特許第6957002号(P6957002)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6957002
(24)【登録日】2021年10月8日
(45)【発行日】2021年11月2日
(54)【発明の名称】荷電粒子ビーム装置
(51)【国際特許分類】
   H01J 37/20 20060101AFI20211021BHJP
【FI】
   H01J37/20 A
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2017-81650(P2017-81650)
(22)【出願日】2017年3月31日
(65)【公開番号】特開2018-174118(P2018-174118A)
(43)【公開日】2018年11月8日
【審査請求日】2020年1月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】503460323
【氏名又は名称】株式会社日立ハイテクサイエンス
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100175824
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 淳一
(72)【発明者】
【氏名】楊 宗翰
(72)【発明者】
【氏名】岩堀 敏行
【審査官】 後藤 大思
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−175908(JP,A)
【文献】 特開平07−105897(JP,A)
【文献】 特開昭60−136143(JP,A)
【文献】 実開昭53−163056(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01J 37/00−37/02
37/05
37/09−37/21
37/24−37/244
37/252−37/295
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料を保持する試料台と、
前記試料台を有するステージと、
前記試料台を駆動させる駆動源と、
前記試料に荷電粒子ビームを照射する荷電粒子ビーム鏡筒と、
前記荷電粒子ビームの照射により前記試料から発生する荷電粒子を検出する検出器と、
前記検出器で検出した信号に基づき荷電粒子像を形成する像形成手段と、を有し、
前記ステージは、前記駆動源と前記試料台との間に前記駆動源から前記試料台への動力を遮断する動力遮断機構を備え
前記ステージは、前記駆動源と前記試料台との間に前記試料台を回転させる回転軸を有し、
前記動力遮断機構は、前記回転軸の回転を空転させる空転機構であることを特徴とする荷電粒子ビーム装置。
【請求項2】
試料を保持する試料台と、
前記試料台を有するステージと、
前記試料台を駆動させる駆動源と、
前記試料に荷電粒子ビームを照射する荷電粒子ビーム鏡筒と、
前記荷電粒子ビームの照射により前記試料から発生する荷電粒子を検出する検出器と、
前記検出器で検出した信号に基づき荷電粒子像を形成する像形成手段と、を有し、
前記ステージは、前記駆動源と前記試料台との間に前記駆動源から前記試料台への動力を遮断する動力遮断機構を備え、
前記ステージは、前記駆動源と前記試料台との間に前記試料台を回転させる回転軸を有し、
前記動力遮断機構は、前記回転軸に一定の力がかかった場合に前記駆動源と前記試料台との間の接続部材を分離することを特徴とする荷電粒子ビーム装置。
【請求項3】
前記試料台は前記ステージに対し、傾斜可能であることを特徴とする請求項1または2に記載の荷電粒子ビーム装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
試料を観察する荷電粒子ビーム装置に関する。
【背景技術】
【0002】
荷電粒子ビーム装置の試料ステージには、リニアモータ、リニアエンコーダなどの機構を搭載する精密ステージが用いられている。精密ステージは装置内部において試料を特定位置に正確に移動させることができるため、高精度な試料観察を実現することができる。
