(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6958815
(24)【登録日】2021年10月11日
(45)【発行日】2021年11月2日
(54)【発明の名称】シリカゾルの芳香族ポリアミド表面修飾剤
(51)【国際特許分類】
C08G 69/48 20060101AFI20211021BHJP
C08K 9/04 20060101ALI20211021BHJP
C08J 5/18 20060101ALI20211021BHJP
【FI】
C08G69/48
C08K9/04
C08J5/18CFG
【請求項の数】7
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2017-564237(P2017-564237)
(86)(22)【出願日】2017年1月23日
(86)【国際出願番号】JP2017002135
(87)【国際公開番号】WO2017130905
(87)【国際公開日】20170803
【審査請求日】2020年1月14日
(31)【優先権主張番号】特願2016-12297(P2016-12297)
(32)【優先日】2016年1月26日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】592218300
【氏名又は名称】学校法人神奈川大学
(73)【特許権者】
【識別番号】000003986
【氏名又は名称】日産化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002240
【氏名又は名称】特許業務法人英明国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】横澤 勉
(72)【発明者】
【氏名】江原 和也
【審査官】
渡辺 陽子
(56)【参考文献】
【文献】
M.IZAWA et.al.,Synthesis and Polymerization of Aromatic Polyamide and Polyester Macromonomers ,Polymer Journal,1993年,Vol.25、No.8,p.873−881
【文献】
T. OHISHI et.al.,A Variety of Poly(m-benzamide)s with Low Polydispersities from Inductive Effect-Assisted Chain-Growth Polycindensation,Journal of Polymer Science Part.A Polymer Chemistry,2006年,Vol.44,No.17,p.4990−5003
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G69,C08K9,C08L,C08F290,299
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)で表されることを特徴とする芳香族ポリアミド。
【化1】
(式中、Xは、炭素数1〜10のアルキレン基を表し、R′は、互いに独立して、炭素数1〜10のアルキル基または炭素数6〜20のアリール基を表し、R
1およびR
2は、互いに独立して、炭素数1〜10のアルキル基を表し、R
3は、互いに独立して、炭素数1〜10のアルキル基または炭素数6〜20のアリール基を表し、nは、2以上の整数を表し、kは、1〜3の整数を表す。)
【請求項2】
式(2)で表される請求項1記載の芳香族ポリアミド。
【化2】
(式中、R′、R
1、R
2およびnは前記と同じ。)
【請求項3】
式(4)で表されることを特徴とする芳香族ポリアミド。
【化3】
(式中、R
1およびR
2は、互いに独立して、炭素数1〜10のアルキル基を表し、nは、2以上の整数を表す。)
【請求項4】
前記R1およびR2が、互いに独立して、メチル基またはエチル基である請求項1〜3のいずれか1項記載の芳香族ポリアミド。
【請求項5】
請求項1または2記載の芳香族ポリアミドで表面修飾されている無機微粒子。
【請求項6】
請求項5記載の無機微粒子と有機マトリックス樹脂とを含む有機・無機ハイブリット材料。
【請求項7】
