特許第6959324号(P6959324)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6959324組成物、二色性物質、光吸収異方性膜、積層体および画像表示装置
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  • 特許6959324-組成物、二色性物質、光吸収異方性膜、積層体および画像表示装置 図000030
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6959324
(24)【登録日】2021年10月11日
(45)【発行日】2021年11月2日
(54)【発明の名称】組成物、二色性物質、光吸収異方性膜、積層体および画像表示装置
(51)【国際特許分類】
   C09B 43/28 20060101AFI20211021BHJP
   G02F 1/1335 20060101ALI20211021BHJP
   G02B 5/30 20060101ALN20211021BHJP
【FI】
   C09B43/28CSP
   G02F1/1335 510
   !G02B5/30
【請求項の数】11
【全頁数】39
(21)【出願番号】特願2019-503865(P2019-503865)
(86)(22)【出願日】2018年3月9日
(86)【国際出願番号】JP2018009133
(87)【国際公開番号】WO2018164252
(87)【国際公開日】20180913
【審査請求日】2019年8月20日
(31)【優先権主張番号】特願2017-45296(P2017-45296)
(32)【優先日】2017年3月9日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100148080
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 史生
(72)【発明者】
【氏名】加藤 隆志
(72)【発明者】
【氏名】石綿 靖宏
【審査官】 横山 敏志
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−088143(JP,A)
【文献】 特開平10−088142(JP,A)
【文献】 特開平06−256676(JP,A)
【文献】 特開平06−157927(JP,A)
【文献】 特開平06−256675(JP,A)
【文献】 特開平05−059293(JP,A)
【文献】 特開平05−132628(JP,A)
【文献】 特開昭63−301850(JP,A)
【文献】 特開昭60−124658(JP,A)
【文献】 特開昭56−057850(JP,A)
【文献】 国際公開第2016/133218(WO,A1)
【文献】 特開2006−124611(JP,A)
【文献】 特開2011−057927(JP,A)
【文献】 特開2012−128000(JP,A)
【文献】 特開2004−029201(JP,A)
【文献】 特開昭52−129731(JP,A)
【文献】 工業化学雑誌,1959年,Vol.62, No.7,pp.1011-1014
【文献】 色材,1990年,Vol.63, No.11,pp.677-684
【文献】 工業化学雑誌,1971年,Vol.74, No.8,pp.1655-1660
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09B 1/00−69/10
G02F 1/1335
G02B 5/30
CAplus/REGISTRY(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アゾ基を有する二色性物質を含有する組成物であって、
前記二色性物質は、最高被占有軌道のエネルギー準位が−5.90〜−5.60eVであり、かつ、CLogP値が7.0以上であり、下記式(1)で表される、組成物。
【化1】
前記式(1)中、m1、m2およびm3はそれぞれ独立に0〜5の整数を表し、n1は1〜4の整数を表す。
前記式(1)中、Arは(m1+1)価の芳香族炭化水素環または複素環を表し、Arは(m2+2)価の芳香族炭化水素環または複素環を表し、Arは(m3+1)価の芳香族炭化水素環または複素環を表す。n1≧2の場合において複数のArは互いに同一でも異なっていてもよい。
前記式(1)中、R、RおよびRはそれぞれ独立に置換基を表す。m1≧2である場合において複数のRは互いに同一でも異なっていてもよく、m2≧2である場合において複数のRは互いに同一でも異なっていてもよく、m3≧2である場合において複数のRは互いに同一でも異なっていてもよい。n1≧2の場合には複数の−(Rm2は互いに同一でも異なっていてもよい。ただし、R、RおよびRからなる群より選択される置換基の合計数は、2個以上である。
【請求項2】
前記式(1)におけるAr、ArおよびArがそれぞれ独立に、ベンゼン環またはチエノチアゾール環である、請求項に記載の組成物。
【請求項3】
前記式(1)において、R、RおよびRからなる群より選択される置換基のうち、2個以上が電子吸引性基である、請求項またはに記載の組成物。
【請求項4】
前記二色性物質の極大吸収波長が400〜500nmの範囲にある、請求項1〜のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項5】
さらに液晶性化合物を含有する、請求項1〜のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項6】
請求項1〜のいずれか1項に記載の組成物を用いて形成される、光吸収異方性膜。
【請求項7】
基材と、前記基材上に設けられる請求項に記載の光吸収異方性膜とを有する、積層体。
【請求項8】
さらに、前記光吸収異方性膜上に設けられるλ/4板を有する、請求項に記載の積層体。
【請求項9】
請求項に記載の光吸収異方性膜、または、請求項もしくは請求項に記載の積層体を有する、画像表示装置。
【請求項10】
下記式(1)で表される二色性物質であって、
前記二色性物質は、最高被占有軌道のエネルギー準位が−5.90〜−5.60eVであり、かつ、CLogP値が7.0以上である、二色性物質。
【化2】
前記式(1)中、m1、m2およびm3はそれぞれ独立に0〜5の整数を表し、n1は1〜4の整数を表す。
前記式(1)中、Arは(m1+1)価の芳香族炭化水素環または複素環を表し、Arは(m2+2)価の芳香族炭化水素環または複素環を表し、Arは(m3+1)価の芳香族炭化水素環または複素環を表す。n1≧2の場合において複数のArは互いに同一でも異なっていてもよい。
前記式(1)中、R、RおよびRはそれぞれ独立に置換基を表す。m1≧2である場合において複数のRは互いに同一でも異なっていてもよく、m2≧2である場合において複数のRは互いに同一でも異なっていてもよく、m3≧2である場合において複数のRは互いに同一でも異なっていてもよい。n1≧2の場合には複数の−(Rm2は互いに同一でも異なっていてもよい。ただし、R、RおよびRからなる群より選択される置換基の合計数は、2個以上である。
【請求項11】
前記式(1)で表される二色性物質が、下記式(2)で表される二色性物質である、請求項10に記載の二色性物質。
【化3】
前記式(2)中、m21およびm23はそれぞれ独立に0〜5の整数を表し、m22は0〜4の整数を表し、n2は2または3の整数を表す。
前記式(2)中、R21、R22およびR23はそれぞれ独立に置換基を表す。複数の−(R22m22は互いに同一でも異なっていてもよい。m21≧2である場合において複数のR21は互いに同一でも異なっていてもよく、m22≧2である場合において複数のR22は互いに同一でも異なっていてもよく、m23≧2である場合において複数のR23は互いに同一でも異なっていてもよい。ただし、R21、R22およびR23からなる群より選択される置換基の合計数は2個以上であり、かつ、2個以上の置換基が電子吸引性基である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、組成物、二色性物質、光吸収異方性膜、積層体および画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、レーザー光や自然光を含む照射光の減衰機能、偏光機能、散乱機能または遮光機能などが必要となった際には、それぞれの機能ごとに異なった原理によって作動する装置を利用していた。そのため、上記の機能に対応する製品も、それぞれの機能別に異なった製造工程によって製造されていた。
例えば、液晶ディスプレイ(liquid crystal display:LCD)では、表示における旋光性および複屈折性を制御するために直線偏光板および円偏光板が用いられている。また、有機発光ダイオード(Organic Light Emitting Diode:OLED)においても、外光の反射防止のために円偏光板が使用されている。
【0003】
従来、これらの偏光板(偏光素子)には、ヨウ素が二色性物質として広く使用されてきたが、ヨウ素の代わりに有機色素を二色性物質として使用する偏光素子についても検討されている。
例えば、特許文献1には、ビスアゾ構造を有する二色性物質と、重合性スメクチック液晶化合物と、を含有する組成物が記載されている([請求項1])。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2016/054616号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者らは、特許文献1に記載されているような二色性物質を含む光吸収異方性膜について検討したところ、光吸収異方性膜の形成に用いられる組成物に含まれる二色性物質の種類によっては、光吸収異方性膜の耐光性が不十分となる場合があることを明らかとした。
【0006】
