特許第6953791号(P6953791)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6953791
(24)【登録日】2021年10月4日
(45)【発行日】2021年10月27日
(54)【発明の名称】CHA型ゼオライト及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C01B 39/04 20060101AFI20211018BHJP
【FI】
   C01B39/04
【請求項の数】14
【全頁数】38
(21)【出願番号】特願2017-101653(P2017-101653)
(22)【出願日】2017年5月23日
(65)【公開番号】特開2017-210402(P2017-210402A)
(43)【公開日】2017年11月30日
【審査請求日】2020年4月16日
(31)【優先権主張番号】特願2016-102181(P2016-102181)
(32)【優先日】2016年5月23日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003300
【氏名又は名称】東ソー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】前浜 誠司
(72)【発明者】
【氏名】青山 英和
(72)【発明者】
【氏名】中村 聡
【審査官】 小野 久子
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2007/0100185(US,A1)
【文献】 国際公開第2017/204212(WO,A1)
【文献】 特表2016−502490(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 39/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミナに対するシリカのモル比が10.0以上20.0未満及びケイ素に対するシラノール基のモル比が0.15×10−2以上0.50×10−2以下、
アルミナに対するシリカのモル比が20.0以上35.0以下及びケイ素に対するシラノール基のモル比が0.15×10−2以上1.10×10−2以下、
アルミナに対するシリカのモル比が35.0を超え45.0以下及びケイ素に対するシラノール基のモル比が0.15×10−2以上1.65×10−2以下、若しくは、
アルミナに対するシリカのモル比が45.0を超え55.0以下及びケイ素に対するシラノール基のモル比が0.15×10−2以上1.80×10−2以下、のいずれかであるCHA型ゼオライト。
【請求項2】
アルミナに対するシリカのモル比が10.0以上20.0未満及びケイ素に対するシラノール基のモル比が0.15×10−2以上0.50×10−2以下、若しくは
アルミナに対するシリカのモル比が20.0以上31.5以下及びケイ素に対するシラノール基のモル比が0.15×10−2以上1.10×10−2以下であるCHA型ゼオライト。
【請求項3】
大気中、600℃、5時間で熱処理したCHA型ゼオライトの20−1反射の粉末X線回折ピークの強度に対する、大気中、1000℃、5時間で熱処理したCHA型ゼオライトの20−1反射の粉末X線回折ピークの強度の比が、0.30以上である請求項1又は2に記載のCHA型ゼオライト。
【請求項4】
一次粒子同士が化学的に凝集しながら形成された結晶粒子を含む請求項1乃至3のいずれか一項に記載のCHA型ゼオライト。
【請求項5】
アルミナ源、シリカ源、アルカリ源、水、N,N,N−トリアルキルアダマンチルアンモニウム塩及び以下の一般式を有するN,N,N−トリアルキルシクロヘキシルアンモニウム塩を含む組成物を結晶化する結晶化工程、を有し、該組成物がアルカリ金属としてナトリウム及びカリウムを含有し、なおかつ、カリウムに対するナトリウムのモル比が0.05以上20.0以下であることを特徴とするCHA型ゼオライトの製造方法。
【化1】
はエチル基、Rはメチル基又はエチル基のいずれかのアルキル基、及びRはメチル基又はエチル基のいずれかのアルキル基であり、なおかつ、X−はN,N,N−トリアルキルシクロヘキシルアンモニウムカチオンのカウンターアニオンである。
【請求項6】
前記N,N,N−トリアルキルシクロヘキシルアンモニウム塩又は前記N,N,N−トリアルキルアダマンチルアンモニウム塩の少なくともいずれかが、水酸化物、塩化物、臭化物、ヨウ化物、炭酸モノエステル塩、硫酸モノエステル塩、硝酸塩及び硫酸塩からなる群の少なくとも1種の塩である請求項に記載の製造方法。
【請求項7】
前記組成物のN,N,N−トリアルキルシクロヘキシルアンモニウム塩に対するN,N,N−トリアルキルアダマンチルアンモニウム塩のモル比が0.025以上である請求項又はに記載の製造方法。
【請求項8】
前記組成物のシリカに対するN,N,N−トリアルキルアダマンチルアンモニウム塩のモル比が0.005以上0.04以下である請求項乃至のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項9】
前記組成物のフッ素含有量が1ppm以下である請求項5乃至8のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項10】
前記N,N,N−トリアルキルアダマンチルアンモニウム塩が、N,N,N−トリメチルアダマンチルアンモニウム塩である請求項乃至9のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項11】
前記アルミナ源及びシリカ源が非晶質アルミノシリケートを含む請求項乃至10のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項12】
前記組成物のシリカに対する水酸化物イオンのモル比が0.30以下である請求項乃至11のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項13】
前記N,N,N−トリアルキルシクロヘキシルアンモニウム塩が、N,N,N−ジメチルエチルシクロヘキシルアンモニウム塩又はN,N,N−メチルジエチルシクロヘキシルアンモニウム塩の少なくともいずれかである請求項乃至1のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項14】
前記組成物が以下の組成を有する請求項乃至13のいずれか一項に記載の製造方法。
SiO/Al =10以上60以下
TMAd/DMECHA =0.025以上1.0以下
OSDA/SiO =0.06以上0.20以下
M/SiO =0.10以上0.30以下
OH/SiO =0.05以上0.50以下
O/SiO =10.0以上20.0以下
種晶 =0.0重量%以上5.0重量%以下
但し、TMAdはN,N,N−トリメチルアダマンチルアンモニウム塩、DMECHAはN,N,N−ジメチルエチルシクロヘキシルアンモニウム塩、OSDAはN,N,N−ジメチルエチルシクロヘキシルアンモニウム塩及びN,N,N−トリメチルアダマンチルアンモニウム塩、並びに、MはNa及びKである。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はCHA型ゼオライト及びその製造方法に関する。特に、工業的なCHA型ゼオライトの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
CHA型ゼオライトであり、なおかつAl含有量の少ないアルミノシリケートとしてSSZ−13が報告されている(特許文献1)。SSZ−13は安定性が高いため、メタノールからのエチレン製造又はプロピレン製造用の固体酸触媒(MTO触媒)、尿素存在下における窒素酸化物還元触媒(NH−SCR触媒)、又は、これらの触媒担体として使用されている。
【0003】
このようなCHA型ゼオライト及びその工業的な製造方法として、以下のものが報告されている。例えば、特許文献1において、SSZ−13が得られる有機構造指向剤(以下、「OSDA」ともいう。)として、N−アルキル−3−キヌクリジノールアンモニウム塩、N,N,N−トリアルキル−2−アンモニウムエキソノルボルナン塩又はN,N,N−トリメチルアダマンチルアンモニウム塩が開示されている。CHA型ゼオライトが結晶化される製造条件の範囲が広いため、N,N,N−トリメチルアダマンチルアンモニウム塩(以下、「TMAd塩」ともいう。)をはじめとするN,N,N−トリアルキルアダマンチルアンモニウム塩(以下、「ADA塩」ともいう。)が、工業的なSSZ−13の製造方法のOSDAとして使用されている。
【0004】
その一方、ADA塩は高価であるため、ADA塩を使用せずにCHA型ゼオライトを製造する方法が検討されている。
【0005】
ADA塩を使用しないCHA型ゼオライトの製造方法として、水酸化N,N,N−トリメチルベンジルアンモニウム又は水酸化N,N,N−トリエチルベンジルアンモニウムなどのN,N,N−トリアルキルベンジルアンモニウム塩(以下、「TABA塩」ともいう。)をOSDAとして使用する製造方法や(特許文献2)、水酸化N,N,N−トリメチルシクロヘキシルアンモニウム(特許文献3)、水酸化N,N,N−トリエチルシクロヘキシルアンモニウム、水酸化N,N,N−メチルジエチルシクロヘキシルアンモニウム、水酸化N,N,N−ジメチルエチルシクロヘキシルアンモニウム(特許文献4)などの、N,N,N−トリアルキルシクロヘキシルアンモニウム塩(以下、「TACHA塩」ともいう。)をOSDAとして使用する製造方法が報告されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第4,544,538号
【特許文献2】米国特許第7,597,874号