請求項6記載の有機・無機ハイブリット材料を用いて作製されるフィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、芳香族ポリアミドに関し、さらに詳述すれば、無機微粒子の表面修飾等に利用可能な芳香族ポリアミドに関する。
【背景技術】
【0002】
有機材料の耐熱性や、力学特性および電気的特性を向上させるため、シリカゲルや酸化チタン等の無機微粒子を有機高分子と混ぜたハイブリッド材料(ナノコンポジット)がよく研究されている。
しかし、有機材料と無機材料はそもそも性質が大きく異なるので、添加できる無機微粒子の量が限られるという問題があるうえに、添加した無機微粒子を有機材料中で分散させるのが難しいだけでなく、時間が経つと添加した無機微粒子が有機材料中で凝集してしまうなどの問題がある。
【0003】
そこで、これらの問題を解決するために無機微粒子表面を有機低分子化合物や有機高分子で修飾することが行われてきている。
特に、有機高分子で修飾する場合は、(1)無機表面に開始部位を導入してそこからリビング重合を行う、または(2)リビングポリマー末端に無機物と結合できる官能基(−Si(OR)
3,−PO
3H,−CO
2H,−SH等)を導入し、無機微粒子表面に反応させる、という2つの方法が主に行われている。
しかし、リビング重合は付加重合と開環重合に限られるので、得られるポリマーはあまり耐熱性のない脂肪族ポリマーである。この場合、無機微粒子を有機材料に混ぜて耐熱性を上げようとしても表面修飾した脂肪族ポリマーが先に熱分解し、表面修飾しない無機微粒子を混ぜた材料と同じ問題を抱える。また、そもそも修飾した脂肪族ポリマーが耐熱性の高い縮合系芳香族ポリマーと混ざりにくいことも大きな問題となる。
【0004】
これらの問題を解決するには、耐熱性に優れた縮合系芳香族高分子で無微粒子表面を修飾すればよい。しかし、縮合系芳香族高分子は重縮合でしか得られないため、リビング重合の特性を生かした上記(1)と(2)のアプローチは不可能であった。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】J. Am. Chem. Soc. 122, 8313 (2000)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、無機微粒子の表面修飾等に利用可能な芳香族ポリアミドを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、これまで開発してきた重縮合のリビング重合である連鎖縮合重合(CGCP)による芳香族ポリアミド重合法(非特許文献1参照)において、不飽和結合を有する開始剤を用いて得られた不飽和末端を利用することで、無機物表面と反応する−Si(OR)
3等が導入できる結果、無機微粒子表面の修飾剤として利用可能な芳香族ポリアミドが得られることを見出し、本発明を完成した。
【0008】
すなわち、本発明は、
1. 式(1)で表されることを特徴とする芳香族ポリアミド、
【化1】
(式中、Xは、炭素数1〜10のアルキレン基を表し、R′は、互いに独立して、炭素数1〜10のアルキル基または炭素数6〜20のアリール基を表し、R
1およびR
2は、互いに独立して、炭素数1〜10のアルキル基を表し、R
3は、互いに独立して、炭素数1〜10のアルキル基または炭素数6〜20のアリール基を表し、nは、2以上の整数を表し、kは、1〜3の整数を表す。)
2. 式(2)で表される1の芳香族ポリアミド、
【化2】
(式中、R′、R
1、R
2およびnは前記と同じ。)
3. 式(3)で表されることを特徴とする芳香族ポリアミド、
【化3】
(式中、Rは、不飽和結合含有基を表し、R
1およびR
2は、互いに独立して、炭素数1〜10のアルキル基を表し、nは、2以上の整数を表す。)
4. 式(4)で表される3の芳香族ポリアミド、
【化4】
(式中、R
1、R
2およびnは前記と同じ。)
5. 前記R
1およびR
2が、互いに独立して、メチル基またはエチル基である1〜4のいずれかの芳香族ポリアミド、
6. 1〜5のいずれかの芳香族ポリアミドで表面修飾されている無機微粒子、
7. 6の無機微粒子と有機マトリックス樹脂とを含む有機・無機ハイブリット材料、
8. 7の有機・無機ハイブリット材料を用いて作製されるフィルム
を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、無機微粒子表面の修飾剤として利用可能な芳香族ポリアミドを提供できる。
