特許第6958498号(P6958498)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6958498
(24)【登録日】2021年10月11日
(45)【発行日】2021年11月2日
(54)【発明の名称】光ファイバ側方入出力装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 6/28 20060101AFI20211021BHJP
   G02B 6/26 20060101ALI20211021BHJP
【FI】
   G02B6/28 V
   G02B6/26
【請求項の数】7
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2018-124691(P2018-124691)
(22)【出願日】2018年6月29日
(65)【公開番号】特開2020-3709(P2020-3709A)
(43)【公開日】2020年1月9日
【審査請求日】2020年10月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100119677
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 賢治
(74)【代理人】
【識別番号】100115794
【弁理士】
【氏名又は名称】今下 勝博
(72)【発明者】
【氏名】植松 卓威
(72)【発明者】
【氏名】廣田 栄伸
(72)【発明者】
【氏名】飯田 裕之
(72)【発明者】
【氏名】真鍋 哲也
【審査官】 山本 貴一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−081276(JP,A)
【文献】 特開2005−250221(JP,A)
【文献】 特開2017−078795(JP,A)
【文献】 米国特許第6665469(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 6/28,6/26
G01M 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ファイバ心線に対して長手方向に湾曲する凹部、及び曲げが与えられた前記光ファイバ心線に対して光を入射し、前記光ファイバ心線から漏洩する光を受光する光入出力手段を有する第1治具と、
前記光ファイバ心線に対して長手方向に湾曲し、前記第1治具の凹部との間で前記光ファイバ心線の種類に応じて前記光ファイバ心線を挟み込む凸部を有する第2治具と、
前記第1治具の凹部と前記第2治具の凸部とが近づく方向に押圧力を印加し、前記光ファイバ心線に曲げを形成する押圧部と、
前記光ファイバ心線の種類に応じた前記凸部に切り換える切替機構と、
を備える光ファイバ側方入出力装置。
【請求項2】
前記第2治具は、前記光ファイバ心線の長手方向Zと前記押圧部の押圧力の方向Yとに垂直な方向Xに、前記光ファイバ心線の種類に応じた前記凸部を並列させており、
前記切替機構は、前記光ファイバ心線の種類に応じた前記凸部で前記光ファイバ心線を前記第1治具の凹部との間で挟み込めるように前記第2治具を方向Xへ駆動させる構造である
ことを特徴とする請求項1に記載の光ファイバ側方入出力装置。
【請求項3】
前記切替機構の、前記方向Xへ駆動させる構造は、
前記光ファイバ心線の種類に応じて前記凸部を移動させる粗調整部と、
前記光ファイバ心線に対して入射する光の光軸と前記光ファイバ心線のコアとの相対位置を調整する微調整部と、
を有することを特徴とする請求項2に記載の光ファイバ側方入出力装置。
【請求項4】
前記第2治具の前記凸部は、無段階に変化する形状であり、
前記切替機構は、前記光ファイバ心線の種類に応じた前記凸部の形状部分で前記光ファイバ心線を前記第1治具の凹部との間で挟み込めるように前記凸部を無段階に移動させる機構である
ことを特徴とする請求項1に記載の光ファイバ側方入出力装置。
【請求項5】
前記第2治具の前記凸部は、有段階に変化する形状であり、
前記切替機構は、前記光ファイバ心線の種類に応じた前記凸部の形状部分で前記光ファイバ心線を前記第1治具の凹部との間で挟み込めるように前記凸部を有段階に移動させる機構である
ことを特徴とする請求項1に記載の光ファイバ側方入出力装置。
【請求項6】
前記第2治具は、前記凸部に前記光ファイバ心線が填まるガイド溝を有し、
前記ガイド溝は、前記凸部が対応する前記光ファイバ心線の種類に応じた形状であることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の光ファイバ側方入出力装置。
