特許第6958629号(P6958629)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 住友金属鉱山株式会社の特許一覧

特許6958629ニッケル複合酸化物、リチウムニッケル複合酸化物の製造方法
<>
  • 特許6958629-ニッケル複合酸化物、リチウムニッケル複合酸化物の製造方法 図000003
  • 特許6958629-ニッケル複合酸化物、リチウムニッケル複合酸化物の製造方法 図000004
  • 特許6958629-ニッケル複合酸化物、リチウムニッケル複合酸化物の製造方法 図000005
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6958629
(24)【登録日】2021年10月11日
(45)【発行日】2021年11月2日
(54)【発明の名称】ニッケル複合酸化物、リチウムニッケル複合酸化物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C01G 53/00 20060101AFI20211021BHJP
   H01M 4/525 20100101ALI20211021BHJP
【FI】
   C01G53/00 A
   H01M4/525
【請求項の数】3
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2019-550299(P2019-550299)
(86)(22)【出願日】2018年10月25日
(86)【国際出願番号】JP2018039769
(87)【国際公開番号】WO2019082992
(87)【国際公開日】20190502
【審査請求日】2020年4月13日
(31)【優先権主張番号】特願2017-207646(P2017-207646)
(32)【優先日】2017年10月26日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000183303
【氏名又は名称】住友金属鉱山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】川上 裕二
(72)【発明者】
【氏名】二瓶 知倫
【審査官】 手島 理
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2013/015007(WO,A1)
【文献】 特開平10−188975(JP,A)
【文献】 特開2012−119093(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01G25/00−47/00
C01G49/10−56/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リチウムニッケル複合酸化物を製造する際の原料となるニッケル複合酸化物であって、
炭素含有量が0.15質量%以下であり、
比表面積が30m/g以上90m/g以下であるニッケル複合酸化物。
【請求項2】
前記ニッケル複合酸化物の粒子の表面に存在するアルミニウム化合物のアルミニウムが、前記ニッケル複合酸化物に占める質量割合が1.5質量%以上7.0質量%以下である請求項1に記載のニッケル複合酸化物。
【請求項3】
請求項1または2に記載のニッケル複合酸化物と、リチウム化合物との混合物を調製する混合工程と、
前記混合物を焼成する焼成工程とを有するリチウムニッケル複合酸化物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ニッケル複合酸化物、リチウムニッケル複合酸化物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話、ノート型パーソナルコンピュータなどの携帯電子機器の普及に伴い、高いエネルギー密度を有する小型で軽量な二次電池の開発が要求されている。また、ハイブリット自動車を始めとする電気自動車用の電池として、高出力の二次電池の開発も要求されている。このような要求を満たす非水系電解質二次電池として、リチウムイオン二次電池がある。
【0003】
リチウムイオン二次電池は、例えば負極、正極、電解液などで構成され、負極および正極の活物質には、リチウムを脱離および挿入することが可能な材料が用いられている。
【0004】
リチウム複合酸化物、特に合成が比較的容易なリチウムコバルト複合酸化物を正極材料に用いたリチウムイオン二次電池は、4V級の高い電圧が得られるため、高エネルギー密度を有する電池として期待され、実用化が進んでいる。リチウムコバルト複合酸化物を用いた電池では、優れた初期容量特性やサイクル特性を得るための開発がこれまで数多く行われてきており、すでにさまざまな成果が得られている。
【0005】
しかしながら、リチウムコバルト複合酸化物は、原料に高価なコバルト化合物を用いるため、このリチウムコバルト複合酸化物を用いる電池の容量あたりの単価は、ニッケル水素電池より大幅に高くなり、適用可能な用途はかなり限定されている。
【0006】
このため、携帯機器用の小型二次電池や、電力貯蔵用や電気自動車用などの大型二次電池について、正極材料のコストを下げ、より安価なリチウムイオン二次電池の製造を可能とすることに対する期待は大きく、その実現は、工業的に大きな意義があるといえる。
【0007】
リチウムイオン二次電池用活物質の新たなる材料としては、コバルトよりも安価なニッケルを用いたリチウムニッケル複合酸化物を挙げることができる。このリチウムニッケル複合酸化物は、リチウムコバルト複合酸化物よりも低い電気化学ポテンシャルを示すため、電解液の酸化による分解が問題になりにくく、より高容量が期待でき、コバルト系と同様に高い電池電圧を示すことから、開発が盛んに行われている。
【0008】
しかし、純粋にニッケルのみで合成したリチウムニッケル複合酸化物を正極材料としてリチウムイオン二次電池を作製した場合、コバルト系に比ベてサイクル特性が劣り、また高温環境下での使用や保存により、比較的電池性能を損ないやすいという欠点を有している。このため、ニッケルの一部をコバルトやアルミニウムで置換したリチウムニッケル複合酸化物が一般的に知られている。
【0009】
例えば特許文献1には、下記の一般式(1)で表されるリチウムニッケル複合酸化物からなる非水系電解質二次電池用正極活物質であって、比表面積が0.5〜2.05m/gであり、上記リチウムニッケル複合酸化物の炭素含有量は、全量に対して0.08質量%以下に調整されていることを特徴とする非水電解質二次電池用正極活物質が開示されている。
【0010】
一般式:LiNi1−aM1 ・・・(1)(式中、M1は、Ni以外の遷移金属元素、2族元素、又は13族元素から選ばれる少なくとも1種の元素を示し、aは、0.01≦a≦0.5であり、bは、0.85≦b≦1.05である。)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】国際公開第2013/015007号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
