【文献】
五十嵐幹二ら,著名な高フルクトース血症を呈した清涼飲料水ケトーシスの1例,糖尿病,2006年,49巻、6号,第417〜421頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
上記ジオール構造は、1,2−ジオール構造、1,3−ジオール構造、オリゴオール構造およびポリオール構造からなる群より選択される少なくとも1つの構造である請求項1に記載のゲル化組成物。
上記ポリマーB、および/または、上記化合物Cは、ジオール構造を有する、糖または糖類縁体を構成成分として含有するものである請求項1または2に記載のゲル化組成物。
上記糖および糖類縁体は、グルコース、ガラクトース、フルクトース、マンノース、グルクロン酸、グルコサミン、ガラクトサミン、ソルビトール、スクロース、ラクトース、マルトース、トレハロース、ゲンチオビオース、ラフィノース、マルトトリオース、メレジトース、アルカボース、スタキオース、ガラクトオリゴ糖、フラクトオリゴ糖、マンナンオリゴ糖、リボース、デオキシリボース、ピナコール、カテコールまたはトリスヒドロキシメチルアミノメタンである請求項3に記載のゲル化組成物。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Zhang Z et. al.,“Biodegradable and thermoreversible PCLA-PEG-PCLA hydrogel as a barrier for prevention of post-operative adhesion.”, Biomaterials.,2011 Apr;32:4725-36.
【非特許文献2】Li L et. al.,“Biodegradable and injectable in situ cross-linking chitosan-hyaluronic acid based hydrogels for postoperative adhesion prevention.”, Biomaterials.,2014 Feb;35:3903-17.
【非特許文献3】Zhang Z et. al.,“Encapsulation of cell-adhesive RGD peptides into a polymeric physical hydrogel to prevent postoperative tissue adhesion”, J Biomed Mater Res., 2012 Jun;100B:1599-609.
【非特許文献4】Yu L et. al.,“Comparative studies of thermogels in preventing post-operative adhesions and corresponding mechanisms”, Biomater. Sci., 2014 Mar;2:1100-9.
【非特許文献5】Wang X et. al.,“Injectable silk-polyethylene glycol hydrogels”, Acta Biomaterialia., 2015 Oct;12:51-61.
【非特許文献6】Ito T et. al.,“Dextran-based in situ cross-linked injectable hydrogels to prevent peritoneal adhesions.”, 2007 Biomaterials.;28:3418-26.
【非特許文献7】Garberm J C et. al.,“Delivery of basic fibroblast growth factor with a pH-responsive, injectable hydrogel to improve angiogenesis in infarcted myocardium.”, 2011 Biomaterials.;32:2407-16.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来のインジェクタブルゲルは、光照射、加熱またはpH変化などによってゲル化されるため、これらの刺激に応答する化合物を含んでいる必要がある。当該化合物の多くは生体内での安全性が担保されているものではなく、応用化が困難であった。例えば、光照射を行う場合には、特定の領域に光を照射するための機器が必要となる。このような機器は、高価であるばかりでなく、光の生体組織内での透過性に問題があり、さらに複雑な構造を有する生体内の特定の領域に対して均一に光を照射することは容易ではない。
【0007】
