(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6953711
(24)【登録日】2021年10月4日
(45)【発行日】2021年10月27日
(54)【発明の名称】金属含有MFI型ゼオライト及びそれよりなる芳香族化合物製造用触媒
(51)【国際特許分類】
C01B 39/36 20060101AFI20211018BHJP
C07C 2/76 20060101ALI20211018BHJP
C07C 15/04 20060101ALI20211018BHJP
C07C 15/06 20060101ALI20211018BHJP
C07C 15/08 20060101ALI20211018BHJP
C07C 2/24 20060101ALI20211018BHJP
B01J 29/40 20060101ALI20211018BHJP
B01J 35/10 20060101ALI20211018BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20211018BHJP
【FI】
C01B39/36
C07C2/76
C07C15/04
C07C15/06
C07C15/08
C07C2/24
B01J29/40 Z
B01J35/10 301G
!C07B61/00 300
【請求項の数】6
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2016-250316(P2016-250316)
(22)【出願日】2016年12月26日
(65)【公開番号】特開2018-104217(P2018-104217A)
(43)【公開日】2018年7月5日
【審査請求日】2019年11月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003300
【氏名又は名称】東ソー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】染谷 紗衣
(72)【発明者】
【氏名】渡部 善全
【審査官】
青木 千歌子
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭63−002807(JP,A)
【文献】
特開2013−227203(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 39/36
C07C 2/76
C07C 2/24
B01J 29/40
C07B 61/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
亜鉛及び/又はガリウムを含み、下記(i)〜(vi)に示す特性を満足することを特徴とする金属含有MFI型ゼオライト。
(i)メソ細孔分布曲線がピークを有するものであり、該ピークの半値幅(hw)が1nm≦hw≦10nm、該ピークの中心値(μ)が10nm≦μ≦20nmであり、該ピークに相当するメソ細孔のメソ細孔容積(pv)が0.20ml/g≦pv≦0.50ml/gであるメソ細孔群を有する。
(ii)回折角を2θとした粉末X線回折測定において0.1〜3度の範囲にピークを有さない。
(iii)以下の式(1)による平均粒子径(PD)が5nm≦PD≦100nmである。
PD=6/S(1/2.29×106+0.18×10−6) (1)
(ここで、PDは平均粒子径、Sは外表面積(m2/g)を示す。そして、Sは液体窒素温度における窒素吸着法によるt−plot法により求めたものである。その際、tを吸着量の厚みとし、tについて0.6〜1nmの範囲の測定点を直線近似し、回帰直線の傾きよりSを求めるものである。)
(iv)細孔径0.3nmから0.8nmの範囲の微分細孔容積値(dVP/d(dP))−ミクロ細孔の分布曲線が、極大値を有するものであり、最も微分細孔容積値(dVP/d(dP))の大きい値を示す細孔径0.4〜0.5nmの範囲にある。
(v)SiO2/Al2O3(モル比)が20≦SiO2/Al2O3≦200
(vi)構造指向剤を含まない。
【請求項2】
hwが7nm≦hw≦9nm、μが10nm≦μ≦16nm、pvが0.32ml/g≦pv≦0.35ml/g、SiO2/Al2O3が26≦SiO2/Al2O3≦40であることを特徴とする請求項1に記載の金属含有MFI型ゼオライト。
【請求項3】
亜鉛及び/又はガリウムの含有量が、0.05〜5wt%であることを特徴とする請求項1又は2に記載の金属MFI型ゼオライト。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の金属含有MFI型ゼオライトよりなることを特徴とする芳香族化合物製造用触媒。
【請求項5】
請求項4に記載の芳香族化合物製造用触媒の存在下、炭素数2〜6の脂肪族炭化水素を接触し、芳香族化合物とすることを特徴とする芳香族化合物の製造方法。
【請求項6】