【請求項7】
前記ガイド溝は、
底角度を2θ、開口幅を2w、前記光ファイバ心線の外径を2aとすると、
a(1+1/sinθ)≧w/tanθ
を満たすV溝であることを特徴とする請求項6に記載の光ファイバ側方入出力装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、曲げた光ファイバ心線の側方から光を入出力する光ファイバ側方入出力装置に関する。
【背景技術】
【0002】
光ファイバを切断することなく光信号を光ファイバに入出力する技術として、既設の光ファイバ(現用光ファイバ)に曲げを与え、この曲げ部位に側面から別の光ファイバ(プローブ光ファイバ)を対向させ、当該プローブ光ファイバの先端部から光信号を入射すると共に、現用光ファイバから出射される光信号をプローブ光ファイバの先端部で受光する光ファイバ側方入出力技術が検討されている(例えば、特許文献1を参照。)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015−040916号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
光ファイバ側方入出力技術の主な適用先の一つである既設線路の接続点には、様々な種類の光ファイバ心線が敷設されている。単心線に限定しても、外径0.25mm単心線や0.5mm単心線、0.9mm単心線が存在する。従来手法では、適用する対象の光ファイバ心線に応じて曲げ形状を最適設計するため、全ての単心線に対応するためには作業者がそれぞれの心線に特化した光ファイバ側方出力装置を用意し、心線種別に合わせて入れ替えながら作業する必要があった。つまり、従来の光ファイバ側方出力装置は、作業対象の光ファイバ心線の種類が決まっており、汎用性に欠けるという課題があった。
【0005】
そこで、本発明は、上記課題を解決すべく、様々な光ファイバ心線の種類に対応できる汎用性の高い光ファイバ側方出力装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明に係る光ファイバ側方出力装置は、光ファイバ心線の外径に応じて曲げ付与部の構造が変化する機能を有し、一台で様々な外径の光ファイバ心線に対して所望の曲げ形状が得られることを可能とした。
【0007】
具体的には、本発明に係る光ファイバ側方出力装置は、
光ファイバ心線に対して長手方向に湾曲する凹部、及び曲げが与えられた前記光ファイバ心線に対して光を入射し、前記光ファイバ心線から漏洩する光を受光する光入出力手段を有する第1治具と、
前記光ファイバ心線に対して長手方向に湾曲し、前記第1治具の凹部との間で前記光ファイバ心線の種類に応じて前記光ファイバ心線を挟み込む凸部を有する第2治具と、
前記第1治具の凹部と前記第2治具の凸部とが近づく方向に押圧力を印加し、前記光ファイバ心線に曲げを形成する押圧部と、
前記光ファイバ心線の種類に応じた前記凸部に切り換える切替機構と、
を備える。
【0008】
本光ファイバ側方出力装置は、曲げを付与する凸部が光ファイバ心線の種類に対応できる構造になっており、光ファイバ心線の種類に応じて凸部を変更する。従って、本発明は、様々な光ファイバ心線の種類に対応できる汎用性の高い光ファイバ側方出力装置を提供することができる。
【0009】
例えば、前記第2治具は、前記光ファイバ心線の長手方向Zと前記押圧部の押圧力の方向Yとに垂直な方向Xに、前記光ファイバ心線の種類に応じた前記凸部を並列させており、前記切替機構は、前記光ファイバ心線の種類に応じた前記凸部で前記光ファイバ心線を前記第1治具の凹部との間で挟み込めるように前記第2治具を方向Xへ駆動させる構造である。
【0010】
この構造の場合、前記切替機構の、前記方向Xへ駆動させる構造は、前記光ファイバ心線の種類に応じて前記凸部を移動させる粗調整部と、前記光ファイバ心線に対して入射する光の光軸と前記光ファイバ心線のコアとの相対位置を調整する微調整部と、を有することが好ましい。
【0011】
また、例えば、前記第2治具の前記凸部は、無段階に変化する形状であり、前記切替機構は、前記光ファイバ心線の種類に応じた前記凸部の形状部分で前記光ファイバ心線を前記第1治具の凹部との間で挟み込めるように前記凸部を無段階に移動させる機構であってもよい。
【0012】
また、例えば、前記第2治具の前記凸部は、有段階に変化する形状であり、前記切替機構は、前記光ファイバ心線の種類に応じた前記凸部の形状部分で前記光ファイバ心線を前記第1治具の凹部との間で挟み込めるように前記凸部を有段階に移動させる機構であってもよい。
