(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記繊維部分が内部に空間を画定する中空構造を有し、前記空間の体積の前記繊維部分の体積に対する比が0.4から1.0の範囲である請求項1に記載のファイバーロッド。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、添付図面にしたがって本発明の好ましい実施形態について説明する。本発明は以下の好ましい実施形態により説明される。本発明の範囲を逸脱すること無く、多くの手法により変更を行うことができ、実施形態以外の他の実施形態を利用することができる。したがって、本発明の範囲内における全ての変更が特許請求の範囲に含まれる。本明細書中で、数値範囲を“ から ”を用いて表す場合は、“ から ”で示される上限、下限の数値も数値範囲に含むものとする。血液中に恒常的に存在する標準成分のことを、外部標準物質又は外部標準ということがある。また、血液中に存在しない標準成分のことを、内部標準物質又は内部標準ということがある。
【0022】
<ファイバーロッド>
血液採取器具に用いられるファイバーロッドを用いる血液採取において、ファイバーロッドの内部に採取した血液検体を希釈液等に放出させることが必要となる。ファイバーロッドの内部から血液検体を十分に放出できない場合、採血量が不足し、検査精度を低下させる要因となる。
【0023】
発明者は、採取された血液検体がファイバーロッドの内部から放出できるファイバーロッド構造を鋭意検討した。その結果、
ファイバーロッドの内部のある位置から、最表面までの距離が重要であることを見出し、本発明に至った。
【0024】
実施形態のファイバーロッドは、異なる繊維径を持つ第1繊維と第2繊維とで構成され、90%から97%の範囲の空隙率を持つ繊維部分を有し、繊維部分の対向する表面の距離が、1mmから1.6mmの範囲内である。
【0025】
ファイバーロッドの繊維部分は、異なる繊維径を持つ第1繊維と第2繊維とにより構成されている。例えば、ファイバーロッドの繊維部分を繊維径の小さい一種類の繊維のみで構成すると、ファイバーロッドの血液検体の分離、すなわち放出性が低下する。一方、ファイバーロッドの繊維部分を繊維径の大きい一種類の繊維のみで構成すると、ファイバーロッドの血液検体の吸収性が低下する。
【0026】
繊維径の小さい繊維と繊維径の大きい繊維とを加え、繊維径の異なる2種類の繊維(第1繊維と第2繊維)によりファイバーロッドの繊維部分を構成することにより、血液検体の放出性と吸収性とを向上することができる。繊維径の大きい繊維により、繊維間の空間が大きくなり、繊維と血液検体との接触面積が小さくなり放出性が向上すると考えらえる。また、繊維径の小さい繊維により血液検体との接触面積が大きくなり吸収性が向上すると考えられる。
【0027】
繊維径の小さい第1繊維は、14μmから21μmの繊維径を有することが好ましく、16μmから20μmの繊維径を有することがさらに好ましい。また、繊維径の大きい第2繊維は、22μmから29μmの繊維径を有することが好ましく、24μmから27μmの繊維径を有することがさらに好ましい。第1繊維、及び第2繊維の繊維径は、電子顕微鏡により確認することができる。
【0028】
繊維部分は、90%から97%の範囲の空隙率を有している。空隙率を90%から97%の範囲にすることにより、繊維部分は、体積当たりの血液検体の吸収量を多くすることができ、かつ形態を維持できる機械的強度を有することができる。
【0029】
繊維部分の空隙率は、次のようにして求めることができる。繊維部分を構成する第1繊維及び第2繊維のそれぞれの重量を測定する。第1繊維及び第2繊維のそれぞれの密度と、第1繊維及び第2繊維のそれぞれの重量とから、第1繊維及び第2繊維のそれぞれの体積を求める。これを算出体積とする。実際のファイバーロッドの繊維部分の大きさから体積を求める。これを実体積とする。空隙率は次の式により求めることができる。
空隙率=(1−算出体積/実体積)×100(%)
第1繊維、及び第2繊維を構成する材料として、合成繊維を用いることが好ましく、ポリエステル繊維がより好ましい。ポリエステル繊維であれば、繊維の形状を容易に変更することができる。
【0030】
実施形態のファイバーロッドの繊維部分の対向する表面の距離が、1mmから1.6mmの範囲内である領域を含む。1mmから1.6mmの範囲内の領域では、繊維部分の内部に吸収された血液検体を、繊維部分の外部に、容易に放出することができる。
【0031】
図1から
図5を参照して、ファイバーロッドの好ましい形状について説明する。
図1に示されるファイバーロッド10は、四角柱形状の繊維部分20を備える。繊維部分20の対向する表面の距離Aが、1mmから1.6mmの範囲の領域を含んでいる。繊維部分20は、全ての対向する表面の距離Aが、1mmから1.6mmの範囲である必要はない。例えば、繊維部分の対向する表面の距離Bが1mmから1.6mmの範囲を超える場合であっても、繊維部
分20の内部に吸収された血液検体を、対向する表面22から容易に放出できる。
【0032】
図2に示されるファイバーロッド10は、円柱形状の繊維部分20を備える。繊維部分20の対向する表面の距離Aが、1mmから1.6mmの範囲の領域を含んでいる。円柱形状の繊維部分20において、距離Aは底面の直径である。対向する表面とは、円柱形状の繊維部分20においては側面24になる。底面26間の距離が1mmから1.6mmの範囲を超えてもよい。繊維部分20の内部に吸収された血液検体は、繊維部分20の側面24から容易に放出できる。円柱形状の繊維部分20は、等方的に側面24から吸収、及び放出できるので好ましい。
【0033】
図3に示されるファイバーロッド10は、C字型の断面を有する繊維部分20を備える。繊維部分20の対向する表面の距離Aが、1mmから1.6mmの範囲の領域を含んでいる。C字型とは、断面視において、円環の一部が切欠かれた形状という。広義にはJ字型、V字型、及びL字型を含み、繊維部分20が断面視で直線ではなく、繊維部分20の端面30同士が連結されていない形状をいう。繊維部分20の内部に吸収された血液検体は、繊維部分20の対向する表面28から容易に放出できる。
【0034】
図4に示されるファイバーロッド10は、繊維部分20を備える。繊維部分20は、全体として円柱形状を有し、かつ内部に空間32を画定する断面視で環状の中空構造を有する。空間32は、繊維部分20を有しない領域を意味する。
