特許第6956787号(P6956787)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6956787平版印刷版原版、平版印刷版の製版方法、有機ポリマー粒子、及び、感光性樹脂組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6956787
(24)【登録日】2021年10月7日
(45)【発行日】2021年11月2日
(54)【発明の名称】平版印刷版原版、平版印刷版の製版方法、有機ポリマー粒子、及び、感光性樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   B41N 1/14 20060101AFI20211021BHJP
   B41C 1/10 20060101ALI20211021BHJP
   G03F 7/004 20060101ALI20211021BHJP
   G03F 7/027 20060101ALI20211021BHJP
   G03F 7/00 20060101ALI20211021BHJP
【FI】
   B41N1/14
   B41C1/10
   G03F7/004 501
   G03F7/027 511
   G03F7/00 503
【請求項の数】15
【全頁数】91
(21)【出願番号】特願2019-525350(P2019-525350)
(86)(22)【出願日】2018年6月6日
(86)【国際出願番号】JP2018021722
(87)【国際公開番号】WO2018230412
(87)【国際公開日】20181220
【審査請求日】2019年11月7日
(31)【優先権主張番号】特願2017-115429(P2017-115429)
(32)【優先日】2017年6月12日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2017-210128(P2017-210128)
(32)【優先日】2017年10月31日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】特許業務法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】野崎 敦靖
(72)【発明者】
【氏名】荒木 健次郎
【審査官】 中村 博之
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2016/047309(WO,A1)
【文献】 特開2016−179592(JP,A)
【文献】 特開2003−094809(JP,A)
【文献】 特開昭51−042751(JP,A)
【文献】 特開2012−139643(JP,A)
【文献】 米国特許第04870150(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41N 1/14
B41C 1/10
G03F 7/004
G03F 7/027
G03F 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
親水性支持体上に画像記録層を有し、
前記画像記録層が、有機ポリマー粒子を含み、
前記有機ポリマー粒子が、下記式POにより表される構造を有する芳香族多価イソシアネート化合物と、水とを少なくとも反応させて得られる反応物であり、
前記式POにより表される構造を有する芳香族多価イソシアネート化合物が、下記式A−1により表される構造、及び、下記式B−1により表される構造を有する化合物を含む
平版印刷版原版。
【化1】

式PO中、RPO1はアルキレン基を表し、nは2〜200の整数を表し、RPO2はラジカル重合性基を含まない構造を表し、*は他の構造との結合部位を表す。
【化2】

式A−1中、Arは芳香環構造を表し、Lはそれぞれ独立に、単結合又は二価の連結基を表し、nA1は1〜4の整数を表し、Rはそれぞれ独立に、一価の基を表し、nA2は0〜3の整数を表し、*及び波線部はそれぞれ独立に、他の構造との結合部位を表し、mAは0又は1を表す。
式B−1中、Arは芳香環構造を表し、Lはそれぞれ独立に、単結合又は二価の連結基を表し、RPOはそれぞれ独立に、前記式POにより表される構造を含む基を表し、nB1は1〜4の整数を表し、Rはそれぞれ独立に、一価の置換基を表し、nB2は0〜3の整数を表し、*及び波線部はそれぞれ独立に、他の構造との結合部位を表し、mBは0又は1を表す。
【請求項2】
前記式POにより表される構造を有する芳香族多価イソシアネート化合物が、下記式A−2により表される構造を1個〜10個有し、かつ、下記式B−2により表される構造を1個〜10個有する化合物を含む、請求項1に記載の平版印刷版原版。
【化3】

式A−2中、nA1は1〜4の整数を表し、*及び波線部はそれぞれ独立に、他の構造との結合部位を表し、mAは0又は1を表し、前記式POにより表される構造を有する芳香族多価イソシアネート化合物が式A−2により表される構造を複数有する場合、式A−2により表される構造はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。
式B−2中、RB1はそれぞれ独立に、水素原子又はアルキル基を表し、RB2はそれぞれ独立に、水素原子又はアルキル基を表し、nB3はそれぞれ独立に、10以上の整数を表し、RB3はそれぞれ独立に、アルキル基を表し、nB1は1〜4の整数を表し、*及び波線部はそれぞれ独立に、他の構造との結合部位を表し、mBは0又は1を表し、前記式POにより表される構造を有する芳香族多価イソシアネート化合物が式B−2により表される構造を複数有する場合、式B−2により表される構造はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。
【請求項3】
親水性支持体上に画像記録層を有し、
前記画像記録層が、有機ポリマー粒子を含み、
前記有機ポリマー粒子が、下記式POにより表される構造を有する芳香族多価イソシアネート化合物と、水とを少なくとも反応させて得られる反応物であり、
前記式POにより表される構造を有する芳香族多価イソシアネート化合物が、下記式A−2により表される構造を1個〜10個有し、かつ、下記式B−1により表される構造を有する化合物を含む、請求項1に記載の平版印刷版原版。
【化4】

式PO中、RPO1はアルキレン基を表し、nは2〜200の整数を表し、RPO2はラジカル重合性基を含まない構造を表し、*は他の構造との結合部位を表す。
【化5】

式A−2中、nA1は1〜4の整数を表し、*及び波線部はそれぞれ独立に、他の構造との結合部位を表し、mAは0又は1を表し、前記式POにより表される構造を有する芳香族多価イソシアネート化合物が式A−2により表される構造を複数有する場合、式A−2により表される構造はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。
式B−1中、Arは芳香環構造を表し、Lはそれぞれ独立に、単結合又は二価の連結基を表し、RPOはそれぞれ独立に、前記式POにより表される構造を含む基を表し、nB1は1〜4の整数を表し、Rはそれぞれ独立に、一価の置換基を表し、nB2は0〜3の整数を表し、*及び波線部はそれぞれ独立に、他の構造との結合部位を表し、mBは0又は1を表す。
【請求項4】
前記有機ポリマー粒子が、ラジカル重合性基を有する、請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の平版印刷版原版。
【請求項5】
前記有機ポリマー粒子が、式POにより表される構造を有する芳香族多価イソシアネート化合物と、ラジカル重合性基を有する芳香族多価イソシアネート化合物と、水と、を少なくとも反応させて得られる反応物である、請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の平版印刷版原版。
【請求項6】
前記ラジカル重合性基を有する芳香族多価イソシアネート化合物が、下記式A−1により表される構造、及び、下記式C−1により表される構造を含む、請求項5に記載の平版印刷版原版。
【化6】

式A−1中、Arは芳香環構造を表し、Lはそれぞれ独立に、単結合又は二価の連結基を表し、nA1は1〜4の整数を表し、Rはそれぞれ独立に、一価の基を表し、nA2は0〜3の整数を表し、*及び波線部はそれぞれ独立に、他の構造との結合部位を表し、mAは0又は1を表す。
式C−1中、Arは芳香環構造を表し、LC1はそれぞれ独立に、単結合又は二価の連結基を表し、LC2はそれぞれ独立に、nC3+1価の連結基を表し、Rはそれぞれ独立に、下記式PL−1により表される基又は式PL−2により表される基を表し、nC3はそれぞれ独立に、1〜10の整数を表し、nC1は1〜4の整数を表し、RC2はそれぞれ独立に、一価の基を表し、nC2は0〜3の整数を表し、*及び波線部はそれぞれ独立に、他の構造との結合部位を表し、mCは0又は1を表す。
【化7】

式PL−1中、RC1は水素原子又はアルキル基を表し、Xは−O−又は−NR−を表し、Rは水素原子又はアルキル基を表し、●は式C−1中のLC2との結合部位を表す。
式PL−2中、RP1はアルキル基、アシル基、又はアルコキシ基を表し、npは0〜4の整数を表し、●は式C−1中のLC2との結合部位を表す。
【請求項7】
前記画像記録層が、赤外線吸収剤、重合開始剤、及び、重合性化合物を更に含む、請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の平版印刷版原版。
【請求項8】
前記画像記録層が、バインダーポリマーを更に含む、請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載の平版印刷版原版。
【請求項9】
前記画像記録層が、酸発色剤を更に含む、請求項1〜請求項8のいずれか1項に記載の平版印刷版原版。
【請求項10】
画像記録層の未露光部が湿し水及び印刷インキの少なくともいずれかにより除去可能である、請求項1〜請求項のいずれか1項に記載の平版印刷版原版。
【請求項11】
請求項1〜請求項10のいずれか1項に記載の平版印刷版原版を、画像様に露光し、露光部と未露光部とを形成する露光工程、及び、
印刷インキ及び湿し水の少なくとも一方を供給して前記未露光部を除去する機上現像工程を含む
平版印刷版の製版方法。
【請求項12】
請求項1〜請求項10のいずれか1項に記載の平版印刷版原版を、画像様に露光し、露光部と未露光部とを形成する露光工程、及び、
pHが2以上11以下の現像液を供給して前記未露光部を除去する現像液現像工程を含む
平版印刷版の製版方法。
【請求項13】
有機ポリマー粒子と、
赤外線吸収剤と、
重合性化合物と、
重合開始剤と、を含有し、
前記有機ポリマー粒子が、下記式POにより表される構造を有する芳香族多価イソシアネート化合物と、水とを少なくとも反応させて得られる反応物であり、
前記式POにより表される構造を有する芳香族多価イソシアネート化合物が、下記式A−1により表される構造、及び、下記式B−1により表される構造を有する化合物を含む
感光性樹脂組成物。
【化8】

式PO中、RPO1はアルキレン基を表し、nは2〜200の整数を表し、RPO2はラジカル重合性基を含まない構造を表し、*は他の構造との結合部位を表す。
【化9】

式A−1中、Arは芳香環構造を表し、Lはそれぞれ独立に、単結合又は二価の連結基を表し、nA1は1〜4の整数を表し、Rはそれぞれ独立に、一価の基を表し、nA2は0〜3の整数を表し、*及び波線部はそれぞれ独立に、他の構造との結合部位を表し、mAは0又は1を表す。
式B−1中、Arは芳香環構造を表し、Lはそれぞれ独立に、単結合又は二価の連結基を表し、RPOはそれぞれ独立に、前記式POにより表される構造を含む基を表し、nB1は1〜4の整数を表し、Rはそれぞれ独立に、一価の置換基を表し、nB2は0〜3の整数を表し、*及び波線部はそれぞれ独立に、他の構造との結合部位を表し、mBは0又は1を表す。
【請求項14】
前記式POにより表される構造を有する芳香族多価イソシアネート化合物が、下記式A−2により表される構造を1個〜10個有し、かつ、下記式B−1により表される構造を有する化合物を含む、請求項13に記載の感光性樹脂組成物。
【化10】

式PO中、RPO1はアルキレン基を表し、nは2〜200の整数を表し、RPO2はラジカル重合性基を含まない構造を表し、*は他の構造との結合部位を表す。
【化11】

式A−2中、nA1は1〜4の整数を表し、*及び波線部はそれぞれ独立に、他の構造との結合部位を表し、mAは0又は1を表し、前記式POにより表される構造を有する芳香族多価イソシアネート化合物が式A−2により表される構造を複数有する場合、式A−2により表される構造はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。
式B−1中、Arは芳香環構造を表し、Lはそれぞれ独立に、単結合又は二価の連結基を表し、RPOはそれぞれ独立に、前記式POにより表される構造を含む基を表し、nB1は1〜4の整数を表し、Rはそれぞれ独立に、一価の置換基を表し、nB2は0〜3の整数を表し、*及び波線部はそれぞれ独立に、他の構造との結合部位を表し、mBは0又は1を表す。
【請求項15】
酸発色剤を更に含む、請求項13又は請求項14に記載の感光性樹脂組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、平版印刷版原版、平版印刷版の製版方法、有機ポリマー粒子、及び、感光性樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、平版印刷版は、印刷過程でインキを受容する親油性の画像部と、湿し水を受容する親水性の非画像部とからなる。平版印刷は、水と油性インキが互いに反発する性質を利用して、平版印刷版の親油性の画像部をインキ受容部、親水性の非画像部を湿し水受容部(インキ非受容部)として、平版印刷版の表面にインキの付着性の差異を生じさせ、画像部のみにインキを着肉させた後、紙などの被印刷体にインキを転写して印刷する方法である。
この平版印刷版を作製するため、従来、親水性の支持体上に親油性の感光性樹脂層(画像記録層)を設けてなる平版印刷版原版(PS版)が広く用いられている。通常は、平版印刷版原版を、リスフィルムなどの原画を通した露光を行った後、画像記録層の画像部となる部分を残存させ、それ以外の不要な画像記録層をアルカリ性現像液又は有機溶剤によって溶解除去し、親水性の支持体表面を露出させて非画像部を形成する方法により製版を行って、平版印刷版を得ている。
【0003】
また、地球環境への関心の高まりから、現像処理などの湿式処理に伴う廃液に関する環境課題がクローズアップされている。
上記の環境課題に対して、現像あるいは製版の簡易化や無処理化が指向されている。簡易な製版方法の一つとしては、「機上現像」と呼ばれる方法が行われている。すなわち、平版印刷版原版を露光後、従来の現像は行わず、そのまま印刷機に装着して、画像記録層の不要部分の除去を通常の印刷工程の初期段階で行う方法である。
従来の平版印刷版原版としては、例えば、特許文献1〜4に記載されたものが挙げられる。
【0004】
特許文献1には、熱により画像部に転換するマイクロカプセル化された親油性成分と親水性バインダーポリマーとを含有する記録層と、支持体と、を有する感熱平版印刷原版において、上記マイクロカプセルの壁材が付加重合性官能基を有することを特徴とする感熱平版印刷原版が記載されている。
特許文献2には、粗面化処理及び陽極酸化処理した後、親水性処理として珪酸ソーダ処理を施した後にポリビニルホスホン酸を含む水溶液で処理し、その後150〜230℃で乾燥することを特徴とする感光性平版印刷版材料用アルミニウム板支持体の製造方法が記載されている。
特許文献3には、支持体上に、(1)酸により架橋可能な官能基を少なくとも2個有する化合物及びラジカルにより重合可能な官能基を少なくとも2個有する化合物から選ばれる少なくとも1つの化合物を内包するマイクロカプセル、(2)光熱変換剤及び(3)反応促進剤を含有する画像形成層を有し、上記マイクロカプセルのカプセル壁の表面に、親水性ポリマーが共有結合で結合していることを特徴とする平版印刷版用原版が記載されている。
特許文献4には、支持体上に、ビニルカルバゾール化合物由来のモノマー単位を有するアクリルポリマー、及び/又は、ウレタン−アクリルハイブリッドポリマーを含有する光重合性感光層を有するネガ型平版印刷版原版を作製する工程、上記ネガ型平版印刷版原版を画像様に露光する工程、及び、pH4〜10であり、(成分A)特定の化合物、及び、(成分B)水、を少なくとも含み、有機溶剤の含有量が5質量%未満である現像液により、露光された上記ネガ型平版印刷版原版を現像する工程、を含み、上記現像する工程の前後での水洗工程及びガム引き工程を含まないことを特徴とする平版印刷版の製版方法版が記載されている。
【0005】
特許文献1:特開2000−211262号公報
特許文献2:特開2006−247856号公報
特許文献3:特開2004−098555号公報
特許文献4:特開2013−083949号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
平版印刷版においては、版の印刷可能な枚数(以下、「耐刷性」ともいう。)に優れた平版印刷版が求められている。
特に、近年においては、印刷におけるインキとして、紫外線(UV)の照射により硬化するインキ(「紫外線硬化型インキ」ともいう。)が用いられる場合がある。
紫外線硬化型インキは、瞬間乾燥可能なため生産性が高い、一般に溶剤の含有量が少ない、又は、無溶剤であるため環境汚染が低減されやすい、熱による乾燥を行わないか、又は、熱による乾燥を短時間として画像を形成できるため、印刷対象などの応用範囲が広がる等の利点を有している。
そのため、紫外線硬化型インキを用いた場合の耐刷性に優れる平版印刷版を提供することができる平版印刷版は、産業上非常に有用であると考えられる。
本発明者等は、鋭意検討した結果、特許文献1〜4に記載の平版印刷版原版では、特にインキとして紫外線硬化型インキを用いた場合に、得られる平版印刷版の耐刷性が不十分であるという問題点が存在することを見出した。
【0007】
本発明の実施形態が解決しようとする課題は、印刷において紫外線硬化型インキを用いた場合の耐刷性に優れる平版印刷版が得られる平版印刷版原版を提供することである。
また、本発明の別の実施形態が解決しようとする課題は、印刷において紫外線硬化型インキを用いた場合の耐刷性に優れる平版印刷版の製版方法を提供することである。
さらに、本発明の別の実施形態が解決しようとする課題は、新規な有機ポリマー粒子、及び、上記有機ポリマー粒子を含む樹脂組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための手段には、以下の態様が含まれる。
<1> 親水性支持体上に画像記録層を有し、
上記画像記録層が、有機ポリマー粒子を含み、
上記有機ポリマー粒子が、下記式POにより表される構造を有する芳香族多価イソシアネート化合物と、水とを少なくとも反応させて得られる反応物である
平版印刷版原版。
【0009】
【化1】
【0010】
式PO中、RPO1はアルキレン基を表し、nは2〜200の整数を表し、RPO2はラジカル重合性基を含まない構造を表し、*は他の構造との結合部位を表す。
<2> 上記式POにより表される構造を有する芳香族多価イソシアネート化合物が、下記式A−1により表される構造、及び、下記式B−1により表される構造を有する化合物を含む、上記<1>に記載の平版印刷版原版。
【0011】
【化2】
【0012】
式A−1中、Arは芳香環構造を表し、Lはそれぞれ独立に、単結合又は二価の連結基を表し、nA1は1〜4の整数を表し、Rはそれぞれ独立に、一価の基を表し、nA2は0〜3の整数を表し、*及び波線部はそれぞれ独立に、他の構造との結合部位を表し、mAは0又は1を表す。
式B−1中、Arは芳香環構造を表し、Lはそれぞれ独立に、単結合又は二価の連結基を表し、RPOはそれぞれ独立に、上記式POにより表される構造を含む基を表し、nB1は1〜4の整数を表し、Rはそれぞれ独立に、一価の置換基を表し、nB2は0〜3の整数を表し、*及び波線部はそれぞれ独立に、他の構造との結合部位を表し、mBは0又は1を表す。
<3> 上記式POにより表される構造を有する芳香族多価イソシアネート化合物が、下記式A−2により表される構造を1個〜10個有し、かつ、下記式B−2により表される構造を1個〜10個有する化合物を含む、上記<1>又は<2>に記載の平版印刷版原版。
【0013】
【化3】
【0014】
式A−2中、nA1は1〜4の整数を表し、*及び波線部はそれぞれ独立に、他の構造との結合部位を表し、mAは0又は1を表し、上記式POにより表される構造を有する芳香族多価イソシアネート化合物が式A−2により表される構造を複数有する場合、式A−2により表される構造はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。
式B−2中、RB1はそれぞれ独立に、水素原子又はアルキル基を表し、RB2はそれぞれ独立に、水素原子又はアルキル基を表し、nB3はそれぞれ独立に、10以上の整数を表し、RB3はそれぞれ独立に、アルキル基を表し、nB1は1〜4の整数を表し、*及び波線部はそれぞれ独立に、他の構造との結合部位を表し、mBは0又は1を表し、上記式POにより表される構造を有する芳香族多価イソシアネート化合物が式B−2により表される構造を複数有する場合、式B−2により表される構造はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。
<4> 上記有機ポリマー粒子が、ラジカル重合性基を有する、上記<1>〜<3>のいずれか1つに記載の平版印刷版原版。
<5> 上記有機ポリマー粒子が、式POにより表される構造を有する芳香族多価イソシアネート化合物と、ラジカル重合性基を有する芳香族多価イソシアネート化合物と、水と、を少なくとも反応させて得られる反応物である、上記<1>〜<4>のいずれか1つに記載の平版印刷版原版。
<6> 上記ラジカル重合性基を有する芳香族多価イソシアネート化合物が、下記式A−1により表される構造、及び、下記式C−1により表される構造を含む、上記<5>に記載の平版印刷版原版。
【0015】
【化4】
【0016】
式A−1中、Arは芳香環構造を表し、Lはそれぞれ独立に、単結合又は二価の連結基を表し、nA1は1〜4の整数を表し、Rはそれぞれ独立に、一価の基を表し、nA2は0〜3の整数を表し、*及び波線部はそれぞれ独立に、他の構造との結合部位を表し、mAは0又は1を表す。
式C−1中、Arは芳香環構造を表し、LC1はそれぞれ独立に、単結合又は二価の連結基を表し、LC2はそれぞれ独立に、nC3+1価の連結基を表し、Rはそれぞれ独立に、下記式PL−1により表される基又は式PL−2により表される基を表し、nC3はそれぞれ独立に、1〜10の整数を表し、nC1は1〜4の整数を表し、RC2はそれぞれ独立に、一価の基を表し、nC2は0〜3の整数を表し、*及び波線部はそれぞれ独立に、他の構造との結合部位を表し、mCは0又は1を表す。
【0017】
【化5】
【0018】
式PL−1中、RC1は水素原子又はアルキル基を表し、Xは−O−又は−NR−を表し、Rは水素原子又はアルキル基を表し、●は式C−1中のLC2との結合部位を表す。
式PL−2中、RP1はアルキル基、アシル基、又はアルコキシ基を表し、npは0〜4の整数を表し、●は式C−1中のLC2との結合部位を表す。
<7> 上記画像記録層が、赤外線吸収剤、重合開始剤、及び、重合性化合物を更に含む、上記<1>〜<6>のいずれか1つに記載の平版印刷版原版。
<8> 上記画像記録層が、バインダーポリマーを更に含む、上記<1>〜<7>のいずれか1つに記載の平版印刷版原版。
<9> 画像記録層の未露光部が湿し水及び印刷インキの少なくともいずれかにより除去可能である、上記<1>〜<8>のいずれか1つに記載の平版印刷版原版。
<10> 上記<1>〜<9>のいずれか1つに記載の平版印刷版原版を、画像様に露光し、露光部と未露光部とを形成する露光工程、及び、
印刷インキ及び湿し水の少なくとも一方を供給して上記未露光部を除去する機上現像工程を含む
平版印刷版の製版方法。
<11> 上記<1>〜<9>のいずれか1つに記載の平版印刷版原版を、画像様に露光し、露光部と未露光部とを形成する露光工程、及び、
pHが2以上11以下の現像液を供給して上記未露光部を除去する現像液現像工程を含む
平版印刷版の製版方法。
<12> 式POにより表される構造を有する芳香族多価イソシアネート化合物と、水とを少なくとも反応させて得られる反応物である
有機ポリマー粒子。
【0019】
【化6】
【0020】
式PO中、RPO1はアルキレン基を表し、nは2〜200の整数を表し、RPO2はラジカル重合性基を含まない構造を表し、*は他の構造との結合部位を表す。
<13> 上記式POにより表される構造を有する芳香族多価イソシアネート化合物が、下記式A−1により表される構造、及び、下記式B−1により表される構造を含有する、上記<12>に記載の有機ポリマー粒子。
【0021】
【化7】
【0022】
式A−1中、Arは芳香環構造を表し、Lはそれぞれ独立に、単結合又は二価の連結基を表し、nA1は1〜4の整数を表し、Rはそれぞれ独立に、一価の基を表し、nA2は0〜3の整数を表し、*及び波線部はそれぞれ独立に、他の構造との結合部位を表し、mAは0又は1を表す。
式B−1中、Arは芳香環構造を表し、Lはそれぞれ独立に、単結合又は二価の連結基を表し、RPOはそれぞれ独立に、構造中にポリアルキレン鎖を有する1価の基を表し、nB1は1〜4の整数を表し、Rはそれぞれ独立に、一価の置換基を表し、nB2は0〜3の整数を表し、*及び波線部はそれぞれ独立に、他の構造との結合部位を表し、mBは0又は1を表す。
<14> 上記式POにより表される構造を有する芳香族多価イソシアネート化合物が、下記式A−2により表される構造を1個〜10個有し、かつ、下記式B−2により表される構造を1個〜10個有する化合物を含む、上記<12>又は<13>に記載の有機ポリマー粒子。
【0023】
【化8】
【0024】
式A−2中、nA1は1〜4の整数を表し、*及び波線部はそれぞれ独立に、他の構造との結合部位を表し、mAは0又は1を表し、上記式POにより表される構造を有する芳香族多価イソシアネート化合物が式A−2により表される構造を複数有する場合、式A−2により表される構造はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。
式B−2中、RB1はそれぞれ独立に、水素原子又はアルキル基を表し、RB2はそれぞれ独立に、水素原子又はアルキル基を表し、nB3はそれぞれ独立に、10以上の整数を表し、RB3はそれぞれ独立に、アルキル基を表し、nB1は1〜4の整数を表し、*及び波線部はそれぞれ独立に、他の構造との結合部位を表し、mBは0又は1を表し、上記式POにより表される構造を有する芳香族多価イソシアネート化合物が式B−2により表される構造を複数有する場合、式B−2により表される構造はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。
<15> 上記有機ポリマー粒子が、式POにより表される構造を有する芳香族多価イソシアネート化合物と、ラジカル重合性基を有する芳香族多価イソシアネート化合物と、水と、を少なくとも反応させて得られる反応物である、上記<12>〜<14>のいずれか1つに記載の有機ポリマー粒子。
