【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的は、ホイール前側、ホイール後側及びホイールハブを有し、ポリマー材料で構成される高速圧縮機用の圧縮機ホイールによって達成され、ホイール前側は、外周からホイールハブに向けて、ホイール前側の外周に通じる放射状延伸面とホイール前側の表面との間の距離が増加する湾曲を有し、ホイール前側上に案内翼が配列され、ホイールハブはホイール後側上で軸方向に突出し、またホイールハブから外周に向けて補強リブが伸長し、ホイール後側の外周に通じる放射状延伸面と補強リブの後縁との間の距離は、ホイール後側の外周からホイールハブに向けて増加する。
【0009】
ホイール後側の補強リブは、圧縮機ホイールの全ての部分が実質的に同等の壁厚で具現化可能であるという有利を有する。それは、特に、それ故に、特にプラスチックで製造される場合に、空洞の形成や収縮による寸法不精度につながる、ハブに向かう方向への壁厚が大きな圧縮機ホイールの具現化の回避を可能とする。この収縮や関連する寸法不精度は、不均一な動作や、それ故の圧縮機ホイール作動中のダメージにつながる可能性がある。ポリマー中の空洞は、ポリマーが力を均一に吸収することができないことから、不安定性につながる。
【0010】
本発明の文脈では、「ホイール後側上で軸方向に突出する」は、案内翼が配列されていない圧縮機ホイールの側がホイール後側であって、ホイールハブの軸方向端部が案内翼から離れる側に向いているように見えることを意味する。この目的のために、ホイールハブの下端、圧縮機ホイールの最大円周及びホイールハブの上端は、互いに軸方向に続いている。
【0011】
ホイールハブはホイール後側上で軸方向に突出し、またホイールハブから外周に向けて補強リブが伸長し、ホイール後側の外周に通じる放射状延伸面と補強リブの後縁との間の距離がホイール後側の外周からホイールハブに向けて増加するといったような形状を通じて、選択されるプラスチックに依存して、200℃までの高温でさえ、圧縮機ホイールの安定的で恒久的な作動を許容する安定性が驚くほど達成される。特に、高速回転によって発生する曲げ応力が吸収され得、また圧縮機ホイールはダメージを受けない。高速回転における、この小さな変形は、少量の漏れ流量のみの発生と、それ故の圧縮効率の僅かな低減といった付加的で肯定的な効果を有する。
【0012】
リブの形状は、圧縮機ホイールの個々の部位の壁厚が100%未満で異ならないという付加的な有利を有する。これは、材料の過度の収縮及びそれ故の圧縮機ホイールの望まない変形が発生することなく、高分子系材料から圧縮機ホイールを製造することを可能とする。更に、ポリマー材料の冷却中に空洞の生じない、薄い壁厚を可能とする。従って、製造に関連する弱点がなく、且つ圧縮機ホイールの寸法誤差がほんの少しである安定的な圧縮機ホイールが得られる。
【0013】
補強リブは、直線状の又は湾曲した後縁を有することができる。もし後縁が湾曲しているなら、外側からハブに向けて凹むように伸長する。特に、もし外周に通じる放射状延伸面を後縁が交差しない湾曲ならば、ここではそれが好ましい。反対に、外周からハブに向けて直線状、即ち湾曲を伴わない後縁とすることもできる。しかしながら、湾曲を伴う後縁形状が好ましい。この場合、湾曲は、円弧、楕円、放物線、双曲線形状とすることができる。
【0014】
本発明の1つの実施の形態では、ホイールハブは、ホイール後側上で同心環によって囲繞され、また補強リブは、ホイールハブと同心環との間及び同心環から外周に向けて伸長する。ホイールハブの周りで延伸するホイールハブと同心の環は、圧縮機ホイールの付加的な補強を可能とする。ここで、同心環は、最大で、ホイール後側上のホイールハブと同じ程度に軸方向に離れるように突出してもよい。もしホイール後側上の同心環外周から同心環まで及び同心環からホイールハブまで伸長する補強リブと同じ高さで終わるように同心環が突出するならば、特にそれが好ましい。もし同心環とホイールハブとの間の補強リブが圧縮機ホイールの軸と垂直に径方向に伸びる後縁を有するなら、ここではそれが好ましい。
【0015】
特に、ホイールハブの小径及びそれに相応してホイールハブの小外周の場合、もしホイールハブと同心環との間の補強リブの数が同心環から外周に向けて伸長する補強リブの数より小さいならば、それが好ましい。ここで、少数の補強リブは、全てのリブが外周からホイールハブまで伸長している場合よりもリブ間の間隔を大きくできるという結果故に、より簡易な製造のために特に要求される。
【0016】
更に、同心環は、付加的な同心環のない構造と比較してリブの総数を増やすことを可能とし、更に、それ故に安定性の一層の改善を可能とする。これは、特に、高速回転圧縮機ホイール、即ち50000min
-1までの回転速度での動作する圧縮機ホイールに対し、圧縮機ホイールの周縁での振動発生を低減し、更に動作中の圧縮機ホイールを囲むハウジングと圧縮機ホイールとの衝突を防止するために要求される。
【0017】
ホイールハブと同心環との間で少数の補強リブを得られる場合には、ホイールハブと同心環との間の補強リブの数が同心環と圧縮機ホイールの外周との間の補強リブの数の半分とすると、それは特に好ましい。この場合、ホイールハブと同心環との間の補強リブは、外周から同心環まで伸長する第2補強リブの夫々の延長部を形成する。
【0018】
補強リブは、直線状に又は湾曲して形成することができ、また径方向と相対的に0〜45°までの範囲内の角度で配置することができる。このリブは、好ましくは0〜30°までの範囲内、特に好ましくは0〜15°の範囲内の角度で配置される。
【0019】
