特許第6956799号(P6956799)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6956799
(24)【登録日】2021年10月7日
(45)【発行日】2021年11月2日
(54)【発明の名称】インクセット
(51)【国際特許分類】
   C09D 11/30 20140101AFI20211021BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20211021BHJP
   B41M 5/00 20060101ALI20211021BHJP
   C09D 11/54 20140101ALI20211021BHJP
【FI】
   C09D11/30
   B41J2/01 501
   B41M5/00 100
   B41M5/00 120
   C09D11/54
【請求項の数】9
【全頁数】40
(21)【出願番号】特願2019-551087(P2019-551087)
(86)(22)【出願日】2018年10月18日
(86)【国際出願番号】JP2018038894
(87)【国際公開番号】WO2019087808
(87)【国際公開日】20190509
【審査請求日】2020年4月3日
(31)【優先権主張番号】特願2017-213192(P2017-213192)
(32)【優先日】2017年11月2日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】特許業務法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】梅林 励
【審査官】 横山 敏志
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2017/104845(WO,A1)
【文献】 特開昭62−205174(JP,A)
【文献】 特開2000−326451(JP,A)
【文献】 特開2008−087246(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 11/00−13/00
B41J 2/01
B41M 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
着色剤、有機溶剤、重合性化合物、及び光重合開始剤を含有するインクジェット用着色
インクと、
有機溶剤及び塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体を含有し、不揮発性成分の総含有質量を
Mt1とし、前記塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体の含有質量をMt2とした場合に、Mt2/Mt1が0.40以上であるクリアインクと、
を備えるインクセットであって、前記インクジェット用着色インクが、更に、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体を含有する、
インクセット
【請求項2】
前記クリアインクに含有される前記塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体の含有量が、前記クリアインクの全量に対し、1.0質量%〜6.0質量%である請求項1に記載のインク
セット。
【請求項3】
前記クリアインクに含有される前記有機溶剤の含有量が、前記クリアインクの全量に対
し、90質量%以上である請求項1又は請求項2に記載のインクセット。
【請求項4】
前記インクジェット用着色インクに含有される前記重合性化合物は、重量平均分子量が
2000〜15000である2官能のウレタン(メタ)アクリレートを含む請求項1〜請
求項3のいずれか1項に記載のインクセット。
【請求項5】
前記インクジェット用着色インクに含有される、前記重合性化合物及び前記塩化ビニル
−酢酸ビニル共重合体の総含有量が、前記インクジェット用着色インクの全量に対し、1
0質量%〜20質量%である請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載のインクセット。
【請求項6】
前記インクジェット用着色インクに含有される前記塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体の
含有量が、前記インクジェット用着色インクの全量に対し、0.5質量%〜2.0質量%である請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載のインクセット。
【請求項7】
前記クリアインクに含有される不揮発性成分の総含有質量をMt1とし、
前記クリアインクに含有される前記塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体の総含有質量をMt2とし、
前記インクジェット用着色インクに含有される不揮発性成分の総含有質量をMc1とし

前記インクジェット用着色インクに含有される前記塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体の
含有質量をMc2とした場合に、
Mt1、Mt2、Mc1、及びMc2が、下記式(1)を満足する請求項〜請求項のいずれか1項に記載のインクセット。
Mc2/Mc1≦Mt2/Mt1 … 式(1)
【請求項8】
前記クリアインクにおける重合性化合物の含有量が、クリアインクの全量に対して3質量%以下である請求項1〜請求項のいずれか1項に記載のインクセット。
【請求項9】
被記録媒体上に、インクジェット記録物である着色画像と、少なくとも前記着色画像上
に配置されたクリアインク層と、前記クリアインク層上に熱融着されたラミネート基材と、を備える熱融着体における前記着色画像及び前記クリアインク層の形成に用いられるインクセットであって、
着色剤、有機溶剤、重合性化合物、及び光重合開始剤を含有するインクジェット用着色
インクと、
有機溶剤及び塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体を含有し、不揮発性成分の総含有質量を
Mt1とし、前記塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体の含有質量をMt2とした場合に、Mt2/Mt1が0.40以上であるクリアインクと、
を備えるインクセット
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、インクセットに関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録方法に関し、従来より、様々な検討がなされている。
例えば、下記特許文献1には、メタリック感(光輝性)に優れ、かつ、擦過性に優れた画像が得られるインクジェット記録方法として、被記録媒体上に効果顔料インクを吐出して画像形成を行う画像形成工程、被記録媒体上に透明インクを付与する透明インク付与工程、及び、被記録媒体上の効果顔料インク及び透明インクを硬化させる硬化工程をこの順で有し、画像形成工程と透明インク付与工程との間に、効果顔料インクを硬化する工程を有しないか、又は、有する場合には、効果顔料インクの硬化率が85%以下であり、透明インクは、重合開始剤、及び、重合性化合物を含有し、かつ、実質的に顔料を含有せず、効果顔料インクは、効果顔料、重合開始剤、及び、重合性化合物を含有するインクジェット記録方法が開示されている。
【0003】
また、下記特許文献2には、複数のインクを重ね打ちして得られる画像であって、滲み及びひび割れが抑制された画像を形成することのできるインクジェット記録方法として、記録媒体に、水と、水溶性有機溶剤と、色材を少なくとも含む固形分と、を含む第1インク組成物を、インクジェット法で吐出して第1インク層を形成する工程と、第1インク層における第1インク組成物に含有していた水の80質量%以上を蒸発させる第1乾燥工程と、第1乾燥工程を経た第1インク層の上に、水と、水溶性有機溶剤と、色材を少なくとも含む固形分と、を含む第2インク組成物をインクジェット法で吐出して第2インク層を形成する工程と、第2インク層を形成する工程の後に、記録媒体上の揮発成分を蒸発させる第2乾燥工程と、を備え、第1インク組成物の「水溶性有機溶剤含有量/固形分含有量」を「r1」とし、第2インク組成物の「水溶性有機溶剤含有量/固形分含有量」を「r2」とした場合、「r2/r1」の値が2以下であるインクジェット記録方法が開示されている。
【0004】
また、下記特許文献3には、高い耐擦性を有し、臭気低減性と画質に優れた記録物を与えることのできる組成物セット及びそれを用いるインクジェット記録方法が開示されている。
特許文献3には、上記組成物セットとして、色材と、重合性化合物としての特定構造のモノマーAと、を含む放射線硬化型インクジェット着色組成物と;重合性化合物として、複素環基及び飽和脂肪族エーテル基の少なくともいずれかのエーテル構造を有する単官能重合性化合物である(メタ)アクリル酸エステル類Bを含む放射線硬化型インクジェットクリア組成物と;を備える組成物セットが開示されている。
【0005】
特許文献1:特開2012−210764号公報
特許文献2:特開2017−109485号公報
特許文献3:特開2017−078133号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、樹脂基材等の被記録媒体に対し、加飾等を目的とし、インクジェット法によって着色画像を形成する場合がある。この場合において、更に、形成された着色画像の保護等を目的とし、着色画像上にラミネート基材を熱融着させる場合がある。熱融着によって得られる、ラミネート基材/着色画像/被記録媒体の積層構造を有する熱融着体は、例えば、輸送機器(鉄道、バス等)の床材又は壁材、建物の床材又は壁材、等として用いられる。
しかし、上記熱融着体において、被記録媒体とラミネート基材との間での剥離(例えば、ラミネート基材と着色画像との界面剥離、着色画像の凝集破壊、着色画像と被記録媒体との界面剥離等)が問題となる場合がある。
【0007】
本開示の課題は、被記録媒体上に、インクジェット記録物である着色画像と、少なくとも着色画像上に配置されたクリアインク層と、を備える積層体であって、クリアインク層上にラミネート基材を熱融着させた場合に、被記録媒体とラミネート基材との間での剥離強度に優れる積層体を製造できるインクセットを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
課題を解決するための具体的手段には、以下の態様が含まれる。
<1> 着色剤、有機溶剤、重合性化合物、及び光重合開始剤を含有するインクジェット用着色インクと、
有機溶剤及び塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体を含有し、不揮発性成分の総含有質量をMt1とし、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体の含有質量をMt2とした場合に、Mt2/Mt1が0.40以上であるクリアインクと、
を備えるインクセット。
<2> クリアインクに含有される塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体の含有量が、クリアインクの全量に対し、1.0質量%〜6.0質量%である<1>に記載のインクセット。
<3> クリアインクに含有される有機溶剤の含有量が、クリアインクの全量に対し、90質量%以上である<1>又は<2>に記載のインクセット。
<4> インクジェット用着色インクに含有される重合性化合物は、重量平均分子量が2000〜15000である2官能のウレタン(メタ)アクリレートを含む<1>〜<3>のいずれか1つに記載のインクセット。
<5> インクジェット用着色インクが、更に、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体を含有する<1>〜<4>のいずれか1つに記載のインクセット。
<6> インクジェット用着色インクに含有される、重合性化合物及び塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体の総含有量が、インクジェット用着色インクの全量に対し、10質量%〜20質量%である<5>に記載のインクセット。
<7> インクジェット用着色インクに含有される塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体の含有量が、インクジェット用着色インクの全量に対し、0.5質量%〜2.0質量%である<5>又は<6>に記載のインクセット。
<8> クリアインクに含有される不揮発性成分の総含有質量をMt1とし、
クリアインクに含有される塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体の総含有質量をMt2とし、
インクジェット用着色インクに含有される不揮発性成分の総含有質量をMc1とし、
インクジェット用着色インクに含有される塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体の含有質量をMc2とした場合に、
