(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記膜が、Si‐‐O‐‐C、Si‐‐O‐‐Si、Si‐‐C、Si‐‐F、Si‐‐H、C‐‐O、C‐‐H及びC‐‐Fから選択される結合型の1つ又はそれより多くを有する、請求項1に記載の化学気相堆積方法。
化学気相堆積条件が、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノン、窒素からなる群から選択される1種又はそれより多くの不活性ガスの使用を含む、請求項1に記載の化学気相堆積方法。
1種又はそれより多くの反応性物質が、ガス状又は液体有機物質、アンモニア、水素、二酸化炭素、一酸化炭素、フルオロカーボン及びこれらの混合物からなる群から選択される、請求項1に記載の化学気相堆積方法。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明を記載する文脈において(特に以下の特許請求の範囲の文脈において)、「1つの(a)」、「1つの(an)」及び「その(the)」という用語並びに同様の指示語の使用は、本開示で別段の指摘がないか又は文脈によって明確に否定されない限り、単数及び複数の両方を包含すると解されるべきである。「含む(comprising)」、「有する(having)」、「含む(including)」及び「含有する(containing)」という用語は、特に断りのない限り、オープンエンドの用語(すなわち、「含むが、制限されない」ことを意味する)として解されるべきである。本開示における値の範囲の記載は、本開示で別段の示唆がない限り、範囲内に含まれる各々の別個の値を個々に言及することの省略方法として機能することが意図されるに過ぎず、各々の別個の値は、それが本開示で個々に列挙されたかのように本明細書中に組み込まれる。本開示に記載の全ての方法は、本開示で別段の示唆がないか又は文脈によって明確に否定されない限り、任意の適切な順序で実施することができる。本開示で提供される任意の及び全ての例又は例示的な語(例えば「等(such as)」)の使用は、本発明をより明らかにすることを意図したものに過ぎず、特許請求の範囲に別段の記載がない限り、本発明の範囲に関する限定を与えるものではない。本明細書中の如何なる言語も、本発明の実施に必須であるように、特許請求の範囲に記載されていない任意の要素を示すものとして解釈されるべきではない。
【0016】
本発明の実施に関して本発明者らが知っているベストモードを含む本発明の好ましい実施形態を本開示に記載する。これらの好ましい実施形態の変形は、前述の記載を読んだ当業者に明らかになるであろう。本発明者らは、当業者がそのような変形を適切に採用することを期待し、本発明者らは本開示に具体的に記載された以外の方法で本発明を実施することを意図する。したがって、本発明は、適用法によって許容されるように、本開示に添付の特許請求の範囲に記載の主題のすべての修正形態および均等物を含む。さらに、そのすべての可能な変形形態における上記の要素の任意の組み合わせは、本開示中に別段の示唆がないか、文脈によって明確に否定されない限り、本発明に包含される。
【0017】
特許請求の範囲において、文字を用いることにより、請求される方法ステップ(例えばa、b及びc)を識別することができる。これらの文字は、方法ステップを参照することに役立つように用いられ、順序が具体的に特許請求の範囲に記載されていない限り、特許請求の範囲に具体的に記載された範囲内でのみ、請求されたステップが実施される順序を示すことは意図しない。
【0018】
1つの側面において、本開発は、真空チャンバ内に基材を与える工程と;
真空チャンバに式(I)及び式(II):
【0020】
(式中、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5及びR
6は、‐CH
3及び‐OR
8(R
8はC
1〜C
4アルキル基である。)からなる群から各々独立に選択され;R
7はH又は‐CH
3であり;xは1又は2であり;nは1、2、3又は4であり、nが1の場合少なくとも1つのR
7は‐CH
3である。)
からなる群から選択される少なくとも1種の有機シリコン前駆体を含むガス状シリコン含有組成物を導入する工程と;
真空チャンバにおいてガス状構造形成組成物にエネルギーを適用することにより、少なくとも1種の有機シリコン前駆体の反応を誘起して基材の少なくとも一部に膜を堆積させる工程と
を含む、基材の少なくとも一部に有機シリケート膜を堆積させる方法を提供する。
【0021】
分子シミュレーションを用いて高密度シリコン酸化物における機械的特性への炭素架橋(Si‐C
xH
y‐Si)の予測される影響を評価した。Si‐C
xH
y‐Si架橋で置換されたSi‐O‐Si架橋の種々の割合の影響を評価するために、O原子を架橋炭素でランダムに置き換えて同様の分子動力学シミュレーションを実施した。
図1は、これらのMDシミュレーションに関して、Si‐CH
2‐Si架橋及び他の調べられたSi‐C
xH
y‐Si架橋と比較して、Si‐CH(CH
3)‐Si及びSi‐C(CH
3)
2‐Si架橋でバルク弾性率が著しく増加することを示す。Si‐C(CH
3)
2‐Si架橋が、Si‐CH
2‐Si架橋に対して部分的なO置換の関数として最も高いバルク弾性率増加を示したことは注目すべきである。さらに、Si‐O‐Si結合開裂による末端メチル基(Si‐CH
3 CH
3‐Si)の形成もシミュレーションされ、これらの置換基はSi‐O‐Si架橋の増加した部分置換の関数として機械強度の最も強い低下を示した。