図4に示されるように、空間32は、繊維部分20の2個の底面34に開口を有し、貫通孔を構成する。繊維部分20の対向する表面の距離Aが、1mmから1.6mmの範囲の領域を含んでいる。環状構造の繊維部分20の対向する表面の距離Aは、外面36と内面38との距離となる。
図4に示されるファイバーロッド10では、血液検体が外面36から、及び空間32の内面38から繊維部分20に吸収される。また、繊維部分20に吸収された血液検体は、外面36から外部へ、及び内面38から空間32へと放出される。
【0035】
空間32の体積(V1)の繊維部分20の体積(V2)に対する比(V1/V2)は、0.4から1.0の範囲であることが好ましい。空間32と繊維部分20の体積比率を上述の範囲とすることにより、ファイバーロッド10の形状を維持でき、かつ繊維部分20への血液検体の吸収と放出とを容易に行うことができる。
【0036】
繊維部分20が全体として円柱形状で、繊維部分20の内部に画定される空間32も円柱形状であるので、血液検体を等方的に吸収、及び放出ができ、また、ファイバーロッド10の製造が容易になる。但し、繊維部分20の全体形状、及び空間32の形状は、円柱形状に限定されない。また、空間32は、一方の底面34にのみ開口を有する形状であってもよい。
【0037】
図5に示されるファイバーロッド10は、繊維部分20を備える。繊維部分20は、全体として円柱形状を有し、かつ繊維部分20の内部に複数の空間40を画定する中空構造を有する。複数の空間40は、それぞれ繊維部分20の2個の底面42に開口を有し、複数の貫通孔を構成する。繊維部分20の対向する表面の距離Aが、1mmから1.65mmの範囲の領域を含んでいる。複数の空間40を画定する中空構造の繊維部分20の対向する表面の距離Aは、外面44と内面46との距離、及び内面46と内面46との距離となる。
図5に示されるファイバーロッド10では、血液検体が外面44から、及び複数の空間40の内面46から繊維部分20に吸収される。また、繊維部分20に吸収された血液検体は、外面44から外部へ、及び内面46から空間40へと放出される。繊維部分20に複数の空間40が画定されているので、複数の内面46が形成される。その結果、繊維部分20と外部との接触面積が増えるので、繊維部分20に対する血液検体の吸収、及び放出が容易となる。
【0038】
空間40の体積(V1)の繊維部分20の体積(V2)に対する比(V1/V2)は、0.4から1.0の範囲であることが好ましい。空間40と繊維部分20の体積比率を上述の範囲とすることにより、ファイバーロッド10の形状を維持でき、かつ繊維部分20への血液検体の吸収と放出とを容易に行うことができる。
【0039】
繊維部分20の全体形状、及び空間40の形状は、円柱形状に限定されない。また、空間40は、一方の底面42にのみ開口を有する形状であってもよい。
【0040】
<血液採取器具>
次に、
図6から
図9を参照して、血液採取器具について説明する。
図6の分解図に示されるように、血液採取器具100は、一方に開口112が画定されているケース110と、開口112の側に着脱自在に保持されるファイバーロッド10とを備える。実施形態では、
図4に示されるファイバーロッド10を適用した例で説明する。ファイバーロッド10は、空間32を画定する中空構造の繊維部分20を備える。
【0041】
ケース110は、開口112の側から他方の側に、ファイバーロッド10を収容する先端収容部114、中央部116、フランジ部118、及び開口122が画定された基端収容部120を備える。ケース110は一体成形物であり、開口112と開口122とは貫通する。
【0042】
図6に示されるように、ファイバーロッド10は先端収容部114に着脱自在に保持される。先端収容部114には、ファイバーロッド10の空間32に挿通される部材124を備える。先端収容部114は略円柱形状であり、先端収容部114の内径とファイバーロッド10の外径とは、略同じ大きさである。部材124はケース110の軸線方向に沿って形成される。軸線方向に沿うとは、軸線方向と平行又は略平行を意味する。
【0043】
中央部116は先端収容部114より大きな直径を有し、略円柱形状である。中央部116には、後述するロックレバー300を嵌め込むための開口126が形成されている。採血者は、中央部116と基端収容部120との間のフランジ部118を手指で把持することにより、血液採取器具100を保持できる。
【0044】
基端収容部120は中央部116より大きな直径を有し、略円柱形状である。基端収容部120には、血液採取器具100の軸線方向に沿って、スライド溝128が形成されている。
【0045】
押し出しロッド200は、開口112と反対の側に位置し、U字型の押し部材210と、操作部214と、押し部材210と操作部214とを連結する連結部材212と、を備える。連結部材212には、ロックレバー300と係合するための開口216が形成されている。操作部214は略円柱形状であり、基端収容部120に操作部214が収容される。
【0046】
操作部214の外周面には、突起218が形成されている。突起218は、基端収容部120のスライド溝128に挿入される。突起218は、スライド溝128に沿って移動できる。スライド溝128に突起218を挿入することにより、押し出しロッド200が軸線方向を中心に回転することを規制する。
【0047】
ロックレバー300は、開口312が形成された矩形の枠体310と、枠体310に直交する方向に4個の脚部314と、を備える。脚部314の先端側には係止爪316がそれぞれ形成されている。脚部314の方向に延びるレバー318が、枠体310に軸支されている。レバー318の先端には連結部材212の開口216に係合するレバー爪部320が設けられている。レバー318の基端にはレバー操作部322が設けられている。レバー操作部322を脚部314の方向に移動させると、レバー318が支軸を中心に回動する。レバー爪部320が枠体310の方向に移動し、開口216とレバー爪部320との係合が解除される。
【0048】
ケース110、押し出しロッド200、及びロックレバー300は、例えば、ポリプロピレンで構成される。
【0049】
図7は、ファイバーロッド10を除き、ケース110と、押し出しロッド200と、ロックレバー300とを組み立てた斜視図である。
