特許第6954583号(P6954583)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6954583溶融塩を含む電解質を用いた蓄電デバイス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6954583
(24)【登録日】2021年10月4日
(45)【発行日】2021年10月27日
(54)【発明の名称】溶融塩を含む電解質を用いた蓄電デバイス
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/052 20100101AFI20211018BHJP
   H01M 10/0568 20100101ALI20211018BHJP
   H01M 10/0567 20100101ALI20211018BHJP
   H01M 10/054 20100101ALI20211018BHJP
【FI】
   H01M10/052
   H01M10/0568
   H01M10/0567
   H01M10/054
【請求項の数】8
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2017-6414(P2017-6414)
(22)【出願日】2017年1月18日
(65)【公開番号】特開2017-130448(P2017-130448A)
(43)【公開日】2017年7月27日
【審査請求日】2020年1月8日
(31)【優先権主張番号】特願2016-7380(P2016-7380)
(32)【優先日】2016年1月18日
(33)【優先権主張国】JP
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成25年度、国立研究開発法人科学技術振興機構、戦略的創造研究推進事業(先端的低炭素化技術開発(ALCA))、「次世代蓄電池」、「新原理に基づく金属負極を有する高性能新電池の創製」、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】301021533
【氏名又は名称】国立研究開発法人産業技術総合研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100139594
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 健次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100090251
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 憲一
(72)【発明者】
【氏名】松本 英俊
(72)【発明者】
【氏名】結城 貴皓
(72)【発明者】
【氏名】松本 一
(72)【発明者】
【氏名】窪田 啓吾
【審査官】 結城 佐織
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−157719(JP,A)
【文献】 特開2010−225511(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/052
H01M 10/0568
H01M 10/0567
H01M 10/054
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に溶融塩と分子間相互作用する官能基を有する無機ナノファイバー、溶融塩、及び金属イオンを含む電解質、正極活物質を含む正極電極、及び負極活物質を含む負極電極、を含む蓄電デバイス。
【請求項2】
前記金属イオンが、リチウムイオン、ナトリウムイオン、マグネシウムイオン、及びカルシウムイオンからなる群から選択される金属イオンである、請求項1に記載の蓄電デバイス。
【請求項3】
前記無機ナノファイバーが、SiOナノファイバー、TiOナノファイバー、ZnOナノファイバー、Alナノファイバー、ZrOナノファイバー及びそれらの2つ以上の組み合わせからなる群から選択される無機ナノファイバーである、請求項1又は2に記載の蓄電デバイス。
【請求項4】
前記溶融塩が、イミダゾリウムカチオン、ピリジニウムカチオン、ピペリジニウムカチオン、ピロリジニウムカチオン、ホスホニウムカチオン、モルフォリニウムカチオン、スルホニウムカチオン及びアンモニウムカチオンからなる群から選択される少なくとも1つのカチオン、及びカルボン酸アニオン、スルホン酸アニオン、ハロゲンアニオン、ヒドロキシアニオン、イミドアニオン、ホウ素アニオン、シアノアニオン、リンアニオン、硝酸アニオンからなる群から選択される少なくとも1つのアニオンを含む溶融塩である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の蓄電デバイス。
【請求項5】
前記溶融塩が深共晶溶媒である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の蓄電デバイス。
【請求項6】
前記官能基が、アミノ基、水酸基、カルボキシル基及びシロキサン基及びそれらの2つ以上の組み合わせからなる群から選択される官能基である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の蓄電デバイス。
【請求項7】
前記無機ナノファイバーの含有量が0.5〜10.0質量%である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の蓄電デバイス。
【請求項8】
非水電解質二次電池、電気二重層キャパシタ又はハイブリッドキャパシタである、請求項1〜7のいずれか一項に記載の蓄電デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶融塩を含む電解質を用いた蓄電デバイスに関する。本発明によれば、高い熱安定性を有する蓄電デバイスを提供することができる。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン二次電池などの非水電解質二次電池は、携帯電話、ビデオカメラ、及びノートパソコンなどの携帯型の電子機器の電源として汎用されている。更に、電気自動車、ハイブリッド自動車、及び大型電デバイスの電源としても使用が広まってきている。
現在、これらの非水電解質二次電池の電解質としては、電解塩を非水系溶媒に溶解した液状電解質が使用されている。しかしながら、液状電解質は、可燃性の溶媒を含んでおり、液漏れが発生することもあり、安全性の向上が望まれている。
【0003】
リチウムイオン二次電池の安性を向上させるため、液状電解質にかわりに、ドライ系固体電解質を用いた全固体二次電池の開発が進められている。このような全固体二次電池では、ドライ系固体電解質として、難燃性のイオン液体、ゲル状電解質、高分子状の電解質が検討されている。しかしながら、液状電解質と同等の性能を示すドライ系固体電解質を用いた実用的な二次電池は得られていない。
【0004】
前記の通り、リチウムイオン二次電池は、高電圧及び高容量を有し、二次電池として広く使用されている。しかしながら、リチウムの埋蔵量は豊富ではなく、リチウムイオン二次電池に代わり、埋蔵量の多いマグネシウムイオン二次電池の開発も積極的に進められている。マグネシウムイオン二次電池は取り扱いが容易であり、そして理論上の体積当たりの電気容量密度が大きいという特徴を有している。