芳香族化合物がベンゼン、トルエン、キシレンからなる群のうち少なくとも1つ含むものである、ことを特徴とする請求項5に記載の芳香族化合物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定の遷移金属が導入された金属含有MFI型ゼオライト及びそれよりなる芳香族化合物製造用触媒に関するものであり、特に比較的均一なメソ細孔群を有する金属含有MFI型ゼオライト、脂肪族炭化水素から芳香族化合物を製造する際に、生産性・安定性・長寿命に優れた性能を発揮する芳香族化合物製造用触媒に関するものである。
【背景技術】
【0002】
MFI型ゼオライトは、ゼオライト構造由来の均一な細孔を利用した高選択性触媒として用いられている。MFI型ゼオライトを触媒として用いた例として、トルエンの不均化(例えば、特許文献1参照。)、キシレンの異性化(例えば、特許文献2参照。)などが挙げられる。
【0003】
これらの反応は主に、MFI型ゼオライトのミクロ細孔の特徴を利用したものである。MFI型ゼオライトのミクロ細孔は、入口径がおよそ0.5nmであり、この細孔径に近接した分子径を持つ分子の有効な反応場となると考えられる。
【0004】
さらに、ミクロ細孔(2nm未満)よりも大きな細孔、つまりメソ細孔(細孔径2〜50nm)を有するMFI型ゼオライトの研究が行われている(例えば、非特許文献1参照。)。
【0005】
そして、工業利用に有望な材料として、10nm以上の均一なメソ細孔を有した、新規MFI型ゼオライト及びその製造方法(例えば特許文献3参照。)が提案され、メソ細孔を有したゼオライトを触媒として利用した例として、超安定Y型ゼオライト(USY)を用いた、減圧軽油の流動接触分解(FCC)(例えば、特許文献4、5参照。)が提案されている。該プロセスでは、重質油を原料とした接触分解反応を進行させることを含むものであるため、重質油相当の大きなサイズの分子が拡散しうる細孔を持つ触媒が望まれる。メソ孔を有したゼオライトを触媒として利用したケースは、かねてより、メソ孔内部の比較的大きな空間を反応場とし、重質油等の比較的大きな分子を原料として用いたものに限られていた。そのため、特に炭素数10以下の比較的小さな分子を原料とした反応において、メソ孔を有したゼオライトを触媒として用いることで、特異的な結果が得られたという報告は僅かである。
【0006】
ベンゼン、トルエン、キシレン(以下、総称して芳香族化合物と表記する)は、多くの場合、石油精製により得られた原料油(例えば、ナフサなど)を、熱分解反応装置にて分解し、得られた熱分解生成物から芳香族化合物を蒸留または抽出によって分離精製することで得られる。これら製造法による芳香族化合物の製造では、芳香族化合物以外の熱分解生成物として、脂肪族炭化水素(パラフィン系、オレフィン系、アセチレン系、脂環系を含む。)が含まれる。そのため、芳香族化合物の製造に伴って、脂肪族炭化水素が同時に製造されるため、芳香族化合物の生産量は脂肪族炭化水素の生産量を見合って調整がなされ、おのずと生産量に限度があるものであった。また、脂肪族炭化水素原料を、中細孔径ゼオライトを主に含んだ触媒と約400℃〜約800℃程度の温度で接触させることにより、芳香族化合物を製造することができる(例えば、非特許文献2〜5参照。)。該製造法は、熱分解による芳香族化合物の製造法と比較して、付加価値が低く、余剰な炭化水素原料から芳香族化合物が製造できるといった利点がある。また、これらの芳香族化合物製造に用いられる触媒の開発も行われている。例えば、パラフィン、オレフィン、ナフテンを含有する炭化水素を原料とした芳香族化合物製造用触媒として、亜鉛飛散量の抑制された亜鉛担持中間細孔径ゼオライト系触媒を提供している(例えば、特許文献6参照。)。また、パラフィン、オレフィン、アセチレン系炭化水素、環状パラフィン及び環状オレフィンを原料として用いた芳香族化合物製造に用いられる触媒として、L型ゼオライトに白金及びハロゲン成分を同時に担持させてなる触媒を提供している(例えば、特許文献7参照。)。さらには、構造体の大きさが0.1〜100mmであって、構造体表層部に結晶性多孔質アルミノシリケートが存在し、構造体表層部を除く内部の層に無機支持体が存在する構造体に亜鉛および/またはガリウムが担持したことを特徴とする芳香族化反応用触媒を提供している(例えば、特許文献8参照)。その他、炭化水素を原料とした芳香族化合物製造用触媒が提供されている(例えば、特許文献9、10参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第4014279号公報
【特許文献2】特許第2598127号公報
【特許文献3】特開2013−227203公報
【特許文献4】特許5339845号公報
【特許文献5】特許4773420号公報
【特許文献6】特開1998−33987公報
【特許文献7】特許第3264447号公報
【特許文献8】特許第5447468号公報
【特許文献9】特許第3966429号公報
【特許文献10】特許第5564769号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Microporous and Mesoporous Materials 第137巻、92頁(2011年)