そこで、本発明は、耐光性に優れた光吸収異方性膜を形成できる二色性物質、組成物、それを用いた光吸収異方性膜、積層体および画像表示装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を達成すべく鋭意検討した結果、アゾ基を有し、最高被占有軌道のエネルギー準位が−5.60eV以下である二色性物質を用いることで、配向度が高い光吸収異方性膜を形成できることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明者らは、以下の構成により上記課題が解決できることを見出した。
【0008】
[1]
アゾ基を有する二色性物質を含有する組成物であって、
上記二色性物質は、最高被占有軌道のエネルギー準位が−5.60eV以下であり、かつ、CLogP値が7.0以上である、組成物。
[2]
上記二色性物質が後述する式(1)で表される二色性物質である、[1]に記載の組成物。
後述する式(1)中、m1、m2およびm3はそれぞれ独立に0〜5の整数を表し、n1は1〜4の整数を表す。
後述する式(1)中、Arは(m1+1)価の芳香族炭化水素環または複素環を表し、Arは(m2+2)価の芳香族炭化水素環または複素環を表し、Arは(m3+1)価の芳香族炭化水素環または複素環を表す。n1≧2の場合において複数のArは互いに同一でも異なっていてもよい。
後述する式(1)中、R、RおよびRはそれぞれ独立に置換基を表す。m1≧2である場合において複数のRは互いに同一でも異なっていてもよく、m2≧2である場合において複数のRは互いに同一でも異なっていてもよく、m3≧2である場合において複数のRは互いに同一でも異なっていてもよい。n1≧2の場合には複数の−(Rm2は互いに同一でも異なっていてもよい。ただし、R、RおよびRからなる群より選択される置換基の合計数は、2個以上である。
[3]
後述する式(1)におけるAr、ArおよびArがそれぞれ独立に、ベンゼン環またはチエノチアゾール環である、[2]に記載の組成物。
[4]
後述する式(1)において、R、RおよびRからなる群より選択される置換基のうち、2個以上が電子吸引性基である、[2]または[3]に記載の組成物。
[5]
後述する二色性物質の極大吸収波長が400〜500nmの範囲にある、[1]〜[4]のいずれか1つに記載の組成物。
[6]
さらに液晶性化合物を含有する、[1]〜[5]のいずれか1つに記載の組成物。
[7]
[1]〜[6]のいずれか1つに記載の組成物を用いて形成される、光吸収異方性膜。
[8]
基材と、上記基材上に設けられる[7]に記載の光吸収異方性膜とを有する、積層体。
[9]
さらに、上記光吸収異方性膜上に設けられるλ/4板を有する、[8]に記載の積層体。
[10]
[7]に記載の光吸収異方性膜、または、[8]もしくは[9]に記載の積層体を有する、画像表示装置。
[11]
後述する式(1)で表される二色性物質であって、
上記二色性物質は、最高被占有軌道のエネルギー準位が−5.60eV以下であり、かつ、CLogP値が7.0以上である、二色性物質。
後述する式(1)中、m1、m2およびm3はそれぞれ独立に0〜5の整数を表し、n1は1〜4の整数を表す。
後述する式(1)中、Arは(m1+1)価の芳香族炭化水素環または複素環を表し、Arは(m2+2)価の芳香族炭化水素環または複素環を表し、Arは(m3+1)価の芳香族炭化水素環または複素環を表す。n1≧2の場合において複数のArは互いに同一でも異なっていてもよい。
後述する式(1)中、R、RおよびRはそれぞれ独立に置換基を表す。m1≧2である場合において複数のRは互いに同一でも異なっていてもよく、m2≧2である場合において複数のRは互いに同一でも異なっていてもよく、m3≧2である場合において複数のRは互いに同一でも異なっていてもよい。n1≧2の場合には複数の−(Rm2は互いに同一でも異なっていてもよい。ただし、R、RおよびRからなる群より選択される置換基の合計数は、2個以上である。
[12]
後述する式(1)で表される二色性物質が、後述する式(2)で表される二色性物質である、請求項11に記載の二色性物質。
後述する式(2)中、m21およびm23はそれぞれ独立に0〜5の整数を表し、m22は0〜4の整数を表し、n2は2または3の整数を表す。
後述する式(2)中、R21、R22およびR23はそれぞれ独立に置換基を表す。複数の−(R22m22は互いに同一でも異なっていてもよい。m21≧2である場合において複数のR21は互いに同一でも異なっていてもよく、m22≧2である場合において複数のR22は互いに同一でも異なっていてもよく、m23≧2である場合において複数のR23は互いに同一でも異なっていてもよい。ただし、R21、R22およびR23からなる群より選択される置換基の合計数は2個以上であり、かつ、2個以上の置換基が電子吸引性基である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、耐光性に優れた光吸収異方性膜を形成できる二色性物質、組成物、それを用いた光吸収異方性膜、積層体および画像表示装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】二色性物質の分解率と最高被占有軌道のエネルギー準位との関係を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明について詳細に説明する。
以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施態様に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施態様に限定されるものではない。
本明細書において、「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
本明細書において、(メタ)アクリル酸とは、「アクリル酸」および「メタクリル酸」の総称であり、(メタ)アクリロイルとは、「アクリロイル」および「メタクリロイル」の総称である。
本明細書において、二色性物質とは、方向によって吸光度が異なる化合物を意味する。
【0012】
[組成物]
本発明の組成物は、アゾ基を有する二色性物質を含有する組成物であって、上記二色性物質は、最高被占有軌道(HOMO:Highest Occupied Molecular Orbital)のエネルギー準位が−5.60eV以下であり、かつ、CLogP値が7.0以上である。本明細書において、アゾ基を有し、HOMOのエネルギー準位が−5.60eV以下であり、かつ、CLogP値が7.0以上の二色性物質を、「特定二色性物質」ともいう。
本発明の組成物によれば、耐光性に優れた光吸収異方性膜を形成できる。この理由の詳細は明らかではないが、概ね以下のように推定している。
すなわち、アゾ基を有する二色性物質の耐光性の低下は、光照射による二色性物質の酸化分解によって進行すると考えられていた。しかしながら、本発明者らが検討したところ、光照射によって生じるアゾ基を有する二色性物質の分解物として、酸化分解によって生じる分解物以外の分解物が含まれていることが判明した。このことから、アゾ基を有する二色性物質の耐光性の低下は、酸化分解以外の機構が影響していると推測される。
このような問題に対して、本発明者らがさらに検討を進めたところ、その理由は明らかになっていないが、アゾ基を有する二色性物質のうち、HOMOのエネルギー準位の低い二色性物質を用いると、所定の値を境界点にして光吸収異方性膜の耐光性が著しく向上することが判明し、本発明に至った。
【0013】
以下、本発明の組成物に含まれる成分および含まれ得る成分について説明する。
【0014】
〔特定二色性物質〕
本発明の特定二色性物質は、アゾ基を有し、HOMOのエネルギー準位が−5.60eV以下であり、かつ、CLogP値が7.0以上である。
特定二色性物質は、HOMOのエネルギー準位およびClogP値が上記値を満たす限り特に限定されないが、本発明の効果がより発揮される観点から、下記式(1)で表される二色性物質であるのが好ましい。
【0015】
【化1】
【0016】
上記式(1)中、m1、m2およびm3はそれぞれ独立に、0〜5の整数を表す。m1は2〜3が好ましく、m2は0〜1が好ましく、m3は2〜3が好ましい。
上記式(1)中、n1は1〜4の整数を表すが、耐光性がより向上する観点から、1〜3が好ましく、2〜3がより好ましい。
【0017】
上記式(1)中、Arは(m1+1)価(例えば、m1が1である時は2価)の芳香族炭化水素環または複素環を表し、Arは(m2+2)価(例えば、m2が1である時は3価)の芳香族炭化水素環または複素環を表し、Arは(m3+1)価(例えば、m3が1である時は2価)の芳香族炭化水素環または複素環を表す。n1≧2の場合において複数のArは互いに同一でも異なっていてもよい。
上記芳香族炭化水素環は、単環であっても、2環以上の縮環構造を有していてもよい。芳香族炭化水素環の環数は、耐光性がより向上し、かつ、有機溶媒に対する溶解性が向上するという観点から、1〜4が好ましく、1〜2がより好ましく、1(すなわちベンゼン環であること)がさらに好ましい。
芳香族炭化水素環の具体例としては、ベンゼン環、アズレン環、ナフタレン環、フルオレン環、アントラセン環、および、テトラセン環などが挙げられ、耐光性がより向上し、かつ、有機溶媒に対する溶解性が向上するという観点から、ベンゼン環およびナフタレン環が好ましく、ベンゼン環がより好ましい。
複素環は、芳香族または非芳香族のいずれであってもよいが、二色比が向上するという観点から、芳香族複素環が好ましい。
芳香族複素環は、単環であってもよいし、2環以上の縮環構造を有していてもよい。芳香族複素環を構成する炭素以外の原子としては、窒素原子、硫黄原子および酸素原子が挙げられる。芳香族複素環が炭素以外の環を構成する原子を複数有する場合、これらは同一であっても異なっていてもよい。