<16> 上記<12>〜<15>のいずれか1つに記載の有機ポリマー粒子と、
赤外線吸収剤と、
重合性化合物と、
重合開始剤と、を含有する
感光性樹脂組成物。
【発明の効果】
【0025】
本発明の実施形態によれば、印刷において紫外線硬化型インキを用いた場合の耐刷性に優れる平版印刷版が得られる平版印刷版原版を提供することができる。
また、本発明の別の実施形態によれば、印刷において紫外線硬化型インキを用いた場合の耐刷性に優れる平版印刷版の製版方法を提供することができる。
さらに、本発明の別の実施形態によれば、新規な有機ポリマー粒子、及び、上記有機ポリマー粒子を含む樹脂組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下において、本開示の内容について詳細に説明する。以下に記載する構成要件の説明は、本開示の代表的な実施態様に基づいてなされることがあるが、本開示はそのような実施態様に限定されるものではない。
なお、本明細書において、数値範囲を示す「〜」とはその前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用される。
また、本明細書における基(原子団)の表記において、置換及び無置換を記していない表記は、置換基を有さないものと共に置換基を有するものをも包含するものである。例えば「アルキル基」とは、置換基を有さないアルキル基(無置換アルキル基)のみならず、置換基を有するアルキル基(置換アルキル基)をも包含するものである。
本明細書において、「(メタ)アクリル」は、アクリル及びメタクリルの両方を包含する概念で用いられる語であり、「(メタ)アクリロイル」は、アクリロイル及びメタクリロイルの両方を包含する概念として用いられる語である。
また、本明細書中の「工程」の用語は、独立した工程だけではなく、他の工程と明確に区別できない場合であっても、その工程の所期の目的が達成されれば本用語に含まれる。 また、本開示において、「質量%」と「重量%」とは同義であり、「質量部」と「重量部」とは同義である。
更に、本開示において、2以上の好ましい態様の組み合わせは、より好ましい態様である。
また、本開示における重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は、特に断りのない限り、TSKgel GMHxL、TSKgel G4000HxL、TSKgel G2000HxL(何れも東ソー(株)製の商品名)のカラムを使用したゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)分析装置により、溶媒THF(テトラヒドロフラン)、示差屈折計により検出し、標準物質としてポリスチレンを用いて換算した分子量である。
本明細書において、「平版印刷版原版」の用語は、平版印刷版原版だけでなく、捨て版原版を包含する。また、「平版印刷版」の用語は、平版印刷版原版を、必要により、露光、現像などの操作を経て作製された平版印刷版だけでなく、捨て版を包含する。捨て版原版の場合には、必ずしも、露光、現像の操作は必要ない。なお、捨て版とは、例えばカラーの新聞印刷において一部の紙面を単色又は2色で印刷を行う場合に、使用しない版胴に取り付けるための平版印刷版原版である。
以下、本開示を詳細に説明する。
【0027】
(平版印刷版原版)
本開示に係る平版印刷版原版は、親水性支持体上に画像記録層を有し、上記画像記録層が、有機ポリマー粒子を含み、上記有機ポリマー粒子が、式POにより表される構造を有する芳香族多価イソシアネート化合物と、水とを少なくとも反応させて得られる反応物である。
すなわち、本開示に係る平版印刷版原版は、親水性支持体上と、上記画像記録層とを備える。
【0028】
本発明者が鋭意検討した結果、本開示に係る平版印刷版原版によれば、印刷において紫外線硬化型インキを用いた場合の耐刷性に優れる平版印刷版が得られることを見出した。
上記効果が得られる詳細なメカニズムは不明であるが、以下のように推測される。
有機ポリマー粒子が、芳香族多価イソシアネート化合物と、水とを少なくとも反応させて得られる反応物であることにより、有機ポリマー粒子に芳香環構造が含まれ、粒子自体の剛性が高くなり、印刷において紫外線硬化型インキを用いた場合の耐刷性(以下、UV耐刷性ともいう。)が向上すると考えられる。
また、上述のように剛性の高い有機ポリマー粒子が、式POにより表される構造を有することにより、平版印刷版原版内で均一に近い状態で分散されやすいという観点からも、UV耐刷性が向上すると考えられる。
更に、本開示において用いられる有機ポリマー粒子は、式POにより表される構造を有することにより、インキ又は湿し水との親和性が向上し、機上現像性に優れた平版印刷版原版が得られやすいと考えられる。
また、式POにより表される構造を有することにより、現像液との親和性が向上し、後述する現像液を用いた現像を行う場合であっても、現像性に優れた平版印刷版原版が得られやすいと考えられる。
【0029】
<画像記録層>
本開示に係る平版印刷版原版は、上記有機ポリマー粒子を含む画像記録層を有する。
本開示に用いられる画像記録層は、ネガ型画像記録層であることが好ましく、水溶性又は水分散性のネガ型画像記録層であることがより好ましい。
本開示における画像記録層は、下記第一の態様又は第二の態様のいずれかの態様であることが好ましい。
第一の態様:有機ポリマー粒子、赤外線吸収剤、重合開始剤、及び、重合性化合物を含有する。
第二の態様:有機ポリマー粒子、赤外線吸収剤及び疎水性熱可塑性ポリマー粒子を含有する。
本開示において用いられる画像記録層は、耐刷性、特にUV耐刷性の観点から、上記第一の態様において、バインダーポリマーを更に含有することが好ましい。
また、本開示において用いられる画像記録層は、現像性の観点から、上記第一の態様において、疎水性熱可塑性ポリマー粒子を更に含有してもよい。
更に、本開示において用いられる画像記録層は、UV耐刷性及び現像性の観点から、上記第一の態様において、ミクロゲルを更に含有してもよい。
疎水性熱可塑性有機ポリマー粒子、ミクロゲル等の成分の詳細については後述する。
本開示に係る平版印刷版原版は、画像記録層の未露光部が湿し水及び印刷インキの少なくともいずれかにより除去可能であることが好ましい。
以下、画像記録層に含まれる各成分の詳細について説明する。
【0030】
〔有機ポリマー粒子〕
本開示において用いられる有機ポリマー粒子は、式POにより表される構造を有する芳香族多価イソシアネート化合物(以下、「第一の芳香族多価イソシアネート化合物」ともいう。)と、水とを少なくとも反応させて得られる反応物である。
第一の芳香族多価イソシアネート化合物と、水と、を少なくとも反応させることにより、第一の芳香族多価イソシアネート化合物に含まれるイソシアネート基の一部がアミノ基へと加水分解されると考えられる。その後、上記アミノ基と、第一の芳香族多価イソシアネート化合物における加水分解されていないイソシアネート基と、が反応することによりウレア結合を形成し、反応物として有機ポリマー粒子が得られると考えられる。
ここで、第一の芳香族多価イソシアネート化合物と、水とを少なくとも反応させる、とは、第一の芳香族多価イソシアネート化合物、及び、水以外に、更に他の成分を反応させてもよいことを意味する。上記他の成分としては、後述するラジカル重合性基を有する芳香族多価イソシアネート化合物等が挙げられる。
本開示における有機ポリマー粒子は、構造により特定することが技術的に困難であるため、便宜上、製造方法により規定されている。ここで、第一の芳香族多価イソシアネート化合物と、水とを少なくとも反応させることにより得られる、ウレア結合により形成された網目状の構造を有する粒子であれば、他の方法により製造した粒子であっても、本開示における有機ポリマー粒子に含まれるものとする。
また、本開示における有機ポリマー粒子は、上述の、第一の芳香族多価イソシアネート化合物と、水とを少なくとも反応させて得られる反応物でできている粒子であればよく、上記反応物を粒子形状として得て、そのまま使用してもよいし、上記反応物を得た後に、反応物を用いて粒子を形成してもよい。
また、上記反応時には、必要に応じて反応触媒等の成分を更に使用してもよい。反応触媒としては、公知のウレア化触媒等が挙げられる。
【0031】
−第一の芳香族多価イソシアネート化合物−
第一の芳香族多価イソシアネート化合物としては、特に限定されないが、UV耐刷性の観点から、複数の芳香環構造と、複数のイソシアネート基と、を有する化合物が好ましい。
また、機上現像性の観点からは、式POにより表される構造を複数有することが好ましい。
UV耐刷性の観点から、第一の芳香族多価イソシアネート化合物の全質量に対する芳香環構造の含有量は、30質量%〜100質量%であることが好ましく、60質量%〜100質量%であることがより好ましい。
UV耐刷性の観点から、第一の芳香族多価イソシアネート化合物の全質量に対する式POにより表される構造に含まれるポリオキシアルキレン鎖の質量は、1質量%〜50質量%であることが好ましく、3質量%〜20質量%であることがより好ましく、5質量%〜15質量%であることが更に好ましい。
また、第一の芳香族多価イソシアネート化合物における式POにより表される構造に含まれるポリオキシアルキレン鎖の数平均分子量(Mn)は、400〜20,000であることが好ましく、1,000〜10,000であることがより好ましく、2,000〜4,000であることが更に好ましい。
【0032】
<<芳香環構造>>
第一の芳香族多価イソシアネート化合物に含まれる芳香環構造としては、ベンゼン環構造、ナフタレン環構造、アントラセン環構造、フェナントレン環構造等が挙げられ、ベンゼン環構造であることが好ましい。第一の多価イソシアネート化合物が複数の芳香環を含む場合、それぞれの芳香環は同一であってもよいし、異なっていてもよい。
また、上記芳香環構造は、置換基を有していてもよく、好ましい置換基としてはアルキル基、ハロゲン原子等が挙げられる。
【0033】
<<式POにより表される構造>>
本開示に用いられる第一の芳香族多価イソシアネート化合物は、下記式POにより表される構造を含む。
【0034】
【化9】
【0035】
式PO中、RPO1はアルキレン基を表し、炭素数2〜10のアルキレン基であることが好ましく、炭素数2〜4のアルキレン基であることがより好ましく、エチレン基、1−メチルエチレン基又は2−メチルエチレン基が更に好ましい。
式PO中、nは2〜200の整数を表し、10〜150であることが好ましく、10〜100であることがより好ましい。
式PO中、RPO2はラジカル重合性基を含まない構造を表し、アルキル基であることが好ましく、炭素数1〜10のアルキル基であることがより好ましく、炭素数1〜4のアルキル基であることが更に好ましく、メチル基であることが特に好ましい。
式PO中、*は他の構造との結合部位を表す。
【0036】
<<式A−1により表される構造、及び、式B−1により表される構造>>
本開示において用いられる第一の芳香族多価イソシアネート化合物は、下記式A−1により表される構造、及び、下記式B−1により表される構造を有する化合物を含むことが好ましい。
【0037】
【化10】
【0038】
式A−1中、Arは芳香環構造を表し、Lはそれぞれ独立に、単結合又は二価の連結基を表し、nA1は1〜4の整数を表し、Rはそれぞれ独立に、一価の基を表し、nA2は0〜3の整数を表し、*及び波線部はそれぞれ独立に、他の構造との結合部位を表し、mAは0又は1を表す。
式B−1中、Arは芳香環構造を表し、Lはそれぞれ独立に、単結合又は二価の連結基を表し、RPOはそれぞれ独立に、式POにより表される構造を含む基を表し、nB1は1〜4の整数を表し、Rはそれぞれ独立に、一価の置換基を表し、nB2は0〜3の整数を表し、*及び波線部はそれぞれ独立に、他の構造との結合部位を表し、mBは0又は1を表す。
【0039】
式A−1中、Arは、UV耐刷性の観点から、ベンゼン環構造、ナフタレン環構造、アントラセン環構造又はビフェニル構造であることが好ましく、ベンゼン環構造であることがより好ましい。
式A−1中、水との反応時の反応性の観点から、Lはそれぞれ独立に、又はアルキレン基であることが好ましく、単結合であることがより好ましい。
式A−1中、nA1は1〜3の整数であることが好ましく、1又は2であることがより好ましい。
式A−1中、Rはそれぞれ独立に、アルキル基、アルコキシ基又はハロゲン原子であることが好ましい。
式A−1中、nA2は0又は1であることが好ましく、0であることがより好ましい。
【0040】
式B−1中、Arは、UV耐刷性の観点から、ベンゼン環構造、ナフタレン環構造、アントラセン環構造又はビフェニル構造であることが好ましく、ベンゼン環構造であることがより好ましい。
式B−1中、Lはそれぞれ独立に、単結合、又はアルキレン基であることが好ましく、単結合であることがより好ましい。
式B−1中、RPOはそれぞれ独立に、下記式PO−2により表される基であることが好ましい。
【0041】
【化11】
【0042】
式PO−2中、LPOは単結合又は二価の有機基を表し、単結合又はアルキレン基であることが好ましく、単結合であることがより好ましい。
式PO−2中、RPO1はそれぞれ独立に、上述の式POにより表される構造を表す。
【0043】
式B−1中、nB1は1〜3の整数であることが好ましく、1又は2であることがより好ましく、1であることが更に好ましい。
式B−1中、Rはそれぞれ独立に、アルキル基、アルコキシ基又はハロゲン原子であることが好ましい。
式B−1中、nB2は0又は1であることが好ましく、0であることがより好ましい。
【0044】
本開示において用いられる第一の芳香族多価イソシアネート化合物は、式A−1により表される構造を、1個〜20個有することが好ましく、1個〜10個有することがより好ましい。
また、本開示において用いられる第一の芳香族多価イソシアネート化合物は、式B−1により表される構造を、1個〜20個有することが好ましく、1個〜10個有することがより好ましい。
更に、本開示において用いられる第一の芳香族多価イソシアネート化合物の全質量に対する、式A−1により表される構造と、式B−1により表される構造との合計含有量(質量)は、UV耐刷性の観点から、50質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることが更に好ましい。
上限は特に限定されないが、99質量%以下であることが好ましい。
本開示において用いられる第一の芳香族多価イソシアネート化合物における、式A−1により表される構造(A−1)と、式B−1により表される構造(B−1)の含有比は、個数比で、A−1:B−1=1:1〜300:1であることが好ましく、1:1〜100:1であることがより好ましい。
本開示において用いられる第一の芳香族多価イソシアネート化合物における、式A−1により表される構造(A−1)と、式B−1により表される構造(B−1)の含有比は、質量比で、A−1:B−1=1:10〜10:1であることが好ましく、1:3〜3:1:であることがより好ましい。
【0045】
<<式A−2により表される構造、及び、式B−2により表される構造>>
また、本開示において用いられる第一の芳香族多価イソシアネート化合物は、下記式A−2により表される構造を1個〜10個有し、かつ、下記式B−2により表される構造を1個〜10個有する化合物を含むことが好ましい。
式A−2により表される構造は式A−1により表される構造に、式B−2により表される構造は式B−1により表される構造に、それぞれ含まれる。
【0046】
【化12】
【0047】
式A−2中、nA1は1〜4の整数を表し、*及び波線部はそれぞれ独立に、他の構造との結合部位を表し、mAは0又は1を表し、上記式POにより表される構造を有する芳香族多価イソシアネート化合物が式A−2により表される構造を複数有する場合、式A−2により表される構造はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。
式B−2中、RB1はそれぞれ独立に、水素原子又はアルキル基を表し、RB2はそれぞれ独立に、水素原子又はアルキル基を表し、nB3はそれぞれ独立に、10以上の整数を表し、RB3はそれぞれ独立に、アルキル基を表し、nB1は1〜4の整数を表し、*及び波線部はそれぞれ独立に、他の構造との結合部位を表し、mBは0又は1を表し、上記式POにより表される構造を有する芳香族多価イソシアネート化合物が式B−2により表される構造を複数有する場合、式B−2により表される構造はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。
なお、式B−2中、ウレタン結合の酸素原子と結合するRB1、RB2及びRB3を含む構造が、上述の式POにより表される構造に該当する。
【0048】
式A−2中、nA1は上述の式A−1におけるnA1と同義であり、好ましい態様も同様である。
【0049】
式B−2中、RB1はそれぞれ独立に、水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基であることが好ましく、水素原子又はメチル基であることがより好ましい。
式B−2中、RB2はそれぞれ独立に、水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基であることが好ましく、水素原子又はメチル基であることがより好ましい。
式B−2中、RB1及びRB2はいずれも水素原子であるか、又は、一方がメチル基であり、もう一方が水素原子であることが好ましい。
式B−2中、nB3はそれぞれ独立に、2〜100の整数を表し、4〜50の整数がより好ましく、10〜30の整数がより好ましい。
式B−2中、RB3はそれぞれ独立に、炭素数1〜10のアルキル基が好ましく、炭素数1〜4のアルキル基がより好ましく、メチル基が更に好ましい。
式B−2中、nB1は上述の式B−1におけるnB1と同義であり、好ましい態様も同様である。
【0050】
式A−2中の*は、他の式A−2により表される構造中の波線部又は式B−2により表される構造中の波線部と結合することが好ましい。
また、式B−2中の*は、式A−2により表される構造中の波線部又は他の式B−2により表される構造中の波線部と結合することが好ましい。
【0051】
更に、本開示において用いられる第一の芳香族多価イソシアネート化合物の全質量に対する、式A−2により表される構造と、式B−2により表される構造との合計含有量(質量)は、UV耐刷性の観点から、50質量%〜100質量%であることが好ましく、70質量%〜100質量%であることがより好ましく、90質量%〜100質量%であることが更に好ましい。
本開示において用いられる第一の芳香族多価イソシアネート化合物における、式A−2により表される構造(A−2)と、式B−2により表される構造(B−2)の含有比は、個数比で、A−2:B−2=1:1〜300:1であることが好ましく、1:1〜100:1であることがより好ましい。
本開示において用いられる第一の芳香族多価イソシアネート化合物における、式A−2により表される構造(A−2)と、式B−2により表される構造(B−2)の含有比は、質量比で、A−2:B−2=1:10〜10:1であることが好ましく、1:3〜3:1であることがより好ましい。
【0052】
<<その他の構造>>
第一の芳香族多価イソシアネート化合物は、その他の構造を有していてもよい。
その他の構造としては、特に限定されないが、UV耐刷性の観点から、芳香環構造を含む構造であることが好ましく、ベンゼン環構造を含む構造であることがより好ましい。
【0053】
<<第一の芳香族多価イソシアネート化合物の製造方法>>
第一の芳香族多価イソシアネート化合物の製造方法としては、特に限定されないが、例えば、式POにより表される構造を有しない芳香族多価イソシアネート化合物と、式POにより表される構造を有するアルコール化合物と、を反応させる方法が挙げられる。
具体的には、例えば、後述する実施例における製造方法が挙げられる。
【0054】
<<第一の芳香族多価イソシアネート化合物の例>>
第一の芳香族多価イソシアネート化合物の具体例としては、下記化合物1−1〜1−5が挙げられるが、これに限定されるものではない。
各化合物の製造方法の詳細は実施例において説明する。
【0055】
【化13】
【0056】
【化14】
【0057】
上記化合物1−1〜1−5中、●はR〜Rのいずれかが結合するベンゼン環との結合部位を表し、括弧の添え字は繰り返し数を表す。また、R〜Rの記載におけるモル%の記載は、それぞれの構造の含有量を示している。
化合物1−4中、*と波線部は互いに結合する。
【0058】
第一の芳香族多価イソシアネート化合物の使用量は、水との反応に用いられる芳香族多価イソシアネート化合物の全質量に対し、30質量%〜100質量%であることが好ましく、60質量%〜100質量%であることがより好ましい。
【0059】
−第二の芳香族多価イソシアネート化合物−
本開示において用いられる有機ポリマー粒子は、ラジカル重合性基を有することが好ましい。有機ポリマー粒子がラジカル重合性基を有する場合、例えば画像記録層の画像部において、上記ラジカル重合性基が後述する重合性化合物と重合することにより、より平版印刷版のUV耐刷性が向上しやすくなると考えられる。
第二の芳香族多価イソシアネート化合物として、ラジカル重合性基をさらに有する化合物を使用することにより、有機ポリマー粒子にラジカル重合性基を導入することができる。
また、本開示において用いられる有機ポリマー粒子は、式POにより表される構造を有する芳香族多価イソシアネート化合物(第一の芳香族多価イソシアネート化合物)と、ラジカル重合性基を有する芳香族多価イソシアネート化合物(「第二の芳香族多価イソシアネート化合物」ともいう。)と、水と、を少なくとも反応させて得られる反応物であることが好ましい。
ラジカル重合性基を有する芳香族多価イソシアネート化合物であっても、上述の式POにより表される構造を有する化合物であれば、第二の芳香族多価イソシアネート化合物ではなく、第一の芳香族多価イソシアネート化合物に該当する。
第一の芳香族多価イソシアネート化合物と、水との反応時に、第二の芳香族多価イソシアネート化合物を更に用いることにより、有機ポリマー粒子にラジカル重合性基が導入される。
【0060】
第二の芳香族多価イソシアネート化合物としては、特に限定されないが、UV耐刷性の観点から、複数の芳香環構造と、複数のラジカル重合性基と、を有する化合物が好ましい。
UV耐刷性の観点から、第二の芳香族多価イソシアネート化合物の全質量に対する芳香環構造の量は、10質量%〜95質量%であることが好ましく、30質量%〜90質量%であることがより好ましい。
UV耐刷性の観点から、第二の芳香族多価イソシアネート化合物1g当たりに含まれるラジカル重合性基の量(mol)は、0.1mmol/g〜10mmol/gであることが好ましく、1mmol/g〜5mmol/gであることがより好ましい。
【0061】
<<芳香環構造>>
第二の芳香族多価イソシアネート化合物に含まれる芳香環構造としては、ベンゼン環構造、ナフタレン環構造、アントラセン環構造、フェナントレン環構造等が挙げられ、ベンゼン環構造であることが好ましい。第一の多価イソシアネート化合物が複数の芳香環を含む場合、それぞれの芳香環は同一であってもよいし、異なっていてもよい。
また、上記芳香環構造は、置換基を有していてもよく、好ましい置換基としてはアルキル基、ハロゲン原子等が挙げられる。
【0062】
<<ラジカル重合性基>>
第二の芳香族多価イソシアネート化合物に含まれるラジカル重合性基としては、特に限定されないが、エチレン性不飽和結合を含む基が好ましく、(メタ)アクリロキシ基、(メタ)アクリルアミド基、ビニルフェニル基等が挙げられ、反応性の観点から、(メタ)アクリロキシ基が好ましい。
【0063】
第二の芳香族多価イソシアネート化合物は、下記式C−1により表される構造を含むことが好ましく、上述の式A−1により表される構造、及び、下記式C−1により表される構造を含むことがより好ましい。
第二の芳香族多価イソシアネート化合物に含まれる式A−1により表される構造については、上述の式A−1の説明における、「式POにより表される構造を有する芳香族多価イソシアネート化合物(第一の芳香族多価イソシアネート化合物)」の記載を「ラジカル重合性基を有する芳香族多価イソシアネート化合物(第二の芳香族多価イソシアネート化合物)」と読み替える以外は、第一の芳香族多価イソシアネート化合物における式A−1により表される構造と同義であり、好ましい態様も同様である。
【0064】
【化15】
【0065】
式C−1中、Arは芳香環構造を表し、LC1はそれぞれ独立に、単結合又は二価の連結基を表し、LC2はそれぞれ独立に、nC3+1価の連結基を表し、Rはそれぞれ独立に、下記式PL−1により表される基又は式PL−2により表される基を表し、nC3はそれぞれ独立に、1〜10の整数を表し、nC1は1〜4の整数を表し、RC2はそれぞれ独立に、一価の基を表し、nC2は0〜3の整数を表し、*及び波線部はそれぞれ独立に、他の構造との結合部位を表し、mCは0又は1を表す。
【0066】
【化16】
【0067】
式PL−1中、RC1は水素原子又はアルキル基を表し、Xは−O−又は−NR−を表し、Rは水素原子又はアルキル基を表し、●は式C−1中のLC2との結合部位を表す。
式PL−2中、RP1はアルキル基、アシル基、又はアルコキシ基を表し、npは0〜4の整数を表し、●は式C−1中のLC2との結合部位を表す。
【0068】
式C−1中、Arは芳香環構造を表し、UV耐刷性の観点から、ベンゼン環構造、ナフタレン環構造、アントラセン環構造又はビフェニル構造であることが好ましく、ベンゼン環構造であることがより好ましい。
式C−1中、LC1はそれぞれ独立に、単結合又は、アルキレン構造であることが好ましく、単結合であることがより好ましい。
式C−1中、LC2はそれぞれ独立に、nC3+1価の連結基を表し、エーテル結合を含んでもよいnC3+1価の炭化水素基が好ましく、ポリオキシアルキレン基がより好ましく、アルキレン基の炭素数が2〜4のポリオキシアルキレン基が更に好ましく、エチレン基、1−メチルエチレン基又は2−メチルエチレン基が特に好ましい。
式C−1中、Lc2としては、ポリオキシアルキレンジオール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール等のポリオール化合物からヒドロキシ基を除いた部分構造が挙げられる。
式C−1中、Rはそれぞれ独立に、式PL−1により表される基であることが好ましい。
また、合成適性上の観点からは、複数のRはいずれも同じ基であることが好ましい。
式C−1中、nC3はそれぞれ独立に、1〜3の整数が好ましく、1がより好ましい。
式C−1中、nC1は1〜3の整数であることが好ましく、1又は2であることがより好ましく、1であることが更に好ましい。
式C−1中、RC2はそれぞれ独立に、アルキル基、アルコキシ基又はハロゲン原子であることが好ましい。
式C−1中、nC2は0又は1であることが好ましく、0であることがより好ましい。
【0069】
式PL−1中、RC1は水素原子又はメチル基が好ましく、水素原子がより好ましい。
式PL−1中、Xは−O−であることが好ましい。
式PL−1中、Xが−NR−である場合のRはアルキル基が好ましく、メチル基がより好ましい。
式PL−2中、RP1はアルキル基であることが好ましく、炭素数1〜4のアルキル基がより好ましい。
式PL−2中、npは0又は1であることが好ましく、0であることがより好ましい。
【0070】
