(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
4級アンモニウム塩が、4級アンモニウム塩含有イソシアネート基末端プレポリマー(A)中に0.01〜0.30mmol/g含まれることを特徴とする請求項1に記載の水乳化液。
【背景技術】
【0002】
ポリイソシアネートは、活性水素基含有化合物と反応することによりウレタン結合等を形成し、強靭な高分子体となることで、塗料、接着剤、エラストマー、発泡体等多岐にわたる用途に用いられている。
【0003】
また、液状のポリイソシアネートであれば、直接塗布できない部位に対しても容易に流動するため、目的の場所で目的の硬化物を形成することができる。
【0004】
しかしながら液状のポリイソシアネートは、その粘性により、流路の狭い場所や、細かい隙間に浸透させ難く、より低粘度化することが求められている。
【0005】
ポリイソシアネートをより低粘度化するために、ポリイソシアネートに親水基を導入し水に乳化させるという手法が提案されている(特許文献1)。
【0006】
しかしながら特許文献1の手法では、ポリイソシアネートを水乳化することにより低粘度化できるものの、解乳化しづらいため、浸透した後も十分な強度を持つ硬化体を得ることができない。
【0007】
そこで水乳化液を解乳化させる手法として、水乳化液中に含まれる界面活性剤の性質を変えること、すなわち温度変化、通電、圧力及びpH等を変化させることでその性質を変えることが開示されている。例えば、特許文献2には、被処理乳濁液に大きな電場をかけることで解乳化する手法が開示されている。また、特許文献3には、電荷を帯びている分散粒子に塩を添加する塩析による解乳化方法が開示されている。しかしながら、これらの解乳化方法では、解乳化に際し外部からの刺激や第三成分の添加などが必要となり、それらを用いず、解乳化を任意の時間で生じさせる手法については検討されていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものである。すなわち、本発明の目的は、4級アンモニウム塩含有イソシアネート基末端プレポリマー(A)を含む水乳化液を、任意の時間乳化状態を保った後に解乳化する水乳化液、及び該水乳化液の解乳化方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は検討を重ねた結果、4級アンモニウム塩含有イソシアネート基末端プレポリマー(A)と、特定の混合電解質水溶液(B)とを含む水乳化液により、上記課題を解決できることを見出し、本発明に至った。
【0011】
すなわち、本発明は以下の実施形態を含むものである。
【0012】
(1)4級アンモニウム塩含有イソシアネート基末端プレポリマー(A)と、混合電解質水溶液(B)とを含む水乳化液であって、混合電解質水溶液(B)が、有機酸及び無機酸からなる群より選ばれる少なくとも一種(b1)と、アルカリ金属又はアルカリ土類金属のハロゲン化物である電解質(b2)と、アルカリ化合物(b3)とを含み、該混合電解質水溶液(B)のpHが2.4〜10.5、且つ電気伝導率が0.1〜0.8S/mであり、電解質(b2)が混合電解質水溶液(B)中に4級アンモニウム塩含有イソシアネート基末端プレポリマー(A)に対して2.4〜6.5重量%含まれ、4級アンモニウム塩含有イソシアネート基末端プレポリマー(A)と、混合電解質水溶液(B)の重量混合比が5/95〜40/60であることを特徴とする水乳化液。
【0013】
(2)4級アンモニウム塩が、4級アンモニウム塩含有イソシアネート基末端プレポリマー(A)中に0.01〜0.30mmol/g含まれることを特徴とする上記(1)に記載の水乳化液。
【0014】
(3)電解質(b2)が、混合電解質水溶液(B)中に4級アンモニウム塩含有イソシアネート基末端プレポリマー(A)に対して0.4〜1.8重量%含まれることを特徴とする上記(1)又は(2)に記載の水乳化液。
【0015】