一方、体温による加熱を行う場合には、ゾル状態の温度を保ったまま生体内に送達することが容易ではなく、また、ゲル化に要する時間が長くなる。ゲル化に要する時間を短くするためには、特定の領域を加熱するための機器が必要となる。このような機器は、高価であるばかりでなく、複雑な構造を有する生体の中の特定の領域を均一に加熱することは容易ではない。
【0008】
さらに、生体内のpH変化によってインジェクタブルゲルをゲル化させるためには、生体に投与する時点のインジェクタブルゲルのpHを、アルカリ性または酸性に設定する必要がある。インジェクタブルゲルのpHを、生体内のpH以外(アルカリ性または酸性)に設定すると、細胞毒性が問題となる。
【0009】
本発明は、上記従来の問題点に鑑みなされたものであって、その目的は、従来とは異なるメカニズムによって流動性を有する状態から流動性を有さない状態へと相転移を生じる、ハンドリング性に優れたゲル化組成物、および当該ゲル化組成物から形成されるゲル構造体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、鋭意検討した結果、ゲル構造体を構成するポリマー間の架橋を阻害する化合物であって、自由拡散によって希釈され易い化合物を用いることにより、流動性を有する状態から流動性を有さない状態へと相転移を生じる新たなインジェクタブルゲルを実現し得ることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0011】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る流動性を有する状態から流動性を有さない状態へと相転移を生じるゲル化組成物は、ボロン酸基を有するポリマーAと、
ジオール構造を有するポリマーBと、ジオール構造を有する化合物Cと、を含有する。
【0012】
本発明の一態様に係るゲル化組成物では、上記ジオール構造は、1,2−ジオール構造、1,3−ジオール構造、オリゴオール構造およびポリオール構造からなる群より選択される少なくとも1つの構造であることが好ましい。
【0013】
本発明の一態様に係るゲル化組成物では、上記ポリマーB、および/または、上記化合物Cは、ジオール構造を有する、糖または糖類縁体を構成成分として含有するものであることが好ましい。
【0014】
本発明の一態様に係るゲル化組成物では、上記糖および糖類縁体は、単糖、二糖、三糖、四糖、オリゴ糖またはヌクレオチド糖であることが好ましい。
【0015】
本発明の一態様に係るゲル化組成物では、上記糖および糖類縁体は、グルコース、ガラクトース、フルクトース、マンノース、グルクロン酸、グルコサミン、ガラクトサミン、ソルビトール、スクロース、ラクトース、マルトース、トレハロース、ゲンチオビオース、ラフィノース、マルトトリオース、メレジトース、アルカボース、スタキオース、ガラクトオリゴ糖、フラクトオリゴ糖、マンナンオリゴ糖、リボース、デオキシリボース、ピナコール、カテコールまたはトリスヒドロキシメチルアミノメタンであることが好ましい。
【0016】
本発明の一態様に係るゲル化組成物では、上記化合物Cは、重量平均分子量が50〜1000のものであることが好ましい。
【0017】
本発明の一態様に係るゲル化組成物では、上記ゲル化組成物中における上記化合物Cの濃度は、生体内における上記化合物Cの濃度よりも高いことが好ましい。
【0018】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係るゲル構造体は、ボロン酸基を有するポリマーAと、ジオール構造を有するポリマーBとを結合させてなる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、流動性を有する状態から流動性を有さない状態へと相転移を生じるが故に、ハンドリング性に優れたゲル化組成物、および当該ゲル化組成物から形成されるゲル構造体を提供し得る。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の一実施形態について以下に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。本発明は、以下に説明する各構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態や実施例にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態や実施例についても本発明の技術的範囲に含まれる。また、本明細書中に記載された学術文献および特許文献の全てが、本明細書中において参考文献として援用される。また、本明細書において特記しない限り、数値範囲を表す「A〜B」は、「A以上、B以下」を意図する。
【0022】
〔1.本発明の基本原理〕
まず、
図1を用いて、本発明の基本原理を説明する。
【0023】
