(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照しながら実施形態について説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては可能な限り同一の符号を付して、重複する説明は省略する。
【0011】
[実施形態]
図1〜
図13を参照して実施形態を説明する。なお、以下の説明において、X方向、Y方向、Z方向は互いに垂直な方向であり、X方向およびY方向は水平方向、Z方向は鉛直方向である。鉛直軸を回転中心とする回転方向をθ方向とも呼ぶ。
【0012】
<基板処理システム>
図1は、実施形態に係る基板処理システム1を示す平面図である。基板処理システム1は、基板10のダイシング、基板10の薄板化、基板10へのDAFの付着、チップ同士の間隔の拡大、基板10のマウントなどを行う。基板処理システム1は、搬入出ステーション20と、処理ステーション30と、制御装置90とを備える。
【0013】
搬入出ステーション20には、外部からカセットCが搬入出される。カセットCは、複数枚の基板10をZ方向に間隔をおいて収容する。搬入出ステーション20は、載置台21と、搬送領域25とを備える。
【0014】
載置台21は、複数の載置板22を備える。複数の載置板22はY方向に一列に配列される。各載置板22にはカセットCが載置される。一の載置板22上のカセットCは処理前の基板10を収容し、他の一の載置板22上のカセットCは処理後の基板10を収容してよい。
【0015】
搬送領域25は、載置台21とX方向に隣接して配置される。搬送領域25には、Y方向に延在する搬送路26と、搬送路26に沿って移動可能な搬送装置27とが設けられる。搬送装置27は、Y方向だけではなく、X方向、Z方向およびθ方向に移動可能とされてよい。搬送装置27は、載置板22に載置されたカセットCと、処理ステーション30のトランジション部35との間で、基板10の搬送を行う。
【0016】
処理ステーション30は、搬送領域31と、トランジション部35と、後述の各種の処理部とを備える。尚、処理部の配置や個数は、
図1に示す配置や個数に限定されず、任意に選択可能である。また、複数の処理部は、任意の単位で、分散または統合して配置してもよい。
【0017】
搬送領域31は、トランジション部35を基準として、搬送領域25とはX方向反対側に設けられる。トランジション部35や各種の処理部は、搬送領域31に離接して設けられ、搬送領域31を囲むように設けられる。
【0018】
搬送領域31には、X方向に延在する搬送路32と、搬送路32に沿って移動可能な搬送装置33とが設けられる。搬送装置33は、X方向だけではなく、Y方向、Z方向およびθ方向に移動可能とされてよい。搬送装置33は、搬送領域31に隣接する処理部同士の間で基板10を搬送する。
【0019】
制御装置90は、例えばコンピュータで構成され、
図1に示すようにCPU(Central Processing Unit)91と、メモリなどの記憶媒体92と、入力インターフェース93と、出力インターフェース94とを有する。制御装置90は、記憶媒体92に記憶されたプログラムをCPU91に実行させることにより、各種の制御を行う。また、制御装置90は、入力インターフェース93で外部からの信号を受信し、出力インターフェース94で外部に信号を送信する。
【0020】
制御装置90のプログラムは、情報記憶媒体に記憶され、情報記憶媒体からインストールされる。情報記憶媒体としては、例えば、ハードディスク(HD)、フレキシブルディスク(FD)、コンパクトディスク(CD)、マグネットオプティカルデスク(MO)、メモリーカードなどが挙げられる。尚、プログラムは、インターネットを介してサーバからダウンロードされ、インストールされてもよい。
【0021】
<基板処理システムによる処理後の基板>
図2は、基板処理システム1による処理後の基板10を示す斜視図である。基板10は、ダイシング、薄板化、DAF15の付着、チップ13の間隔の拡大などの処理を施されたうえで、粘着テープ51を介してフレーム59に装着される。
【0022】
粘着テープ51は、シート基材と、シート基材の表面に塗布された粘着剤とで構成される。粘着テープ51は、リング状のフレーム59の開口部を覆うようにフレーム59に装着され、フレーム59の開口部において基板10と貼合される。これにより、フレーム59を保持して基板10を搬送でき、基板10のハンドリング性を向上できる。
【0023】
粘着テープ51と基板10との間には、