(4)4級アンモニウム塩含有イソシアネート基末端プレポリマー(A)を含む水乳化液を、混合電解質水溶液(B)を用いて解乳化する解乳化方法であって、混合電解質水溶液(B)が、有機酸及び無機酸からなる群より選ばれる少なくとも一種(b1)と、アルカリ金属又はアルカリ土類金属のハロゲン化物である電解質(b2)と、アルカリ化合物(b3)とを含み、該混合電解質水溶液(B)のpHが2.4〜10.5、且つ電気伝導率が0.1〜0.8S/mであり、電解質(b2)が混合電解質水溶液(B)中に4級アンモニウム塩含有イソシアネート基末端プレポリマー(A)に対して2.4〜6.5重量%含まれ、4級アンモニウム塩含有イソシアネート基末端プレポリマー(A)と、混合電解質水溶液(B)の重量混合比が5/95〜40/60であること、を特徴とする水乳化液の解乳化方法。
【0016】
(5)4級アンモニウム塩が4級アンモニウム塩含有イソシアネート基末端プレポリマー(A)中に0.01〜0.30mmol/g含まれることを特徴とする上記(4)に記載の解乳化方法。
【0017】
(6)電解質(b2)が、混合電解質水溶液(B)中に4級アンモニウム塩含有イソシアネート基末端プレポリマー(A)に対して0.4〜1.8重量%含まれることを特徴とする上記(4)又は(5)に記載の解乳化方法。
【0018】
なお、本発明における4級アンモニウム塩含有イソシアネート基末端プレポリマーとは、イソシアネート基末端プレポリマーの分子内に4級アンモニウム塩を有するものを意味する。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、4級アンモニウム塩含有イソシアネート基末端プレポリマーの水乳化液を、任意の時間後に解乳化させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明について詳しく説明する。
【0021】
本発明は、4級アンモニウム塩含有イソシアネート基末端プレポリマー(A)と、混合電解質水溶液(B)とを含む水乳化液であって、電解質水溶液(B)が、有機酸及び無機酸からなる群より選ばれる少なくとも一種(b1)と、アルカリ金属又はアルカリ土類金属とハロゲンとからなる電解質(b2)と、アルカリ化合物(b3)とを含み、該混合電解質水溶液(B)のpHが2.4〜10.5、且つ電気伝導率が0.1〜0.8S/mであり、電解質(b2)が混合電解質水溶液(B)中に4級アンモニウム塩含有イソシアネート基末端プレポリマー(A)に対して2.4〜6.5wt%含まれ、4級アンモニウム塩含有イソシアネート基末端プレポリマー(A)と、混合電解質水溶液(B)の重量混合比が5/95〜40/60であることを特徴とする水乳化液である。
【0022】
本発明に用いられる4級アンモニウム塩含有イソシアネート基末端プレポリマー(A)は、4級アンモニウム塩を分子内に有していれば、特に制限なく使用することができる。
【0023】
本発明に係る4級アンモニウム塩含有イソシアネート基末端プレポリマー(A)は、4級アンモニウム塩含有モノオール、活性水素基含有化合物、及び有機ポリイソシアネートとの反応生成物であることが好ましい。
【0024】
本発明における4級アンモニウム塩含有モノオールは、一分子中に4級アンモニウム塩と活性水素基を有するものであり、例えばイミダゾール化合物とアルキル化剤より得られるものや、3級アミン化合物とアルキル化剤より得られるもの等が挙げられる。
【0025】
なお、4級アンモニウム塩含有モノオールは、4級アンモニウム塩含有モノオールを構成するイミダゾール化合物、3級アミン化合物、アルキル化剤等のいずれかに水酸基を有し、該モノオール分子中に一つの水酸基を持つものであることが好ましい。
【0026】
<イミダゾール化合物>
イミダゾール化合物としては、例えば1−(2−ヒドロキシエチル)−イミダゾール、1−(2−ヒドロキシエチル)−2−メチルイミダゾール、1−(2−ヒドロキシエチル)−2−エチルイミダゾール、1−(2−ヒドロキシエチル)−2−ブチルイミダゾール、1−メチル−2−ヒドロキシメチルイミダゾール、1−エチル−2−ヒドロキシメチルイミダゾール、1−プロピル−2−ヒドロキシメチルイミダゾール、1−n−ブチル−2−ヒドロキシメチルイミダゾール、1−n−ヘキシル−2−ヒドロキシメチルイミダゾール、1−ベンジル−2−ヒドロキシメチルイミダゾール、1−n−ブチルイミダゾール、1−イソブチルイミダゾール、1−n−ペンチルイミダゾール