(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
柔軟性が高いゴム等のモールドを使用することで、乾燥後のマイクロニードルアレイを離型しやすくなる。しかしながら、柔軟性があるモールドは、充填された液状材料の乾燥が進むにつれてマイクロニードルアレイ自体がモールドを引き連れる形で変形する場合があり、マイクロニードルアレイを意図した形状に製造することができないという問題点があった。
【0006】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、マイクロニードルアレイの変形を防止するモールドケース及びマイクロニードルアレイの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するためにモールドケースの一の態様は、柔軟性を有するモールドであって、表面に複数の針状凹部を有するモールドの裏面を支持する台座と、台座に対して着脱自在であり、モールドの表面を覆う蓋と、を備え、蓋は台座との間でモールドの縁部を挟み込むモールドケースである。
【0008】
本態様によれば、台座によって柔軟性を有するモールドの裏面を支持し、台座に対して着脱自在であり、モールドの表面を覆う蓋によって台座との間でモールドの縁部を挟み込むようにしたので、マイクロニードルアレイの変形を防止することができる。
【0009】
台座は、モールドが載置される座面部を備え、蓋は、少なくとも一部が座面部と平行かつ対向するモールド固定部を備えることが好ましい。これにより、モールド固定部と座面部との間でモールドの縁部を挟み込むことができる。
【0010】
モールド固定部は、モールドの縁部の一周にわたってモールドに当接することが好ましい。これにより、モールドの変形を適切に防止することができる。
【0011】
蓋は、モールド固定部と接続される覆い部であって、複数の針状凹部との間に空間を形成する覆い部を備えることが好ましい。これにより、モールドの表面を適切に覆うことができる。
【0012】
台座は、座面部に立設され、座面部に載置されたモールドを囲む側壁部を備えることが好ましい。側壁部によりモールドの載置位置を規定することで、モールドの縁部を適切に挟み込むことができる。
【0013】
側壁部は、モールドの厚みよりも低い高さで立設されることが好ましい。このような高さで立設されることで、モールドの縁部を適切に挟み込むことができる。
【0014】
台座の側壁部の外周面に設けられた固定係合部と、蓋のモールド固定部に設けられた弾性係合部と、を有し、固定係合部と弾性係合部とがスナップフィット係合することで、台座と蓋とが固定されることが好ましい。スナップフィット係合により、蓋を台座に適切に固定することができる。
【0015】
蓋は、スナップフィット係合を解放するヒンジレバーがモールド固定部に設けられていることが好ましい。ヒンジレバーを用いることにより、スナップフィット係合を適切に解放することができる。
【0016】
蓋は、モールド固定部と接続される筒部を備え、筒部と側壁部とが接触して嵌合固定されることが好ましい。嵌合固定により、蓋を台座に適切に固定することができる。筒部の内周と側壁部の外周とを接触させてもよいし、筒部の外周と側壁部の内周とを接触させてもよい。
【0017】
側壁部とモールド固定部とがねじ込み固定されることが好ましい。ねじ込み固定により、蓋を台座に適切に固定することができる。側壁部の外周に設けられた雄ねじ部とモールド固定部の内周に設けられた雌ねじ部とをねじ込み固定させてもよいし、側壁部の内周に設けられた雌ねじ部とモールド固定部の外周に設けられた雄ねじ部とをねじ込み固定させてもよい。
【0018】
蓋は4グラム以上の質量を有し、蓋はモールドの縁部に支持されていてもよい。蓋がモールドの縁部に支持されることで、台座との間でモールドの縁部を挟み込むことができる。
【0019】
モールドは、表面の縁部に設けられた土手部を有し、蓋は、台座との間でモールドの土手部を挟み込むことが好ましい。モールドに土手部を有することで、モールドの縁部を適切に挟み込むことができる。
【0020】
上記目的を達成するためにマイクロニードルアレイの製造方法の一の態様は、柔軟性を有するモールドであって、表面に複数の針状凹部を有するモールドの針状凹部に液状材料を充填する充填工程と、液状材料が充填されたモールドを蓋と台座との間でモールドの縁部を挟み込むモールドケースに収納した状態で液状材料を乾燥させる乾燥工程と、を含むマイクロニードルアレイの製造方法である。