同心環が得られる場合には、ホイールハブと同心環との間の補強リブが径方向に配置されると、それが好ましい。この場合、同心環と外周との間の補強リブは、0°と異なる角度で伸長することができる。更に、補強リブは直線状又は湾曲することができる。
【0020】
しかしながら、全ての補強リブが径方向に伸長し、更に、この場合も、補強リブが直線状又は湾曲され得るならば、それは特に好ましい。
【0021】
補強リブが湾曲形状である場合には、例えば、外周に向けて伸長する補強リブに対し、湾曲させたりs形状としたりすることができる。しかしながら、補強リブが直線形状であることは、製造上の理由から好ましい。
【0022】
金属、セラミックス又はポリマーは、圧縮機ホイール用の材料として使用することができる。それらの低重量のために、プラスチックは、材料として好適に使用されるべきである。特に、圧縮機ホイールが自動車用のエンジンのターボ圧縮機に使用されるとき、材料は、好ましくは200℃までの温度で十分に温度安定であるべきである。それにも関わらず、圧縮機ホイール用の材料として、用途に関わりなく同等のポリマーが好適に使用される。この文脈では、温度安定熱可塑性物質及び温度安定熱硬化性物質の双方を使用することができる。
【0023】
圧縮機ホイールの製造に使用される適合するポリマー材料は、好ましくは、ポリアリルエーテルケトン類(PAEK)、ポリスルホン類(PSU)、ポリフェニレンスルホン類(PPSU)、ポリエーテルイミド類(PEI)、ポリアミド類(PA)、ポリエーテルスルホン類(PESU)、ポリフェニレンサルファイド類(PPS)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、エポキシ樹脂(EP)及びポリエステル類から選択される。
【0024】
適合するポリアリルエーテルケトン類は、例えば、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリアクリルエーテルケトンエーテルケトンケトン(PEKEKK)、ポリエーテルケトン(PEK)、ポリエーテルケトンケトン(PEKK)又はポリエーテルエーテルケトンケトン(PEEKK)である。
【0025】
ポリマーとしてポリアミドが使用されるならば、ポリアミドは、PA46、PA6、PA66、PA6/6T、PA610、PA11及びPA12から好適に選択される。
【0026】
この文脈では、ポリアリルエーテルケトン類又はポリエーテルスルホン類がポリマーとして特に好ましい。
【0027】
ポリマー材料製の圧縮機ホイールとして十分な安定性を得るために、ポリマー材料が強化されるならば、それが好ましい。ここでは、パウダー状及びファイバー状の双方のフィラーが使用可能である。ファイバー状のフィラーの場合、特に、中繊維又は短繊維が使用される。この文脈では、1.7〜10mmまでの範囲の長さを有するファイバーが中繊維を指し、0.01〜1.7mmまでの範囲の長さを有するファイバーが短繊維を指す。短繊維又は中繊維の何れが使用されるかに関わらず、ファイバー径は5〜20μmまでの範囲であることが好ましい。グラスファイバーが使用される場合、ファイバー径は10〜20μmまでの範囲であることが好ましく、また、カーボンファイバーが使用される場合、ファイバー径は5〜10μmまでの範囲であることが好ましい。
【0028】
パウダー状のフィラーは、0.5〜50μmまでの範囲の平均径を有すことが好ましい。適合するパウダー状のフィラーは、例えば、タルク、黒鉛、炭酸カルシウム、フッ化カルシウム、酸化亜鉛、ワラストナイト、酸化マグネシウム又はカオリンである。
【0029】
適合するファイバー状のフィラーは、グラスファイバー類、カーボンファイバー類、鉱物ファイバー類又はアラミドファイバー類である。この文脈では、カーボンファイバー類又はグラスファイバー類が特に好適である。ここでは、好ましくは、カーボンファイバー類は5〜10μmまでの範囲の直径を有し、粉砕カーボンファイバー類が使用される場合には50〜500μmまでの範囲の長さを有し、切断カーボンファイバー類が使用される場合には1〜5mmまでの範囲の長さを有する。この文脈ではまた、例えば一部が50〜250μmまでの範囲の長さで、一部が3〜5mmまでの範囲の長さであるといったように、異なるファイバー長さの混合物を任意の要求混合比で使用することも可能である。
【0030】
グラスファイバー類が使用される場合、これらは、10〜14μmまでの範囲の直径を有し、粉砕グラスファイバー類が使用される場合には50〜250μmまでの範囲の長さを有し、切断グラスファイバー類が使用される場合には3〜5mmまでの範囲の長さを有する。ここでもまた、例えば一部が50〜250μmまでの範囲の長さで、一部が3〜5mmまでの範囲の長さであるといったように、異なるファイバー長さの混合物を任意の要求混合比で使用することが可能である。
【0031】
ポリマーの特性を調整するために、ファイバー状又はパウダー状のフィラーに加えて更なる添加物を加えることが可能である。一般的に、使用される添加物は、例えば、硬化剤、架橋剤、可塑剤、触媒、靭性調整剤、接着促進剤、充填材、離型剤、他のポリマーとのブレンド、安定剤又はこれらの要素の2以上の混合物である。付加的に又は選択的に、当業者によって周知のコモノマーもまた、ポリマーの特性を調整するために使用することができる。
【0032】
本発明に係る圧縮機ホイールは、例えば、排気ターボチャージャ、エンジン用電動圧縮機、掃除機、ブロワ、圧縮機、ファン又は蒸気抽出フード内の圧縮機ホイールとして適合する。
【0033】
本発明の実施の形態が図面で表示されると共に、以下の記述によってより詳細に説明される。