(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
被加工物を保持する保持面を有するチャックテーブルと、切削ブレードが装着されるスピンドルを有し該チャックテーブルに保持された被加工物を該切削ブレードで切削する切削ユニットと、該切削ユニットを該保持面に垂直な方向に移動させる切り込み送りユニットと、該切り込み送りユニットで該切削ユニットを移動させて該切削ブレードを該チャックテーブルに接触させることにより、該切削ブレードと該チャックテーブルとの導通に基づき該切削ブレードと該チャックテーブルとが接触する際の該切削ユニットの高さを基準位置として検出する基準位置検出ユニットと、該切削ユニットとともに該保持面に垂直な方向に移動し該チャックテーブルの該保持面側を撮影するカメラと、を備える切削装置で該基準位置を検出する切削装置の基準位置検出方法であって、
該チャックテーブルの該保持面を該カメラで撮影しながら該保持面に垂直な方向に該カメラを移動させて、該保持面に該カメラの焦点が合う際の該切削ユニットの高さに基づき該切削ブレードと該チャックテーブルとが接触する際の該切削ユニットの高さを概算する概算ステップと、
該概算ステップで概算された該切削ユニットの高さに該カメラの被写界深度を加えた高さ以上の高さを下限高さに設定する下限高さ設定ステップと、
該切削ユニットを該保持面に向かって第1速度で該下限高さまで移動させる接近ステップと、
該接近ステップの後に、該切削ユニットを該保持面に向かって該第1速度より小さい第2速度で移動させることにより、該切削ブレードを該保持面に接触させて該基準位置を検出する接触検出ステップと、を備えることを特徴とする切削装置の基準位置検出方法。
該概算ステップの前に、該保持面に該切削ブレードを接触させて該基準位置を検出し、該保持面に垂直な方向に該カメラを移動させて該保持面に該カメラの焦点が合う際の該切削ユニットの高さを検出することで、該基準位置と、該保持面に該カメラの焦点が合う際の該切削ユニットの高さと、の関係を登録する位置関係登録ステップを更に備えることを特徴とする請求項1に記載の切削装置の基準位置検出方法。
該下限高さは、該概算ステップで概算された該切削ユニットの高さに該被写界深度と該切削ブレードの偏心量とを加えた高さ以上の高さに設定されることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の切削装置の基準位置検出方法。
該概算ステップでは、該切削ブレードを接触させる該保持面の対象領域を該カメラで撮影しながら該保持面に垂直な方向に該カメラを移動させて、該保持面の該対象領域に該カメラの焦点が合う際の該切削ユニットの高さに基づき、該切削ブレードと該チャックテーブルとが接触する際の該切削ユニットの高さを概算することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の切削装置の基準位置検出方法。
【発明を実施するための形態】
【0016】
添付図面を参照して、本発明の一態様に係る実施形態について説明する。
図1は、本実施形態に係る切削装置の基準位置検出方法に用いられる切削装置2の構成例を模式的に示す斜視図である。
図1に示すように、切削装置2は、各構成要素を支持する基台4を備えている。
【0017】
基台4の前方の角部には、開口4aが形成されており、この開口4a内には、昇降機構(不図示)によって昇降するカセット支持台6が設けられている。カセット支持台6の上面には、複数の被加工物11を収容するためのカセット8が載せられる。なお、
図1では、説明の便宜上、カセット8の輪郭のみを示している。
【0018】
被加工物11は、例えば、シリコン等の半導体材料でなる円盤状のウェーハである。この被加工物11の表面側は、交差する複数の分割予定ライン(ストリート)によって複数の領域に区画されており、各領域には、IC(Integrated Circuit)等のデバイス13が形成されている。
【0019】
被加工物11の裏面側には、被加工物11よりも径の大きい粘着テープ(ダイシングテープ)15が貼付されている。粘着テープ15の外周部分は、環状のフレーム17に固定されている。被加工物11は、この粘着テープ15を介してフレーム17に支持された状態でカセット8に収容される。
【0020】