【0021】
本態様によれば、液状材料が充填されたモールドの縁部を挟み込んだ状態で液状材料を乾燥させるので、乾燥工程におけるマイクロニードルアレイの変形を防止することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、マイクロニードルアレイの変形を防止することができる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、添付図面にしたがって本発明の好ましい実施形態について説明する。本発明は以下の好ましい実施形態により説明される。本発明の範囲を逸脱すること無く、多くの手法により変更を行うことができ、本実施形態以外の他の実施形態を利用することができる。したがって、本発明の範囲内における全ての変更が特許請求の範囲に含まれる。
【0025】
ここで、図中、同一の記号で示される部分は、同様の機能を有する同様の要素である。また、本明細書中で、数値範囲を“ 〜 ”を用いて表す場合は、“ 〜 ”で示される上限、下限の数値も数値範囲に含むものとする。
【0026】
<経皮吸収シートの構成>
まず、マイクロニードルアレイ(経皮吸収シート)の一例について説明する。
【0027】
図1は、経皮吸収シート100の一例を示す斜視図である。本実施形態の経皮吸収シート100は、1投与分のパッチに相当する。経皮吸収シート100は、おもて面(表面)100A及び裏面100Bを有し、シート状のシート部102及び凸状パターン110から構成される。
【0028】
シート状とは、面積の広い2つの対向するおもて面100A及び裏面100Bに対して厚みの薄い、全体として平たい形状を意味し、おもて面100A及び裏面100Bが完全に平坦である必要はない。また、
図1に示すシート部102は平面視で円形であるが、矩形、多角形、楕円形等でもよい。
【0029】
凸状パターン110は、薬剤を含んで構成される複数の針状凸部112を有している。針状凸部112は、おもて面100Aに設けられている。針状凸部112は、ニードル部114と、ニードル部114とシート部102とを接続する錐台部116と、から構成される。
【0030】
経皮吸収シート100のおもて面100Aには、複数個の錐台部116が配置される。錐台部116は、2つの底面を有し、錐体面で囲まれた立体構造を有している。錐台部116の2つの底面のうち面積の広い底面(下底面)がシート部102と接続される。錐台部116の2つの底面のうち面積の狭い底面(上底面)がニードル部114と接続される。つまり、錐台部116の2つの底面のうち、シート部102と離れる方向にある底面の面積が小さくなっている。
【0031】
ニードル部114は、面積の広い底面と、底面から離れた先端が最も狭い面積となる形状を有している。ニードル部114の面積の広い底面が、錐台部116の上底面と接続されているので、ニードル部114は錐台部116と離れる方向に先細り形状となる。したがって、ニードル部114と錐台部116とで構成される針状凸部112は、全体としてシート部102から先端に向けて先細り形状を有している。シート部102の上には4〜2500本の複数の針状凸部112が設けられる。但し、この本数に限定されない。
【0032】
図1において、錐台部116は円錐台の形状を有し、ニードル部114は円錐の形状を有している。ニードル部114の皮膚への挿入の程度に応じて、ニードル部114の先端の形状を、0.01μm以上50μm以下の曲率半径の曲面、又は平坦面等に適宜変更することができる。
【0033】
<モールドの構成>
図2は、経皮吸収シート100を製造(成形)するためのモールド120の一例を示す斜視図である。また、
図3は、
図2の3−3断面の一部拡大図である。モールド120は、おもて面(表面)120A及び裏面120Bを有し、平坦部122、土手部124、及び凹状パターン130から構成されている。
【0034】
平坦部122は、経皮吸収シート100のシート部102に対応する平坦な形状を有している。土手部124は、おもて面120Aの周縁部に立設され、平坦部122を囲んでいる。モールド120の径方向における土手部124の幅は、1.5mm以上であることが好ましい。裏面120Bは平坦であるため、モールド120は、平坦部122の厚みよりも土手部124の厚みの方が大きい。
【0035】
凹状パターン130は、平坦部122に設けられた複数の針状凹部132から構成される。針状凹部132は、経皮吸収シート100の針状凸部112に対応する形状を有しており、ニードル部114に対応する先端凹部134と、錐台部116に対応するカップ部136とから構成される。
