【実施例1】
【0014】
以下本発明の一実施例として、動力遮断機構として空転機構を備える荷電粒子ビーム装置について、
図1、
図2、
図3及び
図4に沿って説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る荷電粒子ビーム装置100の全体構成を示す図である。
図1において、荷電粒子ビーム装置100は、ガリウムイオンビームを照射する集束イオンビーム鏡筒1と、電子ビームを照射する電子ビーム鏡筒2と、アルゴンイオンビームを照射するイオンビーム鏡筒3と、二次電子を検出する二次電子検出器4と、第一ステージ5と、第一ステージ5に保持された第二ステージ6と、を備えている。試料室9内は所定の真空度まで減圧されている。
集束イオンビーム鏡筒1は鉛直方向に、電子ビーム鏡筒2は集束イオンビーム鏡筒1に対して60度傾斜して配置されている。ここで、電子ビーム鏡筒2が鉛直方向に、集束イオンビーム鏡筒が傾斜して配置されても良い。また、電子ビーム鏡筒2と集束イオンビーム鏡筒1が直角になるように配置されても良い。
【0015】
第一ステージ5は、ステージ駆動機構7によりXYZ方向に移動可能であり、ステージ傾斜機構8により傾斜可能である。第一ステージ5は、電子ビーム鏡筒2側に5度、反対側に60度傾斜可能である。また、第一ステージ5は、Z軸方向を中心に回転させることができる。
【0016】
また、荷電粒子ビーム装置100は、制御部11を備える。制御部11は、各ビームの照射を制御するビーム制御部12と、検出信号とビーム走査信号とに基づき観察像を形成する像形成部13と、ステージを駆動制御するステージ制御部14を備える。また、荷電粒子ビーム装置100は、ユーザーの入力指示を取得するキーボード等の入力部15と、観察像等を表示する表示部16を備える。
【0017】
図2は、各鏡筒とステージの構成を示す図である。第二ステージ6は、試料10を固定する試料台36と、試料台36を固定し、試料台36を傾斜させる傾斜ステージ35と、傾斜ステージ35を傾斜させる駆動源としてのモータ31と、モータ31と傾斜ステージ35と接続し、モータ31の駆動力により傾斜ステージ35を傾斜させる回転軸32と、回転軸32を支持する回転軸支持部34とを備える。
【0018】
集束イオンビーム照射軸1aと、電子ビーム照射軸2aと、気体イオンビーム照射軸3aは、試料10上で交わる。第一ステージ5は傾斜軸8aを中心に傾斜可能である。傾斜軸8aと平行な方向をX軸方向21として、Y軸方向22、Z軸方向23を定める。
第二ステージ6は、第一ステージ5と独立して傾斜可能である。ここで、第二ステージの傾斜軸となる回転軸32、33は、第一ステージ5の傾斜軸8aと平行になるように配置可能である。これにより、第一ステージ5の傾斜に加えて、第二ステージ6を傾斜させることができる。従って、第一ステージ5の傾斜範囲を超えて試料10を傾斜させることができる。また、第二ステージ6は第一ステージ5よりも小型であるため、第一ステージ5を傾斜させると試料室9内の部材と干渉する場合であっても、第二ステージ6を傾斜させることで干渉なく所望の角度に傾斜させることができる。
【0019】
図3は、第二ステージ6の構成を示す図である。
図3において、第二ステージ6は、第一ステージ5に固定するベース40と、回転駆動力を発生するモータ31と、モータ31からの回転駆動力を伝達する回転軸32と、試料10を保持する試料台36と、回転軸32の回転により試料台36を傾斜させる傾斜ステージ35を備える。第二ステージ6は、ベース40に固定され、回転軸32、33を支持する回転軸支持部34と、傾斜ステージ35に固定され、回転軸32、33をそれぞれ支持するステージ支持部37、ステージ支持部38と、を備えている。ステージ支持部37は、モータ31からの駆動力を遮断する空転機構39を備えている。
【0020】
図4は、空転機構39の構成を示す図である。
図4において、空転機構39は、溝32aを持つ回転軸32と、溝32aに入れる支持部材41と、支持部材41を支持し伸縮可能なバネ42と、を備えている。
【0021】