ポリマーAは、ポリマーBと結合し得るものである。また、当該ポリマーAは、化合物Cとも結合し得るものである。ポリマーA、ポリマーB、および、化合物Cの三者が共存する場合、化合物Cは、ポリマーAとポリマーBとの結合に対して、拮抗阻害能力を有する。化合物CがポリマーAに結合した状態にあり、かつ、ポリマーBがポリマーAに結合できない状態にある場合、当該三者を含むゲル化組成物は、流動性を有する状態(例えば、ゾル、または、架橋密度が極めて低いために流動性を有しているゲル)にある。
【0024】
一方、ゲル化組成物が、当該ゲル化組成物中の化合物Cの濃度よりも低い濃度の化合物Cを含む環境内に投与された場合、ゲル化組成物中の化合物Cは環境中へ拡散し、ゲル化組成物中の化合物Cの濃度が低下する。ポリマーAとポリマーBとの結合を阻害する物質である化合物Cの濃度が低下することにより、ポリマーAとポリマーBとが結合して、ゲル化組成物がゲル化する(換言すれば、ゲル構造体が形成される)。化合物Cが生体内に拡散して低濃度に希釈されるので、当該ゲル化組成物の毒性は低い。したがって、当該ゲル化組成物は、生体内のあらゆる部位に投与できる。
【0025】
〔2.ゲル化組成物〕
本実施の形態の流動性を有する状態から流動性を有さない状態へと相転移を生じるゲル化組成物は、ボロン酸基を有するポリマーAと、ジオール構造を有するポリマーBと、ジオール構造を有する化合物Cと、を含有する。
【0026】
なお、上記流動性を有する状態としては、例えば、ゾル、または、架橋密度が低いために流動性を有しているゲルを挙げることができ、上記流動性を有さない状態としては、架橋密度が高いために流動性を有していないゲルを挙げることができる。
【0028】
〔2−1.ポリマーA〕
本実施の形態のゲル化組成物では、ポリマーAは、ボロン酸基を有しているものである。
【0029】
上記ボロン酸基は、酸解離を伴って、ジオール構造を有するポリマーBおよび化合物Cと環状エステルを形成してもよい。より具体的には、上記ボロン酸は、ポリマーBおよび化合物C(例えば、1,2−ジオールまたは1,3−ジオール構造を有する、ポリマーBおよび化合物C)と、5員環エステルまたは6員環エステルを形成してもよい。
【0030】
上記ボロン酸基としては、例えば、フェニルボロン酸基、ナフタレンボロン酸基、キノリンボロン酸基、ピリジンボロン酸基、チオフェンボロン酸基、フランボロン酸基、インドールボロン酸基およびシクロヘキシルボロン酸基等が挙げられる。
【0031】
上記ボロン酸基は、上記ポリマーAの側鎖に含まれていてもよいし、主鎖に含まれていてもよい。
【0032】
上記ボロン酸基は、ポリマーAを構成するモノマー内に含まれ得る。ボロン酸基を有するモノマーとしては、例えば、4−(アクリロイルアミノ)フェニルボロン酸、3−(アクリロイルアミノ)フェニルボロン酸、3−(メタクリロイルアミノ)フェニルボロン酸、4−ビニルフェニルボロン酸、4−(ビニルカルバモイル)フェニルボロン酸、2−メトキシピリジン−5−ボロン酸、5−カルボキシチオフェン−2−ボロン酸、それらの芳香族水素原子がフッ素原子で単数または複数置換された化合物、および、それらのアミノフェニルボロン酸構造がN−アルキルアミノメチルフェニルボロン酸に置換された化合物等が挙げられる。ポリマーAは、これらから選択される1種または2種以上のモノマーによって構成されていてもよい。
【0033】
上記ポリマーAは、ボロン酸基を有するモノマーのみからなるものであってもよいし、ボロン酸基を有するモノマーとボロン酸基を有さないモノマーとの組み合わせからなるものであってもよい。上記ポリマーA中の上記ボロン酸基を有するモノマーの含有率は、1質量%以上10質量%以下であることが好ましく、3質量%以上5質量%以下であることがより好ましい。当該構成であれば、ポリマーAとポリマーBとの結合に対して拮抗阻害能力を有する化合物Cの濃度が、ゲル化組成物中で、生体内における化合物Cの濃度以上であり、かつ、実用的な範囲の濃度にて、ポリマーAとポリマーBとの結合を阻害できる。そして、生体内で化合物Cの濃度が低下すると、ポリマーAとポリマーBとの結合を促進できるという利点がある。
【0034】
