(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明の製造方法において用いられる液晶配向剤は、液晶性を発現し得る感光性の側鎖型高分子(以下、単に側鎖型高分子とも呼ぶ)を有しており、前記液晶配向剤を用いて得られる塗膜は、液晶性を発現し得る感光性の側鎖型高分子を有する膜である。この塗膜にはラビング処理を行うこと無く、偏光照射によって配向処理を行う。そして、偏光照射の後、その側鎖型高分子膜を加熱する工程を経て、配向制御能が付与された塗膜(以下、液晶配向膜とも称する)となる。このとき、偏光照射によって発現した僅かな異方性がドライビングフォースとなり、液晶性の側鎖型高分子自体が自己組織化により効率的に再配向する。その結果、液晶配向膜として高効率な配向処理が実現し、高い配向制御能が付与された液晶配向膜を得ることができる
【0029】
以下、本発明の実施形態について詳しく説明する。
<液晶配向膜を有する基板の製造方法>及び<液晶表示素子の製造方法>
【0030】
<<(A)側鎖型高分子>>
(A)成分は、下記モノマー(A−1)及びモノマー(A−2)を含むモノマー混合物から得られる共重合体(以下、側鎖型高分子とも言う)である。
モノマー(A−1):シンナモイル部位を1つと、シンナモイル部位を構成しないベンゼン環を2〜4つと、重合性基とを有するモノマー。
モノマー(A−2):シンナモイル部位を1つと、シンナモイル部位を構成しないベンゼン環を1つと、重合性基とを有するモノマー。
(上記シンナモイル部位とベンゼン環は、置換基を有していてもよい。)
【0031】
なおここでいう置換基としては、例えば、メチル基、メトキシ基、ターシャリーブチル基、アセチル基、フッ素基及びシアノ基等が挙げられる。
【0032】
(A)側鎖型高分子は、主鎖に感光性を有する側鎖が結合しており、光に感応して架橋反応、異性化反応を起こすことができる。感光性を有する側鎖の構造は特に限定されないが、光に感応して架橋反応を起こす構造が望ましい。この場合、熱などの外部ストレスに曝されたとしても、実現された配向制御能を長期間安定に保持することができる。
【0033】
(A)成分の側鎖型高分子の構造のより具体的な例としては、炭化水素、(メタ)アクリレート、イタコネート、フマレート、マレエート、α−メチレン−γ−ブチロラクトン、スチレン、ビニル、マレイミド、ノルボルネン等のラジカル重合性基およびシロキサンからなる群から選択される少なくとも1種から構成された主鎖と、下記式(1)及び(2)の少なくとも1種からなる側鎖を有する構造であることが好ましい。
【0035】
式中、A、B、Dはそれぞれ独立に、単結合、−O−、−CH
2−、−COO−、−OCO−、−CONH−又は−NH−CO−を表す;
Sは、炭素数1〜12のアルキレン基であり、それに結合する水素原子はそれぞれ独立にハロゲン基に置き換えられていてもよい;
Tは、単結合または炭素数1〜12のアルキレン基であり、それらに結合する水素原子はハロゲン基に置き換えられていてもよい;
Tが単結合であるときはBも単結合を表す;
Y
1は、2価のベンゼン環である;
P
1、Q
1及びQ
2は、それぞれ独立にベンゼン環及び炭素数5〜8の脂環式炭化水素環からなる群から選ばれる基である;
R
1は、水素原子、−CN、ハロゲン基、炭素数1〜5のアルキル基、(炭素数1〜5のアルキル)カルボニル基、炭素数3〜7のシクロアルキル基又は炭素数1〜5のアルキルオキシ基である。
Y
1、P
1、Q
1及びQ
2において、ベンゼン環に結合する水素原子はそれぞれ独立に−CN、ハロゲン基、炭素数1〜5のアルキル基、(炭素数1〜5のアルキル)カルボニル基、又は炭素数1〜5のアルキルオキシ基で置換されてもよい;
X
1及びX
2は、それぞれ独立に単結合、−O−、−COO−又は−OCO−を表す;
n1及びn2はそれぞれ独立に0、1または2である、
X
1の数が2となるときは、X
1同士は同一でも異なっていてもよく、X
2の数が2となるときは、X
2同士は同一でも異なっていてもよい;
Q
1の数が2となるときは、Q
1同士は同一でも異なっていてもよく、Q
2の数が2となるときは、Q
2同士は同一でも異なっていてもよい;
モノマー(A−1)においては、Y
1以外のベンゼン環の数の合計は2〜4である;
モノマー(A−2)においては、Y
1以外のベンゼン環の数の合計は1である;
破線は重合性基との結合手を表す。
【0036】
本発明の側鎖型高分子における(A−1)由来の側鎖の含有量と(A−2)由来の側鎖の含有量の合計に占める(A−1)由来の側鎖の含有量は、液晶配向性および側鎖型高分子の溶解性といった点から、10モル%〜90モル%が好ましく、20モル%〜80モル%がさらに好ましく、30モル%〜70モル%がさらに好ましい。
【0037】
本発明の側鎖型高分子は、本発明の効果を損なわない範囲で、上記(A−1)由来の側鎖及び(A−2)由来の側鎖以外のその他側鎖を含有していてもよい。その含有量は、上記光反応性側鎖及び液晶性側鎖の含有量の合計が100%に満たない場合に、その残りの部分である。
【0038】
<<感光性の側鎖型高分子の製法>>
上記の液晶性を発現し得る感光性の側鎖型高分子は、上記のモノマー(A−1)およびモノマー(A−2)を少なくとも含むモノマー混合物を重合することによって得ることができる。
【0039】
[モノマー(A−1)およびモノマー(A−2)]
光反応性側鎖モノマーとは、高分子を形成した場合に、高分子の側鎖部位に感光性側鎖を有する高分子を形成することができるモノマーのことである。
側鎖の有する光反応性基としては下記の構造およびその誘導体が好ましい。
【0040】
モノマー(A−1)およびモノマー(A−2)のより具体的な例としては、炭化水素、(メタ)アクリレート、イタコネート、フマレート、マレエート、α−メチレン−γ−ブチロラクトン、スチレン、ビニル、マレイミド、ノルボルネン等のラジカル重合性基およびトリアルコキシシリル基からなる群から選択される少なくとも1種から構成された重合性基と、上記式(1)及び(2)で表される構造から選ばれる感光性側鎖を有する構造であることが好ましい。
【0041】
重合性基としては、下記式PG1〜PG8で表される基から選ばれるのが好ましい。なかでも、重合反応の制御が容易であるという点と重合体の安定性の観点では、PG1で表されるアクリル基またはメタクリル基が好ましい。なお、式中、破線は上記式(1)または(2)で表される感光性側鎖との結合手を表す。
【0043】
(式PG1中、M1は水素原子又はメチル基である。)
【0044】
モノマー(A−1)としては、例えば、下記式A1−1〜A1−7から選ばれるモノマーが挙げられる。
【0047】
(式A1−1〜A1−7中、PGは上記式PG1〜PG8で表される基から選ばれる重合性基を表し、s1およびs2はそれぞれ独立にメチレン基の数を表し、2乃至9の自然数である。)
【0048】
モノマー(A−2)としては、例えば、下記式A2−1〜A2−14から選ばれるモノマーが挙げられる。
【0052】
(式A2−1〜A2−14中、PGは上記式PG1〜PG8で表される基から選ばれる重合性基を表し、s1およびs2はそれぞれ独立にメチレン基の数を表し、2乃至9の自然数である。)
【0053】
上記モノマー(A−1)およびモノマー(A−2)は、あるものは市販されており、あるものは、例えば国際特許出願公開WO2014/074785等に記載の方法で製造することができる。
【0054】
(A)側鎖型高分子は、上述したモノマー(A−1)およびモノマー(A−2)の共重合反応により得ることができる。さらに、液晶性の発現能を損なわない範囲でその他のモノマーと共重合することができる。
【0055】
