特許第6958609号(P6958609)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6958609インク、並びにインクジェット記録方法、及びインクジェット記録装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6958609
(24)【登録日】2021年10月11日
(45)【発行日】2021年11月2日
(54)【発明の名称】インク、並びにインクジェット記録方法、及びインクジェット記録装置
(51)【国際特許分類】
   C09D 11/033 20140101AFI20211021BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20211021BHJP
   B41M 5/00 20060101ALI20211021BHJP
   B41M 5/52 20060101ALI20211021BHJP
   B41M 5/50 20060101ALI20211021BHJP
   C09D 11/30 20140101ALI20211021BHJP
【FI】
   C09D11/033
   B41J2/01 501
   B41M5/00 120
   B41M5/00 100
   B41M5/52 100
   B41M5/50 120
   B41M5/00 134
   B41M5/00 132
   C09D11/30
【請求項の数】18
【全頁数】34
(21)【出願番号】特願2019-230428(P2019-230428)
(22)【出願日】2019年12月20日
(62)【分割の表示】特願2016-6579(P2016-6579)の分割
【原出願日】2016年1月15日
(65)【公開番号】特開2020-73665(P2020-73665A)
(43)【公開日】2020年5月14日
【審査請求日】2019年12月23日
(31)【優先権主張番号】特願2015-117636(P2015-117636)
(32)【優先日】2015年6月10日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100107515
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 浩一
(72)【発明者】
【氏名】木戸 正博
(72)【発明者】
【氏名】長島 英文
(72)【発明者】
【氏名】古川 壽一
(72)【発明者】
【氏名】中村 悠太
【審査官】 青鹿 喜芳
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−167084(JP,A)
【文献】 特開2015−101690(JP,A)
【文献】 特開2014−198466(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0084380(US,A1)
【文献】 特開2012−224658(JP,A)
【文献】 特開2011−194823(JP,A)
【文献】 特開2013−177513(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/040517(WO,A3)
【文献】 特開2014−205770(JP,A)
【文献】 特開2008−285605(JP,A)
【文献】 特開2013−057042(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 11/00−11/54
B41J 2/01
B41M 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水、有機溶剤、色材、及び樹脂粒子を含有するインクであって、
前記有機溶剤が、
3−メトキシ−N,N−ジメチルプロピオンアミド、3−ブトキシ−N,N−ジメチルプロピオンアミド、テトラメチルウレア、1−n−オクチル−2−ピロリドン、及び1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンから選択される少なくとも1種の化合物と、
1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、及び2,3−ブタンジオールから選択される少なくとも1種である炭素数3〜4のジオール化合物と、
−メトキシ−3−メチル−1−ブタノールと、
を含むことを特徴とするインク。
【請求項2】
更に、有機溶剤として、2−メチル−2,4−ペンタンジオール及びジプロピレングリコールモノメチルエーテルの少なくともいずれかを含有する請求項1に記載のインク。
【請求項3】
フッ素系界面活性剤を含有する請求項1から2のいずれかに記載のインク。
【請求項4】
3−メトキシ−N,N−ジメチルプロピオンアミド、3−ブトキシ−N,N−ジメチルプロピオンアミド、テトラメチルウレア、1−n−オクチル−2−ピロリドン、及び1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンから選択される少なくとも1種の化合物の含有量が、有機溶剤の総含有量に対して、10質量%以上50質量%以下である請求項1から3のいずれかに記載のインク。
【請求項5】
前記有機溶剤の沸点が、170℃以上250℃未満である請求項1から4のいずれかに記載のインク。
【請求項6】
前記有機溶剤の総含有量が、20質量%以上70質量%以下である請求項1から5のいずれかに記載のインク。
【請求項7】
前記樹脂粒子が、ポリウレタン樹脂粒子を含む請求項1から6のいずれかに記載のインク。
【請求項8】
ホワイトインクである請求項1から7のいずれかに記載のインク。
【請求項9】
請求項1から8のいずれかに記載のインクに、刺激を印加し、前記インクを飛翔させて
基材上に画像を記録するインク飛翔工程を少なくとも含むことを特徴とするインクジェット記録方法。
【請求項10】
更に、画像を記録した基材を加熱する加熱工程を含む請求項9に記載のインクジェット記録方法。
【請求項11】
前記基材が、アクリル樹脂被覆層を有する非浸透性基材である請求項9から10のいずれかに記載のインクジェット記録方法。
【請求項12】
前記基材が、ポリ塩化ビニルフィルム及びポリエチレンテレフタレートフィルムのいずれかである請求項9から11のいずれかに記載のインクジェット記録方法。
【請求項13】
基材上に記録を行った後、ホワイトインクを塗布するインクジェット記録方法において、
前記ホワイトインクとして、請求項8に記載のインクを用い、該インクに、刺激を印加し、前記インクを飛翔させて記録するインク飛翔工程を少なくとも含むインクジェット記録方法。
【請求項14】
基材上にホワイトインクを塗布し、その上に記録するインクジェット記録方法において、
前記ホワイトインクとして、請求項8に記載のインクを用い、該インクに、刺激を印加し、前記インクを飛翔させて記録するインク飛翔工程を少なくとも含むインクジェット記録方法。
【請求項15】
請求項1から8のいずれかに記載のインクに、刺激を印加し、前記インクを飛翔させて基材上に画像を記録するインク飛翔手段を少なくとも含むことを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項16】
更に、画像を記録した基材を加熱する加熱手段を有する請求項15に記載のインクジェット記録装置。
【請求項17】
前記基材が、アクリル樹脂被覆層を有する非浸透性基材である請求項15から16のいずれかに記載のインクジェット記録装置。
【請求項18】
前記基材が、ポリ塩化ビニルフィルム及びポリエチレンテレフタレートフィルムのいずれかである請求項15から17のいずれかに記載のインクジェット記録装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インク、並びにインクジェット記録方法、及びインクジェット記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
広告、看板等の産業用途において、耐光性、耐水性、耐摩耗性等の耐久性を向上させるため、例えば、プラスチックフィルム等の非浸透性基材が使用されており、前記非浸透性基材に用いられるインクが種々開発されている。
【0003】
このようなインクとしては、例えば、有機溶剤をビヒクルとして用いた溶剤系インク、重合性モノマーを主成分とする紫外線硬化型インクが広く用いられている。しかし、前記溶剤系インクは、溶剤蒸発による環境への影響が懸念される。前記紫外線硬化型インクは、安全性の面から使用する重合性モノマーの選択肢が限られる場合がある。
そこで、環境負荷が少なく、非浸透性基材に直接記録できる水性インクが提案されている(例えば、特許文献1〜2参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、非浸透性基材に対する定着性に優れ、高速印刷性、吐出信頼性、及び耐擦過性が良好であると共に、保存安定性に優れたインクを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するための手段としての本発明のインクは、水、有機溶剤、色材、及び樹脂粒子を含有するインクであって、
前記有機溶剤が、ハンセンの溶解パラメータの水素結合項δHが4.1MPa1/2以上9.5MPa1/2以下でありかつ沸点が170℃以上である化合物と、
炭素数3〜4のジオール化合物と、を含む。
【発明の効果】
【0006】
本発明によると、非浸透性基材に対する定着性に優れ、高速印刷性、吐出信頼性、及び耐擦過性が良好であると共に、保存安定性に優れたインクを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、シリアル型のインクジェット記録装置の一例を示す概略図である。
図2図2は、図1のインクジェット記録装置の本体内の構成を示す概略図である。
図3図3は、インクジェット記録装置の加熱手段の一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
(インク)
本発明のインクは、水、有機溶剤、色材、及び樹脂粒子を含有し、前記有機溶剤が、ハンセンの溶解パラメータの水素結合項δHが4.1MPa1/2以上9.5MPa1/2以下でありかつ沸点が170℃以上である化合物と、炭素数3〜4のジオール化合物と、を含み、更に必要に応じてその他の成分を含有してなる。
本発明のインクは、従来の水性インクでは、非浸透性基材に対する定着性、高速印刷性、吐出信頼性、耐擦過性、及び保存安定性のすべての性能を満足できるものではなかったという知見に基づくものである。
【0009】
前記インクに含まれる成分のうち、前記有機溶剤の選定は記録する非浸透性基材へのインク定着性を左右するため、その果たす役割は非常に大きい。本発明者らは、ハンセンの溶解パラメータにおける水素結合項δHが所定の範囲である化合物と、炭素数3〜4のジオール化合物とをインクに加えることでインクの定着性が著しく向上することを知見した。その理由については定かではないが、前記水素結合項δHが4.1MPa1/2以上9.5MPa1/2以下であることにより、非浸透性基材との親和性が高まるためと推察される。前記インクの非浸透性基材への定着性が向上することにより、高速印刷時においても隣接インク滴同士が着弾後に合一し収縮する現象(ビーディング)を抑制することができ、高品位の画像を得ることができる。また、定着速度の向上は、二次乾燥性向上にも高めることができ、記録後の基材巻き取り時に裏紙への転写を抑制できることを知見した。
更に、前記有機溶剤が比較的高沸点であることにより、インクジェット記録装置のノズル先端近傍での目詰まりを抑制することが可能となり、高い吐出信頼性が得られることも見出した。更に、驚くべきことに前記有機溶剤を所定量添加することにより記録後に形成される塗膜の堅牢性も大きく向上することを知見した。
【0010】
<有機溶剤>
前記有機溶剤として、ハンセンの溶解パラメータの水素結合項δHが4.1MPa1/2以上9.5MPa1/2以下でありかつ沸点が170℃以上である化合物と、炭素数3〜4のジオール化合物とを含むことが必要である。
【0011】
−ハンセンの溶解パラメータの水素結合項δHが4.1MPa1/2以上9.5MPa1/2以下でありかつ沸点が170℃以上である化合物−