ところで、近年ではリチウムイオン電池の更なる性能向上が求められている。このため、非水系電解質二次電池用正極活物質であるリチウムニッケル複合酸化物についても、例えば非水系電解質二次電池とした場合の出力電圧を十分に高めるため、反応抵抗を抑制することが求められている。
【0013】
そこで上記従来技術が有する問題に鑑み、本発明の一側面では、非水系電解質二次電池における反応抵抗を抑制することが可能なリチウムニッケル複合酸化物を製造することができるニッケル複合酸化物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するため本発明の一態様によれば、
リチウムニッケル複合酸化物を製造する際の原料となるニッケル複合酸化物であって、
炭素含有量が0.15質量%以下であり、
比表面積が30m/g以上90m/g以下であるニッケル複合酸化物を提供する。

【発明の効果】
【0015】
本発明の一態様によれば、非水系電解質二次電池における反応抵抗を抑制することが可能なリチウムニッケル複合酸化物を製造することができるニッケル複合酸化物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明に係る実施例1において作製したコイン型電池の断面構成の説明図。
図2A】インピーダンス評価の測定例。
図2B】インピーダンス評価の解析に使用した等価回路の概略説明図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照して説明するが、本発明は、下記の実施形態に制限されることはなく、本発明の範囲を逸脱することなく、下記の実施形態に種々の変形および置換を加えることができる。
[ニッケル複合酸化物]
まず、本実施形態のニッケル複合酸化物の一構成例について説明する。
【0018】
本実施形態のニッケル複合酸化物は、炭素含有量を0.15質量%以下とすることができる。
【0019】
本発明の発明者らは、非水系電解質二次電池における反応抵抗を抑制することが可能なリチウムニッケル複合酸化物を製造することができる、すなわち該リチウムニッケル複合酸化物の原料として好適に用いることができるニッケル複合酸化物について、鋭意検討を行った。
【0020】
まず、既述の特許文献1においては、リチウムニッケル複合酸化物の粒子表面に存在する炭酸リチウムの量を特定値以下に制御することで低い内部抵抗とすることができることが開示されている。特許文献1においては、水洗処理の条件を選択することで、リチウムニッケル複合酸化物の粒子表面に存在する炭酸リチウムの量を調整できる旨記載されている。
【0021】
しかしながら、本発明の発明者らの検討によれば、リチウムニッケル複合酸化物の粒子内部に存在する微量の炭素成分もリチウムイオン二次電池等の非水系電解質二次電池の反応抵抗に影響を及ぼしている可能性が認められた。そして、更なる検討を行ったところ、反応抵抗に影響を及ぼすリチウムニッケル複合酸化物の粒子内部に存在する微量の炭素成分は、原料の1つであるニッケル複合酸化物に起因しているものと考えられた。このため、ニッケル複合酸化物の炭素含有量を所定の範囲とすることで、非水系電解質二次電池における反応抵抗を抑制することが可能なリチウムニッケル複合酸化物の原料に好適に用いることができることを見出し、本発明を完成させた。
【0022】
本発明の発明者らの検討によると、本実施形態のニッケル複合酸化物は炭素含有量が0.15質量%以下であることが好ましく、0.10質量%以下であることがより好ましい。
【0023】
なお、本実施形態のニッケル複合酸化物の炭素含有量の下限値は特に限定されないが、炭素含有量は少ないほど好ましいことから、例えば0以上とすることができる。ただし、ニッケル複合酸化物を製造する過程等で炭素は混入し易く、過度に低減しようとすると、コスト上昇の原因となる恐れもある。このため、本実施形態のニッケル複合酸化物の炭素含有量は、例えば0.02質量%以上とすることがより好ましい。
【0024】
本実施形態のニッケル複合酸化物の炭素含有量の評価方法は特に限定されないが、例えば高周波燃焼−赤外吸収法等により評価することができる。
【0025】
また、本実施形態のニッケル複合酸化物の粒子の表面に存在するアルミニウム化合物のアルミニウムが、本実施形態のニッケル複合酸化物に占める質量割合は7.0質量%以下であることが好ましい。
【0026】
ニッケル複合酸化物の粒子の表面に存在する酸化アルミニウム(アルミナ)等のアルミニウム化合物は、該ニッケル複合酸化物を用いて製造したリチウムニッケル複合酸化物においてもリチウムニッケル複合酸化物に表面ではほとんど固溶せず、主に粒子表面に存在することになる。そして、リチウムニッケル複合酸化物の粒子表面に存在するアルミニウム化合物はその製造過程においてそのほとんどが脱落する。
【0027】
したがって、ニッケル複合酸化物がアルミニウムを含有する場合において、ニッケル複合酸化物の粒子の表面に存在するアルミニウム化合物のアルミニウムが、ニッケル複合酸化物に占める質量割合が高くなると、該ニッケル複合酸化物を用いて得られたリチウムニッケル複合酸化物のアルミニウムの含有割合は必然的に減少する。そして、リチウムニッケル複合酸化物がアルミニウムを含有する場合において、リチウムニッケル複合酸化物のアルミニウムの含有割合を高めることで、該リチウムニッケル複合酸化物を用いた非水系電解質二次電池のサイクル特性を特に高めることができる。
【0028】
本発明の発明者らの検討によれば、ニッケル複合酸化物の粒子の表面に存在するアルミニウム化合物のアルミニウムが、ニッケル複合酸化物に占める質量割合を7.0質量%以下とすることで、該ニッケル複合酸化物から得られるリチウムニッケル複合酸化物の粒子の表面に存在するアルミニウム化合物の割合を十分に抑制できる。このため、得られるリチウムニッケル複合酸化物のアルミニウムの含有割合を十分に確保でき、非水系電解質二次電池とした場合のサイクル特性を特に高めることができるので好ましい。
【0029】
ニッケル複合酸化物の粒子の表面に存在するアルミニウム化合物のアルミニウムが、ニッケル複合酸化物に占める質量割合は、6.0質量%以下であることがより好ましい。
【0030】
ニッケル複合酸化物がアルミニウムを含有する場合において、ニッケル複合酸化物の粒子の表面に存在するアルミニウム化合物のアルミニウムが、ニッケル複合酸化物に占める質量割合は少ないほど好ましいことから、その下限値は特に限定されない。
【0031】
ただし、ニッケル複合酸化物がアルミニウムを含有する場合において、ニッケル複合酸化物の粒子表面に存在するアルミニウム化合物のアルミニウムが、ニッケル複合酸化物に占める質量割合を低くしようとすると、焙焼工程でニッケル複合水酸化物に付与する熱エネルギーを抑制する必要が生じる。このように焙焼工程で与える熱エネルギーを抑制した場合、ニッケル複合酸化物の結晶性が低下し、かえってサイクル特性が低下する場合もある。このため、ニッケル複合酸化物がアルミニウムを含有する場合において、ニッケル複合酸化物の粒子の表面に存在するアルミニウム化合物のアルミニウムが、ニッケル複合酸化物に占める質量割合は1.5質量%以上であることが好ましく、3.0質量%以上であることがより好ましい。
【0032】
