δ1をその高低差として算出することが望ましい。
【0054】
同様に、
図6(B)のグラフ中で、Δ2は、段差部11dの底から、曲面状に構成された角部11fの頂上までの高さに相当する。このように、段差部11dの角部11fが曲面状に構成されている場合、処理ユニット50の情報算出部50aは、Δ2を角部11fの高さとして算出することが望ましい。段差部11dの幅、高さ、高低差、角部11fの高さ等が算出されると、第2算出ステップは終了する。
【0055】
第2算出ステップの後には、段差部11dの幅、高さ、高低差、及び角部11fの高さの閾値と、第2算出ステップで算出された段差部11dの幅、高さ、高低差、及び角部11fの高さとを比較して、切削ブレードの先端の消耗量や形状の変化等が許容範囲内か否かを判定する判定ステップを行う。
【0056】
具体的には、処理ユニット50の閾値比較部50bは、予め設定されている段差部11dの幅の閾値、高さの閾値、高低差の閾値、及び角部11fの高さの閾値を、それぞれ、第2算出ステップで算出された段差部11dの幅、高さ、高低差、及び角部11fの高さと比較する。
【0057】
ここで、段差部11dの幅の閾値、及び高さの閾値は、例えば、切削ブレードの先端の消耗量や形状の変化の許容範囲に応じて決められる。段差部11dの幅及び高さがそれぞれの閾値以下(未満)である場合、閾値比較部50bは、切削ブレードの先端の消耗量や形状の変化が許容範囲内にないと判定する。これに対して、段差部11dの幅及び高さがそれぞれの閾値より大きい場合(以上の場合)、閾値比較部50bは、切削ブレードの先端の消耗量や形状の変化が許容範囲内にあると判定する。
【0058】
同様に、段差部11dの高低差、及び角部11fの高さの閾値は、例えば、切削ブレードの先端の形状の変化の許容範囲に応じて決められる。段差部11dの高低差及び角部11fの高さがその閾値以下(未満)である場合、閾値比較部50bは、切削ブレードの先端の形状の変化が許容範囲内にあると判定する。
【0059】
これに対して、段差部11dの高低差及び角部11fの高さがその閾値より大きい場合(以上の場合)、閾値比較部50bは、切削ブレードの先端の消耗量や形状の変化が許容範囲内にないと判定する。なお、角部11fの高さが閾値より大きい場合(以上の場合)には、ウェーハ11の研削によってエッジがひさし状に加工され欠け易くなるという問題がある。
【0060】
判定ステップの結果は、モニタ(不図示)等への表示、警告灯の点灯(点滅)、警告音の発生等の方法でオペレータに通知される。オペレータは、この判定ステップの判定結果に基づいて、切削ブレードの交換等の処理を適切に遂行できる。更に、切削装置2は、上述した判定ステップの結果に基づいて、切削ブレードの高さやY軸方向の位置等を自動で調整できるように構成されていても良い。この調整により、判定の対象となったウェーハ11を再び加工したり、別のウェーハ11を続けて加工したりできる。
【0061】
以上のように、本実施形態の切削装置2は、チャックテーブル16に保持されたウェーハ11の外周部11cを含む領域にウェーハ11の径方向に長い帯状のレーザービーム48aを照射し、この領域で反射するレーザービーム48aの反射光を検出するラインセンサユニット48と、ラインセンサユニット48により検出されるレーザービーム48aの反射光から、ウェーハ11の位置及びウェーハ11の表面11aの高さを算出し、段差部11dの幅及び高さを算出する情報算出部50aと、を備えるので、ウェーハ11の位置及びウェーハ11の表面11aの高さと、段差部11dの幅及び高さとを算出するために、複数のセンサを搭載する必要がない。
【0062】
また、本実施形態の切削装置2では、複数の位置で反射する反射光を一度に検出できるラインセンサユニット48を用いているので、他のセンサや方法を用いる場合に比べて、ウェーハ11の位置及びウェーハ11の表面11aの高さや、段差部11dの幅及び高さ等の算出に要する時間を短縮できる。
【0063】
更に、本実施形態の切削装置2は、情報算出部50aで算出される段差部11dの幅及び高さと、段差部11dの幅及び高さの閾値とを比較して、切削ブレードの先端の消耗量及び形状の変化が許容範囲内か否かを判定する閾値比較部50bを更に備えるので、切削ブレードの先端の消耗量及び形状の変化が許容範囲内か否かを適切に判定して、切削ブレードの交換等の処理を適切に遂行できる。
【0064】
なお、本発明は、上記実施形態等の記載に制限されず種々変更して実施可能である。例えば、上記実施形態に係るウェーハの加工方法では、第1算出ステップで算出されたウェーハ11の輪郭の位置がチャックテーブル16の基準の範囲からずれている場合に、その後の段差部形成ステップで、チャックテーブル16の回転に合わせて、切削ユニット42をY軸方向に移動させているが、例えば、段差部形成ステップの前に、第2搬送ユニット28でウェーハ11をチャックテーブル16の正しい位置に搬入し直せば、このような切削ユニット42の移動を省略できる。
【0065】
また、上記実施形態に係るウェーハの加工方法では、第2算出ステップにおいてチャックテーブル16を回転させているが、この第2算出ステップでは、必ずしもチャックテーブル16を回転させなくても良い。この場合には、外周部11cの一つの領域で段差部11dの幅、高さ、高低差、角部11fの高さ等が算出されることになる。
【0066】
その他、上記実施形態に係る構造、方法等は、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施できる。