【非特許文献2】Industrial & Engineering Chemistry Research 第31巻、995頁(1992年)
【非特許文献3】Industrial & Engineering Chemistry Research 第26巻、647頁(1987年)
【非特許文献4】Applied Catalysis 第78巻、15頁(1991年)
【非特許文献5】Microporous and Mesoporous Materials 第47巻、253頁(2001年)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、特許文献6〜10に提案のこれら触媒反応を用いた芳香族化合物の製造法においては、製造コストの観点から、触媒寿命(反応開始後の触媒が活性な状態から触媒が失活するまでの時間)に課題を有していた。
【0010】
本発明は、比較的小さな分子(特に炭素数が10以下、好ましくは2〜6)である脂肪族炭化水素から芳香族化合物を選択的に、かつ、長時間にわたって安定的に製造することが可能となる新規な芳香族化合物製造用触媒及びそれに用いることのできる特定の遷移金属が導入された金属含有MFI型ゼオライトを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記の課題を解決するため鋭意検討を行った結果、特定の遷移金属が導入された特定のMFI型ゼオライト、該ゼオライトが、選択的に、かつ、長時間にわたって安定的に脂肪族炭化水素から芳香族化合物を製造することが可能となる触媒となりうることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
即ち、本発明は、亜鉛及び/又はガリウムを含み、下記(i)〜(iii)に示す特性を満足することを特徴とする金属含有MFI型ゼオライト、それよりなる芳香族化合物製造用触媒に関するものである。
(i)メソ細孔分布曲線がピークを有するものであり、該ピークの半値幅(hw)がhw≦20nm、該ピークの中心値(μ)が10nm≦μ≦20nmであり、該ピークに相当するメソ細孔のメソ細孔容積(pv)が0.05ml/g≦pvであるメソ細孔群を有する。
(ii)回折角を2θとした粉末X線回折測定において0.1〜3度の範囲にピークを有さない。
(iii)平均粒子径(PD)がPD≦100nmである。
【0013】
以下に、本発明について詳細に説明する。
【0014】
本発明の金属含有MFI型ゼオライトは、特定の遷移金属が導入された特定のMFI型ゼオライトであり、特に脂肪族炭化水素から芳香族化合物を選択的に、かつ、長時間にわたって安定的に製造することが可能となる芳香族化合物製造用触媒として有用なものである。
【0015】
本発明の金属含有MFI型ゼオライトは、亜鉛及び/又はガリウムを含み、上記(i)〜(iii)を満足するMFI型ゼオライトであり、亜鉛及び/又はガリウムを含むことにより、特に芳香族化合物製造用触媒として優れた性能を発揮するゼオライトとなるものである。そして、その含有量としては、0.05〜5wt%であることが好ましい。また、亜鉛及び/又はガリウムを含有させる際の導入法としては、含浸担持、イオン交換、骨格置換のいずれの方法でも可能である。
【0016】
本発明の金属含有MFI型ゼオライトは、上記(i)〜(iii)に示す特性を満足するものであり、MFI型ゼオライトとしては、国際ゼオライト学会で定義される構造コードMFIに属するアルミノシリケート化合物を示すものである。また、本発明でいうメソ細孔とは、IUPACで定義されたメソ細孔であり、細孔直径が2〜50nmの範囲の細孔を示すものである。そして、メソ細孔は、液体窒素温度における一般的な窒素吸着法により測定することができる。また、窒素吸着法で得られた測定結果を解析することにより、メソ細孔の細孔容積の値を得ることができる。その解析には、例えば以下の方法を使用することができる。
【0017】
具体的には、Barret−Joyner−Halenda法(Journal of the American Chemical Society、1951年、頁373〜380)で脱着過程を解析する方法を挙げることができ、例えば、細孔直径が2nm以上50nm以下に相当する範囲の窒素ガス脱着量を積算することにより、メソ細孔に属する細孔の全細孔容積の値を得ることができる。
【0018】
また、最初に、縦軸が単位質量当りの窒素脱着量V/m(mL/g)、横軸がメソ細孔直径D(nm)とする累積曲線を得てから、縦軸をメソ細孔からの窒素ガス脱着量のメソ細孔直径値での微分値(d(V/m)/d(D))とすることにより、メソ細孔直径における単位質量当りの窒素脱着量の増加分のピークを得ることができる。
【0019】