なお、本実施形態では、シリコン等の半導体材料でなる円盤状のウェーハを被加工物11としているが、被加工物11の材質、形状、構造、大きさ等に制限はない。例えば、他の半導体、セラミックス、樹脂、金属等の材料でなる基板を被加工物11とすることもできる。また、デバイス13の種類、数量、形状、構造、大きさ、配置等にも制限はない。被加工物11には、デバイス13が形成されていなくても良い。
【0021】
図1に示すように、カセット支持台6の側方には、X軸方向(前後方向、加工送り方向)に長い開口4bが形成されている。開口4b内には、ボールねじ式のX軸移動機構10と、X軸移動機構10の上部を覆う防塵防滴カバー12とが配置されている。X軸移動機構10は、X軸移動テーブル10aを備えており、このX軸移動テーブル10aをX軸方向に移動させる。
【0022】
X軸移動テーブル10aの上方には、被加工物11を吸引、保持するためのチャックテーブル14が配置されている。このチャックテーブル14は、モーター等の回転駆動源(不図示)に連結されており、Z軸方向(鉛直方向)に概ね平行な回転軸の周りに回転する。また、チャックテーブル14は、上述したX軸移動機構10によってX軸方向に移動する(加工送り)。
【0023】
チャックテーブル14の上面は、被加工物11を吸引、保持するための保持面14aになっている。保持面14aは、X軸方向及びY軸方向(左右方向、割り出し送り方向)に対して概ね平行に形成されており、チャックテーブル14の内部に設けられた吸引路(不図示)等を介してエジェクタ等の吸引源(不図示)に接続されている。また、チャックテーブル14の周囲には、被加工物11を支持する環状のフレーム17を四方から固定するための4個のクランプ16が設けられている。
【0024】
開口4bに隣接する領域には、上述した被加工物11をチャックテーブル14等へと搬送するための搬送ユニット(不図示)が配置されている。搬送ユニットで搬送された被加工物11は、例えば、表面側が上方に露出するようにチャックテーブル14の保持面14aに載せられる。
【0025】
基台4の上面には、2組の切削ユニット22を支持するための門型の支持構造24が、開口4bを跨ぐように配置されている。支持構造24の前面上部には、各切削ユニット22をY軸方向及びZ軸方向に移動させる2組の切削ユニット移動機構(切り込み送りユニット)26が設けられている。
【0026】
各切削ユニット移動機構26は、支持構造24の前面に配置されY軸方向に平行な一対のY軸ガイドレール28を共通に備えている。Y軸ガイドレール28には、各切削ユニット移動機構26を構成するY軸移動プレート30がスライド可能に取り付けられている。
【0027】
各Y軸移動プレート30の裏面側(後面側)には、ナット部(不図示)が設けられており、このナット部には、Y軸ガイドレール28に平行なY軸ボールネジ32がそれぞれ螺合されている。各Y軸ボールネジ32の一端部には、Y軸パルスモータ34が連結されている。Y軸パルスモータ34でY軸ボールネジ32を回転させれば、Y軸移動プレート30は、Y軸ガイドレール28に沿ってY軸方向に移動する。
【0028】
各Y軸移動プレート30の表面(前面)には、Z軸方向に平行な一対のZ軸ガイドレール36が設けられている。Z軸ガイドレール36には、Z軸移動プレート38がスライド可能に取り付けられている。
【0029】
各Z軸移動プレート38の裏面側(後面側)には、ナット部(不図示)が設けられており、このナット部には、Z軸ガイドレール36に平行なZ軸ボールネジ40がそれぞれ螺合されている。各Z軸ボールネジ40の一端部には、Z軸パルスモータ42が連結されている。Z軸パルスモータ42でZ軸ボールネジ40を回転させれば、Z軸移動プレート38は、Z軸ガイドレール36に沿ってZ軸方向に移動する。
【0030】
各Z軸移動プレート38の下部には、切削ユニット22が設けられている。この切削ユニット22は、Y軸方向に概ね平行な軸心を持つスピンドル44(
図2等参照)を含んでいる。スピンドル44は、筒状に構成されたスピンドルハウジング46(
図2等参照)の内側の空間に収容されている。スピンドル44の一端部(先端部)は、スピンドルハウジング46の外部に露出しており、この一端部には、円環状の切削ブレード48が装着される。
【0031】
切削ユニット22(切削ブレード48)とチャックテーブル14との間には、スイッチ50(
図2等参照)、直流電源52(
図2等参照)、及び電流計54(