前記ハンセンの溶解パラメータ(HSP)は、ヒルデブランド(Hildebrand)によって導入された溶解度パラメータを、分散項δD、極性項δP、水素結合項δHの3成分に分割し、三次元空間に表したものである。前記分散項δDは分散力による効果、前記極性項δPは双極子間力による効果、前記水素結合項δHは水素結合力による効果をそれぞれ示す。
【0012】
前記ハンセンの溶解パラメータ(HSP)の定義及び計算は、下記の文献に記載されている。
Charles M.Hansen著、Hansen Solubility Parameters:A Users Handbook(CRCプレス、2007年)。
溶媒の溶解パラメータ(HSP)[δD、δP、δH]は、例えば、コンピュータソフトウエア Hansen Solubility Parameters in Practice(HSPiP)を用いることによって、その化学構造から簡便に推算できる。本発明においては、HSPiPバージョン3.0.38のデータベースに登録されている溶媒に関してはその値を使用し、データベースに無い溶媒に関しては、HSPiPバージョン3.0.38により推算される値を使用する。
【0013】
前記溶解度パラメータの3つの成分(分散項δD、極性項δP、水素結合項δH)から、下記数式1及び数式2に従い、トータルの溶解度パラメータに対する各成分の比率(百分率)をFd、Fp、Fhとして求め、有機溶剤の特性を知ることができる。
<数式1>
Fd(%)=δD/(δD+δP+δH)×100
Fp(%)=δP/(δD+δP+δH)×100
Fh(%)=δH/(δD+δP+δH)×100
<数式2>
Fd+Fp+Fh=100%
【0014】
本発明においては、前記ハンセンの溶解パラメータにおける水素結合項δHが4.1MPa1/2以上9.5MPa1/2以下でありかつ沸点が170℃以上である化合物を含有するインクを用いて画像を記録した際に、インクの定着工程において前記有機溶剤が非浸透性基材、特に塩化ビニル基材に瞬時に浸透する。その結果、インクの定着速度を向上させることができる。
前記有機溶剤の前記Fhは、16%以上25%以下が好ましい。前記Fhが16%以上25%以下であると、より塩化ビニルとの親和性に優れ、インクの定着速度を更に高めることができるという利点がある。
【0015】
前記ハンセンの溶解パラメータにおける水素結合項δHが4.1MPa1/2以上9.5MPa1/2以下でありかつ沸点が170℃以上である化合物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、3−メトキシ−N,N−ジメチルプロピオンアミド(δH:4.1MPa1/2、Fh:16%、沸点216℃)、3−ブトキシ−N,N−ジメチルプロピオンアミド(δH:7.01/2MPa、Fh:17%、沸点;252℃)、ジエチレングリコールジエチルエーテル(δH:9.5MPa1/2、Fh:25%、沸点:180℃)、ジベンジルエーテル(δH:7.4MPa1/2、Fh:26%、沸点:298℃)、テトラメチルウレア(δH:8.1MPa1/2、Fh:22%、沸点:177℃)、2−ピロリドン(δH:5.2MPa1/2、Fh:20%、沸点:245℃)、1−n−オクチル−2−ピロリドン(δH:8.4MPa1/2、Fh:21%、沸点:170℃)、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン(δH:6.7MPa1/2、Fh:21%、沸点:224℃)などが挙げられる。これらは、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、定着性、非転写性、及び吐出信頼性の点から、3−メトキシ−N,N−ジメチルプロピオンアミド、3−ブトキシ−N,N−ジメチルプロピオンアミド、ジエチレングリコールジエチルエーテル、テトラメチルウレア、2−ピロリドン、1−n−オクチル−2−ピロリドン、及び1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンが好ましい。
【0016】
前記ハンセンの溶解パラメータにおける水素結合項δHが4.1MPa1/2以上9.5MPa1/2以下でありかつ沸点が170℃以上である有機溶剤を含有することにより、インクの塩化ビニル基材と前記有機溶剤との親和性を高め、高い定着性を確保できる。また、前記有機溶剤は比較的高い沸点を持つため、インクジェット記録装置のノズル先端近傍での樹脂皮膜の形成を抑えることができ、高い吐出信頼性を確保できる。
【0017】
前記ハンセンの溶解パラメータにおける水素結合項δHが4.1MPa1/2以上9.5MPa1/2以下でありかつ沸点が170℃以上である化合物の含有量は、インク中の有機溶剤の総含有量に対して、5質量%以上60質量%以下が好ましく、10質量%以上50質量%以下がより好ましく、20質量%以上40質量%以下が更に好ましい。前記含有量が、5質量%以上であると、インクと塩化ビニル基材の親和性が高まり、インクジェット記録方法に用いた場合に良好な定着性を得ることができる。一方、前記含有量が、60質量%以下であると、高いインク保存安定性を得ることができる。
【0018】
前記ハンセンの溶解パラメータにおける水素結合項δHが4.1MPa1/2以上9.5MPa1/2以下でありかつ沸点が170℃以上である化合物の含有量は、ガスクロマトグラフ質量分析(GCMS)法により確認することができる。具体的には、インク全体をGCMSにかけ、含まれている溶剤の定性分析を行う。溶剤の種類が特定できたら、各溶剤の濃度の検量線を作成し、インク中に含まれる各有機溶剤の定量をすることができる。
【0019】
−炭素数3〜4のジオール化合物−
前記有機溶剤として、炭素数3〜4のジオール化合物を含有することにより、耐擦過性、定着性、及び非転写性が向上する。
前記炭素数3〜4のジオール化合物としては、例えば、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、2,3−ブタンジオールなどが挙げられる。これらは、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
前記炭素数3〜4のジオール化合物の含有量は、インク中の有機溶剤の総含有量に対して、5質量%以上40質量%以下が好ましく、10質量%以上27質量%以下がより好ましい。
【0020】
−アルコキシ基を有する化合物−
前記有機溶剤は、更に、アルコキシ基を有する化合物を含有することが好ましい。
前記有機溶剤として、アルコキシ基を有する化合物を含有することにより、樹脂や顔料への相溶性が高いので、インク中に分散された樹脂や顔料が凝集することなく存在することができ、インクの保存安定性が向上する。
前記アルコキシ基を有する化合物としては、例えば、3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノールなどが挙げられる。
前記アルコキシ基を有する化合物の含有量は、インク中の有機溶剤の総含有量に対して、1質量%以上10質量%以下が好ましく、2質量%以上6質量%以下がより好ましい。
【0021】
本発明のインクには、前記ハンセンの溶解パラメータにおける水素結合項δHが4.1MPa1/2以上9.5MPa1/2以下でありかつ沸点が170℃以上である化合物、前記炭素数3〜4のジオール化合物、及び前記アルコキシ基を有する化合物以外にも、必要に応じて他の有機溶剤を含有することができる。
前記他の有機溶剤としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、3−メチル−1,3−ブタンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、グリセリン、1,2,6−ヘキサントリオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,3−ブタントリオール、ペトリオール等の多価アルコール類;エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等の多価アルコールアルキルエーテル類;エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテル等の多価アルコールアリールエーテル類;2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、N−ヒドロキシエチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチルイミダゾリジノン、ε−カプロラクタム、γ−ブチロラクトン等の含窒素複素環化合物;ホルムアミド、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド等のアミド類;モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエチルアミン等のアミン類;ジメチルスルホキシド、スルホラン、チオジエタノール等の含硫黄化合物、プロピレンカーボネイト、炭酸エチレンなどが挙げられる。これらは、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0022】
前記有機溶剤の沸点は、インク中に含まれる総ての有機溶剤において150℃以上270℃以下であることが好ましく、170℃以上250℃以下がより好ましい。
前記沸点が170℃以上250℃以下であると、高い吐出信頼性が得られ、また、形成された画像の乾燥性も良好となる。
【0023】
前記有機溶剤の総含有量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、インク全量に対して、20質量%以上70質量%以下が好ましく、30質量%以上60質量%以下がより好ましい。前記含有量が、20質量%以上70質量%以下であると、乾燥性に優れ、かつ良好な吐出安定性が得られる。
【0024】
<樹脂粒子>
前記樹脂粒子としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリエステル樹脂粒子、ポリウレタン樹脂粒子、エポキシ樹脂粒子、ポリアミド樹脂粒子、ポリエーテル樹脂粒子、アクリル樹脂粒子、アクリル−シリコーン樹脂粒子、フッ素系樹脂等の縮合系合成樹脂粒子、ポリオレフィン樹脂粒子、ポリスチレン系樹脂粒子、ポリビニルアルコール樹脂粒子、ポリビニルエステル樹脂粒子、ポリアクリル酸樹脂粒子、不飽和カルボン酸系樹脂等の付加系合成樹脂粒子、セルロース類、ロジン類、天然ゴム等の天然ポリマーなどが挙げられる。これらは、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0025】
これらの中でも、定着性、及びインクの保存安定性の点から、アクリル樹脂粒子、アクリル−シリコーン樹脂粒子、ポリウレタン樹脂粒子が好ましく、ポリウレタン樹脂粒子がより好ましい。また、画像の耐擦過性の点から、ポリエステル樹脂粒子、ポリ塩化ビニル樹脂粒子、ポリウレタン樹脂粒子が好ましい。また、非浸透性基材への密着性の点から、ポリエステル樹脂粒子が好ましい。
【0026】
前記樹脂粒子としては、特に制限はなく、適宜合成したものを使用してもよいし、市販品を使用してもよい。
【0027】
−ポリウレタン樹脂粒子−
前記ポリウレタン樹脂粒子としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリオールとポリイソシアネートとを反応させて得られるポリウレタン樹脂粒子などが挙げられる。
前記ポリオールとしては、例えば、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリエステルポリオールなどが挙げられる。これらは、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0028】
−−ポリエーテルポリオール−−
前記ポリエーテルポリオールとしては、例えば、活性水素原子を2個以上有する化合物の少なくとも1種を出発原料として、アルキレンオキサイドを付加重合させたものなどが挙げられる。
【0029】
前記出発原料としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパンなどが挙げられる。これらは、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0030】
前記アルキレンオキサイドとしては、例えば、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、スチレンオキサイド、エピクロルヒドリン、テトラヒドロフランなどが挙げられる。これらは、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0031】