本発明の金属含有MFI型ゼオライトは、細孔直径がほぼ均一なメソ細孔群を有するMFI型ゼオライトを含んでなるものであり、本発明においては、細孔直径がほぼ均一であるメソ細孔群を均一メソ細孔と称する場合もある。そして、具体的には、均一メソ細孔とは、細孔分布曲線におけるメソ細孔に係るピークの内、最大のピークをガウス関数で近似し、そのガウス関数の中心値(μ)から標準偏差の2倍(2σ)の範囲(μ±2σ)内の細孔直径を有するメソ細孔をいう。また、均一メソ細孔の細孔容積は、μ±2σの範囲の窒素ガス脱着量を積算することにより求めることができる。
【0020】
そして、本発明の金属含有MFI型ゼオライトは、ほぼ均一なメソ細孔群を有するMFI型ゼオライトの中でも、(i)メソ細孔分布曲線がピークを有するものであり、該ピークの半値幅(hw)がhw≦20nm、該ピークの中心値(μ)が10nm≦μ≦20nmであり、該ピークに相当するメソ細孔のメソ細孔容積(pv)がpv≧0.05ml/gである、より均一なメソ細孔群を有するMFI型ゼオライトを含んでなるものである。
【0021】
本発明の金属含有MFI型ゼオライトは、メソ細孔の細孔分布曲線がピークを有し、該ピークがhw≦20nm以下のMFI型ゼオライトという細孔直径の大きさのバラつきの小さなほぼ均一なメソ細孔群を有するMFI型ゼオライトを含んでなることにより、反応選択性に優れるものとなり、その効果はhw≦15nm、特にhw≦10nmであることにより、より顕著な好ましいものとなる。そして、hwの下限としては特に設定するものではないが、より反応選択性に優れるものとなることから1nm以上のものであることが好ましい。なお、hw>20nmである場合、芳香族化合物製造用触媒として使用した際のその反応選択性に劣るものとなる。また、該ピークをガウス関数近似した際の中心値(μ)が10nm≦μ≦20nmのMFI型ゼオライトを含むことにより、より大きいサイズの分子をも選択的に反応することが可能となり、優れた芳香族化合物製造用触媒となるものである。さらに、pv≧0.05ml/gであることにより、芳香族化合物製造用触媒とした際に長寿命の触媒となるものであり、0.05ml/g≦pv≦0.70ml/gであることが好ましく、特に0.10ml/g≦pv≦0.70ml/gであることが好ましく、更に0.20ml/g≦pv≦0.50ml/gであることが好ましい。ここで、pv<0.05ml/gである場合、反応時に副生するコーク等の蓄積により細孔が閉塞しやすいものとなり触媒として際の触媒寿命に劣るものとなる。
【0022】
また、特に選択的な反応を可能とする芳香族製造用触媒として適したものとなることから、本発明のMFI型ゼオライトは、上記(i)に示されるpvの全細孔容積に占める割合(pvr)が、30%≦pvr≦100%であることが好ましく、更に40%≦pvr≦100%であることが好ましい。
【0023】
本発明の金属含有MFI型ゼオライトは、(ii)回折角を2θとした紛体X線回折測定において0.1〜3度の範囲にピークを有さないものである。このことは、メソ細孔間の配置には規則性がないこと、メソ細孔間を区切る壁も存在しないことを示すものであり、触媒とした際にはメソ細孔間の物質移動が容易になることから反応効率に優れる芳香族化合物製造用触媒となるものである。
【0024】
本発明の金属含有MFI型ゼオライトは、(iii)PD≦100nmのものであり、特に耐熱性にも優れるものとなることから、3nm≦PDであることが好ましく、更に5nm≦PDであることが好ましい。ここで、PD>100nmのゼオライトである場合、ほぼ均一なメソ細孔群が形成されなく、触媒とした際の反応選択性に劣るものとなる。なお、PDは、例えば外表面積から以下の式(1)を用いて算出して求めることができる。
PD=6/S(1/2.29×10
6+0.18×10
−6) (1)
(ここで、Sは外表面積(m
2/g)を示すものである。)
また、式(1)における外表面積(S(m
2/g))は、液体窒素温度における一般的な窒素吸着法を用い、t−plot法から求めることができる。例えば、tを吸着量の厚みとするときに、tについて0.6〜1nmの範囲の測定点を直線近似し、得られた回帰直線の傾きから外表面積を求める方法である。
【0025】
なお、金属含有MFI型ゼオライトの粒子径を測定する別の方法としては、例えば走査型電子顕微鏡(SEM)や透過型電子顕微鏡(TEM)の写真から任意の粒子を10個以上選んで、その表面積平均直径を求める方法を挙げることができる。
【0026】
本願発明の金属含有MFI型ゼオライトは、そのSiO
2/Al
2O
3(モル比)は制限されるものではなく、その中でも耐熱性、反応選択性、生産性に優れる芳香族化合物製造用触媒となることから、SiO
2/Al
2O
3(モル比)が20以上200以下であることが好ましい。
【0027】
本発明の金属含有MFI型ゼオライトとしては、反応選択性、生産性に優れる芳香族化合物製造用触媒となることから、細孔内にテトラプロピルアンモニウム塩の様な構造指向剤を含まないものであることが好ましい。
【0028】
また、上記(i)〜(iii)の特性を満足する原料であるMFI型ゼオライトの製造方法としては、例えば以下の方法を挙げることができる。
【0029】
