(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
鉛蓄電池は、産業用に広く用いられており、例えば自動車のバッテリー、バックアップ用電源、及び電動車の主電源に用いられる。近年の自動車では、炭酸ガス排出規制対策、低燃費化等を目的として、発電制御、信号待ち等の際にエンジンを停止するアイドリングストップアンドスタートシステム(以下、「ISS」と称する。)が採用されるようになっている。
【0003】
アイドリングストップ中はオルタネータによる発電が行われないため、電動装備への電力は全て鉛蓄電池から供給され、鉛蓄電池では従来よりも深い放電が行われる。また、走行中もオルタネータの発電が制御されるため、充電不足の状態となる。
【0004】
鉛蓄電池において深い放電と充電不足とが繰り返される場合、電解液の成層化が、鉛蓄電池の短寿命化の要因として顕在化してきている。ここで、成層化とは、充放電の繰り返しにより、電解液中の硫酸イオン(SO
42−)及び硫酸水素イオン(HSO
4−)(以下、これらを「硫酸イオン」と総称する)が沈降して、電槽の上下で電解液の比重に差が生じる現象をいう。この成層化は、鉛蓄電池の満充電容量に対する残容量の割合が小さくなるにつれて顕著になるため、電解液の撹拌効果が得られにくい中間充電状態で使用されるISS車用鉛蓄電池では、成層化の抑制が重要な課題となる。加えて、ISS車では、エンジン始動とエンジン停止中の電力供給とが頻繁に行われるため、高い出力性能も求められている。すなわち、ISS車においては、成層化の抑制と出力性能とを両立することが求められる。
【0005】
このような課題に対し、特許文献1には、電極表面にブチルゴム等を含む多孔質樹脂層に含まれることにより、保液性を確保し、鉛蓄電池の長寿命化等が可能な液式鉛蓄電池が記載されている。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を適宜参照しながら、本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0018】
図1は、一実施形態に係る液式鉛蓄電池(以下、単に「鉛蓄電池」ともいう)の全体構成及び内部構造を示す斜視図である。
図1に示すように、本実施形態に係る鉛蓄電池1は、上面が開口している電槽2と、電槽2の開口を閉じる蓋3とを備えている。電槽2及び蓋3は、例えばポリプロピレンで形成されている。蓋3には、負極端子4と、正極端子5と、蓋3に設けられた注液口を閉塞する液口栓6とが設けられている。
【0019】
電槽2の内部には、電極群7と、電極群7を負極端子4に接続する負極柱8と、電極群7を正極端子5に接続する正極柱(図示せず)と、希硫酸等の電解液とが収容されている。
【0020】
鉛蓄電池1は、一実施形態において、JIS D5301において規定される区分でD以上の幅寸法を有していてよい。鉛蓄電池1の幅寸法は、例えば、JIS D5301において規定される区分でD、E、F、G又はHであってよい。
【0021】
鉛蓄電池1は、一実施形態において、EN 50342−2において規定される区分でLBN0以上又はLN0以上の幅寸法を有していてよい。鉛蓄電池1の幅寸法は、例えば、EN 50342−2において規定される区分でLBN0〜6又はLN0〜6であってよい。
【0022】
鉛蓄電池1は、一実施形態において、170mm以上の幅寸法を有していてよい。鉛蓄電池1の幅寸法は、例えば、175mm以上又は180mm以上であってもよく、280mm以下又は225mm以下であってもよい。
【0023】
図2は、電極群7を示す斜視図である。
図2に示すように、電極群7は、金属鉛(Pb)を活物質として含む板状の負極板9と、二酸化鉛(PbO
2)を活物質として含む板状の正極板10と、負極板9と正極板10との間に配置されたセパレータ11とを備えている。電極群7は、複数の負極板9と正極板10とが、セパレータ11を介して、電槽2の開口面と略平行方向に交互に積層された構造を有している。すなわち、負極板9及び正極板10は、それらの主面が電槽2の開口面と垂直方向に広がるように配置されている。