【特許文献3】米国公開特許2013/0323164
【特許文献4】米国特許第7,670,589号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
TABA塩をOSDAとして使用して得られるCHA型ゼオライトは、ADA塩のみをOSDAとして得られたCHA型ゼオライトと同様なものしか得られなかった。
【0008】
さらに、TABA塩はADA塩より安価な化合物であるが、TABA塩を使用とした製造方法は、ADA塩を使用した製造方法よりも、CHA型ゼオライトの収率が低く、生産効率が悪い。そのため、OSDAの単価は削減できるが、その使用量は増えるなどの欠点があるため、TABA塩の使用による製造方法製造コストの低減は限定的であり、TABA塩を使用とした製造方法は大量生産には適していなかった。
【0009】
TACHA塩を使用したこれまで報告されているCHA型ゼオライトの製造方法も、TABA塩と同様な理由でCHA型ゼオライトの製造コストの低減が限定的であることに加え、CHA型ゼオライトが生成する条件が非常に限定されていた。そのため、TACHA塩を使用したこれまで報告されている製造方法は、TABA塩を使用した製造方法と比べても製造条件の制御が困難であり、一層、大量生産には適していなかった。
【0010】
これらの課題に鑑み、本発明は、従来のCHA型ゼオライト、特に有機構造指向剤としてADA塩のみを使用して得られた従来のCHA型ゼオライトと比べ、触媒や触媒担体により適した高結晶性のCHA型ゼオライトを提供することを目的とする。さらに、本発明は高結晶性のCHA型ゼオライトが工業的な生産に適した収率で得られるCHA型ゼオライトの製造方法を提供することを別の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、触媒や触媒担体により適したCHA型ゼオライト、及び、工業的な製造に適したCHA型ゼオライトの製造方法について検討した。その結果、ADA塩をOSDAとして得られる従来のCHA型ゼオライトと比べ、耐熱性や結晶性が高いCHA型ゼオライトを見出した。更には、ADA塩と特定のTACHA塩とを併用することで、ADA塩を使用した従来のCHA型ゼオライトの製造方法と同等以上の収率で、高結晶性のCHA型ゼオライトが得られることを見出し、本発明を完成した。
【0012】
すなわち、本発明の要旨は以下のとおりである。
[1] アルミナに対するシリカのモル比が10.0以上20.0未満及びケイ素に対するシラノール基のモル比が0.15×10−2以上0.50×10−2以下、
アルミナに対するシリカのモル比が20.0以上35.0以下及びケイ素に対するシラノール基のモル比が0.15×10−2以上1.10×10−2以下、
アルミナに対するシリカのモル比が35.0を超え45.0以下及びケイ素に対するシラノール基のモル比が0.15×10−2以上1.65×10−2以下、若しくは、
アルミナに対するシリカのモル比が45.0を超え55.0以下及びケイ素に対するシラノール基のモル比が0.15×10−2以上1.80×10−2以下、のいずれかであるCHA型ゼオライト。
[2] 大気中、600℃、5時間で熱処理したCHA型ゼオライトの20−1反射の粉末X線回折ピークの強度に対する、大気中、1000℃、5時間で熱処理したCHA型ゼオライトの20−1反射の粉末X線回折ピークの強度の比が、0.30以上である上記[1]に記載のCHA型ゼオライト。
[3] 一次粒子同士が化学的に凝集しながら形成された結晶粒子を含む上記[1]又は[2]に記載のCHA型ゼオライト。
【0013】
[4] アルミナ源、シリカ源、アルカリ源、水、N,N,N−トリアルキルアダマンチルアンモニウム塩及び以下の一般式を有するN,N,N−トリアルキルシクロヘキシルアンモニウム塩を含む組成物を結晶化する結晶化工程、を有することを特徴とするCHA型ゼオライトの製造方法。

【化1】
はエチル基、Rはメチル基又はエチル基のいずれかのアルキル基、及びRはメチル基又はエチル基のいずれかのアルキル基であり、なおかつ、XはN,N,N−トリアルキルシクロヘキシルアンモニウムカチオンのカウンターアニオンである。
【0014】
[5] 前記N,N,N−トリアルキルシクロヘキシルアンモニウム塩又は前記N,N,N−トリアルキルアダマンチルアンモニウム塩の少なくともいずれかが、水酸化物、塩化物、臭化物、ヨウ化物、炭酸モノエステル塩、硫酸モノエステル塩、硝酸塩及び硫酸塩からなる群の少なくとも1種の塩である上記[4]に記載の製造方法。
[6] 前記組成物のN,N,N−トリアルキルシクロヘキシルアンモニウム塩に対するN,N,N−トリアルキルアダマンチルアンモニウム塩のモル比が0.025以上である上記[4]又は[5]に記載の製造方法。
[7] 前記組成物のシリカに対するN,N,N−トリアルキルアダマンチルアンモニウム塩のモル比が0.005以上0.04以下である上記[4]乃至[6]のいずれかに記載の製造方法。
[8] 前記アルカリ源がカリウム、ルビジウム及びセシウムからなる群のいずれか1種以上を含む上記[4]乃至[7]のいずれかに記載の製造方法。
[9] 前記原料組成物のシリカに対する、カリウム、ルビジウム及びセシウムからなる群のいずれか1種以上のモル比が0を超え0.15未満である上記[4]乃至[8]のいずれかに記載の製造方法。
[10] 前記N,N,N−トリアルキルアダマンチルアンモニウム塩が、N,N,N−トリメチルアダマンチルアンモニウム塩である上記[4]乃至[9]のいずれかに記載の製造方法。
[11] 前記アルミナ源及びシリカ源が非晶質アルミノシリケートを含む上記[4]乃至[10]のいずれかに記載の製造方法。
[12] 前記組成物のシリカに対する水酸化物イオンのモル比が0.30以下である[4]乃至[11]のいずれかに記載の製造方法。
[13] 前記N,N,N−トリアルキルシクロヘキシルアンモニウム塩が、N,N,N−ジメチルエチルシクロヘキシルアンモニウム塩又はN,N,N−メチルジエチルシクロヘキシルアンモニウム塩の少なくともいずれかである上記[4]乃至[12]のいずれかに記載の製造方法。
[14] 前記組成物が以下の組成を有する上記[4]乃至[13]のいずれかに記載の製造方法。
SiO/Al =10以上60以下
TMAd/DMECHA =0.025以上1.0以下
OSDA/SiO =0.06以上0.20以下
M/SiO =0.10以上0.30以下
OH/SiO =0.05以上0.50以下
O/SiO =10.0以上20.0以下
種晶 =0.0重量%以上5.0重量%以下
【0015】
但し、TMAdはN,N,N−トリメチルアダマンチルアンモニウム塩、DMECHAはN,N,N−ジメチルエチルシクロヘキシルアンモニウム塩、OSDAはN,N,N−ジメチルエチルシクロヘキシルアンモニウム塩及びN,N,N−トリメチルアダマンチルアンモニウム塩、並びに、MはNa及びKである。
【発明の効果】
【0016】
本発明により、従来のCHA型ゼオライト、特に有機構造指向剤としてADA塩のみを使用して得られた従来のCHA型ゼオライトと比べ、触媒や触媒担体により適した高結晶性のCHA型ゼオライト、特に窒素酸化物還元触媒又はその担体、更には尿素存在下における窒素酸化物還元触媒又はその担体に適したCHA型ゼオライトを提供することができる。さらに、本発明により高結晶性のCHA型ゼオライトが工業的な生産に適した収率で得られるCHA型ゼオライトの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】CHA型ゼオライトの骨格端部を示す模式図 (a)骨格構造のネットワーク構造中の末部を示す模式図 (b)骨格構造のネットワーク構造中の端部を示す模式図
図2】実施例A−1のCHA型ゼオライトのXRDパターン
図3】実施例A−1のCHA型ゼオライトの走査型電子顕微鏡観察図
図4】実施例B−8のCHA型ゼオライトのXRDパターン
図5】実施例B−8のCHA型ゼオライトの走査型電子顕微鏡観察図
図6】実施例B−9のCHA型ゼオライトのXRDパターン
図7】実施例B−9のCHA型ゼオライトの走査型電子顕微鏡観察図
図8】実施例B−10のCHA型ゼオライトのXRDパターン
図9】実施例B−10のCHA型ゼオライトの走査型電子顕微鏡観察図
図10】比較例B−5のCHA型ゼオライトとERI型ゼオライトの混合物のXRDパターン
図11】比較例B−5のCHA型ゼオライトとERI型ゼオライトの混合物の走査型電子顕微鏡観察図
図12】比較例B−9のCHA型ゼオライトとERI型ゼオライトの混合物のXRDパターン
図13】比較例B−9のCHA型ゼオライトとERI型ゼオライトの混合物の走査型電子顕微鏡観察図
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明のCHA型ゼオライトについて詳細に説明する。
【0019】
本発明はCHA型ゼオライトに係る。CHA型ゼオライトは、国際ゼオライト学会で定義される構造コードでCHA構造となる結晶構造(以下、単に「CHA構造」ともいう。)を有する結晶性アルミノシリケートである。CHA構造は、粉末X線回折(以下、「XRD」という。)パターンによって確認することができる。例えば、特許文献1のTable.1又は2のXRDパターンと比較することで、本発明のCHA型ゼオライトがSSZ−13と同等の結晶構造を有するCHA型ゼオライトであることを確認することができる。なお、特許文献1のTable.1は結晶構造中にOSDAを含んだCHA型ゼオライトのXRDパターンであり、特許文献1のTable.2は結晶構造中からOSDAを除いたCHA型ゼオライトのXRDパターンである。
【0020】
本発明のCHA型ゼオライトは、結晶構造がCHA構造のみであり、CHA型構造以外の結晶構造を含まないことが好ましい。
【0021】