モノマー(A−1)及び(A−2)の重合性基がラジカル重合性基である場合、その他のモノマーとしては、例えば工業的に入手できるラジカル重合反応可能なモノマーが挙げられる。
その他のモノマーの具体例としては、不飽和カルボン酸、アクリル酸エステル化合物、メタクリル酸エステル化合物、マレイミド化合物、アクリロニトリル、マレイン酸無水物、スチレン化合物及びビニル化合物等が挙げられる。
【0056】
不飽和カルボン酸の具体例としてはアクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸などが挙げられる。
【0057】
アクリル酸エステル化合物としては、例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、イソプロピルアクリレート、ベンジルアクリレート、ナフチルアクリレート、アントリルアクリレート、アントリルメチルアクリレート、フェニルアクリレート、2,2,2−トリフルオロエチルアクリレート、tert−ブチルアクリレート、ラウリルアクリレート、パルミチルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、イソボルニルアクリレート、2−メトキシエチルアクリレート、メトキシトリエチレングリコールアクリレート、2−エトキシエチルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、3−メトキシブチルアクリレート、2−メチル−2−アダマンチルアクリレート、2−プロピル−2−アダマンチルアクリレート、8−メチル−8−トリシクロデシルアクリレート、及び、8−エチル−8−トリシクロデシルアクリレート等が挙げられる。
【0058】
メタクリル酸エステル化合物としては、例えば、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、ナフチルメタクリレート、アントリルメタクリレート、アントリルメチルメタクリレート、フェニルメタクリレート、2,2,2−トリフルオロエチルメタクリレート、tert−ブチルメタクリレート、ラウリルメタクリレート、パルミチルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、イソボルニルメタクリレート、2−メトキシエチルメタクリレート、メトキシトリエチレングリコールメタクリレート、2−エトキシエチルメタクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、3−メトキシブチルメタクリレート、2−メチル−2−アダマンチルメタクリレート、2−プロピル−2−アダマンチルメタクリレート、8−メチル−8−トリシクロデシルメタクリレート、及び、8−エチル−8−トリシクロデシルメタクリレート等が挙げられる。
【0059】
ビニル化合物としては、例えば、ビニルエーテル、メチルビニルエーテル、ベンジルビニルエーテル、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、フェニルビニルエーテル、及び、プロピルビニルエーテル等が挙げられる。
【0060】
スチレン化合物としては、例えば、スチレン、メチルスチレン、クロロスチレン、ブロモスチレン等が挙げられる。
【0061】
マレイミド化合物としては、例えば、マレイミド、N−メチルマレイミド、N−フェニルマレイミド、及びN−シクロヘキシルマレイミド等が挙げられる。
【0062】
本発明の側鎖型高分子における(A−1)および(A−2)で表される光反応性側鎖の含有量は、液晶配向性といった点から、10モル%〜100モル%が好ましく、20モル%〜100モル%がより好ましく、30モル%〜100モル%が更に好ましい。
【0063】
本実施の形態の側鎖型高分子の製造方法については、特に限定されるものではなく、工業的に扱われている汎用な方法が利用できる。具体的には、(A−1)や(A−2)モノマーのビニル基を利用したカチオン重合やラジカル重合、アニオン重合により製造することができる。これらの中では反応制御のしやすさなどの観点からラジカル重合が特に好ましい。
【0064】
ラジカル重合の重合開始剤、反応温度、溶媒等の条件は、国際特許出願公開WO2014/074785等に記載された公知の条件を用いることができる。
【0065】
[ポリシロキサンの製造方法]
本発明に用いる(A)成分である重合体がポリシロキサンである場合、当該ポリシロキサンを得る方法は特に限定されない。本発明においては、上記したモノマー(A−1)及びモノマー(A−2)において、重合性基がトリアルコキシシリル基であるモノマーを必須成分とするアルコキシシラン混合物を有機溶媒中で縮合させて得られる。通常、ポリシロキサンは、このようなアルコキシシランを重縮合して、有機溶媒に均一に溶解した溶液として得られる。
【0066】
本発明では、上記したモノマー(A−1)及びモノマー(A−2)以外に、下記式(3)で表されるアルコキシシランを使用することもできる。式(3)で表されるアルコキシシランは、ポリシロキサンに種々の特性を付与させることが可能であるため、必要特性に応じて一種又は複数種を選択して用いることができる。
【0068】
(R
5は、水素原子、又はヘテロ原子、ハロゲン原子、アミノ基、グリシドキシ基、メルカプト基、イソシアネート基若しくはウレイド基で置換されていてもよい、炭素原子数1から6の炭化水素基であり、R
6は炭素原子数1から5、好ましくは1から3のアルキル基であり、nは0から3、好ましくは0から2の整数を表す。)
【0069】
式(3)で表されるアルコキシシランのR
5は水素原子又は炭素原子数が1から6の有機基(以下、第三の有機基ともいう)である。第三の有機基の例としては、脂肪族炭化水素;脂肪族環、芳香族環及びヘテロ環のような環構造;不飽和結合;及び酸素原子、窒素原子、硫黄原子等のヘテロ原子等を含んでいてもよく、分岐構造を有していてもよい、炭素原子数が1から6の有機基である。加えて、この有機基はハロゲン原子、アミノ基、グリシドキシ基、メルカプト基、イソシアネート基、ウレイド基などで置換されていてもよい。
このような式(3)で表されるアルコキシシランの具体例を挙げるが、これに限定されるものではない。
式(3)のアルコキシシランにおいて、R
5が水素原子である場合のアルコキシシランの具体例としては、トリメトキシシラン、トリエトキシシラン、トリプロポキシシラン、トリブトキシシラン等が挙げられる。
【0070】
また、式(3)のアルコキシシランにおいて、R
5が第三の有機基である場合のアルコキシシランの具体例としては、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、メチルトリプロポキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−2(アミノエチル)3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−2(アミノエチル)3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−(2−アミノエチルアミノプロピル)トリメトキシシラン、3−(2−アミノエチルアミノプロピル)トリエトキシシラン、2−アミノエチルアミノメチルトリメトキシシラン、2−(2−アミノエチルチオエチル)トリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、メルカプトメチルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、クロロプロピルトリエトキシシラン、ブロモプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、3―アミノプロピルジメチルエトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、γ-ウレイドプロピルトリエトキシシラン、γ-ウレイドプロピルトリメトキシシラン及びγ-ウレイドプロピルトリプロポキシシラン等が挙げられる。