芳香族複素環の具体例としては、例えば、ピリジン環、チオフェン環、キノリン環、イソキノリン環、チアゾール環、ベンゾチアジアゾール環、フタルイミド環、チエノチアゾール環、チエノチオフェン環、および、チエノオキサゾール環等が挙げられ、耐光性がより向上し、かつ、二色比が向上する観点から、チエノチアゾール環が好ましい。
Ar〜Arはそれぞれ独立に、ベンゼン環またはチエノチアゾール環が好ましく、溶解性および配向度が向上する観点から、Ar〜Arがいずれもベンゼン環であるのがより好ましい。
【0018】
上記式(1)中、R、RおよびRはそれぞれ独立に置換基を表す。m1≧2である場合には複数のRは互いに同一でも異なっていてもよく、m2≧2である場合には複数のRは互いに同一でも異なっていてもよく、m3≧2である場合には複数のRは互いに同一でも異なっていてもよい。n1≧2の場合には複数の−(Rm2は互いに同一でも異なっていてもよい。
、RおよびRからなる群より選択される置換基の合計数は、2個以上であるが、3個以上が好ましく、4個以上がより好ましい。上限値は特に限定されないが、通常8個以下である。
なお、「R、RおよびRからなる群より選択される置換基」の数には、式(1)中にR、RまたはRが複数存在する場合、これらの全ての置換基の数を算入する。例えば、式(1)において、m1=2、m2=1、m3=2およびn=1である場合には、2個のR、1個のRおよび2個のRの合計5個の置換基を有する。
【0019】
上記置換基は1価の置換基であり、例えば、アルキル基、アルケニル基、アラルキル基、アリール基、ヘテロ環基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、メルカプト基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アシルオキシ基、アミノ基、アルキルアミノ基、カルボンアミド基、スルホンアミド基、スルファモイルアミノ基、オキシカルボニルアミノ基、オキシスルホニルアミノ基、ウレイド基、チオウレイド基、アシル基、オキシカルボニル基、カルバモイル基、スルホニル基、スルフィニル基、スルファモイル基、カルボキシ基(塩を含む)、および、スルホ基(塩を含む)等が挙げられる。これらの基は、さらにこれらの基で置換されていてもよい。
以下において、上記置換基の具体例をさらに詳細に示す。
【0020】
アルキル基としては、好ましくは炭素数1〜18の直鎖、分岐鎖または環状のアルキル基であり、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、t−ブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、2−ヒドロキシエチル、3−ヒドロキシプロピル、4−ヒドロキシブチル、3−メトキシプロピル、2−アミノエチル、アセトアミドメチル、2−アセトアミドエチル、カルボキシメチル、2−カルボキシエチル、2−スルホエチル、ウレイドメチル、2−ウレイドエチル、カルバモイルメチル、2−カルバモイルエチル、3−カルバモイルプロピル、ペンチル、ヘキシル、オクチル、デシル、ウンデシル、ドデシル、ヘキサデシル、および、オクタデシルなどを挙げることができる。
アルケニル基としては、好ましくは炭素数2〜18の直鎖、分岐鎖または環状のアルケニル基であり、例えば、ビニル、アリル、1−プロペニル、2−ペンテニル、1,3−ブタジエニル、2−オクテニル、および、3−ドデセニルなどを挙げることができる。
【0021】
アラルキル基としては、好ましくは炭素数7〜10のアラルキル基であり、例えば、ベンジルなどが挙げられる。
アリール基としては、好ましくは炭素数6〜10のアリール基であり、例えば、フェニル、ナフチル、p−ジブチルアミノフェニル、および、p−メトキシフェニルなどが挙げられる。
ヘテロ環基としては、好ましくは、炭素原子、窒素原子、酸素原子、または硫黄原子から構成される5〜6員環の飽和または不飽和のヘテロ環基が挙げられる。環を構成するヘテロ原子の数及び元素の種類は1つでも複数であってもよく、例えば、フリル、ベンゾフリル、ピラニル、ピロリル、イミダゾリル、イソオキサゾリル、ピラゾリル、ベンゾトリアゾリル、ピリジル、ピリミジル、ピリダジニル、チエニル、インドリル、キノリル、フタラジニル、キノキサリニル、ピロリジニル、ピロリニル、イミダゾリジニル、イミダゾリニル、ピラゾリジニル、ピペリジル、ピペラジニル、インドリニル、および、モルホリニルなどが挙げられる。
ハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、および、臭素原子などが挙げられる。
アルコキシ基としては、好ましくは炭素数1〜18のアルコキシ基であり、例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、2−メトキシエトキシ、2−メタンスルホニルエトキシ、ペンチルオキシ、ヘキシルオキシ、オクチルオキシ、ウンデシルオキシ、ドデシルオキシ、ヘキサデシルオキシ、および、オクタデシルオキシなどが挙げられる。
アリールオキシ基としては、好ましくは炭素数6〜10のアリールオキシ基であり、例えば、フェノキシ、および、p−メトキシフェノキシなどを挙げることができる。
アルキルチオ基としては、好ましくは炭素数1〜18のアルキルチオ基であり、例えば、メチルチオ、エチルチオ、オクチルチオ、ウンデシルチオ、ドデシルチオ、ヘキサデシルチオ、および、オクタデシルチオなどが挙げられる。
アリールチオ基としては、好ましくは炭素数6〜10のアリールチオ基であり、例えば、フェニルチオ、および、4−メトキシフェニルチオなどを挙げることができる。
アシルオキシ基としては、好ましくは炭素数1〜18のアシルオキシ基であり、例えば、アセトキシ、プロパノイルオキシ、ペンタノイルオキシ、オクタノイルオキシ、ドデカノイルオキシ、および、オクタデカノイルオキシなどを挙げることができる。
【0022】
アルキルアミノ基としては、好ましくは炭素数1〜18であり、例えば、メチルアミノ、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、ジブチルアミノ、オクチルアミノ、ジオクチルアミノ、および、ウンデシルアミノなどが挙げられる。
カルボンアミド基としては、好ましくは炭素数1〜18のカルボンアミド基であり、例えば、アセトアミド、アセチルメチルアミノ、アセチルオクチルアミノ、アセチルデシルアミノ、アセチルウンデシルアミノ、アセチルオクタデシルアミノ、プロパノイルアミノ、ペンタノイルアミノ、オクタノイルアミノ、オクタノイルメチルアミノ、ドデカノイルアミノ、ドデカノイルメチルアミノ、および、オクタデカノイルアミノなどが挙げられる。
スルホンアミド基としては、好ましくは炭素数1〜18のスルホンアミド基であり、例えば、メタンスルホンアミド、エタンスルホンアミド、プロピルスルホンアミド、2−メトキシエチルスルホンアミド、3−アミノプロピルスルホンアミド、2−アセトアミドエチルスルホンアミド、オクチルスルホンアミド、および、ウンデシルスルホンアミドなどが挙げられる。
オキシカルボニルアミノ基としては、好ましくは炭素数1〜18のオキシカルボニルアミノ基であり、例えば、メトキシカルボニルアミノ、エトキシカルボニルアミノ、オクチルオキシカルボニルアミノ、および、ウンデシルオキシカルボニルアミノなどが挙げられる。
オキシスルホニルアミノ基としては、好ましくは炭素数1〜18のオキシスルホニルアミノ基であり、例えば、メトキシスルホニルアミノ、エトキシスルホニルアミノ、オクチルオキシスルホニルアミノ、および、ウンデシルオキシスルホニルアミノなどが挙げられる。
スルファモイルアミノ基としては、好ましくは炭素数0〜18のスルファモイルアミノ基であり、例えば、メチルスルファモイルアミノ、ジメチルスルファモイルアミノ、エチルスルファモイルアミノ、プロピルスルファモイルアミノ、オクチルスルファモイルアミノ、および、ウンデシルスルファモイルアミノなどが挙げられる。
ウレイド基としては、好ましくは炭素数1〜18のウレイド基であり、例えば、ウレイド、メチルウレイド、N,Nージメチルウレイド、オクチルウレイド、および、ウンデシルウレイドなどが挙げられる。
チオウレイド基としては、好ましくは炭素数1〜18のチオウレイド基であり、例えば、チオウレイド、メチルチオウレイド、N,N−ジメチルチオウレイド、オクチルチオウレイド、および、ウンデシルチオウレイドなどが挙げられる。
アシル基としては、好ましくは炭素数1〜18のアシル基であり、例えば、アセチル、ベンゾイル、オクタノイル、デカノイル、ウンデカノイル、および、オクタデカノイルなどが挙げられる。
オキシカルボニル基としては、好ましくは炭素数1〜18のオキシカルボニル基であり、例えば、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、オクチルオキシカルボニル、および、ウンデシルオキシカルボニルなどのアルコキシカルボニル基などが挙げられる。
カルバモイル基としては、好ましくは炭素数1〜18のカルバモイル基であり、例えば、カルバモイル、N,Nージメチルカルバモイル、N−エチルカルバモイル、N−オクチルカルバモイル、N,N−ジオクチルカルバモイル、および、N−ウンデシルカルバモイルなどが挙げられる。
スルホニル基としては、好ましくは炭素数1〜18のスルホニル基であり、例えば、メタンスルホニル、エタンスルホニル、2−クロロエタンスルホニル、オクタンスルホニル、および、ウンデカンスルホニルなどが挙げられる。
スルフィニル基としては、好ましくは炭素数1〜18のスルフィニル基であり、例えば、メタンスルフィニル、エタンスルフィニル、および、オクタンスルフィニルなどが挙げられる。
スルファモイル基としては、好ましくは炭素数0〜18のスルファモイル基であり、例えば、スルファモイル、ジメチルスルファモイル、エチルスルファモイル、オクチルスルファモイル、ジオクチルスルファモイル、および、ウンデシルスルファモイルなどが挙げられる。
【0023】