図2に示すようにDAF(Die Attach Film)15が設けられてもよい。DAF15は、ダイボンディング用の接着シートである。DAF15は、積層されるチップ同士の接着、チップと基材との接着などに用いられる。DAF15は、導電性、絶縁性のいずれでもよい。
【0024】
DAF15は、フレーム59の開口部よりも小さく形成され、フレーム59の内側に設けられる。DAFは、基板10の第2主表面12の全体を覆う。尚、チップ13の積層が行われない場合、DAF15は不要であるので、基板10は粘着テープ51のみを介してフレーム59に装着されてよい。
【0025】
以下、処理ステーション30に配設される、支持基板接着部40、ダイシング部100、薄板化部200、DAF付着部300、DAF分割加工部400、粘着テープ付着部510、支持基板剥離部520、エキスパンド部530、マウント部540、及び洗浄部600についてこの順で説明する。
【0026】
<支持基板接着部>
図3は、支持基板接着部40において基板10に支持基板41が装着された状態を示す図である。支持基板接着部40は、基板処理システム1による処理前の基板10に支持基板41を接着する。基板10は、例えばシリコンウェハや化合物半導体ウェハなどの半導体基板や、サファイア基板などである。処理前の基板10の第1主表面11は、格子状に形成された複数のストリートで区画され、区画される領域には予め素子、回路、端子などを含むデバイス層14が形成されている。
【0027】
支持基板41は、ダイシングや薄板化などの加工が行われる間、基板10の第1主表面11を保護して、第1主表面11に予め形成されたデバイス層14を保護する。支持基板41は、基板10と略同径の平板状の基板であり、基板10を支持する。支持基板41は、本実施形態では透過性を有するガラス基板である。なお、支持基板41は、従来の保護テープなどと比較して相対的に剛性の高いものであればよく、例えばシリコンウェハや化合物半導体ウェハなどの半導体基板や、サファイア基板などガラス製以外の基板も適用できる。また、支持基板41は、基板10を支持する機能を有すると共に、基板処理システム1の各部間で基板10を搬送するキャリアとしても機能するものである。
【0028】
支持基板接着部40は、基板10のデバイス層14が形成される側の第1主表面11に、接着剤を塗布して接着層42を形成し、接着層42により支持基板41を基板10に接着する。本実施形態では、支持基板接着部40は、透過性を有する支持基板41を介して紫外線を接着層42に照射することによって、接着層42を硬化させて接着層42の粘着力を高め、支持基板41を基板10に接着する。なお、接着層42の硬化手法としては紫外線照射以外にも熱やレーザを用いた手法を適用してもよい。また、第1主表面11に接着剤を塗布するかわりに、支持基板41側に接着剤を塗布して接着してもよい。
【0029】
接着層42の材料としては、紫外線、レーザなどの照射や加熱によって硬化されて粘着力を高めることができ、かつ、硬化した状態で紫外線、レーザなどの照射や加熱によって、さらなる硬化、軟化や改質などを生じて粘着力が弱まり剥離しやすくできる材料を用いることができる。このような材料としては、例えば、紫外線硬化樹脂、熱硬化樹脂、熱可塑性樹脂などが挙げられる。接着層42は、複数の層で構成されてもよい。この場合、一部の層のみを劣化させて剥離しやすくしてもよい。
【0030】
<ダイシング部>
図4は、ダイシング部100を示す図である。ダイシング部100は、基板10のダイシングを行う。ここで、基板10のダイシングとは、基板10を複数のチップ13に分割するための加工を意味し、特に本実施形態では、
図4に示すようにレーザ光を用いて基板10の内部に破断の起点となる改質層16を形成するステルスダイシング(SD)を行う。ダイシング部100は、例えば、基板保持部110と、基板加工部120と、移動機構部130とを有する。
【0031】
基板保持部110は、支持基板41を介して基板10を保持する。基板10は水平に保持されてよい。例えば、基板10の支持基板41で保護されている第1主表面11が下面とされ、基板10の第2主表面12が上面とされる。基板保持部110は、例えば真空チャックである。
【0032】
基板加工部120は、例えば基板保持部110で保持されている基板10のダイシングを行う。基板加工部120は、例えばレーザ発振器121と、レーザ発振器121からのレーザ光線を基板10に照射する光学系122とを有する。光学系122は、レーザ発振器121からのレーザ光線を基板10に向けて集光する集光レンズなどで構成される。
【0033】
移動機構部130は、基板保持部110と基板加工部120とを相対的に移動させる。移動機構部130は、例えば基板保持部110をX方向、Y方向、Z方向およびθ方向に移動させるXYZθステージ等で構成される。