図7に示されるように、ケース110の基端収容部120に、押し出しロッド200の操作部214が収容される。また、押し出しロッド200の突起218が、基端収容部120のスライド溝128に挿入される。ロックレバー300が、ケース110の開口126(不図示)に取り付けられ、レバー318のレバー爪部320(不図示)が、押し出しロッド200の開口216(不図示)に係合されている。押し出しロッド200の軸線方向の移動が規制される。
【0050】
図8は、
図7の透過図である。
図8に示されるように、部材124を支持する梁部材130が先端収容部114に設けられる。梁部材130は軸線方向に直交する。梁部材130と先端収容部114とにより画定される隙間は、U字型の押し部材210の通過を許容する。脚部314の係止爪316により連結部材212が係止される。
【0051】
図9は、ファイバーロッド10と、ケース110と、押し出しロッド200と、ロックレバー300とを組み立てた斜視図である。
図9において、血液採取器具100の理解を容易にするため、符号を省略している。ファイバーロッド10がケース110の開口112の側の先端収容部114に着脱自在に保持される。部材124が、繊維部分20に画定された空間32に挿通される。血液採取器具100を構成するケース110の先端収容部114は透明であることが好ましい。先端収容部114を通して、ファイバーロッド10に吸収される血液検体の量を確認することができる。
【0052】
血液採取器具100は押し出しロッド200を備えるので、血液検体を採取した後、ファイバーロッド10を、ケース110の外に容易に押し出すことができる。
【0053】
上述の血液採取器具100による採血方法について説明する。血液検体の採取は、対象者自身が行ってもよく、医師等の有資格者が行ってもよい。好ましい態様では、対象者本人が、ランセットなどのナイフ付の器具を用いて指先などを傷つけて皮膚外にでた血液検体に、血液採取器具100のケース110に保持されるファイバーロッド10を接触させる。ファイバーロッド10の繊維部分20は90%から97%の空隙率を有する。繊維部分20の空隙に血液検体が吸収されるので、血液検体をファイバーロッド10に採取することができる。ファイバーロッド10が全体に赤くなったことを確認した時点で、血液検体の採取を終了する。
【0054】
次に、
図10から
図13を参照して、ファイバーロッド10と部材124の他の形態について説明する。
図10は、軸線方向に直交する方向の先端収容部114の断面図であり、
図11は軸線方向に平行する方向の先端収容部114の断面図である。
図10に示されるように、ファイバーロッド10は第4実施形態のファイバーロッドである。先端収容部114に形成された部材124は、断面視で星型八角形の形状を有している。ファイバーロッド10の空間32に部材124が挿通されると、部材124と内面38とが接触しない領域が形成される。その結果、
図11に示されるように、部材124とファイバーロッド10とにより、血液検体の流路F
1が形成される。流路F
1を形成することにより、部材124とファイバーロッド10との間で毛細管現象を作用させることができる。
図11の矢印BL
1の示す方向から血液検体を繊維部分20の内面38に沿って、吸い上げることができ、内面38からも血液検体を繊維部分20に吸収することができる。また、部材124と内面38とが接触する領域は、ファイバーロッド10を先端収容部114に保持する機能を備える。
【0055】
図10、及び
図11に示されるように、ファイバーロッド10の外径を先端収容部114の内径より小さくすることにより、繊維部分20の外面36と先端収容部114と内面とを離間できる。ファイバーロッド10と先端収容部114とにより血液検体の流路F
2が形成される。流路F
2を形成することにより、先端収容部114とファイバーロッド10との間で毛細管現象を作用させることができる。
図11の矢印BL
2の示す方向から血液検体を繊維部分20の外面36に沿って、吸い上げることができ、外面36からも血液検体を繊維部分20に吸収することができる。
【0056】
図12は、軸線方向に直交する方向の先端収容部114の断面図である。
図12に示されるように、ファイバーロッド10は第5実施形態のファイバーロッドであり、繊維部分20には複数の空間40が画定されている。先端収容部114に形成された複数の部材124は、断面視で、それぞれ星型八角形の形状を有している。ファイバーロッド10の空間40に部材124が挿通されると、部材124と内面46とが接触しない領域が形成される。その結果、複数の部材124とファイバーロッド10とにより、血液検体の流路F
1が形成される。流路F
1を形成することにより、部材124とファイバーロッド10との間で毛細管現象を作用させることができる。血液検体を繊維部分20の内面46に沿って、吸い上げることができ、内面46からも血液検体を繊維部分20に吸収することができる。また、部材124と内面46とが接触する領域は、ファイバーロッド10を先端収容部114に保持する機能を備える。
【0057】
図12に示されるように、ファイバーロッド10の外径を先端収容部114の内径より小さくすることより、繊維部分20の外面44と先端収容部114と内面とを離間できる。ファイバーロッド10と先端収容部114とにより血液検体の流路F
2が形成される。流路F
2を形成することにより、先端収容部114とファイバーロッド10との間で毛細管現象を作用させることができる。血液検体を繊維部分20の外面44に沿って、吸い上げることができ、外面44からも血液検体を繊維部分20に吸収することができる。
【0058】
図13は、軸線方向に直交する方向の先端収容部114の断面図である。
図12に示されるように、ファイバーロッド10は第5実施形態のファイバーロッドの変形例である。第5実施形態と同様に繊維部分20には複数の空間40が画定されている。一方、第5実施形態と異なり、繊維部分20の外面44は円ではなく、外面44は、4個の半円を連続して繋げた形状を有している。
図12と同様に、複数の部材124とファイバーロッド10とにより、血液検体の流路F
1が形成される。毛細管現象を利用して、血液検体を繊維部分20の内面48に沿って、吸い上げることができ、内面46からも血液検体を繊維部分20に吸収することができる。