前記ポリエーテルポリオールとしては、非常に優れた耐擦過性を付与できるインク用バインダーを得る点から、ポリオキシテトラメチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコールなどが挙げられる。これらは、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0032】
−−ポリカーボネートポリオール−−
また、前記ポリウレタン樹脂粒子の製造に使用できるポリカーボネートポリオールとしては、例えば、炭酸エステルとポリオールとを反応させて得られるもの、ホスゲンとビスフェノールA等とを反応させて得られるものなどが挙げられる。これらは、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0033】
前記炭酸エステルとしては、例えば、メチルカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルカーボネート、ジエチルカーボネート、シクロカーボネート、ジフェニルカーボネートなどが挙げられる。これらは、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0034】
前記ポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,2−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,5−ヘキサンジオール、2,5−ヘキサンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,11−ウンデカンジオール、1,12−ドデカンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ハイドロキノン、レゾルシン、ビスフェノール−A、ビスフェノール−F、4,4’−ビフェノール等の比較的低分子量のジヒドロキシ化合物、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリオキシテトラメチレングリコール等のポリエーテルポリオール、ポリヘキサメチレンアジペート、ポリヘキサメチレンサクシネート、ポリカプロラクトン等のポリエステルポリオールなどが挙げられる。これらは、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0035】
−−ポリエステルポリオール−−
前記ポリエステルポリオールとしては、例えば、低分子量のポリオールとポリカルボン酸とをエステル化反応して得られるもの、ε−カプロラクトン等の環状エステル化合物を開環重合反応して得られるポリエステル、これらの共重合ポリエステルなどが挙げられる。これらは、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0036】
前記低分子量のポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコ−ルなどが挙げられる。これらは、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
前記ポリカルボン酸としては、例えば、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、これらの無水物又はエステル形成性誘導体などが挙げられる。これらは、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0037】
−−ポリイソシアネート−−
前記ポリイソシアネートとしては、例えば、フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート;ヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族又は脂環式ジイソシアネートなどが挙げられる。これらは、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、本発明のインクは、ポスターや看板などの屋外向けの用途としても用いられるため、非常に高い長期耐候性を持つ塗膜を必要としており、前記長期耐候性の点から、脂肪族又は脂環式ジイソシアネートが好ましい。
【0038】
更に、少なくとも1種の脂環式ジイソシアネートを使用することにより、目的とする塗膜強度、及び耐擦過性を得やすくなる。
前記脂環式ジイソシアネートとしては、例えば、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートが挙げられる。
前記脂環式ジイソシアネートの含有量としては、イソシアネート化合物全量に対して、60質量%以上が好ましい。
【0039】
<ポリウレタン樹脂粒子の製造方法>
本発明のインクに用いるポリウレタン樹脂粒子は、従来一般的に用いられている製造方法により得ることができ、例えば、次の方法などが挙げられる。
まず、無溶剤下又は有機溶剤の存在下で、前記ポリオールと前記ポリイソシアネートを、イソシアネート基が過剰になる当量比で反応させて、イソシアネート末端ウレタンプレポリマーを製造する。
次いで、前記イソシアネート末端ウレタンプレポリマー中のアニオン性基を必要に応じて中和剤により中和し、その後、鎖延長剤と反応させて、最後に必要に応じて系内の有機溶剤を除去することによって得ることができる。
【0040】
前記ポリウレタン樹脂粒子の製造に使用できる有機溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類;酢酸エチル、酢酸ブチル等の酢酸エステル類;アセトニトリル等のニトリル類;ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、N−エチルピロリドン等のアミド類などが挙げられる。これらは、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
前記鎖延長剤としては、例えば、ポリアミンやその他の活性水素基含有化合物などが挙げられる。
【0041】
前記ポリアミンとしては、例えば、エチレンジアミン、1,2−プロパンジアミン、1,6−ヘキサメチレンジアミン、ピペラジン、2,5−ジメチルピペラジン、イソホロンジアミン、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジアミン、1,4−シクロヘキサンジアミン等のジアミン類;ジエチレントリアミン、ジプロピレントリアミン、トリエチレンテトラミン等のポリアミン類;ヒドラジン、N,N’−ジメチルヒドラジン、1,6−ヘキサメチレンビスヒドラジン等のヒドラジン類;コハク酸ジヒドラジッド、アジピン酸ジヒドラジド、グルタル酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド等のジヒドラジド類などが挙げられる。これらは、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0042】
前記その他の活性水素基含有化合物としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ヘキサメチレングリコール、サッカロース、メチレングリコール、グリセリン、ソルビトール等のグリコール類;ビスフェノールA、4,4’−ジヒドロキシジフェニル、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、水素添加ビスフェノールA、ハイドロキノン等のフェノール類;水などが挙げられる。これらは、インクの保存安定性が低下しない範囲内であれば、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0043】
前記ポリウレタン樹脂粒子としては、カーボネート基の高い凝集力により耐水性、耐熱性、耐摩耗性、耐候性、及び画像の耐擦過性の点から、ポリカーボネート系ウレタン樹脂粒子が好まし。前記ポリカーボネート系ウレタン樹脂粒子である場合、屋外用途のような過酷な環境において使用される記録物に適したインクが得られる。
【0044】
前記ポリウレタン樹脂粒子としては、市販品を使用してもよく、例えば、ユーコートUX−485(ポリカーボネート系ウレタン樹脂粒子)、ユーコートUWS−145(ポリエステル系ウレタン樹脂粒子)、パーマリンUA−368T(ポリカーボネート系ウレタン樹脂粒子)、パーマリンUA−200(ポリエーテル系ウレタン樹脂粒子)(以上、三洋化成工業株式会社製)などが挙げられる。これらは、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0045】
−塩化ビニル樹脂粒子−
前記塩化ビニル樹脂粒子としては、インク中に含まれる顔料や他の樹脂粒子との混和性を確保する点から、塩化ビニル−エチレン共重合体、塩化ビニル−アクリル共重合体が好ましく、非極性基材に対する密着性に特に優れる点から、塩化ビニル−エチレン共重合体がより好ましい。
【0046】
前記塩化ビニル樹脂粒子としては、特に制限はなく、市販品を使用することができ、市販のポリ塩化ビニル樹脂エマルション、市販の塩化ビニル−アクリル共重合体のエマルション、市販の塩化ビニル−エチレン共重合体のエマルションなどが挙げられる。これらは、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0047】
前記市販のポリ塩化ビニル樹脂エマルションとしては、例えば、日信化学工業株式会社製のビニブラン(登録商標)シリーズのうち品番985(固形分濃度:40質量%、アニオン性)が挙げられる。これらは、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
前記市販の塩化ビニル−アクリル共重合体のエマルションとしては、例えば、日信化学工業株式会社製のビニブラン(登録商標)シリーズのうち品番278(固形分濃度:43質量%、アニオン性)、700(固形分濃度:30質量%、アニオン性)、701(固形分濃度:30質量%、アニオン性)、711(固形分濃度:50質量%、アニオン性)、721(固形分濃度:30質量%、アニオン性)、700FS(固形分濃度:30質量%、アニオン性)、701RL35(固形分濃度:30質量%、アニオン性)、701RL(固形分濃度:30質量%、アニオン性)、701RL65(固形分濃度:30質量%、アニオン性)などが挙げられる。これらは、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
前記市販の塩化ビニル−エチレン共重合体のエマルションとしては、例えば、住化ケムテックス株式会社製のスミエリート(登録商標)シリーズのうち品番1010(固形分濃度:50±1質量%、アニオン性)、1210(固形分濃度:50±1質量%、アニオン性)、1320(固形分濃度:50±1質量%、アニオン性)などが挙げられる。これらは、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
その他の市販品としては、塩化ビニル樹脂にヒドロキシル成分を導入したWacker Chemie AG社製のVINNOLシリーズのうち品番E15/48A(固形分濃度:50質量%、アニオン性)、E22/48A(固形分濃度:30質量%、アニオン性)などが挙げられる。これらは、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0048】
−ポリエステル樹脂粒子−
前記ポリエステル樹脂粒子としては、画像の耐水性を得るために、乳化剤やスルホン酸塩など乾燥後の被膜に残存する親水性成分を含有しないものが好ましい。
【0049】
前記前記ポリエステル樹脂粒子としては、特に制限はなく、市販品を用いることができ、前記市販品のポリエステル樹脂エマルションとしては、例えば、ユニチカ株式会社製のエマルションエリーテル(登録商標)シリーズのうち品番KZA−1449(固形分濃度:30質量%、アニオン性)、KZA−3556(固形分濃度:30質量%、アニオン性)、KZA−0134(固形分濃度:30質量%、アニオン性)、高松油脂株式会社製のペスレジンAシリーズのうち品番A−124GP(固形分濃度:30質量%)、A−125S(固形分濃度:30質量%)、A−160P(固形分濃度:25質量%)などが挙げられる。これらは、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0050】