【0034】
制御装置90は、基板加工部120および移動機構部130を制御して、基板10を複数のチップ13に区画するストリートに沿って基板10のダイシングを行う。本実施形態では、基板10に対し透過性を有するレーザ光線が用いられる。
【0035】
尚、支持基板接着部40およびダイシング部100は、本実施形態では基板処理システム1の処理ステーション30に配設されるが、基板処理システム1の外部に設けられてもよい。この場合、基板10は、ダイシングされたうえで、外部から搬入出ステーション20に搬入される。
【0036】
<薄板化部>
薄板化部200(
図1参照)は、ダイシングされた基板10の支持基板41で保護されている第1主表面11とは反対側の第2主表面12を加工することにより、基板10を薄板化する。ダイシング部100で分割の起点(改質層16)を形成する場合、薄板化の過程で基板10に加工応力が作用することにより、分割の起点から板厚方向にクラックが進展し、基板10が複数のチップ13に分割される。薄板化部200は、例えば
図1に示すように、回転テーブル201と、基板吸着部としてのチャックテーブル202と、粗研削部210と、仕上げ研削部220と、ダメージ層除去部230とを有する。
【0037】
回転テーブル201は、回転テーブル201の中心線を中心に回転させられる。回転テーブル201の回転中心線の周りには、複数(例えば
図1では4つ)のチャックテーブル202が等間隔で配設される。
【0038】
複数のチャックテーブル202は、回転テーブル201と共に、回転テーブル201の中心線を中心に回転する。回転テーブル201の中心線は、鉛直とされる。回転テーブル201が回転する度に、粗研削部210、仕上げ研削部220およびダメージ層除去部230と向かい合うチャックテーブル202が変更される。
【0039】
チャックテーブル202は、支持基板41を介して基板10を吸着する。チャックテーブル202は、例えば真空チャックである。基板10は水平に保持されてよい。例えば、基板10の支持基板41で保護されている第1主表面11が下面とされ、基板10の第2主表面12が上面とされる。
【0040】
図5は、薄板化部200の粗研削部210を示す図である。粗研削部210は、基板10の粗研削を行う。粗研削部210は、例えば
図5に示すように、回転砥石211を有する。回転砥石211は、その中心線を中心に回転させられる共に下降され、チャックテーブル202で保持されている基板10の上面(つまり第2主表面12)を加工する。基板10の上面には研削液が供給される。
【0041】
仕上げ研削部220は、基板10の仕上げ研削を行う。仕上げ研削部220の構成は、粗研削部210の構成とほぼ同様である。但し、仕上げ研削部220の回転砥石の砥粒の平均粒径は、粗研削部210の回転砥石の砥粒の平均粒径よりも小さい。
【0042】
ダメージ層除去部230は、粗研削や仕上げ研削などの研削によって基板10の第2主表面12に形成されたダメージ層を除去する。例えば、ダメージ層除去部230は、基板10に対して処理液を供給してウェットエッチング処理を行い、ダメージ層を除去する。尚、ダメージ層の除去方法は特に限定されない。
【0043】
尚、薄板化部200は、基板10の研磨を行う研磨部を有してもよい。研磨部の構成は、粗研削部210の構成とほぼ同様である。基板10の研磨としては、例えばCMP(Chemical Mechanical Polishing)などが挙げられる。また、薄板化部200は、不純物を捕獲するゲッタリングサイト(例えば結晶欠陥や歪み)を形成するゲッタリング部を有してもよい。チャックテーブル202の数は、
図1では4つであるが、加工の種類の数に応じて適宜変更される。また、一の加工部(例えばダメージ層除去部230)が、複数種類の加工(例えばダメージ層除去とゲッタリングサイト形成)を行ってもよい。
【0044】
<DAF付着部>
図6は、DAF付着部300を示す図である。DAF付着部300は、薄板化された基板10の第2主表面12に、DAF15を付着する。例えば、DAF付着部300は、薄板化された基板10の第2主表面12に、DAF15の材料を含むDAF用塗布液を塗布するDAF塗布部310を有する。DAF塗布部310は、例えばDAF用塗布液を吐出するノズルなどで構成される。
【0045】
DAF付着部300は、DAF塗布部310の他に、支持基板41を介して基板10を保持する基板保持部311を有する。基板10は水平に保持されてよい。例えば基板10の支持基板41で保護されている第1主表面11が下面とされ、基板10の第2主表面12が上面とされる。基板保持部311は、例えば真空チャックである。
【0046】