上記式(1)において、R、RおよびRからなる群より選択される置換基のうち、1個以上が電子吸引性基であるのが好ましく、2個以上が電子吸引性基であるのがより好ましい。これにより、HOMOのエネルギー準位が所望の範囲に調整しやすくなる。なお、電子吸引性基の数の上限は、特に限定されず、通常6個である。
また、合成上の観点から、RおよびRの少なくとも一方が電子吸引性基であるのが好ましい。
ここで、電子吸引性基(電子求引性基)とは、ハメット則の置換基定数σp値が正である置換基を意味し、具体的には、ハロゲン原子、トリフルオロメチル基、シアノ基、ニトロ基、アルコキシカルボニル基(例えば、エトキシカルボニル基)およびカルボキシ基などが挙げられる。
電子吸引性基の中でも、HOMOのエネルギー準位が所望の範囲により調整しやすくなる観点から、ハメット則の置換基定数σp値が0.2以上の置換基(例えば、ハロゲン原子およびシアノ基)が好ましい。
【0024】
ここで、ハメット則の置換基定数σは、置換安息香酸の酸解離平衡定数における置換基の効果を数値で表したものであり、置換基の電子吸引性および電子供与性の強度を示すパラメータである。本明細書におけるハメットの置換基定数σp値は、置換基が安息香酸のパラ位に位置する場合の置換基定数σを意味する。
本明細書における各基のハメットの置換基定数σp値は、文献「Hansch et al., Chemical Reviews, 1991, Vol, 91, No. 2, 165−195」に記載された値を採用する。なお、上記文献にハメットの置換基定数σp値が示されていない基については、ソフトウェア「ACD/ChemSketch(ACD/Labs 8.00 Release Product Version:8.08)」を用いて、安息香酸のpKaと、パラ位に置換基を有する安息香酸誘導体のpKaとの差に基づいて、ハメットの置換基定数σp値を算出できる。
【0025】
特定二色性物質としては、耐光性がより向上する観点から、下記式(2)で表される化合物が好ましい。
【0026】
【化2】
【0027】
上記式(2)中、m21およびm23はそれぞれ独立に0〜5の整数を表す。m21およびm23はそれぞれ、上記式(1)におけるm1およびm3と同義である。
上記式(2)中、m22は、0〜4の整数を表す。m22の好適態様は、上記式(1)におけるm2と同様である。
上記式(2)中、n2は、2または3の整数を表す。
上記式(2)中、R21、R22およびR23はそれぞれ独立に置換基を表す。複数の−(R22m22は互いに同一でも異なっていてもよい。m21≧2である場合において複数のR21は互いに同一でも異なっていてもよく、m22≧2である場合において複数のR22は互いに同一でも異なっていてもよく、m23≧2である場合において複数のR23は互いに同一でも異なっていてもよい。R21、R22およびR23はそれぞれ、上記式(1)におけるR、RおよびRと同義である。
ただし、R21、R22およびR23からなる群より選択される置換基の合計数は2個以上であり、かつ、2個以上の置換基が電子吸引性基である。なお、「R21、R22およびR23からなる群より選択される置換基」の意味は、「R、RおよびRからなる群より選択される置換基」と同様である。
【0028】
以下において、特定二色性物質の具体例を示す。なお、下記具体例において、「Me」はメチル基を表し、「Et」はエチル基を表し、「Bu」はブチル基を表す。
【0029】
【化3】
【0030】
【化4】
【0031】
【化5】
【0032】
【化6】
【0033】
特定二色性物質のHOMOのエネルギー準位は、−5.60eV以下であるが、耐光性がより向上する観点から、−5.62eV以下がより好ましく、−5.64eV以下がさらに好ましい。特定二色性物質のHOMOのエネルギー準位の下限値は、特に限定されないが通常−5.90eVである。
ここで、本発明におけるHOMOのエネルギー準位は、半経験的分子軌道計算法PM3により化合物の構造最適化を行い、Gaussian97(米ガウシアン社製ソフトウェア)によって算出される値を用いる。
【0034】
特定二色性物質のClogP値は、7.0以上であるが、有機溶剤に対する高い溶解性という観点から、8.0以上がより好ましく、9.0以上がさらに好ましい。特定二色性物質のClogP値の上限値は、特に限定されないが通常20.0である。
ここで、ClogP値は、化学構造の親水性および疎水性の性質を表現する指標であり、この値が大きいほど疎水性であることを示す。本発明では、ChemBioDraw Ultra 13.0に化合物の構造式を入力して算出される値をClogP値として採用する。
【0035】
特定二色性物質の極大吸収波長は、400〜500nmの範囲にあるのが好ましい。
特定二色性物質は、液晶性を示してもよいし、液晶性を示さなくてもよい。
特定二色性物質が液晶性を示す場合には、ネマチック性またはスメクチック性のいずれを示してもよい。液晶相を示す温度範囲は、室温(約20℃〜28℃)〜300℃が好ましく、取扱い性および製造適性の観点から、50℃〜200℃であることがより好ましい。
【0036】
本発明の組成物は、特定二色性物質を1種単独で含有していてもよいし、2種以上含有していてもよい。
【0037】
〔液晶性化合物〕
本発明の組成物は、液晶性化合物を含有することが好ましい。液晶性化合物を含むことで、特定二色性物質の析出を抑止しながら、特定二色性物質を高い配向度で配向させることができる。
液晶性化合物は、二色性を示さない液晶性化合物である。
液晶性化合物としては、低分子液晶性化合物および高分子液晶性化合物のいずれも用いることができる。ここで、「低分子液晶性化合物」とは、化学構造中に繰り返し単位を有さない液晶性化合物のことをいう。また、「高分子液晶性化合物」とは、化学構造中に繰り返し単位を有する液晶性化合物のことをいう。
低分子液晶性化合物としては、例えば、特開2013−228706号公報に記載されている液晶性化合物が挙げられる。
高分子液晶性化合物としては、例えば、特開2011−237513号公報に記載されているサーモトロピック液晶性高分子が挙げられる。また、高分子液晶性化合物は、末端に架橋性基(例えば、アクリロイル基およびメタクリロイル基)を有していてもよい。
液晶性化合物は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
液晶性化合物を含有する場合において、液晶性化合物の含有量は、組成物中の特定二色性物質の含有量100質量部に対して、25〜2000質量部が好ましく、33〜1000質量部がより好ましく、50〜500質量部がさらに好ましい。液晶性化合物の含有量が上記範囲内にあることで、光吸収異方性膜の配向度がより向上する。
【0038】
<他の二色性物質>
本発明の組成物は、さらに上記特定二色性物質以外の二色性物質(以下、「他の二色性物質」ともいう。)を1種以上含有してもよい。
このような他の二色性物質としては例えば、特開2013−228706号公報の[0067]〜[0071]段落、特開2013−227532号公報の[0008]〜[0026]、特開2013−209367号公報の[0008]〜[0015]段落、特開2013−148883号公報の[0045]〜[0060]、特開2013−109090号公報の[0012]〜[0029]段落、特開2013−101328号公報の[0009]〜[0017]、特開2013−37353号公報の[0051]〜[0065]段落、特開2012−63387号公報の[0049]〜[0073]段落、特開平11−305036号公報の[0016]〜[0018]段落、特開2001−133630号公報の[0009]〜[0011]段落、および、特開2011−215337号公報の[0030]〜[0169]段落、などに記載されている二色性色素、ならびに、特開2016−4055号公報の[0035]〜[0062]段落に記載のサーモトロピック液晶性を有する二色性色素ポリマーなどが挙げられる。
本発明の組成物が他の二色性物質を含有する場合、他の二色性物質の含有量は、組成物中の特定二色性物質100質量部に対し、20〜500質量部が好ましく、30〜300質量部がより好ましい。
【0039】
〔重合開始剤〕
本発明の組成物は、重合開始剤を含有することが好ましい。
重合開始剤としては特に制限はないが、感光性を有する化合物、すなわち光重合開始剤であることが好ましい。
光重合開始剤としては、各種の化合物を特に制限なく使用できる。光重合開始剤の具体例としては、α−カルボニル化合物(米国特許第2367661号、同2367670号の各明細書)、アシロインエーテル(米国特許第2448828号明細書)、α−炭化水素置換芳香族アシロイン化合物(米国特許第2722512号明細書)、多核キノン化合物(米国特許第3046127号および同2951758号の各明細書)、トリアリールイミダゾールダイマーとp−アミノフェニルケトンとの組み合わせ(米国特許第3549367号明細書)、アクリジンおよびフェナジン化合物(特開昭60−105667号公報および米国特許第4239850号明細書)、オキサジアゾール化合物(米国特許第4212970号明細書)、および、アシルフォスフィンオキシド化合物(特公昭63−40799号公報、特公平5−29234号公報、特開平10−95788号公報および特開平10−29997号公報)などが挙げられる。
このような光重合開始剤としては、市販品も用いることができ、BASF社製のイルガキュア(IRGACURE)184、907、369、651、819、OXE−01およびOXE−02などが挙げられる。
本発明の組成物が重合開始剤を含有する場合、重合開始剤の含有量は、組成物中の上記特定二色性物質、上記他の二色性物質および上記液晶性化合物の合計100質量部に対し、0.01〜30質量部が好ましく、0.1〜15質量部が好ましい。重合開始剤の含有量が0.01質量部以上であることで、光吸収異方性膜の耐久性が良好となり、30質量部以下であることで、光吸収異方性膜の配向が良好となる。
【0040】
〔溶媒〕
本発明の組成物は、作業性等の観点から、溶媒を含有するのが好ましい。