上記ボロン酸基を有さないモノマーとしては、アクリルアミド系モノマー、メタアクリルアミド系モノマー、アクリル酸系モノマー、メタアクリル酸系モノマーを挙げることができる。このようなモノマーの更なる具体例としては、例えば、(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、エチレンビス(メタ)アクリルアミド、N−[3−(ジメチルアミノ)プロピル](メタ)アクリルアミド、N−t−ブチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N−(ブトキシメチル)(メタ)アクリルアミド、N−(イソブトキシメチル)(メタ)アクリルアミド、N−フェニル(メタ)アクリルアミド、イソブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−ビニルラクトン、メチルビニルエーテル、(メタ)アクリロイルモルホリン、(メタ)アクリル酸、各種アルキル(メタ)アクリレート、1,4−シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレート、(3−(メタ)アクリルアミドプロピル)トリメチルアンモニウムクロリド、トリメチル−2−(メタ)アクロイルオキシエチルアンモニウムクロリド、りん酸2−((メタ)アクリロイルオキシ)エチル2−(トリメチルアンモニオ)エチル、(メタ)アクリル酸2−(2−エトキシエトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸グリシジル、ジ(エチレングリコール)ジビニルエーテル、トリ(エチレングリコール)ジビニルエーテル、ポリ(エチレングリコール)ジビニルエーテル、トリメチロールプロパンエトキシラートトリ(メタ)アクリラート、トリメチロールプロパンプロポキシラートトリ(メタ)アクリラート、N−[トリス(3−(メタ)アクリルアミドプロポキシメチル)メチル](メタ)アクリルアミド、酢酸ビニル、カルボン酸ビニル(C3〜C10)、N−ビニルピロリドン、アクリロニトリル、スチレン、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、2,2−ビス〔4−((メタ)アクリロキシジエトキシ)フェニル〕プロパン、2,2−ビス〔4−((メタ)アクリロキシポリエトキシ)フェニル〕プロパン、2,2−ビス〔4−((メタ)アクリロキシポリプロポキシ)フェニル〕プロパン、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、2,2−ビス〔4−((メタ)アクリロキシエトキシ)フェニル〕プロパン、2,2−ビス〔4−((メタ)アクリロキシエトキシジエトキシ)フェニル〕プロパン、2,2−ビス〔4−((メタ)アクリロキシエトキシポリエトキシ)フェニル〕プロパン、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、N,N’−メチレンビス(メタ)アクリルアミド、ジエチレングリコールジアリルエーテル、ジビニルベンゼン、4−(メタ)アクリルアミドベンゾ−18−クラウン−6−エーテル、アクリロイルアミノベンゾクラウンエーテル、(メタ)アクリロイルアミノベンゾクラウンエーテル、4−ビニルベンゾクラウンエーテル等が挙げられる。本実施の形態のゲル化組成物では、これらから選択される1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0035】
〔2−2.ポリマーBおよび化合物C〕
本実施の形態のゲル化組成物では、ポリマーBおよび化合物Cは、共に、ジオール構造を有しているものである。このとき、ポリマーBが有するジオール構造と、化合物Cが有するジオール構造とは、同じジオール構造であってもよいし、異なるジオール構造であってもよい。
【0036】
ポリマーBが有するジオール構造と、化合物Cが有するジオール構造とが、同じジオール構造であれば、ポリマーAに対するポリマーBの反応性と、ポリマーAに対する化合物Cの反応性とを、略同じにすることができる。当該構成であれば、ポリマーAとポリマーBとの間に形成される結合を阻害するために必要な、ゲル化組成物中におけるポリマーBと化合物Cとのモル比(例えば、ポリマーB:化合物Cが、1:10〜1:1000)を、容易に決定することができる。
【0037】
上記ジオール構造は、1,2−ジオール構造、1,3−ジオール構造、オリゴオール構造およびポリオール構造からなる群より選択される少なくとも1つの構造であることが好ましい。これらのジオール構造の中では、生体適合性が高く、拡散速度が速く、かつ、ボロン酸との親和性が高いという観点から、グルコースに含まれているジオール構造(より具体的には、グルコース)がさらに好ましい。
【0038】
本実施の形態のゲル化組成物では、上記ポリマーB、および/または、上記化合物Cは、ジオール構造を有する、糖または糖類縁体を構成成分として含有するものであることが好ましい。また、上記化合物Cは、当該糖または糖類縁体そのものであってもよい。糖および糖類縁体は、生体にとって極めて安全な物質である。それ故に、当該構成であれば、生体にとってより安全なゲル化組成物を実現することができる。
【0039】