DAF塗布部310は、基板保持部311に対して相対的に移動させられ、基板保持部311で保持されている基板10の第2主表面12に、DAF用塗布液を塗布する。その塗布方法は、特に限定されないが、例えばスピンコート法、インクジェット法、スクリーン印刷法などが挙げられる。
【0047】
DAF用塗布液は、例えば、アクリルやエポキシなどの樹脂と、樹脂を溶かす溶媒とを含み、ボトルに収容される。そのボトルとDAF塗布部310とを接続する配管の途中には、流量調整弁や流量計などが設けられる。
【0048】
DAF用塗布液は、基板10の第2主表面12に塗布され、液膜を形成する。その液膜を乾燥することにより、DAF15が形成される。DAF用塗布液を用いる場合、その液膜の膜厚を変更することで、DAF15の膜厚を変更できる。また、DAF用塗布液のボトルを交換することで、DAF15の材料を簡単に変更できる。
【0049】
なお、DAF付着部300は、例えば薄板化された基板10の第2主表面12に、予めフィルム状に成形されたDAF15を貼合させるなど、
図6に示す手法以外の手法を用いて基板10にDAF15を付着する構成でもよい。
【0050】
<DAF分割加工部>
図7は、DAF分割加工部400を示す図である。DAF分割加工部400は、チップ13同士の境界線に沿って、DAF15の分割加工を行う。ここで、DAF15の分割加工とは、DAF15を分割するための加工を意味し、DAF15を分割すること、DAF15に分割の起点を形成することを含む。DAF分割加工部400は、例えば、基板保持部410と、DAF加工部420と、移動機構部430とを有する。
【0051】
基板保持部410は、支持基板41を介して基板10を保持する。基板10は水平に保持されてよい。例えば、基板10の支持基板41で保護されている第1主表面11が下面とされ、基板10のDAF15と付着された第2主表面12が上面とされる。基板保持部410は、例えば真空チャックである。
【0052】
DAF加工部420は、基板保持部410で保持されている基板10と付着されたDAF15の分割加工を行う。DAF加工部420は、例えばレーザ発振器421と、レーザ発振器421からのレーザ光線をDAF15に照射する光学系422とを有する。光学系422は、レーザ発振器421からのレーザ光線をDAF15に向けて集光する集光レンズなどで構成される。
【0053】
移動機構部430は、基板保持部410とDAF加工部420とを相対的に移動させる。移動機構部430は、例えば基板保持部410をX方向、Y方向、Z方向およびθ方向に移動させるXYZθステージ等で構成される。
【0054】
制御装置90は、DAF加工部420および移動機構部430を制御して、チップ13同士の境界線に沿ってDAF15の分割加工を行う。DAF15の内部に破断の起点となる改質層を形成してもよいし、DAF15のレーザ照射面(例えば
図7では上面)にレーザ加工溝を形成してもよい。レーザ加工溝は、DAF15を膜厚方向に貫通してもよいし貫通しなくてもよい。
【0055】
DAF15の内部に改質層を形成する場合、DAF15に対し透過性を有するレーザ光線が用いられる。一方、DAF15のレーザ照射面にレーザ加工溝を形成する場合、DAF15に対し吸収性を有するレーザ光線が用いられる。
【0056】
尚、DAF加工部420は、本実施形態ではDAF15にレーザ光線を照射するレーザ発振器を有するが、DAF15を切削する切削ブレードを有してもよいし、DAF15の表面にスクライブ溝を形成するスクラバーを有してもよい。
【0057】
<粘着テープ付着部>
図8は、粘着テープ付着部510における基板10および支持基板41の状態を示す図である。粘着テープ付着部510は、DAF15を付着された基板10の第2主表面12に粘着テープ51を付着する。粘着テープ付着部510は、例えば
図8に示すように、粘着テープ51の粘着面を上方に向けて台などに載置して、基板10の第2主表面12に付着されたDAF15の表面を粘着テープ51の粘着面と貼りあわせることによって、粘着テープ51を基板10の第2主表面12側に付着させる。この場合、
図8に示すように、基板10の支持基板41で保護されている第1主表面11が上面とされ、基板10のDAF15と付着された第2主表面12が下面とされる。
【0058】
<支持基板剥離部>
図9は、支持基板剥離部520における基板10および支持基板41の状態を示す図である。支持基板剥離部520は、支持基板41を基板10から剥離する。基板10を構成する複数のチップ13同士の間隔を広げるときに、支持基板41が妨げとなることを防止できる。
【0059】