【0071】
本発明に用いるポリシロキサンは、基板との密着性、液晶分子との親和性改善等を目的として、本発明の効果を損なわない限りにおいて、上記した式(3)で表されるアルコキシシランを一種又は複数種有していてもよい。
【0072】
式(3)で表されるアルコキシシランにおいて、nが0であるアルコキシシランは、テトラアルコキシシランである。テトラアルコキシシランは、式(1)及び式(2)で表されるアルコキシシランと縮合し易いので、本発明のポリシロキサンを得るために好ましい。
このような式(3)においてnが0であるアルコキシシランとしては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン又はテトラブトキシシランがより好ましく、特に、テトラメトキシシラン又はテトラエトキシシランが好ましい。
【0073】
ポリシロキサンを重縮合する方法は、国際特許出願公開WO2010/126108等に記載された方法を用いることができる。
【0074】
[重合体の回収]
上述の反応により得られた、液晶性を発現し得る感光性の側鎖型高分子の反応溶液から、生成した高分子を回収する場合には、反応溶液を貧溶媒に投入して、それら重合体を沈殿させれば良い。沈殿に用いる貧溶媒としては、メタノール、アセトン、ヘキサン、ヘプタン、ブチルセルソルブ、ヘプタン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、エタノール、トルエン、ベンゼン、ジエチルエーテル、メチルエチルエーテル、水等を挙げることができる。貧溶媒に投入して沈殿させた重合体は、濾過して回収した後、常圧あるいは減圧下で、常温あるいは加熱して乾燥することができる。また、沈殿回収した重合体を、有機溶媒に再溶解させ、再沈殿回収する操作を2回〜10回繰り返すと、重合体中の不純物を少なくすることができる。この際の貧溶媒として、例えば、アルコール類、ケトン類、炭化水素等が挙げられ、これらの中から選ばれる3種類以上の貧溶媒を用いると、より一層精製の効率が上がるので好ましい。
【0075】
本発明の(A)側鎖型高分子の分子量は、得られる塗膜の強度、塗膜形成時の作業性、および塗膜の均一性を考慮した場合、GPC(Gel Permeation Chromatography)法で測定した重量平均分子量が、2000〜1000000が好ましく、より好ましくは、5000〜100000である。
【0076】
<有機溶媒>
本発明に用いられる重合体組成物に用いる有機溶媒は、樹脂成分を溶解させる有機溶媒であれば特に限定されない。その具体例を以下に挙げる。
N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、N−メチルカプロラクタム、2−ピロリドン、N−エチルピロリドン、N−ビニルピロリドン、ジメチルスルホキシド、テトラメチル尿素、ピリジン、ジメチルスルホン、ヘキサメチルスルホキシド、γ−ブチロラクトン、3−メトキシ−N,N−ジメチルプロパンアミド、3−エトキシ−N,N−ジメチルプロパンアミド、3−ブトキシ−N,N−ジメチルプロパンアミド、1,3−ジメチル−イミダゾリジノン、エチルアミルケトン、メチルノニルケトン、メチルエチルケトン、メチルイソアミルケトン、メチルイソプロピルケトン、シクロヘキサノン、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジグライム、4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノン、プロピレングリコールモノアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコール−tert−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノアセテートモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノアセテートモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノアセテートモノプロピルエーテル、3−メチル−3−メトキシブチルアセテート、トリプロピレングリコールメチルエーテル等が挙げられる。これらは単独で使用しても、混合して使用してもよい。
【0077】
<液晶配向剤>
上記基板の電極が形成された側に、液晶配向剤を塗布する。
本発明の液晶配向剤は、本発明による重合体組成物を用いるものであり、(A)上記モノマー(A−1)及びモノマー(A−2)を含むモノマー混合物から得られる共重合体を含有する。
【0078】
[液晶配向剤の調製]
本発明に用いられる液晶配向剤は、液晶配向膜の形成に好適となるように塗布液として調製されることが好ましい。すなわち、本発明に用いられる液晶配向剤は、樹脂被膜を形成するための樹脂成分が有機溶媒に溶解した溶液として調製されることが好ましい。ここで、その樹脂成分とは、既に説明した(A)成分である側鎖型高分子を含む樹脂成分である。その際、樹脂成分の含有量は、1質量%〜20質量%が好ましく、より好ましくは3質量%〜15質量%、特に好ましくは3質量%〜10質量%である。
【0079】
本発明の液晶配向剤において、前述の樹脂成分は、全てが(A)成分である側鎖型高分子であってもよいが、液晶配向能を損なわない範囲でそれら以外の他の重合体が混合されていてもよい。その際、樹脂成分中における他の重合体の含有量は、0.5質量%〜80質量%、好ましくは1質量%〜50質量%である。
そのような他の重合体は、例えば、ポリ(メタ)アクリレートやポリアミック酸やポリイミド等からなり、(A)成分である側鎖型高分子以外の重合体等が挙げられる。
【0080】
本発明に用いられる重合体組成物は、上記(A)成分である側鎖型高分子及び有機溶媒以外の成分を含有してもよい。その例としては、液晶配向剤を塗布した際の、膜厚均一性や表面平滑性を向上させる溶媒や化合物、液晶配向膜と基板との密着性を向上させる化合物等を挙げることができるが、これに限定されない。
【0081】
膜厚の均一性や表面平滑性を向上させる溶媒(貧溶媒)の具体例としては、次のものが挙げられる。
例えば、イソプロピルアルコール、メトキシメチルペンタノール、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、ブチルカルビトール、エチルカルビトール、エチルカルビトールアセテート、エチレングリコール、エチレングリコールモノアセテート、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコール−tert−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノアセテートモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノアセテートモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノアセテートモノプロピルエーテル、3−メチル−3−メトキシブチルアセテート、トリプロピレングリコールメチルエーテル、3−メチル−3−メトキシブタノール、ジイソプロピルエーテル、エチルイソブチルエーテル、ジイソブチレン、アミルアセテート、ブチルブチレート、ブチルエーテル、ジイソブチルケトン、メチルシクロへキセン、プロピルエーテル、ジヘキシルエーテル、1−ヘキサノール、