、1−n−ヘキシルイミダゾール、1−n−オクチルイミダゾール、1−n−デシルイミダゾール、1−n−デシルイミダゾール、1−n−ドデシルイミダゾール、1−ベンジルイミダゾール、1−n−ブチル−2−メチルイミダゾール、1−イソブチル−2−メチルイミダゾール、1−n−ペンチル−2−メチルイミダゾール、1−n−ヘキシル−2−メチルイミダゾール、1−n−オクチルイミダゾール、1−n−デシル−2−メチルイミダゾール、1−n−ドデシル−2−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、1−n−ブチル−2−ヒドロキシメチルイミダゾール、1−n−ヘキシル−2−ヒドロキシメチルイミダゾール、1−ベンジル−2−ヒドロキシメチルイミダゾール等が挙げられる。
【0027】
<3級アミン化合物>
3級アミン化合物としては、例えばジメチルアミノメタノール、2−ジメチルアミノエタノール、3−ジメチルアミノ−1−プロパノール、4−ジメチルアミノ−1−ブタノール、5−ジメチルアミノ−1−ペンタノール、6−ジメチルアミノ−1−ヘキサオール、7−ジメチルアミノ−1−ヘプタノール、8−ジメチルアミノ−1−オクタノール、3−(ジメチルアミノ)シクロヘキサノール、3,5−ジメチルシクロヘキサノール等が挙げられる。
【0028】
<アルキル化剤>
アルキル化剤としては、例えば1−クロロメタン、1−クロロエタン、1−クロロプロパン、2−クロロプロパン、1−クロロブタン、2−クロロブタン、1−クロロペンタン、2−クロロペンタン、1−クロロへキサン、1−クロロヘプタン、1−クロロオクタン、1−クロロノナン、1−クロロデカン、1−クロロドデカン、1−クロロオクタデカン、1−ブロモメタン、1−ブロモエタン、1−ブロモプロパン、2−ブロモプロパン、1−ブロモブタン、2−ブロモブタン、1−ブロモペンタン、2−ブロモペンタン、1−ブロモへキサン、1−ブロモへプタン、1−ブロモオクタン、1−ブロモノナン、1−ブロモデカン、1−ブロモドデカン、1−ブロモオクタデカン等のハロゲン化アルキル、ジメチル硫酸、ジエチル硫酸、ジブチル硫酸等のジアルキル硫酸、p―トルエンスルホン酸メチル、p―トルエンスルホン酸エチル、p―トルエンスルホン酸―n―ブチル、p―トルエンスルホン酸イソブチル、メタンスルホン酸メチル、メタンスルホン酸エチル、メタンスルホン酸ブチル等のアルキルスルホン酸エステル、クロロエタノール、クロロブタノール、クロロオクタノール、クロロデカノール、ブロモエタノール、ブロモブタノール、ブロモオクタノール、ブロモデカノール等のハロゲン化アルコール、ベンジルクロリド、ベンジルブロミド等が挙げられる。
【0029】
本発明における4級アンモニウム塩含有イソシアネート基末端プレポリマー(A)に用いる4級アンモニウム塩含有モノオールとしては、乳化安定性が高い共役2重結合を有するイミダゾリウム化合物と、アルキル化剤とからなるイミダゾリウム塩含有モノオールが好ましい。
【0030】
4級アンモニウム塩含有モノオールの含有量は、4級アンモニウム塩含有イソシアネート基末端プレポリマー(A)中に0.01〜0.30mmol/gであることが好ましく、0.015〜0.20mmol/gであることが更に好ましく、0.02〜0.10mmol/gであることが最も好ましい。4級アンモニウム塩含有量が下限未満の場合、分散媒への乳化性が不十分となる恐れがある。4級アンモニウム塩が上限を超える場合、4級アンモニウム塩含有イソシアネート基末端プレポリマー(A)の粘度が高まり分散媒との混合が不均一となる恐れがある。
【0031】
次に、イソシアネート基末端プレポリマーを得るための活性水素基含有化合物としては、例えば分子量が18〜5000の活性水素基含有化合物等を挙げることができる。