走査型電子顕微鏡においては、ワーギングディスタンスが小さい方が高分解能観察することができるため、試料をステージ制御により電子ビーム鏡筒先端近くに移動させ、試料観察を行う。そのため、集束イオンビーム鏡筒と電子ビーム鏡筒を備えた複合荷電粒子ビーム装置において、ワーギングディスタンスを小さくして高分解能観察が可能なビーム鏡筒の配置やステージ構成が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−216465号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ステージの制御系は、一般に、試料又はステージがビーム鏡筒や検出器など装置内の部材に衝突しないように、ステージの移動範囲を制限している。
しかしながら、ユーザーの誤動作や制御系の不具合等があると、ステージは制限範囲を超えても停止せずに試料室内の部材に衝突し、部材が破損してしまう虞があった。
【0005】
そこで、本発明は、動力遮断機構を有するステージを備えることにより、ステージ駆動による試料室内の部材の破損が生じない荷電粒子ビーム装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、本発明の荷電粒子ビーム装置は、試料を保持する試料台と、試料台を有するステージと、試料台を駆動させる駆動源と、試料に荷電粒子ビームを照射する荷電粒子ビーム鏡筒と、荷電粒子ビームの照射により試料から発生する荷電粒子を検出する検出器と、検出器で検出した信号に基づき荷電粒子像を形成する像形成手段と、を有し、ステージは、駆動源と試料台との間に駆動源から試料台への動力を遮断する動力遮断機構を備える。
【0007】
この荷電粒子ビーム装置によれば、試料台を移動させ、試料又は試料台が試料室内の部材と接触した場合において、駆動源から試料台への動力を遮断することにより、試料台の移動を停止させることができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、動力遮断機構を有するステージを備えることにより、ステージ駆動による試料室内の部材の破損を避けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施形態に係る荷電粒子ビーム装置の全体構成を示す図である。
図2】各鏡筒とステージの構成を示す図である。
図3】第二ステージの構成を示す図である。
図4】空転機構を示す図である。
図5】第二ステージの構成を示す図である。
図6】クラッシャブル機構を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の実施形態に係る荷電粒子ビーム装置100は、荷電粒子ビーム鏡筒として電子ビーム鏡筒2と、検出器として二次電子検出器4と、像形成手段として像形成部13と、試料台36と、ステージとしての第二ステージ6、駆動源としてのモータ31と、動力遮断機構としての空転機構39と、を備える。
【0011】
電子ビーム鏡筒2は、試料台36に保持された試料10に電子ビームを照射する。二次電子検出器4は、電子ビーム照射により試料10から発生した二次電子を検出する。像形成部13は、二次電子検出器4で検出した二次電子信号と電子ビームの走査信号に基づき二次電子像を形成する。これにより、試料10の二次電子像を取得することができる。
【0012】
第二ステージ6は、試料10を保持する試料台36と、試料台36を固定する傾斜ステージ35と、傾斜ステージ35を傾斜させるモータ31とを備える。第二ステージ6は、試料10が観察に適した姿勢に配置されるように電子ビーム鏡筒2に対して試料10を傾斜させることができる。
【0013】
また、第二ステージ6は、傾斜ステージ35に接続された回転軸32と、回転軸32を回転させるモータ31と、モータ31と傾斜ステージ35との間に回転軸32の空転機構39を備える。空転機構39は、試料台36に一定の外力が加わった際に、モータ31の動力が傾斜ステージ35に伝わらないように、回転軸32の回転を空転させる。これにより、試料台36を傾斜させる駆動力を遮断することができる。よって、試料台36の傾斜により電子ビーム鏡筒2に接触する場合であっても、空転機構39により試料台36を傾斜させる駆動力が遮断されるため、電子ビーム鏡筒2に誤って試料台36が押し付けられ、電子ビーム鏡筒2の先端が破損することを避けることができる。
【実施例1】
【0014】