しかしながら、実際には、安定かつ安全に充電及び放電を行うことのできる実用的な電解液は見つかっておらず、マグネシウムイオン二次電池は実用化されていない。更に、ドライ系固体電解質を用いてマグネシウムイオン二次電池を駆動させたことは、報告されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011−113906号公報
【特許文献2】特開2009−191408号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】「ジャーナル・オブ・パワー・ソーシズ(Journal of Power Sources)」(オランダ)2015年、第293巻、p.831−834
【非特許文献2】「ジャーナル・オブ・ザ・アメリカン・セラミック・ソサイエティー(Journal of the American Ceramic Society)」(米国)2006年、第89巻、p.1861−1869
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、液漏れがなく及び発熱等の少ない蓄電デバイスを提供することであり、特には、液体電解質と同等のレート特性を示す全固体二次電池を提供することである。更に、従来十分な性能の全固体マグネシウムイオン二次電池は得られていなかったため、駆動可能な全固体マグネシウムイオン二次電池を提供することも、本発明の目的の1つである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、表面に溶融塩と分子間相互作用する官能基を有する無機ナノファイバーを新規なフィラーとして用いることにより溶融塩を擬固体化できることを見出した。そして液漏れがなく及び発熱等の少ない蓄電デバイスについて、鋭意研究した結果、驚くべきことに、前記の表面に溶融塩と分子間相互作用する官能基を有する無機ナノファイバー、溶融塩、及び金属イオンを含む電解質を用いることにより、優れた電池性能を示す二次電池及び優れた蓄電性能を示すキャパシタが得られることを見出した。
本発明は、こうした知見に基づくものである。
従って、本発明は、
[1]表面に溶融塩と分子間相互作用する官能基を有する無機ナノファイバー、溶融塩、及び金属イオンを含む電解質、正極活物質を含む正極電極、及び負極活物質を含む負極電極、を含む蓄電デバイス、
[2]前記金属イオンが、リチウムイオン、ナトリウムイオン、マグネシウムイオン、及びカルシウムイオンからなる群から選択される金属イオンである、[1]に記載の蓄電デバイス、
[3]前記無機ナノファイバーが、SiOナノファイバー、TiOナノファイバー、ZnOナノファイバー、Alナノファイバー、ZrOナノファイバー及びそれらの2つ以上の組み合わせからなる群から選択される無機ナノファイバーである、[1]又は[2]に記載の蓄電デバイス、
[4]前記溶融塩が、イミダゾリウムカチオン、ピリジニウムカチオン、ピペリジニウムカチオン、ピロリジニウムカチオン、ホスホニウムカチオン、モルフォリニウムカチオン、スルホニウムカチオン及びアンモニウムカチオンからなる群から選択される少なくとも1つのカチオン、及びカルボン酸アニオン、スルホン酸アニオン、ハロゲンアニオン、ヒドロキシアニオン、イミドアニオン、ホウ素アニオン、シアノアニオン、リンアニオン、硝酸アニオンからなる群から選択される少なくとも1つのアニオンを含む溶融塩である、[1]〜[3]のいずれかに記載の蓄電デバイス、
[5]前記溶融塩が深共晶溶媒である、[1]〜[3]のいずれかに記載の蓄電デバイス、
[6]前記官能基が、アミノ基、水酸基、カルボキシル基及びシロキサン基及びそれらの2つ以上の組み合わせからなる群から選択される官能基である、[1]〜[5]のいずれかに記載の蓄電デバイス、
[7]前記無機ナノファイバーの含有量が0.5〜10.0質量%である、[1]〜[6]のいずれかに記載の蓄電デバイス、及び
[8]非水電解質二次電池、電気二重層キャパシタ又はハイブリッドキャパシタである、[1]〜[7]のいずれかに記載の蓄電デバイス、
に関する。
非特許文献1には、イオン液体ゲルにTiOフィラーを添加した電解質を用いたリチウムイオン二次電池が記載されている。しかしながら、このリチウムイオン二次電池は、充分なレート特性が得られていなかった。
また、特許文献1には、イオン液体に架橋性官能基を有する無機酸化物粒子を添加し、官能基を重合させた電解質を用いたリチウムイオン二次電池が記載されている。しかしながら、特許文献1に記載の二次電池は、架橋性官能基を重合させることによりイオン液体と固体化しており、本願発明とは異なるものであった。
【発明の効果】
【0009】
表面に溶融塩と分子間相互作用する官能基を有する無機ナノファイバー、溶融塩、及び金属イオンを含む電解質を用いることにより、セパレータを必要とせず、電解質漏えいの危険がなく、更に熱的にも電解質成分の分解温度付近まで安定性を維持できる全固体二次電池を得ることができる。また、リチウムイオンを用いたリチウムイオン全固体二次電池においては、液体電解質と同等、又は更に優れたレート特性を得ることができる。特に、高温においては、液体電解質よりも優れたレート特性を示す。イオン液体に従来のフィラーを添加することにより固体化した電解質を用いた場合、伝導度が抑制され電解質として十分な性能を発揮することができないが、前記の電解質は固体化による伝導度の低下が抑制される。また、イオン液体及びセパレータを用いた二次電池と比較した場合、Li金属界面電荷移動抵抗が低く、優れた電極との接触性を得ることができる。更に、前記電解質を用いることにより、マグネシウム二次電池など多価イオン二次電池の駆動も可能である。特に、イオン液体及びセパレータを用いた二次電池と比較しても、優れた充放電容量を得ることができる。また、前記電解質を用いた二次電池は、高温で使用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明のリチウムイオン二次電池(実施例1)の65℃における充放電曲線を示したグラフである。
図2】本発明のリチウムイオン二次電池(実施例1及び2)の3サイクルの放電容量を示したグラフである。
図3】本発明のリチウムイオン二次電池(実施例1及び2)及び従来のイオン液体及びセパレータを用いたリチウムイオン二次電池(比較例1)の25℃、65℃、85℃、及び105℃におけるレート特性を示したグラフである。
図4】本発明のリチウムイオン二次電池(実施例1)及びイオン液体及びセパレータを用いたリチウムイオン二次電池(比較例1)のイオン輸送抵抗(Rs)及びLi金属界面電荷移動抵抗(Rct)を示した図である。
図5】電解質としてEMI[TFSA]−SiOゲルを用いた本発明のマグネシウムイオン二次電池(実施例3)及びイオン液体(EMITFSA)及びセパレータを用いたマグネシウムイオン二次電池(比較例2)の80℃、及び150℃における充放電容量を示したグラフである。
図6】電解質としてN2,2,2,2[TFSA]−SiOゲルを用いた本発明のマグネシウムイオン二次電池(実施例4)及びイオン液体(N2,2,2,2[TFSA])及びセパレータを用いたマグネシウムイオン二次電池(比較例3)の150℃における充放電容量を示したグラフである。
図7】電解質N2,2,2,2[TFSA]−SiOゲルのサイクリックボルタモグラムを示したグラフである。
