(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
ハードディスクドライブの磁気ディスクにおいては、情報信号が磁気記録媒体の微細なビットに記録されている。磁気記録媒体の記録密度をさらに向上させるためには、1つの記録情報を保持するビットの大きさを縮小しながら、情報品質の指標であるノイズに対する信号の比率も増大させる必要がある。ノイズに対する信号の比率を増大させるためには、信号の増大またはノイズの低減が必要不可欠である。
【0003】
現在、情報信号の記録を担う磁気記録媒体として、CoPt基合金−酸化物のグラニュラ構造からなる磁性薄膜が用いられている(例えば、非特許文献1参照)。このグラニュラ構造は、柱状のCoPt基合金結晶粒とその周囲を取り囲む酸化物の結晶粒界とからなっている。
【0004】
このような磁気記録媒体を高記録密度化する際には、記録ビット間の遷移領域を平滑化してノイズを低減させることが必要である。記録ビット間の遷移領域を平滑化するためには、磁性薄膜に含まれるCoPt基合金結晶粒の微細化が必須である。
【0005】
一方、磁性結晶粒が微細化すると、1つの磁性結晶粒が保持できる記録信号の強さは小さくなる。磁性結晶粒の微細化と記録信号の強さとを両立するためには、結晶粒の中心間距離を低減させることが必要である。
【0006】
他方、磁気記録媒体中のCoPt基合金結晶粒の微細化が進むと、超常磁性現象により記録信号の熱安定性が損なわれて記録信号が消失してしまうという、いわゆる熱揺らぎ現象が発生することがある。この熱揺らぎ現象は、磁気ディスクの高記録密度化への大きな障害となっている。
【0007】
この障害を解決するためには、各CoPt基合金結晶粒において、磁気エネルギーが熱エネルギーに打ち勝つように磁気エネルギーを増大させることが必要である。各CoPt基合金結晶粒の磁気エネルギーはCoPt基合金結晶粒の体積vと結晶磁気異方性定数Kuとの積v×Kuで決定される。このため、CoPt基合金結晶粒の磁気エネルギーを増大させるためには、CoPt基合金結晶粒の結晶磁気異方性定数Kuを増大させることが必要不可欠である(例えば、非特許文献2参照)。
【0008】
また、大きいKuを持つCoPt基合金結晶粒を柱状に成長させるためには、CoPt基合金結晶粒と粒界材料との相分離を実現させることが必須である。CoPt基合金結晶粒と粒界材料との相分離が不十分で、CoPt基合金結晶粒間の粒間相互作用が大きくなってしまうと、CoPt基合金−酸化物のグラニュラ構造からなる磁性薄膜の保磁力Hcが小さくなってしまい、熱安定性が損なわれて熱揺らぎ現象が発生しやすくなってしまう。したがって、CoPt基合金結晶粒間の粒間相互作用を小さくすることも重要である。
【0009】
磁性結晶粒の微細化および磁性結晶粒の中心間距離の低減は、Ru下地層(磁気記録媒体の配向制御のために設けられた下地層)の結晶粒を微細化させることにより達成できる可能性がある。
【0010】
しかしながら、結晶配向を維持しながらRu下地層の結晶粒を微細化することは困難である(例えば、非特許文献3参照)。そのため、現行の磁気記録媒体のRu下地層の結晶粒の大きさは、面内磁気記録媒体から垂直磁気記録媒体に切り替わったときの大きさとほとんど変わらず、約7〜8nmとなっている。
【0011】
一方、Ru下地層ではなく、磁気記録層に改良を加える観点から、磁性結晶粒の微細化を進める検討もなされており、具体的には、CoPt基合金−酸化物磁性薄膜の酸化物の添加量を増加させて磁性結晶粒体積比率を減少させて、磁性結晶粒を微細化させることが検討された(例えば、非特許文献4参照)。そして、この手法によって磁性結晶粒の微細化は達成された。しかしながら、この手法では、酸化物添加量の増加により結晶粒界の幅が増加するため、磁性結晶粒の中心間距離を低減させることはできない。
【0012】
また、従来のCoPt基合金−酸化物磁性薄膜に用いられる単一の酸化物の他に第2酸化物を添加することが検討された(例えば、非特許文献5参照)。しかしながら、複数の酸化物材料を添加する場合、その材料の選定の指針が明確になっておらず、現在でも、CoPt基合金結晶粒に対する粒界材料として用いる酸化物について検討が続けられている。
【発明を実施するための形態】
【0024】
(1)第1実施形態
本発明の第1実施形態に係る磁気記録媒体用スパッタリングターゲットは、金属Ptおよび酸化物を含有し、残部が金属Coおよび不可避的不純物からなる磁気記録媒体用スパッタリングターゲットであって、前記磁気記録媒体用スパッタリングターゲットの金属成分の合計に対して、金属Coを70at%以上90at%以下含有し、金属Ptを10at%以上30at%以下含有し、前記磁気記録媒体用スパッタリングターゲットの全体に対して前記酸化物を26vol%以上40vol%以下含有し、さらに、前記酸化物は、B
