特許第6958431号(P6958431)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6958431液体塗布装置、液体塗布搬送装置、画像形成装置および画像形成システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6958431
(24)【登録日】2021年10月11日
(45)【発行日】2021年11月2日
(54)【発明の名称】液体塗布装置、液体塗布搬送装置、画像形成装置および画像形成システム
(51)【国際特許分類】
   B05C 1/02 20060101AFI20211021BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20211021BHJP
【FI】
   B05C1/02 102
   B41J2/01 123
   B41J2/01 305
【請求項の数】13
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2018-36970(P2018-36970)
(22)【出願日】2018年3月1日
(65)【公開番号】特開2019-150758(P2019-150758A)
(43)【公開日】2019年9月12日
【審査請求日】2020年12月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100186853
【弁理士】
【氏名又は名称】宗像 孝志
(72)【発明者】
【氏名】蛯原 隆司
【審査官】 河内 浩志
(56)【参考文献】
【文献】 特開平08−234615(JP,A)
【文献】 特開2011−185972(JP,A)
【文献】 実開昭53−033443(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05C1/00−3/20
B41J2/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートに液体を塗布する塗布ローラと、
前記塗布ローラに前記液体を供給する供給ローラと、
前記塗布ローラと共に前記シートを挟持する加圧ローラと、
前記液体が塗布されたシートを前記塗布ローラから分離する第一分離部と、
前記第一分離部で分離されず供給ローラ側に至ったシートを分離する第二分離部と、
前記第二分離部において分離されたシートの少なくとも一部を収容する収容空間を形成するシート収容部と、
を備えることを特徴とする液体塗布装置。
【請求項2】
前記第一分離部は前記塗布ローラに非接触状態で保持される爪状部材であり、
前記第二分離部は前記供給ローラに接触状態で保持される爪状部材である、
請求項1に記載の液体塗布装置。
【請求項3】
前記シートを前記塗布ローラと前記加圧ローラで挟持される位置に導くガイド部を備え、
前記ガイド部は、前記シートの搬送方向に直交する上下方向を規制する上側ガイド板と下側ガイド板から構成され、
前記シート収容部は、前記下側ガイド板に設けられている、
請求項1または2に記載の液体塗布装置。
【請求項4】
前記下側ガイド板は、回転軸を中心に回転可能な構造を備え、
前記シート収容部は、前記回転軸を回転中心として180°以上の回動が可能である、
請求項3に記載の液体塗布装置。
【請求項5】
前記下側ガイド板は、前記塗布ローラと前記加圧ローラの間に前記シートが突入する角度を調整する調整機構を備える、
請求項3または4に記載の液体塗布装置。
【請求項6】
前記供給ローラは、前記液体を貯留する液体貯留部を含む液体供給ケースに収容されていて、
前記シート収容部は、前記液体供給ケースの外壁に設けられている、
請求項1または2に記載の液体塗布装置。
【請求項7】
前記供給ローラは、複数のローラから構成される多段ローラであり、
前記液体を液体貯留部から汲み上げる第一供給ローラと、汲み上げられた液体が前記塗布ローラにおいて前記シートに塗布される量を均一にするための第二供給ローラと、第二供給ローラにおいて均一にされた処理液を前記塗布ローラに供給する第三供給ローラと、を含む、
請求項1乃至6のいずれか一項に記載の液体塗布装置。
【請求項8】
前記加圧ローラを前記塗布ローラに押圧することをサポートするサポートローラを備える、
請求項1乃至7のいずれか一項に記載の液体塗布装置。
【請求項9】
前記塗布ローラは、前記供給ローラから離れる方向に付勢されていて、
前記加圧ローラが加圧している状態では前記供給ローラに接触し、前記加圧ローラが脱圧した状態では前記供給ローラに接触しない位置に移動する、
請求項1乃至8のいずれか一項に記載の液体塗布装置。
【請求項10】
シートに液体を塗布する液体塗布装置と、
前記液体塗布装置に前記シートを搬入し、液体が塗布されたシートを搬送する搬送装置と、を備え、
前記液体塗布装置は、請求項1乃至9のいずれか一項に記載の液体塗布装置である、
ことを特徴とする液体塗布搬送装置。
【請求項11】
前記液体塗布装置は、スライドレールを介して筐体に保持されていて、前記液体塗布装置の外部に移動可能に構成されている、
請求項10に記載の液体塗布搬送装置。
【請求項12】
シートに画像を形成する画像形成部と、
前記画像を形成する前のシートに液体を塗布する液体塗布部と、を備え、
前記液体塗布部は、請求項1乃至9のいずれか一項に記載の液体塗布装置である、
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項13】