上記糖は、単糖、二糖、三糖、四糖、オリゴ糖またはヌクレオチド糖であることが好ましい。上記単糖としては、例えば、グルコース、ガラクトース、フルクトース、マンノース、グルクロン酸、グルコサミン、ガラクトサミン、ソルビトール等が挙げられる。上記二糖としては、例えば、スクロース、ラクトース、マルトース、トレハロース、ゲンチオビオース等が挙げられる。三糖としては、例えば、ラフィノース、マルトトリオース、メレジトース等が挙げられる。四糖としては、例えば、アルカボース、スタキオース等が挙げられる。オリゴ糖としては、例えば、ガラクトオリゴ糖、フラクトオリゴ糖、マンナンオリゴ糖等が挙げられる。上記ヌクレオチド糖としては、例えば、リボース、デオキシリボース等が挙げられる。
【0040】
上記糖類縁体としては、例えば、ピナコール、カテコール、トリスヒドロキシメチルアミノメタン等が挙げられる。
【0041】
本実施の形態のゲル化組成物では、上記糖は、グルコース、ガラクトース、フルクトースであることがより好ましく、上記糖類縁体は、ピナコール、カテコール、またはトリスヒドロキシメチルアミノメタンであることがより好ましい。
【0042】
上記糖および上記糖類縁体は、自然界の様々な生物に含まれるものであってもよい。当該生物は、例えば、植物、菌類等が挙げられる。
【0043】
上記ポリマーBは、ジオール構造をポリマーBの側鎖に含んでいてもよいし、主鎖に含んでいてもよい。
【0044】
上記ポリマーBとしては、ジオール構造を有しているものであれば特に限定されないが、例えば、βグルカン、ポリビニルアルコール、ポリグリシドール、デキストラン等が挙げられる。上記βグルカンは、側鎖にグルコース構造を有する天然多糖であり、黒酵母菌(Aureobasidium pullulans)から抽出される食用多糖である。βグルカンのうちシゾフィランは、子宮頸癌における放射線療法の効果の増強を狙った筋注薬としても使用されている安全な材料である。
【0045】
本実施の形態のゲル化組成物では、上記化合物Cは、重量平均分子量が50〜1000のものであることが好ましい。重量平均分子量が小さいほど、拡散し易い。それ故に、当該構成であれば、よりゲル化し易いゲル化組成物を実現することができる。なお、重量平均分子量は、周知の方法に従って測定することができる。例えば、下記条件で測定を行うことも可能である;(1)使用装置:東ソー HLC−8220GPC相当品、(2)カラム :東ソー TSK gel Super AWM−H(6.0mmI.D.×15cm)×2本、(3)ガードカラム:東ソー TSK guard column Super AW−H、(4)溶離液:30mM LiBr+20mM H3PO4 in DMF、(5)流速:0.6mL/min、(6)カラム温度:40℃、(7)検出条件:RI:ポラリティ(+)、レスポンス(0.5sec)、(8)試料濃度:約5mg/mL、(9)標準品:PEG(ポリエチレングリコール)。
【0046】
なお、化合物Cが均一な物質である場合には、論理的に算出される化合物Cの分子量を重量平均分子量とみなすことも可能である。
【0047】
上記化合物Cは、上記ポリマーBと拮抗して、上記ポリマーAと上記ポリマーBとの間の結合の形成を阻害し得る。それ故に、ポリマーAのボロン酸基と化合物Cのジオール構造との結合力は、ポリマーAのボロン酸基とポリマーBのジオール構造との結合力よりも強いことが好ましい。
【0048】
上記ゲル化組成物は、生体内へ投与されるためのものであることが好ましい。生体内でゲル化組成物中の化合物Cが拡散し、場合によっては生体によって代謝されることにより、ゲル化組成物中の化合物Cの濃度が低下する。このことは、ポリマーAとポリマーBとの間の結合の形成を阻害する物質の濃度が低下することを意味している。その結果、ポリマーAとポリマーBとが結合してゲル化し、ゲル構造体を形成することができる。
【0049】
本実施の形態のゲル化組成物では、上記ゲル化組成物中における上記化合物Cの濃度は、生体内における上記化合物Cの濃度よりも高いことが好ましい。より具体的には、上記ゲル化組成物中における上記化合物Cの濃度は、生体内における上記化合物Cの濃度よりも2倍以上高いことが好ましく、5倍以上高いことがより好ましく、10倍以上高いことがさらに好ましく、20倍以上高いことが最も好ましい。当該構成によれば、ゲル化組成物を生体内に投与した場合、ゲル化組成物から生体へ向かって化合物Cが拡散し、ゲル化組成物内における化合物Cの濃度が低下することになる。その結果、本実施の形態のゲル化組成物は、流動性を有する状態から流動性を有さない状態へ相転移を生じることができる。
【0050】
即ち、生体内における化合物Cの濃度が1mg/mlである場合、ゲル化組成物中の化合物Cの濃度は、2mg/ml以上であることが好ましく、5mg/ml以上であることがより好ましく、10mg/ml以上であることがさらに好ましく、20mg/ml以上であることが最も好ましい。
【0051】