ニッケル複合酸化物の粒子の表面に存在するアルミニウム化合物のアルミニウムが、ニッケル複合酸化物に占める質量割合は例えば以下の手順により測定、算出することができる。
【0033】
まず、得られたニッケル複合酸化物について水洗を行い、水洗後のニッケル複合酸化物の試料を作製する。
【0034】
この際水洗の条件は特に限定されず、ニッケル複合酸化物の表面に存在するアルミニウム化合物を水洗除去できるように条件を選択することができる。例えば、ニッケル複合酸化物に20℃の純水を加えて、スラリーの液体部の電気伝導度が45mS/cmになるように調整したスラリーを20分間撹拌して水洗した後、ろ過、乾燥することで、水洗を実施できる。
【0035】
なお、水洗で用いる水は特に限定されないが、電気伝導度が10μS/cm未満の水であることが好ましく、1μS/cm以下の水であることがより好ましい。
【0036】
そして、水洗前、水洗後のニッケル複合酸化物に含まれるアルミニウム化合物のアルミニウム含有量を測定する。なお、水洗前とは、水洗に供していないニッケル複合酸化物を意味する。水洗前、水洗後のニッケル複合酸化物に含まれるアルミニウム化合物のアルミニウム量は、例えばICP−AES(Inductively Coupled Plasma−Atomic Emission Spectrometry(ICP発光分光))等を用いて測定できる。
【0037】
なお、水洗前、水洗後のニッケル複合酸化物に含まれるアルミニウム化合物のアルミニウム含有量は、予め定めた水洗前のニッケル複合酸化物の単位質量当たりの含有量として算出することになる。
【0038】
そして、得られた測定値を用いて、以下の式(1)によりニッケル複合酸化物の粒子の表面に存在するアルミニウム化合物のアルミニウムが、ニッケル複合酸化物に占める質量割合を算出できる。
【0039】
(ニッケル複合酸化物の粒子の表面に存在するアルミニウム化合物のアルミニウムが、ニッケル複合酸化物に占める質量割合)
=(Albefore−Alafter)/W×100 ・・・(1)
なお、上記式(1)中の、Albefore、Alafter、Wは、それぞれ以下の意味を有する。
Albefore:水洗前のニッケル複合酸化物に含まれるアルミニウム化合物のアルミニウム含有量
Alafter:水洗後のニッケル複合酸化物に含まれるアルミニウム化合物のアルミニウム含有量
W:水洗前のニッケル複合酸化物の単位質量
上記式(1)に示すように、水洗前のニッケル複合酸化物に含まれるアルミニウム化合物のアルミニウム含有量から、水洗後のニッケル複合酸化物に含まれるアルミニウム化合物のアルミニウム含有量を差し引くことで、水洗前のニッケル複合酸化物の粒子の表面に存在していたアルミニウム化合物のアルミニウム含有量を算出できる。
【0040】
そして、粒子の表面に存在していたアルミニウム化合物のアルミニウム含有量を、水洗前のニッケル複合酸化物の単位質量で割ることで、ニッケル複合酸化物の粒子の表面に存在するアルミニウム化合物のアルミニウムが、ニッケル複合酸化物に占める質量割合を算出できる。
【0041】
なお、上述の操作からも明らかなように、ニッケル複合酸化物の粒子の表面に存在するアルミニウム化合物のアルミニウムが、ニッケル複合酸化物に占める質量割合は、水洗前後でのニッケル複合酸化物に対するアルミニウムの含有量の変化割合を示しており、ニッケル複合酸化物を水洗した場合の溶出アルミニウムの、ニッケル複合酸化物に占める質量割合と言い換えることもできる。
【0042】
本実施形態のニッケル複合酸化物の具体的な組成は特に限定されるものではないが、例えば、一般式:Ni(1−y−z)Co1+α(式中、Mは、Al、Tiの中から選ばれる少なくとも1種の元素を表し、y、zはそれぞれ、0≦y≦0.35、0.005≦z≦0.15、−0.2≦α≦0.2を満たす)で表されるニッケル複合酸化物(ニッケルコバルト複合酸化物)が挙げられる。なお、上記一般式においてyは0.01≦y≦0.35であることが好ましく、0.02≦y≦0.20であることがより好ましく、0.03≦y≦0.15であることがさらに好ましい。
【0043】
また、本実施形態のニッケル複合酸化物の比表面積についても特に限定されるものではないが、比表面積は、例えば20m/g以上100m/g以下であることが好ましく、30m/g以上90m/g以下であることがより好ましい。
【0044】
これは、比表面積を20m/g以上とすることで、リチウムニッケル複合酸化物を製造するために、リチウム化合物との混合物を焼成する際、リチウム化合物中のリチウムが、ニッケル複合酸化物へ拡散し易くなり、反応性を特に高めることができるからである。ただし、比表面積を100m/gより大きくしようとすると、ニッケル複合酸化物について、粉砕等の処理を行う必要が生じる場合があるため、100m/g以下であることが好ましい。
[ニッケル複合酸化物の製造方法]
本実施形態のニッケル複合酸化物の製造方法は特に限定されるものではないが、ニッケル複合水酸化物を焙焼する焙焼工程を有することができる。
【0045】
具体的には例えば、一般式:Ni(1−y−z)Co(OH)2+β(式中、Mは、Al、Tiの中から選ばれる少なくとも1種の元素を表し、y、zはそれぞれ、0≦y≦0.35、0.005≦z≦0.15、−0.2≦β≦0.2を満たす)で表されるニッケル複合水酸化物(ニッケルコバルト複合水酸化物)を焙焼する焙焼工程を有することができる。なお、上記一般式においてyは0.01≦y≦0.35であることが好ましく、0.02≦y≦0.20であることがより好ましく、0.03≦y≦0.15であることがさらに好ましい。
【0046】
なお、ニッケル複合水酸化物の製造方法は特に限定されず、含有する金属であるニッケルと、その他の添加金属、例えば上述のコバルトと、添加元素Mとを共沈させることにより製造することができる。
【0047】
また、焙焼工程に供するニッケル複合水酸化物は、上記ニッケル複合水酸化物(ニッケルコバルト複合酸化物)に限定されるものではない。目的とするニッケル複合酸化物の組成に対応したニッケル複合水酸化物を焙焼工程に供することができる。
【0048】
ニッケル複合水酸化物を焙焼する際の条件については特に限定されるものではなく、得られるニッケル複合酸化物について、炭素含有量を十分に低減できるようにその焙焼条件を選択することが好ましい。
【0049】
本発明の発明者らの検討によれば、例えば焙焼時間や、焙焼温度、焙焼温度までの昇温速度等の焙焼条件を選択することで、得られるニッケル複合酸化物の炭素含有量を調整することができる。このため、予備試験等を行い、焙焼条件を選択することで、炭素含有量が所望の範囲のニッケル複合酸化物を製造することができる。
【0050】
なお、例えば焙焼工程における焙焼温度は450℃より高く750℃以下が好ましく、500℃以上730℃以下がより好ましい、600℃以上730℃以下がさらに好ましい。
【0051】
ニッケル複合水酸化物の粒子を焙焼する際の雰囲気は特に制限されるものではなく、非還元性雰囲気であればよいが、酸素含有気体の雰囲気下、または酸素含有気体の気流下で行うことが好ましい。なお、酸素含有気体中の酸素含有割合は特に限定されないが、酸素の含有割合は、例えば18vol%以上であることが好ましく、20vol%以上であることがより好ましい。また、酸素含有気体は酸素とすることもできるので、酸素含有割合は100vol%以下とすることができる。特に酸素含有気体としては空気を用いることが好ましい。