シートに画像を形成する画像形成装置と、
前記シートに液体を塗布する液体塗布装置と、
を有する画像形成システムであって、
前記液体塗布装置は、請求項1乃至9のいずれか一項に記載の液体塗布装置である、
ことを特徴とする画像形成システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体塗布装置、液体塗布搬送装置、画像形成装置および画像形成システムに関する。
【背景技術】
【0002】
記録媒体に液体を塗布する液体塗布装置と、液体塗布装置の後段に配置され、液体が塗布された記録媒体に画像形成を施す画像形成装置と、を含む画像形成システムが知られている。液体塗布装置において、記録媒体への液体の塗布には、ローラ状の部材(塗布ローラ)が用いられる。この塗布ローラに記録媒体を接触させながら搬送し、液体が塗布された記録媒体を画像形成装置へと搬送する。そこで当該液体塗布装置には、記録媒体が塗布ローラに巻き付かないようにするため、塗布ローラよりも搬送方向下流側にローラから記録媒体を分離する機構を備える。
【0003】
従来の液体塗布装置において、記録媒体を塗布ローラから分離するために爪状の部材を塗布ローラに接触させることで、塗布ローラに巻き付こうとする記録媒体を分離させる構成が開示されている(例えば、特許文献1を参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示されている構成のように、塗布ローラに爪状部材を接触させるようにすると、爪状部材が接触した塗布ローラの部分から液体が除去されてしまい、記録媒体へ塗られる液体にスジ状のムラが生ずることになる。記録媒体に塗布される当該液体は、画像形成における品質を高める作用を有するものであるから、液体の塗布ムラがあると、画像形成結果の質の低下を誘発する原因となりうる。
【0005】
液体の塗布ムラを防ぐには、塗布ローラの表面に接触する部材を用いなければよいが、その場合は塗布ローラに巻き付こうとする記録媒体の分離が不十分になり、塗布ローラに液体を供給するローラ(供給ローラ)にまで記録媒体が巻き付いてしまう事態になる。供給ローラは、液体塗布装置の内部に配置されるので、これに記録媒体が巻き付くと除去が困難である。また、供給ローラは塗布ローラよりも液体の付着量が多いので、これに巻き付いた記録媒体を引っ張って除去しようとしても、多量の液体により弱くなっている記録媒体は、ちぎれて内部に残留してしまう可能性も高い。すなわち、塗布ローラに記録媒体が巻き付くことを防ぐことと、塗布ムラを防止することを両立させるには課題がある。
【0006】
本発明は、塗布ローラに塗布ムラを生じさせる構成を用いることなく、供給ローラに記録媒体が巻き付いた場合であっても、これを容易に除去できる液体塗布装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は、液体塗布装置に関するものであって、シートに液体を塗布する塗布ローラと、前記塗布ローラに前記液体を供給する供給ローラと、前記塗布ローラと共に前記シートを挟持する加圧ローラと、前記液体が塗布されたシートを前記塗布ローラから分離する第一分離部と、前記第一分離部で分離されず供給ローラ側に至ったシートを分離する第二分離部と、前記第二分離部において分離されたシートの少なくとも一部を収容するシート収容部と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、塗布ローラに塗布ムラを生じさせる構成を用いることなく、供給ローラに記録媒体が巻き付いた場合であっても、これを容易に除去できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明に係る画像形成システムの実施形態である印刷システムのシステム構成図。
図2】本発明に係る液体塗布搬送装置の内部構造の実施形態を示す構成図。
図3】本実施形態に係る塗布装置の例を示す図。
図4】本実施形態に係る塗布装置において塗布ローラに巻き付いた用紙を除去するときの状態を示す図。
図5】比較例の塗布装置における供給ローラ側に用紙が巻き付いた状態を示す図。
図6】本発明に係る液体塗布装置の実施形態である塗布装置の特徴的な構成を示した図。
図7】本実施形態に係る塗布装置において塗布ローラに巻き付いた用紙がシート収容部に送られる様子を示した図。
図8】本実施形態に係る塗布装置において塗布ローラに巻き付いた用紙を取り除くときの状態を示した図。
図9】本実施形態に係る塗布装置において供給ローラに巻き付いた用紙を取り除くときの状態を示した図。
図10】本実施形態に係る塗布装置が備える用紙の突入角度を調整する調整機構を示す図。
図11】別の実施形態に係る塗布装置において、塗布ローラに巻き付いた用紙がシート収容部に送られる様子を示した図。
図12】別の実施形態に係る塗布装置において、供給ローラに巻き付いた用紙を取り除く時の状態を示した図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係る液体塗布装置、液体塗布搬送装置、画像形成装置および画像形成システムの実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本発明の好適な実施形態であるので、技術的に好ましい種々の限定が付されている。しかし、本発明の範囲は、以下の説明によって不当に限定されるものではなく、また、本実施形態で説明される構成の全てが本発明の必須の構成要件ではない。