溶媒としては、例えば、ケトン類(例えば、アセトン、2−ブタノン、メチルイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノンなど)、エーテル類(例えば、ジオキサン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、シクロペンチルメチルエーテル、テトラヒドロピランなど)、脂肪族炭化水素類(例えば、ヘキサンなど)、脂環式炭化水素類(例えば、シクロヘキサンなど)、芳香族炭化水素類(例えば、ベンゼン、トルエン、キシレンおよびトリメチルベンゼンなど)、ハロゲン化炭素類(例えば、ジクロロメタン、トリクロロメタン、ジクロロエタン、ジクロロベンゼンおよびクロロトルエンなど)、エステル類(例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチルおよび乳酸エチルなど)、アルコール類(例えば、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、シクロヘキサノール、イソペンチルアルコール、ネオペンチルアルコール、ジアセトンアルコールおよびベンジルアルコールなど)、セロソルブ類(例えば、メチルセロソルブ、エチルセロソルブおよび1,2−ジメトキシエタンなど)、セロソルブアセテート類、スルホキシド類(例えば、ジメチルスルホキシドなど)、アミド類(例えば、ジメチルホルムアミドおよびジメチルアセトアミドなど)、および、ヘテロ環化合物(例えば、ピリジンなど)などの有機溶媒、ならびに、水が挙げられる。これの溶媒は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
これらの溶媒のうち、本発明の溶解性に優れるという効果を活かす観点から、ケトン類(特にシクロペンタノンまたはシクロヘキサノン)、および、エーテル類(特にテトラヒドロフラン、シクロペンチルメチルエーテルまたはテトラヒドロピラン)が好ましい。
本発明の組成物が溶媒を含有する場合において、溶媒の含有量は、組成物の全質量に対して、80〜99質量%が好ましく、83〜98質量%がより好ましく、85〜96質量%がさらに好ましい。
【0041】
〔界面改良剤〕
本発明の組成物は、界面改良剤を含むことが好ましい。界面改良剤を含むことにより、塗布表面の平滑性が向上し、配向度が向上したり、ハジキおよびムラを抑制して、面内の均一性の向上が見込まれる。
界面改良剤としては、液晶性化合物を塗布表面側で水平にさせるものが好ましく、特開2011−237513号公報の[0253]〜[0293]段落に記載の化合物(水平配向剤)を用いることができる。また、特開2007−272185号公報の[0018]〜[0043]段落等に記載のフッ素(メタ)アクリレート系ポリマーも用いることができる。界面改良剤としては、これら以外の化合物を用いてもよい。
本発明の組成物が界面改良剤を含有する場合、界面改良剤の含有量は、組成物中の上記特定二色性物質、上記他の二色性物質および上記液晶性化合物の合計100質量部に対し、0.001〜5質量部が好ましく、0.01〜3質量部がより好ましい。
【0042】
〔酸化剤〕
本発明の組成物は、酸化剤を含有してもよい。酸化剤を含有することで、耐光性がより向上する。酸化剤による耐光性の改善機構の一つとしては、アゾ色素が光励起した励起状態において、酸化剤が励起状態の電子を速やかに受け取ることで、励起状態が失活するためと推定される。
酸化剤としては特に限定されず、例えば、キノン構造およびN−オキシル構造の少なくとも一方の構造を有する酸化剤が挙げられる。
酸化剤を含有する場合の含有量は、特定二色性物質100質量部に対して、0.1〜100質量部が好ましく、1〜50質量部がより好ましく、1〜40質量部がさらに好ましい。酸化剤の含有量が上記範囲内にあることで、耐光性がより向上する。
酸化剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0043】
[光吸収異方性膜]
本発明の光吸収異方性膜は、上述した本発明の組成物を用いて形成される光吸収異方性膜である。
本発明の光吸収異方性膜の製造方法の一例としては、上記組成物を基材上に塗布して塗布膜を形成する工程(以下、「塗布膜形成工程」ともいう。)と、塗布膜に含まれる二色性物質を配向させる工程(以下、「配向工程」ともいう。)と、をこの順に含む方法が挙げられる。
以下、本発明の光吸収異方性膜を作製する製造方法の各工程について説明する。
【0044】
〔塗布膜形成工程〕
塗布膜形成工程は、上記組成物を基材上に塗布して塗布膜を形成する工程である。
上述した溶媒を含有する組成物を用いたり、組成物を加熱などによって溶融液などの液状物としたものを用いたりすることにより、基材上に組成物を塗布することが容易になる。
組成物の塗布方法としては、ロールコーティング法、グラビア印刷法、スピンコート法、ワイヤーバーコーティング法、押し出しコーティング法、ダイレクトグラビアコーティング法、リバースグラビアコーティング法、ダイコーティング法、スプレー法、および、インクジェット法などの公知の方法が挙げられる。
本態様では、組成物が基材上に塗布されている例を示したが、これに限定されず、例えば、基材上に設けられた配向膜上に組成物を塗布してもよい。基材および配向膜の詳細については後述する。
【0045】
〔配向工程〕
配向工程は、塗布膜に含まれる二色性物質を配向させる工程である。これにより、光吸収異方性膜が得られる。
配向工程は、乾燥処理を有していてもよい。乾燥処理によって、溶媒などの成分を塗布膜から除去することができる。乾燥処理は、塗布膜を室温下において所定時間放置する方法(例えば、自然乾燥)によって行われてもよいし、加熱および/または送風する方法によって行われてもよい。
ここで、組成物に含まれる二色性物質は、上述した塗布膜形成工程または乾燥処理によって、配向する場合がある。例えば、組成物が溶媒を含む塗布液として調製されている態様では、塗布膜を乾燥して、塗布膜から溶媒を除去することで、光吸収異方性を持つ塗布膜(すなわち、光吸収異方性膜)が得られる。
【0046】
配向工程は、加熱処理を有することが好ましい。これにより、塗布膜に含まれる二色性物質を配向させることができるため、加熱処理後の塗布膜を光吸収異方性膜として好適に使用できる。
加熱処理は、製造適性などの面から10〜250℃が好ましく、25〜190℃がより好ましい。また、加熱時間は、1〜300秒が好ましく、1〜60秒がより好ましい。
【0047】
配向工程は、加熱処理後に実施される冷却処理を有していてもよい。冷却処理は、加熱後の塗布膜を室温(20〜25℃)程度まで冷却する処理である。これにより、塗布膜に含まれる二色性物質の配向を固定することができる。冷却手段としては、特に限定されず、公知の方法により実施できる。
以上の工程によって、光吸収異方性膜を得ることができる。
なお、本態様では、塗布膜に含まれる二色性物質を配向する方法として、乾燥処理および加熱処理などを挙げているが、これに限定されず、公知の配向処理によって実施できる。
【0048】
〔他の工程〕
光吸収異方性膜の製造方法は、上記配向工程後に、光吸収異方性膜を硬化させる工程(以下、「硬化工程」ともいう。)を有していてもよい。
硬化工程は、例えば、加熱および/または光照射(露光)によって実施される。このなかでも、硬化工程は光照射によって実施されることが好ましい。
硬化に用いる光源は、赤外線、可視光または紫外線など、種々の光源を用いることが可能であるが、紫外線であることが好ましい。また、硬化時に加熱しながら紫外線を照射してもよいし、特定の波長のみを透過するフィルタを介して紫外線を照射してもよい。
また、露光は、窒素雰囲気下で行われてもよい。ラジカル重合によって光吸収異方性膜の硬化が進行する場合において、酸素による重合の阻害が低減されるため、窒素雰囲気下で露光することが好ましい。
【0049】
光吸収異方性膜の膜厚は、0.1〜5.0μmが好ましく、0.3〜1.5μmがより好ましい。組成物中の二色性物質の濃度によるが、膜厚が0.1μm以上であると、優れた吸光度の光吸収異方性膜が得られ、膜厚が5.0μm以下であると、優れた透過率の光吸収異方性膜が得られる。
【0050】
[積層体]
本発明の積層体は、基材と、基材上に設けられる本発明の光吸収異方性膜とを有する。
また、本発明の積層体は、上記光吸収異方性膜上に、λ/4板を有していてもよい。
さらに、本発明の積層体は、上記基材と上記光吸収異方性膜との間に、配向膜を有していてもよい。
さらに、本発明の積層体は、上記光吸収異方性膜とλ/4板との間に、バリア層を有していてもよい。
以下、本発明の積層体を構成する各層について説明する。
【0051】
〔基材〕
基材としては、光吸収異方性膜の用途に応じて選択することができ、例えば、ガラスおよびポリマーフィルムが挙げられる。基材の光透過率は、80%以上であるのが好ましい。
基材としてポリマーフィルムを用いる場合には、光学的等方性のポリマーフィルムを用いるのが好ましい。ポリマーの具体例および好ましい態様は、特開2002−22942号公報の[0013]段落の記載を適用できる。また、従来知られているポリカーボネートやポリスルホンのような複屈折の発現しやすいポリマーであっても国際公開第2000/26705号公報に記載の分子を修飾することで発現性を低下させたものを用いることもできる。
【0052】
〔光吸収異方性膜〕
光吸収異方性膜については、上述した通りである。光吸収異方性膜に含まれる二色性物質は、基材の平面に対して垂直に配向(すなわち、光吸収異方性膜の厚み方向に配向)していてもよいし、基材の平面に対して平行に配向(すなわち、光吸収異方性膜の面内方向に配向)していてもよい。
【0053】
〔λ/4板〕
「λ/4板」とは、λ/4機能を有する板であり、具体的には、ある特定の波長の直線偏光を円偏光に(または円偏光を直線偏光に)変換する機能を有する板である。