前記樹脂粒子は、特に制限はなく、水性のエマルションの状態で供給されたものを用いるのが好ましい。溶剤、着色剤、及び水と配合して水性のインクを調整する作業の容易性や、前記インク中にできるだけ均一に分散させること等を考慮すると、樹脂粒子が水を分散媒として安定に分散した状態である、樹脂エマルジョンの状態でインクに添加することが好ましい。
【0051】
前記樹脂粒子としては、実使用上はインク化する際に添加される水溶性有機溶剤によって造膜が容易となっており、溶剤及び水の蒸発に伴い樹脂粒子の造膜が促されることから、本発明のインクを使用する際に必ずしも加熱工程は必要ではない。
【0052】
前記樹脂粒子を水性媒体中に分散させるにあたり、分散剤を利用した強制乳化型のものを用いることもできるが、塗膜に分散剤が残り強度を下げることを防止する点から、分子構造中にアニオン性基を有する、いわゆる自己乳化型の樹脂粒子が好適である。
前記自己乳化型の樹脂粒子のアニオン性基の酸価としては、水分散性、耐擦性、及び耐薬品性の点から、5mgKOH/g以上100mgKOH/g以下が好ましく、5mgKOH/mg以上50mgKOH/mg以下が好ましい。
【0053】
前記アニオン性基としては、例えば、カルボキシル基、カルボキシレート基、スルホン酸基、スルホネート基などが挙げられる。これらの中でも、良好な水分散安定性を維持する点から、一部又は全部が塩基性化合物等によって中和されたカルボキシレート基やスルホネート基が好ましい。前記アニオン性基を樹脂中に導入するには、前記アニオン性基を持ったモノマーを使用すればよい。
【0054】
前記アニオン性基を有する樹脂粒子の水分散体を製造する方法としては、水分散体にアニオン性基の中和に使用できる塩基性化合物を添加することが挙げられる。
前記塩基性化合物としては、例えば、アンモニア、トリエチルアミン、ピリジン、モルホリンなどの有機アミン;モノエタノールアミンなどのアルカノールアミン;Na、K、Li、Caなどを含む金属塩基化合物などが挙げられる。これらは、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
前記強制乳化型の樹脂粒子を用いて水分散体を製造する方法としては、例えば、ノニオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤などの界面活性剤を用いることができる。これらは、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、耐水性の点から、ノニオン性界面活性剤が好ましい。
【0055】
前記ノニオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン誘導体、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン多価アルコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンプロピレンポリオール、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ひまし油、ポリオキシアルキレン多環フェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、アルキルアルカノールアミド、ポリアルキレングリコール(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらの中でも、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミンが好ましい。これらは、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0056】
前記アニオン性界面活性剤としては、例えば、アルキル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、メチルタウリル酸塩、スルホコハク酸塩、エーテルスルホン酸塩、エーテルカルボン酸塩、脂肪酸塩、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物、アルキルアミン塩、第四級アンモニウム塩、アルキルベタイン、アルキルアミンオキシドなどが挙げられる。これらの中でも、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、スルホコハク酸塩が好ましい。
【0057】
前記界面活性剤の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、樹脂粒子全量に対して、0.1質量%以上30質量%以下が好ましく、5質量%以上20質量%以下がより好ましい。前記含有量が、0.1質量%以上30質量%以下の範囲内であれば、好適に樹脂粒子が造膜し、付着性や耐水性に優れたインクが得られ、記録物がブロッキングすることなく好適に用いられる。
【0058】
前記樹脂粒子の体積平均粒径は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、インクジェット記録装置に使用することを考慮すると、10nm以上1,000nm以下が好ましく、10nm以上200nm以下がより好ましく、10nm以上100nm以下が特に好ましい。
前記体積平均粒径が10nm以上1,000nm以下の樹脂粒子を用いることで、水溶性有機溶剤と樹脂粒子表面との接触部位が増加し、樹脂粒子の造膜性が高まり、強靭な樹脂の連続被膜が形成されるため、高い画像硬度を得ることができる。
前記体積平均粒径は、例えば、粒度分析装置(マイクロトラック MODEL UPA9340、日機装株式会社製)を用いて測定することができる。
【0059】
前記樹脂粒子の含有量としては、定着性及びインクの保存安定性の点から、インク全量に対して、1質量%以上15質量%以下が好ましく、インク塗膜の平滑性がより向上し、高い光沢度を得ることができるとともに、非浸透性基材への定着性が向上する点から、5質量%以上12質量%以下がより好ましい。
【0060】
前記樹脂粒子の定性及び定量としては、例えば、「プラスチック材料の各動特性の試験法と評価結果(22);安田武夫著、プラスチックス:日本プラスチック工業連盟誌/「プラスチックス」編集委員会編」に詳述されているような手順で確認することができる。具体的には、赤外線分光分析(IR)、熱分析(DSC、TG/DTA)、熱分解ガスクロマトグラフィ(PyGC)、核磁気共鳴法(NMR)などで分析することにより確認することができる。
【0061】
本発明のインクは、記録後に加熱を行うと、残留溶剤が低減して接着性が向上することができる。特に、樹脂粒子の最低造膜温度(以下、「MFT」とも称することがある)が80℃を超える場合、樹脂の造膜不良をなく、画像堅牢性を向上する点から、加熱をすることが好ましい。
【0062】
なお、本発明のインクを得るために樹脂エマルジョンの最低造膜温度を調整する場合、例えば、樹脂のガラス転移点(以下、「Tg」とも称することがある)をコントロールすることで調整することができ、樹脂粒子が共重合体である場合には、前記共重合体を形成するモノマーの比率を変えることにより調整することができる。本発明において前記最低造膜温度とは、樹脂エマルジョンをアルミニウム等の金属板の上に薄く流延し、温度を上げていったときに透明な連続フィルムが形成される最低温度のことをいい、前記最低造膜温度未満の温度領域では、エマルジョンは白色粉末状となる点をいい、具体的には、「造膜温度試験装置」(株式会社井元製作所製)、「TP−801 MFTテスター」(テスター産業株式会社製)などの市販の最低造膜温度測定装置で測定される値のことをいう。
また、樹脂の粒子径の制御によっても変化するため、これらの制御因子により樹脂の最低造膜温度を狙いの値とすることが可能である。
【0063】
<色材>
前記色材としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、顔料、染料などが挙げられる。これらの中でも、顔料が好ましい。
前記顔料としては、例えば、無機顔料、有機顔料などが挙げられる。
【0064】
前記無機顔料として、例えば、酸化チタン及び酸化鉄、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、バリウムイエロー、カドミウムレッド、クロムイエローに加え、コンタクト法、ファーネス法、サーマル法などの公知の方法によって製造されたカーボンブラックなどが挙げられる。これらは、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
前記有機顔料としては、例えば、アゾ顔料(例えば、アゾレーキ、不溶性アゾ顔料、縮合アゾ顔料、キレートアゾ顔料等を含む)、多環式顔料(例えば、フタロシアニン顔料、ぺリレン顔料、ぺリノン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、ジオキサジン顔料、インジゴ顔料、チオインジゴ顔料、イソインドリノン顔料、キノフラロン顔料等)、染料キレート(例えば、塩基性染料型キレート、酸性染料型キレート等)、ニトロ顔料、ニトロソ顔料、アニリンブラックなどが挙げられる。これらは、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
その他、樹脂中空粒子、無機中空粒子の使用も可能である。
これらの顔料のうち、溶媒と親和性の良いものが好ましく用いられる。
【0065】
前記顔料の含有量としては、インク全量に対して、0.1質量%以上10質量%以下が好ましく、1質量%以上10質量%以下が好ましい。前記含有量が、0.1質量%以上10質量%以下であると、画像濃度、定着性、及び吐出安定性を向上できる。
【0066】
前記顔料の具体例としては、黒色用としては、例えば、ファーネスブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック等のカーボンブラック(C.I.ピグメントブラック7)類、又は銅、鉄(C.I.ピグメントブラック11)、酸化チタン等の金属類、アニリンブラック(C.I.ピグメントブラック1)等の有機顔料が挙げられる。これらは、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
また、カラー用としては、例えば、C.I.ピグメントイエロー1、3、12、13、14、17、24、34、35、37、42(黄色酸化鉄)、53、55、74、81、83、95、97、98、100、101、104、108、109、110、117、120、138、150、153、155;C.I.ピグメントオレンジ5、13、16、17、36、43、51;C.I.ピグメントレッド1、2、3、5、17、22、23、31、38、48:2、48:2(パーマネントレッド2B(Ca))、48:3、48:4、49:1、52:2、53:1、57:1(ブリリアントカーミン6B)、60:1、63:1、63:2、64:1、81、83、88、101(べんがら)、104、105、106、108(カドミウムレッド)、112、114、122(キナクリドンマゼンタ)、123、146、149、166、168、170、172、177、178、179、185、190、193、209、219;C.I.ピグメントバイオレット1(ローダミンレーキ)、3、5:1、16、19、23、38、C.I.ピグメントブルー1、2、15(フタロシアニンブルー)、15:1、15:2、15:3(フタロシアニンブルー)、16、17:1、56、60、63;C.I.ピグメントグリーン1、4、7、8、10、17、18、36などが挙げられる。これらは、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0067】
前記顔料(例えば、カーボンブラック)の表面にスルホン基やカルボキシル基等の官能基を付加し水中に分散可能とした自己分散顔料などが使用できる。
また、前記顔料をマイクロカプセルに包含させ、前記顔料を水中に分散可能なもの、すなわち、顔料粒子を含有させた樹脂粒子であってもよい。
この場合、インクに含有される顔料としては、すべて樹脂粒子に封入又は吸着されている必要はなく、本発明の効果が損なわれない範囲において、前記顔料がインク中に分散していてもよい。
【0068】