【0052】
焙焼に用いる設備は、特に限定されるものではなく、ニッケル複合水酸化物を非還元性雰囲気中で加熱できるものであればよく、ガス発生がない電気炉などが好適に用いられる。
【0053】
また、焙焼工程で得られたニッケル複合酸化物の表面に付着しているアルミニウム化合物を低減、除去するため、必要に応じて水洗工程を実施することもできる。
【0054】
ただし、既述のニッケル複合酸化物の粒子の表面に存在するアルミニウム化合物のアルミニウムが、ニッケル複合酸化物に占める質量割合を評価する場合であって、水洗工程を実施する場合には、水洗工程の前に上記評価を実施することが好ましい。
【0055】
水洗工程では、焙焼工程で得られたニッケル複合酸化物と、水とを混合してスラリー化し、10℃以上40℃以下の温度範囲でかつスラリーの液体部の電気伝導度を30mS/cm以上60mS/cm以下となるように制御することが好ましい。これは、水洗工程で作製したスラリーの電気伝導度を上記範囲とすることで、ニッケル複合酸化物の粒子の表面に付着した余剰成分、例えばアルミニウム化合物等を選択的、かつ十分に低減することができるからである。
【0056】
なお、水洗工程で用いる水は特に限定されないが、電気伝導度が10μS/cm未満の水であることが好ましく、1μS/cm以下の水であることがより好ましい。
【0057】
水洗時間については特に限定されないが、ニッケル複合酸化物の粒子の表面に付着した余剰成分を十分に除去しつつ、生産性も高める観点から、例えば5分間以上2時間以下であることが好ましい。なお、水洗の間、作製したスラリーを撹拌しておくことが好ましい。
【0058】
水洗工程の後は、スラリーをろ過し、回収した水洗後のニッケル複合酸化物を乾燥する乾燥工程を実施することができる。
【0059】
乾燥工程における乾燥条件は特に限定されないが、80℃以上450℃以下であることが好ましく、100℃以上350℃以下であることがより好ましく、120℃以上350℃以下であることがさらに好ましい。
【0060】
乾燥工程の雰囲気は特に限定されないが、炭素含有量が抑制された雰囲気下で実施することが好ましく、例えば真空雰囲気下で実施することが好ましい。
[リチウムニッケル複合酸化物]
次に、本実施形態のリチウムニッケル複合酸化物の一構成例について説明する。
【0061】
本実施形態のリチウムニッケル複合酸化物は、既述のニッケル複合酸化物を用いて製造することができ、その組成は特に限定されるものではない。
【0062】
本実施形態のリチウムニッケル複合酸化物は特に限定されないが、例えば一般式:LiNi(1−y−z)Co2+γ(式中、Mは、Al、Tiの中から選ばれる少なくとも1種の元素を表し、x、y、zはそれぞれ、0.90≦x≦1.10、0≦y≦0.35、0.005≦z≦0.15、−0.2≦γ≦0.2を満たす)で表されるリチウムニッケル複合酸化物(リチウムニッケルコバルト複合酸化物)が挙げられる。なお、上記一般式においてxは0.95≦x1.08であることが好ましい。また、yは0.01≦y≦0.35であることが好ましく、0.02≦y≦0.20であることがより好ましく、0.03≦y≦0.15であることがさらに好ましい。
【0063】
本実施形態のリチウムニッケル複合酸化物は、既述のニッケル複合酸化物から製造することができる。このため、該リチウムニッケル複合酸化物を正極活物質として用いた非水系電解質二次電池とした場合に、反応抵抗を抑制した非水系電解質二次電池とすることができる。
[リチウムニッケル複合酸化物の製造方法]
本実施形態のリチウムニッケル複合酸化物の製造方法は、特に限定されるものではない。本実施形態のリチウムニッケル複合酸化物の製造方法は、例えば以下の工程を有することができる。
【0064】
既述のニッケル複合酸化物と、リチウム化合物との混合物を調製する混合工程。
上記混合物を焼成する焼成工程。
【0065】
以下、各工程について説明する。
(混合工程)
混合工程は、ニッケル複合酸化物と、リチウム化合物とを混合して、混合物(混合粉)を得る工程である。
【0066】
ニッケル複合酸化物と、リチウム化合物とは、混合物中のリチウム以外の金属の原子数と、リチウムの原子数(Li)との比(Li/Me)が、0.90以上1.10以下となるように混合することが好ましい。特に、上記混合物中のリチウムの原子数と、リチウム以外の金属の原子数との比(Li/Me)が0.95以上1.08以下となるように混合することがより好ましい。後述する焼成工程の前後でLi/Meはほとんど変化しないので、焼成工程に供する混合物中のLi/Meが、得られるリチウムニッケル複合酸化物におけるLi/Meとほぼ同じになる。このため、混合工程で調製する混合物におけるLi/Meが、得ようとするリチウムニッケル複合酸化物におけるLi/Meと同じになるように混合することが好ましい。
【0067】
混合工程に供するリチウム化合物としては特に限定されないが、例えば水酸化リチウム、炭酸リチウム等から選択された1種以上を好ましく用いることができる。
【0068】
混合工程において、ニッケル複合酸化物とリチウム化合物とを混合する際の混合手段としては、一般的な混合機を使用することができ、例えば、シェーカーミキサ、レーディゲミキサ、ジュリアミキサ、Vブレンダなどを用いればよい。
(焼成工程)
焼成工程は、上記混合工程で得られた混合物を焼成して、リチウムニッケル複合酸化物とする工程である。焼成工程において混合物を焼成すると、ニッケル複合酸化物に、リチウム化合物中のリチウムが拡散しリチウムニッケル複合酸化物が形成される。
【0069】
焼成工程において、混合物を焼成する焼成温度は特に限定されないが、例えば600℃以上950℃で以下であることが好ましく、700℃以上900℃以下であることがより好ましい。
【0070】
焼成温度を600℃以上とすることで、ニッケル複合酸化物へのリチウムの拡散を十分に進行させることができ、得られるリチウムニッケル複合酸化物に含まれるリチウムニッケル複合酸化物の結晶構造を特に均一にすることができる。このため、生成物を正極活物質として用いた場合に電池特性を特に高めることができるため好ましいからである。また、反応を十分に進行させることができるため、余剰のリチウムの残留や、未反応の粒子が残留することを抑制できるからである。
【0071】
焼成温度を950℃以下とすることで、生成するリチウムニッケル複合酸化物の粒子間で焼結が進行することを抑制することができる。また、異常粒成長の発生を抑制し、得られるリチウムニッケル複合酸化物の粒子が粗大化することを抑制することができる。
【0072】
また、熱処理温度まで昇温する過程で、リチウム化合物の融点付近の温度にて1時間以上5時間以下程度保持することもでき、この場合反応をより均一に行わせることができ、好ましい。
【0073】
焼成工程における焼成時間のうち、所定温度、すなわち上述の焼成温度での保持時間は特に限定されないが、2時間以上とすることが好ましく、より好ましくは3時間以上である。これは焼成温度での保持時間を2時間以上とすることで、リチウムニッケル複合酸化物の生成を十分に促進し、未反応物が残留することをより確実に防止することができるからである。