Mt1、Mt2、Mc1、及びMc2が、下記式(1)を満足する<5>〜<7>のいずれか1つに記載のインクセット。
Mc2/Mc1≦Mt2/Mt1 … 式(1)
<9> クリアインクにおける重合性化合物の含有量が、クリアインクの全量に対して3質量%以下である<1>〜<8>のいずれか1つに記載のインクセット。
<10> 被記録媒体上に、インクジェット記録物である着色画像と、少なくとも着色画像上に配置されたクリアインク層と、クリアインク層上に熱融着されたラミネート基材と、を備える熱融着体における着色画像及びクリアインク層の形成に用いられる<1>〜<9>のいずれか1つに記載のインクセット。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、被記録媒体上に、インクジェット記録物である着色画像と、少なくとも着色画像上に配置されたクリアインク層と、を備える積層体であって、クリアインク層上にラミネート基材を熱融着させた場合に、被記録媒体とラミネート基材との間での剥離強度に優れる積層体を製造できるインクセットが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施例の評価に用いた格子状の画像を概念的に示す図である。
図2】実施例の剥離強度評価用サンプルにおける、厚さ方向及び長手方向に対して平行な断面を概念的に示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本明細書において、「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
本明細書において、組成物中の各成分の量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する上記複数の物質の合計量を意味する。
本明細書中に段階的に記載されている数値範囲において、ある数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよく、また、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
本明細書において、「工程」との語は、独立した工程だけでなく、他の工程と明確に区別できない場合であっても工程の所期の目的が達成されれば、本用語に含まれる。
本明細書において、「(メタ)アクリル」は、アクリル及びメタクリルを包含する概念であり、「(メタ)アクリレート」は、アクリレート及びメタクリレートを包含する概念であり、「(メタ)アクリロイル」は、アクリロイル及びメタクリロイルを包含する概念である。
本明細書において、「(ポリ)アルキレングリコール」は、アルキレングリコール及びポリアルキレングリコールを包含する概念であり、「(ポリ)エチレングリコール」は、エチレングリコール及びポリエチレングリコールを包含する概念であり、「(ポリ)プロピレングリコール」は、プロピレングリコール及びポリプロピレングリコールを包含する概念である。
本明細書において、好ましい態様の組み合わせは、より好ましい態様である。
【0012】
本開示のインクセットは、
着色剤、有機溶剤、重合性化合物、及び光重合開始剤を含有するインクジェット用着色インクと、
有機溶剤及び塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体を含有し、不揮発性成分の総含有質量をMt1とし、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体の含有質量をMt2とした場合に、Mt2/Mt1が0.40以上であるクリアインクと、
を備える。
【0013】
本開示のインクセットによれば、被記録媒体上に、インクジェット記録物である着色画像と、少なくとも着色画像上に配置されたクリアインク層と、を備える積層体(即ち、クリアインク層/着色画像/被記録媒体の積層構造を有する積層体)を製造できる。
製造された、クリアインク層/着色画像/被記録媒体の積層構造を有する積層体は、この積層体のクリアインク層上に更にラミネート基材を熱融着させた場合(即ち、ラミネート基材/クリアインク層/着色画像/被記録媒体の積層構造を有する熱融着体を形成した場合)に、被記録媒体とラミネート基材との間での剥離強度に優れる。即ち、上記熱融着体を形成した場合に、被記録媒体とラミネート基材との間での剥離が抑制される。
【0014】
上記効果が奏される理由は以下のように推測される。但し、本開示のインクセットは、以下の推定理由によって限定されることはない。
上記積層体及び上記熱融着体における着色画像は、被記録媒体上に、上記インクセットにおけるインクジェット用着色インクを、インクジェット法によって付与し、付与されたインクジェット用着色インクに対し、乾燥及び活性放射線の照射を施すことによって形成される。活性放射線の照射によりインクジェット用着色インク中の重合性化合物が重合し、硬度及び被記録媒体との密着性に優れた着色画像が形成される。このため、最終的に得られる上記熱融着体において、着色画像の凝集破壊、及び、着色画像と被記録媒体との界面剥離が抑制される。
また、上記積層体及び上記熱融着体におけるクリアインク層は、被記録媒体上の少なくとも上記着色画像上に、上記インクセットにおけるクリアインクを付与し、乾燥させることによって形成される。形成されたクリアインク層には、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体が含有される。塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体の熱融解点は、上記熱融着体における被記録媒体に一般的に含有される樹脂(例えば、ポリウレタン樹脂、塩化ビニル樹脂等)の熱融解点に近い。このため、上記熱融着体において、クリアインク層とラミネート基材との界面剥離、クリアインク層の凝集破壊、及び、クリアインク層と着色画像との界面剥離が抑制される、と考えられる。塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体によるこれらの機能は、クリアインク中の不揮発性成分の総含有質量(Mt1)に対する塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体の含有質量(Mt2)の比(Mt2/Mt1)が0.40以上であることによって効果的に発揮されると考えられる。
以上の理由により、本開示のインクセットを用いることにより、クリアインク層/着色画像/被記録媒体の積層構造を有する積層体であって、クリアインク層上にラミネート基材を熱融着させた場合に、被記録媒体とラミネート基材との間での剥離強度に優れる積層体を製造できると考えられる。
【0015】
本明細書中において、クリアインクとは、着色剤を実質的に含有しないインクを指す。
ここで、着色剤を実質的に含有しないとは、インク中の着色剤の含有量が0.5質量%未満(より好ましくは0.1質量%未満、特に好ましくは0質量%)であることを意味する。
クリアインクは、必ずしもインクジェット用インクであることには限定されないが、クリアインク層/着色画像/被記録媒体の積層構造を有する積層体を製造するための製造装置の簡略化が可能であるという観点から、インクジェット用インク(即ち、インクジェット用クリアインク)であることが好ましい。
【0016】
上述したとおり、本開示のインクセットは、インクジェット用着色インクとクリアインクとを備える。
本開示のインクセットは、インクジェット用着色インクを1種のみ備えていてもよいし、2種以上備えていてもよい。
本開示のインクセットは、クリアインクを1種のみ有していてもよいし、2種以上有していてもよい。
【0017】
本開示のインクセットの好ましい態様の一つとして、2種以上のインクジェット用着色インク(以下、単に「着色インク」ともいう)と、1種以上のクリアインクと、を備える態様が挙げられる。
かかる態様によれば、多色の画像を形成することができる。
以下、2種以上の着色インクとしては、
シアンインク、マゼンタインク、及びイエローインクからなる3種の着色インク;
シアンインク、マゼンタインク、イエローインク、及びブラックインクからなる4種の着色インク;
上記3種の着色インクと、ホワイトインク、グリーンインク、オレンジインク、ライトシアンインク、ライトマゼンタインク及びライトイエローインクから選択される少なくとも1つと、からなる4種以上の着色インク;
上記4種の着色インクと、ホワイトインク、グリーンインク、オレンジインク、ライトシアンインク、ライトマゼンタインク及びライトイエローインクから選択される少なくとも1つと、からなる5種以上の着色インク;
等が挙げられる。
但し、2種以上の着色インクは、これらの具体例には限定されない。
【0018】
以下、本開示のインクセットに備えられる、クリアインク及び着色インクについて説明する。
【0019】
<クリアインク>
本開示のインクセットは、クリアインクを少なくとも1種備える。
クリアインクは、前述のとおり、有機溶剤及び塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体を含有し、不揮発性成分の総含有質量をMt1とし、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体の含有質量をMt2とした場合に、Mt2/Mt1が0.40以上である。
【0020】
(塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体)
クリアインクは、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体を少なくとも1種含有する。
クリアインクは、クリアインクに含有される不揮発性成分の総含有質量をMt1とし、クリアインクに含有される塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体の含有質量(2種以上である場合には総含有質量)をMt2とした場合に、Mt2/Mt1が、0.40以上である。
Mt2/Mt1が0.40以上であることにより、上記熱融着体を形成した場合におけるラミネート基材と被記録媒体との剥離強度向上の効果が奏される。
かかる効果をより効果的に奏する観点から、Mt2/Mt1は、0.45以上であることが好ましく、0.50以上であることがより好ましい。
ここで、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体は、不揮発性成分に含まれる。
従って、Mt2/Mt1は、原理的にみて1.00以下である。Mt2/Mt1は、0.98以下であってもよい。
【0021】
ここで、クリアインクに含有される不揮発性成分とは、10cm×10cmのサイズのガラス上にクリアインクを、インクジェットヘッドから付与量15g/mにて付与してベタ画像を形成し、ベタ画像が形成されたガラスを、温度60℃、圧力1気圧(101325Pa)、及び大気雰囲気の条件の恒温槽内で5分間加熱した場合に、ガラス上に残存する成分を意味する。
上記で付与されたクリアインクにおいて、クリアインクに含有される不揮発性成分の総含有質量Mt1とは、上記残存する成分の質量を意味し、クリアインクに含有される塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体の含有質量Mt2とは、残存する成分中に含まれる塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体の質量を意味する。
【0022】
クリアインクに含有される不揮発性成分の総含有質量(Mt1)は、クリアインクから有機溶剤を除いた全質量に相当する。
【0023】
塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体における共重合比としては、特に制限はないが、
塩化ビニルの共重合量が70質量%〜95質量%であり、かつ、酢酸ビニルの共重合量が5質量%〜30質量%であることが好ましく、
塩化ビニルの共重合量が80質量%〜93質量%であり、かつ、酢酸ビニルの共重合量が7質量%〜20質量%であることがより好ましく、
塩化ビニルの共重合量が80質量%〜90質量%であり、かつ、酢酸ビニルの共重合量が10質量%〜20質量%であることが更に好ましい。
【0024】
塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体の重量平均分子量(Mw)は、13000〜30000であることが好ましい。
塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体の重量平均分子量(Mw)が13000以上である場合には、上記熱融着体におけるラミネート基材と被記録媒体との剥離強度がより向上する。
塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体の重量平均分子量(Mw)が30000以下である場合には、着色インクの吐出性がより向上する。
塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体のMwは、好ましくは13000〜20000である。
【0025】
本明細書中において、重量平均分子量(Mw)は、ゲル透過クロマトグラフ(GPC)によって測定された値を意味する。
