特許第6957911号(P6957911)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6957911
(24)【登録日】2021年10月11日
(45)【発行日】2021年11月2日
(54)【発明の名称】ポリエーテルポリオールの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08G 65/28 20060101AFI20211021BHJP
   C08G 65/10 20060101ALI20211021BHJP
   C08G 65/30 20060101ALI20211021BHJP
【FI】
   C08G65/28
   C08G65/10
   C08G65/30
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2017-50590(P2017-50590)
(22)【出願日】2017年3月15日
(65)【公開番号】特開2018-154673(P2018-154673A)
(43)【公開日】2018年10月4日
【審査請求日】2020年3月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(72)【発明者】
【氏名】山下 亮
(72)【発明者】
【氏名】井村 泰明
【審査官】 藤井 明子
(56)【参考文献】
【文献】 特表2005−532419(JP,A)
【文献】 特開2011−162780(JP,A)
【文献】 特開平09−131526(JP,A)
【文献】 特開平09−188754(JP,A)
【文献】 特表2017−500419(JP,A)
【文献】 特開平07−228684(JP,A)
【文献】 特開2015−189915(JP,A)
【文献】 特公昭50−028995(JP,B1)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0066853(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 65/00−67/04
C08G 18/00−18/87
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
均一系触媒の存在下、環状エーテルを原料として、開環重合反応、次いで加水分解反応
を行うことにより生成されるポリエーテルポリオールを含む反応液を得るにあたり、炭素
数2〜6の脂肪族アルコールを該原料の環状エーテルに対して0.005モル%以上0.
1モル%以下存在させて開環重合反応を行う、ポリエーテルポリオールの製造方法。
【請求項2】
前記均一系触媒がフルオロ硫酸又は発煙硫酸であることを特徴とする請求項1に記載の
ポリエーテルポリオールの製造方法。
【請求項3】
前記開環重合反応で得られるポリエーテルポリオールの数平均分子量の範囲が600か
ら5000である、請求項1又は2に記載のポリエーテルポリオールの製造方法。
【請求項4】
前記反応液から、未反応の前記環状エーテル及び前記少なくともヒドロキシル基を1つ
持つ化合物を含む混合物を分離して回収した後、該混合物を開環重合反応の原料として用
いる、請求項1〜のいずれかに記載のポリエーテルポリオールの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はポリエーテルポリオールの製造方法に関する。詳しくは環状エーテルを酸触媒の存在下で開環重合する際にアルコールを加える事で重合反応液の粘度を低下させ、得られるポリエーテルポリオールに含まれるエステル不純物を低減する事である。
【背景技術】
【0002】
ポリエーテルポリオールは一般式HO−[(CH)nO]m−H(mは2以上の整数、nは1以上の整数を表す。) で示される両末端に一級水酸基を有する直鎖ポリエーテルポリオールであり、一般的に環状エーテルの開環重合により製造される。中でも、テトラヒドロフラン(以下、「THF」と略記する場合がある)の開環重合反応により得られるポリアルキレンエーテルグリコールジエステルであるポリテトラメチレンエーテルグリコールジエステル(以下、「PTME」と略記する場合がある)をエステル交換又は加水分解することで得られるポリテトラメチレンエーテルグリコール(以下、「PTMG」と略記する場合がある)は、水酸基を両末端に持つ直鎖ポリエーテルグリコールで、一般式HO−[(CHO]n−H(nは2以上の整数を表す。) で示され、伸縮性や弾力性が要求されるウレタン系樹脂や弾性繊維の原料として極めて有用である。
【0003】