本開示において用いられる第二の芳香族多価イソシアネート化合物は、式A−1により表される構造を、1個〜20個有することが好ましく、1個〜10個有することがより好ましい。
また、本開示において用いられる第二の芳香族多価イソシアネート化合物は、式C−1により表される構造を、1個〜20個有することが好ましく、1個〜10個有することがより好ましい。
更に、本開示において用いられる第二の芳香族多価イソシアネート化合物の全質量に対する、式A−1により表される構造と、式C−1により表される構造との合計含有量(質量)は、UV耐刷性の観点から、50質量%〜100質量%であることが好ましく、70質量%〜100質量%であることがより好ましい。
本開示において用いられる第二の芳香族多価イソシアネート化合物における、式A−1により表される構造(A−1)と、式C−1により表される構造(C−1)の含有比は、個数比で、A−1:C−1=1:100〜100:1であることが好ましく、1:10〜10:1であることがより好ましい。
本開示において用いられる第二の芳香族多価イソシアネート化合物における、式A−1により表される構造(A−1)と、式C−1により表される構造(C−1)の含有比は、質量比で、A−1:C−1=1:10〜10:1であることが好ましく、1:5〜5:1であることがより好ましい。
【0071】
<<式A−2により表される構造、及び、式C−2により表される構造>>
また、本開示において用いられる第二の芳香族多価イソシアネート化合物は、第一の芳香族多価イソシアネートにおいて説明した式A−2により表される構造を1個〜10個有し、かつ、下記式C−2により表される構造を1個〜10個有する化合物を含むことが好ましい。
第二の芳香族多価イソシアネート化合物に含まれる式A−2により表される構造については、上述の式A−2の説明における、「式POにより表される構造を有する芳香族多価イソシアネート化合物(第一の芳香族多価イソシアネート化合物)」の記載を「ラジカル重合性基を有する芳香族多価イソシアネート化合物(第二の芳香族多価イソシアネート化合物)」と読み替える以外は、第一の芳香族多価イソシアネート化合物における式A−2により表される構造と同義であり、好ましい態様も同様である。
式A−2により表される構造は式A−1により表される構造に、式C−2により表される構造は式C−1により表される構造に、それぞれ含まれる。
【0072】
【化17】
【0073】
式C−2中、RC3はそれぞれ独立に、水素原子又はアルキル基を表し、RC4はそれぞれ独立に、水素原子又はアルキル基を表し、nC3はそれぞれ独立に、2〜100の整数を表し、RC1はそれぞれ独立に、水素原子又はアルキル基を表し、nC1は1〜4の整数を表し、*及び波線部はそれぞれ独立に、他の構造との結合部位を表し、mCは0又は1を表し、上記第二の芳香族多価イソシアネート化合物が式C−2により表される構造を複数有する場合、式C−2により表される構造はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。
【0074】
式C−2中、RC3はそれぞれ独立に、水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基であることが好ましく、水素原子又はメチル基であることがより好ましい。
式C−2中、RC4はそれぞれ独立に、水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基であることが好ましく、水素原子又はメチル基であることがより好ましい。
式C−2中、RC3及びRC4はいずれも水素原子であるか、又は、一方がメチル基であり、もう一方が水素原子であることが好ましい。
【0075】
式C−2中、nC3はそれぞれ独立に、0〜100の整数を表し、0〜50の整数がより好ましく、2〜10の整数がより好ましい。
式C−2中、RC1及びnC1はそれぞれ独立に、上述の式C−1におけるRC1及びnC1と同義であり、好ましい態様も同様である。
【0076】
式A−2中の*は、他の式A−2により表される構造中の波線部又は式C−2により表される構造中の波線部と結合することが好ましい。
また、式C−2中の*は、式A−2により表される構造中の波線部又は他の式C−2により表される構造中の波線部と結合することが好ましい。
【0077】
更に、本開示において用いられる第二の芳香族多価イソシアネート化合物の全質量に対する、式A−2により表される構造と、式C−2により表される構造との合計含有量(質量)は、UV耐刷性の観点から、10質量%〜100質量%であることが好ましく、30質量%〜100質量%であることがより好ましい。
本開示において用いられる第二の芳香族多価イソシアネート化合物における、式A−2により表される構造(A−2)と、式C−2により表される構造(C−2)の含有比は、個数比で、A−2:C−2=1:100〜100:1であることが好ましく、1:10〜10:1であることがより好ましい。
本開示において用いられる第二の芳香族多価イソシアネート化合物における、式A−2により表される構造(A−2)と、式C−2により表される構造(C−2)の含有比は、質量比で、A−2:C−2=1:10〜10:1であることが好ましく、1:5〜5:1であることがより好ましい。
【0078】
<<その他の構造>>
第二の芳香族多価イソシアネート化合物は、その他の構造を有していてもよい。
その他の構造としては、特に限定されないが、UV耐刷性の観点から、芳香環構造を含む構造であることが好ましく、ベンゼン環構造を含む構造であることがより好ましい。
【0079】
<<第二の芳香族多価イソシアネート化合物の製造方法>>
第二の芳香族多価イソシアネート化合物の製造方法としては、特に限定されないが、例えば、ラジカル重合性基を有しない芳香族多価イソシアネート化合物と、ラジカル重合性基を有するアルコール化合物と、を反応させる方法が挙げられる。
具体的には、例えば、後述する実施例における製造方法が挙げられる。
【0080】
<<第二の芳香族多価イソシアネート化合物の例>>
第二の芳香族多価イソシアネート化合物の具体例としては、下記化合物2−1〜2−5が挙げられるが、これに限定されるものではない。
各化合物の製造方法の詳細は実施例において説明する。
【0081】
【化18】
【0082】
【化19】
【0083】
上記化合物2−1〜2−5中、●はR〜Rのいずれかが結合するベンゼン環との結合部位を表し、括弧の添え字は繰り返し数を表す。また、R〜Rの記載におけるモル%の記載は、それぞれの構造の含有量を示している。
化合物2−3中、*と波線部は互いに結合する。
【0084】
第二の芳香族多価イソシアネート化合物の使用量は、水との反応に用いられる芳香族多価イソシアネート化合物の全質量に対し、10質量%〜90質量%であることが好ましく、30質量%〜80質量%であることがより好ましい。
【0085】
−その他の芳香族多価イソシアネート化合物−
有機ポリマー粒子の製造時には、その他の芳香族多価イソシアネート化合物として、その他の芳香族多価イソシアネート化合物(以下「第三の芳香族多価イソシアネート化合物」ともいう。)を更に用いてもよい。
第三の芳香族多価イソシアネート化合物とは、式POにより表される構造、及び、ラジカル重合性基を有しない芳香族多価イソシアネート化合物であり、例えば、UV耐刷性の観点からは、上述の第一の芳香族多価イソシアネート化合物における式A−1により表される構造を含む化合物が好ましく、上述の第一の芳香族多価イソシアネート化合物における式A−2により表される構造を含む化合物がより好ましい。
第三の芳香族多価イソシアネート化合物に含まれる式A−1又は式A−2により表される構造については、上述の式A−1又は式A−2の説明における、「式POにより表される構造を有する芳香族多価イソシアネート化合物(第一の芳香族多価イソシアネート化合物)」の記載を「その他の芳香族多価イソシアネート化合物(第三の芳香族多価イソシアネート化合物)」と読み替える以外は、第一の芳香族多価イソシアネート化合物における式A−1により表される構造と同義であり、好ましい態様も同様である。
第三の芳香族多価イソシアネート化合物が、上述の式A−2により表される構造を含む化合物である場合、UV耐刷性の観点から、上述の式A−2により表される構造を、第三の芳香族多価イソシアネート化合物の全質量に対し、50質量%以上含むことが好ましく、70質量%〜100質量%含むことがより好ましく、90質量%〜100質量%含むことが更に好ましく、100質量%含むことが特に好ましい。
第三の芳香族多価イソシアネート化合物が、上述の式A−2により表される構造を含むことにより、水と、第一の芳香族多価イソシアネート化合物と、必要に応じて第二の芳香族多価イソシアネート化合物と、第三の芳香族多価イソシアネート化合物と、の反応物において、架橋構造が密に形成され、芳香環の密度が上昇するため、特にUV耐刷性が向上しやすいと考えられる。
【0086】
第三の芳香族多価イソシアネート化合物の具体例としては、下記化合物3−1が挙げられるが、これに限定されるものではない。
第三の芳香族多価イソシアネート化合物としては、市販品を用いることも可能であり、例えば、ミリオネートMR−200(東ソー(株)製)等が挙げられる。
【0087】
【化20】
【0088】
第三の芳香族多価イソシアネート化合物の使用量は、水との反応に用いられる芳香族多価イソシアネート化合物の全質量に対し、5質量%〜60質量%であることが好ましく、10質量%〜50質量%であることがより好ましい。
【0089】
−有機ポリマー粒子の好ましい態様−
有機ポリマー粒子としては、水と、第一の芳香族多価イソシアネート化合物と、第二の芳香族多価イソシアネート化合物と、第三の芳香族多価イソシアネート化合物と、を反応して得られる反応物が好ましい。
上記態様によれば、UV耐刷性、機上現像性、及び、インキ着肉性に優れた平版印刷版原版が得られやすい。
【0090】
−有機ポリマー粒子の特性−
本開示に係る有機ポリマー粒子の体積平均粒径は、UV耐刷性の向上の観点から、50nm〜500nmであることが好ましく、100nm〜200nmであることがより好ましい。
有機ポリマー粒子の体積平均粒径は、レーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置LA−920((株)堀場製作所製)により測定する。
【0091】
−有機ポリマー粒子の例−
本開示において用いられる有機ポリマー粒子としては、下記表に記載のP−1〜P−17が挙げられる。
下記表中の各化合物と、水と反応させて得られる反応物が、本開示において用いられる有機ポリマー粒子である。下記表中、化合物1−1〜1−5、2−1〜2−5及び3−1は、上述の化合物1−1〜1−5、2−1〜2−5及び3−1をそれぞれ意味している。
【0092】
【表1】
【0093】
−有機ポリマー粒子の含有量−
本開示に係る平版印刷版原版の画像記録層は、有機ポリマー粒子を、画像記録層の全質量に対し、10質量%〜80質量%含有することが好ましく、30質量%〜60質量%含有することがより好ましい。
【0094】
〔赤外線吸収剤〕
赤外線吸収剤は、吸収した赤外線を熱に変換する機能と赤外線により励起して後述の重合開始剤に電子移動及び/又はエネルギー移動する機能を有する。本開示において使用される赤外線吸収剤は、波長760nm〜1,200nmに吸収極大を有する染料又は顔料が好ましく、染料がより好ましい。
染料としては、特開2014−104631号公報の段落0082〜0088に記載のものを使用できる。
顔料の平均粒径は、0.01μm〜1μmが好ましく、0.01μm〜0.5μmがより好ましい。顔料を分散するには、インク製造やトナー製造等に用いられる公知の分散技術が使用できる。詳細は、「最新顔料応用技術」(CMC出版、1986年刊)などに記載されている。
赤外線吸収剤は、1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
赤外線吸収剤の含有量は、画像記録層の全質量に対し、0.05質量%〜30質量%が好ましく、0.1質量%〜20質量%がより好ましく、0.2質量%〜10質量%が特に好ましい。
【0095】
〔重合開始剤〕
本開示において用いられる画像記録層は、重合開始剤を含有することが好ましい。画像記録層に用いられる重合開始剤は、光、熱あるいはその両方のエネルギーによりラジカルやカチオン等の重合開始種を発生する化合物であり、公知の熱重合開始剤、結合解離エネルギーの小さな結合を有する化合物、光重合開始剤などから適宜選択して用いることができる。
重合開始剤としては、赤外線感光性重合開始剤が好ましい。また、重合開始剤としては、ラジカル重合開始剤が好ましい。
ラジカル重合開始剤としては、例えば、(a)有機ハロゲン化物、(b)カルボニル化合物、(c)アゾ化合物、(d)有機過酸化物、(e)メタロセン化合物、(f)アジド化合物、(g)ヘキサアリールビイミダゾール化合物、(h)有機ホウ酸塩化合物、(i)ジスルホン化合物、(j)オキシムエステル化合物、(k)オニウム塩化合物が挙げられる。
【0096】
(a)有機ハロゲン化物としては、例えば、特開2008−195018号公報の段落0022〜0023に記載の化合物が好ましい。
(b)カルボニル化合物としては、例えば、特開2008−195018号公報の段落0024に記載の化合物が好ましい。
(c)アゾ化合物としては、例えば、特開平8−108621号公報に記載のアゾ化合物等が挙げられ。
(d)有機過酸化物としては、例えば、特開2008−195018号公報の段落0025に記載の化合物が好ましい。
(e)メタロセン化合物としては、例えば、特開2008−195018号公報の段落0026に記載の化合物が好ましい。
(f)アジド化合物としては、例えば、2,6−ビス(4−アジドベンジリデン)−4−メチルシクロヘキサノン等の化合物が挙げられる。
(g)ヘキサアリールビイミダゾール化合物としては、例えば、特開2008−195018号公報の段落0027に記載の化合物が好ましい。
(h)有機ホウ酸塩化合物としては、例えば、特開2008−195018号公報の段落0028に記載の化合物が好ましい。
(i)ジスルホン化合物としては、例えば、特開昭61−166544号、特開2002−328465号の各公報に記載の化合物が挙げられる。
(j)オキシムエステル化合物としては、例えば、特開2008−195018号公報の段落0028〜0030に記載の化合物が好ましい。
【0097】
重合開始剤の中でも、硬化性の観点から、より好ましいものとして、オキシムエステル及びオニウム塩が挙げられ、ヨードニウム塩、スルホニウム塩及びアジニウム塩等のオニウム塩が更に好ましく挙げられる。平版印刷版原版に用いる場合は、ヨードニウム塩、スルホニウム塩が特に好ましい。ヨードニウム塩及びスルホニウム塩の具体例を以下に示すが、本開示はこれらに限定されるものではない。
【0098】
ヨードニウム塩の例としては、ジフェニルヨードニウム塩が好ましく、特に、電子供与性基を置換基として有する、例えば、アルキル基又はアルコキシル基で置換されたジフェニルヨードニウム塩が好ましく、また、非対称のジフェニルヨードニウム塩が好ましい。具体例としては、ジフェニルヨードニウム=ヘキサフルオロホスファート、4−メトキシフェニル−4−(2−メチルプロピル)フェニルヨードニウム=ヘキサフルオロホスファート、4−(2−メチルプロピル)フェニル−p−トリルヨードニウム=ヘキサフルオロホスファート、4−ヘキシルオキシフェニル−2,4,6−トリメトキシフェニルヨードニウム=ヘキサフルオロホスファート、4−ヘキシルオキシフェニル−2,4−ジエトキシフェニルヨードニウム=テトラフルオロボラート、4−オクチルオキシフェニル−2,4,6−トリメトキシフェニルヨードニウム=1−ペルフルオロブタンスルホナート、4−オクチルオキシフェニル−2,4,6−トリメトキシフェニルヨードニウム=ヘキサフルオロホスファート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウム=ヘキサフルオロホスファートが挙げられる。
【0099】
スルホニウム塩の例としては、トリアリールスルホニウム塩が好ましく、特に電子求引性基を置換基として有する、例えば、芳香環上の基の少なくとも一部がハロゲン原子で置換されたトリアリールスルホニウム塩が好ましく、芳香環上のハロゲン原子の総置換数が4以上であるトリアリールスルホニウム塩が更に好ましい。具体例としては、トリフェニルスルホニウム=ヘキサフルオロホスファート、トリフェニルスルホニウム=ベンゾイルホルマート、ビス(4−クロロフェニル)フェニルスルホニウム=ベンゾイルホルマート、ビス(4−クロロフェニル)−4−メチルフェニルスルホニウム=テトラフルオロボラート、トリス(4−クロロフェニル)スルホニウム=3,5−ビス(メトキシカルボニル)ベンゼンスルホナート、トリス(4−クロロフェニル)スルホニウム=ヘキサフルオロホスファート、トリス(2,4−ジクロロフェニル)スルホニウム=ヘキサフルオロホスファートが挙げられる。
【0100】
重合開始剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
重合開始剤の含有量は、画像記録層の全質量に対して、好ましくは0.1質量%〜50質量%、より好ましくは0.5質量%〜30質量%、特に好ましくは0.8質量%〜20質量%である。
【0101】
〔重合性化合物〕
本開示において用いられる画像記録層は、重合性化合物を含有することが好ましい。
画像記録層に用いられる重合性化合物は、例えば、ラジカル重合性化合物であっても、カチオン重合性化合物であってもよいが、少なくとも1個のエチレン性不飽和結合を有する付加重合性化合物(エチレン性不飽和化合物)であることが好ましい。エチレン性不飽和化合物としては、末端エチレン性不飽和結合を少なくとも1個有する化合物が好ましく、末端エチレン性不飽和結合を2個以上有する化合物がより好ましい。重合性化合物は、例えばモノマー、プレポリマー、即ち、2量体、3量体もしくはオリゴマー、又は、それらの混合物などの化学的形態を持つことができる。
【0102】
モノマーの例としては、不飽和カルボン酸(例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸)や、そのエステル類、アミド類が挙げられる。好ましくは、不飽和カルボン酸と多価アルコール化合物とのエステル類、不飽和カルボン酸と多価アミン化合物とのアミド類が用いられる。また、ヒドロキシ基、アミノ基、メルカプト基等の求核性置換基を有する不飽和カルボン酸エステル類あるいはアミド類と、単官能もしくは多官能イソシアネート類あるいはエポキシ類との付加反応物、及び単官能もしくは多官能のカルボン酸との脱水縮合反応物等も好適に使用される。また、イソシアネート基、エポキシ基等の親電子性置換基を有する不飽和カルボン酸エステル類あるいはアミド類と単官能又は多官能のアルコール類、アミン類、チオール類との付加反応物、更にハロゲン原子、トシルオキシ基等の脱離性置換基を有する不飽和カルボン酸エステル類あるいはアミド類と単官能又は多官能のアルコール類、アミン類、チオール類との置換反応物も好適である。また、別の例として、上記の不飽和カルボン酸を、不飽和ホスホン酸、スチレン、ビニルエーテル等に置き換えた化合物群を使用することもできる。これら化合物は、特表2006−508380号公報、特開2002−287344号公報、特開2008−256850号公報、特開2001−342222号公報、特開平9−179296号公報、特開平9−179297号公報、特開平9−179298号公報、特開2004−294935号公報、特開2006−243493号公報、特開2002−275129号公報、特開2003−64130号公報、特開2003−280187号公報、特開平10−333321号公報等に記載されている。
【0103】
多価アルコール化合物と不飽和カルボン酸とのエステルのモノマーの具体例としては、アクリル酸エステルとして、エチレングリコールジアクリレート、1,3−ブタンジオールジアクリレート、テトラメチレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ヘキサンジオールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ソルビトールトリアクリレート、イソシアヌール酸エチレンオキシド(EO)変性トリアクリレート、ポリエステルアクリレートオリゴマー等がある。メタクリル酸エステルとして、テトラメチレングリコールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ビス〔p−(3−メタクリルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)フェニル〕ジメチルメタン、ビス〔p−(メタクリルオキシエトキシ)フェニル〕ジメチルメタン等がある。また、多価アミン化合物と不飽和カルボン酸とのアミドのモノマーの具体例としては、メチレンビスアクリルアミド、メチレンビスメタクリルアミド、1,6−ヘキサメチレンビスアクリルアミド、1,6−ヘキサメチレンビスメタクリルアミド、ジエチレントリアミントリスアクリルアミド、キシリレンビスアクリルアミド、キシリレンビスメタクリルアミド等がある。
【0104】
また、イソシアネートとヒドロキシ基の付加反応を用いて製造されるウレタン系付加重合性化合物も好適であり、その具体例としては、例えば、特公昭48−41708号公報に記載されている、1分子に2個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物に下記式(M)で表されるヒドロキシ基を含有するビニルモノマーを付加させて得られる1分子中に2個以上の重合性ビニル基を含有するビニルウレタン化合物等が挙げられる。
CH=C(RM4)COOCHCH(RM5)OH (M)
式(M)中、RM4及びRM5はそれぞれ独立に、水素原子又はメチル基を表す。
【0105】
また、特開昭51−37193号公報、特公平2−32293号公報、特公平2−16765号公報、特開2003−344997号公報、特開2006−65210号公報に記載のウレタンアクリレート類、特公昭58−49860号公報、特公昭56−17654号公報、特公昭62−39417号公報、特公昭62−39418号公報、特開2000−250211号公報、特開2007−94138号公報に記載のエチレンオキサイド系骨格を有するウレタン化合物類、米国特許第7153632号明細書、特表平8−505958号公報、特開2007−293221号公報、特開2007−293223号公報に記載の親水基を有するウレタン化合物類も好適である。
【0106】
重合性化合物の含有量は、画像記録層の全質量に対して、好ましくは5質量%〜75質量%、より好ましくは10質量%〜70質量%、特に好ましくは15質量%〜60質量%である。
【0107】
〔バインダーポリマー〕
本開示において用いられる画像記録層は、バインダーポリマーを含有することが好ましい。バインダーポリマーとしては、(メタ)アクリル樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリウレタン樹脂が好ましい。本明細書において、「(メタ)アクリル」とは、「アクリル」及び「メタクリル」を包含する。
【0108】
中でも、バインダーポリマーは平版印刷版原版の画像記録層に用いられる公知のバインダーポリマーを好適に使用することができる。一例として、機上現像型の平版印刷版原版に用いられるバインダーポリマー(以下、機上現像用バインダーポリマーともいう)について、詳細に記載する。これらの機上現像用バインダーポリマーは、現像液を用いた現像においても使用することが可能である
機上現像用バインダーポリマーとしては、アルキレンオキサイド鎖を有するバインダーポリマーが好ましい。アルキレンオキサイド鎖を有するバインダーポリマーは、ポリ(アルキレンオキサイド)部位を主鎖に有していても側鎖に有していてもよい。また、ポリ(アルキレンオキサイド)を側鎖に有するグラフトポリマーでも、ポリ(アルキレンオキサイド)含有繰返し単位で構成されるブロックと(アルキレンオキサイド)非含有繰返し単位で構成されるブロックとのブロックコポリマーでもよい。
ポリ(アルキレンオキサイド)部位を主鎖に有する場合は、ポリウレタン樹脂が好ましい。ポリ(アルキレンオキサイド)部位を側鎖に有する場合の主鎖のポリマーとしては、(メタ)アクリル樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリウレア樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂、ポリスチレン樹脂、ノボラック型フェノール樹脂、ポリエステル樹脂、合成ゴム、天然ゴムが挙げられ、特に(メタ)アクリル樹脂が好ましい。
【0109】
アルキレンオキサイドとしては炭素数が2〜6のアルキレンオキサイドが好ましく、エチレンオキサイド又はプロピレンオキサイドが特に好ましい。
ポリ(アルキレンオキサイド)部位におけるアルキレンオキサイドの繰返し数は2〜120が好ましく、2〜70がより好ましく、2〜50が更に好ましい。
アルキレンオキサイドの繰返し数が120以下であれば、摩耗による耐刷性、インキ受容性による耐刷性の両方の低下が抑制されるため好ましい。
【0110】
ポリ(アルキレンオキサイド)部位は、バインダーポリマーの側鎖として、下記式(AO)で表される構造で含有されることが好ましく、(メタ)アクリル樹脂の側鎖として、下記式(AO)で表される構造で含有されることがより好ましい。
【0111】
【化21】
【0112】
式(AO)中、yは2〜120を表し、Rは水素原子又はアルキル基を表し、Rは水素原子又は一価の有機基を表す。
一価の有機基としては、炭素数1〜6のアルキル基が好ましく、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、n−ヘキシル基、イソヘキシル基、1,1−ジメチルブチル基、2,2−ジメチルブチル基、シクロペンチル基及びシクロヘキシル基が挙げられる。
式(AO)において、yは2〜70が好ましく、2〜50がより好ましい。Rは水素原子又はメチル基が好ましく、水素原子が特に好ましい。Rは水素原子又はメチル基が特に好ましい。
【0113】
バインダーポリマーは、画像部の皮膜強度を向上するために、架橋性を有していてもよい。ポリマーに架橋性を持たせるためには、エチレン性不飽和結合などの架橋性官能基を高分子の主鎖中又は側鎖中に導入すればよい。架橋性官能基は、共重合により導入してもよいし、高分子反応により導入してもよい。
分子の主鎖中にエチレン性不飽和結合を有するポリマーの例としては、ポリ−1,4−ブタジエン、ポリ−1,4−イソプレンなどが挙げられる。
分子の側鎖中にエチレン性不飽和結合を有するポリマーの例としては、アクリル酸又はメタクリル酸のエステル又はアミドのポリマーであって、エステル又はアミドの残基(−COOR又は−CONHRのR)がエチレン性不飽和結合を有するポリマーを挙げることができる。
【0114】
エチレン性不飽和結合を有する残基(上記R)の例としては、−(CHCR1A=CR2A3A、−(CHO)CHCR1A=CR2A3A、−(CHCHO)CHCR1A=CR2A3A、−(CHNH−CO−O−CHCR1A=CR2A3A、−(CH−O−CO−CR1A=CR2A3A及び−(CHCHO)−X(式中、R1A〜R3Aはそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜20のアルキル基、アリール基、アルコキシ基又はアリールオキシ基を表し、R1AとR2A又はR3Aとは互いに結合して環を形成してもよい。nは、1〜10の整数を表す。Xは、ジシクロペンタジエニル残基を表す。)を挙げることができる。