前記顔料の数平均粒径としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、最大個数換算で最大頻度は20nm以上150nm以下が好ましい。数平均粒径が、20nm以上であると、分散操作、分級操作が容易になり、150nm以下であると、インクとしての顔料分散安定性が良くなるばかりでなく、吐出安定性にも優れ、画像濃度などの画像品質も高くなり好ましい。
前記数平均粒径は、例えば、粒度分析装置(マイクロトラック MODEL UPA9340、日機装株式会社製)を用いて測定することができる。
【0069】
分散剤を用いて顔料を分散する場合には、特に制限はなく、従来公知のものであればいずれも使用することができ、例えば、高分子分散剤、水溶性界面活性剤などが挙げられる。これらは、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0070】
<水>
前記水としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、イオン交換水、限外濾過水、逆浸透水、蒸留水等の純水、超純水などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0071】
前記水の含有量は、インク全量に対して、15質量%以上60質量%以下が好ましく、20質量%以上40質量%以下がより好ましい。前記含有量が、15質量%以上であると、高粘度になることを防止し、吐出安定性を向上でき、60質量%以下であると、非浸透性基材への濡れ性が好適となり、画像品位を向上できる。
【0072】
<その他の成分>
前記その他の成分としては、例えば、界面活性剤、防腐防黴剤、防錆剤、pH調整剤、ヒンダードフエノールやヒンダードフエノールアミンのようなゴム及びプラスチックス用無色老化防止剤などが挙げられる。
【0073】
−界面活性剤−
前記界面活性剤は、記録媒体への濡れ性を確保するために含有することができる。
【0074】
前記界面活性剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、両性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤などが挙げられる。これらは、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、分散安定性、及び画像品質の点から、ノニオン性界面活性剤が好ましい。
また、組成によってはフッ素系界面活性剤やシリコーン系界面活性剤を併用又は単独使用することできる。
【0075】
前記ノニオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミド、ポリオキシエチレンプロピレンブロックポリマー、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、アセチレンアルコールのエチレンオキサイド付加物などが挙げられる。これらは、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0076】
前記界面活性剤の含有量としては、0.1質量%以上5質量%以下が好ましい。前記含有量が、0.1質量%以上であると、非浸透性基材への濡れ性が確保できるため、画像品質が向上でき、5質量%以下であると、インクが泡立ちにくくなるため、優れた吐出安定性が得られる。
【0077】
−防腐防黴剤−
前記防腐防黴剤としては、例えば、1、2−ベンズイソチアゾリン−3−オン、安息香酸ナトリウム、デヒドロ酢酸ナトリウム、ソルビン酸ナトリウム、ぺンタクロロフェノールナトリウム、2−ピリジンチオール−1−オキサイドナトリウムなどが挙げられる。これらは、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0078】
−防錆剤−
前記防錆剤としては、例えば、酸性亜硫酸塩、チオ硫酸ナトリウム、チオジグリコール酸アンモン、ジイソプロピルアンモニウムニトライト、四硝酸ペンタエリスリト−ル、ジシクロヘキシルアンモニウムニトライトなどが挙げられる。これらは、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0079】
−pH調整剤−
前記pH調整剤としては、特に制限はなく、インクに悪影響を及ぼさずにpHを所望の値に調整できるものであれば任意の物質を使用することができ、例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属元素の水酸化物;炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等のアルカリ金属の炭酸塩;第4級アンモニウム水酸化物やジエタノールアミン、トリエタノ−ルアミン等のアミン;水酸化アンモニウム;第4級ホスホニウム水酸化物などが挙げられる。これらは、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0080】
<インクの製造方法>
前記インクの製造方法としては、例えば、前記水、前記有機溶剤、前記樹脂粒子、前記色材、及び必要に応じて、前記その他の成分を、撹拌混合することにより製造することができる。前記撹拌混合としては、例えば、サンドミル、ホモジナイザー、ボールミル、ペイントシェイカー、超音波分散機、通常の撹拌羽を用いた撹拌機、マグネチックスターラー、高速の分散機などを用いることができる。
【0081】
前記インクの粘度としては、基材に記録した場合の文字品位等の画像品質の点から、25℃で、2mPa・s以上が好ましく、3mPa・s以上20mPa・s以下がより好ましい。前記粘度が、2mPa・s以上であると、吐出信頼性を向上できる。
【0082】
<インクカートリッジ>
本発明で用いられるインクカートリッジは、本発明の前記インクを容器に収容してなる。
前記インクカートリッジとしては、前記インクを容器中に収容してなり、更に必要に応じて適宜選択したその他の部材などを有してなる。
【0083】
前記容器としては、特に制限はなく、目的に応じて、その形状、構造、大きさ、材質等を適宜選択することができ、例えば、アルミニウムラミネートフィルム、樹脂フィルム等で形成されたインク袋などを少なくとも有するものなどが挙げられる。
【0084】
(インクジェット記録方法及びインクジェット記録装置)
本発明のインクジェット記録装置は、インク飛翔手段及び加熱手段を少なくとも有してなり、更に必要に応じて適宜選択したその他の手段を有してなる。
本発明のインクジェット記録方法は、インク飛翔工程及び加熱工程を少なくとも含んでなり、更に必要に応じて適宜選択したその他の工程を含んでなる。
本発明のインクジェット記録方法は、本発明のインクジェット記録装置により好適に実施することができ、前記インク飛翔工程は前記インク飛翔手段により好適に行うことができる。前記加熱工程は前記加熱手段により好適に行うことができる。また、前記その他の工程は、前記その他の手段により好適に行うことができる。
【0085】
<インク飛翔工程及びインク飛翔手段>
前記インク飛翔工程は、本発明の前記インクジェット用インクに、刺激を印加し、前記インクを飛翔させて基材上に画像を形成する工程であり、インク飛翔手段により実施することができる。
前記インク飛翔手段としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、インクジェットヘッド、などが挙げられる。
【0086】
前記インクジェットヘッドとして、インク流路内のインクを加圧する圧力発生手段として圧電素子を用いてインク流路の壁面を形成する振動板を変形させてインク流路内容積を変化させてインク滴を吐出させるいわゆるピエゾ型のもの(特開平2−51734号公報参照)、発熱抵抗体を用いてインク流路内でインクを加熱して気泡を発生させるいわゆるサーマル型のもの(特開昭61−59911号公報参照)、インク流路の壁面を形成する振動板と電極とを対向配置し、振動板と電極との間に発生させる静電力によって振動板を変形させることで、インク流路内容積を変化させてインク滴を吐出させる静電型のもの(特開平6−71882号公報参照)などが挙げられる。
【0087】
前記刺激は、例えば、前記刺激発生手段により発生させることができ、前記刺激としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、熱(温度)、圧力、振動、光などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、熱、圧力が好ましい。
【0088】
前記インクの飛翔の態様としては、特に制限はなく、前記刺激の種類等に応じて異なり、例えば、前記刺激が「熱」の場合、記録ヘッド内の前記インクに対し、記録信号に対応した熱エネルギーを例えばサーマルヘッド等を用いて付与し、該熱エネルギーにより前記インクに気泡を発生させ、該気泡の圧力により、該記録ヘッドのノズル孔から該インクを液滴として吐出噴射させる方法、などが挙げられる。また、前記刺激が「圧力」の場合、例えば、記録ヘッド内のインク流路内にある圧力室と呼ばれる位置に接着された圧電素子に電圧を印加することにより、圧電素子が撓み、圧力室の容積が縮小して、前記記録ヘッドのノズル孔から該インクを液滴として吐出噴射させる方法、などが挙げられる。
【0089】
前記飛翔させる前記インクの液滴は、その大きさとしては、例えば、3pl以上40pl以下とするのが好ましく、その吐出噴射の速さとしては5m/s以上20m/s以下とするのが好ましく、その駆動周波数としては1kHz以上とするのが好ましく、その解像度としては300dpi以上とするのが好ましい。
【0090】
<基材>
前記基材としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、浸透性基材、非浸透性基材などが挙げられる。これらの中でも、非浸透性基材が好ましい。
前記浸透性基材としては、例えば、普通紙、合成紙、布、などが挙げられる。
前記非浸透性基材とは、水透過性、吸収性、及び吸着性の少なくともいずれかが低い表面を有する基材をいい、内部に多数の空洞があっても外部に開口していない材質も含まれ、より定量的には、ブリストー(Bristow)法において接触開始から30msec1/2までの水吸収量が10mL/m以下である基材を意味する。
前記非浸透性基材としては、例えば、ポリ塩化ビニル(PVC)フィルム、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリエチレンフィルムなどが挙げられる。これらの中でも、PVCフィルム、PETフィルムが好ましい。
前記非浸透性基材が樹脂被覆層を有するものが、一つのインクで各種基材への記録が対応できる点から好ましい。前記樹脂被覆層は、アクリル樹脂被覆層であることが、定着性、溶剤親和性、及び堅牢性の点からより好ましい。
【0091】
<加熱工程及び加熱手段>
前記加熱工程は、画像を記録した基材を加熱する工程であり、加熱手段により実施することができる。
前記インクジェット記録方法としては、前記基材としての非浸透性基材に高画像品質な記録ができるが、より一層高画質で耐擦性、及び密着性の高い画像の形成、並びに高速の記録条件にも対応できるようにするために、記録後に前記非浸透性基材を加熱することが好ましい。記録後に加熱工程を有すると、インク中に含有される樹脂の造膜が促進されるため、記録物の画像硬度を向上させることができる。
【0092】
前記加熱手段としては、多くの既知の装置を使用することができ、例えば、強制空気加熱、輻射加熱、伝導加熱、高周波乾燥、マイクロ波乾燥等の装置などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
前記加熱温度としては、インク中に含まれる水溶性有機溶剤の種類や量、及び添加する樹脂エマルジョンの最低造膜温度に応じて変更することができ、更に印刷する基材の種類に応じても変更することができる。
前記加熱温度としては、乾燥性、及び造膜温度の点から、高いことが好ましく、40℃以上120℃以下がより好ましく、50℃以上90℃以下が特に好ましい。前記加熱温度が、40℃以上120℃以下であると、非浸透性基材の熱によるダメージを防止し、インクヘッドが温まることによる不吐出が生じることを抑制することができる。
【0093】
<その他の工程及びその他の手段>
前記その他の工程としては、例えば、刺激発生工程、制御工程などが挙げられる。
前記その他の手段としては、例えば、刺激発生手段、制御手段などが挙げられる。