この芳香族ポリアミドを用いてシリカや窒化ホウ素等の無機微粒子表面を修飾し、ポリイミド等の耐熱性高分子に混合してさらに耐熱性と力学特性を上げた有機・無機ハイブリッド材料の開発が期待できる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明についてさらに詳しく説明する。
本発明に係る芳香族ポリアミドは、下記式(1)で示されるものである。
【0012】
式(1)において、Xは、炭素数1〜10のアルキレン基を表し、R′は、互いに独立して、炭素数1〜10のアルキル基または炭素数6〜20のアリール基を表し、R
1およびR
2は、互いに独立して、炭素数1〜10のアルキル基を表し、R
3は、互いに独立して、炭素数1〜10のアルキル基または炭素数6〜20のアリール基を表し、nは、2以上の整数を表し、kは、1〜3の整数を表す。
【0013】
炭素数1〜10のアルキレン基の具体例としては、メチレン、エチレン、メチルエチレン、トリメチレン、プロピレン、メチルプロピレン、テトラメチレン、ペンタメチレン、ヘキサメチレン、ヘプタメチレン、オクタメチレン、デカメチレン等が挙げられるが、中でも、炭素数1〜5のアルキレン基が好ましく、炭素数1〜3のアルキレン基がより好ましく、トリメチレン基がより一層好ましい。
炭素数1〜10のアルキル基の具体例としては、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、シクロプロピル、n−ブチル、イソブチル、s−ブチル、t−ブチル、n−ペンチル、1−メチル−n−ブチル、2−メチル−n−ブチル、3−メチル−n−ブチル、1,1−ジメチル−n−プロピル、1,2−ジメチル−n−プロピル、2,2−ジメチル−n−プロピル、1−エチル−n−プロピル、シクロペンチル、n−ヘキシル、1−メチル−n−ペンチル、2−メチル−n−ペンチル、3−メチル−n−ペンチル、4−メチル−n−ペンチル、1,1−ジメチル−n−ブチル、1,2−ジメチル−n−ブチル、1,3−ジメチル−n−ブチル、2,2−ジメチル−n−ブチル、2,3−ジメチル−n−ブチル、3,3−ジメチル−n−ブチル、1−エチル−n−ブチル、2−エチル−n−ブチル、1,1,2−トリメチル−n−プロピル、1,2,2−トリメチル−n−プロピル、1−エチル−1−メチル−n−プロピル、1−エチル−2−メチル−n−プロピル、シクロヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル、n−ノニル、n−デシル基等が挙げられる。
【0014】
炭素数6〜20のアリール基の具体例としては、フェニル、α−ナフチル、β−ナフチル、o−ビフェニリル、m−ビフェニリル、p−ビフェニリル、1−アントリル、2−アントリル、9−アントリル、1−フェナントリル、2−フェナントリル、3−フェナントリル、4−フェナントリル、9−フェナントリル基等が挙げられる。
これらの中でも、R′、R
1、R
2としては、メチル、エチル基が好ましく、また、R
3としては、炭素数1〜8のアルキル基が好ましく、炭素数1〜5のアルキル基がより好ましく、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、n−ペンチル、n−オクチル基等が好適である。
kは、1〜3の整数を表すが、2または3が好ましく、3がより好ましい。
nは、2以上の整数であれば特に限定されるものではないが、2〜100の整数が好ましい。
【0015】
上記(1)で示される芳香族ポリアミドとしては、下記式(2)で示されるものが好ましい。
【0017】
以上説明した芳香族ポリアミドは、上記非特許文献1の方法で得られる下記式(3)で示される芳香族ポリアミドを原料として得ることができる。
【0019】
式(3)において、Rは、不飽和結合含有基を表し、R
1、R
2、nは上記と同じ意味を表す。
不飽和結合含有基としては、特に限定されるものではないが、後のチオールとのラジカル付加反応効率を考慮すると、ビニル、アリル、ホモアリル基等の末端二重結合を有する基が好ましく、この場合Rに応じて種々のスペーサを有する芳香族ポリアミドが得られるが、上記式(1)で表される芳香族ポリアミドを得るためには、下記式(4)で表されるRがアリル基である芳香族ポリアミドを用いる必要がある。
【0020】