【0011】
まず、本発明に係る画像形成システムの実施形態について説明する。図1に示すように、画像形成システムの実施形態である印刷システム100は、給送装置110と、前処理液塗布装置120と、プリンタ130と、乾燥装置140と、媒体排出装置150と、を備える。なお、前処理液塗布装置120は、本発明に係る液体塗布搬送装置の実施形態に相当する。
【0012】
給送装置110は、シート状の記録媒体を、搬送経路下流に設けられた前処理液塗布装置120に供給する。給送装置110から供給されるシート状の記録媒体は、例えば、カット紙などである。以下、本実施形態の説明において、シート状の記録媒体を「用紙8」として表記する。
【0013】
前処理液塗布装置120は、インクのにじみ防止や浸透補助などの画質向上のため作用を有する液体を用紙8に塗布する塗布装置12と、液体が塗布された用紙8を画像形成装置であるプリンタ130に向けて搬送する搬送ローラ70を含む搬送装置と、を備える。なお、図2において搬送ローラ70は一部にのみ符号を付している。塗布装置12は、本発明に係る液体塗布装置の実施形態に相当する。なお、塗布装置12の詳細については、後述する。また、本実施形態において、前処理液塗布装置120において用紙8に塗布される液体は、「前処理液7」と表示する。
【0014】
前処理液塗布装置120は、図2に示すように、反転パス60と、反転パス60に用紙8を搬送するための分岐路を形成する分岐パス50と、前記した搬送ローラ70と、を備える。両面に前処理液7を塗布する場合には、先に用紙8の一方の面(表側)に前処理液7を塗布した後、分岐パス50を介して反転パス60に用紙8を搬送して反転させる。反転させた用紙8を再び塗布装置12に通過させて他方の面(裏側)にも前処理液7を塗布する。以上のように両面において前処理液7が塗布された用紙8は、分岐パス50を通過してプリンタ130に搬送される。
【0015】
プリンタ130は、前処理液塗布装置120において前処理液7が塗布された用紙8に、例えばインク滴を吐出して画像形成を施す画像形成部に相当する。
【0016】
乾燥装置140は、プリンタ130により形成された用紙8の表側の画像を乾燥させる。用紙8の表裏に印刷する場合、用紙8は乾燥装置140からプリンタ130への戻りパスにより反転されて、プリンタ130で表裏が反転された用紙8の表側(反転前の裏側)にインク滴を吐出して所望の画像が形成される。その後、乾燥装置140において用紙8の表側(反転前の裏側)の画像を乾燥させる。その後、用紙8は媒体排出装置150に排出される。
【0017】
なお、上記にて説明をした各装置が備える機能を、プリンタ130の内部に集約した画像形成装置は、本発明に係る画像形成装置の実施形態に相当するものとなる。その場合、上記の各装置が備える構造は、その大きさや詳細な部分において異なる構造からなるが、主な機能は同等である。
【0018】
本発明に係る画像形成システムおよび画像形成装置は、例えば、液体吐出記録方式であって、本明細書において記載される発明および実施形態も液体吐出記録方式を前提とするものである。本実施形態に係る印刷システム100は、インクを吐出する記録ヘッド(液体吐出ヘッド)を備え、搬送される媒体に対して記録ヘッドからインクが吐出されて、媒体に画像形成を行うものである。例えば、液体吐出ヘッドが主走査方向に移動しながらインク滴を吐出して画像を形成するシリアル型インクジェットプリンタや、液体吐出ヘッドが移動しない状態でインク滴を吐出して画像を形成するライン型ヘッドを備えるライン型インクジェットプリンタが相当する。
【0019】
なお「媒体」とは、本実施形態では用紙8であるが、画像形成が行われる対象を紙に限定するものではなく、OHPシートなど搬送可能なシート状の部材を含む。媒体は、インク、その他の像を形成するための液体などが付着可能なものを意味する。被記録媒体あるいは記録媒体、記録紙、記録用紙などとも称される。また、「画像形成」と同義語として、記録、印字、印写、印刷なども使用する。
【0020】
そこで、本明細書においては、液体吐出記録方式の「画像形成装置(インクジェットプリンタ)」は、紙、糸、繊維、布帛、皮革、金属、プラスチック、ガラス、木材、セラミックス等の被記録媒体に液体を吐出して画像形成を行う装置を意味する。
【0021】
「画像形成」とは、文字や図形等の意味を持つ画像を媒体に対して付与することだけでなく、パターン等の意味を持たない画像を媒体に付与すること(単に液滴を媒体に着弾させること)をも意味する。
【0022】
また本明細書における「インク」とは、一般的にインクと称されるものに限るものではなく、吐出されるときに液体状になり、記録ヘッドを介して吐出可能なものを含むものである。例えば、DNA試料、レジスト、パターン材料なども含まれる。
【0023】
また、「画像」とは平面的なものに限らず、立体的に形成されたものに付与された画像、または立体自体を3次元的に造形して形成された像も含まれる。
【0024】
液体吐出方式の画像形成装置において、特にインクジェット方式の画像形成は、低騒音、低ランニングコストに加えて、カラー化が容易といった利点を有していることから、近年、急速に普及してきている。しかし、専用紙以外のウェブに画像を形成すると、滲み、濃度、色調や裏写りなどといった初期の品質問題に加えて、耐水性、耐候性といった画像の堅牢性に関わる問題を有しているため、これらの問題を解決する提案がなされている。
【0025】