本発明のCHA型ゼオライトは結晶性アルミノシリケートである。結晶性アルミノシリケートはアルミニウム(Al)とケイ素(Si)を骨格金属(以下、「T原子」ともいう。)とし、T原子が酸素(O)を介して結合した三次元のネットワーク構造からなる骨格構造を有する結晶からなる。そのため、本発明のCHA型ゼオライトは、T原子としてリン(P)を含むシリコアルミノホスフェート(SAPO)やアルミノホスフェート(AlPO)を含まない。さらに、概念的な結晶性アルミノシリケートはネットワーク構造のみから構成される。これに対し、現実的に存在する結晶性アルミノシリケートは、図1に示すように、ネットワーク構造の末端(図1(a))やネットワーク構造中の端部(図1(b))(以下、これらをまとめて「骨格端部」ともいう。)を有し、骨格端部はシラノール基(Si−OH)となる。従って、現実的な結晶性アルミノシリケートの結晶にはシラノール基が含まれる。
【0022】
シラノール基はT原子のケイ素(Si)と水酸基(OH)が結合して形成する。そのため、シラノール基の含有量は骨格構造中のケイ素量の影響を受ける。例えば、骨格構造中のケイ素量が多いゼオライト、すなわちハイシリカゼオライトであるほど、シラノール基が多くなりやすいことが挙げられる。一般に、シラノール基の含有量が多くなると、高温雰囲気における骨格構造の崩壊が生じやすくなる。これに対し、アルミナに対するシリカのモル比(以下、「SiO/Al」ともいう。)と、ケイ素に対するシラノール基のモル比(以下、「SiOH/Si比」ともいう。)と、の両方が本発明のCHA型ゼオライトの範囲を満たすことにより、シラノール基が増えた場合であっても、高温雰囲気における骨格構造の崩壊が生じにくくなる。これにより、本発明のCHA型ゼオライトが高い耐熱性を示し、触媒又は触媒担体として、特に窒素酸化物還元触媒又はその担体として適する。
【0023】
シラノール基の量はケイ素含有量の影響を受けるため、本発明のCHA型ゼオライトが有するSiOH/SiはSiO/Alに依存する。すなわち、本発明のCHA型ゼオライトは、
アルミナに対するシリカのモル比が10.0以上20.0未満及びケイ素に対するシラノール基のモル比が0.15×10−2以上0.50×10−2以下、
アルミナに対するシリカのモル比が20.0以上35.0以下及びケイ素に対するシラノール基のモル比が0.15×10−2以上1.10×10−2以下、
アルミナに対するシリカのモル比が35.0を超え45.0以下及びケイ素に対するシラノール基のモル比が0.15×10−2以上1.65×10−2以下、若しくは、
アルミナに対するシリカのモル比が45.0を超え55.0以下及びケイ素に対するシラノール基のモル比が0.15×10−2以上1.80×10−2以下、のいずれかである。
【0024】
本発明のCHA型ゼオライトのSiO/Alが10.0以上20.0未満である場合、SiOH/Si比は0.15×10−2以上0.50×10−2以下である。この場合のSiOH/Si比は0.40×10−2以下であることが好ましい。
【0025】
本発明のCHA型ゼオライトのSiO/Alが20.0以上35.0以下である場合、SiOH/Si比は0.15×10−2以上1.10×10−2以下、である。この場合のSiOH/Si比は1.00×10−2未満であることが好ましい。
【0026】
本発明のCHA型ゼオライトのSiO/Alが35.0を超え45.0以下である場合、SiOH/Si比は0.15×10−2以上1.65×10−2以下、である。この場合のSiOH/Si比は1.40×10−2以下、更には1.30×10−2以下であることが好ましい。
【0027】
本発明のCHA型ゼオライトのSiO/Alが45.0を超え55.0以下である場合、SiOH/Si比は0.15×10−2以上1.80×10−2以下、である。この場合のSiOH/Si比は1.75×10−2以下であることが好ましい。
【0028】
本発明のCHA型ゼオライトのSiOH/Si比は0.15×10−2以上であり、0.20×10−2以上であること、更には0.30×10−2以上であることが挙げられる。本発明のCHA型ゼオライトはSiO/Alが高くなるほど、含有されるシラノール基の範囲が広くなる傾向にある。そのため、SiO/Alが20.0以上の場合のSiOH/Si比は0.15×10−2以上、更には0.40×10−2以上、また更には0.50×10−2以上であることが挙げられ、SiO/Alが35.0を超える場合のSiOH/Si比は0.15−2以上、更には0.6×10−2以上、また更には1.0×10−2以上であることが挙げられる。また、SiO/Alが45.0を超える場合のSiOH/Si比は0.15×10−2以上、更には0.60×10−2以上、また更には1.00×10−2以上、また更には1.20×10−2以上、また更には1.40×10−2以上であることが挙げられる。
【0029】
SiOH/Si比は、CHA型ゼオライトのケイ素の含有量に対するH MAS NMRスペクトルから求まるシラノール量、から求めることができる。CHA型ゼオライトのケイ素の含有量は蛍光X線分析その他の組成分析により求めることができる。蛍光X線分析によるケイ素の含有量の測定方法として、検量線法による測定方法を挙げることができる。検量線法で使用する検量線は、8〜15点の、ケイ素含有量が既知であるケイ素含有化合物について、ケイ素(Si)に相当する蛍光X線ピークの強度を測定し、当該強度−ケイ素含有量とで検量線を引くことで作成すること、が挙げられる。測定試料であるCHA型ゼオライトの蛍光X線パターンのケイ素(Si)に相当する蛍光X線ピークの強度を測定し、当該強度と検量線とを対比すること、でCHA型ゼオライトのケイ素の含有量を測定することができる。
【0030】
シラノール量はH MAS NMRスペクトルから求めることができる。シラノール量の求め方として、脱水処理をしたチCHA型ゼオライトをH MAS NMR測定し、得られたH MAS NMRスペクトルから検量線法により、シラノール量を算出することが例示できる。
【0031】
より具体的なシラノール量の測定方法として、CHA型ゼオライトを真空排気下にて350〜400℃で5±2時間保持して脱水処理し、脱水処理後のCHA型ゼオライトを窒素雰囲気下で採取し秤量し、H MAS NMR測定をすることが挙げられる。当該測定により得られるH MAS NMRスペクトルのシラノール基に帰属されるピーク(2.0±0.5ppmのピーク)の面積強度から、検量線法によりCHA型ゼオライト中のシラノール量を求めることが挙げられる。
【0032】
本発明のCHA型ゼオライトのSiO/Alは10.0以上55.0以下である。この範囲のSiO/Alは、触媒又は触媒担体として適する。好ましいSiO/Alとして18.0以上50.0以下、さらには20.0以上45.0以下、また更には20.0以上45.0以下、また更には20.0以上35.0以下を挙げることができる。窒素酸化物還元触媒又はその担体として特に適したSiO/Alとして20.0以上55.0以下、更には20.0以上45.0以下、また更には20.0以上35.0以下、また更には20.0以上31.5以下、また更には23.0以上31.5以下を挙げることができる。
【0033】
このように、本発明のCHA型ゼオライトはSiO/AlとSiOH/Si比とが一定の関係を有するものである。換言すると、本発明は、SiO/Alが10.0以上20.0未満及びSiOH/Si比が0.15×10−2以上0.50×10−2以下のCHA型ゼオライト、SiO/Alが20.0以上35.0以下及びSiOH/Si比が0.15×10−2以上1.10×10−2以下のCHA型ゼオライト、SiO/Alが35.0を超え45.0以下及びSiOH/Si比が0.10−2以上1.65×10−2以下のCHA型ゼオライト、及び、SiO/Alが45.0を超え55.0以下及びSiOH/Si比が0.15×10−2以上1.80×10−2以下のCHA型ゼオライト、からなる群のいずれかのCHA型ゼオライト、である。さらには、本発明のCHA型ゼオライトは、本明細書で開示した任意のSiO/Al及びSiOH/Si比の組合せを満たすCHA型ゼオライトであることが好ましい。
【0034】
本発明の特に好ましいCHA型ゼオライトとして、SiO/Alが20.0以上35.0以下及びSiOH/Si比が0.15×10−2以上1.10×10−2以下であるCHA型ゼオライト、更にはSiO/Alが23.0以上31.0以下及びSiOH/Si比が0.40×10−2以上1.00×10−2未満であるCHA型ゼオライトを挙げることができる。
【0035】
本発明のCHA型ゼオライトは、結晶性が高いことが好ましい。結晶性が高いことは、CHA型ゼオライト同士のXRDピークの強度の比較から確認することができる。
【0036】
本発明のCHA型ゼオライトの結晶性はXRDピークの半値幅(以下、「FWHM」ともいう。)から確認することができる。本発明のCHA型ゼオライトは、CHA型ゼオライトの100反射のXRDピーク(線源としてCuKα線を用いた場合に、2θ=9.6±0.5゜に相当するピーク)のFWHMが0.150゜以上0.200゜以下であることが挙げられ、また、CHA型ゼオライトの20−1反射のXRDピーク(線源としてCuKα線を用いた場合に、2θ=20.8±0.5゜に相当するピーク)のFWHMが0.170゜以上0.250゜以下であることが挙げられる。
【0037】
本発明のCHA型ゼオライトは、CHA型ゼオライトは結晶化において、一次粒子同士が化学的に凝集しながら形成された結晶粒子を含んでいてもよい。本発明のCHA型ゼオライトは、このような一次粒子同士が化学結合しながら形成された凝集粒子(アグリゲート:aggregate)状の結晶粒子(以下、「凝集結晶粒子」ともいう。)を含んでいるにも関わらず、高い耐熱性を有する。凝集結晶粒子は、SEM観察において、菱面体又は立方体の少なくともいずれかの形状を有する一次粒子の一部の面を含んだ多面体状の結晶粒子として確認することができ、一辺が0,5μm以上5.0μm以下、更には0.5μm以上3.0μm以下である面を複数含んだ多面体状の結晶粒子であることが挙げられる。