n−へキサン、n−ペンタン、n−オクタン、ジエチルエーテル、乳酸メチル、乳酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、酢酸プロピレングリコールモノエチルエーテル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸メチルエチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸、3−メトキシプロピオン酸、3−メトキシプロピオン酸プロピル、3−メトキシプロピオン酸ブチル、1−メトキシ−2−プロパノール、1−エトキシ−2−プロパノール、1−ブトキシ−2−プロパノール、1−フェノキシ−2−プロパノール、プロピレングリコールモノアセテート、プロピレングリコールジアセテート、プロピレングリコール−1−モノメチルエーテル−2−アセテート、プロピレングリコール−1−モノエチルエーテル−2−アセテート、ジプロピレングリコール、2−(2−エトキシプロポキシ)プロパノール、乳酸メチルエステル、乳酸エチルエステル、乳酸n−プロピルエステル、乳酸n−ブチルエステル、乳酸イソアミルエステル等の低表面張力を有する溶媒等が挙げられる。
【0082】
これらの貧溶媒は、1種類でも複数種類を混合して用いてもよい。上述のような溶媒を用いる場合は、重合体組成物に含まれる溶媒全体の溶解性を著しく低下させることが無いように、溶媒全体の5質量%〜80質量%であることが好ましく、より好ましくは20質量%〜60質量%である。
【0083】
膜厚の均一性や表面平滑性を向上させる化合物としては、フッ素系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤およびノ二オン系界面活性剤等が挙げられる。
より具体的には、例えば、エフトップ(登録商標)301、EF303、EF352(トーケムプロダクツ社製)、メガファック(登録商標)F171、F173、R−30(DIC社製)、フロラードFC430、FC431(住友スリーエム社製)、アサヒガード(登録商標)AG710(旭硝子社製)、サーフロン(登録商標)S−382、SC101、SC102、SC103、SC104、SC105、SC106(AGCセイミケミカル社製)等が挙げられる。これらの界面活性剤の使用割合は、重合体組成物に含有される樹脂成分の100質量部に対して、好ましくは0.01質量部〜2質量部、より好ましくは0.01質量部〜1質量部である。
【0084】
液晶配向膜と基板との密着性を向上させる化合物の具体例としては、次に示す官能性シラン含有化合物などが挙げられる。
例えば、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、2−アミノプロピルトリメトキシシラン、2−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリメトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、N−エトキシカルボニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−エトキシカルボニル−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−トリエトキシシリルプロピルトリエチレントリアミン、N−トリメトキシシリルプロピルトリエチレントリアミン、10−トリメトキシシリル−1,4,7−トリアザデカン、10−トリエトキシシリル−1,4,7−トリアザデカン、9−トリメトキシシリル−3,6−ジアザノニルアセテート、9−トリエトキシシリル−3,6−ジアザノニルアセテート、N−ベンジル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−ベンジル−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−ビス(オキシエチレン)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−ビス(オキシエチレン)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。
【0085】
さらに、基板と液晶配向膜の密着性の向上に加え、液晶表示素子を構成した時のバックライトによる電気特性の低下等を防ぐ目的で、以下のようなフェノプラスト系やエポキシ基含有化合物の添加剤を、液晶配向剤中に含有させても良い。具体的なフェノプラスト系添加剤を以下に示すが、この構造に限定されない。
【0087】
具体的なエポキシ基含有化合物としては、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、トリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、2,2−ジブロモネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,3,5,6−テトラグリシジル−2,4−ヘキサンジオール、N,N,N’,N’,−テトラグリシジル−m−キシレンジアミン、1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、N,N,N’,N’,−テトラグリシジル−4、4’−ジアミノジフェニルメタンなどが例示される。
【0088】
基板との密着性を向上させる化合物を使用する場合、その使用量は、液晶配向剤に含有される樹脂成分の100質量部に対して0.1質量部〜30質量部であることが好ましく、より好ましくは1質量部〜20質量部である。使用量が0.1質量部未満であると密着性向上の効果は期待できず、30質量部よりも多くなると液晶の配向性が悪くなる場合がある。
【0089】
添加剤として、光増感剤を用いることもできる。無色増感剤および三重項増感剤が好ましい。
光増感剤としては、芳香族ニトロ化合物、クマリン(7−ジエチルアミノ−4−メチルクマリン、7−ヒドロキシ4−メチルクマリン)、ケトクマリン、カルボニルビスクマリン、芳香族2−ヒドロキシケトン、およびアミノ置換された、芳香族2−ヒドロキシケトン(2−ヒドロキシベンゾフェノン、モノ−もしくはジ−p−(ジメチルアミノ)−2−ヒドロキシベンゾフェノン)、アセトフェノン、アントラキノン、キサントン、チオキサントン、ベンズアントロン、チアゾリン(2−ベンゾイルメチレン−3−メチル−β−ナフトチアゾリン、2−(β−ナフトイルメチレン)−3−メチルベンゾチアゾリン、2−(α−ナフトイルメチレン)−3−メチルベンゾチアゾリン、2−(4−ビフェノイルメチレン)−3−メチルベンゾチアゾリン、2−(β−ナフトイルメチレン)−3−メチル−β−ナフトチアゾリン、2−(4−ビフェノイルメチレン)−3−メチル−β−ナフトチアゾリン、2−(p−フルオロベンゾイルメチレン)−3−メチル−β−ナフトチアゾリン)、オキサゾリン(2−ベンゾイルメチレン−3−メチル−β−ナフトオキサゾリン、2−(β−ナフトイルメチレン)−3−メチルベンゾオキサゾリン、2−(α−ナフトイルメチレン)−3−メチルベンゾオキサゾリン、2−(4−ビフェノイルメチレン)−3−メチルベンゾオキサゾリン、2−(β−ナフトイルメチレン)−3−メチル−β−ナフトオキサゾリン、2−(4−ビフェノイルメチレン)−3−メチル−β−ナフトオキサゾリン、2−(p−フルオロベンゾイルメチレン)−3−メチル−β−ナフトオキサゾリン)、ベンゾチアゾール、ニトロアニリン(m−もしくはp−ニトロアニリン、2,4,6−トリニトロアニリン)またはニトロアセナフテン(5−ニトロアセナフテン)、(2−[(m−ヒドロキシ−p−メトキシ)スチリル]ベンゾチアゾール、ベンゾインアルキルエーテル、N−アルキル化フタロン、アセトフェノンケタール(2,2−ジメトキシフェニルエタノン)、ナフタレン、アントラセン(2−ナフタレンメタノール、2−ナフタレンカルボン酸、9−アントラセンメタノール、および9−アントラセンカルボン酸)、ベンゾピラン、アゾインドリジン、メロクマリン等がある。