ポリエーテルポリオールの製造法としては、例えば、環状エーテルあるいはこれと共重合可能な他の環状エーテルとの混合物をフルオロ硫酸や発煙硫酸などの均一系酸触媒の存在下で開環重合反応を行い、得られるエステル体を加水分解してポリエーテルポリオールを製造する方法がある。例えば特許文献1〜3にはテトラヒドロフランあるいはこれと共重合可能な他の環状エーテルとの混合物を発煙硫酸やフルオロ硫酸を主成分とする開環重合触媒の存在下に重合して得られるポリエーテルを酸性条件化で加水分解する事によりポリテトラメチレンエーテルグリコール(以下、PTMGと称す)およびオキシテトラメチレンエーテルグリコールを製造する事が記載されている。
【0004】
特許文献4には、環状エーテルを酸触媒の存在下で開環重合を行うにあたり、環状エーテル中の炭素数1〜5のケトン類と炭素数1〜5のアルコール類の濃度の合計が600重量ppm以下であることが開示されている。また、原料の環状エーテル中に水、アルコール類、アルデヒド類、又はフラン類等の化合物が含まれており、該化合物が環状エーテル中に500重量ppmを超えて含まれると触媒の劣化が進行することが開示されている。しかし、特許文献4には、どの化合物がどのような作用で触媒の劣化を引き起こしているかは何ら明確に開示されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許公告公報第48−25438号
【特許文献2】特許公告公報第49−28917号
【特許文献3】特許公告公報第45−3104号
【特許文献4】特開2011−162780号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1〜3に記載の方法で連続的に開環重合反応を行うに際しては、特に高分子量のポリエーテルポリオールを製造する際に、重合反応液の粘度が高くなり、生産効率の悪化や高粘性に耐えうる撹拌動力を有した高級設備を必要とする問題点があった。加えて、重合反応時に副生するポリエーテルポリオールのエステル体により製品純度が低下す
る問題点もあった。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであって、環状エーテルの重合反応液粘度を低下させ、エステル不純物の少ないポリエーテルポリオールに関する生産性の高い製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者等は、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、ある特定の構造を持つ少なく
とも1つのヒドロキシル基を有する化合物を、ある特定の濃度範囲で、開環重合反応時に
存在させ、環状エーテルの開環重合反応を行うことで、上記課題を解決することができる
ことを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明の要旨は、以下の[1]〜[]に存する。
[1] 均一系触媒の存在下、環状エーテルを原料として、開環重合反応、次いで加水分
解反応を行うことにより生成されるポリエーテルポリオールを含む反応液を得るにあたり
炭素数2〜6の脂肪族アルコールを該原料の環状エーテルに対して0.005モル%以
上0.1モル%以下存在させて開環重合反応を行う、ポリエーテルポリオールの製造方法

[2] 前記均一系触媒がフルオロ硫酸又は発煙硫酸であることを特徴とする[1]に記
載のポリエーテルポリオールの製造方法。
[3] 前記開環重合反応で得られるポリエーテルポリオールの数平均分子量の範囲が6
00から5000である、[1]又は[2]に記載のポリエーテルポリオールの製造方法

[4] 前記反応液から、未反応の前記環状エーテル及び前記少なくともヒドロキシル基
を1つ持つ化合物を含む混合物を分離して回収した後、該混合物を開環重合反応の原料と
して用いる、[1]〜[]のいずれかに記載のポリエーテルポリオールの製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、環状エーテルの開環重合反応を行うことで、開環重合反応液の粘度を顕著に低下する事が可能となり、高い生産効率を得る事ができる。また、最終的に得られるPTMGに含まれるエステル体不純物の低減効果も顕著である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明を具体的に記載するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下に記載の態様に限定されない。
<環状エーテル>