図8】擬固体化EMITFSA組成物を電解質に用いたキャパシタのサイクリックボルタモグラムを示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の蓄電デバイスは、表面に溶融塩と分子間相互作用する官能基を有する無機ナノファイバー、溶融塩、及び金属イオンを含む電解質、正極活物質を含む正極電極、及び負極活物質を含む負極電極を含む限りにおいて、特に限定されるものではないが、例えば非水電解質二次電池、電気二重層キャパシタ、又はハイブリッドキャパシタを挙げることができる。
【0012】
《電解質》
本発明の蓄電デバイスにおいて用いる電解質は、表面に溶融塩と分子間相互作用する官能基を有する無機ナノファイバー、溶融塩、及び金属イオンを含む。前記電解質は、無機ナノファイバーを含むことにより、粘度が上昇し、擬固体化しているものである。本明細書においては、前記電解質を便宜的に擬固体化電解質、又は固体電解質と称することがある。
【0013】
(溶融塩)
溶融塩は、カチオン及びアニオンからなる塩であり、高いイオン伝導率、広い電位窓、難揮発性、難燃性、及び熱安定性などの性質を示すものである。
本発明で用いることのできる溶融塩は、液体の状態になることができる限りにおいて、限定されるものではないが、例えばイオン液体を挙げることができる。本明細書において、イオン液体とは、融点が150℃以下の溶融塩を意味する。しかしながら、本明細書において、溶融塩は融点が150℃を超えるものを含む。また、明細書における溶融塩は、液体の状態となることができ、且つ結晶状態よりも柔軟性を持った固体状態になることができるプラスチック・クリスタル(柔粘性結晶)を含む。溶融塩の融点は、特に限定されるものではないが、本発明においては、−95〜400℃の溶融塩を用いることができる。溶融塩の融点の下限は、−95℃程度であるが、溶融塩と分子間相互作用する官能基を有する無機ナノファイバーは、0℃以下でも溶融塩の粘度を増加させることができる。また、400℃においても、官能基を有する無機ナノファイバーは、その機能を維持することが可能であり、溶融塩の粘度を増加させることができる。従って、本発明の溶融塩組成物は、−95〜400℃の範囲で、機能することができる。
【0014】
カチオン
前記溶融塩を構成するカチオンは、特に限定されるものではないが、イミダゾリウムカチオン、ピリジニウムカチオン、ピペリジニウムカチオン、ピロリジニウムカチオン、ホスホニウムカチオン、モルフォリニウムカチオン、スルホニウムカチオン又はアンモニウムカチオンを挙げることができる。
具体的なカチオンとして、1−エチルピリジニウムカチオン、1−ブチルピリジニウムカチオン、1−へキシルピリジニウムカチオン、1−ブチル−3−メチルピリジニウムカチオン、1−ブチル−4−メチルピリジニウムカチオン、1−へキシル−3−メチルピリジニウムカチオン、1−ブチル−3,4−ジメチルピリジニウムカチオン、1−エチル−3−ヒドロキシメチルピリジニウムカチオン、1,1−ジメチルピロリジニウムカチオン、1−エチル−1−メチルピロリジニウムカチオン、1−メチル−1−プロピルピロリジニウムカチオン、1−メチル−1−ブチルピロリジニウムカチオン、1−メチル−1−ペンチルピロリジニウムカチオン、1−メチル−1−へキシルピロリジニウムカチオン、1−メチル−1−ヘプチルピロリジニウムカチオン、1−エチル−1−プロピルピロリジニウムカチオン、1−エチル−1−ブチルピロリジニウムカチオン、1−エチル−1−ペンチルピロリジニウムカチオン、1−エチル−1−へキシルピロリジニウムカチオン、1−エチル−1−へプチルピロリジニウムカチオン、1,1−ジプロピルピロリジニウムカチオン、1−プロピル−1−ブチルピロリジニウムカチオン、1,1−ジブチルピロリジニウムカチオン、1−プロピルピペリジニウムカチオン、1−ペンチルピペリジニウムカチオン、1,1−ジメチルピペリジニウムカチオン、1−メチル−1−エチルピペリジニウムカチオン、1−メチル−1−プロピルピペリジニウムカチオン、1−メチル−1−ブチルピペリジニウムカチオン、1−メチル−1−ペンチルピペリジニウムカチオン、1−メチル−1−ヘキシルピペリジニウムカチオン、1−メチル−1−へプチルピペリジニウムカチオン、1−エチル−1−プロピルピペリジニウムカチオン、1−エチル−1−ブチルピペリジニウムカチオン、1−エチル−1−ペンチルピペリジニウムカチオン、1−エチル−1−ヘキシルピペリジニウムカチオン、1−エチル−1−へプチルピペリジニウムカチオン、1,1−ジプロピルピペリジニウムカチオン、1−プロピル−1−ブチルピペリジニウムカチオン、1,1−ジブチルピペリジニウムカチオン、2−メチル−1−ピロリンカチオン、1−エチル−2−フェニルインドールカチオン、1,2−ジメチルインドールカチオン、1−エチルカルバゾールカチオン、又はN−エチル−N−メチルモルフォリニウムカチオンを挙げることができる。
【0015】
別の具体的なカチオンとして、1,3−ジメチルイミダゾリウムカチオン、1,3−ジエチルイミダゾリウムカチオン、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムカチオン、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムカチオン、1−へキシル−3−メチルイミダゾリウムカチオン、1−オクチル−3−メチルイミダゾリウムカチオン、1−デシル−3−メチルイミダゾリウムカチオン、1−ドデシル−3−メチルイミダゾリウムカチオン、1−テトラデシル−3−メチルイミダゾリウムカチオン、1,2−ジメチル−3−プロピルイミダゾリウムカチオン、1−エチル−2,3−ジメチルイミダゾリウムカチオン、1−ブチル−2,3−ジメチルイミダゾリウムカチオン、1−へキシル−2,3−ジメチルイミダゾリウムカチオン、1−(2−ヒドロキシエチル)−3−メチルイミダゾリウムカチオン、1−アリル−3−メチルイミダゾリウムカチオン、1,3−ジメチル−1,4,5,6−テトラヒドロピリミジニウムカチオン、1,2,3−トリメチル−1,4,5,6−テトラヒドロピリミジニウムカチオン、1,2,3,4−テトラメチル−1,4,5,6−テトラヒドロピリミジニウムカチオン、1,2,3,5−テトラメチル−1,4,5,6−テトラヒドロピリミジニウムカチオン、1,3−ジメチル−1,4−ジヒドロピリミジニウムカチオン、1,3−ジメチル−1,6−ジヒドロピリミジニウムカチオン、1,2,3−トリメチル−1,4−ジヒドロピリミジニウムカチオン、1,2,3−トリメチル−1,6−ジヒドロピリミジニウムカチオン、1,2,3,4−テトラメチル−1,4−ジヒドロピリミジニウムカチオン、又は1,2,3,4−テトラメチル−1,6−ジヒドロピリミジニウムカチオンを挙げることができる。
【0016】
更に、別の具体的なカチオンとして、1−メチルピラゾリウムカチオン、3−メチルピラゾリウムカチオン、1−エチル−2−メチルピラゾリニウムカチオン、1−エチル−2,3,5−トリメチルピラゾリウムカチオン、1−プロピル−2,3,5−トリメチルピラゾリウムカチオン、1−ブチル−2,3,5−トリメチルピラゾリウムカチオン、1−エチル−2,3,5−トリメチルピラゾリニウムカチオン、1−プロピル−2,3,5−トリメチルピラゾリニウムカチオン、又は1−ブチル−2,3,5−トリメチルピラゾリニウムカチオンを挙げることができる。