このような活性水素基含有化合物としては、例えば、エチレングリコール、プロパンジオール、ブタンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、デカメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、シュークローズ、グルコース、フラクトース、ソルビトール、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ジエチレントリアミン、トルエンジアミン、メタフェニレンジアミン、ジフェニルメタンジアミン、キシリレンジアミン等の単独又は2種類以上の混合物、あるいは、これらを開始剤としてエチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、アミレンオキシド、グリシジルエーテル、メチルグリシジルエーテル、t−ブチルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル等のモノマーの1種又は2種以上を、公知の方法により付加重合することによって得られるものが挙げられる。これらは単独又は2種以上の混合物として使用することができる。
【0032】
本発明における活性水素基含有化合物は、有機ポリイソシアネート100重量部に対して1〜50重量部使用することが好ましく、2〜40重量部使用することがさらに好ましい。
【0033】
また、本発明における活性水素基含有化合物の平均官能基数は、2〜8が好ましい。平均官能基数が2未満では、得られる成型体の機械的強度(引張強度、伸び等)が不十分となる恐れがあり、他方、平均官能基数が8を越えると、得られる4級アンモニウム塩含有イソシアネート基末端プレポリマー(A)の粘度が高くなり過ぎると共に、得られる成型体の柔軟性が不十分となる恐れがある。
【0034】
本発明の有機ポリイソシアネートとしては、芳香族ポリイソシアネート、脂肪族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネート、芳香脂肪族ポリイソシアネート等を単独で使用、もしくは2種類以上を併用することができる。
【0035】
<芳香族ポリイソシアネート>
芳香族ポリイソシアネートとしては、例えば2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネートと2,6−トリレンジイソシアネートの混合物、m−キシリレンジイソシアネート、p−キシリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートと4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートの混合物、4,4’−ジフェニルエーテルジイソシアネート、2−ニトロジフェニル−4,4’−ジイソシアネート、2,2’−ジフェニルプロパン−4,4’−ジイソシアネート、3,3’−ジメチルジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、4,4’−ジフェニルプロパンジイソシアネート、m−フェニレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、ナフチレン−1,4−ジイソシアネート、ナフチレン−1,5−ジイソシアネート、3,3’−ジメトキシジフェニル−4,4’−ジイソシアネート等を挙げることができる。
【0036】
<脂肪族ポリイソシアネート>
脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えばヘキサメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、2−メチル−ペンタン−1,5−ジイソシアネート、3−メチル−ペンタン−1,5−ジイソシアネート、リジンジイソシアネート、トリオキシエチレンジイソシアネート等を挙げることができる。
【0037】
<脂環族ポリイソシアネート>
脂環族ポリイソシアネートとしては、例えばイソホロンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート、水素添加トリレンジイソシアネート、水素添加キシレンジイソシアネート、水素添加テトラメチルキシレンジイソシアネート等を挙げることができる。
【0038】
<芳香脂肪族ポリイソシアネート>
芳香脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば1,3−または1,4−キシリレンジイソシアネート若しくはその混合物、1,3−または1,4−ビス(1−イソシアナト−1−メチルエチル)ベンゼン若しくはその混合物、ω,ω’−ジイソシアナト−1,4−ジエチルベンゼン等を挙げることができる。