テトラプロピルアンモニウム(以降、「TPA」とする場合もある。)水酸化物と水酸化ナトリウムの水溶液に不定形アルミノシリケートゲルを添加して懸濁させ、得られた懸濁液にMFI型ゼオライトを種晶として加え原料組成物とし、得られた原料組成物を結晶化させ、焼成することによりMFI型ゼオライトを得ることができる。
【0030】
また、本発明の金属含有MFI型ゼオライトは、芳香族化合物製造用触媒とした際に、より高い触媒活性、長寿命を示す触媒となることから、さらに(iv)細孔径0.3nmから0.8nmの範囲の微分細孔容積値(dV
P/d(d
P))−ミクロ細孔の分布曲線が、極大値を有するものであり、最も微分細孔容積値(dV
P/d(d
P))の大きい値を示す細孔径0.4〜0.5nmの範囲にあるものであることが好ましい。
【0031】
このような(iv)をも満足するMFI型ゼオライトの製造方法としては、例えば上記(i)〜(iii)の特性を満足する原料であるMFI型ゼオライトの骨格中のアルミニウムをスチーム等によって脱アルミニウム化することにより製造することが可能である。その際のスチーム処理の温度は、例えば400〜900℃であることが好ましく、特に450〜800℃、更に500〜700℃であることが好ましい。また、スチームの分圧としては、0.001〜5MPaであることが好ましく、特に0.01〜0.5MPa、更に0.05〜0.2MPaであることが好ましい。スチームの濃度としては、例えば0.01〜100vol%水蒸気/希釈ガスであることが好ましい。希釈ガスは、窒素等の不活性ガス、空気、酸素、一酸化炭素、二酸化炭素、またはその混合ガス等を用いることができる。スチーム処理時間については任意に選択可能である。
【0032】
本発明の金属含有MFI型ゼオライトの製造方法としては、例えばMFI型ゼオライトに含浸担持、イオン交換、骨格置換等の方法により、亜鉛及び/又はガリウムを含有することにより製造することができる。
【0033】
本発明の新規な金属含有MFI型ゼオライトを芳香族化合物製造用触媒として用いる際の形態としては、制限されるものではなく、例えば該金属含有MFI型ゼオライト粉末をそのまま触媒として用いること、圧縮成型を行い特定の形状物として用いること、バインダー等と混合し成形を行い特定の形状物として用いること、等のいずれの形態として用いることも可能である。
【0034】
本発明の金属含有MFI型ゼオライトを芳香族化合物製造用触媒とすることにより、反応選択性、生産性等の効率に優れる触媒となるものであり、例えば脂肪族炭化水素、特に炭素数10以下の脂肪族炭化水素、さらには炭素数2〜6の脂肪族炭化水素と接触することにより、効率よく芳香族化合物を製造することを可能とするものである。その際の脂肪族炭化水素とは、例えばパラフィン系、オレフィン系、アセチレン系、脂環系の炭化水素を包含するものを挙げることができ、具体的にはエタン、プロパン、ブタン、イソブタン、ペンタン、ヘキサン等のパラフィン系;エチレン、プロピレン、ブテン、イソブテン、ペンテン、ヘキセン等のオレフィン系;アセチレン等のアセチレン系;シクロプロパン、シクロブタン、シクロヘキサン等の脂環系及びそれらの混合物等を挙げることができる。
【0035】
そして、その際の実施形態である反応において、反応温度は特に限定されるものではなく、芳香族化合物の製造が可能であればよく、中でも、副生するパラフィン、オレフィン又はアルカンの生成を抑制し、必要以上の耐熱反応装置を要しない芳香族化合物の効率的な反応となることから400〜800℃の範囲が望ましい。また、反応圧力にも制限はなく、例えば0.05MPa〜5MPa程度の圧力範囲で運転が可能である。そして、その際の芳香族化合物製造用触媒に対する反応原料である脂肪族炭化水素の供給は、触媒体積に対し原料ガスの体積の比として特に制限されるものではなく、例えば1h
−1〜50000h
−1程度の空間速度を挙げることができる。脂肪族炭化水素を原料ガスとして供給する際には、単一ガス、混合ガス、およびこれらを窒素等の不活性ガス、水素、一酸化炭素、二酸化炭素から選ばれる単一または混合ガスにより希釈したものとして用いることもできる。
【0036】
その反応形式として制限はなく、例えば固定床、輸送床、流動床、移動床、多管式反応器のみならず連続流式および間欠流式並びにスイング式反応器、等を用いることができる。
【0037】
また、製造される芳香族化合物としては、芳香族化合物と称される範疇に属するものであれば特に制限はなく、例えばベンゼン、トルエン、キシレン、トリメチルベンゼン、エチルベンゼン、プロピルベンゼン、ブチルベンゼン、ナフタレン、メチルナフタレン等を挙げることができ、特に、ベンゼン、トルエン、キシレンであることが好ましい。
【発明の効果】
【0038】
本発明は、亜鉛及び/又はガリウムを含む特定のMFI型ゼオライトに関するものであり、特に脂肪族炭化水素から芳香族化合物を製造する際に、特異的に長い触媒寿命を得ることができる芳香族化合物製造用触媒とすることも可能なものであり、工業的にも非常に有用なものである。
【実施例】
【0039】