2O
3と、融点が1470℃以上2800℃以下の1種以上の高融点酸化物とからなることを特徴とする。
【0025】
なお、本明細書では、磁気記録媒体用スパッタリングターゲットを単にスパッタリングターゲットまたはターゲットと記載することがある。また、本明細書では、金属Coを単にCoと記載し、金属Ptを単にPtと記載し、金属Crを単にCrと記載することがある。
【0026】
(1−1)スパッタリングターゲットの構成成分
本第1実施形態に係る磁気記録媒体用スパッタリングターゲットは、金属成分としてCoおよびPtを含有し、不可避的不純物以外は他の金属を含有していない。
【0027】
金属Coおよび金属Ptは、スパッタリングによって形成される磁性薄膜のグラニュラ構造において、磁性結晶粒(微小な磁石)の構成成分となる。
【0028】
Coは強磁性金属元素であり、磁性薄膜のグラニュラ構造の磁性結晶粒(微小な磁石)の形成において中心的な役割を果たす。スパッタリングによって得られる磁性薄膜中のCoPt合金結晶粒(磁性結晶粒)の結晶磁気異方性定数Kuを大きくするという観点および得られる磁性薄膜中のCoPt合金結晶粒(磁性結晶粒)の磁性を維持するという観点から、本第1実施形態に係るスパッタリングターゲット中のCoの含有割合は、金属成分の全体(CoとPtの合計)に対して70at%以上90at%以下としている。
【0029】
Ptは、所定の組成範囲でCoと合金化することにより合金の磁気モーメントを低減させる機能を有し、磁性結晶粒の磁性の強さを調整する役割を有する。スパッタリングによって得られる磁性薄膜中のCoPt合金結晶粒(磁性結晶粒)の結晶磁気異方性定数Kuを大きくするという観点および得られる磁性薄膜中のCoPt合金結晶粒(磁性結晶粒)の磁性を調整するという観点から、本第1実施形態に係るスパッタリングターゲット中のPtの含有割合は、金属成分の全体(CoとPtの合計)に対して10at%以上30at%以下としている。
【0030】
本第1実施形態に係るスパッタリングターゲットの酸化物成分は、B
2O
3と、融点が1470℃以上2800℃以下の1種以上の高融点酸化物(以下、単に高融点酸化物と記すことがある。)とからなる。酸化物成分は、磁性薄膜のグラニュラ構造において、磁性結晶粒(微小な磁石)同士の間を仕切る非磁性マトリックスとなる。
【0031】
図1は、本第1実施形態に係るスパッタリングターゲットを用いてスパッタリングを行い、グラニュラ媒体(以下、磁性薄膜のことをグラニュラ媒体と記すことがある。)を形成する際の成長過程を模式的に示す模式図である。
図1(A)はグラニュラ媒体の成長の初期段階(グラニュラ媒体10)を示す模式図であり、
図1(B)はグラニュラ媒体の成長が進んだ段階(グラニュラ媒体20)を示す模式図である。
【0032】
本第1実施形態に係るスパッタリングターゲットで用いる高融点酸化物の融点は、1470℃以上2800℃以下であり、磁性結晶粒となるCoPt合金の融点よりも高いので、本第1実施形態に係るスパッタリングターゲットを用いたスパッタリングによる成膜過程において、CoPt合金の析出しやすい地点であるRu下地層12の凸部にCoPt合金よりも先に高融点酸化物14が析出する。このため、
図1(A)、(B)に模式的に示すように、CoPt合金は析出した高融点酸化物14によって分断された形で結晶成長を行い、CoPt合金結晶粒(磁性結晶粒)16の面内方向(柱状のCoPt合金結晶粒16の高さ方向と直交する平面方向)の粒成長が抑制される。このため、CoPt合金結晶粒16はCoPt合金結晶粒22へと柱状に成長して、面内方向に微細化がなされる。
【0033】
一方、酸化物成分のうち、高融点酸化物でない酸化物成分は、B
2O
3(
図1、2において符号18で示す。)であり、B
2O
3は融点が450℃と低いため、スパッタリングによる成膜過程において、析出する時期が遅く、CoPt合金結晶粒が柱状に結晶成長している間(CoPt合金結晶粒16がCoPt合金結晶粒22へと結晶成長している間)は、柱状のCoPt合金結晶粒の間に液体の状態で存在する。このため、最終的には、B
2O
3は柱状に結晶成長したCoPt合金結晶粒22同士を仕切る結晶粒界となるように析出し、磁性薄膜のグラニュラ構造において、磁性結晶粒(微小な磁石)同士の間を仕切る非磁性マトリックスとなる。
【0034】
図2は、酸化物成分にB
2O
3のみを用いたスパッタリングターゲットを用いてスパッタリングを行い、グラニュラ媒体を形成する際の成長過程を模式的に示す模式図である。
図2(A)はグラニュラ媒体の成長の初期段階(グラニュラ媒体30)を示す模式図であり、
図2(B)はグラニュラ媒体の成長が進んだ段階(グラニュラ媒体40)を示す模式図である。
【0035】