以下本発明の一実施例として、動力遮断機構として空転機構を備える荷電粒子ビーム装置について、図1図2図3及び図4に沿って説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る荷電粒子ビーム装置100の全体構成を示す図である。図1において、荷電粒子ビーム装置100は、ガリウムイオンビームを照射する集束イオンビーム鏡筒1と、電子ビームを照射する電子ビーム鏡筒2と、アルゴンイオンビームを照射するイオンビーム鏡筒3と、二次電子を検出する二次電子検出器4と、第一ステージ5と、第一ステージ5に保持された第二ステージ6と、を備えている。試料室9内は所定の真空度まで減圧されている。
集束イオンビーム鏡筒1は鉛直方向に、電子ビーム鏡筒2は集束イオンビーム鏡筒1に対して60度傾斜して配置されている。ここで、電子ビーム鏡筒2が鉛直方向に、集束イオンビーム鏡筒が傾斜して配置されても良い。また、電子ビーム鏡筒2と集束イオンビーム鏡筒1が直角になるように配置されても良い。
【0015】
第一ステージ5は、ステージ駆動機構7によりXYZ方向に移動可能であり、ステージ傾斜機構8により傾斜可能である。第一ステージ5は、電子ビーム鏡筒2側に5度、反対側に60度傾斜可能である。また、第一ステージ5は、Z軸方向を中心に回転させることができる。
【0016】
また、荷電粒子ビーム装置100は、制御部11を備える。制御部11は、各ビームの照射を制御するビーム制御部12と、検出信号とビーム走査信号とに基づき観察像を形成する像形成部13と、ステージを駆動制御するステージ制御部14を備える。また、荷電粒子ビーム装置100は、ユーザーの入力指示を取得するキーボード等の入力部15と、観察像等を表示する表示部16を備える。
【0017】
図2は、各鏡筒とステージの構成を示す図である。第二ステージ6は、試料10を固定する試料台36と、試料台36を固定し、試料台36を傾斜させる傾斜ステージ35と、傾斜ステージ35を傾斜させる駆動源としてのモータ31と、モータ31と傾斜ステージ35と接続し、モータ31の駆動力により傾斜ステージ35を傾斜させる回転軸32と、回転軸32を支持する回転軸支持部34とを備える。
【0018】
集束イオンビーム照射軸1aと、電子ビーム照射軸2aと、気体イオンビーム照射軸3aは、試料10上で交わる。第一ステージ5は傾斜軸8aを中心に傾斜可能である。傾斜軸8aと平行な方向をX軸方向21として、Y軸方向22、Z軸方向23を定める。
第二ステージ6は、第一ステージ5と独立して傾斜可能である。ここで、第二ステージの傾斜軸となる回転軸32、33は、第一ステージ5の傾斜軸8aと平行になるように配置可能である。これにより、第一ステージ5の傾斜に加えて、第二ステージ6を傾斜させることができる。従って、第一ステージ5の傾斜範囲を超えて試料10を傾斜させることができる。また、第二ステージ6は第一ステージ5よりも小型であるため、第一ステージ5を傾斜させると試料室9内の部材と干渉する場合であっても、第二ステージ6を傾斜させることで干渉なく所望の角度に傾斜させることができる。
【0019】
図3は、第二ステージ6の構成を示す図である。図3において、第二ステージ6は、第一ステージ5に固定するベース40と、回転駆動力を発生するモータ31と、モータ31からの回転駆動力を伝達する回転軸32と、試料10を保持する試料台36と、回転軸32の回転により試料台36を傾斜させる傾斜ステージ35を備える。第二ステージ6は、ベース40に固定され、回転軸32、33を支持する回転軸支持部34と、傾斜ステージ35に固定され、回転軸32、33をそれぞれ支持するステージ支持部37、ステージ支持部38と、を備えている。ステージ支持部37は、モータ31からの駆動力を遮断する空転機構39を備えている。
【0020】
図4は、空転機構39の構成を示す図である。図4において、空転機構39は、溝32aを持つ回転軸32と、溝32aに入れる支持部材41と、支持部材41を支持し伸縮可能なバネ42と、を備えている。
【0021】
図4(a)に示すように、支持部材41はバネ42により回転軸32の溝32aに入った状態で回転軸32と転軸支持部34の接続を維持している。つまり、バネ42が支持部材41を回転軸32の溝32aに押し付けている。この場合、モータ31からの駆動力により回転軸32、回転軸33、傾斜ステージ35、試料台36、支持部37、支持部38、及び空転機構39は一体となって回転する。また、駆動力の方向により、回転軸32は時回りと反時計回りの2つ回転方向を持つ。