支持基板剥離部520は、例えば支持基板41を介して紫外線を接着層42に照射することによって、支持基板接着部40によって硬化された接着層42をさらに硬化させて粘着力を低下させる。接着層42の粘着力が低下した後に、剥離操作によって支持基板41を基板10から容易に剥離できる。なお、紫外線照射のかわりに、加熱またはレーザ照射によって接着層42の粘着力を低下させてもよい。
【0060】
<エキスパンド部>
図10は、エキスパンド部530を示す図である。エキスパンド部530は、DAF15を付着された基板10を構成する複数のチップ13同士の間隔を広げる。チップ13同士の間隔を広げることにより、搬送時やピックアップ時のチッピングを抑制できる。
【0061】
エキスパンド部530は、例えば、DAF15を介して基板10と付着された粘着テープ51を放射状に延伸することにより、チップ13同士の間隔を広げる粘着テープ延伸部535を有する。粘着テープ延伸部535は、例えば、粘着テープ外周保持部536と、粘着テープ押圧部537と、粘着テープ押圧駆動部538とを有する。
【0062】
粘着テープ外周保持部536は、粘着テープ51の外周部を保持する。粘着テープ外周保持部536は、例えばリング状に形成される。粘着テープ外周保持部536と、粘着テープ外周保持部536の内側に配置された基板10との間には、リング状の隙間が形成される。
【0063】
粘着テープ押圧部537は、粘着テープ外周保持部536の内周と、粘着テープ外周保持部536で保持されている粘着テープ51と付着された基板10の外周との間において、粘着テープ51を押圧する。粘着テープ押圧部537は、例えば円筒状に形成される。
【0064】
粘着テープ押圧駆動部538は、粘着テープ外周保持部536と粘着テープ押圧部537とを相対的に移動させる。その移動方向は、基板10の主表面(例えば第1主表面11)に対し垂直とされ、例えば鉛直方向とされる。粘着テープ押圧駆動部538は、シリンダなどで構成される。
【0065】
制御装置90は、粘着テープ押圧駆動部538を制御して、粘着テープ51を押圧して粘着テープ51を放射状に延伸する。これにより、チップ13同士の間隔を広げることができ、チップ13同士の間に隙間を形成することができる。
【0066】
<マウント部>
図11は、マウント部540を示す図である。マウント部540は、チップ13同士の間隔が広げられた基板10を、DAF15および粘着テープ51を介してフレーム59に装着する。
【0067】
例えば、マウント部540は、フレーム59を保持するフレーム保持部547と、フレーム保持部547で保持されているフレーム59に対し粘着テープ51およびDAF15を介して基板10を装着する貼合部548とを有する。貼合部548は、例えば粘着テープ51のフレーム59に装着される装着部分52を平坦に保持する平坦保持部549と、平坦保持部549とフレーム保持部547とを相対的に移動させる移動機構部550とを有する。
【0068】
粘着テープ51のフレーム59に装着される装着部分52は、平坦保持部549によって平坦に保持され、フレーム59と平行に保持されながらフレーム59に対し相対的に接近させられ、フレーム59と貼合される。一方、粘着テープ51のフレーム59に装着されない余剰部分53は、カッターなどで切除されてよい。粘着テープ51のフレーム59に装着される装着部分52は、弛まないので、チップ13同士の間隔を維持できる。
【0069】
<洗浄部>
図12は、洗浄部600における基板10の状態を示す図である。洗浄部600は、支持基板41を剥離された基板10の第1主表面11を洗浄する。これにより、第1主表面11に残存していた接着層42が除去される。
【0070】
<基板処理方法>
次に、上記構成の基板処理システム1を用いた基板処理方法について説明する。
図13は、実施形態に係る基板処理方法のフローチャートである。
【0071】
図13に示すように基板処理方法は、搬入工程S101と、支持基板接着工程S102と、ダイシング工程S103と、薄板化工程S104と、DAF付着工程S105と、DAF分割加工工程S106と、テープ付着工程S107と、支持基板剥離工程S108と、エキスパンド工程S109と、マウント工程S110と、テープ切断工程S111と、洗浄工程S112と、搬出工程S113と、を有する。これらの工程は、制御装置90による制御下で実施される。尚、これらの工程の順序は、
図13に示す順序には限定されない。
【0072】
搬入工程S101では、搬送装置27が載置台21上のカセットCから処理ステーション30のトランジション部35に基板10を搬送し、次いで、搬送装置33がトランジション部35から支持基板接着部40に基板10を搬送する。
【0073】
支持基板接着工程S102では、