【0017】
更に、別の具体的なカチオンとしてテトラメチルアンモニウムカチオン、テトラエチルアンモニウムカチオン、テトラブチルアンモニウムカチオン、テトラペンチルアンモニウムカチオン、テトラヘキシルアンモニウムカチオン、テトラヘプチルアンモニウムカチオン、トリエチルメチルアンモニウムカチオン、トリブチルエチルアンモニウムカチオン、トリメチルデシルアンモニウムカチオン、N,N−ジエチル−N−メチル−N−(2−メトキシエチル)アンモニウムカチオン、グリシジルトリメチルアンモニウムカチオン、トリメチルスルホニウムカチオン、トリエチルスルホニウムカチオン、トリブチルスルホニウムカチオン、トリヘキシルスルホニウムカチオン、ジエチルメチルスルホニウムカチオン、ジブチルエチルスルホニウムカチオン、ジメチルデシルスルホニウムカチオン、テトラメチルホスホニウムカチオン、テトラエチルホスホニウムカチオン、テトラブチルホスホニウムカチオン、テトラヘキシルホスホニウムカチオン、テトラオクチルホスホニウムカチオン、トリエチルメチルホスホニウムカチオン、トリブチルエチルホスホニウムカチオン、トリメチルデシルホスホニウムカチオン、又はジアリルジメチルアンモニウムカチオンを挙げることができる。
【0018】
アニオン
前記溶融塩を構成するアニオンは、特に限定されるものではないが、カルボン酸アニオン、スルホン酸アニオン、ハロゲンアニオン、ヒドロキシアニオン、イミドアニオン、ホウ素アニオン、シアノアニオン、リンアニオン、硝酸アニオンを挙げることができる。
なお、「イミド」は「アミド」と称することもあり、本明細書においては両方の呼称を用いることがある。
具体的なアニオンとしては、Cl、Br、I、AlCl、AlCl、BF、PF、ClO、NO、CHCOO、CFCOO、CHSO、CFSO、(CFSO、(CFSO、AsF、SbF、NbF、TaF、F(HF)、(CN)、CSO、(CSO、CCOO、(CFSO)(CFCO)N、SCN、CSO、CSO、CSO、(FSO、(CSO、(CSO、(CHO)PO、(CO)PO、(CN)、(CN)、CHOSO、COSO、COSO、n−C13OSO、n−C17OSO、CH(OCOSO、(CPF、又はCHSOを挙げることができる。前記アニオンを含む化合物として、例えばテトラフルオロボレート(HBF)、ヘキサフルオロホスフェート(HPF)、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(CHFNO)、又はビス(フルオロスルホニル)イミド(NO)を挙げることができる。
【0019】
本発明で用いられる溶融塩としては、限定されるものではないが、前記カチオン及びアニオンを組み合わせたものと用いることができる。例えば、塩化1−エチル−3−メチルイミダゾリウム、臭化1−エチル−3−メチルイミダゾリウム、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロスルホニル)イミド、ギ酸1−エチル−3−メチルイミダゾリウム、酢酸1−エチル−3−メチルイミダゾリウム、塩化1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム、臭化1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムテトラフルオロボレ−ト、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロスルホニル)イミド、チオシアン酸1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム、塩化3−メチル−オクチルイミダゾリウム、塩化3−メチル−ヘキサデシルイミダゾリウム、塩化−N−エチルピリジニウム、臭化−N−エチルピリジニウム、塩化−N−ブチルピリジニウム、臭化−N−ブチルピリジニウム、塩化−N−オクチルピリジニウム、塩化4−メチル−N−ブチルピリジニウム、臭化4−メチル−N−ブチルピリジニウム、N−メチル−N−プロピルピロリジニウムビス(トリフルオロスルホニル)イミド、ヨウ化1,1−ジメチルピロリジニウム、塩化1−ブチル−1−メチルピロリジニウム、塩化1−へキシル−1−メチルピロリジニウム、塩化1−メチル−1−オクチルピロリジニウム、N−ブチル−N−メチルピロリジニウムビス(トリフルオロスルホニル)イミド、N−メチル−N−プロピルピペリジニウムビス(トリフルオロスルホニル)イミド、塩化トリへキシル(テトラデシル)ホスホニウム、トリへキシル(テトラデシル)ホスホニウムテトラフルオロボレート、N,N−ジエチルメチル−(2−メトキシエチル)アンモニウムビス(トリフルオロスルホニル)イミド、N,N−ジエチルメチル−(2−メトキシエチル)アンモニウムテトラフルオロボレート、N,N−ジエチルメチル−(2−メトキシエチル)アンモニウムヘキサフルオロホスフェート、塩化N,N−ジエチルメチル−(2−メトキシエチル)アンモニウム、臭化N,N−ジエチルメチル−(2−メトキシエチル)アンモニウム、ギ酸N,N−ジエチルメチル−(2−メトキシエチル)アンモニウム、酢酸N,N−ジエチルメチル−(2−メトキシエチル)アンモニウム等を挙げることができる。
【0020】
前記溶融塩として、深共晶溶媒(deep eutectic solvent)を用いることができる。深共晶溶媒とは、イオン性の固体と共有結合性の固体を混合することで液状となるものである。すなわち、それぞれの成分の融点より低い融点を有する共晶物を形成する混合物を含むイオン性溶媒である。
【0021】
(溶融塩と分子間相互作用する官能基を有する無機ナノファイバー)
本発明において用いる無機ナノファイバーは、無機ナノファイバーに溶融塩と分子間相互作用する官能基を有し、そして溶融塩に添加することにより溶融塩の粘性を向上させることができる限りにおいて、限定されるものではない。前記官能基は、無機ナノファイバーが元来有するものでもよく、導入された官能基でもよい。
無機ナノファイバーは、限定されるものではないが、例えばSiOナノファイバー、TiOナノファイバー、ZnOナノファイバー、Alナノファイバー、ZrOナノファイバー又はそれらの組み合わせを挙げることができる。
官能基は、限定されるものではないが、例えばアミノ基、水酸基、カルボキシル基、シロキサン基、又はそれらの組み合わせを挙げることができる。
従って、官能基を有する無機ナノファイバーとしては、アミノ基、水酸基、カルボキシル基、若しくはシロキサン基を有するSiOナノファイバー、アミノ基、水酸基、カルボキシル基、若しくはシロキサン基を有するTiOナノファイバー、アミノ基、水酸基、カルボキシル基、若しくはシロキサン基を有するZnOナノファイバー、アミノ基、水酸基、カルボキシル基、若しくはシロキサン基を有するAlナノファイバー、アミノ基、水酸基、カルボキシル基、若しくはシロキサン基を有するZrOナノファイバー又はそれらの組み合わせを挙げることができる。
【0022】
本明細書において、「溶融塩と分子間相互作用する官能基」とは、水素結合や静電引力を介して、溶融塩中のカチオンあるいはアニオンと相互作用できる官能基のことを意味する。
【0023】
官能基を有する無機ナノファイバーは、以下の公知の工程(例えば、非特許文献2)によって製造することができる。