本発明において、開環重合反応の原料となる環状エーテルは特に限定されないが、環状エーテルを構成する炭素原子数として、通常2〜10であり、好ましくは3〜7である。具体的には、テトラヒドロフラン(THF)、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、オキセタン、テトラヒドロピラン、オキセパン、1,4−ジオキサンなどが挙げられる。これらの中でもTHFは反応性や製造物の工業的需要の点から好ましい。また、環状の炭化水素の一部がアルキル基、ハロゲン原子などで置換された環状エーテルも使用することができる。具体的に環状エーテルがTHFの場合は、3−メチル−テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフランなどが挙げられる。これら環状エーテルは1種又は2種以上を混合してもよい。
【0011】
<開環重合反応工程>
本発明で使用する開環重合反応触媒としては、環状エーテルの開環重合反応によりポリ
エーテルポリオールを生成することができる均一液の酸触媒であれば特に限定されない。
開環重合反応に用いる均一系酸触媒は、発煙硫酸、ハロゲン化水素酸、ヘテロポリ酸、及びフルオロ硫酸(以下、「FSA」と略記する)等が挙げられ、好ましくは発煙硫酸又はFSAであり、更に好ましくは、FSAである。これら均一系触媒は1種又は2種以上を混合して用いてもよい。
【0012】
均一系触媒の使用量は、触媒の種類や製造条件によって選択され、特に限定されるものではない。例として環状エーテルにTHFを、開環重合反応触媒としてフルオロ硫酸を用いる場合、フルオロ硫酸の使用量は、THFに対して通常1〜20重量%、好ましくは2〜15重量%、特に好ましくは3〜10重量%である。 均一系触媒の使用量は、目的と
する生成物のポリエーテルポリオールの分子量によっても適宜選択してよい。
【0013】
均一系触媒を用いた時の、開環重合反応温度は通常0〜200℃の範囲で選択でき、好ましくは10〜80℃、より好ましくは20〜60℃である。反応圧力は、常圧〜10MPaの範囲で選択でき、好ましくは常圧〜5MPaの範囲である。反応時間は特に制限はないが、0.1〜20時間が好ましく、より好ましくは0.5〜15時間である。なお、連続流通反応である場合は、この反応時間は滞留時間を意味する。
【0014】
<少なくともヒドロキシル基を1つ持つ化合物>
本発明における開環重合反応時に存在する少なくともヒドロキシル基を1つ持つ化合物は、好ましくは炭素数1〜12の脂肪族アルコールまたは芳香族アルコールであり、より好ましくは炭素数2〜8の脂肪族アルコール、更により好ましくは、ポリエーテルポリオールを含む反応液から未反応原料の環状エーテルと共に分離して回収し、原料として再利用しやすいという理由から、炭素数2〜6の脂肪族アルコールである。
【0015】
上記アルコール成分の具体例として、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、エチルヘキサノール、オクタノール、ノナノール、デカノール、ウンデカノール、ドデカノール等の脂肪族アルコール;フェノール等の芳香族アルコールが挙げられる。また、1種類のアルコールを用いても、複数のアルコールを組み合わせてもよい。
【0016】
開環重合反応時の少なくともヒドロキシル基を1つ持つ化合物の量は、原料の環状エーテルに対して0.002モル%以上であり、好ましくは0.003モル%以上、より好ましくは0.005モル%以上である。一方で上限は1モル%以下であり、好ましくは0.5モル%以下、より好ましくは0.1モル%以下である。開環重合反応時の少なくともヒドロキシル基を1つ持つ化合物の量が低すぎると、開環重合反応によって得られたポリエーテルポリオールを含む反応液の粘度低下やポリエーテルポリオール中のエステル体不純物が増える傾向にある。また、開環重合反応時に少なくともヒドロキシル基を1つ持つ化合物の量が高すぎると、環状エーテルの開環重合反応を阻害したり、開環重合速度が低下したり、ポリエーテルポリオール分子量が大きく変化する。
【0017】
また、環状エーテルの開環重合反応後の反応液から、未反応の原料環状エーテル及び少なくともヒドロキシル基を1つ持つ化合物を含む混合物を分離して回収した後、該混合物を開環重合反応の原料として用いることが好ましい。
【0018】
<加水分解反応工程>
原料の環状エーテルを、開環重合反応触媒の存在下で開環重合反応を行うことによって得られるポリエーテルポリオールの両末端が硫酸エステル、フルオロ硫酸エステルなどに変換中間体は、加水分解反応又はエステル交換反応を経ることによりポリエーテルポリオールとすることができる。
【0019】
加水分解工程を行う場合に加える水の量は、原料となる開環重合反応工程で原料となる環状エーテル類の合計に対して20重量パーセントから200重量パーセントが好ましい。より好ましくは50重量パーセントから150重量パーセントである。