上記GPCは、HLC−8020GPC(東ソー(株)製)を用い、カラムとして、TSKgel(登録商標)、Super Multipore HZ−H(東ソー(株)製、4.6mmID×15cm)を3本用い、溶離液としてTHF(テトラヒドロフラン)を用いて行う。
また、GPCは、試料濃度を0.45質量%、流速を0.35ml/min、サンプル注入量を10μl、測定温度を40℃とし、示差屈折率(RI)検出器を用いて行なう。
検量線は、東ソー(株)製「標準試料TSK standard,polystyrene」:「F−40」、「F−20」、「F−4」、「F−1」、「A−5000」、「A−2500」、「A−1000」、「n−プロピルベンゼン」の8サンプルから作製する。
【0026】
塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体は、市販品を使用してもよい。
市販品としては、Wacker Chemie社製の塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、日信化学工業(株)製ソルバインCL、CNL、C5R、TA3、TA5R等が挙げられる。
【0027】
クリアインクに含有される塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体の含有量は、クリアインクの全量に対し、好ましくは0.5質量%〜10.0質量%であり、より好ましくは1.0質量%〜6.0質量%であり、更に好ましくは1.5質量%〜5.0質量%であり、更に好ましくは1.5質量%〜4.5質量%である。
塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体の含有量が0.5質量%以上である場合、上記熱融着体におけるラミネート基材と被記録媒体との剥離強度がより向上する。
塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体の含有量が10.0質量%以下である場合、クリアインクの吐出性がより向上する。
【0028】
(有機溶剤)
クリアインクは、有機溶剤を少なくとも1種含有する。
有機溶剤としては、インク組成物に使用できる公知の有機溶剤を用いることができる。公知の有機溶剤として、例えば、新版溶剤ポケットブック(社団法人有機合成化学協会編、1994年発行)等に記載の有機溶剤が挙げられる。
また、有機溶剤としては、クリアインクをインクジェットヘッドから吐出する場合の吐出性(以下、単に、「クリアインクの吐出性」ともいう)をより向上させる観点から、沸点150℃以上250℃以下の有機溶剤が好ましく、沸点150℃以上200℃以下の有機溶剤がより好ましい。
以下、沸点を「BP」と表記することがある。
【0029】
有機溶剤としては、例えば、
ジエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル等の(ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテル類;
エチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル等の(ポリ)アルキレングリコールジアルキルエーテル類;
ジエチレングリコールアセテート等の(ポリ)アルキレングリコールアセテート類;
エチレングリコールジアセテート、プロピレングリコールジアセテート等の(ポリ)アルキレングリコールジアセテート類;
エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等の(ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;
γ−ブチロラクトン等のラクトン類;
酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、酢酸3−メトキシブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル等のエステル類;
テトラヒドロフラン、ジオキサン等の環状エーテル類;
ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド類;
等が挙げられる。
また、上記(ポリ)アルキレングリコールとしては、(ポリ)エチレングリコール、及び/又は、(ポリ)プロピレングリコールであることが好ましい。
【0030】
有機溶剤としては、クリアインクの吐出性等の観点から、
アルキレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類、アルキレングリコールモノアルキルエーテル類、アルキレングリコールジアルキルエーテル類、アルキレングリコールアセテート類、ポリアルキレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類、ポリアルキレングリコールモノアルキルエーテル類、ポリアルキレングリコールジアルキルエーテル類、ポリアルキレングリコールアセテート類、ケトン類、ラクトン類、及び、エステル類からなる群から選択される少なくとも1種が好ましく、
アルキレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類、アルキレングリコールジアルキルエーテル類、ポリアルキレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類、ポリアルキレングリコールジアルキルエーテル類、ケトン類、ラクトン類、及び、エステル類からなる群から選択される少なくとも1種がより好ましく、
ポリアルキレングリコールジアルキルエーテル類及びエステル類からなる群から選択される少なくとも1種が更に好ましい。
有機溶剤は、ジエチレングリコールジエチルエーテル(DEGDEE)及び酢酸3−メトキシブチル(3-Methoxybutyl Acetate)の少なくとも一方を含むことが特に好ましい。
【0031】
クリアインクに含有される有機溶剤の含有量は、クリアインクの全量に対し、好ましくは80質量%以上であり、より好ましくは90質量%以上である。
クリアインクに含有される有機溶剤の含有量の上限は、他の成分の含有量にもよるが、上限は、好ましくは98質量%である。
【0032】
(界面活性剤)
クリアインクは、界面活性剤を少なくとも1種含有していてもよい。
界面活性剤としては、特開昭62−173463号、同62−183457号の各公報に記載されたものが挙げられる。
【0033】
界面活性剤としては、例えば、
ジアルキルスルホコハク酸塩類、アルキルナフタレンスルホン酸塩類、脂肪酸塩類等のアニオン性界面活性剤;
ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル類、アセチレングリコール類、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロックコポリマー類等のノニオン性界面活性剤;
アルキルアミン塩類、第四級アンモニウム塩類等のカチオン性界面活性剤;
等が挙げられる。
【0034】
また、界面活性剤として、フッ素系界面活性剤(例えば、有機フルオロ化合物等)及びシリコーン系界面活性剤(例えば、ポリシロキサン化合物等)も挙げられる。
【0035】
有機フルオロ化合物は、疎水性であることが好ましい。
有機フルオロ化合物としては、例えば、フッ素系界面活性剤、オイル状フッ素系化合物(例、フッ素油)及び固体状フッ素化合物樹脂(例、四フッ化エチレン樹脂)が含まれ、特公昭57−9053号(第8〜17欄)、特開昭62−135826号の各公報に記載されたものが挙げられる。
ポリシロキサン化合物としては、ジメチルポリシロキサンのメチル基の一部に有機基を導入した変性ポリシロキサン化合物であることが好ましい。変性の例として、ポリエーテル変性、メチルスチレン変性、アルコール変性、アルキル変性、アラルキル変性、脂肪酸エステル変性、エポキシ変性、アミン変性、アミノ変性、メルカプト変性などが挙げられるが、特にこれらに限定されるものではない。これらの変性の方法は組み合わせて用いられてもかまわない。
【0036】
ポリシロキサン化合物としては、ポリエーテル変性ポリシロキサン化合物が、インクジェットにおける吐出安定性改良の観点で好ましい。
ポリエーテル変性ポリシロキサン化合物の例としては、例えば、
SILWET L−7604、SILWET L−7607N、SILWET FZ−2104、SILWET FZ−2161(以上、日本ユニカー(株)製);
BYK306、BYK307、BYK331、BYK333、BYK347、BYK348等(以上、BYK Chemie社製);
KF−351A、KF−352A、KF−353、KF−354L、KF−355A、KF−615A、KF−945、KF−640、KF−642、KF−643、KF−6020、X−22−6191、X−22−4515、KF−6011、KF−6012、KF−6015、KF−6017(以上、信越化学工業(株)製);
が挙げられる。
【0037】
クリアインクが界面活性剤を含有する場合、界面活性剤の含有量は、クリアインクの全量に対し、好ましくは0.0001質量%〜1質量%である。
【0038】
(塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体以外の樹脂)
クリアインクは、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体以外の樹脂を少なくとも1種含有してもよい。
塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体以外の樹脂としては、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、セルロース樹脂、(メタ)アクリル樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、等が挙げられる。
【0039】
樹脂の重量平均分子量としては、5,000〜100,000が好ましく、10,000〜100,000がより好ましく、20,000〜80,000が更に好ましい。
【0040】
但し、クリアインク中に含有される塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体による効果をより効果的に発揮させる観点から、クリアインクは、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体以外の樹脂を含有しないか、又は、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体以外の樹脂の含有量が、クリアインクの全量に対して5質量%以下(より好ましくは3質量%以下、更に好ましくは2質量%以下、更に好ましくは1質量%以下)であることが特に好ましい。
【0041】
(その他の成分)
クリアインクは、上述した成分以外のその他の成分を含有してもよい。
その他の成分としては、後述する着色インクに含有され得る成分と同様の成分が挙げられる。
但し、前述したとおり、クリアインク中における着色剤の含有量は、0.5質量%未満(より好ましくは0.1質量%未満、特に好ましくは0質量%)である。
【0042】
クリアインクにおける重合性化合物の含有量は、クリアインクの全量に対して3質量%以下であることが好ましく、2質量%以下であることがより好ましく、1質量%以下であることが特に好ましい。
クリアインクにおける重合性化合物の含有量は、0質量%であってもよい。即ち、クリアインクは、重合性化合物を含まなくてもよい。
クリアインクにおける重合性化合物の含有量が3質量%以下である(0質量%である場合を含む)ことは、上述した熱融着体を形成した場合における、ラミネート基材と被記録媒体との間の剥離強度の向上及びラミネート適性(即ち、熱融着適性)向上の観点からみて有利である。
【0043】
クリアインクは、少量の水を含有していてもよい。
クリアインクは、実質的に水を含有しない、非水性のインクであることが好ましい。
具体的には、クリアインクの全量に対する水の含有量は、好ましくは3質量%以下であり、より好ましくは2質量%以下であり、特に好ましくは1質量%以下である。クリアインクの全量に対する水の含有量は、0質量%であってもよい。
【0044】
クリアインクの好ましい物性(粘度及び表面張力)については、後述する着色インクの好ましい物性と同様である。
【0045】
<着色インク>
本開示のインクセットは、着色インク(即ち、インクジェット用着色インク)を少なくとも1種備える。
着色インクは、着色剤、有機溶剤、重合性化合物、及び光重合開始剤を含有する。
着色インクは、必要に応じ、その他の成分を含有してもよい。
【0046】
(着色剤)
着色インクは、着色剤を少なくとも1種含有する。
着色剤としては特に制限はなく、顔料であってもよく、染料であってもよい。
着色剤としては、耐候性及び色再現性に優れる点から、顔料又は油溶性染料が好ましく、顔料が特に好ましい。
【0047】
顔料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、公知の有機顔料及び無機顔料が挙げられ、また、染料で染色した樹脂粒子、市販の顔料分散体や表面処理された顔料(例えば、顔料を分散媒として不溶性の樹脂等に分散させたもの、あるいは顔料表面に樹脂をグラフト化したもの、等)も挙げられる。