それらの解決手段として、記録媒体である用紙にインク滴が着弾する前にインクを凝集させる機能を有する前処理液を塗布して、画質を改善する方法がある。この前処理液を塗布する方法として、ローラを用いて媒体の全面に塗布する方法が知られている。
【0026】
次に、本実施形態に係る前処理液塗布装置120が備える塗布装置12について説明する。塗布装置12は、本発明に係る液体塗布装置の実施形態である。まず、図3を用いて塗布装置12の基本的な構造を説明する。後に、本発明に係る特徴的な構造の実施形態について、他の図を用いて説明することとする。図3に明示した構成と、後に説明する特徴的な構成を説明する図に示す構成とを比較することで、本実施形態おける効果について明確にする。
【0027】
塗布装置12は、前処理液7を貯留する液体供給ケースである前処理液供給パン18の内部に供給ローラを構成するスクイーズローラ6と、絞りローラ5と、中間ローラ4と、が多段に配置されている。また、中間ローラ4の上方に、塗布ローラ2と、加圧ローラ9と、サポートローラ10と、が多段に配置されている。すなわち、塗布装置12は、複数のローラが上下方向に配置された多段ローラ構成になっている。
【0028】
スクイーズローラ6の外周の一部は、前処理液供給パン18の内部に貯留されている前処理液7に浸る状態になっている。スクイーズローラ6は前処理液7に接する位置関係で保持されている。スクイーズローラ6は、前処理液7を液体貯留部から汲み上げる第一供給ローラに相当する。
【0029】
スクイーズローラ6の上方には絞りローラ5が配置されている。スクイーズローラ6と絞りローラ5の外周面は中間ローラ4からの押圧力を受けて接触するように保持されている。絞りローラ5は、スクイーズローラ6によって汲み上げられた前処理液7が、塗布ローラ2において用紙8に塗布される量を均一になるようにする第二供給ローラに相当する。
【0030】
絞りローラ5の上方には、中間ローラ4が配置されている。中間ローラ4は、絞りローラ5と外周面が離間する状態で保持されていて、後述するように塗布ローラ2による押圧力が加わったときに互いに接触するようになっている。塗布ローラ2は、絞りローラ5において均一にされた前処理液7を塗布ローラ2に供給する第三供給ローラに相当する。
【0031】
スクイーズローラ6と、絞りローラ5と,中間ローラ4は、それぞれ回転軸を介して所定の位置に保持されていて、それぞれの回転軸にはギヤが設けられている。各ギヤは、隣接するローラ側のギヤと接しており、一方が回動すると他方も回動するようになっている。塗布装置12は、スクイーズローラ6の駆動原としてモータ20を備える。スクイーズローラ6がモータ20からの駆動力を受けて回転すると、その回転軸に設けられているギヤが絞りローラ5側のギヤを回転させるので絞りローラ5も回転する。絞りローラ5が回転すると、絞りローラ5の回転軸のギヤを介して中間ローラ4へと回動力が伝達し、中間ローラ4も回転する。
【0032】
スクイーズローラ6は回転すると、前処理液7を外周面に付着させて汲み上げるので、スクイーズローラ6が回転して掬い上げた前処理液7は、スクイーズローラ6からの回動力の伝達によって絞りローラ5の外周面の長手方向全体に付着する。このとき、絞りローラ5と中間ローラ4の外周面は接しながら回転しているので、絞りローラ5が中間ローラ4の外周面の長手方向全体に前処理液7を塗布されて移る。このようにして、スクイーズローラ6で汲み上げられた前処理液7は、絞りローラ5を経て中間ローラ4に到達する。
【0033】
中間ローラ4の上方に配置されている塗布ローラ2は、モータ16により回転駆動する。この回転駆動によって、加圧ローラ9との間に挟持している用紙8を搬送する。塗布ローラ2の回転軸に設けられているギヤと、加圧ローラ9の回転軸に設けられているギヤは接している。加圧ローラ9側のギヤとサポートローラ10の回転軸に設けられているギヤは接している。したがって、モータ16からのる駆動力は、ギヤを介して加圧ローラ9とサポートローラ10の駆動力となる。
【0034】
加圧ローラ9とサポートローラ10は、加圧ユニット121に配置され、加圧ローラ9とサポートローラ10は対で上下に動く構造になっており、モータ17によって、塗布ローラ2への加圧と脱圧が制御される構造を備える。また、加圧ユニット121は、回転軸11を回転軸として回動する構造を備える。印刷システム100が動作して画像形成処理が実行されるときは、用紙8が前処理液塗布装置120に到達する前にモータ17が作動して、サポートローラ10と加圧ローラ9が塗布ローラ2側に加圧される。この加圧時に、加圧ローラ9が長手方向に撓むのを防止するために、サポートローラ10が加圧ローラ9を上部から押さえている。
【0035】
加圧ユニット121によって塗布ローラ2は中間ローラ4に押圧される。そして、塗布ローラ2はモータ16によって回転することで、中間ローラ4の外周に付着している前処理液7を長手方向の全体に付着させる。加圧ユニット121によって加圧されている塗布ローラ2と、塗布ローラ2に直接的に加圧している加圧ローラ9との間には、用紙8が挟持されている。したがって、用紙8の一方の面は塗布ローラ2に押し付けられた状態で搬送される。このとき、用紙8の一方の面に前処理液7が塗布される。以上の構成が、用紙8に前処理液7を塗布する塗布装置12の基本的な構成となる。
【0036】