【0022】
いかなる特定の理論にも束縛されることは望まないが、このモデリングから、架橋が自由に回転したり容易に振動したりすることができないように、2つのケイ素原子を連結する炭素鎖へのメチル基の付加が、架橋炭素の移動の自由度を排除すると考えられる。この自由度の排除を前提として、架橋が所定の位置に「固定」され、機械的特性が増加する。
【0023】
本発明の方法により堆積される有機シリケート膜は、炭素ドープシリコン酸化物膜からなる群から選択される。組成物は、予混合組成物、予混合物(堆積プロセスにおいて用いられる前に混合されている)、又はインサイチュー混合物(堆積プロセス中に混合される)であることができる。したがって、本開示において、用語「混合物」、「配合物」及び「組成物」は置き換え可能である。
【0024】
本開発の方法において、典型的には、第一の工程は、少なくとも1つの表面特徴を含む基材を約−20℃〜約600℃の温度の反応器内に置くことである。好適な基材としては、以下に制限されるものではないが、ガリウムヒ素(「GaAs」)、窒化ホウ素(「BN」)シリコン等の半導体材料、結晶シリコン、ポリシリコン、アモルファスシリコン、エピタキシャルシリコン、二酸化ケイ素(「SiO
2」)、炭化ケイ素(「SiC」)、シリコンオキシカーバイド(「SiOC」)、窒化ケイ素(「SiN」)、炭窒化ケイ素(「SiCN」)、有機シリケートガラス(「OSG」)、有機フルオロシリケートガラス(「OFSG」)、フルオロシリケートガラス(「FSG」)等のケイ素を含有する組成物、及び他の適切な基材又はこれらの混合物が挙げられる。基材は、膜が適用される種々の層、例えば反射防止コーティング、フォトレジスト、有機ポリマー、多孔質有機材料、多孔質無機材料、銅、コバルト、ルテニウム、タングステン、ロジウム及びアルミニウム等の金属又は拡散障壁層、例えばTiN、Ti、Ti(C)N、TaN、Ta(C)N、Ta、W、WN、TiSiN、TaSiN、SiCN、TiSiCN、TaSiCN又はW(C)N等をさらに含むことができる。基材は、単結晶シリコンウェハ、炭化ケイ素のウェハ、酸化アルミニウム(サファイア)のウェハ、ガラスのシート、金属箔、有機ポリマー膜であることができ、またはポリマー製、ガラス、シリコン又は金属製の三次元物品であることができる。シリコン酸化物、シリコン窒化物、アモルファス炭素、シリコンオキシカーバイド、シリコン酸窒化物、炭化ケイ素、ガリウムヒ素、窒化ガリウムなどの膜を含む当分野でよく知られている種々の材料で基材をコーティングすることができる。これらのコーティングは基材を完全にコーティングすることができ、種々の材料の複数層にすることができ、部分的にエッチングして下層の材料を露出させることができる。表面は、その上にパターンで露光され、基材を部分的にコーティングするように現像されたフォトレジスト材料を有することもできる。
【0025】
本開示に開示された方法についての好適な堆積プロセスの例としては、以下に制限されるものではないが、熱化学気相堆積(CVD)、プラズマ増強CVD(PECVD)、原子層堆積(ALD)又はプラズマ増強サイクリックCVD(PECCVD)プロセスが挙げられる。1つの実施態様において、膜はプラズマ系(例えば遠隔生成又はインサイチュー)CVDプロセスを用いて堆積される。本開示で用いられる用語「反応器」としては、以下に制限されるものではないが、反応チャンバ又は堆積チャンバが挙げられる。
【0026】
ある実施態様において、基材に、以下に制限されるものではないが、プラズマ処理、熱処理、化学処理、紫外光露光、電子ビーム露光及びこれらの組み合わせ等の1つ又はそれより多くの予堆積処理を施すことにより、1つ又はそれより多くの膜の特性に影響を与えることができる。これらの予堆積処理は、不活性、酸化性及び/又は還元性から選択される雰囲気下で行うことができる。
【0027】
本開示で用いられる化学試薬は、時には「ガス状」と記述されることができるが、化学試薬は、ガスとして反応器に直接的に輸送され、窒素、ヘリウム又はアルゴン、昇華性固体からの蒸気等のキャリアガスを用いて気化性液体又はバブリング液体からの蒸気として輸送され、および/または不活性キャリアガスにより反応器に移送されることができることが理解される。
【0028】
好ましい実施態様において、本方法により堆積された有機シリケート膜は、約2.8〜約3.1の誘電率を有し、MTS Nano Indenterを用いて測定された約3.2〜約4.5ギガパスカル(GPa)の硬度を有する高密度有機シリケートガラス(OSG)膜である。これは、典型的には約3.8〜約4.2の誘電率と約7GPaの硬度を有する二酸化ケイ素膜に対して誘電率の大きな低下である。
【0029】
本開発の方法は、真空チャンバに式(I)及び式(II):
【0031】
(式中、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5及びR
6は、‐CH
3及び‐OR
8(R
8はC
1〜C
4アルキル基である。)からなる群から各々独立に選択され;R
7はH又は‐CH
3であり;xは1又は2であり;nは1、2、3又は4であり、nが1の場合少なくとも1つのR
7は‐CH
3である。)
からなる群から選択される少なくとも1種の有機シリコン前駆体を含むガス状構造形成組成物を導入する工程と;真空チャンバにおいてガス状構造形成組成物にエネルギーを適用することにより、少なくとも1種の有機シリコン前駆体の反応を誘起して基材の少なくとも一部に膜を堆積させる工程とを含む。
【0032】