【0039】
また、これら芳香族ポリイソシアネート、脂肪族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネート、芳香脂肪族ポリイソシアネートを原料として得られるイソシアヌレート基含有ポリイソシアネート、ウレトジオン基含有ポリイソシアネート、ウレトジオン基及びイソシアヌレート基含有ポリイソシアネート、ウレタン基含有ポリイソシアネート、アロファネート基含有ポリイソシアネート、ビュレット基含有ポリイソシアネート、ウレトイミン基含有ポリイソシアネート等を併用することもできる。
【0040】
本発明のイソシアネート基末端プレポリマーに用いる有機ポリイソシアネートとしては、作業環境の観点から蒸気圧の高い4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,2’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,2’−ジフェニルメタンジイソシアネートと2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートと4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートの混合物、ポリフェニルポリメチルポリイソシアネートが好ましい。
【0041】
これらの4級アンモニウム塩含有モノオール、活性水素基含有化合物、及び有機ポリイソシアネートの反応生成物である、4級アンモニウム塩含有イソシアネート基末端プレポリマー(A)のイソシアネート含有量は18〜30重量%が好ましく、20〜29重量%がさらに好ましく、22〜28重量%が最も好ましい。イソシアネート含有量が上限を超えると低温時固化する恐れがあり、下限未満では4級アンモニウム塩含有イソシアネート基末端プレポリマー(A)の粘度が高くなり作業性が悪くなる恐れがある。
【0042】
次に、4級アンモニウム塩含有イソシアネート基末端プレポリマー(A)の分散媒として使用する混合電解質水溶液(B)について説明する。
【0043】
本発明における混合電解質水溶液(B)は、有機酸及び無機酸からなる群より選ばれる少なくとも一種(b1)と、アルカリ金属又はアルカリ土類金属のハロゲン化物である電解質(b2)と、アルカリ化合物(b3)とを含み、該混合電解質水溶液(B)のpHが2.4〜10.5、且つ電気伝導率が0.1〜0.8S/mであり、電解質(b2)が4級アンモニウム塩含有イソシアネート基末端プレポリマー(A)に対して2.4〜6.5wt%含むものである。
【0044】
<有機酸及び無機酸からなる群より選ばれる少なくとも一種(b1)>
有機酸としては、例えばギ酸、酢酸、酪酸、プロピオン酸、コハク酸、クエン酸、酒石酸、フマル酸、リンゴ酸、アコニット酸等が挙げられる。
【0045】
無機酸としては、例えば塩酸、硝酸、りん酸、硫酸、ホウ酸等が挙げられる。
【0046】
<アルカリ金属又はアルカリ土類金属のハロゲン化物である電解質(b2)>
電解質(b2)としては、例えば塩化リチウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化マグネシウム、塩化カルシウム、臭化ナトリウム、臭化カリウム。ヨウ化ナトリウム、ヨウ化カリウム等が挙げられる。
【0047】
<アルカリ化合物(b3)>
アルカリ化合物(b3)としては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム等のアルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物、水酸化アルミニウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム等のアルカリ金属の炭酸塩、アンモニア等が挙げられる。
【0048】
上記(b1)、(b2)、及び(b3)を含む混合電解質のうち、クエン酸、塩化カリウム、水酸化ナトリウムを含む混合電解質が、水にすばやく溶解し特に臭気がないことから好ましい。