開環重合反応後の反応液中にはポリエーテルポリオール中間体の他に未反応原料が含まれるため、加水分解工程を行う場合は、未反応原料を留去するために、未反応原料の沸点よりも高い温度で反応を行うことが好ましい。加水分解反応の温度は、通常80℃以上、好ましくは90℃以上、より好ましくは94℃以上であり、上限は通常120℃以下、好ましくは110℃以下、より好ましくは105℃以下である。
【0020】
加水分解反応の温度が上記範囲である場合、開環重合反応後の反応液中に含まれる未反応原料や水分を十分に留去することができる傾向にある。特に製造するポリエーテルポリオールの分子量が高い場合、ポリエーテルポリオールの粘度が高いことから未反応原料や水分が留去されにくい傾向にあるため、加水分解温度を高めに設定して加水分解反応を行うことが好ましい。加水分解反応温度が低すぎると、加水分解工程での未反応原料留去率が低くなる傾向にあり、残存する未反応原料によって、その後の油水分離工程で分液性が悪化する傾向にある。
加水分解反応時間は、反応液中の未反応原料の量や水分量を考慮し、公知の範囲で設定することができるが、通常1時間以上、好ましくは1.5時間以上であり、上限は通常24時間以下、好ましくは6時間以下である。
【0021】
<油水分離工程>
加水分解工程で得られた反応液は油水に分離して水層を抜き出し、水の除去効率を上げる事が可能である。この際、含まれる酸触媒を中和しても良い。加える中和剤の量は酸触媒に対して10重量パーセントから200重量パーセントが好ましい。より好ましくは30重量パーセントから150重量パーセントである。
油水分離工程で用いる中和剤は水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化バリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウムなどの無機化合物系の塩基が好ましい。より好ましくは水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウムである。
【0022】
<脱水工程>
油水分離工程より回収した油層中に含まれるポリエーテルポリオールを回収するため、蒸留により未反応の環状エーテルと水を取り除くのが一般的である。この時、脱水効率を上げるために共沸剤を用いてもよい。
蒸留方法は特に限定はされないが、回分式でも連続式でも問題なく、単蒸留やフラッシュ等の気液分離機、薄膜蒸発器などを用いても良い。蒸留条件は、温度は通常70℃以上、好ましくは80℃以上、より好ましくは105℃以上である。圧力は減圧下でも常圧下でも良いが好ましくは常圧である。
脱水工程で用いる共沸剤は特に限定されないが、水と共沸して且つ分液するものが好ましい。例えばトルエンなどが挙げられる。
【0023】
<ろ過工程>
上記脱水工程で得たポリエーテルポリオールには酸触媒の中和塩が残存しているため、濾過助剤を用いて取り除くことが好ましい。この場合のろ過方法は吸引ろ過や加圧ろ過などいずれの形態でも良く、ろ過温度は通常70℃以上、好ましくは80℃以上、より好ましくは105℃以上である。圧力は減圧下でも加圧下でも良いが好ましくは加圧である。圧力は常圧以上、好ましくは0.1MPaG以上、より好ましくは0.2MPaG以上である。濾過助剤としては珪藻土などを用いる事が好ましい。
【0024】
<ポリエーテルポリオールの分子量>
本発明の製造方法は、重合反応液の粘度を低下させることで、高い生産性で数平均分子量600〜5000のポリエーテルポリオールを製造することができる。中でも、数平均分子量2800〜5000のポリエーテルポリオールを製造する場合に効果が顕著に現れる。
【0025】
<ポリエーテルポリオールのけん化価>
けん化価の測定方法は例えばJISK0070−1992に定める化学製品のけん化価の試験方法などの滴定により要した水酸化カリウム(KOH)の量で表わされる。ポリエーテルポリオールに含まれるけん化価はエステル含有物を意味するが、けん化価が高いと製品の純度を下げるのみではなく、加熱などの使用条件で遊離した有機酸や無機酸が影響して末端脱水などの副反応の促進や酸による腐食などが懸念される。
【0026】
ポリエーテルポリオールのけん化価は通常0.2mgKOH/g以下、好ましくは0.1mgKOH/g以下、より好ましくは0.05mgKOH/g以下である。
【実施例】
【0027】
以下、本発明を実施例に基づいて更に具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
<重量平均分子量・数平均分子量>
ポリアルキレンエーテルグリコールジエステルの数平均分子量(Mn)は、ポリアルキレンエーテルグリコールジエステルのテトラヒドロフラン溶液を調製後、GPC装置〔東ソー社製、製品名「HLC−8220」 (カラム:TSKgelSuperHZM−N(4本)〕を用いて測定した。GPCのキャリブレーションには、英国POLYMER L