上記の式及び本明細書を通して、用語「アルキル」は、1〜10個、3〜10個又は1〜6つの炭素原子を有する直鎖又は分岐鎖の官能基を意味する。例示的な直鎖アルキル基としては、以下に制限されるものではないが、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル及びヘキシル基が挙げられる。例示的な分岐鎖アルキル基としては、以下に制限されるものではないが、イソプロピル、イソブチル、sec‐ブチル、tert‐ブチル、isо‐ペンチル、tert‐ペンチル、シクロペンチル、イソヘキシル、シクロヘキシル及びネオヘキシルが挙げられる。ある実施態様において、アルキル基は、以下に制限されるものではないが、それに結合したアルコキシ基、ジアルキルアミノ基又はこれらの組み合わせ等の1つ又はそれより多くの置換官能基を有することができる。他の実施態様において、アルキル基は、それに結合した1つ又はそれより多くの官能基を有さない。アルキル基は、飽和でも不飽和でもよい。本開示で用いられる用語「置換」は、例えば水素原子の代わりに置換された1つ又はそれより多くの原子又は原子団を指す。
【0033】
ある実施態様において、上記の式における置換基R
1、R
2、R
3、R
4、R
5及びR
6の任意の1つ又はそれより多くは、これらが水素ではないときは、上記の式においてC‐C結合で結合されて環構造を形成することができる。当業者が理解するように、直鎖又は分岐鎖C
1〜C
10アルキレン部分;C
2〜C
12アルケニレン部分;C
2〜C
12アルキニレン部分;C
4〜C
10環状アルキル部分;及びC
6〜C
10アリーレン部分から置換基を選択することができる。これらの実施態様において、環構造は、例えば環状アルキル環等の不飽和又は飽和の例えばアリール環であることができる。さらに、これらの実施態様において、環構造は置換され、または置換されることもできる。他の実施態様において、置換基R
1、R
2、R
3、R
4、R
5及びR
6の任意の1つ又はそれより多くは結合されていない。
【0034】
式Iの化合物の例としては、1,1,1,3,3‐ペンタメトキシ‐2‐メチル‐1,3‐ジシラブタン(PMOM‐DSB)
【0036】
、1,2‐ビス(メチルジメトキシシリル)エタン、1,2‐ビス(トリメトキシシリル)エタン、1,2‐ビス(ジメトキシシリル)エタン、1,1‐ビス(トリメトキシシリル)エタン、1,1‐ビス(メチルジメトキシシリル)エタン、1,1‐ビス(ジメトキシシリル)エタン、ジメチルビス(トリメトキシシリル)メタン、ジメチルビス(メチルジメトキシシリル)メタン、ジメチルビス(ジメトキシシリル)メタン、1,1,1,3,3‐ペンタエトキシ‐2‐メチル‐1,3‐ジシラブタン、1,2‐ビス(メチルジエトキシシリル)エタン、1,2‐ビス(トリエトキシシリル)エタン、1,2‐ビス(ジエトキシシリル)エタン、1,1‐ビス(トリエトキシシリル)エタン、1,1‐ビス(メチルジエトキシシリル)エタン、1,1‐ビス(ジエトキシシリル)エタン、ジメチルビス(トリエトキシシリル)メタン、ジメチルビス(メチルジエトキシシリル)メタン及びジメチルビス(ジエトキシシリル)メタンが挙げられる。
【0037】
式IIの化合物の例としては、1,1,3,3‐テトラメトキシ‐1,3‐ジシラシクロブタン、1,3‐ジメトキシ‐1,3‐ジメチル‐1,3‐ジシラシクロブタン、1,3‐ジメトキシ‐1,3‐ジシラシクロブタン、1,3,3‐トリメトキシ‐1‐メチル‐1,3‐ジシラシクロブタン、1,3‐ジメトキシ‐1‐メチル‐ジシラシクロブタン、1,1‐ジメトキシ‐1,3‐ジシラシクロブタン、1,1,4,4‐テトラメトキシ‐1,4‐ジシラシクロヘキサン、1,4‐ジメトキシ‐1,4‐ジメチル‐1,4‐ジシラシクロヘキサン、1,4‐ジメトキシ‐1,4‐ジシラシクロヘキサン、1,4,4‐トリメトキシ‐1‐メチル‐1,4‐ジシラシクロヘキサン、1,4‐ジメトキシ‐1‐メチル‐ジシラシクロヘキサン、1,1‐ジメトキシ‐1,4‐ジシラシクロヘキサン、1,1,3,3‐テトラエトキシ‐1,3‐ジシラシクロブタン、1,3‐ジエトキシ‐1,3‐ジメチル‐1,3‐ジシラシクロブタン、1,3‐ジエトキシ‐1,3‐ジシラシクロブタン、1,3,3‐トリエトキシ‐1‐メチル‐1,3‐ジシラシクロブタン、1,3‐ジエトキシ‐1‐メチル‐ジシラシクロブタン、1,1‐ジエトキシ‐1,3‐ジシラシクロブタン、1,1,4,4‐テトラエトキシ‐1,4‐ジシラシクロヘキサン、1,4‐ジエトキシ‐1,4‐ジメチル‐1,4‐ジシラシクロヘキサン、1,4‐ジエトキシ‐1,4‐ジシラシクロヘキサン、1,4,4‐トリエトキシ‐1‐メチル‐1,4‐ジシラシクロヘキサン、1,4‐ジエトキシ‐1‐メチル‐ジシラシクロヘキサン及び1,1‐ジエトキシ‐1,4‐ジシラシクロヘキサンが挙げられる。
【0038】
ある実施態様において、異なる有機シリコン前駆体の混合物が組み合わせて用いられる。
【0039】
本開示で記載される有機シリコン前駆体化合物を種々の方法でCVD又はALD反応器等の反応チャンバに輸送することができる。1つの実施態様において、液体輸送システムを使用することができる。別の実施態様において、例えばミネソタ州ショアビューのMSPコーポレーションにより製造されたターボ気化器等の複合の液体輸送及びフラッシュ気化プロセスユニットを用いて、低揮発性材料を体積輸送することを可能にすることができ、このことは、前駆体の熱分解なく、再現可能な輸送及び堆積をもたらす。液体輸送配合物において、本開示で記載される前駆体をニートの液体形態において輸送することができ、または溶媒配合物又はそれを含む組成物において用いることができる。したがって、ある実施態様において、前駆体配合物は、基材に膜を形成するように、所与の最終用途において望ましく、有利であり得るような適切な性質の1種又は複数種の溶媒成分を含むことができる。