まず、金属酸化物の前駆体をゾルゲル反応(例えば、加水分解および重縮合反応)により増粘し、次いで電界紡糸法を用いて繊維を形成させる。ゾルゲル反応に使用できる金属酸化物前駆体は、限定されるものではないが、例えば、SiO、TiO、ZnO、Al、ZrOなどの前駆体となる金属アルコキシドを挙げることができる。これらの金属アルコキシドのゾルゲル反応の条件を適宜調節することによって、金属酸化物の高分子量体を得ることができる。電界紡糸の際に、紡糸液粘度の調整するために、ポリエチレンオキシド、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドンなどの水溶性高分子を添加してもよい。電界紡糸法によって得られたナノファイバーについては、焼成処理を行った後に、表面に官能基を導入する表面処理を行うことによって、官能基を有する無機ナノファイバーを得ることができる。官能基の導入方法としては、例えば公知の方法(例えば、非特許文献4)を利用して、金属酸化物の表面にアンカーとしてホスホン酸やアルコキシシランを用いてアルキル鎖などの側鎖を導入し、その末端にアミノ基、カルボキシル基、水酸基、シラノール基を導入することができる。
【0024】
(アミノ基を有するSiOナノファイバー)
更に、官能基を有する無機ナノファイバーのうち、アミノ基を有するSiOナノファイバーは、特許文献2に記載のシリカ含有繊維の紡糸方法によって製造することもできる。
具体的には、成分(a)テトラアルコキシシラン及び/又はその縮合物、成分(b)アミノ基を含むシラン化合物、及び成分(c)ホウ酸、並びに必要に応じて成分(d)有機酸及び/又は成分(e)電解質を混合し、ゾル状紡糸液を作製する。このゾル状紡糸液を、電界紡糸法などによって紡糸することによって、アミノ基を有するSiOナノファイバーを得ることができる。
【0025】
テトラアルコキシシランのアルコキシ基としては、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、及びそれ以上の炭素数を有するアルコキシ基を挙げることができる。具体的なテトラアルコキシシランとしては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトラブトキシシランなどを挙げることができる。テトラアルコキシシランの含有量は、好ましくは30〜80重量%である。
【0026】
アミノ基を含むシラン化合物に含まれる有機基としては、モノアミノメチル、ジアミノメチル、トリアミノメチル、モノアミノエチル、ジアミノエチル、トリアミノエチル、テトラアミノエチル、モノアミノプロピル、ジアミノプロピル、トリアミノプロピル、テトラアミノプロピル、モノアミノブチル、ジアミノブチル、トリアミノブチル、テトラアミノブチル、及び、これらよりも炭素数の多いアルキル基またはアリール基を有する有機基を挙げることができる。アミノ基を含むシラン化合物の含有量は、好ましくは10〜40重量%である。
【0027】
ホウ酸の含有量は、好ましくは0.1〜10重量%である。紡糸方法も特に限定されず、本分野において公知の方法を用いることができる。
【0028】
(溶融塩と無機ナノファイバーとの重量比)
前記電解質に含まれる無機ナノファイバーの含有量は、溶融塩の粘度が上昇し、擬固体化する限りにおいて限定されるものでないが、下限は好ましくは0.5重量%であり、より好ましくは1.0重量%であり、更に好ましくは1.5重量%である。含有量の上限は、特に限定されるものではないが、好ましくは10.0重量%以下であり、より好ましくは9.0重量%以下であり、更に好ましくは8.0重量%以下である。
前記無機ナノファイバーは、少ない含有量で溶融塩の粘度を増加させ、更に擬固体化又はゲル化することができる。すなわち、少量の無機ナノファイバーで、3次元ネットワークを形成し、安定な擬固体化状態、又はゲル化状態を維持することができる。無機ナノファイバーの含有量が少ないために、溶融塩のイオン伝導率に与える影響が少なく、前記電解質は、高いイオン伝導効率を示すことができる。
ここで、電解質の温度が150℃以下の場合、比較的少量の無機ナノファイバーによって、溶融塩の濃度を上昇させ、ゲル化又は擬固体化させることができる。従って、無機ナノファイバーの含有量の上限は、例えば5.0重量%であり、好ましくは4.5重量%であり、より好ましくは4.0重量%である。しかしながら、電解質の温度が高くなると溶融塩の粘度が低下する。従って、溶融塩の温度が高い場合、無機ナノファイバーの含有量が高い方が好ましい。
【0029】
(電解質の粘度)
電解質の粘度は、二次電池等の蓄電デバイスから、電解質が漏出しない粘度であれば、特に限定されるものではないが、例えば10,000Pa・s以上であり、好ましくは100,000Pa・s以上であり、更に好ましくは200,000Pa・s以上である。電解質の粘度が10,000Pa・s以上であることにより、電解質が擬固体化し、セパレータを必要とせず、電解質漏えいの危険性のない電解質として用いることができる。
【0030】
(金属イオン)
前記電解質は、金属イオンを含む。金属イオンは、蓄電デバイスに用いられる金属イオンを適宜選択することができるが、例えばリチウムイオン、カルシウムイオン、ナトリウムイオン、又はマグネシウムイオンを挙げることができる。
前記金属イオンは、金属塩の形態で電解質に添加することができる。すなわち、リチウム塩、カルシウム塩、ナトリウム塩、又はマグネシウム塩の形態で、前記電解質に添加することができる。
【0031】
リチウム塩としては、限定されるものではないが、炭素原子をアニオンに含まない無機リチウム塩、又は炭素原子をアニオンに含む有機リチウム塩を挙げることができる。
無機リチウム塩としては、例えばLiPF、LiBF、LiClO、LiAsF、LiSiF、LiSbF、LiAlO、LiAlCl、又はLi1212−b(bは0〜3の整数)を挙げることができる。
また、有機リチウム塩としては、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)アミド(LiTFSA)、LiN(SOCF、LiN(SO等のLiN(SO2m+1(mは1〜8の整数)で表される有機リチウム塩;LiPF(CF)等のLiPF(C2p+16−n(nは1〜5の整数、pは1〜8の整数)で表される有機リチウム塩;LiBF(CF)等のLiBF(C2s+14−q(qは1〜3の整数、sは1〜8の整数)で表される有機リチウム塩;LiB(Cで表されるリチウムビス(オキサラト)ボレート(LiBOB);LiBF(C)で表されるリチウムオキサラトジフルオロボレート(LiODFB)に代表されるハロゲン化LiBOB;LiB(Cで表されるリチウムビス(マロネート)ボレート(LiBMB);LiPF(C)で表されるリチウムテトラフルオロオキサラトフォスフェートを挙げることができる。
【0032】
ナトリウム塩としては、NaN(CFSOSodium bis(trifluoromethane sulfonyl)imide)、又はNaClOを挙げることができる。更に、NaPF、NaTFSA、NaAsF、NaSbF、NaBF、NaCFSO、低級脂肪族カルボン酸ナトリウム塩、NaAlCl、NaNO、NaOH、NaCl、NaSO及びNaS、NaAsF、NaTaF、Na10Cl10、NaCFSO、Na(CFSON、又はNa(CSONを挙げることができる。
【0033】