上記ゲル化組成物における上記ポリマーA、上記ポリマーBおよび上記化合物Cの濃度比は、生体内に投与したときにゲル化できる濃度比であればよく、特に限定されないが、例えば、ポリマーA:ポリマーB:化合物C=0.1〜5:5〜10:5〜10、0.1〜20:5〜10:10〜20、0.1〜40:5〜10:20〜30、0.1〜200:5〜10:30〜40、0.1〜0.5:10〜20:5〜10、0.1〜5:10〜20:10〜20、0.1〜1:10〜20:20〜30、または、0.1〜1:10〜20:30〜40であることが好ましい。より好ましくは、ポリマーA:ポリマーB:化合物C=0.1〜40:5〜10:20〜30である。さらに好ましくは、ポリマーA:ポリマーB:化合物C=5〜15:5〜10:20〜30である。
【0052】
ポリマーAの濃度は0.1mg/ml〜5mg/ml、ポリマーBの濃度は5mg/ml〜15mg/ml、化合物Cの濃度は5mg/ml〜10mg/mlであることが好ましく、ポリマーAの濃度は0.1mg/ml〜20mg/ml、ポリマーBの濃度は5mg/ml〜10mg/ml、化合物Cの濃度は10mg/ml〜20mg/mlであることが好ましく、ポリマーAの濃度は0.1mg/ml〜40mg/ml、ポリマーBの濃度は5mg/ml〜10mg/ml、化合物Cの濃度は20mg/ml〜30mg/mlであることが好ましく、ポリマーAの濃度は0.1mg/ml〜200mg/ml、ポリマーBの濃度は5mg/ml〜10mg/ml、化合物Cの濃度は30mg/ml〜40mg/mlであることが好ましく、ポリマーAの濃度は0.1mg/ml〜0.5mg/ml、ポリマーBの濃度は10mg/ml〜20mg/ml、化合物Cの濃度は5mg/ml〜10mg/mlであることが好ましく、ポリマーAの濃度は0.1mg/ml〜5mg/ml、ポリマーBの濃度は10mg/ml〜20mg/ml、化合物Cの濃度は10mg/ml〜20mg/mlであることが好ましく、ポリマーAの濃度は0.1mg/ml〜1mg/ml、ポリマーBの濃度は10mg/ml〜20mg/ml、化合物Cの濃度は20mg/ml〜30mg/ml、または、ポリマーAの濃度は0.1mg/ml〜1mg/ml、ポリマーBの濃度は10mg/ml〜20mg/ml、化合物Cの濃度は30mg/ml〜40mg/mlであることが好ましい。より好ましくは、ポリマーAの濃度は0.1mg/ml〜40mg/ml、ポリマーBの濃度は5mg/ml〜10mg/ml、化合物Cの濃度は20mg/ml〜30mg/mlである。さらに好ましくは、ポリマーAの濃度は5mg/ml〜10mg/ml、ポリマーBの濃度は5mg/ml〜10mg/ml、化合物Cの濃度は20mg/ml〜30mg/mlである。
【0053】
上記ゲル化組成物は、ゲル化組成物中の化合物Cの濃度が低下するとゲル化し、ゲル構造体を形成する。即ち、ゲル化組成物は、ゲル化組成物中の上記化合物Cの濃度よりも低い濃度の上記化合物Cが含まれる環境内(例えば、溶液内、または、生体内など)に投与されると、ポリマーAとポリマーBとが結合してゲル化し、ゲル構造体を形成する。これは、ポリマーAと結合してポリマーAとポリマーBとの結合を阻害する化合物Cが、環境内に拡散されて、ゲル化組成物中の化合物Cの濃度が低下するためである。
【0054】
上記ゲル化組成物は、生体移植材料として用いてもよい。
【0055】
上記生体移植材料は、組織癒着防止用(組織癒着防止材)、または、心筋梗塞治療用(心筋梗塞治療材)に用いてもよい。
【0056】
上記組織癒着防止用に上記ゲル化組成物を用いる場合、生体内の組織表面にゲル化組成物、または、ゲル化組成物から生じたゲル構造体を投与することで、組織表面にゲル構造体を形成してもよい。組織表面がゲル構造体で覆われることにより、手術後の組織癒着を防止することができる。
【0057】
上記心筋梗塞治療用に上記ゲル化組成物を用いる場合、心室壁厚の菲薄化により心室内径の縮小が起こっている心臓に対して、心室壁厚に上記ゲル化組成物を注入してもよいし、ゲル化組成物から生じたゲル構造体を心室壁厚に注入してもよい。ゲル化組成物またはゲル構造体を注入することにより、心室壁を厚くし、心室内径を縮小し、心室壁の強度を保つことができる。
【0058】
上記ゲル化組成物を生体内へ投与する方法としては、スプレー、注射、および、塗布等が挙げられる。創傷部に対する接着性に優れ、内視鏡手術で使用でき、ハンドリング性がよく、かつ、ゲル化組成物が組織表面に広がるため、出血部の位置を特定しなくても当該出血部を容易に覆うことができることから、上記ゲル化組成物を生体内へ投与する方法は、スプレー、または、注射であることが好ましい。
【0059】
上記ゲル化組成物は、ポリマーA、ポリマーBおよび化合物C以外の添加剤を含んでいてもよく、例えば、ポリマーAおよびポリマーB以外のポリマー、緩衝剤、pH調整剤、等張化剤、防腐剤、抗酸化剤、賦形剤、担体、希釈剤、溶媒、可溶化剤、安定剤、充填剤、結合剤、界面活性剤、安定化剤等が挙げられる。