【0059】
一方、
図13においては、繊維部分20の外面44と先端収容部114とにより液検体の流路F
2を形成するため、先端収容部114の内面に複数の部材132を形成している。部材132を形成することにより、外面44と部材132との間で毛細管現象を作用させることができる。したがって、繊維部分20の外面44からも血液検体を吸収することができる。
【0060】
<血液検査キット>
血液検査キットは、上述の血液採取器具100のほか、採取した血液検体を希釈するための希釈液と、血液検体の希釈物を収容するための収容器具と、を含み、血液中に恒常的に存在する標準成分、又は前記希釈液に含有される標準成分であって血液中に存在しない標準成分を用いて血液検体中の対象成分の濃度を分析するための血液検査キットである。
【0061】
さらに、血液検体の希釈物から血漿を分離回収するための分離器具を備えることが好ましい。
【0062】
[収容器具]
図14は、血液検体の希釈物を収容するための収容器具の構成の一例を示す断面図である。
図14に示されるように、収容器具400は、透明な材質の円筒形状の採血容器410を有する。採血容器410の上端側には、外面に螺子部412が形成され、内面に係止部414が突設されている。また、採血容器410の下端部には、下端側に突出する円錐形状の底部416が形成されている。底部416の周囲に円筒形状の脚部418が形成されている。「上」及び「下」とは、脚部418を載置面に設置した状態における「上」及び「下」を意味する。
【0063】
脚部418は、血液の分析検査時に使用するサンプルカップ(不図示)と同一外径を有しており、好ましくは、その下端の対向する位置にそれぞれ鉛直方向にスリット溝420が形成されている。さらに、採血容器410には、
図14に示されているように、所要量、例えば、500mm
3の希釈液422が収容されることが好ましい。
【0064】
図14に示すように、収容器具400を使用前は、採血容器410の上端開口が、キャップ424によりパッキン426を介して密閉されることが好ましい。
【0065】
[血液中に恒常的に存在する標準成分]
血漿成分の希釈倍率の高い希釈血漿の希釈後の対象成分について、希釈前の血液の血漿中に存在する濃度を正確に分析するためには、希釈液中にあらかじめ存在する物質の濃度の変化率から求める方法を採用することができる。また、血液中に恒常的に存在する標準成分を用いて血液検体中の対象成分の濃度を分析する方法を採用することも可能である。より少量の血液から血液成分を分析する場合には、血液中に恒常的に存在する標準成分を用いる方法を採用する場合に、測定誤差の小さい測定が可能となるため好ましい。したがって本発明の血液検査キットとしては、血液中に恒常的に存在する標準成分を用いて血液検体中の対象成分の濃度を分析するための、血液検査キットであることが好ましい態様の一つである
。
【0066】
ここで、標準成分を「用いて」とは、標準成分についての標準値(血液中に恒常的に存在する標準成分を用いる場合には、恒常値)に基づき、対象成分の濃度を分析するための希釈倍率を決定する意である。したがって、血液中に恒常的に存在する標準成分を用いて血液検体中の対象成分の濃度を分析する場合には、血液中に恒常的に存在する標準成分の恒常値(標準値)に基づき希釈倍率を決定し、対象成分の濃度を分析することでもある。
【0067】
血液中に恒常的に存在する標準成分は、例えば、ナトリウムイオン、塩化物イオン、カリウムイオン、マグネシウムイオン、カルシウムイオン、総タンパク、及びアルブミン等が挙げられる。血液検体の血清及び血漿中に含まれるこれらの標準成分の濃度は、ナトリウムイオン濃度は、134mmol/Lから146mmol/L(平均値:142mmol/L)、塩化物イオン濃度は、97mmol/Lから107mmol/L(平均値:102mmol/L)、カリウムイオン濃度は、3.2mmol/Lから4.8mmol/L(平均値:4.0mmol/L)、マグネシウムイオン濃度は、0.75mmol/Lから1.0mmol/L(平均値:0.9mmol/L)、カルシウムイオン濃度は、4.2mmol/Lから5.1mmol/L(平均値:4.65mmol/L)、総タンパク濃度は、6.7g/100mlから8.3g/100ml(平均値:7.5g/100mL)、アルブミン濃度は、4.1g/100mLから5.1g/100mL(平均値:4.6g/100mL)である。実施形態では、対象者の痛みを和らげるために採血する血液量が非常に少ない場合における対象成分の測定を可能にするためのものであり、微量の血液を希釈液で希釈した際に、希釈液中に存在する「血液中に恒常的に存在する標準成分」の濃度を精度よく測定する必要がある。希釈倍率が高くなると、もともと血液中に存在する成分の希釈液中の濃度が低下し、希釈倍率によっては濃度測定時に、測定誤差を含む可能性がある。したがって、微量な血液成分を希釈倍率高く希釈したときに、上記標準成分を十分に精度高く検出するためには、微量な血液中に高い濃度で存在する標準成分を測定することが好ましい。本発明では、血液検体中に恒常的に存在する成分の中でも高濃度に存在する、ナトリウムイオン(Na
+)又は塩化物イオン(Cl
−)を用いることが好ましい。さらには、上述の血液中に恒常的に存在する標準成分の中でも血液中に存在する量が一番高いナトリウムイオンを測定することが最も好ましい。ナトリウムイオンは、平均値が標準値(基準範囲の中央値)を表し、その値は、142mmol/Lであり、血漿中の総陽イオンの90モル%以上を占める。
【0068】
[血液中に存在しない標準成分]
実施形態の好ましい態様の一つは、血液中に存在しない標準成分を用いて血液検体中の対象成分の濃度を分析するための、血液検査キットである。このような血液検査キットは、血液中に恒常的に存在する標準成分とともに、血液中に存在しない標準成分を用いるためのものであってもよく、血液中に恒常的に存在する標準成分を用いずに、血液中に存在しない標準成分を単独で用いるためのものであってもよい。
【0069】
いずれの場合も、血液中に存在しない標準成分は、後述する希釈液に所定の濃度になるように添加して用いることができる。血液中に存在しない標準成分としては、血液検体中に全く含まれないか、若しくは含まれていたとしても極微量である物質を使用することができる。血液中に存在しない標準成分としては、血液検体中の対象成分の測定に干渉を与えない物質、血液検体中の生体酵素の作用を受けて分解しない物質、希釈中で安定な物質、血球膜を透過せず血球中に含まれない物質、緩衝液の保存容器に吸着しない物質、精度良く測定できる検出系が利用できる物質を用いることが好ましい。