【化8】
(式中、R
1、R
2およびnは上記と同じ。)
【0021】
上記式(4)で示されるアリル基を有する芳香族ポリアミドと、アルコキシシリル基含有チオール化合物とを、ラジカル付加反応させて、式(1)で示される芳香族ポリアミドが得られる。
この場合、式(4)の芳香族ポリアミド、アルコキシシリル基含有チオール化合物との反応比率は、特に限定されるものではないが、反応効率等を考慮すると、式(4)の芳香族ポリアミド1molに対し、チオール化合物1〜100mol程度とすることができるが、5〜50molが好ましく、10〜30molがより好ましい。
アルコキシシリル基含有チオール化合物の具体例としては、3−(トリメトキシシリル)プロパンチオール、3−(トリエトキシシリル)プロパンチオール等が挙げられる。
【0022】
重合開始剤としては、熱または還元性物質などによって分解してラジカル種を発生するものであれば、特に限定はなく、例えば、2,2′−アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物、ベンゾイルパーオキシド、t−ブチルパーベンゾエート、t−ブチルハイドロパーオキシド、ジ−t−ブチルパーオキシド、クメンハイドロパーオキシド等の過酸化物などが挙げられ、これらは、単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0023】
上記反応は、有機溶媒中で行うこともできる。
この反応に用いられる溶媒としては、芳香族ポリアミドが溶解し、重合反応を妨げないものであれば任意であり、例えば、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素類;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等のエーテル類;ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、アニソール等の芳香族炭化水素類;クロロホルム、ジクロロメタン、ジクロロエタン、四塩化炭素等のハロゲン化炭化水素類、アセトニトリル、プロピオニトリル等のニトリル類などが挙げられるが、ニトリル類が好ましく、特にアセトニトリルが好適である。
【0024】
反応温度は、50〜150℃程度が好ましく、60〜100℃程度がより好ましい。
反応時間は、通常1〜120時間程度である。
反応終了後は、定法に従って後処理をし、必要に応じて再沈殿等の精製を施して目的物を得ることができる。
【0025】
得られた式(1)で表される芳香族ポリアミドは、その末端にアルコキシシリル基を有しているため、このアルコキシシリル基を利用して無機微粒子の表面や、無機基板の表面等を修飾することができる。
芳香族ポリアミドは、耐熱性に優れているため、本発明の芳香族ポリアミドを無機材料の表面処理剤として用いるとともに、有機マトリックスとしてもポリイミドやポリアミド等の耐熱性に優れた樹脂を用いることで、耐熱性および力学特性に優れた有機・無機ハイブリット材料の開発が期待できる。
【実施例】
【0026】
以下、実施例を挙げて、本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。実施例で用いた各測定装置は以下のとおりである。
[GPC]
(1)Poly1,Poly2
装置:Shodex GPC−101(昭和電工(株)製)
カラム:Shodex KF−804L 2本(昭和電工(株)製)
カラム温度:40℃
溶媒:テトラヒドロフラン 1mL/分
検出器:UV(254nm)、RI
検量線:標準ポリスチレン
(2)ポリアミック酸S1
装置:Shodex GPC−101(昭和電工(株)製)
カラム:Shodex KD801およびKD805(昭和電工(株)製)
カラム温度:40℃
溶媒:ジメチルホルムアミド/LiBr・H
2O(29.6mM)/H
3PO
4(29.6mM)/
検出器:UV(254nm)、RI
検量線:標準ポリエチレンオキシド
[
1H−NMR]
装置:JEOL ECA-500 and ECA-600
[TG−DTA]
装置:Seiko Instruments Inc. TG/DTA 6200
【0027】
[実施例1]
Poly1の製造
【化9】
【0028】