【0060】
上記緩衝剤としては、例えば、リン酸またはリン酸塩、ホウ酸またはホウ酸塩、クエン酸またはクエン酸塩、酢酸または酢酸塩、炭酸または炭酸塩、酒石酸または酒石酸塩、ε−アミノカプロン酸、トロメタモール等が挙げられる。上記リン酸塩としては、リン酸ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二カリウム等が挙げられる。上記ホウ酸塩としては、ホウ砂、ホウ酸ナトリウム、ホウ酸カリウム等が挙げられる。上記クエン酸塩としては、クエン酸ナトリウム、クエン酸二ナトリウム、クエン酸三ナトリウム等が挙げられる。上記酢酸塩としては、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム等が挙げられる。上記炭酸塩としては、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム等が挙げられる。上記酒石酸塩としては、酒石酸ナトリウム、酒石酸カリウム等が挙げられる。
【0061】
pH調整剤としては、例えば、塩酸、リン酸、クエン酸、酢酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等が挙げられる。
【0062】
上記等張化剤としては、例えば、イオン性等張化剤(塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム等)、非イオン性等張化剤(グリセリン、プロピレングリコール、ソルビトール、マンニトール等)が挙げられる。
【0063】
上記防腐剤としては、例えば、ベンザルコニウム塩化物、ベンザルコニウム臭化物、ベンゼトニウム塩化物、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸プロピル、クロロブタノール等が挙げられる。
【0064】
上記抗酸化剤としては、例えば、アスコルビン酸、トコフェノール、ジブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール、エリソルビン酸ナトリウム、没食子酸プロピル、亜硫酸ナトリウム等が挙げられる。
【0065】
本実施の形態のゲル化組成物は、上に例示した以外にも、当業者に知られている添加剤を含んでいてよい。
【0066】
上記添加剤の量は、ポリマーA、ポリマーBおよび化合物Cの量が上述した範囲内の量を満たしていれば特に限定されない。
【0067】
〔3.ゲル構造体〕
本実施の形態のゲル構造体は、ボロン酸基を有するポリマーAと、ジオール構造を有するポリマーBとを結合させてなるものである。
【0068】
上記ポリマーA、上記ポリマーB、および、上記ジオール構造については、上述した〔2.ゲル化組成物〕の欄で説明したので、ここでは、その説明を省略する。
【0069】
上記ボロン酸基を有するポリマーAは、細胞膜、粘膜および生体膜上の糖鎖と結合する能力があることから、形成されたゲル構造体は組織接着性および親和性を有している。
【0070】
上記ゲル構造体は、生体移植材料として用いてもよい。
【0071】
上記生体移植材料は、組織癒着防止用(組織癒着防止材)、または、心筋梗塞治療用(心筋梗塞治療材)として用いてもよい。
【0072】
上記組織癒着防止用に上記ゲル構造体を用いる場合、生体内の組織表面にゲル構造体を投与することで、組織表面にゲル構造体を形成さしてもよい。組織表面がゲル構造体で覆われることにより、手術後の組織癒着を防止することができる。
【0073】
上記組織癒着防止用に上記ゲル構造体を用いる場合、ゲル構造体は分解性(より具体的に、生分解性)であることが好ましい。即ち、ポリマーAおよびポリマーBの主鎖は分解性(より具体的に、生分解性)のポリマーであることが好ましい。
【0074】
上記心筋梗塞治療用に上記ゲル構造体を用いる場合、心室壁厚の菲薄化により心室内径の拡大(リモデリング)が起こっている心臓に対して、心室壁厚に上記ゲル構造体を注入する方法であってよい。ゲル構造体を注入することにより、心室壁を厚くし、心室内径のさらなる拡大を抑制し、心室壁の強度を保つことができる。
【0075】
上記心筋梗塞治療用に上記ゲル構造体を用いる場合、ゲル構造体は非分解性(より具体的に、非生分解性)であることが好ましい。即ち、ポリマーAおよびポリマーBの主鎖は非分解性(より具体的に、非生分解性)のポリマーであることが好ましい。ゲル構造体は非分解性であることにより、心室壁の強度を長期間保つことができる。
【0076】
上記ゲル構造体の貯蔵弾性率は2.5E+02Pa以上であることが好ましく、3.0E+02Pa以上であることがより好ましい。