【0115】
エステル残基の具体例としては、−CHCH=CH、−CHCHO−CHCH=CH、−CHC(CH)=CH、−CHCH=CH−C、−CHCHOCOCH=CH−C、−CHCH−NHCOO−CHCH=CH及び−CHCHO−X(式中、Xはジシクロペンタジエニル残基を表す。)が挙げられる。
アミド残基の具体例としては、−CHCH=CH、−CHCH−Y(式中、Yはシクロヘキセン残基を表す。)及び−CHCH−OCO−CH=CHが挙げられる。
【0116】
架橋性を有するバインダーポリマーは、例えば、その架橋性官能基にフリーラジカル(重合開始ラジカル又は重合性化合物の重合過程の生長ラジカル)が付加し、ポリマー間で直接に又は重合性化合物の重合連鎖を介して付加重合して、ポリマー分子間に架橋が形成されて硬化する。又は、ポリマー中の原子(例えば、官能性架橋基に隣接する炭素原子上の水素原子)がフリーラジカルにより引き抜かれてポリマーラジカルが生成し、それが互いに結合することによって、ポリマー分子間に架橋が形成されて硬化する。
【0117】
バインダーポリマー中の架橋性基の含有量(ヨウ素滴定によるラジカル重合可能な不飽和二重結合の含有量)は、良好な感度と良好な保存安定性の観点から、バインダーポリマー1g当たり、好ましくは0.1mmol〜10.0mmol、より好ましくは1.0mmol〜7.0mmol、特に好ましくは2.0mmol〜5.5mmolである。
【0118】
以下に機上現像用バインダーポリマーの具体例1〜11を示すが、本開示はこれらに限定されるものではない。下記例示化合物中、各繰返し単位に併記される数値(主鎖繰返し単位に併記される数値)は、上記繰返し単位のモル百分率を表す。側鎖の繰返し単位に併記される数値は、上記繰返し部位の繰返し数を示す。また、Meはメチル基を表し、Etはエチル基を表し、Phはフェニル基を表す。
【0119】
【化22】
【0120】
【化23】
【0121】
バインダーポリマーの分子量は、GPC法によるポリスチレン換算値として重量平均分子量(Mw)が、2,000以上であることが好ましく、5,000以上であることがより好ましく、10,000〜300,000であることが更に好ましい。
【0122】
必要に応じて、特開2008−195018号公報に記載のポリアクリル酸、ポリビニルアルコールなどの親水性ポリマーを併用することができる。また、親油的なポリマーと親水的なポリマーとを併用することもできる。
【0123】
上記バインダーポリマーは、画像記録層中で、各成分のバインダーとして機能するポリマーとして存在してもよいし、粒子の形状で存在してもよい。粒子の形状で存在する場合には、平均一次粒子径は、好ましくは10nm〜1,000nmであり、より好ましくは20nm〜300nmであり、更に好ましくは30nm〜120nmである。
なお、上述の有機ポリマー粒子に該当する化合物は、バインダーポリマーには該当しないものとする。
【0124】
本開示において用いられる画像記録層においては、バインダーポリマーを1種単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
バインダーポリマーは、画像記録層中に任意の量で含有させることができる。バインダーポリマーの含有量は、画像記録層の用途などにより適宜選択できるが、画像記録層の全質量に対して、1質量%〜90質量%が好ましく、5質量%〜80質量%がより好ましい。
【0125】
〔電子供与型ラジカル重合開始剤〕
本開示において用いられる画像記録層は、電子供与型ラジカル重合開始剤を含有してもよい。電子供与型ラジカル重合開始剤は、ラジカル生成助剤ともいわれる化合物である。
電子供与型ラジカル重合開始剤は、平版印刷版における耐刷性の向上に寄与する。電子供与型ラジカル重合開始剤としては、例えば、以下の5種類が挙げられる。
(i)アルキル又はアリールアート錯体:酸化的に炭素−ヘテロ結合が解裂し、活性ラジカルを生成すると考えられる。具体的には、ボレート化合物等が挙げられる。
(ii)アミノ酢酸化合物:酸化により窒素に隣接した炭素上のC−X結合が解裂し、活性ラジカルを生成するものと考えられる。Xとしては、水素原子、カルボキシ基、トリメチルシリル基又はベンジル基が好ましい。具体的には、N−フェニルグリシン類(フェニル基に置換基を有していてもよい。)、N−フェニルイミノジ酢酸(フェニル基に置換基を有していてもよい。)等が挙げられる。
(iii)含硫黄化合物:上述のアミノ酢酸化合物の窒素原子を硫黄原子に置き換えたものが、同様の作用により活性ラジカルを生成し得る。具体的には、フェニルチオ酢酸(フェニル基に置換基を有していてもよい。)等が挙げられる。
(iv)含錫化合物:上述のアミノ酢酸化合物の窒素原子を錫原子に置き換えたものが、同様の作用により活性ラジカルを生成し得る。
(v)スルフィン酸塩類:酸化により活性ラジカルを生成し得る。具体的は、アリールスルフィン駿ナトリウム等が挙げられる。
【0126】
これら電子供与型ラジカル重合開始剤の中でも、画像記録層は、ボレート化合物を含有することが好ましい。ボレート化合物としては、テトラアリールボレート化合物又はモノアルキルトリアリールボレート化合物が好ましく、化合物の安定性及び後述する電位差の観点から、テトラアリールボレート化合物がより好ましく、後述する電位差の観点から、電子求引性基を有するアリール基を1つ以上有するテトラアリールボレート化合物が特に好ましい。
電子求引性基としては、ハメット則のσ値が正である基が好ましく、ハメット則のσ値が0〜1.2である基がより好ましい。ハメットのσ値(σp値及びσm値)については、Hansch,C.;Leo,A.;Taft,R.W.,Chem.Rev.,1991,91,165−195に詳しく記載されている。
電子求引性基としては、ハロゲン原子、トリフルオロメチル基又はシアノ基が好ましく、フッ素原子、塩素原子、トリフルオロメチル基又はシアノ基がより好ましい。
ボレート化合物が有する対カチオンとしては、アルカリ金属イオン又はテトラアルキルアンモニウムイオンが好ましく、ナトリウムイオン、カリウムイオン又はテトラブチルアンモニウムイオンがより好ましい。
【0127】
ボレート化合物として具体的には、以下に示す化合物が挙げられる。ここで、Xは一価のカチオンを表し、アルカリ金属イオン又はテトラアルキルアンモニウムイオンが好ましく、アルカリ金属イオン又はテトラブチルアンモニウムイオンがより好ましい。また、Buはn−ブチル基を表す。
【0128】
【化24】
【0129】
【化25】
【0130】
【化26】
【0131】
【化27】
【0132】
電子供与型ラジカル重合開始剤は、1種のみを添加しても、2種以上を併用してもよい。
電子供与型ラジカル重合開始剤の含有量は、画像記録層の全質量に対し、0.01質量%〜30質量%が好ましく、0.05質量%〜25質量%がより好ましく、0.1質量%〜20質量%が更に好ましい。
【0133】
〔連鎖移動剤〕
本開示において用いられる画像記録層は、連鎖移動剤を含有してもよい。連鎖移動剤は、平版印刷版における耐刷性の向上に寄与する。
連鎖移動剤としては、チオール化合物が好ましく、沸点(揮発し難さ)の観点で炭素数7以上のチオールがより好ましく、芳香環上にメルカプト基を有する化合物(芳香族チオール化合物)が更に好ましい。上記チオール化合物は単官能チオール化合物であることが好ましい。
【0134】
連鎖移動剤として具体的には、下記の化合物が挙げられる。
【0135】
【化28】
【0136】
【化29】
【0137】
【化30】
【0138】
【化31】
【0139】
連鎖移動剤は、1種のみを添加しても、2種以上を併用してもよい。
連鎖移動剤の含有量は、画像記録層の全質量に対し、0.01質量%〜50質量%が好ましく、0.05質量%〜40質量%がより好ましく、0.1質量%〜30質量%が更に好ましい。
【0140】
〔他のポリマー粒子〕
平版印刷版原版の機上現像性を向上させるために、画像記録層は、他のポリマー粒子を含有してもよい。他のポリマー粒子は、熱が加えられたときに画像記録層を疎水性に変換できるポリマー粒子であることが好ましい。上述の有機ポリマー粒子に該当するポリマー粒子は、他のポリマー粒子には該当しないものとする。他のポリマー粒子は、疎水性熱可塑性ポリマー粒子、熱反応性ポリマー粒子、重合性基を有するポリマー粒子、疎水性化合物を内包しているマイクロカプセル、及び、ミクロゲル(架橋ポリマー粒子)から選ばれる少なくとも1つであることが好ましい。中でも、重合性基を有するポリマー粒子及びミクロゲルが好ましい。
【0141】
疎水性熱可塑性ポリマー粒子としては、1992年1月のResearch Disclosure No.33303、特開平9−123387号公報、同9−131850号公報、同9−171249号公報、同9−171250号公報及び欧州特許第931647号明細書などに記載の疎水性熱可塑性ポリマー粒子が好適に挙げられる。
疎水性熱可塑性ポリマー粒子を構成するポリマーの具体例としては、エチレン、スチレン、塩化ビニル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、塩化ビニリデン、アクリロニトリル、ビニルカルバゾール、ポリアルキレン構造を有するアクリレート又はメタクリレートなどのモノマーのホモポリマーもしくはコポリマー又はそれらの混合物が挙げられる。好ましくは、ポリスチレン、スチレン及びアクリロニトリルを含む共重合体、ポリメタクリル酸メチルが挙げられる。疎水性熱可塑性ポリマー粒子の平均粒径は0.01μm〜2.0μmが好ましい。
【0142】
熱反応性ポリマー粒子としては、熱反応性基を有するポリマー粒子が挙げられる。熱反応性基を有するポリマー粒子は、熱反応による架橋及びその際の官能基変化により疎水化領域を形成する。
【0143】
熱反応性基を有するポリマー粒子における熱反応性基としては、化学結合が形成されるならば、どのような反応を行う官能基でもよく、重合性基が好ましい。その例としては、ラジカル重合反応を行うエチレン性不飽和基(例えば、アクリロイル基、メタクリロイル基、ビニル基、アリル基など)、カチオン重合性基(例えば、ビニル基、ビニルオキシ基、エポキシ基、オキセタニル基など)、付加反応を行うイソシアナト基又はそのブロック体、エポキシ基、ビニルオキシ基及びこれらの反応相手である活性水素原子を有する官能基(例えば、アミノ基、ヒドロキシ基、カルボキシ基など)、縮合反応を行うカルボキシ基及び反応相手であるヒドロキシ基又はアミノ基、開環付加反応を行う酸無水物及び反応相手であるアミノ基又はヒドロキシ基などが好適に挙げられる。
【0144】
マイクロカプセルとしては、例えば、特開2001−277740号公報及び特開2001−277742号公報に記載のごとく、画像記録層の構成成分の全て又は一部をマイクロカプセルに内包させたものが挙げられる。画像記録層の構成成分は、マイクロカプセル外にも含有させることもできる。マイクロカプセルを含有する画像記録層としては、疎水性の構成成分をマイクロカプセルに内包し、親水性の構成成分をマイクロカプセル外に含有することが好ましい態様である。
【0145】
ミクロゲル(架橋ポリマー粒子)は、その内部及び表面の少なくとも一方に、画像記録層の構成成分の一部を含有することができる。特に、ラジカル重合性基をその表面に有することによって反応性ミクロゲルとした態様が画像形成感度や耐刷性の観点から好ましい。
【0146】
画像記録層の構成成分をマイクロカプセル化又はミクロゲル化するためには、公知の方法を用いることができる。
マイクロカプセルやミクロゲルの平均粒径は、0.01μm〜3.0μmが好ましく、0.05μm〜2.0μmがより好ましく、0.10μm〜1.0μmが特に好ましい。この範囲内で良好な解像度と経時安定性が得られる。
ポリマー粒子の含有量は、画像記録層の全質量に対して、5質量%〜90質量%が好ましい。
【0147】
〔低分子親水性化合物〕
画像記録層は、耐刷性の低下を抑制させつつ機上現像性を向上させるために、低分子親水性化合物を含有してもよい。低分子親水性化合物は、分子量1,000未満の化合物が好ましく、分子量800未満の化合物がより好ましく、分子量500未満の化合物が更に好ましい。
低分子親水性化合物としては、例えば、水溶性有機化合物としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール等のグリコール類及びそのエーテル又はエステル誘導体類、グリセリン、ペンタエリスリトール、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート等のポリオール類、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、モノエタノールアミン等の有機アミン類及びその塩、アルキルスルホン酸、トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸等の有機スルホン酸類及びその塩、アルキルスルファミン酸等の有機スルファミン酸類及びその塩、アルキル硫酸、アルキルエーテル硫酸等の有機硫酸類及びその塩、フェニルホスホン酸等の有機ホスホン酸類及びその塩、酒石酸、シュウ酸、クエン酸、リンゴ酸、乳酸、グルコン酸、アミノ酸類等の有機カルボン酸類及びその塩、ベタイン類等が挙げられる。
【0148】
低分子親水性化合物としては、ポリオール類、有機硫酸塩類、有機スルホン酸塩類及びベタイン類から選ばれる少なくとも1つを含有させることが好ましい。
【0149】
有機スルホン酸塩類の具体例としては、n−ブチルスルホン酸ナトリウム、n−ヘキシルスルホン酸ナトリウム、2−エチルヘキシルスルホン酸ナトリウム、シクロヘキシルスルホン酸ナトリウム、n−オクチルスルホン酸ナトリウムなどのアルキルスルホン酸塩;5,8,11−トリオキサペンタデカン−1−スルホン酸ナトリウム、5,8,11−トリオキサヘプタデカン−1−スルホン酸ナトリウム、13−エチル−5,8,11−トリオキサヘプタデカン−1−スルホン酸ナトリウム、5,8,11,14−テトラオキサテトラコサン−1−スルホン酸ナトリウムなどのエチレンオキシド鎖を含むアルキルスルホン酸塩;ベンゼンスルホン酸ナトリウム、p−トルエンスルホン酸ナトリウム、p−ヒドロキシベンゼンスルホン酸ナトリウム、p−スチレンスルホン酸ナトリウム、イソフタル酸ジメチル−5−スルホン酸ナトリウム、1−ナフチルスルホン酸ナトリウム、4−ヒドロキシナフチルスルホン酸ナトリウム、1,5−ナフタレンジスルホン酸ジナトリウム、1,3,6−ナフタレントリスルホン酸トリナトリウムなどのアリールスルホン酸塩、特開2007−276454号公報の段落0026〜0031及び特開2009−154525号公報の段落0020〜0047に記載の化合物等が挙げられる。塩は、カリウム塩、リチウム塩でもよい。
【0150】
有機硫酸塩類としては、ポリエチレンオキシドのアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール又は複素環モノエーテルの硫酸塩が挙げられる。エチレンオキシド単位の数は1〜4が好ましく、塩はナトリウム塩、カリウム塩又はリチウム塩が好ましい。具体例としては、特開2007−276454号公報の段落0034〜0038に記載の化合物が挙げられる。
【0151】
ベタイン類としては、窒素原子への炭化水素置換基の炭素数が1〜5である化合物が好ましく、具体例としては、トリメチルアンモニウムアセタート、ジメチルプロピルアンモニウムアセタート、3−ヒドロキシ−4−トリメチルアンモニオブチラート、4−(1−ピリジニオ)ブチラート、1−ヒドロキシエチル−1−イミダゾリオアセタート、トリメチルアンモニウムメタンスルホナート、ジメチルプロピルアンモニウムメタンスルホナート、3−トリメチルアンモニオ−1−プロパンスルホナート、3−(1−ピリジニオ)−1−プロパンスルホナート等が挙げられる。
【0152】
低分子親水性化合物は疎水性部分の構造が小さくて界面活性作用がほとんどないため、湿し水が画像記録層露光部(画像部)へ浸透して画像部の疎水性や皮膜強度を低下させることがなく、画像記録層のインキ受容性や耐刷性を良好に維持することができる。
【0153】
低分子親水性化合物の含有量は、画像記録層の全質量に対して、0.5質量%〜20質量%が好ましく、1質量%〜15質量%がより好ましく、2質量%〜10質量%が更に好ましい。この範囲で良好な機上現像性と耐刷性が得られる。
低分子親水性化合物は、1種単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0154】
〔感脂化剤〕
画像記録層は、着肉性を向上させるために、ホスホニウム化合物、含窒素低分子化合物、アンモニウム基含有ポリマー等の感脂化剤を含有してもよい。特に、保護層に無機層状化合物を含有させる場合、これらの化合物は、無機層状化合物の表面被覆剤として機能し、無機層状化合物による印刷途中の着肉性低下を抑制することができる。
感脂化剤としては、ホスホニウム化合物と、含窒素低分子化合物と、アンモニウム基含有ポリマーとを併用することが好ましく、ホスホニウム化合物と、第四級アンモニウム塩類と、アンモニウム基含有ポリマーとを併用することがより好ましい。
【0155】
ホスホニウム化合物としては、特開2006−297907号公報及び特開2007−50660号公報に記載のホスホニウム化合物が挙げられる。具体例としては、テトラブチルホスホニウムヨージド、ブチルトリフェニルホスホニウムブロミド、テトラフェニルホスホニウムブロミド、1,4−ビス(トリフェニルホスホニオ)ブタン=ジ(ヘキサフルオロホスファート)、1,7−ビス(トリフェニルホスホニオ)ヘプタン=スルファート、1,9−ビス(トリフェニルホスホニオ)ノナン=ナフタレン−2,7−ジスルホナート等が挙げられる。
【0156】
含窒素低分子化合物としては、アミン塩類、第四級アンモニウム塩類が挙げられる。また、イミダゾリニウム塩類、ベンゾイミダゾリニウム塩類、ピリジニウム塩類、キノリニウム塩類も挙げられる。中でも、第四級アンモニウム塩類及びピリジニウム塩類が好ましい。具体例としては、テトラメチルアンモニウム=ヘキサフルオロホスファート、テトラブチルアンモニウム=ヘキサフルオロホスファート、ドデシルトリメチルアンモニウム=p−トルエンスルホナート、ベンジルトリエチルアンモニウム=ヘキサフルオロホスファート、ベンジルジメチルオクチルアンモニウム=ヘキサフルオロホスファート、ベンジルジメチルドデシルアンモニウム=ヘキサフルオロホスファート、特開2008−284858号公報の段落0021〜0037、特開2009−90645号公報の段落0030〜0057に記載の化合物等が挙げられる。
【0157】
アンモニウム基含有ポリマーとしては、その構造中にアンモニウム基を有すればよく、側鎖にアンモニウム基を有する(メタ)アクリレートを共重合成分として5モル%〜80モル%含有するポリマーが好ましい。具体例としては、特開2009−208458号公報の段落0089〜0105に記載のポリマーが挙げられる。
【0158】
アンモニウム塩含有ポリマーは、特開2009−208458号公報に記載の測定方法に従って求められる還元比粘度(単位:ml/g)の値が、5〜120の範囲のものが好ましく、10〜110の範囲のものがより好ましく、15〜100の範囲のものが特に好ましい。上記還元比粘度を重量平均分子量(Mw)に換算した場合、10,000〜150,0000が好ましく、17,000〜140,000がより好ましく、20,000〜130,000が特に好ましい。
【0159】
以下に、アンモニウム基含有ポリマーの具体例を示す。
(1)2−(トリメチルアンモニオ)エチルメタクリレート=p−トルエンスルホナート/3,6−ジオキサヘプチルメタクリレート共重合体(モル比10/90、Mw4.5万)
(2)2−(トリメチルアンモニオ)エチルメタクリレート=ヘキサフルオロホスファート/3,6−ジオキサヘプチルメタクリレート共重合体(モル比20/80、Mw6.0万)
(3)2−(エチルジメチルアンモニオ)エチルメタクリレート=p−トルエンスルホナート/ヘキシルメタクリレート共重合体(モル比30/70、Mw4.5万)
(4)2−(トリメチルアンモニオ)エチルメタクリレート=ヘキサフルオロホスファート/2−エチルヘキシルメタクリレート共重合体(モル比20/80、Mw6.0万)
(5)2−(トリメチルアンモニオ)エチルメタクリレート=メチルスルファート/ヘキシルメタクリレート共重合体(モル比40/60、Mw7.0万)
(6)2−(ブチルジメチルアンモニオ)エチルメタクリレート=ヘキサフルオロホスファート/3,6−ジオキサヘプチルメタクリレート共重合体(モル比25/75、Mw6.5万)
(7)2−(ブチルジメチルアンモニオ)エチルアクリレート=ヘキサフルオロホスファート/3,6−ジオキサヘプチルメタクリレート共重合体(モル比20/80、Mw6.5万)
(8)2−(ブチルジメチルアンモニオ)エチルメタクリレート=13−エチル−5,8,11−トリオキサ−1−ヘプタデカンスルホナート/3,6−ジオキサヘプチルメタクリレート共重合体(モル比20/80、Mw7.5万)
(9)2−(ブチルジメチルアンモニオ)エチルメタクリレート=ヘキサフルオロホスファート/3,6−ジオキサヘプチルメタクリレート/2−ヒドロキシ−3−メタクロイルオキシプロピルメタクリレート共重合体(モル比15/80/5、Mw6.5万)
【0160】
感脂化剤の含有量は、画像記録層の全質量に対して、0.01質量%〜30.0質量%が好ましく、0.1質量%〜15.0質量%がより好ましく、1質量%〜10質量%が更に好ましい。
【0161】
〔酸発色剤〕
本開示において用いられる画像記録層は、酸発色剤を含むことが好ましい。
本開示で用いられる「酸発色剤」とは、電子受容性化合物(例えば酸等のプロトン)を受容した状態で加熱することにより、発色する性質を有する化合物を意味する。酸発色剤としては、特に、ラクトン、ラクタム、サルトン、スピロピラン、エステル、アミド等の部分骨格を有し、電子受容性化合物と接触した時に、速やかにこれらの部分骨格が開環若しくは開裂する無色の化合物が好ましい。
【0162】
このような酸発色剤の例としては、3,3−ビス(4−ジメチルアミノフェニル)−6−ジメチルアミノフタリド(”クリスタルバイオレットラクトン”と称される)、3,3−ビス(4−ジメチルアミノフェニル)フタリド、3−(4−ジメチルアミノフェニル)−3−(4−ジエチルアミノ−2−メチルフェニル)−6−ジメチルアミノフタリド、3−(4−ジメチルアミノフェニル)−3−(1,2−ジメチルインドール−3−イル)フタリド、3−(4−ジメチルアミノフェニル)−3−(2−メチルインドール−3−イル)フタリド、3,3−ビス(1,2−ジメチルインドール−3−イル)−5−ジメチルアミノフタリド、3,3−ビス(1,2−ジメチルインドール−3−イル)−6−ジメチルアミノフタリド、3,3−ビス(9−エチルカルバゾール−3−イル)−6−ジメチルアミノフタリド、3,3−ビス(2−フェニルインドール−3−イル)−6−ジメチルアミノフタリド、3−(4−ジメチルアミノフェニル)−3−(1−メチルピロール−3−イル)−6−ジメチルアミノフタリド、
【0163】
3,3−ビス〔1,1−ビス(4−ジメチルアミノフェニル)エチレン−2−イル〕−4,5,6,7−テトラクロロフタリド、3,3−ビス〔1,1−ビス(4−ピロリジノフェニル)エチレン−2−イル〕−4,5,6,7−テトラブロモフタリド、3,3−ビス〔1−(4−ジメチルアミノフェニル)−1−(4−メトキシフェニル)エチレン−2−イル〕−4,5,6,7−テトラクロロフタリド、3,3−ビス〔1−(4−ピロリジノフェニル)−1−(4−メトキシフェニル)エチレン−2−イル〕−4,5,6,7−テトラクロロフタリド、3−〔1,1−ジ(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)エチレン−2−イル〕−3−(4−ジエチルアミノフェニル)フタリド、3−〔1,1−ジ(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)エチレン−2−イル〕−3−(4−N−エチル−N−フェニルアミノフェニル)フタリド、3−(2−エトキシ−4−ジエチルアミノフェニル)−3−(1−n−オクチル−2−メチルインドール−3−イル)−フタリド、3,3−ビス(1−n−オクチル−2−メチルインドール−3−イル)−フタリド、3−(2−メチル−4−ジエチルアミノフェニル)−3−(1−n−オクチル−2−メチルインドール−3−イル)−フタリド等のフタリド類、
【0164】
4,4−ビス−ジメチルアミノベンズヒドリンベンジルエーテル、N−ハロフェニル−ロイコオーラミン、N−2,4,5−トリクロロフェニルロイコオーラミン、ローダミン−B−アニリノラクタム、ローダミン−(4−ニトロアニリノ)ラクタム、ローダミン−B−(4−クロロアニリノ)ラクタム、3,7−ビス(ジエチルアミノ)−10−ベンゾイルフェノオキサジン、ベンゾイルロイコメチレンブルー、4ーニトロベンゾイルメチレンブルー、
【0165】
3,6−ジメトキシフルオラン、3−ジメチルアミノ−7−メトキシフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メトキシフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−メトキシフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−クロロフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−クロロフルオラン、3−ジエチルアミノ−6,7−ジメチルフルオラン、3−N−シクロヘキシル−N−n−ブチルアミノ−7−メチルフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−ジベンジルアミノフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−オクチルアミノフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−ジ−n−ヘキシルアミノフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−アニリノフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−(2’−フルオロフェニルアミノ)フルオラン、3−ジエチルアミノ−7−(2’−クロロフェニルアミノ)フルオラン、3−ジエチルアミノ−7−(3’−クロロフェニルアミノ)フルオラン、3−ジエチルアミノ−7−(2’,3’−ジクロロフェニルアミノ)フルオラン、3−ジエチルアミノ−7−(3’−トリフルオロメチルフェニルアミノ)フルオラン、3−ジ−n−ブチルアミノ−7−(2’−フルオロフェニルアミノ)フルオラン、3−ジ−n−ブチルアミノ−7−(2’−クロロフェニルアミノ)フルオラン、3−N−イソペンチル−N−エチルアミノ−7−(2’−クロロフェニルアミノ)フルオラン、
【0166】