【0013】
前記第2治具は、前記凸部に前記光ファイバ心線が填まるガイド溝を有し、前記ガイド溝は、前記凸部が対応する前記光ファイバ心線の種類に応じた形状とすることができる。
【0014】
この場合、前記ガイド溝は、
底角度を2θ、開口幅を2w、前記光ファイバ心線の外径を2aとすると、
a(1+1/sinθ)≧w/tanθ
を満たすV溝であることを特徴とする。
【0015】
なお、上記各発明は、可能な限り組み合わせることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、様々な光ファイバ心線の種類に対応できる汎用性の高い光ファイバ側方出力装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明に係る光ファイバ側方出力装置を説明する図である。
図2】本発明に係る光ファイバ側方出力装置を説明する図である。
図3】本発明に係る光ファイバ側方出力装置を説明する図である。
図4】本発明に係る光ファイバ側方出力装置(実施例1)を説明する図である。
図5】本発明に係る光ファイバ側方出力装置(実施例1)を説明する図である。
図6】本発明に係る光ファイバ側方出力装置(実施例2)を説明する図である。
図7】本発明に係る光ファイバ側方出力装置(実施例3)を説明する図である。
図8】本発明に係る光ファイバ側方出力装置(実施例3)を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
添付の図面を参照して本発明の実施形態を説明する。以下に説明する実施形態は本発明の実施例であり、本発明は、以下の実施形態に制限されるものではない。なお、本明細書及び図面において符号が同じ構成要素は、相互に同一のものを示すものとする。
【0019】
図1は、本実施形態の光ファイバ側方出力装置301を説明する図である。光ファイバ側方出力装置301は、
光ファイバ心線100に対して長手方向に湾曲する凹部22、及び曲げが与えられた光ファイバ心線100に対して光を入射し、光ファイバ心線100から漏洩する光を受光する光入出力手段14を有する第1治具11と、
光ファイバ心線100に対して長手方向に湾曲し、第1治具11の凹部22との間で光ファイバ心線100の種類に応じて光ファイバ心線100を挟み込む凸部23を有する第2治具12と、
第1治具11の凹部22と第2治具12の凸部23とが近づく方向に押圧力を印加し、光ファイバ心線100に曲げを形成する押圧部(不図示)と、
光ファイバ心線100の種類に応じた凸部23に切り換える切替機構(不図示)と、
を備える。
【0020】
本明細書では、光入出力手段14の例として、光ファイバ心線100に対して光を入出力するプローブ光ファイバ50とこれを保持する第1治具11が有する保持部51を説明している。光入出力手段14の他の例として、漏洩光を集光するレンズであってもよい。
【0021】
図2は、図1の光ファイバ側方出力装置301をZ方向に垂直な面で切断した切断面である。第2治具12は、凸部23に光ファイバ心線100が填まるガイド溝23aを有し、ガイド溝23aは、凸部23が対応する光ファイバ心線100の種類に応じた形状である。
【0022】
光ファイバ側方出力装置301は、第1治具11と第2冶具12とで光ファイバ心線100を挟み込むことで光ファイバ心線100に曲げを形成する。光ファイバ心線100の外径に応じて、第1冶具11や光入出力手段14を変更することなく、第2冶具12だけを変更することにより様々な外径の光ファイバ心線100に対して所望の曲げ形状が得られる。特に、第2冶具12のガイド溝23aを変更することにより異なる外径に対して対応可能となる。
【0023】
図3は、ガイド溝23aの一例を説明する図である。ガイド溝23aは、
底角度を2θ、開口幅を2w、光ファイバ心線100の外径を2aとすると、
a(1+1/sinθ)≧w/tanθ
を満たすV溝であることを特徴とする。
この式を満たすとき、光ファイバ心線100がV溝から飛び出すため、光ファイバ心線100と第1冶具11が接触し光を入出力できる。式を満たさないと光ファイバ心線100と第1冶具11との間に空隙が生じるため結合効率が著しく低下する。
【0024】
(実施例1)
図4は、光ファイバ心線100の種類に応じて凸部23を変更する構造の一例である。本実施例では、
第2治具12は、光ファイバ心線100の長手方向Zと押圧部の押圧力の方向Yとに垂直な方向Xに、光ファイバ心線100の種類に応じた凸部23を並列させており、
切替機構は、光ファイバ心線100の種類に応じた凸部23で光ファイバ心線100を第1治具11の凹部22との間で挟み込めるように第2治具12を方向Xへ駆動させる構造である。