前記刺激発生手段としては、例えば、加熱装置、加圧装置、圧電素子、振動発生装置、超音波発振器、ライト、などが挙げられ、具体的には、例えば、圧電素子等の圧電アクチュエーター、発熱抵抗体等の電気熱変換素子を用いて液体の膜沸騰による相変化を利用するサーマルアクチュエーター、温度変化による金属相変化を用いる形状記憶合金アクチュエーター、静電力を用いる静電アクチュエーター、などが挙げられる。
前記制御手段としては、前記各手段の動きを制御することができる限り特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、シークエンサー、コンピュータ等の機器が挙げられる。
【0094】
本発明のインクジェット記録方法の一例としては、顔料を含まないクリアインク、又は着色剤として白色(ホワイト)の顔料を含有するインク(ホワイトインク)を基材に塗布する工程と、顔料を有するインクを用いて記録する記録工程とを有する記録方法とすることもできる。この際、クリアインク、又はホワイトインクは、記録媒体の全面に塗布することも可能であり、また、記録媒体の一部に塗布してもよい。記録媒体の一部に塗布する場合は、例えば、記録を行う箇所と同一の箇所に塗布してもよいし、又は記録を行う箇所と一部共通する箇所に塗布してもよい。
【0095】
前記ホワイトインクを用いる場合、以下の記録方法を用いることも有効である。ホワイトインクを基材に塗布し、その上に、ホワイト以外の色のインクで記録する。この方法によれば、例えば、透明フィルムを用いた場合であっても、本発明のホワイトインクを記録媒体表面に付着させるため、記録の視認性を確保することができる。本発明のインクは、非浸透性基材に対しても良好な乾燥性、高光沢、耐擦過性等を有するので、視認性を向上させるために透明フィルム等の非浸透性基材にホワイトインクを塗布することが可能である。
【0096】
また、透明フィルムの上に記録を行った後、ホワイトインクを塗布することによっても、同様の視認性に優れた画像を得ることが可能となる。ホワイトインクの代わりにクリアインクを用いれば、保護層としても機能することが可能である。
【0097】
本発明のインクは、インクジェット記録方法に制限されず、広く使用することが可能である。インクジェット記録方法以外の記録方法としては、例えば、ブレードコート法、グラビアコート法、グラビアオフセットコート法、バーコート法、ロールコート法、ナイフコート法、エアナイフコート法、コンマコート法、Uコンマコート法、AKKUコート法、スムージングコート法、マイクログラビアコート法、リバースロールコート法、4本乃至5本ロールコート法、ディップコート法、カーテンコート法、スライドコート法、ダイコート法、スプレーコート法などが挙げられる。
実施態様の一例として、前記ホワイトインクを記録媒体の全面に塗布する場合は、インクジェット記録方法以外の塗工方法で塗工し、ホワイト以外の色のインクで記録する場合は、インクジェット記録方法で記録する態様が可能である。
別の実施態様として、ホワイトインクを用いた記録も、ホワイト以外の色のインクを用いた記録も、インクジェット記録方法で記録する態様が可能である。
ホワイトインクの代わりにクリアインクを用いた場合も同様である。
【0098】
ここで、前記インクを用いて記録を行うことができるインクジェット記録装置について、図面を参照しながら説明する。なお、非浸透性基材を用いる場合について説明するが、紙等の浸透性基材に対しても同様に記録することができる。また、前記インクジェット記録装置には、キャリッジが走査するシリアル型(シャトル型)、ライン型ヘッドを備えたライン型などがあるが、図1は、シリアル型インクジェット記録装置の一例を示す概略図である。図2は、図1の装置の本体内の構成を示す概略図である。
【0099】
図1に示すように、前記インクジェット記録装置は、装置本体101と、装置本体101に装着した給紙トレイ102と、排紙トレイ103と、インクカートリッジ装填部104とを有する。インクカートリッジ装填部104の上面には、操作キーや表示器などの操作部105が配置されている。インクカートリッジ装填部104は、インクカートリッジ201の脱着を行うための開閉可能な前カバー115を有している。111は上カバー、112は前カバーの前面である。
【0100】
装置本体101内には、図2に示すように、左右の側板(不図示)に横架したガイド部材であるガイドロッド131とステー132とで、キャリッジ133を主走査方向に摺動可能に保持し、主走査モータ(不図示)によって移動走査する。
キャリッジ133には、イエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、ブラック(Bk)の各色のインク滴を吐出する4個のインクジェット記録用ヘッドからなる記録ヘッド134の複数のインク吐出口を、主走査方向と交叉する方向に配列し、インク滴吐出方向を下方に向けて装着している。
【0101】
記録ヘッド134を構成するインクジェット記録用ヘッドとしては、圧電素子等の圧電アクチュエーター、発熱抵抗体等の電気熱変換素子を用いて液体の膜沸騰による相変化を利用するサーマルアクチュエーター、温度変化による金属相変化を用いる形状記憶合金アクチュエーター、静電力を用いる静電アクチュエーターなどを、インクを吐出するためのエネルギー発生手段として備えたものなどが使用できる。
また、キャリッジ133には、記録ヘッド134に各色のインクを供給するための各色のサブタンク135)を搭載している。サブタンク135には、インク供給チューブ(不図示)を介して、インクカートリッジ装填部104に装填された本発明のインクカートリッジ201から、前記インクが供給されて補充される。
【0102】
一方、給紙トレイ102の基材積載部(圧板)141上に積載した基材142を給紙するための給紙部として、基材積載部141から基材142を1枚ずつ分離給送する半月コロ(給紙コロ143)、及び給紙コロ143に対向し、摩擦係数の大きな材質からなる分離パッド144を備え、前記分離パッド144は給紙コロ143側に付勢されている。
前記給紙部から給紙された基材142を記録ヘッド134の下方側で搬送するための搬送部として、基材142を静電吸着して搬送するための搬送ベルト151と、給紙部からガイド145を介して送られる基材142を搬送ベルト151との間で挟んで搬送するためのカウンタローラ152と、略鉛直上方に送られる基材142を略90°方向転換させて搬送ベルト151上に倣わせるための搬送ガイド153と、押さえ部材154で搬送ベルト151側に付勢された先端加圧コロ155とが備えられ、また、搬送ベルト151表面を帯電させるための帯電手段である帯電ローラ156が備えられている。
【0103】
搬送ベルト151は無端状ベルトであり、加熱ヒーター式搬送ローラ157とテンションローラ158との間に張架されて、ベルト搬送方向に周回可能である。この搬送ベルト151は、例えば、抵抗制御を行っていない厚み40μm程度の樹脂材、例えば、テトラフルオロエチレンとエチレンの共重合体(ETFE)で形成した基材吸着面となる表層と、この表層と同材質でカーボンによる抵抗制御を行った裏層(中抵抗層、アース層)とを有している。搬送ベルト151の裏側には、記録ヘッド134による印写領域に対応して加熱ヒーター式ガイド部材161が配置されている。なお、記録ヘッド134で記録された基材142を排紙するための排紙部として、搬送ベルト151から基材142を分離するための分離爪171と、排紙ローラ172及び排紙コロ173とが備えられており、基材142はファンヒータ(不図示)により熱風乾燥された後、排紙ローラ172の下方の、排紙トレイ103に出力される。
【0104】
装置本体101の背面部には、両面給紙ユニット181が着脱可能に装着されている。両面給紙ユニット181は、搬送ベルト151の逆方向回転で戻される基材142を取り込んで反転させて再度、カウンタローラ152と搬送ベルト151との間に給紙する。なお、両面給紙ユニット181の上面には手差し給紙部182が設けられている。
前記インクジェット記録装置においては、給紙部から基材142が1枚ずつ分離給紙され、略鉛直上方に給紙された基材142は、ガイド145で案内され、搬送ベルト151とカウンタローラ152との間に挟まれて搬送される。更に先端を搬送ガイド153で案内されて先端加圧コロ155で搬送ベルト151に押し付けられ、略90°搬送方向を転換される。このとき、帯電ローラ156によって搬送ベルト151が帯電されており、基材142は、搬送ベルト151に静電吸着されて搬送される。
そこで、キャリッジ133を移動させながら画像信号に応じて記録ヘッド134を駆動することにより、停止している基材142にインク滴を吐出して1行分を記録し、基材142を所定量搬送後、次の行の記録を行う。記録終了信号又は基材142の後端が記録領域に到達した信号を受けることにより、記録動作を終了して、基材142を、排紙トレイ103に排紙する。
【0105】
図3は、図1及び図2に示すインクジェット記録装置の加熱手段の一例を示す概略図である。この図3の加熱手段は、温風発生部としての加熱ファン201により温風202が搬送ベルト151上を搬送される基材142上に形成された画像に吹き付けることにより乾燥できるようになっている。
なお、搬送ベルト151の基材142と反対側には、ヒーター群203が設けられており、画像形成された基材142を加熱可能である。図3中157、158は搬送手段としての搬送ローラである。
【0106】
(記録物)
本発明の記録物は、基材上に、本発明の前記インクにより記録された画像を有する。
前記基材としては、インクジェット記録方法及びインクジェット記録装置と同様の基材を用いることができるが、本発明の前記インクは、非透過性基材に適用されるときにも良好な発色を備えた画像を提供することができる。
また、カラー記録の際にカラーインクより前に、ホワイトインクを塗布することによって基材が着色されたもの(着色基材)であっても基材の色を白に揃えることができ、カラーインクの発色を向上させることができる。
前記着色基材としては、例えば、着色された紙や前記フィルム、生地、衣服、セラミックなどが挙げられる。
【実施例】
【0107】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明は、これらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0108】
(樹脂粒子の調製例1)
<ポリカーボネート系ウレタン樹脂エマルジョンの調製>
攪拌機、還流冷却管、及び温度計を挿入した反応容器に、ポリカーボネートジオール(1,6−ヘキサンジオールとジメチルカーボネートの反応生成物(数平均分子量(Mn):1,200)1,500g、2,2−ジメチロールプロピオン酸(以下、「DMPA」と称することもある)220g、及びN−メチルピロリドン(以下、「NMP」と称することもある)1,347gを窒素気流下で仕込み、60℃に加熱してDMPAを溶解させた。
次に、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート1,445g、ジブチルスズジラウリレート(触媒)2.6gを加えて90℃まで加熱し、5時間かけてウレタン化反応を行い、イソシアネート末端ウレタンプレポリマーを得た。この反応混合物を80℃まで冷却し、これにトリエチルアミン149gを添加し、混合したものの中から4,340gを抜き出して、強攪拌下、水5,400g、及びトリエチルアミン15gの混合溶液の中に加えた。
次に、氷1,500gを投入し、35質量%の2−メチル−1,5−ペンタンジアミン水溶液626gを加えて鎖延長反応を行い、固形分濃度が30質量%となるように溶媒を留去し、ポリカーボネート系ウレタン樹脂エマルジョン1を得た。
得られたポリカーボネート系ウレタン樹脂エマルジョン1について、「造膜温度試験装置」(株式会社井元製作所製)で測定したところ、最低造膜温度は55℃であった。
【0109】
(樹脂粒子の調製例2)
<ポリエーテル系ウレタン樹脂エマルジョンの調製>
温度計、窒素ガス導入管、及び攪拌器を備えた窒素置換された容器中で、ポリエーテルポリオール(「PTMG1000」、三菱化学株式会社製、重量平均分子量:1,000)100.2質量部、2,2−ジメチロールプロピオン酸15.7質量部、イソホロンジイソシアネート48.0質量部、及び有機溶剤としてメチルエチルケトン77.1質量部を、触媒としてジブチルスズジレウレート(以下、「DMTDL」と称することもある)0.06質量部を使用し、反応させた。
前記反応を4時間継続した後、希釈溶剤としてメチルエチルケトン30.7質量部を供給し、更に反応を継続した。