【0070】
血液中に存在しない標準成分としては、希釈液に添加した状態で長期間保管しても安定した物質が好ましい。血液中に存在しない標準成分の例としては、グリセロール三リン酸、アルカリ金属としてLi、Rb、Cs、又はFr、そしてアルカリ土類金属としてはSr、Ba、又はRaが挙げられ、Li及びグリセロール三リン酸が好ましい。
【0071】
これらの血液中に存在しない標準成分は、血液希釈後の濃度測定時に第二の試薬を添加することで発色させ、その発色濃度から希釈血液中の濃度を求めることができる。例えば、希釈液に添加したリチウムイオンの測定は、キレート比色法(ハロゲン化ポルフィリンキレート法:パーフルオロ−5,10,15,20−テトラフェニル−21H,23H−ポルフィリン)を利用して生化学自動分析装置で大量試料を微量の試料で容易に測定できる。また、グリセロール三リン酸の測定は、例えば、公知資料である、「在宅医療革命」(臨床検査 Vol.59、p397、2015年)に記載された、酸化縮合による色素発色の濃度測定を利用して生化学自動分析装置で大量試料を微量の試料で容易に測定できる。
【0072】
[希釈液]
血液検査キットは、採取した血液検体を希釈するための希釈液を含む。希釈液は、血液検査キットが血液中に恒常的に存在する標準成分を用いて、血液検体中の対象成分の濃度を分析するためのものである場合、血液中に恒常的に存在する標準成分を含有しない。「含有しない」とは、「実質的に含有しない」ことを意味する。ここで、「実質的に含有しない」とは、希釈倍率を求める時に使用する恒常性のある物質をまったく含まないか、あるいは含まれていたとしても、血液検体を希釈した後の希釈液の恒常性のある物質の測定に影響を及ぼさない程度の極微量の濃度で含まれる場合を意味する。血液中に恒常的に存在する標準成分として、ナトリウムイオン又は塩化物イオンを用いる場合には、希釈液としては、ナトリウムイオン又は塩化物イオンを実質的に含有しない希釈液を使用する。
【0073】
血液のpHは、健常者では通常pH7.30からpH7.40程度で一定に保たれていることから、対象成分の分解や変性を防止するために、希釈液は、pH6.5からpH8.0の範囲、好ましくはpH7.0からpH7.5の範囲、さらに好ましくはpH7.3からpH7.4の範囲のpH域で緩衝作用を有する緩衝液であることが好ましく、希釈液は、pHの変動を抑える緩衝成分を含有する緩衝液であることが好ましい。
【0074】
従来、緩衝液の種類としては、酢酸緩衝液(Na)、リン酸緩衝液(Na)、クエン酸緩衝液(Na)、ホウ酸緩衝液(Na)、酒石酸緩衝液(Na)、Tris(トリス(ヒドロキシメチル)アミノエタン)緩衝液(Cl)、Hepes([2−[4−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピペラジニル]エタンスルホン酸])緩衝液、リン酸緩衝生理食塩水(Na)等が知られている。これらの中でpH7.0からpH8.0付近の緩衝液としては、リン酸緩衝液、Tris緩衝液、Hepes緩衝液が代表的なものである。しかしながら、リン酸緩衝液はリン酸のナトリウム塩が含まれていること、Tris緩衝液は、解離pKaは8.08であるため、pH7.0からpH8.0付近で緩衝能を持たせるためには通常は塩酸と組み合わせて使用されること、Hepesのスルホン酸の解離のpKaは7.55であるが、イオン強度一定での緩衝溶液を調整するため、通常は水酸化ナトリウムと塩化ナトリウムとHEPESの混合物が用いられることから、これらはpHを一定に保つ作用を有する緩衝液としては有用であるが、実施形態において外部標準物質として用いることが好ましい物質であるナトリウムイオンあるいは塩化物イオンを含有するため、血液検査キットが血液中に恒常的に存在する標準成分を用いて血液検体中の対象成分の濃度を分析するためのものである場合、適用は好ましくない。
【0075】
血液検査キットが血液中に恒常的に存在する標準成分を用いて血液検体中の対象成分の濃度を分析するためのものである場合、用いる緩衝液としては、ナトリウムイオン又は塩化物イオンを含有しない(「含有しない」の意味は、すでに述べたとおりである。)ことが好ましい。このような緩衝液は好ましくは、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール(AMP)、2−エチルアミノエタノール、N−メチル−D−グルカミン、ジエタノールアミン、及びトリエタノールアミンからなる群から選択される少なくとも1種のアミノアルコール化合物、並びにGood’s緩衝液(グッドバッファー)でpKaが7.4付近の緩衝剤であるHEPESとも称する2−[4−(2−ヒドロキシエチル
)1−ピペラジニル]エタンスルホン
酸(pKa=7.55)、TESとも称するN−トリス(ヒドロキシメチル)メチル−2−アミノエタンスルホン酸(pKa=7.50)、MOPSとも称する3−モルホリノプロパンスルホン酸(pKa=7.20)、及びBESとも称す
るN,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−2−アミノエタンスルホン酸(pKa=7.15)からなる群から選択される緩衝剤を含む希釈液である。上記の中でも、2−アミノー2−メチル−1−プロパノール(AMP)とHEPES、TES、MOPS又はBESとの組み合わせが好ましく、さらに、2−アミノー2−メチル−1−プロパノール(AMP)とHEPESとの組み合わせが最も好ましい。なおpKaは、酸解離定数を表す。
【0076】
上記緩衝液を調製するためには、アミノアルコールとGood‘s緩衝液を1:2から2:1、好ましくは1:1.5から1.5:1、さらに好ましくは1:1の濃度比で混合すればよい。緩衝液の濃度は限定されないが、アミノアルコール又はGood‘s緩衝液の濃度は、0.1mmol/Lから1000mmol/L、好ましくは、1mmol/Lから500mmol/L、さらに好ましくは10mmol/Lから100mmol/Lである。
【0077】