【0038】
本発明のCHA型ゼオライトは凝集結晶粒子に加え、個々の一次粒子が独立して成長し結晶粒子(以下、「一次結晶粒子」ともいう。)を含むことが好ましく、凝集結晶粒子と一次結晶粒子とを含んでいてもよい。一次結晶粒子は、一次粒子と結晶粒子とが同様な形状を有する結晶粒子であり、SEM観察において、菱面体又は立方体の少なくともいずれかの形状を有した結晶粒子であることが挙げられる。
【0039】
本発明のCHA型ゼオライトは耐熱性が高いこと、すなわち、高温雰囲気に曝露された後であっても、骨格からのT原子の脱離などの骨格構造の崩壊が進行しにくいこと、が好ましい。本発明のCHA型ゼオライトの耐熱性は、高温雰囲気の曝露前後のCHA型ゼオライトのXRDパターンから確認することができる。
【0040】
CHA型ゼオライトは、600℃で熱処理した場合の骨格構造の崩壊は進行が遅いが、1000℃で熱処理した場合は骨格構造の崩壊が顕著に進行する。骨格構造の崩壊に伴いXRDピークの強度が低下する。そのため、大気中、600℃で処理したCHA型ゼオライトの20−1反射のXRDピークの強度(以下、「I600」ともいう。)に対する、大気中、1000℃で処理したCHA型ゼオライトの20−1反射のXRDピークの強度(以下、「I1000」ともいう。)の比(以下、「I比」ともいう。)をもって耐熱性の指標とすることができる。I比の値が大きいほど、耐熱性が高いことを意味する。1000℃で熱処理した場合は、600℃で熱処理した場合よりも、骨格構造の崩壊が進行するため、I比は1.00以下となる。
【0041】
本発明のCHA型ゼオライトは、5時間で熱処理したI600に対する、5時間で熱処理したI1000の比としてのI比(以下、「I1000/600」ともいう。)が0.30以上であることが好ましく、0.50以上であることがより好ましく、0.52以上であることが特に好ましい。
【0042】
なお、上記の熱処理における大気は露点−20℃以下の大気、更には露点−50℃以下の大気であり、水分含有量が少ない大気であることが好ましい。また、これらのXRDピークの測定条件として以下のものを挙げることができる。
線源 : CuKα線(λ=1.5405Å)
測定範囲: 2θ=5°〜43°
【0043】
次に、本発明のCHA型ゼオライトの製造方法について説明する。
【0044】
本発明の製造方法は、アルミナ源、シリカ源、アルカリ源、水、及び、以下の一般式を有するN,N,N−トリアルキルシクロヘキシルアンモニウム塩を含む組成物を結晶化させる結晶化工程、を含むCHA型ゼオライトの製造方法である。
【0045】
詳細には、本発明の製造方法は、アルミナ源、シリカ源、アルカリ源、水、N,N,N−トリアルキルアダマンチルアンモニウム塩及び以下の一般式を有するN,N,N−トリアルキルシクロヘキシルアンモニウム塩を含む組成物(以下、「原料組成物」ともいう。)を結晶化させる結晶化工程、を含む。
【0046】
【化2】
【0047】
はエチル基、Rはメチル基又はエチル基のいずれかのアルキル基、及びRはメチル基又はエチル基のいずれかのアルキル基であり、なおかつ、XはN,N,N−トリアルキルシクロヘキシルアンモニウムカチオンのカウンターアニオンである。
【0048】
原料組成物は、以下の一般式を有するN,N,N−トリアルキルシクロヘキシルアンモニウム(以下、「MECHA」ともいう。)塩を含む。MECHA塩を含むことで原料組成物のCHA型ゼオライトの指向性が強くなる。MECHA塩の構造式を以下に示す。
【0049】
【化3】
【0050】
はエチル基、Rはメチル基又はエチル基のいずれかのアルキル基、及びRはメチル基又はエチル基のいずれかのアルキル基であり、なおかつ、XはN,N,N−トリアルキルシクロヘキシルアンモニウムカチオン(以下、「MECHA」ともいう。)のカウンターアニオンである。RとRは異なるアルキル基であることが好ましい。
【0051】
MECHA塩に含まれるMECHAは、CHA構造を指向するOSDAとして機能する。さらに、MECHA塩とADA塩とが共存することでCHA型ゼオライトの指向作用をより強くする。これにより、CHA型ゼオライトの結晶化領域が広くなり、例えば、種晶の使用量を非常に少なくした場合、更には種晶を使用しない場合であっても高結晶性のCHA型ゼオライトを結晶化することができる。さらには、ADA塩とMECHA塩とが共存することで、原料組成物中の水酸化物イオン(OH)含有量が少ない場合であってもCHA型ゼオライトが得られやすくなる。
【0052】
MECHA塩は、MECHAを含む化合物であればよい。MECHA塩として、MECHAの水酸化物、塩化物、臭化物、ヨウ化物、炭酸モノエステル塩、硫酸モノエステル塩、硝酸塩及び硫酸塩からなる群の少なくとも1種を挙げることができる。工業的な観点からMECHA塩はMECHAの水酸化物、塩化物、臭化物、ヨウ化物、硝酸塩及び硫酸塩からなる群の少なくとも1種、更にはMECHAの塩化物、臭化物、及びヨウ化物からなる群の少なくとも1種、また更にはMECHAの塩化物又は臭化物の少なくともいずれかであることが好ましい。よって、MECHA塩の一般式におけるXは、OH、Cl、Br、I、CHCO、CHSO、CSO、NO及び1/2(SO2−)、からなる群の少なくともいずれかであることが挙げられ、OH、Cl、Br及びIからなる群の少なくともいずれかであることが好ましい。さらに、MECHA塩はMECHAを含む2種以上の塩であってもよく、MECHA塩の水酸化物、塩化物、臭化物及びヨウ化物からなる群の少なくとも2種以上を挙げることができる。
【0053】
MECHA塩の製造方法として、例えば、N,N−ジアルキルシクロヘキシルアミンとアルキル化剤とを溶媒中、室温〜150℃で反応させる製造方法が挙げられる。アルキル化剤としてハロゲン化アルキル、炭酸ジエステル及び硫酸ジエステルからなる群の少なくとも1種が挙げられる。溶媒としては水、アルコール、更にはメタノール、エタノール及び2−プロパノールからなる群の少なくとも1種を挙げることができる。これにより、MECHA塩として、MECHAのハロゲン化塩、炭酸モノエステル塩又は硫酸モノエステル塩のいずれかを合成することができる。また、MECHAの水酸化物塩を得る場合は、水酸化物イオン型強塩基性陰イオン交換樹脂を用いて上記で得られたMECHA塩をイオン交換すればよい。
【0054】
MECHA塩は、N,N,N−ジメチルエチルシクロヘキシルアンモニウム塩(以下、「DMECHA塩」ともいう。)又は、N,N,N−メチルジエチルシクロヘキシルアンモニウム塩(以下、「MDECHA塩」ともいう。)の少なくともいずれかであることが好ましく、DMECHA塩であることがより好ましい。
【0055】
DMECHA塩の構造式を以下に示す。
【0056】
【化4】
【0057】
上記の式において、XはDMECHAカチオン(以下、「DMECHA」ともいう。)のカウンターアニオンである。
【0058】
MDECHA塩の構造式を以下に示す。
【0059】
【化5】
【0060】
上記の式において、XはMDECHAカチオン(以下、「MDECHA」ともいう。)のカウンターアニオンである。
【0061】
原料組成物に含まれる、MECHA塩は、DMECHA又MDECHAの少なくともいずれかを含む2種以上の塩であってもよく、例えば、DMECHA塩の水酸化物、塩化物、臭化物及びヨウ化物からなる群の少なくとも2種以上、MDECHA塩の水酸化物、塩化物、臭化物及びヨウ化物からなる群の少なくとも2種以上、若しくは、DMECHA塩の水酸化物、塩化物、臭化物及びヨウ化物からなる群の少なくとも1種以上とMDECHA塩の水酸化物、塩化物、臭化物及びヨウ化物からなる群の少なくとも1種以上、を挙げることができる。
【0062】
原料組成物はN,N,N−トリアルキルアダマンチルアンモニウム塩(ADA塩)を含む。MECHA塩とADA塩とが共存することで、CHA型ゼオライトの指向性を下げることなく、ADA塩の使用量を削減することができ、なおかつ、ADA塩を単独で使用した製造方法と同等以上の収率で高結晶性のCHA型ゼオライトが単一相で得られる。ADA塩の構造式を以下に示す。
【0063】
【化6】
【0064】
上記の式において、R、R及びRはそれぞれアルキル基であり、メチル基又はエチル基の少なくともいずれかであることが好ましい。また、R、R及びRは同一のアルキル基であってもよく、それぞれが異なるアルキル基であってもよい。XはN,N,N−トリアルキルアダマンチルアンモニウムカチオンのカウンターアニオンである。
【0065】
ADA塩の中で、N,N,N−トリメチルアダマンチルアンモニウム塩(TMAd塩)が特に好ましい。TMAd塩の構造式を以下に示す。
【0066】
【化7】
【0067】
上記の式において、XはN,N,N−トリメチルアダマンチルアンモニウムカチオンのカウンターアニオンである。
【0068】
原料組成物に含まれるADA塩は水酸化物、塩化物、臭化物、ヨウ化物、炭酸モノエステル塩、硫酸モノエステル塩、硝酸塩及び硫酸塩からなる群の少なくとも1種であることが挙げられる。工業的な観点からADA塩は水酸化物、塩化物、臭化物及びヨウ化物からなる群の少なくとも1種、更には水酸化物、塩化物及び臭化物からなる群の少なくとも1種、また更には水酸化物、塩化物及び臭化物からなる群の少なくも1種、また更には塩化物又は臭化物の少なくともいずれかであることが好ましい。
【0069】