なお、顔料としては、例えば、伊藤征司郎編「顔料の辞典」(2000年刊)、W.Herbst,K.Hunger「Industrial Organic Pigments」、特開2002−12607号公報、特開2002−188025号公報、特開2003−26978号公報、特開2003−342503号公報、に記載のもの等も挙げられる。
【0048】
有機顔料及び無機顔料としては、例えば、イエロー顔料、マゼンタ顔料、シアン顔料、緑色顔料、オレンジ顔料、茶色顔料、バイオレット顔料、黒色顔料、白色顔料、などが挙げられる。
これらの顔料については、例えば、特開2011−94112号の段落0029〜0042の記載を適宜参照できる。
【0049】
着色インクは、着色剤を1種のみ含有してもよいし、2種以上含有してもよい。
着色インクにおける着色剤の含有量(2種以上である場合には総含有量)は、着色インクの全量に対し、0.5質量%〜20質量%であることが好ましく、1質量%〜20質量%であることがより好ましく、1質量%〜10質量%であることがより好ましい。
【0050】
(有機溶剤)
着色インクは、有機溶剤を少なくとも1種含有する。
着色インクに含有され得る有機溶剤の例は、クリアインクに含有され得る有機溶剤の例と同様である。
着色インクの吐出性の観点からみた好ましい有機溶剤も、クリアインクの吐出性の観点からみた好ましい有機溶剤と同様である。
【0051】
着色インクに含有される有機溶剤の含有量は、着色インクの全量に対し、好ましくは50質量%以上であり、より好ましくは60質量%以上である。
有機溶剤の含有量の上限は、他の成分の含有量にもよるが、上限は、好ましくは95質量%であり、より好ましくは90質量%である。
【0052】
(重合性化合物)
着色インクは、重合性化合物を少なくとも1種含有する。
本明細書において、重合性化合物とは、重合性基を有する化合物を意味する。
重合性化合物における重合性基としては、エチレン性不飽和結合を含む基が好ましく、ビニル基及び1−メチルビニル基の少なくとも一方を含む基が更に好ましい。
重合性基としては、重合反応性及び形成される着色画像の硬度の観点から、(メタ)アクリロイル基が特に好ましい。
【0053】
重合性化合物の重量平均分子量(Mw)は、着色インクの吐出性の観点から、30000以下であることが好ましく、20000以下であることがより好ましく、15000以下であることが更に好ましく、8000以下であることが更に好ましい。
【0054】
重合性化合物の重量平均分子量(Mw)は、上記熱融着体におけるラミネート基材と被記録媒体との剥離強度をより向上させる観点から、1000以上であることが好ましく、1500以上であることがより好ましく、2000以上であることが更に好ましい。
【0055】
重合性化合物としては、上記熱融着体におけるラミネート基材と被記録媒体との剥離強度をより向上させる観点から、ウレタン(メタ)アクリレートが好ましく、2官能以上のウレタン(メタ)アクリレートがより好ましく、2官能のウレタン(メタ)アクリレートが更に好ましい。
【0056】
重合性化合物は、上記熱融着体におけるラミネート基材と被記録媒体との剥離強度をより向上させ、かつ、着色インクの吐出性をより向上させる観点から、重量平均分子量が2000〜15000である2官能のウレタン(メタ)アクリレートを含むことが特に好ましい。
【0057】
着色インクが2官能のウレタン(メタ)アクリレートを含有する場合、着色インクは、2官能のウレタン(メタ)アクリレート以外のウレタン(メタ)アクリレート(好ましくは、3官能以上のウレタン(メタ)アクリレート)を含有していてもよい。この場合、2官能ウレタン(メタ)アクリレート以外のウレタン(メタ)アクリレートの含有量は、2官能ウレタン(メタ)アクリレートの含有量よりも少ないことが好ましい。
【0058】
ウレタン(メタ)アクリレートとしては、市販品を使用してもよい。
2官能以上のウレタン(メタ)アクリレートの市販品としては、CN9001(サートマー社製)、紫光UV−3000B、紫光UV−3200B、紫光UV−3300B、紫光UV−3310B、紫光UV−6630B、紫光UV−7550B、紫光UV−7600B(以上、日本合成化学工業社製)、UA−122P(新中村化学工業社製)等が挙げられる。
単官能のウレタン(メタ)アクリレートの市販品としては、Photomer4184(IGM社製)等が挙げられる。
【0059】
重合性化合物の含有量は、着色インクの全量に対し、0.3質量%〜50質量%であることが好ましく、3質量%〜30質量%であることがより好ましく、5質量%〜20質量%であることが更に好ましい。
【0060】
着色インクが2官能のウレタン(メタ)アクリレートを含有する場合、2官能のウレタン(メタ)アクリレートの含有量は、着色インクの全量に対し、0.3質量%〜50質量%であることが好ましく、3質量%〜30質量%であることがより好ましく、5質量%〜20質量%であることが更に好ましい。
【0061】
(光重合開始剤)
着色インクは、光重合開始剤を少なくとも1種含有する。
光重合開始剤は、活性放射線(本明細書中では、「光」ともいう)が照射されると化学変化を生じ、重合開始種を生成する化合物である。
光重合開始剤としては、照射される活性放射線、例えば、200nm〜400nmの紫外線、遠紫外線、g線、h線、i線、KrFエキシマレーザー光、ArFエキシマレーザー光、電子線、X線、分子線又はイオンビームなどに感度を有するものを適宜選択して使用することができる。
光重合開始剤としては、着色インクの硬化性及び定着性に優れる観点から、ラジカル重合開始剤が好ましい。
【0062】
好ましい光重合開始剤としては、(a)芳香族ケトン類、(b)芳香族オニウム塩、(c)有機過酸化物、(d)ヘキサアリールビイミダゾール化合物、(e)ケトオキシムエステル化合物、(f)ボレート化合物、(g)アジニウム化合物、(h)メタロセン化合物、(i)活性エステル化合物、(j)炭素ハロゲン結合を有する化合物等が挙げられる。
【0063】
ラジカル重合開始剤としては、硬化性の点から、芳香族ケトン類が好ましい。
また、ラジカル重合開始剤としては、アシルホスフィンオキシド化合物が好ましい。
アシルホスフィンオキシド化合物としては、モノアシルホスフィンオキシド化合物及びビスアシルホスフィンオキシド化合物等を使用することができ、モノアシルホスフィンオキシド化合物としては、公知のモノアシルホスフィンオキシド化合物を使用することができる。例えば特公昭60−8047号公報、特公昭63−40799号公報に記載のモノアシルホスフィンオキシド化合物が挙げられる。
【0064】
モノアシルホスフィンオキシド化合物の具体例としては、イソブチリルメチルホスフィン酸メチルエステル、イソブチリルフェニルホスフィン酸メチルエステル、ピバロイルフェニルホスフィン酸メチルエステル、2−エチルヘキサノイルフェニルホスフィン酸メチルエステル、ピバロイルフェニルホスフィン酸イソプロピルエステル、p−トルイルフェニルホスフィン酸メチルエステル、o−トルイルフェニルホスフィン酸メチルエステル、2,4−ジメチルベンゾイルフェニルホスフィン酸メチルエステル、p−t−ブチルベンゾイルフェニルホスフィン酸イソプロピルエステル、アクリロイルフェニルホスフィン酸メチルエステル、イソブチリルジフェニルホスフィンオキシド、2−エチルヘキサノイルジフェニルホスフィンオキシド、o−トルイルジフェニルホスフィンオキシド、p−t−ブチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、3−ピリジルカルボニルジフェニルホスフィンオキシド、アクリロイルジフェニルホスフィンオキシド、ベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、ピバロイルフェニルホスフィン酸ビニルエステル、アジポイルビスジフェニルホスフィンオキシド、ピバロイルジフェニルホスフィンオキシド、p−トルイルジフェニルホスフィンオキシド、4−(t−ブチル)ベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、2−メチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、2−メチル−2−エチルヘキサノイルジフェニルホスフィンオキシド、1−メチルシクロヘキサノイルジフェニルホスフィンオキシド、ピバロイルフェニルホスフィン酸メチルエステル及びピバロイルフェニルホスフィン酸イソプロピルエステル等が挙げられる。
【0065】
ビスアシルホスフィンオキシド化合物としては、公知のビスアシルホスフィンオキシド化合物が使用できる。
ビスアシルホスフィンオキシド化合物としては、例えば、特開平3−101686号、特開平5−345790号、特開平6−298818号の各公報に記載のビスアシルホスフィンオキシド化合物が挙げられる。
ビスアシルホスフィンオキシド化合物の具体例としては、ビス(2,6−ジクロロベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド、ビス(2,6−ジクロロベンゾイル)−2,5−ジメチルフェニルホスフィンオキシド、ビス(2,6−ジクロロベンゾイル)−4−エトキシフェニルホスフィンオキシド、ビス(2,6−ジクロロベンゾイル)−4−プロピルフェニルホスフィンオキシド、ビス(2,6−ジクロロベンゾイル)−2−ナフチルホスフィンオキシド、ビス(2,6−ジクロロベンゾイル)−1−ナフチルホスフィンオキシド、ビス(2,6−ジクロロベンゾイル)−4−クロロフェニルホスフィンオキシド、ビス(2,6−ジクロロベンゾイル)−2,4−ジメトキシフェニルホスフィンオキシド、ビス(2,6−ジクロロベンゾイル)デシルホスフィンオキシド、ビス(2,6−ジクロロベンゾイル)−4−オクチルフェニルホスフィンオキシド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−2,5−ジメチルフェニルホスフィンオキシド、ビス(2,6−ジクロロ−3,4,5−トリメトキシベンゾイル)−2,5−ジメチルフェニルホスフィンオキシド、ビス(2,6−ジクロロ−3,4,5−トリメトキシベンゾイル)−4−エトキシフェニルホスフィンオキシド、ビス(2−メチル−1−ナフトイル)−2,5−ジメチルフェニルホスフィンオキシド、ビス(2−メチル−1−ナフトイル)−4−エトキシフェニルホスフィンオキシド、ビス(2−メチル−1−ナフトイル)−2−ナフチルホスフィンオキシド、ビス(2−メチル−1−ナフトイル)−4−プロピルフェニルホスフィンオキシド、ビス(2−メチル−1−ナフトイル)−2,5−ジメチルフェニルホスフィンオキシド、ビス(2−メトキシ−1−ナフトイル)−4−エトキシフェニルホスフィンオキシド、ビス(2−クロロ−1−ナフトイル)−2,5−ジメチルフェニルホスフィンオキシド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキシド等が挙げられる。
【0066】
アシルホスフィンオキシド化合物としては、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド(IRGACURE 819:BASF社製)、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルフェニルホスフィンオキシド、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド(DAROCUR TPO:BASF社製、LUCIRIN TPO:BASF社製)、又は1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン(IRGACURE 2959、BASF社製)が好ましい。
【0067】
着色インクは、光重合開始剤として、特定の活性放射線を吸収して重合開始剤の分解を促進させるため、増感剤として機能する化合物(以下、単に「増感剤」ともいう。)を含有してもよい。
増感剤としては、例えば、多核芳香族類(例えば、ピレン、ペリレン、トリフェニレン、2−エチル−9,10−ジメトキシアントラセン等)、キサンテン類(例えば、フルオレッセイン、エオシン、エリスロシン、ローダミンB、ローズベンガル等)、シアニン類(例えば、チアカルボシアニン、オキサカルボシアニン等)、メロシアニン類(例えば、メロシアニン、カルボメロシアニン等)、チアジン類(例えば、チオニン、メチレンブルー、トルイジンブルー等)、アクリジン類(例えば、アクリジンオレンジ、クロロフラビン、アクリフラビン等)、アントラキノン類(例えば、アントラキノン等)、スクアリウム類(例えば、スクアリウム等)、クマリン類(例えば、7−ジエチルアミノ−4−メチルクマリン等)等が挙げられる。
【0068】
また、増感剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
着色インクが光重合開始剤を含有する場合、光重合開始剤の含有量としては、着色インクの全量に対して、0.1質量%〜20質量%であることが好ましく、0.5質量%〜18質量%であることがより好ましく、1質量%〜15質量%であることが更に好ましく、1質量%〜10質量%であることが更に好ましい。
【0069】
(塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体)