緩衝液中には、分析対象成分を安定に保つことを目的にキレート剤、界面活性剤、抗菌剤、防腐剤、補酵素、糖類等が含有されていてもよい。キレート剤としては、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)塩、クエン酸塩、シュウ酸塩等が挙げられる。界面活性剤としては、例えば、陽イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、両性界面活性剤又は非イオン界面活性剤が挙げられる。防腐剤としては、例えば、アジ化ナトリウムや抗生物質等が挙げられる。補酵素としては、ピリドキサールリン酸、マグネシウム、亜鉛等が挙げられる。赤血球安定化剤の糖類としては、マンニトール、デキストロース、オリゴ糖等が挙げられる。特に、抗生物質の添加により、手指採血時に手指表面から一部混入する細菌の増殖を抑えることができ、細菌による生体成分の分解を抑制し、生体成分の安定化を図ることができる。
【0078】
緩衝液はまた、血液中に存在しない標準成分を用いて対象成分を分析するための血液検査キットにおいては、この血液中に存在しない標準成分を含む。後述する内部標準物質を含まず、血液分析の測定系に干渉を与えないことも重要である。
【0079】
全血を希釈するとの観点からは、緩衝液の浸透圧を血液と同等(285mOsm/kg(mOsm/kgは、溶液の水1kgが持つ浸透圧で、イオンのミリモル数をあらわす))又はそれ以上とすることにより血球の溶血を防止することができる。浸透圧は、対象成分の測定、及び血液中に恒常的に存在する標準成分の測定に影響しない塩類、糖類又は緩衝剤等により、等張に調整することができる。緩衝液の浸透圧は、浸透圧計により測定することができる。
【0080】
血液検査として、肝機能、腎機能、メタボリズムなど、特定の臓器、特定の疾患を検査する場合には、臓器や疾患に特有の複数の測定対象成分の情報を入手して、臓器の状態、生活習慣の予測などを行うために、一般的には、複数の測定対象成分の分析が同時に行われる。例えば、肝臓の状態を検査するためには、一般的には、ALT(アラニントランスアミナーゼ)、AST(アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ)、γ―GTP(γグルタミルトランスペプチダーゼ)、ALP(アルカリホスファターゼ)、総ビリルビン、総タンパク、アルブミン等、数種類以上もの物質の血液中の濃度が測定される。このように、複数の対象成分を一つの血液検体から測定するためには、再測定の可能性も考慮して、希釈された血液の量はある程度必要となる。したがって、採取した血液を希釈する希釈液は、ある程度の量を確保することが重要である。しかしながら、被検者の侵襲性を少しでも低く抑えることを考慮すると、採血量は微量となるため、希釈倍率は例えば、7倍程度以上の高倍率となる。
【0081】
(血液検体の希釈物)
収容器具400の採血容器410からキャップ424を取り外す。採血容器410の上端開口から、血液採取器具100により血液検体を吸収したファイバーロッド10を、希釈液422に投入する。ファイバーロッド10上端開口をキャップ424により密封する。
【0082】
図15に示されるように、採血容器410の上部を持ち、採血容器410を振り子状に数十回振り、ファイバーロッド10から血液検体を希釈液422に放出する。血液検体を希釈液422に溶け込ませることにより、血液検体の希釈物が収容器具400に収容される。
【0083】
実施形態のファイバーロッド10は、異なる繊維径を持つ第1繊維と第2繊維とにより構成され、90%から97%の範囲の空隙率を持つ繊維部分20を有し、繊維部分の対向する表面の距離が、1mmから1.6mmの範囲内である領域を含むので、血液検体を容易に希釈液422に放出することができる。また、繊維部分20に空間32が画定される場合、繊維部分20の外面36及び内面38が希釈液422に接触するので、より多くの血液検体を放出することができる。
【0084】
希釈液422が全体として赤くなれば、採血容器410を振ることを終える。
【0085】
[分離器具]
血液採取器具100により採取された血液検体は、分析が行われるまで、希釈された状態で、収容器具400の中で長時間経過する可能性がある。その間に、例えば赤血球の溶血が起こると、血球内に存在する物質や酵素などが血漿あるいは血清中に溶出して検査結果に影響を与えたり、溶出したヘモグロビンが有する吸収により、分析対象成分の光学的な吸収などの光情報で分析対象成分量を測定する場合に影響を及ぼす可能性がある。したがって、溶血を防止することが好ましい。そのため、血液検体の希釈物から血漿を分離回収するための分離器具を血液検査キットに含む態様が好ましい。分離器具の好ましい例は、分離膜である。分離膜は、例えば血液検体の希釈物に圧力を加えることによって、血球成分は分離膜で捕獲し、血漿成分を通過させて、血球を分離して血漿成分を回収するように用いることができる。この場合、抗凝固剤を用いることが好ましい。また、測定の精度を確保するために、分離膜を通過した血漿が血球側へ逆流しないことが好ましく、そのためには具体的には、特開2003−270239号公報に記載の、逆流防止手段をキットの構成要素とすることができる。
【0086】
図16は、分離器具を保持する保持器具の一例を示す図である。
図16に示されるように、保持器具500は、収容器具400の採血容器410に嵌挿可能な筒体510と、筒体510に取り付けられたキャップピストン512と、キャップピストン512の下端に設けられた封止器具として機能する密閉蓋514とを備える。
【0087】
筒体510は透明な材質製で円筒形状を有している。筒体510の上端部542には拡径部516が形成されている。拡径部516は薄肉部518を介して本体部520と接続されている。筒体510の下端部には、縮径部522が形成されている。縮径部522の内面には係止突起部524が形成されている。さらに、縮径部522の下端部には外鍔部526が形成されている。外鍔部526の下端開口部は分離器具として機能する濾過膜528により覆われている。濾過膜528は血液中の血漿の通過を許容し、血球の通過を阻止するよう構成される。縮径部522の外周にはシリコンゴム製のカバー530が装着されている。
【0088】