マグネシウム塩としては、塩化マグネシウム、臭化マグネシウム、又はヨウ化マグネシウムなどのハロゲン化マグネシウム、過塩素酸マグネシウム、テトラフルオロホウ酸マグネシウム、ヘキサフルオロリン酸マグネシウム、又はヘキサフルオロヒ酸マグネシウムなどのマグネシウム無機塩化合物;ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドマグネシウム、安息香酸マグネシウム、サリチル酸マグネシウム、フタル酸マグネシウム、酢酸マグネシウム、プロピオン酸マグネシウム、又はグリニャール試薬などのマグネシウム有機塩化合物を挙げることができる。
【0034】
カルシウム塩としては、塩化カルシウム、臭化カルシウム、又はヨウ化カルシウムなどのハロゲン化カルシウム、過塩素酸カルシウム、テトラフルオロホウ酸カルシウム、ヘキサフルオロリン酸カルシウム、又はヘキサフルオロヒ酸カルシウムなどのカルシウム無機塩化合物;ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドカルシウム、安息香酸カルシウム、サリチル酸カルシウム、フタル酸カルシウム、酢酸カルシウム、又はプロピオン酸カルシウムなどのカルシウム有機塩化合物を挙げることができる。
【0035】
《非水電解質二次電池》
非水電解質二次電池は、非水電解質を用いる二次電池であり、限定されるものではないが、リチウムイオン二次電池、ナトリウムイオン二次電池、マグネシウムイオン二次電池、又はカルシウムイオン二次電池を挙げることができる。
なお、本発明に用いる電解質は、無機ナノファイバーを含むことによって、擬固体化した擬固体化電解質である。従って、擬固体化電解質を使用する非水電解質二次電池は、実質的に液体電解質を用いないものであり、本明細書においては、本発明の非水電解質二次電池を便宜的に全固体二次電池と称する。
【0036】
正極活物質は、伝導イオン種、すなわち金属イオンに応じて、適宜選択すればよい。正極電極は、限定されるものではないが、導電材及び/又は結合剤(バインダー)を含有していてもよい。導電材としては、正極電極の導電性を向上させることができれば特に限定されるものではないが、例えば、導電性炭素材料が挙げられる。導電性炭素材料としては特に限定されないが、反応場の面積や空間の観点から、高比表面積を有する炭素材料が好ましい。具体的には、カーボンブラック(例えば、アセチレンブラック、ケッチェンブラック等)、活性炭、炭素繊維(例えば、カーボンナノチューブ(CNT)、カーボンナノファイバー、気相法炭素繊維等)等を挙げることができる。また、結合剤(バインダー)としては、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、又はポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等を挙げることができる。更に、通常、正極電極は集電体を有している。集電体の材料としては、例えば、アルミニウム、SUS、ニッケル、鉄、カーボン及びチタン等を挙げることができる。
【0037】
負極活物質としては、伝導イオン種、すなわち金属イオンを吸蔵、放出可能なものであれば特に限定されない。
負極電極は、必要に応じて導電材及び/又は結合剤(バインダー)を含有していてもよい。導電材としては、負極電極の導電性を向上させることができれば特に限定されるものではないが、例えば、導電性炭素材料が挙げられる。導電性炭素材料としては特に限定されないが、反応場の面積や空間の観点から、高比表面積を有する炭素材料が好ましい。具体的には、カーボンブラック(例えば、アセチレンブラック、ケッチェンブラック等)、活性炭、炭素繊維(例えば、カーボンナノチューブ(CNT)、カーボンナノファイバー、気相法炭素繊維等)等を挙げることができる。また、結合剤(バインダー)としては、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、又はポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等を挙げることができる。通常、負極電極は、集電体を有している。集電体の材料としては、例えば、SUS、ニッケル、銅及びカーボン等を挙げることができる。
【0038】
(リチウムイオン二次電池)
リチウムイオン二次電池は、電解質中のリチウムイオンが電気伝導を担う二次電池である。本発明のリチウムイオン二次電池の電解質としては、前記リチウム塩を含む電解質を挙げることができる。
リチウムイオン二次電池の正極活物質としては、例えば、ニッケルコバルトマンガン酸リチウム(LiNiCo1−y−xMn)、LiCoMn、LiCoMnO、LiNiCo、LiNiMn、LiNiMn、コバルト酸リチウム(LiCoO)、ニッケル酸リチウム(LiNiO)、マンガン酸リチウム(LiMnO)、LiMn、鉄オリビン(LiFePO)、LiFe(PO、コバルトオリビン(LiCoPO)、ニッケルオリビン(LiNiPO)、マンガンオリビン(LiMnPO)、チタン酸リチウム(LiTi12)、リン酸バナジウムリチウム(Li(PO)[LVPと称することがある。]等のリチウム遷移金属化合物、銅シュブレル(CuMo)、硫化鉄(FeS)、硫化コバルト(CoS)、硫化ニッケル(NiS)等のカルコゲン化合物などが挙げられる。
負極活物質としては、例えば、メソカーボンマイクロビーズ(MCMB)、高配向性グラファイト(HOPG)、ハードカーボン、ソフトカーボン等のカーボン材料;チタン酸リチウム(LiTi12)等のリチウム遷移金属酸化物;LaNiSn等の金属合金等を挙げることができる
【0039】
(ナトリウムイオン二次電池)
ナトリウムイオン二次電池は、電解質中のナトリウムイオンが電気伝導を担う二次電池である。本発明のナトリウムイオン二次電池の電解質としては、前記ナトリウム塩を含む電解質を挙げることができる。
ナトリウムイオン二次電池の正極活物質としては、ナトリウムイオンと層間化合物を形成するO型またはP型層状構造を有する化合物や、ポリアニオン型の化合物が好ましい。例えば、ナトリウム含有遷移金属酸化物またはナトリウム含有遷移金属リン酸塩が挙げられる。ナトリウム含有遷移金属酸化物としては、例えば、亜クロム酸ナトリウム(NaCrO)を挙げることができる。亜クロム酸ナトリウムは、Naの一部あるいはCrの一部または全部が他元素で置換されていてもよく、例えば、一般式(2):Na1−xCr1−y(0≦x≦2/3、0≦y≦1、MおよびMは、それぞれ独立にCrおよびNa以外の金属元素である)で表される化合物でもよい。ナトリウム含有遷移金属酸化物として、更にNaFeO、NaNi1/2Mn1/2、NaFe0.4Ni0.3Mn0.3を挙げることができる。ナトリウム含有遷移金属リン酸塩としては、一般式(3):NaPO(1≦a≦2、0≦b≦2、MはNa以外の金属元素である)で表される化合物が挙げられる。Mは、例えばFe、Co、NiおよびMnよりなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。具体的には、NaFePO、NaFePOF、NaVPOF、NaCoPO、NaNiPO、NaMnPOなどが挙げられる。
【0040】
(マグネシウムイオン二次電池)
マグネシウムイオン二次電池は、電解質中のマグネシウムイオンが電気伝導を担う二次電池である。本発明のマグネシウムイオン二次電池の電解質としては、前記マグネシウム塩を含む電解質を挙げることができる。