なお、前処理液供給パン18は、モータ19の駆動力によって、上下方向(供給ローラを構成するスクイーズローラ6、絞りローラ5、中間ローラ4の配列方向)に移動する構造を備える。前処理液供給パン18は、貯留している前処理液7の貯留量や、スクイーズローラ6を介して塗布ローラ2へ前処理液7を供給する量に応じて、上下するように制御される。前処理液供給パン18は、前処理液7を貯留する液体貯留部を含む。
【0037】
中間ローラ4は塗布装置12を構成するフレーム(筐体)に固定されていて、上部に配置されているサポートローラ10、加圧ローラ9、塗布ローラ2の圧力と、下部に配置されている絞りローラ5、スクイーズローラ6の圧力を受けるように構成されている。
【0038】
給送装置110から搬入された用紙8は、入口上ガイド板13と入口下ガイド板1に挟まれた状態で、搬送ローラにより、塗布ローラ2と加圧ローラ9の間に突入する。入口上ガイド板13と入口下ガイド板1によって、塗布ローラ2と加圧ローラ9に挟持される位置に用紙8は導かれる。すなわち、入口上ガイド板13と入口下ガイド板1が、上側ガイド板と下側ガイド板によって構成されるガイド部に相当する。入口上ガイド板13と入口下ガイド板1によって、用紙8は、搬送方向に上下方向の移動が規制される。これによって、用紙8が搬送路から外れることを防いでいる。
【0039】
塗布ローラ2はモータ16の駆動により回転する。この時、塗布ローラ2の回転軸に設けられているギヤから、加圧ローラ9の回転軸に設けられているギヤに駆動力が伝達され、加圧ローラ9のギヤからサポートローラ10の回転軸に設けられているギヤに駆動力が伝達される。塗布ローラ2と加圧ローラ9の回転方向は逆方向になるようにギヤが設置されている。したがって、入口上ガイド板13と入口下ガイド板1によって塗布ローラ2と加圧ローラ9との間に導かれた用紙8は、これらの回転によって搬送方向に向かう搬送力を受ける。
【0040】
塗布ローラ2に対して搬送方向下流側には、ガイド爪3が配置されている。ガイド爪3は、塗布ローラ2と加圧ローラ9に挟持されて前処理液7を塗布された用紙8が、搬送方向に搬送されるときに、塗布ローラ2からの分離を促すものである。すなわち、曲率分離により塗布ローラ2から離れた用紙8が、出口上ガイド板15と出口下ガイド板14の間へとスムーズに移動できるようにするためのものである。
【0041】
ガイド爪3は、塗布ローラ2の外周面に接触しない位置に配置されている。ガイド爪3は、用紙8の搬送中の塗布ローラ2の外周に接触しない「非接触状態」で保持される爪状部材である。すなわち、ガイド爪3は、第一分離部を構成する。ガイド爪3は、塗布ローラ2の長手方向において複数個が配置されている。なお、個数および配置間隔はガイド爪3の機能を発揮させるために必要となる個数および配置間隔であればよい。
【0042】
ガイド爪3と塗布ローラ2の外周面との間には、任意のギャップ(隙間)が形成されている。このギャップは、各ガイド爪3それぞれがストッパーと弾性体によって保持されることで形成されるようになっている。塗布ローラ2によって前処理液7が塗布された用紙8は、通常であれば、その搬送方向先端がガイド爪3の上側の外面に沿って搬送方向に移動するので、搬送に伴って用紙8は塗布ローラ2からスムーズに出口上ガイド板15と出口下ガイド板14の間に導かれる。その後、用紙8は搬送装置によりプリンタ130へと送られる。
【0043】
次に、図3に示した構成からなる塗布装置12において、塗布ローラ2に用紙8が巻き付くときの例について説明する。
【0044】
図4は、塗布ローラ2から分離されずに巻き付いて、搬送方向と異なる方向に先端部が向かってしまった用紙8を例示している。回転軸11を中心にして回動できる加圧ユニット121を回動させて、図4に示すように、加圧ユニット121側に取り付けられている入口上ガイド板13を上方に回動させると、入口下ガイド板1と入口上ガイド板13との間が大きく開口する状態になる。これによって、加圧ローラ9と塗布ローラ2との間が露出され、塗布ローラ2に巻き付いている用紙8にアクセスしやすくなる。以上のように、塗布装置12は、塗布ローラ2に巻き付いている用紙8を取り除くことは容易にできる構造を備える。
【0045】
加圧ユニット121を回動させると、塗布ローラ2側に押し付けられていたガイド爪3と塗布ローラ2とのギャップが大きく開く。この状態であれば、塗布ローラ2に巻き付いた用紙8を取り除くときにガイド爪3が邪魔にならず、容易に取り除くことができる状態になる。
【0046】
塗布ローラ2に巻き付いた用紙8がさらに塗布装置12の内部に用紙8が入り込んでしまった場合について図5を用いて説明する。図5は、塗布ローラ2に巻き付いた用紙8がガイド爪3をすり抜けてしまって塗布ローラ2から分離されず、中間ローラ4や絞りローラ5およびスクイーズローラ6にまで至った状態を例示している。図5のような状態であっても、加圧ユニット121を回動させることで塗布ローラ2を露出させることで、塗布ローラ2にアクセスしやすい状態にし、巻き付いている用紙8を上方に引っ張り上げて、取り除くことができる場合もある。
【0047】
この場合、例えば、用紙8が剛性の低い薄い用紙などの場合は、前処理液7が付着した状態で塗布ローラ2の上部に引き抜こうとすると、用紙8が途中(例えば中間ローラ4と絞りローラ5の間など)でちぎれてしまうこともある。この場合、供給ローラ(中間ローラ4、絞りローラ5、スクイーズローラ6)のいずれか、または、複数において、用紙8の断片が取り除けない状態で残ることになる。このように、供給ローラに巻き付いた用紙8を取り除くには、分解清掃などが必要になり、容易に用紙8を取り除くことはできない状態になる。