【0040】
有機シリコン前駆体化合物は、塩化物等のハロゲン化物イオン又はAl等の金属イオンを好ましくは実質的に含まない。本開示で用いられる用語「実質的に含まない」は、例えば塩化物及びフッ化物、臭化物、ヨウ化物等のハロゲン化物イオン(又はハロゲン化物)、Al
3+イオン、Fe
2+、Fe
3+、Ni
2+、Cr
3+に関する場合、5ppm(質量)未満、好ましくは3ppm未満、より好ましくは1ppm未満、最も好ましくは0ppmを意味する。本開示で用いられる用語「含まない」は、係るハロゲン化物イオンに関する場合、0ppmであることを意味する。塩化物又は金属イオンは、シリコン前駆体の分解触媒として働くことが知られている。最終生成物中のかなりの量の塩化物は、有機シリコン前駆体の劣化を引き起こす可能性がある。有機シリコン前駆体の緩やかな劣化は、膜堆積プロセスに直接的に影響を及ぼす場合があり、半導体製造者が膜仕様を満たすことを困難にし得る。加えて、保存可能期間又は安定性は、有機シリコン前駆体のより高い劣化速度により悪影響を受け、それによって1〜2年の保存可能期間を保証することが困難になる。さらに、有機シリコン前駆体は、分解時に水素及びシラン等の可燃性及び/又は自然発火性のガスを形成することが知られている。したがって、有機シリコン前駆体の加速された分解は、これらの可燃性及び/又は自然発火性のガス状副生成物の形成に関連する安全性及び性能上の懸念を示す。
【0041】
ハロゲン化物を実質的に含まない本発明に係る有機シリコン前駆体は、最終的に精製された生成物が実質的に塩化物を含まないように(1)化学合成中に塩化物源を低減し、または除去すること及び/又は(2)粗生成物から塩化物を除去する効果的な精製プロセスを実施することにより達成することができる。クロロジシラン、ブロモジシラン又はヨードジシラン等のハロゲン化物を含有しない試薬を用いることにより、合成中の塩化物源を低減することができ、それによってハロゲン化物イオンを含有する副生成物の生成を回避する。加えて、得られる粗生成物が塩化物不純物を実質的に含まないように、前述の試薬は、塩化物不純物を実質的に含まないのがよい。同様に、合成は、ハロゲン化物系溶媒、触媒又は許容できないほど高濃度のハロゲン化物汚染を含有する溶媒を使用すべきでない。種々の精製方法により粗生成物を処理して、塩化物等のハロゲン化物を実質的に含まない最終生成物を与えることもできる。係る方法は、先行技術においてよく記載され、以下に制限されるものではないが、例として蒸留又は吸着等の精製プロセスを挙げることができる。蒸留は、沸点の違いを利用することによって所望の生成物から不純物を分離するために一般的に用いられる。また吸着は、成分の異なる吸着特性を利用して、最終生成物がハロゲン化物を実質的に含まないように分離を達成することができる。例えば市販で入手可能なMgO‐Al
2O
3ブレンド等の吸着剤を用いて、塩化物等のハロゲン化物を除去することができる。
【0042】
1種又は複数種の溶媒と、本開示に記載される少なくとも1種の有機シリコン前駆体化合物とを含む組成物に関するこれらの実施態様について、選択される溶媒又はこれらの混合物は、有機シリコン化合物と反応しない。組成物中の質量パーセントによる溶媒の量は、0.5質量%〜99.5質量%、又は10質量%〜75質量%の範囲である。この又は他の実施態様において、溶媒は式I及びIIの前駆体の沸点(b.p.)と類似のb.p.を有し、または溶媒のb.p.と式I及びIIの有機シリコン前駆体のb.p.との差は40℃以下、30℃以下、又は20℃以下、10℃以下、又は5℃以下である。代わりに、沸点間の差は、以下の端点:0、10、20、30、又は40℃の任意の1つ又はそれより多くからの範囲である。b.p.差の好適な範囲の例としては、制限されるものではないが、0℃〜40℃、20℃〜30℃又は10℃〜30℃が挙げられる。組成物における好適な溶媒の例としては、以下に制限されるものではないが、エーテル(1,4‐ジオキサン、ジブチルエーテル等)、第三級アミン(ピリジン、1‐メチルピペリジン、1‐エチルピペリジン、N,N’‐ジメチルピペラジン、N,N,N’,N’‐テトラメチルエチレンジアミン等)、ニトリル(ベンゾニトリル等)、アルキル炭化水素(オクタン、ノナン、ドデカン、エチルシクロヘキサン等)、芳香族炭化水素(トルエン、メシチレン等)、第三級アミノエーテル(ビス(2‐ジメチルアミノエチル)エーテル等)又はこれらの混合物が挙げられる。
【0043】
1つの特定の実施態様において、少なくとも1種の有機シリコン前駆体化合物を反応器に導入する工程は、−20℃〜1000℃又は約400℃〜約1000℃又は約400℃〜約600℃又は約−20℃〜約400℃の範囲の1つ又はそれより多くの温度で実施される。これらの又は他の実施態様において、基材は、表面特徴を含む半導体基材を含む。
【0044】
酸素(O
2)、オゾン(O
3)、亜酸化窒素(N
2O)、一酸化窒素(NO)、二酸化窒素(NO
2)、四酸化二窒素(N
2O
4)及び/又は過酸化水素(H
2O
2)等の酸化剤を任意選択的に加えることができるが、有機シリコン前駆体が酸素及びSiO結合を含有する場合は必要ではない場合がある。
【0045】
1種又はそれより多くのフッ素供給ガスを反応又は後処理において添加剤として用いることができる。フッ素供給ガスの例は、NF
3、F
2、CF
4、C
2F
6、C
4F
6及びC
6F
6である。
【0046】