【0024】
複数の負極板9の耳部9a同士は、負極側ストラップ12で集合溶接されている。同様に、複数の正極板10の耳部10a同士は、正極側ストラップ13で集合溶接されている。そして、負極側ストラップ12及び正極側ストラップ13のが、それぞれ負極柱8及び正極柱を介して負極端子4及び正極端子5に接続される。
【0025】
図3は、
図2におけるI−I線に沿った矢視断面を示す模式断面図である。
図3に示すように、負極板9とセパレータ11との間には膜体14が設けられている。
【0026】
セパレータ11は、例えば袋状に形成されており、負極板9及び膜体14は、セパレータ11内に収容されている。セパレータ11を形成する材料の例としては、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等が挙げられる。セパレータ11は、これらの材料で形成された織布、不織布、多孔質膜等にSiO
2、Al
2O
3等の無機系粒子を付着させたものであってよい。
【0027】
セパレータ11の厚さは、好ましくは0.1mm以上0.5mm以下、より好ましくは0.2mm以上0.3mm以下である。セパレータ11の厚さが0.1mm以上であると、セパレータの強度を確保できる。セパレータ11の厚さが0.5mm以下であると、電池の内部抵抗の上昇を抑制できる。
【0028】
セパレータ11の平均孔径は、好ましくは10nm以上500nm以下、より好ましくは30nm以上200nm以下である。セパレータ11の平均孔径が10nm以上であると、硫酸イオンを好適に通過させ、硫酸イオンの拡散速度を確保できる。セパレータ11の平均孔径が500nm以下であると、鉛のデンドライトの成長が抑制され、短絡が生じにくくなる。
【0029】
本実施形態では、膜体14は、負極板9の表面を覆うように負極板9に密着した状態で設けられている。膜体14は、例えばシート状又は袋状であってよい。膜体14がシート状である場合、膜体14は、負極板9に巻きつけられるようにして負極板9の表面を覆っている。膜体14が袋状である場合、負極板9は、膜体14内に収容されている。
【0030】
膜体14は、繊維を含んでいる。膜体14は、例えば不織布を備えている。不織布は、有機繊維を含む不織布、無機繊維を含む不織布、又は、繊維として有機繊維及び無機繊維を含む有機・無機混合不織布であってよい。有機繊維としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ナイロン、アラミド等の合成繊維が挙げられる。無機繊維としては、SiO
2の繊維(ガラス繊維)等が挙げられる。有機・無機混合不織布は、SiO
2等で形成された無機粉体を更に含んでいてもよい。
【0031】
膜体14は、繊維径が異なる複数種類の繊維を含んでいる。繊維径が5μm未満(特に1μm以上2μm以下程度)の細い繊維は、膜体14の比表面積を増加させることにより、硫酸の沈降を抑制する効果を奏すると考えられる。繊維径が5μm以上(特に5μm以上10μm以下程度)の太い繊維は、膜体14の強度を確保すると共に、膜体14の空間を増加させることにより、硫酸の拡散係数を大きくする効果を奏すると考えられる。太い繊維の繊維径は、好ましくは、細い繊維の繊維径の2.5倍以上である。このように、膜体14が細い繊維及び太い繊維の2種類以上を含むことで、成層化抑制と出力性能との両立が可能になると考えられる。
【0032】
膜体14に含まれる全繊維中、繊維径が5μm以上の繊維が占める割合は、10%以上であり、硫酸の拡散係数を更に大きくする観点から、好ましくは5%以上、より好ましくは7%以上、更に好ましくは9%以上、特に好ましくは10%以上であり、また、硫酸の沈降を更に抑制する観点から、好ましくは90%以下、より好ましくは85%以下、更に好ましくは80%以下、特に好ましくは75%以下である。繊維径が5μm以上10μm以下の繊維が占める割合が、上記の範囲であることが好ましい。
【0033】