【0074】
焼成温度での保持時間の上限値は特に限定されないが、生産性等を考慮して24時間以下であることが好ましい。
【0075】
焼成時の雰囲気は特に限定されないが、酸化性雰囲気とすることが好ましい。酸化性雰囲気としては、酸素含有気体雰囲気を好ましく用いることができ、例えば酸素濃度が18vol%以上100vol%以下の雰囲気とすることがより好ましい。
【0076】
これは焼成時の雰囲気中の酸素濃度を18vol%以上とすることで、リチウムニッケル複合酸化物の結晶性を特に高めることができるからである。
【0077】
酸素含有気体雰囲気とする場合、該雰囲気を構成する気体としては、例えば空気(大気)や、酸素、酸素と不活性ガスとの混合気体等を用いることができる。
【0078】
なお、酸素含有気体雰囲気を構成する気体として、例えば上述のように酸素と不活性ガスとの混合気体を用いる場合、該混合気体中の酸素濃度は上述の範囲を満たすことが好ましい。
【0079】
特に、焼成工程においては、酸素含有気体の気流中で実施することが好ましく、空気、または酸素気流中で行うことがより好ましい。特に電池特性を考慮すると、酸素気流中で行うことが好ましい。
【0080】
なお、焼成に用いられる炉は、特に限定されるものではなく、例えば空気ないしは酸素気流中で混合物を焼成できるものを用いることができる。焼成に用いられる炉は、炉内の雰囲気を均一に保つ観点から、ガス発生がない電気炉が好ましく、バッチ式あるいは連続式の炉をいずれも用いることができる。
【0081】
焼成工程によって得られたリチウムニッケル複合酸化物は、凝集もしくは軽度の焼結が生じている場合がある。この場合には、焼成工程の後、解砕してもよい。
【0082】
ここで、解砕とは、焼成時に二次粒子間の焼結ネッキングなどにより生じた複数の二次粒子からなる凝集体に、機械的エネルギーを投入して、二次粒子自体をほとんど破壊することなく二次粒子を分離させて、凝集体をほぐす操作のことである。
【0083】
また、焼成工程の前に、仮焼成を実施することもできる。
【0084】
仮焼成を実施する場合、仮焼成温度は特に限定されないが、焼成工程における焼成温度より低い温度とすることができる。仮焼成温度は、例えば250℃以上600℃以下することが好ましく、350℃以上550℃以下とすることがより好ましい。
【0085】
仮焼成時間、すなわち上記仮焼成温度での保持時間は、例えば1時間以上10時間以下程度とすることが好ましく、3時間以上6時間以下とすることがより好ましい。
【0086】
仮焼成後は、一旦冷却した後焼成工程に供することもできるが、仮焼成温度から、焼成温度まで昇温して連続して焼成工程を実施することもできる。
【0087】
なお、仮焼成を実施する際の雰囲気は特に限定されないが、例えば焼成工程と同様の雰囲気とすることができる。
【0088】
仮焼成を実施することにより、ニッケル複合酸化物へのリチウムの拡散が十分に行われ、特に均一なリチウムニッケル複合酸化物を得ることができる。
【0089】
焼成工程の後に必要に応じて水洗工程を実施することもできる。
【0090】
水洗工程では、焼成工程で得られたリチウムニッケル複合酸化物と、水とを混合してスラリー化し、10℃以上40℃以下の温度範囲でかつスラリーの液体部の電気伝導度を30mS/cm以上60mS/cm以下となるように制御することが好ましい。これは、水洗工程で作製したスラリーの電気伝導度を上記範囲とすることで、リチウムニッケル複合酸化物の粒子の表面に付着した余剰成分、例えば余剰リチウム等を選択的、かつ十分に低減することができるからである。
【0091】
なお、水洗工程で用いる水は特に限定されないが、電気伝導度が10μS/cm未満の水であることが好ましく、1μS/cm以下の水であることがより好ましい。
【0092】
水洗時間については特に限定されないが、リチウムニッケル複合酸化物の粒子の表面に付着した余剰成分を十分に除去しつつ、生産性も高める観点から、例えば5分間以上2時間以下であることが好ましい。なお、水洗の間、作製したスラリーを撹拌しておくことが好ましい。
【0093】
水洗工程の後は、スラリーをろ過し、回収した水洗後のリチウムニッケル複合酸化物を乾燥する乾燥工程を実施することができる。
【0094】
乾燥工程における乾燥条件は特に限定されないが、80℃以上450℃以下であることが好ましく、100℃以上350℃以下であることがより好ましく、120℃以上350℃以下であることがさらに好ましい。
【0095】
乾燥工程の雰囲気は特に限定されないが、炭素含有量が抑制された雰囲気下で実施することが好ましく、例えば真空雰囲気下で実施することがより好ましい。
[非水系電解質二次電池]
次に、本実施形態の非水系電解質二次電池の一構成例について説明する。
【0096】
本実施形態の非水系電解質二次電池は、既述のリチウムニッケル複合酸化物を正極材料として用いた正極を有することができる。すなわち、本実施形態の非水系電解質二次電池は、既述のリチウムニッケル複合酸化物を含む正極を備えた構成を有することができる。
【0097】
まず、本実施形態の非水系電解質二次電池の構造の構成例を説明する。
【0098】
本実施形態の非水系電解質二次電池は、正極材料に既述のリチウムニッケル複合酸化物を用いたこと以外は、一般的な非水系電解質二次電池と実質的に同様の構造を備えることができる。
【0099】
具体的には、本実施形態の非水系電解質二次電池は、ケースと、このケース内に収容された正極、負極、電解液およびセパレータを備えた構造を有することができる。
【0100】
より具体的にいえば、セパレータを介して正極と負極とを積層させて電極体とし、得られた電極体に電解液を含浸させることができる。そして、正極の正極集電体と外部に通ずる正極端子との間、および負極の負極集電体と外部に通ずる負極端子との間を、それぞれ集電用リードなどを用いて接続し、ケースに密閉した構造を有することができる。
【0101】
なお、本実施形態の非水系電解質二次電池の構造は、上記例に限定されないのはいうまでもなく、またその外形も筒形や積層形など、種々の形状を採用することができる。
【0102】
各部材の構成例について以下に説明する。
(正極)
まず正極について説明する。
【0103】
正極は、シート状の部材であり、例えば、既述のリチウムニッケル複合酸化物を含有する正極合材ペーストを、アルミニウム箔製の集電体の表面に塗布乾燥して形成できる。なお、正極は、使用する電池にあわせて適宜処理される。たとえば、目的とする電池に応じて適当な大きさに形成する裁断処理や、電極密度を高めるためにロールプレスなどによる加圧圧縮処理等を行うこともできる。
【0104】
上述の正極合材ペーストは、正極合材に、溶剤を添加、混練して形成することができる。そして、正極合材は、粉末状になっている既述のリチウムニッケル複合酸化物と、導電材と、結着剤とを混合して形成できる。
【0105】
導電材は、電極に適当な導電性を与えるために添加されるものである。導電材の材料は特に限定されないが、例えば天然黒鉛、人造黒鉛および膨張黒鉛などの黒鉛や、アセチレンブラック、ケッチェンブラック(登録商標)等のカーボンブラック系材料を用いることができる。