酸化物成分にB
2O
3のみを用いたスパッタリングターゲットを用いてスパッタリングを行って、グラニュラ媒体を形成する場合、酸化物成分であるB
2O
3の融点は450℃と低いため、融点が約1450℃のCoPt合金がRu下地層12の凸部に先に析出する。このため、Ru下地層12の1つの凸部に1つのCoPt合金結晶粒32が析出し、析出したCoPt合金結晶粒32(
図2(A)参照)はCoPt合金結晶粒42(
図2(B)参照)のように成長して、グラニュラ媒体の成長が進む。
【0036】
酸化物成分にB
2O
3のみを用いたスパッタリングターゲットを用いてスパッタリングを行って、グラニュラ媒体を形成する場合、Ru下地層12の1つの凸部に1つのCoPt合金結晶粒32が析出して成長するため、Ru下地層12の凸部の分布状態以上にCoPt合金結晶粒42を面内方向に微細化することは困難である。
【0037】
なお、
図2(B)において、符号18Aは析出して固体となったB
2O
3を示し、符号18Bは液体状のB
2O
3を示す。
【0038】
また、本第1実施形態に係るスパッタリングターゲットで用いる高融点酸化物の融点の上限値は2800℃であるが、2800℃を超える融点(2852℃)をもつMgOを酸化物成分として用いた磁気記録媒体用スパッタリングターゲット(表1に記す比較例10)を用いて作製した磁性薄膜は、理由は不明であるが、磁気特性が良好でなかった。そこで、本第1実施形態に係るスパッタリングターゲットで用いる高融点酸化物の融点の上限値を2800℃とした。
【0039】
本第1実施形態に係るスパッタリングターゲットにおいて、スパッタリングターゲット全体に対する金属成分の合計の含有割合および酸化物成分の合計の含有割合は、目的とする磁性薄膜の成分組成によって決まり、特に限定されているわけではないが、スパッタリングターゲット全体に対する金属成分の合計の含有割合は例えば88mol%以上94mol%以下とすることができ、スパッタリングターゲット全体に対する酸化物成分の合計の含有割合は例えば6mol%以上12mol%以下とすることができる。
【0040】
酸化物成分は、前述したように、磁性薄膜のグラニュラ構造において、磁性結晶粒(微小な磁石)同士の間を仕切る非磁性マトリックスとなる。このため、磁性薄膜中の酸化物の含有量を多くした方が磁性結晶粒同士の間を確実に仕切りやすくなり、磁性結晶粒同士を独立させやすくなるので好ましい。この点から、本第1実施形態に係るスパッタリングターゲット中に含まれる酸化物の含有量は26vol%以上であることが好ましく、28vol%以上であることがより好ましく、29vol%以上であることがさらに好ましい。
【0041】
ただし、磁性薄膜中の酸化物の含有量が多くなりすぎると、酸化物がCoPt合金結晶粒(磁性結晶粒)中に混入してCoPt合金結晶粒(磁性結晶粒)の結晶性に悪影響を与えて、CoPt合金結晶粒(磁性結晶粒)においてhcp以外の構造の割合が増えるおそれがある。また、磁性薄膜における単位面積あたりの磁性結晶粒の数が減るため、記録密度を高めにくくなる。これらの点から、本第1実施形態に係るスパッタリングターゲット中に含まれる酸化物の含有量は40vol%以下であることが好ましく、35vol%以下であることがより好ましく、31vol%以下であることがさらに好ましい。
【0042】
したがって、本第1実施形態に係るスパッタリングターゲット中に含まれる酸化物のスパッタリングターゲット全体に対する含有量は、26vol%以上40vol%以下であることが好ましく、28vol%以上35vol%以下であることがより好ましく、29vol%以上31vol%以下であることがさらに好ましい。
【0043】
また、本第1実施形態に係るスパッタリングターゲット中に含まれる酸化物成分は、前述したように、B
2O
3と、融点が1470℃以上2800℃以下の1種以上の高融点酸化物とからなるが、Ru下地層の凸部にCoPt合金よりも先に高融点酸化物を適切な量だけ析出させて、CoPt合金結晶粒(磁性結晶粒)を適切に微細化させる観点から、前記1種以上の高融点酸化物の合計に対する前記B
2O
3の体積比が0.5以上4.0以下であることが好ましく、0.7以上3.5以下であることがより好ましく、0.8以上3.0以下であることがさらに好ましい。
【0044】
本第1実施形態に係るスパッタリングターゲットの酸化物成分となり得る高融点酸化物としては、例えば、TiO
2、SiO
2、Ta
2O
5、Cr
2O
3、Al
2O
3、ZrO
2等がある。磁性薄膜中の磁性結晶粒の微細化及び磁性結晶粒の中心間距離の低減という観点から、本第1実施形態に係るスパッタリングターゲット中に含まれる高融点酸化物としては、TiO
2、SiO
2、Ta
2O
5、Cr
2O
3、Al
2O
3及びZrO