【0022】
試料台36を傾斜する際に試料10又は試料台36が、試料室9内の部材、つまり、第二ステージ6以外の部材と接触して試料台36に外力が加わると、モータ31が駆動する回転軸32にかかるトルクがより大きくなり、図4(b)に示すように、支持部材41は、バネ42が縮ませ、溝32aから押し出させる。これにより、回転軸32が空転する。この場合、モータ31からの駆動力が遮断され、試料台36の傾斜が止まる。
【0023】
ここで、第二ステージ6を傾斜させ、試料10の断面加工観察を行う実施態様について説明する。まず、集束イオンビーム鏡筒1からガリウムイオンビームを試料10に走査照射し、試料10をエッチング加工し、断面を形成する。このとき、第一ステージ5を水平状態から電子ビーム照射軸2とは反対側に60度傾斜させ、さらに第二ステージ6を10度傾斜させて加工しても良い。これにより、第一ステージ5の傾斜可能範囲を超えて、試料10を傾斜させることができるため、試料表面に対して70度の入射角度でガリウムイオンビームを照射し試料10を加工することができる。次に第一ステージ5及び第二ステージ6の傾斜を元に戻す。
【0024】
次に、電子ビームで高分解能観察するために、第一ステージ5を駆動し、試料10を電子ビーム鏡筒2先端に接近させる。次に試料10の断面を電子ビーム照射軸2aに対し直角になるように第二ステージ6を駆動し、試料10を傾斜させる。この状態で断面に電子ビームを照射し、断面の二次電子像を取得する。
【0025】
ここで、試料10を電子ビーム鏡筒2先端に近い位置で試料10を傾斜させ、最適な観察姿勢になるように第二ステージ6によって調整している。仮に、ユーザーの誤動作や制御系の不具合により試料台36を電子ビーム鏡筒2先端に接触させてしまっても、第二ステージ6は上述の空転機構39により試料台36への駆動力が遮断され、試料台36が停止するため、電子ビーム鏡筒2先端の破損を回避することができる。
【実施例2】
【0026】
本発明の一実施例として、動力遮断機構として空転機構に代えてクラッシャブル機構を備える荷電粒子ビーム装置について説明する。
図5は、第二ステージ6の構成を示す図である。図5において、第一ステージ6は、空転機構39に代えて、回転軸支持部34にモータ31からの駆動力を遮断するクラッシャブル機構50を備えている。
【0027】
図6は、図5で示すA−A断面図である。駆動力の方向により、回転軸32は時回りと反時計回りの2つ回転方向を持つ。ここで回転軸32が時計回りする場合を例として、動力遮断の仕組みを説明する。
【0028】
図6(a)に示すように、クラッシャブル機構50は回転軸32と回転支持部34との間に差し込む構造である。クラッシャブル機構50を通して、駆動力が回転軸32から回転支持部34へ伝達され、回転支持部34は、回転支持部34に接続される他の部品とともに回転する。
【0029】
試料10又は試料台36を傾斜させる際に、他の部材と干渉し、試料台36が傾斜できないように外力が加わった場合において、回転軸32から回転支持部34へ伝達するトルクが、クラッシャブル機構50が耐えられるトルク上限値を超えると、クラッシャブル機構50が割れてクラッシャブル機構断片50Aとクラッシャブル機構断片50Bに分離される。この場合、回転軸32から支持部34へ駆動力が伝達できなくなる。
【0030】
上記の実施形態では、クラッシャブル機構が回転支持部34に設置された装置について説明したが、クラッシャブル機構が回転軸32に設置された場合にも本発明は効果を奏する。
【0031】
また、上記の実施形態では、第二ステージ6の傾斜制御について動力遮断機構を備えた装置について説明したが、第一ステージ5の移動制御について動力遮断機構を備えた場合にも本発明は効果を奏する。
【0032】
本発明は上記実施形態に限定されず、本発明の思想と範囲に含まれる様々な変形及び均等物に及ぶことはいうまでもない。
【符号の説明】
【0033】
1…集束イオンビーム鏡筒、2…電子ビーム鏡筒、3…気体イオンビーム鏡筒、5…第一ステージ、6…第二ステージ、10…試料、31…モータ、32…回転軸、34…回転軸支持部、35…傾斜ステージ、36…試料台
図1
図2
図3
図4
図5
図6