【0106】
結着剤は、正極活物質であるリチウムニッケル複合酸化物をつなぎ止める役割を果たすものである。係る正極合材に使用される結着剤は特に限定されないが、例えばポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、フッ素ゴム、エチレンプロピレンジエンゴム、スチレンブタジエン、セルロース系樹脂、ポリアクリル酸等から選択された1種以上を用いることができる。
【0107】
なお、正極合材には活性炭などを添加することもできる。正極合材に活性炭などを添加することによって、正極の電気二重層容量を増加させることができる。
【0108】
溶剤は、結着剤を溶解してリチウムニッケル複合酸化物、導電材、および活性炭等を結着剤中に分散させる働きを有する。溶剤は特に限定されないが、例えばN−メチル−2−ピロリドン等の有機溶剤を用いることができる。
【0109】
また、正極合材ペースト中における各物質の混合比は特に限定されるものではなく、例えば一般の非水系電解質二次電池の正極の場合と同様にすることができる。例えば、溶剤を除いた正極合材の固形分を100質量部とした場合、リチウムニッケル複合酸化物の含有量を60質量部以上95質量部以下、導電材の含有量を1質量部以上20質量部以下、結着剤の含有量を1質量部以上20質量部以下とすることができる。
【0110】
なお、正極の製造方法は上記方法に限定されるものではなく、例えば正極合材や正極ペーストをプレス成形した後、真空雰囲気下で乾燥すること等で製造することもできる。
(負極)
負極はシート状の部材であり、例えば負極には、金属リチウム、リチウム合金等を用いることができる。また、銅などの金属箔集電体の表面に、負極合材ペーストを塗布、乾燥して負極を形成することもできる。
【0111】
金属箔集電体の表面に負極合材ペーストを塗布、乾燥し、負極を形成する場合、負極は、負極合材ペーストを構成する成分やその配合、集電体の素材等は異なるものの、実質的に上述の正極と同様の方法によって形成され、正極と同様に必要に応じて各種処理が行われる。
【0112】
負極合材ペーストは、負極活物質と結着剤とを混合した負極合材に、適当な溶剤を加えてペースト状にすることができる。
【0113】
負極活物質としては例えば、金属リチウムやリチウム合金などのリチウムを含有する物質や、リチウムイオンを吸蔵および脱離できる吸蔵物質を採用することができる。
【0114】
吸蔵物質は特に限定されないが、例えば天然黒鉛、人造黒鉛、フェノール樹脂等の有機化合物焼成体、およびコークスなどの炭素物質の粉状体等から選択された1種以上を用いることができる。
【0115】
係る吸蔵物質を負極活物質に採用した場合には、正極同様に、結着剤として、PVDF等の含フッ素樹脂を用いることができ、負極活物質を結着剤中に分散させる溶剤としては、N−メチル−2−ピロリドン等の有機溶剤を用いることができる。
(セパレータ)
セパレータは、正極と負極との間に挟み込んで配置されるものであり、正極と負極とを分離し、電解液を保持する機能を有している。
【0116】
セパレータの材料としては、例えばポリエチレンや、ポリプロピレンなどの薄い膜で、微細な孔を多数有する膜を用いることができるが、上記機能を有するものであれば、特に限定されない。
(電解液)
電解液は、支持塩としてのリチウム塩を有機溶媒に溶解したものである。
【0117】
有機溶媒としては、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、トリフルオロプロピレンカーボネートなどの環状カーボネート;また、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジプロピルカーボネートなどの鎖状カーボネート;さらに、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、ジメトキシエタンなどのエーテル化合物;エチルメチルスルホンやブタンスルトンなどの硫黄化合物;リン酸トリエチルやリン酸トリオクチルなどのリン化合物などから選ばれる1種を単独で、あるいは2種以上を混合して用いることができる。
【0118】
支持塩としては、LiPF6、LiBF4、LiClO4、LiAsF6、LiN(CF3SO22、およびそれらの複合塩などを用いることができる。
【0119】
なお、電解液は、電池特性改善のため、ラジカル捕捉剤、界面活性剤、難燃剤などを含んでいてもよい。
【0120】
ここまで、本実施形態の非水系電解質二次電池について、電解質として電解液(非水系電解液)を用いる形態を例に説明したが、本実施形態の非水系電解質二次電池は、係る形態に限定されるものではない。例えば電解質(非水系電解質)として、固体電解質を用いてもよい。固体電解質は、高電圧に耐えうる性質を有する。固体電解質としては、無機固体電解質、有機固体電解質が挙げられる。
【0121】
無機固体電解質としては、酸化物系固体電解質、硫化物系固体電解質等が挙げられる。
【0122】
酸化物系固体電解質としては、特に限定されず、例えば酸素(O)を含有し、かつリチウムイオン伝導性と電子絶縁性とを有するものを好適に用いることができる。酸化物系固体電解質としては、例えば、リン酸リチウム(LiPO)、LiPO、LiBO、LiNbO、LiTaO、LiSiO、LiSiO−LiPO、LiSiO−LiVO、LiO−B−P、LiO−SiO、LiO−B−ZnO、Li1+XAlTi2−X(PO(0≦X≦1)、Li1+XAlGe2−X(PO(0≦X≦1)、LiTi(PO、Li3XLa2/3−XTiO(0≦X≦2/3)、LiLaTa12、LiLaZr12、LiBaLaTa12、Li3.6Si0.60.4等から選択された1種類以上を用いることができる。
【0123】
硫化物系固体電解質としては、特に限定されず、例えば硫黄(S)を含有し、かつリチウムイオン伝導性と電子絶縁性とを有するものを好適に用いることができる。硫化物系固体電解質としては、例えば、LiS−P、LiS−SiS、LiI−LiS−SiS、LiI−LiS−P、LiI−LiS−B、LiPO−LiS−SiS、LiPO−LiS−SiS、LiPO−LiS−SiS、LiI−LiS−P、LiI−LiPO−P等から選択された1種類以上を用いることができる。
【0124】
なお、無機固体電解質としては、上記以外のものを用いてよく、例えば、LiN、LiI、LiN−LiI−LiOH等を用いてもよい。
【0125】
有機固体電解質としては、イオン伝導性を示す高分子化合物であれば、特に限定されず、例えば、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、これらの共重合体などを用いることができる。また、有機固体電解質は、支持塩(リチウム塩)を含んでいてもよい。
【0126】
上述のように電解質として固体電解質を用いた非水系電解質二次電池、すなわち全固体電池とする場合、正極活物質以外の構成は既述の構成から必要に応じて変更することができる。
【0127】