2からなる群より選ばれた1種以上の酸化物であることが好ましく、TiO
2であることがより好ましい。
【0045】
(1−2)スパッタリングターゲットのミクロ構造
本第1実施形態に係るスパッタリングターゲットのミクロ構造は特に限定されるわけではないが、金属相と酸化物相とが微細に分散し合ってお互いに分散し合ったミクロ構造とすることが好ましい。このようなミクロ構造とすることにより、スパッタリングを実施している際に、ノジュールやパーティクル等の不具合が発生しにくくなる。
【0046】
(1−3)スパッタリングターゲットの製造方法
本第1実施形態に係るスパッタリングターゲットは、例えば、以下のようにして製造することができる。
【0047】
(1−3−1)CoPt合金アトマイズ粉末の作製
所定の組成(金属Coと金属Ptとの合計に対する該金属Coの原子数比が70at%以上90at%以下)となるようにCo、Ptを秤量してCoPt合金溶湯を作製する。そして、ガスアトマイズを行い、CoPt合金アトマイズ粉末を作製する。作製したCoPt合金アトマイズ粉末は分級して、粒径が所定の粒径以下(例えば106μm以下)となるようにする。
【0048】
(1−3−2)加圧焼結用混合粉末の作製
(1−3−1)で作製したCoPt合金アトマイズ粉末にB
2O
3粉末および高融点酸化物粉末(例えばTiO
2粉末、SiO
2粉末、Ta
2O
5粉末、Cr
2O
3粉末、Al
2O
3粉末、ZrO
2粉末)を加えてボールミルで混合分散して、加圧焼結用混合粉末を作製する。CoPt合金アトマイズ粉末ならびにB
2O
3粉末および高融点酸化物粉末をボールミルで混合分散することにより、CoPt合金アトマイズ粉末ならびにB
2O
3粉末および高融点酸化物粉末が微細に分散し合った加圧焼結用混合粉末を作製することができる。
【0049】
得られるスパッタリングターゲットを用いて作製される磁性薄膜において、B
2O
3および高融点酸化物によって磁性結晶粒同士の間を確実に仕切って磁性結晶粒同士を独立させやすくなる観点、CoPt合金結晶粒(磁性結晶粒)がhcp構造となりやすくなる観点、および記録密度を高める観点から、B
2O
3粉末および高融点酸化物粉末の合計の加圧焼結用混合粉末の全体に対する体積分率は、26vol%以上40vol%以下であることが好ましく、28vol%以上35vol%以下であることがより好ましく、29vol%以上31vol%以下であることがさらに好ましい。
【0050】
(1−3−3)成形
(1−3−2)で作製した加圧焼結用混合粉末を、例えば真空ホットプレス法により加圧焼結して成形し、スパッタリングターゲットを作製する。(1−3−2)で作製した加圧焼結用混合粉末はボールミルで混合分散されており、CoPt合金アトマイズ粉末と酸化物粉末(B
2O
3粉末および高融点酸化物粉末)とが微細に分散し合っているので、本製造方法により得られたスパッタリングターゲットを用いてスパッタリングを行っているとき、ノジュールやパーティクルの発生等の不具合は発生しにくい。
【0051】
なお、加圧焼結用混合粉末を加圧焼結する方法は特に限定されず、真空ホットプレス法以外の方法でもよく、例えばHIP法等を用いてもよい。
【0052】
(1−3−4)変形例
(1−3−1)〜(1−3−3)で説明した製造方法の例では、アトマイズ法を用いてCoPt合金アトマイズ粉末を作製し、作製したCoPt合金アトマイズ粉末にB
2O
3粉末および高融点酸化物粉末を加えてボールミルで混合分散して、加圧焼結用混合粉末を作製しているが、CoPt合金アトマイズ粉末を用いることに替えて、Co単体粉末およびPt単体粉末を用いてもよい。この場合には、Co単体粉末、Pt単体粉末、ならびにB
2O
3粉末および高融点酸化物粉末をボールミルで混合分散して加圧焼結用混合粉末を作製する。
【0053】
(2)第2実施形態
本発明の第2実施形態に係る磁気記録媒体用スパッタリングターゲットは、金属Pt、金属Crおよび酸化物を含有し、残部が金属Coおよび不可避的不純物からなる磁気記録媒体用スパッタリングターゲットであって、前記磁気記録媒体用スパッタリングターゲットの金属成分の合計に対して、金属Coを70at%以上90at%未満含有し、金属Ptを10at%以上30at%未満含有し、金属Crを0at%より多く10at%以下含有し、前記磁気記録媒体用スパッタリングターゲットの全体に対して前記酸化物を26vol%以上40vol%以下含有し、さらに、前記酸化物は、B
2O
3と、融点が1470℃以上2800℃以下の1種以上の高融点酸化物とからなることを特徴とする。
【0054】
(2−1)スパッタリングターゲットの構成成分
本第2実施形態に係る磁気記録媒体用スパッタリングターゲットは、金属成分としてCo、PtおよびCrを含有し、不可避的不純物以外は他の金属を含有していない。
【0055】