キャップピストン512は、略円筒形状の摘み部532と、摘み部532と同心で下方に延びる心棒部534とで構成されている。摘み部532の内側上端部には筒体510の拡径部516が嵌合可能な円筒状の空間536が形成され、その下方は螺刻され、螺子に螺合可能となっている。心棒部534はその下端部538がピン状に形成され、下端部538に密閉蓋514が着脱可能に設けられている。密閉蓋514はシリコンゴム製である。密閉蓋514の下端部が外鍔状に形成された略円柱状を成し、外周にわたり段差部540が形成されている。摘み部532は頂部544を有し、頂部544の内面と拡径部516とは接触する。
【0089】
次に、
図17に示されるように、ファイバーロッド10と血液検体の希釈物が収容された採血容器410から、キャップ424、及びパッキン426を採血容器410から取外す。この状態において、キャップピストン512が取り付けられた筒体510を採血容器410内に嵌挿する。
【0090】
次に、
図18に示されるように、摘み部532を螺子部412に螺合させる。最初、摘み部532と筒体510とが回転する。採血容器410の係止部414が、筒体510の外周面に形成されたストッパ部(不図示)に係止すると、筒体510の回転が拘束され、薄肉部518はねじりにより破断する。この結果、筒体510は本体部520と拡径部516とに分離される。さらに摘
み部532を回転させると、本体部520の上端部542が拡径部516の内側の空間536に入り込む。摘み部532の頂部544の内面により筒体510は下方に押圧されるようになるので、筒体510はさらに降下する。
【0091】
筒体510の降下に伴い、筒体510に保持される濾過膜528は、採血容器410の底部416の側に移動する。その際、濾過膜528を通って血漿が筒体510の側に移動し、血球は濾過膜528を通過できずに採血容器410の側に残る。
【0092】
カバー530の外径は筒体510の本体部520の外径より大きいので、筒体510は採血容器410の内面に密着した状態で降下する。したがって、筒体510を採血容器410に嵌挿させる過程で、採血容器410の中の希釈液422が採血容器410と筒体510との隙間を通って外部に漏出するおそれはない。
【0093】
摘み部532を最下部まで螺子部412に螺合させると、密閉蓋514は縮径部522に嵌合する。採血容器410と筒体510との間の流路は密閉蓋514により密閉される。密閉蓋514は、逆流に起因する血漿と血球の混合を防止する。
【0094】
採血容器410は、希釈液が収容された収容器具を構成し、また血液検体の希釈物を収容するための収容器具をも構成する。また、採血容器410に嵌挿され、血漿と血球とを分離した状態において、筒体510は、回収した血漿を収容するための収容器具を構成する。血液検体を収容するための収容器具は、採血容器410と筒体510の組み合わせに対応する。すなわち、希釈された血液検体を収容するための収容器具は1個でも2個以上の組み合わせでもよい。
【0095】
血液検査キットは、100μL以下の採血量であっても、測定精度よく分析対象成分を分析できる方法を実現可能とするものである。対象者に、100μL以下の少ない採血量でも精度よく測定することが可能であることや、血液採取器具100のファイバーロッド10によりどの程度まで血液検体を採取すべきか等の情報が記載された取り扱い説明書を含む血液検査キットであることが好ましい。
【0096】
<血液分析方法>
実施形態の血液検査キットを用いた血液分析方法について説明する。血液分析方法は、ヒトに対する医療行為(医師が行う行為)である態様とヒトに対する医療行為ではない態様(例えば、採血者が患者自身であり、かつ分析者が医師以外の者である態様、非ヒト動物に対する態様、等)が含まれる。実施形態の血液分析方法は、対象者自身が血液を採取する自己採血で実施してもよいし、医師等の有資格者が注射器を使用して血液を採取する一般採血においても実施してもよい。好ましい態様としては、患者本人が、ランセットなどのナイフ付の器具を用いて指先などを傷つけて皮膚外にでた血液を採取する。
【0097】
本分析対象となる生体試料は血液であり、血液とは、血清又は血漿を含む概念である。好ましくは、被検者より微量の血液を採取し、緩衝液で希釈した後、フィルタや遠心分離により血球を分離することにより得られた血漿又は血清を用いることができる。血液検体の成分としては、分離手段により血液検体から分離された血漿成分であることが好ましい。血液検体の起源はヒトに限定されず、ヒト以外の動物(非ヒト動物)である哺乳類、鳥類、魚類等であっても良い。ヒト以外の動物としては、例えば、ウマ、ウシ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、イヌ、ネコ、マウス、クマ、パンダ等が挙げられる。好ましくは、生体試料の起源はヒトである。
【0098】
血液分析方法の第一の態様としては、血液検体中に恒常的に存在する標準成分を用いて、対象成分の濃度の分析を行う。血液検体中に恒常的に存在する標準成分については、[1]での説明が、ここでもそのまま当てはまる。
【0099】
被検者の血液中における血漿成分の占有率は、容積の比率で約55%であるが、被検者の塩分摂取量の変化などで変動する。そのため、実施形態においては、血漿中に恒常的に存在する標準成分の標準値を用いて血漿の希釈倍率を算出し、算出した希釈倍率を用いて血液検体中の血漿中の対象成分の濃度を分析する。希釈倍率を算出する方法としては、血漿の希釈液中の外部標準物質(例えば、ナトリウムイオンなど)の測定値(濃度X)と、血液検体の血漿中に含まれる上記外部標準物質(例えば、ナトリウムイオンなど)の既知濃度値(濃度Y;ナトリウムイオンの場合には142mmol/L)とから、血液検体中の血漿成分の希釈倍率(Y/X)を算出することにより希釈倍率を求めることができる。この希釈倍率を用いて、血漿の希釈液中の対象成分の測定値(濃度Z)を測定し、この測定値に希釈倍率を掛け合わせることにより、実際に血液検体の血漿中に含まれる分析対象成分の濃度[Z×(Y/X)]を測定することが可能となる。
【0100】
ナトリウムイオンなどの濃度は、例えば、炎光光度法、ガラス電極法、滴定法、イオン選択電極法、酵素活性法等により測定することができる。特に好ましい態様において、ナトリウムイオンの測定はβ−ガラクトシダーゼがナトリウムイオンで活性化することを利用し、緩衝液で希釈された試料のナトリウムイオン濃度とガラクトシダーゼ活性が比例関係にあることを利用した酵素的測定法が採用される。
【0101】