図2等参照)が直列に接続されている。このスイッチ50を閉じた状態(オン状態)で、切削ブレード48をチャックテーブル14の保持面14aに接触させると、切削ブレード48とチャックテーブル14との間には電流が流れる。
【0032】
よって、この電流(導通)に基づいて、切削ブレード48とチャックテーブル14との接触を検知できる。なお、このスイッチ50、及び電流計54は、切削ブレード48とチャックテーブル14とが接触する際の切削ユニット22の高さ(基準位置)を検出するための基準位置検出ユニットの一部を構成している。
【0033】
各切削ユニット22に隣接する位置には、被加工物11等を撮像するための撮像ユニット(カメラ)56が設けられている。各切削ユニット移動機構26でY軸移動プレート30をY軸方向に移動させれば、切削ユニット22及び撮像ユニット56は、Y軸方向に移動する(割り出し送り)。また、各切削ユニット移動機構26でZ軸移動プレート38をZ軸方向に移動させれば、切削ユニット22及び撮像ユニット56は、Z軸方向に移動する(切り込み送り)。
【0034】
開口4bに対して開口4aと反対側の位置には、開口4cが形成されている。開口4c内には、切削後の被加工物11等を洗浄するための洗浄ユニット58が配置されている。また、X軸移動機構10、チャックテーブル14、切削ユニット22、切削ユニット移動機構26、スイッチ50、電流計54、撮像ユニット56、洗浄ユニット58等の構成要素には、制御ユニット60が接続されている。各構成要素は、この制御ユニット60によって制御される。
【0035】
なお、制御ユニット60は、各種の処理を行うための処理部60aと、各種の情報を記憶するための記憶部60bとを有しており、上述したスイッチ50、電流計54等とともに、基準位置検出ユニットの一部を構成している。基準位置検出ユニットを構成する制御ユニット60の機能等については後述する。
【0036】
次に、上述した切削装置2を用いて行われる切削装置の基準位置検出方法について説明する。本実施形態に係る切削装置の基準位置検出方法では、まず、チャックテーブル14の保持面14aに切削ブレード48の下端が接触する際の切削ユニット22の高さ(基準位置)と、チャックテーブル14の保持面14aに撮像ユニット56の焦点が合う際の切削ユニット22の高さ(焦点位置)と、の関係を制御ユニット60に登録する位置関係登録ステップを行う。
【0037】
図2は、位置関係登録ステップについて説明するための図である。なお、本実施形態の位置関係登録ステップでは、
図2に示すように、登録用のチャックテーブル14−1を切削装置2に装着して使用する。
【0038】
位置関係登録ステップでは、まず、切削装置2に装着されているチャックテーブル14−1の保持面14aに切削ブレード48の下端を接触させて、保持面14aに切削ブレード48が接触する際の切削ユニット22の高さ(基準位置)を検出する。
【0039】
具体的には、チャックテーブル14−1と切削ユニット22とを相対的に移動させて、保持面14aの一部である対象領域14bの上方に切削ブレード48を位置付ける。また、スピンドル44(切削ブレード48)を回転させ、更に、スイッチ50を閉じる(オン状態にする)。
【0040】
そして、
図2に示すように、切削ユニット移動機構26で切削ユニット22を保持面14aに向かって移動(下降)させて、保持面14aの対象領域14bに切削ブレード48の下端を接触させる。上述のように、チャックテーブル14−1と切削ブレード48との間には、直流電源52が接続されている。よって、切削ブレード48の下端がチャックテーブル14−1の保持面14a(対象領域14b)に接触すると、チャックテーブル14−1と切削ブレード48とは導通して電流が流れる。
【0041】
制御ユニット60の処理部60aは、電流計54で測定される電流値に基づきチャックテーブル14−1と切削ブレード48との導通を検出して、その際の切削ユニット22の高さを、切削ユニット移動機構26に設けられている高さ測定部26aで読み取る。そして、この高さを切削ユニット22の高さの基準である基準位置に設定し、記憶部60bに記憶させる。
【0042】
なお、位置関係登録ステップで切削ユニット22を移動(下降)させる速度に特段の制限はないが、チャックテーブル14−1への傷を軽減したいのであれば、移動の速度を十分に低く設定することが望ましい。この位置関係登録ステップは、切削装置2の出荷前や出荷直後に行われる処理であって、繰り返し行われるものではない。よって、切削ユニット22を移動させる速度を十分に低く設定しても、切削装置2の稼働率が低下する等の問題は生じ難い。