着色インクは、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体を少なくとも1種含有することが好ましい。
着色インクが塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体を含有する場合、ラミネート基材/クリアインク層/着色画像/被記録媒体の積層構造を有する熱融着体におけるラミネート基材と被記録媒体との剥離強度がより向上する。
着色インクに含有され得る塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体の好ましい態様(Mw等)は、クリアインクに含有され得る塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体の好ましい態様と同様である。
【0070】
着色インクが塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体を含有する場合、着色インクに含有される塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体の含有量は、着色インクの全量に対し、好ましくは0.1質量%〜5.0質量%であり、より好ましくは0.2質量%〜4.0質量%であり、更に好ましくは0.5質量%〜2.0質量%である。
塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体の含有量が0.1質量%以上である場合、上記熱融着体におけるラミネート基材と被記録媒体との剥離強度がより向上する。
塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体の含有量が5.0質量%以下である場合、着色インクの吐出性がより向上する。
【0071】
着色インクが塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体を含有する場合、着色インクに含有される重合性化合物及び塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体の総含有量は、着色インクの全量に対し、好ましくは4質量%〜25質量%であり、より好ましくは10質量%〜20質量%である。
重合性化合物及び塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体の総含有量が4質量%以上である場合、上記熱融着体におけるラミネート基材と被記録媒体との剥離強度がより向上する。
重合性化合物及び塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体の総含有量が25質量%以下である場合、着色インクの吐出性がより向上する。
【0072】
着色インクが塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体を含有する場合において、
クリアインクに含有される不揮発性成分の総含有質量をMt1とし、
クリアインクに含有される塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体の含有質量をMt2とし、
着色インクに含有される不揮発性成分の総含有質量をMc1とし、
着色インクに含有される塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体の含有質量をMc2とした場合に、
Mt1、Mt2、Mc1、及びMc2が、下記式(1)を満足することが好ましい。
Mc2/Mc1≦Mt2/Mt1 … 式(1)
【0073】
Mt1、Mt2、Mc1、及びMc2が、下記式(1)を満足する場合には、ラミネート基材/クリアインク層/着色画像/被記録媒体の積層構造を有する熱融着体におけるラミネート基材と被記録媒体との剥離強度がより向上する。
【0074】
言うまでもないが、式(1)は、Mt2/Mt1がMc2/Mc1に対して1倍以上であることを意味する。
Mt2/Mt1は、Mc2/Mc1に対し、好ましくは1.5倍以上であり、より好ましくは5倍以上である。
また、Mt2/Mt1は、Mc2/Mc1に対し、好ましくは15倍以下である。
【0075】
着色インクに含有される不揮発性成分、Mc1、及びMc2の意味は、それぞれ、前述した、クリアインクに含有される不揮発性成分、Mt1、及びMt2の意味と同様である。
着色インクに含有される不揮発性成分との総含有質量(Mc1)は、着色インクが有機溶剤を含有する場合には、着色インクから有機溶剤を除いた全質量に相当する。
【0076】
着色画像形成工程において、2種以上の着色インクを用いて多色の着色画像を形成する場合には、2種以上の着色インクのうちの少なくとも1種と、クリアインクと、が上記式(1)を満足することが好ましく、2種以上の着色インクの全種と、クリアインクと、が上記式(1)を満足することが特に好ましい。
【0077】
(重合禁止剤)
着色インクが重合性化合物を含有する場合、着色インクは、更に、重合禁止剤を少なくとも1種含有してもよい。
重合禁止剤としては、ニトロソ系重合禁止剤、ヒンダードアミン系重合禁止剤、ヒンダードフェノール系重合禁止剤、ハイドロキノン、ベンゾキノン、p−メトキシフェノール、TEMPO、TEMPOL、クペロンAl等が挙げられる。
着色インクが重合禁止剤を含有する場合、重合禁止剤の含有量は、着色インクの全量に対し、0.02質量%〜2質量%であることが好ましい。
【0078】
(界面活性剤)
着色インクは、界面活性剤を少なくとも1種含有してもよい。
着色インクに含有され得る界面活性剤の例は、クリアインクに含有され得る界面活性剤の例と同様である。
着色インクが界面活性剤を含有する場合、界面活性剤の含有量は、着色インクの全量に対し、好ましくは0.0001質量%〜1質量%である。
【0079】
(アクリル樹脂鎖を有するポリシロキサン化合物)
着色インクは、アクリル樹脂鎖を有するポリシロキサン化合物を少なくとも1種含有してもよい。
アクリル樹脂鎖を有するポリシロキサン化合物としては、ポリシロキサン鎖及びアクリル樹脂鎖を有する化合物がより好ましく、アクリル樹脂鎖がグラフトされたポリシロキサン化合物であることが特に好ましい。
アクリル樹脂鎖を有するポリシロキサン化合物としては、特に制限はないが、日信化学工業(株)製シャリーヌシリーズ、東亞合成(株)製サイマックシリーズ等が挙げられる。
着色インクが、アクリル樹脂鎖を有するポリシロキサン化合物を含有する場合、アクリル樹脂鎖を有するポリシロキサン化合物の含有量は、着色インクの全量に対し、0.01質量%〜8質量%であることが好ましく、0.1質量%〜4質量%であることがより好ましく、0.25質量%〜1.5質量%であることが更に好ましい。
【0080】
(分散剤)
着色インクは、分散剤を少なくとも1種含有してもよい。
着色インクが、着色剤として顔料を含有する場合には、着色インクは、分散剤を含有することが好ましい。
分散剤としては、高分子分散剤が好ましい。
ここで、「高分子分散剤」とは、重量平均分子量(Mw)が1000以上である分散剤を意味する。
【0081】
高分子分散剤としては、DISPERBYK−101、DISPERBYK−102、DISPERBYK−103、DISPERBYK−106、DISPERBYK−111、DISPERBYK−161、DISPERBYK−162、DISPERBYK−163、DISPERBYK−164、DISPERBYK−166、DISPERBYK−167、DISPERBYK−168、DISPERBYK−170、DISPERBYK−171、DISPERBYK−174、DISPERBYK−182(BYKケミー社製);EFKA4010、EFKA4046、EFKA4080、EFKA5010、EFKA5207、EFKA5244、EFKA6745、EFKA6750、EFKA7414、EFKA745、EFKA7462、EFKA7500、EFKA7570、EFKA7575、EFKA7580、EFKA7701(エフカアディティブ社製);ディスパースエイド6、ディスパースエイド8、ディスパースエイド15、ディスパースエイド9100(サンノプコ(株)製);ソルスパース(SOLSPERSE)3000、5000、9000、12000、13240、13940、17000、22000、24000、26000、28000、32000、36000、39000、41000、71000などの各種ソルスパース分散剤(Noveon社製);アデカプルロニックL31、F38、L42、L44、L61、L64、F68、L72、P95、F77、P84、F87、P94、L101、P103、F108、L121、P−123((株)ADEKA製)、イオネットS−20(三洋化成工業(株)製);ディスパロン KS−860、873SN、874(高分子分散剤)、#2150(脂肪族多価カルボン酸)、#7004(ポリエーテルエステル型)(楠本化成(株)製)が挙げられる。
【0082】
着色インクが分散剤を含有する場合、着色インクは、分散剤を1種のみ含有してもよいし、2種以上含有してもよい。
着色インクが分散剤を含有する場合、分散剤の含有量(2種以上である場合には総含有量)は、着色インクの全量に対し、0.05質量%〜10質量%であることが好ましく、0.1質量%〜5質量%であることがより好ましい。
【0083】
(その他の成分)
着色インクは、上述した成分以外のその他の成分を含有してもよい。
その他の成分としては、紫外線吸収剤、酸化防止剤、褪色防止剤、表面調整剤、レベリング剤、マット剤、ワックス類、消泡剤、pH調整剤、電荷付与剤、殺菌剤、防腐剤、防臭剤、電荷調整剤、湿潤剤、皮はり防止剤、香料、顔料誘導体などの公知の添加剤が挙げられる。
【0084】
着色インクは、少量の水を含有していてもよい。
着色インクは、実質的に水を含有しない、非水性のインクであることが好ましい。
具体的には、着色インクの全量に対する水の含有量は、好ましくは3質量%以下であり、より好ましくは2質量%以下であり、特に好ましくは1質量%以下である。着色インクの全量に対する水の含有量は、0質量%であってもよい。
【0085】
(好ましい物性)
着色インクの25℃における粘度は、着色インクの着弾時の滲み抑制の観点から、1mPa・s〜40mPa・sであることが好ましく、3mPa・s〜30mPa・sであることがより好ましい。
また、着色インクの着弾時の滲み抑制の観点から、着色インクは、インクジェットヘッドから吐出する際の吐出温度(好ましくは25℃〜80℃、より好ましくは25℃〜50℃)における粘度が、1mPa・s〜30mPa・sであることが好ましく、3mPa・s〜25mPa・sであることがより好ましい。
【0086】
着色インクの粘度の測定方法は特に制限はないが、E型に相当する円錐ロータ/平板方式粘度計(例えば、東機産業(株)製のRE80型粘度計)を用いる方法が好ましく挙げられる。
この方法において、ロータコードNo.1番のロータを用い、10rpm(round per minute)の回転数にて着色インクの粘度の測定を行うことが好ましい。ただし、60mPa・sより高粘度な着色インクについては、必要により回転数を5rpm、2.5rpm、1rpm、0.5rpm等に変化させて測定を行うことが好ましい。
【0087】
また、インクジェット法による打滴適正の観点から、着色インクの25℃における表面張力は、18mN/m以上50mN/m以下が好ましく、20mN/m以上40mN/m以下がより好ましい。
また、着色インクの表面張力は、一般的に用いられる表面張力計(例えば、協和界面科学(株)製、表面張力計CBVP−Z等)を用いて、ウィルヘルミー法で液温25℃にて測定した値である。
【0088】
〔積層体A〕
次に、上述した本開示のインクセットを用いて好適に作製される積層体Aについて説明する。
【0089】
積層体Aは、
被記録媒体と、
被記録媒体上に配置され、インクジェット記録物である着色画像(即ち、インクジェット法によって形成された着色画像)と、
被記録媒体上の少なくとも着色画像上に配置され、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体を含有するクリアインク層と、
を備える。
【0090】
即ち、積層体Aは、前述した、クリアインク層/着色画像/被記録媒体の積層構造を有する積層体である。
本開示のインクセットは、上記積層体Aにおける、着色画像及びクリアインク層の形成に好適である。
【0091】
積層体Aにおいて、クリアインク層の全質量に対するクリアインク層に含有される塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体の質量の比率(即ち、比率〔クリアインク層に含有される塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体の含有質量/クリアインク層の全質量〕)は、前述したMt2/Mt1に対応する(即ち、0.40以上である)。
比率〔クリアインク層に含有される塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体の含有質量/クリアインク層の全質量〕の好ましい範囲は、前述したMt2/Mt1の好ましい範囲と同様である。
【0092】