膜体14に含まれる全繊維中、繊維径が5μm未満の繊維が占める割合は、硫酸の沈降を更に抑制する観点から、好ましくは60%以上、より好ましくは65%以上、更に好ましくは70%以上、特に好ましくは75%以上であり、また、硫酸の拡散係数を更に大きくする観点から、好ましくは95%以下、より好ましくは90%以下、更に好ましくは85%以下、特に好ましくは80%以下である。繊維径が1μm以上2μm以下の繊維が占める割合が、上記の範囲であることが好ましい。
【0034】
膜体に含まれる繊維に占める所定の繊維径の繊維の割合は、走査電子顕微鏡(例えば株式会社日立ハイテクノロジーズ製)で得られるSEM像に基づいて測定される。具体的には、SEM像における繊維100本についてその径(SEM像における繊維の短手方向の長さ(最短距離))を測定し、繊維径の分布を求める。次いで、測定した全繊維の本数に占める所定の繊維径の繊維の本数の割合を算出する。
【0035】
膜体14は、細孔を有している。膜体14の平均細孔径は、20μm以下であり、電解液の成層化を更に抑制する観点から、好ましくは、19μm以下、18μm以下、17μm以下、16μm以下、15μm以下、14μm以下、13μm以下、12μm以下、11μm以下又は10μm以下である。膜体14の平均細孔径は、電池の出力を更に向上させる観点から、好ましくは、1μm以上、2μm以上又は3μm以上である。
【0036】
膜体の平均細孔径は、水銀圧入法により測定される積算細孔径分布において、分布曲線のY軸(細孔容積又は細孔比表面積)における最小値と最大値との中間値に対応するX軸(細孔径)の値であるメディアン径として算出される。膜体の平均細孔径は、例えば、株式会社島津製作所製、オートポアIV 9500で測定できる。
【0037】
上述のような膜体14を負極板9とセパレータ11との間に設けることにより、電槽2下部における高濃度の硫酸の蓄積を抑制し、電解液の成層化を抑制することができる。言い換えると、膜体14を設けることにより、電槽2内部の硫酸イオンの濃度を均一に保持することができ、電池反応が偏在することを抑制できるため、鉛蓄電池1の寿命の向上が可能となる。このような膜体14をセパレータ11とは別にセパレータ11よりも負極板9の近傍に設けることにより、例えばセパレータ11に成層化抑制のための処理を施した場合に比べて、より高い成層化の抑制効果が得られる。
【0038】
膜体14の空孔率は、60%以上であり、硫酸イオンの拡散性を更に確保しやすくすると共に、硫酸イオンを保持する空間を更に大きくする観点から、好ましくは65%以上、より好ましくは70%以上、更に好ましくは75%以上、特に好ましくは80%以上である。膜体の空孔率は、膜体から適当な大きさの直方体状に切り取った試料について、下記式(3)〜(5)に従い実際の体積と見かけの体積とから算出される。
空孔率(%)={1−(実際の体積/見かけの体積)}×100 …(3)
実際の体積(cm
3)=重量の実測値(g)/密度(g/cm
3) …(4)
見かけの体積(cm
3)=縦(cm)×横(cm)×厚さ(cm) …(5)
なお、見かけの体積を算出する際の試料の縦、横及び厚さはいずれも実測値を用いる。
【0039】
膜体14の厚さは、内部抵抗の上昇を抑制する観点から、好ましくは0.3mm以下、より好ましくは0.25mm以下、更に好ましくは0.2mm以下、特に好ましくは0.15mm以下である。膜体14の厚さは、硫酸の沈降の防止能力、電池反応への影響、強度等の観点から、例えば0.03mm以上である。膜体14が不織布を備える場合には、不織布を構成する繊維の太さ等に応じて膜体14の厚さが決定される。
【0040】
上記実施形態では、膜体14は負極板9の主面(セパレータ11に対向する面)、側面及び底面のすべてを覆い、それらの表面に接触するように(密着した状態で)設けられていたが、他の実施形態では、膜体は、負極板9から離間するように、負極板9とセパレータ11との間に設けられていてもよい。この場合、膜体14は、例えばセパレータ11の負極側の面上に設けられていてよい。電解液の成層化をより抑制する観点からは、膜体14は、負極板9の表面に接触するように(密着した状態で)設けられていることが好ましい。