【0043】
基準位置を検出した後には、チャックテーブル14−1の保持面14a側を撮像ユニット56で撮像し、保持面14aの対象領域14bに撮像ユニット56の焦点が合う際の切削ユニット22の高さ(焦点位置)を検出する。
【0044】
具体的には、チャックテーブル14−1と撮像ユニット56とを相対的に移動させて、対象領域14bの上方に撮像ユニット56を位置付ける。次に、チャックテーブル14−1の保持面14a側を撮像ユニット56で撮像しながら、切削ユニット移動機構26で撮像ユニット56を保持面14aに対して概ね垂直な方向に移動(代表的には、下降)させる。その結果、あるタイミングで、保持面14aの対象領域14bに焦点の合った画像が得られる。
【0045】
対象領域14bに焦点の合った画像が撮像ユニット56から得られると、制御ユニット60の処理部60aは、その際の切削ユニット22の高さを、切削ユニット移動機構26に設けられている高さ測定部26aで読み取る。そして、この高さを焦点位置に設定し、記憶部60bに記憶させる。また、制御ユニット60は、上述した基準位置と焦点位置との位置関係(例えば、高さの差等)を記憶部60bに記憶させる。これにより、焦点位置から基準位置を算出できるようになる。
【0046】
位置関係登録ステップの後には、例えば、位置関係登録ステップで使用されたチャックテーブル14−1を、被加工物11の吸引、保持に適した別のチャックテーブル14−2(
図3等参照)に交換するチャックテーブル交換ステップを行う。これにより、被加工物11をチャックテーブル14−2で適切に吸引、保持して切削できるようになる。
【0047】
位置関係登録ステップ及びチャックテーブル交換ステップの後には、切削ブレード48とチャックテーブル14−2とが接触する際の切削ユニット22の高さを概算する概算ステップを行う。
図3は、概算ステップについて説明するための図である。
【0048】
この概算ステップでは、まず、チャックテーブル14−2と切削ユニット22とを相対的に移動させて、チャックテーブル14−2の保持面14aの対象領域14bの上方に撮像ユニット56を位置付ける。次に、チャックテーブル14−2の保持面14a側を撮像ユニット56で撮像しながら、切削ユニット移動機構26で撮像ユニット56を保持面14aに対して概ね垂直な方向に移動(代表的には、下降)させる。その結果、あるタイミングで、保持面14aの対象領域14bに焦点の合った画像が得られる。
【0049】
対象領域14bに焦点の合った画像が撮像ユニット56から得られると、制御ユニット60の処理部60aは、その際の切削ユニット22の高さを、切削ユニット移動機構26に設けられている高さ測定部26aで読み取る。そして、この高さと、位置関係登録ステップで登録された位置関係とから、切削ブレード48とチャックテーブル14−2とが接触する際の切削ユニット22の高さを算出(概算)する。
【0050】
なお、この概算ステップで算出される切削ユニット22の高さは、後述するように、多くの誤差を含んでいる。すなわち、この概算ステップでは、切削ブレード48とチャックテーブル14−2とが接触する際の切削ユニット22の高さが概算される。概算された切削ユニット22の高さは、記憶部60bに記憶される。
【0051】
概算ステップの後には、概算ステップで概算された切削ユニット22の高さに基づき、チャックテーブル14−2に対して切削ブレード48が接触しないと考えられる下限高さを設定する下限高さ設定ステップを行う。
図4は、下限高さ設定ステップについて説明するための図である。
【0052】
図4に示すように、撮像ユニット56は、その構造等に応じた被写界深度ΔZを持ち、所定の範囲内で実質的に焦点の合った画像が得られる。つまり、点Z
1から放射され、撮像ユニット56のレンズ56aを通じて点z
1に集まる光は、撮像ユニット56の撮像素子56b上で点とみなせる程度に結像する。同様に、点Z
2から放射され、撮像ユニット56のレンズ56aを通じて点z
2に集まる光は、撮像ユニット56の撮像素子56b上で点とみなせる程度に結像する。
【0053】