【0025】
図4は、第2冶具12を方向Xへ平行移動させる例である。本例では3種類の外径を有する光ファイバ心線100(たとえば0.25,0.5,0.9mm単心線)それぞれに対応するため、3つのV溝を有する。切替機構(不図示)は、光入出力対象の光ファイバ心線100のコア中心が光入出力手段14の光軸と一致するように、第2冶具12を平行移動させる。
【0026】
前記切替機構の、前記方向Xへ駆動させる構造は、
前記光ファイバ心線の種類に応じて前記凸部を移動させる粗調整部と、
前記光ファイバ心線に対して入射する光の光軸と前記光ファイバ心線のコアとの相対位置を調整する微調整部と、
を有することが好ましい。
例えば、粗調整部は、第2冶具12を方向Xに移動させるためのガイドレールであり、微調整部は、第2冶具12を方向Xに微調整するためのマイクロメータや精密ねじである。
【0027】
(実施例2)
図5は、光ファイバ心線100の種類に応じて凸部23を変更する構造の一例である。
本実施例では、
第2治具12の凸部23は、無段階に変化する形状であり、
切替機構は、光ファイバ心線100の種類に応じた凸部23の形状部分で光ファイバ心線100を第1治具11の凹部22との間で挟み込めるように凸部23を無段階に移動させる機構であることを特徴とする。
【0028】
図5では、第2冶具12を回転させると、ガイド溝23aの大きさが変化していく構造である。例えば、A部分は外径が最小の心線用(たとえば0.25mm心線)のガイド溝、B部分は外径が中間の心線用(たとえば0.5mm心線)のガイド溝、C部分は外径が最大の心線用(たとえば0.9mm心線)のガイド溝である。
【0029】
光入出力対象の光ファイバ心線100の外径に応じたガイド溝の位置となるように第2冶具12を回転させ調整する。ガイド溝としてV溝を用いた場合、実施例1で説明した式を満たすように設計する必要がある。
図6(a)は、外径0.25mmの光ファイバ心線100を押圧するために第2冶具12を回転し、A部分で光ファイバ心線100を第1治具11へ押圧した時の切断面である。
図6(b)は、外径0.9mmの光ファイバ心線100を押圧するために第2冶具12を回転し、C部分で光ファイバ心線100を第1治具11へ押圧した時の切断面である。
【0030】
(実施例3)
図7は、光ファイバ心線100の種類に応じて凸部23を変更する構造の一例である。
本実施例では、
第2治具12の凸部23は、有段階に変化する形状であり、
切替機構は、光ファイバ心線100の種類に応じた凸部23の形状部分で光ファイバ心線100を第1治具11の凹部22との間で挟み込めるように凸部23を有段階に移動させる機構であることを特徴とする。
【0031】
図7は、本実施例の第2治具12を説明する図である。第2冶具12は3つの異なる凸部23を有し、それぞれが対応する3種類の外径を有する光ファイバ心線100を押圧することができる。例えば、A部分は外径が最小の心線用(たとえば0.25mm心線)のガイド溝を有する凸部23、B部分は外径が中間の心線用(たとえば0.5mm心線)のガイド溝を有する凸部23、C部分は外径が最大の心線用(たとえば0.9mm心線)のガイド溝を有する凸部23である。ここで、3種類は例であって、2種類や4種類、5種類など、複数種類の光ファイバ心線100に対応させることができる。ガイド溝としてV溝を用いた場合、実施例1で説明した式を満たすように設計する必要がある。
【0032】
図8は、切替機構で第2冶具12を0度、90度、または180度回転させ、光入出力対象の光ファイバ心線100の外径に応じた凸部23を選択し、光ファイバ心線100を第1治具11に押し付ける様子を説明する図である。
図8(a)は、外径0.9mmの光ファイバ心線100を押圧するために第2冶具12を回転し、C部分で光ファイバ心線100を第1治具11へ押圧した時の図である。
図8(b)は、外径0.5mmの光ファイバ心線100を押圧するために第2冶具12を回転し、B部分で光ファイバ心線100を第1治具11へ押圧した時の図である。
図8(c)は、外径0.25mmの光ファイバ心線100を押圧するために第2冶具12を回転し、A部分で光ファイバ心線100を第1治具11へ押圧した時の図である。
【符号の説明】
【0033】
11:第1治具
12:第2治具
14:光入出力手段
22:凹曲面
23:凸曲面
23a:ガイド溝
50:プローブ光ファイバ
51:保持部
100:光ファイバ心線
301:光ファイバ側方入出力装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8