本実施形態の非水系電解質二次電池は、既述のリチウムニッケル複合酸化物を正極材料として用いた正極を備えている。このため、正極における反応抵抗が低く、優れた電池特性を有する非水系電解質二次電池とすることができる。
【実施例】
【0128】
以下、実施例を参照しながら本発明をより具体的に説明する。但し、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
[実施例1]
(ニッケル複合酸化物の製造)
以下の手順により、ニッケル複合酸化物を製造した。
【0129】
ニッケル複合水酸化物として晶析法により調製したNi0.88Co0.09Al0.03(OH)を用意し、係るニッケル複合水酸化物について、大気雰囲気下(酸素:21vol%)、500℃で焙焼を行った(焙焼工程)。
【0130】
なお、焙焼工程では、焙焼温度である500℃まで10℃/minの昇温速度で昇温し、焙焼温度に到達後、焙焼温度で3時間保持した。その後、加熱を停止し、室温まで自然放冷した。
【0131】
このように、ニッケル複合水酸化物を焙焼することで、ニッケル複合水酸化物に含まれていた水分を除去し、Ni0.88Co0.09Al0.03Oで表されるニッケル複合酸化物に転換して回収した。
【0132】
得られたニッケル複合酸化物について、以下の評価を行った。
(1)炭素含有量
得られたニッケル複合酸化物について、炭素分析装置(LECO社製 型式:CS−600)を用いて、高周波燃焼−赤外吸収法で測定したところ、0.07質量%であることが確認できた。
(2)ニッケル複合酸化物の粒子の表面に存在するアルミニウム化合物のアルミニウムが、ニッケル複合酸化物に占める質量割合
また、得られたニッケル複合酸化物について、ニッケル複合酸化物の粒子の表面に存在するアルミニウム化合物のアルミニウムが、ニッケル複合酸化物に占める質量割合を算出したところ、1.4質量%であることが確認できた。
【0133】
ニッケル複合酸化物の粒子の表面に存在するアルミニウム化合物のアルミニウムが、ニッケル複合酸化物に占める質量割合は以下の手順により評価した。
【0134】
まず、得られたニッケル複合酸化物について水洗を行い、水洗後のニッケル複合酸化物の試料を作製した。
【0135】
水洗後のニッケル複合酸化物の試料は以下の手順により調製した。まず、焙焼工程後に得られたニッケル複合酸化物に20℃、電気伝導度が1μS/cmの純水を加えて、スラリーの液体部の電気伝導度が45mS/cmになるように調整したスラリーを20分間撹拌して水洗した後、フィルタープレスによりろ過した。そして、得られたろ過物を、真空雰囲気下、150℃、10時間乾燥して、水洗後のニッケル複合酸化物を得た。
【0136】
次いで、水洗前、水洗後のニッケル複合酸化物に含まれるアルミニウム化合物のアルミニウム含有量を測定した。なお、水洗前とは、水洗に供していないニッケル複合酸化物を意味する。水洗前、水洗後のニッケル複合酸化物に含まれるアルミニウム化合物のアルミニウム含有量は、ICP−AES(Inductively Coupled Plasma−Atomic Emission Spectrometry(ICP発光分光)、島津製作所製 型式:ICPE−9000)を用いて測定した。
【0137】
なお、水洗前、水洗後のニッケル複合酸化物に含まれるアルミニウム化合物のアルミニウム含有量は、予め定めた水洗前のニッケル複合酸化物の単位質量当たりの含有量として算出している。
【0138】
そして、得られた測定値を用いてニッケル複合酸化物の粒子の表面に存在するアルミニウム化合物のアルミニウムが、ニッケル複合酸化物に占める質量割合を算出した。
【0139】
具体的には、以下の式(1)により算出した。
【0140】
(ニッケル複合酸化物の粒子の表面に存在するアルミニウム化合物のアルミニウムが、ニッケル複合酸化物に占める質量割合)
=(Albefore−Alafter)/W×100 ・・・(1)
なお、上記式(1)中の、Albefore、Alafter、Wは、それぞれ以下の意味を有する。
Albefore:水洗前のニッケル複合酸化物に含まれるアルミニウム化合物のアルミニウム含有量
Alafter:水洗後のニッケル複合酸化物に含まれるアルミニウム化合物のアルミニウム含有量
W:水洗前のニッケル複合酸化物の単位質量
(3)比表面積
得られたニッケル複合酸化物の比表面積を全自動比表面積測定装置(マウンテック社製 型式:Macsorb HM model−1220)により評価したところ58.4m/gであった。なお、以下の他の実施例、比較例においても比表面積は同じ装置を用いて評価を行っている。
(リチウムニッケル複合酸化物の製造)
以下の手順により、リチウム化合物と、上述のニッケル複合酸化物との混合物を調製した(混合工程)。
【0141】
リチウム化合物としては、水酸化リチウム一水和物(LiOH・HO)を真空乾燥による無水化処理に供し、得られた無水水酸化リチウムを用いた。
【0142】
混合工程では、リチウム化合物と、ニッケル複合酸化物とを、混合物中の原子数の比がLi/Meが1.030となるように秤量、混合して混合物を調製した。なお、ここでのMeはLi以外の金属の合計の原子数を意味しており、Ni、Co、Alの合計となる。
【0143】
混合工程で得られた混合物を内寸が280mm(L)×280mm(W)×90mm(H)の焼成容器に装入し、これを連続式の焼成炉であるローラーハースキルンを用いて、酸素濃度80vol%以上の雰囲気中で、765℃で220分保持することで焼成を行った(焼成工程)。
【0144】
得られた焼成物に、20℃、電気伝導度が1μS/cmの純水を加えて、スラリーの液体部の電気伝導度が45mS/cmになるように調整したスラリーを50分間撹拌して水洗した後、フィルタープレスによりろ過して得られた粉末を、真空雰囲気下、150℃、10時間乾燥してLi0.985Ni0.88Co0.09Al0.03で表されるリチウムニッケル複合酸化物を得た。
(非水系電解質二次電池の製造)
得られたリチウムニッケル複合酸化物を正極活物質として用いた正極を有する二次電池を作製し、その性能(充電容量、反応抵抗、サイクル特性)を評価した。正極活物質の評価には、図1に示す2032型コイン電池10を使用した。
【0145】
具体的には、上記で得た正極活物質であるリチウムニッケル複合酸化物52.5mgと、アセチレンブラック15mgと、PTEE7.5mgとを混合し、100MPaの圧力で、直径11mm、厚さ100μmにプレス成形した後、真空乾燥機中、120℃で12時間乾燥することにより、正極3を作製した。
【0146】
次に、この正極3を用いて、図1に示す構造の2032型コイン電池10を、露点が−80℃に管理されたアルゴン(Ar)雰囲気のグローブボックス内で作製した。この2032型コイン電池の負極1には、直径17mm、厚さ1mmのリチウム金属を用い、電解液には、1MのLiClOを支持電解質とするエチレンカーボネート(EC)とジエチルカーボネート(DEC)の等量混合液(富山薬品工業株式会社製)を用いた。また、セパレータ2には、膜厚25μmのポリエチレン多孔膜を用いた。なお、2032型コイン電池10のケースは、中空かつ一端が開口された正極缶6と、この正極缶6の開口部に配置される負極缶5とを有しており、負極缶5を正極缶6の開口部に配置すると、負極缶5と正極缶6との間に電極を収容する空間が形成されるように構成されている。また、ケースは、ガスケット4を有し、正極缶6と負極缶5とでコイン状の電池に組み立てられる。