以下に、本発明を実施例により具体的に説明する。
【0040】
なお、実施例により用いたMFI型ゼオライト、芳香族化合物製造用触媒としての性能は、以下の方法により測定・定義した。
【0041】
〜細孔分布、細孔直径、及び外表面積の測定〜
MFI型ゼオライトの細孔分布、及び、細孔直径は窒素吸着測定により測定した。
【0042】
その際の窒素吸着測定としては、窒素吸着装置((商品名)OMNISORP360CX,BeckmanCoulter社製)を用い、吸脱着とも30torr/stepの条件で測定した。外表面積は、t−plot法により、吸着層の厚み(t=0.6〜1.0nm)の範囲を直線近似して求めた。
【0043】
そして、窒素吸着測定の脱着過程をBarret−Joyner−Halenda法(Journal of the American Chemical Society、1951年、頁373〜380)にて解析し、横軸が細孔直径の常数、縦軸が窒素ガスの脱着量の微分値であるメソ細孔の細孔分布曲線を得た。メソ細孔の全細孔容積は、2nm以上50nm以下の範囲の窒素ガス脱着量を積算することにより求めた。
【0044】
そして、メソ細孔からの窒素ガス脱着量のメソ細孔直径値での微分値(d(V/m)/d(D))のピークの内、最大のピークをガウス関数の強度近似で解析し、そのガウス関数の中心値(μ)から標準偏差の2倍(2σ)の範囲(=μ±2σ)内の直径を有するメソ細孔を均一メソ細孔と定義した。均一メソ細孔の細孔容積は、中心値(μ)を基準として±2σの範囲の窒素ガス脱着量を積算して求めた。
【0045】
〜平均粒子径の測定〜
外表面積から前記の式(1)を用いて平均粒子径を算出した。式(1)中、Sは外表面積(m
2/g)であり、PDは平均粒子径(m)である。式(1)における外表面積(S(m
2/g))は、液体窒素温度における窒素吸着法によりt−plot法から求めた。
【0046】
〜SiO
2/Al
2O
3モル比、遷移金属導入量の測定〜
ゼオライトのSiO
2/Al
2O
3モル比および遷移金属の導入量は、MFI型ゼオライトをフッ酸と硝酸の混合水溶液で溶解し、これを一般的なICP装置((商品名)OPTIMA3300DV,PerkinElmer社製)による誘導結合プラズマ発光分光分析(ICP−AES)で測定し、求めた。
【0047】
〜凝集径の測定〜
凝集径として、動的散乱法によって凝集粒子径の体積平均径(D
50)を測定した。測定には(日機装製、(商品名)マイクロトラックHRA(Model9320−x100)を用いた。測定において粒子屈折率は1.66、粒子の設定は透明非球状粒子、溶媒の液体屈折率は1.33とした。
【0048】
〜粉末X線回折の測定〜
X線回折測定装置(スペクトリス社製、(商品名)X’pert PRO MPD)を用い、管電圧45kV、管電流40mAとしてCuKα1を用いて、大気中において測定した。0.04〜5度の範囲を0.08度/ステップ、200秒/ステップで分析した。また、ダイレクトビームの吸収率で補正したバックグラウンドを除去している。
【0049】
ピークの有無の確認は目視で行うことができるほか、ピークサーチプログラムを利用してもよい。ピークサーチプログラムは、一般的なプログラムが利用できる。例えば、横軸が2θ(度)、縦軸が強度(a.u.)の測定結果をSAVITSKY&GOLAYの式とSliding Polynomialフィルターで平滑化した後、2次微分を行ったときに、3点以上連続する負の値がある場合、ピークが存在すると判断した。
【0050】
〜芳香族化合物製造装置及びその製造方法〜
実施例により得られたMFI型ゼオライト、それを含む芳香族化合物製造用触媒は、以下の方法により芳香族化合物の製造を行い、その評価を行った。
【0051】
ステンレス製反応管(内径16mm、長さ300mm)を用いた固定床気相流通式反応装置を用いた。ステンレス製反応管のそれぞれの中段に、芳香族化合物製造用触媒を充填し、乾燥空気流通下での加熱前処理を行ったのち、原料ガスをフィードした。なお、反応器の装置条件および運転条件は、本実施例記載の条件に限定されるものではなく、適宜選択可能である。そして、加熱はセラミック製管状炉を用い、触媒層の温度を制御した。反応出口ガスおよび反応液を採取し、ガスクロマトグラフを用い、ガス成分および液成分を個別に分析した。ガス成分は、TCD検出器を備えたガスクロマトグラフ(島津製作所製、(商品名)GC−1700)を用いて分析した。充填剤は、Waters社製PorapakQ(商品名)またはGLサイエンス社製MS−5A(商品名)を用いた。液成分は、FID検出器を備えたガスクロマトグラフ(島津製作所製、(商品名)GC−2015)を用いて分析した。分離カラムは、キャピラリーカラム(GLサイエンス社製、(商品名)TC−1)を用いた。
【0052】
反応条件は下記のように設定した。
【0053】
(芳香族化合物製造条件)
触媒温度:600℃。
流通ガス:原料炭化水素50mol%+窒素50mol%の混合ガス、60ml/分。
触媒体積に対する原料炭化水素の体積の比:1000/時間。
触媒重量:0.9g。