図3に示すように、支持基板接着部40が、基板10のデバイス層14が形成される側の第1主表面11に、接着剤を塗布して接着層42を形成し、接着層42により支持基板41を基板10に接着する。支持基板接着部40は、例えば支持基板41を介して紫外線を接着層42に照射することによって、接着層42を硬化させて支持基板41を基板10に接着する。なお、第1主表面11に接着剤を塗布するかわりに、支持基板41側に接着剤を塗布して接着してもよい。
【0074】
ダイシング工程S103では、
図4に示すように、ダイシング部100が、基板10を複数のチップ13に区画するストリートに沿って、基板10のダイシングを行う。
【0075】
薄板化工程S104では、
図5に示すように、薄板化部200が、基板10の支持基板41で保護された第1主表面11とは反対側の第2主表面12を加工することにより、基板10を薄板化する。このとき、基板10の第1主表面11側は、支持基板41で保持されている。
【0076】
DAF付着工程S105では、
図6に示すように、DAF付着部300が、薄板化された基板10の第2主表面12にDAF15を付着する。例えば、DAF付着工程S105では、薄板化された基板10の第2主表面12に、DAF15の材料を含むDAF用塗布液を塗布する。
【0077】
DAF用塗布液は、基板10の第2主表面12に塗布され、液膜を形成する。その液膜を乾燥することにより、DAF15が形成される。DAF用塗布液を用いる場合、その液膜の膜厚を変更することで、DAF15の膜厚を変更できる。また、DAF用塗布液のボトルを交換することで、DAF15の材料を簡単に変更できる。
【0078】
尚、DAF付着工程S105では、DAF付着部300が、薄板化された基板10の第2主表面12に、予めフィルム状に成形されたDAF15を貼合させてもよい。DAF15が予めフィルム状に成形されるため、基板10の周囲にDAF15が飛散することを防止できる。
【0079】
DAF分割加工工程S106では、
図7に示すように、DAF分割加工部400が、チップ13同士の境界線に沿ってDAF15を分割加工する。
【0080】
尚、DAF分割加工工程S106は行われずに、エキスパンド工程S109が行われてもよい。エキスパンド工程S109においてチップ13同士の間隔を広げることで、チップ13同士の境界線に沿ってDAF15を引き裂くことができる。
【0081】
本実施形態では、DAF分割加工工程S106が、DAF付着工程S105の後、エキスパンド工程S109の前に行われる。そのため、引き裂き性の低いDAF15が使用可能となるので、DAF15の樹脂の種類の選択肢が広がる。
【0082】
テープ付着工程S107では、
図8に示すように、粘着テープ付着部510が、DAF15を付着された基板10の第2主表面12に粘着テープ51を付着する。
【0083】
支持基板剥離工程S108では、
図9に示すように、支持基板剥離部520が、支持基板41を基板10から剥離する。支持基板剥離部520は、例えば支持基板41を介して紫外線を接着層42に照射することによって、支持基板接着工程S102にて硬化された接着層42をさらに硬化させて粘着力を低下させる。接着層42の粘着力が低下した後に、剥離操作によって支持基板41を基板10から容易に剥離できる。なお、紫外線照射のかわりに、加熱またはレーザ照射によって接着層42の粘着力を低下させてもよい。
【0084】
エキスパンド工程S109では、
図10に示すように、エキスパンド部530が、DAF15と付着された基板10を構成する複数のチップ13同士の間隔を広げる。チップ13同士の間隔を広げることにより、搬送時やピックアップ時のチッピングを抑制できる。
【0085】
例えばエキスパンド工程S109では、DAF15を介して基板10と付着された粘着テープ51を放射状に延伸することにより、チップ13同士の間隔を広げる。延伸された粘着テープ51でチップ13同士の間隔を広げたまま維持できる。
【0086】
マウント工程S110では、
図11に示すように、マウント部540が、チップ13同士の間隔が広げられた基板10を、DAF15および粘着テープ51を介してフレーム59に装着する。例えば、マウント工程S110では、粘着テープ51のフレーム59に装着される装着部分52を平坦に保持すると共に、粘着テープ51とフレーム59とを貼合させる。粘着テープ51のフレーム59に装着される装着部分52は、弛まないので、チップ13同士の間隔を維持できる。これにより、基板10は、
図3に示すように、チップ13同士の間隔を広げた状態で、DAF15および粘着テープ51を介してフレーム59に保持される。
【0087】