したがって、撮像ユニット56の焦点が合う状態から求められる切削ユニット22の高さには、少なくとも、撮像ユニット56の被写界深度ΔZ以上の誤差が含まれることになる。そこで、この下限高さ設定ステップでは、概算ステップで概算された切削ユニット22の高さに、撮像ユニット56の被写界深度ΔZを加えた高さ、又はそれ以上の高さを下限高さh(
図5参照)に設定する。設定された下限高さhは、記憶部60bに記憶される。
【0054】
なお、スピンドル44に切削ブレード48を装着した直後には、切削ブレード48の中心とスピンドル44の中心軸とが一致していないことも多い。そこで、スピンドル44に対して切削ブレード48が偏心している可能性を考慮して、想定される切削ブレード48の偏心量を更に加えた高さ、又はそれ以上の高さを下限高さhに設定しても良い。つまり、概算ステップで概算された切削ユニット22の高さに、撮像ユニット56の被写界深度ΔZと、切削ブレード48の偏心量とを加えた高さ、又はそれ以上の高さを下限高さhに設定することもできる。
【0055】
同様に、チャックテーブル14が交換されている場合には、保持面14aの高さがずれている可能性もある。そこで、保持面14aの高さがずれている可能性を考慮して、想定される保持面14aのずれ量を更に加えた高さ、又はそれ以上の高さを下限高さhに設定しても良い。つまり、概算ステップで概算された切削ユニット22の高さに、撮像ユニット56の被写界深度ΔZと、保持面14aのずれ量とを加えた高さ、又はそれ以上の高さを下限高さhに設定することもできる。
【0056】
もちろん、切削ブレード48の偏心、及び保持面14aの高さのずれの双方を考慮しても良い。つまり、概算ステップで概算された切削ユニット22の高さに、撮像ユニット56の被写界深度ΔZと、切削ブレード48の偏心量と、保持面14aのずれ量とを加えた高さ、又はそれ以上の高さを下限高さhに設定しても良い。
【0057】
下限高さ設定ステップの後には、切削ユニット22を保持面14aに向かって第1速度で下限高さhまで移動(下降)させる接近ステップを行う。
図5は、接近ステップについて説明するための図である。この接近ステップでは、まず、チャックテーブル14−2と切削ユニット22とを相対的に移動させて、対象領域14bの上方に切削ブレード48を位置付ける。
【0058】
また、スピンドル44(切削ブレード48)を回転させ、更に、スイッチ50を閉じる(オン状態にする)。そして、
図5に示すように、切削ユニット移動機構26で切削ユニット22を保持面14aに向かって第1速度v
1で下限高さhまで移動させる。
【0059】
上述のように、下限高さhは、概算ステップで概算される切削ユニット22の高さに含まれる誤差を考慮して設定されている。よって、切削ユニット22を下限高さhまで移動させても、切削ブレード48がチャックテーブル14−2に接触することはない。そのため、十分に高い第1速度v
1で切削ユニット22を下降させることができる。
【0060】
接近ステップの後には、第1速度v
1より小さい(低速な)第2速度で切削ユニット22を保持面14aに向かって移動(下降)させることで、切削ブレード48を保持面14aの対象領域14bに接触させて基準位置を検出する接触検出ステップを行う。
図6は、接触検出ステップについて説明するための図である。
【0061】
接触検出ステップでは、
図6に示すように、第1速度v
1より小さい第2速度v
2で切削ユニット22を保持面14aに向かって移動させて、保持面14aの対象領域14bに切削ブレード48を接触させる。チャックテーブル14−2と切削ブレード48との間には、直流電源52が接続されているので、切削ブレード48の下端が保持面14aの対象領域14bに接触すると、チャックテーブル14−2と切削ブレード48とは導通して電流が流れる。
【0062】
制御ユニット60の処理部60aは、電流計54で測定される電流値に基づきチャックテーブル14−2と切削ブレード48との導通を検出して、その際の切削ユニット22の高さを、切削ユニット移動機構26に設けられている高さ測定部26aで読み取る。そして、この高さを、切削ユニット22の高さの基準である基準位置に設定し、記憶部60bに記憶させる。切削装置2は、この基準位置に基づき切削ユニット22の高さを適切に制御して、被加工物11を切削できる。
【0063】
本実施形態では、上述のように適切に設定された下限高さhによって、接触検出ステップで切削ユニット22を移動させる距離が十分に小さくなっている。そのため、チャックテーブル14の傷が軽減されるように第2速度v