有機シリコン前駆体及び任意選択的な酸素供給ガス及びフッ素供給ガスに加えて、堆積反応の前、最中及び/又は後に追加の材料を真空チャンバ内に入れることができる。係る材料としては、ガス状又は液体有機物質、NH
3、H
2、CO
2、CO又はフルオロカーボン等の反応性物質が挙げられる。有機物質の例は、CH
4、C
2H
6、C
2H
4、C
2H
2、C
3H
8、シクロペンタン、シクロオクタン、アレン、プロピレン、アルファ‐テルピネン、パラ‐シメン、ベンゼン、ナフタレン、トルエン及びスチレンである。
【0047】
試薬(すなわち有機シリコン前駆体、酸化剤等)は、別個の供給源から別々に、又は混合物として反応器に運搬することができる。多くの手段、好ましくは液体のプロセス反応器への輸送を可能にする適切なバルブ及び付属品を取り付けられた加圧可能なステンレススチール容器を用いて、試薬を反応器システムに輸送することができる。
【0048】
ある実施態様において、例えば式Iの少なくとも1種及び式IIの少なくとも1種等の異なる有機シリコン前駆体の混合物を組み合わせて用いた。
【0049】
ガス状試薬にエネルギーを適用することによりガスを誘起して反応させ、基材の少なくとも一部に膜を形成させる。係るエネルギーを、例えば熱、プラズマ、パルスプラズマ、ヘリコンプラズマ、高密度プラズマ、誘導結合プラズマ及び遠隔プラズマ法により供給することができる。二次rf周波源を用いて基材表面におけるプラズマ特性を修正することができる。好ましくは、膜はプラズマ増強化学気相堆積により形成される。13.56MHzの周波数にて容量結合プラズマを発生させるのが特に好ましい。プラズマ出力は、基材の表面積に基づいて、好ましくは0.02〜7ワット/cm
2、より好ましくは0.3〜3ワット/cm
2である。低いイオン化エネルギーを有するキャリアガスを用いてプラズマ中の電子温度を下げることは有利である場合があり、このことは、次にOSG前駆体及びポロゲンにおけるフラグメンテーションを減らすであろう。この種類の低イオン化ガスの例としては、CO
2、NH
3、CO、CH
4、Ar、Xe及びKrが挙げられる。
【0050】
幾つかの実施態様において、エネルギーがプラズマエネルギーである場合、プラズマ源は、以下に制限されるものではないが、炭化水素プラズマ、炭化水素とヘリウムとを含むプラズマ、炭化水素とアルゴンとを含むプラズマ、二酸化炭素プラズマ、一酸化炭素プラズマ、炭化水素と水素とを含むプラズマ、炭化水素と窒素源とを含むプラズマ、炭化水素と酸素源とを含むプラズマ及びこれらの混合物などの炭素源プラズマからなる群から選択される。
【0051】
ガス状試薬の各々の流速は、200mmシングルウェハ当たり、好ましくは10〜5000sccm、より好ましくは30〜1000sccmの範囲である。個々の速度は、膜中の構造形成剤及び細孔形成剤の所望量を提供するように選択される。必要とされる実際の流速は、ウェハサイズとチャンバ構造に依存する場合があり、決して200mmウェハ又はシングルウェハチャンバに制限されない。
【0052】
幾つかの実施態様において、膜は50〜250nm/分の速度にて堆積される。
【0053】
堆積中の真空チャンバ内の圧力は、好ましくは0.01〜600tоrr、より好ましくは1〜15tоrrである。
【0054】
厚さは要求に応じて変えることができるが、膜は好ましくは0.002〜10ミクロンの厚さに堆積される。パターン化されていない表面に堆積されたブランケット膜は、妥当な端部除外(例えば基材の5mmの最も外側の端部は均一性の統計的計算には含まれない。)で、基材に亘って1標準偏差で2%未満の厚さ変動での優れた均一性を有する。
【0055】
いかなる特定の理論にも束縛されることは意図しないが、メチレン又はエチレン架橋を有する式I及び式IIのもの等のジシロキサン前駆体を用いることにより、Si‐O‐Si基架橋を炭素架橋で置換することができ、このことが、硬度を維持しつつ、純粋なSiO
2ネットワークの誘電率を低下させると考えられる。
【0056】
インサイチュー又は後堆積処理により、硬度、(収縮、大気曝露、エッチング、湿式エッチング等に対する)安定性、完全性、均一性及び接着性などの材料特性を向上させることができる。係る処理を、ポロゲン除去のために用いられるのと同じ又は異なる手段を用いて、ポロゲン除去の前、最中及び/又は後に膜に適用することができる。したがって、本開示で用いられる用語「後処理」は、エネルギー(例えば熱、プラズマ、光子、電子、マイクロ波等)又は化学品により膜を処理してポロゲンを除去すること、及び任意選択的に材料特性を向上させることを意味する。
【0057】
後処理を実施する条件は、大きく変更することができる。例えば、後処理を高圧力下又は減圧雰囲気下で実施することができる。
【0058】
熱的アニールは、以下の条件下で実施される。環境は不活性(例えば窒素、CO
2、希ガス(He、Ar、Ne、Kr、Xe)等)、酸化性(例えば酸素、空気、希薄酸素環境、濃厚酸素環境、オゾン、亜酸化窒素等)又は還元性(希薄又は濃縮水素、炭化水素(飽和、不飽和、直鎖又は分岐鎖、芳香族)等)であることができる。圧力は、好ましくは約1Torr〜約1000Torr、より好ましくは大気圧である。しかし、熱的アニール及び任意の他の後処理手段に関して減圧雰囲気も可能である。温度は好ましくは200〜500℃であり、昇温速度は0.1〜100℃/分である。全アニール時間は、好ましくは0.01分〜12時間である。
【0059】
フッ素化(HF、SiF
4、NF
3、F
2、COF
2、CO
2F
2等)、酸化(H
2O
2、O