前記反応物の重量平均分子量が20,000以上60,000以下の範囲に達した時点で、メタノール1.4質量部を投入し、前記反応を終了することによって、ウレタン樹脂の有機溶剤溶液を得た。
前記ウレタン樹脂の有機溶剤溶液に48質量%水酸化カリウム水溶液を13.4質量部加えることで前記ウレタン樹脂が有するカルボキシル基を中和した。次いで、水715.3質量部を加え十分に攪拌した後、エージング及び脱溶剤することによって、固形分濃度30質量%のポリエーテル系ウレタン樹脂エマルジョン2を得た。
得られたポリエーテル系ウレタン樹脂エマルジョン2について、前記ポリカーボネート系ウレタン樹脂エマルジョンの調製例1と同様にして測定した最低造膜温度は43℃であった。
【0110】
(樹脂粒子の調製例3)
<ポリエステル系ウレタン樹脂エマルジョンの調製>
前記樹脂粒子の調製例2において、ポリエーテルポリオール(「PTMG1000」、三菱化学株式会社製、重量平均分子量:1,000)を、ポリエステルポリオール(「ポリライトOD−X−2251」、DIC株式会社製、重量平均分子量:2,000)に変更した以外は、前記樹脂粒子の調製例2と同様にして、固形分濃度30質量%のポリエステル系ウレタン樹脂エマルジョン3を得た。
得られたポリエステル系ウレタン樹脂エマルジョン3について、前記ポリカーボネート系ウレタン樹脂エマルジョンの調製例1と同様にして測定した最低造膜温度は74℃であった。
【0111】
(顔料分散液の調製例1)
<ブラック顔料分散液の調製>
以下の処方混合物をプレミックスした後、ディスクタイプのビーズミル(シンマルエンタープライゼス社製KDL型、メディア:直径0.3mmジルコニアボール使用)で7時間循環分散してブラック顔料分散液(顔料固形分濃度15質量%)を得た。
・カーボンブラック顔料(商品名:Monarch800、キャボット社製)・・・15質量部
・アニオン性界面活性剤(パイオニンA−51−B、竹本油脂株式会社製)・・・2質量部
・イオン交換水・・・83質量部
【0112】
(顔料分散液の調製例2)
<シアン顔料分散液の調製>
前記顔料分散液の調製例1において、カーボンブラック顔料を、ピグメントブルー15:3(商品名:LIONOL BLUE FG−7351、東洋インキ株式会社製)に変更した以外は、前記顔料分散液の調製例1と同様にして、シアン顔料分散液(顔料固形分濃度15質量%)を得た。
【0113】
(顔料分散液の調製例3)
<マゼンタ顔料分散液の調製>
前記顔料分散液の調製例1において、カーボンブラック顔料を、ピグメントレッド122(商品名:トナーマゼンタEO02、クラリアントジャパン株式会社製)に変更した以外は、前記顔料分散液の調製例1と同様にして、マゼンタ顔料分散液(顔料固形分濃度15質量%)を得た。
【0114】
(顔料分散液の調製例4)
<イエロー顔料分散液の調製>
前記顔料分散液の調製例1において、カーボンブラック顔料を、ピグメントイエロー74(商品名:ファーストイエロー531、大日精化工業株式会社製)に変更した以外は、前記顔料分散液の調製例1と同様にして、イエロー顔料分散液(顔料固形分濃度15質量%)を得た。
【0115】
(顔料分散液の調製例5)
<樹脂分散ブラック顔料分散液の調製>
−ポリマー溶液Aの調製−
機械式攪拌機、温度計、窒素ガス導入管、還流管、及び滴下ロートを備えた1Lのフラスコ内を充分に窒素ガス置換した後、スチレン11.2g、アクリル酸2.8g、ラウリルメタクリレート12.0g、ポリエチレングリコールメタクリレート4.0g、スチレンマクロマー(東亜合成株式会社製、商品名:AS−6)4.0g、及びメルカプトエタノール0.4gを混合し、65℃に昇温した。次に、スチレン100.8g、アクリル酸25.2g、ラウリルメタクリレート108.0g、ポリエチレングリコールメタクリレート36.0g、ヒドロキシルエチルメタクリレート60.0g、前記スチレンマクロマー36.0g、メルカプトエタノール3.6g、アゾビスメチルバレロニトリル2.4g、及びメチルエチルケトン18.0gの混合溶液を、2.5時間かけてフラスコ内に滴下した。滴下後、アゾビスメチルバレロニトリル0.8g及びメチルエチルケトン18.0gの混合溶液を、0.5時間かけてフラスコ内に滴下した。65℃で1時間熟成した後、アゾビスメチルバレロニトリル0.8gを添加し、更に1時間熟成した。反応終了後、フラスコ内にメチルエチルケトン364.0gを添加し、固形分濃度が50質量%のポリマー溶液Aを800g得た。
【0116】
−ブラック顔料分散液の調製−
前記ポリマー溶液Aを28gと、カーボンブラック(デグサ社製、FW100)42g、1mol/Lの水酸化カリウム水溶液13.6g、メチルエチルケトン20g、及び水13.6gを十分に攪拌した後、ロールミルを用いて混練した。得られたペーストを純水200gに投入し、充分に攪拌した後、エバポレータでメチルエチルケトン及び水を留去し、更に粗大粒子を除くために、得られた分散液を平均孔径5.0μmのポリビニリデンフロライドメンブランフィルターで加圧濾過し、顔料固形分濃度15質量%、固形分濃度20質量%のブラック顔料含有ポリマー粒子分散体を得た。
【0117】
(実施例1)
<インクの調製>
前記調製例1のブラック顔料分散液(顔料固形分濃度15質量%)20質量%、前記調製例1のポリカーボネート系ウレタン樹脂エマルジョン(固形分濃度30質量%)30質量%、3−メトキシ−N,N−ジメチルプロピオンアミド(商品名:エクアミドM−100、出光興産株式会社製)11質量%、1,2−プロパンジオール21質量%、及び3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノール4質量%、防腐剤として商品名:プロキセルLV(アーチ・ケミカルズ・ジャパン株式会社製)0.1質量%、フッ素系界面活性剤(商品名:ユニダイン DSN−403N、ダイキン工業株式会社製)0.01質量%、及び高純水を残量となるように添加(合計100質量%)し、混合攪拌して、平均孔径0.2μmのポリプロピレンフィルターにて濾過することにより、実施例1のインクを作製した。
【0118】
(実施例2〜9、及び比較例1〜4)
<インクの調製>
実施例1において、表1から表3に記載の組成、及びに含有量に変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例2〜9、及び比較例1〜4のインクを作製した。
【0119】
【表1】
【0120】
【表2】
【0121】
【表3】
【0122】
−樹脂粒子−
*ポリエステル樹脂エマルジョン(ペスレジンA−124GP、高松油脂株式会社製、固形分濃度30質量%)
*エチレン−塩化ビニル系共重合体エマルジョン(スミエリート1210、住化ケムテックス株式会社製、固形分濃度50質量%)
【0123】
−有機溶剤A及びその比較成分−
*3−メトキシ−N,N−ジメチルプロピオンアミド(商品名:エクアミドM100、出光興産株式会社製、δH:4.1MPa1/2、Fh:16%、沸点:216℃)
*3−ブトキシ−N,N−ジメチルプロピオンアミド(商品名:エクアミドB100、出光興産株式会社製、δH:7.0MPa1/2、Fh:17%、沸点:252℃)
*ジエチレングリコールジエチルエーテル(東京化成工業株式会社製、δH:9.5MPa1/2、Fh:25%、沸点:180℃)
*ジベンジルエーテル(東京化成工業株式会社製、δH:7.4MPa1/2、Fh:26%、沸点:298℃)
*テトラメチルウレア(東京化成工業株式会社製、δH:8.1MPa1/2、Fh:22%、沸点:177℃)
*2−ピロリドン(東京化成工業株式会社製、δH:5.2MPa1/2、Fh:20%、沸点:245℃)
*1−n−オクチル−2−ピロリドン(東京化成工業株式会社製、δH:8.4MPa1/2、Fh:21%、沸点:170℃)
*1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン(東京化成工業株式会社製、δH:6.7MPa1/2、Fh:21%、沸点:224℃)
*ジメチルスルホキシド(東京化成工業株式会社製、δH:10.2MPa1/2、Fh:23%、沸点189℃)
*アセトン(東京化成工業株式会社製、δH:7.0MPa1/2、Fh:21%、沸点56℃)
*シクロヘキシルアミン(東京化成工業株式会社製、δH:6.6MPa1/2、Fh:24%、沸点135℃)
【0124】
−有機溶剤B−
*1,2−プロパンジオール(東京化成工業株式会社製、δH:13.8MPa1/2、Fh:35%、沸点:188℃)
*1,3−プロパンジオール(東京化成工業株式会社製、δH:14.0MPa1/2、Fh:38%、沸点:211℃)
*1,2−ブタンジオール(東京化成工業株式会社製、δH:19.2MPa1/2、Fh:43%、沸点:191℃)
*2,3−ブタンジオール(東京化成工業株式会社製、δH:18.3MPa1/2、Fh:43%、沸点:178℃)
【0125】
−有機溶剤C−
*3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノール(東京化成工業株式会社製、δH:12.6MPa1/2、Fh:39%、沸点:174℃)
【0126】
−有機溶剤D−
*2−メチル−2,4−ペンタンジオール(東京化成工業株式会社製、δH:15.0MPa1/2、Fh:39%、沸点:197℃)
*ジプロピレングリコールモノメチルエーテル(東京化成工業株式会社製、δH:10.8MPa1/2、Fh:31%、沸点:190℃)
【0127】
*フッ素系界面活性剤(ユニダインDSN−403N、ダイキン工業株式会社製)
*防腐剤(プロキセルLV、アーチ・ケミカルズ・ジャパン株式会社製)
【0128】
次に、得られた実施例1〜9、及び比較例1〜4のインクについて、以下のようにして、「インクの保存安定性」、及び「吐出信頼性」を評価した。結果を表4に示した。
【0129】
<インクの保存安定性>
各インクを容量が50mLのガラスバイアル瓶に40mL封入し、70℃の恒温槽にて14日間保管した後、粘度を測定し、14日間保管前後の粘度から粘度変化率(%)を算出した。得られた粘度変化率から、下記の評価基準に基づき、インクの保存安定性を評価した。なお、評価がB以上であることが実使用上望ましい。
前記粘度は、コーンプレート型粘度計DV−IP CP(英弘精機株式会社製)を用いて、25℃で測定した。
[評価基準]
A:粘度変化率が5%以下
B:粘度変化率が6%以上10%以下
C:粘度変化率が11%以上20%以下
【0130】
<吐出信頼性>
インクジェットプリンター(IPSiO GXe5500改造機、株式会社リコー製)を用いて吐出信頼性を評価した。前記IPSiO GXe5500改造機は、IPSiO GXe5500機を、150cmの印字幅で30m/hrの印字速度相当の印字をA4サイズで再現できるように改造したものである。
まず、実施例1〜9、及び比較例1〜4のインクを前記インクジェットプリンターにそれぞれ充填し、「ノズル抜け」が発生していないことを確認した後に12時間インクジェットプリンターを放置した。12時間放置後、クリーニングメンテナンスを行わないでノズルチェックパターンを、基材としてアクリル樹脂被覆層を設けたポリ塩化ビニルフィルム(AVERY DENISON社製、MPI3000、以下、「PVCフィルム」と称することがある)上に印刷し、発生した「ノズル抜け」をカウントし、下記評価基準に基づき、「吐出信頼性」を評価した。前記評価がB以上であることが実使用上望ましい。なお、前記「ノズル抜け」とは、インクが吐出されず正常にインク画像が描画されないことを意味する。
[評価基準]
A:ノズル抜けが1箇所以内
B:ノズル抜けが2箇所以内
C:ノズル抜けが4箇所以内
D:ノズル抜けが5箇所以上
【0131】
次に、得られた実施例1〜9、及び比較例1〜4のインクをインクジェットプリンター(装置名:IPSiO GXe5500改造機、株式会社リコー製)に充填し、基材として、前記「PVCフィルム」、及びアクリル樹脂被覆層を設けたPETフィルム(株式会社きもと製、透明PET、ビューフルTP−188、以下、「PETフィルム」と称することがある)を用い、ベタ画像を記録した。ベタ画像を記録した後、前記ベタ画像を80℃に設定したホットプレート(ホットプレート(NINOS ND−1、アズワン社製)上で1時間乾燥させた。
なお、前記IPSiO GXe5500改造機は、IPSiO GXe5500機を、150cmの印字幅で30m/hrの印字速度相当の印字をA4サイズで再現できるように改造した。また、前記ポットプレートを設置し、記録後の加熱条件(加熱温度、加熱時間)を変えることができるように改造した。