【0147】
正極3は、正極缶6の内面に集電体7を介して接触し、負極1は負極缶5の内面に集電体7を介して接触するようにケースに収容されている。正極3とセパレータ2との間にも集電体7が配置されている。
【0148】
2032型コイン電池10を作製してから24時間程度放置し、開回路電圧OCV(Open Circuit Voltage)が安定した後、正極に対する電流密度を0.1mA/cmとして、カットオフ電圧が4.3Vとなるまで充電した時の容量を充電容量(初期充電容量)とした。なお、充電容量の測定には、マルチチャンネル電圧/電流発生器(株式会社アドバンテスト製、R6741A)を用いた。
【0149】
また、充電電位4.1Vで充電した2032型コイン電池10を用いて、交流インピーダンス法により抵抗値を測定した。測定には、周波数応答アナライザおよびポテンショガルバノスタット(ソーラトロン製 1255B)を使用し、図2Aに示すナイキストプロットを得た。プロットは、溶液抵抗、負極抵抗と容量、および、正極抵抗と容量を示す特性曲線の和として表れているため、図2Bに示した等価回路を用いてフィッティング計算し、正極抵抗(反応抵抗)の値を算出した。本実施例の反応抵抗については、後述する比較例1における反応抵抗値を基準値とし、反応抵抗比として表1に示している。なお、実施例1〜実施例4、比較例1〜比較例3は、比較例1における反応抵抗値を1とし、係る反応抵抗値との比として反応抵抗を示している。
【0150】
また、作製した2032型コイン電池10を用いてサイクル特性を評価した。サイクル特性は、500サイクル充放電を行った時の容量維持率を測定することにより評価した。具体的には、作製した2032型コイン電池10を、25℃に保持された恒温槽内で、電流密度0.3mA/cmとして、カットオフ電圧4.9Vまで充電し、1時間の休止後、カットオフ電圧3.5Vまで放電するサイクルを5サイクル繰り返すコンディショニングを行った後、60℃に保持された恒温槽内で、電流密度2.0mA/cmとして、カットオフ電圧4.9Vまで充電し、1時間の休止後、カットオフ電圧3.5Vまで放電するサイクルを500サイクル繰り返し、各サイクルの放電容量を測定することにより評価した。
【0151】
そして、コイン型電池のコンディショニング後の1サイクル目で得られた放電容量で、コンディショニング後500サイクル後のサイクル目で得られた放電容量を割った割合である容量維持率が70%以上の場合にはサイクル特性に優れているとしてAと評価した。一方、容量維持率が70%未満の場合にはサイクル特性が十分ではなくBと評価を示している。
【0152】
評価結果を表1に示す。
[実施例2〜実施例4]
ニッケル複合酸化物を製造する際、ニッケル複合水酸化物の焙焼温度を表1に示すように変更した点以外は実施例1と同様にしてニッケル複合酸化物を作製し、その評価を行った。なお、実施例2〜実施例4においても焙焼工程後、Ni0.88Co0.09Al0.03Oで表されるニッケル複合酸化物が得られた。
【0153】
そして、得られたニッケル複合酸化物を用いて、実施例1の場合と同様にして、リチウムニッケル複合酸化物、及び非水系電解質二次電池の製造、評価を行った。なお、実施例2〜実施例4においても、Li0.985Ni0.88Co0.09Al0.03で表されるリチウムニッケル複合酸化物が得られた。
【0154】
結果を表1に示す。
[比較例1〜比較例3]
ニッケル複合酸化物を製造する際、ニッケル複合水酸化物の焙焼温度を表1に示すように変更した点以外は実施例1と同様にしてニッケル複合酸化物を作製し、その評価を行った。
【0155】
そして、得られたニッケル複合酸化物を用いて、実施例1の場合と同様にして、リチウムニッケル複合酸化物、及び非水系電解質二次電池の製造、評価を行った。
【0156】
結果を表1に示す。
[実施例5〜実施例9]
ニッケル複合酸化物を製造する際、ニッケル複合水酸化物として晶析法により調製したNi0.91Co0.045Al0.045(OH)を用意し、該ニッケル複合水酸化物を用いた点と、ニッケル複合水酸化物の焙焼温度、昇温速度、焙焼時間(保持時間)を表1に示すように変更した点以外は実施例1と同様にしてニッケル複合酸化物を作製し、その評価を行った。なお、実施例5〜実施例9ではいずれも焙焼工程後には、Ni0.91Co0.045Al0.045Oで表されるニッケル複合酸化物が得られた。
【0157】
そして、得られたニッケル複合酸化物を用いて、実施例1の場合と同様にして、リチウムニッケル複合酸化物、及び非水系電解質二次電池の製造、評価を行った。なお、実施例5〜実施例9ではいずれもLi0.980Ni0.91Co0.045Al0.045で表されるリチウムニッケル複合酸化物が得られた。
【0158】
また、反応抵抗比の評価に当たっては、同じ組成を有する後述する比較例4における反応抵抗値を1とし、係る反応抵抗値との比として反応抵抗を示している。
[比較例4]
ニッケル複合酸化物を製造する際、ニッケル複合水酸化物の焙焼温度、昇温速度、保持時間を表1に示すように変更した点以外は実施例5と同様にしてニッケル複合酸化物を作製し、その評価を行った。
【0159】
そして、得られたニッケル複合酸化物を用いて、実施例5の場合と同様にして、リチウムニッケル複合酸化物、及び非水系電解質二次電池の製造、評価を行った。
【0160】
【表1】
表1に示した結果によると、炭素含有量が0.15質量%以下であるニッケル複合酸化物を用いた実施例1〜実施例4については、炭素含有量が上記範囲を満たさない比較例1〜比較例3と比較して反応抵抗比を1割以上低減できることを確認できた。
【0161】
また、炭素含有量が0.15質量%以下であるニッケル複合酸化物を用いた実施例5〜実施例9についても比較例4と比較して、反応抵抗比を1割以上低減できていることを確認できた
以上の結果から、ニッケル複合酸化物由来の炭素が、リチウムニッケル複合酸化物の反応抵抗に影響を及ぼしていることを確認できた。そして、原料となるニッケル複合酸化物の炭素含有量を抑制することで、リチウムニッケル複合酸化物を非水系電解質二次電池とした場合に反応抵抗を抑制し、高出力の電池にできることを確認できた。
【0162】
また、ニッケル複合酸化物の粒子の表面に存在するアルミニウム化合物のアルミニウムが、ニッケル複合酸化物に占める質量割合が1.5質量%以上7.0質量%以下である実施例2、3、5、6、8についてはサイクル特性も優れることを確認できた。
【0163】
以上にニッケル複合酸化物、リチウムニッケル複合酸化物の製造方法を、実施形態および実施例等で説明したが、本発明は上記実施形態および実施例等に限定されない。特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形、変更が可能である。
【0164】
本出願は、2017年10月26日に日本国特許庁に出願された特願2017−207646号に基づく優先権を主張するものであり、特願2017−207646号の全内容を本国際出願に援用する。
図1
図2A
図2B