3等)、化学的乾燥、メチル化又は最終的な材料の特性を向上させる他の化学的処理を用いて、OSG膜の化学的処理も実施することができる。係る処理で用いられる化学品は、固体、液体、ガス状及び/又は超臨界流体状態であることができる。
【0060】
ある実施態様において、OSG膜は、アニール、好ましくは熱又は放射(すなわち光アニール)によるアニールに供される。これらの実施態様において、光アニールは以下の条件下で実施される。環境は不活性(例えば窒素、CO
2、希ガス(He、Ar、Ne、Kr、Xe)等)、酸化性(例えば酸素、空気、希薄酸素環境、濃厚酸素環境、オゾン、亜酸化窒素等)又は還元性(例えば希薄又は濃縮炭化水素、水素、アンモニア等)であることができる。出力は、0〜5000Wの範囲であることができる。波長は、好ましくはIR、可視、UV又は深UV(波長<200nm)である。温度は、環境温度〜500℃の範囲であることができる。圧力は、10mtоrr〜大気圧の範囲であることができる。全キュア時間は、0.01分〜12時間の範囲であることができる。
【0061】
OSGの化学修飾のためのプラズマ処理は、以下の条件下で実施される。環境は不活性(窒素、CO
2、希ガス(He、Ar、Ne、Kr、Xe)等)、酸化性(例えば酸素、空気、希薄酸素環境、濃厚酸素環境、オゾン、亜酸化窒素等)又は還元性(例えば希薄又は濃縮水素、炭化水素(飽和、不飽和、直鎖又は分岐鎖、芳香族)、アンモニア等)であることができる。プラズマ出力は、好ましくは0〜5000Wである。温度は、好ましくは環境温度〜500℃である。圧力は、好ましくは10mtоrr〜大気圧である。全キュア時間は、好ましくは0.01分〜12時間である。
【0062】
マイクロ波後処理は、以下の条件下で実施される。環境は不活性(例えば窒素、CO
2、希ガス(He、Ar、Ne、Kr、Xe)等)、酸化性(例えば酸素、空気、希薄酸素環境、濃厚酸素環境、オゾン、亜酸化窒素等)又は還元性(例えば希薄又は濃縮炭化水素、水素等)であることができる。温度は、好ましくは環境温度〜500℃である。出力及び波長は様々で、特定の結合に合わせて調整することができる。全キュア時間は、好ましくは0.01分〜12時間である。
【0063】
電子ビーム後処理は、以下の条件下で実施される。環境は減圧、不活性(例えば窒素、CO
2、希ガス(He、Ar、Ne、Kr、Xe)等)、酸化性(例えば酸素、空気、希薄酸素環境、濃厚酸素環境、オゾン、亜酸化窒素等)又は還元性(例えば希薄又は濃縮炭化水素、水素等)であることができる。温度は、好ましくは環境温度〜500℃である。電子密度及びエネルギーは様々で、特定の結合に合わせて調整することができる。全キュア時間は、好ましくは0.001分〜12時間であり、連続又はパルスであることができる。電子ビームの一般的な使用に関するさらなる手引きは、S.Chattopadhyayら、Journal of Materials Science、36(2001)4323‐4330;G.Klosterら、Proceedings of IITC、June3‐5、2002、SF、CA;及びU.S.Pat.Nos.6,207,555B1、6,204,201B1及び6,132,814A1等の公表文献において入手可能である。電子ビーム処理の使用により、ポロゲン除去及びマトリックス中での結合形成プロセスを介した膜の機械的特性の向上を提供することができる。
【0064】
本発明は、以下の例を参照してより詳細に説明されるが、本発明はそれに制限されないことを理解されたい。
【実施例】
【0065】
例
【0066】
OSG前駆体からの高密度OSG堆積‐基本手順
例示的な膜は、種々の異なる化学前駆体及びプロセス条件からAdvance Energy200rfジェネレータを取り付けた200mmDxZ真空チャンバにおいて、Applied Materials Precision‐5000システムを用いたプラズマ増強CVDプロセスによって形成された。CVDプロセスは、概して以下の基本工程を含んでいた:ガス流の初期セットアップ及び安定化と、堆積と、ウェハ取り出しの前のチャンバのパージ/排気。ウェハを<10tоrrの圧力かつ<400℃の温度にてヘリウムガス流下で保持しつつ、広域帯UV電球を備えたFusion UVシステムを用いてUVアニールを実施した。
【0067】
厚さ及び屈折率は、SCI Filmtek2000Reflectometerで測定された。誘電率は、中抵抗率のp型ウェハ上でHgプローブ法により決定された(8〜12оhm‐cmの範囲)。FTIRスペクトルは、Nicholet Nexxus470FTIR分光計を用いて測定された。機械的特性は、MTS Nano Indenterを用いて決定された。組成データは、Physical Electronics5000LSでx線光電子分光法(XPS)により得られた。表中で報告された原子%値は、水素を含まない。
【0068】
比較例1:BDMMSMからの高密度OSGの堆積
OSG膜は、以下のレシピを用いて堆積された:1000mg/分の1,2‐ビス(ジメトキシメチルシリル)メタンがDLIを介してチャンバに輸送され、800Wのプラズマが適用された(200sccmのHeキャリアガス流、20sccmのO
2流、350ミリインチのシャワーヘッド/ウェハ間隔、350℃のウェハチャック温度、7Torrのチャンバ圧)。得られた高密度OSG膜を、次いで4分間UVアニールし、膜を機械的に向上させた。得られた膜は以下の特性を有していた:1MHzにおける誘電率は3.09であった。弾性率23.6GPa、硬度3.93GPa、632nmにおける屈折率は1.476であった。XPSにより測定された元素組成は23.0%C、43.7%O、33.3%Siであった。