MECHA塩又はADA塩の少なくともいずれかが塩化物、臭化物、ヨウ化物、炭酸モノエステル塩及び硫酸モノエステル塩、硝酸塩および硫酸塩からなる群の少なくとも1種の塩であることが好ましく、MECHA塩及びADA塩が、塩化物、臭化物、ヨウ化物、炭酸モノエステル塩、硫酸モノエステル塩、硝酸塩及び硫酸塩からなる群の少なくとも1種の塩であることが更に好ましい。これにより、CHA型ゼオライトの収率がより高くなりやすい。さらに、OSDAがこれらの塩であることで、原料組成物がアルカリ源を水酸化物として含む場合であっても、原料組成物中の水酸化物イオン(OH)含有量が十分に低くなる。これにより、原料組成物が十分にアルカリ金属イオンを含む状態、すなわち、MECHA塩のCHA型ゼオライト指向性がより高い雰囲気で結晶化が行える。その結果、高結晶性のCHA型ゼオライトがより一層高い収率で得られやすくなる。
【0070】
アルミナ源は、アルミナ(Al)又はその前駆体となるアルミニウム化合物であり、例えば、アルミナ、硫酸アルミニウム、硝酸アルミニウム、アルミン酸ナトリウム、水酸化アルミニウム、塩化アルミニウム、非晶質アルミノシリケート、金属アルミニウム及びアルミニウムアルコキシドからなる群の少なくとも1種を挙げることができる。
【0071】
シリカ源は、シリカ(SiO)又はその前駆体となるケイ素化合物であり、例えば、コロイダルシリカ、無定型シリカ、珪酸ナトリウム、テトラエトキシシラン、テトラエチルオルトシリケート、沈殿法シリカ、ヒュームドシリカ、非晶質アルミノシリケートからなる群の少なくとも1種を挙げることができる。
【0072】
CHA型ゼオライトの結晶化速度が速くなるため、アルミナ源及びシリカ源は、非晶質アルミノシリケートを含むことが好ましい。
【0073】
アルカリ源は、アルカリ金属化合物であり、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム及びセシウムからなる群の少なくとも1種の化合物、更にはリチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム及びセシウムからなる群の少なくとも2種の化合物であることが好ましい。アルカリ金属化合物は、アルカリ金属の水酸化物、塩化物、臭化物及びヨウ化物からなる群の少なくとも1種であることが好ましい。特に好ましいアルカリ源として、ナトリウム又はカリウムの少なくともいずれかの化合物、更には水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムの少なくともいずれか、更には水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムであることが好ましい。また、原料組成物に含まれる他の原料がアルカリ金属を含む場合、これらに含まれるアルカリ金属もアルカリ源として機能する。
【0074】
CHA型ゼオライトが単一相で生成しやすくなるため、原料組成物に含まれるアルカリ源はカリウム、ルビジウム及びセシウムからなる群のいずれか1種以上を含むことが好ましく、カリウムを含むことが特に好ましい。
【0075】
原料組成物に含まれる水は、脱イオン水や、純水を挙げることができる。また、アルミナ源、シリカ源、MECHA塩、ADA塩又はアルカリ源の少なくともいずれかが水溶液である場合、これらの原料に含まれる水であってもよい。
【0076】
本発明において、原料組成物はフッ素(F)含有化合物を含まないことが好ましい。フッ素は腐食性が特に高く、これを使用する製造方法は、耐腐食性を示す特殊な製造設備が必要となる。これにより、製造コストが高くなりやすい。そのため、原料組成物はフッ素を含有しないことが好ましく、例えば、原料組成物のフッ素含有量が1ppm以下であることが好ましい。
【0077】
原料組成物のシリカに対するMECHA塩及びADA塩の合計モル比(以下、「OSDA/SiO」ともいう。)は、0.03以上、更には0.06以上である。OSDA/SiOが0.03以上であることでCHA型ゼオライトが単一相で得られやすくなる。製造コストの観点からOSDAを必要以上に多くする必要はなく、OSDA/SiOは0.30以下、更には0.20以下であればよい。さらに、OSDA/SiOが0.10以下であっても、結晶性の高いCHA型ゼオライトが単一相で得られる。好ましいOSDA/SiOの範囲として、0.06以上0.20以下、更には0.06以上0.12以下、また更には0.06以上0.10以下を挙げることができる。
【0078】
原料組成物のMECHA塩に対するADA塩のモル比(以下、「ADA/MECHA」ともいう。)が高くなるほど、得られるCHA型ゼオライトの結晶性は高くなりやすい。
しかしながら、原料組成物中のADA塩が多くなると製造コストが高くなる。本発明においては、ADA/MECHAは2.0以下、更には1.0以下、また更には0.5以下であっても、OSDAがADA塩単独である製造方法と同等の収率で結晶性の高いCHA型ゼオオライトが得られる。また、ADA/MECHAが0.025以上、更には0.05以上であれば高結晶性のCHA型ゼオライトがより得られやすくなる。
【0079】
原料組成物のシリカに対するADA塩のモル比(以下、「ADA/SiO」ともいう。)が高くなるほど、CHA型ゼオライトの単一相が結晶化しやすくなる。ADA/SiOが0.05以下、更には0.03以下であっても、OSDAがADA塩単独である製造方法と、同等の収率でCHA型ゼオオライトが得られる。また、ADA/SiOが0.005以上、更には0.010以上であればCHA型ゼオライトがより得られやすくなる。
【0080】
原料組成物の好ましいOSDA含有量として、シリカに対するMECHA塩のモル比(以下、「MECHA/SiO」ともいう。)が0.02以上0.10以下であり、ADA/SiOが0.005以上0.10以下であり、なおかつ、ADA/MECHAが1.0以下であることが挙げられる。
【0081】
原料組成物のアルミナに対するシリカのモル比(SiO/Al)は10以上100以下、更には10以上60以下であることが好ましい。SiO/Alが10以上であることで得られるCHA型ゼオライトの耐熱性が高くなりやすい。一方、SiO/Alが100以下であれば触媒反応に寄与する十分な酸点を有するゼオライトとなる。原料組成物のSiO/Alが10以上40以下、更には10以上35以下であることがより好ましい。
【0082】
原料組成物のシリカに対するアルカリ金属のモル比(以下、「M/SiO」ともいう。)は0.10以上0.50以下、更には0.10以上0.30以下であることが好ましい。M/SiOが0.10以上であることでCHA型ゼオライトの結晶化が促進されやすい。一方、M/SiOが0.50以下であれば、CHA構造以外の構造を有するゼオライトの生成がより生じにくくなり、更にはM/SiOが0.15以下、更には0.13以下であることで得られるCHA型ゼオライトの耐熱性が高くなる傾向がある。
【0083】
原料組成物がカリウム、ルビジウム及びセシウムからなる群の少なくとも1種、更にはカリウムを含む場合、原料組成物のシリカに対する、カリウム、ルビジウム及びセシウムからなる群の少なくとも1種のモル比(以下、「M1/SiO」ともいう。)は0を超え0.15未満であることが好ましく、0.02を超え0.15未満であることがより好ましく、0.03以上0.13以下であることが更に好ましい。
【0084】
原料組成物がアルカリ金属としてナトリウム及びカリウムを含有する場合、原料組成物中のシリカに対するナトリウムのモル比(以下、「Na/SiO」ともいう。)が0を超え0.12以下であることが好ましく、0を超え0.09以下であることがより好ましい。また、カリウムに対するナトリウムのモル比(以下、「Na/K」ともいう。)は0.05以上20.0以下、更には0.065以上5.0以下、また更には0.1以上2.0以下であることが挙げられる。
【0085】
原料組成物のシリカに対する水(HO)のモル比(以下、「HO/SiO」ともいう。)は5.0以上50.0以下、更には10.0以上20.0以下であることが好ましい。HO/SiOが5.0以上であることで原料組成物が撹拌できる程度の流動性を有する。一方、HO/SiOが50.0以下であることで、CHA型ゼオライトの収率が高くなりやすい。更に、本発明の製造方法においてはHO/SiOが10.0以上15.5以下、更には11.0以上15.5以下であっても、単一相のCHA型ゼオライトが得られる場合がある。
【0086】
原料組成物は、シリカに対する水酸基アニオン(OH)のモル比(以下、「OH/SiO」ともいう。)が0.05以上1.0以下、更には0.1以上0.5以下であることが好ましい。OH/SiOが0.05以上であることで、CHA構造以外の構造を有するゼオライトの生成がより生じにくくなる。一方、OH/SiOが1.0以下であれば、十分な収率のCHA型ゼオライトが得られやすくなる。得られるCHA型ゼオライトの収率がより高くなる傾向があるため、OH/SiOは0.30以下、更には0.24以下、また更には0.20以下、また更には0.17以下であることが好ましい。さらに、OH/SiOが0.15以下であることで得られるCHA型ゼオライトの耐熱性が高くなる傾向がある。
【0087】
CHA型ゼオライトの収率をより高くするため、OH/SiOは0.30以下、更には0.24以下、また更には0.20以下であることが好ましい。
【0088】
本発明の製造方法においては、原料組成物が種晶を含まなくとも、十分に短い時間で高い収率でCHA型ゼオライトが得られる。そのため、原料組成物は種晶を含まないこと、すなわち、種晶の含有量が0重量%であってもよい。
【0089】
しかしながら、原料組成物は、種晶を含んでもよい。種晶はCHA型ゼオライト、更にはSSZ−13であることが好ましい。
【0090】
種晶を含む場合、以下の式を満たす含有量(重量%)とすればよい。
【0091】
0重量%<{(w3+w4)/(w1+w2)}×100≦30重量%
上記式において、w1は原料組成物中のAlをAlに換算した重量、w2は原料組成物中のSiをSiOに換算した重量、w3は種晶中のAlをAlに換算した重量、及び、w4は種晶中のSiをSiOに換算した重量である。
【0092】