【0036】
先端凹部134は、モールド120の深さ方向(厚み方向)に先細り形状を有している。先端凹部134は、径を150μm〜500μm、高さを150μm〜2000μmとすることができる。また、カップ部136は、モールド120のおもて面120Aに開口が設けられ、モールド120の深さ方向に狭くなる形状を有し、最も狭い部分で先端凹部134と接続されている。カップ部136は、径を500μm〜1000μm、高さを100μm〜500μmとすることができる。
【0037】
なお、針状凹部132の形状はこの例に限定されない。先端凹部134とカップ部136との間に、円柱、四角柱、多角柱等の深さ方向に幅が一定の中間凹部を設けた形状としてもよい。また、先細り形状の先端に、裏面120Bに到達してモールド120を貫通する貫通孔を形成してもよい。針状凹部132の配列、ピッチ、数等は、経皮吸収シート100に必要な針状凸部112の配列、ピッチ、数等によって決定すればよい。
【0038】
モールド120に用いる材料としては、柔軟性を有する素材であることが好ましく、気体透過性の高い素材であることがさらに好ましい。
【0039】
気体透過性の代表である酸素透過性は、1×10
−12(mL/s・m・Pa)より大きいことが好ましく、1×10
−10(mL/s・m・Pa)より大きいことがさらに好ましい。モールド120を気体透過性の高い素材で製作することにより、モールド120の裏面120Bから吸引することで針状凹部132に充填した液体を吸引でき、針状凹部132の内部への充填を促進させることができる。また、針状凹部132に存在する空気を裏面120B側から取り除くことができる。これにより、欠陥の少ない経皮吸収シート100を製造することができる。
【0040】
このような材料として、具体的には、シリコーン樹脂(例えば、ダウコーニング社製のシルガード184(登録商標)、信越化学工業社製の1310ST)、紫外線硬化樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂、エポキシ樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリオキシメチレン樹脂、ポリテトラフルオロエチレン樹脂、ポリエチレン樹脂、フェノール樹脂、ウレタン樹脂、等の一般的なエンジニアリングプラスチックを溶融、又は溶剤に溶解させたものなどを挙げることができる。
【0041】
これらの中でもシリコーンゴム系の素材は繰り返し加圧による転写に耐久性があり、且つ、素材との剥離性がよいため、好適に用いることができる。
【0042】
<モールドケースの構成(第1の実施形態)>
図4は、経皮吸収シート100をハンドリングするためのモールドケース150の斜視図である。モールドケース150は、台座160、及び台座160に対して着脱自在な蓋180を備えている。
【0043】
図5は、台座160の斜視図である。台座160は、ポリプロピレン、ポリエチレン、ABS(Acrylonitrile Butadiene Styrene)樹脂等により構成される。台座160は、射出成形加工により作成される。また、SUS(Steel Use Stainless)等の金属から削り出し加工によって作成してもよい。台座160は、座面部162、通気部164、側壁部166、固定係合部168、及び台部170を備えている。
【0044】
座面部162は、Z方向の平面視において円形の薄板状部材である。座面部162は、台座160に載置されたモールド120の裏面120Bを支持する。通気部164は、メッシュ状に構成され、座面部162を貫通して通気させる。通気部164は、載置されたモールド120の少なくとも凹状パターン130に対応する位置に配置される。
【0045】
側壁部166は、座面部162に立設される。側壁部166は、モールド120の外形が収まる形状を有しており、モールド120の載置位置を規定する。
図5に示す例では、Z方向の平面視において2つの半円弧状の側壁部166が、座面部162の周囲に沿って立設されている。
【0046】
固定係合部168は、側壁部166の外周面に沿って配置される。固定係合部168は、側壁部166の外周面から突出する突起状部材である。
【0047】
台部170は、円筒状部材であり、円筒の中心軸をZ方向に平行にして設けられる。台部170は、座面部162を水平面であるXY平面と平行にした状態で座面部162、側壁部166を支持する。