テープ切断工程S111では、マウント部540が、粘着テープ51にフレーム59を貼り合せた後に、粘着テープ51のフレーム59に装着されない余剰部分53を、カッターなどで切断する。
【0088】
洗浄工程S112では、
図12に示すように、洗浄部600が、支持基板41を剥離された基板10の第1主表面11を洗浄する。これにより、第1主表面11に残存していた接着層42が除去される。
【0089】
搬出工程S113では、搬送装置33が洗浄部600からトランジション部35に基板10を搬送し、次いで、搬送装置27がトランジション部35から載置台21上のカセットCに基板10を搬送する。搬送装置33や搬送装置27は、フレーム59を保持して基板10を搬送する。カセットCは、載置台21から外部に搬出される。外部に搬出された基板10は、チップ13ごとにピックアップされる。このようにして、チップ13およびDAF15を含む半導体装置が製造される。
【0090】
なお、上記の基板処理方法では、例えばチップ13の積層が行われない場合などでは、DAF15は不要であるので、DAF付着工程S105と、DAF分割加工工程S106とを行わなくてもよい。この場合、基板処理システム1による処理後の基板10(
図2参照)では、粘着テープ51と基板10(チップ13)との間にDAF15が設けらず、基板10は粘着テープ51のみを介してフレーム59に装着される。
【0091】
次に本実施形態に係る基板処理方法の効果を説明する。基板処理方法は、基板10のデバイス層14が形成される側の第1主表面11に支持基板41を接着する支持基板接着工程S102と、支持基板接着工程S102にて支持基板41を接着された第1主表面11とは反対側の第2主表面12から基板10のステルスダイシングを行うダイシング工程S103と、ダイシング工程S103にてステルスダイシングが行われた基板10の第2主表面12を研削して基板10を薄板化する薄板化工程S104と、を有する。
【0092】
ここで比較例として、例えば特許文献1に記載されるような従来の基板処理方法を考える。従来の基板処理方法では、基板10の薄板化の際に、基板の第1主表面11は保護テープで保護されている。
図5に図示した本実施形態の薄板化工程S104と関連付けると、チャックテーブル202に保護テープを介して基板10が載置されて第2主表面12の研削が行われる。
【0093】
このように基板10の第1主表面11のデバイス層14を保護テープで保護する構成では、本実施形態のように先にダイシング工程S103にて基板10のステルスダイシングを行い、その後に薄板化工程S104にて基板10の薄板化を行う場合、各チップ13を保護する保護テープの剛性が低いため、各チップ13の相対位置が変動して加工安定性に欠ける虞がある。例えば、薄板化工程S104では、薄板化の過程で基板10に加工応力が作用することにより、ダイシング工程S103にてステルスダイシングによって基板10内部に形成された改質層16(
図4参照)から板厚方向にクラックが進展し、基板10が複数のチップ13に分割される。このときに、各チップ13を下方から保持している保護テープが柔らかいため、各チップ13の基盤が不安定となり、各チップ13にコーナークラックが発生しやすい。また、チップ13のサイズを小型化しようとすると、ダイシング工程S103ではステルスダイシングによる改質層16の数を増やす必要があるが、個々の改質層16は基板10の内部で膨張するので、数を増やし過ぎると改質層16の膨張の影響で基板10が湾曲して反ろうとして、剛性の低い保護テープではこの反りを抑えきれない虞がある。
【0094】
このような問題に対して本実施形態では、従来の保護テープの代わりに支持基板41を用いて基板10の第1主表面11を保護する。支持基板41は接着材によって基板10に取り付けられるので、従来の保護テープよりも剛性の高い材料で形成された基板を支持基板41として適用できる。このため薄板化工程S104では、
図5に示すように、従来の保護テープより剛性の高い支持基板41の上に基板10が載置された状態で第2主表面12の研削が行われる。これにより、薄板化の過程で基板10が複数のチップ13に分割されても、各チップ13が硬い支持基板41の上にあって各チップ13の基盤が安定するので、各チップ13にコーナークラックが発生するのを抑制できる。また、ダイシング工程S103においてステルスダイシングによる改質層16が基板10の内部で膨張したことによって基板10が反ろうとしても、従来の保護テープより剛性の高い支持基板41の上に基板10が載置された状態でダイシングが行われるので、基板10の反り発生を良好に抑えることができる。以上より、本実施形態に係る基板処理方法は、半導体装置の加工安定性を向上できる。