種晶を含む場合、種晶は以下の式を満たす含有量であることが更に好ましい。
0重量%<{(w3+w4)/(w1+w2)}×100≦5重量%、
更には、
1.5重量%≦{(w3+w4)/(w1+w2)}×100≦5重量%
【0093】
原料組成物の好ましい組成として以下のものをあげることができる。
【0094】
SiO/Al =10以上100以下
ADA/MECHA =0.015以上2.0以下
ADA/SiO =0.003以上0.04以下
OSDA/SiO =0.03以上0.30以下
M/SiO =0.05以上1.0以下
OH/SiO =0.05以上1.0以下
O/SiO =5.0以上50.0以下
種晶 =0.0重量%以上30.0重量%以下
但し、ADAはADA塩、MECHAはMECHA塩、OSDAはMECHA塩及びADA塩、並びに、MはNa及びKである。
【0095】
さらに好ましい原料組成物の組成として以下のものをあげることができる。
【0096】
SiO/Al =10以上60以下
TMAd/DMECHA =0.025以上1.0以下
TMAd/SiO =0.005以上0.02以下
OSDA/SiO =0.06以上0.20以下
M/SiO =0.10以上0.30以下
OH/SiO =0.10以上0.50以下
O/SiO =10.0以上20.0以下
種晶 =0.0重量%以上5.0重量%以下
但し、TMAdはN,N,N−トリメチルアダマンチルアンモニウム塩、DMECHAはN,N,N−ジメチルエチルシクロヘキシルアンモニウム塩、OSDAはN,N,N−ジメチルエチルシクロヘキシルアンモニウム塩及びN,N,N−トリメチルアダマンチルアンモニウム塩、並びに、MはNa及びKである。
【0097】
結晶化工程では、原料組成物を結晶化する。結晶化方法は、水熱合成があげられる。その場合、原料混合物を密閉容器に充填し、これを加熱すればよい。結晶化は、静置又は撹拌のいずれの状態で行ってもよい。
【0098】
結晶化温度は130℃以上200℃以下、更には140℃以上180℃以下、また更には140℃以上170℃以下であることが好ましい。さらに、本発明の製造方法では結晶化温度を130℃以上160℃以下、更には130℃以上155℃以下とした場合であっても、48時間以内に高い結晶性のCHA型ゼオライトを得ることができる。反応温度を155℃以下とすることでOSDAの熱分解が起こり難くなる。
【0099】
上記の範囲であれば、結晶化中に結晶化温度を変更してもよい。例えば、130℃以上160℃以下で結晶化を開始し、その後、結晶化温度を160℃超200℃以下に変更して結晶化してもよい。
【0100】
結晶化時間は、結晶化温度により異なるが、10時間以上、更には24時間(1日)以上であることが好ましい。これによりCHA型ゼオライトが結晶化する。一方、結晶時間が5日以下、更には72時間(3日)以下、また更には48時間(2日)以下であればCHA型ゼオライトが単一相で得られやすくなる。
【0101】
本発明の製造方法では、結晶化工程の後、洗浄工程、乾燥工程及びイオン交換工程の少なくともいずれかを含んでいてもよい。
【0102】
洗浄工程は、結晶化後のCHA型ゼオライトと液相とを固液分離する。洗浄工程は、公知の方法で固液分離をし、固相として得られるCHA型ゼオライトを脱イオン水で洗浄すればよい。
【0103】
乾燥工程は、結晶化工程後又は洗浄工程後のCHA型ゼオライトから水分を除去する。乾燥工程の条件は任意であるが、結晶化工程後又は洗浄工程後のCHA型ゼオライトを、大気中、50℃以上150℃以下で2時間以上、静置することが例示できる。
【0104】
結晶化後のCHA型ゼオライトは、そのイオン交換サイト上にアルカリ金属イオン等の金属イオンを有する場合がある。イオン交換工程では、これをアンモニウムイオン(NH)や、プロトン(H)等の非金属カチオンにイオン交換する。アンモニウムイオンへのイオン交換は、CHA型ゼオライトを塩化アンモニウム水溶液に混合、攪拌することが挙げられる。また、プロトンへのイオン交換は、CHA型ゼオライトをアンモニアでイオン交換した後、アンモニウム型のCHA型ゼオライトを焼成することがあげられる。
【0105】
本発明の製造方法により得られるCHA型ゼオライトは、CHA構造以外の構造を有するゼオライトを含まないCHA型ゼオライト、すなわち、単一相のCHA型ゼオライトである。
【0106】
本発明の製造方法では、工業的な製造に適した、十分に高い収率でCHA型ゼオライトを得ることができる。すなわち、本発明の製造方法では、原料組成物に含まれるシリカ及びアルミナの70%以上、更には80%以上、また更には90%以上をCHA型ゼオライトとして回収することができる。本発明におけるゼオライトの収率は、例えば、原料組成物に含まれるシリカに対する、得られた結晶性ゼオライトのシリカ含有量の重量割合(以下、「シリカ収率」又は「Si収率」ともいう。)で求めることができる。
【0107】
本発明の製造方法では、原料組成物中のアルミニウム(Al)はほとんど全てがゼオライトに取込まれる。そのため、シリカ収率は、原料組成物のSiO/Alに対する、結晶化後に得られる生成物中のSiO/Alの比率(%)から求めることができる。原料組成物及び生成物のシリカ含有量はICP測定により求めればよい。
【0108】
シリカ収率が高いほど、CHA型ゼオライトの収率が高くなるため、工業的により好ましい。本発明の製造方法におけるシリカ収率は70%以上、更には80%以上、また更には90%以上であることが好ましい。
【0109】
さらに、本発明の製造方法では、ハイシリカゼオライトであって、なおかつ、必要以上にSiO/Alが高くないCHA型ゼオライトが得られる。例えば、本発明の製造方法により得られるCHA型ゼオライトの好ましいSiO/Alとして5以上50以下、更には10以上30以下を挙げることができる。
【0110】
本発明で得られるCHA型ゼオライトは高結晶性である。本発明において、高結晶性であることは、本発明の製造方法で得られるCHA型ゼオライトの結晶性が、従来のCHA型ゼオライトの結晶性と同等以上であることから確認することができる。
【0111】
従来のCHA型ゼオライトとして、OSDAとしてTMAd塩のみを含む原料組成物を結晶化して得られたCHA型ゼオライトを挙げることできる。
【0112】
CHA型ゼオライトの結晶性は、CHA構造の20−1反射に相当するXRDピーク強度(以下、「CHAピーク強度」ともいう。)から求めることができ、従来のCHA型ゼオライトのCHAピーク強度に対する、本発明の製造方法で得られるCHA型ゼオライトのCHAピークの強度の割合(以下、「CHA結晶化度」ともいう。)をもって、本発明の製造方法で得られるCHA型ゼオライトの相対的な結晶度を確認することができる。なお、CHA構造の20−1反射に相当するXRDピークは、線源としてCuKα線(λ=1.5405Å)を用いたXRD測定において2θ=20.8±0.5°のピークとして確認できる。
【0113】
さらに、本発明で得られるゼオライトは、CHA型ゼオライトの単一相、すなわち、CHA型ゼオライト以外の結晶相を有するゼオライト及び非晶質アルミノシリケートを含まないゼオライトである。
【実施例】
【0114】
以下、実施例及び比較例に基づき本発明をさらに具体的に説明する。しかしながら、本発明は以下の実施例に制限されるものではない。以下、評価方法及び評価条件を示す。
【0115】
(結晶の同定)
粉末X線回折装置(装置名:UltimaIV、株式会社リガク社製)を使用し、試料のXRD測定をした。線源にはCuKα線(λ=1.5405Å)を用い、測定範囲は2θとして5°から43°の範囲で測定した。
得られたXRDパターンと、特許文献1のTable.1で示されたCHA型ゼオライトのXRDパターンとを比較することで、試料の構造を同定した。
また、比較例B−4として得たCHA型ゼオライトの2θ=20.8°に相当するXRDピーク(CHA型ゼオライトの20−1反射に対応するXRDピーク)の強度を100%とし、同ピーク強度との相対強度をCHA結晶度(%)とした。
【0116】
(組成分析)
フッ酸と硝酸の混合水溶液に試料を溶解して試料溶液を調製した。ICP装置(装置名:OPTIMA5300DV、PerkinElmer社製)を使用して、当該試料溶液を誘導結合プラズマ発光分光分析(ICP−AES)で測定した。得られたSi、Alの測定値から、試料のSiO/Alを求めた。
【0117】
(シリカ収率)
組成分析により原料組成物及び生成物のSiO/Alを求めた。原料組成物のAiO/Alに対する生成物のSiO/Alの割合をシリカ収率とし、生成物の収率を求めた。
【0118】
(シラノール基の含有量)
H MAS NMRにより、CHA型ゼオライトのシラノール基の含有量を測定した。
測定に先立ち、試料を真空排気下にて400℃で5時間保持し脱水することで前処理とした。前処理後、室温まで冷却した試料を窒素雰囲気下で採取し秤量した。測定装置は一般的なNMR測定装置(装置名:VXR−300S、Varian製)を使用した。測定条件は以下のとおりとした。
共鳴周波数 :300.0MHz
パルス幅 :π/2
測定待ち時間 :10秒
積算回数 :32回
回転周波数 :4kHz
シフト基準 :TMS
得られたH MAS NMRスペクトルから2.0±0.5ppmのピークをシラノール基に帰属されるピークとした。当該ピークを波形分離し、その面積強度を求めた。得られた面積強度から検量線法により試料中のシラノール量を求めた。
【0119】
(SiOH/Si比)
蛍光X線分析により得られたCHA型ゼオライトのケイ素含有量(mol/g)に対する、H MAS NMRにより測定されたCHA型ゼオライトのシラノール基の含有量(mol/g)の比を求め、これをSiOH/Si比とした。
【0120】
(I比)