2を十分に小さくしても、基準位置の検出に要する時間は長くならずに済む。
【0064】
切削ユニット22の高さと、切削ユニット22を下降させる速度との関係の一例を表1に示す。なお、表1では、概算ステップで算出される切削ユニット22の高さを0mmとして、下限高さhが0.1mmに設定される場合の一例を示している。すなわち、表1の例では、第1速度v
1が10mm/s、第2速度v
2が0.1mm/sである。
【0066】
従来の基準位置検出方法について、切削ユニット22の高さと、切削ユニットを下降させる速度との関係の一例を表2に示す。なお、表2では、予め設定されている基準位置を0mmとしている。
【0068】
以上のように、本実施形態に係る切削装置の基準位置検出方法では、切削ブレード48とチャックテーブル14とが接触する際の切削ユニット22の高さを、撮像ユニット(カメラ)56を用いて概算し、概算された切削ユニット22の高さに撮像ユニット56の被写界深度を加えた高さ以上の高さを下限高さhに設定した上で、切削ユニット22を保持面14aに向かって第1速度v
1で下限高さhまで移動させ、その後、切削ユニット22を保持面14aに向かって第1速度v
1より小さい第2速度v
2で移動させることにより、切削ブレード48を保持面14aに接触させて、その際の切削ユニット22の高さを基準位置として検出する。
【0069】
これにより、保持面14aに近い下限高さhまで切削ユニット22を高速に移動させることができるので、その後、切削ブレード48が保持面14aに接触する高さまで切削ユニット22を低速に移動させても、基準位置の検出に要する時間は長くならずに済む。よって、基準位置の検出に長い時間を掛けることなくチャックテーブル14の傷を軽減できる。第1速度v
1、第2速度v
2、及び下限高さhの関係によっては、基準位置の検出に要する時間を短縮することも可能である。
【0070】
なお、本発明は、上記実施形態等の記載に制限されず種々変更して実施可能である。例えば、接近ステップを速度の異なる多段階に分けても良い。すなわち、第1速度v
1は、複数の速度を含む場合がある。
【0071】
接近ステップを多段階に分ける場合の切削ユニット22の高さと、切削ユニット22を下降させる速度との関係の一例を表3に示す。なお、表3は、下限高さhが0.1mmに設定される場合の一例を示している。すなわち、表3の例では、第1速度v
1が10mm/s、又は1mm/sであり、第2速度v
2が0.1mm/sである。この場合にも、基準位置の検出に長い時間を掛けることなくチャックテーブル14の傷を軽減できる。
【0073】
また、チャックテーブル14の保持面14aに切削ブレード48が接触する際の切削ユニット22の高さ(基準位置)と、チャックテーブル14の保持面14aに撮像ユニット56の焦点が合う際の切削ユニット22の高さ(焦点位置)と、の関係が予め制御ユニット60に登録されている場合等には、位置関係登録ステップを省略して良い。
【0074】
同様に、チャックテーブル14を交換する必要がない場合(例えば、位置関係登録ステップ等で使用されたチャックテーブル14−1を、そのまま被加工物11の吸引、保持に使用できる場合)等には、チャックテーブル交換ステップを省略して良い。
【0075】
更に、上記実施形態の位置関係登録ステップでは、基準位置を検出した後に焦点位置を検出しているが、焦点位置を検出した後に基準位置を検出しても良い。また、上記実施形態では、接近ステップでスピンドル44を回転させ、スイッチ50を閉じているが、例えば、接触検出ステップで切削ユニット22を下降させる前に、スピンドル44を回転させ、スイッチ50を閉じることもできる。
【0076】
また、概算ステップ等で得られる対象領域14bの画像に基づいて、この対象領域14bに傷や異物が存在するか否かを判定しても良い。対象領域14bに傷や異物が存在すると判定された場合には、例えば、チャックテーブル14を回転させたり、チャックテーブル14と切削ユニット22とを相対的に移動させたりして、傷や異物のない別の対象領域14bについて概算ステップ等を行う。これにより、傷や異物と切削ブレード48との接触による基準位置の誤検出を防止できる。
【0077】
その他、上記実施形態に係る構造、方法等は、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施できる。