【0041】
上記実施形態では、膜体14は負極板9の主面(セパレータ11に対向する面)、側面及び底面のすべてを覆っていたが、他の実施形態では、膜体は、負極板9の主面(セパレータ11に対向する面)のみを覆うように設けられていてもよい。
【実施例】
【0042】
<実施例1>
一酸化鉛を主成分とする鉛粉を希硫酸で練って調製したペーストを鉛合金格子に充填したペースト式極板を用いた。その後、熟成と乾燥工程とを経て未化成極板が得られた。なお、未化成の正極板及び負極板は、いずれも2価の鉛化合物である一酸化鉛(PbO)、三塩基性希硫酸鉛(3PbO・PbSO
4・H
2O)等の混合物で構成されている。化成により、正極板の未化成物質は二酸化鉛(PbO
2)に酸化され、負極板の未化成物質は海綿状鉛(Pb)に還元され、既化極板(正極板、負極板)が得られた。
【0043】
膜体として表1に示すとおりの無機不織布(主成分:SiO
2)を用い、負極板上に配置した。当該無機不織布を構成する繊維は、繊維径が1μm以上2μm以下の繊維である繊維Aと、繊維径5μm以上10μm以下の繊維である繊維Bとの2種類を含んでおり、繊維A,Bの割合を表1に示した。セパレータとしては、厚さが0.25mm、平均孔径が30nm以上200nm以下である袋状のポリエチレン製セパレータを用い、負極板及び膜体をセパレータ内に収容した。電解液としては希硫酸を用いて、成層化抑制が困難なDサイズ(JIS D5301。幅:173mm、箱高さ:204mm。負極板の幅:145mm、負極板の高さ(上枠部込み):113mm。)の定格容量60Ahの鉛蓄電池を作製した。
【0044】
(平均細孔径の算出)
膜体の平均細孔径は、株式会社島津製作所製、オートポアIV 9500で測定した。膜体の平均細孔径は、水銀圧入法により測定された積算細孔径分布において、分布曲線のY軸(細孔容積又は細孔比表面積)における最小値と最大値との中間値に対応するX軸(細孔径)の値であるメディアン径として算出した。
【0045】
(繊維径の算出)
膜体に含まれる繊維の繊維径は、株式会社日立ハイテクノロジーズ製の走査電子顕微鏡で得られたSEM像に基づいて測定した。具体的には、SEM像における繊維100本についてその径(SEM像における繊維の短手方向の長さ(最短距離))を測定し、繊維径の分布を求めた。次いで、測定した全繊維の本数に占める繊維径が1μm以上2μm以下である繊維Aの本数及び繊維径が5μm以上10μm以下である繊維Bの本数の割合をそれぞれ算出した。
【0046】
(成層化抑制効果の評価)
電解液の成層化を抑制する効果を評価した。DOD17.5%寿命試験と同様に充放電を繰り返し、255サイクル目における電槽内の上部と下部での電解液の上下比重差を成層化の指標とした。具体的には、電極群の上端(セパレータの上端)から1cm上までの領域を電槽内の上部とし、電極群の下端から1cm下までの領域を電槽内の下部とした。なお、電極群の高さ(電極群の下端からセパレータの上端までの長さ)は、116mmであった。そして、膜体を設けない場合(比較例1)の上下比重差を100として、上下比重差を算出した。
【0047】
(出力性能の評価)
VDA規格に準拠して出力性能を評価した。すなわち、鉛蓄電池の初期性能を測定後、2〜96時間かけて満充電状態まで再充電した後、以下のシーケンステストを実施した。下記(1)〜(5)が1ユニットであり、出力性能は、下記(2)の放電時における電圧が7.2Vを下回るまでに当該ユニットを何回繰り返せるかに基づき評価した。なお、膜体を設けない場合(比較例1)の出力性能を100とした相対値を表1に示す。膜体を設けた場合は設けない場合に比べると硫酸の拡散が遅くなるため、出力は低下することになる。
(1)45Aで59秒間放電する。
(2)300Aで1秒間放電する。
(3)14.0Vで60秒間充電する(最大電流値:100A)。
(4)上記(1)〜(3)のシーケンステストを3600回繰り返す。
(5)48時間休止する。
【0048】