例えば、λ/4板が単層構造である態様としては、具体的には、延伸ポリマーフィルムや、支持体上にλ/4機能を有する光学異方性層を設けた位相差フィルムなどが挙げられ、また、λ/4板が複層構造である態様としては、具体的には、λ/4板とλ/2板とを積層してなる広帯域λ/4板が挙げられる。
λ/4板と光吸収異方性膜とは、接して設けられていてもよいし、λ/4板と光吸収異方性膜との間に、他の層が設けられていてもよい。このような層としては、密着性担保のための粘着層または接着層、およびバリア層が挙げられる。
【0054】
〔バリア層〕
本発明の積層体がバリア層を有する場合、バリア層は、光吸収異方性膜とλ/4板との間に設けられる。なお、光吸収異方性膜とλ/4板との間に、バリア層以外の他の層(例えば、粘着層または接着層)を有する場合には、バリア層は、例えば、光吸収異方性膜と他の層との間に設けることができる。
バリア層は、ガス遮断層(酸素遮断層)とも呼ばれ、大気中の酸素等のガス、水分、または、隣接する層に含まれる化合物等から光吸収異方性膜を保護する機能を有する。
バリア層については、特開2014−159124号公報の[0014]〜[0054]段落、特開2017−121721号公報の[0042]〜[0075]段落、特開2017−115076号公報の[0045]〜[0054]段落、特開2012−213938号公報の[0010]〜[0061]段落、特開2005−169994号公報の[0021]〜[0031]段落の記載を参照できる。
【0055】
〔配向膜〕
本発明の積層体は、基材と光吸収異方性膜との間に、配向膜を有していてもよい。
配向膜は、配向膜上において本発明の組成物に含まれる二色性物質を所望の配向状態とすることができるのであれば、どのような層でもよい。
有機化合物(好ましくはポリマー)の膜表面へのラビング処理、無機化合物の斜方蒸着、マイクログルーブを有する層の形成、あるいはラングミュアブロジェット法(LB膜)による有機化合物(例、ω−トリコサン酸、ジオクタデシルメチルアンモニウムクロライド、ステアリル酸メチル)の累積のような手段で、設けることができる。さらに、電場の付与、磁場の付与あるいは光照射により、配向機能が生じる配向膜も知られている。なかでも、本発明では、配向膜のプレチルト角の制御し易さの点からはラビング処理により形成する配向膜が好ましく、配向の均一性の点からは光照射により形成する光配向膜も好ましい。
【0056】
<ラビング処理配向膜>
ラビング処理により形成される配向膜に用いられるポリマー材料としては、多数の文献に記載があり、多数の市販品を入手することができる。本発明においては、ポリビニルアルコールまたはポリイミド、およびその誘導体が好ましく用いられる。配向膜については国際公開第2001/88574A1号公報の43頁24行〜49頁8行の記載を参照することができる。配向膜の厚さは、0.01〜10μmであることが好ましく、0.01〜1μmであることがさらに好ましい。
【0057】
<光配向膜>
光照射により形成される配向膜に用いられる光配向材料としては、多数の文献などに記載がある。本発明においては、例えば、特開2006−285197号公報、特開2007−76839号公報、特開2007−138138号公報、特開2007−94071号公報、特開2007−121721号公報、特開2007−140465号公報、特開2007−156439号公報、特開2007−133184号公報、特開2009−109831号公報、特許第3883848号、特許第4151746号に記載のアゾ化合物、特開2002−229039号公報に記載の芳香族エステル化合物、特開2002−265541号公報、特開2002−317013号公報に記載の光配向性単位を有するマレイミドおよび/またはアルケニル置換ナジイミド化合物、特許第4205195号、特許第4205198号に記載の光架橋性シラン誘導体、特表2003−520878号公報、特表2004−529220号公報、または、特許第4162850号に記載の光架橋性ポリイミド、ポリアミドもしくはエステルが好ましい例として挙げられる。より好ましくは、アゾ化合物、光架橋性ポリイミド、ポリアミド、または、エステルである。
【0058】
上記材料から形成した光配向膜に、直線偏光または非偏光照射を施し、光配向膜を製造する。
本明細書において、「直線偏光照射」「非偏光照射」とは、光配向材料に光反応を生じせしめるための操作である。用いる光の波長は、用いる光配向材料により異なり、その光反応に必要な波長であれば特に限定されるものではない。光照射に用いる光のピーク波長は、200nm〜700nmが好ましく、光のピーク波長が400nm以下の紫外光がより好ましい。
【0059】
光照射に用いる光源は、通常使われる光源、例えばタングステンランプ、ハロゲンランプ、キセノンランプ、キセノンフラッシュランプ、水銀ランプ、水銀キセノンランプおよびカーボンアークランプなどのランプ、各種のレーザー[例、半導体レーザー、ヘリウムネオンレーザー、アルゴンイオンレーザー、ヘリウムカドミウムレーザーおよびYAG(イットリウム・アルミニウム・ガーネット)レーザー]、発光ダイオード、ならびに、陰極線管などを挙げることができる。
【0060】
直線偏光を得る手段としては、偏光板(例えば、ヨウ素偏光板、二色色素偏光板、および、ワイヤーグリッド偏光板)を用いる方法、プリズム系素子(例えば、グラントムソンプリズム)もしくはブリュースター角を利用した反射型偏光子を用いる方法、または、偏光を有するレーザー光源から出射される光を用いる方法が採用できる。また、フィルタまたは波長変換素子などを用いて必要とする波長の光のみを選択的に照射してもよい。
【0061】
照射する光は、直線偏光の場合には、配向膜に対して上面、または裏面から配向膜表面に対して垂直、または斜めから光を照射する方法が採用される。光の入射角度は、光配向材料によって異なるが、0〜90°(垂直)が好ましく、40〜90°が好ましい。
非偏光の場合には、配向膜に対して、斜めから非偏光を照射する。その入射角度は、10〜80°が好ましく、20〜60°がより好ましく、30〜50°がさらに好ましい。
照射時間は、1分〜60分が好ましく、1分〜10分がより好ましい。
【0062】
パターン化が必要な場合には、フォトマスクを用いた光照射をパターン作製に必要な回数施す方法、または、レーザー光走査によるパターンの書き込みによる方法を採用できる。
【0063】
〔用途〕
本発明の積層体は、偏光素子(偏光板)として使用でき、例えば、直線偏光板または円偏光板として使用できる。
本発明の積層体が上記λ/4板などの光学異方性層を有さない場合には、積層体は直線偏光板として使用できる。
一方、本発明の積層体が上記λ/4板を有する場合には、積層体は円偏光板として使用できる。
【0064】
[画像表示装置]
本発明の画像表示装置は、上述した光吸収異方性膜または上述した積層体を有する。
本発明の画像表示装置に用いられる表示素子は特に限定されず、例えば、液晶セル、有機エレクトロルミネッセンス(以下、「EL」と略す。)表示パネル、および、プラズマディスプレイパネルなどが挙げられる。
これらのうち、液晶セルまたは有機EL表示パネルであるのが好ましく、液晶セルであるのがより好ましい。すなわち、本発明の画像表示装置としては、表示素子として液晶セルを用いた液晶表示装置、表示素子として有機EL表示パネルを用いた有機EL表示装置であるのが好ましく、液晶表示装置であるのがより好ましい。
【0065】
〔液晶表示装置〕
本発明の画像表示装置の一例である液晶表示装置としては、上述した光吸収異方性膜と、液晶セルと、を有する態様が好ましく挙げられる。より好適には、上述した積層体(ただし、λ/4板を含まない)と、液晶セルと、を有する液晶表示装置である。
なお、本発明においては、液晶セルの両側に設けられる光吸収異方性膜(積層体)のうち、フロント側の偏光素子として本発明の光吸収異方性膜(積層体)を用いるのが好ましく、フロント側およびリア側の偏光素子として本発明の光吸収異方性膜(積層体)を用いるのがより好ましい。
以下に、液晶表示装置を構成する液晶セルについて詳述する。
【0066】
<液晶セル>
液晶表示装置に利用される液晶セルは、VA(Vertical Alignment)モード、OCB(Optically Compensated Bend)モード、IPS(In−Plane−Switching)モード、またはTN(Twisted Nematic)モードであることが好ましいが、これらに限定されるものではない。
TNモードの液晶セルでは、電圧無印加時に棒状液晶性分子が実質的に水平配向し、更に60〜120゜にねじれ配向している。TNモードの液晶セルは、カラーTFT(Thin Film Transistor)液晶表示装置として最も多く利用されており、多数の文献に記載がある。
VAモードの液晶セルでは、電圧無印加時に棒状液晶性分子が実質的に垂直に配向している。VAモードの液晶セルには、(1)棒状液晶性分子を電圧無印加時に実質的に垂直に配向させ、電圧印加時に実質的に水平に配向させる狭義のVAモードの液晶セル(特開平2−176625号公報記載)に加えて、(2)視野角拡大のため、VAモードをマルチドメイン化した(MVAモードの)液晶セル(SID97、Digest of tech.Papers(予稿集)28(1997)845記載)、(3)棒状液晶性分子を電圧無印加時に実質的に垂直配向させ、電圧印加時にねじれマルチドメイン配向させるモード(n−ASMモード)の液晶セル(日本液晶討論会の予稿集58〜59(1998)記載)および(4)SURVIVALモードの液晶セル(LCDインターナショナル98で発表)が含まれる。また、PVA(Patterned Vertical Alignment)型、光配向型(Optical Alignment)、およびPSA(Polymer−Sustained Alignment)のいずれであってもよい。これらのモードの詳細については、特開2006−215326号公報、および特表2008−538819号公報に詳細な記載がある。