【0048】
本実施形態に係る塗布装置12は、塗布ローラ2に巻き付いた用紙8がガイド爪3をすり抜けたとしても、その後、供給ローラの一部に巻き付いた用紙8と容易に取り除く構造を備える。この特徴的な構造について、図6を用いて説明する。
【0049】
図6に示すように、塗布ローラ2は、塗布装置12または前処理液塗布装置120の本体側に固定されたバネなどの弾性体33により、供給ローラを構成する中間ローラ4から離れる方向に付勢されている。言い換えると、塗布ローラ2は、弾性体33によって加圧ローラ9が配置されている方向に付勢されていて、前処理液供給パン18の上方に押し上げられる構造になっている。すでに説明したとおり、加圧ユニット121は、回転軸11を回転中心として塗布ローラ2から離れる方向に回動する。このとき、塗布ローラ2に対する加圧ローラ9からの圧力は脱圧状態になる。この脱圧状態では、塗布ローラ2に弾性体33から加わっている付勢力によって、塗布ローラ2は中間ローラ4から離れる方向に移動する。
【0050】
塗布ローラ2に対する加圧ユニット121からの圧力が加わっていない状態(脱圧状態)になると、中間ローラ4は塗布ローラ2から離れる。なお、中間ローラ4は、フレームに固定されているので、塗布ローラ2からの圧力が無くなると任意の距離を保った状態で保持される。
【0051】
ガイド爪3は、所定の回転軸を中心にして塗布ローラ2から離れる方向に回転可能な構造になっている。
【0052】
また、図6に示すように、中間ローラ4の搬送方向上流側近傍には、分離爪30が配置されている。分離爪30は、中間ローラ4の外周面に接触していて、弾性体によって、中間ローラ4の外周面に押し付けられる爪状部材である。なお、分離爪30は、中間ローラ4の長手方向において、複数個配置されていて、それぞれにおいて弾性体による付勢がされている。したがって、中間ローラ4が回転している間も、複数の分離爪30が中間ローラ4の外周に接触した状態になっている。すなわち、分離爪30が第二分離部を構成する。
【0053】
また、分離爪30の搬送方向上流側であって、入口下ガイド板1の下方には、受け部材31が取り付けられている。受け部材31は、印刷システム100で使用される用紙8における、搬送方向と直交する方向(用紙8の幅方向)の最大寸法よりも大きな寸法をもって形成されている。受け部材31は、塗布ローラ2で分離されず、中間ローラ4側にまで巻き込まれた用紙8が、中間ローラ4の外周面に沿って巻き込まれそうになり、分離爪30で分離された用紙8を収容する収容空間を形成する。すなわち、受け部材31は、少なくとも用紙8の一部を収容するシート収容部を構成する。
【0054】
通常の運用状態では、入口上ガイド板13が加圧ユニット121の回動によって回動すると、入口下ガイド板1と入口上ガイド板13との間が大きく開く。この状態において、入口下ガイド板1は、回転軸32を中心にして、搬送方向上流側に180°以上回転する構造を有する。
【0055】
次に、本実施形態に係る塗布装置12において、塗布ローラ2から用紙8が分離できずに供給ローラ側に巻き込まれた状態について図7を用いて説明する。
【0056】
塗布装置12において、塗布ローラ2に用紙8が巻き付かずに正常に搬送されるときは、用紙8が塗布ローラ2と加圧ローラ9により挟持されて、上流側の入口上ガイド板13と入口下ガイド板1の方向に進む。その後、用紙8は塗布ローラ2と中間ローラ4に挟持されながら進み、曲率分離によって塗布ローラ2から離れた用紙8はガイド爪3によって出口上ガイド板15と出口下ガイド板14の間への移動を促される。
【0057】
加圧ローラ9は前処理液7が付着しても用紙8に前処理液7が付着しないよう、表面に凹凸が付いたローラとなっている。このため、用紙8は加圧ローラ9側に巻きつくことは無く塗布ローラ2側に巻きつく。したがって、ガイド爪3は塗布ローラ2の下流側にのみ配置される。
【0058】
しかし、例えば薄紙などの剛性の低い用紙8を用いる場合は、前処理液7が付着した塗布ローラ2側に巻きついて、さらに前処理液7が付着した中間ローラ4側に張り付いてしまう場合がある。
【0059】
塗布ローラ2の搬送方向上流側には検知センサ35が配置されていて、塗布ローラ2の搬送方向下流側には検知センサ36が配置されている。また、塗布ローラ2の搬送方向下流側であって、塗布ローラ2と中間ローラ4との間に巻き付き検知センサ37が配置されている。
【0060】
塗布ローラ2において前処理液7が塗布された用紙8が正常に搬送されているときは、検知センサ35が用紙8を検知してから任意の時間内に検知センサ36で用紙8を検出する。一方、原因は不明であっても、任意の時間内に検知センサ36において用紙8が検知されなかった場合は、用紙8の搬送に異常が生じていると判断できる。この場合、制御部は、検知センサ35と検知センサ36の検知結果に基づいて、搬送ローラの回動を停止し、また、モータ16やモータ20、モータ17の動作も停止する。これによって、用紙8の搬送が停止する。
【0061】
任意の時間内に用紙8を検知できなかった原因が、用紙8が塗布ローラ2に巻きついていたことだとすると、検知センサ35により用紙8が検知されてから検知センサ36が用紙8を検知しないことで異常を判定するまでの時間において、モータ16やモータ20は動作している。各モータが動作している間は、塗布ローラ2は回動するので、用紙8を搬送方向に押し出そうとする。また、供給ローラもそれぞれ回動し続けている。すなわち、用紙8が塗布ローラ2に巻き付いて、かつ、供給ローラに巻き付くことができる動作が継続することになる。この場合、塗布ローラ2に巻き付いて中間ローラ4側に用紙8が移動しているならば、巻き付き検知センサ37が用紙8を検出する。