積層体Aは、この積層体Aのクリアインク層上に更にラミネート基材を熱融着させた場合(即ち、ラミネート基材/クリアインク層/着色画像/被記録媒体の積層構造を有する熱融着体を形成した場合)に、被記録媒体とラミネート基材との間での剥離強度に優れる。即ち、上記熱融着体を形成した場合に、被記録媒体とラミネート基材との間での剥離が抑制される。
【0093】
被記録媒体は、ウレタン樹脂及び塩化ビニル樹脂の少なくとも一方を含有することが好ましい。
ウレタン樹脂の熱融解点及び塩化ビニル樹脂の熱融解点は、いずれも、クリアインク層に含有される塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体の熱融解点に近い。
このため、被記録媒体は、ウレタン樹脂及び塩化ビニル樹脂の少なくとも一方を含有する場合には、上記熱融着体を製造した場合に、上記剥離強度向上の効果が顕著に奏される。
【0094】
被記録媒体において、ウレタン樹脂及び塩化ビニル樹脂の総含有量は、被記録媒体の全体に対し、好ましくは60質量%、より好ましくは80質量%以上であり、更に好ましくは90質量%以上である。
被記録媒体において、ウレタン樹脂及び塩化ビニル樹脂の総含有量は、100質量%であってもよい。
【0095】
被記録媒体は、塩化ビニル樹脂を含有することが好ましく、塩化ビニル樹脂を、被記録媒体の全体に対し60質量%(より好ましくは80質量%以上、更に好ましくは90質量%以上)含有することが特に好ましい。
【0096】
被記録媒体は、ウレタン樹脂及び塩化ビニル樹脂以外のその他の成分(公知の樹脂用添加剤等)を含有してもよい。
【0097】
また、被記録媒体は、例えば白色に着色されていてもよい。
これにより、被記録媒体上に形成される着色画像の見栄えが向上する。
着色された被記録媒体としては、
ウレタン樹脂及び塩化ビニル樹脂の少なくとも一方と、着色剤(例えば白色顔料)と、を含有する被記録媒体;
ウレタン樹脂及び塩化ビニル樹脂の少なくとも一方を含有する基材層と、着色剤(例えば白色顔料)を含む層と、を含む多層構造を有する被記録媒体;
等が挙げられる。
【0098】
被記録媒体の形状には特に制限はないが、ラミネート基材/クリアインク層/着色画像/被記録媒体の積層構造を有する熱融着体を形成する場合の熱融着の作業性の観点から、シート形状であることが好ましい。
シート形状である被記録媒体の厚さには特に制限はないが、0.1mm〜20mmが好ましく、0.2mm〜10mmがより好ましく、0.5m〜5mmが特に好ましい。
【0099】
被記録媒体としては、市販品を用いてもよい。
被記録媒体の市販品としては、オカモト社製のポリ塩化ビニル基材「PVC35phr」、ヤマプラス社製のポリウレタンレザー「エルナ(YP528)」、等が挙げられる。
【0100】
クリアインク層は、透明性を有することが好ましい。これにより、上記熱融着体におけるラミネート基材側から着色画像を見た場合の着色画像の鮮明性により優れる。
ここで、透明性を有するとは、波長400nm〜700nmの可視光の透過率が、80%以上(好ましくは90%以上)であることを意味する。
【0101】
積層体Aは、更に、クリアインク層上に熱融着されたラミネート基材を備えることが好ましい。
この態様の積層体Aとしては、前述した、ラミネート基材/クリアインク層/着色画像/被記録媒体の積層構造を有する熱融着体である。
【0102】
ラミネート基材としては、ウレタン樹脂及び塩化ビニル樹脂の少なくとも一方を含有するラミネート基材が好ましい。これにより、上記熱融着体において、ラミネート基材と被記録媒体との間の剥離強度がより向上する。
ラミネート基材において、ウレタン樹脂及び塩化ビニル樹脂の総含有量は、ラミネート基材の全体に対し、好ましくは60質量%であり、より好ましくは80質量%以上であり、更に好ましくは90質量%以上である。
ラミネート基材において、ウレタン樹脂及び塩化ビニル樹脂の総含有量は、100質量%であってもよい。
【0103】
ラミネート基材は、塩化ビニル樹脂を含有することが好ましく、塩化ビニル樹脂を、被記録媒体の全体に対し60質量%(より好ましくは80質量%以上、更に好ましくは90質量%以上)含有することが特に好ましい。
【0104】
ラミネート基材は、ウレタン樹脂及び塩化ビニル樹脂以外のその他の成分(公知の樹脂用添加剤等)を含有してもよい。
【0105】
ラミネート基材は、透明性を有することが好ましい。これにより、ラミネート基材/クリアインク層/着色画像/被記録媒体の積層構造を有する熱融着体を形成し、ラミネート基材側から着色画像を見た場合の着色画像の鮮明性により優れる。
「透明性を有する」の意味については前述のとおりである。
ラミネート基材の厚さには特に制限はないが、30μm〜200μmが好ましく、40μm〜150μmがより好ましく、50μm〜100μmが特に好ましい。
【0106】
ラミネート基材としては、市販品を用いてもよい。
ラミネート基材の市販品としては、ケイエヌトレーディング社製のポリメリック塩ビラミネートフィルム「SG800」、エヌティーダブリュー社製のウレタンシート「Higress ハイグレス(登録商標)」等が挙げられる。
【0107】
上述した、ラミネート基材/クリアインク層/着色画像/被記録媒体の積層構造を有する熱融着体は、輸送機器(鉄道、バス等)の床材又は壁材、建物の床材又は壁材、等として特に好適である。
【0108】
〔積層体Aの製造方法の一例(製法X)〕
次に、上述した積層体Aを製造する方法の一例(以下、製法Xともいう)について説明する。
製法Xは、上述した本開示のインクセットを用いて好適に実施できる。
【0109】
製法Xは、
被記録媒体上に、着色インクをインクジェット法によって付与して着色画像を形成する工程と、
少なくとも着色画像上にクリアインクを付与してクリアインク層を形成する工程と、
を有する。
【0110】
本開示のインクセットにおける着色インクは、上記製法Xにおける着色インクとして好適であり、本開示のインクセットにおけるクリアインクは、上記製法Xにおけるクリアインクとして好適である。
製法Xにおける被記録媒体は、積層体Aにおける被記録媒体と同義であり、好ましい態様も同様である。
【0111】
<着色画像を形成する工程>
製法Xは、被記録媒体上に着色インクをインクジェット法によって付与して着色画像を形成する工程(以下、「着色画像形成工程」ともいう)を有する。
着色画像形成工程では、着色インクを1種のみ用い、単色の着色画像を形成してもよいし、着色インクを2種以上用い、2色以上の着色画像を形成してもよい。
着色インクについては、本開示のインクセットの項で説明したとおりである。
【0112】
インクジェット法による着色インクの付与は、言うまでもないが、インクジェット記録装置に備えられたインクジェットヘッドから、着色インクを被記録媒体に向けて吐出することによって行う。
着色インクの吐出量等の吐出条件については特に制限はなく、使用する着色インクの組成、物性等に応じて、適宜選択することができる。
インクジェット記録装置としては特に制限はなく、目的とする解像度を達成し得る公知のインクジェット記録装置を任意に選択して使用することができる。すなわち、市販品を含む公知のインクジェット記録装置であれば、いずれも、インクジェット法による着色インクの付与を行うことができる。
【0113】
インクジェット記録装置に備えられるインク供給系は、例えば、着色インクを含む元タンク、供給配管、インクジェットヘッド直前のインク供給タンク、フィルター、及びピエゾ型のインクジェットヘッドを含む。
ピエゾ型のインクジェットヘッドは、好ましくは1pl〜100pl、より好ましくは8pl〜30plのマルチサイズドットを、好ましくは320×320dpi〜4,000×4,000dpi、より好ましくは400×400dpi〜1,600×1,600dpi、更に好ましくは720×720dpiの解像度で吐出できるよう駆動することができる。
なお、本明細書でいうdpi(dot per inch)とは、2.54cm当たりのドット数を表す。
【0114】
着色画像形成工程では、好ましくは、被記録媒体上に付与された着色インクを乾燥させて着色画像を形成する。
被記録媒体上に付与された着色インクの乾燥は、風乾であっても、加熱による乾燥であってもよいが、加熱による乾燥であることが好ましい。
加熱における加熱温度は、被記録媒体の温度として、30℃〜90℃が好ましく、50℃〜80℃がより好ましい。
【0115】
また、着色画像形成工程では、被記録媒体上に付与された着色インクに対し、活性放射線を照射することが好ましい。活性放射線の照射により、被記録媒体上の着色インク中において重合性化合物が重合し、着色インクが硬化されて画像が形成される。これにより、強度に優れた着色画像が得られる。
【0116】
活性放射線としては、α線、γ線、電子線、X線、紫外線(UV)、可視光、赤外光などが使用され得る。
活性放射線のピーク波長は、200nm〜600nmであることが好ましく、300nm〜450nmであることがより好ましく、320nm〜420nmであることが更に好ましく、340nm〜400nmであることが更に好ましい。
【0117】
活性放射線源としては、水銀ランプ、メタルハライドランプ、ガスレーザー、固体レーザー等が広く知られている。
しかしながら、現在、環境保護の観点から水銀フリー化が強く望まれており、上記で例示された活性放射線源のGaN系半導体紫外発光デバイスへの置き換えは、産業的、環境的にも非常に有用である。更に、発光ダイオード(LED)及びレーザーダイオード(LD)は、小型、高寿命、高効率、低コストであり、光硬化型インクジェット用光源として期待されている。
また、発光ダイオード(LED)及びレーザーダイオード(LD)を活性放射線源として用いることが可能である。特に、紫外線源を要する場合、紫外LED(以下、UV−LEDともいう)及び紫外LD(以下、UV−LDともいう)を使用することができる。例えば、日亜化学(株)は、主放出スペクトルが365nmと420nmとの間の波長を有するUV−LEDを上市している。また、米国特許第6,084,250号明細書は、300nmと370nmとの間に中心付けされた活性放射線を放出し得るUV−LEDを開示している。また、これらの波長とは異なる波長の紫外線を放出できる、他のUV−LEDも入手可能である。
好ましい活性放射線源は、UV−LEDである。特に好ましい活性放射線源は、340nm〜400nmにピーク波長を有するUV−LEDである。
【0118】
なお、LEDの被記録媒体上での最高照度は、10mW/cm〜2000mW/cmであることが好ましく、20mW/cm〜1000mW/cmであることがより好ましく、50mW/cm〜800mW/cmであることが特に好ましい。
重合性化合物を含有する態様の着色インクは、このような活性放射線に、好ましくは0.01秒〜120秒、より好ましくは0.1秒〜90秒照射されることが適当である。
活性放射線の照射条件及び基本的な照射方法は、特開昭60−132767号公報に開示されている。
【0119】
活性放射線の照射により着色インクの硬化を行う場合、駆動を伴わない別光源によって硬化を完了させてもよい。
国際公開第99/54415号では、照射方法として、光ファイバーを用いた方法、及び、コリメートされた光源をヘッドユニット側面に設けた鏡面に当て、記録部へUV光を照射する方法が開示されており、このような硬化方法もまた、着色画像形成工程に適用することができる。
【0120】
着色画像形成工程において活性放射線の照射を行う場合、活性放射線の照射量は、10mJ/m〜1000mJ/mが好ましく、100mJ/m〜500mJ/mがより好ましく、200mJ/m〜400mJ/mが更に好ましい。
【0121】
着色画像形成工程では、好ましくは、被記録媒体上に付与された着色インクに対し、加熱及び活性放射線照射の両方を施すことが好ましく、加熱及び活性放射線照射をこの順に施すことがより好ましい。
【0122】
<クリアインク層を形成する工程>
製法Xは、少なくとも着色画像上に、クリアインクを付与してクリアインク層を形成する工程(以下、「クリアインク層形成工程」ともいう)を有する。
クリアインク層形成工程は、着色画像上のみにクリアインク層を形成してもよいし、着色画像上及び画像非形成領域上にまたがるクリアインク層を形成してもよい。
ここで、画像非形成領域とは、着色画像形成工程において、着色画像が形成されなかった領域(即ち、着色インクが付与されなかった領域)を指す。
【0123】
クリアインクの付与は、塗布法、インクジェット法、浸漬法などの公知の方法を適用して行なうことができる。
塗布法としては、バーコーター(例えばワイヤーバーコーター)、エクストルージョンダイコーター、エアードクターコーター、ブレードコーター、ロッドコーター、ナイフコーター、スクイズコーター、リバースロールコーター、グラビアコーター、フレキソコーター等を用いた公知の塗布法が挙げられる。
インクジェット法の詳細については、前述する着色画像形成工程におけるインクジェット法と同様である。
クリアインクの付与は、クリアインク層/着色画像/被記録媒体の積層構造を有する積層体を製造するための製造装置の簡略化が可能であるという観点から、インクジェット法によって行うことが好ましい。
【0124】
クリアインク層形成工程では、好ましくは、被記録媒体上に付与されたクリアインクを加熱してクリアインク層を形成する。
加熱により、クリアインクの乾燥(即ち、クリアインクから有機溶剤の除去)を効率的に行うことができる。
被記録媒体上のクリアインクを加熱する場合の好ましい加熱温度は、被記録媒体上の着色インクを加熱する場合の好ましい加熱温度と同様である。