測定試料としてCHA型ゼオライトの単一相のものを使用した。測定に先立ち、CHA型ゼオライトを600℃で熱処理してOSDAを取り除いた後、塩化アンモニウム水溶液でイオン交換し、110℃で3時間乾燥することで前処理とした。
前処理後の試料を2つに分け、一方を露点−50℃の大気中、600℃で5時間熱処理し、他方を露点−50℃の大気中、1000℃で5時間熱処理した。
熱処理後の測定試料について、それぞれ、結晶の同定と同様な方法でXRDパターンを測定し、XRDパターンについてバックグランド処理を行った後、CHA型ゼオライトの20−1反射に対応する2θ=20.5〜21.0゜のXRDピークの強度を求め、600℃で熱処理した測定試料のXRDピークの強度をI600とし、1000℃で熱処理した測定試料のXRDピークの強度をI1000とした。得られたI600及びI1000からI1000/I600を求めた。
【0121】
合成例1(DMECHABrの合成)
300mLナスフラスコにN,N−ジメチルシクロヘキシルアミン 50.0g、臭化エチル42.8gおよびエタノール100mLを入れ、60℃で3時間反応させた。反応終了後、70℃で未反応物および溶媒を減圧留去することで臭化N,N,N−ジメチルエチルシクロヘキシルアンモニウム(以下、「DMECHABr」ともいう。)を得た。当該化合物を脱イオン水に溶解することで25.0重量%DMECHABr水溶液を得た。
【0122】
合成例2(DMECHAOHの合成)
合成例1で得たDMECHABr20.0gを脱イオン水180.0gに溶解させた。この水溶液を陰イオン交換樹脂(ダイヤイオンSA−10A、三菱化学株式会社製)を充填したカラムに通してイオン交換し、水酸化N,N,N−ジメチルエチルシクロヘキシルアンモニウム(以下、「DMECHAOH」ともいう。)の水溶液を得た。この液を50℃でロータリーエバポレータを用いて濃縮し、25重量%DMECHAOH水溶液を得た。
【0123】
合成例3(MDECHAIの合成)
300mLナスフラスコにN,N−ジエチルシクロヘキシルアミン50.0gおよび、タノール100mLを入れ、氷冷した。この溶液にヨウ化メチル50.3gを30分かけて滴下し、その後室温に戻してさらに12時間反応させた。反応終了後、70℃で未反応物および溶媒を減圧留去することでヨウ化N,N,N−メチルジエチルシクロヘキシルアンモニウム(以下、「MDECHAI」ともいう。)を得た。当該化合物を脱イオン水に溶解することで25.0重量%MDECHAI水溶液を得た。
【0124】
実施例A−1
25重量%DMECHABr水溶液、25重量%TMAdCl水溶液、48%水酸化ナトリウム水溶液、48重量%水酸化カリウム水溶液、脱イオン水、及び、非晶質アルミノシリケート(SiO/Al=23.7)を混合して以下のモル組成を有する原料組成物を得た。
SiO/Al =23.7
OSDA/SiO =0.08
DMECHABr/SiO =0.06
TMAdCl/SiO =0.02
TMAdCl/DMECHABr =0.33
K/SiO =0.06
Na/SiO =0.06
Na/K =1.00
O/SiO =15.0
OH/SiO =0.12
種晶 =0.0重量%
原料組成物を内容積80mLの密閉容器内に充填し、当該容器を55rpmで回転攪拌しながら150℃で48時間反応させた。得られた生成物を固液分離し、脱イオン水で洗浄した後、110℃で乾燥した。
【0125】
当該生成物はCHA型ゼオライトの単一相であり、結晶度は124%であり、100反射のXRDピークのFWHMが0.160゜、及び、20−1反射のXRDピークのFWHMが0.179゜であった。また、I1000/I600は0.55であった。
【0126】
実施例A−2
原料混合物における以下の組成を変更したこと以外は実施例A−1と同様な方法で生成物を得た。
DMECHABr/SiO =0.075
TMAdCl/SiO =0.005
【0127】
当該生成物はCHA型ゼオライトの単一相であり、100反射のXRDピークのFWHMが0.164゜、及び、20−1反射のXRDピークのFWHMが0.173゜であった。また、I1000/I600は0.59であった。
【0128】
実施例A−3
アルミナ源として、SiO/Alが31.0の非晶質アルミノシリケートを使用したこと、TMAdClの代わりにTMAdOHを使用したこと、及び、原料混合物における以下の組成を変更したこと以外は実施例A−1と同様な方法で生成物を得た。
SiO/Al =31.0
TMAdOH/SiO =0.02
K/SiO =0.04
【0129】
当該生成物はCHA型ゼオライトの単一相であり、100反射のXRDピークのFWHMが0.172゜、及び、20−1反射のXRDピークのFWHMが0.183゜であった。また、I1000/I600は0.59であった。
【0130】
実施例A−4
アルミナ源として、SiO/Alが31.0の非晶質アルミノシリケートを使用したこと、DMECHABrの代わりにDMECHABr及びDMECHAOHを使用したこと、TMAdClの代わりにTMAdOHを使用したこと、並びに、原料混合物における以下の組成を変更したこと以外は実施例A−1と同様な方法で生成物を得た。
SiO/Al =31.0
DMECHAOH/SiO =0.015
TMAdOH/SiO =0.005
K/SiO =0.04
【0131】
当該生成物はCHA型ゼオライトの単一相であり、100反射のXRDピークのFWHMが0.169゜、及び、20−1反射のXRDピークのFWHMが0.184゜であった。また、I1000/I600は0.65であった。
【0132】
実施例A−5
アルミナ源として、SiO/Alが24.5の非晶質アルミノシリケートを使用したこと、TMAdClの代わりにTMAdOHを使用したこと、並びに、原料混合物における以下の組成を変更したこと以外は実施例A−1と同様な方法で生成物を得た。
SiO/Al =24.5
TMAdOH/SiO =0.02
Na/SiO =0.08
K/SiO =0.12
O/SiO =18.0
OH/SiO =0.22
【0133】
当該生成物はCHA型ゼオライトの単一相であった。
【0134】
比較例A−1
DMECHABrを使用しなかったこと、及び、原料混合物における以下の組成を変更したこと以外は実施例A−1と同様な方法で生成物を得た。
【0135】
DMECHABr/SiO =0
TMAdCl/SiO =0.080
当該生成物はCHA型ゼオライトの単一相であり、I1000/I600は0.29であった。
【0136】
【表1】
【0137】
【表2】
【0138】
いずれの実施例でもCHA型ゼオライトの単一相が得られ、なおかつ、ADA塩のみをOSDAとした比較例以上のSi収率であった。これより、ADA塩とMECHA塩とをOSDAとして使用することでCHA型ゼオライトが得られることが確認できた。
【0139】
また、実施例A−1、A−2及び比較例A−1より、OSDAとしてDMECHA塩を使用して得られたCHA型ゼオライトは、OSDAとしてTMAdのみを使用して得られたゼオライトと比べ、SiOH/Si比が低くなること、すなわち、骨格端部が少なくなる事確認できた。
【0140】
実施例のCHA型ゼオライトはI1000/I600が0.55と、0.30以上の高いI1000/I600を有するのに対し、比較例A−1のCHA型ゼオライトのI1000/I600は0.29であった。さらに、比較例A−1のCHA型ゼオライトは、実施例A−3よりもCHA結晶度が高いにもかかわらず、I1000/I600は実施例A−3よりも低くなった。これより、本発明のCHA型ゼオライトは、ADA塩のみをOSDAとして得られたCHA型ゼオライトよりも高い耐熱性を有することが確認できた。
【0141】
実施例B−1
25重量%DMECHABr水溶液、25重量%TMAdCl水溶液、48%水酸化ナトリウム水溶液、48重量%水酸化カリウム水溶液、脱イオン水、及び、非晶質アルミノシリケート(SiO/Al=25.7)を混合して以下のモル組成を有する原料組成物50.0gを得た。
【0142】
SiO/Al =25.7
OSDA/SiO =0.08
DMECHABr/SiO =0.04
TMAdCl/SiO =0.04
TMAdCl/DMECHABr =1.00
K/SiO =0.10
Na/SiO =0.10
Na/K =1.00
O/SiO =15.0
OH/SiO =0.20
種晶 =0.0重量%
原料組成物を内容積80mLの密閉容器内に充填し、当該容器を55rpmで回転攪拌しながら170℃で48時間反応させた。得られた生成物を固液分離し、脱イオン水で洗浄した後、110℃で乾燥した。
【0143】
当該生成物はCHA型ゼオライトの単一相であり、CHA結晶度は118%であった。また、SiO/Alは24.9であった。
【0144】
実施例B−2
K/SiOを0.06としたこと以外は実施例B−1と同様な方法で生成物を得た。
【0145】
当該生成物はCHA型ゼオライトの単一相であり、CHA結晶度は129%であった。また、SiO/Alは25.2であった。
【0146】
実施例B−3
25重量%DMECHABr水溶液の代わりに25重量%DMECHAOH水溶液を使用したこと、及び25%重量%TMAdCl水溶液の代わりに25重量%TMAdOH水溶液を使用したこと以外は実施例B−2と同様な方法で生成物を得た。
【0147】
当該生成物はCHA型ゼオライトの単一相であり、CHA結晶度は118%であった。また、SiO/Alは23.8であった。
【0148】
実施例B−4
25重量%DMECHABr水溶液の代わりに25重量%MDECHAI水溶液を使用したこと以外は実施例B−1と同様な方法で生成物を得た。
【0149】
当該生成物はCHA型ゼオライトの単一相であり、CHA結晶度は112%であった。また、SiO/Alは24.7であった。
【0150】
比較例B−1
OSDAとして25重量%DMECHABr水溶液を単独で用いたこと、及び、種晶として5重量%のCHA型ゼオライトを原料組成物に混合したこと以外は実施例B−1と同様な方法で生成物を得た。