【0095】
また、本実施形態の基板処理方法は、支持基板剥離工程S108にて基板10から支持基板41を剥離した後に、エキスパンド工程S109やマウント工程S110を行うので、剛性の高い支持基板41で基板10の第1主表面11を保護してダイシング工程S103や薄板化工程S104を行っても、支持基板41の剛性の影響を受けることなくエキスパンド工程S109やマウント工程S110を良好に行うことができる。
【0096】
また、本実施形態の基板処理方法は、DAF付着工程S105の後、テープ付着工程S107の前に、チップ13同士の境界に沿って基板10に付着されたDAF15を分割加工するDAF分割加工工程S106を行う。事前にDAF15を分割しておくことによって、エキスパンド工程S109において複数のチップ13同士の間隔を広げやすくできる。
【0097】
また、本実施形態の基板処理方法では、支持基板41としてガラスで形成されたガラス基板を用いる。ガラス基板は紫外線を透過できるので、接着剤に熱をかけなくても紫外線によって硬化できる。このため、接着層42の形成や、接着層形成後の粘着力の向上や低下を室温で実施できる。なお、接着剤の硬化を促進するために接着層を加熱してもよい。
【0098】
[変形例]
図14を参照して上記実施形態の変形例を説明する。
図14に示すように、基板10の第1主表面11に形成されるデバイス層14に、バンプ14aが設けられる場合がある。
【0099】
特許文献1に記載される従来手法では、バンプ14aの上から保護テープが貼付される。この場合、基板10の第1主表面11では、バンプ14aの有無によって保護テープの表面に凹凸ができる。このため、薄板化工程S104では薄板化された基板10の第2主表面12のTTV(total thickness variation)が悪化する。例えば、基板10のうちバンプ14aが有る部分が、バンプ14aが無い部分に比べて研削されやすく、研削後の凹凸が大きくなる。また、バンプ14a間に隙間ができるので、研削時にバンプ14a間に研削液が浸入し、研削後の基板10が汚れる。また、保護テープ表面の平面度が悪いので、薄板化工程S104やダイシング工程S103などにおいて基板10の吸着不良が生じる虞がある。
【0100】
このような問題に対して、本実施形態の変形例では、
図13のフローチャートに示した支持基板接着工程S102において、支持基板接着部40が、
図14に示すように、基板10の第1主表面11に接着剤を塗布してバンプ14aの隙間を接着剤で埋める。そして、バンプ14aの高さより大きく接着層42を形成して、デバイス層14の凹凸を埋めて表面を平坦化する。この接着層42によって支持基板41を基板10に接着する。
【0101】
この構成により、バンプ14a間を接着剤で埋めてデバイス層14の表面を平坦化できるので、支持基板41を良好に基板10の第1主表面11に隙間なく接着させることができる。これにより、薄板化工程S104では薄板化された基板10の第2主表面12のTTVを向上できる。また、薄板化工程S104において基板10の研削中に研削液がバンプ14a間に浸入することを防止でき、研削後の基板10が汚れることを防止できる。さらに、従来の保護テープではなく、ガラス基板である支持基板41がチャックテーブル202と当接するので、薄板化工程S104やダイシング工程S103などにおいて基板10の吸着不良を防止できる。したがって、デバイス層14の要素の形状や大きさに依存することなく、接着層42を平坦に形成できるので、支持基板41を基板10に確実に接着させることができる。
【0102】
以上、具体例を参照しつつ本実施形態について説明した。しかし、本開示はこれらの具体例に限定されるものではない。これら具体例に、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本開示の特徴を備えている限り、本開示の範囲に包含される。前述した各具体例が備える各要素およびその配置、条件、形状などは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。前述した各具体例が備える各要素は、技術的な矛盾が生じない限り、適宜組み合わせを変えることができる。
【0103】
上記実施形態では、基板処理システム1が支持基板接着部40、ダイシング部100、薄板化部200を備える構成を例示したが、支持基板接着部40、ダイシング部100、薄板化部200を基板処理システム1とは別装置にしてもよい。
【0104】
本国際出願は2017年7月6日に出願された日本国特許出願2017−133017号に基づく優先権を主張するものであり、2017−133017号の全内容をここに本国際出願に援用する。