【0069】
例1:PMOM‐DSPからの高密度OSG膜の堆積
OSG膜は、以下のレシピを用いて堆積された:1200mg/分の1,1,1,3,3‐ペンタメトキシ‐
2‐メチル‐1,3ジシラペンタン(PMOM‐DSP)がDLIを介してチャンバに輸送され、600Wのプラズマが適用された(200sccmのHeキャリアガス流、20sccmのO
2流、350ミリインチのシャワーヘッド/ウェハ間隔、400℃のウェハチャック温度、7Torrのチャンバ圧)。得られた高密度OSG膜を、次いで4分間UVアニールし、膜を機械的に向上させた。得られた膜は以下の特性を有していた:1MHzにおける誘電率は3.23であった。弾性率24.9GPa、硬度4.13GPa、632nmにおける屈折率は1.451であった。XPSにより測定された元素組成は17.6%C、48.4%O、34.2%Siであった。
【0070】
例2:1,2‐ビス(メチルジメトキシシリル)エタン(BDMMSE)からの高密度OSG膜の堆積
OSG膜は、以下のレシピを用いて堆積された:800mg/分の1,2‐ビス(ジメトキシメチルシリル)エタン(BDMMSE)がDLIを介してチャンバに輸送され、600Wのプラズマが適用された(200sccmのHeキャリアガス流、100sccmのO
2流、350ミリインチのシャワーヘッド/ウェハ間隔、325℃のウェハチャック温度、7Torrのチャンバ圧)。得られた高密度OSG膜を、次いで4分間UVアニールし、膜を機械的に向上させた。得られた膜は以下の特性を有していた:1MHzにおける誘電率は3.15であった。弾性率27.7GPa、硬度4.62GPa、632nmにおける屈折率は1.430であった。
【0071】
分子シミュレーションを用いて高密度シリコン酸化物における機械的特性への架橋炭素(Si‐C
xH
y‐Si)の予測される影響を評価した。周期的境界条件を用いる古典的分子動力学(MD)シミュレーションをBioVia Materials Studio7.0ソフトウェアにおいてForciteモジュールを用いて実施した。COMPASS力場を用いて、306個のSi原子と612個のO原子とで構成された周期的な単位格子を実験的なa‐クオーツx線結晶構造(cr‐SiO
2)から作製した。この結晶構造から結合を除去し、次いでこの系をNPTアンサンブルを用いて一連の一定温度、圧力及び数多くの原子MDシミュレーションでアニールしてアモルファスSiO
2マトリクス(a‐SiO
2)を作り出した。結合をa‐SiO
2マトリクスに戻し、MDシミュレーションを用いて平衡密度を計算した。次いで、平衡a‐SiO
2単位格子をMDシミュレーションにより異なる等方圧力にて圧縮した。三次バーチ‐マンナハン状態方程式及びa‐SiO
2マトリクスの圧力の関数としての体積のMDシミュレーション結果を用いてバルク弾性率を回帰した。
【0072】
種々の割合のSi‐C
xH
y‐Si架橋で置換されたSi‐O‐Si架橋の影響を評価するために、O原子を架橋炭素でランダムに置換して同様のMDシミュレーションを実施した。
図1は、これらのMDシミュレーションに関して、Si‐CH
2‐Si架橋及び他の調べられたSi‐C
xH
y‐Si架橋と比較して、Si‐CH(CH
3)‐Si及びSi‐C(CH
3)
2‐Si架橋でバルク弾性率が著しく増加することを示す。Si‐C(CH
3)
2‐Si架橋が、Si‐CH
2‐Si架橋に対して部分的なO置換の関数として最も高いバルク弾性率増加を示したことは注目すべきである。さらに、Si‐O‐Si結合開裂による末端メチル基(Si‐CH
3 CH
3‐Si)の形成もシミュレーションされ、これらの置換基はSi‐O‐Si架橋の増加した部分置換の関数として機械強度の最も強い低下を示した。
【0073】
本発明の原理を好ましい実施態様に関連して上述してきたが、この記載は単に例としてなされたものであり、本発明の範囲を制限するものではないことを明確に理解されたい。
本発明は、以下の態様を含んでいる。
(1)真空チャンバ内に基材を与える工程と;
前記真空チャンバに式(I)及び式(II):
【化5】
(式中、R1、R2、R3、R4、R5及びR6は、‐CH3及び‐OR8(R8はC1〜C4アルキル基である。)からなる群から各々独立に選択され;
R7はH又は‐CH3であり;
xは1又は2であり;
n
は1、2、3又は4であり、nが1の場合少なくとも1つのR7は‐CH3である。)
からなる群から選択される少なくとも1種の有機シリコン前駆体を含むガス状構造形成組成物を導入する工程と;
前記真空チャンバにおいて前記ガス状構造形成組成物にエネルギーを適用することにより、前記少なくとも1種の有機シリコン前駆体の反応を誘起して前記基材の少なくとも一部に膜を堆積させる工程と
を含む、基材の少なくとも一部に有機シリケート膜を堆積させる化学気相堆積方法。
(2)前記膜が2.8〜3.5の誘電率を有する、(1)に記載の化学気相堆積方法。
(3)前記エネルギーがプラズマエネルギーである、(1)に記載の化学気相堆積方法。
(4)前記膜を、UV照射を含む後処理に供する工程をさらに含む、(1)に記載の化学気相堆積方法。
(5)前記膜が2.8〜3.5の誘電率を有する、(4)に記載の化学気相堆積方法。
(6)前記膜を、熱を含む後処理に供する工程をさらに含む、(1)に記載の化学気相堆積方法。
(7)UV処理が、高温、好ましくは200〜500℃にて実施される、(4)に記載の化学気相堆積方法。
(8)UV処理が、O2、H2又はNH3の存在下などの反応性環境において実施される、(4)に記載の化学気相堆積方法。
(9)前記少なくとも1種の有機シリコン前駆体が、式Iの前駆体である、(1)に記載の化学気相堆積方法。