【0049】
本発明における混合電解質水溶液(B)のpHは2.4〜10.5であり、5.0〜9.0が好ましい。pHを上記範囲にすることで乳化安定性を高めることができる。
【0050】
また、混合電解質水溶液(B)の電気伝導率は0.1〜0.8S/mであり、0.2〜0.7S/mが好ましい。電気伝導率を上記範囲にすることで解乳化性のコントロールが容易になる。
【0051】
また、(B)に含まれる(b2)の含有量は、4級アンモニウム塩含有イソシアネート基末端プレポリマー(A)に対して2.4〜6.5重量%であり、3.0〜6.0重量%であることが好ましい。(b2)の含有量を上記範囲とすることで、解乳化性のコントロールが容易になる。
【0052】
本発明の水乳化液を用いた場合、任意の時間乳化状態を保った後、分散粒子が解乳化することで沈降し、4級アンモニウム塩含有イソシアネート基末端プレポリマー(A)相と水相に分離する。その後分離した4級アンモニウム塩含有イソシアネート基末端プレポリマー(A)相中のイソシアネート基が水と反応し靱性のあるウレタン樹脂が得られる。解乳化せず分離しない場合、分散粒子内で反応が完結し高分子量化しないため、得られる成型体は軟弱ゲルとなる。
【0053】
なお、本発明においては、4級アンモニウム塩含有イソシアネート基末端プレポリマー(A)の水乳化液に、性能を低下させない範囲で他の水乳化液をブレンドして使用しても良い。他の水乳化液としては、例えばアクリルエマルジョン、ポリエステルエマルジョン、ポリオレフィンエマルジョン、ラテックス等を挙げることができる。
【0054】
本発明における4級アンモニウム塩含有イソシアネート基末端プレポリマー(A)と混合電解質水溶液(B)の重量混合比は5/95〜40/60であり、10/90〜30/70が好ましい。4級アンモニウム塩含有イソシアネート基末端プレポリマー(A)の含有量が上限を超えると水中油滴型乳化液から油中水滴型乳化液に変わる転相粘度に近づき、乳化液の粘度が高くなり浸透性が悪化する恐れがある。
【0055】
なお、本発明においては、分散粒子を基準とした分散安定性の指標としてゼータ電位測定値を用いる。
【0056】
分散安定性は、分散粒子間に作用するファンデルワールス引力と静電的斥力エネルギーの和によって決定する。ファンデルワールス引力が高いと分散粒子は解乳化するが、静電的斥力エネルギーが高いと分散する。帯電した分散粒子は、荷電粒子の周りを対イオンが固定層、拡散層と分布を持つ拡散電気二重層を形成している。固定層と拡散層の間にある液体流動が生じるすべり面の電位がゼータ電位である。ゼータ電位は分散粒子の荷電量の目安であり、ゼータ電位が高いと静電的斥力エネルギーも高く乳化安定性が高い。一方、ゼータ電位が−25〜25mVとなると静電的斥力エネルギーよりもファンデルワールス引力が上回るため乳化安定性が低下し解乳化する。
【0057】
また、解乳化は電解液中での分散相と連続相のイオン濃度差による浸透圧起因の脱水により生じる。本発明においては、電解液中のイオン濃度を、電気伝導率測定値を用いることによりその指標とする。
【0058】
以上のように本発明による水乳化液によれば、流路の狭い箇所、砂状で樹脂が染み込みにくい箇所等においても浸透させることができ、浸透後強度のあるウレタン固結物を得ることができる。このようなことから該水乳化液は、各種補強材、接着剤、水処理や紙パルプにおける懸濁液の凝集剤等に使用することができる。
【実施例】
【0059】
以下、本発明の実施例について詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、特にことわりのない限り、実施例及び比較例中の「部」及び「%」はそれぞれ「重量部」及び「重量%」を示す。
【0060】
(製造例1)
攪拌機、冷却管、窒素導入管、温度計を備えた反応器を窒素置換した後、この反応器に1−(2−ヒドロキシエチル)−イミダゾール100.0gと、1−クロロオクタン198.9gを仕込み、100℃にて攪拌しながら、46時間反応させた。その後、
1H−NMRで未反応の1−(2−ヒドロキシエチル)−イミダゾールが無いことを確認し、イミダゾリウム塩含有モノマー「S1」を得た。