【0048】
図6は、モールド120を載置した台座160、及び蓋180を示す斜視図である。また、
図7は、
図4の7−7断面図である。
【0049】
座面部162に載置されたモールド120は、側壁部166の内側に収まる。モールド120は、おもて面120Aを鉛直方向であるZ方向の上方に向けられて、かつXY平面と平行にした状態で座面部162に支持される。モールド120が座面部162に載置された状態において、複数の針状凹部132のそれぞれの直下の位置に、座面部162の通気部164の孔が配置されることが好ましい。
【0050】
蓋180は、ポリプロピレン、ポリエチレン、ABS樹脂等により構成される。蓋180は、射出成形加工により作成される。蓋180は、モールド固定部182、覆い部184、貫通孔186、弾性係合部188、及びヒンジレバー190等を備えている。
【0051】
モールド固定部182は、Z方向の平面視において中央部に同心円状の空洞が形成されたリング形の薄板状部材である。モールド固定部182は、蓋180が台座160に装着された状態において、少なくとも一部がXY平面に平行に、かつ座面部162と対向して配置される。
【0052】
覆い部184は、モールド固定部182のリング形の内径側と接続される錐体面184A、及び錐体面184Aと接続される天面184Bから構成される。覆い部184は、蓋180が台座160に装着された状態において、モールド120の平坦部122に設けられた複数の針状凹部132との間に空間を形成する。
【0053】
覆い部184の錐体面184Aには、貫通孔186が設けられている。貫通孔186の形状、数、大きさ、及び配置は、後述する乾燥工程の条件等に応じて適宜決めることができる。貫通孔186は、XY平面に平行に設けられる。貫通孔186がXY平面に平行に設けられることで、モールドケース150の内部に塵埃が侵入することを抑制することができる。これにより、塵埃が経皮吸収シート100に混入及び付着することを防止することができる。なお、貫通孔186は、覆い部184の天面184Bに設けてもよい。
【0054】
弾性係合部188は、モールド固定部182の外径側と接続され、モールド固定部182に対して覆い部184とは反対側に設けられる。台座160の固定係合部168と弾性係合部188とは、互いにスナップフィット係合するための部材である。台座160に蓋180を装着するには、モールド120をXY平面と平行に支持している台座160に対して蓋180を鉛直方向下向き(−Z方向)に押し込む。この際に、弾性係合部188は、固定係合部168に突き当たり、弾性により側壁部166に対して離れる方向に変形しながら固定係合部168の段差を乗り越え、固定係合部168と弾性係合部188とがスナップフィット係合する。
【0055】
ここでは、弾性係合部188を7箇所に設けたが、少なくとも2箇所に設ければよい。
【0056】
なお、側壁部166は、モールド120の厚みよりも低い高さで立設される。即ち、モールド120の厚さ(モールド120を座面部162に載置した際の座面部162から土手部124の上面までの高さ)をH
M、側壁部166の座面部162からの高さをH
Wとすると、H
M≧H
Wの関係を有している。
【0057】
また、モールド固定部182は、蓋180が台座160に装着されると、少なくとも一部が座面部162と対向する。このため、モールド120を載置した台座160に蓋180を装着すると、モールド固定部182のうち座面部162と対向する部分が、モールド120の縁部である土手部124の一周にわたって当接する。これにより、台座160の座面部162と蓋180のモールド固定部182との間でモールド120の縁部である土手部124を挟み込むことができる。したがって、後述するように、モールド120の変形を防止することができる。
【0058】
なお、モールド固定部182が当接する部分は、土手部124に限定されず、モールド120の縁部であればよい。例えば、土手部124を有さないモールド120の場合であれば、凹状パターン130以外の平坦部122の縁部に当接すればよい。また、モールド固定部182はモールド120の縁部の一周にわたって当接する態様に限定されず、モールド120の一部に当接すればよい。
【0059】