IPSモードの液晶セルは、棒状液晶分子が基材に対して実質的に平行に配向しており、基材面に平行な電界が印加することで液晶分子が平面的に応答する。IPSモードは電界無印加状態で黒表示となり、上下一対の偏光板の吸収軸は直交している。光学補償シートを用いて、斜め方向での黒表示時の漏れ光を低減させ、視野角を改良する方法が、特開平10−54982号公報、特開平11−202323号公報、特開平9−292522号公報、特開平11−133408号公報、特開平11−305217号公報、特開平10−307291号公報などに開示されている。
【0067】
〔有機EL表示装置〕
本発明の画像表示装置の一例である有機EL表示装置としては、例えば、視認側から、光吸収異方性膜と、λ/4板と、有機EL表示パネルと、をこの順で有する態様が好適に挙げられる。
より好適には、視認側から、λ/4板を有する上述した積層体と、有機EL表示パネルと、をこの順に有する態様である。この場合には、積層体は、視認側から、基材、必要に応じて設けられる配向膜、光吸収異方性膜、および、λ/4板の順に配置されている。
また、有機EL表示パネルは、電極間(陰極および陽極間)に有機発光層(有機エレクトロルミネッセンス層)を挟持してなる有機EL素子を用いて構成された表示パネルである。有機EL表示パネルの構成は特に制限されず、公知の構成が採用される。
【実施例】
【0068】
以下に実施例に基づいて本発明をさらに詳細に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容および処理手順などは、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す実施例により限定的に解釈されるべきものではない。
【0069】
[二色性物質I−10の合成]
二色性物質I−10は、次のようにして合成した。
【0070】
【化7】
【0071】
なお、上記式中、「Ac」はアセチル基、「Me」はメチル基、「Et」はエチル基、「DMAc」はジメチルアセトアミドを表す。
【0072】
<ステップ1 M−1の合成>
【0073】
【化8】
【0074】
m−トルイジン(和光純薬社製)32.2g(0.3mol)にエタノール175mlと水40mlとを加えて室温で攪拌した。この溶液にヒドロキシメタンスルホン酸ナトリウム(東京化成社製) 48.3g(0.36mol)を添加して、外温100℃に加熱して5時間攪拌した。反応終了後、室温に冷却してから濾過しエタノールで洗浄した。この結晶を乾燥してM−1を48.8g(収率:72.8%、白色結晶)得た。
【0075】
<ステップ2 M−4の合成>
【0076】
【化9】
【0077】
p−アセチルアミノアニリン(東京化成社製)10.0g(0.067mol)にメタノール150mlを加えて−5℃に冷却して攪拌した。この溶液に濃塩酸17.1mlを滴下した。次いで亜硝酸ナトリウム(和光純薬社製)5.5g(0.08mol)を水10mlに溶解した水溶液を滴下した。内温を−5℃〜5℃に保った。滴下終了後、0℃以下で1時間攪拌しジアゾニウム塩溶液を調整した。
M−1(15.0g、0.067mol)に水150mlを加えて攪拌して溶解させた。この水溶液にメタノール30mlと酢酸ナトリウム14.8g(0.18mol)を加えて、0℃に冷却して攪拌した。この溶液に上記の方法で調整したジアゾニウム塩溶液を0℃〜5℃で滴下した。滴下終了後、5℃で1時間攪拌し、次いで室温で1時間攪拌して反応を完結させた。次に、この溶液に炭酸カリウム46g(0.335mol)を水100mlに溶解した水溶液をゆっくりと添加し、80℃に加熱して4時間攪拌した。反応終了後、室温に冷却してから析出している結晶を濾過して、M−4を15.35g(収率:85.9%、黄色結晶)得た。
【0078】
<ステップ3 M−5の合成>
【0079】
【化10】
【0080】
M−4(15.0g)にメタノール400mlと水20mlとを加えて室温で攪拌した。この分散液に濃硫酸17.8mlを滴下した。この分散液を8時間、過熱還流攪拌して加水分解を完結させた。この溶液に水300mlを添加して20%水酸化ナトリウム水溶液でpH=10程度に調整した。析出している結晶を濾過して水洗し、60℃で乾燥した。M−5(11.7g)(収率:96.4%、黄色結晶)を得た。
【0081】
<ステップ4 M−6の合成>
【0082】
【化11】
【0083】
M−5(1.13g、5mmol)にメタノール30mlと水10mlとを加えて室温で攪拌した。この溶液に濃塩酸4.3ml(50mmol)を添加して、−5℃に冷却して攪拌した。この溶液に亜硝酸ナトリウム2.07g(30mmol)を水8mlに溶解した水溶液を滴下した。内温を2℃以下に保った。滴下終了後、−5℃〜0℃で1.5時間攪拌してジアゾニウム塩溶液を調整した。
2−クロロフェノール(和光純薬社製)3.76g(40mmol)、水酸化ナトリウム1.6g(40mmol)を水10mlとメタノール30mlに溶解させ、0℃に冷却して攪拌した。この溶液に上記の方法で調整したジアゾニウム塩溶液を滴下した。内温を5℃以下に保った。滴下終了後、10℃以下で30分間攪拌し次いで室温で1時間攪拌した。反応終了後、水100mlを添加し、次いで塩酸を滴下してpH=2〜3に調整して結晶を析出させた。この結晶を濾過して水洗し、乾燥した。M−6を2.14g(収率:98.2%、黄色結晶)得た。
【0084】
<ステップ5 M−8の合成>
【0085】
【化12】
【0086】
M−7(東京化成社製)13.0g(0.09mol)、BHT(ジブチルヒドロキシトルエン)0.6gに酢酸エチル50mlを加えて5℃に冷却して攪拌した。この溶液にトリエチルアミン15mlを添加して、次いで、p−トルエンスルホン酸クロライド(東京化成社製)18.9g(0.099mol)を添加した。添加終了後、5〜10℃で1時間攪拌し、次いで室温で18時間攪拌した。反応終了後、反応液に水50mlを添加して1時間攪拌し抽出した。酢酸エチル溶液を飽和食塩水で洗浄し無水硫酸ナトリウムで乾燥した。酢酸エチルにBHT0.5g添加して減圧下で酢酸エチルを留去した。M−8を28.9g(透明液体)得た。
【0087】
<ステップ6 I−10の合成>
【0088】
【化13】
【0089】
M−6(218mg、0.5mmol)、炭酸カリウム500mg(3.6mmol)、沃化カリウム83mgにジメチルアセトアミド3mlを加えて60℃に加熱攪拌した。この溶液に上記M−8(600mg)を滴下した。滴下終了後、80℃に加熱して5時間攪拌して反応を完結させた。反応終了後、反応液を水中に注ぎ塩酸酸性とした。析出した結晶を濾過して水洗した。この結晶をメタノールで加熱分散洗浄して乾燥した。この結晶をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:クロロホルム⇒クロロホルム/酢酸エチル=50/1)で分離精製した。残留物にメタノールを添加して析出した結晶を濾過して、メタノールで洗浄し乾燥した。I−10(220mg、収率:63.9%、黄色結晶)を得た。
【0090】
[二色性物質I−2、I−7、I−12、I−13およびI−15]
二色性物質I−2、I−7、I−12、I−13およびI−15は、上記二色性物質I−10の合成方法を参考にして、合成した。
【0091】
[二色性物質II−1の合成]
二色性物質II−1は、次のようにして合成した。
【0092】
【化14】
【0093】
<ステップ1 M−9の合成>
【0094】
【化15】
【0095】
p−アセチルアミノアニリン(東京化成社製)5.4g(0.036mol)に水13mlを加えて−5℃に冷却して攪拌した。この溶液に濃塩酸13mlを滴下した。次いで亜硝酸ナトリウム(和光純薬社製)2.61g(0.038mol)を水7mlに溶解した水溶液を滴下した。内温を−5℃〜5℃に保った。滴下終了後、0℃以下で1時間攪拌しジアゾニウム塩溶液を調整した。
オルトクロロフェノール(和光純薬社製)4.1g(0.035mol)に水50mlを加えて攪拌して溶解させた。この水溶液にNaOH7.0g(0.18mol)を加えて、0℃に冷却して攪拌した。この溶液に上記の方法で調整したジアゾニウム塩溶液を0℃〜5℃で滴下した。滴下終了後、5℃で1時間攪拌し、次いで室温で1時間攪拌して反応を完結させた。次に、この溶液に塩酸水溶液をゆっくりと添加し、中和して析出した結晶をろ別した。得られた租結晶を10%NaOH水溶液350mlに添加して、2時間加熱還流した。反応終了後、室温に冷却してから、塩酸水溶液を添加してpH=6.0にして、析出してきた結晶を濾過して、M−10を5.2g(収率:60.0%、褐色結晶)得た。
【0096】
<ステップ2 M−11の合成>
【0097】
【化16】
【0098】
M−10(5.2g、0.021mol)に水13mlを加えて−5℃に冷却して攪拌した。この溶液に濃塩酸13mlを滴下した。次いで亜硝酸ナトリウム(和光純薬社製)1.7g(0.024mol)を水4mlに溶解した水溶液を滴下した。内温を−5℃〜5℃に保った。滴下終了後、0℃以下で1時間攪拌しジアゾニウム塩溶液を調整した。
オルトクロロフェノール(和光純薬社製)3.1g(0.025mol)に水30mlを加えて攪拌して溶解させた。この水溶液にNaOH3.0g(0.12mol)を加えて、0℃に冷却して攪拌した。この溶液に上記の方法で調整したジアゾニウム塩溶液を0℃〜5℃で滴下した。滴下終了後、5℃で1時間攪拌し、次いで室温で1時間攪拌して反応を完結させた。次に、この溶液に塩酸水溶液をゆっくりと添加し、中和して析出した結晶をろ別し、M−11(5.8g、71%、褐色結晶)を得た。
【0099】
<ステップ3 II−1の合成>
【0100】
【化17】
【0101】