マグネシウムイオン二次電池の正極活物質としては、マグネシウムを可逆的に保持および放出することが可能な物質であれば限定されるものではない。例えば、マグネシウムカチオンを可逆的に保持および放出することができる硫化物、マグネシウムカチオンを可逆的に保持および放出することができる酸化物、マグネシウムカチオンを可逆的に保持および放出することができる有機化合物などが挙げることができる。具体的には硫化モリブデン、酸化マンガンなどが挙げることができる。
負極活物質は、金属マグネシウムまたはマグネシウム合金を含むものが好ましい。マグネシウム合金としては、例えば、マグネシウムとアルミニウムとの合金、マグネシウムと亜鉛との合金、マグネシウムとマンガンとの合金などを挙げることできる。
【0041】
(カルシウムイオン二次電池)
カルシウムイオン二次電池は、電解質中のカルシウムイオンが電気伝導を担う二次電池である。本発明のカルシウムイオン二次電池の電解質としては、前記カルシウム塩を含む電解質を挙げることができる。
カルシウムイオン二次電池の正極活物質としては、カルシウムを可逆的に保持および放出することが可能な物質であれば限定されるものではない。例えば、カルシウムカチオンを可逆的に保持および放出することができる硫化物、カルシウムカチオンを可逆的に保持および放出することができる酸化物、カルシウムカチオンを可逆的に保持および放出することができる有機化合物などが挙げることができる。具体的には硫化モリブデン、酸化マンガンなどが挙げることができる。
負極活物質は、金属カルシウムまたはカルシウム合金を含むものが好ましい。カルシウム合金としては、例えば、カルシウムとアルミニウムとの合金、カルシウムと亜鉛との合金、カルシウムとマンガンとの合金などを挙げることできる。
【0042】
《電気二重層キャパシタ》
本発明の電気二重層キャパシタにおいては、本発明の「電解質」を用いる以外は、従来電気二重層キャパシタに使用されていた材料を制限なく、用いることができる。すなわち、従来使用されていた正極活物質、及び負極活物質などを制限なく用いることができる。
正極活物質として、活性炭、カーボンウィスカ、カーボンナノチューブ、グラフェン、グラフェンナノリボン、又はグラファイトを挙げることができる。正極電極は、正極活物質以外に、導電助剤、バインダー、及び/又は集電体を含んでもよい。
また、負極電極としては、前記正極電極と同じ構成のものを用いることができる。
【0043】
《ハイブリッドキャパシタ》
本発明のハイブリッドキャパシタとしては、限定されるものではないが、リチウムイオンキャパシタ、ナトリウムイオンキャパシタ、カルシウムイオンキャパシタ、又はマグネシウムイオンキャパシタを挙げることができる。本発明のハイブリッドキャパシタにおいては、本発明の「電解質」を用いる以外は、従来ハイブリッドキャパシタに使用されていた材料を制限なく、用いることができる。すなわち、従来使用されていた正極活物質、及び負極活物質などを制限なく用いることができる。
【0044】
本発明のハイブリッドキャパシタの正極活物質としては、リチウムイオンなどのアルカリ金属イオンまたはアルカリ土類金属イオンとアニオンを可逆的に担持可能なものを用いることができる。具体的には、活性炭、カーボンウィスカ、又はグラファイトを挙げることができる。また、正極電極は、正極活物質以外に、導電助剤、バインダー、及び/又は集電体を含んでもよい。
ハイブリッドキャパシタの負極活物質としては、前記非水電解質二次電池の項に記載の負極活物質を用いることができる。また、負極電極は、負極活物質以外に、導電助剤、バインダー、及び/又は集電体を含んでもよい。
【実施例】
【0045】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、これらは本発明の範囲を限定するものではない。
【0046】
《製造例1》
本製造例では、アミノ基を有するシリカ含有繊維(SiOナノファイバー)を製造した。テトラエトキシシラン(TEOS)オリゴマー61重量%、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン31重量%、ホウ酸8重量%を混合し、粘性ゾル化させた。2日間放置した後に、得られたゾル状紡糸液を、電界紡糸法により紡糸し、アミノ基を有するSiOナノファイバーを得た。電界紡糸は、印加電圧24kV、電極基板間距離18cmで実施した。得られた繊維のフィラメント直径は、400nmであった。
【0047】
《製造例2》
得られた繊維のフィラメント直径は、1000nmとなるように調整した以外は、製造例1の操作を繰り返して、SiOナノファイバーを得た。
【0048】
《実施例1》
本実施例では、リチウムイオンを含む電解質を調製し、それを用いてリチウムイオン二次電池を作製した。
1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)アミド(EMITFSA)にリチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)アミド(LiTFSA)を25重量%加えて完全に溶解するまで撹拌した。その混合物に、製造例1で得られたSiOナノファイバーを、3重量%添加して、EMITFSA組成物を作製した。具体的には、10mLバイアル瓶にEMITFSAを3mL用意し、これに製造例1で得られたSiOナノファイバーを0.5重量%ずつ添加した。SiOナノファイバーを添加した後、マグネチックスターラーで混合物が均一になるまで十分に撹拌した。SiOナノファイバーの添加量の増加に伴って、EMITFSA組成物の粘度は増加していった。この操作をEMITFSA組成物がゲル化するまで繰り返し行い、擬固体化電解質を得た。なお、これらの操作はすべてアルゴンガス雰囲気下で行った。
【0049】
正極活物質としてリン酸鉄リチウム(LiFePO)、結着剤としてポリイミド、導電助剤としてアセチレンブラックを重量比84:8:8で混合することによって合剤正極を作製し、R2032コインセルを用いて合剤正極上に擬固体化電解質を塗布した後に負極としてLi金属箔を設置し、コインセルかしめ器を用いてパッキングを行い、二次電池を作製した。
【0050】
《実施例2》
製造例1で得られた直径400nmのSiOナノファイバーに代えて、製造例2で得られた直径1000nmのSiOナノファイバーを用いたことを除いては、実施例1の操作を繰り返して、二次電池を作製した。
【0051】
《比較例1》
R2032コインセルを用いて合剤正極上に設置したセパレータ(ポリマー)に1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)アミド(EMITFSA)にリチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)アミド(LiTFSA)を25重量%加えて完全に溶解するまで撹拌した混合物を含浸させた電解質を設置した上に、負極としてLi金属箔を設置し、コインセルかしめ器を用いてパッキングを行い、二次電池を作製した。
【0052】
《実施例3》
本実施例では、マグネシウムイオンを含む電解質を調製し、それを用いてマグネシウムイオン二次電池を作製した。
EMITFSAにマグネシウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)アミド(Mg(TFSA))を0.5mol/L加えて完全に溶解するまで撹拌した後、SiOナノファイバーを3.5重量%添加したことを除いては、実施例1の操作を繰り返して、擬固体化電解質を得た。