好ましくは、芳香族2−ヒドロキシケトン(ベンゾフェノン)、クマリン、ケトクマリン、カルボニルビスクマリン、アセトフェノン、アントラキノン、キサントン、チオキサントン、およびアセトフェノンケタールである。
【0090】
本発明の液晶配向膜を有する基板の製造方法は、
[I] (A)側鎖型高分子、及び有機溶媒を含有する液晶配向剤を、透明電極を有する基板上に塗布して塗膜を形成する工程;
[II] [I]で得られた塗膜に偏光した紫外線を照射する工程;及び
[III] [II]で得られた塗膜を加熱する工程;
を有する。
上記工程により、配向制御能が付与された液晶表示素子用液晶配向膜を得ることができ、該液晶配向膜を有する基板を得ることができる。
【0091】
また、上記得られた基板(第1の基板)の他に、第2の基板を準備することにより、液晶表示素子を得ることができる。
第2の基板は、透明電極を有する第二の基板に、上記工程[I]〜[III]を用いることにより、配向制御能が付与された液晶配向膜を有する第2の基板を得ることができる。
【0092】
ツイストネマチック型液晶表示素子及びOCB型液晶表示素子の製造方法は、
[IV] 上記で得られた第1及び第2の基板を、液晶を介して第1及び第2の基板の液晶配向膜が相対するように、対向配置して液晶表示素子を得る工程;
を有する。これによりツイストネマチック型液晶表示素子を得ることができる。
【0093】
以下、本発明の製造方法の有する[I]〜[III]、および[IV]の各工程について説明する。
<工程[I]>
工程[I]では、液晶駆動用の電極を有する基板上に、(A)側鎖型高分子、及び有機溶媒を含有する液晶配向剤を塗布して塗膜を形成する。
【0094】
<基板>
基板については、特に限定はされないが、製造される液晶表示素子が透過型である場合、透明性の高い基板が用いられることが好ましい。その場合、特に限定はされず、ガラス基板、またはアクリル基板やポリカーボネート基板等のプラスチック基板等を用いることができる。
液晶駆動のための電極としてはITO(Indium Tin Oxide:酸化インジウムスズ)、IZO(Indium Zinc Oxide:酸化インジウム亜鉛)などが好ましい。また、反射型の液晶表示素子では片側の基板のみにならばシリコンウエハー等の不透明な物でも使用でき、この場合の電極はアルミ等の光を反射する材料も使用できる。
基板に電極を形成する方法は、従来公知の手法を用いることができる。
【0095】
上述した液晶配向剤を液晶駆動用の電極を有する基板上に塗布する方法は特に限定されない。
塗布方法は、工業的には、スクリーン印刷、オフセット印刷、フレキソ印刷またはインクジェット法などで行う方法が一般的である。その他の塗布方法としては、ディップ法、ロールコータ法、スリットコータ法、スピンナ法(回転塗布法)またはスプレー法などがあり、目的に応じてこれらを用いてもよい。
【0096】
液晶駆動用の電極を有する基板上に液晶配向剤を塗布した後は、ホットプレート、熱循環型オーブンまたはIR(赤外線)型オーブンなどの加熱手段により50〜230℃、好ましくは50〜200℃で0.4分間〜60分間、好ましくは0.5分間〜10分間溶媒を蒸発させて塗膜を得ることができる。このときの乾燥温度は、(A)成分である側鎖型高分子の側鎖型高分子が液晶性を発現する温度(以下、液晶発現温度という)の温度範囲内よりも低いことが好ましい。
塗膜の厚みは、厚すぎると液晶表示素子の消費電力の面で不利となり、薄すぎると液晶表示素子の信頼性が低下する場合があるので、好ましくは5nm〜300nm、より好ましくは10nm〜150nmである。
尚、[I]工程の後、続く[II]工程の前に塗膜の形成された基板を室温にまで冷却する工程を設けることも可能である。
【0097】
<工程[II]>
工程[II]では、工程[I]で得られた塗膜に、斜め方向から偏光した紫外線を照射する。塗膜の膜面に偏光した紫外線を照射する場合、基板に対して一定の方向から偏光板を介して偏光された紫外線を照射する。使用する紫外線としては、波長100nm〜400nmの範囲の紫外線を使用することができる。好ましくは、使用する塗膜の種類によりフィルター等を介して最適な波長を選択する。そして、例えば、選択的に光架橋反応を誘起できるように、波長290nm〜400nmの範囲の紫外線を選択して使用することができる。紫外線としては、例えば、高圧水銀灯から放射される光を用いることができる。
【0098】
偏光した紫外線の照射量は、使用する塗膜に依存する。照射量は、該塗膜における、偏光した紫外線の偏光方向と平行な方向の紫外線吸光度と垂直な方向の紫外線吸光度との差であるΔAの最大値(以下、ΔAmaxとも称する)を実現する偏光紫外線の量の1%〜70%の範囲内とすることが好ましく、1%〜50%の範囲内とすることがより好ましい。
【0099】
偏光した紫外線の照射方向は、通常、基板に対して1°から89°であるが、好ましくは10°〜80°、特に好ましくは20°〜70°である。この角度が小さすぎる場合はプレチルト角が小さくなるという問題があり、大きすぎる場合はプレチルト角が高くなるという問題がある。
【0100】
照射方向を上記の角度に調節する方法としては、基板自体を傾ける方法と、光源を傾ける方法があるが、光源自体を傾けるのがスループットの観点からより好ましい。
【0101】
得られるプレチルト角としては、ツイストネマスチックモードに適したプレチルト角として1°〜20°が好ましく、2°〜15°がさらに好ましい。
【0102】
なお、本発明では、上記工程[II]の照射量、照射時間またはその両方を調節することにより、チルト角を制御することも可能である。
【0103】
<工程[III]>
工程[III]では、工程[II]で偏光した紫外線の照射された塗膜を加熱する。加熱により、塗膜に配向制御能を付与することができる。
加熱は、ホットプレート、熱循環型オーブンまたはIR(赤外線)型オーブンなどの加熱手段を用いることができる。加熱温度は、使用する塗膜の液晶性を発現させる温度を考慮して決めることができる。
【0104】
加熱温度は、側鎖型高分子が液晶性を発現する温度(以下、液晶発現温度という)の温度範囲内であることが好ましい。塗膜のような薄膜表面の場合、塗膜表面の液晶発現温度は、(A)成分である側鎖型高分子をバルクで観察した場合の液晶発現温度よりも低いことが予想される。このため、加熱温度は、塗膜表面の液晶発現温度の温度範囲内であることがより好ましい。すなわち、偏光紫外線照射後の加熱温度の温度範囲は、使用する側鎖型高分子の液晶発現温度の温度範囲の下限より10℃低い温度を下限とし、その液晶温度範囲の上限より10℃低い温度を上限とする範囲の温度であることが好ましい。加熱温度が、上記温度範囲よりも低いと、塗膜における熱による異方性の増幅効果が不十分となる傾向があり、また加熱温度が、上記温度範囲よりも高すぎると、塗膜の状態が等方性の液体状態(等方相)に近くなる傾向があり、この場合、自己組織化によって一方向に再配向することが困難になることがある。
【0105】
なお、液晶発現温度は、側鎖型高分子または塗膜表面が固体相から液晶相に相転移がおきるガラス転移温度(Tg)以上であって、液晶相からアイソトロピック相(等方相)に相転移を起こすアイソトロピック相転移温度(Tiso)以下の温度をいう。
【0106】
また、本発明では、上記工程[III]の加熱温度、加熱時間またはその両方を調節することにより、チルト角を制御することも可能である。