本第2実施形態に係る磁気記録媒体用スパッタリングターゲットにおける金属Coおよび金属Ptの役割は、第1実施形態に係る磁気記録媒体用スパッタリングターゲットにおける金属Coおよび金属Ptの役割と同様であるので、説明は省略する。
【0056】
Crは、所定の組成範囲でCoと合金化することによりCoの磁気モーメントを低下させる機能を有し、磁性結晶粒の磁性の強さを調整する役割を有する。
【0057】
スパッタリングによって得られる磁性薄膜中のCoPtCr合金結晶粒(磁性結晶粒)の結晶磁気異方性定数Kuを大きくするという観点および得られる磁性薄膜中のCoPtCr合金結晶粒の磁性を維持するという観点から、本第2実施形態に係るスパッタリングターゲット中のCoの含有割合は、金属成分の全体(Co、PtおよびCrの合計)に対して70at%以上90at%未満としており、本第2実施形態に係るスパッタリングターゲット中のPtの含有割合は、金属成分の全体(Co、PtおよびCrの合計)に対して10at%以上30at%未満としており、本第2実施形態に係るスパッタリングターゲット中のCrの含有割合は、金属成分の全体(Co、PtおよびCrの合計)に対して0at%より多く10at%以下としている。
【0058】
本第2実施形態に係るスパッタリングターゲットの酸化物成分は、B
2O
3と、融点が1470℃以上2800℃以下の1種以上の高融点酸化物とからなる。酸化物成分は、磁性薄膜のグラニュラ構造において、磁性結晶粒(微小な磁石)同士の間を仕切る非磁性マトリックスとなる。
【0059】
本第2実施形態に係るスパッタリングターゲットで用いる高融点酸化物の融点は、1470℃以上2800℃以下であり、磁性結晶粒となるCoPtCr合金の融点よりも高いので、本第2実施形態に係るスパッタリングターゲットを用いたスパッタリングによる成膜過程(グラニュラ媒体の成長過程)において、CoPtCr合金の析出しやすい地点であるRu下地層の凸部にCoPtCr合金よりも先に高融点酸化物が析出する。このため、CoPtCr合金は析出した高融点酸化物によって分断された形で結晶成長を行い、CoPtCr合金結晶粒の面内方向(柱状のCoPtCr合金結晶粒の高さ方向と直交する平面方向)の粒成長が抑制される。このため、CoPtCr合金結晶粒(磁性結晶粒)は柱状に成長して、面内方向に微細化がなされる。
【0060】
一方、酸化物成分のうち、高融点酸化物でない酸化物成分は、B
2O
3であり、B
2O
3は融点が450℃と低いため、スパッタリングによる成膜過程において、析出する時期が遅く、CoPtCr合金結晶粒が柱状に結晶成長している間は、柱状のCoPtCr合金結晶粒の間に液体の状態で存在する。このため、最終的には、B
2O
3は柱状に結晶成長したCoPtCr合金結晶粒同士を仕切る結晶粒界となって析出し、磁性薄膜のグラニュラ構造において、磁性結晶粒(微小な磁石)同士の間を仕切る非磁性マトリックスとなる。
【0061】
なお、本第2実施形態に係るスパッタリングターゲットで用いる高融点酸化物の融点の上限値は2800℃であるが、2800℃を超える融点(2852℃)をもつMgOを酸化物成分として用いた磁気記録媒体用スパッタリングターゲット(後述する比較例10)を用いて作製した磁性薄膜では、理由は不明であるが、磁気特性がよくなかった。そこで、本第2実施形態に係るスパッタリングターゲットで用いる高融点酸化物の融点の上限値を2800℃とした。
【0062】
本第2実施形態に係るスパッタリングターゲットにおいて、スパッタリングターゲット全体に対する金属成分の合計の含有割合および酸化物成分の合計の含有割合は、目的とする磁性薄膜の成分組成によって決まり、特に限定されているわけではないが、スパッタリングターゲット全体に対する金属成分の合計の含有割合は例えば88mol%以上94mol%以下とすることができ、スパッタリングターゲット全体に対する酸化物成分の合計の含有割合は例えば6mol%以上12mol%以下とすることができる。
【0063】
酸化物成分は、前述したように、磁性薄膜のグラニュラ構造において、磁性結晶粒(微小な磁石)同士の間を仕切る非磁性マトリックスとなる。このため、磁性薄膜中の酸化物の含有量を多くした方が磁性結晶粒同士の間を確実に仕切りやすくなり、磁性結晶粒同士を独立させやすくなるので好ましい。この点から、本第2実施形態に係るスパッタリングターゲット中に含まれる酸化物の含有量は26vol%以上であることが好ましく、28vol%以上であることがより好ましく、29vol%以上であることがさらに好ましい。
【0064】