図4(a)に示すように、支持部材41はバネ42により回転軸32の溝32aに入った状態で回転軸32と転軸支持部34の接続を維持している。つまり、バネ42が支持部材41を回転軸32の溝32aに押し付けている。この場合、モータ31からの駆動力により回転軸32、回転軸33、傾斜ステージ35、試料台36、支持部37、支持部38、及び空転機構39は一体となって回転する。また、駆動力の方向により、回転軸32は時回りと反時計回りの2つ回転方向を持つ。
【0022】
試料台36を傾斜する際に試料10又は試料台36が、試料室9内の部材、つまり、第二ステージ6以外の部材と接触して試料台36に外力が加わると、モータ31が駆動する回転軸32にかかるトルクがより大きくなり、
図4(b)に示すように、支持部材41は、バネ42が縮ませ、溝32aから押し出させる。これにより、回転軸32が空転する。この場合、モータ31からの駆動力が遮断され、試料台36の傾斜が止まる。
【0023】
ここで、第二ステージ6を傾斜させ、試料10の断面加工観察を行う実施態様について説明する。まず、集束イオンビーム鏡筒1からガリウムイオンビームを試料10に走査照射し、試料10をエッチング加工し、断面を形成する。このとき、第一ステージ5を水平状態から電子ビーム照射軸2とは反対側に60度傾斜させ、さらに第二ステージ6を10度傾斜させて加工しても良い。これにより、第一ステージ5の傾斜可能範囲を超えて、試料10を傾斜させることができるため、試料表面に対して70度の入射角度でガリウムイオンビームを照射し試料10を加工することができる。次に第一ステージ5及び第二ステージ6の傾斜を元に戻す。
【0024】
次に、電子ビームで高分解能観察するために、第一ステージ5を駆動し、試料10を電子ビーム鏡筒2先端に接近させる。次に試料10の断面を電子ビーム照射軸2aに対し直角になるように第二ステージ6を駆動し、試料10を傾斜させる。この状態で断面に電子ビームを照射し、断面の二次電子像を取得する。
【0025】
ここで、試料10を電子ビーム鏡筒2先端に近い位置で試料10を傾斜させ、最適な観察姿勢になるように第二ステージ6によって調整している。仮に、ユーザーの誤動作や制御系の不具合により試料台36を電子ビーム鏡筒2先端に接触させてしまっても、第二ステージ6は上述の空転機構39により試料台36への駆動力が遮断され、試料台36が停止するため、電子ビーム鏡筒2先端の破損を回避することができる。
【実施例2】
【0026】
本発明の一実施例として、動力遮断機構として空転機構に代えてクラッシャブル機構を備える荷電粒子ビーム装置について説明する。
図5は、第二ステージ6の構成を示す図である。
図5において、第一ステージ6は、空転機構39に代えて、回転軸支持部34にモータ31からの駆動力を遮断するクラッシャブル機構50を備えている。
【0027】
図6は、
図5で示すA−A断面図である。駆動力の方向により、回転軸32は時回りと反時計回りの2つ回転方向を持つ。ここで回転軸32が時計回りする場合を例として、動力遮断の仕組みを説明する。
【0028】
図6(a)に示すように、クラッシャブル機構50は回転軸32と回転支持部34との間に差し込む構造である。クラッシャブル機構50を通して、駆動力が回転軸32から回転支持部34へ伝達され、回転支持部34は、回転支持部34に接続される他の部品とともに回転する。
【0029】
試料10又は試料台36を傾斜させる際に、他の部材と干渉し、試料台36が傾斜できないように外力が加わった場合において、回転軸32から回転支持部34へ伝達するトルクが、クラッシャブル機構50が耐えられるトルク上限値を超えると、クラッシャブル機構50が割れてクラッシャブル機構断片50Aとクラッシャブル機構断片50Bに分離される。この場合、回転軸32から支持部34へ駆動力が伝達できなくなる。
【0030】
上記の実施形態では、クラッシャブル機構が回転支持部34に設置された装置について説明したが、クラッシャブル機構が回転軸32に設置された場合にも本発明は効果を奏する。
【0031】
また、上記の実施形態では、第二ステージ6の傾斜制御について動力遮断機構を備えた装置について説明したが、第一ステージ5の移動制御について動力遮断機構を備えた場合にも本発明は効果を奏する。
【0032】
本発明は上記実施形態に限定されず、本発明の思想と範囲に含まれる様々な変形及び均等物に及ぶことはいうまでもない。