【0107】
加熱後に形成される塗膜の厚みは、工程[I]で記した同じ理由から、好ましくは5nm〜300nm、より好ましくは50nm〜150nmであるのがよい。
【0108】
以上の工程を有することにより、本発明の製造方法では、高効率な、塗膜への異方性の導入を実現することができる。そして、高効率に液晶配向膜付基板を製造することができる。
【0109】
<工程[IV]>
[IV]工程は、基板の液晶配向膜が形成された側が対向するように配置された2枚の[III]で得られた基板と、基板間に設けられた液晶層と、基板と液晶層との間に設けられ本発明の液晶配向剤により形成された上記液晶配向膜とを有する液晶セルを具備する液晶表示素子である。このような本発明の液晶表示素子としては、ツイストネマティック(TN:Twisted Nematic)方式、垂直配向(VA:Vertical Alignment)方式や、水平配向(IPS:In-Plane Switching)方式、OCB配向(OCB:Optically Compensated Bend)等、種々のものが挙げられる。
【0110】
液晶セル又は液晶表示素子の作製の一例を挙げるならば、上述の第1及び第2の基板を用意し、片方の基板の液晶配向膜上にスペーサを散布し、液晶配向膜面が内側になるようにして、紫外線露光方向が互いに直交するようにもう片方の基板を貼り合わせ、液晶を減圧注入して封止する方法、または、スペーサを散布した液晶配向膜面に液晶を滴下した後に、基板を貼り合わせて封止を行う方法、等を例示することができる。このときのスペーサの径は、好ましくは1μm〜30μm、より好ましくは2μm〜10μmである。このスペーサ径が、液晶層を挟持する一対の基板間距離、すなわち、液晶層の厚みを決めることになる。
【0111】
得られた液晶表示素子は、さらに配向安定性のためにアニール処理をすることが好ましい。加熱温度は液晶の相転移温度である、好ましくは10〜160℃、より好ましくは50〜140℃であるのがよい。
【0112】
本発明の塗膜付基板の製造方法は、液晶配向剤を基板上に塗布し塗膜を形成した後、偏光した紫外線を照射する。次いで、加熱を行うことにより側鎖型高分子膜への高効率な異方性の導入を実現し、液晶の配向制御能を備えた液晶配向膜付基板を製造する。
本発明に用いる塗膜では、側鎖の光反応と液晶性に基づく自己組織化によって誘起される分子再配向の原理を利用して、塗膜への高効率な異方性の導入を実現する。本発明の製造方法では、側鎖型高分子に光反応性基として光架橋性基を有する構造の場合、側鎖型高分子を用いて基板上に塗膜を形成した後、偏光した紫外線を照射し、次いで、加熱を行った後、液晶表示素子を作成する。
【0113】
したがって、本発明の方法に用いる塗膜は、塗膜への偏光した紫外線の照射と加熱処理を順次行うことにより、高効率に異方性が導入され、配向制御能に優れた液晶配向膜とすることができる。
【0114】
そして、本発明の方法に用いる塗膜では、塗膜への偏光した紫外線の照射量と、加熱処理における加熱温度を最適化する。それにより高効率な、塗膜への異方性の導入を実現することができる。
【0115】
本発明に用いられる塗膜への高効率な異方性の導入に最適な偏光紫外線の照射量は、その塗膜において感光性基が光架橋反応や光異性化反応する量を最適にする偏光紫外線の照射量に対応する。本発明に用いられる塗膜に対して偏光した紫外線を照射した結果、光架橋反応や光異性化反応する側鎖の感光性基が少ないと、十分な光反応量とならない。その場合、その後に加熱しても十分な自己組織化は進行しない。一方、本発明に用いられる塗膜で、光架橋性基を有する構造に対して偏光した紫外線を照射した結果、架橋反応する側鎖の感光性基が過剰となると側鎖間での架橋反応が進行しすぎることになる。その場合、得られる膜は剛直になって、その後の加熱による自己組織化の進行の妨げとなることがある。
【0116】
したがって、本発明に用いられる塗膜において、偏光紫外線の照射によって側鎖の感光性基が光架橋反応や光異性化反応する最適な量は、その側鎖型高分子膜の有する感光性基の0.1モル%〜60モル%にすることが好ましく、0.1モル%〜40モル%にすることがより好ましい。光反応する側鎖の感光性基の量をこのような範囲にすることにより、その後の加熱処理での自己組織化が効率良く進み、膜中での高効率な異方性の形成が可能となる。
【0117】
本発明の方法に用いる塗膜では、偏光した紫外線の照射量の最適化により、側鎖型高分子膜の側鎖における、感光性基の光架橋反応や光異性化反応、または光フリース転位反応の量を最適化する。そして、その後の加熱処理と併せて、高効率な、本発明に用いられる塗膜への異方性の導入を実現する。その場合、好適な偏光紫外線の量については、本発明に用いられる塗膜の紫外吸収の評価に基づいて行うことが可能である。
【0118】
すなわち、本発明に用いられる塗膜について、偏光紫外線照射後の、偏光した紫外線の偏光方向と平行な方向の紫外線吸収と、垂直な方向の紫外線吸収とをそれぞれ測定する。紫外吸収の測定結果から、その塗膜における、偏光した紫外線の偏光方向と平行な方向の紫外線吸光度と垂直な方向の紫外線吸光度との差であるΔAを評価する。そして、本発明に用いられる塗膜において実現されるΔAの最大値(ΔAmax)とそれを実現する偏光紫外線の照射量を求める。本発明の製造方法では、このΔAmaxを実現する偏光紫外線照射量を基準として、液晶配向膜の製造において照射する、好ましい量の偏光した紫外線量を決めることができる。
【0119】
本発明の製造方法では、本発明に用いられる塗膜への偏光した紫外線の照射量を、ΔAmaxを実現する偏光紫外線の量の1%〜70%の範囲内とすることが好ましく、1%〜50%の範囲内とすることがより好ましい。本発明に用いられる塗膜において、ΔAmaxを実現する偏光紫外線の量の1%〜50%の範囲内の偏光紫外線の照射量は、その側鎖型高分子膜の有する感光性基全体の0.1モル%〜20モル%を光架橋反応させる偏光紫外線の量に相当する。
【0120】
以上より、本発明の製造方法では、塗膜への高効率な異方性の導入を実現するため、その側鎖型高分子の液晶温度範囲を基準として、上述したような好適な加熱温度を定めるのがよい。したがって、例えば、本発明に用いられる側鎖型高分子の液晶温度範囲が100℃〜200℃である場合、偏光紫外線照射後の加熱の温度を90℃〜190℃とすることが望ましい。こうすることにより、本発明に用いられる塗膜において、より大きな異方性が付与されることになる。
【0121】
こうすることにより、本発明によって提供される液晶表示素子は光や熱などの外部ストレスに対して高い信頼性を示すことになる。
【0122】
以上のようにして、本発明の方法によって製造されたツイストネマチック型液晶表示素子用基板又は該基板を有する液晶表示素子、OCB型液晶表示素子用基板又は該基板を有する液晶表示素子は、信頼性に優れたものとなり、大画面で高精細の液晶テレビなどに好適に利用できる。また、液晶アンテナ、調光素子等にも有用である。
【0123】
以下、実施例を用いて本発明を説明するが、本発明は、該実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0124】
実施例で使用する略号は以下のとおりである。
<メタクリルモノマー>
【0125】
【化10】
【0126】
MA−1は非特許文献(Macromolecules 2002, 35, 706-713)に記載の合成法にて合成した。
MA−2は英国特許GB2306470Bに記載の合成法にて合成した。
MA−3は非特許文献(Macromolecules 2007, 40, 6355-6360)に記載の合成法にて合成した。
MA−4は国際特許出願公開WO2014/054785号パンフレットに記載の合成法にて合成した。