また、部材に由来する標準成分の量を規定した血液検査キットが実際に使用されているか、また、血液の希釈と血漿の回収の方法が正常に行われているか確証するためには、血漿中の別の標準成分から独立に希釈倍率を追加的に求めて、その値が上で求めた希釈倍率と一致することを確認することが好ましい。一致するとは、2つの測定値(a,b)において、それらの差のそれらの平均値に対する割合、すなわち|a−b|/{(a+b)/2}×100が、20%以下であることであり、好ましくは10%以下であることであり、より好ましくは5%以下であることである。これにより、血液検体中の対象成分の濃度の分析が正常に行われていることの検証が可能となる。ここで、ナトリウムイオン又は塩化物イオン以外の血漿中に恒常的に存在する標準成分の例としては、総タンパク又はアルブミンから選択されることが好ましく、総タンパクであることがより好ましい。総タンパクの測定法は、ビューレット法や、紫外吸収法、ブレッドフォード法、ローリー法、ビシンコニン酸(Bicinchoninic Acid:BCA)法、蛍光法など公知の方法があり、測定試料の特性や感度、試料量などに応じて適宜使用する方法を選択することができる。
【0102】
血液分析方法の第二の態様としては、血液中に存在しない標準成分を用いて、対象成分の濃度の分析を行う。この場合、血液中に存在しない標準成分を含む希釈液を含む血液検査キットを用いる。
【0103】
血液分析方法の第三の態様としては、血液中に恒常的に存在する標準成分、及び血液中に存在しない標準成分を用いて、対象成分の濃度の分析を行う。2つの標準成分を併用することで、より信頼性の高い分析方法とすることができる。
【0104】
このとき、血液検体の希釈倍率は、血液中に恒常的に存在する標準成分としてナトリウムイオンを、血液中に存在しない標準成分としてリチウムイオンを用い、ナトリウムイオンの測定をβ−ガラクトシダーゼ活性が比例関係にあることを利用した酵素活性法(後述)で行い、リチウムイオンの測定をキレート比色法(後述)で行う場合には、下記式1から4のいずれかの式で算出することができる。
【0106】
上記式において、A、B、C、D、B’及びXは、以下のように定義される。
A : 緩衝液を発色させた際の吸光度
B : 血漿添加後の吸光度変化量
C : 血漿ナトリウム中央値142 mmol/Lの吸光度
D : 血漿希釈後のナトリウムイオン濃度における吸光度
B’: 血漿ナトリウムの吸光度から算出した希釈倍率による、希釈血漿中の血液中に存在しない標準成分の吸光度の補正値
X : 血漿希釈倍数
希釈率を求める際のもう一つの算出方法として、二乗平均法を用いた式5で算出し、希釈液中の分析対象成分の濃度に、式5で算出した希釈率を乗じて血液検体の成分中の対象成分の濃度を分析する態様も好ましい。
【0108】
血液検体の成分中の対象成分の濃度は、希釈液中の対象成分の濃度から、上記希釈倍率に基づいて算出できる。
【0109】
分析の対象成分は限定されず、生体試料中に含まれるあらゆる物質が対象となる。例えば臨床診断に用いられる血液中の生化学検査項目、腫瘍マーカーや肝炎のマーカー等各種疾患のマーカー等が挙げられ、タンパク質、糖、脂質、低分子化合物等が挙げられる。また、測定は物質濃度だけでなく、酵素等の活性を有する物質の活性も対象となる。各対象成分の測定は、公知の方法で行うことができる。
【0110】
ナトリウムイオンの測定ではナトリウムイオンにより酵素ガラクトシダーゼは酵素活性が活性化することから、緩衝液で希釈された非常に低濃度ナトリウムイオン(24 mmol/L以下)試料を数μLで測定する酵素的測定法が使用できる。この方法は生化学・免疫自動分析装置に適応でき、ナトリウムイオン測定のために別の測定機器を必要としない点で効率性が高く経済的である。
【実施例】
【0111】
以下、本発明の実施例を挙げ、本発明を、より詳細に説明する。但し、本発明は、これらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0112】
(水準1)
17.98μmの繊維径(3.3dtex)と、25.43μm(6.6dtex)の繊維径を有する2種類の繊維で構成され、4.3mmの直径、及び高さ5.6mmの円柱形状のファイバーロッドを準備した。ファイバーロッドは空間を画定する中空構造ではない。
【0113】
(水準2)
水準1と同様のファイバーロッドを準備した。
【0114】
(水準3)
17.98μmの繊維径(3.3dtex)と、25.43μm(6.6dtex)の繊維径を有する2種類の繊維で構成され、4.5mmの直径、及び高さ5.0mmの円柱形状であって、内径1.3μmの空間が形成された中空構造のファイバーロッドを準備した。内面と外面との距離Aは1.6mmであった。
【0115】
(水準4)
水準3と同様のファイバーロッドを準備した。
【0116】
(水準5)
17.98μmの繊維径(3.3dtex)の繊維のみで構成された、4.3mmの直径、及び高さ5.6mmの円柱形状のファイバーロッドを準備した。ファイバーロッドは空間を画定する中空構造ではない。
【0117】
(評価)
水準1から5のファイバーロッドに血液検体を吸収させた後、収容器具に収容される希釈液にファイバーロッド投入した。収容器具を40回振った。10回、20回、及び40回振った時点で、希釈液の密度(g/dL)を測定した。
【0118】
表1はその
測定結果であり、
図19は、振った回数を横軸、密度を縦軸とし、測定結果をプロットしたグラフである。なお、グラフ上のピペットは、ピペットから直接希釈液に分注した場合を示している。
【0119】
表1、及び
図19のグラフの結果から、水準3、4によれば、10回の時点でファイバーロッドに含まれる血液検体の75%以上が放出し、20回の時点でファイバーロッドに含まれる血液検体の100%が放出した。
【0120】
一方で、水準1、2では、10回の時点でファイバーロッドに含まれる血液検体の50%以下の放出であり、20回の時点でファイバーロッドに含まれる血液検体の100%は放出しなかった。
【0121】
水準3、4のファイバーロッドの結果で示されるように、対向する面の距離Aを1.6mmとすることで、放出性が向上することが理解できる。この距離Aが小さいほど放出性が向上することは容易に理解でき、距離Aを1.0mmから1.6mmにすることで放出性の優れたファイバーロッドが得られる。
【0122】
【表1】