【0077】
本実施の形態のゲル構造体は、以下のように構成することも可能である。
【0078】
本実施の形態のゲル構造体では、上記ジオール構造は、1,2−ジオール構造、1,3−ジオール構造、オリゴオール構造およびポリオール構造からなる群より選択される少なくとも1つの構造であることが好ましい。
【0079】
本実施の形態のゲル構造体では、上記ポリマーBは、ジオール構造を有する、糖または糖類縁体を構成成分として含有することが好ましい。
【0080】
本実施の形態のゲル構造体では、上記糖および糖類縁体は、単糖、二糖、三糖、四糖、オリゴ糖またはヌクレオチド糖であることが好ましい。
【0081】
本実施の形態のゲル構造体では、上記糖および糖類縁体は、グルコース、ガラクトース、フルクトース、マンノース、グルクロン酸、グルコサミン、ガラクトサミン、ソルビトール、スクロース、ラクトース、マルトース、トレハロース、ゲンチオビオース、ラフィノース、マルトトリオース、メレジトース、アルカボース、スタキオース、ガラクトオリゴ糖、フラクトオリゴ糖、マンナンオリゴ糖、リボース、デオキシリボース、ピナコール、カテコールまたはトリスヒドロキシメチルアミノメタンであることが好ましい。
【0082】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【実施例】
【0083】
<実施例1>
各濃度のボロン酸基含有ポリアクリルアミド、βグルカン、グルコース(重量平均分子量:略180)を、試験管内で混合した。試験管を逆さにして中の混合物が流れ落ちてくる状態を流動性を有する状態と判断し、「×」とした。試験管を逆さにしても中の混合物が底に固まって流れ落ちてこない状態をゲル状態と判断し、「○」とした。
【0084】
図2に、各グルコース濃度時の、各濃度のボロン酸基含有ポリアクリルアミドと各濃度のβグルカンとを含む溶液の流動性を有する状態から流動性を有さない状態への相転移を示した実施例1の結果を示す。
【0085】
結果の一例として、βグルカンの濃度が10mg/ml、ボロン酸の濃度が0.1mg/ml〜40mg/ml、グルコースの濃度が20mg/mlである場合、溶液はゲル状態になった。また、βグルカンの濃度が10mg/ml、ボロン酸の濃度が0.1mg/ml〜40mg/ml、グルコースの濃度が1mg/mlである場合、溶液は流動性を有する状態であった。この結果から、βグルカンの濃度が10mg/ml、ボロン酸の濃度が0.1mg/ml〜40mg/mlである場合、グルコースの濃度が20mg/mlから1mg/mlに低下すると流動性を有する状態から流動性を有さない状態となることが分かった。
【0086】
<実施例2>
図3に示す装置を用いて、ゲル化組成物を低濃度C化合物含有溶液中に透析したときの、ゲル化組成物の透析時間に対する貯蔵弾性率(G’)および損失弾性率(G”)を測定した。
【0087】
上記装置は、シリコン足、ポリエチレンスポンジ、透析膜および注射針を備えている。当該注射針は、透析膜とポリエチレンスポンジとの間のエアー抜きのためのものである。シリコン足上に多孔質シートを、多孔質シート上に透析膜を備え、透析膜上に測定試料をセットする。透析膜の外側は外液(グルコース溶液)で満たされている。
【0088】
10mg/mlのボロン酸基含有ポリアクリルアミド、10mg/mlのβグルカン、30mg/mlのグルコースを混合した試料を、下面が半透膜になっている透析膜(商品名:Slide-A-Lyzer MWCO3500)上にセットした。透析膜上にセットした試料を1mg/ml(生体内のグルコース濃度と想定)または30mg/mlのグルコース溶液の外液に1時間透析した。試料の上から動的粘弾性プローブをあて、ひずみ1%、周波数0.5Hzの条件で、動的粘弾性測定装置を用いて貯蔵弾性率(G’)および損失弾性率(G”)を測定した。外液として1mg/mlのグルコース溶液を用いたときは、透析開始から1時間経過後、一旦測定を停止し、直後に再度同じゲルの測定を10分間行った。
【0089】
図4は、各グルコース濃度時の、透析時間と、貯蔵弾性率(G’)および損失弾性率(G”)との相関を示すグラフである。
【0090】
外液として1mg/mlのグルコース溶液を用いたときは、透析時間が経過するにつれて貯蔵弾性率(G’)が上昇した。この貯蔵弾性率(G’)の上昇は、試料のゲル強度の向上、または、ゲルの流動性の消失を示している。ゲルの強度の向上速度、または、ゲルの流動性の消失速度は速く、貯蔵弾性率(G’)は1時間程度で一定になった。ゲル化速度の値は、試料の厚さまたは生体環境に依存する。
【0091】
一方で、外液として試料中のグルコース濃度と同じ30mg/mlのグルコース溶液を用いたときは、貯蔵弾性率(G’)の上昇はみられなかったことから、1時間経過後も流動性を有する状態であることが示された。