ただし、磁性薄膜中の酸化物の含有量が多くなりすぎると、酸化物がCoPtCr合金結晶粒(磁性結晶粒)中に混入してCoPtCr合金結晶粒(磁性結晶粒)の結晶性に悪影響を与えて、CoPtCr合金結晶粒(磁性結晶粒)においてhcp以外の構造の割合が増えるおそれがある。また、磁性薄膜における単位面積あたりの磁性結晶粒の数が減るため、記録密度を高めにくくなる。これらの点から、本第2実施形態に係るスパッタリングターゲット中に含まれる酸化物の含有量は40vol%以下であることが好ましく、35vol%以下であることがより好ましく、31vol%以下であることがさらに好ましい。
【0065】
したがって、本第2実施形態に係るスパッタリングターゲット中に含まれる酸化物のスパッタリングターゲット全体に対する含有量は、26vol%以上40vol%以下であることが好ましく、28vol%以上35vol%以下であることがより好ましく、29vol%以上31vol%以下であることがさらに好ましい。
【0066】
また、本第2実施形態に係るスパッタリングターゲット中に含まれる酸化物成分は、前述したように、B
2O
3と、融点が1470℃以上2800℃以下の1種以上の高融点酸化物とからなるが、Ru下地層の凸部にCoPtCr合金よりも先に高融点酸化物を適切な量だけ析出させて、CoPtCr合金結晶粒(磁性結晶粒)を適切に微細化させる観点から、前記1種以上の高融点酸化物の合計に対する前記B
2O
3の体積比が0.5以上4.0以下であることが好ましく、0.7以上3.5以下であることがより好ましく、0.8以上3.0以下であることがさらに好ましい。
【0067】
本第2実施形態に係るスパッタリングターゲットの酸化物成分となり得る高融点酸化物としては、例えば、TiO
2、SiO
2、Ta
2O
5、Cr
2O
3、Al
2O
3、ZrO
2等がある。磁性薄膜中の磁性結晶粒の微細化及び磁性結晶粒の中心間距離の低減という観点から、本第2実施形態に係るスパッタリングターゲット中に含まれる高融点酸化物としては、TiO
2、SiO
2、Ta
2O
5、Cr
2O
3、Al
2O
3及びZrO
2からなる群より選ばれた1種以上の酸化物であることが好ましく、TiO
2であることがより好ましい。
【0068】
(2−2)スパッタリングターゲットのミクロ構造
本第2実施形態に係るスパッタリングターゲットのミクロ構造は特に限定されるわけではないが、金属相と酸化物相とが微細に分散し合ってお互いに分散し合ったミクロ構造とすることが好ましい。このようなミクロ構造とすることにより、スパッタリングを実施している際に、ノジュールやパーティクル等の不具合が発生しにくくなる。
【0069】
(2−3)スパッタリングターゲットの製造方法
本第2実施形態に係るスパッタリングターゲットの製造方法は、所定の組成のCoPt合金アトマイズ粉末に替えて、所定の組成のCoPtCr合金アトマイズ粉末を作製する点が、第1実施形態に係るスパッタリングターゲットの製造方法と相違するが、その他の点は第1実施形態に係るスパッタリングターゲットの製造方法と同様であるので、説明は省略する。
【0070】
なお、本第2実施形態に係るスパッタリングターゲットの製造方法において、所定の組成のCoPtCr合金アトマイズ粉末を作製することに替えて、Co単体粉末、Pt単体粉末およびCr単体粉末を用いてもよい。この場合には、Co単体粉末、Pt単体粉末、Cr単体粉末、ならびにB
2O
3粉末および高融点酸化物粉末をボールミルで混合分散して加圧焼結用混合粉末を作製する。
【実施例】
【0071】
以下、実施例および比較例について記載する。
【0072】
(実施例1)
実施例1として作製したターゲット全体の組成は、(80Co−20Pt)−15vol%B
2O
3−15vol%TiO
2であり、モル比で表すと、89.3(80Co−20Pt)−3.6B
2O
3−7.1TiO
2である。
【0073】
本実施例1に係るターゲットの作製に際しては、まず、80Co−20Pt合金アトマイズ粉末を作製した。具体的には、合金組成がCo:80at%、Pt:20at%となるように各金属を秤量し、1500℃以上に加熱して合金溶湯とし、ガスアトマイズを行って80Co−20Pt合金アトマイズ粉末を作製した。
【0074】
作製した80Co−20Pt合金アトマイズ粉末を150メッシュのふるいで分級して、粒径が106μm以下の80Co−20Pt合金アトマイズ粉末を得た。
【0075】
(80Co−20Pt)−15vol%B
2O
3−15vol%TiO
2の組成となるように、分級後の80Co−20Pt合金アトマイズ粉末に、B
2O
3粉末およびTiO
2粉末を添加してボールミルで混合分散を行い、加圧焼結用混合粉末を得た。
【0076】
得られた加圧焼結用混合粉末を用いて、焼結温度:920℃、圧力:24.5MPa、時間:30min、雰囲気:5×10
-2Pa以下の条件でホットプレスを行い、焼結体テストピース(φ30mm)を作製した。作製した焼結体テストピースの相対密度は97.419%であった。なお、計算密度は9.39g/cm