触媒形状:遷移金属含有MFI型ゼオライト粉末を400kgf/cm
2で1分間成型した後に粉砕し、約1mmのペレット形状とした。
反応圧力:0.1MPa。
【0054】
MFI型ゼオライトの製造は、特開2013−227203公報を参考にその製造を行った。
【0055】
実施例1
テトラプロピルアンモニウム(以降、TPAと略記する場合がある。)水酸化物と水酸化ナトリウムの水溶液に不定形アルミノシリケートゲルを添加して懸濁させた。得られた懸濁液にMFI型ゼオライトを種晶として加え原料組成物とした。その際の種晶の添加量は、原料組成物中のAl
2O
3とSiO
2の重量に対して、0.7重量%とした。また、副生したエタノールは蒸発させて除いた。
【0056】
該原料組成物の組成は以下のとおりである。
SiO
2/Al
2O
3モル比=44、TPA/Siモル比=0.05、Na/Siモル比=0.16、OH/Siモル比=0.21、H
2O/Siモル比=10
得られた原料組成物をステンレス製オートクレーブに密閉し、115℃で攪拌しながら4日間結晶化させ、スラリー状混合液を得た。結晶化後のスラリー状混合液を遠心沈降機で固液分離した後、十分量の純水で固体粒子を洗浄し、110℃で乾燥して乾燥粉末を得た。
【0057】
得られた乾燥粉末10gを、550℃で1時間焼成後、60℃、20重量%の塩化アンモニウム水溶液100ml中で20時間交換、ろ過、洗浄してアンモニウム型のMFI型ゼオライトとした。その後、アンモニウム型のMFI型ゼオライトを550℃で1時間焼成して、MFI型ゼオライトを得た。
【0058】
得られたMFI型ゼオライトは、平均粒子径26nm、SiO
2/Al
2O
3モル比は40、凝集径は46μmであった。得られたMFI型ゼオライト中に存在するメソ細孔の全細孔容積は0.40ml/gであった。また、細孔分布曲線におけるメソ細孔分布曲線はピークを有し、均一メソ細孔のピークの半値幅は9nm、μ=16nmであった。また、均一メソ細孔の細孔容積は0.32ml/gであり、メソ細孔の全細孔容積に占める均一メソ細孔の細孔容積の割合は80%であった。得られたMFI型ゼオライトの物性を表1に示す。また、得られたMFI型ゼオライトの粉末X線回折では、0.1〜3度の範囲にピークは存在せず、メソ細孔が不規則に連結していることが示されている。
【0059】
得られたMFI型ゼオライト3.0gに対し、硝酸亜鉛六水和物0.35gを水1.1gに溶解させた水溶液を加え、10分間混練したのち、550℃で2時間焼成することで亜鉛含有MFI型ゼオライトを得た。得られた亜鉛含有MFI型ゼオライトは、細孔分布曲線におけるメソ細孔分布曲線はピークを有し、均一メソ細孔のピークの半値幅は9nm、μ=16nmであった。また、均一メソ細孔の細孔容積は0.32ml/gであり、メソ細孔の全細孔容積に占める均一メソ細孔の細孔容積の割合は80%であった。粉末X線回折では、0.1〜3度の範囲にピークは存在せず、平均粒子径は26nmであり、亜鉛2.2重量%を含有するものであった。
【0060】
得られた亜鉛含有MFI型ゼオライトを芳香族化合物製造用触媒とし、プロパンを原料とし、上記した条件にて芳香族化合物の製造を行った。
【0061】
ガス流通開始25分後のベンゼン、トルエン、キシレンの収率はそれぞれ15.3wt%、12.2wt%、2.8wt%であり、ガス流通開始145分後のベンゼン、トルエン、キシレンの収率はそれぞれ14.2wt%、11.3wt%、3.2wt%で収率の低下は僅かであり、安定した芳香族化合物の製造が可能なものであった。
【0062】
比較例1
市販のMFI型ゼオライト((商品名)HSZ-840HOA、東ソー株式会社製;平均粒子径10μm、SiO
2/Al
2O
3モル比=40、メソ細孔は観察されない)2.8gに対し、硝酸亜鉛六水和物0.33gを水0.69gに溶解させた水溶液を加え、10分間混練したのち、550℃で2時間焼成することで亜鉛含有MFI型ゼオライトを得た。得られた亜鉛含有MFI型ゼオライトにメソ細孔は観察されず、含まれる亜鉛は2.2重量%であった。
【0063】
得られた亜鉛含有MFI型ゼオライトを触媒とし、プロパンを原料とし、上記した条件にて芳香族化合物の製造を行った。
【0064】
ガス流通開始25分後のベンゼン、トルエン、キシレンの収率はそれぞれ14.5wt%、11.9wt%、2.8wt%であり、ガス流通開始145分後のベンゼン、トルエン、キシレンの収率はそれぞれ3.1wt%、2.2wt%、0.9wt%であり、時間経過と共に大きく低下した。
【0065】
実施例2
実施例1で得られたMFI型ゼオライト10.8gに対し、硝酸ガリウムn水和物1.4gを水3.7gに溶解させた水溶液を加え、10分間混練したのち、550℃で2時間焼成することでガリウム含有MFI型ゼオライトを得た。
【0066】
得られたガリウム含有MFI型ゼオライトは、細孔分布曲線におけるメソ細孔分布曲線はピークを有し、均一メソ細孔のピークの半値幅は9nm、μ=16nmであった。また、均一メソ細孔の細孔容積は0.32ml/gであり、メソ細孔の全細孔容積に占める均一メソ細孔の細孔容積の割合は80%であった。粉末X線回折では、0.1〜3度の範囲にピークは存在せず、平均粒子径は26nmであり、ガリウム2.1重量%を含有するものであった。