3−N−n−ヘキシル−N−エチルアミノ−7−(2’−クロロフェニルアミノ)フルオラン、3−ジエチルアミノ−6−クロロ−7−アニリノフルオラン、3−ジ−n−ブチルアミノ−6−クロロ−7−アニリノフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メトキシ−7−アニリノフルオラン、3−ジ−n−ブチルアミノ−6−エトキシ−7−アニリノフルオラン、3−ピロリジノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ピペリジノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−モルホリノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジメチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジ−n−ブチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジ−n−ペンチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−N−エチル−N−メチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−Nn−プロピル−N−メチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−N−n−プロピル−N−エチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−N−n−ブチル−N−メチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−N−n−ブチル−N−エチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−N−イソブチル−N−メチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−N−イソブチル−N−エチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−N−イソペンチル−N−エチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−N−n−ヘキシル−N−メチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−N−シクロヘキシル−N−エチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−N−シクロヘキシル−N−n−プロピルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−N−シクロヘキシル−N−n−ブチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−N−シクロヘキシル−N−n−ヘキシルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−N−シクロヘキシル−N−n−オクチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、
【0167】
3−N−(2’−メトキシエチル)−N−メチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−N−(2’−メトキシエチル)−N−エチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−N−(2’−メトキシエチル)−N−イソブチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−N−(2’−エトキシエチル)−N−メチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−N−(2’−エトキシエチル)−N−エチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−N−(3’−メトキシプロピル)−N−メチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−N−(3’−メトキシプロピル)−N−エチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−N−(3’−エトキシプロピル)−N−メチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−N−(3’−エトキシプロピル)−N−エチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−N−(2’−テトラヒドロフルフリル)−N−エチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−N−(4’−メチルフェニル)−N−エチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−エチル−7−アニリノフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−(3’−メチルフェニルアミノ)フルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−(2’,6’−ジメチルフェニルアミノ)フルオラン、3−ジ−n−ブチルアミノ−6−メチル−7−(2’,6’−ジメチルフェニルアミノ)フルオラン、3−ジ−n−ブチルアミノ−7−(2’,6’−ジメチルフェニルアミノ)フルオラン、2,2−ビス〔4’−(3−N−シクロヘキシル−N−メチルアミノ−6−メチルフルオラン)−7−イルアミノフェニル〕プロパン、3−〔4’−(4−フェニルアミノフェニル)アミノフェニル〕アミノ−6−メチル−7−クロロフルオラン、3−〔4’−(ジメチルアミノフェニル)〕アミノ−5,7−ジメチルフルオラン等のフルオラン類、
【0168】
3−(2−メチル−4−ジエチルアミノフェニル)−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−4−アザフタリド、3−(2−n−プロポキシカルボニルアミノ−4−ジ−n−プロピルアミノフェニル)−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−4−アザフタリド、3−(2−メチルアミノ−4−ジ−n−プロピルアミノフェニル)−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−4−アザフタリド、3−(2−メチル−4−ジn−ヘキシルアミノフェニル)−3−(1−n−オクチル−2−メチルインドール−3−イル)−4,7−ジアザフタリド、3,3−ビス(2−エトキシ−4−ジエチルアミノフェニル)−4−アザフタリド、3,3−ビス(1−n−オクチル−2−メチルインドール−3−イル)−4−アザフタリド、3−(2−エトキシ−4−ジエチルアミノフェニル)−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−4−アザフタリド、3−(2−エトキシ−4−ジエチルアミノフェニル)−3−(1−オクチル−2−メチルインドール−3−イル)−4又は7−アザフタリド、3−(2−エトキシ−4−ジエチルアミノフェニル)−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−4又は7−アザフタリド、3−(2−ヘキシルオキシ−4−ジエチルアミノフェニル)−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−4又は7−アザフタリド、3−(2−エトキシ−4−ジエチルアミノフェニル)−3−(1−エチル−2−フェニルインドール−3−イル)−4又は7−アザフタリド、3−(2−ブトキシ−4−ジエチルアミノフェニル)−3−(1−エチル−2−フェニルインドール−3−イル)−4又は7−アザフタリド3−メチル−スピロ−ジナフトピラン、3−エチル−スピロ−ジナフトピラン、3−フェニル−スピロ−ジナフトピラン、3−ベンジル−スピロ−ジナフトピラン、3−メチル−ナフト−(3−メトキシベンゾ)スピロピラン、3−プロピル−スピロ−ジベンゾピラン−3,6−ビス(ジメチルアミノ)フルオレン−9−スピロ−3’−(6’−ジメチルアミノ)フタリド、3,6−ビス(ジエチルアミノ)フルオレン−9−スピロ−3’−(6’−ジメチルアミノ)フタリド等のフタリド類、
【0169】
その他、2’−アニリノ−6’−(N−エチル−N−イソペンチル)アミノ−3’−メチルスピロ[イソベンゾフラン−1(3H),9’−(9H)キサンテン−3−オン、2’−アニリノ−6’−(N−エチル−N−(4−メチルフェニル))アミノ−3’−メチルスピロ[イソベンゾフラン−1(3H),9’−(9H)キサンテン]−3−オン、3’−N,N−ジベンジルアミノ−6’−N,N−ジエチルアミノスピロ[イソベンゾフラン−1(3H),9’−(9H)キサンテン]−3−オン、2’−(N−メチル−N−フェニル)アミノ−6’−(N−エチル−N−(4−メチルフェニル))アミノスピロ[イソベンゾフラン−1(3H),9’−(9H)キサンテン]−3−オンなどが挙げられる。
【0170】
上記の中でも、本開示に用いられる酸発色剤は、スピロピラン化合物、スピロオキサジン化合物、スピロラクトン化合物、スピロラクタム化合物よりなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物であることが好ましい。
発色後の色素の色相としては、可視性の観点から、緑、青又は黒であることが好ましい。
【0171】
酸発色剤としては上市されている製品を使用することも可能であり、ETAC、RED500、RED520、CVL、S−205、BLACK305、BLACK400、BLACK100、BLACK500、H−7001、GREEN300、NIRBLACK78、BLUE220、H−3035、BLUE203、ATP、H−1046、H−2114(以上、福井山田化学工業(株)製)、ORANGE−DCF、Vermilion−DCF、PINK−DCF、RED−DCF、BLMB、CVL、GREEN−DCF、TH−107(以上、保土ヶ谷化学(株)製)、ODB、ODB−2、ODB−4、ODB−250、ODB−BlackXV、Blue−63、Blue−502、GN−169、GN−2、Green−118、Red−40、Red−8(以上、山本化成(株)製)、クリスタルバイオレットラクトン(東京化成品工業(株)製)等が挙げられる。これらの市販品の中でも、ETAC、S−205、BLACK305、BLACK400、BLACK100、BLACK500、H−7001、GREEN300、NIRBLACK78、H−3035、ATP、H−1046、H−2114、GREEN−DCF、Blue−63、GN−169、クリスタルバイオレットラクトンが、形成される膜の可視光吸収率が良好のため好ましい。
【0172】
これらの酸発色剤は、1種単独で用いてもよいし、2種類以上の成分を組み合わせて使用することもできる。
【0173】
〔着色剤〕
本開示に係る平版印刷版原版の画像記録層は、可視光域に大きな吸収を持つ染料を画像部の着色剤として含有することができる。
具体的には、オイルイエロー#101、オイルイエロー#103、オイルピンク#312、オイルグリーンBG、オイルブルーBOS、オイルブルー#603、オイルブラックBY、オイルブラックBS、オイルブラックT−505(以上オリエント化学工業(株)製)、ビクトリアピュアブルー、クリスタルバイオレット(CI42555)、メチルバイオレット(CI42535)、エチルバイオレット、エチルバイオレット6HNAPS、ローダミンB(CI145170B)、マラカイトグリーン(CI42000)、メチレンブルー(CI52015)及び特開昭62−293247号に記載されている染料を挙げることができる。また、フタロシアニン系顔料、アゾ系顔料、カーボンブラック、酸化チタン等の顔料も好適に用いることができる。着色剤を含有させることにより、画像形成後の画像部と非画像部の区別がつきやすくなるので、含有させることが好ましい。
着色剤の添加量は、画像記録層の全固形分に対して、0.005質量%〜10質量%が好ましい。
【0174】
〔その他の成分〕
画像記録層には、その他の成分として、界面活性剤、重合禁止剤、高級脂肪酸誘導体、可塑剤、無機粒子、無機層状化合物等を含有することができる。具体的には、特開2008−284817号公報の段落0114〜0159の記載を参照することができる。
【0175】
〔画像記録層の形成〕
本開示に係る平版印刷版原版における画像記録層は、例えば、特開2008−195018号公報の段落0142〜0143に記載のように、必要な上記各成分を公知の溶剤に分散又は溶解して塗布液を調製し、塗布液を支持体上にバーコーター塗布など公知の方法で塗布し、乾燥することにより形成することができる。塗布、乾燥後における画像記録層の塗布量(固形分)は、用途によって異なるが、一般に0.3g/m〜3.0g/mが好ましい。この範囲で、良好な感度と画像記録層の良好な皮膜特性が得られる。
【0176】
<下塗り層>
本開示に係る平版印刷版原版は、画像記録層と支持体との間に下塗り層(中間層と呼ばれることもある。)を有することが好ましい。下塗り層は、露光部においては支持体と画像記録層との密着を強化し、未露光部においては画像記録層の支持体からのはく離を生じやすくさせるため、耐刷性を損なわずに現像性を向上させることに寄与する。また、赤外線レーザー露光の場合に、下塗り層が断熱層として機能することにより、露光により発生した熱が支持体に拡散して感度が低下するのを防ぐ効果も有する。
【0177】
下塗り層に用いられる化合物としては、支持体表面に吸着可能な吸着性基及び親水性基を有するポリマーが挙げられる。画像記録層との密着性を向上させるために吸着性基及び親水性基を有し、更に架橋性基を有するポリマーが好ましい。下塗り層に用いられる化合物は、低分子化合物でもポリマーであってもよい。下塗り層に用いられる化合物は、必要に応じて、2種以上を混合して使用してもよい。
【0178】
下塗り層に用いられる化合物がポリマーである場合、吸着性基を有するモノマー、親水性基を有するモノマー及び架橋性基を有するモノマーの共重合体が好ましい。
支持体表面に吸着可能な吸着性基としては、フェノール性ヒドロキシ基、カルボキシ基、−PO、−OPO、−CONHSO−、−SONHSO−、−COCHCOCHが好ましい。親水性基としては、スルホ基又はその塩、カルボキシ基の塩が好ましい。架橋性基としては、アクリル基、メタクリル基、アクリルアミド基、メタクリルアミド基、アリル基などが好ましい。
ポリマーは、ポリマーの極性置換基と、上記極性置換基と対荷電を有する置換基及びエチレン性不飽和結合を有する化合物との塩形成で導入された架橋性基を有してもよいし、上記以外のモノマー、好ましくは親水性モノマーが更に共重合されていてもよい。
【0179】
具体的には、特開平10−282679号公報に記載されている付加重合可能なエチレン性二重結合反応基を有しているシランカップリング剤、特開平2−304441号公報記載のエチレン性二重結合反応基を有しているリン化合物が好適に挙げられる。特開2005−238816号、特開2005−125749号、特開2006−239867号、特開2006−215263号の各公報に記載の架橋性基(好ましくは、エチレン性不飽和結合基)、支持体表面と相互作用する官能基及び親水性基を有する低分子又は高分子化合物も好ましく用いられる。
より好ましいものとして、特開2005−125749号及び特開2006−188038号公報に記載の支持体表面に吸着可能な吸着性基、親水性基及び架橋性基を有する高分子ポリマーが挙げられる。
【0180】
下塗り層に用いられるポリマー中のエチレン性不飽和結合基の含有量は、ポリマー1g当たり、好ましくは0.1mmol〜10.0mmol、より好ましくは0.2mmol〜5.5mmolである。
下塗り層に用いられるポリマーの重量平均分子量(Mw)は、5,000以上が好ましく、1万〜30万がより好ましい。
【0181】
下塗り層は、上記下塗り層用化合物の他に、経時による汚れ防止のため、キレート剤、第二級又は第三級アミン、重合禁止剤、アミノ基又は重合禁止能を有する官能基と支持体表面と相互作用する基とを有する化合物(例えば、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)、2,3,5,6−テトラヒドロキシ−p−キノン、クロラニル、スルホフタル酸、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸、ジヒドロキシエチルエチレンジアミン二酢酸、ヒドロキシエチルイミノ二酢酸など)等を含有してもよい。
【0182】
下塗り層は、公知の方法で塗布される。下塗り層の塗布量(固形分)は、0.1mg/m〜100mg/mが好ましく、1mg/m〜30mg/mがより好ましい。
【0183】
<保護層>
本開示に係る平版印刷版原版は、画像記録層の上に保護層(オーバーコート層と呼ばれることもある。)を有することが好ましい。保護層は酸素遮断により画像形成阻害反応を抑制する機能の他、画像記録層における傷の発生防止及び高照度レーザー露光時のアブレーション防止の機能を有する。
【0184】
このような特性の保護層については、例えば、米国特許第3,458,311号明細書及び特公昭55−49729号公報に記載されている。保護層に用いられる酸素低透過性のポリマーとしては、水溶性ポリマー、水不溶性ポリマーのいずれをも適宜選択して使用することができ、必要に応じて2種類以上を混合して使用することもできる。具体的には、例えば、ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、水溶性セルロース誘導体、ポリ(メタ)アクリロニトリル等が挙げられる。
変性ポリビニルアルコールとしてはカルボキシ基又はスルホ基を有する酸変性ポリビニルアルコールが好ましく用いられる。具体的には、特開2005−250216号公報及び特開2006−259137号公報に記載の変性ポリビニルアルコールが挙げられる。
【0185】
保護層は、酸素遮断性を高めるために無機層状化合物を含有することが好ましい。無機層状化合物は、薄い平板状の形状を有する粒子であり、例えば、天然雲母、合成雲母等の雲母群、式:3MgO・4SiO・HOで表されるタルク、テニオライト、モンモリロナイト、サポナイト、ヘクトライト、リン酸ジルコニウム等が挙げられる。
好ましく用いられる無機層状化合物は雲母化合物である。雲母化合物としては、例えば、式:A(B,C)2−510(OH,F,O)〔ただし、Aは、K、Na、Caのいずれか、B及びCは、Fe(II)、Fe(III)、Mn、Al、Mg、Vのいずれかであり、Dは、Si又はAlである。〕で表される天然雲母、合成雲母等の雲母群が挙げられる。
【0186】
雲母群においては、天然雲母としては白雲母、ソーダ雲母、金雲母、黒雲母及び鱗雲母が挙げられる。合成雲母としてはフッ素金雲母KMg(AlSi10)F、カリ四ケイ素雲母KMg2.5Si10)F等の非膨潤性雲母、及び、NaテトラシリリックマイカNaMg2.5(Si10)F、Na又はLiテニオライト(Na,Li)MgLi(Si10)F、モンモリロナイト系のNa又はLiヘクトライト(Na,Li)1/8Mg2/5Li1/8(Si10)F等の膨潤性雲母等が挙げられる。更に合成スメクタイトも有用である。
【0187】
上記の雲母化合物の中でも、フッ素系の膨潤性雲母が特に有用である。即ち、膨潤性合成雲母は、10Å〜15Å(1Å=0.1nm)程度の厚さの単位結晶格子層からなる積層構造を有し、格子内金属原子置換が他の粘土鉱物より著しく大きい。その結果、格子層は正電荷不足を生じ、それを補償するために層間にLi、Na、Ca2+、Mg2+等の陽イオンを吸着している。これらの層間に介在している陽イオンは交換性陽イオンと呼ばれ、いろいろな陽イオンと交換し得る。特に、層間の陽イオンがLi、Naの場合、イオン半径が小さいため層状結晶格子間の結合が弱く、水により大きく膨潤する。その状態でシェアーをかけると容易に劈開し、水中で安定したゾルを形成する。膨潤性合成雲母はこの傾向が強く、特に好ましく用いられる。
【0188】
雲母化合物の形状としては、拡散制御の観点からは、厚さは薄ければ薄いほどよく、平面サイズは塗布面の平滑性や活性光線の透過性を阻害しない限りにおいて大きい程よい。従って、アスペクト比は、好ましくは20以上であり、より好ましくは100以上、特に好ましくは200以上である。アスペクト比は粒子の厚さに対する長径の比であり、例えば、粒子の顕微鏡写真による投影図から測定することができる。アスペクト比が大きい程、得られる効果が大きい。
【0189】
雲母化合物の粒子径は、その平均長径が、好ましくは0.3μm〜20μm、より好ましくは0.5μm〜10μm、特に好ましくは1μm〜5μmである。粒子の平均の厚さは、好ましくは0.1μm以下、より好ましくは0.05μm以下、特に好ましくは0.01μm以下である。具体的には、例えば、代表的化合物である膨潤性合成雲母の場合、好ましい態様としては、厚さが1nm〜50nm程度、面サイズ(長径)が1μm〜20μm程度である。
【0190】
無機層状化合物の含有量は、保護層の全固形分に対して、0質量%〜60質量%が好ましく、3質量%〜50質量%がより好ましい。複数種の無機層状化合物を併用する場合でも、無機層状化合物の合計量が上記の含有量であることが好ましい。上記範囲で酸素遮断性が向上し、良好な感度が得られる。また、着肉性の低下を防止できる。
【0191】
保護層は可撓性付与のための可塑剤、塗布性を向上させための界面活性剤、表面の滑り性を制御するための無機粒子など公知の添加物を含有してもよい。また、画像記録層において記載した感脂化剤を保護層に含有させてもよい。
【0192】
保護層は公知の方法で塗布される。保護層の塗布量(固形分)は、0.01g/m〜10g/mが好ましく、0.02g/m〜3g/mがより好ましく、0.02g/m〜1g/mが特に好ましい。
【0193】
<支持体>
本開示に係る平版印刷版原版の支持体は、公知の平版印刷版原版用支持体から適宜選択して用いることができる。支持体としては、公知の方法で粗面化処理され、陽極酸化処理されたアルミニウム板が好ましい。
アルミニウム板は更に必要に応じて、特開2001−253181号公報及び特開2001−322365号公報に記載されている陽極酸化皮膜のマイクロポアの拡大処理や封孔処理、米国特許第2,714,066号、同第3,181,461号、同第3,280,734号及び同第3,902,734号の各明細書に記載されているようなアルカリ金属シリケートによる表面親水化処理、米国特許第3,276,868号、同第4,153,461号及び同第4,689,272号の各明細書に記載されているようなポリビニルホスホン酸などによる表面親水化処理を適宜選択して行ってもよい。
支持体は、中心線平均粗さが0.10μm〜1.2μmであることが好ましい。
【0194】
支持体は、必要に応じて、画像記録層とは反対側の面に、特開平5−45885号公報に記載の有機高分子化合物又は特開平6−35174号公報に記載のケイ素のアルコキシ化合物等を含むバックコート層を有していてもよい。
【0195】
(平版印刷版の製版方法)
本開示に係る平版印刷版原版を画像露光して現像処理を行うことで平版印刷版を作製することができる。
本開示に係る平版印刷版の製版方法の第一の態様は、本開示に係る平版印刷版原版を画像様に露光し、露光部と未露光部とを形成する露光工程、及び、印刷インキ及び湿し水の少なくとも一方を供給して上記未露光部を除去する機上現像工程をこの順で含む。
本開示に係る平版印刷版の製版方法の第二の態様は、本開示に係る平版印刷版原版を、画像様に露光し、露光部と未露光部とを形成する露光工程と、pHが2以上11以下の現像液を供給して前記未露光部を除去する現像液現像工程と、をこの順で含む。
以下、本開示に係る平版印刷版の製版方法、及び、本開示に係る平版印刷方法について、各工程の好ましい態様を順に説明する。なお、本開示に係る平版印刷版原版は、現像液によっても現像可能である。
【0196】
<露光工程>
本開示に係る平版印刷版の製版方法は、本開示に係る平版印刷版原版を画像様に露光し、露光部と未露光部とを形成する露光工程を含むことが好ましい。本開示に係る平版印刷版原版は、線画像、網点画像等を有する透明原画を通してレーザー露光するかデジタルデータによるレーザー光走査等で画像様に露光されることが好ましい。
光源の波長は750nm〜1,400nmが好ましく用いられる。750nm〜1,400nmの光源としては、赤外線を放射する固体レーザー及び半導体レーザーが好適である。赤外線レーザーに関しては、出力は100mW以上であることが好ましく、1画素当たりの露光時間は20マイクロ秒以内であるのが好ましく、また照射エネルギー量は10mJ/cm〜300mJ/cmであるのが好ましい。また、露光時間を短縮するためマルチビームレーザーデバイスを用いることが好ましい。露光機構は、内面ドラム方式、外面ドラム方式、及びフラットベッド方式等のいずれでもよい。
画像露光は、プレートセッターなどを用いて常法により行うことができる。機上現像の場合には、平版印刷版原版を印刷機に装着した後、印刷機上で画像露光を行ってもよい。
【0197】
<機上現像工程>
本開示に係る平版印刷版の製版方法は、印刷インキ及び湿し水の少なくとも一方を供給して上記未露光部を除去する機上現像工程を含むことが好ましい。
また、本開示に係る平版印刷版の製版方法は、現像液にて現像する方法(現像液処理方式)で行ってもよい。
以下に、機上現像方式について説明する。
【0198】
〔機上現像方式〕
機上現像方式においては、画像露光された平版印刷版原版は、印刷機上で油性インキと水性成分とを供給し、非画像部の画像形成層が除去されて平版印刷版が作製されることが好ましい。
すなわち、平版印刷版原版を画像露光後、なんらの現像処理を施すことなくそのまま印刷機に装着するか、あるいは、平版印刷版原版を印刷機に装着した後、印刷機上で画像露光し、ついで、油性インキと水性成分とを供給して印刷すると、印刷途上の初期の段階で、非画像部においては、供給された油性インキ及び水性成分のいずれか又は両方によって、未硬化の画像形成層が溶解又は分散して除去され、その部分に親水性の表面が露出する。一方、露光部においては、露光により硬化した画像形成層が、親油性表面を有する油性インキ受容部を形成する。最初に版面に供給されるのは、油性インキでもよく、水性成分でもよいが、水性成分が除去された画像形成層の成分によって汚染されることを防止する点で、最初に油性インキを供給することが好ましい。このようにして、平版印刷版原版は印刷機上で機上現像され、そのまま多数枚の印刷に用いられる。油性インキ及び水性成分としては、通常の平版印刷用の印刷インキ及び湿し水が好適に用いられる。
【0199】
<現像液現像工程>
本開示に係る平版印刷版の製版方法は、pHが2以上11以下の現像液を供給して前記未露光部を除去する現像液現像工程を含むことが好ましい。
以下に、現像液処理方式について説明する。
【0200】
〔現像液処理方式〕
本開示に係る平版印刷版原版は、画像記録層の構成成分であるバインダーポリマー等を適宜選択することにより、現像液を用いる現像処理によっても平版印刷版を作製することができる。現像液を用いる現像処理は、界面活性剤及び水溶性高分子化合物よりなる群から選ばれた少なくとも1種の化合物を含有してもよいpH2〜11の現像液を用いる態様(簡易現像処理ともいう)を含む。
【0201】