3である。得られた焼結体テストピースの厚さ方向断面を金属顕微鏡で観察したところ、金属相(80Co−20Pt合金相)と酸化物相(B
2O
3+TiO
2相)とは微細に分散されていた。
【0077】
次に、作製した加圧焼結用混合粉末を用いて、焼結温度:920℃、圧力:24.5MPa、時間:60min、雰囲気:5×10
-2Pa以下の条件でホットプレスを行い、φ153.0×1.0mm+φ161.0×4.0mmのターゲットを1つ作製した。作製したターゲットの相対密度は98.4%であった。
【0078】
作製したターゲットを用いてDCスパッタ装置でスパッタリングを行い、(80Co−20Pt)−15vol%B
2O
3−15vol%TiO
2からなる磁性薄膜をガラス基板上に成膜させ、磁気特性測定用サンプルおよび組織観察用サンプルを作製した。これらのサンプルの層構成は、ガラス基板に近い方から順に表示して、Ta(5nm, 0.6Pa)/Ni
90W
10(6nm, 0.6Pa)/Ru(10nm, 0.6Pa)/Ru(10nm, 8Pa)/CoPt合金−酸化物 (16nm, 4Pa)/C (7nm, 0.6Pa)である。括弧内の左側の数字は膜厚を示し、右側の数字はスパッタリングを行ったときのAr雰囲気の圧力を示す。本実施例1で作製したターゲットを用いて成膜した磁性薄膜はCoPt合金−酸化物(B
2O
3+TiO
2)であり、垂直磁気記録媒体の記録層となる磁性薄膜である。なお、この磁性薄膜を成膜する際には基板は昇温させておらず、室温で成膜した。
【0079】
得られた磁気特性測定用サンプルの磁気特性の測定には、振動型磁力計およびトルク磁力計を用い、磁気特性測定用サンプルの熱揺らぎ耐性の測定には極カー効果測定装置を用いた。また、得られた組織観察用サンプルの構造の評価(磁性結晶粒の粒径等の評価)にはX線回折装置および透過電子顕微鏡を用いた。
【0080】
実施例1の磁気特性測定用サンプルのグラニュラ媒体磁化曲線の一例を、他の実施例および比較例の結果と合わせて
図3に示す。
図3の横軸は加えた磁場の強さであり、
図3の縦軸は単位体積当たりの磁化の強さである。
【0081】
また、磁気特性測定用サンプルのグラニュラ媒体磁化曲線の測定結果から、飽和磁化Ms、保磁力Hc、横軸と交わる地点の傾きαを求めた。また、結晶磁気異方性定数Kuはトルク磁力計を用いて測定した。それらの値を、他の実施例および比較例の結果と合わせて表1に示す。
【0082】
また、実施例1の磁気特性測定用サンプルの面内方向(柱状のCoPt合金結晶粒の高さ方向と直交する平面方向)のX線回折の測定結果を、他の実施例および比較例の結果と合わせて
図4に示す。
図4に示すX線回折の測定結果のうち、六方晶であるCoPt(11.0)の回折線の測定結果にSherrer式を適用してCoPt合金結晶粒の粒径GD
inplane(nm)を算出した。その算出結果を、他の実施例および比較例の結果と合わせて表1に示す。
【0083】
また、実施例1の面内方向のX線回折の測定結果から、全てのCoPt合金結晶粒がC面配向していることを確認した。
【0084】
また、熱揺らぎ耐性を測定して、熱エネルギーにより反転する磁化領域、つまり粒間交換結合を考慮した磁性結晶粒の粒径GD
actを測定した。その測定結果を、他の実施例および比較例の結果と合わせて表1に示す。
【0085】
また、組織観察用サンプルについて、柱状のCoPt合金結晶粒の高さ方向と略直交する平面を透過電子顕微鏡(TEM)で観察を行った。その観察結果の平面TEM写真を、実施例4および比較例1の結果と合わせて
図5に示す。
【0086】
また、得られた平面TEM写真において、各CoPt結晶粒を画像処理にて粒子を特定し、その円周を真円に置き換えた際の直径(円周相当径)をGD
TEMとした。また各粒子の重心を画像処理にて算出し、近接する粒子の重心間距離を求めGP
TEMとした。その測定結果を、他の実施例および比較例の結果と合わせて表1に示す。
【0087】
また、高融点酸化物としてTiO
2を用いた本実施例1の平面TEM写真からわかるように、いくつかのCoPt結晶粒内に薄い粒界が観察された。この薄い粒界は、前述したように、CoPt合金よりも先に析出した高融点酸化物TiO
2であると考えられる。なお、
図5(A)において、TiO
2の薄い粒界が観察されたCoPt結晶粒は点線で囲んでいる。
【0088】
(実施例2〜27、比較例1〜16)
ターゲットの組成を実施例1から変更した以外は、実施例1と同様にして磁気特性測定用サンプルおよび組織観察用サンプルを作製し、実施例1と同様に評価を行った。その測定結果をターゲットの組成とともに表1に示す。また、実施例4〜6、比較例1については、
図3および
図4にも具体的な測定結果を図示している。
【0089】
高融点酸化物としてCr