MA−5は特許文献(特開平9−118717)に記載の合成法にて合成した。
MA−6は東京化成工業株式会社より購入して使用した。
MA−7は東京化成工業株式会社より購入して使用した。
MA−8は東京化成工業株式会社より購入して使用した。
MA−9はシグマアルドリッチジャパンより購入して使用した。
【0127】
<有機溶媒>
THF:テトラヒドロフラン
NMP:N−メチル−2−ピロリドン
BCS:ブチルセロソルブ
BCA:ブチルセロソルブアセテート
CHN:シクロヘキサノン
GBL:γ−ブチルラクトン
PGME:プロピレングリコールモノメチルエーテル
PGMEA:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
<重合開始剤>
AIBN:2,2’−アゾビスイソブチロニトリル
【0128】
<合成例1: メタクリルポリマー>
MA−1(21g:40mmol)、MA−2(26g:60mmol)をTHF(270g)中に溶解し、ダイアフラムポンプで脱気を行った後、AIBN(0.5g:3mmol)を加え再び脱気を行った。この後、60℃で6時間反応させメタクリレートのポリマー溶液を得た。このポリマー溶液をメタノール(2000ml)に滴下し、得られた沈殿物をろ過した。この沈澱物をメタノールで洗浄し、減圧乾燥しメタクリレートポリマー粉末P1を得た。
【0129】
表1に示す条件にて合成例2、3に関しても、合成例1と同様の方法を用いてメタクリレートポリマー粉末P2、P3を作製した。
【0130】
<合成例4: メタクリルポリマー>
MA−3(23g:40mmol)、MA−2(26g:60mmol)をTHF(282g)中に溶解し、ダイアフラムポンプで脱気を行った後、AIBN(0.5g:3mmol)を加え再び脱気を行った。この後、60℃で6時間反応させメタクリレートのポリマー溶液を得た。このポリマー溶液をメタノール(2000ml)に滴下し、得られた沈殿物をろ過した。この沈澱物をメタノールで洗浄し、減圧乾燥しメタクリレートポリマー粉末P4を得た。
【0131】
表1に示す条件にて合成例5に関しても、合成例4と同様の方法を用いてメタクリレートポリマー粉末P5を作製した。
【0132】
<合成例6: メタクリルポリマー>
MA−3(23g:40mmol)、MA−4(31g:60mmol)をTHF(310g)中に溶解し、ダイアフラムポンプで脱気を行った後、AIBN(0.5g:3mmol)を加え再び脱気を行った。この後、60℃で6時間反応させメタクリレートのポリマー溶液を得た。このポリマー溶液をメタノール(2000ml)に滴下し、得られた沈殿物をろ過した。この沈澱物をメタノールで洗浄し、減圧乾燥しメタクリレートポリマー粉末P6を得た。
【0133】
表1に示す条件にて合成例7に関しても、合成例6と同様の方法を用いてメタクリレートポリマー粉末P7を作製した。
【0134】
<合成例8: メタクリルポリマー>
MA−1(21g:40mmol)、MA−2(13g:30mmol)、MA−4(9g:30mmol)をTHF(246g)中に溶解し、ダイアフラムポンプで脱気を行った後、AIBN(0.5g:3mmol)を加え再び脱気を行った。この後、60℃で6時間反応させメタクリレートのポリマー溶液を得た。このポリマー溶液をメタノール(2000ml)に滴下し、得られた沈殿物をろ過した。この沈澱物をメタノールで洗浄し、減圧乾燥しメタクリレートポリマー粉末P8を得た。
【0135】
表1に示す条件にて合成例9に関しても、合成例8と同様の方法を用いてメタクリレートポリマー粉末P9を作製した。
【0136】
<合成例10: メタクリルポリマー>
MA−1(21g:40mmol)、MA−2(26g:60mmol)、MA−5(2g:20mmol)をTHF(280g)中に溶解し、ダイアフラムポンプで脱気を行った後、AIBN(0.5g:3mmol)を加え再び脱気を行った。この後、60℃で6時間反応させメタクリレートのポリマー溶液を得た。このポリマー溶液をメタノール(2000ml)に滴下し、得られた沈殿物をろ過した。この沈澱物をメタノールで洗浄し、減圧乾燥しメタクリレートポリマー粉末P10を得た。
【0137】
表1に示す条件にて合成例11に関しても、合成例10と同様の方法を用いてメタクリレートポリマー粉末P11を作製した。
【0138】
<合成例12: メタクリルポリマー>
MA−1(21g:40mmol)、MA−2(26g:60mmol)、MA−7(3g:10mmol)をTHF(283g)中に溶解し、ダイアフラムポンプで脱気を行った後、AIBN(0.5g:3mmol)を加え再び脱気を行った。この後、60℃で6時間反応させメタクリレートのポリマー溶液を得た。このポリマー溶液をメタノール(2000ml)に滴下し、得られた沈殿物をろ過した。この沈澱物をメタノールで洗浄し、減圧乾燥しメタクリレートポリマー粉末P12を得た。
【0139】
表1に示す条件にて合成例13、14に関しても、合成例12のMA−7をMA−8、MA−9に置き代えた以外は同様の方法を用いてメタクリレートポリマー粉末P13、14を作製した。
【0140】
<合成例15: メタクリルポリマー>
MA−3(34g:60mmol)、MA−2(9g:20mmol)、MA−5(6g:20mmol)をTHF(282g)中に溶解し、ダイアフラムポンプで脱気を行った後、AIBN(0.5g:3mmol)を加え再び脱気を行った。この後、60℃で6時間反応させメタクリレートのポリマー溶液を得た。このポリマー溶液をメタノール(2000ml)に滴下し、得られた沈殿物をろ過した。この沈澱物をメタノールで洗浄し、減圧乾燥しメタクリレートポリマー粉末P15を得た。
【0141】
<合成例16: メタクリルポリマー>
MA−1(21g:40mmol)、MA−5(6g:60mmol)をTHF(154g)中に溶解し、ダイアフラムポンプで脱気を行った後、AIBN(0.5g:3mmol)を加え再び脱気を行った。この後、60℃で6時間反応させメタクリレートのポリマー溶液を得た。このポリマー溶液をメタノール(2000ml)に滴下し、得られた沈殿物をろ過した。この沈澱物をメタノールで洗浄し、減圧乾燥しメタクリレートポリマー粉末P16を得た。
【0142】
表1に示す条件にて合成例17に関しても、合成例16と同様の方法を用いてメタクリレートポリマー粉末P17を作製した。
【0143】
<合成例18: メタクリルポリマー>
MA−3(46g:80mmol)、MA−5(6g:20mmol)をTHF(297g)中に溶解し、ダイアフラムポンプで脱気を行った後、AIBN(0.5g:3mmol)を加え再び脱気を行った。この後、60℃で6時間反応させメタクリレートのポリマー溶液を得た。このポリマー溶液をメタノール(2000ml)に滴下し、得られた沈殿物をろ過した。この沈澱物をメタノールで洗浄し、減圧乾燥しメタクリレートポリマー粉末P18を得た。
【0144】
<合成例19: メタクリルポリマー>
MA−2(44g:100mmol)をTHF(251g)中に溶解し、ダイアフラムポンプで脱気を行った後、AIBN(0.5g:3mmol)を加え再び脱気を行った。この後、60℃で6時間反応させメタクリレートのポリマー溶液を得た。このポリマー溶液をメタノール(2000ml)に滴下し、得られた沈殿物をろ過した。この沈澱物をメタノールで洗浄し、減圧乾燥しメタクリレートポリマー粉末P19を得た。
【0145】
表1に示す条件にて合成例20に関しても、合成例19のMA−2をMA−3に置き代えた以外は同様の方法を用いてメタクリレートポリマー粉末P21を作製した。
【0146】
<液晶配向剤の作製:A1>