【0062】
したがって、任意の時間内であったとしても、巻き付き検知センサ37が用紙8を検知したときは、モータ16やモータ20の動作を停止すればよい。その場合であっても、用紙8がある程度は中間ローラ4に巻き付こうと進行することになる。したがって、モータ16及びモータ20の動作を停止するまでのタイムラグの間に、用紙8が塗布ローラ2から中間ローラ4、絞りローラ5へと巻き付くように移動することが起きうる。
【0063】
これに対応するために、本実施形態に係る塗布装置12は、中間ローラ4の外周面に接触する分離爪30を備えている。分離爪30は、中間ローラ4に対して、搬送方向上流側に配置されている。塗布ローラ2に巻き付いて中間ローラ4にまで用紙8が搬送されてきたときは、分離爪30によって中間ローラ4から分離され、そのままシート収容部である受け部材31へと導かれるように構成されている。
【0064】
したがって、分離爪30によって、中間ローラ4以降のローラ(絞りローラ5やスクイーズローラ6)にまで用紙8が搬送されることを防止し、除去が容易な構造を備える受け部材31へと、用紙8が導かれる。
【0065】
分離爪30は、供給ローラに対して接触式の第二分離部であって、樹脂材等で整形された部品からなる。一方、中間ローラ4は、ステンレス鋼材などの金属材料で構成されている。したがって、分離爪30よって中間ローラ4の外周面(前処理液7がと付着する面)に傷等がつくことはなく、前処理液7のムラも生じさせない。
【0066】
図7に例示したように、用紙8が塗布ローラ2から正常に分離されずに巻き付いたままになると、用紙8は中間ローラ4側に至ることになる。そのような状態になっても、本実施形態に係る塗布装置12は、図8に例示するように、用紙8を容易に取り出すことができる。
【0067】
受け部材31が設けられている入口下ガイド板1と、入口下ガイド板1と対向する入口上ガイド板13の間は、図8に示すように大きく開く構造になっている。巻き付き検知センサ37によって用紙8の巻き付きが検知されたとき、塗布装置12の動作は停止する。その後、回転軸11を回転中心として加圧ユニット121を回動させると、加圧ユニット121に接合されている入口上ガイド板13も回転軸11を回転中心として回動し、上方に移動する。これによって、塗布ローラ2の上部が大きく開口されて露出するので、上部から用紙8を取り除くこともできる。
【0068】
しかし、この場合は、用紙8が中間ローラ4側まで巻き付いた場合には、上部からだけでは用紙8を全て取り除くことは難しい。特に薄紙などの場合、前処理液7が付着することでより切れやすくなり、上部から無理に引き抜こうとすると途中で切れて取り除くことが困難になる。そこで、加圧ユニット121を回動させて塗布ローラ2への加圧ローラ9からの加圧を無くすと、弾性体33の弾性力の作用によって、塗布ローラ2が上方に移動する。これによって、塗布ローラ2と中間ローラ4の間には隙間が生じ、動作時のように接触状態から分離状態に移行する。したがって、中間ローラ4側にまで巻き付いている用紙8が塗布ローラ2と中間ローラ4で挟み込まれている状態から開放されて取り除きやすくなる。
【0069】
また、中間ローラ4に巻きついてしまった場合でも、接触式の分離爪30によって、用紙8は中間ローラ4から分離されて受け部材31に向けて排出されている。したがって、用紙8が中間ローラ4に巻き付いて強く付着する状態にはならないから、用紙8をとりのぞくことは容易にできる状態になっている。
【0070】
さらに、図8のように、中間ローラ4から分離しして受け部材31に排出された用紙8を、塗布装置12から容易に取り除くことができる状態になる。つまり、加圧ユニット121の回動とともに回動して、入口上ガイド板13と入口下ガイド板1との間には大きく空間があく。入口下ガイド板1は、回転軸32を回転中心として180°以上回動する構造を備えている。したがって、入口下ガイド板1を回動させることで、図9に示すように、受け部材31は上方に向けた状態に移行できる。受け部材31に用紙8を収納するときの収納口は、上方に向けたでは、開口が外側に向いた状態になる。つまり、用紙8をむき出しの状態にすることができる。これによって、受け部材31から用紙8を容易に取り出すことができる。すなわち、中間ローラ4に巻き付いた用紙8も容易に取り除くことができる。また、前処理液7が付着した用紙8であってもちぎれたり、飛散したりすることなく、また、塗布装置12の内部を手探りで作業する状態とは異なり、メンテンナンスをする人物への付着や衣類への付着も注意しながら簡単に清掃することができる。
【0071】
なお、入口下ガイド板1は、回動したときに、ストッパーによって突き当たる位置で止まる構成になっている。ストッパーは、塗布装置12の筐体、前処理液塗布装置120の筐体などに固定されているものである。
【0072】
以上説明をした本実施形態に係る前処理液塗布装置120によれば、用紙8に前処理液7をムラ無く塗布することができるように塗布ローラ2から分離がされず塗布装置12の内部側にまで用紙8が巻き込まれそうになっても、それを効果的に防止することができる。
【0073】
また、塗布ローラ2において分離されず、中間ローラ4に用紙8が巻き付いたとしても、さらに内部に用紙8が進入することなく、取り出し容易な位置に回収機構を備える。