【0067】
得られたガリウム含有MFI型ゼオライトを芳香族化合物製造用触媒とし、プロパンを原料とし、上記した条件にて芳香族化合物の製造を行った。
【0068】
ガス流通開始25分後のベンゼン、トルエン、キシレンの収率はそれぞれ19.1wt%、16.7wt%、4.4wt%であり、ガス流通開始145分後のベンゼン、トルエン、キシレンの収率はそれぞれ15.4wt%、13.6wt%、4.1wt%となり、ガス流通開始145分後においても高い収率でベンゼン、トルエン、キシレンが得られた。
【0069】
実施例3
実施例2で得られたガリウム含有MFI型ゼオライトを芳香族化合物製造用触媒とし、1−ブテンを原料とし、上記した条件にて芳香族化合物の製造を行った。
【0070】
ガス流通開始145分後のベンゼン、トルエン、キシレンの収率はそれぞれ17.0wt%、24.3wt%、8.6wt%となり、ガス流通開始300分後のベンゼン、トルエン、キシレンの収率はそれぞれ13.3wt%、23.3wt%、11.8wt%であり、ガス流通開始480分後のベンゼン、トルエン、キシレンの収率はそれぞれ6.1wt%、13.1wt%、10.3wt%となり、ガス流通開始480分後においても高い収率でベンゼン、トルエン、キシレンが得られた。
【0071】
比較例2
市販のMFI型ゼオライト((商品名)HSZ-840HOA、東ソー株式会社製;平均粒子径10μm、SiO
2/Al
2O
3モル比=40、メソ細孔は観察されない)3.34gに対し、硝酸ガリウムn水和物0.4gを水1.1gに溶解させた水溶液を加え、10分間混練したのち、550℃で2時間焼成することでガリウム含有MFI型ゼオライトを得た。得られたガリウム含有MFI型ゼオライトにメソ細孔は観察されず、含まれるガリウムは2.2重量%であった。
【0072】
得られたガリウム含有MFI型ゼオライトを触媒とし、1−ブテンを原料とし、上記した条件にて芳香族化合物の製造を行った。
【0073】
ガス流通開始145分後のベンゼン、トルエン、キシレンの収率はそれぞれ17.0wt%、24.5wt%、9.0wt%であり、ガス流通開始300分後のベンゼン、トルエン、キシレンの収率はそれぞれ9.5wt%、18.3wt%、9.9wt%であり、ガス流通開始480分後のベンゼン、トルエン、キシレンの収率はそれぞれ4.0wt%、8.9wt%、6.9wt%であり、時間経過と共に大きく低下した。
【0074】
実施例4
実施例2で得られたガリウム含有MFI型ゼオライトに対して、スチーム処理を行った。スチーム処理は、固定床で600℃に保持された該MFI型ゼオライトに対して、55vol%水蒸気/空気を10分間供給した。スチーム処理後自然放冷を行った。
【0075】
得られたガリウム含有MFI型ゼオライトは、平均粒子径は26nm、SiO
2/Al
2O
3モル比は26、メソ細孔の全細孔容積0.35ml/gであった。また、ミクロ細孔分布曲線は、細孔径0.41nmに最も大きい微分細孔容積値を有する極大値を持つものであった。そして、メソ細孔分布曲線における均一メソ細孔のピークの半値幅は7nm、中心値は10nmであった。また、その均一メソ細孔の細孔容積は0.25ml/gであり、メソ細孔の全細孔容積に占める均一メソ細孔の細孔容積の割合は70%であった。また、得られたMFI型ゼオライトの粉末X線回折では、0.1〜3度の範囲にピークは存在せず、メソ細孔が不規則に連結していることが示されている。
【0076】
得られたガリウム含有MFI型ゼオライトを芳香族化合物製造用触媒とし、1−ブテンを原料とし、上記した条件にて芳香族化合物の製造を行った。
【0077】
ガス流通開始145分後のベンゼン、トルエン、キシレンの収率はそれぞれ16.6wt%、23.9wt%、9.4wt%となり、ガス流通開始300分後のベンゼン、トルエン、キシレンの収率はそれぞれ13.2wt%、21.6wt%、10.1wt%であり、ガス流通開始480分後のベンゼン、トルエン、キシレンの収率はそれぞれ11.1wt%、19.5wt%、10.2wt%であり、ガス流通開始480分後においても高い収率でベンゼン、トルエン、キシレンが得られた。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明の新規なMFI型ゼオライトは、亜鉛及び/又はガリウムを含み、メソ細孔を特徴とすることにより、例えば飽和脂肪族炭化水素又は脂環式炭化水素原料から芳香族化合物を製造する際に、特異的な長い触媒寿命を発現し、生産性に優れると共に安定した製造方法とすることが可能となり、例えば芳香族化合物製造用触媒として工業的にも非常に有用なものである。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【
図1】実施例1、2、4により得られた金属導入MFI型ゼオライトのミクロ細孔分布曲線である。