(10)前記少なくとも1種の有機シリコン前駆体が、1,1,1,3,3‐ペンタメトキシ‐2‐メチル‐1,3‐ジシラブタン(PMOM‐DSB)、1,2‐ビス(メチルジメトキシシリル)エタン、1,2‐ビス(トリメトキシシリル)エタン、1,2‐ビス(ジメトキシシリル)エタン、1,1‐ビス(トリメトキシシリル)エタン、1,1‐ビス(メチルジメトキシシリル)エタン、1,1‐ビス(ジメトキシシリル)エタン、1,1‐ジメチル‐1,1‐ビス(トリメトキシシリル)メタン、1,1‐ジメチル‐1,1‐ビス(メチルジメトキシシリル)メタン、1,1‐ジメチル‐1,1‐ビス(ジメトキシシリル)メタン、1,1,1,3,3‐ペンタエトキシ‐2‐メチル‐1,3‐ジシラブタン、1,2‐ビス(メチルジエトキシシリル)エタン、1,2‐ビス(トリエトキシシリル)エタン、1,2‐ビス(ジエトキシシリル)エタン、1,1‐ビス(トリエトキシシリル)エタン、1,1‐ビス(メチルジエトキシシリル)エタン、1,1‐ビス(ジエトキシシリル)エタン、1,1‐ジメチル‐1,1‐ビス(トリエトキシシリル)メタン、1,1‐ジメチル‐1,1‐ビス(メチルジエトキシシリル)メタン及び1,1‐ジメチル‐1,1‐ビス(ジエトキシシリル)メタンからなる群から選択される少なくとも1種の前駆体である、(9)に記載の化学気相堆積方法。
(11)前記少なくとも1種の有機シリコン前駆体が、式IIの前駆体である、(1)に記載の化学気相堆積方法。
(12)前記少なくとも1種の有機シリコン前駆体が、1,1,3,3‐テトラメトキシ‐1,3‐ジシラシクロブタン、1,3‐ジメトキシ‐1,3‐ジメチル‐1,3‐ジシラシクロブタン、1,3‐ジメトキシ‐1,3‐ジシラシクロブタン、1,3,3‐トリメトキシ‐1‐メチル‐1,3‐ジシラシクロブタン、1,3‐ジメトキシ‐1‐メチル‐ジシラシクロブタン、1,1‐ジメトキシ‐1,3‐ジシラシクロブタン、1,1,4,4‐テトラメトキシ‐1,4‐ジシラシクロヘキサン、1,4‐ジメトキシ‐1,4‐ジメチル‐1,4‐ジシラシクロヘキサン、1,4‐ジメトキシ‐1,4‐ジシラシクロヘキサン、1,4,4‐トリメトキシ‐1‐メチル‐1,4‐ジシラシクロヘキサン、1,4‐ジメトキシ‐1‐メチル‐ジシラシクロヘキサン、1,1‐ジメトキシ‐1,4‐ジシラシクロヘキサン、1,1,3,3‐テトラエトキシ‐1,3‐ジシラシクロブタン、1,3‐ジエトキシ‐1,3‐ジメチル‐1,3‐ジシラシクロブタン、1,3‐ジエトキシ‐1,3‐ジシラシクロブタン、1,3,3‐トリエトキシ‐1‐メチル‐1,3‐ジシラシクロブタン、1,3‐ジエトキシ‐1‐メチル‐ジシラシクロブタン、1,1‐ジエトキシ‐1,3‐ジシラシクロブタン、1,1,4,4‐テトラエトキシ‐1,4‐ジシラシクロヘキサン、1,4‐ジエトキシ‐1,4‐ジメチル‐1,4‐ジシラシクロヘキサン、1,4‐ジエトキシ‐1,4‐ジシラシクロヘキサン、1,4,4‐トリエトキシ‐1‐メチル‐1,4‐ジシラシクロヘキサン、1,4‐ジエトキシ‐1‐メチル‐ジシラシクロヘキサン及び1,1‐ジエトキシ‐1,4‐ジシラシクロヘキサンからなる群から選択される少なくとも1種の前駆体である、(11)に記載の化学気相堆積方法。
(13)前記少なくとも1種の有機シリコン前駆体が、ハロゲン化物イオン、Al3+イオン、Fe2+イオン、Fe3+イオン、Ni2+イオン及びCr3+イオンを含まない、(1)に記載の化学気相堆積方法。
(14)前記ハロゲン化物イオンが、塩化物、フッ化物、臭化物及びヨウ化物を含む、(13)に記載の化学気相堆積方法。
(15)化学気相堆積条件が、プラズマ増強化学気相堆積条件である、(1)に記載の化学気相堆積方法。
(16)化学気相堆積条件が、熱化学気相堆積条件である、(1)に記載の化学気相堆積方法。
(17)前記基材がシリコンウェハである、(1)に記載の化学気相堆積方法。
(18)前記層間誘電膜が、Si‐‐O‐‐C、Si‐‐O‐‐Si、Si‐‐C、Si‐‐F、Si‐‐H、C‐‐O、C‐‐H及びC‐‐Fから選択される結合型の1つ又はそれより多くを有する、(1)に記載の化学気相堆積方法。
(19)化学気相堆積条件が、O2、O3、H2O2、N2O及びこれらの混合物からなる群から選択される酸化剤の使用を含む、(1)に記載の化学気相堆積方法。
(20)化学気相堆積条件が、酸化剤の使用を除外する、(1)に記載の化学気相堆積方法。
(21)化学気相堆積条件が、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノン、窒素からなる群から選択される1種又はそれより多くの不活性ガスの使用を含む、(1)に記載の化学気相堆積方法。
(22)1種又はそれより多くの反応性物質が、ガス状又は液体有機物質、アンモニア、水素、二酸化炭素、一酸化炭素、フルオロカーボン及びこれらの混合物からなる群から選択される、(1)に記載の化学気相堆積方法。
(23)(1)に記載の方法により形成された膜。
(24)1.8g/cc又はそれより大きい密度を有する、(23)に記載の膜。
(25)2.0又はそれより大きい密度を有する、(24)に記載の膜。
(26)2.5〜3.5の誘電率及び20GPaを超えるヤング弾性率及び/又は3.5GPaを超えるナノインデンテーション硬度を有する、(25)に記載の膜。
(27)前記膜が、20GPaを超えるヤング弾性率及び/又は3.5GPaを超えるナノインデンテーション硬度を有する、(2)に記載の方法。
(28)前記膜が、20GPaを超えるヤング弾性率及び/又は3.5GPaを超えるナノインデンテーション硬度を有する、(4)に記載の方法。