ヒンジレバー190は、モールド固定部182の外径側と接続され、複数の弾性係合部188にそれぞれ対応して弾性係合部188とは反対側に設けられる。ヒンジレバー190は、スナップフィット係合を解放するための部材である。蓋180を台座160から離脱させるには、各ヒンジレバー190をそれぞれ近づける方向に変形させる。これにより、ヒンジレバー190を力点、モールド固定部182を支点、弾性係合部188を作用点として、弾性係合部188が側壁部166に対して離れる方向に変形する。この状態で、固定した台座160に対して蓋180を鉛直方向上向き(Z方向)に引っ張ることで、弾性係合部188が固定係合部168の段差を乗り越え、固定係合部168との係合が解放され、蓋180が台座160から離脱される。
【0060】
ここでは、側壁部166がモールド120の厚みよりも低い高さで立設される場合について説明したが、側壁部166がモールド120の厚みよりも高い高さで立設される場合、即ち、H
M<H
Wの関係を有している場合は、
図8に示すように、モールド固定部182に凸部182Aを設ければよい。
【0061】
凸部182Aは、モールド固定部182の
図8における下面側に、モールド固定部182に沿ってリング状に立設される。凸部182Aは、蓋180が台座160に装着されると、少なくとも一部が座面部162と対向する。
【0062】
また、凸部182Aの高さをH
Cとすると、H
C>H
W−H
Mの関係を有している。このため、モールド120を載置した台座160に蓋180を装着すると、モールド固定部182と
図8における側壁部166の上面とが当接することなく、凸部182Aが土手部124の一周にわたって当接する。これにより、座面部162とモールド固定部182の凸部182Aとの間でモールド120の縁部である土手部124を挟み込むことができる。
【0063】
<経皮吸収シートの製造方法>
図9は、経皮吸収シート100の製造方法の各工程を示すフローチャートである。経皮吸収シート100の製造方法は、充填工程(ステップS1)と、蓋装着工程(ステップS2)と、蒸発乾燥工程(ステップS3)と、離型工程(ステップS4)と、を含む。
【0064】
〔充填工程(ステップS1)〕
充填工程では、台座160に載置されたモールド120の針状凹部132に液状材料である薬剤液を充填する。なお、充填工程では蓋180は使用しない。
【0065】
薬剤液は、薬剤(有効成分)として薬剤原液、糖類、添加剤等を含んでいる。また、薬剤液は、溶媒として水、又はエタノール等を含んでいる。薬剤液の充填は、インクジェットヘッドによる吐出、点着ヘッドによる点着、又はディスペンサによる滴下等によって行う。
【0066】
〔蓋装着工程(ステップS2)〕
蓋装着工程では、充填工程が終了したモールド120が載置された台座160に蓋180を装着する。本実施形態では、固定係合部168と弾性係合部188とがスナップフィット係合することで、台座160と蓋180とが固定される。これにより、モールド120がモールドケース150に収納された状態となる。
【0067】
〔蒸発乾燥工程(ステップS3)〕
蒸発乾燥工程では、モールド120をモールドケース150に収納した状態で、充填した薬剤液を蒸発乾燥させる。蒸発乾燥工程は、温度及び湿度の調整が可能な乾燥庫で行うことが好ましい。
【0068】
台座160に蓋180を装着すると、モールド固定部182はモールド120の縁部である土手部124の一周にわたって当接し、台座160の座面部162と蓋180のモールド固定部182との間でモールド120の縁部である土手部124を挟み込む。このため、蒸発乾燥工程において乾燥速度を適切な速度に制御しつつ、モールド120の変形を防止することができる。
【0069】
〔離型工程(ステップS4)〕
離型工程では、蒸発乾燥工程を経て形成されたシート(経皮吸収シート100)をモールド120から離型する。
【0070】
以上のように、経皮吸収シート100の製造方法によれば、モールドケース150を使用することで、モールド120のおもて面120Aを覆いつつ、経皮吸収シート100の変形を防止して経皮吸収シート100を製造することができる。
【0071】
なお、充填工程は無菌環境下で行うことが好ましい。この場合、モールド120及びモールドケース150を無菌環境下に搬入する前に、滅菌する必要がある。
【0072】
図10は、滅菌工程を示す概略図である。
図10は、オートクレーブ60を用いた滅菌工程を示している。オートクレーブ60は、内部の圧力を高温の蒸気によって上げることによって滅菌を行う。モールドケース150をオートクレーブ60に配置することで、高圧蒸気滅菌処理を行うことができる。
【0073】
なお、