なお、上下比重差が70未満かつ出力が90以上であれば、電解液の成層化の抑制と電池の出力性能の向上とを両立できるといえる。上下比重差は、好ましくは50未満である。出力は、好ましくは95以上である。
【0049】
(DOD17.5%寿命試験(耐久性))
DOD17.5%寿命性能は次のように測定した。まず始めに、充電が完了した鉛蓄電池を、湯浴温度が25℃±2℃に設定された水槽中に配置した。DOD17.5%の寿命試験では、以下のサイクルユニット(a)〜(g)の順に実施した。なお、60Ahの鉛蓄電池では、20時間率電流は3Aである。また、この試験は、ISS車での鉛蓄電池の使われ方を模擬したサイクル試験であり、鉛蓄電池の電圧が10.0Vを下回った時点で寿命に達したと判断した。結果を表1に示す。
(a)12A(20時間率電流の4倍に相当)で2.5時間放電。
放電下限電圧は10.0Vよりも大きいものとした。
(b)21A(20時間率電流の7倍に相当)で40分間充電。
充電上限電圧は14.4±0.05Vであった。
(c)21A(20時間率電流の7倍に相当)で30分間放電。
放電下限電圧は10.0Vよりも大きいものとした。
(d)上記(b)及び(c)を交互に85回繰り返す。
(e)6A(20時間率電流の2倍に相当)で18時間充電。
CC(定電流)−CV(定電圧)充電とし、CV充電時の電圧は16.0V±0.05Vとした。
(f)3A(20時間率電流±1.0%)で放電。
終止電圧10.5±0.1Vに到達するまで放電させて鉛蓄電池の容量を確認し、容量低下率が5%よりも小さいことを確認した。
(g)15A(20時間率電流の5倍)で24時間充電。
CC−CV充電とし、CV充電時の電圧は16.0V±0.05Vとした。
【0050】
<実施例2〜6>
膜体として表1に示すとおりの無機不織布を用いた以外は、実施例1と同様にして鉛蓄電池の作製及び評価を行った。
【0051】
<実施例7,8>
膜体として、無機不織布に代えて表1に示すとおりの有機・無機混合不織布(多孔シート、パルプ、ガラス繊維及びシリカ粉末を含む混合繊維から構成される不織布)を用いた以外は、それぞれ実施例1と同様にして鉛蓄電池の作製及び評価を行った。
【0052】
<実施例9>
膜体として、無機不織布に代えて表1に示すとおりの有機不織布(ポリプロピレン製)を用いた以外は、それぞれ実施例1と同様にして鉛蓄電池の作製及び評価を行った。
【0053】
<実施例10>
鉛蓄電池のサイズを欧州で一般的なLN1サイズ(EN 50342−2。幅:175mm、箱高さ:190mm。負極板の幅:143mm、負極板の高さ(上枠部込み):100mm。)に変更した以外は、実施例4と同様にして鉛蓄電池の作製及び評価を行った。
【0054】
<比較例1>
負極板上に膜体を設けなかった以外は、実施例1と同様にして鉛蓄電池の作製及び評価を行った。
【0055】
<比較例2>
膜体として表1に示すとおりの無機不織布(主成分:SiO
2)を用いた以外は、実施例1と同様にして鉛蓄電池の作製及び評価を行った。
【0056】
<比較例3>
膜体として表1に示すとおりの有機不織布(ポリプロピレン製)を用いた以外は、実施例1と同様にして鉛蓄電池の作製及び評価を行った。
【0057】
【表1】
【0058】
以上の結果から、負極とセパレータとの間に設けた膜体の平均細孔径が20μm以下、空孔率が60%以上、繊維Bの比率が10%以上である実施例では成層化抑制と出力性能が両立されていることが分かる。一方、膜体を設けていない比較例1と膜体の平均細孔径が40μmの比較例3では成層化が抑制されず、加えて、ISS寿命(耐久性)が1500未満となり、実施例に比べると大幅に短寿命となった。膜体の平均細孔径が1μmかつ繊維Bの比率が5%である比較例2では、出力性能が90未満となった。膜体の空孔率が50%の比較例4では、出力性能が90未満となった。
【0059】
なお、本発明は、上記の実施例に限定されるものではなく、様々な変形例を含む。例えば、上記の実施例は、本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、本発明は、必ずしも説明した全ての構成を備える態様に限定されるものではない。