現像液中に、必要に応じて、水溶性高分子化合物を含有させる等の方法により、現像及びガム液処理工程を同時に行うこともできる。従って後水洗工程は特に必要とせず、1液1工程で現像とガム液処理を行ったのち、乾燥工程を行うこともできる。それ故、現像液を用いる現像処理としては、画像露光後の平版印刷版原版をpHが2〜11の現像液により現像処理する工程を含む平版印刷版の製版方法が好ましい。現像処理の後、スクイズローラーを用いて余剰の現像液を除去してから乾燥を行うことが好ましい。
【0202】
すなわち、本開示に係る平版印刷版の製版方法の現像処理工程においては、1液1工程で現像処理とガム液処理とを行うことが好ましい。
1液1工程で現像とガム液処理を行うとは、現像処理と、ガム液処理とを別々の工程として行うのではなく、現像液という1種類の液(1液)により、現像処理とガム液処理とを1工程において行うことを意味する。
【0203】
現像処理は、現像液の供給手段及び擦り部材を備えた自動現像処理機により好適に実施することができる。擦り部材として、回転ブラシロールを用いる自動現像処理機が特に好ましい。
回転ブラシロールは2本以上が好ましい。更に自動現像処理機は現像処理手段の後に、スクイズローラー等の余剰の現像液を除去する手段や、温風装置等の乾燥手段を備えていることが好ましい。また、自動現像処理機は現像処理手段の前に、画像露光後の平版印刷版原版を加熱処理するための前加熱手段を備えていてもよい。
このような自動現像処理機での処理は、いわゆる機上現像処理の場合に生ずる画像記録層(及び、平版印刷版原版が保護層を有する場合には保護層)に由来の現像カスへの対応から開放されるという利点がある。
【0204】
現像工程において、手処理の場合、現像処理方法としては、例えば、スポンジや脱脂綿に水溶液を含ませ、版面全体を擦りながら処理し、処理終了後に乾燥する方法が好適に挙げられる。浸漬処理の場合は、例えば、平版印刷版原版を水溶液の入ったバットや深タンクに約60秒浸して撹拌した後、脱脂綿やスポンジなどで擦りながら乾燥する方法が好適に挙げられる。
【0205】
現像処理には、構造の簡素化、工程を簡略化した装置が用いられることが好ましい。
アルカリ現像処理においては、前水洗工程により、平版印刷版原版が保護層を有する場合には保護層を除去し、次いで高pHのアルカリ性現像液により現像を行い、その後、後水洗工程でアルカリを除去し、ガム引き工程でガム処理を行い、乾燥工程で乾燥する。簡易現像処理においては、現像及びガム引きを1液で同時に行うことができる。従って、後水洗工程及びガム処理工程は省略することが可能となり、1液で現像とガム引き(ガム液処理)とを行った後、必要に応じて乾燥工程を行うことが好ましい。
更に、前水洗工程も行うことなく、保護層の除去、現像及びガム引きを1液で同時に行うことが好ましい。また、現像及びガム引きの後に、スクイズローラーを用いて余剰の現像液を除去した後、乾燥を行うことが好ましい。
【0206】
上記現像処理工程においては、現像液に平版印刷版原版を1回浸漬する方法であってもよいし、2回以上浸漬する方法であってもよい。中でも、上記現像液に1回又は2回浸漬する方法が好ましい。
浸漬は、現像液が溜まった現像液槽中に露光済みの平版印刷版原版をくぐらせてもよいし、露光済みの平版印刷版原版の版面上にスプレーなどから現像液を吹き付けてもよい。
なお、現像液に2回以上浸漬する場合であっても、同じ現像液、又は、現像液と現像処理により画像記録層の成分の溶解又は分散した現像液(疲労液)とを用いて2回以上浸漬する場合は、1液での現像処理(1液処理)という。
【0207】
現像処理では、擦り部材を用いることが好ましく、画像記録層の非画像部を除去する現像浴には、ブラシ等の擦り部材が設置されることが好ましい。
現像処理は、常法に従って、好ましくは0℃〜60℃、より好ましくは15℃〜40℃の温度で、例えば、露光処理した平版印刷版原版を現像液に浸漬してブラシで擦る、又は、外部のタンクに仕込んだ処理液をポンプで汲み上げてスプレーノズルから吹き付けてブラシで擦る等により行うことができる。これらの現像処理は、複数回続けて行うこともできる。例えば、外部のタンクに仕込んだ現像液をポンプで汲み上げてスプレーノズルから吹き付けてブラシで擦った後に、再度スプレーノズルから現像液を吹き付けてブラシで擦る等により行うことができる。自動現像機を用いて現像処理を行う場合、処理量の増大により現像液が疲労してくるので、補充液又は新鮮な現像液を用いて処理能力を回復させることが好ましい。
【0208】
現像処理には、従来、PS版(Presensitized Plate)及びCTP(Computer to Plate)用に知られているガムコーターや自動現像機も用いることができる。自動現像機を用いる場合、例えば、現像槽に仕込んだ現像液、又は、外部のタンクに仕込んだ現像液をポンプで汲み上げてスプレーノズルから吹き付けて処理する方式、現像液が満たされた槽中に液中ガイドロールなどによって印刷版を浸漬搬送させて処理する方式、実質的に未使用の現像液を一版毎に必要な分だけ供給して処理するいわゆる使い捨て処理方式のいずれの方式も適用できる。いずれの方式においても、ブラシやモルトンなどによるこすり機構があるものがより好ましい。例えば、市販の自動現像機(Clean Out Unit C85/C125、Clean−Out Unit+ C85/120、FCF 85V、FCF 125V、FCF News(Glunz & Jensen社製)、Azura CX85、Azura CX125、Azura CX150(AGFA GRAPHICS社製)を利用することができる。また、レーザー露光部と自動現像機部分とが一体に組み込まれた装置を利用することもできる。
【0209】
現像処理工程において用いられる現像液の成分等の詳細を以下に説明する。
【0210】
〔pH〕
現像液のpHは、2〜11が好ましく、5〜9がより好ましく、7〜9が更に好ましい。現像性や画像記録層の分散性の観点から言えば、pHの値を高めに設定するほうが有利であるが、印刷性、とりわけ汚れの抑制に関しては、pHの値を低めに設定するほうが有効である。
ここで、pHはpHメーター(型番:HM−31、東亜DKK社製)を用いて25℃で測定される値である。
【0211】
〔界面活性剤〕
現像液には、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤などの界面活性剤を含有することができる。
上記現像液は、ブラン汚れ性の観点から、アニオン性界面活性剤及び両性界面活性剤よりなる群から選ばれた少なくとも1種を含むことが好ましい。
また、上記現像液は、ノニオン性界面活性剤を含むことが好ましく、ノニオン性界面活性剤と、アニオン性界面活性剤及び両性界面活性剤よりなる群から選ばれた少なくとも1種と、を含むことがより好ましい。
【0212】
アニオン性界面活性剤として、下記式(I)で表される化合物が好ましく挙げられる。
−Y−X (I)
式(I)中、Rは置換基を有していてもよい、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アラルキル基又はアリール基を表す。
アルキル基としては、例えば、炭素数1〜20のアルキル基が好ましく、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、ヘキシル基、2−エチルヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、ヘキサデシル基、ステアリル基等を好ましく挙げることができる。
シクロアルキル基としては、単環型でもよく、多環型でもよい。単環型としては、炭素数3〜8の単環型シクロアルキル基であることが好ましく、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基又はシクロオクチル基であることがより好ましい。多環型としては例えば、アダマンチル基、ノルボルニル基、イソボロニル基、カンファニル基、ジシクロペンチル基、α−ピネル基、トリシクロデカニル基等を好ましく挙げることができる。
アルケニル基としては、例えば、炭素数2〜20のアルケニル基であることが好ましく、具体的には、ビニル基、アリル基、ブテニル基、シクロヘキセニル基等を好ましく挙げることができる。
アラルキル基としては、例えば、炭素数7〜12のアラルキル基であることが好ましく、具体的には、ベンジル基、フェネチル基、ナフチルメチル基等を好ましく挙げることができる。
アリール基としては、例えば、炭素数6〜15のアリール基であることが好ましく、具体的には、フェニル基、トリル基、ジメチルフェニル基、2,4,6−トリメチルフェニル基、ナフチル基、アントリル基、9,10−ジメトキシアントリル基等を好ましく挙げることができる。
【0213】
置換基としては、水素原子を除く一価の非金属原子団が用いられ、好ましい例としては、ハロゲン原子(F、Cl、Br又はI)、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシル基、アミド基、エステル基、アシロキシ基、カルボキシ基、カルボン酸アニオン基、スルホン酸アニオン基等が挙げられる。
【0214】
置換基におけるアルコキシ基の具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、イソプロピルオキシ基、ブチルオキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、ドデシルオキシ基、ステアリルオキシ基、メトキシエトキシ基、ポリ(エチレンオキシ)基、ポリ(プロピレンオキシ)基等の好ましくは炭素数1〜40、より好ましくは炭素数1〜20のものが挙げられる。アリールオキシ基としては、フェノキシ基、トリルオキシ基、キシリルオキシ基、メシチルオキシ基、クメニルオキシ基、メトキシフェニルオキシ基、エトキシフェニルオキシ基、クロロフェニルオキシ基、ブロモフェニルオキシ基、ナフチルオキシ基等の炭素数6〜18のものが挙げられる。アシル基としては、アセチル基、プロパノイル基、ブタノイル基、ベンゾイル基、ナフトイル基等の炭素数2〜24のものが挙げられる。アミド基としては、アセトアミド基、プロピオン酸アミド基、ドデカン酸アミド基、パルチミン酸アミド基、ステアリン酸アミド基、安息香酸アミド基、ナフトイック酸アミド基等の炭素数2〜24のものが挙げられる。アシロキシ基としては、アセトキシ基、プロパノイルオキシ基、ベンゾイルオキシ基、ナフトイルオキシ基等の炭素数2〜20のものが挙げられる。エステル基としては、メチルエステル基、エチルエステル基、プロピルエステル基、ヘキシルエステル基、オクチルエステル基、ドデシルエステル基、ステアリルエステル基等の炭素数1〜24のものが挙げられる。置換基は、上記置換基の2以上の組み合わせからなるものであってもよい。
【0215】
は、スルホン酸塩基、硫酸モノエステル塩基、カルボン酸塩基又は燐酸塩基を表す。
は、単結合、−C2n−、−Cn−m2(n−m)OC2m−、−O−(CHCHO)−、−O−(CHCHCHO)−、−CO−NH−、又は、これらの2以上の組み合わせからなる2価の連結基を表し、n≧1及びn≧m≧0を満たす。
【0216】
式(I)で表される化合物の中で、下記式(I−A)又は式(I−B)で表される化合物が、耐キズ汚れ性の観点から、好ましい。
【0217】
【化32】
【0218】
式(I−A)及び式(I−B)中、RA1〜RA10はそれぞれ独立に、水素原子又はアルキル基を表し、nAは1〜3の整数を表し、XA1及びXA2はそれぞれ独立に、スルホン酸塩基、硫酸モノエステル塩基、カルボン酸塩基又は燐酸塩基を表し、YA1及びYA2はそれぞれ独立に、単結合、−CnH2n−、−Cn−m2(n−m)OC2m−、−O−(CHCHO)−、−O−(CHCHCHO)−、−CO−NH−、又は、これらを2以上組み合わせた2価の連結基を表し、n≧1及びn≧m≧0を満たし、RA1〜RA5又はRA6〜RA10中、及び、YA1又はYA2中の炭素数の総和は3以上である。
【0219】
上記式(I−A)又は式(I−B)で表される化合物における、RA1〜RA5及びY1A、又は、RA6〜RA10及びYA2の総炭素数は、25以下であることが好ましく、4〜20であることがより好ましい。上述したアルキル基の構造は、直鎖であってもよく、分枝であってもよい。
式(I−A)又は式(I−B)で表される化合物におけるXA1及びXA2は、スルホン酸塩基、又は、カルボン酸塩基であることが好ましい。また、XA1及びXA2における塩構造は、アルカリ金属塩が特に水系溶媒への溶解性が良好であり好ましい。中でも、ナトリウム塩、又は、カリウム塩が特に好ましい。
上記式(I−A)又は式(I−B)で表される化合物としては、特開2007−206348号公報の段落0019〜0037の記載を参照することができる。
アニオン性界面活性剤としては、特開2006−65321号公報の段落0023〜0028に記載の化合物も好適に用いることができる。
【0220】
現像液に用いられる両性界面活性剤は、特に限定されないが、アルキルジメチルアミンオキシドなどのアミンオキシド系、アルキルベタイン、脂肪酸アミドプロピルベタイン、アルキルイミダゾールなどのベタイン系、アルキルアミノ脂肪酸ナトリウムなどのアミノ酸系が挙げられる。
【0221】
特に、置換基を有してもよいアルキルジメチルアミンオキシド、置換基を有してもよいアルキルカルボキシベタイン、置換基を有してもよいアルキルスルホベタインが好ましく用いられる。これらの具体例としては、特開2008−203359号公報の段落0256の式(2)で示される化合物、特開2008−276166号公報の段落0028の式(I)、式(II)、式(VI)で示される化合物、特開2009−47927号公報の段落0022〜0029に記載の化合物を挙げることができる。
【0222】
現像液に用いられる両性イオン系界面活性剤としては、下記式(1)で表される化合物又は式(2)で表される化合物が好ましい。
【0223】
【化33】
【0224】
式(1)及び式(2)中、R及びR11は、各々独立に、炭素数8〜20のアルキル基又は総炭素数8〜20の連結基を有するアルキル基を表す。
、R、R12及びR13は、各々独立に、水素原子、アルキル基又はエチレンオキサイド基を含有する基を表す。
及びR14は、各々独立に、単結合又はアルキレン基を表す。
また、R、R、R及びRのうち2つの基は互いに結合して環構造を形成してもよく、R11、R12、R13及びR14のうち2つの基は互いに結合して環構造を形成してもよい。
【0225】
上記式(1)で表される化合物又は式(2)で表される化合物において、総炭素数値が大きくなると疎水部分が大きくなり、水系の現像液への溶解性が低下する。この場合、溶解を助けるアルコール等の有機溶剤を、溶解助剤として水に混合することにより、溶解性は良化するが、総炭素数値が大きくなりすぎた場合、適正混合範囲内で界面活性剤を溶解することはできない。従って、R〜R又はR11〜R14の炭素数の総和は好ましくは10〜40、より好ましくは12〜30である。
【0226】
又はR11で表される連結基を有するアルキル基は、アルキル基の間に連結基を有する構造を表す。すなわち、連結基が1つの場合は、「−アルキレン基−連結基−アルキル基」で表すことができる。連結基としては、エステル結合、カルボニル結合、アミド結合が挙げられる。連結基は2以上あってもよいが、1つであることが好ましく、アミド結合が特に好ましい。連結基と結合するアルキレン基の総炭素数は1〜5であることが好ましい。このアルキレン基は直鎖であっても分岐であってもよいが、直鎖アルキレン基が好ましい。連結基と結合するアルキル基は炭素数が3〜19であることが好ましく、直鎖であっても分岐であってもよいが、直鎖アルキルであることが好ましい。
【0227】
又はR12がアルキル基である場合、炭素数は1〜5であることが好ましく、1〜3であることが特に好ましい。直鎖、分岐のいずれでもよいが、直鎖アルキル基であることが好ましい。
【0228】
又はR13がアルキル基である場合、炭素数は1〜5であることが好ましく、1〜3であることが特に好ましい。直鎖、分岐のいずれでもよいが、直鎖アルキル基であることが好ましい。
又はR13で表されるエチレンオキサイド基を含有する基としては、−R(CHCHO)で表される基を挙げることができる。ここで、Rは単結合、酸素原子又は2価の有機基(好ましくは炭素数10以下)を表し、Rは水素原子又は有機基(好ましくは炭素数10以下)を表し、nは1〜10の整数を表す。
【0229】
及びR14がアルキレン基である場合、炭素数は1〜5であることが好ましく、1〜3であることが特に好ましい。直鎖、分岐のいずれでもよいが、直鎖アルキレン基であることが好ましい。
式(1)で表される化合物又は式(2)で表される化合物は、アミド結合を有することが好ましく、R又はR11の連結基としてアミド結合を有することがより好ましい。
式(1)で表される化合物又は式(2)で表される化合物の代表的な例を以下に示すが、本開示はこれらに限定されるものではない。
【0230】
【化34】
【0231】
【化35】
【0232】
【化36】
【0233】
式(1)又は式(2)で表される化合物は公知の方法に従って合成することができる。また、市販されているものを用いることも可能である。市販品として、式(1)で表される化合物は川研ファインケミカル社製のソフタゾリンLPB、ソフタゾリンLPB−R、ビスタMAP、竹本油脂社製のタケサーフC−157L等があげられる。式(2)で表される化合物は川研ファインケミカル社製のソフタゾリンLAO、第一工業製薬社製のアモーゲンAOL等があげられる。
両性界面活性剤は現像液中に、1種単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0234】
ノニオン性界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル類、ポリオキシエチレンポリスチリルフェニルエーテル、グリセリン脂肪酸部分エステル類、ソルビタン脂肪酸部分エステル類、ペンタエリスリトール脂肪酸部分エステル類、プロピレングリコールモノ脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸部分エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸部分エステル類、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸部分エステル類、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル類、ポリグリセリン脂肪酸部分エステル類、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸部分エステル類、ポリオキシエチレンジグリセリン類、脂肪酸ジエタノールアミド類、N,N−ビス−2−ヒドロキシアルキルアミン類、ポリオキシエチレンアルキルアミン、トリエタノールアミン脂肪酸エステル、トリアルキルアミンオキシド、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル類、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロックコポリマー類等が挙げられる。
また、アセチレングリコール系とアセチレンアルコール系のオキシエチレン付加物、フッ素系等の界面活性剤も同様に使用することができる。これら界面活性剤は2種以上併用することもできる。
【0235】
ノニオン性界面活性剤として特に好ましくは、下記式(N1)で示されるノニオン性芳香族エーテル系界面活性剤が挙げられる。
−Y−O−(AnB−(AmB−H (N1)
式中、Xは置換基を有していてもよい芳香族基を表し、Yは単結合又は炭素原子数1〜10のアルキレン基を表し、A及びAは互いに異なる基であって、−CHCHO−又は−CHCH(CH)O−のいずれかを表し、nB及びmBはそれぞれ独立に、0〜100の整数を表し、ただし、nBとmBとは同時に0ではなく、また、nB及びmBのいずれかが0である場合には、nB及びmBは1ではない。
式中、Xの芳香族基としてフェニル基、ナフチル基、アントラニル基などが挙げられる。これらの芳香族基は置換基を有していてもよい。置換基としては、炭素数1〜100の有機基が挙げられる。なお、式中、A及びBがともに存在するとき、ランダムでもブロックの共重合体でもよい。
【0236】
上記炭素数1〜100の有機基の具体例としては、飽和でも不飽和でよく直鎖でも分岐鎖でもよい脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、例えば、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アラルキル基など、その他に、アルコキシ基、アリーロキシ基、N−アルキルアミノ基、N,N−ジアルキルアミノ基、N−アリールアミノ基、N,N−ジアリールアミノ基、N−アルキル−N−アリールアミノ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、N−アルキルカルバモイルオキシ基、N−アリールカルバモイルオキシ基、N,N−ジアルキルカルバモイルオキシ基、N,N−ジアリールカルバモイルオキシ基、N−アルキル−N−アリールカルバモイルオキシ基、アシルアミノ基、N−アルキルアシルアミノ基、N−アリールアシルアミノ基、アシル基、アルコキシカルボニルアミノ基、アルコキシカルボニル基、アリーロキシカルボニル基、カルバモイル基、N−アルキルカルバモイル基、N,N−ジアルキルカルバモイル基、N−アリールカルバモイル基、N,N−ジアリールカルバモイル基、N−アルキル−N−アリールカルバモイル基、ポリオキシアルキレン鎖、ポリオキシアルキレン鎖が結合している上記の有機基などが挙げられる。上記アルキル基は、直鎖であっても、分岐鎖であってもよい。
また、ノニオン性界面活性剤としては、特開2006−65321号公報の段落0030〜0040に記載された化合物も好適に用いることができる。
【0237】
カチオン性界面活性剤としては、特に限定されず、従来公知のものを用いることができる。例えば、アルキルアミン塩類、第四級アンモニウム塩類、アルキルイミダゾリニウム塩、ポリオキシエチレンアルキルアミン塩類、ポリエチレンポリアミン誘導体等が挙げられる。
【0238】
界面活性剤は、1種単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
界面活性剤の含有量は、現像液の全質量に対し、1質量%〜25質量%が好ましく、2質量%〜20質量%がより好ましく、3質量%〜15質量%が更に好ましく、5質量%〜10質量%が特に好ましい。上記範囲であると、耐キズ汚れ性により優れ、現像カスの分散性に優れ、また、得られる平版印刷版のインキ着肉性に優れる。
【0239】
〔水溶性高分子化合物〕
現像液は、現像液の粘度調整及び得られる平版印刷版の版面の保護の観点から、水溶性高分子を含むことができる。
水溶性高分子としては、大豆多糖類、変性澱粉、アラビアガム、デキストリン、繊維素誘導体(例えば、カルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルロース、メチルセルロース等)及びその変性体、プルラン、ポリビニルアルコール及びその誘導体、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド及びアクリルアミド共重合体、ビニルメチルエーテル/無水マレイン酸共重合体、酢酸ビニル/無水マレイン酸共重合体、スチレン/無水マレイン酸共重合体などの水溶性高分子化合物を含有することができる。
【0240】
上記大豆多糖類としては、従来知られているものが使用でき、例えば市販品として商品名ソヤファイブ(不二製油(株)製)があり、各種グレードのものを使用することができる。好ましく使用できるものは、10質量%水溶液の粘度が10mPa・s〜100mPa・sの範囲にあるものである。
【0241】
上記変性澱粉としては、下記式(III)で表される澱粉が好ましい。式(III)で表される澱粉としては、トウモロコシ、じゃがいも、タピオカ、米、小麦等のいずれの澱粉も使用できる。これらの澱粉の変性は、酸又は酵素等で1分子当たりグルコース残基数5〜30の範囲で分解し、更にアルカリ中でオキシプロピレンを付加する方法等で行うことができる。
【0242】
【化37】
【0243】
式中、エーテル化度(置換度)はグルコース単位当たり0.05〜1.2の範囲であり、nは3〜30の整数を表し、mは1〜3の整数を表す。
【0244】
水溶性高分子化合物の中でも特に好ましいものとしては、大豆多糖類、変性澱粉、アラビアガム、デキストリン、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコールなどが挙げられる。
【0245】
水溶性高分子化合物は、2種以上を併用することもできる。
1液1工程で現像とガム液処理を行う方法において、現像液は水溶性高分子化合物を含んでもよいし、含まなくてもよい。
【0246】
〔その他の添加剤〕
本開示において用いられる現像液は、上記の他に、湿潤剤、防腐剤、キレート化合物、消泡剤、有機酸、有機溶剤、無機酸、無機塩などを含有することができる。
【0247】
湿潤剤としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリエチレングリコール、ブチレングリコール、ヘキシレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ジグリセリン等が好適に用いられる。湿潤剤は単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。湿潤剤の含有量は、現像液の全質量に対し、0.1質量%〜5質量%であることが好ましい。
【0248】
防腐剤としては、フェノール又はその誘導体、ホルマリン、イミダゾール誘導体、デヒドロ酢酸ナトリウム、4−イソチアゾリン−3−オン誘導体、ベンゾイソチアゾリン−3−オン、2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン、ベンズトリアゾール誘導体、アミジングアニジン誘導体、第四級アンモニウム塩類、ピリジン、キノリン、グアニジン等の誘導体、ダイアジン、トリアゾール誘導体、オキサゾール、オキサジン誘導体、ニトロブロモアルコール系の2−ブロモ−2−ニトロプロパン−1,3−ジオール、1,1−ジブロモ−1−ニトロ−2−エタノール、1,1−ジブロモ−1−ニトロ−2−プロパノール等が好ましく使用できる。
防腐剤の添加量は、細菌、カビ、酵母等に対して、安定に効力を発揮する量であって、細菌、カビ、酵母の種類によっても異なるが、現像液の全質量に対し、0.01質量%〜4質量%の範囲が好ましい。また、種々のカビ、殺菌に対して効力のあるように2種以上の防腐剤を併用することが好ましい。
【0249】
キレート化合物としては、例えば、エチレンジアミンテトラ酢酸、そのカリウム塩、そのナトリウム塩;ジエチレントリアミンペンタ酢酸、そのカリウム塩、そのナトリウム塩;トリエチレンテトラミンヘキサ酢酸、そのカリウム塩、そのナトリウム塩、ヒドロキシエチルエチレンジアミントリ酢酸、そのカリウム塩、そのナトリウム塩;ニトリロトリ酢酸、そのナトリウム塩;1−ヒドロキシエタン−1,1−ジホスホン酸、そのカリウム塩、そのナトリウム塩;アミノトリ(メチレンホスホン酸)、そのカリウム塩、そのナトリウム塩などのような有機ホスホン酸類を挙げることができる。キレート剤のナトリウム塩、カリウム塩の代りに有機アミンの塩も有効である。