【0061】
次に、攪拌機、冷却管、窒素導入管、温度計を備えた反応器を窒素置換した後、この反応器にポリメリックMDI(東ソー社製、商品名「MR−200」)を785g仕込み、次いでポリオキシプロピレングリコール(官能基数2、分子量2000)200gを仕込み、次いでイミダゾリウム塩含有モノマー「S1」15gを室温で攪拌しながら仕込み、室温(25℃)にて攪拌しながら、3時間反応させて、NCO含量20.7%、25℃での粘度2,700mPa・sの4級アンモニウム塩含有イソシアネート末端プレポリマー(A−1)を得た。
【0062】
(製造例2)
攪拌機、冷却管、窒素導入管、温度計を備えた反応器を窒素置換した後、この反応器に6−ジメチルアミノ−1−ヘキサノールを100gと、1−クロロオクタン102.7gを仕込み、100℃にて攪拌しながら、46時間反応させた。その後、
1H−NMRで未反応の6−ジメチルアミノ−1−ヘキサノールが無いことを確認し4級アンモニウム塩含有モノマー「S2」を得た。
【0063】
次に、攪拌機、窒素導入管、温度計を備えた反応器を窒素置換した後、この反応器にポリメリックMDI(東ソー社製、商品名「MR−200」)を785g仕込み、次いでポリオキシプロピレングリコール(官能基数2、分子量2000)200gを仕込み、次いで4級アンモニウム塩含有モノマー「S2」15gを室温で攪拌しながら仕込み、80℃にて攪拌しながら、3時間反応させて、NCO含量20.1%、25℃での粘度3,500mPa・sの4級アンモニウム塩含有イソシアネート基末端プレポリマー(A−2)を得た。
【0064】
(分散媒の調製)
下記の表1に示す分散媒B−1〜B−7を調製した。
【0065】
【表1】
【0066】
表1におけるクエン酸、酒石酸、ホウ酸、酢酸、塩化ナトリウム、水酸化ナトリウムは、キシダ化学製の市販品をそのまま用いた。
【0067】
〔乳化性及び解乳化性評価方法〕
以下の評価方法にて各種評価を行った。評価結果を表2に示す。
【0068】
(1)乳化液作製方法
500mlのポリカップ中に、25℃に調整した4級アンモニウム塩含有イソシアネート基末端プレポリマー(A)(以後(A)とも言う)及び混合電解質水溶液(B)(以後(B)とも言う)を20g、80gそれぞれ計量し、スリーワンモーターにて500rpm×10秒間混合し、水乳化液を得た。
【0069】
(2)乳化性評価基準
(1)で得た水乳化液を100mlのポリカップに注ぎ、静置させ目視にて乳化性を評価した。
・分散粒子が沈降せず乳化している:〇
・分散粒子が沈降し乳化していない:×。
【0070】
(3)解乳化性評価基準
(2)での評価が「○」であった水乳化液を静置し、分散粒子が解乳化し、連続相と分散相に相分離するか目視にて評価した。
・連続相と分散相に相分離している:〇
・連続相と分散相に相分離していない:×
・乳化していないため評価不可:―。
【0071】
(4)解乳化までの時間計測方法
(3)と同様に、静置した水乳化液中の分散粒子が、凝集し沈降を開始する時間を目視にて確認し、ストップウォッチにて計測した。分散粒子が凝集・沈降、堆積した後解乳化するが、分散粒子が沈降を開始した時間を解乳化までの時間とした。
【0072】
〔硬化体強度評価方法〕
(1)で得た水乳化液を静置し、12時間後の硬化体の外観を評価した。
・均一な発泡体で強度がある:良好
・不均一な軟弱ゲル若しくは未硬化:不良。
【0073】
〔ゼータ電位測定方法〕
500mlのポリカップ中に、25℃に調整した(A)及び(B)を20g、80gそれぞれ計量し、スリーワンモーターにて500rpm×10秒間混合し、(A)の水乳化液を得た。得られた水乳化液0.5gを9.0gの精製水中に滴下し希釈した乳化液を用い大塚電子社製ELSZ−2000にてゼータ電位測定を行った。分散性の指標として、ゼータ電位が25mV以上の場合分散粒子は分散する、25mV以下の場合分散粒子は凝集するとした。
【0074】
【表2】
【0075】
上記の結果から、実施例においては、4級アンモニウム塩含有イソシアネート基末端プレポリマー(A)と混合電解質水溶液(B)を混合後、任意の時間乳化状態を保った後解乳化し、均一な発泡体で強度のある固化物を得ることができた。