【0125】
クリアインクが重合性化合物を含有する場合には、被記録媒体上に付与されたクリアインクに対し、活性放射線を照射することが好ましい。活性放射線の照射により、被記録媒体上のクリアインク中において重合性化合物が重合し、その結果、硬化されたクリアインク層が得られる。
活性放射線及び活性放射線の照射条件の好ましい態様は、被記録媒体上の着色インクに活性放射線を照射する場合の好ましい態様と同様である。
【0126】
クリアインクが有機溶剤及び重合性化合物を含有する場合、クリアインク層形成工程では、好ましくは、被記録媒体上に付与されたクリアインクに対し、加熱及び活性放射線照射の両方を施すことが好ましく、加熱及び活性放射線照射をこの順に施すことがより好ましい。
【0127】
<ラミネート基材を熱融着させる工程>
製法Xは、更に、クリアインク層上にラミネート基材を熱融着させる工程(以下、「熱融着工程」ともいう)を有することが好ましい。この熱融着工程により、ラミネート基材/クリアインク層/着色画像/被記録媒体の積層構造を有する熱融着体が形成される。形成された熱融着体は、前述のとおり、ラミネート基材と被記録媒体との間の剥離強度に優れる。
【0128】
ここでいうラミネート基材は、積層体Aにおけるラミネート基材と同義であり、好ましい態様も同様である。
【0129】
熱融着工程における熱融着温度は、好ましくは140℃〜230℃であり、より好ましくは150℃〜220℃であり、更に好ましくは170℃〜190℃である。
熱融着温度が140℃以上である場合には、ラミネート基材と被記録媒体との間の剥離強度がより向上する。
熱融着温度が230℃以下である場合には、熱融着に起因する着色画像の乱れがより抑制される。
ここで、熱融着温度とは、熱融着時におけるラミネート基材の表面温度を意味する。
【0130】
熱融着工程における熱融着圧力は、1.0N/cm〜10.0N/cmが好ましく、2.0N/cm〜6.0N/cmがより好ましい。
熱融着工程における熱融着時間は、2秒〜60秒が好ましく、3秒〜20秒がより好ましい。
【実施例】
【0131】
以下、本開示の実施例を示すが、本開示は以下の実施例には限定されない。
なお、特に断りのない限り、「部」および「%」は質量基準である。
以下、実施例及び比較例で使用した各種成分の詳細を示す。
【0132】
<着色剤>
・PB15:4 … BASF社製のC.I.Pigment Blue 15:4(HELIOGEN BLUE D 7110 F)。シアン顔料。
・混結キナクリドン … BASF社製のCINQUASIA MAGENTA L 4540。マゼンタ顔料。
・PY155 … Clariant社製のC.I.Pigment Yellow 155(INK JET YELLOW 4GC)。イエロー顔料。
・カーボンブラック … CABOT社製のカーボンブラック「MOGUL E」。ブラック顔料。
【0133】
<分散剤>
・Sol32000 … Luburizol社製の「SOLSPERSE 32000」
<有機溶剤>
実施例及び比較例で使用した有機溶剤の詳細を表1に示す。
以下、「BP」は、沸点を意味する。
【0134】
【表1】

【0135】
<重合性化合物>
実施例及び比較例で使用した、重合性化合物(詳細には、ウレタン(メタ)アクリレート)の詳細を表2に示す。
【0136】
【表2】

【0137】
<塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体>
実施例及び比較例で使用した塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体の詳細を表3に示す。
【0138】
【表3】

【0139】
<重合禁止剤>
・UV22 … BASF社製の「IRGASTAB(登録商標) UV22」(Poly[oxy(methyl-1,2-ethanediyl)]-α,α',α”-1,2,3-propanetriyltris[-[(1-oxo-2-propen-1-yl)oxy]-2,6-bis(1,1-dimethylethyl)-4-(phenylenemethylene)cyclohexa-2,5-dien-1-one];ヒンダードフェノール系重合禁止剤)
【0140】
<光重合開始剤>
・Irg819 … BASF社製の「IRGACURE(登録商標)819」(ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド)
・Irg2959 … BASF社製の「IRGACURE(登録商標)2959」(1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン)
【0141】
<界面活性剤>
・BYK 331 … BYK Chemie社製の「BYK(登録商標) 331」(ポリエーテル変性ポリシロキサン化合物)
【0142】
<アクリル樹脂>
・BR113 … 三菱ケミカル(株)製の「DIANAL(登録商標) BR113」
【0143】
<ポリエステル樹脂>
・LTH … Evonik社製の「TEGO(登録商標) AddBond LTH」
【0144】
<ポリビニルアセタール樹脂>
・BL−10 … 積水化学社製の「エスレック(登録商標)BL−10」
【0145】
<顔料ミルベース(顔料分散物)の調製>
表4に記載の顔料以外の組成を混合し、SILVERSON社製ミキサーで撹拌し(10〜15分、2000〜3000回転/分)、分散剤希釈液を得た。この分散剤希釈液に顔料を加え、更にミキサーで撹拌し(10〜20分、2000〜3000回転/分)、予備分散液を500部得た。
その後、ディスパーマット社製の循環型ビーズミル装置(SL−012C1)を用いて分散処理を実施し、顔料ミルベース(顔料分散物)を得た。この分散処理は、SL−012C1に直径0.65mmのジルコニアビーズを200部充填し、周速15m/s、分散時間1〜6時間の条件で行った。
【0146】
【表4】
【0147】
<着色インク群の準備>
下記表5〜下記表13に示す各着色インク(シアンインクC1〜C9、マゼンタインクM1〜M9、イエローインクY1〜Y9、及びブラックインクK1〜K9)を調製した。これにより、下記表5〜下記表13に示すシアンインク、マゼンタインク、イエローインク、及びブラックインクの組み合わせからなる着色インク群(CG1〜CG9)を準備した。
【0148】
各着色インクは、下記表5〜下記表13に示す各成分を各量にて混合し、SILVERSON社製ミキサーで撹拌(10〜15分、2000〜3000回転/分)することによって調製した。
下記表5〜下記表13中、各成分の量を示す数値は、質量部を意味する。
下記表5〜下記表13中の空欄は、該当する成分を含有しないことを意味する。
下記表5〜下記表13には、着色インクに含有される不揮発性成分の総含有質量(Mc1)と着色インクに含有される塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体の含有質量(Mc2)との比(Mc2/Mc1)も併記した。
【0149】
【表5】
【0150】
【表6】
【0151】
【表7】
【0152】
【表8】
【0153】
【表9】
【0154】
【表10】
【0155】
【表11】
【0156】
【表12】
【0157】
【表13】
【0158】
<クリアインクの準備>
下記表14〜下記表16に示す各成分を各量にて混合し、SILVERSON社製ミキサーで撹拌(10〜15分、2000〜3000回転/分)することにより、クリアインクT1〜T22を調製した。
下記表14〜下記表16中、各成分の量を示す数値は、質量部を意味する。
下記表14〜下記表16中の空欄は、該当する成分を含有しないことを意味する。
クリアインクT2、T5、T6、T9、T12、T13及びT14は、いずれも比較用のクリアインクである。
下記表14〜下記表16には、クリアインクに含有される不揮発性成分の総含有質量(Mt1)とクリアインクに含有される塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体の含有質量(Mt2)との比(Mt2/Mt1)も併記した。
【0159】
【表14】
【0160】
【表15】
【0161】
【表16】
【0162】
〔実施例1〜24、比較例1〜7〕
<インクセットの準備>
表17及び表18に示す着色インク群とクリアインクとの組み合わせである、実施例1〜24及び比較例2〜7のインクセットをそれぞれ準備した。また、表17に示す着色インク群からなる比較例1のインクセット(クリアインク無し)を準備した。
準備した各インクセットを用い、積層体の作製及び評価を行った。以下、詳細を示す。
【0163】
<インクジェットプリンタ改造機の準備>
アフィット社製インクジェットプリンタ(KEGON)に、ラバーヒーター((株)スリーハイ製SR100)、及び、紫外線(UV)照射装置(Integration Technology社製Vzero)を取り付け、インクジェットプリンタ改造機を準備した。ラバーヒーターの出力は、インク(着色インク、又は、着色インク及びクリアインク)が付与された被記録媒体を、約60℃に加熱できるように設定した。UV照射を行う場合におけるインクの乾燥時間(即ち、インクジェットヘッドから吐出されたインクが被記録媒体に着弾してからUVを照射するまでの時間)は、10秒となるように調整した。この場合のインクの乾燥時間の調整は、搬送速度(5m/分〜25m/分)とUVシャッター開閉のタイミングとを調整することにより行った。
【0164】
<着色画像形成工程>
インクジェットプリンタ改造機のインクジェットヘッドから、上述した着色インクセットにおける各着色インク(シアンインク、マゼンタインク、イエローインク、及びブラックインク)を吐出して、被記録媒体上に着色画像を形成した。画像密度は、1200dpi(dot per inch)×600dpiとした。
【0165】
被記録媒体としては、オカモト社製のポリ塩化ビニル基材「PVC35phr」を用いた。
【0166】
着色画像としては、下記画像A〜画像Cの3種類の画像を形成した。
【0167】
画像Aは、シアンベタ画像、マゼンタベタ画像、イエローベタ画像、及びブラックベタ画像が、縦2列×横2列の配置で配列されている画像とした。これらのベタ画像の面積は同一とし、シアンインク、マゼンタインク、イエローインク、及びブラックインクの付与量は、いずれも5g/m(即ち、着色インクの総付与量として20g/m)とした。
【0168】
画像Bは、図1に示すように、
それぞれ縦方向に延びる、ブラック(K)細線画像、シアン(C)細線画像、マゼンタ(M)細線画像、及びイエロー(Y)細線画像が横方向に配列された細線群と、
それぞれ横方向に延びる、ブラック細線画像、シアン細線画像、マゼンタ細線画像、及びイエロー細線画像が縦方向に配列された細線群と、
を重ねた格子状の画像とした。
各細線画像の線幅は、いずれも1mmとした。細線画像の中心線同士の間隔(即ち、特定の細線の線幅方向の中心線と、その特定の細線の隣りに配置されている細線の線幅方向の中心線と、の距離)は、3mmとした。
【0169】
画像Cは、画像Bにおいて、各細線画像の線幅を2mmに変更した画像とした。
【0170】
画像A〜画像Cのいずれを形成する際にも、被記録媒体への4色の着色インクの付与が完了した後、付与された4色の着色インクに対し、ラバーヒーターによる加熱(加熱温度60℃)及びUV照射装置によるUV照射(UV波長385nm、UV照射量300mJ/m)をこの順に施すことにより、付与された4色の着色インクを被記録媒体に定着させて画像を形成した。
【0171】
<クリアインク層形成工程>
実施例1〜24及び比較例2〜7では、インクジェットプリンタ改造機のインクジェットヘッドから、上述したクリアインク(クリアインクT1〜T21のいずれか1つ)を吐出して、着色画像が形成された被記録媒体の着色画像(画像A〜画像Cのいずれか1つ)上及び画像非形成領域上の全体を覆うクリアインク層を形成した。クリアインク層の画像密度は1,200dpi×600dpiとし、クリアインクの付与量は10g/mとした。
クリアインクを含まないインクセットを用いた比較例1では、クリアインク層の形成を行わなかった。
【0172】
クリアインク層の形成は、着色画像が形成された被記録媒体に付与されたクリアインクに対し、加熱を施す(UV照射は施さない)か、又は、加熱及びUV照射をこの順に施すことによって行った。
詳細には、重合性化合物を含有する、クリアインクT2〜T6を用いた例では、付与されたクリアインクに対し、加熱(加熱温度60℃)及びUV照射(UV照射量300mJ/m)をこの順に施すことにより、クリアインク層を形成した。重合性化合物を含有しない、クリアインクT1及びT7〜T22を用いた例では、付与されたクリアインクに対し、加熱(加熱温度60℃)を施すことにより(即ち、UV照射は施さずに)、クリアインク層を形成した。
【0173】
<熱融着工程>
実施例1〜24及び比較例2〜7では、着色画像及びクリアインク層が形成された被記録媒体のクリアインク層上に、ラミネート基材としての透明PVC基材を配置し、卓上ヒートプレス機(卓上自動転写プレス機AF−54TEN,アサヒ繊維機械株式会社)を用い、着色画像及びクリアインク層が形成された被記録媒体と、ラミネート基材と、を熱融着させることにより、ラミネート基材/クリアインク層/着色画像/被記録媒体の積層構造を有する熱融着体サンプルを得た。