上記合成例1にて得られたメタクリレートポリマー粉末P1(0.6g)にNMP(11.4g)を加え、室温で1時間攪拌して溶解させた。この溶液に、BCS(3.0g)を加え、固形分濃度が4.0wt%、のポリマー溶液(A1)を得た。このポリマー溶液は、そのまま液晶配向膜を形成するための液晶配向剤となる。
【0147】
表1に示す条件にて液晶配向剤A2、A3、A5、A11、A12、A16〜A20、及に関しても、液晶配向剤A1と同様の方法を用い液晶配向剤を作製した。
【0148】
<液晶配向剤の作製:B1>
上記合成例1にて得られたメタクリレートポリマー粉末P16(0.6g)にNMP(11.4g)を加え、室温で1時間攪拌して溶解させた。この溶液に、BCS(3.0g)を加え、固形分濃度が4.0wt%、のポリマー溶液(B1)を得た。このポリマー溶液は、そのまま液晶配向膜を形成するための液晶配向剤となる。
【0149】
表1に示す条件にて液晶配向剤B2、B4、B5に関しても、液晶配向剤B1と同様の方法を用い液晶配向剤を作製した。
【0150】
<液晶配向剤の作製:A4>
上記合成例1にて得られたメタクリレートポリマー粉末P3(0.6g)にNMP(9.9g)を加え、室温で1時間攪拌して溶解させた。この溶液に、BCA(4.5g)を加え、固形分濃度が4.0wt%、のポリマー溶液(A4)を得た。このポリマー溶液は、そのまま液晶配向膜を形成するための液晶配向剤となる。
【0151】
表1に示す条件にて液晶配向剤A6、A7、A13に関しても、液晶配向剤A4と同様の方法を用い液晶配向剤を作製した。
【0152】
<液晶配向剤の作製:A8>
上記合成例1にて得られたメタクリレートポリマー粉末P5(0.6g)にCHN(11.4g)を加え、温度50℃で加温しながら1時間攪拌して溶解させた。この溶液に、PGME(3.0g)を加え、固形分濃度が4.0wt%、のポリマー溶液(A8)を得た。このポリマー溶液は、そのまま液晶配向膜を形成するための液晶配向剤となる。
【0153】
表1に示す条件にて液晶配向剤A9に関しても、液晶配向剤A8のPGMEをPGMEAに置き代えた以外は同様の方法を用い液晶配向剤を作製した。
【0154】
<液晶配向剤の作製:A10>
上記合成例1にて得られたメタクリレートポリマー粉末P5(0.6g)にCHN(15.0g)を加え、温度50℃で加温しながら1時間攪拌して溶解させ、固形分濃度が4.0wt%、のポリマー溶液(A10)を得た。このポリマー溶液は、そのまま液晶配向膜を形成するための液晶配向剤となる。
【0155】
表1に示す条件にて液晶配向剤A15、A21に関しても、液晶配向剤A10と同様の方法を用い液晶配向剤を作製した。
【0156】
<液晶配向剤の作製:A14>
上記合成例1にて得られたメタクリレートポリマー粉末P9(0.6g)にNMP(5.4g)を加え、室温で1時間攪拌して溶解させた。この溶液に、GBL(4.5g)、BCA(4.5g)を加え、固形分濃度が4.0wt%、のポリマー溶液(A14)を得た。このポリマー溶液は、そのまま液晶配向膜を形成するための液晶配向剤となる。
【0157】
表1に示す条件にて液晶配向剤B3に関しても、液晶配向剤A14のBCAをBCSに置き代えた以外は同様の方法を用い液晶配向剤を作製した。
【0158】
【表1】
【0159】
<面内配向度(In-plane order parameter)測定用基板の作成>
上記で得られた液晶配向剤を用いて下記に示すような手順で光反応率測定用基板の作製を行った。基板は、40mm×40mmの大きさで、厚さが1.0mmの石英基板を用いた。液晶配向剤A1をフィルター孔径1.0μmのフィルターで濾過した後、石英基板上にスピンコートし、70℃のホットプレート上で90秒間乾燥後、膜厚100nmの液晶配向膜を形成した
【0160】
(実施例1)
塗膜面に偏光板を介して313nmの紫外線を80mJ/cm
2照射した後に、120℃のホットプレートで20分間加熱し、光反応済みの液晶配向膜付き基板を得た。
【0161】
表2に示す条件にて実施例2〜21及び比較例1〜5に関しても、実施例1と同様の方法を用いて面内配向度測定用基板を作成した。
【0162】
<面内配向度の測定>
上記で作製した液晶配向膜付き基板を用い、液晶配向膜の光学的異方性を測定するために、偏光の吸光度から面内配向度であるSを下式より算出した。算出値は照射量範囲内で最も高い値を用いた。
なお、吸光度の測定には、島津製作所製の紫外線可視近赤外分析光度計U−3100PCを使用した。
【0163】
【数2】
【0164】
ここで、A
paraは、照射した偏光UV方向に対して平行方向の吸光度、A
perは、照射した偏光UV方向に対して垂直方向の吸光度を表す。A
largeは、平行方向と垂直方向の吸光度を比較して値が大きい方の吸光度、A
smallは、平行方向と垂直方向の吸光度を比較して値が小さい方の吸光度を表す。面内配向度の絶対値が、1に近い程より一様な配向状態となっていることを示している。
【0165】
【表2】
【0166】
表2に示す通り、実施例1〜21の液晶配向剤を用いた場合はいずれも偏光UV方向に対して平行方向の配向度が高いことが分かる。比較例1、2で平行方向に配向しない要因は感光性基の導入量が少なく、二量化よりも異性化による配向が優位になるためと推考している。
【0167】
<液晶セルの作製>
液晶配向剤(A1)を0.45μmのフィルターで濾過した後、透明電極付きガラス基板上にスピンコートし、70℃のホットプレート上で90秒間乾燥後、膜厚100nmの液晶配向膜を形成した。
【0168】
(実施例15)
塗膜面を40°傾けて、偏光板を介し313nmの紫外線を基板80mJ/cm
2照射した後に140℃のホットプレートで20分間加熱し、液晶配向膜付き基板を得た。このような液晶配向膜付き基板を2枚用意し、一方の基板の液晶配向膜面に4μmのスペーサを設置した後、2枚の基板のラビング方向が平行になるようにして組み合わせ、液晶注入口を残して周囲をシールし、セルギャップが4μmの空セルを作製した。この空セルに減圧注入法によって、液晶MLC−2003(メルク株式会社製)を注入し、注入口を封止して、アンチパラレル液晶セルを得た。 温度120℃で30分間加熱した後、この液晶セルについてプレチルト角を測定した。
【0169】
表3に示す条件にて実施例16〜42及び比較例6〜10に関しても、実施例1と同様の方法を用いて液晶セルを作成し、プレチルト角を測定した。
【0170】
【表3】
【0171】
表3に示す通り、実施例22〜42の液晶配向剤を用いた場合はいずれもツイストネマティックモードに好適な液晶プレチルト角を得ることが可能であった。比較例6、7でプレチルト角が発現しない要因は一軸方向にチルトが発現しないためと推考している。比較例9においては良好なチルト角が発現したが、得られた液晶配向膜が白濁した。比較例10においては、ツイストネマチックモードに好適なチルト角が発現しなかった。
【0172】
液晶配向剤A10を用いて、表4に記載の条件で、実施例1と同様の方法を用いて面内配向度測定用基板を作成した。そして、上記実施例に準じて、配向度およびプレチルト角を測定したところ、表4に示すように、偏光紫外線照射量や本焼成条件によって、プレチルト角を調節しうることが明らかとなった。
【0173】
【表4】
【0174】
<液晶配向剤の作製:A22>
上記合成例15にて得られたメタクリレートポリマー粉末P15(0.6g)にNMP(8.4g)を加え、室温で1時間攪拌して溶解させた。この溶液に、BCS(6.0g)を加え、固形分濃度が4.0wt%、のポリマー溶液(A22)を得た。このポリマー溶液は、そのまま液晶配向膜を形成するための液晶配向剤となる。
【0175】
この配向剤A22を用いて、同様に配向度とプレチルト角を測定した。結果は、表5に示すように、OCBモードに最適なプレチルト角9.9°を示した。
【0176】
【表5】