図10に示す例では、蓋180を天地逆にして台座160に載置している。即ち、ヒンジレバー190が固定係合部168に支持された状態である。このように蓋180を載置することで、モールドケース150の内部のモールド120に無菌蒸気が回り込みやすくなったり、乾燥性が向上したりするという効果がある。
【0074】
<第2の実施形態>
第2の実施形態に係るモールドケース200について説明する。なお、モールドケース150と共通する部分には同一の符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0075】
図11は、モールドケース200の台座210の斜視図である。台座210は、座面部162、通気部164、側壁部166、及び台部170を備えている。台座160とは異なり、台座210の側壁部166の外周面には固定係合部168が設けられていない。側壁部166の外周面は、内周面に沿ってZ方向に平行に設けられている。
【0076】
図12は、モールド120を載置した台座210、及び蓋220を示す斜視図である。また、
図13は、台座210に蓋220を装着した状態の断面図である。
【0077】
蓋220は、モールド固定部182、覆い部184、貫通孔186、及び円筒部192等を備えている。
【0078】
円筒部192は、モールド固定部182の外径側と接続され、モールド固定部182に対して覆い部184とは反対側に設けられる。円筒部192の内径は、台座210の側壁部166の外径と一致する。このため、円筒部192の内周と側壁部166の外周とが接触して、蓋220と台座210とが嵌合固定される。
【0079】
モールドケース150と同様に、側壁部166は、モールド120の厚みよりも低い高さで立設される。即ち、モールド120の厚さ(高さ)をH
M、側壁部166の座面部162からの高さをH
Wとすると、H
M≧H
Wの関係を有している。これにより、台座210に蓋220を装着した際に、台座210の座面部162と蓋220のモールド固定部182との間でモールド120の縁部である土手部124を挟み込むことができる。
【0080】
<第3の実施形態>
第3の実施形態に係るモールドケース230について説明する。なお、モールドケース200と共通する部分には同一の符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0081】
図14は、モールドケース230を示す図である。モールドケース230は、台座240及び蓋250を備えている。
図14は、モールド120を載置した台座240に蓋250を装着した状態を示している。
【0082】
台座240の側壁部166及び台部170は、同じ径を有する一体の円筒状部材であり、座面部162よりZ方向上方が側壁部166、Z方向下方が台部170である。側壁部166は、モールド120の厚みよりも高い高さで立設される。
【0083】
蓋250は、モールド固定部182、覆い部184、貫通孔186、及び円筒部194を備えている。
【0084】
円筒部194は円筒形状を有し、
図14においてZ方向の下端がモールド固定部182と接続される。円筒部194の外径は、台座240の側壁部166の内径と一致する。これにより、円筒部194の外周と側壁部166の内周とが接触して、蓋250と台座240とが嵌合固定される。
【0085】
台座240に蓋250を装着した状態では、モールド固定部182がモールド120の縁部である土手部124に接触する。したがって、台座240の座面部162と蓋250のモールド固定部182との間でモールド120の縁部である土手部124を挟み込むことができる。
【0086】
<第4の実施形態>
第4の実施形態に係るモールドケース260について説明する。なお、モールドケース200と共通する部分には同一の符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0087】
図15は、モールドケース260の台座270の斜視図である。台座270は、座面部162、通気部164、側壁部166、及び台部170を備えている。側壁部166の外周面には、雄ネジ部172が設けられている。
【0088】
図16は、モールド120を載置した台座270、及び蓋280を示す斜視図である。また、
図17は、台座270に蓋280を装着した状態の断面図である。
【0089】
蓋280は、モールド固定部182、覆い部184、貫通孔186、及び円筒部192等を備えている。円筒部192は、モールド固定部182の外径側と接続され、モールド固定部182に対して覆い部184とは反対側に設けられる。円筒部192の内周面には、雌ネジ部196が設けられている。円筒部192の雌ネジ部196と台座240の側壁部166の外周面の雄ネジ部172とは、螺合可能に構成されている。これにより、蓋280と台座270とがねじ込み固定される。