【0151】
本比較例では、48時間の反応後も結晶化せず、生成物はアモルファスであった。
【0152】
比較例B−2
OSDAとして25重量%DMECHAOH水溶液を単独で用いたこと、及び、種晶として5重量%のCHA型ゼオライトを原料組成物に混合したこと以外は実施例B−1と同様な方法で生成物を得た。
【0153】
本比較例では、48時間の反応後も結晶化せず、生成物はアモルファスであった。
【0154】
これらの比較例から、OSDAとしてDMECHAを単独で使用した場合、48時間ではCHA型ゼオライトは生成しないことがわかる。
【0155】
比較例B−3
OSDAとして25重量%TMAdCl水溶液を単独で用いたこと以外は実施例B−1と同様な方法で生成物を得た。
【0156】
当該生成物はCHA型ゼオライトの単一相であり、CHA結晶度は100%であった。また、SiO/Alは24.2であり、I1000/I600は0.30未満であった。
【0157】
比較例B−4
OSDAとして25重量%TMAdOH水溶液を単独で用いたこと以外は実施例B−1と同様な方法で生成物を得た。
【0158】
当該生成物はCHA型ゼオライトの単一相であり、CHA結晶度は100%であった。また、SiO/Alは22.1であり、I1000/I600は0.30未満あった。
【0159】
これらの比較例から、OSDAとしてTMAdを単独で使用した場合、MECAHとTMAdの併用系よりCHA結晶度が低いことがわかる。また、これらの比較例ではTMAdの添加量が多いため、OSDAコストが高い。
【0160】
これらの実施例及び比較例の原料組成物の主な組成を表3に、生成物の結果を表4に示した。
【0161】
【表3】
【0162】
【表4】
【0163】
実施例B−5
25重量%DMECHABr水溶液、25重量%TMAdCl水溶液、48%水酸化ナトリウム水溶液、48重量%水酸化カリウム水溶液、脱イオン水、及び、非晶質アルミノシリケート(SiO/Al=25.7)を混合して以下のモル組成を有する原料組成物50.0gを得た。
【0164】
SiO/Al =25.7
OSDA/SiO =0.08
DMECHABr/SiO =0.06
TMAdCl/SiO =0.02
TMAdCl/DMECHABr =0.33
K/SiO =0.06
Na/SiO =0.10
Na/K =1.67
O/SiO =15.0
OH/SiO =0.16
種晶 =0.0重量%
原料組成物を内容積80mLの密閉容器内に充填し、当該容器を55rpmで回転攪拌しながら170℃で48時間反応させた。得られた生成物を固液分離し、脱イオン水で洗浄した後、110℃で乾燥した。
【0165】
当該生成物はCHA型ゼオライトの単一相であり、CHA結晶度は132%であった。また、SiO/Alは25.1であり、I1000/I600は0.35であった。
【0166】
実施例B−6
原料組成物のDMECHABr/SiO及びTMAdCl/SiOを、それぞれ0.07及び0.01としたこと以外は実施例B−5と同様な方法で生成物を得た。
【0167】
当該生成物はCHA型ゼオライトの単一相であり、CHA結晶度は130%であった。また、SiO/Alは24.9であり、SiOH/Si比は0.54であり、I1000/I600は0.42であった。
【0168】
実施例B−7
DMECHABr/SiO及びTMAdCl/SiOを、それぞれ0.07及び0.01としたこと、並びに、種晶として2重量%のCHA型ゼオライトを原料組成物に混合した以外は実施例B−5と同様な方法で生成物を得た。
【0169】
当該生成物はCHA型ゼオライトの単一相であり、CHA結晶度は129%であった。また、SiO/Alは24.7であり、I1000/I600は0.41であった。
【0170】
これらの実施例の原料組成物の主な組成を表5に、生成物の結果を表6に示した。これらの実施例から、TMAdの使用量を低下させた場合であっても、高結晶のCHA型ゼオライトが得られることがわかる。
【0171】
【表5】
【0172】
【表6】
【0173】
実施例B−8
反応温度を150℃としたこと以外は実施例B−2と同様な方法で生成物を得た。
【0174】
当該生成物はCHA型ゼオライトの単一相であり、CHA結晶度は129%であった。また、SiO/Al比は24.9であった。
【0175】
本実施例のCHA型ゼオライトは、一辺が1μmの一次結晶粒子が化学的に凝集した凝集結晶粒子を含むことが確認できた。
【0176】
実施例B−9
反応温度を150℃としたこと以外は実施例B−5と同様な方法で生成物を得た。
【0177】
当該生成物はCHA型ゼオライトの単一相であり、CHA結晶度は132%であった。また、SiO/Alは25.2であり、I1000/I600は0.38であった。
【0178】
本実施例のCHA型ゼオライトは、一辺が1μmの一次結晶粒子を多く含み、当該一次結晶粒子と、一次粒子が化学的に凝集した凝集結晶粒子とが存在することが確認できた。
【0179】
実施例B−10
25重量%TMAdCl水溶液の代わりに25重量%TMAdOH水溶液を使用したこと以外は実施例B−9と同様な方法で生成物を得た。
【0180】
当該生成物はCHA型ゼオライトの単一相であり、CHA結晶度は129%であった。また、SiO/Alは23.9であり、I1000/I600は0.32であった。
【0181】
本実施例のCHA型ゼオライトは、一辺が1μmの一次結晶粒子を多く含み、当該一次結晶粒子と、一次粒子が化学的に凝集した凝集結晶粒子とが存在することが確認できた。
【0182】
実施例B−11
25重量%DMECHABr水溶液の代わりに25重量%MDECHAI水溶液を使用したこと以外は実施例B−9と同様な方法で生成物を得た。
【0183】
当該生成物はCHA型ゼオライトの単一相であり、CHA結晶度は120%であった。また、SiO/Alは24.9であった。
【0184】
これらの実施例の原料組成物の主な組成を表7に、生成物の結果を表8に示した。これらの実施例から、反応温度を150℃に低下させた場合であっても、短時間(48時間)で高結晶のCHA型ゼオライトが得られることがわかる。
【0185】
【表7】
【0186】
【表8】
【0187】
比較例B−5
25重量%DMECHABr水溶液の代わりに25重量%ヨウ化N,N,N−トリメチルシクロヘキシルアンモニウム(以下、「TMCHAI」ともいう。)を使用したこと、及び、種晶として5重量%のCHA型ゼオライトを原料組成物に混合したこと以外は実施例B−1と同様な方法で生成物を得た。
【0188】
得られた生成物はCHA型ゼオライトとERI型ゼオライトの混合物であり、混合物中のCHA結晶度は99%であった。また、混合物のSiO/Al比は24.8であり、I1000/I600は0.30未満であった。
【0189】
比較例B−6
TMCHAI/SiO及びTMAdCl/SiOを、それぞれ0.06及び0.02としたこと以外は比較例B−5と同様な方法で生成物を得た。
【0190】
本比較例では、48時間の反応後も結晶化せず、生成物はアモルファスであった。
【0191】
比較例B−7
25重量%TMAdCl水溶液の代わりに25重量%TMAdOH水溶液を使用したこと以外は比較例B−6と同様な方法で生成物を得た。
【0192】
本比較例では、48時間の反応後も結晶化せず、生成物はアモルファスであった。
【0193】
比較例B−8
25重量%DMECHABr水溶液の代わりに25重量%臭化N,N,N−ジメチルプロピルシクロヘキシルアンモニウム(以下、「DMPCHABr」ともいう。)水溶液を使用したこと、及び、種晶として5重量%のCHA型ゼオライトを原料組成物に混合したこと以外は実施例B−1と同様な方法で生成物を得た。
【0194】
得られた生成物はCHA型ゼオライトとERI型ゼオライトの混合物であり、混合物中のCHA結晶度は72%であった。また、混合物のSiO/Al比は24.5であった。
【0195】
比較例B−9
25重量%DMECHABr水溶液の代わりに25重量%臭化N,N,N−トリメチルベンジルアンモニウム(以下、「TMBABr」ともいう。)水溶液を使用したこと、及び、種晶として5重量%のCHA型ゼオライトを原料組成物に混合したこと以外は実施例B−1と同様な方法で生成物を得た。
【0196】
得られた生成物はCHA型ゼオライトとERI型ゼオライトの混合物であり、混合物中のCHA結晶度は100%であった。また、混合物のSiO/Al比は25.0であり、I1000/I600は0.30未満であった。
【0197】
これらの比較例の原料組成物の主な組成を表9に、生成物の結果を表10に示した。
【0198】
【表9】
【0199】
【表10】
【0200】
これらの比較例から、MECHA塩以外のN,N,N−アルキルシクロヘキシルアンモニウム塩とADA塩とを含む原料組成物では、CHA型ゼオライトの単一相が結晶化できないことが確認できた。また、芳香族環を含む4級アンモニウム塩であるTMBABrとADA塩とを含む原料組成物でもCHA型ゼオライトの単一相が結晶化できないことが確認できた。また、比較例B−9のI1000/I600は0.30未満であったことから、CHA型ゼオライト以外のゼオライトとCHA型ゼオライトとの混合物は、CHA型ゼオライトの結晶性が高くても、耐熱性が高くならないことが示された。
【産業上の利用可能性】
【0201】
本発明の製造方法は、CHA型ゼオライトの製造方法として使用することができ、特に工業的なCHA型ゼオライトの製造方法など、大規模なCHA型ゼオライトの製造方法に適用することができる。特に、触媒担体用のCHA型ゼオライトや吸着剤用のCHA型ゼオライトの工業的な製造方法として使用することができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13