ここで、透明PVC基材(ラミネート基材)としては、ケイエヌトレーディング社製のポリメリック塩ビラミネートフィルム「SG800」(厚さ75μm)を用いた。
また、ラミネート圧力(熱融着圧力)は4.0N/cmとし、ラミネート温度(熱融着温度)は180℃とし、ラミネート時間(熱融着時間)は10秒とした。
比較例1では、着色画像が形成された被記録媒体の着色画像上に、実施例1〜24及び比較例2〜7で使用したものと同様の透明PVC基材(ラミネート基材)を配置し、実施例1〜24及び比較例2〜7における熱融着と同様の条件で熱融着を行い、ラミネート基材/着色画像/被記録媒体の積層構造を有する熱融着体サンプルを得た。
【0174】
<着色画像の外観の評価>
画像B(即ち、線幅1mmの細線画像からなる格子状の画像)を含む熱融着体サンプル、及び、画像C(即ち、線幅2mmの細線画像からなる格子状の画像)を含む熱融着体サンプルを用い、ラミネート基材側から目視で着色画像(画像B及び画像C)の外観を確認し、下記評価基準に従って、着色画像の外観を評価した。
結果を表17及び表18に示す。
下記評価基準において、着色画像の外観に最も優れるものは「5」である。
【0175】
−着色画像の外観の評価基準−
5: 30cm離れた位置からの目視観察により、画像B及び画像Cの両方において、細線画像の乱れ及び格子の乱れが確認されない。
4: 30cm離れた位置からの目視観察により、画像Bにおいて、細線画像の乱れ又は格子の乱れが確認されるが、画像Cにおいては、細線画像の乱れ及び格子の乱れが確認されない。
3: 30cm離れた位置からの目視観察により、画像B及び画像Cの両方において、細線画像の乱れ又は格子の乱れが確認される。1m離れた位置からの目視観察では、画像B及び画像Cの両方において、細線画像の乱れ及び格子の乱れが確認されない。
2: 30cm離れた位置からの目視観察により、画像B及び画像Cの両方において、細線画像の乱れ又は格子の乱れが確認される。1m離れた位置からの目視観察では、画像Bにおいて、細線画像の乱れ又は格子の乱れが確認されるが、画像Cにおいては、細線画像の乱れ及び格子の乱れが確認されない。
1: 30cm離れた位置からの目視観察により、画像B及び画像Cの両方において、細線画像の乱れ又は格子の乱れが確認される。1m離れた位置からの目視観察でも、画像B及び画像Cの両方において、細線画像の乱れ又は格子の乱れが確認される。
【0176】
<ラミネート基材と被記録媒体との間の剥離強度の評価>
画像Aを含む熱融着体サンプルを作製する際の熱融着工程を、以下のように変更することにより、剥離強度評価用サンプルを作製した。
着色画像及びクリアインク層が形成された被記録媒体(但し、比較例1では着色画像が形成された被記録媒体)から、画像Aの一部を含む、0.5cm×10cmの短冊状のサンプル片(以下、「被記録媒体サンプル片」とする)を採取した。
同様に、ラミネート基材から、0.5cm×10cmの短冊状のサンプル片(以下、「ラミネート基材サンプル片」とする)を採取した。
被記録媒体サンプル片のクリアインク層上(但し、比較例1では被記録媒体サンプル片の着色画像上。以下同じ。)であって、被記録媒体サンプル片の長手方向一端を含む0.5cm×3cmの領域上に、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)シートを配置した。次に、被記録媒体サンプル片のクリアインク層上であって、PTFEシートを配置した領域(0.5cm×3cmの領域)及び残りの領域(0.5cm×7cmの領域)の全体に、0.5cm×10cmのラミネート基材サンプル片を重ねた。
この状態で、画像Aを含む熱融着体サンプルを作製する際の熱融着工程と同様の条件で、被記録媒体サンプル片とラミネート基材サンプル片とを熱融着した。得られた積層体からPTFEシートを除去することにより、剥離強度評価用サンプルを得た。
【0177】
図2は、剥離強度評価用サンプルにおける、厚さ方向及び長手方向に対して平行な断面を概念的に示す概略断面図である。
図2に示すように、この剥離強度評価用サンプルでは、0.5cm×7cmの領域では、被記録媒体サンプル片14(詳細には、実施例1〜24及び比較例2〜7では被記録媒体サンプル片のクリアインク層、比較例1では被記録媒体サンプル片の着色画像)とラミネート基材サンプル片12とが熱融着されているが、被記録媒体サンプル片14とラミネート基材サンプル片12との間にPTFEシートを介在させていた領域(即ち、0.5cm×3cmの領域)は、熱融着されていない。
【0178】
次に、剥離強度評価用サンプルにおける、被記録媒体サンプル片14の熱融着されていない部分(端部)と、ラミネート基材サンプル片12の熱融着されていない部分(端部)とを、反対方向(図2中、2つのブロック矢印の方向)に引っ張る引っ張り試験を実施した。この引っ張り試験は、引っ張り試験機(オートグラフAGS−X 5KN SHIMAZU社製)を用いて実施した。
以上の引っ張り試験を10回実施した。即ち、10個の剥離強度評価用サンプルを作製し、各剥離強度評価用サンプルについて、引っ張り試験を実施した。
10回の引っ張り試験の結果に基づき、下記評価基準にて、ラミネート基材と被記録媒体との間の剥離強度を評価した。
結果を表17及び表18に示す。
下記評価基準において、ラミネート基材と被記録媒体との間の剥離強度が最も優れるものは「10」である。
【0179】
−剥離強度の評価基準−
10: 10回の試験のうち10回とも、ラミネート基材サンプル片と被記録媒体サンプル片とが剥離せず、ラミネート基材サンプル片又は被記録媒体サンプル片が破壊された。
9: 10回の試験のうち9回において、ラミネート基材サンプル片と被記録媒体サンプル片とが剥離せず、ラミネート基材サンプル片又は被記録媒体サンプル片が破壊された。
8: 10回の試験のうち7回又は8回において、ラミネート基材サンプル片と被記録媒体サンプル片とが剥離せず、ラミネート基材サンプル片又は被記録媒体サンプル片が破壊された。
7: 10回の試験のうち5回又は6回において、ラミネート基材サンプル片と被記録媒体サンプル片とが剥離せず、ラミネート基材サンプル片又は被記録媒体サンプル片が破壊された。
6: 10回の試験のうち3回又は4回において、ラミネート基材サンプル片と被記録媒体サンプル片とが剥離せず、ラミネート基材サンプル片又は被記録媒体サンプル片が破壊された。
5: 10回の試験のうち1回又は2回において、ラミネート基材サンプル片と被記録媒体サンプル片とが剥離せず、ラミネート基材サンプル片又は被記録媒体サンプル片が破壊された。
4: 10回の試験のうち10回とも、ラミネート基材サンプル片と被記録媒体サンプル片とが剥離し、かつ、10回の試験における最大点応力の平均値が2MPa以上であった。
3: 10回の試験のうち10回とも、ラミネート基材サンプル片と被記録媒体サンプル片とが剥離し、かつ、10回の試験における最大点応力の平均値が1.5MPa以上2MPa未満であった。
2: 10回の試験のうち10回とも、ラミネート基材サンプル片と被記録媒体サンプル片とが剥離し、かつ、10回の試験における最大点応力の平均値が1.0MPa以上1.5MPa未満であった。
1: 10回の試験のうち10回とも、ラミネート基材サンプル片と被記録媒体サンプル片とが剥離し、かつ、10回の試験における最大点応力の平均値が1.0MPa未満であった。
【0180】
<着色インクの吐出性の評価>
以下のようにして、着色インクの吐出性(以下、「吐出性C」ともいう)を評価した。
被記録媒体としてのA2サイズの記録紙(インクジェット用印画紙、画彩、富士フイルム社製)を用い、上述の着色画像形成工程における画像Aの形成と同様の条件で、上記記録紙40枚に対し連続して画像A(即ち、4色のベタ画像からなる画像A)を形成した。以下、画像Aが形成された記録紙を、「吐出性C評価用サンプル」とする。
40枚の吐出性C評価用サンプルを目視で観察し、ノズル抜け(即ち、ノズルの吐出不良に起因する画像欠陥)が確認される吐出性C評価用サンプルの枚数を調べた。この結果に基づき、下記評価基準に従い、吐出性Cを評価した。
結果を表17及び表18に示す。
以下の評価基準において、吐出性Cが最も優れるものは、「10」である。
【0181】
−着色インクの吐出性(吐出性C)の評価基準−
10: ノズル抜けが確認されるサンプルは0枚
9: ノズル抜けが確認されるサンプルは1枚
8: ノズル抜けが確認されるサンプルは2枚
7: ノズル抜けが確認されるサンプルは3枚
6: ノズル抜けが確認されるサンプルは4枚
5: ノズル抜けが確認されるサンプルは5枚
4: ノズル抜けが確認されるサンプルは6枚
3: ノズル抜けが確認されるサンプルは7枚
2: ノズル抜けが確認されるサンプルは8枚
1: ノズル抜けが確認されるサンプルは9枚以上
【0182】
<クリアインクの吐出性の評価>
以下のようにして、クリアインクの吐出性(以下、「吐出性T」ともいう)を評価した。
被記録媒体としてのA2サイズの記録紙(インクジェット用印画紙、画彩、富士フイルム社製)を用い、上述のクリアインク層形成工程におけるクリアインク層の形成と同様の条件で、上記記録紙40枚に対し連続してクリアベタ画像を形成した。以下、クリアベタ画像が形成された記録紙を、「吐出性T評価用サンプル」とする。
40枚の吐出性T評価用サンプルを目視で観察し、ノズル抜け(即ち、ノズルの吐出不良に起因する画像欠陥)が確認される吐出性T評価用サンプルの枚数を調べた。この結果に基づき、下記評価基準に従い、吐出性Tを評価した。
結果を表17及び表18に示す。
以下の評価基準において、吐出性Tが最も優れるものは、「10」である。
なお、このクリアインクの吐出性(吐出性T)の評価は、実施例1〜24及び比較例2〜7において行った。クリアインクを含まないインクセットを用いた比較例1では、クリアインクの吐出性の評価を行わなかった。
【0183】
−クリアインクの吐出性(吐出性T)の評価基準−
10: ノズル抜けが確認されるサンプルは0枚
9: ノズル抜けが確認されるサンプルは1枚
8: ノズル抜けが確認されるサンプルは2枚
7: ノズル抜けが確認されるサンプルは3枚
6: ノズル抜けが確認されるサンプルは4枚
5: ノズル抜けが確認されるサンプルは5枚
4: ノズル抜けが確認されるサンプルは6枚
3: ノズル抜けが確認されるサンプルは7枚
2: ノズル抜けが確認されるサンプルは8枚
1: ノズル抜けが確認されるサンプルは9枚以上
【0184】
【表17】
【0185】
【表18】
【0186】
表17及び18に示すように、重合性化合物を含有する着色インクと、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体を含有するクリアインクと、を備え、Mt2/Mt1が0.40以上であるインクセットを用いた実施例1〜24では、ラミネート基材/クリアインク層/着色画像/被記録媒体の積層構造を有する熱融着体における、被記録媒体とラミネート基材との間での剥離強度に優れていた。
【0187】
これらの実施例に対し、クリアインクが塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体を含有しない比較例2、7及び8、並びに、クリアインクが塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体を含有するがMt2/Mt1が0.40未満である比較例3〜6では、ラミネート基材/クリアインク層/着色画像/被記録媒体の積層構造を有する熱融着体を作製した場合における、被記録媒体とラミネート基材との間での剥離強度に劣っていた。
また、上記実施例に対し、クリアインクを用いなかった比較例1では、ラミネート基材/着色画像/被記録媒体の積層構造を有する熱融着体における、被記録媒体とラミネート基材との間での剥離強度に劣っていた。
【0188】
実施例1及び19〜23の結果より、着色インクに含有される重合性化合物が、Mwが2000〜15000である2官能のウレタン(メタ)アクリレートを含む場合(実施例1、20及び22)は、上記剥離強度及び着色インクの吐出性(吐出性C)に特に優れることがわかる。
【0189】
実施例1及び8〜10の結果より、着色インクが、更に、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体を含有する場合(実施例1、9及び10)は、上記剥離強度がより向上することがわかる。
【0190】
実施例1、9及び10の結果より、着色インクに含有される塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体の含有量が、着色インクの全量に対し、0.5質量%〜2.0質量%である場合(実施例1及び9)は、上記剥離強度及び着色インクの吐出性(吐出性C)に特に優れることがわかる。
【0191】
実施例10及び24の結果より、Mc2/Mc1≦Mt2/Mt1を満足する場合(実施例10)には、上記剥離強度により優れることがわかる。
【0192】
2017年11月2日に出願された日本国特許出願2017−213192号の開示は、その全体が参照により本明細書に取り込まれる。
本明細書に記載された全ての文献、特許出願、及び技術規格は、個々の文献、特許出願、及び技術規格が参照により取り込まれることが具体的かつ個々に記された場合と同程度に、本明細書に参照により取り込まれる。
図1
図2