100mLナスフラスコを減圧下、ヒートガンを用いて加熱後、アルゴン置換して室温まで冷却した。さらに−10℃まで冷却し、窒素気流下で1MLiHMDSのTHF溶液11mL(11.0mmol)を加え、窒素気流下で乾燥THF5.2mLに溶解させた4−アリルオキシ安息香酸メチル(1)0.21g(1.11mmol)を加えた。その後、すぐに乾燥THF13.0mLに溶解させた3−(エチルアミノ)安息香酸エチル(2)2.04g(10.54mmol)を40分間かけて滴下し、その後−10℃で撹拌した。6分後にサンプリングして反応経過を観察し、2時間後に飽和塩化アンモニウム水溶液で重合を停止した。塩化メチレンで抽出、水で3回洗浄後に無水硫酸マグネシウムで乾燥させた。減圧下で溶媒を留去し、得られた粗生成物を、良溶媒としてクロロホルム、貧溶媒としてエーテルを用いて沈殿精製を行い、黄色固体を収量1.30g(収率70%)で得た(M
n=2500,M
w/M
n=1.23,平均重合度=20.2)。
【0029】
[実施例2]
Poly2の製造
【化10】
【0030】
20mL耐圧反応管に、乾燥アセトニトリル14.70mL、Poly 1 0.70g(0.22mmol)、3−(トリメトキシシリル)プロパンチオール2.99mL(15.40mmol)、および2,2′−アゾビスイソブチロニトリル18.50mg(0.11mmol)を加えた。液体窒素で冷凍した後、反応容器内部を減圧し、密閉した後に室温に戻し、溶媒中の溶存ガスを発泡させた。この一連の操作(凍結脱気)を5回行った後、80℃で12時間撹拌した。溶媒を留去し、得られた生成物を、良溶媒としてクロロホルム、貧溶媒としてヘキサン:ジオキサン=10:1(v/v)の混合溶液を用いて沈殿精製を行い、黄白色固体を収量0.52g(収率70%)で得た。
【0031】
[実施例3]
シリカゾルの合成
耐圧反応管に実施例2で得られたPoly2(Mn=2100,Mw/Mn=1.18、平均重合度=15)0.0878g(0.03mmol)、DMAc1.0gを加え、室温で撹拌した後、DMAc−シリカゾル溶液0.64g(シリカ含有量:0.128g)を加え、50℃で撹拌して、12時間後に反応を止めた。反応後の溶液を減圧下で留去し、得られた生成物にクロロホルムを加え、デカンテーションを行い、可溶部(30%)と不溶部(70%)に分けた。可溶部を濃縮し、それぞれ得られた生成物を減圧乾燥した。
可溶部の一部を質量測定しながらサンプリングを行い、内部標準物質としてテレフタルアルデヒドを加えて、
1H−NMRスペクトルからトリメトキシシリル基の転化率を算出したところ、転化率は99%であった。また、可溶部と不溶部のTG−DTAを測定し、重量減少率からシリカ中のポリアミドの割合を算出した。可溶部は84%、不溶部は22%であった。また、可溶部をDMAcに固形分10%になるように再溶解させた。
【0032】
[実施例4]ハイブリッドフィルムの作製
(1)ポリアミック酸(S1)の合成
p−フェニレンジアミン3.218g(30mmol)をDMAc88.2gに溶解させた。得られた溶液に3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物8.581g(29mmol)を加え、窒素雰囲気下、23℃で24時間反応させた。得られたポリアミック酸のMwは107,300、分子量分布4.6であった。
(2)ハイブリッドフィルムの作製
上記で得られたポリアミック酸6.0gに、実施例3で作製したシリカゾル溶液(可溶部)0.90gを添加し、23℃で3時間撹拌してワニスを調製した。その後、ガラス基板上に、このワニスをバーコータで塗布し、膜厚250μmの塗布膜を作製し、80℃で1時間、300℃で1時間焼成した。
得られたフィルムに白濁はなく、黄色の綺麗なフィルムであった。また、このフィルムをカッターでガラス基板から剥離したところ、容易に剥離した。剥離したフィルムは、強い自己支持性が見られた。
【0033】
[実施例5]ハイブリッドフィルムの作製
上記で得られたポリアミック酸1.0gに実施例3で作製したシリカゾル溶液(可溶部)1.50g溶液を添加し、23℃で3時間撹拌してワニスを調製した。その後、ガラス基板上に、このワニスをバーコータで塗布し、膜厚250μmの塗布膜を作製し、80℃で1時間、300℃で1時間焼成した。
得られたフィルムに白濁はなく、黄色の綺麗なフィルムであった。このフィルムをカッターで剥離したところ、容易に剥離した。剥離したフィルムは、強い自己支持性が見られた。