2O
3を用いた実施例4の
図5(B)の平面TEM写真からわかるように、実施例4においては、実施例1と同様に、いくつかのCoPt合金結晶粒内に薄い粒界が観察された。
図5(B)において、Cr
2O
3の薄い粒界が観察されたCoPt合金結晶粒は点線で囲んでいる。
【0090】
また、実施例4の組織観察用サンプルについては、柱状のCoPt合金結晶粒の高さ方向と略平行な切断面についてもTEM観察を行った。その観察結果の断面TEM写真を
図6に示す。
図6の断面TEM写真に示すように、1つのRu結晶粒の上に複数のCoPt合金結晶粒が成長していることが観察される。
【0091】
【表1】
【0092】
表1から明らかなように、本発明の範囲内である実施例1〜27においては、磁性結晶粒の微細化および磁性結晶粒の中心間距離の低減がなされた磁性薄膜が得られており、かつ、実施例1〜27で得られた磁性薄膜は良好な磁気特性を発現している。
【0093】
一方、本発明の範囲内ではない比較例1〜16においては、磁性結晶粒の微細化および磁性結晶粒の中心間距離の低減と、良好な磁気特性の発現とが両立された磁性薄膜は得られなかった。
【0094】
ここで、良好な磁性薄膜であるという観点から、結晶磁気異方性定数KuとGD
inplaneは、Ku>4.6×10
6erg/cm
3、かつ、GD
inplane<5.1nmであることが好ましく、Ku>6.0×10
6erg/cm
3、かつ、GD
inplane<4.8nmであることがより好ましいが、実施例1〜27で得られた磁性薄膜の多くは、好ましい条件(Ku>4.6×10
6erg/cm
3、かつ、GD
inplane<5.1nm)を満たしており、実施例1〜27で得られた磁性薄膜のいくつかは、より好ましい条件(Ku>6.0×10
6erg/cm
3、かつ、GD
inplane<4.8nm)についても満たしている。
【0095】
なお、前記好ましい条件(Ku>4.6×10
6erg/cm
3、かつ、GD
inplane<5.1nm)、および前記より好ましい条件(Ku>6.0×10
6erg/cm
3、かつ、GD
inplane<4.8nm)は、良好な磁性薄膜であると判断する目安であり、それらの条件を満たさないからといって直ちに本発明の範囲に含まれないというわけではない。
【0096】
例えば、第2酸化物としてSiO
2を用いた実施例5と11のGD
inplaneはそれぞれ5.8nmと5.7nmであり、前記好ましい条件(Ku>4.6×10
6erg/cm
3、かつ、GD
inplane<5.1nm)のうちのGD
inplaneについての条件、および前記より好ましい条件(Ku>6.0×10
6erg/cm
3、かつ、GD
inplane<4.8nm)のうちのGD
inplaneについての条件を満たしていないが、酸化物としてSiO
2のみを用いた比較例4のGD
inplane(6.4nm)と比べて小さくなっており、本発明の効果が発現している。また、実施例5と11のKuはそれぞれ7.3×10
6erg/cm
3と7.4×10
6erg/cm
3であり、酸化物としてSiO
2のみを用いた比較例4のKu(5.9×10
6erg/cm
3)と比べて大きくなっている。
【0097】
また、第2酸化物としてTa
2O
5を用いた実施例6と12のGD
inplaneはそれぞれ5.2nmと5.4nmであり、前記好ましい条件(Ku>4.6×10
6erg/cm
3、かつ、GD
inplane<5.1nm)のうちのGD
inplaneについての条件、および前記より好ましい条件(Ku>6.0×10
6erg/cm
3、かつ、GD
inplane<4.8nm)のうちのGD
inplaneについての条件を満たしていないが、酸化物としてTa
2O
5のみを用いた比較例3のGD
inplane(6.3nm)と比べて小さくなっており、本発明の効果が発現している。また、実施例6と12のKuはそれぞれ6.5×10
6erg/cm
3と6.9×10
6erg/cm
3であり、酸化物としてTa
2O
5のみを用いた比較例3のKu(6.3×10
6erg/cm
3)と比べて大きくなっている。
【0098】
また、第2酸化物としてZrO
2を用いた実施例13のKuは4.6×10
6erg/cm
3であり、前記好ましい条件(Ku>4.6×10
6erg/cm
3、かつ、GD
inplane<5.1nm)のうちのKuについての条件、および前記より好ましい条件(Ku>6.0×10
6erg/cm
3、かつ、GD
inplane<4.8nm)のうちのKuについての条件を満たしていないが、実施例13のGD
inplaneは4.5nmであり、酸化物としてZrO
2のみを用いた比較例8のGD
inplane(10.7nm)と比べて格段に小さくなっており、本発明の効果が発現している。