【0053】
正極活物質として五酸化バナジウム(V)、結着剤としてポリイミド、導電助剤としてカーボンブラック(ケッチェンブラック)とカーボンナノチューブ(VGCF)を重量比90:5:3:2で混合したものをカーボンコートしたアルミニウム板上に塗布することで正極を作製し、ステンレス製2極式セル(宝泉株式会社製)を用いて、正極上に実施例3で作製した擬固体化電解質を塗布後に、負極としてグローブボックス内で研磨したマグネシウム金属を設置し、コインセルかしめ器を用いてパッキングを行い、二次電池を作製した。
【0054】
《比較例2》
ステンレス製2極式セル(宝泉株式会社製)を用いて、正極上に設置したガラスセパレータにEMITFSAにマグネシウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)アミド(Mg(TFSA))を0.5mol/L加えて完全に溶解するまで撹拌した混合物を含浸させた電解質を設置した上に負極としてグローブボックス内で研磨したマグネシウム金属を設置し、コインセルかしめ器を用いてパッキングを行い、二次電池を作製した。
【0055】
《実施例4》
本実施例では、イオン液体としてテトラエチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)アミド(N2,2,2,2TFSA)を用いて、マグネシウムイオン二次電池を作製した。
EMITFSAに代えて、N2,2,2,2TFSAを用いたことを除いては、実施例3の操作を繰り返して、マグネシウムイオン二次電池を作製した。ただし、N2,2,2,2TFSAにマグネシウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)アミド(Mg(TFSA))を0.5mol/L加えて完全に溶解するまで撹拌した後、SiOナノファイバーを3.5重量%添加する工程は全て150℃の加熱条件下で行った。
【0056】
《比較例3》
ステンレス製2極式セル(宝泉株式会社製)を用いて、正極上に設置した、150℃の加熱条件下でガラスセパレータにN2,2,2,2TFSAにMg(TFSA)を0.5mol/L加えて完全に溶解するまで撹拌した混合物を含浸させた電解質を設置し、その上に負極としてグローブボックス内で研磨したマグネシウム金属を設置し、コインセルかしめ器を用いてパッキングを行い、二次電池を作製した。
【0057】
《実施例5》
2電極セル(宝泉株式会社製HSフラットセル)の正極および負極に活性炭電極シート(日本バルカー工業製)を使用し、電解質として、EMITFSAに製造例1で得られたSiOナノファイバーを3重量%添加して得られた擬固体化EMITFSA組成物を用いた電気二重層キャパシタを作製し、bio-logic社製のポテンショスタット/ガルバノスタット(SP−150)を用いてサイクリックボルタンメトリーの測定を行った。活性炭電極は使用前に150℃で3時間の減圧乾燥後、EMITFSAに12時間浸漬した後に用いた。擬固体化電解質のガイドは厚み1mmのシリコンゴムを用いた。
3.9Vの電位窓において安定なキャパシタの駆動を確認し、走査速度20mV/秒において電極総重量当たり139F/gの静電容量が得られた(図8)。キャパシタの作製と測定は全てアルゴンガス雰囲気下で行った。
【0058】
《リチウムイオン二次電池の充放電試験》
コンピューター制御ポテンショスタット(bio−logic社製のVMP3)を用いて、定電流充放電(0.1C相当)を充電カットオフ4V、放電カットオフ2.5Vの条件で3サイクル行った。
図1は65℃ 0.1Cで3サイクル作動させたものであるが、この温度までは、いずれの電解質も安定して作動することがわかった。また、作動温度を増加させた場合(図2)、本発明による電解質のみ高温でも安定に作動することを示す。
【0059】
《レート特性》
充放電試験と同じ装置により、充放電電流値を可変させながら充放電測定を行った。25℃においては、0.1C、1.0C、2.0C、5.0C、10C、65℃においては、0.1C、1.0C、2.0C、5.0C、10C、20C、85℃、105℃においては、1.0C、2.0C、5.0C、10C、15Cに電流値をそれぞれ設定し充放電を行った。
図3に示すように、実施例1及び2で得られたリチウムイオン二次電池は、比較例1のイオン液体及びセパレータを用いたリチウムイオン二次電池と比較して、同等以上のレート特性を示した。特に85℃及び105℃の高温においては、非常に優れたレート特性を示した。
【0060】
《イオン輸送抵抗(Rs)及びLi金属界面電荷移動抵抗(Rct)の測定》
実施例1のリン酸鉄リチウム(LiFePO)正極を用いたハーフセルの充電時における内部抵抗については、bio−logic社製のVMP3を用いて、電池に負荷をかけない開路電圧における交流インピーダンス測定(交流振幅5mV,周波数範囲500kHz〜50mHz)を行い、高周波末端における実軸との交点を電解液部分の電解液のイオン輸送抵抗(Rs)、そこから0.1Hzまでの円弧の幅をリチウム金属負極の界面電荷移動抵抗(Rct)として見積もった。
図4に示すように、本発明のリチウムイオン二次電池(実施例)は、比較例1のリチウムイオン二次電池と比較して、リチウム金属界面電荷移動抵抗(Rct)が低く、電極と電解質との接触が優れていると考えられる。
【0061】
《マグネシウム二次電池の充放電試験》
コンピューター制御ポテンショスタット(bio−logic社製VMP3)を用いて、定電流充放電(0.05C相当)を容量規制(150mAh/g)で3サイクルの充放電試験を行った。
図5に示すように、本発明のマグネシウムイオン二次電池(実施例3)は、比較例2のEMITFSA及びガラスセパレータを用いマグネシウムイオン二次電池と比較して、80℃における充放電容量が大きく増加した。また、150℃においても液体並みの高い充放電容量を示し、安定した放電曲線が得られ、円滑なMg対極上での反応が起こっていると考えられた。
更に図6に示すように、イオン液体としてN2,2,2,2[TFSA]を用いたマグネシウムイオン二次電池(実施例4)においても、優れた充放電容量を示した。
【0062】
《サイクリックボルタモグラムの測定》
宝泉株式会社製HSフラットセルの正極にマグネシウム、負極に白金を使用し、電解質として製造例1で得られたSiOナノファイバーを3重量%添加して得られた、Mg(TFSA)を含む擬固体化N2,2,2,2TFSA(Mg(TFSA):N2,2,2,2TFSA=1:9(モル比))を用いた2電極セルを作製し、bio−logic社製VMP3を用いて温度150℃、走査速度1.0mV/秒の条件でサイクリックボルタンメトリーの測定を行った。
図7に示すように、本発明のSiOナノファイバーを用いて擬固体化したMg塩を含むN2,2,2,2TFSA電解質を用いることによって、イオン液体中でのMg析出が容易に起こることを確認した。またイオン液体を多孔質材料に含浸させて電解質と比較して、析出・溶解ピークが明瞭になり、且つ過電圧が低減された。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明の擬固体化電解質は、非水電解質二次電池、電気二重層キャパシタ、又はハイブリッドキャパシタの固体電解質として用いることができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8