キレート剤は、処理液組成中に安定に存在し、印刷性を阻害しないものであることが好ましい。キレート剤の含有量は、現像液の全質量に対し、0.001質量%〜1.0質量%であることが好ましい。
【0250】
消泡剤としては、一般的なシリコーン系の自己乳化タイプ、乳化タイプ、ノニオン系のHLB(Hydrophilic-Lipophilic Balance)が5以下等の化合物を使用することができる。シリコーン消泡剤が好ましい。
なお、シリコーン系界面活性剤は、消泡剤と見なすものとする。
消泡剤の含有量は、現像液の全質量に対し、0.001質量%〜1.0質量%の範囲が好適である。
【0251】
有機酸としては、クエン酸、酢酸、蓚酸、マロン酸、サリチル酸、カプリル酸、酒石酸、リンゴ酸、乳酸、レブリン酸、p−トルエンスルホン酸、キシレンスルホン酸、フィチン酸、有機ホスホン酸などが挙げられる。有機酸は、そのアルカリ金属塩又はアンモニウム塩の形で用いることもできる。有機酸の含有量は、現像液の全質量に対し、0.01質量%〜0.5質量%が好ましい。
【0252】
有機溶剤としては、例えば、脂肪族炭化水素類(ヘキサン、ヘプタン、“アイソパーE、H、G”(エッソ化学(株)製)等)、芳香族炭化水素類(トルエン、キシレン等)、ハロゲン化炭化水素(メチレンジクロライド、エチレンジクロライド、トリクレン、モノクロロベンゼン等)、極性溶剤等が挙げられる。
【0253】
極性溶剤としては、アルコール類(メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ベンジルアルコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、2−エトキシエタノール、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル、ポリプロピレングリコール、テトラエチレングリコール、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、メチルフェニルカルビノール、n−アミルアルコール、メチルアミルアルコール等)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、エチルブチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等)、エステル類(酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、酢酸アミル、酢酸ベンジル、乳酸メチル、乳酸ブチル、エチレングリコールモノブチルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールアセテート、ジエチルフタレート、レブリン酸ブチル等)、その他(トリエチルフォスフェート、トリクレジルフォスフェート、N−フェニルエタノールアミン、N−フェニルジエタノールアミン等)等が挙げられる。
【0254】
上記有機溶剤が水に不溶な場合は、界面活性剤等を用いて水に可溶化して使用することも可能であり、現像液に、有機溶剤を含有する場合は、安全性、引火性の観点から、現像液における溶剤の濃度は、40質量%未満が好ましい。
【0255】
無機酸及び無機塩としては、リン酸、メタリン酸、第一リン酸アンモニウム、第二リン酸アンモニウム、第一リン酸ナトリウム、第二リン酸ナトリウム、第一リン酸カリウム、第二リン酸カリウム、トリポリリン酸ナトリウム、ピロリン酸カリウム、ヘキサメタリン酸ナトリウム、硝酸マグネシウム、硝酸ナトリウム、硝酸カリウム、硝酸アンモニウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸アンモニウム、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸アンモニウム、硫酸水素ナトリウム、硫酸ニッケルなどが挙げられる。無機塩の含有量は、現像液の全質量に対し、0.01質量%〜0.5質量%の量が好ましい。
【0256】
現像液は、必要に応じて、上記各成分を水に溶解又は分散することによって調製される。現像液の固形分濃度は、2質量%〜25質量%であることが好ましい。現像液としては、濃縮液を作製しておき、使用時に水で希釈して用いることもできる。
現像液は、水性の現像液であることが好ましい。
【0257】
現像液は、現像カスの分散性の観点から、アルコール化合物を含有することが好ましい。
アルコール化合物としては、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ベンジルアルコール等が挙げられる。中でも、ベンジルアルコールが好ましい。
アルコール化合物の含有量は、現像カスの分散性の観点から、現像液の全質量に対し、0.01質量%〜5質量%が好ましく、0.1質量%〜2質量%がより好ましく、0.2質量%〜1質量%が特に好ましい。
【0258】
<印刷工程>
本開示に係る平版印刷方法は、上記機上現像工程において機上現像された平版印刷版又は現像液現像工程において現像された平版印刷版に印刷インキを供給して記録媒体を印刷する印刷工程を含む。
印刷インキとしては、特に制限はなく、所望に応じ、種々の公知のインキを用いることができる。また、印刷インキとしては、油性インキが好ましく挙げられる。油性インキの中でも、紫外線硬化型のインキが好ましく挙げられる。
また、上記印刷工程においては、必要に応じ、湿し水を供給してもよい。
また、平版印刷版の製版を、機上現像工程を含む製版方法により行う場合、上記印刷工程は、印刷機を停止することなく、上記機上現像工程に連続して行われてもよい。
記録媒体としては、特に制限はなく、所望に応じ、公知の記録媒体を用いることができる。
【0259】
本開示に係る平版印刷版原版からの平版印刷版の製版方法、及び、本開示に係る平版印刷方法においては、必要に応じて、露光前、露光中、露光から現像までの間に、平版印刷版原版の全面を加熱してもよい。このような加熱により、画像形成層中の画像形成反応が促進され、感度や耐刷性の向上や感度の安定化等の利点が生じ得る。現像前の加熱は150℃以下の穏和な条件で行うことが好ましい。上記態様であると、非画像部が硬化してしまう等の問題を防ぐことができる。現像後の加熱には非常に強い条件を利用することが好ましく、100℃〜500℃の範囲であることが好ましい。上記範囲であると、十分な画像強化作用が得られまた、支持体の劣化、画像部の熱分解といった問題を抑制することができる。
【0260】
(有機ポリマー粒子)
本開示に係る有機ポリマー粒子は、式POにより表される構造を有する芳香族多価イソシアネート化合物と、水とを少なくとも反応させて得られる反応物である。
本開示に係る有機ポリマー粒子は、上述の平版印刷版原版の画像記録層に含有される有機ポリマー粒子と同義であり、好ましい態様も同様である。
【0261】
(感光性樹脂組成物)
本開示に係る感光性樹脂組成物は、本開示に係る有機ポリマー粒子と、赤外線吸収剤と、重合性化合物と、重合開始剤と、を含有する。
本開示に係る感光性樹脂組成物に含まれる赤外線吸収剤、重合性化合物及び重合開始剤は、それぞれ、上述の平版印刷版原版の画像記録層に含まれる赤外線吸収剤、重合性化合物、及び、重合開始剤とそれぞれ同義であり、好ましい態様も同様である。
また、本開示に係る感光性樹脂組成物は、上述のバインダーポリマー、電子供与型ラジカル重合開始剤、連鎖移動剤、他のポリマー粒子、低分子親水性化合物、感脂化剤、酸発色剤、及び、公知の溶剤よりなる群から選ばれた少なくとも1種を、更に含有してもよい。
【0262】
本開示に係る感光性樹脂組成物に含まれる各成分の含有量は、上述の平版印刷版原版の画像記録層に含まれる各成分の含有量を、感光性樹脂組成物における固形分と読み替えた量に相当する。
【0263】
本開示に係る感光性樹脂組成物を用いることにより、平版印刷版原版を得ることができる。
また、本開示に係る感光性樹脂組成物は、インクジェット、3D造形等の分野においても好適に用いられる。
【実施例】
【0264】
以下、実施例により本開示を詳細に説明するが、本開示はこれらに限定されるものではない。なお、本実施例において、「%」、「部」とは、特に断りのない限り、それぞれ「質量%」、「質量部」を意味する。なお、高分子化合物において、特別に規定したもの以外は、分子量は重量平均分子量(Mw)であり、構成繰り返し単位の比率はモル百分率である。また、重量平均分子量(Mw)は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)法によるポリスチレン換算値として測定した値である。
【0265】
(第一の芳香族多価イソシアネート化合物の合成)
<第一の芳香族多価イソシアネート化合物1−1の合成>
コンデンサー及び撹拌機を取り付けた3つ口フラスコに、ミリオネートMR−200(東ソー(株)製)30.75g、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル(ユニオックスM−4000:日油(株)製)36.00g、メチルエチルケトン(和光純薬工業(株)製)123.96gを秤り取り、50℃で加熱しながら撹拌し、均一溶液とした。次いで、ネオスタンU−600(日東化成(株)製:ビスマス触媒)0.13gを添加し、撹拌しながら50℃で4時間反応させた。
第一の芳香族多価イソシアネート化合物(化合物1−1)35質量%溶液を得た。
ミリオネートMR−200の構造の詳細は、下記の通りである。
【0266】
【化38】
【0267】
<第一の芳香族多価イソシアネート化合物1−2の合成>
コンデンサー及び撹拌機を取り付けた3つ口フラスコに、ミリオネートMR−200(東ソー(株)製)30.75g、ポリ(プロレングリコール)モノブチルエーテル(Antifoam PE−H:和光純薬工業(株)製)36.00g、メチルエチルケトン(和光純薬工業(株)製)123.96gを秤り取り、50℃で加熱しながら撹拌し、均一溶液とした。次いで、ネオスタンU−600(日東化成(株)製:ビスマス触媒)0.13gを添加し、撹拌しながら50℃で4時間反応させた。
第一の芳香族多価イソシアネート化合物(化合物1−2)35質量%溶液を得た。
【0268】
<第一の芳香族多価イソシアネート化合物1−3の合成>
コンデンサー及び撹拌機を取り付けた3つ口フラスコに、ミリオネートMR−200(東ソー(株)製)30.75g、ポリ(エチレングリコール−ran−プロピレングリコール)モノブチルエーテル(数平均分子量:3900:アルドリッチ社製)36.00g、メチルエチルケトン(和光純薬工業(株)製)123.96gを秤り取り、50℃で加熱しながら撹拌し、均一溶液とした。次いで、ネオスタンU−600(日東化成(株)製:ビスマス触媒)0.13gを添加し、撹拌しながら50℃で4時間反応させた。
第一の芳香族多価イソシアネート化合物(化合物1−3)35質量%溶液を得た。
【0269】
<第一の芳香族多価イソシアネート化合物1−4の合成>
コンデンサー及び撹拌機を取り付けた3つ口フラスコに、ミリオネートMR−200(東ソー(株)製)30.75g、4,4’−(2−ヒドロキシベンジリデン)ビス(2,3,6−トリメチルフェノール)(東京化成工業(株)製)6.78g、メチルエチルケトン(和光純薬工業(株)製)69.69gを秤り取り、50℃で加熱しながら撹拌し、均一溶液とした。次いで、ネオスタンU−600(日東化成(株)製:ビスマス触媒)0.07gを添加し、撹拌しながら50℃で4時間反応させた。次いで、ポリ(エチレングリコール−ran−プロピレングリコール)モノブチルエーテル(平均分子量〜3900:アルドリッチ社製)36.00g、メチルエチルケトン(和光純薬工業(株)製)69.86gをこの順で添加し、撹拌しながら50℃で4時間反応させた。
第一の芳香族多価イソシアネート化合物(化合物1−4)35質量%溶液を得た。
【0270】
<第一の芳香族多価イソシアネート化合物1−5の合成>
コンデンサー及び撹拌機を取り付けた3つ口フラスコに、ミリオネートMR−200(東ソー(株)製)30.75g、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル(ユニオックスM−2000:日油(株)製)24.00g、メチルエチルケトン(和光純薬工業(株)製)101.68gを秤り取り、50℃で加熱しながら撹拌し、均一溶液とした。次いで、ネオスタンU−600(日東化成(株)製:ビスマス触媒)0.11gを添加し、撹拌しながら50℃で4時間反応させた。
第一の芳香族多価イソシアネート化合物(化合物1−5)35質量%溶液を得た。
【0271】
(第二の芳香族多価イソシアネート化合物の合成)
<第二の芳香族多価イソシアネート化合物2−1>
コンデンサー及び撹拌機を取り付けた3つ口フラスコに、ミリオネートMR−200(東ソー(株)製)51.25g、ポリエチレングリコールモノアクリレート(ブレンマーAE−200、日油(株)製)27.03g、メチルエチルケトン(和光純薬工業(株)製)145.38gを秤り取り、室温(25℃)で撹拌し、均一溶液とした。次いで、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン1−オキシル フリーラジカル(東京化成工業(株)製)0.08g、ネオスタンU−600(日東化成(株)製:ビスマス触媒)0.16gを添加し、撹拌しながら50℃で3時間反応させた。
目的物であるラジカル重合性基を有するイソシアネート化合物(化合物2−1)35質量%溶液を得た。
【0272】
<第二の芳香族多価イソシアネート化合物2−2>
コンデンサー及び撹拌機を取り付けた3つ口フラスコに、ミリオネートMR−200(東ソー(株)製)38.44g、ペンタエリスリトールトリアクリレート(アルドリッチ社製)22.37g、メチルエチルケトン(和光純薬工業(株)製)112.93gを秤り取り、室温(25℃)で撹拌し、均一溶液とした。次いで、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン1−オキシル フリーラジカル(東京化成工業(株)製)0.03g、ネオスタンU−600(日東化成(株)製:ビスマス触媒)0.12gを添加し、撹拌しながら50℃で3時間反応させた。
目的物である第二の芳香族多価イソシアネート化合物(化合物2−2)35質量%溶液を得た。
【0273】
<第二の芳香族多価イソシアネート化合物2−3>
コンデンサー及び撹拌機を取り付けた3つ口フラスコに、ミリオネートMR−200(東ソー(株)製)41.00g、グリセリンモノメタクリレート(ブレンマーGLM、日油(株)製)9.61g、メチルエチルケトン(和光純薬工業(株)製)93.99gを秤り取り、室温(25℃)で撹拌し、均一溶液とした。次いで、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン1−オキシル フリーラジカル(東京化成工業(株)製)0.05g、ネオスタンU−600(日東化成(株)製:ビスマス触媒)0.10gを添加し、撹拌しながら50℃で3時間反応させた。次いで、ブレンマーAE−200(日油(株)製)21.62g、メチルエチルケトン(和光純薬工業(株)製)40.16gをこの順で添加し、撹拌しながら50℃で3時間反応させた。
目的物であるラジカル重合性基を有するイソシアネート化合物(化合物2−3)35質量%溶液を得た。
【0274】
<第二の芳香族多価イソシアネート化合物2−4>
コンデンサー及び撹拌機を取り付けた3つ口フラスコに、ミリオネートMR−200(東ソー(株)製)41.00g、ポリエチレングリコールモノアクリレート(ブレンマーAE−200、日油(株)製)47.73g、メチルエチルケトン(和光純薬工業(株)製)164.78gを秤り取り、室温(25℃)で撹拌し、均一溶液とした。次いで、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン1−オキシル フリーラジカル(東京化成工業(株)製)0.08g、ネオスタンU−600(日東化成(株)製:ビスマス触媒)0.18gを添加し、撹拌しながら50℃で3時間反応させた。
目的物である第二の芳香族多価イソシアネート化合物(化合物2−4)35質量%溶液を得た。
【0275】
<第二の芳香族多価イソシアネート化合物2−5>
コンデンサー及び撹拌機を取り付けた3つ口フラスコに、ミリオネートMR−200(東ソー(株)製)41.00g、ペンタエリスリトールトリアクリレート(アルドリッチ社製)47.73g、メチルエチルケトン(和光純薬工業(株)製)164.78gを秤り取り、室温(25℃)で撹拌し、均一溶液とした。次いで、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン1−オキシル フリーラジカル(東京化成工業(株)製)0.05g、ネオスタンU−600(日東化成(株)製:ビスマス触媒)0.18gを添加し、撹拌しながら50℃で3時間反応させた。
目的物である第二の芳香族多価イソシアネート化合物(化合物2−5)35質量%溶液を得た。
【0276】
上記化合物1−1〜1−5及び2−1〜2−5のそれぞれが含まれる溶液には、未反応のミリオネートMR−200が含まれていると考えられる。
上記ミリオネートMR−200は、上述の第三の芳香族多価イソシアネート化合物に該当する。
【0277】
(有機ポリマー粒子の合成)
<有機ポリマー粒子P−1>
第一の芳香族多価イソシアネート化合物(化合物1−1)35質量%溶液18.3g、第二の芳香族多価イソシアネート化合物(化合物2−1)35質量%溶液35.1gを秤り取り、均一溶解とした。これに水53gを混合し、ホモジナイザーを用いて12000rpmで12分間かけて乳化した。その後、45℃で4時間撹拌した後、水を53g添加し、更に45℃で40時間撹拌し、有機ポリマー粒子(P−1)を得た。分散液中の有機ポリマー粒子(P−1)の体積平均粒径は100nmであった。
【0278】
<有機ポリマー粒子P−2>
第一の芳香族多価イソシアネート化合物(化合物1−1)35質量%溶液8.9g、第二の芳香族多価イソシアネート化合物(化合物2−2)35質量%溶液29.4gを秤り取り、均一溶解とした。これに水40gを混合し、ホモジナイザーを用いて12000rpmで12分間かけて乳化した。その後、45℃で4時間撹拌した後、水を40g添加し、更に45℃で40時間撹拌し、有機ポリマー粒子(P−2)を得た。分散液中の有機ポリマー粒子(P−2)の体積平均粒径は130nmであった。
【0279】
<有機ポリマー粒子P−3>
第一の芳香族多価イソシアネート化合物(化合物1−5)35質量%溶液10.0g、第二の芳香族多価イソシアネート化合物(化合物2−3)35質量%溶液33.8gを秤り取り、均一溶解とした。これに水44gを混合し、ホモジナイザーを用いて12000rpmで12分間かけて乳化した。その後、45℃で4時間撹拌した後、水を44g添加し、更に45℃で40時間撹拌し、有機ポリマー粒子(P−3)を得た。分散液中の有機ポリマー粒子(P−3)の体積平均粒径は150nmであった。
【0280】
<有機ポリマー粒子P−4>
第一の芳香族多価イソシアネート化合物(化合物1−2)35質量%溶液18.3g、第二の芳香族多価イソシアネート化合物(化合物2−1)35質量%溶液35.1gを秤り取り、均一溶解とした。これに水53gを混合し、ホモジナイザーを用いて12000rpmで12分間かけて乳化した。その後、45℃で4時間撹拌した後、水を53g添加し、更に45℃で40時間撹拌し、有機ポリマー粒子(P−4)を得た。分散液中の有機ポリマー粒子(P−4)の体積平均粒径は160nmであった。
【0281】
<有機ポリマー粒子P−5>
第一の芳香族多価イソシアネート化合物(化合物1−3)35質量%溶液18.3g、第二の芳香族多価イソシアネート化合物(化合物2−1)35質量%溶液35.1gを秤り取り、均一溶解とした。これに水53gを混合し、ホモジナイザーを用いて12000rpmで12分間かけて乳化した。その後、45℃で4時間撹拌した後、水を53g添加し、更に45℃で40時間撹拌し、有機ポリマー粒子(P−5)を得た。分散液中の有機ポリマー粒子(P−5)の体積平均粒径は150nmであった。
【0282】
<有機ポリマー粒子P−6>
第一の芳香族多価イソシアネート化合物(化合物1−4)35質量%溶液18.3g、第二の芳香族多価イソシアネート化合物(化合物2−1)35質量%溶液35.1gを秤り取り、均一溶解とした。これに水53gを混合し、ホモジナイザーを用いて12000rpmで12分間かけて乳化した。その後、45℃で4時間撹拌した後、水を53g添加し、更に45℃で40時間撹拌し、有機ポリマー粒子(P−6)を得た。分散液中の有機ポリマー粒子(P−6)の体積平均粒径は130nmであった。
【0283】
<有機ポリマー粒子P−7>
第一の芳香族多価イソシアネート化合物(化合物1−2)35質量%溶液8.9g、第二の芳香族多価イソシアネート化合物(化合物2−2)35質量%溶液29.4gを秤り取り、均一溶解とした。これに水40gを混合し、ホモジナイザーを用いて12000rpmで12分間かけて乳化した。その後、45℃で4時間撹拌した後、水を40g添加し、更に45℃で40時間撹拌し、有機ポリマー粒子(P−7)を得た。分散液中の有機ポリマー粒子(P−7)の体積平均粒径は170nmであった。
【0284】
<有機ポリマー粒子P−8>
第一の芳香族多価イソシアネート化合物(化合物1−3)35質量%溶液8.9g、第二の芳香族多価イソシアネート化合物(化合物2−2)35質量%溶液29.4gを秤り取り、均一溶解とした。これに水40gを混合し、ホモジナイザーを用いて12000rpmで12分間かけて乳化した。その後、45℃で4時間撹拌した後、水を40g添加し、更に45℃で40時間撹拌し、有機ポリマー粒子(P−8)を得た。分散液中の有機ポリマー粒子(P−8)の体積平均粒径は160nmであった。
【0285】
<有機ポリマー粒子P−9>
第一の芳香族多価イソシアネート化合物(化合物1−4)35質量%溶液8.9g、第二の芳香族多価イソシアネート化合物(化合物2−2)35質量%溶液29.4gを秤り取り、均一溶解とした。これに水40gを混合し、ホモジナイザーを用いて12000rpmで12分間かけて乳化した。その後、45℃で4時間撹拌した後、水を40g添加し、更に45℃で40時間撹拌し、有機ポリマー粒子(P−9)を得た。分散液中の有機ポリマー粒子(P−9)の体積平均粒径は180nmであった。
【0286】
<有機ポリマー粒子P−10>
第一の芳香族多価イソシアネート化合物(化合物1−5)35質量%溶液8.9g、第二の芳香族多価イソシアネート化合物(化合物2−2)35質量%溶液29.4gを秤り取り、均一溶解とした。これに水40gを混合し、ホモジナイザーを用いて12000rpmで12分間かけて乳化した。その後、45℃で4時間撹拌した後、水を40g添加し、更に45℃で40時間撹拌し、有機ポリマー粒子(P−10)を得た。分散液中の有機ポリマー粒子(P−10)の体積平均粒径は180nmであった。
【0287】
<有機ポリマー粒子P−11>
第一の芳香族多価イソシアネート化合物(化合物1−1)35質量%溶液7.5g、第二の芳香族多価イソシアネート化合物(化合物2−3)35質量%溶液36.3gを秤り取り、均一溶解とした。これに水44gを混合し、ホモジナイザーを用いて12000rpmで12分間かけて乳化した。その後、45℃で4時間撹拌した後、水を44g添加し、更に45℃で40時間撹拌し、有機ポリマー粒子(P−11)を得た。分散液中の有機ポリマー粒子(P−11)の体積平均粒径は100nmであった。
【0288】
<有機ポリマー粒子P−12>
第一の芳香族多価イソシアネート化合物(化合物1−2)35質量%溶液15.0g、第二の芳香族多価イソシアネート化合物(化合物2−3)35質量%溶液28.8gを秤り取り、均一溶解とした。これに水43gを混合し、ホモジナイザーを用いて12000rpmで12分間かけて乳化した。その後、45℃で4時間撹拌した後、水を43g添加し、更に45℃で40時間撹拌し、有機ポリマー粒子(P−12)を得た。分散液中の有機ポリマー粒子(P−12)の体積平均粒径は200nmであった。
【0289】
<有機ポリマー粒子P−13>
第一の芳香族多価イソシアネート化合物(化合物1−3)35質量%溶液15.0g、第二の芳香族多価イソシアネート化合物(化合物2−3)35質量%溶液28.8gを秤り取り、均一溶解とした。これに水43gを混合し、ホモジナイザーを用いて12000rpmで12分間かけて乳化した。その後、45℃で4時間撹拌した後、水を43g添加し、更に45℃で40時間撹拌し、有機ポリマー粒子(P−13)を得た。分散液中の有機ポリマー粒子(P−13)の体積平均粒径は210nmであった。
【0290】
<有機ポリマー粒子P−14>
第一の芳香族多価イソシアネート化合物(化合物1−4)35質量%溶液15.0g、第二の芳香族多価イソシアネート化合物(化合物2−3)35質量%溶液28.8gを秤り取り、均一溶解とした。これに水43gを混合し、ホモジナイザーを用いて12000rpmで12分間かけて乳化した。その後、45℃で4時間撹拌した後、水を43g添加し、更に45℃で40時間撹拌し、有機ポリマー粒子(P−14)を得た。分散液中の有機ポリマー粒子(P−14)の体積平均粒径は120nmであった。
【0291】
<有機ポリマー粒子P−15>
第一の芳香族多価イソシアネート化合物(化合物1−5)35質量%溶液12.00g、第二の芳香族多価イソシアネート化合物(化合物2−4)35質量%溶液23.1gを秤り取り、均一溶解とした。これに水35gを混合し、ホモジナイザーを用いて12000rpmで12分間かけて乳化した。その後、45℃で4時間撹拌した後、水を35g添加し、更に45℃で40時間撹拌し、有機ポリマー粒子(P−15)を得た。分散液中の有機ポリマー粒子(P−15)の体積平均粒径は110nmであった。
【0292】
<有機ポリマー粒子P−16>
第一の芳香族多価イソシアネート化合物(化合物1−1)35質量%溶液8.9g、第二の芳香族多価イソシアネート化合物(化合物2−5)35質量%溶液29.4gを秤り取り、均一溶解とした。これに水40gを混合し、ホモジナイザーを用いて12000rpmで12分間かけて乳化した。その後、45℃で4時間撹拌した後、水を40g添加し、更に45℃で40時間撹拌し、有機ポリマー粒子(P−16)を得た。分散液中の有機ポリマー粒子(P−16)の体積平均粒径は120nmであった。
【0293】
<有機ポリマー粒子P−17>
第一の芳香族多価イソシアネート化合物(化合物1−1)35質量%溶液20.3g、ミリオネートMR−200(東ソー(株)製)10.5g、メチルエチルケトン19.5gを秤り取り、均一溶解とした。これに水45gを混合し、ホモジナイザーを用いて12000rpmで12分間かけて乳化した。その後、45℃で4時間撹拌した後、水を40g添加し、更に45℃で40時間撹拌し、有機ポリマー粒子(P−17)を得た。分散液中の有機ポリマー粒子(P−17)の体積平均粒径は180nmであった
【0294】
(比較用化合物の合成)
<比較用イソシアネート化合物D−1の合成>
コンデンサー及び撹拌機を取り付けた3つ口フラスコに、タケネートD−170N(三井化学(株)製)30.28g、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル(ユニオックスM−4000:日油(株)製)30.32g、メチルエチルケトン(和光純薬工業(株)製)60.56gを秤り取り、50℃で加熱しながら撹拌し、均一溶液とした。次いで、ネオスタンU−600(日東化成(株)製:ビスマス触媒)0.13gを添加し、撹拌しながら50℃で5時間反応させた。式POにより表される構造を有する比較用イソシアネート化合物(化合物D−1)50質量%溶液を得た。