【0090】
モールドケース200と同様に、側壁部166は、モールド120の厚みよりも低い高さで立設される。これにより、台座270の座面部162と蓋280のモールド固定部182との間でモールド120の縁部である土手部124を挟み込むことができる。
【0091】
<第5の実施形態>
第5の実施形態に係るモールドケース290について説明する。なお、モールドケース230と共通する部分には同一の符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0092】
図18は、モールドケース290を示す図である。モールドケース290は、台座300及び蓋310を備えている。
図18は、モールド120を載置した台座300に蓋310を装着した状態を示している。
【0093】
台座300の側壁部166及び台部170は、同じ径を有する一体の円筒状部材であり、座面部162よりZ方向上方が側壁部166、Z方向下方が台部170である。側壁部166は、モールド120の厚みよりも高い高さで立設される。側壁部166の内周面には、雌ネジ部174が設けられている。
【0094】
蓋310は、モールド固定部182、覆い部184、貫通孔186、及び円筒部194を備えている。
【0095】
円筒部194は円筒形状を有し、
図18においてZ方向の下端がモールド固定部182と接続される。円筒部194の外周面には、雄ネジ部198が設けられている。円筒部194の雄ネジ部198と台座300の側壁部166の内周面の雌ネジ部174とは、螺合可能に構成されている。これにより、蓋310と台座300とがねじ込み固定される。
【0096】
台座300に蓋310を装着した状態では、モールド固定部182がモールド120の縁部である土手部124に接触する。したがって、台座
300の座面部162と蓋
310のモールド固定部182との間でモールド120の縁部である土手部124を挟み込むことができる。
【0097】
<第6の実施形態>
第6の実施形態に係るモールドケース320について説明する。なお、モールドケース200と共通する部分には同一の符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0098】
図19は、モールドケース320の台座330の斜視図である。台座330は、座面部162、通気部164、側壁部166、及び台部170を備えている。側壁部166及び台部170は、同じ径を有する一体の円筒状部材であり、座面部162よりZ方向上方が側壁部166、Z方向下方が台部170である。
【0099】
図20は、モールド120を載置した台座330、及び蓋340を示す斜視図である。また、
図21は、台座330に蓋340を装着した状態の断面図である。
【0100】
蓋
340は、覆い部184、貫通孔186、及び円筒部199を備えている。円筒部199は、一定の厚みを有する円筒形状を有し、Z方向上方側の端に覆い部184が設けられている。円筒部199は、蓋
340が台座
330に装着された状態において、少なくとも一部が座面部162と対向する。
【0101】
側壁部166は、モールド120の厚みよりも低い高さで立設される。
図21に示すように、台座330に蓋340を装着した状態では、蓋340の円筒部199は、モールド120の縁部である土手部124に載置され、円筒部199のうち座面部162と対向する部分においてモールド120の土手部124に支持される。即ち、円筒部199は土手部124の一周にわたって当接するモールド固定部として機能する。したがって、台座330の座面部162と蓋340の円筒部199との間でモールド120の縁部である土手部124を挟み込むことができる。
【0102】
蓋340は、4グラム以上の質量を有することが好ましく、5グラム以上の質量を有することがより好ましい。これにより、モールド120の変形をより適切に防止することができる。
【0103】
また、蓋340の質量が大きいと、薬剤液の充填量を質量で管理する場合に、計量精度が悪化するという問題がある。また、モールドケース320のバランスが悪くなり、搬送する際にモールドケース320が転倒する等のリスクがある。したがって、蓋340は、20グラム以下の質量を有することが好ましく、10グラム以下の質量を有することがさらに好ましい。