M−11(387mg、1mmol)、炭酸カリウム1g(7.2mmol)、沃化カリウム160mgにジメチルアセトアミド6mlを加えて60℃に加熱攪拌した。この溶液にブロモペンタン(東京化成製)0.9g(6mmol)を滴下した。滴下終了後、80℃に加熱して3時間攪拌して反応を完結させた。反応終了後、反応液を水中に注ぎ塩酸酸性とした。析出した結晶を濾過して水洗した。この結晶をメタノールに加熱分散洗浄して乾燥した。この結晶をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:クロロホルム、次いでクロロホルム/酢酸エチル=50/1の順序で使用)で分離精製した。残留物にメタノールを添加して析出した結晶を濾過して、メタノールで洗浄し乾燥した。このようにして、II−1(360mg、黄色結晶)を得た。
【0102】
[二色性物質II−4およびII−7]
二色性物質II−4およびII−7は、上記二色性物質II−1の合成方法を参考にして、合成した。
【0103】
[二色性物質H−1〜H−5]
二色性物質H−1〜H−5を準備した。
【0104】
上記の各二色性物質の構造、HOMOのエネルギー準位、ClogP値を以下に示す。なお、HOMOのエネルギー準位およびClogP値は、上述した方法により算出した。
【0105】
【化18】
【0106】
【化19】
【0107】
【化20】
【0108】
<二色性物質の耐光性>
二色性物質I−7、I−10、I−12およびH−1〜H−5について、吸光度がそれぞれ2.0となるように濃度を調整したクロロホルム溶液を、1cmのガラスセルに入れて、各測定用サンプルを得た。なお、吸光度の測定には、分光光度計(島津製作所社製、製品名UV−3600)を用いた。
各測定用サンプルを耐光性試験機(イーグルエンジニアリング社製、商品名「メリーゴーランド型耐光試験機」)にセットして、キセノンランプ光源から12万luxで200時間照射(積算光量2400万lux・h相当)の条件にて光を照射した。なお、キセノンランプ光源には、370nmの紫外線カットフィルターを装着した。
光照射後の各測定用サンプルの吸光度を測定して、各測定用サンプル中の二色性物質を以下の式によって分解率(%)を求めた。
分解率(%)=100×(照射後の吸光度/2.0)
各二色性物質の分解率と、HOMOのエネルギー準位との関係を図1に示す。
図1に示すように、HOMOのエネルギー準位が−5.60eV以下である二色性物質I−7、I−10およびI−12は、HOMOのエネルギー準位が−5.60eVよりも大きい二色性物質H−1〜H−5と比較して、光照射による二色性物質の分解率が顕著に低くなることがわかった。
【0109】
[実施例1]
以下のようにして作製した配向膜1上に、後述する実施例1の組成物を用いて光吸収異方性膜を作製した。
【0110】
<配向膜1の作製>
ガラス基材(セントラル硝子社製、青板ガラス、サイズ300mm×300mm、厚み1.1mm)をアルカリ洗剤で洗浄し、次いで純水を注いだ後、ガラス基材を乾燥させた。
下記の配向膜形成用組成物1を#12のバーを用いて乾燥後のガラス基材上に塗布し、塗布した配向膜形成用組成物1を110℃で2分間乾燥することにより、ガラス基材上に塗布膜を形成した。
得られた塗布膜にラビング処理(ローラーの回転数:1000回転/2.9mm、ステージ速度1.8m/分)を1回施して、ガラス基材上に配向膜1を作製した。
【0111】
―――――――――――――――――――――――――――――――――
配向膜形成用組成物1の組成
―――――――――――――――――――――――――――――――――
・変性ビニルアルコール(下記式(PVA−1)参照) 2.00質量部
・水 74.16質量部
・メタノール 23.78質量部
・光重合開始剤
(イルガキュア2959、BASF社製) 0.06質量部
―――――――――――――――――――――――――――――――――
【0112】
【化21】
【0113】
上記式(PVA−1)の繰り返し単位に付された数値は、各繰り返し単位のモル比率を表す。
【0114】
<光吸収異方性膜の作製>
得られた配向膜1上に、実施例1の組成物(下記組成を参照)を、スピンコーターを用いて、回転速度1000回転/30秒の条件でスピンコートした後、室温で30秒間乾燥させることで、配向膜1上に塗布膜を形成した。続いて、得られた塗布膜を180℃で15秒間加熱した後、室温に冷却して、配向膜1上に実施例1の光吸収異方性膜を作製した。
【0115】
―――――――――――――――――――――――――――――――――
実施例1の組成物の組成
―――――――――――――――――――――――――――――――――
・液晶性化合物A−1(下記式(A−1)) 4.81質量部
・二色性物質I−10(上記式(I−10)) 1.69質量部
・界面改良剤F1(下記式(F1)) 0.04質量部
・シクロペンタノン(溶媒) 93.46質量部
―――――――――――――――――――――――――――――――――
【0116】
[実施例2〜15、比較例1〜5]
組成物における液晶性化合物および二色性物質の種類または含有量を下記表1に示すように変更した以外は、実施例1と同様の方法で、配向膜1上に光吸収異方性膜を作製した。
なお、実施例2、3、5および6の光吸収異方性膜の作製に用いた組成物には、2種類の二色性物質を用いた。実施例1〜15および比較例1〜5で使用した成分の構造を以下に示す。
【0117】
【化22】
【0118】
【化23】
【0119】
<光吸収異方性膜の耐光性>
実施例1〜15および比較例1〜5の各光吸収異方性膜について、耐光性試験前後の二色比を測定することで、耐光性の評価を行った。耐光性試験後の二色比の低下が少ないほど、耐光性に優れることを示す。耐光性試験前後の二色比を下記表1に示す。
(二色比の測定方法)
光学顕微鏡(株式会社ニコン製、製品名「ECLIPSE E600 POL」)の光源側に直線偏光子を挿入した状態で、サンプル台に実施例および比較例の各光吸収異方性膜をセットし、マルチチャンネル分光器(Ocean Optics社製、製品名「QE65000」)を用いて400〜700nmの波長域における光吸収異方性膜の吸光度を測定し、以下の式により二色比を算出した。
二色比(D0)=Az0/Ay0
上記式において、「Az0」は光吸収異方性膜の吸収軸方向の偏光に対する吸光度を表し、「Ay0」は光吸収異方性膜の偏光軸方向の偏光に対する吸光度を表す。
(耐光性試験方法)
実施例および比較例の各光吸収異方性膜が形成されたガラス基材を、耐光性試験機(スガ試験機社製、商品名「キセノンウエザーメーターX25」)にセットして、ガラス基材における光吸収異方性膜の形成面に対して、キセノンランプ光源から12万luxで200時間(積算光量2400万lux・h相当)の条件にて光を照射した。なお、キセノンランプ光源には、370nmの紫外線カットフィルターを装着した。
【0120】
【表1】
【0121】
表1に示すように、HOMOのエネルギー準位が−5.60eV以下である二色性物質を用いると、耐光性に優れた光吸収異方性膜が得られることが示された(実施例1〜15)。
これに対して、HOMOのエネルギー準位が−5.60eVよりも大きい二色性物質を用いると、光吸収異方性膜の耐光性が低下することが示された(比較例1〜5)。
【0122】
[実施例16]
以下のようにして作製した配向膜2上に、後述する実施例16の組成物を用いて光吸収異方性膜を作製した。
【0123】
<配向膜2の作製>
透明基材フィルム(富士フイルム社製、セルロースアシレート系フィルム、商品名「フジタック TG40UL」)を準備して、ケン化処理により表面を親水化した後、下記の配向膜形成用組成物2を#12のバーを用いて透明基材フィルム上に塗布し、塗布した配向膜形成用組成物2を110℃で2分間乾燥することにより、透明基材フィルム上に配向膜2を形成した。
【0124】
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配向膜形成用組成物2の組成
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・変性ビニルアルコール(上記式(PVA−1)) 2.00質量部
・水 74.08質量部
・メタノール 23.76質量部
・光重合開始剤
(イルガキュア2959、BASF社製) 0.06質量部
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【0125】
<光吸収異方性膜の作製>
得られた配向膜2上に、実施例16の組成物(下記組成を参照)を、スピンコーターを用いて、回転速度1000回転/30秒の条件でスピンコートした後、室温で30秒間乾燥させることで、配向膜2上に塗布膜を形成した。続いて、得られた塗布膜を140℃で30秒間加熱した後、塗布膜が室温なるまで冷却した。次いで、塗布膜を80℃まで再加熱して30秒間保持した後、塗布膜を室温まで冷却した。このようにして、配向膜2上に実施例16の光吸収異方性膜を作製した。
【0126】
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実施例16の組成物の組成
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・二色性物質J−2(上記式(J−2)) 9.63質量部
・二色性物質I−10(上記式(I−10)) 7.92質量部
・液晶性化合物A−4(下記式(A−4)) 40.11質量部
・界面改良剤F2(下記式(F2)参照) 0.73質量部
・界面改良剤F3(下記式(F3)参照) 0.73質量部
・界面改良剤F4(下記式(F4)参照) 0.87質量部
・テトラヒドロフラン(溶媒) 799.0質量部
・シクロペンタノン(溶媒) 141.0質量部
・酸化剤(X−1)(下記式(X−1)参照) 0.87質量部
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【0127】
【化24】
【0128】
<光吸収異方性膜の耐光性>
実施例16の光吸収異方性膜の耐光性について、実施例1〜15および比較例1〜5と同様にして測定したところ、光照射前後の二色比がいずれも32であった。
このように、HOMOのエネルギー準位が−5.60eV以下である二色性物質を用いると、耐光性に優れた光吸収異方性膜が得られることが示された。
図1