なお、化合物D−1は芳香環構造を有していない。
【0295】
<比較用イソシアネート化合物D−2の合成>
コンデンサー及び撹拌機を取り付けた3つ口フラスコに、タケネートD−160N(三井化学(株)製)38.33g、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル(ユニオックスM−4000:日油(株)製)38.33g、メチルエチルケトン(和光純薬工業(株)製)76.66gを秤り取り、50℃で加熱しながら撹拌し、均一溶液とした。次いで、ネオスタンU−600(日東化成(株)製:ビスマス触媒)0.15gを添加し、撹拌しながら50℃で5時間反応させた。式POにより表される構造を有する比較用イソシアネート化合物(化合物D−2)50質量%溶液を得た。
なお、化合物D−2は芳香環構造を有していない。
【0296】
<比較用イソシアネート化合物E−1の合成>
コンデンサー及び撹拌機を取り付けた3つ口フラスコに、タケネートD−170N(三井化学(株)製)30.28g、ポリエチレングリコールモノアクリレート(ブレンマーAE−200、日油(株)製)16.22g、メチルエチルケトン(和光純薬工業(株)製)86.36gを秤り取り、室温(25℃)で撹拌し、均一溶液とした。次いで、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン1−オキシル フリーラジカル(東京化成工業(株)製)0.04g、ネオスタンU−600(日東化成(株)製:ビスマス触媒)0.08gを添加し、撹拌しながら50℃で5時間反応させた。
目的物であるラジカル重合性基を有する比較用イソシアネート化合物(化合物E−1)35質量%溶液を得た。
なお、化合物E−1は芳香環構造を有していない。
【0297】
<比較用イソシアネート化合物E−2の合成>
コンデンサー及び撹拌機を取り付けた3つ口フラスコに、タケネートD−160N(三井化学(株)製)38.33g、ブレンマーAE−200(日油(株)製)16.22g、メチルエチルケトン(和光純薬工業(株)製)101.31gを秤り取り、室温(25℃)で撹拌し、均一溶液とした。次いで、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン1−オキシル フリーラジカル(東京化成工業(株)製)0.05g、ネオスタンU−600(日東化成(株)製:ビスマス触媒)0.10gを添加し、撹拌しながら50℃で5時間反応させた。
目的物であるラジカル重合性基を有する比較用イソシアネート化合物(化合物E−2)35質量%溶液を得た。
なお、化合物E−2は芳香環構造を有していない。
【0298】
化合物D−1、D−2、E−1及びE−2の構造は下記の通りである。
【0299】
【化39】
【0300】
【化40】
【0301】
<比較用有機ポリマー粒子P’−1の合成>
比較用イソシアネート化合物(化合物D−1)5.5g、比較用イソシアネート化合物(化合物E−1)31.3gを秤り取り、均一溶解とした。これに水38gを混合し、ホモジナイザーを用いて12000rpmで12分間かけて乳化した。その後、45℃で4時間撹拌した後、U−CAT SA102(1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン−オクチル酸塩、サンアプロ社製)0.2g、水を38g添加し、更に45℃で40時間撹拌し、有機ポリマー粒子(P’−1)を得た。分散液中の有機ポリマー粒子(P’−1)の体積平均粒径は120nmであった。
【0302】
<比較用有機ポリマー粒子P’−2の合成>
比較用イソシアネート化合物(化合物D−2)5.5g、比較用イソシアネート化合物(化合物E−2)31.3gを秤り取り、均一溶解とした。これに水38gを混合し、ホモジナイザーを用いて12000rpmで12分間かけて乳化した。その後、45℃で4時間撹拌した後、U−CAT SA102(1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン−オクチル酸塩、サンアプロ社製)0.2g、水を38g添加し、更に45℃で40時間撹拌し、有機ポリマー粒子(P’−2)を得た。分散液中の有機ポリマー粒子(P’−2)の体積平均粒径は140nmであった。
【0303】
<比較用有機ポリマー粒子P’−3の合成>
ミリオネートMR−200(東ソー(株)製)12.25g、メチルエチルケトン(和光純薬工業(株)製)22.75gを秤り取り、溶解させた。次いで、3−アミノプロパンスルホン酸(東京化成工業(株)製)0.6125gを水30gに溶解し、0.1mol/L水酸化ナトリウム4.4g、ドデシル硫酸ナトリウム0.36gを添加し、均一溶液とし、ホモジナイザーを用いて12000rpmで12分間かけて乳化した。その後、45℃で4時間撹拌した後、水35g、添加し、更に45℃で40時間撹拌し、有機ポリマー粒子(P’−3)を得た。分散液中の有機ポリマー粒子(P’−3)の体積平均粒径は250nmであった。
【0304】
(支持体1の作製)
厚さ0.3mmのアルミニウム板(材質JIS A 1050)の表面の圧延油を除去するため、10質量%アルミン酸ソーダ水溶液を用いて50℃で30秒間脱脂処理を施した後、毛径0.3mmの束植ナイロンブラシ3本とメジアン径25μmのパミス−水懸濁液(比重1.1g/cm)を用いアルミニウム板表面を砂目立てし、水でよく洗浄した。アルミニウム板を45℃の25質量%水酸化ナトリウム水溶液に9秒間浸漬してエッチングを行い、水洗後、さらに60℃で20質量%硝酸水溶液に20秒間浸漬し、水洗した。砂目立て表面のエッチング量は約3g/mであった。
【0305】
次に、60Hzの交流電圧を用いて連続的に電気化学的な粗面化処理を行った。電解液は硝酸1質量%水溶液(アルミニウムイオンを0.5質量%含む)、液温は50℃であった。交流電源波形は、電流値がゼロからピークに達するまでの時間TPが0.8ms、duty比1:1、台形の矩形波交流を用いて、カーボン電極を対極として電気化学的な粗面化処理を行った。補助アノードにはフェライトを用いた。電流密度は電流のピーク値で30A/dm、補助陽極には電源から流れる電流の5%を分流させた。硝酸電解における電気量はアルミニウム板が陽極時の電気量175C/dmであった。その後、スプレーによる水洗を行った。
【0306】
続いて、塩酸0.5質量%水溶液(アルミニウムイオンを0.5質量%含む)、液温50℃の電解液にて、アルミニウム板が陽極時の電気量50C/dmの条件で、硝酸電解と同様の方法で電気化学的な粗面化処理を行い、その後、スプレーによる水洗を行った。
次に、アルミニウム板に15質量%硫酸水溶液(アルミニウムイオンを0.5質量%含む)を電解液として電流密度15A/dmで2.5g/mの直流陽極酸化皮膜を形成した後、水洗、乾燥して支持体を作製した。陽極酸化皮膜の表層における平均ポア径(表面平均ポア径)は10nmであった。
陽極酸化皮膜の表層におけるポア径の測定は、超高分解能型SEM(日立S-900)を使用し、12Vという比較的低加速電圧で、導電性を付与する蒸着処理等を施すこと無しに、表面を15万倍の倍率で観察し、50個のポアを無作為抽出して平均値を求める方法で行った。標準誤差は±10%以下であった。
【0307】
(塗布液の調製)
下記の各組成を混合することにより、下塗り層塗布液、画像記録層塗布液、保護層塗布液をそれぞれ調製した。
画像記録層塗布液は、本開示に係る感光性樹脂組成物に該当する。
【0308】
<下塗り層塗布液>
・ポリマー(UC−1)〔下記構造〕:0.18部
・ヒドロキシエチルイミノ二酢酸:0.10部
・水:61.4部
【0309】
【化41】
【0310】
<画像記録層塗布液>
表2又は表3に記載の使用量に従って、各成分を固形分濃度が7.0質量%になるように混合した。表中の各素材の添加量(部)は、固形分量である。
表2又は表3中、「M−4/M−5 146/78」等の記載は、化合物M−4を146部、化合物M−5を78部含むことを意味している。
表中の各成分の詳細を下記に記載する。
【0311】
〔バインダーポリマー〕
B−1:下記構造の化合物
【0312】
【化42】
【0313】
上記化学式中、主鎖の添え字は各構成単位の含有量(モル比)を表し、エチレンオキシ基の添え字は繰り返し数を表す。
【0314】
〔重合性化合物〕
M−1:トリス(アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、NKエステル A−9300、新中村化学工業(株)製
M−2:ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、SR−399、サートマー社製
M−3:ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、A−DPH 新中村化学(株)製
M−4:ジペンタエリスリトールペンタアクリレートヘキサメチレンジイソシアネート ウレタンプレポリマー、UA−510H 共栄社化学(株)製
M−5:エトキシ化ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ATM−4E 新中村化学工業(株)製
【0315】
〔重合開始剤〕
I−1〜I−3:下記構造の化合物
【0316】
【化43】
【0317】
上記構造中、TsOはトシラートアニオンを表す。
【0318】
〔赤外線吸収剤〕
K−1〜K−3:下記構造の化合物
【0319】
【化44】
【0320】
上記構造中、Phはフェニル基を表す。
【0321】
〔電子供与型ラジカル重合開始剤〕
R−1:下記構造の化合物
【0322】
【化45】
【0323】
〔酸発色剤〕
H−1:S−205 (福井山田化学工業(株)製)
H−2:GN−169 (山本化成(株)製)
H−3:Black−XV (山本化成(株)製)
H−4:Red−40 (山本化成(株)製)
【0324】
〔親水性化合物〕
T−1:トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート
T−2:下記構造の化合物
T−3:ヒドロキシプロピルセルロース、Klucel M、Hercules社製
【0325】
【化46】
【0326】
〔感脂化剤〕
C−1:下記構造の化合物
C−2:ベンジルジメチルオクチルアンモニウム・PF
C−3:下記構造の化合物
【0327】
【化47】
【0328】
〔界面活性剤〕
W−1:下記構造の化合物
【0329】
【化48】
【0330】
上記構造中、主鎖の添え字は各構成単位の含有比(質量比)を表す。
【0331】
〔溶剤〕
S−1:2−ブタノン(MEK)
S−2:1−メトキシー2−プロパノール(MFG)
S−3:メタノール
S−4:1−プロパノール
S−5:蒸留水
【0332】
<保護層塗布液>
・無機層状化合物分散液(1)〔下記〕:1.5部
・ポリビニルアルコール(CKS50、日本合成化学工業(株)製、スルホン酸変性、けん化度99モル%以上、重合度300)6質量%水溶液:0.55部
・ポリビニルアルコール(PVA−405、(株)クラレ製、けん化度81.5モル%、重合度500)6質量%水溶液:0.03部
・界面活性剤(ポリオキシエチレンラウリルエーテル、エマレックス710、日本エマルジョン(株)製)1質量%水溶液:0.86部
・イオン交換水:6.0部
【0333】
上記保護層塗布液に用いた無機層状化合物分散液(1)の調製法を以下に示す。
〔無機層状化合物分散液(1)の調製〕
イオン交換水193.6gに合成雲母(ソマシフME−100、コープケミカル(株)製)6.4gを添加し、ホモジナイザーを用いて平均粒径(レーザー散乱法)が3μmになるまで分散した。得られた分散粒子のアスペクト比は100以上であった。
【0334】
<平版印刷版原版の作製>
上記支持体上に、上記組成の下塗り層塗布液を乾燥塗布量が20mg/mになるように塗布して下塗り層を形成した。下塗り層上に、表2又は表3に記載の各画像記録層塗布液をバー塗布し、120℃で40秒間オーブン乾燥して、乾燥塗布量1.0g/mの画像記録層を形成した。
画像記録層塗布液は、有機ポリマー粒子を塗布直前に混合し撹拌することにより調製した。
必要に応じ、画像記録層上に、上記組成の保護層塗布液をバー塗布し、120℃で60秒間オーブン乾燥して、乾燥塗布量0.15g/mの保護層を形成した。
保護層を形成した例については、表2又は表3中の保護層の欄に「あり」と記載した。
【0335】
【表2】
【0336】
【表3】
【0337】
(平版印刷版原版の評価)
上記のようにして作製した平版印刷版原版を、赤外線半導体レーザー搭載のKodak社製Magnus800 Quantumにて、出力27W、外面ドラム回転数450rpm、解像度2,400dpi(dot per inch、1 inchは2.54cm)の条件で露光(照射エネルギー110mJ/cm相当)した。露光画像にはベタ画像、及びAMスクリーン(Amplitude Modulated Screening)3%網点のチャートを含むようにした。
【0338】
(1)機上現像性の評価
得られた露光済み原版を現像処理することなく、菊判サイズ(939mm×636mm)のハイデルベルグ社製印刷機SX−74のシリンダーに取り付けた。本印刷機には、不織布フィルターと温度制御装置を内蔵する容量100Lの湿し水循環タンクを接続した。湿し水S−Z1(富士フイルム(株)製)2.0%の湿し水80Lを循環装置内に仕込み、印刷インキとしてT&K UV OFS K−HS墨GE−M(T&K(株)製)を用い、標準の自動印刷スタート方法で湿し水とインキを供給した後、毎時10,000枚の印刷速度で特菱アート(76.5kg)紙に500枚印刷を行った。
上記機上現像において、非画像部にインキが転写しない状態になるまでに要した印刷用紙の枚数を機上現像性として計測した。計測結果は表4に記載した。表4中、「100枚以上」の記載は、100枚の印刷用紙を用いた時点において、現像ができなかったことを示している。
【0339】
(2)UV耐刷性
上述した機上現像性の評価を行った後、更に印刷を続けた。印刷枚数を増やしていくと徐々に画像部が磨耗するため印刷物上のインキ濃度が低下した。印刷物におけるAMスクリーン3%網点の網点面積率をグレタグ濃度計(GretagMacbeth社製)で計測した値が、印刷500枚目の計測値よりも1%低下したときの印刷部数を刷了枚数として耐刷性を評価した。印刷枚数が5万枚の場合を100とする相対耐刷性により評価した。数値が大きいほど、耐刷性が良好である。評価結果は表4に記載した。
相対耐刷性=(対象平版印刷版原版の印刷枚数)/50,000×100
【0340】
(3)インキ着肉性
印刷物100枚目のインキ濃度をマクベス濃度計(x−rite社製、exact)を用いて測定し、1.5以上(単位なし)のものをA、1.2以上1.5未満のものをB、0.9以上1.2未満のものをC、濃度0.9未満のものをDとした。数値が大きいほど、インキ着肉性が良好である。評価結果は表4に記載した。
なお、印刷機内で印刷物に紫外光を照射することにより、印刷インキは硬化されている。
【0341】
(4)分散安定性
〔粒子の塗布溶媒中での分散安定性評価〕
各溶剤(MEK/MFG=50/50質量%)100mLに有機ポリマー粒子溶液1mLを加え、10分以上撹拌し、その後、20℃で1時間静置させたものを、混合溶液の固形分分散状況を目視により観察して評価した。分散性の評価指標は以下の通りである。評価結果は表4に記載した。評価B〜評価Dにおける再分散は、30分間の撹拌により行った。
A:沈殿物がなく、分散性が良好な状態
B:沈殿物が少しあるが、容易に再分散可能な状態
C:沈殿物がたくさんあるが、再分散可能な状態
D:沈殿物または固着物があり、再分散不可な状態
【0342】
【表4】
【0343】
表4に記載した結果から、本開示に係る平版印刷版原版によれば、印刷において紫外線硬化型インキを用いた場合の耐刷性に優れる平版印刷版が得られることがわかる。
【0344】
(実施例22〜42及び比較例5〜8)
<支持体2の作製>
厚さ0.3mmのアルミニウム板(材質JIS A 1050)に、以下の(a)〜(i)の各処理を連続的に施して表面処理を行った。なお、各処理および水洗の後にはニップローラで液切りを行った。
【0345】
(a)アルカリエッチング処理
上記アルミニウム板に、カセイソーダ濃度2.6質量%、アルミニウムイオン濃度6.5質量%、温度70℃の水溶液を用いてスプレーによるエッチング処理を行い、アルミニウム板を6g/m溶解した。その後、スプレーによる水洗を行った。
【0346】
(b)デスマット処理
アルミニウム板に、温度30℃の硝酸濃度1質量%水溶液(アルミニウムイオンを0.5質量%含む。)を用いて、スプレーによるデスマット処理を行い、その後、スプレーで水洗した。デスマット処理に用いた硝酸水溶液は、硝酸水溶液中で交流を用いて電気化学的粗面化処理を行う工程の廃液を用いた。
【0347】
(c)電気化学的粗面化処理
60Hzの交流電圧を用いて連続的に電気化学的粗面化処理を行った。電解液は、硝酸10.5g/L水溶液(アルミニウムイオンを5g/L、アンモニウムイオンを0.007質量%含む)、液温50℃であった。交流電源波形は、電流値がゼロからピークに達するまでの時間TPが0.8ms、duty比1:1、台形の矩形波交流を用いて、カーボン電極を対極として電気化学的粗面化処理を行った。補助アノードにはフェライトを用いた。電流密度は電流のピーク値で30A/dm、電気量はアルミニウム板が陽極時の電気量の総和で220C/dmであった。補助陽極には電源から流れる電流の5%を分流させた。その後、スプレーによる水洗を行った。
【0348】
(d)アルカリエッチング処理
アルミニウム板に、カセイソーダ濃度26質量%、アルミニウムイオン濃度6.5質量%の水溶液を用いてスプレーによるエッチング処理を32℃で行い、アルミニウム板を0.25g/m溶解し、上記電気化学的粗面化処理を行ったときに生成した水酸化アルミニウムを主体とするスマット成分を除去し、また、生成したピットのエッジ部分を溶解してエッジ部分を滑らかにした。その後、スプレーによる水洗を行った。
【0349】
(e)デスマット処理
温度30℃の硫酸濃度15質量%水溶液(アルミニウムイオンを4.5質量%含む)を用いて、スプレーによるデスマット処理を行い、その後、スプレーで水洗した。デスマット処理に用いた硝酸水溶液は、硝酸水溶液中で交流を用いて電気化学的粗面化処理を行う工程の廃液を用いた。
【0350】
(f)電気化学的粗面化処理
60Hzの交流電圧を用いて連続的に電気化学的粗面化処理を行った。電解液は、塩酸2.5g/L水溶液(アルミニウムイオンを5g/L含む)、温度35℃であった。交流電源波形は、電流値がゼロからピークに達するまでの時間TPが0.8ms、duty比1:1、台形の矩形波交流を用いて、カーボン電極を対極として電気化学的粗面化処理を行った。補助アノードにはフェライトを用いた。電流密度は電流のピーク値で25A/dm、電気量はアルミニウム板が陽極時の電気量の総和で50C/dmであった。その後、スプレーによる水洗を行った。
【0351】
(g)アルカリエッチング処理
アルミニウム板に、カセイソーダ濃度26質量%、アルミニウムイオン濃度6.5質量%の水溶液を用いてスプレーによるエッチング処理を32℃で行い、アルミニウム板を0.1g/m溶解し、上記電気化学的粗面化処理を行ったときに生成した水酸化アルミニウムを主体とするスマット成分を除去し、また、生成したピットのエッジ部分を溶解してエッジ部分を滑らかにした。その後、スプレーによる水洗を行った。
【0352】
(h)陽極酸化処理
アルミニウム板に15質量%硫酸水溶液(アルミニウムイオンを0.5質量%含む)を電解液として電流密度15A/dmで2.5g/mの直流陽極酸化皮膜を形成し、水洗、乾燥した。陽極酸化皮膜の表層における平均ポア径(表面平均ポア径)は10nmであった。
陽極酸化皮膜の表層におけるポア径の測定は、超高分解能型SEM((株)日立製作所製S−900)を使用し、12Vという比較的低加速電圧で、導電性を付与する蒸着処理等を施すこと無しに、表面を15万倍の倍率で観察し、50個のポアを無作為抽出して平均値を求める方法で行った。標準偏差は±10%以下であった。
【0353】
(i)親水化処理
その後、非画像部の親水性を確保するため、2.5質量%3号ケイ酸ソーダ水溶液を用いて50℃で7秒間ディップしてシリケート処理を施した後、スプレーによる水洗を行うことで、支持体2を作製した。Siの付着量は11mg/mであった。
【0354】
(塗布液の調製)
下塗り層塗布液、及び保護層塗布液として、それぞれ上述の下塗り層塗布液、及び保護層塗布液と同様の塗布液を調整した。
【0355】
<画像記録層塗布液>
表5又は表6に記載の使用量に従って、各成分を固形分濃度が7.0質量%になるように混合した。表中の各素材の添加量(部)は、固形分量である。
表5又は表6中、「M−4/M−5 146/78」等の記載は、化合物M−4を146部、化合物M−5を78部含むことを意味している。
表5又は表6中の各成分のうち、表2又は表3中に記載がある成分は、上述の表2又は表3において使用されている成分と同様の成分である。
表5又は表6中の各成分のうち、表2又は表3に記載がない成分の詳細を下記に記載する。
【0356】
〔着色剤〕
S−1(エチルバイオレット、下記構造の化合物)
【0357】
【化49】
【0358】
<平版印刷版原版の作製>
上記支持体2上に、上記組成の下塗り層塗布液を乾燥塗布量が20mg/mになるように塗布して下塗り層を形成した。下塗り層上に、表2又は表3に記載の各画像記録層塗布液をバー塗布し、120℃で40秒間オーブン乾燥して、乾燥塗布量1.0g/mの画像記録層を形成した。
画像記録層塗布液は、有機ポリマー粒子を塗布直前に混合し撹拌することにより調製した。
必要に応じ、画像記録層上に、上記組成の保護層塗布液をバー塗布し、120℃で60秒間オーブン乾燥して、乾燥塗布量0.15g/mの保護層を形成した。
保護層を形成した例については、表5中の保護層の欄に「あり」と記載した。
【0359】
【表5】
【0360】
【表6】
【0361】
(平版印刷版原版の評価)
上記のようにして作製した平版印刷版原版を、赤外線半導体レーザー搭載のKodak社製Magnus800 Quantumにて、出力27W、外面ドラム回転数450rpm、解像度2,400dpi(dot per inch、1 inchは2.54cm)の条件で露光(照射エネルギー110mJ/cm相当)した。露光画像にはベタ画像、及びAMスクリーン(Amplitude Modulated Screening)3%網点のチャートを含むようにした。
【0362】
(1)現像性の評価
〔現像処理〕
露光後の平版印刷版に、Glunz & Jensen社製のClean Out Unit+ C85を使用し、60cm/minの搬送速度で25℃にて現像処理を行い、平版印刷版を作製した。現像処理には、下記組成の現像液を使用した。この現像液は、保護層の除去、現像及びガム引きを1液で行うことができる現像液である。
【0363】
<現像液>
・ペレックスNBL(アルキルナフタレンスルホン酸ナトリウム、花王(株)製アニオン界面活性剤):7.8質量部
・ニューコールB13(ポリオキシエチレンアリールエーテル、日本乳化剤(株)製ノニオン界面活性剤):2.0質量部
・サーフィノール2502(Air Products社製):0.6質量部
・ベンジルアルコール(和光純薬工業(株)製):0.8質量部
・グルコン酸ソーダ(扶桑化学工業(株)製):3.0質量部
・リン酸一水素二ナトリウム(和光純薬工業(株)製):0.3質量部
・炭酸水素ナトリウム(和光純薬工業(株)製):0.3質量部
・消泡剤(Bluester Silicones社製SILCOLAPSE432):0.01質量部
・水:85.49質量部
・pH:8.6
【0364】
現像処理後に未露光部の濃度測定を行った。濃度測定は、分光濃度計(X−Rite社SpectroEye)を使用し、シアン濃度を測定した。得られたシアン濃度の値と塗布を実施していない支持体2のシアン濃度の値との差分(△D)を算出し、熱経時安定性現像性を下記評価基準に従ってA〜Cで評価した。△Dが小さいほど、現像処理後に非画像部に残る画像記録層が少なく、現像性がよい。
−評価基準−
A:△D≦0.01
B:0.01<△D≦0.03
C:0.03<△D
【0365】
(2)UV耐刷性
記現像処理にて得られた平版印刷版を、菊判サイズ(939mm×636mm)のハイデルベルグ社製印刷機SX−74のシリンダーに取り付けた。本印刷機には、不織布フィルターと温度制御装置を内蔵する容量100Lの湿し水循環タンクを接続した。湿し水S−Z1(富士フイルム(株)製)2.0%の湿し水80Lを循環装置内に仕込み、印刷インキとしてT&K UV OFS K−HS墨GE−M(T&K(株)製)を用い、標準の自動印刷スタート方法で湿し水とインキを供給した後、毎時10,000枚の印刷速度で特菱アート紙に印刷を行った。印刷枚数を増やしていくと徐々に画像部が磨耗するため印刷物上のインキ濃度が低下した。印刷物におけるAMスクリーン3%網点の網点面積率をグレタグ濃度計(GretagMacbeth社製)で計測した値が、印刷500枚目の計測値よりも1%低下したときの印刷部数を刷了枚数として耐刷性を評価した。印刷枚数が5万枚の場合を100とする相対耐刷性により評価した。数値が大きいほど、耐刷性が良好である。評価結果は表7に記載した。
相対耐刷性=(対象平版印刷版原版の印刷枚数)/50,000×100
【0366】
(3)インキ着肉性
印刷物100枚目のインキ濃度をマクベス濃度計(x−rite社製、exact)を用いて測定し、1.5以上(単位なし)のものをA、1.2以上1.5未満のものをB、0.9以上1.2未満のものをC、濃度0.9未満のものをDとした。数値が大きいほど、インキ着肉性が良好である。評価結果は表7に記載した。
なお、印刷機内で印刷物に紫外光を照射することにより、印刷インキは硬化されている。
【0367】
(4)分散安定性
〔粒子の塗布溶媒中での分散安定性評価〕
各溶剤(MEK/MFG=50/50質量%)100mLに各実施例又は比較例において使用した有機ポリマー粒子溶液1mLを加え、10分以上撹拌し、その後、20℃で1時間静置させたものを、混合溶液の固形分分散状況を目視により観察して評価した。分散性の評価基準は以下の通りである。評価結果は表7に記載した。評価B〜評価Dにおける再分散は、30分間の撹拌により行った。
−評価基準−
A:沈殿物がなく、分散性が良好な状態
B:沈殿物が少しあるが、容易に再分散可能な状態
C:沈殿物がたくさんあるが、再分散可能な状態
D:沈殿物または固着物があり、再分散不可な状態
【0368】
【表7】
【0369】
表7に記載した結果から、本開示に係る平版印刷版原版によれば、印刷において紫外線硬化型インキを用いた場合の耐刷性に優れる平版印刷版が得られることがわかる。
【0370】
2017年6月12日に出願された日本国特許出願第2017−115429号、及び、2017年10月31日に出願された日本国特許出願第2017−210128号の開示は、その全体が参照により本明細書に取り込まれる。
本明細書に記載された全ての文献、特許出願、及び、技術規格は、個々の文献、特許出願、及び、技術規格が参照により取り込まれることが具体的かつ個々に記された場合と同程度に、本明細書中に参照により取り込まれる。