【0074】
回収機構は、塗布装置12の上方を開放した状態で180°以上回動する構造を有しているので、塗布ローラ2から中間ローラ4にまで巻き付いた用紙8であっても容易に回収して清掃することができる。
【0075】
本実施形態に係る塗布装置12は、前処理液塗布装置120に対してスライドレールなどを介して設置されている。すなわち、塗布装置12は、前処理液塗布装置120に搭載される液体塗布部であって、前処理液塗布装置120の外部に移動可能に構成されている。これによって、塗布装置12から用紙8を取り除く作業を行いやすい状態にするために、容易に取り出しできるように構成されている。したがって、上記にて説明したように、用紙8を取り出すために加圧ユニット121を回動するときは、塗布装置12を前処理液塗布装置120から引き出した状態で行う。なお、この場合、引き出される対象は、塗布装置12(入口下ガイド板1,入口上ガイド板13,出口下ガイド板14,出口上ガイド板15含む)である。すなわち、上記において、図4以降を用いて説明した状態では、加圧ユニット121を回動して、入口下ガイド板1を反転する操作は、塗布装置12を前処理液塗布装置120から引き出した状態で行われる。そこで、塗布ユニットともに受け部材31も一体で装置から引き出し可能であることが好ましい。
【0076】
本実施形態に係る塗布装置12が備える入口下ガイド板1と入口上ガイド板13とで構成される入口側ガイドは、塗布ローラ2と加圧ローラ9との間に用紙8を導く搬送路を構成する。このうち、入口下ガイド板1は、塗布ローラ2と加圧ローラ9のニップ部に用紙8が突入する位置を規定する部材に当たる。
【0077】
本実施形態に係る塗布装置12は、入口下ガイド板1の塗布ローラ2側の高さを調整できる高さ調整機構を備える。入口下ガイド板1の高さ調整機構は、入口下ガイド板1の塗布ローラ2側の端部の高さ位置を調整可能な調整ネジ42と、調整ネジ42が所定の位置で固定される固定部43から構成される。固定部43は、前処理液塗布装置120の筐体内部の壁面に設けられた平面部でいいし、前処理液供給パン18の外壁面から突出させて設けた平面部でもよい。
【0078】
調整ネジ42は、塗布ローラ2の長手方向の両端部に相当する位置のそれぞれに設けられている。調整ネジ42の先端部の高さを変えることで、用紙8が塗布ローラ2と加圧ローラ9の間に突入する角度が調整される。したがって、この角度を塗布ローラ2への巻き付きが発生しにくい角度に調整することで、用紙8のローラへの巻き付きを低減させることができる。
【0079】
次に、本発明に係る塗布装置の別の実施形態について図11および図12を用いて説明する。図11および図12は本実施形態に係る塗布装置12が備える用紙回収構造の別例である。すでに説明をした実施形態では、入口下ガイド板1に受け部材31を設けていた。そして、入口下ガイド板1を回動させる構造を備えることで、用紙8を取り出すときには、受け部材31をむき出しにできる構成を備えていた。したがって、入口上ガイド板13を回動させて入口下ガイド板1の回動スペースを大きく確保する必要があった。
【0080】
本実施形態に係る塗布装置12は、入口下ガイド板1の回動スペースを確保することなく、中間ローラ4に巻き付いた用紙8の取り出しを容易に行えるようにする構造に関するものである。図11に示すように、受け部材31aは、前処理液供給パン18の外壁に固定されている箱状の部材であって、搬送方向上流側の壁面は、取り出し口を開閉する扉34になっている。
【0081】
塗布ローラ2から離されなかった用紙8が中間ローラ4に巻き付こうとしても、分離爪30によって中間ローラ4から離される。中間ローラ4から離された用紙8は、その後、シート収容部を構成する受け部材31aへと収容される。
【0082】
図12に示すように、扉34は、搬送方向上流側に向かって回動して、用紙8の取り出し口を開口する。これによって、受け部材31aの内部へのアクセスができる状態にする。すでに説明したとおり、塗布装置12は、前処理液塗布装置120に対して塗布装置12はスライドレールを介して引き出し可能になっているので、塗布装置12を引き出してから、扉34を開くことで、用紙8を容易に取り出すことができる。
【0083】
以上、本発明者によってなされた発明を好適な実施形態に基づき具体的に説明したが、本発明は上記実施形態で説明したものに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0084】
1 :入口下ガイド板
2 :塗布ローラ
3 :分離爪
4 :中間ローラ
5 :絞りローラ
6 :スクイーズローラ
7 :前処理液
8 :用紙
9 :加圧ローラ
10 :サポートローラ
11 :回転軸
12 :塗布装置
13 :入口上ガイド板
18 :前処理液供給パン
30 :分離爪
31 :受け部材
32 :回転軸
33 :弾性体
34 :扉
35 :検知センサ
36 :検知センサ
37 :巻き付き検知センサ
40 :ストッパー
42 :調整ネジ
43 :固定部
100 :印刷システム
110 :給送装置
120 :前処理液塗布装置
121 :加圧ユニット
130 :プリンタ
140 :乾燥装置
150 :媒体排出装置
【先行技術文献】
【特許文献】
【0085】
【特許文献1】特開2014−58118号公報
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12