作成した各ベタ画像について、以下のようにして、「定着性(ビーディング)」、「非転写性」、及び「耐擦過性」を評価した。結果を表5に示した。
なお、屋外用途への利用を考慮して、「定着性(ビーディング)」、「非転写性」、及び「耐擦過性」の評価は、一般の紙に記録する場合と比べてかなり厳しい評価基準を採用している。
【0132】
<定着性(ビーディング)>
前記「PVCフィルム」及び前記「PETフィルム」に形成した各ベタ画像の印刷ムラを目視により観察し、下記評価基準に基づいて、「定着性(ビーディング)」を評価した。前記評価がB以上であることが実使用上望ましい。
[評価基準]
A:非常に良好(ビーディングが全くなかった)
B:良好(わずかにビーディングが観察された)
C:普通(ビーディングがあった)
D:不良(著しいビーディングがあった)
【0133】
<非転写性>
前記「PVCフィルム」及び前記「PETフィルム」上に形成した各ベタ画像2枚を3cm×3cmのサイズに切り取り、2枚のベタ画像同士が接するように重ね、その上からプレス機で1.0MPaの圧力を10秒間かけた。その後、前記2枚の評価サンプルを剥がし、このときの剥がれやすさ及び剥がした後の画像の損傷の有無を目視で観察し、下記評価基準に基づいて、「非転写性」を評価した。前記評価がB以上であることが実使用上望ましい。
[評価基準]
A:2枚のベタ画像を剥がすときに、貼り付き感が無く自然に剥がれ、互いの基材への色移りも見られなかった
B:2枚のベタ画像を剥がすときに、わずかな貼り付き感があるものの、画像の損傷は見られなかった
C:2枚のベタ画像を剥がすときに、貼り付き感があり、画像の損傷がわずかに見られた
D:2枚のベタ画像を剥がすときの貼り付き感が強く、画像の損傷が顕著であった
【0134】
<耐擦過性>
前記「PVCフィルム」及び前記「PETフィルム」上に形成した各ベタ画像を乾いた木綿(カナキン3号)で400gの荷重をかけて擦過し、画像の状態を目視で観察し、下記評価基準に基づき、「耐擦過性」を評価した。前記評価がB以上であることが実使用上望ましい。
[評価基準]
AA:50回以上擦っても画像が変化しなかった
A:50回擦った段階で多少の傷が残るが画像濃度には影響しなかった
B:31回以上50回以下擦過する間に画像濃度が低下した
C:30回以下の擦過で画像濃度が低下した
【0135】
【表4】
【0136】
【表5】
【0137】
表4及び表5の結果から、実施例1は、非浸透性基材(前記「PVCフィルム」及び前記「PETフィルム」)に対する定着性に非常に優れており、高速印字を行ってもビーディングが発生しておらず、耐擦過性、及び非転写性に優れる画像が得られ、かつ高い吐出信頼性、及びインクの保存安定性が得られていることがわかった。
実施例2は、定着性向上のために添加した有機溶剤の沸点がやや高いため、実施例1に比べて乾燥性が劣る結果となった。
実施例3は、アルコキシル基を有する化合物を含まないため、実施例1に比べ安定性が劣る結果となった。
実施例4は、定着性向上のために添加した有機溶剤のFhがやや高く、非浸透性基材への浸透性が若干悪化したため、実施例1に比べて定着性が劣る結果となった。
実施例5は、定着性向上のために添加した有機溶剤がやや多かった例であり、実施例1に比べて若干非転写性及び耐擦過性が劣る結果となった。
実施例6は、定着性向上のために添加した有機溶剤がやや少なかった例であり、実施例1に比べて若干定着性が劣る結果となった。
実施例7は、ポリエステル樹脂粒子を用いた例であり、ポリウレタン樹脂粒子を用いた実施例1に比べて若干耐擦過性及び吐出信頼性が劣る結果となった。
実施例8は、ポリ塩化ビニル樹脂粒子を用いた例であり、ポリウレタン樹脂粒子を用いた実施例1に比べて若干吐出信頼性及びインクの保存安定性が劣る結果となった。
実施例9は、定着性向上のために添加する有機溶剤を2種類併用した例であるが、実施例1に比べて遜色のない結果が得られている。
【0138】
これに対して、比較例1〜3は、ハンセンの溶解パラメータにおける水素結合項δHが4.1MPa1/2以上9.5MPa1/2以下でありかつ沸点が170℃以上である化合物を含まない例であり、比較例1は、実施例1に比べて定着性、及び非転写性が劣っていた。比較例2は、実施例1に比べて耐擦過性、吐出信頼性、及びインクの保存安定性が劣っていた。比較例3は、実施例1に比べて耐擦過性、及び吐出信頼性が劣っていた。
比較例4は、炭素数3〜4のジオール化合物を含有していないため、吐出信頼性及びインクの保存安定性が劣っていた。
【0139】
従来の溶剤系インクは、インク中の有機溶剤により非浸透性基材を膨潤させながら定着するため、非浸透性基材に対する定着性に優れているが、前記水性インクは、最終記録物はインク塗膜が基材にのっているだけの構成となるため、インク塗膜の基材への定着性が不十分であり、高速印字性に劣るという問題がある。
更に、屋外用途を想定した場合、記録物の耐擦過性についても、屋内向けとは比べ物にならない強靭な耐擦過性、耐溶剤性、画像硬度などの性質が求められている。しかし、前記水性インクでは溶剤系インクに匹敵する十分な前記性質が得られていないという問題がある。
また更に、画像同士を重ね合せた際の画像の色移りや損傷を防止する非転写性についても改良が必要である。
【0140】
前記評価結果から、実施例1〜9のインクが屋外用途に適したものであることがわかった。また、実施例1〜9のインクは、従来の溶剤系インクと比較しても遜色のない定着性、耐擦過性、非転写性、吐出信頼性、及びインクの保存安定性を有していることがわかった。
【0141】
(実験例)
<加熱条件の影響>
実施例1において、下記表6のNo.1〜No.8に示すように記録後の加熱条件(加熱温度、加熱時間)を変えた以外は、実施例1と同様にして、定着性、非転写性、及び耐擦過性を評価した。結果を表6に示した。基材としては、前記「PVCフィルム」を用いた。
なお、No.8は、実施例1のインクを用いて、同様にしてベタ画像の記録を行い、記録後の加熱なし、25℃で24時間放置により乾燥させた。
【0142】
【表6】
【0143】
本発明の態様としては、例えば、以下のとおりである。
<1> 水、有機溶剤、色材、及び樹脂粒子を含有するインクであって、
前記有機溶剤が、ハンセンの溶解パラメータの水素結合項δHが4.1MPa1/2以上9.5MPa1/2以下でありかつ沸点が170℃以上である化合物と、
炭素数3〜4のジオール化合物と、を含むことを特徴とするインクである。
<2> 前記炭素数3〜4のジオール化合物が、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、及び2,3−ブタンジオールから選択される少なくとも1種である前記<1>に記載のインクである。
<3> 前記ハンセンの溶解パラメータの水素結合項δHが4.1MPa1/2以上9.5MPa1/2以下でありかつ沸点が170℃以上である有機溶剤における、下記数式1で表される比率Fhが、16%以上25%以下である前記<1>から<2>のいずれかに記載のインクである。
<数式1>
Fh(%)=[δH/(δD+δP+δH)]×100
ただし、前記数式1中、前記δHはハンセンの溶解パラメータの水素結合項を表す。前記δDは、ハンセンの溶解パラメータの分散項を表す。前記δPは、ハンセンの溶解パラメータの極性項を表す。
<4> 前記ハンセンの溶解パラメータにおける水素結合項δHが4.1MPa1/2以上9.5MPa1/2以下でありかつ沸点が170℃以上である化合物が、3−メトキシ−N,N−ジメチルプロピオンアミド、3−ブトキシ−N,N−ジメチルプロピオンアミド、ジエチレングリコールジエチルエーテル、テトラメチルウレア、2−ピロリドン、1−n−オクチル−2−ピロリドン、及び1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンから選択される少なくとも1種である前記<1>から<3>のいずれかに記載のインクである。
<5> 前記ハンセンの溶解パラメータにおける水素結合項δHが4.1MPa1/2以上9.5MPa1/2以下でありかつ沸点が170℃以上である化合物の含有量が、有機溶剤の総含有量に対して、10質量%以上50質量%以下である前記<1>から<4>のいずれかに記載のインクである。
<6> 前記有機溶剤が、更に、アルコキシ基を有する化合物を含有する前記<1>から<5>のいずれかに記載のインクである。
<7> 前記アルコキシ基を有する化合物が、3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノールである前記<6>に記載のインクである。
<8> 前記有機溶剤の沸点が、170℃以上250℃未満である前記<1>から<7>のいずれかに記載のインクである。
<9> 前記有機溶剤の総含有量が、20質量%以上70質量%以下である前記<1>から<8>のいずれかに記載のインクである。
<10> 前記樹脂粒子が、ポリウレタン樹脂粒子、ポリエステル樹脂粒子、及び塩化ビニル−エチレン共重合体粒子のいずれかを含む前記<1>から<9>のいずれかに記載のインクである。
<11> 前記樹脂粒子が、ポリウレタン樹脂粒子である前記<1>から<10>のいずれかに記載のインクである。
<12> 前記樹脂粒子の含有量が、1質量%以上15質量%以下である前記<1>から<11>のいずれかに記載のインクである。
<13> 樹脂粒子の体積平均粒径が、10nm以上1,000nmである前記<1>から<12>のいずれかに記載のインクである。
<14> 前記色材が、顔料である前記<1>から<13>のいずれかに記載のインクである。
<15> 前記<1>から<14>のいずれかに記載のインクに、刺激を印加し、前記インクを飛翔させて基材上に画像を記録するインク飛翔工程を少なくとも含むことを特徴とするインクジェット記録方法である。
<16> 更に画像を記録した基材を加熱する加熱工程を含む前記<15>に記載のインクジェット記録方法である。
<17> 前記基材が、アクリル樹脂被覆層を有する非浸透性基材である前記<15>から<16>のいずれかに記載のインクジェット記録方法である。
<18> 前記基材が、ポリ塩化ビニルフィルム及びポリエチレンテレフタレートフィルムのいずれかである前記<15>から<17>のいずれかに記載のインクジェット記録方法である。
<19> 前記<1>から<14>のいずれかに記載のインクに、刺激を印加し、前記インクを飛翔させて基材上に画像を記録するインク飛翔手段を少なくとも有することを特徴とするインクジェット記録装置である。
<20> 更に画像を記録した基材を加熱する加熱手段を有する前記<19>に記載のインクジェット記録装置である。
<21> 加熱手段による加熱が、40℃以上120℃以下である前記<20>に記載のインクジェット記録装置である。
<22> 前記基材が、アクリル樹脂被覆層を有する非浸透性基材である前記<19>から<21>のいずれかに記載のインクジェット記録装置である。
<23> 前記基材が、ポリ塩化ビニルフィルム及びポリエチレンテレフタレートフィルムのいずれかである前記<19>から<22>のいずれかに記載のインクジェット記録装置である。
<24> 基材上に、前記<1>から<14>のいずれかに記載のインクにより記録された画像を有してなることを特徴とする記録物である。
<25> 前記基材が、アクリル樹脂被覆層を有する非浸透性基材である前記<24>に記載の記録物である。
<26> 前記基材が、ポリ塩化ビニルフィルム及びポリエチレンテレフタレートフィルムのいずれかである前記<24>から<25>のいずれかに記載の記録物である。
<27> 前記<1>から<14>のいずれかに記載のインクを容器に収容してなることを特徴とするインクカートリッジである。
【0144】
前記<1>から<14>のいずれかに記載のインク、前記<15>から<18>のいずれかに記載のインクジェット記録方法、前記<19>から<23>のいずれかに記載のインクジェット記録装置、前記<24>から<26>のいずれかに記載の記録物、及び前記<27>に記載のインクカートリッジは、従来における前記諸問題を解決し、前記本発明の目的を達成することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0145】
【特許文献1】特開2005−220352号公報
【特許文献2】特開2011−094082号公報
【符号の説明】
【0146】
134 記録ヘッド
142 用紙
200 インク収容容器
241 インク収容部
242 インク注入口
243 インク排出口
244 ケース(外装)

図1
図2
図3