ABORATORIES社のPOLYTETRAHYDROFURANキャリブレーションキットを使用した。
【0028】
<比較例1>
トルク測定が可能な東京理化器械社製攪拌機EYELA−Z1210を備え付けた重合反応器(ジャケット付き1000mLセパラブルフラスコ)に三菱化学製THF600gを加え、開環重合反応触媒としてフルオロ硫酸を43g添加して45℃で5時間加熱し、開環重合反応を行った。この時の撹拌翼の回転数は200rpmとし、重合反応終了時のT
HF転化率は58.9%であり、撹拌翼のトルクは3.10kgf・cmであった。開環重合反応終了後、脱塩水を376g仕込んだハステロイ製加水分解槽に重合反応液を投入し、90℃で2時間加水分解を行った。加水分解反応液に消石灰2gと脱塩水24gを加えて1時間静置してから水層を取り除いた後、残った油層に13gの消石灰を入れて中和した。そして、この反応液から未反応のTHFを分離するため、常圧、温度140℃の条件で単蒸留を20分間行った。次に、残った反応液にトルエンを240g加え、常圧、温度150℃の条件で単蒸留を20分間行い、脱水を行った。 その後、この反応液にろ過
助剤として珪藻土(昭和化学工業社製:品名ラジオライト)を4.5g添加し、SUS製の加圧ろ過装置(目開き0.5μmPTFE製メンブランフィルター使用)を用いてろ過圧0.2MPaで加圧ろ過を実施した。 最終的に得られたろ過清澄液の単蒸留を圧力3
mmHg、温度140℃の条件で1時間行い、トルエンを除去してPTMGを得た。得られたPTMGの数平均分子量は1046であった。 また、PTMGのけん化価は0.2
1mgKOH/gであった。
【0029】
<比較例2>
トルク測定が可能な東京理化器械社製攪拌機EYELA−Z1210を備え付けた重合反応器(ジャケット付き1000mLセパラブルフラスコ)に三菱化学製THF600gを加え、開環重合反応触媒としてフルオロ硫酸を18g添加して45℃で5時間加熱し、
開環重合反応を行った。この時の撹拌翼の回転数は200rpmとし、重合反応終了時のT
HF転化率は60.1%であり、撹拌翼のトルクは3.90kgf・cmであった。開環重合反応終了後、脱塩水を630g仕込んだハステロイ製加水分解槽に重合反応液を投入し、90℃で2時間加水分解を行った。加水分解反応液に消石灰2gと脱塩水24gを加えて1時間静置してから水層を取り除いた後、残った油相に消石灰16gを加えて中和した。そして、この反応液から未反応のTHFを分離するため、常圧、温度140℃の条件で単蒸留を20分間行った。次に、残った反応液にトルエンを480g加え、常圧、温度150℃の条件で単蒸留を20分間行い、脱水を行った。 その後、この反応液にろ過助
剤として珪藻土(昭和化学工業社製:品名ラジオライト)を5.6g添加し、SUS製の加圧ろ過装置(目開き0.5μmPTFE製メンブランフィルター使用)を用いてろ過圧0.2MPaで加圧ろ過を実施した。 最終的に得られたろ過清澄液の単蒸留を圧力3m
mHg、温度140℃の条件で1時間行い、トルエンを除去してPTMGを得た。得られたPTMGの数平均分子量は2892であった。 また、PTMGのけん化価は0.10
mgKOH/gであった。
【0030】
<実施例1>
比較例1の原料に関東化学製試薬エタノールを0.3g加えた以外は同様の操作を実施した。重合反応終了時のTHF転化率は58.5%であり、撹拌翼のトルクは1.95kgf・cmであった。得られたPTMGの数平均分子量は1068であった。 また、P
TMGのけん化価は0.01mgKOH/g未満であった。また、この時に未反応で残ったエタノールの量は89.7%であった。
【0031】
<実施例2>
比較例2の原料に関東化学製試薬エタノールを0.3g加えた以外は同様の操作を実施した。重合反応終了時のTHF転化率は58.7%であり、撹拌翼のトルクは2.05kgf・cmであった。得られたPTMGの数平均分子量は3016であった。 また、P
TMGのけん化価は0.01mgKOH/gであった。また、この時に未反応で残ったエタノールの量は56.0%であった。
【0032】
【表1】
【0033】
実施例1と比較例1、及び実施例2と比較例2を対比すると、同程度の分子量のPTMGを得る際に、エタノールを500pp含むことによって、反応液を撹拌するための撹拌翼の重合トルクが低減しており、PTMGを含む反応液の粘度が低減できていることがわかる。これにより、生産効率を高めることが期待できる。また、PTMGのけん化価について、比較例に比べて実施例は低くなっていることから、エステル不純物の副生を抑制できていることがわかる。